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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】医療器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20220921BHJP
   A61F 2/86 20130101ALI20220921BHJP
   A61F 2/04 20130101ALI20220921BHJP
【FI】
A61F2/966
A61F2/86
A61F2/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019045981
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2020146225
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山口 裕史
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-500077(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108245293(CN,A)
【文献】特開2018-201583(JP,A)
【文献】特表2015-521922(JP,A)
【文献】特表2004-533290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/966
A61F 2/86
A61F 2/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内腔が形成され、生体管腔に挿入される長尺な外シャフトと、
前記外シャフトの長軸方向と交差する径方向に拡張収縮自在に構成され、前記径方向に収縮した状態において前記内腔に収容され、前記外シャフトの先端部から前記外シャフトの外側に放出可能な拡張部と、を有し、
前記拡張部は、
血液を透過可能なフレーム体を備え、前記外シャフトから放出されて拡張した状態において、前記フレーム体によって前記生体管腔の内壁に固定される固定部と、
前記固定部の基端側に接続され、前記外シャフトから放出されて拡張した状態において、前記外シャフトの先端部からの放出長さの程度によって前記生体管腔の閉塞率を調整する調整部と、を有し、
前記拡張部における前記調整部は、前記固定部の前記フレーム体の一部を、血液の透過を抑制することが可能なフィルム体によって周方向に覆うことによって、前記固定部の基端側に接続される医療器具。
【請求項2】
前記外シャフトの外側に放出された前記拡張部を前記内腔に回収する回収部をさらに有する請求項1に記載の医療器具。
【請求項3】
前記回収部は、
前記外シャフトに対して相対的に移動可能となるように前記外シャフトの前記内腔に挿通された内シャフトと、
前記拡張部を前記内シャフトに接続するコネクタと、を有する請求項2に記載の医療器具。
【請求項4】
前記外シャフトの前記内腔内において前記調整部の基端部が前記外シャフトの先端部に対して最接近可能な位置を制限する規制部をさらに有する請求項1~3の何れか1項に記載の医療器具。
【請求項5】
前記規制部は、
前記拡張部の基端部が接続されたストッパーと、
前記外シャフトの前記内腔に位置して前記ストッパーと係合可能な係合部と、を有する請求項4に記載の医療器具。
【請求項6】
前記拡張部における前記固定部の前記フレーム体は、前記外シャフトから放出されることによって自己拡張可能な自己拡張型ステントから構成される請求項1~5の何れか1項に記載の医療器具。
【請求項7】
前記フィルム体によって前記固定部の前記フレーム体を覆う領域が、先端側から基端側に向かうに連れて連続的または段階的に増加する請求項に記載の医療器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
脳動脈瘤が破裂することでくも膜下腔に出血を起こすくも膜下出血であると診断された場合、破裂した脳動脈瘤を修復する処置が行なわれる。患者は、処置後に合併症として遅発性脳血管攣縮を発症する場合がある。遅発性脳血管攣縮は、くも膜下出血後に脳血管に生じる遅発性の血管狭窄である。
【0003】
下記特許文献1には、遅発性脳血管攣縮を治療するために、バルーンによって大動脈を完全にではなく部分閉塞させて下肢等への血流を減少させ、その分、脳血管等への血流を増加させるカテーテルが開示されている。術者は、バルーンの拡張の程度を調整することによって、脳血管等の血流量が所望の血流量になるように大動脈の閉塞率を調整できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2004-533290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1のようにバルーンが大動脈等の生体管腔を部分閉塞する場合、当該バルーンは生体管腔に固定されていない状態である。そのため、例えば血流等から付与される外力によってバルーンが意図せずに動き、バルーンの傾きが変化することによって、調整した生体管腔の閉塞率が意図せずに変化する可能性がある。
【0006】
