(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】光ファイバ母材の製造方法および光ファイバの製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 37/027 20060101AFI20220921BHJP
C03B 37/012 20060101ALI20220921BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
C03B37/027 A
C03B37/012 A
G02B6/02 356A
(21)【出願番号】P 2019059903
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-12-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「高度通信・放送研究開発委託研究/マルチコアファイバの実用化加速に向けた研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】福本 良平
(72)【発明者】
【氏名】竹永 勝宏
【審査官】須藤 英輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-031427(JP,A)
【文献】特開2000-327358(JP,A)
【文献】特開2005-145796(JP,A)
【文献】特開2004-043249(JP,A)
【文献】特開2018-140912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00-37/16
C03B 23/00-35/26
C03B 40/00-40/04
G02B 6/02-6/10
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単位光ファイバ母材を作製する母材作製工程と、前記複数の単位光ファイバ母材を接続する母材連結工程とを有し、
前記母材作製工程は、
光ファイバのクラッドとなるクラッドガラス体を貫通する貫通孔に、コアとなるガラスロッドを挿入するロッド挿入工程と、
前記クラッドガラス体の第1端部を加熱して変形させることで前記第1端部に開口する前記貫通孔の開口部を塞ぐ第1端封止部を形成する第1封止工程と、
前記貫通孔内が減圧された状態を保ちつつ、前記クラッドガラス体の、前記第1端部とは反対の端部である第2端部を加熱して変形させることで前記第2端部に開口する前記貫通孔の開口部を塞ぐ第2端封止部を形成する第2封止工程と、を含み、
前記母材連結工程は、前記複数の単位光ファイバ母材の端部同士を突き合わせ接続することで連結光ファイバ母材を得る、光ファイバ母材の製造方法。
【請求項2】
前記第1封止工程の後、前記第2封止工程の前に、前記第1端封止部とダミーロッドの端部とを接続する、請求項1記載の光ファイバ母材の製造方法。
【請求項3】
前記複数の単位光ファイバ母材は、その構成が互いに同じである、請求項1または2に記載の光ファイバ母材の製造方法。
【請求項4】
前記単位光ファイバ母材のうち少なくとも一方の前記第2端封止部を、前記単位光ファイバ母材の中心に近いほど突出高さを増す形状に形成する、請求項1~3のうちいずれか1項に記載の光ファイバ母材の製造方法。
【請求項5】
前記単位光ファイバ母材のうち少なくとも一方の前記第2端封止部を、少なくとも先端部が湾曲凸面状となる様に形成する、請求項1~4のうちいずれか1項に記載の光ファイバ母材の製造方法。
【請求項6】
前記複数の単位光ファイバ母材の端部同士を突き合わせ接続するにあたり、前記端部同士を溶着させる、請求項1~5のうちいずれか1項に記載の光ファイバ母材の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6のうちいずれか1項に記載の光ファイバ母材の製造方法によって得られた光ファイバ母材を線引きすることによって光ファイバを得る、光ファイバの製造方法。
【請求項8】
前記単位光ファイバ母材同士の接続部に由来する部分の光ファイバを、前記接続部に由来する部分以外の部分の光ファイバから切除する、請求項7記載の光ファイバの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ母材の製造方法および光ファイバの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ母材を製造する方法としては、例えば、孔開法(穿孔法)がある。孔開法では、クラッド用ガラスロッドに形成した貫通孔にコアロッドを挿入して光ファイバ母材を得る。光ファイバは、光ファイバ母材を構成するクラッド用ガラスロッドとコアロッドを加熱して一体化させつつ線引きすることで製造することができる。クラッド用ガラスロッドとコアロッドを一体化させつつ線引きする方法は、クラッド用ガラスロッドとコアロッドを一体化させた後に線引きする方法に比べて工程が簡略であるため、生産性が高い。
【0003】
