(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】スーパーキャパシタ電極活物質としての相互接続3次元グラフェンの多孔性粒子および製造プロセス
(51)【国際特許分類】
H01G 11/86 20130101AFI20220921BHJP
C01B 32/184 20170101ALI20220921BHJP
H01G 11/34 20130101ALI20220921BHJP
H01G 11/36 20130101ALI20220921BHJP
【FI】
H01G11/86
C01B32/184
H01G11/34
H01G11/36
(21)【出願番号】P 2018510058
(86)(22)【出願日】2016-08-26
(86)【国際出願番号】 US2016048961
(87)【国際公開番号】W WO2017035462
(87)【国際公開日】2017-03-02
【審査請求日】2019-08-09
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-07
(32)【優先日】2015-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510124593
【氏名又は名称】ナノテク インスツルメンツ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】ザム,アルナ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ボー,ゼット.
【合議体】
【審判長】酒井 朋広
【審判官】清水 稔
【審判官】山本 章裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-185008(JP,A)
【文献】特開2013-23405(JP,A)
【文献】特開2015-513803(JP,A)
【文献】特開2015-88482(JP,A)
【文献】特開2010-3940(JP,A)
【文献】特開平4-294515(JP,A)
【文献】特開2004-47613(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G11/86, H01G11/36, H01G11/34, C01B32/184
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スーパーキャパシタ電極を製造するための方法であって、(a)3nm~50nmの範囲の細孔径を有する複数の細孔と炭素原子の3~20のグラフェン面の連続したまたは天然相互接続したグラフェンリガメントを含むグラフェン細孔壁の連続した3次元網目構造とを含むモノリシック3次元グラフェン構造をそれぞれ有する複数の多孔性粒子を製造するために十分な0.5~24時間の間100℃~1,200℃の活性化温度においてメソカーボンマイクロビード、MCMBの複数粒子を酸、塩基、または塩から選択される活性化剤による化学活性化に供する工程と、(b)液体媒体中に前記複数の多孔性粒子、任意選択の導電性添加剤、および任意選択の樹脂結合剤を含有する懸濁液を製造する工程と、(c)前記懸濁液を集電体の少なくとも一次表面上に堆積させて湿潤層を形成し、前記液体媒体を前記湿潤層から取り除いて前記スーパーキャパシタ電極を形成する工程とを含
み、
前記化学活性化前に、前記メソカーボンマイクロビード、前記MCMBの複数粒子が最大熱処理温度(Tmax)が1,500~2,500℃の熱処理を受ける方法。
【請求項2】
前記活性化剤がH
3PO
4、H
2SO
4、ZnCl
2、NaOH、KOH、CaCl
2、CH
3CO
2K(酢酸カリウム)、またはそれらの組合せから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化学活性化が物理的活性化の前、間、および後に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記活性化温度が300℃~1,000℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記複数の多孔性粒子が形状において実質的に球状または楕円状である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記複数の細孔が3nm~25nmの範囲の細孔径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記グラフェン間の間隔が、化学活性化の前に、MCMBについて0.336nmのグラフェン間の間隔から、0.337nm~0.65nmの範囲に増加されるような量の非炭素元素を前記グラフェンリガメントが含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記グラフェンリガメントが、有機または導電性ポリマーおよび/または遷移金属酸化物から選択されるレドックス対相手材をさらに堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記グラフェンリガメントが、RuO
2、IrO
2、NiO、MnO
2、VO
x、TiO
2、Cr
2O
3、Co
2O
3、PbO
2、Ag
2O、MoC
x、Mo
2N、WC
x、WN
x、遷移金属酸化物、およびそれらの組合せから選択されるレドックス対相手材をさらに堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記グラフェンリガメントが、--SO
3、--R’COX、--R’(COOH)
2、--CN、--R’CH
2X、--OH、--R’CHO、--R’CN(式中、R’が炭化水素基であり、Xが--NH
2、--OH、またはハロゲンである)からなる群から選択される1個以上の官能基でさらに官能化される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記グラフェンリガメントが固有導電性ポリマーをさらに堆積されて、レドックス対を形成して疑似静電容量を誘起する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
第1の電極と、第2の電極と、前記第1および前記第2の電極の間に配置された多孔性セパレーターと、前記第1および第2の電極と物理的接触している電解質とを含むスーパーキャパシタであって、2つの電極のうちの少なくとも1つが請求項1の方法によって作製され、前記少なくとも1つの電極が、3nm~50nmの範囲の細孔径を有する複数の細孔と炭素原子の3~20のグラフェン面の連続したまたは天然相互接続グラフェンリガメントを含むグラフェン細孔壁の連続した3次元網目構造とを含むモノリシック3次元グラフェン構造をそれぞれ有する複数の多孔性粒子を含有する、スーパーキャパシタ。
【請求項13】
前記電解質が水性液体電解質、有機液体電解質、イオン性液体の電解質、ゲル電解質、またはそれらの組合せである、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項14】
前記複数の細孔が3nm~25nmの範囲の細孔径を有する、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項15】
前記複数の細孔が4nm~15nmの範囲の細孔径を有する、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項16】
前記第1の電極および前記第2の電極の両方が請求項1の方法によって製造される、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項17】
前記電解質が室温のイオン性液体を含有する、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項18】
前記電極のうちの前記少なくとも1つが、カーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維、活性炭、カーボンブラック、ナノワイヤー、金属酸化物ナノワイヤーまたは繊維、導電性ポリマーナノ繊維、またはそれらの組合せから選択されるナノ材料をさらに含む、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項19】
前記電極のうちの少なくとも1つが、RuO
2、IrO
2、NiO、MnO
2、VO
x、TiO
2、Cr
2O
3、Co
2O
3、PbO
2、Ag
2O、MoC
x、Mo
2N、WC
x、WN
x、遷移金属酸化物、およびそれらの組合せからなる群から選択される材料をさらに含む、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項20】
前記電極のうちの前記少なくとも1つが、グラフェンリガメントとレドックス対を形成する導電性ポリマーをさらに含む、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項21】
前記グラフェンリガメントが官能化される、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項22】
前記ナノグラフェンリガメントが、--SO
3、--R’COX、--R’(COOH)
2、--CN、--R’CH
2X、--OH、--R’CHO、--R’CN(式中、R’が炭化水素基であり、Xが--NH