そこで本発明は、生体管腔を部分閉塞させる際に、生体管腔の閉塞率を調整可能であり、調整した生体管腔の閉塞率が意図せずに変化することを抑制できる医療器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明に係る医療器具は、内腔が形成され、生体管腔に挿入される長尺な外シャフトと、前記外シャフトの長軸方向と交差する径方向に拡張収縮自在に構成された拡張部と、を有する。前記拡張部は、前記径方向に収縮した状態において前記内腔に収容され、前記外シャフトの先端部から前記外シャフトの外側に放出可能である。前記拡張部は、固定部と、調整部とを有する。固定部は、血液を透過可能なフレーム体を備え、前記外シャフトから放出されて拡張した状態において、前記フレーム体によって前記生体管腔の内壁に固定される。調整部は、前記固定部の基端側に接続され、前記外シャフトから放出されて拡張した状態において、前記外シャフトの先端部からの放出長さの程度によって前記生体管腔の閉塞率を調整する。前記拡張部における前記調整部は、前記固定部の前記フレーム体の一部を、血液の透過を抑制することが可能なフィルム体によって周方向に覆うことによって、前記固定部の基端側に接続される。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る医療器具によれば、生体管腔を部分閉塞させる際に、生体管腔の閉塞率を調整可能であり、調整した生体管腔の閉塞率が意図せずに変化することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一の実施形態に係る医療器具を示す平面図であり、拡張部が外シャフト内に収容あるいは回収された状態を示す図である。
図2】拡張部が外シャフト内に収容された状態を示す側断面図である。
図3A】拡張状態の拡張部を示す斜視図である。
図3B】拡張部の固定部が備えるフレーム体を示す斜視図である。
図4A】外シャフトが内シャフトに対して基端側に移動して拡張部の一部が放出され、拡張部における固定部が生体管腔の内壁に固定された状態を示す側断面図である。
図4B図4Aの状態から、外シャフトが内シャフトに対して基端側にさらに移動して拡張部の一部がさらに放出され、拡張部における調整部が生体管腔を部分閉塞した状態を示す側断面図である。
図5】本発明の一の実施形態に係る医療器具を、大動脈を部分閉塞させる手技に適用した例を示す図である。
図6A】大動脈を部分閉塞させる手順を説明するための図であり、拡張部における固定部が大動脈の内壁に固定された状態を模式的に示す断面図である。
図6B図6Aの状態から、拡張部における調整部によって大動脈を部分閉塞した状態を模式的に示す断面図である。
図6C図6Bの状態から、拡張部における調整部によって大動脈の閉塞率をさらに大きくした状態を模式的に示す断面図である。
図7A】変形例1に係る拡張部を示す断面図である。
図7B】変形例1に係る拡張部における固定部およびフィルム体を展開して示す模式図である。
図8】変形例2に係る拡張部における固定部およびフィルム体を展開して示す模式図である。
図9A】変形例3に係る拡張部を示す側面図である。
図9B】変形例4に係る拡張部を示す側面図である。
図9C】変形例5に係る拡張部を示す側面図である。
図9D】変形例6に係る拡張部を示す側面図である。
図10】変形例7に係る回収部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、以下の形態のみに制限されない。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
図1図4Bは、本発明の一の実施形態に係る医療器具100の説明に供する図である。図5図6Cは、本発明の一の実施形態に係る医療器具100の使用例の説明に供する図である。
【0012】
本実施形態に係る医療器具100は、図5図6Cに示すように、遅発性脳血管攣縮を治療するために、大動脈V(生体管腔に相当)を部分閉塞させて下肢血管等への血流F1の流量を減少させ、その分、脳血管等への血流F2の流量を増加させるために用いられる。
【0013】
本実施形態に係る医療器具100は、図1および図2を参照して概説すると、外シャフト110と、拡張部120と、内シャフト130と、回収部140と、規制部150と、手元操作部160と、を有する。以下、医療器具100の各部について詳述する。
【0014】
なお、以下の説明では、図1に示すように、外シャフト110の延在方向(長手方向)を単に「長軸方向X」と称し、外シャフト110の径方向Rを単に「径方向R」と称し、外シャフト110の周方向を単に「周方向」と称する。また、長軸方向Xにおいて、生体に挿入される側を「先端側」と称し、その反対側(手元側)を「基端側」と称する。また、先端(最先端)および先端から長軸方向Xに沿って一定の範囲を「先端部」と称し、基端(最基端)および基端から長軸方向Xに沿って一定の範囲を「基端部」と称する。また、各部が長軸方向Xの基端側から先端側に向かって移動することを「前進する」と称し、各部が長軸方向Xの先端側から基端側に向かって移動することを「後退する」と称する。
【0015】
(外シャフト110)
外シャフト110は、図1および図2に示すように、本実施形態では、血管に挿入される長尺な形状を有する。外シャフト110には、長軸方向Xの全長に亘って内腔111が形成されている。外シャフト110の内腔111に、拡張部120が径方向Rに収縮した状態において収容される。
【0016】
外シャフト110は、可撓性を備える材料によって形成されている。そのような材料としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら2種以上の混合物等からなるポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリイミド、フッ素樹脂等の高分子材料あるいはこれらの混合物、あるいは上記2種以上の高分子材料を挙げることができる。
【0017】
(拡張部120)