クラッド用ガラスロッドとコアロッドを一体化させつつ線引きする方法を採用する場合、光ファイバ内に空隙が生じるのを防ぐため、線引きは、母材内を真空引きしながら行なう(例えば、特許文献1を参照)。母材を真空引きするには、母材の線引き端とは反対の端にダミー管を介して取り付けたコネクタを通して排気を行う。ダミー管は、母材とコネクタとの距離を確保することによって、線引き装置の熱によるコネクタの焼損を避けるために設けられる。
【0004】
光ファイバの量産化のためには、母材を長尺化することが有効である。しかし、線引き装置にセットできる母材の長さには制限があるため、前述のダミー管およびコネクタを用いる製造方法では、線引きできる母材の有効長を十分に確保するのが難しい場合がある。また、母材は、長尺化するほど形状のずれが起こりやすくなる。例えば、長尺の母材では貫通孔の位置ずれが起こりやすく、光ファイバの形状(例えば、コア間距離、偏心量など)に影響が及ぶ可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一態様は、母材の形状精度が良好であり、かつ生産性を向上できる光ファイバ母材の製造方法および光ファイバの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、複数の単位光ファイバ母材を作製する母材作製工程と、前記複数の単位光ファイバ母材を接続する母材連結工程とを有し、前記母材作製工程は、光ファイバのクラッドとなるクラッドガラス体を貫通する貫通孔に、コアとなるガラスロッドを挿入するロッド挿入工程と、前記クラッドガラス体の第1端部を加熱して変形させることで前記第1端部に開口する前記貫通孔の開口部を塞ぐ第1端封止部を形成する第1封止工程と、前記貫通孔内が減圧された状態を保ちつつ、前記クラッドガラス体の、前記第1端部とは反対の端部である第2端部を加熱して変形させることで前記第2端部に開口する前記貫通孔の開口部を塞ぐ第2端封止部を形成する第2封止工程と、を含み、前記母材連結工程は、前記複数の単位光ファイバ母材の端部同士を突き合わせ接続することで連結光ファイバ母材を得る光ファイバ母材の製造方法を提供する。
【0008】
前記光ファイバ母材の製造方法では、前記第1封止工程の後、前記第2封止工程の前に、前記第1端封止部とダミーロッドの端部とを接続することができる。
【0009】
前記複数の単位光ファイバ母材は、その構成が互いに同じであることが好ましい。
【0010】
前記光ファイバ母材の製造方法では、前記単位光ファイバ母材のうち少なくとも一方の前記第2端封止部を、前記単位光ファイバ母材の中心に近いほど突出高さを増す形状に形成することが好ましい。
【0011】
前記光ファイバ母材の製造方法では、前記単位光ファイバ母材のうち少なくとも一方の前記第2端封止部を、少なくとも先端部が湾曲凸面状となる様に形成することができる。
【0012】
前記光ファイバ母材の製造方法では、前記複数の単位光ファイバ母材の端部同士を突き合わせ接続するにあたり、前記端部同士を溶着させることができる。
【0013】
本発明の他の態様は、前記記載の光ファイバ母材の製造方法によって得られた光ファイバ母材を線引きすることによって光ファイバを得る光ファイバの製造方法を提供する。
【0014】
前記光ファイバの製造方法では、前記単位光ファイバ母材同士の接続部に由来する部分の光ファイバを、前記接続部に由来する部分以外の部分の光ファイバから切除することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、母材の形状精度が良好であり、かつ生産性を向上できるマルチコアファイバ母材の製造方法およびマルチコアファイバの製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態の製造方法の孔開工程を説明する断面図である。
【
図5】ダミーロッド接続工程を説明する断面図である。
【
図10】ダミーロッド分離工程を説明する断面図である。
【
図11】ダミーロッド分離工程を説明する断面図である。
【
図12】光ファイバ母材の一例を示す断面図である。
【
図14】第2端封止部の第1変形例を示す構成図である。
【
図15】第2端封止部の第2変形例を示す構成図である。
【
図16】実施形態の製造方法によって得られた光ファイバの一例であるマルチコアの光ファイバの断面図である。
【
図17】実施形態の製造方法によって得られた光ファイバの一例であるシングルコアの光ファイバの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態に係る光ファイバ母材の製造方法および光ファイバの製造方法について、図面を参照して説明する。
【0018】
[光ファイバ母材の製造方法]
実施形態に係る光ファイバ母材の製造方法を、
図1~
図11を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、部材を認識可能な大きさとするため縮尺を変更している場合がある。
【0019】
実施形態の製造方法は、母材作製工程と、母材連結工程とを有する。
