(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】業務分析装置、業務分析方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20120101AFI20220921BHJP
【FI】
G06Q10/06
(21)【出願番号】P 2019016797
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2021-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】522226063
【氏名又は名称】株式会社ガバメイツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】特許業務法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木戸 杏朱
(72)【発明者】
【氏名】関根 昇
(72)【発明者】
【氏名】別府 幹雄
【審査官】新里 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-065711(JP,A)
【文献】特開2008-310566(JP,A)
【文献】特開2006-048145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザー操作により入力された、対象業務の現状の作業に関する所定の作業情報に基づいて現状の業務プロセスを生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された前記現状の業務プロセスと、予め準備された前記現状の業務プロセスに対応する業務プロセスモデルとの差異を抽出する差異抽出手段と、
前記差異抽出手段により抽出された前記差異を軽減するための複数の改善案を、前記差異とともに表示部に表示させる表示制御手段と、
を備え
、
前記対象業務の現状の作業に関する所定の作業情報は、複数の作業項目と、各作業項目の作業に関する作業パラメーターとを含み、
前記差異抽出手段は、予め記憶部に記憶された複数の異なる業務プロセスモデルから、前記所定の作業情報により指定された複数の作業項目及び作業パラメーターの一致度の条件を満たすものを、前記対応する業務プロセスモデルとして選択することを特徴とする業務分析装置。
【請求項2】
前記差異抽出手段は、前記現状の業務プロセスと前記対応する業務プロセスモデルを比較して、前記現状の業務プロセスにのみ含まれる作業項目、及び、前記現状の業務プロセスの作業パラメーターのうち前記対応する業務プロセスモデルの作業パラメーターの値との差が所定値以上のものを、前記差異として抽出することを特徴とする請求項
1に記載の業務分析装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記現状の業務プロセスと、前記対応する業務プロセスモデルとを、前記表示部に並べて表示させることを特徴とする請求項1
または2に記載の業務分析装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記表示部に表示された前記対応する業務プロセスモデルの作業項目がユーザーにより操作された場合、当該対応する業務プロセスモデルに付帯された付帯情報を前記表示部に表示させることを特徴とする請求項
3に記載の業務分析装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、予め記憶部に記憶された複数の課題を、前記表示部に選択可能に表示させ、
前記表示部に表示された前記複数の課題において、対象業務に対する課題がユーザー操作により指定された場合、
前記予め記憶部に記憶された複数の課題と複数の改善案を対応づけたデータ群から、前記対象業務の課題に対応する複数の改善案を取得する改善案取得手段を備え、
前記表示制御手段は、前記改善案取得手段により取得した
前記複数の改善案を、前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1から
4のいずれか一項に記載の業務分析装置。
【請求項6】
前記表示部に表示された前記複数の改善案のうちの少なくとも一つの改善案がユーザー操作により選択された場合、
前記現状の業務プロセスと、前記対応する業務プロセスモデルとの差に基づいて、予め準備された演算式を用いて、選択された前記改善案による効果を定量的に算出する算出手段を備え、
