(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20220921BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20220921BHJP
H01M 8/0612 20160101ALI20220921BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20220921BHJP
H01M 8/2484 20160101ALI20220921BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20220921BHJP
C01B 3/38 20060101ALI20220921BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20220921BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/249
H01M8/0612
H01M8/04 N
H01M8/2475
H01M8/2484
H01M8/04014
C01B3/38
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
(21)【出願番号】P 2019128235
(22)【出願日】2019-07-10
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 泰英
(72)【発明者】
【氏名】高木 義信
(72)【発明者】
【氏名】八木 厚太郎
(72)【発明者】
【氏名】川見 真人
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴史
(72)【発明者】
【氏名】中田谷 直広
(72)【発明者】
【氏名】奥 正雄
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-524208(JP,A)
【文献】特表2015-517175(JP,A)
【文献】特開平06-196197(JP,A)
【文献】特表平08-506691(JP,A)
【文献】特表2016-520976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
C01B 3/00-6/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池システムであって、
軸方向に延びる筒状であり、原燃料を改質して燃料ガスを生成する改質器と、
前記改質器の径方向外側において周方向に並べて配置されて前記改質器と径方向に対向し、前記燃料ガスおよび酸化剤ガスを用いて発電を行う複数のセルスタックと、
前記改質器の径方向内側に配置されて前記改質器と径方向に対向し、前記複数のセルスタックからの排ガスに含まれる未利用の前記燃料ガスを燃焼させる排ガス燃焼器と、
を備え、
前記複数のセルスタックはそれぞれ、
径方向の厚さが縦および横の長さよりも小さい直方体状であり、径方向に積層される複数の平板状のセルを備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池システムであって、
前記排ガス燃焼器は、前記改質器のうち前記原燃料が供給される供給ポート近傍の部位と径方向に対向することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の燃料電池システムであって、
前記複数のセルスタックは、前記軸方向に3段以上に亘って配列される複数段のセルスタック群を備え、
前記複数段のセルスタック群のうち前記軸方向の両端を除く少なくとも1段のセルスタック群が、前記改質器のうち前記原燃料が供給される供給ポート近傍の部位と径方向に対向することを特徴とする燃料電池システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の燃料電池システムであって、
前記排ガス燃焼器から排出された燃焼ガスを、前記改質器の内部を通過させる燃焼ガス流路をさらに備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項5】
請求項4に記載の燃料電池システムであって、
前記燃焼ガス流路は、前記改質器内において前記軸方向に延びるU字状であることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項6】
請求項4または5に記載の燃料電池システムであって、
前記燃焼ガス流路内における前記燃焼ガスの流れ方向は、前記改質器内におけるガスの流れ方向と反対向きであることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の燃料電池システムであって、
前記改質器、前記複数のセルスタックおよび前記排ガス燃焼器を、密閉された内部空間に収容する圧力容器をさらに備え、
前記複数のセルスタックはそれぞれ、正極排ガスを前記圧力容器の前記内部空間へと排出する正極排出口を備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の燃料電池システムであって、
前記改質器、前記複数のセルスタックおよび前記排ガス燃焼器を、密閉された内部空間に収容する圧力容器と、
前記圧力容器の周囲に配置されて前記圧力容器と対向するとともに前記複数のセルスタックに供給される前記酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス流路と、