母材作製工程は、(1)孔開工程、(2)洗浄工程、(3)ダミー管接続工程、(4)ロッド挿入工程、(5)第1封止工程、(6)ダミーロッド接続工程、(7)減圧工程、(8)第2封止工程を有する。母材連結工程は、(9)母材連結工程、(10)ダミーロッド分離工程を有する。
以下、各工程について説明する。
図1~
図11は、各工程を説明する断面図である。
【0020】
(1)孔開工程
図1に示すように、クラッドガラス体11は、円柱状に形成されている。クラッドガラス体11は、例えば、石英ガラス製の一体成形品である。クラッドガラス体11に、ドリルツールなどを用いて複数の貫通孔12を形成する。貫通孔12はクラッドガラス体11に、その中心軸線に平行に貫通形成される。貫通孔12の両端はそれぞれ、クラッドガラス体11の軸線方向の端面に開口される。貫通孔12は、例えば、クラッドガラス体11の中央部を取り囲むように、軸周り方向に間隔をおいて複数箇所に形成される。
【0021】
(2)洗浄工程
貫通孔12内には、孔開時に用いた切削液、ドリルツール由来の金属粉などが残っている場合があるため、純水、アルコール(エタノール)、アルカリ液などの洗浄液を用いて、クラッドガラス体11の外面および貫通孔12の内面の洗浄を行う。
【0022】
洗浄工程では、貫通孔12の内面を、エッチングによって処理することもできる。エッチングによって、例えば、貫通孔12の内面のマイクロクラックに付着した異物(前記金属粉など)を除去することができる。エッチングは、ウェットエッチングでもよいし、ドライエッチングでもよい。ウェットエッチングでは、フッ酸を含むエッチング液、例えば、フッ酸とフッ化アンモニウムを混合したBHF(バッファードフッ酸)などを使用できる。ドライエッチングでは、エッチングガスとして、例えばSF6(六フッ化硫黄)ガス、C2F6(六フッ化エタン)ガスなどのフッ化ガスを使用できる。ドライエッチングでは、クラッドガラス体11を1200℃以上に加熱ししつつ、貫通孔12にエッチングガスを導入する。
【0023】
(3)ロッド挿入工程
図2に示すように、クラッドガラス体11の複数の貫通孔12のそれぞれに、コアとなるガラスロッド14(以下、コア用ガラスロッドとも言う)を挿入する。これによって、クラッドガラス体11の複数の貫通孔12のそれぞれにコア用ガラスロッド14が挿入された構成のガラス材ユニットU1が得られる。
【0024】
コア用ガラスロッド14は、水、アルコール、アルカリ液などの洗浄液を用いて予め洗浄しておくのが好ましい。コア用ガラスロッド14は、エッチングを行って表面の汚れを除去してもよい。
ロッド挿入工程は、クリーン度の高い室内で行うことが好ましい。これにより、伝送損失悪化の原因となる挨、汚れなどがコア用ガラスロッド14に付着するのを防ぐことができる。
【0025】
ロッド挿入工程では、クラッドガラス体11の複数の貫通孔12のうち1つ以上の貫通孔12に、コア用ガラスロッド14に代えてコア識別マーカ用ガラスロッド(図示略)を挿入してもよい。コア識別マーカ用ガラスロッドは、例えば、クラッドガラス体11およびコア用ガラスロッド14の両方に対して屈折率が異なるガラスロッド等である。貫通孔12へのコア識別マーカ用ガラスロッドの挿入は、貫通孔12へのコア用ガラスロッド14の挿入と同様に行なうことができる。以下、コア用ガラスロッド14とコア識別マーカ用ガラスロッドとを「挿入ガラスロッド」と総称することがある。
【0026】
挿入ガラスロッドは、例えば、その外径が貫通孔12の内径の80~99%であるものを好適に使用できる。線引きによって得られる光ファイバ2におけるコア位置精度の安定確保の点で、挿入ガラスロッドの外径は、貫通孔12の内径の90~99%であることがより好ましく、95~99%であることがさらに好ましい。
【0027】
(4)ダミー管接続工程
図3に示すように、ガラス材ユニットU1の両端に、それぞれダミー管13を溶着などにより接続する。ダミー管13は、例えば、石英ガラス製の円筒状部材である。ダミー管13は、その軸線方向の一端の端面をクラッドガラス体11の軸線方向片端の端面に突き合わせるようにしてクラッドガラス体11に接続する。ダミー管13は、クラッドガラス体11に溶着したときに、貫通孔12の開口部を閉止しない内径を有する。
【0028】
ダミー管13をガラス材ユニットU1に溶着する際には、加熱箇所で、クラッドガラス体11とコア用ガラスロッド14とが一体化してもよい。溶着の際には、クラッドガラス体11とコア用ガラスロッド14とが一体化した部分ができるだけ長くなるように加熱範囲を調整することが好ましい。これにより、後述する母材連結工程において母材(
図8に示す光ファイバ母材1A)に割れが生じにくくなる。
【0029】
なお、本実施形態では、ガラス材ユニットU1の両端にそれぞれダミー管13を接続するが、ガラス材ユニットの一端にダミー管を接続し、他端にはダミーロッドを接続してもよい。その場合には、第2封止工程において、例えばダミー管を通してガラス材ユニットの貫通孔の内部を減圧することができる。
【0030】
(5)第1封止工程
図4に示すように、ガラス材ユニットU1の一方の端部(以下、第1端部という。