2、--OH、またはハロゲンである)からなる群から選択される1個以上の官能基で官能化される、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項23】
前記電極のうちの前記少なくとも1つが200μmよりも厚く、および/または10mg/cm
2よりも高い活物質の質量負荷を有する、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項24】
前記スーパーキャパシタが、全セル重量に基づいて30Wh/kg以上のエネルギー密度を提供する、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項25】
前記スーパーキャパシタが、前記全セル重量に基づいて50Wh/kg以上のエネルギー密度を提供する、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項26】
前記スーパーキャパシタが、前記全セル重量に基づいて100Wh/kg以上のエネルギー密度を提供する、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項27】
前記イオン性液体が少なくとも3.5ボルトまで作動される、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項28】
前記イオン性液体が少なくとも4.5ボルトまで作動される、請求項12に記載のスーパーキャパシタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、スーパーキャパシタまたはウルトラキャパシタの分野に関し、より詳しくは、スーパーキャパシタ中の電極活物質として連続した3次元グラフェンリガメントの多孔性粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ウルトラキャパシタまたはスーパーキャパシタとしても知られる、電気化学キャパシタ(EC)は、ハイブリッド電気車(EV)においての使用が考えられており、そこでそれらは電気自動車において使用されるバッテリーを補い、商業的に実行可能であるバッテリー式自動車の製造の最大の技術的障害である、急速な加速のために必要とされる爆発的な力を提供することができる。バッテリーは経済速度での走行のためにさらに使用されるが、スーパーキャパシタ(バッテリーよりもずっと急速にエネルギーを放出するそれらの能力を有する)は、合流、通過、緊急操縦、およびヒルクライミングのために車が加速する必要がある時にはいつでも始動する。また、電気化学キャパシタは十分なエネルギーを貯えて許容範囲の駆動範囲を提供しなければならない。付加的なバッテリー容量と比べて費用効果、体積効果、および重量効果が高くなるためにそれらは、十分なエネルギー密度(体積エネルギー密度および質量エネルギー密度)ならびに出力密度と長いサイクル寿命とを組み合わせなければならず、コスト目標も同様に達成しなければならない。
【0003】
また、システム設計者はそれらの特性および利益に精通しているので、電気化学キャパシタはエレクトロニクス産業に受け入れられている。電気化学キャパシタは本来、軌道レーザーのためのエネルギーを駆動する大きな爆発を提供するために開発された。相補型金属酸化物半導体(CMOS)メモリーバックアップ用途において、例えば、1/2立方インチしか体積を有しない1ファラドの電気化学キャパシタがニッケルカドミウムバッテリーまたはリチウムバッテリーに取って代わることができ、数ヶ月間にわたってバックアップ電源を提供することができる。与えられた印加電圧について、与えられた電荷に対応する電気化学キャパシタ内の貯蔵エネルギーは、同じ電荷の通過のために相当するバッテリーシステム内に貯蔵可能な貯蔵エネルギーの半分である。それにもかかわらず、電気化学キャパシタは極めて魅力的な電源である。バッテリーと比較して、それらはメンテナンスを必要とせず、ずっと高いサイクル寿命を提供し、非常に簡単な充電回路を必要とし、「メモリ効果」を受けず、一般的にずっと安全である。化学的ではなく物理的エネルギー貯蔵は、それらの安全な作業および極めて高いサイクル寿命の主要な理由である。おそらく最も重要なことには、キャパシタは、バッテリーよりも高い出力密度を提供する。
【0004】
従来のキャパシタに対して電気化学キャパシタの高い体積静電容量(10~100倍高い)は、多孔性電極を使用して大きな有効「プレート領域」を作ることおよび拡散二重層内にエネルギーを貯えるにより得られる。電圧が加えられる時に固体-電解質界面に自然に作られるこの二重層は、約1nmしか厚さを有さず、したがって極めて小さな有効「プレート分離」を形成する。このようなスーパーキャパシタは一般的に電気二重層キャパシタ(EDLC)と称される。二重層キャパシタは、液体電解質中に浸漬された、例えば活性炭などの高表面積電極材料に基づいている。分極二重層が電極-電解質界面に形成され、高い静電容量を提供する。これは、スーパーキャパシタの比静電容量が電極材料の比表面積に正比例していることを意味する。この表面積は、電解質によって接触可能でなければならず、得られた界面領域は、いわゆる電気二重層の電荷を吸収するほど十分に大きくなければならない。
【0005】
いくつかの電気化学キャパシタにおいて、貯蔵エネルギーは、疑似静電容量効果によってさらに増加され、酸化還元電荷移動などの電気化学現象のために固体-電解質界面に再び生じる。
【0006】
しかしながら、現在の最新技術電気化学キャパシタまたはスーパーキャパシタに伴なういくつかの重大な技術的問題がある:
(1)活性炭電極の基づいた電気化学キャパシタの実績は、実験的に測定された静電容量が常に、ダイポール層の測定された表面積および幅から計算された幾何形状静電容量よりもずっと低いことを示す。非常に高表面積の炭素のために、典型的に「理論」静電容量の約20パーセントだけが観察された。この期待はずれの性能は、微小細孔(<2nm、主に<1nm)の存在に関連しており、電解質によっていくつかの細孔が接触可能でないこと、湿潤欠陥、および/または反対電荷をもつ表面が約1~2nm未満離れている細孔内に二重層を良好に形成することができないことに帰せられる。活性炭において、炭素の供給源および熱処理温度に応じて、驚くべき量の表面(40~80%)がこのような微小細孔の形態であり得る。
【0007】
(2)公開文献および特許文書に報告されているように(活物質の重量だけに基づいた)電極レベルにおいてしばしば請求される高い質量静電容量にもかかわらず、これらの電極は残念なことに、(全セル重量またはパック重量に基づいた)スーパーキャパシタセルまたはパックレベルにおいて高い容量を有するエネルギー蓄積デバイスを提供することができない。これは、これらの報告において、電極の実際の質量負荷および活物質の見掛密度は非常に低いという見解による。多くの場合、電極の活物質の質量負荷は10mg/cm2よりも著しく低く(面密度=活物質の量/電極の厚さ方向に沿う電極の断面積)、活物質の見掛体積密度またはタップ密度は典型的に、活性炭の比較的大きな粒子についても0.75g/cm3未満(より典型的には0.5g/cm3未満および最も典型的には0.3g/cm3未満)である。
【0008】
低い質量負荷は第一に、従来のスラリーコーティング手順を使用してより厚い電極(100~200μmよりも厚い)を得ることができないためである。これは、想像に難くないと思われるが些細な課題ではなく、実際は電極厚さはセル性能を最適化する目的のために任意に且つ自由に変えることができる設計パラメーターではない。反対に、より厚い試料は極めて脆くなるかまたは不十分な構造統合性になる傾向があり、そしてまた、多量の結合剤樹脂の使用を必要とする。これらの問題は、グラフェン材料系電極については特に深刻である。50~100μmよりも厚く液体電解質に十分に接触可能なままである細孔を有する高度に多孔性のままであるグラフェンをベースとした電極を製造することはこれまで可能ではなかった。低い面密度および低い体積密度(薄い電極および不十分な充填密度に関係がある)は、スーパーキャパシタセルの比較的低い体積静電容量および低い体積エネルギー密度をもたらす。
【0009】
より小型で携帯用のエネルギー貯蔵システムに対する需要が拡大しており、エネルギー蓄積デバイスの体積の利用度を高める大きな目的がある。高い体積静電容量および高い質量負荷を可能にする新規な電極材料および設計は、改良されたセル体積静電容量およびエネルギー密度を達成するために不可欠である。
【0010】
(3)これまでの十年間の間、グラフェン、カーボンナノチューブ系複合材、多孔性黒鉛酸化物、および多孔性メソカーボンなどの多孔性炭素系材料を利用して増加した体積静電容量を有する電極材料を開発する多くの試みがなされている。このような電極材料を特徴とするこれらの実験的なスーパーキャパシタは高いレートで充放電され得ると共に、また、電極の大きな体積静電容量(電極体積に基づいて、大抵の場合、100~200F/cm3)を示すが、<5mg/cm2のそれらの典型的な活性質量負荷、<0.2g/cm3のタップ密度、および数十マイクロメートルまでの電極厚さは大抵の市販の電気化学キャパシタ(すなわち10mg/cm2、100~200μm)において使用されるものよりもさらに著しく低く、それは、比較的低い面積および体積静電容量ならびに低い体積エネルギー密度を有するエネルギー蓄積デバイスをもたらす。
【0011】
(4)グラフェン系スーパーキャパシタについて、以下に説明される、依然として解決されなければならないさらに別の問題がある:
