(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】3-ヒドロキシイソ吉草酸アミノ酸塩の結晶及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 59/01 20060101AFI20220921BHJP
C07C 279/14 20060101ALI20220921BHJP
C07C 229/26 20060101ALI20220921BHJP
C07C 51/43 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
C07C59/01 CSP
C07C279/14
C07C229/26
C07C51/43
(21)【出願番号】P 2018524179
(86)(22)【出願日】2017-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2017023174
(87)【国際公開番号】W WO2017222043
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2016125280
(32)【優先日】2016-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】308032666
【氏名又は名称】協和発酵バイオ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000149435
【氏名又は名称】株式会社大塚製薬工場
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横井 友哉
(72)【発明者】
【氏名】長野 宏
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆雪
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-028006(JP,A)
【文献】特開2002-053583(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0176449(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第1434025(CN,A)
【文献】特開昭58-201746(JP,A)
【文献】特開昭57-128653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 59/00
C07C 279/00
C07C 229/00
C07C 51/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3-ヒドロキシイソ吉草酸(以下、HMBという)のアルギニン塩の結晶。
【請求項2】
HMBのリジン塩の結晶。
【請求項3】
HMBのオルニチン塩の結晶。
【請求項4】
粉末X線回折において、回折角(2θ)が、7.5±0.2°、14.5±0.2°、15.1±0.2°、19.2±0.2°および20.2±0.2°にピークを有する、請求項1に記載の結晶。
【請求項5】
粉末X線回折において、回折角(2θ)が、さらに、11.6±0.2°、12.7±0.2°、17.9±0.2°、21.5±0.2°および23.3±0.2°にピークを有する、請求項4に記載の結晶。
【請求項6】
粉末X線回折において、回折角(2θ)が、さらに、19.6±0.2°、21.9±0.2°、25.2±0.2°、25.5±0.2°および33.6±0.2°にピークを有する、請求項5に記載の結晶。
【請求項7】
粉末X線回折において、回折角(2θ)が、8.5±0.2°、17.0±0.2°、18.1±0.2°、18.5±0.2°および19.5±0.2°にピークを有する、請求項2に記載の結晶。
【請求項8】
粉末X線回折において、回折角(2θ)が、さらに、22.2±0.2°、25.5±0.2°、25.8±0.2°、26.6±0.2°および34.4±0.2°にピークを有する、請求項7に記載の結晶。
【請求項9】
粉末X線回折において、回折角(2θ)が、さらに、4.8±0.2°、20.4±0.2°、31.0±0.2°、33.8±0.2°および36.5±0.2°にピークを有する、請求項8に記載の結晶。
【請求項10】
粉末X線回折において、回折角(2θ)が、5.1±0.2°、14.0±0.2°、15.3±0.2°、20.4±0.2°および21.9±0.2°にピークを有する、請求項3に記載の結晶。
【請求項11】
粉末X線回折において、回折角(2θ)が、さらに、16.4±0.2°、16.8±0.2°、19.4±0.2°、21.4±0.2°および25.5±0.2°にピークを有する、請求項10に記載の結晶。
【請求項12】
粉末X線回折において、回折角(2θ)が、さらに、10.9±0.2°にピークを有する、請求項11に記載の結晶。
【請求項13】
アルコール類を含む溶媒にHMB
塩基性アミノ酸塩のアモルファスを溶解させる工程、該溶媒を静置または撹拌することにより、HMB
塩基性アミノ酸塩の結晶を析出させる工程、および該溶媒からHMB
塩基性アミノ酸塩の結晶を採取する工程、を含むHMB
塩基性アミノ酸塩の結晶の製造方法
であって、
HMB
塩基性アミノ酸塩が、HMBアルギニン塩、HMBリジン塩、またはHMBオルニチン塩である、HMB
塩基性アミノ酸塩の結晶の製造方法。
【請求項14】
pHが2.5~11.0であるアミノ酸含有化合物を含むHMBの水溶液を濃縮することにより、HMB
塩基性アミノ酸塩の結晶を析出させる工程、および該水溶液からHMB
塩基性アミノ酸塩の結晶を採取する工程、を含むHMB
塩基性アミノ酸塩の結晶の製造方法
であって、
HMB
塩基性アミノ酸塩が、HMBアルギニン塩、HMBリジン塩、またはHMBオルニチン塩である、HMB
塩基性アミノ酸塩の結晶の製造方法。
【請求項15】
HMB
塩基性アミノ酸塩の結晶を析出させる工程において、さらに、アルコール類、ニトリル類およびケトン類からなる群より選ばれる少なくとも1の溶媒を添加または滴下する工程を含む、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
アルコール類が、C1~C6のアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1のアルコール類である、請求項13または15に記載の製造方法。
【請求項17】
ニトリル類が、アセトニトリルである請求項15または16に記載の製造方法。
【請求項18】
ケトン類が、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびジエチルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1のケトン類である、請求項15~17のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項19】
粉末X線回折において、回折角(2θ)が、4.9±0.2°、5.2±0.2°、5.5±0.2°、10.9±0.2°および15.5±0.2°にピークを有する、請求項3に記載の結晶。
【請求項20】
