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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】プレス加工方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/26 20060101AFI20220921BHJP
   B21D 22/20 20060101ALI20220921BHJP
   B21D 53/88 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B21D22/26 D
B21D22/20 E
B21D53/88 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019018796
(22)【出願日】2019-02-05
(65)【公開番号】P2020124726
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-09-03
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川喜田 和宏
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-104492(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002253(WO,A1)
【文献】特開2020-049494(JP,A)
【文献】国際公開第2018/115282(WO,A1)
【文献】特開2010-120061(JP,A)
【文献】特表2013-513514(JP,A)
【文献】国際公開第2012/070623(WO,A1)
【文献】特開2013-027912(JP,A)
【文献】特開2016-203214(JP,A)
【文献】特開2013-094793(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0304341(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2003-0067344(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0319431(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102762437(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0239645(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103237611(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0302341(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103889610(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108136479(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 22/26
B21D 22/20
B21D 53/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板部と、前記天板部から折り曲げられて前記天板部と交差する方向に拡がる縦壁部と、前記縦壁部に連接されるフランジ部と、を備えるプレス成形品のプレス加工方法であって、
当該プレス成形品は、前記縦壁部の一部である湾曲部であって、該湾曲部と前記天板部との間に形成される稜線が前記天板部の内側に向かって湾曲する湾曲部を備え、
ブランク材に第1のビードを曲線状に形成し、
前記第1のビードが形成された位置を折り曲げることにより、前記第1のビードの一部が前記湾曲部に含まれるように前記湾曲部を形成するとともに、前記第1のビードにおける前記一部とは異なる部分を前記第1のビードよりも高さの小さい第2のビードとする、プレス加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プレス加工により製造されるプレス成形品のプレス加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の衝突安全性及び軽量化の向上のために、高強度の鋼板が求められている。しかしながら鋼板の引張強度が増すにつれて、プレス成型性に関する延性が低下するという問題がある。特許文献1には、シワが発生しやすい湾曲部を有する縦壁部にて、部材の壁部の線長を稼ぐための凹凸を金型プレス面に形成し、シワを延びやすくする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-43403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される手法は壁部に凹凸を設ける。この手法では、プレス方向と壁部とが平行である場合に材料の凹凸部への流入量は少なくなるが、天板部へ流入する材料は多くなり、天板部側で発生するシワを充分に抑制できない場合があった。