ナノグラフェン材料は最近、非常に高い熱伝導率、高い電気導電率、および高い強度を示すことがわかった。グラフェンの別の著しい特性はその非常に高い比表面積である。単一グラフェンシートは、相当する単層CNT(内表面は電解質によって接触可能でない)によって提供される約1,300m2/gの外表面積とは対照的に、(液体電解質によって接触可能である)約2,675m2/gの比外表面積を提供する。グラフェンの電気導電率はCNTの電気導電率よりもわずかに高い。
【0012】
本出願人(A.ZhamuおよびB.Z.Jang)ならびに彼らの同僚が初めて、スーパーキャパシタ用途のためのグラフェン-およびその他のナノ黒鉛系ナノ材料を検討した[以下の文献1~5を参照されたい。最初の特許出願は2006年に提出され、2009年に発行された]。2008年の後、研究者らはスーパーキャパシタ用途のためのナノグラフェン材料の意義を理解し始めた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第7,623,340号明細書
【文献】米国特許出願第11/906,786号明細書
【文献】米国特許出願第11/895,657号明細書
【文献】米国特許出願第11/895,588号明細書
【文献】米国特許出願第12/220,651号明細書
【文献】米国特許出願第12/005,015号明細書
【文献】米国特許第8,883,114号明細書
【非特許文献】
【0014】
【文献】Chen,Z.et al.Three-dimensional flexibleおよびConductive interconnected graphene networks grown by chemical vapour deposition.Nat.Mater.10,424-428(2011)
【文献】Yuxi Xu,Kaixuan Sheng,Chun Li、およびGaoquan Shi、“Self-Assembled Graphene Hydrogel via a One-Step Hydrothermal Process”、 ACS Nano,Vol.4,No.7,4324-4330(2010)
【0015】
しかしながら、個々のナノグラフェンシートは、再積層される傾向が大きく、スーパーキャパシタ電極内の電解質によって接触可能である比表面積を事実上低減する。このグラフェンシートの重なり問題の重要性は以下のように説明されてもよい:l(長さ)×w(幅)×t(厚さ)の寸法および密度ρを有するナノグラフェンプレートリットについて、推定表面積/単位質量はS/m=(2/ρ)(1/l+1/w+1/t)である。Ρ≒2.2g/cm3、l=100nm、w=100nm、およびt=0.34nm(単一層)によって、2,675m2/gのすばらしいS/m値が得られ、それは最新技術のスーパーキャパシタにおいて使用される大抵の市販のカーボンブラックまたは活性炭材料のS/m値よりもずっと大きい。2つの単一層グラフェンシートが積層して二重層グラフェンを形成する場合、比表面積は1,345m2/gに低減される。3層グラフェン、t=1nmについては、S/m=906m2/gが得られる。より多くの層が一緒に積層される場合、比表面積はさらに著しく低減される。
【0016】
これらの計算は、個々のグラフェンシートが再積層するのを防ぐ方法を見出すことが極めて重要であり、それらが部分的に再積層しても、得られた複数層構造物が十分なサイズの層間細孔を有することを示唆する。これらの細孔は、電解質による接触容易性を可能にすると共に電気二重層電荷の形成を可能にするために十分に大きくなければならず、それは典型的に、少なくとも1nm、より好ましくは少なくとも2nmの細孔径を必要とする。しかしながら、これらの細孔またはグラフェン間の間隔はまた、大きなタップ密度を確実にするために十分に小さくなければならない。残念なことに、従来のスラリーコーティングおよび乾燥を使用して製造されたグラフェンをベースとした電極の典型的なタップ密度は0.3g/cm3未満、および最も典型的には<<0.1g/cm3である。多くは、大きな細孔径および高い多孔性レベルを有する要件と高いタップ密度を有する要件とは、スーパーキャパシタにおいて互いに排他的であると考えられる。
【0017】
グラフェンシートをスーパーキャパシタ電極活物質として使用する別の主な技術的障害は、従来のグラフェン-溶剤スラリーコーティング手順を使用して固体集電体(例えばAl箔)の表面上に厚い活物質層を堆積させるという課題である。このような電極において、グラフェン電極は典型的に、多量の結合剤樹脂を必要とする(したがって、非活物質またはオーバーヘッド物質/成分に対して著しく低減された活物質の比率)。さらに、50μmよりも厚いこのようにして作製されたどの電極も脆く、弱い。これらの問題に対する有効な解決策はなかった。
【0018】
おそらく、グラフェンをベースとしたスーパーキャパシタ電極を製造する異なった方法、例えばNi泡によって触媒される化学蒸着(CVD)を使用することができるであろう(文献6)。薄層構造物(3つまでのグラフェン面)はNi泡の表面上に堆積される。次に、支持Ni泡を化学エッチして除去し、非常に脆い3次元相互接続グラフェン泡を後に残した。樹脂によって強化される時でも、CVDグラフェン泡は非常に脆い。さらに、グラフェン泡の細孔径は非常に大きく(典型的に1~100μm)、典型的には<<0.05g/cm3の極度に低密度の構造物をもたらす。固有Ni触媒効果のために、触媒CVD法は、3つのグラフェン面よりも厚い細孔壁を製造することができない。
【0019】
あるいは、液体媒体(例えば水)中に分散されて懸濁液を形成するグラフェン酸化物(GO)または化学改質グラフェン(CMG)シートを生成することができるであろう。次に、懸濁液を熱水処理に供して、多孔性である自己組織化グラフェン構造を得る(文献7)。残念なことに、GOおよびCMG由来グラフェン泡は、酸化およびその他の化学的改質反応によって引き起こされる高い欠陥群のために、十分に伝導性ではない。純粋なグラフェンシートは紙形態に製造され得るが、得られた紙層は、個々の、別個の純粋なグラフェンシートがGOまたはCMGシートと比較して比較的欠陥がなくより伝導性であるとしても、十分に伝導性ではない。また、製紙は、グラフェンシートの再積層をもたらす傾向がある。
【0020】
CVD、自己組織化、および製紙プロセスに伴なう最も重大な問題は、それらが既存のスーパーキャパシタ製造プロセス、装置、および設備と適合していないという見解である。さらに、CVD法は時間がかかり且つ費用がかかる。また、黒鉛粒子を化学的に酸化およびインターカレートし、得られた酸化された/インターカレートされた黒鉛を剥離し、剥離黒鉛を機械的に破断して単離/分離GOシートを製造し、最後に、これらの個々のシートを多孔性構造物に再組織化することは、費用がかかる、複雑な、且つ時間のかかる面倒なプロセスである。化学酸化/インターカレーションプロセスは、望ましくない化学物質の使用、多量の洗浄水、および反応後の廃水処理を必要とする。したがって、これは環境上安全なプロセスではない。
【0021】
このため、簡単且つ迅速で、エネルギー集約的でなく、より環境に優しく、黒鉛の化学酸化および剥離ならびにグラフェンシートの分離を必要としないスーパーキャパシタ電極の製造プロセスが明らかに且つ切実に必要とされている。プロセスは、既存のスーパーキャパシタ製造装置および設備に適合しなければならない。また、得られたスーパーキャパシタは、比較的高い活物質の質量負荷(高い面密度)、高い見掛密度(高いタップ密度)を有する活物質、電子輸送速度を著しく低下させない(例えば長い電子輸送距離を有さない)大きな電極厚さ、高い体積静電容量、および高い体積エネルギー密度を有しなければならない。グラフェンをベースとした電極については、グラフェンシートの再積層、大きな比率の結合剤樹脂の必要性、および厚いグラフェン電極層を製造する難しさなどの問題もまた克服しなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、スーパーキャパシタ電極を製造するための方法を提供する。実施形態において、方法は、(a)3nm~50nmの範囲の(好ましくは3nm~25nmの範囲の)細孔径を有する複数の細孔と炭素原子の3~20のグラフェン面の連続したまたは天然相互接続グラフェンリガメントを含むグラフェン細孔壁の連続した3次元網目構造とを含むモノリシック3次元グラフェン構造をそれぞれ有する複数の多孔性粒子を製造するために十分な0.5~24時間の間100℃~1,200℃(好ましくは300℃~1,000℃)の活性化温度においてメソカーボンマイクロビード、MCMBの複数粒子を酸、塩基、または塩から選択される活性化剤による化学活性化に供する工程と、(b)液体媒体中にこれらの複数の多孔性粒子、任意選択の導電性添加剤、および任意選択の樹脂結合剤を含有する懸濁液を製造する工程と、(c)懸濁液を集電体の少なくとも一次表面上に堆積させて湿潤層を形成し、液体媒体を湿潤層から取り除いてスーパーキャパシタ電極を形成する工程とを含み、前記化学活性化前に、前記メソカーボンマイクロビード、前記MCMBの複数粒子が最大熱処理温度(Tmax)が1,500~2,500℃の熱処理を受ける。
【0023】
好ましくは、グラフェン間の間隔が(化学活性化の前にMCMBについて観察される)0.336nmのグラフェン間の間隔から0.337nm~0.65nmの範囲に増加されるような量の非炭素元素をグラフェンリガメントが含有する。
【0024】
特定の実施形態において、活性化剤は、H3PO4、H2SO4、ZnCl2、NaOH、KOH、CaCl2、CH3CO2K(酢酸カリウム)、またはそれらの組合せから選択される。化学活性化は物理的活性化と共に行われてもよい。化学活性化は、物理的活性化の前、間、および後に行われてもよい。