図4において右の端部)を、火炎16(例えば酸水素炎)等を用いて加熱し、縮径させて全ての貫通孔12の開口部を塞ぐ(すなわち、気密に封止する)。これにより、ガラス材ユニットU1の第1端部側のダミー管13は、溶断によりガラス材ユニットU1から分離される。なお、ガラス材ユニットU1を加熱する手段は火炎16に限らず、電気炉などを用いてもよい。
【0031】
貫通孔12の開口部を気密に封止した状態のガラス材ユニットU1の第1端部を、第1端封止部17という。第1端封止部17は、クラッドガラス体11の第1端部がコア用ガラスロッド14の第1端部とともに加熱縮径されて中実化されている。第1端封止部17は、例えば、先細りのテーパ状(例えば、円錐形状)に形成されている。
【0032】
なお、クラッドガラス体11の貫通孔12の1つ以上にコア識別マーカ用ガラスロッドを挿入した場合は、第1端封止部17は、クラッドガラス体11の第1端部を、コア用ガラスロッド14の第1端部およびコア識別マーカ用ガラスロッドの第1端部とともに加熱縮径して中実化した構成となる。
第1封止工程では、ガラス材ユニットU1は、チャック20がダミー管13を把持することにより所定の位置に保持される。
【0033】
(6)ダミーロッド接続工程
図5に示すように、ガラス材ユニットU1の第1端封止部17に、ダミーロッド15の端部を溶着、一体化する。ダミーロッド15は、例えば石英ガラス製である。ダミーロッド15は中実構造であり、円柱状に形成されている。ダミーロッド15は、クラッドガラス体11の第1端部の貫通孔12の開口部を塞ぐ(すなわち、気密に封止する)。ダミーロッド15は、ガラス材ユニットU1の第1端部の端面に突き合わせられ、ガラス材ユニットU1に同軸に位置合わせされて溶着、一体化する。ダミーロッド15は、ガラス材ユニットU1に溶着したときに、全ての貫通孔12の開口部を塞ぐことができる外径を有する。
【0034】
後述する第2封止工程においては、ダミーロッド15をチャック20によって把持することによってガラス材ユニットU1を保持できる。そのため、ガラス材ユニットU1の傷つきを抑制できる。また、ダミーロッド15によって、チャック20と加熱箇所との距離を長く確保できるため、チャック20の焼損を防ぐことができる。
なお、ダミーロッド15は使用しなくてもよい。その場合、後述する第2封止工程において、チャック20はガラス材ユニットU1を把持する。
【0035】
(7)減圧工程
図6に示すように、ダミー管13の、クラッドガラス体11とは反対側の開口端に、コネクタ21を介して真空ポンプ22を接続し、真空ポンプ22によって貫通孔12内を減圧(真空引き)する。減圧工程では、クラッドガラス体11の全ての貫通孔12内を、ダミー管13の内側空間を介して真空引きする。
【0036】
この際、クラッドガラス体11とコア用ガラスロッド14とが一体化しない程度の温度でガラス材ユニットU1を加熱してもよい。これにより、貫通孔12内の気体が膨張するため、ガラス材ユニットU1の温度が下がったときの貫通孔12内の真空度をより高くすることができる。そのため、光ファイバ2(
図13参照)内の空隙(気泡)発生を抑制することができる。
【0037】
減圧工程では、貫通孔12内を減圧した後に、貫通孔12内にヘリウムガスを導入し、その後、貫通孔12内を減圧してもよい。ヘリウムガスは貫通孔12内に残留してもクラッドガラス体11から抜けやすいため、この方法をとると、光ファイバ2(
図13参照)内に空隙(気泡)が生じにくくなる。
なお、本実施形態では、コネクタ21はダミー管13に取り付けられるが、コネクタは直接、ガラス材ユニットに取り付けられてもよい。この場合には、ダミー管を介さずに貫通孔内を減圧(真空引き)できる。
【0038】
(8)第2封止工程
図7に示すように、ガラス材ユニットU1の第1端部とは反対の端部(以下、第2端部という。
図7において左の端部)を、火炎16等を用いて加熱し、縮径させて全ての貫通孔12の開口部を塞ぐ(すなわち、気密に封止する)。貫通孔12の開口部を気密に封止した状態のガラス材ユニットU1の第2端部を、第2端封止部19とも言う。第2端封止部19の先端を含む部分は、クラッドガラス体11の第2端部がコア用ガラスロッド14の第2端部とともに加熱縮径されて中実化されている。ガラス材ユニットU1は、貫通孔12の内部が負圧(大気圧に対して陰圧)となったまま第2端部が封止される。第2端封止部19は、例えば、先細りのテーパ状(例えば、円錐形状)に形成されている。
【0039】
第2封止工程では、貫通孔12内を大気圧から100kPa程度減圧した状態で第2端封止部19を形成することが好ましい。第2端封止部19を形成した後の貫通孔12の内圧は1kPa以下が好適である。
なお、第2封止工程では、貫通孔12の内部が減圧された状態が保たれていればよい。第2封止工程では、減圧工程に引き続いて真空ポンプ22を稼働させて貫通孔12内を減圧し続けてもよいし、真空ポンプ22を稼働停止させもよい。
【0040】