【0005】
本開示の目的は、シワの発生を抑制できる技術を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、天板部と、天板部から折り曲げられて天板部と交差する方向に拡がる少なくとも1つの縦壁部と、を備えるプレス成形品である。このプレス成形品は、少なくとも1つの縦壁部の一部である湾曲部であって、該湾曲部と天板部との間に形成される稜線が天板部の内側に向かって湾曲する少なくとも1つの湾曲部を備える。天板部には、少なくとも1つの湾曲部と天板部との間に形成される稜線に沿って、少なくとも1つのビードが形成されている。
【0007】
このような構成であれば、湾曲部が形成される際に天板部に材料が流入することによる天板部の板厚の増加が、ビードが形成されることによる天板部の板厚の減少により差し引かれる。そのため、天板部の板厚の増加量はビードが形成されない場合と比較して低減される結果、湾曲部を形成する場合に生じ易い天板部のシワを抑制できる。
【0008】
上述した少なくとも1つの縦壁部は、2つの縦壁部を含んでもよい。2つの縦壁部のうちの一方の縦壁部には、第1の湾曲部が含まれ、かつ、上記一方とは異なる他方の縦壁部には、第2の湾曲部が含まれていてもよい。第1の湾曲部及び第2の湾曲部は、天板部を間に挟み込むように設けられていてもよい。天板部には、第1の湾曲部及び第2の湾曲部それぞれに係る稜線に沿って、少なくとも2つのビードが形成されていてもよい。
【0009】
このような構成であれば、プレス成形品の天板部を中心とした両側に湾曲部が設けられている場合であっても、天板部に生じるシワを抑制できる。
また上述したプレス成形品は、車両のセンターピラーの下部に用いられる部分を含んでもよい。このような構成であれば、センターピラーの下部に用いることができる。
【0010】
また上述したプレス成形品は、引張強度が980MPa以上の部材により構成されていてもよい。鋼板の引張強度が高いほど延性が低下してシワが生じやすくなってしまうが、上述した構成のプレス成形品では、引張強度が高い部材においても良好にシワの発生を抑制できる。
【0011】
本開示の別の一態様は、天板部と、天板部から折り曲げられて天板部と交差する方向に拡がる縦壁部と、縦壁部に連接されるフランジ部と、を備えるプレス成形品のプレス加工方法である。当該プレス成形品は、縦壁部の一部である湾曲部であって、該湾曲部と天板部との間に形成される稜線が天板部の内側に向かって湾曲する湾曲部を備える。本加工方法では、ブランク材に第1のビードを曲線状に形成し、第1のビードが形成された位置を折り曲げることにより、第1のビードの一部が湾曲部に含まれるように湾曲部を形成するとともに、第1のビードにおける上記一部とは異なる部分を第1のビードよりも高さの小さい第2のビードとする。
【0012】
このようなプレス加工方法であれば、プレス成形品にシワ及び割れが生じてしまうことを抑制できる。なぜならば、湾曲部が形成される際に天板部に材料が流入することによる天板部の板厚の増加が、ビードが形成されることによる天板部の板厚の減少により差し引かれるため、天板部の板厚の増加量はビードが形成されない場合と比較して低減される結果、天板部のシワが抑制される。また、第1のビードを構成していた材料の一部が湾曲部側に移動することで、湾曲部及びフランジ部の板厚の低下が抑制され、それにより割れが抑制される。
【0013】
本開示のさらに別の一態様は、天板部と、天板部から折り曲げられて天板部と交差する方向に拡がる2つの縦壁部と、を備えるプレス成形品である。このプレス成形品は、2つの縦壁部の一部である湾曲部であって、湾曲部と天板部との間に形成される稜線が天板部の内側に向かって湾曲する少なくとも1つの湾曲部を備える。2つの縦壁部のうちの一方の縦壁部には、第1の湾曲部が含まれ、かつ、上記一方とは異なる他方の縦壁部には、第2の湾曲部が含まれている。天板部には、天板部から凹状又は凸状に突出する突出部が形成されている。第1の湾曲部及び第2の湾曲部は、突出部を間に挟み込むように設けられている。
【0014】