【0025】
好ましくは、出発MCMB粒子は形状において球状であり、得られた複数の多孔性粒子は形状において実質的に球状または楕円状である。
【0026】
特定の実施形態において、多孔性粒子中のグラフェンリガメントは、有機または導電性ポリマーおよび/または遷移金属酸化物から選択されるレドックス対相手材をさらに堆積される。好ましくは、グラフェンリガメントは、RuO2、IrO2、NiO、MnO2、VOx、TiO2、Cr2O3、Co2O3、PbO2、Ag2O、MoCx、Mo2N、WCx、WNx、遷移金属酸化物、およびそれらの組合せから選択されるレドックス対相手材を堆積される。あるいはまたはさらに、グラフェンリガメントは、--SO3、--R’COX、--R’(COOH)2、--CN、--R’CH2X、--OH、--R’CHO、--R’CN(式中、R’が炭化水素基であり、Xが--NH2、--OH、またはハロゲンである)からなる群から選択される1個以上の官能基でさらに官能化される。好ましくは、グラフェンリガメントは固有導電性ポリマーをさらに堆積されて、レドックス対を形成して疑似静電容量を誘起する。
【0027】
また、本発明は、第1の電極と、第2の電極と、第1および第2の電極の間に配置された多孔性セパレーターと、第1および第2の電極と物理的接触している電解質とを含むスーパーキャパシタを提供し、そこで2つの電極のうちの少なくとも1つが上に記載された方法によって作製される。換言すれば、少なくとも1つの電極は、3nm~50nmの範囲の細孔径を有する複数の細孔と炭素原子の3~20のグラフェン面の連続したまたは天然相互接続グラフェンリガメントを含むグラフェン細孔壁の連続した3次元網目構造とを含むモノリシック3次元グラフェン構造をそれぞれ有する複数の多孔性粒子を含有する。
【0028】
それぞれの多孔性粒子は、好ましくは2nm~25nmの範囲の細孔径を有する複数の細孔と結合剤を使用しない炭素原子の1~20のグラフェン面の天然相互接続グラフェンリガメントの連続した3次元網目構造とを含むモノリシック3次元グラフェン構造を含む。グラフェンリガメントのこの連続したまたは天然相互接続3次元網目構造は、予め分離されたグラフェンシート、グラフェン酸化物シート、または化学改質グラフェンシートを再接続することから、または化学蒸着から製造されない。好ましくは、複数の細孔は、3nm~25nmの範囲、より好ましくは4nm~15nmの範囲の細孔径を有する。
【0029】
好ましい実施形態において、スーパーキャパシタの第1の電極および第2の電極の両方が上述の方法によって製造される。今発明されたスーパーキャパシタにおいて使用される電解質は、水性液体電解質、有機液体電解質、イオン性液体電解質(特に室温イオン性液体)、ゲル電解質、またはそれらの組合せであり得る。
【0030】
スーパーキャパシタにおいて、電極のうちの少なくとも1つは、カーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維、活性炭、カーボンブラック、ナノワイヤー、金属酸化物ナノワイヤーまたは繊維、導電性ポリマーナノ繊維、またはそれらの組合せから選択されるナノ材料をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態(疑似静電容量を有するスーパーキャパシタ)において、電極のうちの少なくとも1つは、RuO2、IrO2、NiO、MnO2、VOx、TiO2、Cr2O3、Co2O3、PbO2、Ag2O、MoCx、Mo2N、WCx、WNx、遷移金属酸化物、およびそれらの組合せからなる群から選択される材料をさらに含む。いくつかの実施形態において、電極のうちの少なくとも1つは、グラフェンリガメントとレドックス対を形成する導電性ポリマーをさらに含む。
【0031】
他の実施形態において、グラフェンリガメントは官能化される。グラフェンリガメントは、--SO3、--R’COX、--R’(COOH)2、--CN、--R’CH2X、--OH、--R’CHO、--R’CN(式中、R’が炭化水素基であり、Xが--NH2、--OH、またはハロゲンである)からなる群から選択される1個以上の官能基で官能化されてもよい。
【0032】
本発明のスーパーキャパシタは、少なくとも3.5ボルトまで、好ましくは4.5ボルトまで作動することができるイオン性液体を含有してもよい。スーパーキャパシタは、対称EDLCの全セル重量に基づいて15Wh/kg以上、しばしば全セル重量に基づいて30Wh/kg以上、そしてさらに500Wh/kg以上のエネルギー密度を供給することができる。対照的に、市販のEDLCスーパーキャパシタは典型的に、4~8Wh/kgのエネルギー密度を有する。発明されたスーパーキャパシタ(例えばレドックスまたは疑似静電容量を有するか、またはリチウムイオンキャパシタ)のいくつかは、100Wh/kgよりも高いエネルギー密度を示す。
【0033】
いくつかの好ましい実施形態において、スーパーキャパシタ内の電極のうちの少なくとも1つは200μmよりも厚く(好ましくは>300μm)および/またはこの電極は、10mg/cm2よりも高い活物質の質量負荷を有する(好ましくは>15mg/cm2)。これらは、以下の考慮すべき点に基づいて特に著しい。
【0034】
150~200μmの電極厚さを有する商用スーパーキャパシタにおいて、活物質(すなわち活性炭)の重量は、パッケージ化セルの全質量の約25%~30%を占める。したがって、しばしば3ないし4の係数を使用して、活物質の重量だけ(例えば商用セル中の活性炭粒子の重量)に基づいた性質からデバイス(セル)のエネルギー密度または出力密度を外挿する。大抵の科学誌において、報告される性質は典型的に、活物質の重量だけに基づいており、電極は典型的に非常に薄い(<<100μm、および主に<<50μm)。これらの場合、活物質重量は典型的に全デバイス重量の5%~10%であり、それは、実際のセル(デバイス)エネルギー密度または出力密度が、活物質重量に基づいた相当する値を10ないし20の係数で割ることによって得られてもよいことを意味する。この係数が考慮された後、これらの科学誌において報告される性質は、商用スーパーキャパシタの性質ほどあまり良く見えない。このように、科学誌および特許文書において報告されたスーパーキャパシタの性能データを読んで解釈する時には非常に注意深くなければならない。
【0035】
従来のスラリーコーティングプロセスにおいて分離されたグラフェンシートを電極活物質として使用して50μmよりも厚いスーパーキャパシタ電極を作製することは難しい。極度に大きい量の結合剤樹脂(例えば20重量%のPVDF)を使用しても、50μmよりも厚い電極は依然として脆く、コーティング後に液体媒体(例えばNMP)を取り除いた後に剥離するかまたは亀裂を生じる高い傾向を有する。換言すれば、信じたくなる事とは反対に、グラフェン系スーパーキャパシタの電極厚さは設計パラメーターではなく、グラフェン含有スラリーの一般に実施されるロールツーロールコーティングを使用して活物質の質量負荷およびグラフェンシート系スーパーキャパシタのエネルギー密度を増加させるために電極厚さを増加させることを任意にまたは自由に選択することはできないであろう。
【0036】
対照的に、そして非常に驚くべきことに、高い構造統合性および球状または楕円形状を有したままである3次元グラフェンリガメントの今発明された多孔性骨格粒子は、厚い電極(200~400μm)の形成を可能にし、したがって、活物質の非常に高い質量負荷(活物質の高い面密度)を可能にする。これらの厚い電極は、多量の結合剤樹脂(非活物質、静電容量に寄与しない)を使用せずに達成される。従来のスラリーコーティングによって製造される先行技術のグラフェン系スーパーキャパシタにおいて10~20重量%の結合剤とは対照的に、我々の電極において5%~8重量%の結合剤が十分であることが見出された。これらは本当に注目に値し、意外である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】分離されたグラフェンシート(著しく一緒に再積層される)の透過型電子顕微鏡(TEM)画像である。
【
図2】相互接続3次元グラフェンリガメントの骨格を露出する、活性化前(上の画像)および強い活性化後(下の画像)のMCMBの走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図3】連続した3次元グラフェンリガメントをベースとした電極および分離されたグラフェンシートをベースとした電極をそれぞれ含有する代表的なスーパーキャパシタセル(対称EDLC)のラゴーンプロット(質量エネルギー密度および体積エネルギー密度対相当する質量出力密度および体積出力密度の両方)である。
【
図4】連続した3次元グラフェンリガメントをベースとした電極および従来の活性炭系電極をそれぞれ含有する代表的なスーパーキャパシタセル(対称EDLC)のラゴーンプロット(質量エネルギー密度および体積エネルギー密度対相当する質量出力密度および体積出力密度の両方)である。
【
図5】連続した3次元グラフェンリガメントをベースとしたカソードおよび従来の分離されたグラフェンシートをベースとしたカソードをそれぞれ含有する代表的なリチウムイオンキャパシタセル(プレリチウム化黒鉛アノードを有する)のラゴーンプロット(質量エネルギー密度および体積エネルギー密度対相当する質量出力密度および体積出力密度の両方)である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、本開示の一部を形成する、添付した図面と併せて本発明の以下の詳細な説明を参照してより容易に理解されるであろう。本発明は、本明細書に記載および/または図示される特定のデバイス、方法、条件またはパラメーターに限定されず、本明細書において使用される専門用語は例として特定の実施形態を説明する目的だけのものであり、請求される本発明を限定することを意図しないことが理解されなければならない。