粉末X線回折において、回折角(2θ)が、さらに、15.9±0.2°、16.4±0.2°、17.4±0.2°、19.2±0.2°および20.4±0.2°にピークを有する、請求項
19に記載の結晶。
【請求項21】
粉末X線回折において、回折角(2θ)が、さらに、20.8±0.2°、21.3±0.2°、21.8±0.2°、22.2±0.2°および22.8±0.2°にピークを有する、請求項
20に記載の結晶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、健康食品、医薬品、化粧品等の製品、原料または中間体等として有用である3-ヒドロキシイソ吉草酸(β-hydroxy-β-methylbutyrate)(以下、HMBという)のアミノ酸塩の結晶、および該結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HMBは、例えば、健康食品、医薬品、化粧品等の製品、原料または中間体等として有用である。HMBは、体内でのロイシン代謝により得られる有機酸であり、筋肉の増強効果や分解抑制に効果があるとされている(非特許文献1および2)。
【0003】
商業上HMBは、遊離カルボン酸体またはカルシウム塩のいずれかの形態でのみ市場に流通している。特にサプリメント・健康食品用途としては、カルシウム塩がハンドリングに優れた粉末であることからカルシウム塩が使用されることがほとんどである(非特許文献3)。特許文献4には、アルギニン塩の結晶が取得されたとの記載はあるが、取得された結晶の性質に関する記載はない。
【0004】
カルシウムは体内で骨の形成、神経の働き、筋肉運動等を担う重要なミネラルである。しかしながら最近、カルシウムの過剰摂取によって、心臓血管疾患や虚血性心疾患による死亡リスクが増加することが報告されている(非特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/166273号公報
【文献】米国特許第6,248,922号明細書
【文献】国際公開第2013/025775号公報
【文献】米国特許出願公開第2004/0176449号明細書
【非特許文献】
【0006】
【文献】Journal of Applied Physiology, Vol. 81, p2095, 1996
【文献】Nutrition & Metabolism, Vol. 5, p1, 2008
【文献】Journal of the International Society of Sports Nutrition Vol. 10, p6, 2013
【文献】The BMJ., Vol. 346, p228, 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
調剤分野では、カルシウム塩由来のカルシウムがリン酸などの他の成分と結合して不溶性塩を作りやすく、高濃度の溶液を調製できないなどの課題がある。特許文献1-3、特許文献1、および特許文献4には、それぞれ、HMBカルシウム塩(特許文献1-3)、HMBマグネシウム塩(特許文献1)、およびHMBアルギニン塩(特許文献4)の製造方法が記載されているが、いずれの方法においても、結晶を取得することはできない。すなわち、いずれの塩形態についても結晶は知られておらず、産業上有用なHMB塩の結晶および製造方法が求められている。
【0008】
本発明の課題は、溶解性に優れ、取り扱いしやすいHMBアミノ酸塩の結晶を提供すること、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の(1)~(25)に関する。
(1)3-ヒドロキシイソ吉草酸(以下、HMBという)のアミノ酸塩の結晶。
(2)HMBアミノ酸塩が、HMB塩基性アミノ酸塩である、上記(1)に記載の結晶。
(3)HMB塩基性アミノ酸塩が、HMBアルギニン塩である、上記(2)に記載の結晶。
(4)HMB塩基性アミノ酸塩が、HMBリジン塩である、上記(2)に記載の結晶。
(5)HMB塩基性アミノ酸塩が、HMBオルニチン塩である、上記(2)に記載の結晶。
(6)粉末X線回折において、回折角(2θ)が、7.5±0.2°、14.5±0.2°、15.1±0.2°、19.2±0.2°および20.2±0.2°にピークを有する、上記(3)に記載の結晶。
(7)粉末X線回折において、回折角(2θ)が、さらに、11.6±0.2°、12.7±0.2°、17.9±0.2°、21.5±0.2°および23.3±0.2°にピークを有する、上記(6)に記載の結晶。
(8)粉末X線回折において、回折角(2θ)が、さらに、19.6±0.2°、21.9±0.2°、25.2±0.2°、25.5±0.2°および33.6±0.2°にピークを有する、上記(7)に記載の結晶。
(9)粉末X線回折において、回折角(2θ)が、8.5±0.2°、17.0±0.2°、18.1±0.2°、18.5±0.2°および19.5±0.2°にピークを有する、上記(4)に記載の結晶。
(10)粉末X線回折において、回折角(2θ)が、さらに、22.2±0.2°、25.5±0.2°、25.8±0.2°、26.6±0.2°および34.4±0.2°にピークを有する、上記(9)に記載の結晶。
(11)粉末X線回折において、回折角(2θ)が、さらに、4.8±0.2°、20.4±0.2°、31.0±0.2°、33.8±0.2°および36.5±0.2°にピークを有する、上記(10)に記載の結晶。
(12)粉末X線回折において、回折角(2θ)が、5.1±0.2°、14.0±0.2°、15.3±0.2°、20.4±0.2°および21.9±0.2°にピークを有する、上記(5)に記載の結晶。
(13)粉末X線回折において、回折角(2θ)が、さらに、16.4±0.2°、16.8±0.2°、19.4±0.2°、21.4±0.2°および25.5±0.2°にピークを有する、上記(12)に記載の結晶。
(14)粉末X線回折において、回折角(2θ)が、さらに、10.9±0.2°にピークを有する、上記(13)に記載の結晶。
(15)アルコール類を含む溶媒にHMBアミノ酸塩のアモルファスを溶解させる工程、該溶媒を静置または撹拌することにより、HMBアミノ酸塩の結晶を析出させる工程、および該溶媒からHMBアミノ酸塩の結晶を採取する工程、を含むHMBアミノ酸塩の結晶の製造方法。
(16)pHが2.5~11.0であるアミノ酸含有化合物を含むHMBの水溶液を濃縮することにより、HMBアミノ酸塩の結晶を析出させる工程、および該水溶液からHMBアミノ酸塩の結晶を採取する工程、を含むHMBアミノ酸塩の結晶の製造方法。
(17)HMBアミノ酸塩の結晶を析出させる工程において、さらに、アルコール類、ニトリル類およびケトン類からなる群より選ばれる少なくとも1の溶媒を添加または滴下する工程を含む、上記(16)に記載の製造方法。
(18)アルコール類が、C1~C6のアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1のアルコール類である、上記(15)または(17)に記載の製造方法。
(19)ニトリル類が、アセトニトリルである上記(17)または(18)に記載の製造方法。
(20)ケトン類が、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびジエチルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1のケトン類である、上記(17)~(19)のいずれか1つに記載の製造方法。