図3Aは、拡張状態の拡張部120を示す斜視図、図3Bは、拡張部120の固定部121が備えるフレーム体123を示す斜視図である。図4Aは、外シャフト110が内シャフト130に対して基端側に移動して拡張部120の一部が放出され、拡張部120における固定部121が生体管腔Vの内壁Vaに固定された状態を示す側断面図である。図4Bは、図4Aの状態から、外シャフト110が内シャフト130に対して基端側にさらに移動して拡張部120の一部がさらに放出され、拡張部120における調整部122が生体管腔Vを部分閉塞した状態を示す側断面図である。
【0018】
図2図4Aおよび図4Bに示すように、拡張部120は、外シャフト110の長軸方向Xと交差する径方向Rに拡張収縮自在に構成されている。拡張部120は、径方向Rに収縮した状態において内腔111に収容され(図1および図2を参照)、外シャフト110の先端部から外シャフト110の外側に放出可能である(図4Aおよび図4Bを参照)。なお、ここで「拡張」とは、拡張部120の構成部材が径方向R外方に広がることを意味し、「収縮」とは、拡張部120の構成部材が拡張した状態よりも径方向R内方に狭まることを意味する。
【0019】
拡張部120は、固定部121と、調整部122とを有する。固定部121は、血液を透過可能なフレーム体123を備え、外シャフト110から放出されて拡張した状態において、フレーム体123によって生体管腔Vの内壁Vaに固定される(図4Aを参照)。調整部122は、固定部121の基端側に接続されている。調整部122は、外シャフト110から放出されると、傘のように開き、拡張した状態において生体管腔Vを部分的に閉塞する。調整部122は、外シャフト110の先端部からの放出長さの程度によって生体管腔Vの閉塞率を調整する(図4Bを参照)。
【0020】
固定部121のフレーム体123は、図4Aおよび図4Bに示すように、大動脈V等の血管の内壁Vaに当接するまで拡張可能に構成している。そのため、固定部121は、拡張した状態で大動脈V等の血管の内壁Vaに固定される。これによって固定部121は、調整部122が血流等の外力によって意図せずに動くことを抑制できる。そのため、固定部121は、血流等の外力によって調整部122の角度が意図せずに変化して血管の閉塞率が変化することを抑制できる。また、固定部121は、血流等の外力によって拡張部120の全体が振動して血管の内壁Vaに衝突し、血管を痛めることを抑制できる。
【0021】
図4Bに示すように、固定部121は、長軸方向Xに沿う全長が放出される。拡張部120は、長軸方向Xに沿う全長が外シャフト110の外側に放出されることはない。調整部122は、先端部からの一部分のみが外シャフト110の外側に放出され、基端部が内腔111内に残っている。調整部122は、外シャフト110の先端部からの放出長さの程度によって、外シャフト110から放出され拡張した後の大きさが変化する。調整部122の放出長さが短いと、調整部122の拡張した後の大きさは小さい。その結果、生体管腔Vの閉塞率は小さい。一方、調整部122の放出長さが長くなると、拡張した後の大きさが大きくなる。その結果、生体管腔Vの閉塞率が大きくなる。このように、調整部122が外シャフト110の先端部から放出される長さを調整することによって、生体管腔Vの閉塞率を調整することができる。
【0022】
拡張部120は、図1および図2に示すように、収縮状態で内シャフト130と外シャフト110との間に収容される。拡張部120は、外シャフト110の内面によって拘束されることによって、径方向R外方への拡張変形が制限される。拡張部120は、外シャフト110が内シャフト130に対して基端側に移動して外シャフト110の内面による拘束が解かれると、図4Aおよび図4Bに示すように径方向R外方に拡張する。固定部121は、長軸方向Xに沿う全長が放出され、収縮前の形状に復元する。調整部122は、外シャフト110の先端部からの放出長さの程度に応じた形状に復元する。
【0023】
拡張部120の収縮(縮径)状態の外径は、外シャフト110の内径に対応し、数mm程度である。拡張部120の拡張(復元)状態の外径は、特に限定されず、部分閉塞の対象となる生体管腔Vの内径に応じて適切な寸法に設定される。拡張部120の拡張(復元)状態の外径は、例えば、30mm程度(大動脈V内径)である。長軸方向Xに沿う拡張部120の全長、固定部121の長さおよび調整部122の長さは、特に限定されず、部分閉塞の対象となる生体管腔Vの内径、生体管腔Vの内壁Vaに固定するために要求される力、生体管腔Vの閉塞率の調整可能な範囲などに応じて適切な寸法に設定される。
【0024】
図3Aおよび図3Bに示すように、拡張部120における固定部121のフレーム体123は、例えば、外シャフト110から放出されることによって自己拡張可能な自己拡張型ステント124から構成されている。固定部121のフレーム体123を周知の自己拡張型ステント124から構成することによって、生体管腔Vの内壁Vaに固定される機能を固定部121に簡単に付与することができる。
【0025】
固定部121のフレーム体123を構成する自己拡張型ステント124は、多数の開口を有したメッシュ状で略円筒形状に形成される。フレーム体123は、多数の開口を通して血液を透過できる。
【0026】
自己拡張型ステント124を構成する材料は、圧縮された状態から元の形状への復元力(自己拡張力)が必要であるため、チタンニッケル合金等の超弾性合金が好ましいが、必要に応じて、高分子材料や他の金属材料を好適に使用できる。高分子材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体等の含フッ素ポリマーである。金属材料は、例えば、コバルト-クロム合金、ステンレス鋼、鉄、チタン、アルミニウム、スズ、亜鉛-タングステン合金等が挙げられる。
【0027】