第2封止工程によって、光ファイバ母材1A(単位光ファイバ母材)が得られる。光ファイバ母材1Aは、ガラス材ユニットU1と、ガラス材ユニットU1に接続されたダミーロッド15とを備える。光ファイバ母材1Aのクラッドガラス体11の内部には、内孔18が形成される。内孔18は、貫通孔12の第1端部側が第1端封止部17によって封止され、第2端部側がダミーロッド15によって封止された孔部である。内孔18の内圧は、第2端封止部19が形成される前の貫通孔12の圧力と同等となる。
【0041】
図12は、光ファイバ母材1Aの一例を示す断面図である。
図12に示す光ファイバ母材1Aの内孔18の数は4つであり、これらの内孔18は、クラッドガラス体11の中心軸の周りに等間隔に配列されている。
【0042】
図7に示すように、第2封止工程は、貫通孔12内を大気圧から100kPa程度減圧した状態で第2端封止部19を形成し、内圧が1kPa以下の内孔18を確保することに限定されない。
内孔18の内圧は、線引き工程の開始から完了まで負圧を維持できるように設定すればよく、例えば1kPa超~20kPa程度であってもよい。
ただし、第2封止工程にて形成した内孔18の真空度が低い(例えば内孔18の内圧が1kPa超~20kPa)場合は、内孔18の内圧は、1kPa以下の場合に比べてクラッドガラス体11の温度の影響を受けやすくなる。そのため、真空ポンプ22が貫通孔12に作用させる真空圧は、線引き工程の進行に伴う内孔18容積の縮小に加えて、連結光ファイバ母材1Bの構成部材(クラッドガラス体11等)の温度変化に伴う内孔18の内圧の変動も考慮して、線引き工程において内孔18内が負圧の状態を安定維持できるように設定するのが好ましい。
【0043】
第2封止工程では、例えば内圧が20kPa以下の内孔18を形成して、線引き工程において内孔18の内圧を負圧とすることができる。線引き開始前の連結光ファイバ母材1Bの内孔18の内圧が20kPa以下であれば、線引き工程において内孔18の内圧の負圧を維持したまま充分な長さの光ファイバを線引きすることが可能である。内孔18の内圧は、例えば20kPa以下であるが、10kPa以下、あるいは1kPa以下であってもよい。
【0044】
図1~
図7に示す孔開工程~第2封止工程に従って、光ファイバ母材1A(
図7参照)を、さらに作製する。これにより、2以上の光ファイバ母材1Aが得られる(
図8参照)。
【0045】
(9)母材連結工程
図8に示すように、2つの光ファイバ母材1A,1Aの第2端封止部19,19どうしを向かい合わせる。
次いで、
図9に示すように、両方の光ファイバ母材1A,1Aの第2端封止部19,19を、火炎16等を用いて加熱し、互いに溶着させる。これによって、2つの光ファイバ母材1A,1Aは、接続部23において突き合わせ接続される。
第2端封止部19,19を溶着により接続すると、2つの光ファイバ母材1A,1Aを介在物なしで接続できる。そのため、後述する線引き工程において、接続部23を含む部分の光ファイバ母材1A,1Aを滞りなく線引きすることができる。
【0046】
接続部23は、光ファイバ母材1Aに比べて太径または細径となってもよいが、接続部23と光ファイバ母材1Aとの外径差は小さいことが望ましい。この外径差が小さいと、後述する線引き工程において光ファイバ2の外径変動を小さくできるため、断線などの不具合が起こりにくくなる。
【0047】
(10)ダミーロッド分離工程
次いで、
図10および
図11に示すように、一方の光ファイバ母材1Aのガラス材ユニットU1の第1端部(ダミーロッド15が接続された箇所)を、火炎16等を用いて溶断する。溶断された第1端部は、全ての貫通孔12の開口部が塞がれ、気密に封止される。貫通孔12の開口部が塞がれた第1端部を先端封止部24という。
このようにして、複数のガラス材ユニットU1が連結された光ファイバ母材(マルチコアファイバ母材。以下、連結光ファイバ母材1Bという)を得る。
【0048】
接続される2つの光ファイバ母材1A,1Aは、その構成が互いに同じであることが望ましい。ここでいう構成とは、例えば、クラッドガラス体11の外径、内孔18の空隙率、内孔18の数、内孔18の配置、内孔18どうしの距離などの数値で表される。なかでも特に、クラッドガラス体11の外径と内孔18の空隙率は、光ファイバ2の外径に与える影響が大きいため重要である。なお、2つの光ファイバ母材1A,1Aの数値の差異が一方の数値に対して±10%の範囲にあれば、2つの数値は同じとみなしてもよい。
【0049】
接続される2つの光ファイバ母材1A,1Aの構成が同じであると、線引き工程において、一方の光ファイバ母材1Aから得られる光ファイバ2と、他方の光ファイバ母材1Aから得られる光ファイバ2との外径を同じにしやすい。そのため、光ファイバ2の径の調整が容易となる。
【0050】
本実施形態の製造方法では、2つのガラス材ユニットU1を連結した連結光ファイバ母材1Bを作製するが、連結光ファイバ母材を構成するガラス材ユニットの数は2に限定されず、3以上の任意の数であってもよい。
【0051】
[光ファイバの製造方法]
実施形態に係る光ファイバの製造方法の線引き工程を、
図13を参照して説明する。