(21)HMBアミノ酸塩が、HMB塩基性アミノ酸塩である、上記(15)~(20)のいずれか1つに記載の製造方法。
(22)HMB塩基性アミノ酸塩が、HMBアルギニン塩、HMBリジン塩、またはHMBオルニチン塩である、上記(21)に記載の製造方法。
(23)粉末X線回折において、回折角(2θ)が、4.9±0.2°、5.2±0.2°、5.5±0.2°、10.9±0.2°および15.5±0.2°にピークを有する、上記(5)に記載の結晶。
(24)粉末X線回折において、回折角(2θ)が、さらに、15.9±0.2°、16.4±0.2°、17.4±0.2°、19.2±0.2°および20.4±0.2°にピークを有する、上記(23)に記載の結晶。
(25)粉末X線回折において、回折角(2θ)が、さらに、20.8±0.2°、21.3±0.2°、21.8±0.2°、22.2±0.2°および22.8±0.2°にピークを有する、上記(24)に記載の結晶。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、取り扱いしやすいHMBアミノ酸塩の結晶およびその製造方法が提供される。本発明のHMBアミノ酸塩の結晶は、HMBカルシウム塩と比較して高い溶解度を示し、不溶性の塩を作らず、電解質異常を誘発しないなど、優位性のある塩結晶である。また、本発明のHMBアミノ酸塩の結晶は、HMBカルシウム塩と比較して溶解性が高く、風味を改善する効果において優れている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施例2で得られた、HMBアルギニン塩・無水物の種結晶の粉末X線回折の結果を表わす。
【
図2】
図2は、実施例3で得られた、HMBアルギニン塩・無水物の結晶の粉末X線回折の結果を表わす。
【
図3】
図3は、実施例3で得られた、HMBアルギニン塩・無水物の結晶の赤外分光(IR)分析の結果を表わす。
【
図4】
図4は、実施例4で得られた、HMBリジン塩・無水物の結晶の粉末X線回折の結果を表わす。
【
図5】
図5は、実施例4で得られた、HMBリジン塩・無水物の結晶の赤外分光(IR)分析の結果を表わす。
【
図6】
図6は、実施例6で得られた、HMBオルニチン塩・無水物の結晶の粉末X線回折の結果を表わす。
【
図7】
図7は、実施例6で得られた、HMBオルニチン塩・無水物の結晶の赤外分光(IR)分析の結果を表わす。
【
図8】
図8は、実施例7で得られた、HMBオルニチン塩・無水物の結晶の粉末X線回折の結果を表わす。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.本発明の結晶
本発明の結晶は、HMBアミノ酸塩の結晶(以下、「本発明の結晶」ともいう。)である。HMBアミノ酸塩の結晶としては、好ましくはHMBの塩基性アミノ酸塩の結晶を、より好ましくは、HMBアルギニン塩の結晶、HMBリジン塩の結晶、HMBヒスチジン塩の結晶およびHMBオルニチン塩の結晶を、最も好ましくは、HMBアルギニン塩の結晶、HMBリジン塩の結晶およびHMBオルニチン塩の結晶を挙げることができる。
【0013】
本発明の結晶がHMBの結晶であることは、後述の分析例に記載のHPLCを用いた方法により確認することができる。本発明の結晶中のアミノ酸としては、L体、D体のいずれでもよいが、L体が好ましい。
【0014】
本発明の結晶がアミノ酸塩の結晶であることは、当該結晶中に含まれるアミノ酸の含量を、後述の分析例に記載のHPLCを用いて測定することにより確認することができる。
【0015】
例えば、本発明の結晶が1アルギニン塩の結晶であることは、該結晶中のアルギニン含量が、通常59.6±5.0重量%、好ましくは59.6±4.0重量%、最も好ましくは59.6±3.0重量%であることにより確認することができる。
【0016】
また、例えば、本発明の結晶が1リジン塩の結晶であることは、該結晶中のリジン含量が、通常55.3±5.0重量%、好ましくは55.3±4.0重量%、最も好ましくは55.3±3.0重量%であることにより確認することができる。
【0017】
また、例えば、本発明の結晶が1オルニチン塩の結晶であることは、該結晶中のオルニチン含量が、通常52.8±5.0重量%、好ましくは52.8±4.0重量%、最も好ましくは52.8±3.0重量%であることにより確認することができる。
【0018】
本発明の結晶が無水物の結晶であることは、後述の分析例に記載のカールフィッシャー法を用いて測定した水分含量が、通常2.5重量%以下、好ましくは2.3重量%以下、最も好ましくは2.0重量%以下であることにより確認することができる。
【0019】
HMBアルギニン塩・無水物の結晶としては、X線源としてCuKαを用いた粉末X線回折パターンが、
図1および2、並びに表1および2に示す値で規定される、HMBアルギニン塩・無水物の結晶を挙げることができる。なお、
図1および表1、並びに
図2および表2はそれぞれのHMBアルギニン塩・無水物の結晶の回折結果に対応する。
【0020】
前記粉末X線回折パターンが
図2および表2に示す値で規定されるHMBアルギニン塩・無水物の結晶としては、後述の分析例に記載の赤外(IR)分析に供した場合、
図3に示す赤外吸収スペクトルを示すHMBアルギニン塩・無水物の結晶を挙げることができる。
【0021】
HMBアルギニン塩・無水物の結晶としては、具体的には、X線源としてCuKαを用いた粉末X線回折において、下記(i)に記載の回折角(2θ)にピークを有するHMBアルギニン塩・無水物の結晶が好ましく、下記(i)に記載の回折角(2θ)に加えてさらに下記(ii)に記載の回折角(2θ)にピークを有するHMBアルギニン塩・無水物の結晶がより好ましく、下記(i)および(ii)に記載の回折角(2θ)に加えてさらに下記(iii)に記載の回折角(2θ)にピークを有するHMBアルギニン塩・無水物の結晶がさらに好ましい。
(i)7.5±0.2°、好ましくは7.5±0.1°、14.5±0.2°、好ましくは14.5±0.1°、15.1±0.2°、好ましくは15.1±0.1°、19.2±0.2°、好ましくは19.2±0.1°、および20.2±0.2°、好ましくは20.2±0.1°
(ii)11.6±0.2°、好ましくは11.6±0.1°、12.7±0.2°、好ましくは12.7±0.1°、17.9±0.2°、好ましくは17.9±0.1°、21.5±0.2°、好ましくは21.5±0.1°、および23.3±0.2°、好ましくは23.3±0.1°
(iii)19.6±0.2°、好ましくは19.6±0.1°、21.9±0.2°、好ましくは21.9±0.1°、25.2±0.2°、好ましくは25.2±0.1°、25.5±0.2°、好ましくは25.5±0.1°、および33.6±0.2°、好ましくは33.6±0.1°
【0022】
HMBリジン塩・無水物の結晶としては、X線源としてCuKαを用いた粉末X線回折パターンが、
図4および表4に示す値で規定される、HMBリジン塩・無水物の結晶を挙げることができる。
【0023】
前記粉末X線回折パターンが
図4および表4に示す値で規定されるHMBリジン塩・無水物の結晶としては、後述の分析例に記載の赤外分光(IR)分析に供した場合、