図4Aおよび図4Bに示すように、拡張部120における調整部122は、固定部121のフレーム体123の一部を、血液の透過を抑制することが可能なフィルム体125によって周方向に覆うことによって、固定部121の基端側に接続される。固定部121のフレーム体123は血液を透過できるが、フィルム体125によって覆うことによって、生体管腔Vの閉塞率を調整する調整部122を簡単に形成することができる。フィルム体125は、固定部121のフレーム体123を周方向に覆えばよく、フレーム体123の基端部は開放したままでよい。拡張部120が最も放出された状態においても、調整部122の基端部は、収縮状態で内腔111内に収容されたままである。フレーム体123の基端部を開放したままでも、フィルム体125および固定部121のフレーム体123によって通路抵抗が増すため、内腔111を介した血液の漏れを抑えることができる。また、フレーム体123の基端部を開放したままとすることによって、フィルム体125および固定部121のフレーム体123を収縮状態に畳み易くなる。このため、外シャフト110内に拡張部120を容易に収容できる。
【0028】
また図4Bに示すように、拡張部120が最も放出された状態において、固定部121と調整部122との接続部における調整部122の径は、拡張部120の最大径よりも小さくなっている。このような構成とすることによって、調整部122が生体管腔Vを完全に閉塞する可能性を低減させることができる。
【0029】
フィルム体125は、固定部121のフレーム体123の変形に伴って変形自在な材料によって形成されている。フィルム体125はまた、血液の透過を抑制することが可能である材料によって形成されている。そのような材料としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ナイロン、エラストマー材料やゴム材料を含む材料を好適に使用できる。
【0030】
フィルム体125の形成材料は、生体管腔Vの閉塞率を調整できるように血液の透過を抑制することが可能であればよく、血液をまったく透過させない材料から形成してもよい。反対に、微量な血液を透過させる材料から形成してもよい。また、フィルム体125は微小な孔を備えていてもよい。このような構成とすることによって、生体管腔Vを断面視した場合において、調整部122が生体管腔Vの全体に配置された場合であっても、フィルム体125から血液が流れるため、生体管腔Vが完全に閉塞される可能性を低減させることができる。
【0031】
拡張部120は、先端にX線造影性を備える拡張部マーカ126を有する。拡張部マーカ126は、例えば、X線造影性を備える材料により構成することが可能であるし、X線造影性を備えない樹脂材料等にX線造影性を備える材料を被覆や含有することによって構成することが可能である。X線造影性を備える材料としては、例えば、白金、金、銀、イリジウム、チタン、タングステン等の金属、またはこれらの合金等を好適に使用できる。
【0032】
(内シャフト130)
内シャフト130は、外シャフト110に対して相対的に移動可能となるように外シャフト110の内腔111に挿通されている。
【0033】
内シャフト130には、長軸方向Xの全長に亘って内腔131が形成されている。内腔131には、ガイドワイヤが配置されたり、造影剤が導入されたりする。
【0034】
内シャフト130の形成材料としては、可撓性を有する限り特に限定されないが、例えば、外シャフト110と同様の材料を用いることができる。
【0035】
内シャフト130の先端部には、X線透視下等で造影性を備える先端マーカ132が設けられている。先端マーカ132は、リング形状を有し、内シャフト130の外表面に固定している。先端マーカ132は、例えば、接着剤等により内シャフト130に固定することができる。先端マーカ132の外径は、外シャフト110の内径と実質的に同一である。先端マーカ132は、拡張部マーカ126と同様の材料によって形成することができる。
【0036】
先端マーカ132は、拡張部120が内腔111内に収容された状態において、拡張部マーカ126よりも先端側に配置される。拡張部120を所望の部位に配置する作業を行う際に、先端マーカ132および拡張部マーカ126をX線画像上で確認することによって、生体管腔V内において拡張部120の位置決めを正確かつ迅速に実施することができる。
【0037】
内シャフト130は、拡張部120の基端部が接続されるストッパー133が設けられている。ストッパー133は、リング形状を有し、内シャフト130の外表面に固定している。ストッパー133は、例えば、接着剤等により内シャフト130に固定することができる。ストッパー133の外径は、外シャフト110の内径と実質的に同一である。このストッパー133によっても、内腔111を介した血液の漏れを抑えることができる。
【0038】
本実施形態では、固定部121のフレーム体123の基端部を金属細線によってストッパー133に接続することによって、拡張部120の基端部がストッパー133に接続される。
【0039】
内シャフト130に対して外シャフト110を基端側に移動させると、拡張部120の基端部は、ストッパー133と当接し、内シャフト130に対して基端側への移動が制限される。これによって、拡張部120は、外シャフト110の移動に同伴されて移動しないため、外シャフト110からストッパー133によって押し出されるように放出される。これによって、所望の部位において拡張部120を放出させることができる。
【0040】
(回収部140)
医療器具100は、外シャフト110の外側に放出された拡張部120を内腔111に回収する回収部140をさらに有する。
【0041】