【0039】
炭素材料は、本質的非晶質構造(ガラス状炭素)、高組織化結晶(黒鉛)、または様々な比率およびサイズの黒鉛微結晶および欠陥が非晶質母材中に分散されることを特徴としているあらゆる種類の中間構造をとることができる。典型的に、黒鉛微結晶は、ベーサルプレーンに垂直な方向である、c軸方向のファンデルワールス力によって一緒に接着される多数のグラフェンシートまたはベーサルプレーンから構成される。これらの黒鉛微結晶は典型的にミクロンサイズまたはナノメートルサイズである。黒鉛微結晶は、黒鉛フレーク、炭素/黒鉛繊維セグメント、炭素/黒鉛ホイスカー、または炭素/黒鉛ナノ繊維であり得る、黒鉛粒子中の結晶欠陥または非晶相中に分散されるかまたはそれらによって接続される。炭素または黒鉛繊維セグメントの場合、グラフェンプレートは、固有「乱層構造」の一部であってもよい。
【0040】
石油または石炭由来ピッチは、約200amuの平均分子量を有する多核炭化水素の混合物である。約200℃に加熱したとき、ピッチは流体になるかまたは溶融する。溶融体において、温度によって分子に与えられる並進エネルギーは凝集エネルギーを克服する。しかしながら、より高い温度において(例えば、>300℃)、脱水素重合反応が起こり、平均分子量を増加させ、それは、温度が>400℃である時に600~900amuに達することができる。分子が成長するにつれて、凝集エネルギーは並進エネルギーを超え、中間相と呼ばれる、新しい相の均質な核形成をもたらす。
【0041】
中間相ピッチを構成するポリ芳香族分子はディスコティックであり、1つの軸は他の2つの軸よりもずっと小さい。これらの分子は互いに平行な面と整列され、ネマティック液晶を形成する。成長液晶相は球状形状となり、表面エネルギーを最小にする。このように、中間相はマイクロビードを生じ、それは100μmまでの直径を有し得る。
【0042】
実際の実施において、マイクロビード製造プロセスは石油重油または石油ピッチ、コールタールピッチ、または油砂などの炭化水素重油の利用から開始する。ピッチが400°~500℃の熱処理によって炭化されるとき、中間相微小球と呼ばれる微結晶は、熱処理されたピッチ内に形成される。これらの中間相微小球は、それらをさらなる熱処理に供することによって高結晶質炭化物に変換され得る固有の分子配置を有する液晶である。これらの中間相微小球(典型的に不溶性)は、熱処理されたピッチの他の(可溶性)成分から分離された後、炭素繊維、結合剤、および吸収剤のための出発原料として役立つような、高い付加価値を有する広い適用範囲のために使用され得る。分離された中間相微小球はしばしば、メソカーボンマイクロビード(MCMB)、中間相炭素球(MCS)、または炭素質微小球(CMS)と称される。
【0043】
溶剤抽出、乳化、遠心分離、および加圧濾過などのいくつかの方法は、ピッチ内の他の成分からこのような中間相微小球を単離するために使用されている。例として溶剤抽出を使用して、これらの微小球を含有するピッチ母材は最初に、キノリン、ピリジン、または芳香油、例えばアントラセン油、溶剤ナフサ(naptha)等に選択的に溶解されてもよく、中間相微小球は不溶性成分として懸濁される。次に、得られた懸濁液中の不溶性成分が固液分離によって分離される。
【0044】
分離された中間相微小球またはMCMBは、典型的に500℃~3,200℃の範囲、より典型的には1,000℃~3,000℃の範囲、最も典型的には2,000℃~3,000℃の範囲の温度のさらなる熱処理に供せられてもよい。典型的に2,000℃~3,000℃の範囲などの高めの温度熱処理は、黒鉛微結晶の横またはa方向寸法(La)および厚さ方向またはc方向寸法(Lc)を増加させることによってMCMBを黒鉛化するのに役立つ。また、黒鉛化は結晶度を有効に増加させるかまたはMCMBの非晶質または欠陥個所の比率を減少させる。市販のMCMBの直径は典型的に1μm~100μmの間、しかしより典型的には5μm~40μmの間である。
【0045】
我々の研究グループは、ナノグラフェンプレートリット(NGP)とも称される、単離された(分離された)グラフェンシートをMCMBから製造する結果を報告した(文献8)。NGPまたはグラフェンシートは、グラフェン面のシートまたは積層されて一緒に接着されたグラフェン面の複数のシートから本質的に構成される。グラフェンシートまたはベーサルプレーンとも称される、それぞれのグラフェン面は、炭素原子の2次元六角形構造を含む。それぞれのプレートリットは、グラフェン面に平行な長さおよび幅ならびにグラフェン面に直交した厚さを有する。定義によって、NGPの厚さは100ナノメートル(nm)以下であり、単一シートNGP(単一層グラフェン)は0.34nmしかない。
【0046】
先行技術のNGPは主に、天然フレーク黒鉛粒子から製造される。天然フレーク黒鉛から製造されるNGPの長さおよび幅は典型的に、1μm~5μmの間である。特定の用途のために、NGPの長さおよび幅の両方が好ましくは1μmより小さい。例えば、より短い長さおよび幅を有するNGPは、ポリマー母材とより容易に混合されてナノ複合体を形成することができ、母材中のこのようなNGPの分散体は、より均一である。350℃~1,400℃の温度で熱処理されたMCMBから出発することによって、100nmよりも小さい(<0.1μm)、またはさらに10nmよりも小さい長さおよび幅を有するNGPを容易に得ることができることが驚くべきことに観察された。
【0047】
我々の先行研究において(文献8)、50nm以下(典型的に1nm未満)の平均厚さを有する分離されたナノグラフェンプレートリット(NGP)を製造する方法を我々は発明した。方法は、(a)メソカーボンマイクロビード(MCMB)の供給材料をインターカレートして、インターカレートされたMCMBを製造する工程と、(b)所望の分離されたグラフェンシートまたはNGPを製造するために十分な時間の間温度および圧力において、インターカレートされたMCMBを剥離する工程とを含む。
【0048】
背景技術の欄で考察したように、分離されたグラフェンシートをスーパーキャパシタ電極活物質として使用することができる。しかしながら、従来の分離されたグラフェンシートは、電極を形成するために使用されるとき、いくつかの問題がある:再積層する高い傾向(したがって、比表面積の低下)、不十分な充填密度(低い体積静電容量および低い体積エネルギー密度)、50μmよりも厚い電極を製造する難しさ、(電極中に充填される時の)低い活物質の質量負荷、および従来のスラリーコーティングまたは製紙プロセスを使用してグラフェンシートが電極の層に製造される時に液体電解質によっていくつかのグラフェンシートが接触可能でないこと。
【0049】
おそらく、分離されたグラフェンシートを結合剤樹脂と混合することができ、そして次に、結合剤樹脂によって接着されるグラフェンシートからそれぞれ構成される多孔性二次粒子にそれらを製造する方法をどうにかして見出すことができる。これは面倒なプロセスであり、それは、得られた樹脂接着した多孔性グラフェン粒子のサイズおよび形状について十分に制御しない。可能であるが、このようなプロセスは、MCMBまたは黒鉛粒子の化学インターカレーション/酸化、これらのインターカレートされた/酸化された粒子の熱剥離、過剰な酸化剤/インターカレーティング剤(硫酸および過マンガン酸カリウム)の除去のためのインターカレートされた/酸化された粒子の反復洗浄(4~10回反復した)、剥離黒鉛からのグラフェンシートの機械的単離、グラフェンシートおよび結合剤樹脂の再構成など、非常に時間がかかり、面倒な、エネルギー集約的で、環境に優しくなく、且つ費用がかかる手順を必要とするであろう。反復洗浄ステップは、苦痛なほど緩慢であり、望ましくない化学物質(マンガンイオンなど)を含有する莫大な量の排水を生じることを指摘しておいてもよいだろう。
【0050】
本発明は、分離されたグラフェンシートを最初に製造し、次いで多量の電解質接触可能細孔を有する、多孔性である略球状の二次粒子にそれらを再構成するこのような面倒で問題の多いプロセスを経る必要性を完全に不要にするプロセスを提供する。本発明のこのプロセスは、略球状MCMB粒子を多孔性球状または楕円粒子に直接に変換し、そこで非結晶性炭素成分が取り除かれて細孔を生じ、連続したまたは天然相互接続グラフェンリガメントの網目構造から構成される骨格を後に残す。これらの相互接続グラフェンリガメントは典型的に、透過型電子顕微鏡法(TEM)およびX線回折検査に基づいて1~20のグラフェン面(主に3~15のグラフェン面およびさらにより典型的には5~10のグラフェン面)を有する。これらのグラフェンリガメントは、一切の結合剤樹脂の存在なしに電子伝導路の連続した網目構造を形成する。これらのグラフェンリガメントは、それらのいくつかがOおよびHなどのいくつかの非炭素元素を含有しても高伝導性であり、グラフェン間の間隔は、これらの非炭素原子の存在のために0.337nm~0.65nmである(未処理MCMBは、0.335~0.336nmのグラフェン間の間隔を有する)。次に、従来のスラリーコーティングプロセスを使用してこれらの多孔性骨格粒子を充填して接着し、スーパーキャパシタ電極を形成することができる。
【0051】