このような構成であれば、第1の湾曲部及び第2の湾曲部が形成される際に天板部に材料が流入することによる天板部の板厚の増加が、突出部が形成されることによる天板部の板厚の減少により差し引かれる。そのため、天板部の板厚の増加量は突出部が形成されない場合と比較して低減される結果、湾曲部を形成する場合に生じ易い天板部のシワを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態のプレス成形品を示す図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3】車体の構造の一部を示す斜視図である。
図4図4A及び図4Bが、第1のビードを形成するプレス工程を説明する図である。
図5図5A及び図5Bが、プレス成形品を製造するプレス工程を説明する図である。
図6図6Aが、ビードを形成しない場合のシワの発生状態を説明する図であり、図6Bが、ビードを形成した場合のシワの発生状況を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本開示の実施形態を図面と共に説明する。なお以下の説明で用いる上下及び左右の方向は、説明の便宜上用いるものであって、本開示の使用態様などを限定するものではない。
【0017】
[1.実施形態]
[1-1.全体構成]
図1に示される実施形態のプレス成形品1は、天板部11と、天板部11の左右に設けられる縦壁部12L,12Rとを備える。またプレス成形品1は、縦壁部12L,12Rそれぞれに連接するフランジ部13L,13Rを備えていてもよい。
【0018】
天板部11は、上下方向に長さを有する主板部11aと、主板部11aの上端から左右に延びる上側部11bと、主板部11aの下端から左右に延びる下側部11cと、を備える。主板部11aにおける上側に位置し、上側部11bと連接する上端側部11dは、主板部11aのうちの上端側部11dよりも下側の部分と比較して左右方向の幅が小さく、主板部11aを形成する領域が小さい。
【0019】
縦壁部12L,12Rは、天板部11から折り曲げられて天板部11と交差する方向に拡がる。縦壁部12Lは、その一部として湾曲部14Lを備える。また縦壁部12Rは、その一部として湾曲部14Rを備える。
【0020】
湾曲部14L,14Rは、天板部11の拡がる面と平行である仮想的な面に投影したときに湾曲した形状となる部分である。湾曲部14L,14Rの湾曲する方向は、天板部11と湾曲部14L,14Rとの間に形成される稜線15L,15R、がそれぞれ天板部11の内側に向かって湾曲する方向である。言い換えると、湾曲部14L,14Rは、プレス成形品1を上述した仮想的な面に投影したときに、縦壁部12L,12Rのうち、凹状である天板部11と、凸状であるフランジ部13L,13Rと、の間に位置する部分である。湾曲部14L,14Rは、主板部11aと、下側部11cと、の交差する領域の外側に形成される。稜線15Lの湾曲する方向は湾曲部14Lの湾曲する方向と同じであり、稜線15Rの湾曲する方向は湾曲部14Rの湾曲する方向と同じである。
【0021】
また天板部11には、上述した湾曲する稜線15L,15Rに沿って、2つのビード16L,16Rが形成されている。2つのビード16L,16Rは、主板部11aと下側部11cとの交差する部分において、それらの外縁に沿ってL字型(L-shaped)に形成される。
【0022】
図2に示されるように、プレス成形品1は、天板部11の左右両端においてビード16L,16Rが形成され、それらの突出する方向である前向とは反対側の後方に向かって湾曲部14L,14Rが拡がる。言い換えると、ビード16L,16Rは、天板部11から、縦壁部12L,12Rの天板部11から拡がる方向とは反対の方向に突出する。そして、湾曲部14L,14Rが延びた先においてフランジ部13L,13Rが連接される。フランジ部13L,13Rは、天板部11と略平行に拡がる。
【0023】
上述した2つの湾曲部14L,14Rは、図1に示されるように、天板部11を間に挟み込むように左右に設けられている。
また、上端側部11dには、凹み部17が形成される。上端側部11dの左右には2つの湾曲部141L,141Rが形成され、湾曲部141L,141Rと天板部11との間には稜線151L,151Rが形成される。凹み部17は、上端側部11dにおける2つの湾曲部141L,141Rの間に形成される。凹み部17が、突出部の一例に相当する。
上述したプレス成形品1は、引張強度が980MPa以上の高張力鋼(本実施形態では、引張強度1470MPa)により構成されていてもよい。
【0024】
[1-2.プレス成形品の配置]
本実施形態のプレス成形品1は、図3に示されるように、車体のモノコック構造31の一部を構成するセンターピラー33として用いることができる。なお、プレス成形品1の左右方向は、車両の前後方向となるように配置してもよい。