前記表示制御手段は、算出された効果を示すデータを、前記表示部に表示させることを特徴とする請求項1から
5のいずれか一項に記載の業務分析装置。
【請求項7】
業務分析装置により実行される業務分析方法であって、
ユーザー操作により入力された、対象業務の現状の作業に関する所定の作業情報に基づいて現状の業務プロセスを生成する生成工程と、
前記生成工程により生成された前記現状の業務プロセスと、予め準備された前記現状の業務プロセスに対応する業務プロセスモデルとの差異を抽出する差異抽出工程と、
前記差異抽出工程により抽出された前記差異を軽減するための複数の改善案を、前記差異とともに表示部に表示させる表示工程と、
を有
し、
前記対象業務の現状の作業に関する所定の作業情報は、複数の作業項目と、各作業項目の作業に関する作業パラメーターとを含み、
前記差異抽出工程において、予め記憶部に記憶された複数の異なる業務プロセスモデルから、前記所定の作業情報により指定された複数の作業項目及び作業パラメーターの一致度の条件を満たすものを、前記対応する業務プロセスモデルとして選択することを特徴とする業務分析方法。
【請求項8】
コンピューターを、
ユーザー操作により入力された、対象業務の現状の作業に関する所定の作業情報に基づいて現状の業務プロセスを生成する生成手段、
前記生成手段により生成された前記現状の業務プロセスと、予め準備された前記現状の業務プロセスに対応する業務プロセスモデルとの差異を抽出する差異抽出手段、
前記差異抽出手段により抽出された前記差異を軽減するための複数の改善案を、前記差異とともに表示部に表示させる表示制御手段、
として機能させ
、
前記対象業務の現状の作業に関する所定の作業情報は、複数の作業項目と、各作業項目の作業に関する作業パラメーターとを含み、
前記差異抽出手段は、予め記憶部に記憶された複数の異なる業務プロセスモデルから、前記所定の作業情報により指定された複数の作業項目及び作業パラメーターの一致度の条件を満たすものを、前記対応する業務プロセスモデルとして選択するためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、業務分析装置、業務分析方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、業務改善を目的として、業務を分析するための様々な手法が知られている。
例えば、現状として実行されている業務(As-Is)と、あるべき姿の業務(To-Be)との適合部分(フィット)と乖離部分(ギャップ)を調べるフィット&ギャップ分析などがある。
しかしながら、As-Isを把握するためのAs-Is分析はヒアリングが中心であり、分析のためには業務に関する作業の1つひとつを細かく把握する必要がある。また、フィット&ギャップ分析においてもAs-IsとTo-Beの作業を1つひとつ比較する必要がある。
【0003】
このように、業務分析には、膨大な時間がかかる。また、業務に関係する膨大な情報から分析を行うためには高度な分析技術やノウハウが必要であり、これがない場合には精度のよい分析が難しい。また、分析により課題が抽出できた場合にも、求める効果に応じた改善案を自ら見出したり、複数の改善案を比較して最適なものを選定しなければならず、この点でも時間がかかる。
さらに、業務は市場動向や法令に対応させる必要があり、定期的にTo-Beを更新する必要があるが、上述のような理由から、継続的にアセスメントを行うことが難しい。
【0004】
そこで、業務分析をコンサルタントに委託する場合がある。
例えば、特許文献1には、業務分析と課題抽出をコンサルタントが行い、業務改善の後、アソシエイトが情報収集、アナリストが分析するサイクルを継続して繰り返すシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の技術でも、業務の部分的な改善がなされるにとどまっており、業務全体で大きな効果を得られるものではなかった。これは、個々の業務にはさらに細分化された作業を成立させるソリューションや機器、仕組みが存在することから、業務全体として大きく変化することが難しいためと考えられる。また、コンサルタントに委託する場合、コストがかかることとなる。
【0007】