実施形態において、本発明は、多孔性球状または楕円グラフェン骨格粒子を含有するスーパーキャパシタ電極を製造するための方法を提供する。方法は、(a)1nm~50nmの範囲の細孔径を有する複数の細孔と炭素原子の1~20のグラフェン面の連続したまたは天然相互接続グラフェンリガメントを含むグラフェン細孔壁の連続した3次元網目構造とを含むモノリシック3次元グラフェン構造をそれぞれ有する複数の多孔性粒子を製造するために十分な0.5~24時間の間100℃~1,200℃の活性化温度においてメソカーボンマイクロビード、MCMBの複数粒子を酸、塩基、または塩から選択される活性化剤による化学活性化に供する工程と、(b)液体媒体(例えばNMP)中にこれらの複数の多孔性粒子、任意選択の導電性添加剤、および任意選択の樹脂結合剤(例えばPVDF)を含有する懸濁液を製造する工程と、(c)懸濁液を集電体の少なくとも一次表面(好ましくは両方の対向した一次表面)上に堆積させて湿潤層を形成し、液体媒体を湿潤層から取り除いてスーパーキャパシタ電極を形成する工程とを含む。
【0052】
活性化剤は好ましくは、H3PO4、H2SO4、ZnCl2、NaOH、KOH、CaCl2、CH3CO2K(酢酸カリウム)、またはそれらの組合せから選択されてもよい。(過マンガン酸カリウムまたは過酸化水素などの酸化剤を使用せずに)H2SO4だけでは、剥離黒鉛および分離されたグラフェンシートの先駆物質としてインターカレートされた/酸化された黒鉛またはMCMBを製造するための有効な酸化/インターカレーティング剤ではないことを指摘しておいてもよいだろう。他の種(例えばH3PO4)と混合せずに、H2SO4だけでも、非常に有効な活性化剤ではない。
【0053】
化学活性化は、物理的活性化と組み合わせて行なうことができる。化学活性化は、物理的活性化の前、間(それと同時に)、および後に行われてもよい。出発原料(例えばMCMB)の物理的活性化は、高温ガス(例えば、スチーム、O2、またはCO2)を使用して行われる。具体的に、原材料(中間相球)または炭化材料(例えばMCMB)は、250℃を超える温度、通常600~1200℃の温度範囲の酸化雰囲気(酸素またはスチーム)に暴露される。次に、空気を導入してガスを燃焼消失させ、活性化されたMCMBの段階的な、選別および除塵した形態を生じさせる。
【0054】
化学活性化のために、原材料に特定の化学物質を含浸させる。化学物質は典型的に酸、強塩基、または塩(燐酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、塩化カルシウム、および塩化亜鉛)である。次に、原材料は、300℃~1200℃(より典型的には450~900℃)の温度で熱処理される。「よりグリーンな」MCMB(非炭化またはそれほど炭化されていない中間相球)については、炭化と活性化の両方が同時に進む。十分に炭化されたまたは黒鉛化されたMCMBについては、化学活性化剤は有利には、MCMB粒子の非晶質またはより規則的でない部分を透過してエッチにより除去し、それによって細孔を生成する。
図2に示されるように、適切になされる場合、化学活性化MCMBのそれぞれは、元のMCMB粒子の球状形状全体にわたって連続しているまたは天然に相互接続されているグラフェンリガメント(主鎖)から構成される本質的に3次元グラフェン骨格になる。これらの化学活性化MCMBは元の球状形状を維持するが、グラフェンリガメントの内骨格が露出されている。これらのグラフェンリガメントは通常、明瞭な終端を有さない。これは、黒鉛を剥離して剥離黒鉛を別個の、自立シートに機械的に破断することによって得られるそれらの分離されたグラフェンシートと対照的である。位相幾何学的に、これらの分離されたグラフェンシート(例えば矩形形状)は、4つの端縁/側面または終端を有する。
【0055】
従来の分離されたグラフェンシートまたはNGPの幾何形状を定義するために、NGPは、長さ(最大寸法)、幅(第2の最大寸法)、および厚さを有すると説明される。厚さは最小寸法であり、それは100nm以下および、本出願において、10nm以下(好ましくは2nm以下、より好ましくは1nm以下、および最も好ましくは0.4nm以下、または単一層グラフェンだけ)である。
【0056】
個々の(分離された)グラフェンシートが非常に高い比表面積を有するという事実にもかかわらず、従来の経路によって作製される平らな形状のグラフェンシートは、一緒に再積層するかまたは互いに重なり合う傾向が大きく、それによって電解質によって接触可能である比表面積を劇的に低下させる。この現象は
図1に示され、そこでいくつかの単一層グラフェンシートが重なり合い、強固に再積層する。一緒に重ね合わされる2つのグラフェンシートの間に識別できる間隙または細孔はない。この再積層する傾向のために、おそらく単一層のグラフェンシートの質量は典型的に、2,675m
2/gの理論値とは反対に、400~700m
2/gの比表面積を示す。公開された文献または特許文書において、1,000m
2/gよりも大きい測定表面積を有するグラフェンシートの試料質量をほとんど見出すことができない。
【0057】
化学活性化MCMBの今発明された粒子は典型的には1,200~3,200m2/g、より典型的には1,500~2,800m2/g、最も典型的には2,000~2,800m2/gの範囲の比表面積を示すことを観察して我々は驚いた。さらに、これらの化学活性化MCMBの複数粒子の質量をどんなに圧縮(圧縮固化)しても、得られた圧縮固化された質量はその比表面積(さらに典型的には1,200~3,200m2/g、より典型的には1,500~2,800m2/gの範囲)を実質的に維持する。対照的に、電極に圧縮または製造されるとき、おそらく単一層の、分離されたグラフェンシートの質量は典型的に、その比表面積が劇的に減少しているであろう(例えば700m2/gから100m2/g未満にまで)。明らかに、実用的なスーパーキャパシタの用途のために、グラフェンリガメントの今発明された骨格は、それらの分離されたグラフェンシートに非常に好ましい。
【0058】
化学活性化MCMBは典型的に、一緒に積層されて電極を形成する時に1~50nmの細孔径を示し、より典型的には、所望の細孔径範囲(例えば2~25nm、主に4~15nm)を有するメソ多孔性構造を示す。さらに驚くべきことに、このサイズの範囲は、他のタイプの電解質分子よりもサイズが著しく大きい、イオン性液体(例えば、電解質水溶液中のKOH)によって接触可能であるのに資するように思える。また、今発明されたグラフェンリガメントによって構成されるメソ細孔は、そこに電気二重層の電荷を形成することができ、非常に高い比静電容量をもたらすと思われる。公開文献のデータに基づいて、分離されたグラフェンシート系EDLCスーパーキャパシタの比静電容量は典型的に90~160F/gの範囲であるが、グラフェン骨格の今発明された多孔性粒子の比静電容量は150~250F/gの範囲である。これらの相違は非常に大きく、非常に意外である。
【0059】
別の重要且つこれまで達し難い利点は、これらの相互接続グラフェンリガメントが、(結合剤樹脂の助けによって)二次粒子に一緒に再造形される予め分離されたグラフェンシートの質量よりも数桁導電性が大きい多孔性3次元グラフェン粒子をもたらすということである。これらの粒子が電極に製造されるとき、電気導電率値は5×10-3-6×100S/cm(本発明の電極)対2×10-5-3×10-3S/cm(樹脂接着したグラフェンシートを含有する従来の電極)である。当該3次元グラフェン骨格の内部抵抗がより低くなると、スーパーキャパシタの出力密度が著しくより高くなる。
【0060】
さらに、また、グラフェン骨格に基づいた電極はイオン性液体電解質に非常に適合しておりイオン性液体を非常に高い電圧Vで作動させることができるらしい(Vは典型的に>3.5ボルトおよびしばしば>4.5ボルトである)ことも観察して我々は驚いた。動作電圧が高くなると、E=1/2CセルV2に従う比エネルギー密度がずっと高くなることを意味し、式中、Cセル=セルの比静電容量である。
【0061】
したがって、本発明の好ましい一実施形態は、第1の電極、第2の電極、第1および第2の電極の間に配置された多孔性セパレーター、ならびに2つの電極と物理的接触しているイオン性液体電解質を含むスーパーキャパシタであり、そこで2つの電極のうちの少なくとも1つは、今発明された方法によって製造される相互接続3次元グラフェンリガメントの複数の多孔性粒子を含む。好ましくは、モノリシック3次元グラフェン構造は、1nm~50nmの範囲の細孔径を有する複数の細孔と炭素原子の1~20のグラフェン面の連続したまたは天然相互接続グラフェンリガメントを含むグラフェン細孔壁の連続した3次元網目構造とを含む。
【0062】
それぞれの多孔性粒子は、好ましくは2nm~25nmの範囲の細孔径を有する複数の細孔と結合剤を使用しない炭素原子の1~20のグラフェン面の天然相互接続グラフェンリガメントを含むグラフェン細孔壁の連続した3次元網目構造とを含むモノリシック3次元グラフェン構造を含む。グラフェンリガメントのこの連続したまたは天然相互接続3次元網目構造は、予め分離されたグラフェンシート、グラフェン酸化物シート、または化学改質グラフェンシートを再接続することから、または化学蒸着から製造されない。好ましくは、複数の細孔は、3nm~25nmの範囲、より好ましくは4nm~15nmの範囲の細孔径を有する。
【0063】
好ましい実施形態において、スーパーキャパシタの第1の電極および第2の電極の両方が上述の方法によって製造される。今発明されたスーパーキャパシタにおいて使用される電解質は、水性液体電解質、有機液体電解質、イオン性液体電解質(特に室温イオン性液体)、ゲル電解質、またはそれらの組合せであり得る。