図5に示す赤外吸収スペクトルを示すHMBリジン塩・無水物の結晶を挙げることができる。
【0024】
HMBリジン塩・無水物の結晶としては、具体的には、X線源としてCuKαを用いた粉末X線回折において、下記(i)に記載の回折角(2θ)にピークを有するHMBリジン塩・無水物の結晶が好ましく、下記(i)に記載の回折角(2θ)に加えてさらに下記(ii)に記載の回折角(2θ)にピークを有するHMBリジン塩・無水物の結晶がより好ましく、下記(i)および(ii)に記載の回折角(2θ)に加えてさらに下記(iii)に記載の回折角(2θ)にピークを有するHMBリジン塩・無水物の結晶がさらに好ましい。
(i)8.5±0.2°、好ましくは8.5±0.1°、17.0±0.2°、好ましくは17.0±0.1°、18.1±0.2°、好ましくは18.1±0.1°、18.5±0.2°、好ましくは18.5±0.1°、および19.5±0.2°、好ましくは19.5±0.1°
(ii)22.2±0.2°、好ましくは22.2±0.1°、25.5±0.2°、好ましくは25.5±0.1°、25.8±0.2°、好ましくは25.8±0.1°、26.6±0.2°、好ましくは26.6±0.1°、および34.4±0.2°、好ましくは34.4±0.1°
(iii)4.8±0.2°、好ましくは4.8±0.1°、20.4±0.2°、好ましくは20.4±0.1°、31.0±0.2°、好ましくは31.0±0.1°、33.8±0.2°、好ましくは33.8±0.1°、および36.5±0.2°、好ましくは36.5±0.1°
【0025】
HMBオルニチン塩・無水物の結晶としては、X線源としてCuKαを用いた粉末X線回折パターンが、
図6および表6に示す値で規定されるHMBオルニチン塩・無水物の結晶、並びに
図8および表9に示す値で規定されるHMBオルニチン塩・無水物の結晶を挙げることができる。なお、
図6および表6、並びに
図8および表9はそれぞれのHMBオルニチン塩・無水物の結晶の回折結果に対応する。
【0026】
前記粉末X線回折パターンが
図6および表6に示す値で規定されるHMBオルニチン塩・無水物の結晶としては、後述の分析例に記載の赤外分光(IR)分析に供した場合、
図7に示す赤外吸収スペクトルを示すHMBオルニチン塩・無水物の結晶を挙げることができる。
【0027】
HMBオルニチン塩・無水物の結晶としては、具体的には、X線源としてCuKαを用いた粉末X線回折において、下記(i)に記載の回折角(2θ)にピークを有するHMBオルニチン塩・無水物の結晶が好ましく、下記(i)に記載の回折角(2θ)に加えてさらに下記(ii)に記載の回折角(2θ)にピークを有するHMBオルニチン塩・無水物の結晶がより好ましく、下記(i)および(ii)に記載の回折角(2θ)に加えてさらに下記(iii)に記載の回折角(2θ)にピークを有するHMBオルニチン塩・無水物の結晶がさらに好ましい。
(i)5.1±0.2°、好ましくは5.1±0.1°、14.0±0.2°、好ましくは14.0±0.1°、15.3±0.2°、好ましくは15.3±0.1°、20.4±0.2°、好ましくは20.4±0.1°、および21.9±0.2°、好ましくは21.9±0.1°
(ii)16.4±0.2°、好ましくは16.4±0.1°、16.8±0.2°、好ましくは16.8±0.1°、19.4±0.2°、好ましくは19.4±0.1°、21.4±0.2°、好ましくは21.4±0.1°、および25.5±0.2°、好ましくは25.5±0.1°
(iii)0.9±0.2°、好ましくは0.9±0.1°
【0028】
また、HMBオルニチン塩・無水物の結晶としては、具体的には、X線源としてCuKαを用いた粉末X線回折において、下記(i)に記載の回折角(2θ)にピークを有するHMBオルニチン塩・無水物の結晶が好ましく、下記(i)に記載の回折角(2θ)に加えてさらに下記(ii)に記載の回折角(2θ)にピークを有するHMBオルニチン塩・無水物の結晶がより好ましく、下記(i)および(ii)に記載の回折角(2θ)に加えてさらに下記(iii)に記載の回折角(2θ)にピークを有するHMBオルニチン塩・無水物の結晶がさらに好ましい。
(i)4.9±0.2°、好ましくは4.9±0.1°、5.2±0.2°、好ましくは5.2±0.1°、5.5±0.2°、好ましくは5.5±0.1°、10.9±0.2°好ましくは10.9±0.1°、および15.5±0.2°、好ましくは15.5±0.1°
(ii)15.9±0.2°、好ましくは15.9±0.1°、16.4±0.2°、好ましくは16.4±0.1°、17.4±0.2°、好ましくは17.4±0.1°、19.2±0.2°好ましくは19.2±0.1°、および20.4±0.2°、好ましくは20.4±0.1°
(iii)20.8±0.2°、好ましくは20.8±0.1°、21.3±0.2°、好ましくは21.3±0.1°、21.8±0.2°、好ましくは21.8±0.1°、22.2±0.2°好ましくは22.2±0.1°、および22.8±0.2°、好ましくは22.8±0.1°
【0029】
2.本発明の結晶の製造方法
本発明の結晶の製造方法は、以下の(1)または(2)に記載の製造方法(以下、「本発明の結晶の製造方法」ともいう。)である。
【0030】
(1)本発明の結晶の製造方法-1
本発明の結晶の製造方法としてはアルコール類を含む溶媒にHMBアミノ酸塩のアモルファスを溶解させる工程、該溶媒を静置または撹拌することにより、HMBアミノ酸塩の結晶を析出させる工程、および該溶媒からHMBアミノ酸塩の結晶を採取する工程、を含むHMBアミノ酸塩の結晶の製造方法を挙げることができる。
【0031】
アミノ酸としては、好ましくは塩基性アミノ酸を、より好ましくは、アルギニン、オルニチン、リジンおよびヒスチジンを、さらに好ましくは、アルギニン、オルニチンおよびリジンを、最も好ましくはアルギニンを挙げることができる。アミノ酸は、L体、D体のいずれも用いることができるが、L体が好ましい。
【0032】
アルコール類としては、好ましくはC1~C6のアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1のアルコール類を、より好ましくはC1~C3のアルコール類からなる群から選ばれる少なくとも1のアルコール類を、さらに好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノールおよびイソプロピルアルコールからなる群より選ばれる少なくとも1のアルコール類を、よりさらに好ましくはメタノールおよびエタノールからなる群より選ばれる少なくとも1のアルコール類を、最も好ましくはエタノールを挙げることができる。
【0033】
前記アルコール類は、1種以上を混合して用いることができる。また、上記のアルコール類を含む溶媒には水が含有されていてもよい。アルコール類を含む溶媒の含水量としては、通常40重量%以下、好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、最も好ましくは5重量%以下を挙げることができる。
【0034】
アルコール類を含む溶媒にHMBアミノ酸塩のアモルファスを溶解させる方法としては、HMBアミノ酸塩のアモルファスを該溶媒に懸濁させた後、加熱して溶解液を得る方法、または該溶媒を濾過して濾液を得る方法を挙げることができる。