本発明の課題は、時間やコストをなるべくかけずに、高度な分析スキルを有さない者であっても精度よく業務全体の分析を可能とさせ、容易かつ効率的に業務改善を図らせることを可能とする業務分析装置、業務分析方法及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、業務分析装置において、
ユーザー操作により入力された、対象業務の現状の作業に関する所定の作業情報に基づいて現状の業務プロセスを生成する生成手段と、
前記生成手段により生成された前記現状の業務プロセスと、予め準備された前記現状の業務プロセスに対応する業務プロセスモデルとの差異を抽出する差異抽出手段と、
前記差異抽出手段により抽出された前記差異を軽減するための複数の改善案を、前記差異とともに表示部に表示させる表示制御手段と、
を備え、
前記対象業務の現状の作業に関する所定の作業情報は、複数の作業項目と、各作業項目の作業に関する作業パラメーターとを含み、
前記差異抽出手段は、予め記憶部に記憶された複数の異なる業務プロセスモデルから、前記所定の作業情報により指定された複数の作業項目及び作業パラメーターの一致度の条件を満たすものを、前記対応する業務プロセスモデルとして選択することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、業務分析装置により実行される業務分析方法であって、
ユーザー操作により入力された、対象業務の現状の作業に関する所定の作業情報に基づいて現状の業務プロセスを生成する生成工程と、
前記生成工程により生成された前記現状の業務プロセスと、予め準備された前記現状の業務プロセスに対応する業務プロセスモデルとの差異を抽出する差異抽出工程と、
前記差異抽出工程により抽出された前記差異を軽減するための複数の改善案を、前記差異とともに表示部に表示させる表示工程と、
を有し、
前記対象業務の現状の作業に関する所定の作業情報は、複数の作業項目と、各作業項目の作業に関する作業パラメーターとを含み、
前記差異抽出工程において、予め記憶部に記憶された複数の異なる業務プロセスモデルから、前記所定の作業情報により指定された複数の作業項目及び作業パラメーターの一致度の条件を満たすものを、前記対応する業務プロセスモデルとして選択することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、
コンピューターを、
ユーザー操作により入力された、対象業務の現状の作業に関する所定の作業情報に基づいて現状の業務プロセスを生成する生成手段、
前記生成手段により生成された前記現状の業務プロセスと、予め準備された前記現状の業務プロセスに対応する業務プロセスモデルとの差異を抽出する差異抽出手段、
前記差異抽出手段により抽出された前記差異を軽減するための複数の改善案を、前記差異とともに表示部に表示させる表示制御手段、
として機能させ、
前記対象業務の現状の作業に関する所定の作業情報は、複数の作業項目と、各作業項目の作業に関する作業パラメーターとを含み、
前記差異抽出手段は、予め記憶部に記憶された複数の異なる業務プロセスモデルから、前記所定の作業情報により指定された複数の作業項目及び作業パラメーターの一致度の条件を満たすものを、前記対応する業務プロセスモデルとして選択するためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、時間やコストをなるべくかけずに、高度な分析スキルを有さない者であっても精度よく業務全体の分析を可能とさせ、容易かつ効率的に業務改善を図らせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】業務分析装置の機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0014】
[業務分析装置の構成]
まず、本実施の形態にかかる業務分析装置1の構成について説明する。
図1は、本実施の形態の業務分析装置1の機能構成を示すブロック図である。
【0015】
業務分析装置1は、会社組織等の団体の業務改善を目的とした業務分析作業を行う装置である。
業務分析装置1としては、例えば、当該業務分析装置1を導入した団体の社員が使用する、デスクトップPC(Personal Computer)やノートPC等の端末装置が用いられる。
【0016】
図1に示すように、業務分析装置1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)11と、RAM(Random Access Memory)12と、記憶部13と、操作部14と、表示部15と、通信部16とを備えている。また、業務分析装置1の各部は、バス17を介して接続されている。