本実施形態の回収部140は、外シャフト110に対して相対的に移動可能となるように外シャフト110の内腔111に挿通された内シャフト130と、拡張部120を内シャフト130に接続するコネクタ141と、を有する。本実施形態のコネクタ141は、内シャフト130の外表面に固定されたストッパー133と、固定部121のフレーム体123の基端部をストッパー133に接続する金属細線142とを備える。
【0042】
図4Bに示される状態から、内シャフト130の位置を保持したまま、外シャフト110を前進させる。すると、図4Aに示されるように、拡張部120の調整部122が外シャフト110の内腔111に引き込まれ、次に、図2に示されるように、拡張部120の固定部121も外シャフト110の内腔111に引き込まれる。
【0043】
(規制部150)
医療器具100は、外シャフト110の内腔111内において調整部122の基端部が外シャフト110の先端部に対して最接近可能な位置を制限する規制部150をさらに有する。規制部150によって、外シャフト110の先端部からの調整部122の最大放出長さが制限される。このため、生体管腔Vの最大閉塞率を設定することが可能となる。さらに、拡張部120の全体は外シャフト110の外側に放出されず、調整部122の基端部は内腔111内に残った状態となる。このため、回収部140によって、外シャフト110の外側に放出された拡張部120を内腔111に回収し易くなる。
【0044】
本実施形態の規制部150は、図2図4Aおよび図4Bに示すように、拡張部120の基端部が接続されたストッパー133と、外シャフト110の内腔111に位置してストッパー133と係合可能な係合部と、を有する。係合部は、外シャフト110の内腔111の小径部111aと大径部111bとの間に形成される段差112から構成される。
【0045】
図4Bに示すように、内シャフト130に対して外シャフト110を基端側に移動させると、係合部としての段差112は、内シャフト130に固定したストッパー133の先端側の端面に接触する。これによって、外シャフト110の内腔111内において調整部122の基端部が外シャフト110の先端部に対して最接近可能な位置が制限される。
【0046】
(手元操作部160)
手元操作部160は、使用者の操作に伴い外シャフト110の基端部を前進後退させる。
【0047】
手元操作部160は、図1に示すように、本実施形態では、内シャフト130および外シャフト110を収容する内部空間(図示省略)が形成され、内シャフト130の基端部が固定された本体部161と、外シャフト110の基端部を長軸方向Xに沿って移動自在な操作部材162と、を有する。
【0048】
操作部材162は、本実施形態では、本体部161に対して長軸方向Xにスライド自在に構成している。操作部材162は、外シャフト110の基端部に取り付けられている。操作部材162が後退することによって、内シャフト130に対して外シャフト110の基端部が後退する。これによって、拡張部120は、外シャフト110から放出され、径方向Rに拡張する。操作部材162が前進することによって、内シャフト130に対して外シャフト110の基端部が前進する。これによって、外シャフト110の外側に放出された拡張部120は、径方向Rに収縮されながら外シャフト110の内腔111に回収される。
【0049】
なお、手元操作部160の構成は、外シャフト110の基端部を長軸方向Xに沿って移動させることができる限り特に限定されない。例えば、操作部材162は、回転することによって外シャフト110の基端部を長軸方向Xに沿って移動自在なダイヤル式のものであってもよい。
【0050】
(使用例)
図5は、実施形態に係る医療器具100を、大動脈Vを部分閉塞させる手技に適用した例を示す図である。図6Aは、大動脈Vを部分閉塞させる手順を説明するための図であり、拡張部120における固定部121が大動脈Vの内壁Vaに固定された状態を模式的に示す断面図である。図6Bは、図6Aの状態から、拡張部120における調整部122によって大動脈Vを部分閉塞した状態を模式的に示す断面図である。図6Cは、図6Bの状態から、拡張部120における調整部122によって大動脈Vの閉塞率をさらに大きくした状態を模式的に示す断面図である。
【0051】
図5に示すように、遅発性脳血管攣縮を治療するために、大動脈Vを部分閉塞させて下肢血管等への血流F1の流量を減少させ、その分、脳血管等への血流F2の流量を増加させる手技を例に、本実施形態に係る医療器具100の使用例を説明する。
【0052】
術者は、まず、イントロデューサキット(図示省略)等を用いて大腿動脈等に医療器具100等を導入するためのポートを形成する。次に、術者は、ポートを介してガイドワイヤ(図示省略)を先行させながらガイディングカテーテルCを血管内に導入する。
【0053】
次に、術者は、図5に示すように、ガイディングカテーテルCの内腔に医療器具100を挿入し、ガイドワイヤ(図示省略)を先行させながら医療器具100の先端部を大動脈Vに配置する。
【0054】
次に、術者は、手元操作部160を操作して、内シャフト130に対して外シャフト110の基端部を後退させる。これによって、図6Aに示すように、拡張部120は、外シャフト110の先端部から外シャフト110の外側に放出される。拡張部120における固定部121が径方向Rに拡張し、大動脈Vの内壁Vaに押付けられる。固定部121が大動脈Vの内壁Vaに密着し固定される。固定部121は血液を透過するので、この時点では大動脈Vはほとんど閉塞されず、血流は阻害されない。
【0055】
次に、術者は、手元操作部160を操作して、外シャフト110の基端部をさらに後退させる。これによって、図6Bおよび図6Cに示すように、拡張部120における調整部122が外シャフト110の先端部から外シャフト110の外側に放出される。拡張部120における調整部122が傘のように開き、径方向Rに拡張する。