図13は、連結光ファイバ母材1Bから線引きして光ファイバ2(マルチコアファイバ)を製造する線引き装置50を示す構成図である。
図13に示すように、線引き装置50は、連結光ファイバ母材1Bを吊支する母材昇降装置51と、母材昇降装置51に吊支された連結光ファイバ母材1Bの下端部(先端部)を加熱するリング状の加熱炉52とを有する。母材昇降装置51は、昇降フレーム51aと、昇降フレーム51aを昇降させる昇降装置本体51bとを有する。昇降フレーム51aは、加熱炉52の上方に配置され、昇降装置本体51bによって昇降される。
【0052】
連結光ファイバ母材1Bは、ダミーロッド15の突端部を昇降フレーム51aに取り付けて、先端封止部24が下端部となるように昇降フレーム51aから吊り下げる。昇降フレーム51aに吊り下げ状態に支持させた連結光ファイバ母材1Bの下端部の先端封止部24は、リング状の加熱炉52の内側貫通孔52a(母材挿入孔)に挿入する。
【0053】
連結光ファイバ母材1Bの下端部を加熱炉52によって加熱してガラス粘度を低下(軟化)させた状態を保ったまま、連結光ファイバ母材1B下端部から下方へ光ファイバ2を線引きする。昇降フレーム51aの下降によって連結光ファイバ母材1Bを加熱炉52(具体的にはその内側貫通孔52a)へ送り込みながら、連結光ファイバ母材1B下端部からの光ファイバ2の線引きを継続する。
【0054】
連結光ファイバ母材1B下端部は、光ファイバ2の線引きが可能なレベルまでガラス粘度が低下(軟化)する温度(線引き時加熱温度)に加熱されることでガラス粘度の低下とともに連結光ファイバ母材1Bを形成するガラス材の収縮が起き、縮径したクラッドガラス体11がコア用ガラスロッド14に一体化する。
貫通孔12に挿入されたコア識別マーカ用ガラスロッドが存在する場合は、加熱された連結光ファイバ母材1Bの下端部にてクラッドガラス体11はコア用ガラスロッド14だけでなくコア識別マーカ用ガラスロッドにも一体化される。
【0055】
挿入ガラスロッドに対するクラッドガラス体11の一体化は、昇降フレーム51aの下降による連結光ファイバ母材1Bの加熱炉52への送り込みに伴い進行する。すなわち、連結光ファイバ母材1Bからの光ファイバ2の線引きは、連結光ファイバ母材1Bの加熱炉52への送り込み進行によって挿入ガラスロッドへのクラッドガラス体11の一体化を進行しながら行われる。
【0056】
線引き時加熱温度に加熱された挿入ガラスロッドおよびクラッドガラス体11は、常温時に比べて軟化し表面張力が低下する。線引き時加熱温度に加熱されたクラッドガラス体11は内孔18の内圧の影響を受けやすくなる。
連結光ファイバ母材1Bの下端部が線引き時加熱温度に加熱されたとき、クラッドガラス体11は、自身の収縮の他、内孔18の内圧(負圧)の影響も受けて貫通孔12の縮径を伴う全体の縮径を生じ、挿入ガラスロッドに一体化される。そのため、連結光ファイバ母材1Bの下端部(先端部)から光ファイバ2を線引きする工程(線引き工程)において、内圧が負圧の内孔18によって、クラッドガラス体11と挿入ガラスロッドとの一体化を効率良く行うことができる。
【0057】
クラッドガラス体11と挿入ガラスロッドとの一体化は、連結光ファイバ母材1Bの加熱炉52への送り込みに伴い、クラッドガラス体11の内孔18内面と挿入ガラスロッドとの間の空間が潰れながら進行する。これにより、内孔18の容積は縮小する。
【0058】
連結光ファイバ母材1Bの接続部23から線引きされた光ファイバ2については、連結光ファイバ母材1Bの他の部分から得られた光ファイバ2に比べて形状が安定していない場合がある。この場合は、光ファイバ2の製造後に、接続部23に由来する部分の光ファイバ2を、接続部23に由来する部分以外の部分の光ファイバ2から切除することで上記の問題を解決できる。
【0059】
光ファイバ2の線引きは、連結光ファイバ母材1Bの、ダミーロッド15側の端部(一端部。以下、基端部、とも言う)に達するまで行ってもよいし、基端部が線引きに使用される前に停止してもよい。連結光ファイバ母材1Bの基端部がダミーロッド15との溶着の影響で変形している場合、光ファイバ2の線引きを基端部に達する前に停止すると、その変形の影響を回避できる。
【0060】
線引き開始前の連結光ファイバ母材1Bの内孔18の内圧は、光ファイバ2の線引き完了時点で負圧であるように確保する。これにより、光ファイバ2の線引き開始から完了まで連結光ファイバ母材1Bの内孔18の内圧を負圧に維持できる。連結光ファイバ母材1Bの製造における第2封止工程では、光ファイバ2の線引き完了時点で内孔18に負圧が確保されるように真空ポンプによってクラッドガラス体11の貫通孔12を真空引きしながら内孔18を形成する。
なお、線引き開始前の連結光ファイバ母材1Bの内孔18の内圧は、光ファイバ2の線引き完了直前の時点で負圧であるように定めてもよい。
【0061】
[実施形態の光ファイバ母材の製造方法および光ファイバの製造方法が奏する効果]
本実施形態の製造方法によれば、母材連結工程(
図8および
図9参照)およびダミーロッド分離工程(
図10および