【0017】
CPU11は、業務分析装置1の各部を制御するプロセッサーである。CPU11は、記憶部13に記憶されているシステムプログラム及びアプリケーションプログラムのうち、指定されたプログラムを読み出してRAM12に展開し、当該プログラムに従って、後述の業務分析処理を含む各種処理を実行する。業務分析処理を実行することで、CPU11は、生成手段、差異抽出手段、表示制御手段、改善案取得手段、算出手段として機能する。
【0018】
RAM12は、例えば、揮発性のメモリーであり、CPU11により読み出された各種のプログラムやデータを一時的に格納するワークエリアを有する。
【0019】
記憶部13は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)といった、データの書き込み及び読み出しが可能な記憶装置を備え、各種のプログラムやデータを含むファイル等を記憶する。
また、記憶部13は、後述する業務分析処理を含む各種処理に必要なデータベース(DB)を有している。具体的には、記憶部13は、例えば、業務プロセスモデルDB131、モデル情報DB132、課題DB133、改善案DB134等を有している。
【0020】
図2(a)は、業務プロセスモデルDB131の一例を示す図である。
図2(a)に示すように、業務プロセスモデルDB131には、業務ごとに予め作成された、あるべき姿の業務フローを示す業務プロセスモデル(To-Beモデル)のデータ群が格納されている。
各業務プロセスモデルは、一乃至複数の作業項目を有する。複数の作業項目は、作業順に配置されている。例えば、
図2(a)の「モデル(A)」は、「(A1」、「(A2)」、「(A3)」、「(A4)」の順番の、4つの作業項目を有する。
【0021】
図2(b)は、モデル情報DB132の一例を示す図である。
図2(b)に示すように、モデル情報DB132には、業務プロセスモデルDB131に格納された各業務プロセスモデルについてのモデル情報が格納される。モデル情報には、例えば、作業項目と、作業項目ごとの作業内容、作業時間、作業人数等が含む。また、モデル情報には、作業項目ごとに、作業の法令、規約、約款、スキル、作業手順書等を含む付帯情報を含むことができる。
【0022】
図3(a)は、課題DB133の一例を示す図である。
図3(a)に示すように、課題DB133には、予め業務上起こり得ると想定される複数の課題のデータ群が格納されている。
各課題には、その課題に対して有効と考えられる複数の改善案が予め紐づけられている。
また、ある課題に対して紐づけられた複数の改善案は、効果の異なる複数の改善案を組み合わせたものである。
【0023】
図3(b)は、改善案DB134の一例を示す図である。
図3(b)に示すように、改善案DB134には、改善案の詳細内容のデータ群が格納されている。
【0024】
なお、これらのデータベースは、通信部16を介して通信可能に接続された他のファイルサーバ等に記憶されていても良い。
【0025】
操作部14は、例えば、キーボード等のキー入力部と、マウス等のポインティングデバイスとを有している。また、操作部14は、キー入力及び位置入力を受け付け、その操作情報をCPU11に出力する。
【0026】
表示部15は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等から構成されている。また、表示部15には、CPU11から出力されて入力される表示信号の指示に従って、各種画面を表示する。
【0027】
通信部16は、例えば、ネットワークカード等により構成されている。また、通信部16は、通信ネットワークNに通信接続されて、通信ネットワークN上の機器(例えば、他のファイルサーバ、端末装置等)との通信を行う。
【0028】
[業務分析処理]
次に、業務分析装置1により行われる業務分析処理について説明する。
図4は、当該業務分析処理を示すフローチャートである。
【0029】
図4に示すように、業務分析処理は、現状の業務プロセスを生成する業務プロセス生成工程(ステップS1)、現状の業務プロセスに対応する業務プロセスモデルを特定する業務プロセスモデル特定工程(ステップS2)、現状の業務プロセスと特定された業務プロセスモデルの差異を抽出する差異抽出工程(ステップS3)、抽出された差異を軽減するための複数の改善案を取得する改善案取得工程(ステップS4)、抽出された差異及び取得された改善案を表示させる表示工程(ステップS5)、及び、少なくとも上記ステップS1から上記ステップS3までを繰り返す繰り返し工程(ステップS6)、を有する。