【0035】
HMBアミノ酸塩のアモルファスを前記溶媒に懸濁させた後、加熱して溶解液を得る方法における、加熱温度としては、通常0~80℃、好ましくは20~70℃、最も好ましくは40~60℃を挙げることができる。加熱時間としては、通常10分~6時間、好ましくは20分~4時間、最も好ましくは30分~2時間を挙げることができる。
【0036】
HMBアミノ酸塩のアモルファスは、後述する実施例1に記載の方法によって取得することができる。HMBアミノ酸塩のアモルファスを溶解させて得られた前記溶媒を、静置または撹拌することにより、HMBアミノ酸塩の結晶を析出させることができる。
【0037】
アルコール類を含む溶媒に溶解させるHMBアミノ酸塩のアモルファスの濃度としては、好ましくは50g/L以上、より好ましくは100g/L以上、さらに好ましくは150g/L以上を挙げることができる。
【0038】
HMBアミノ酸塩のアモルファスを溶解させたアルコール類を含む溶媒に、種晶としてHMBアミノ酸塩の結晶を添加した後に、該溶媒を静置または撹拌することにより、HMBアミノ酸塩の結晶を析出させてもよい。該種晶を該溶媒に添加することにより、析出速度を速めることができる。該種晶の該溶媒中の濃度は通常0.05~15重量%、好ましくは0.5~10重量%、最も好ましくは2~7重量%となるように添加する。
HMBアミノ酸塩の結晶は、後述する実施例2、4、または5に記載の方法によって取得することができる。
【0039】
前記溶媒を静置または撹拌する温度としては、通常0~80℃、好ましくは5~50℃、最も好ましくは10~30℃を挙げることができる。静置または撹拌する時間としては、通常1~100時間、好ましくは3~48時間、最も好ましくは5~24時間を挙げることができる。
【0040】
前記溶媒からHMBアミノ酸塩の結晶を採取する方法としては、特に限定されないが、濾取、加圧濾過、吸引濾過または遠心分離等を挙げることができる。さらに母液の付着を低減し、結晶の品質を向上させるために、適宜、結晶を洗浄することができる。
【0041】
結晶の洗浄に用いる溶液に特に制限はないが、水、メタノール、エタノール、アセトン、n-プロパノールおよびイソプロピルアルコールから選ばれる1種類または複数種類を任意の割合で混合したものを用いることができる。
【0042】
このようにして得られた湿晶を乾燥させることにより、HMBアミノ酸塩の結晶を取得することができる。乾燥条件としては、HMBアミノ酸塩の結晶の形態を保持できる方法ならばいずれでもよく、減圧乾燥、真空乾燥、流動層乾燥または通風乾燥等を適用することができる。乾燥温度としては、付着水分や溶媒を除去できる範囲ならばいずれでもよいが、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下を挙げることができる。
【0043】
上記の晶析条件によって、高純度のHMBアミノ酸塩の結晶を取得することができる。当該結晶の純度としては、通常95%以上、好ましくは96%以上、より好ましくは97%以上、最も好ましくは97.5%以上を挙げることができる。
【0044】
上記の製造方法によって製造することができるHMBアミノ酸塩の結晶としては、例えば、X線源としてCuKαを用いた粉末X線回折パターンが、
図1および2、並びに表1および2に示す値で規定されるHMBアルギニン塩・無水物の結晶を挙げることができる。
【0045】
(2)本発明の結晶の製造方法-2
本発明の結晶の製造方法としては、アミノ酸含有化合物を含むpHが2.5~11.0であるHMBの水溶液を濃縮して、HMBアミノ酸塩の結晶を該水溶液に析出させる工程、並びに該水溶液からHMBアミノ酸塩の結晶を採取する工程、を含むHMBアミノ酸塩の結晶の製造方法を挙げることができる。
【0046】
HMBの水溶液に含有されるHMBは、発酵法、酵素法、天然物からの抽出法または化学合成法等のいずれの製造方法によって製造されたものであってもよい。
【0047】
HMBの水溶液に、結晶化の障害となる固形物が含まれる場合には、遠心分離、濾過またはセラミックフィルタ等を用いて固形物を除去することができる。また、HMBの水溶液に、結晶化の障害となる水溶性の不純物や塩が含まれる場合には、イオン交換樹脂等を充填したカラムに通塔する等により、水溶性の不純物または塩を除去することができる。
【0048】
また、HMBの水溶液に、結晶化の障害となる疎水性の不純物が含まれる場合には、合成吸着樹脂または活性炭等を充填したカラムに通塔する等により、疎水性の不純物を除去することができる。該水溶液は、HMBの濃度が通常500g/L以上、好ましくは600g/L以上、より好ましくは700g/L以上、最も好ましくは800g/L以上となるように調製することができる。
【0049】
アミノ酸含有化合物としては、好ましくは塩基性アミノ酸含有化合物を、より好ましくは、アルギニン含有化合物、リジン含有化合物、オルニチン含有化合物およびヒスチジン含有化合物を、最も好ましくは、アルギニン含有化合物、リジン含有化合物およびオルニチン含有化合物を挙げることができる。アミノ酸含有化合物中のアミノ酸は、L体、D体のいずれも用いることができるが、L体が好ましい。
【0050】
アルギニン含有化合物としては、例えば、フリー体のアルギニンおよびアルギニン塩酸塩を挙げることができる。アルギニン含有化合物として、フリー体のアルギニンを用いる場合、アルギニンを使用してHMBの水溶液のpHを調整することにより、pHが通常2.5~11.0、好ましくは2.8~10.5、最も好ましくは3.0~10.0であるアルギニン含有化合物を含むHMBの水溶液を取得することができる。
【0051】
リジン含有化合物としては、例えば、フリー体のリジンおよびリジン塩酸塩を挙げることができる。リジン含有化合物として、フリー体のリジンを用いる場合、リジンを使用してHMBの水溶液のpHを調整することにより、pHが通常2.5~11.0、好ましくは2.8~10.5、最も好ましくは3.0~10.0であるリジン含有化合物を含むHMBの水溶液を取得することができる。
【0052】
オルニチン含有化合物としては、例えば、フリー体のオルニチンおよびオルニチン塩酸塩を挙げることができる。オルニチン含有化合物として、フリー体のオルニチンを用いる場合、オルニチンを使用してHMBの水溶液のpHを調整することにより、pHが通常2.5~11.0、好ましくは2.8~10.5、最も好ましくは3.0~10.0であるオルニチン含有化合物を含むHMBの水溶液を取得することができる。
【0053】
HMBの水溶液を濃縮して、該水溶液中に、HMBアミノ酸塩の結晶を析出させる方法としては、該水溶液を減圧濃縮する方法等を挙げることができる。
【0054】
HMBの水溶液を減圧濃縮する方法における、該水溶液の温度としては、通常0~100℃、好ましくは10~90℃、最も好ましくは20~60℃を挙げることができる。該水溶液を減圧濃縮する方法における、減圧時間としては、通常1~120時間、好ましくは2~60時間、最も好ましくは3~50時間を挙げることができる。
【0055】
HMBアミノ酸塩の結晶を該水溶液に析出させる工程においては、HMBの水溶液中にHMBアミノ酸塩の結晶を種晶として添加してもよい。種晶の水溶液中の濃度は、通常0.05~15重量%、好ましくは0.5~10重量%、最も好ましくは2~7重量%となるように添加する。HMBアミノ酸塩の結晶は、具体的には例えば、後述する実施例2、4または5に記載の方法によって取得することができる。