図11参照)によって、複数のガラス材ユニットU1を連結した連結光ファイバ母材1Bが得られる。連結光ファイバ母材1Bは複数のガラス材ユニットU1を含むため、それぞれ線引き工程において線引きできる母材の有効長を長く確保できる。よって、光ファイバ2の生産性を高めることができる。
これに対し、複数のガラス材ユニットを単独で線引きする場合には、それぞれのガラス材ユニットについて、線引き開始時の光ファイバの径調整、光ファイバ径の安定化のための母材引き残しなどが必要となるため、ガラス材ユニットの合計の有効長は短くなる。
【0062】
本実施形態の製造方法によれば、連結光ファイバ母材1Bの内孔18の内圧が負圧となるため、線引き工程では、内孔18内面と挿入ガラスロッドとの間の空間が消滅し、空隙(気泡)が抑制される光ファイバ2が得られる。そのため、線引き工程において内孔18を真空引きするための真空ポンプが必要ない。連結光ファイバ母材1Bに真空ポンプを接続するコネクタも必要ないため母材とコネクタとの間の距離の確保も不要となり、線引きできる母材の有効長を長く確保できる。よって、光ファイバ2の生産性を高めることができる。
【0063】
本実施形態の製造方法によれば、クラッドガラス体11と挿入ガラスロッドとを一体化させつつ線引きを行うことができる。線引き工程に先だってクラッドガラス体11と挿入ガラスロッドとを完全に一体化させる工程が必要ないため、工程数を少なくできる。よって、本実施形態の製造方法は、光ファイバ2の生産性、および製造の容易さの点で優れている。
【0064】
連結光ファイバ母材1Bの構成要素であるガラス材ユニットU1は、非連結型の光ファイバ母材(例えば、全長にわたって一体形成されている光ファイバ母材)と比べて短い。ガラス材ユニットU1は、その短さゆえに形状(例えば、貫通孔の形成位置等)の長さ方向の変動が生じにくい。そのため、ガラス材ユニットU1は、封止部、接続部などを除く主要部分において形状精度(例えば、貫通孔の形成位置、コア間距離などの正確性)が高い。よって、複数のガラス材ユニットU1を連結した連結光ファイバ母材1Bは、主要部分において、非連結型の光ファイバ母材に比べて形状精度が優れている。
【0065】
本実施形態の製造方法によれば、連結光ファイバ母材1Bを用いるため、複数の短い光ファイバ母材を独立に線引きする場合に比べて、線引き開始時の光ファイバの径の調整の工程の数を少なくできる。例えば、2本の光ファイバ母材を1つの線引き装置で線引きする場合、1本目の母材の線引き開始時に光ファイバの径の調整のために母材の一部を消費し、2本目の母材の線引きを開始する際にも光ファイバの径の調整のために母材の一部を消費する。光ファイバの径の調整の過程で生じた光ファイバは廃棄される。
これに対し、本実施形態の製造方法によれば、2本のガラス材ユニットU1を連結した構造の連結光ファイバ母材1Bを用いることができるため、線引き工程を連続的に行うことができる。そのため、光ファイバの径の調整は最初の1回のみでよい。よって、本実施形態の製造方法は、複数の短い光ファイバ母材を独立に線引きする場合に比べて、廃棄される光ファイバ2を少なくできることから、線引きできる母材の有効長を長く確保できる。よって、光ファイバ2の生産性を高めることができる。
【0066】
図8に示すように、母材連結工程において突き合わせ接続される光ファイバ母材1Aの第2端封止部19の端部は、先端側に向かうにつれ先細っていく形状、すなわち、先細り形状(例えば、円錐形状)とされている。第2端封止部19は、光ファイバ母材1Aの中心に近いほど突出高さを増す形状である。そのため、母材連結工程において、第2端封止部19どうしが溶着される際には、最初に第2端封止部19の中央部が互いに接触し、接触範囲は徐々に外方に広がっていく。したがって、第2端封止部19間に気体がある場合でも、この気体は外方に押し出されて除去される。よって、第2端封止部が平坦である場合に比べて、突き合わせ接続される2つの光ファイバ母材1A同士の接続部に空隙が生じにくい。
【0067】
本実施形態では、2つの光ファイバ母材1Aの第2端封止部19の両方が
図8に示す形状(中心に近いほど突出高さを増す形状)とされているが、突き合わせ接続される2つの第2端封止部のうち少なくとも一方が
図8に示す形状であれば、前述の効果(接続部に空隙が生じにくい)は得られる。
なお、光ファイバ母材の接続数は2に限らず、3以上の任意の数であってもよい。光ファイバ母材の接続数が3以上である場合、少なくとも1つの光ファイバ母材において、第2端封止部だけでなく第1端封止部も他の光ファイバ母材の封止部に突き合わせ接続される。
図8に示す形状の封止部は、第1端封止部に適用することもできる。
【0068】
図14は、光ファイバ母材1Aの第2端封止部19の第1変形例である第2端封止部29を示す構成図である。第2端封止部29は、光ファイバ母材21Aのガラス材ユニットU1の第2端部に形成されている。第2端封止部29は、全面が湾曲凸面状(例えば半球状)に形成されている。第2端封止部29は、先端方向に突出して形成されている。
【0069】