【0030】
<業務プロセス生成工程>
まず、業務プロセス生成工程において、業務分析装置1の表示部15に、業務分析処理にあたって必要な情報を入力するための入力画面G1が表示される。ユーザーが入力画面G1に対する入力操作を行うと、CPU11はこれを受け付け、現状の業務プロセスが生成される。
【0031】
図5は、入力画面G1の一例である。
入力画面G1は、例えば、対象業務の現状の作業に関する作業情報を入力するための入力部g1と、課題を選択するための課題選択部g2と、分析の実行を指示するための実行ボタンg3と、を有する。
【0032】
入力部g1は、各作業情報を入力する入力欄を備える。
作業情報としては、例えば、「所属」、「業務概要、種別」、「作成文書名」、「稟議種別、稟議分類」、「関連法令、規約」、「作業項目」、「作業分類」、「作業人数」、「作業時間」、「業務実施頻度」、「業務実施期間」、「処理件数」、「標準化レベル」等が含まれる。このうち、例えば、「所属」、「業務概要、種別」、「作業項目」、「作業分類」、「作業人数」及び「作業時間」は、必須の作業情報である。
【0033】
図5では、入力部g1に、「所属」を入力する「所属入力欄」g11と、「業務概要、種別」を入力する「業務概要、種別入力欄」g12と、「作業項目」、「作業分類」、「作業人数」及び「作業時間」を入力する「As-Is入力欄」g13と、を備える例である。なお、「As-Is入力欄」g13に入力される作業情報のうち、「作業項目」以外は、当該「作業項目」の作業に関する作業パラメーターである。
【0034】
「所属」は、分析しようとする業務を管轄する第1階層~第4階層(或いは第3階層)までの組織名、部門名である。
図5は、「所属入力欄」g11に、「第1階層:コーポレート統括本部」、「第2階層:総務課」、「第3階層:人事課」、「第4階層:給与厚生係」が入力されている例である。
【0035】
「業務概要、種別」は、分析しようとする業務の概要及び種別であり、例えば、従業員の人事評価の受理・登録、従業員の経費精算に関する承認業務、許認可等の文言で表される。
図5は、「業務概要、種別入力欄」g12に、「従業員の経費精算に関する承認業務」が入力されている例である。
【0036】
「作業項目」は、分析しようとする業務について現状行っている作業項目である。
また、「作業分類」、「作業人数」、「作業時間」は、それぞれ、各作業項目の分類、担当者の人数、作業時間である。
図5は、「As-Is入力欄」g13に、「作業項目」として、「実績申請の受取り」、「申請書の出力」、「事前申請の照合」、「承認1」、「承認2」及び「経費管理シートへの登録」が入力されている例である。また、各作業項目に対して、「作業分類」、「作業人数」及び「作業時間」が適宜入力されている。
【0037】
また、図示は省略するが、各作業項目について、より詳細な作業内容を入力することもできる。例えば、「申請書の出力」について、詳細な作業内容として「紙申請書をコピー」と入力としたり、「事前申請の照合」について、詳細な作業内容として「事前申請管理ファイル閲覧」及び「申請書のファイリング」と入力としたりすることができる。
【0038】
課題選択部g2は、業務上起こり得る課題を選択可能に表示している。
具体的には、課題DB133に格納された課題が、一乃至複数選択可能に表示されている。
図5は、課題選択部g2において、「コピー、転記に時間がかかる」、「照会に時間がかかる」、「判断にスキル/知識が必要」の3つの課題のチェックボックスにチェックを入れることで、課題の選択がなされている例である。
【0039】
なお、課題選択部g2で選択される課題によって、業務分析処理に必要な作業情報が増える。このため、課題選択部g2で選択される課題に応じて、入力部g1の入力欄が増えることとなる。例えば、長期での業務改善を図る場合には、入力部g1に、「業務実施頻度」及び「業務実施期間」の入力欄も表示される。
【0040】
<業務プロセスモデル特定工程>
上記入力画面G1の実行ボタンg3が押下操作されることで、入力画面G1に対する入力操作の完了指示を受け付けると、CPU11は、入力画面G1に入力された作業情報を、業務プロセスモデルDB131に格納されている業務プロセスモデルと照合し、分析しようとする業務に対応する業務プロセスモデルを特定する。