【0056】
HMBアミノ酸塩の結晶を該水溶液に析出させる工程においては、HMBの水溶液中にアルコール類、ニトリル類およびケトン類からなる群より選ばれる少なくとも1の溶媒を添加または滴下することにより、HMBアミノ酸塩の結晶を析出させてもよい。アルコール類、ニトリル類およびケトン類は1種類を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
さらに、前記溶媒を添加または滴下する際、HMBアミノ酸塩の結晶が析出する前に、前記種晶を添加してもよい。前記種晶を添加する時間としては該溶媒の滴下または添加を開始してから、通常0~5時間以内、好ましくは0~4時間以内、最も好ましくは0~3時間以内を挙げることができる。また、HMBの水溶液中に該溶媒を添加または滴下する前に、前記種晶を添加してもよい。
【0058】
アルコール類としては、上記2.(1)に記載と同じ例を挙げることができる。ニトリル類としては、好ましくはアセトニトリルを挙げることができる。ケトン類としては、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびジエチルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1のケトン類を、より好ましくは、アセトンおよびメチルエチルケトンからなる群より選ばれる少なくとも1のケトン類を、最も好ましくはアセトンを挙げることができる。
【0059】
HMBの水溶液に前記溶媒を添加または滴下するときの該水溶液の温度としては、HMBが分解しない温度であればいずれの温度でもよいが、溶解度を下げてHMBアミノ酸塩・無水物の結晶の結晶化率を向上させるために、通常80℃以下、好ましくは70℃以下、より好ましくは60℃以下、最も好ましくは50℃以下を挙げることができる。温度の下限値としては、通常0℃以上、好ましくは10℃以上を挙げることができる。
【0060】
HMBの水溶液に前記溶媒を添加または滴下する量としては、該水溶液の通常0.5~30倍量、好ましくは0.5~25倍量、最も好ましくは0.5~10倍量を挙げることができる。
【0061】
HMBの水溶液に前記溶媒を添加または滴下する時間としては、通常30分~48時間、好ましくは2~30時間、最も好ましくは3~20時間を挙げることができる。
【0062】
上記のようにしてHMBアミノ酸塩の結晶を析出させた後、さらに析出した結晶を通常1~48時間、好ましくは1~24時間、最も好ましくは1~12時間熟成させることができる。熟成させるとは、HMBアミノ酸塩・無水物の結晶を析出させる工程を一旦停止して、結晶を成長させることをいう。結晶を熟成させた後は、HMBアミノ酸塩の結晶を析出させる工程を再開してもよい。
【0063】
HMBアミノ酸塩の結晶を採取する方法としては、特に限定されないが、例えば、濾取、加圧濾過、吸引濾過および遠心分離等を挙げることができる。さらに母液の付着を低減し、結晶の品質を向上させるために、適宜、結晶を洗浄することができる。
【0064】
結晶の洗浄に用いる溶液に特に制限はないが、水、メタノール、エタノール、アセトン、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびジエチルケトンから選ばれる1種類または複数種類を任意の割合で混合したものを用いることができる。
【0065】
このようにして得られた湿晶を乾燥させることにより、HMBアミノ酸塩の結晶を取得することができる。乾燥条件としては、減圧乾燥、真空乾燥、流動層乾燥または通風乾燥を適用することができる。乾燥温度としては、付着水分や溶媒を除去できる範囲ならばいずれでもよいが、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下を挙げることができる。
【0066】
上記の晶析条件によって、高純度のHMBアミノ酸塩の結晶を取得することができる。HMBアミノ酸塩の結晶の純度としては、通常93%以上、好ましくは94%以上、より好ましくは95%以上、最も好ましくは96%以上を挙げることができる。
【0067】
上記の製造方法によって製造することができるHMBアミノ酸塩の結晶としては、例えば、X線源としてCuKαを用いた粉末X線回折パターンが、
図4および表4に示す値で規定されるHMBリジン塩・無水物の結晶、
図6および表6に示す値で規定されるHMBオルニチン塩・無水物の結晶、並びに
図8および表9に示す値で規定されるHMBオルニチン塩・無水物の結晶を挙げることができる。
【0068】
[分析例]
(1)粉末X線回折
粉末X線回折装置(XRD)Ultima IV(リガク社製)を用い、測定は使用説明書に従って行った。
(2)濃度・純度測定
以下のHPLC分析条件を用いてHMB濃度および各種塩の純度を測定した。
ガードカラムShodex SUGAR SH-G φ6.0×50mm
カラム:SUGAR SH1011 φ8.0×300mm×2本直列
カラム温度:60℃
緩衝液:0.005mol/Lの硫酸水溶液
流速:0.6mL/min
検出器:UV検出器(波長210nm)
(3)カールフィッシャー法による結晶の水分含量の測定
自動水分測定装置AQV-2200(平沼産業社製)を用い、使用説明書に従って、結晶の水分含量を測定した。
(4)結晶のアミノ酸含量の測定
蛍光検出器を有するHPLCを用いてアミノ酸含量をフタルアルデヒド(OPA)法で測定した。
(5)融点の測定
Melting Point M-565(BUCHI社製)を用い、使用説明書に従って、以下の条件を用いて融点を測定した。
100℃~250℃、2℃/min
(6)赤外分光(IR)分析
FTIR-8400型(島津製作所製)を用い、使用説明書に従って行った。
【0069】
[参考例1]
HMBフリー体溶液の作製
フリー体換算で76.5gの試薬HMBカルシウム塩を850mLの水に溶解させた。該水溶液を、640mLの強カチオン性交換樹脂XUS-40232.01(H+)(ダウケミカル社製)に通液して脱Caを行い、HMBフリー体76.4gを含有する溶液1.25Lを取得した。
【0070】
[参考例2]
HMBアルギニン塩の結晶化検討
米国特許出願公開第2004/0176449号明細書の記載を参考にHMBアルギニン塩の結晶化を試みた。参考例1と同様の手法からHMBフリー体2.31gを含有する水溶液48mLを取得した。得られた水溶液を濃縮して12mLとした後、イソブタノール24mLを添加し、さらにアルギニンフリー体2.41gを添加して室温下で1時間撹拌したところ、白色透明の溶液が二相で得られた。水相のみを取得して水相を50℃、15mbar条件下で20時間濃縮したところ、白色の析出物が6.5g得られた。当該粉末を偏光顕微鏡で観察したところ、偏光を示さない無定形のアメ状固体であることが確認され、非結晶性アモルファスであることがわかった(融点:98~126℃、10℃/min)。以上より、米国特許出願公開第2004/0176449号明細書記載の方法ではHMBアルギニン塩の結晶は得られなかった。
【実施例】
【0071】
以下に実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0072】
[実施例1]