をさらに備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項9】
請求項8に記載の燃料電池システムであって、
前記酸化剤ガス流路に隣接して配置され、前記圧力容器から排出された正極排ガスまたは前記排ガス燃焼器から排出された燃焼ガスが流れる排ガス流路をさらに備えることを特徴とする燃料電池システム。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1つに記載の燃料電池システムであって、
前記複数のセルスタックはそれぞれ、固体酸化物形の燃料電池であることを特徴とする燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池を利用して発電を行う様々な燃料電池システムが提案されている。例えば、特許文献1の固体酸化物形燃料電池システムでは、環状に配置された複数のセルスタックがコンテナに収容されており、燃料ガスを生成する改質器はコンテナの外部に配置される。特許文献2の高温燃料電池装置では、複数の高温燃料電池スタックが円筒状に配置され、改質器は、当該複数の高温燃料電池スタックの径方向内側の空間に配置される。改質器にて生成された燃料ガスのうち、高温燃料電池スタックにおいて消費されなかった燃料ガス(すなわち、負極排ガス)は、高温燃料電池装置の外部へと排出されて燃焼される。特許文献3の固体酸化物形燃料電池発電システムでは、複数のシングルスタックと複数の改質器とが環状に交互に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表平8-506691号公報
【文献】特許第6258037号公報
【文献】特許第6138356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、改質器における燃料ガスの生成は吸熱反応であるため、コンテナの外部において改質器を加熱するための加熱装置が必要になる。特許文献2では、複数の高温燃料電池スタックからの排熱により改質器が加熱されるが、高温燃料電池装置における排熱の利用が不十分である。特許文献3についても同様である。また、特許文献3の固体酸化物形燃料電池発電システムでは、改質器の数が多くなり、接続配管も増えるため、発電システムの構造が複雑化し、発電システムが大型化するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、燃料電池システムの小型化を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、燃料電池システムであって、軸方向に延びる筒状であり、原燃料を改質して燃料ガスを生成する改質器と、前記改質器の径方向外側において周方向に並べて配置されて前記改質器と径方向に対向し、前記燃料ガスおよび酸化剤ガスを用いて発電を行う複数のセルスタックと、前記改質器の径方向内側に配置されて前記改質器と径方向に対向し、前記複数のセルスタックからの排ガスに含まれる未利用の前記燃料ガスを燃焼させる排ガス燃焼器とを備え、前記複数のセルスタックはそれぞれ、径方向の厚さが縦および横の長さよりも小さい直方体状であり、径方向に積層される複数の平板状のセルを備える。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の燃料電池システムであって、前記排ガス燃焼器は、前記改質器のうち前記原燃料が供給される供給ポート近傍の部位と径方向に対向する。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の燃料電池システムであって、前記複数のセルスタックは、前記軸方向に3段以上に亘って配列される複数段のセルスタック群を備え、前記複数段のセルスタック群のうち前記軸方向の両端を除く少なくとも1段のセルスタック群が、前記改質器のうち前記原燃料が供給される供給ポート近傍の部位と径方向に対向する。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の燃料電池システムであって、前記排ガス燃焼器から排出された燃焼ガスを、前記改質器の内部を通過させる燃焼ガス流路をさらに備える。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の燃料電池システムであって、前記燃焼ガス流路は、前記改質器内において前記軸方向に延びるU字状である。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の燃料電池システムであって、前記燃焼ガス流路内における前記燃焼ガスの流れ方向は、前記改質器内におけるガスの流れ方向と反対向きである。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の燃料電池システムであって、前記改質器、前記複数のセルスタックおよび前記排ガス燃焼器を、密閉された内部空間に収容する圧力容器をさらに備え、前記複数のセルスタックはそれぞれ、正極排ガスを前記圧力容器の前記内部空間へと排出する正極排出口を備える。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の燃料電池システムであって、前記改質器、前記複数のセルスタックおよび前記排ガス燃焼器を、密閉された内部空間に収容する圧力容器と、前記圧力容器の周囲に配置されて前記圧力容器と対向するとともに前記複数のセルスタックに供給される前記酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス流路とをさらに備える。