【0064】
スーパーキャパシタにおいて、電極のうちの少なくとも1つは、カーボンナノチューブ、カーボンナノ繊維、活性炭、カーボンブラック、ナノワイヤー、金属酸化物ナノワイヤーまたは繊維、導電性ポリマーナノ繊維、またはそれらの組合せから選択されるナノ材料をさらに含んでもよい。ナノフィブリルを樹脂結合剤と共に多孔性グラフェン粒子と混合して、電極を製造してもよい。
【0065】
いくつかの実施形態(疑似静電容量を有するスーパーキャパシタ)において、電極のうちの少なくとも1つは、RuO2、IrO2、NiO、MnO2、VOx、TiO2、Cr2O3、Co2O3、PbO2、Ag2O、MoCx、Mo2N、WCx、WNx、遷移金属酸化物、およびそれらの組合せからなる群から選択される材料をさらに含む。いくつかの実施形態において、電極のうちの少なくとも1つは、グラフェンリガメントとレドックス対を形成する導電性ポリマーをさらに含む。
【0066】
他の実施形態において、グラフェンリガメントが官能化される。グラフェンリガメントは、--SO3、--R’COX、--R’(COOH)2、--CN、--R’CH2X、--OH、--R’CHO、--R’CN(式中、R’が炭化水素基であり、Xが--NH2、--OH、またはハロゲンである)からなる群から選択される1個以上の官能基で官能化されてもよい。
【0067】
本発明のスーパーキャパシタは、少なくとも3.5ボルトまで、好ましくは4.5ボルトまで作動することができるイオン性液体を含有してもよい。スーパーキャパシタは、全セル重量に基づいて30Wh/kg以上のエネルギー密度、しばしば50Wh/kg以上、そしてさらに全セル重量に基づいて100Wh/kg以上のエネルギー密度を供給することができる。対照的に、市販のEDLCスーパーキャパシタは典型的に4~8Wh/kgのエネルギー密度を有する。
【0068】
前述の電極において使用される相互接続グラフェンリガメントの3次元骨格は、電極製造作業の前または後に、別々にまたは組み合わせて以下の処理に供されてもよい:
(a)化学的に官能化される、
(b)導電性ポリマーでコートまたはグラフトされる、
(c)(スペーサーとしてではなく)電極に疑似静電容量を与える目的のためにRuO2、TiO2、MnO2、Cr2O3、およびCo2O3などの遷移金属酸化物または硫化物を堆積、
(d)硝酸、フッ素、またはアンモニアプラズマへの暴露。
【0069】
ポリアセチレン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、およびそれらの誘導体などの導電性ポリマーは、本発明においてグラフェンリガメントとレドックス対を形成するのに使用するために良い選択肢である。これらの処理は、レドックス反応などの疑似静電容量効果によって静電容量値をさらに増加させることを意図している。あるいは、RuO2、TiO2、MnO2、Cr2O3、およびCo2O3などの遷移金属酸化物または硫化物を疑似静電容量のためにNGP表面上に堆積させることができる。他の有用な表面官能基には、キノン、ヒドロキノン、四級化芳香族アミン、メルカプタン、または二硫化物が含まれてもよい。
【0070】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を説明するために役立ち、本発明の範囲を制限すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0071】
実施例1:ZnCl2によるMCMBの化学活性化
2つの異なった量の出発原料(400gおよび100g)が使用された。出発量のこの違い以外に、全ての他の変数は以下の活性化手順の場合と同じであった。粒子に塩化亜鉛(ZnCl2)を1:1重量比で含浸させ、および14時間にわたって80℃に維持した。次に、熱処理を一定の窒素流(5l/h)下で実施した。熱処理温度を4℃/分で500℃まで上げ、それを3時間にわたって維持した。次に、試料を洗浄して過剰な試薬を取り除き、約3時間にわたって110℃で乾燥させた。得られた試料はCA(化学活性化されただけ)と名付けた。次に、これらの試料の一部を物理的活性化にも供した。窒素流下で温度を25℃/分の速度で900℃に上げた。次に、900℃において、試料を30分間にわたってスチームと接触させた(0.8kg/h)。次いで、これらの試料はCAPAと名付けた(化学的に且つ物理的に活性化された)。物理的および化学活性化処理の組合せは、液体電解質により容易に接触可能である高めの多孔性レベルおよびわずかに大きめの細孔径をもたらすことが観察された。
【0072】
実施例2:KOH、NaOH、およびそれらの混合物によるMCMBの化学活性化
この実施例において、いくつかのMCMB試料をKOH、NaOH、およびそれらの混合物と別々に混合して(30/70、50/50、および70/30重量比)、反応体ブレンドを得た。次に、ブレンドを所望の温度(700~950℃の範囲)に加熱し、0.5~12時間にわたってこの温度に維持して様々な活性化MCMB試料を製造した。得られた構造物は、MCMBの先行の熱処理履歴、活性化温度、および活性化時間によって変化する。以下の観察が行われた:
1)化学活性化前にMCMBが受ける最大熱処理温度(Tmax)は、グラフェンリガメント中のグラフェン面の数および得られた多孔性粒子の最大多孔性レベルを決定する。500~1,500℃の範囲のTmaxは薄めのリガメント(1~3のグラフェン面)をもたらす傾向があり、1,500~2,500℃のTmaxは3~7のグラフェン面をもたらし、2,500~3,000℃のTmaxは7~20のグラフェン面をもたらす。より長い熱処理時間でより高いTmaxでは、MCMBの黒鉛化度がより高くなり、MCMB中に残された非晶質域の量が徐々により小さくなる。
2)同じMCMBが与えられると、より高い活性化温度およびより長い活性化時間はより高めの多孔性レベルをもたらすが、グラフェンリガメント中のグラフェン面の数は、活性化時間および温度から比較的独立しているように思える。
3)極度に長い活性化時間(例えば>3時間)は非常に多くの炭素材料を消費し、3次元グラフェン骨格粒子の生産収率を低下させる。
【0073】
電極は、5wt%のSuper-P(登録商標)および7wt%のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)結合剤と混合された、3次元グラフェン骨格粒子から製造された。Al箔上のスラリーコーティングの手順を実施して、50μm~400μmの厚さを有する電極を製造した。
【0074】
実施例4:グラフェン酸化物(GO)シートを製造するための天然黒鉛の酸化、剥離、およびグラフェンシート分離ならびに純粋なグラフェンシートの製造
予め分離されたグラフェンシートの従来のスラリーコーティングを使用してスーパーキャパシタ電極を作製するために、2つの異なった方法:改良Hummers方法および液相剥離(直接超音波処理)方法をそれぞれ使用して分離されたグラフェンシート(グラフェン酸化物および純粋なグラフェンを含める)の製造を実施した。
【0075】
黒鉛酸化物は、Hummersの方法[米国特許第2,798,878号明細書、1957年7月9日]に従って、24時間にわたって30°Cにおいて天然フレーク黒鉛を硫酸、硝酸ナトリウム、および過マンガン酸カリウムで4:1:0.05の比で酸化することによって調製された。反応の終結時に、混合物を脱イオン水中に注ぎ、濾過した。次に、試料を5%HCl溶液で洗浄して硫酸イオンの大部分および残留塩を取り除き、次に濾液のpHが約5になるまで脱イオン水で繰り返し洗浄した。黒鉛間隙の外側の全ての硫酸および硝酸残留物を取り除くことを意図した。次に、スラリーを乾燥させ、24時間にわたって60°Cの真空炉内に貯蔵した。
【0076】
乾燥された、インターカレートされた(酸化された)化合物を1,050°Cに予備設定された水平管状炉内に挿入された石英管内に置いて、1分間にわたって剥離をもたらした。得られた剥離黒鉛をNMP中で分散させ、30分間にわたって超音波処理に供し、ナノグラフェン酸化物懸濁液を得た。次いで、5%の導電性添加剤(Super-P)および15%のPTFE結合剤樹脂をこの懸濁液中に添加して、スラリーを形成した。スラリーをAl箔をベースとした集電体の両方の一次表面にコートし、乾燥させてスーパーキャパシタ電極を形成した。
【0077】
純粋なグラフェンシートは、直接超音波処理技術によって製造された(文献8)。典型的な手順において、約20μm以下のサイズに微粉砕された5グラムの黒鉛フレークを1,000mLの脱イオン水(DuPont製のZonyl(登録商標)FSO、分散助剤0.1重量%を含有する)中に分散させて懸濁液を得た。85Wの超音波エネルギーレベル(BransonS450ウルトラソニケーター)を15分~2時間にわたってグラフェンシートの剥離、分離、および粉砕のために使用した。得られたグラフェンシートは、少しも酸化されておらず酸素を含有せず比較的欠陥がない純粋なグラフェンである。純粋なグラフェンは、いかなる非炭素元素も本質的に含有しない。次に、スラリーコーティング、乾燥および層積層の従来の手順を使用して純粋なグラフェンシートがスーパーキャパシタに混入される。EDLC、疑似静電容量タイプ、およびリチウムイオンキャパシタなどのスーパーキャパシタの3つのタイプを調査した。リチウムイオンキャパシタは、プレリチウム化黒鉛アノードとグラフェンカソード層とを含有する。
【0078】