HMBアルギニン塩の非結晶アモルファスの取得
参考例1で得られたHMBフリー体水溶液200mLに、128g/LのL-アルギニン水溶液を160mL加え、pHを7.05に調整した。得られた水溶液を次の工程に供した。
【0073】
当該水溶液360mLを50℃、15mbar下で減圧濃縮し、溶媒を除去することによって31.1gの白色の粉末を得た。当該粉末を偏光顕微鏡で観察したところ、偏光を示さなかったことから、当該粉末は非結晶性アモルファスであるであることがわかった。
【0074】
[実施例2]
HMBアルギニン塩・無水物の種結晶の取得
参考例1で得られたHMBアルギニン塩の非結晶性アモルファス150mgに、100%-EtOHを1.5mL加え、50℃に加熱して完全に溶解させた。
【0075】
当該水溶液を25℃にて12時間撹拌することによって、結晶を自然起晶させた。当該結晶スラリーをさらに12時間熟成させた後に当該結晶を濾取し、25℃にて12時間通風乾燥させることにより、60mgの結晶を得た。
【0076】
当該結晶の粉末X線回折の結果を
図1および表1に示す。表中、「2θ」は回折角(2θ°)を、「相対強度」は、相対強度比(I/I
0)を示す。また、相対強度比は1以上を表示する。
【0077】
【0078】
[実施例3]
HMBアルギニン塩・無水物の結晶の取得
参考例1で得られたHMBアルギニン塩の非結晶性アモルファス27.8gに、100%-EtOHを160mL加え、50℃に加熱して完全に溶解させた。
【0079】
当該水溶液に、実施例2に従って得られるHMBアルギニン塩の種結晶を0.1g添加し、結晶を起晶させた。当該結晶スラリーを25℃にて12時間撹拌し、熟成させた後に当該結晶を濾取し、25℃にて通風乾燥させることにより23.6gの結晶を得た。
【0080】
得られた結晶のうち11.6gをさらに減圧(15mbar)下、40℃にて24時間乾燥させることにより、9.0gの結晶を得た。HPLCによる純度測定では97.8%(面積%)以上のHMBアルギニン塩・無水物の結晶を取得することができた。
【0081】
当該結晶の粉末X線回折の結果を
図2および表2に、赤外分光(IR)分析の結果を
図3に示す。表中、「2θ」は回折角(2θ°)を、「相対強度」は、相対強度比(I/I
0)を示す。また、相対強度比は5以上を表示する。
【0082】
【0083】
当該結晶のL-アルギニン含量をHPLCにより測定した結果、61.7重量%であり、1アルギニン塩の理論値(59.6重量%)とほぼ一致した。また、当該結晶に含まれる水分量をカールフィッシャー法により測定した結果、0.5重量%であった。
【0084】
以上から、当該結晶はHMBアルギニン塩・無水物の結晶であることがわかった。実施例3で取得した結晶の各種物性を表3に示す。
【0085】
【0086】
[実施例4]
HMBリジン塩・無水物の結晶の取得
参考例1で得られたHMBフリー体水溶液200mLに、200g/LのL-リジン水溶液を94mL加え、pHを6.03に調整した。得られた水溶液を次の工程に供した。当該水溶液を50℃、15mbar条件下で濃縮液重量が33.4gとなるまで濃縮したところ、結晶が自然起晶し、白色のスラリーが得られた。該スラリーにアセトニトリル20mLを加え、50℃にて1時間撹拌して熟成させた後に、当該結晶を濾取した。
【0087】
得られた結晶をアセトニトリル20mLで洗浄した後、減圧(15mbar)下、40℃にて24時間乾燥させることにより、5.0gの結晶を得た。HPLCによる純度測定では97.4%(面積%)以上のHMBリジン塩・無水物の結晶を取得することができた。
【0088】
当該結晶の粉末X線回折の結果を
図4および表4に、赤外分光(IR)分析の結果を
図5に示す。表中、「2θ」は回折角(2θ°)を、「相対強度」は、相対強度比(I/I
0)を示す。また、相対強度比は2以上を表示する。
【0089】
【0090】
当該結晶のL-リジン含量をHPLCにより測定した結果、54.8重量%であり、1リジン塩の理論値(55.3重量%)とほぼ一致した。また、当該結晶に含まれる水分量をカールフィッシャー法により測定した結果、0.1重量%であった。
【0091】
以上から、当該結晶はHMBリジン塩・無水物の結晶であることがわかった。実施例4で取得した結晶の各種物性を表5に示す。
【0092】
【0093】
[実施例5]
HMBオルニチン塩・無水物の種結晶の取得
参考例1で得られたHMBフリー体水溶液20mLに、510g/LのL-オルニチン水溶液を加え、pHを7.80に調整した。得られた水溶液を次の工程に供した。当該水溶液を50℃、15mbar条件下で濃縮したところ、白色の析出物が2.8g得られた。当該粉末を偏光顕微鏡で観察したところ、偏光を示したことから、当該粉末は結晶であることがわかった。
【0094】
[実施例6]
HMBオルニチン塩・無水物の結晶の取得-1
参考例1で得られたHMBフリー体水溶液20mLに、510g/LのL-オルニチン水溶液を2.1mL加え、pHを7.08に調整した。得られた水溶液を次の工程に供した。当該水溶液を50℃、15mbar条件下で濃縮液重量が3.9gとなるまで濃縮した後、実施例5に従って得られるHMBオルニチン塩・無水物の種結晶を0.1g添加した後、9mLの100%-エタノールを30分間かけて滴下添加し、結晶を析出させた。
【0095】
結晶スラリーを12時間熟成させた後に当該結晶を濾取し、100%エタノール水溶液で洗浄した後、25℃にて通風乾燥させ、さらに減圧(15mbar)下、室温で24時間乾燥させることにより、250mgの結晶を得た。
【0096】
HPLCによる純度測定では96.3%(面積%)以上のHMBオルニチン塩・無水物の結晶を取得することができた。当該結晶の粉末X線回折の結果を
図6および表6に、赤外分光(IR)分析の結果を
図7に示す。表中、「2θ」は回折角(2θ°)を、「相対強度」は、相対強度比(I/I
0)を示す。また、相対強度比は1以上を表示する。
【0097】
【0098】
当該結晶のL-オルニチン含量をHPLCにより測定した結果、53.6重量%であり、1オルニチン塩の理論値(52.8重量%)とほぼ一致した。また、当該結晶に含まれる水分量をカールフィッシャー法により測定した結果、2.0重量%であった。
【0099】
以上から、当該結晶はHMBオルニチン塩・無水物の結晶であることがわかった。実施例6で取得した結晶の各種物性を表7に示す。
【0100】
【0101】
[実施例7]
HMBオルニチン塩・無水物の結晶の取得-2
参考例1と同様の手法からHMBフリー体280.3gを含有する水溶液4.6Lを取得した。得られた水溶液を510g/Lのオルニチン水溶液を615mL加え、pHを6.2に調整した。当該水溶液を50℃、15mbar条件下で濃縮液重量が696gとなるまで濃縮した。当該溶液を室温下に維持しつつ、実施例5に従って得られるHMBオルニチン塩・無水物の種結晶1.8gを添加し、結晶を析出させた。結晶スラリーを室温下で24時間熟成させた後に当該結晶を遠心分離することにより結晶を濾取し、さらに当該結晶を30hPa、40℃の条件下にて24時間真空乾燥させることにより、180gの結晶を得た。
【0102】
当該結晶のオルニチン含量をHPLCにより測定した結果、51.6重量%であり、1オルニチン塩の理論値(52.8重量%)とほぼ一致した。また、当該結晶に含まれる水分量をカールフィッシャー法により測定した結果、0.5重量%であった。