【0025】
[1-3.プレス加工方法]
プレス成形品1は、以下の工程によって製造することができる。なお以下の工程は本開示の一例にすぎず、本開示の技術的思想を含みうる範囲で様々な態様の加工方法に変更してもよい。
【0026】
(i)第1のビードの形成
図4Aに示されるように、本工程では、上型51、下型52、ダイ53及びダイ54を用いる。上型51には溝55が形成されており、下型52には凸条56が形成されている。この溝55及び凸条56は、平面視(即ち、プレス方向の上方又は下方から見た場合)では曲線状に形成されている。
【0027】
左右のダイ53,54上にブランク材41を配置し、上型51を下降させて、ダイ53,54及び上型51によりブランク材41を挟み込んで掴む。なお説明の便宜上、ブランク材41は、プレス加工がなされた以降もブランク材と記載する。
【0028】
続いて、図4Bに示されるように、ブランク材41が掴まれた状態でダイ53,54及び上型51が下型52に向かって下降すると、溝55及び凸条56によって浅絞り加工がなされ、ブランク材41に平面視で曲線状の第1のビード71L,71Rが形成される。
【0029】
(ii)縦壁部及びフランジの形成
図5Aに示されるように、本工程では、上型61、上型62、パッド63、及び下型64を用いる。第1のビード71L,71Rが形成されたブランク材41を下型64上に配置し、パッド63を下降させて、パッド63及び下型64によりブランク材41を挟み込んで掴む。
【0030】
湾曲部14L,14Rとフランジ部13L,13Rとの屈曲部分を形成するための、上型61,62の角部81,82と、下型64の角部83,84と、は、上述した屈曲部分の角度が90度よりも小さくなるように構成される。湾曲部14L,14Rは、角部81~84の角度が90度に近づくにつれ、フランジ部13L,13Rへ材料が流し込みやすくなり、フランジ部13L,13Rでの割れを抑制できる。ただし、フランジ部13L,13Rと湾曲部14L,14Rとが連続して交差する根本の部分での割れを考慮し、その角度は適宜調整可能である。なお、上述した角部81~84は、先端が丸く形成されていてもよいし、尖っていてもよい。
【0031】
続いて、図5Bに示されるように、ブランク材41が掴まれた状態で上型61,62が下方に向かって下降すると、プレス成形品1が形成される。このプレス加工では、上述した第1のビード71L,71Rが形成された位置を折り曲げる。これにより、第1のビード71Lの左側の一部が湾曲部14Lに含まれるように、湾曲部14Lが形成される。また、第1のビード71Rの右側の一部が湾曲部14Rに含まれるように、湾曲部14Rが形成される。言い換えると、第1のビード71L,71Rを構成していた材料が湾曲部側に流入するように、湾曲部14L,14Rが形成される。
【0032】
また、上述したプレス加工により、第1のビード71L,71Rにおける上述した一部とは異なる部分が、上述したビード16L,16Rとなる。これらのビード16L,16Rは、第1のビード71L,71Rよりも高さの小さいビードであって、第2のビードに相当する。
【0033】
[1-4.評価試験]
プレス加工により上述した湾曲部を形成するときに生じるシワを、(a)天板部にビードが形成されない場合、(b)天板部にビードが形成される場合、のそれぞれにつき、材料となる鋼板の引張強度を変化させて評価した。なお、この評価試験において、シワの発生状況はCAEを用いて算出した。
【0034】
上記(a)については、引張強度が440MPa、590MPa、980MPa、1180MPa、1470MPa、である5種類の鋼板を用いて評価を行った。また、上記(b)については、引張強度が980MPa、1180MPa、1470MPa、である3種類の鋼板を用いて評価を行った。
【0035】
図6Aに、上記(a)の場合の評価結果を示す。引張強度が440MPaと590MPaの鋼板を用いた場合は、シワが発生しなかった。しかしながら、引張強度が980MPa、1180MPa、1470MPaの鋼板を用いた場合は、天板部に向かって延びるようにシワが発生した。図6Bに、上記(b)の場合の評価結果を示す。ビードを形成した場合には、ビードを形成しない場合と比較して、シワの発生が大きく抑制された。
【0036】
以上の結果から次の内容が確認された。鋼板の引張強度が980MPaを超えて高くなると、湾曲部を形成した場合にシワが発生しやすくなるが、天板部にビードを設けることで、引張強度が980MPa以上である引張強度の高い部材においても良好にシワを抑制することができる。
【0037】