具体的に、CPU11は、業務プロセスモデルDB131に格納されている業務プロセスモデルから、「As-Is入力欄」g13に入力された作業情報との一致度の条件を満たすものを、対応する業務プロセスモデルとして選択する。
「一致度の条件」とは、例えば、含まれる作業項目及び作業パラメーターの内容が所定の割合以上一致しているなどである。また、複数の業務プロセスモデルが一致度の条件を満たす場合、一致度が最高のものが選択される。
例えば、
図5では、「作業項目」として、実績申請の受取り、申請書の出力、事前申請の照合、承認1、承認2、経費管理シートへの登録が入力され、業務プロセスモデルDB131から「モデル(A)」が特定される。
【0041】
<差異抽出工程>
次いで、CPU11は、現状の業務プロセスと、特定された業務プロセスモデルとの適合部分(フィット)と乖離部分(ギャップ)を調べるフィット&ギャップ分析を実行する。
具体的に、CPU11は、現状の業務プロセスと対応する業務プロセスモデルを比較して、現状の業務プロセスにのみ含まれる作業項目、及び、現状の業務プロセスの作業パラメーターのうち対応する業務プロセスモデルの作業パラメーターの値との差が所定値以上のものを、差異(ギャップ)として抽出する。
従って、現状の業務プロセスにのみ含まれる作業項目や、現状の業務プロセスのほうが対応する業務プロセスモデルより作業時間の長い作業項目などが、差異として抽出される。
【0042】
<改善案取得工程>
次いで、CPU11は、課題DB133を参照し、課題選択部g2で選択された課題に対する複数の改善案を抽出する。
上述したが、ある課題に対して紐づけられた複数の改善案は、効果の異なる複数の改善案を組み合わせたものである。このため、抽出された複数の改善案は、それぞれ異なる効果を得ることを想定されたものである。
【0043】
<表示工程>
次いで、CPU11は、分析結果画面G2を表示部15に表示させる。
【0044】
図6は、分析結果画面G2の一例を示す図である。
図6に示すように、分析結果画面G2は、上記ステップS3の差異抽出工程の結果が表示された分析結果表示部g4と、上記ステップS4で取得された改善案が表示された改善案表示部g5と、
図5と同様の課題選択部g2と、を有する。
なお、分析結果画面G2に課題選択部g2を有するため、入力画面G1には課題選択部g2を備えないこととしても良い。
【0045】
分析結果表示部g4には、モデルフローg41と、現状フローg42とが並べて表示される。
【0046】
モデルフローg41は、上記ステップS2で特定された業務プロセスモデルに基づき作成される業務フロー図である。
図6では、モデルフローg41には、「モデル(A)」に含まれる作業項目と、各作業項目に設定された作業時間とが、示されている。
また、
図6に示すように、モデルフローg41の作業項目がユーザーにより操作された場合、CPU11の制御により、その作業項目の作業内容や付帯情報が表示部15に表示される。
【0047】
現状フローg42は、入力画面G1の入力内容に基づき作成される業務フロー図である。
現状フローg42では、モデルフローg41との乖離部分(差異)が、その他の部分(適合部分)と識別可能に強調表示されている。すなわち、現状フローg42においては、モデルフローg41に含まれていない工程や、モデルフローg41で設定された作業時間や作業人数に対する差が所定値以上の作業時間や作業人数の表示欄が、強調表示されている。
図6では、「申請書の出力」と「経費管理シートへの登録」の作業項目が、モデルフローg41に無いため強調表示されている。
また、「事前申請の照合」の作業項目は、業務プロセスモデルの「事前申請の照会」に対応するものの、その中の「申請書のファイリング」の作業がモデルフローg41に無いため、この作業が強調表示されている。
また、「事前申請の照合」と「申請内容の確認」の作業項目にかかる作業時間が、モデルフローg41で設定された作業時間と比較して差が所定値以上のため、その表示欄が強調表示されている。
【0048】
改善案表示部g5は、上記ステップS4で取得された改善案が選択可能に表示されている。即ち、入力画面G1の課題選択部g2にて選択された課題に対して考え得る複数の改善案が、表示される。
図6は、「OCR/RPAによる照会・突合自動」、「電子化、紙出力の廃止」、「Eラーニング、研修」が表示されている例である。
ここで、複数の改善案は、それぞれ異なる効果が想定されている。