【0056】
外シャフト110の外側に放出される部位が調整部122に達する。フィルム体125は血液を透過しないので、大動脈V内を部分的に閉塞し始める。下肢への血流F1が減り、脳血管への血流F2が増え始める。
【0057】
術者は、外シャフト110の基端部の位置を調整することによって、大動脈Vの閉塞率が所望の閉塞率になるように調整部122の外シャフト110の先端部からの放出長さの程度を調整する。この際、術者は、内シャフト130の内腔111を介して造影剤等を大動脈Vに導入し、大動脈Vの血流を確認しながら調整部122の拡張の程度を調整してもよい。
【0058】
大動脈Vの閉塞率を調整しているときに、外シャフト110を基端側に移動し過ぎた場合には、係合部としての段差112がストッパー133に接触する。これによって、外シャフト110の内腔111内において調整部122の基端部が外シャフト110の先端部に対して最接近可能な位置が制限される。このとき、生体管腔Vの閉塞率は最大となる。
【0059】
以上により、下肢への血流F1の流量を抑制し、その分、脳血管への血流F2の流量を増加させることができる。血管が部分閉塞されている際、固定部121によって調整部122が血流等の外力によって意図せずに動くことを抑制できる。そのため、医療器具100は、調整部122によって調整した血管の閉塞率が意図せずに変化することを抑制できる。また、固定部121が拡張して血管の内壁Vaに固定された後に、調整部122が拡張されるため、術者は、調整部122が血流等の外力によって意図せずに動くことを抑制した状態で調整部122の拡張の程度を調整することによって、血管の閉塞率を簡便に調整できる。
【0060】
処置が完了した後、術者は、外シャフト110の外側に放出された拡張部120を内腔111に回収する。術者は、手元操作部160を操作して、図6Bまたは図6Cに示される状態における内シャフト130の位置を保持したまま、外シャフト110を前進させる。これによって、図6Aに示されるように、拡張部120の調整部122が外シャフト110の内腔111に引き込まれる。外シャフト110をさらに前進させると、拡張部120の固定部121も外シャフト110の内腔111に引き込まれる(図1および図2を参照)。次に術者は、医療器具100およびガイディングカテーテルC等を生体外へ抜去する。
【0061】
以上説明したように、上記実施形態に係る医療器具100は、内腔111が形成され血管に挿入される長尺な外シャフト110と、外シャフト110の長軸方向Xと交差する径方向Rに拡張収縮自在に構成された拡張部120と、を有する。拡張部120は、径方向Rに収縮した状態において内腔111に収容され、外シャフト110の先端部から外シャフト110の外側に放出可能である。拡張部120は、固定部121と、調整部122とを有する。固定部121は、血液を透過可能なフレーム体123を備え、外シャフト110から放出されて拡張した状態において、フレーム体123によって血管の内壁Vaに固定される。調整部122は、固定部121の基端側に接続され、外シャフト110から放出されて拡張した状態において、外シャフト110の先端部からの放出長さの程度によって血管の閉塞率を調整する。
【0062】
このように構成することによって、外シャフト110から拡張部120を放出すると、まず、先端側に位置する固定部121が拡張した状態において、フレーム体123によって血管の内壁Vaに固定される。固定部121が内壁Vaに固定された後に、基端側に位置する調整部122が拡張した状態において、血管の閉塞率が調整される。そのため、拡張部120は、固定部121によって血流等からの外力によって意図せずに動くことを抑制できる。また、調整部122は、外シャフト110の先端部からの放出長さの程度によって血管の閉塞率を調整できる。以上より、上記医療器具100は、血管を部分閉塞させる際に、血管の閉塞率を調整可能であり、調整した血管の閉塞率が意図せずに変化することを抑制できる。また、拡張部120は、固定部121によって固定されることから、血流等の外力によって振動して血管の内壁Vaに衝突し、血管を痛めることを抑制できる。
【0063】
医療器具100は、外シャフト110の外側に放出された拡張部120を内腔111に回収する回収部140をさらに有する。
【0064】
このように構成することによって、使用後の拡張部120を回収して生体外へ簡単に抜去できる。
【0065】
回収部140は、外シャフト110に対して相対的に移動可能となるように外シャフト110の内腔111に挿通された内シャフト130と、拡張部120を内シャフト130に接続するコネクタ141と、を有する。
【0066】
このように構成することによって、簡単な構成によって使用後の拡張部120を回収することができる。
【0067】
医療器具100は、外シャフト110の内腔111内において調整部122の基端部が外シャフト110の先端部に対して最接近可能な位置を制限する規制部150をさらに有する。
【0068】
このように構成することによって、規制部150によって、外シャフト110の先端部からの調整部122の最大放出長さが制限される。このため、血管の最大閉塞率を設定することが可能となる。さらに、拡張部120の全体は外シャフト110の外側に放出されず、調整部122の基端部は内腔111内に残った状態となる。このため、外シャフト110の外側に放出された拡張部120を内腔111に回収し易くなる。
【0069】
規制部150は、拡張部120の基端部が接続されたストッパー133と、外シャフト110の内腔111に位置してストッパー133と係合可能な係合部としての段差112と、を有する。
【0070】