第2端封止部29は湾曲凸面状であるため、母材連結工程における接続相手の光ファイバ母材の第2端封止部(以下、相手側第2端封止部という)の先端部の位置が中心からずれている場合でも、その先端部との接触を確保しやすい。そのため、母材連結工程では、第2端封止部29の先端部が相手側第2端封止部の先端部と接触し、接触範囲は徐々に外方に広がっていく。したがって、第2端封止部29と相手側第2端封止部との間に気体がある場合でも、この気体は外方に押し出されて除去される。よって、接続部に空隙が生じにくい。
【0070】
突き合わせ接続される2つの光ファイバ母材は、少なくとも一方の封止部(第1端封止部または第2端封止部)が、
図14に示す湾曲凸面状の第2端封止部29と同様の形状であれば、前述の効果(接続部に空隙が生じにくい)が得られる。
【0071】
図15は、第2端封止部19の第2変形例である第2端封止部39を示す構成図である。第2端封止部39は、基部39aと、先端部39bとを有する。基部39aは、先端方向に縮径する円錐台状に形成されている。先端部39bは、基部39aに滑らかに連なって形成されている。先端部39bは、湾曲凸面状(例えば球面状)に形成されている。第2端封止部39は、先端方向に突出して形成されている。
【0072】
第2端封止部39は先端部39bが湾曲凸面状であるため、母材連結工程における相手側第2端封止部の先端部の位置が中心からずれている場合でも、その先端部との接触を確保しやすい。そのため、接続部に空隙が生じにくい。
【0073】
突き合わせ接続される2つの光ファイバ母材は、少なくとも一方の封止部(第1端封止部または第2端封止部)が、
図15に示す第2端封止部39と同様の形状であれば、前述の効果(接続部に空隙が生じにくい)が得られる。
【0074】
以上、本発明を最良の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の最良の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。前記実施形態の製造方法では、ポンプを用いて内孔内圧を減圧するが、ポンプを用いずに内孔内圧を減圧することもできる。例えば、減圧された内孔を有するマルチコアファイバ母材を製造するには、減圧工程を省略し、第2封止工程にて加熱した光ファイバ母材の封止完了後の冷却に伴って内孔内圧を低下させてもよい。
工程の順は上述した実施形態における工程順に限定されない。例えば、ロッド挿入工程は、第2封止工程の完了前に行えばよい。具体的には、ロッド挿入工程は、ダミー管接続工程の後、かつ第1封止工程の前であってもよい。ロッド挿入工程は、第1封止工程の後、かつ第2封止工程の前であってもよい。
【0075】
実施形態の製造方法は、スタックアンドドロー法に適用してもよい。スタックアンドドロー法を適用した製造方法は、母材作製工程と、母材連結工程とを有する。
母材作製工程では、ガラス管(クラッドガラス体)の貫通孔内に1または複数のコア被覆ロッドを挿入する(ロッド挿入工程)。コア被覆ロッドは、コアとなるガラスロッドがクラッドガラス層で被覆されたロッドである。ガラス管とコア被覆ロッドとの隙間に1または複数のガラスロッドを挿入する。次いで、ガラス管の第1端部を加熱して変形させることで貫通孔の開口部を塞ぐ第1端封止部を形成する(第1封止工程)。次いで、貫通孔内が減圧された状態を保ちつつ、ガラス管の第2端部を加熱して変形させることで貫通孔の開口部を塞ぐ第2端封止部を形成する(第2封止工程)。これにより、単位光ファイバ母材を得る。単位光ファイバ母材を複数作製する。
母材連結工程では、複数の単位光ファイバ母材の端部同士を突き合わせ接続することで連結光ファイバ母材を得る。
【0076】
光ファイバ母材の接続形態としては、(i)第1端封止部どうしの接続、(ii)第1端封止部と第2端封止部との接続、および(iii)第2端封止部どうしの接続がある。
【0077】
実施形態の製造方法では、マルチコアファイバ母材を作製したが、実施形態の製造方法によって作製される光ファイバ母材はマルチコアファイバ母材に限らず、シングルコアの光ファイバ母材であってもよい。シングルコアの光ファイバ母材を作成する場合には、ロッド挿入工程において、1つの貫通孔を有するクラッドガラス体を用い、その貫通孔に1つのガラスロッドを挿入する。
【0078】
図16は、実施形態の製造方法によって得られた光ファイバ2の一例であるマルチコアの光ファイバ2Aの断面図である。光ファイバ2Aは、複数のコア31と、その外周に設けられたクラッド32とを備える。
図17は、実施形態の製造方法によって得られた光ファイバ2の他の例であるシングルコアの光ファイバ2Bの断面図である。光ファイバ2Bは、1つのコア33と、その外周に設けられたクラッド34とを備える。
【符号の説明】
【0079】
1A…光ファイバ母材(単位光ファイバ母材)、1B…連結光ファイバ母材(マルチコアファイバ母材)、2…光ファイバ(マルチコアファイバ)、11…クラッドガラス体、12…貫通孔、13…ダミー管、14…ガラスロッド(コア用ガラスロッド)、15…ダミーロッド、16…火炎、17…第1端封止部、18…内孔、19…第2端封止部、22…真空ポンプ、23…接続部、24…先端封止部、50…線引き装置。