このため、例えば、導入コストに制限がある場合には、ユーザーは「OCR/RPAによる照会・突合自動」は選択せず、「電子化、紙出力の廃止」を選択する。
また、「残業時間20%削減」など目標があって紙廃止だけでは達成できない場合には、ユーザーは「OCR/RPAによる照会・突合自動」を選択する。
【0049】
なお、課題選択部g2は、
図5の入力画面G1にて選択された課題にチェックが入った状態となっているが、分析結果画面G2においてチェックを入れなおす(課題を選択しなおす)こともできる。課題選択部g2のチェックを入れなおすことで、改善案表示部g5に表示される改善案も、選択された課題に合わせて変更される。
【0050】
そして、ユーザーが改善案表示部g5に表示された改善案のチェックボックスにチェックを入れて改善案を選択することで、その改善案により想定される改善効果を表示した改善効果画面G3を表示させることができる。
【0051】
具体的に、改善案表示部g5により改善案が選択された場合、CPU11は、予め準備された演算式を用いて、その改善案による効果を定量的に算出する。
効果が算出される項目としては、例えば、「削減工数」、「削減時間」、「削減費用」、「導入コスト」等が挙げられる。CPU11は、例えば、現状の業務プロセスと業務プロセスモデルとの時間差(削減時間)を算出する計算、削減時間を削減費用に換算する計算、導入コストを集計する計算を行う。
このとき、改善案を適用する作業項目を指定することもできる。
例えば、改善案「電子化、紙出力の廃止」を「申請書の出力」に適用すると判断して選択した場合、出力廃止なので工程自体が無くなり、モデルと同じプロセスになるため、作業時間30secが削減時間として算出される。また、申請書1件につき紙1枚と予め概算された紙コストも効果(削減費用)に追加される。
また、改善案「Eラーニング、研修」など、施策を入れてもすぐに効果が出ないものに関しては、実施期間ごとの効果予測で効果をシミュレーションする。例えば、2カ月に1度研修を行い、半年後には処理時間が3割削減される効果予測を予め用意しておく。
【0052】
図7は、改善効果画面G3の一例を示す図である。
改善効果画面G3は、算出された効果を示すデータ(「削減工数」、「削減時間」、「削減費用」、「導入コスト」等)が表示される効果表示欄g6を有する。
効果表示欄g6は、選択された改善案が複数ある場合にその合計値を示す合計欄g61と、内訳を示す内訳欄g62とを有する。
図7は、
図6の改善案表示部g5において「電子化、紙出力の廃止」及び「OCR/RPAによる照会・突合自動」が選択されていることにより表示される改善効果画面G3の例である。
ユーザーは、効果表示欄g6により、時間、費用、導入計画、といった効果の方向性を比較して、改善案の中から、実際に行う施策を選択することが可能となる。
【0053】
上記ステップS1~ステップS5を経て、ユーザーは、現状の業務に対して実行する改善案を決定し、その改善案を実施することとなる。
【0054】
<繰り返し工程>
その後、ユーザーの指示に従って、CPU11は、所定のタイミングごとに、上記ステップS1~ステップS5の業務分析処理を実行することで、長期的な進捗・効果を見ることができる。なお、長期的な進捗・効果を見るためには、少なくとも上記ステップS1~S3が行われ、分析結果画面G2には分析結果表示部g4のみ表示されればよい。すなわち、改善案の抽出(ステップS4)は、必ずしも実施されなくともよい。
【0055】
[実施の形態による効果]
以上のように、本実施の形態の業務分析装置1によれば、CPU11は、ユーザー操作により入力された、対象業務の現状の作業に関する所定の作業情報に基づいて現状の業務プロセスを生成し、生成した現状の業務プロセスと予め準備された現状の業務プロセスに対応する業務プロセスモデルとの差異を抽出し、抽出した差異を軽減するための複数の改善案を、当該差異とともに表示部15に表示させる。
このため、ユーザーが、対象業務の現状の作業に関する所定の作業情報を入力するだけで、現状業務とあるべき姿の業務の全体が比較され、抽出された差異と、差異を軽減するための複数の改善案を表示部15に表示させることができる。
よって、時間やコストをなるべくかけずに、高度な分析スキルを有さない者であっても精度よく業務全体の分析が可能となる。
また、業務分析から改善策の提案までの流れが体系化されているため、部分的な業務改善の実施に留まることなく、業務全体としての改善を図ることが可能となる。