このように構成することによって、ストッパー133と段差112とが係合して、外シャフト110の先端部からの調整部122の最大放出長さが制限される。このため、血管の最大閉塞率を設定することが可能となり、外シャフト110の外側に放出された拡張部120を内腔111に回収し易くなる。
【0071】
拡張部120における固定部121のフレーム体123は、外シャフト110から放出されることによって自己拡張可能な自己拡張型ステント124から構成される。
【0072】
このように構成することによって、血管の内壁Vaに固定される機能を固定部121に簡単に付与することができる。
【0073】
拡張部120における調整部122は、固定部121のフレーム体123の一部を、血液の透過を抑制することが可能なフィルム体125によって周方向に覆うことによって、固定部121の基端側に接続される。
【0074】
このように構成することによって、血管の閉塞率を調整する調整部122を簡単に形成することができる。
【0075】
次に、拡張部120の変形例について説明する。なお、上記実施形態に係る医療器具100と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0076】
<変形例1>
図7Aは、変形例1に係る拡張部220を示す断面図、図7Bは、変形例1に係る拡張部220における固定部221およびフィルム体225を展開して示す模式図である。
【0077】
変形例1は、フィルム体225の形状の点において、上述した実施形態に係るフィルム体125の形状と相違する。
【0078】
上述した実施形態のフィルム体125は、図3Aおよび図4Bに示すように、径方向Rに沿う縁辺を有している。一方、変形例1のフィルム体225は、図7Bに示すように、長軸方向Xに対して傾斜する縁辺226を有している。したがって、変形例1の拡張部220は、フィルム体225によって固定部221のフレーム体123を覆う領域が、先端側から基端側に向かうに連れて連続的に増加する。
【0079】
このように構成することによって、図7Aに示すように、調整部222が外シャフト110の先端部から放出されるとき、フィルム体225の面積つまり血管を閉塞する面積が上述した実施形態と比較して徐々に増加する。したがって、調整部222の放出長さの単位長さあたり、血管の閉塞率の増加率が少なくなり、血管の閉塞率を細かく調整することが可能となる。
【0080】
<変形例2>
図8は、変形例2に係る拡張部320における固定部321およびフィルム体325を展開して示す模式図である。
【0081】
変形例2は、フィルム体325の形状の点において、変形例1に係るフィルム体225の形状と相違する。
【0082】
変形例2のフィルム体325は、図8に示すように、複数の孔部326を有し、径方向R(図において縦方向)に存在する孔部326の密度が、先端側から基端側に向かうに連れて減少している。したがって、変形例2の拡張部320は、フィルム体325によって固定部321のフレーム体123を覆う領域が、先端側から基端側に向かうに連れて段階的に増加する。
【0083】
このように構成することによって、変形例1と同様に、調整部322の放出長さの単位長さあたり、血管の閉塞率の増加率が少なくなり、血管の閉塞率をより細かく調整することが可能となる。
【0084】
<変形例3>
図9Aは、変形例3に係る拡張部420を示す側面図である。
【0085】
拡張部は、血管の内壁Vaに固定される固定部と、固定部の基端側に接続され血管の閉塞率を調整する調整部とを有する限りにおいて、固定部および調整部のそれぞれの形態、固定部と調整部とを接続する形態は適宜改変可能である。
【0086】
変形例3の拡張部420は、図9Aに示すように、固定部421のフレーム体423の長軸方向Xの長さは上述した実施形態よりも短い。そして、固定部421のフレーム体423の一部を、血液の透過を抑制することが可能なフィルム体425によって周方向に覆うことによって、固定部421の基端側に接続される調整部422を構成している。
【0087】
このように構成した拡張部420を備える医療器具100は、実施形態と同様に、血管を部分閉塞させる際に、血管の閉塞率を調整可能であり、調整した血管の閉塞率が意図せずに変化することを抑制できる。また、拡張部420は、固定部421によって固定されることから、血流等の外力によって振動して血管の内壁Vaに衝突し、血管を痛めることを抑制できる。
【0088】
<変形例4>
図9Bは、変形例4に係る拡張部520を示す側面図である。
【0089】
変形例4の拡張部520は、図9Bに示すように、固定部521と調整部522とを金属製あるいは樹脂製の細線を備える連結部527を介して接続している。固定部521は、フレーム体523を有する。調整部522は、固定部521のフレーム体523と同様のフレーム体528と、このフレーム体528の周囲を覆うフィルム体525とを備えている。
【0090】
このように構成した拡張部520を備える医療器具100も変形例3と同様の作用効果を奏する。
【0091】
<変形例5>
図9Cは、変形例5に係る拡張部620を示す側面図である。
【0092】
変形例5の拡張部620は、図9Cに示すように、固定部621と調整部622とを金属製あるいは樹脂製の細線を備える連結部627を介して接続している。固定部621は、フレーム体623を有する。調整部622は、円筒形状のフィルム体625から形成され、変形例4と異なりフレーム体528を備えていない。調整部622は、フレーム体を備えていないが、外シャフト110から放出されると血流の力によって傘のように開き、拡張する。
【0093】
このように構成した拡張部620を備える医療器具100も変形例3と同様の作用効果を奏する。
【0094】
<変形例6>
図9Dは、変形例6に係る拡張部720を示す側面図である。