【0103】
以上から、当該結晶はHMBオルニチン塩・無水物の結晶であることがわかった。実施例7で取得した結晶の各種物性を表8に示す。
【0104】
【0105】
当該結晶の粉末X線回折の結果を
図8および表9に示す。表中、「2θ」は回折角(2θ°)を、「相対強度」は、相対強度比(I/I
0)を示す。また、相対強度比は2以上を表示する。
【0106】
【0107】
実施例7で取得した結晶のチャート図である
図8と実施例6で取得した結晶のチャート図である
図6とを比較したところ、これらは一致しなかった。よって、当該結晶は、実施例6で取得した結晶と異なる結晶形であることが確認された。
【0108】
[実施例8]
溶解度の測定
実施例3で得られたHMBアルギニン塩・無水物の結晶、HMBカルシウム塩・水和物(東京化成工業社製)を室温下で水に溶け残るまでそれぞれ添加し、十分な時間、撹拌保持した後、結晶を含まない上澄み液を採取し、HPLCを用いてHMB濃度を測定した。その結果を表10に示す。
【0109】
【0110】
表10に示すように、取得したHMBアルギニン塩・無水物の結晶は、既存のHMBカルシウム塩と比較して水に対する溶解度が大幅に向上することがわかった。
【0111】
[実施例9]
HMBアルギニン塩の結晶、HMBリジン塩の結晶とリン酸緩衝液との混合
実施例3で得られたHMBアルギニン塩・無水物の結晶、実施例4で得られたHMBリジン塩・無水物の結晶、HMBカルシウム塩・水和物(東京化成工業社製)をそれぞれフリー体換算で100g/L溶液とし、0.2Mのリン酸緩衝液(pH6.80)と任意の混合比率で混合した。混合した後の液の光透過率(660nm)を測定し、不溶性塩の形成有無を評価した。その結果を表11に示す。
【0112】
【0113】
表11に示すように、リン酸緩衝液との混合において、既存のHMBカルシウム塩は不溶性の塩を生成するのに対して、取得したHMBアルギニン塩・無水物およびHMBリジン塩・無水物の結晶は、不溶性塩を形成しないことがわかった。
【0114】
[実施例10]
HMBアルギニン塩の結晶と糖アミノ酸電解質輸液製剤との混合
実施例3で得られたHMBアルギニン塩・無水物、HMBカルシウム塩・水和物(東京化成工業社製)をそれぞれフリー体換算で終濃度0、0.11、0.21および0.42重量/体積%となるよう、末梢静脈栄養用糖アミノ酸電解質輸液製剤[pH約6.7、製品名:アミノフリード輸液(株式会社大塚製薬工場)]に混合した直後及び室温放置24時間後の光透過率T%(660nm)を紫外可視分光光度計により測定し、不溶性塩の形成の有無を評価した。その結果を表12に示す。
【0115】
【0116】
表12に示すように、アミノフリード輸液との混合において、既存のHMBカルシウム塩では不溶性塩を形成するのに対して、取得したHMBアルギニン塩・無水物は、不溶性塩を形成しないことがわかった。
【0117】
[実施例11]
HMBアルギニン塩の結晶を含有する糖電解質輸液製剤投与時の体内電解質への影響
実施例3で得られたHMBアルギニン塩・無水物、HMBカルシウム塩・水和物(東京化成工業社製)をそれぞれフリー体換算で終濃度0および0.42重量/体積%となるよう、リン酸イオンを含まない、糖電解質輸液製剤[製品名:ソリタT3号輸液(エイワイファーマ株式会社)]に混合し、腸管擦過術により手術侵襲を加えたラットに対して標準的用量(240mL/kg/日)で3日間持続投与した。最終投与日に24時間の畜尿を行った尿を採取し、尿中電解質濃度を測定した。その結果を表13および表14に示す。
【0118】
【0119】
【0120】
表13および表14に示すように、ソリタT3号輸液との混合投与において、既存のHMBカルシウム塩は尿中カルシウムの上昇及び尿中リン排泄の減少を誘発するのに対して、取得したHMBアルギニン塩・無水物の結晶は、上記の電解質異常を誘発しないことが分かった。
【0121】
[実施例12]
官能評価試験-1
〔飲料(1)の調製〕
水200mLに実施例7で得られたHMBオルニチン塩・無水物6g、マルチトール(三菱商事フードテック社製)4g、りんご香料(高田香料社製)120μL、シュガーフレーバー(小川香料社製)120μL、アスパルテーム(味の素社製)200mgを加えて溶解させた。その溶液に、クエン酸(三菱フードスペシャリティーズ社製)を適量加えてpH3.70に調整後、100mLずつガラス瓶に分注し、アルミキャップを施した。該ガラス瓶を90℃にて5分間加熱した後、室温放置にて冷却し、飲料(1)を作製した。室温放置した直後に沈殿及び濁りの有無を目視で確認した結果、沈殿及び濁りは確認されなかった。
【0122】
〔比較飲料(1)の調製〕
HMBオルニチン塩・無水物の代わりにHMBカルシウム塩(HMB協和、協和発酵バイオ社製)を用いた以外は、飲料(1)と同様にして比較飲料(1)を調製した。室温放置した直後に沈殿及び濁りの有無を目視で確認した。その結果、大量の白色沈殿が確認された。
【0123】
上記飲料(1)および比較飲料(1)の風味のどちらが好ましいかを、8名のパネリストが二点識別法にて評価した。その結果、8名中8名が、飲料(1)の方が比較飲料(1)よりも明らかに風味が好ましいと評価した。この結果から、取得したHMBオルニチン塩は、HMBカルシウム塩と比較して、溶解性および風味を改善する効果において優れていることがわかった。
【0124】
[実施例13]
官能評価試験-2
〔飲料(2)の調製〕
水200mLに実施例3で得られたHMBアルギニン塩・無水物6g、マルチトール(三菱商事フードテック社製)4g、カシス香料(小川香料社製)120μL、糖蜜フレーバー(三井製糖社製)60mg、ステビア(物産フードサイエンス社製)200mgを加えて溶解させた。その溶液に、75%リン酸(大洋化学工業社製)を適量加えてpH3.70に調整後、100mLずつガラス瓶に分注し、アルミキャップを施した。該ガラス瓶を90℃にて5分間加熱した後、室温放置にて冷却し、直後に沈殿及び濁りの有無を目視で確認した。その結果、沈殿及び濁りは確認されなかった。
【0125】
〔比較飲料(2)の調製〕
HMBアルギニン塩・無水物の代わりにHMBカルシウム塩(HMB協和、協和発酵バイオ社製)を用いた以外は、飲料(2)と同様にして比較飲料(2)を調製した。室温放置した直後に沈殿及び濁りの有無を目視で確認した。その結果、加熱前と同様の白色沈殿が確認された。
【0126】
飲料(2)と比較飲料(2)の風味のどちらが好ましいかを、8名のパネリストが二点識別法にて評価した。その結果、8名中8名が、飲料(2)の方が比較飲料(2)よりも明らかに風味が好ましいと評価した。この結果から、取得したHMBアルギニン塩は、HMBカルシウム塩と比較して、溶解性および風味を改善する効果において優れていることがわかった。
【0127】
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2016年6月24日付けで出願された日本特許出願(特願2016-125280)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明により、例えば、健康食品、医薬品、化粧品等の製品、原料または中間体等として有用であるHMBアミノ酸塩・無水物の結晶、およびその製造方法が提供される。