また、業務分析から改善策の提案までの流れが体系化されているため、処理の繰り返しが容易となって、継続的にアセスメントを行える。
以上より、容易かつ効率的に業務改善を図らせることが可能となる。
【0056】
また、上記実施の形態によれば、所定の作業情報は、複数の作業項目と、各作業項目の作業に関する作業パラメーターとを含む。
このため、ユーザー操作により入力された複数の作業項目と、各作業項目の作業に関する作業パラメーターに基づいて、現状の業務プロセスを生成することができる。
【0057】
また、上記実施の形態によれば、CPU11は、予め記憶部13に記憶された複数の異なる業務プロセスモデルから、所定の作業情報により指定された複数の作業項目及び作業パラメーターの一致度の条件を満たすものを、対応する業務プロセスモデルとして選択する。
このため、予め準備された業務プロセスモデルから適切な業務プロセスモデルを選択することができる。
【0058】
また、上記実施の形態によれば、CPU11は、現状の業務プロセスと対応する業務プロセスモデルを比較して、現状の業務プロセスにのみ含まれる作業項目、及び、現状の業務プロセスの作業パラメーターのうち対応する業務プロセスモデルの作業パラメーターの値との差が所定値以上のものを、差異として抽出する。
このため、現状の業務プロセスと対応する業務プロセスモデルとで異なる作業項目、差異が所定値以上の作業パラメーターを、把握することが可能となる。
【0059】
また、上記実施の形態によれば、CPU11は、現状の業務プロセスと、対応する業務プロセスモデルとを、表示部15に並べて表示させる。
このため、現状の業務プロセスと、対応する業務プロセスモデルを、視覚的に一目で比較することが可能となる。
【0060】
また、上記実施の形態によれば、CPU11は、表示部15に表示された対応する業務プロセスモデルの作業項目がユーザーにより操作された場合、当該対応する業務プロセスモデルに付帯された付帯情報を表示部15に表示させる。
このため、業務に関する付帯情報を、容易に確認することが可能となる。
【0061】
また、上記実施の形態によれば、対象業務に対する課題がユーザー操作により指定された場合、CPU11は、予め記憶部13に記憶された複数の課題と複数の改善案を対応づけたデータ群から、対象業務の課題に対応する複数の改善案を取得し、取得した複数の改善案を、表示部15に表示させる。
このため、ユーザーにより指定された課題に対応する複数の改善案を表示させることができ、ユーザーは改善案を自ら考える必要がなく、また、好ましい改善案を選択することが可能となる。
【0062】
また、上記実施の形態によれば、表示部15に表示された複数の改善案のうちの少なくとも一つの改善案がユーザー操作により選択された場合、CPU11は、選択された改善案による効果を定量的に算出し、算出された効果を示すデータを、表示部15に表示させる。
このため、ユーザーにより選択された改善案による効果を表示させることができ、ユーザーは選択した改善案による効果を把握することが可能となる。
【0063】
なお、本発明を適用可能な実施の形態は、上述した実施の形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0064】
例えば、上記実施の形態によれば、課題選択部g2で選択された課題に応じて、改善案表示部g5に改善案が表示されるが、課題が選択されなくても、CPU11が、入力された作業パラメーターに応じて、抽出した差異を軽減するための複数の改善案を取得し、表示させることもできる。
【0065】
また、上記実施の形態によれば、分析結果画面G2において、モデルフローg41と現状フローg42の業務フロー図が並べて表示されることとしたが、業務フロー図なしで、モデルフローg41と現状フローg42の乖離部分(差異)と、複数の改善案とを表示させることもできる。
【符号の説明】
【0066】
1 業務分析装置
11 CPU(生成手段、差異抽出手段、表示制御手段、改善案取得手段、算出手段)
12 RAM
13 記憶部
131 業務プロセスモデルDB
132 モデル情報DB
133 課題DB
134 改善案DB
14 操作部
15 表示部
G1 入力画面
G2 分析結果画面
G3 改善効果画面
g1 入力部
g2 課題選択部
g3 実行ボタン
g4 分析結果表示部
g41 モデルフロー
g42 現状フロー
g5 改善案表示部
16 通信部
17 バス
N 通信ネットワーク