【0095】
変形例6の拡張部720は、図9Dに示すように、変形例5と同様に、固定部721と調整部722とを金属製あるいは樹脂製の細線を備える連結部727を介して接続している。固定部721は、フレーム体723を有する。調整部722を形成するフィルム体725は、変形例5と異なり、先端側が大径、基端側が小径となる円錘台形状を有している。調整部722が円錘台形状を有していても、血管を部分閉塞できる。
【0096】
このように構成した拡張部720を備える医療器具100も変形例3と同様の作用効果を奏する。
【0097】
次に、回収部140の変形例について説明する。なお、上記実施形態に係る医療器具100と同様の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0098】
<変形例7>
図10は、変形例7に係る回収部240を示す断面図である。
【0099】
医療器具100における回収部240は、外シャフト110の外側に放出された拡張部120を内腔111に回収することができる限りにおいて、具体的な構成は適宜改変可能である。
【0100】
変形例7の回収部240は、図10に示すように、実施形態における回収部140と同様に、内シャフト130と、拡張部120を内シャフト130に接続するコネクタ141と、を備える。変形例7の回収部240はさらに、拡張部120における固定部121の先端部に接続され固定部121の先端側を内側に巻き込むことが可能な収縮部243を備える。収縮部243は、複数の金属細線244を備えている。金属細線244の先端は固定部121の先端部に接続され、金属細線244の基端は手元操作部160に伸びている。
【0101】
拡張部120を回収するとき、図10に示される状態から、手元操作部160において収縮部243を基端側に引っ張る。すると、固定部121の先端側は、収縮部243によって引っ張られ、内側に巻き込まれる。さらに、外シャフト110を前進させ、内シャフト130を後退させる。拡張部120の調整部122が外シャフト110の内腔111に引き込まれ、拡張部120の固定部121も外シャフト110の内腔111に引き込まれる。このような回収部240によっても、外シャフト110の外側に放出された拡張部120は、内腔111に回収される。
【0102】
以上、実施形態および変形例を通じて本発明を説明したが、本発明は明細書において説明した内容のみに限定されるものでなく、特許請求の範囲の記載に基づいて適宜変更することが可能である。
【0103】
例えば、上記実施形態に係る医療器具100は、遅発性脳血管攣縮を治療するために、大動脈Vを部分閉塞するために用いられた。しかし、本発明に係る医療器具100が部分閉塞する生体管腔は、大動脈Vに特に限定されない。また、本発明に係る医療器具100は、遅発性脳血管攣縮を治療するために用いるものに限定されない。
【0104】
拡張部120における固定部121のフレーム体123を自己拡張型ステント124から構成した場合を説明したが、バルーン拡張型ステントから構成することができる。この場合、フレーム体123の内側に拡張収縮用のバルーンが接続されている。バルーン拡張時において血流を確保するため、バルーンの軸直交断面の形状は凹凸形状あるいは波型形状を有する。拡張部120およびバルーンを外シャフト110の外側に放出した状態において、バルーンに生理食塩水などの拡張用流体を供給することによって、拡張部120が拡張される。バルーンに供給した拡張用流体を吸引することによって、拡張部120およびバルーンを収縮させることができる。
【0105】
固定部121のフレーム体123が拡張状態において円筒形状を有する場合を図示したが、例えば、フレーム体は、径方向Rに拡張収縮自在なアーム部を周方向に複数個配置したものでもよい。この場合のフレーム体は、複数のアーム部が長軸方向Xから見て放射状に拡がった状態において生体管腔Vの内壁Vaに固定される。
【0106】
ストッパー133と係合部としての段差112とを有する規制部150を図示したが、規制部150は、外シャフト110の内腔111内において調整部122の基端部が外シャフト110の先端部に対して最接近可能な位置を制限することができる限りにおいて、具体的な構成は適宜改変可能である。例えば、規制部はストラップから構成することができる。ストラップの一端を拡張部120の基端部に接続し、ストラップの他端を外シャフト110の内腔111に接続する。ストラップの長さを調整することによって、外シャフト110の先端部からの調整部122の最大放出長さを制限することができる。
【符号の説明】
【0107】
100 医療器具、
110 外シャフト、
111 内腔、
111a 小径部、
111b 大径部、
112 段差(係合部)、
120、220、320、420、520、62、720 拡張部、
121、221、321、421、521、621、721 固定部、
122、222、322、422、522、622、722 調整部、
123、423、523、623、723 フレーム体、
124 自己拡張型ステント、
125、225、325、425、525、625、725 フィルム体、
126 拡張部マーカ、
130 内シャフト、
131 内腔、
132 先端マーカ、
133 ストッパー、
140、240 回収部、
141 コネクタ、
142 金属細線、
150 規制部、
160 手元操作部、
161 本体部、
162 操作部材、
226 縁辺、
243 収縮部、
244 金属細線、
326 孔部、
527、627、727 連結部、
528 フレーム体、
V 大動脈(生体管腔)、
Va 内壁、
R 径方向、
X 長軸方向。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図10