[1-5.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)本実施形態のプレス成形品1では、湾曲部14L,14Rを形成する際に稜線部分に材料が寄ることにより生じる板厚の増加(材料あまり)が、ビード16L,16Rが形成されることによる天板部11の板厚の減少により差し引かれる。そのため、天板部11の板厚の増加量はビード16L,16Rが形成されない場合と比較して低減され、その結果、湾曲部14L,14Rを形成する場合に生じ易い天板部11のシワの発生を抑制できる。
【0038】
(1b)プレス成形品1は、天板部11を中心とした両側に湾曲部14L,14Rが設けられているが、その両方の湾曲部14L,14Rに対して天板部11に生じるシワを抑制できる。
【0039】
(1c)プレス成形品1は、引張強度が1470MPaである高張力鋼を用いている。このような引張強度の高い鋼板は延性が低くシワが生じ易いが、上述したビード16L,16Rによって、良好にシワの発生を抑制できる。
【0040】
(1d)プレス成形品1では、上端側部11dにおける湾曲部141L,141Rの間に凹み部17が形成されている。これにより、材料を凹み部17に向かって引っ張ることができ、湾曲部141L,141Rを形成する際に稜線部分に材料が寄ることにより生じる板厚の増加を抑制して、天板部11のシワの発生を抑制できる。また凹み部17は、上端側部11dのように、ビードを形成するための広さが十分ではない部分においても形成することができ、左右の湾曲部141L,141Rの両方に対してシワの発生を抑制できる。なお、上記実施形態では、天板部11から後方に凹む凹状形状である凹み部17を例示したが、凹み部17は、天板部11から前方に突出する凸状形状であってもよい。
【0041】
(1e)本実施形態にて説明したプレス加工方法であれば、シワの発生が抑制されたプレス成形品1を製造することが可能となる。なぜならば、湾曲部14L,14Rを形成する際に稜線部分に材料が寄ることにより生じる天板部11の板厚の増加が、ビード16L,16Rが形成されることによる天板部11の板厚の減少により差し引かれ、天板部11の板厚の増加量が低減されるためである。
【0042】
さらに、当該加工方法で製造されたプレス成形品1は、第1のビード71L,71Rを構成していた材料の一部が湾曲部14L,14R側に移動することで、湾曲部14L,14R及びフランジ部13L,13Rの板厚の低下を抑制する。これにより、特にフランジ部13L,13Rに生じ易い割れの発生を抑制できる。
【0043】
[2.その他の実施形態]
以上本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0044】
(2A)上記実施形態では、天板部11と、縦壁部12L,12Rと、フランジ部13L,13Rと、を備えるプレス成形品1を例示した。しかしながら、プレス成形品はフランジ部を備えていなくてもよい。また、本開示の湾曲部及びビードを備えるプレス成形品であれば、天板部、フランジ部、及び、湾曲部を除く縦壁部の具体的な形状は特に限定されず、様々な形状、構造のプレス成形品に適用できる。
【0045】
(2B)上記実施形態では、2つの湾曲部14L,14Rを備える構成を例示したが、湾曲部の数は特に限定されず、例えばプレス成形品に1つのみ設けられていてもよいし、3つ以上設けられていてもよい。プレス成形品1においては、主板部11aと下側部11cとが交差する部分に湾曲部14Lが設けられる構成を例示したが、主板部11aと上側部11bとが交差する部分にさらに湾曲部が設けられていてもよい。
【0046】
(2C)上記実施形態では、プレス成形品1がセンターピラーに用いられる構成を例示したが、センターピラーの下部に用いられる部分を含んでいれば、センターピラー全体を構成していなくてもよい。また本開示のプレス成形品は、センターピラー以外の用途に用いられてもよい。もちろん、車体以外に用いられてもよい。
【0047】
(2D)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。なお、特許請求の範囲に記載した文言のみによって特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0048】
1…プレス成形品、11…天板部、11a…主板部、11b…上側部、11c…下側部、11d…上端側部、12L,12R…縦壁部、13L,13R…フランジ部、14L,14R,141L,141R…湾曲部、15L,15R,151L,151R…稜線、16L,16R…ビード、17…凹み部、31…モノコック構造、33…センターピラー、41…ブランク材、51,61,62…上型、52,64…下型、53,54…ダイ、55…溝、56…凸条、63…パッド、71L,71R…第1のビード、81,82,83,84…角部
図1
図2
図3
図4
図5
図6