スーパーキャパシタセルをグローブボックス内で組み立てた。スーパーキャパシタ単位セルは、Celguard-3501多孔性膜によって互いに電気的に分離された2つの電極を含む。イオン性液体電解質は、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート(EMIMBF4)であった。
【0079】
実施例5:様々なスーパーキャパシタセルの評価
調査された実施例の大部分において、3次元グラフェンリガメントをベースとする活物質粒子およびそれらの従来の対応物(分離されたグラフェンシートをベースとする)を含有する両方の本発明のスーパーキャパシタセルを製造し、評価した。比較目的のために、後者のセルは、(導電性添加剤および結合剤樹脂と共に)分離されたグラフェンシートのスラリーコーティング、電極の乾燥、アノード層、セパレーター、およびカソード層の組み立て、組み立てられた積層体のパッケージ化、および液体電解質の注入の従来の手順によって作製された。従来のセルにおいて、電極(カソードまたはアノード)は典型的に、75~90%の電極活物質、5%のSuper-P(アセチレンブラック系導電性添加剤)、および5~20%のPTFE(活性化MCMBの電極については5~8%および分離されたグラフェンシートをベースとするものについては10~20%)から構成され、それらは混合されてAl箔上にコートされた。容量はArbin SCTS電気化学試験装置を使用して定電流実験で測定された。サイクリックボルタンメトリー(CV)および電気化学インピーダンス分光法(EIS)は電気化学ワークステーション(CHI 660 System、USA)で実施された。
【0080】
定電流充電/放電試験を試料について実施し、電気化学的性能を評価した。定電流試験のために、比容量(q)は、
q=I*t/m (1)
として計算され、
式中、IはmA単位の一定電流であり、tはh単位の時間であり、およびmはグラム単位のカソード活物質質量である。電圧Vを用いて、比エネルギー(E)は、
E=∫Vdq (2)
として計算される。
比出力(P)は、
P=(E/t)(W/kg) (3)
として計算することができ、
式中、tはh単位の全充電または放電ステップ時間である。
【0081】
セルの比静電容量(C)は、電圧対比容量プロットの各点における傾きによって表される。
C=dq/dV (4)
それぞれの試料について、いくつかの電流密度(充電/放電率を表わす)を課して電気化学応答を決定し、ラゴーンプロット(出力密度対エネルギー密度)の構成の必要とされるエネルギー密度および出力密度値の計算を可能にした。
【0082】
実施例6:化学活性化MCMB対分離されたグラフェンシートをベースとしたスーパーキャパシタ
連続した3次元グラフェンリガメントをベースとした電極および分離されたグラフェンシートをベースとした電極をそれぞれ含有する代表的なスーパーキャパシタセル(対称EDLC)のラゴーンプロット(質量および体積エネルギー密度対相当する質量および体積出力密度の両方)が
図3に示されている。いくつかの重要な観察をこれらのデータから行なうことができる。
(A)(図の説明文において「本発明のもの」として示される)電極活物質として今発明された化学活性化方法によって作製される連続した3次元グラフェンリガメントを含有するスーパーキャパシタセルの質量および体積エネルギー密度ならびに質量および体積出力密度の両方が、(「従来のもの」として示される)電極活物質として予め分離されたグラフェンシートを含有するそれらの対応物の質量および体積エネルギー密度ならびに質量および体積出力密度よりも著しく高い。相違は非常に著しく、それらは主に、今発明されたセルに対応する活物質の高い質量負荷(>12mg/cm
2対<5mg/cm
2)、グラフェンの再積層問題がないこと、結合剤樹脂の低減された比率、および本発明の方法が球状粒子を一緒により有効に充填して良い構造統合性のより厚めの電極を形成する能力のためである。
(B)従来の方法によって作製されるセルについては、体積エネルギー密度および体積出力密度の絶対量は、従来のスラリーコーティング方法によって作製されるGO系電極の非常に低いタップ密度(0.25g/cm
3の充填密度)のために、それらの質量エネルギー密度および質量出力密度の絶対量よりも著しく低い。
(C)対照的に、今発明された方法によって作製されたセルについては、体積エネルギー密度および体積出力密度の絶対量は、化学活性化MCMBの比較的高いタップ密度(0.65g/cm
3の充填密度)のために、それらの質量エネルギー密度および質量出力密度の絶対量よりも高い。
【0083】
実施例7:化学活性化MCMB対従来の活性炭
図4には、連続した3次元グラフェンリガメントをベースとした電極および従来の活性炭をベースとした電極をそれぞれ含有する代表的なスーパーキャパシタセル(対称EDLC)のラゴーンプロット(質量エネルギー密度および体積エネルギー密度対相当する質量出力密度および体積出力密度の両方)が記載されている。活性炭粒子は、ココナッツの殻の同時炭化および化学活性化から調製される。ココナッツの殻は、球状MCMBよりも形状において著しくより不規則であった。さらに、MCMBの化学エッチングは非常に少ない(無視できる)量の微視的細孔(<1nm)を製造し、大部分はメソ多孔性(2nm~25nmのサイズを有する)であることを我々は発見した。対照的に、典型的に従来の活性炭の細孔の40~70%は、サイズが1nm未満であり、それは液体電解質に接触可能でない。
【0084】
実施例8:リチウムイオンキャパシタ(LIC)
図5には、連続した3次元グラフェンリガメントをベースとしたカソードおよび従来の分離されたグラフェンシートをベースとしたカソードをそれぞれ含有する代表的なリチウムイオンキャパシタセル(プレリチウム化黒鉛アノード)のラゴーンプロット(質量エネルギー密度および体積エネルギー密度対相当する質量出力密度および体積出力密度の両方)が示されている。
【0085】
これらのリチウムイオンキャパシタ(LIC)セルは、有機液体電解質としてリチウム塩(LiPF6)-PC/DECを含有する。連続した3次元グラフェンリガメント粒子を含有するLICセルの質量エネルギー密度および体積エネルギー密度ならびに出力密度の両方が、分離されたグラフェンシート(純粋なグラフェン)を含有するそれらの対応物の質量エネルギー密度および体積エネルギー密度ならびに出力密度よりも著しく高いことをこれらのデータは示す。
【0086】
分離されたグラフェンシートカソードを含有するLICセルについて、体積エネルギー密度および体積出力密度の絶対量は、従来のスラリーコーティング方法によって作製された純粋なグラフェンをベースとしたカソードの非常に低いタップ密度(0.25g/cm3の充填密度)のために、それらの質量エネルギー密度および質量出力密度の絶対量よりも著しく低い。対照的に、3次元グラフェンリガメントを含有するLICセルについては、体積エネルギー密度および体積出力密度の絶対量は、今発明された方法によって作製された連続した3次元グラフェンリガメントをベースとしたカソードの比較的高いタップ密度のために、それらの質量エネルギー密度および質量出力密度の絶対量よりも高い。
【0087】
多くの研究者がしたように、ラゴーンプロット上で活物質の重量だけに対するエネルギー密度および出力密度を記録することは、組み立てられたスーパーキャパシタセルの性能の現実的な見方を与えない場合があることを指摘することは重要である。また、他のデバイス成分の重量もまた考慮しなければならない。集電体、電解質、セパレーター、結合剤、コネクター、およびパッケージングなどのこれらのオーバーヘッド成分は非活物質であり、電荷蓄積量に寄与しない。それらは、重量および体積をデバイスに付加するにすぎない。したがって、オーバーヘッド成分重量の相対比率を低下させ、活物質の比率を増加させることが望ましい。しかしながら、スラリーコーティングプロセスにおいて従来の分離されたグラフェンシートを使用してこの目標を達成することは可能でなかった。本発明は、スーパーキャパシタの本技術分野においてこの長年の最も重大な問題を克服する。
【0088】
実施例8:疑似キャパシタまたはレドックススーパーキャパシタの実施例として、ポリ(3-メチル-チオフェン)でさらに処理された3次元グラフェンリガメント
充電プロセスは全ポリマー質量を要し、それらは電極に低い等価直列抵抗を提供するので、電子導電性ポリマーはそれらだけで、有望なスーパーキャパシタ電極材料である。グラフェンタイプの基板材料と組み合わせられるとき、導電性ポリマーは、電極に疑似静電容量を与えることができる。選択された1つの望ましい導電性ポリマーは、ポリ(3-メチル-チオフェン)(pMeT)、特にそのpドープト変種であった。ポリ(3-メチル-チオフェン)は、不活性雰囲気中のドーパントとして塩化第二鉄を使用して酸化化学重合技術によって合成され得る。しかしながら、電極として様々な化学活性化MCMB粒子を使用してテトラアルキルアンモニウム塩の存在下で異なったアニオンが電気化学的にドープされるPmeTを調製することを我々は選択する。
【0089】
3次元リガメントおよび3次元リガメント-pMeTレドックス対から形成される電極の比静電容量は、1A/gの電流密度で測定されるとき、それぞれ、186F/g、および357F/gであった。それらの分離されたグラフェンシート対応物は、それぞれ、146F/gおよび279F/gの比静電容量を示す。これらのデータは、今発明された化学活性化MCMB粒子が驚くべきことに電荷の蓄積において、それらの分離されたグラフェンシート対応物よりも有効であることを明らかに示している。同様な方法で他のレドックス対相手材(例えば遷移金属酸化物、MnO2およびその他の導電性ポリマー)を多孔性3次元グラフェン構造に混入して、疑似キャパシタ電極を製造することができる。