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の燃料電池システムであって、前記酸化剤ガス流路に隣接して配置され、前記圧力容器から排出された正極排ガスまたは前記排ガス燃焼器から排出された燃焼ガスが流れる排ガス流路をさらに備える。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の燃料電池システムであって、前記複数のセルスタックはそれぞれ、固体酸化物形の燃料電池である。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、燃料電池システムの小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一の実施の形態に係る燃料電池システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の一の実施の形態に係る燃料電池システム1の構成を示す図である。燃料電池システム1は、燃料電池を用いて発電を行う発電システムである。燃料電池システム1は、ホットモジュール2と、原燃料供給部4と、ブロワ51とを備える。
【0019】
図2は、ホットモジュール2を示す縦断面図である。
図3および
図4はそれぞれ、
図2中のIII-IIIおよびIV-IVの位置にてホットモジュール2を切断した横断面図である。ホットモジュール2は、ハウジング21と、改質器22と、複数のセルスタック23と、排ガス燃焼器24と、圧力容器25とを備える。
図2では、構成の一部を側面にて描いている。また、
図2では、ハウジング21を破線にて描き、
図3および
図4では、ハウジング21の図示を省略している。
【0020】
圧力容器25は、例えば、ステンレス鋼等の金属により形成された中空の容器である。圧力容器25は、例えば、中心軸J1を中心とする有蓋有底の略円筒状容器である。以下の説明では、中心軸J1が延びる方向を「軸方向」と呼ぶ。
図2に示す例では、当該軸方向は上下方向に略平行である。圧力容器25の密閉された内部空間250には、改質器22、複数のセルスタック23および排ガス燃焼器24が収容される。圧力容器25の内部には、燃料電池システム1の起動運転時等に改質器22および複数のセルスタック23を加熱するバーナー等の熱供給部(図示省略)も収容されてよい。
【0021】
燃料電池システム1の出力が約20kWである場合、圧力容器25の直径および高さはそれぞれ、例えば、65cm~100cm、および、100cm~200cmである。燃料電池システム1がオフィスビルの屋上等に設置される場合、圧力容器25は、エレベータ等で屋上に搬入可能なサイズとされることが好ましい。なお、燃料電池システム1の出力、および、圧力容器25の大きさ等は、様々に変更可能である。
【0022】
圧力容器25は、ハウジング21の内部空間に収容される。ハウジング21は、例えば、略直方体状の筐体である。ハウジング21の内面は、断熱性が比較的高い断熱材料(例えば、ロックウール)により形成される。ハウジング21としては、例えば、金属製のコンテナの内面全体を断熱材料により覆ったものが利用される。
【0023】
改質器22は、圧力容器25内において、中心軸J1を中心とする径方向(以下、単に「径方向」とも呼ぶ。)の中央部に配置される。改質器22は、原燃料を改質して燃料ガスを含む改質ガスを生成する。原燃料は、例えば、炭化水素系燃料である。原燃料は、炭化水素系燃料以外の様々な燃料であってもよい。原燃料としては、例えば、LPガス、都市ガス、天然ガス、灯油、バイオガスまたはバイオエタノール等が利用される。改質器22では、例えば、水蒸気改質法、部分酸化改質法、または、これらの組み合わせである自己熱改質法等により原燃料の改質が行われる。改質器22における原燃料の改質は、全体としては吸熱反応である。
【0024】
改質器22は、中心軸J1を中心として軸方向に延びる略筒状の部材である。
図2ないし
図4に示す例では、改質器22は、第1改質流路221と、第2改質流路222とを備える。第1改質流路221および第2改質流路222の内部には、平行斜線を付して示すように、原燃料の改質に利用される改質触媒223が収容されている。第1改質流路221は、中心軸J1を中心とする略円筒状の流路である。第2改質流路222は、第1改質流路221の径方向内側にて、第1改質流路221と径方向に隣接して配置される。第2改質流路222は、中心軸J1を中心とする略円柱状の流路である。第2改質流路222の軸方向の長さは、第1改質流路221の軸方向の長さよりも短く、第2改質流路222は、第1改質流路221の上部と径方向に対向する。したがって、改質器22の下部は略円筒状であり、改質器22の上部は略円柱状である。
【0025】
第1改質流路221の下端部には、中心軸J1を中心とする略円環状のバッファ流路224が設けられる。バッファ流路224には、供給ポート225が設けられる。供給ポート225は、
図1に示す原燃料供給管291を介して、ハウジング21の外部に配置される原燃料供給部4に接続される。
【0026】
原燃料供給部4は、改質器22(
図2参照)に原燃料および水蒸気を供給する。原燃料供給部4は、原燃料供給源41と、不純物除去部42と、水蒸気供給部3とを備える。不純物除去部42は、原燃料供給管291上に配置され、原燃料供給源41から改質器22へと供給される原燃料から不純物(例えば、硫黄系不純物)を除去する。
【0027】
水蒸気供給部3は、水供給部31と、水蒸気生成部32と、凝縮部33とを備える。水供給部31は、水蒸気生成部32に水を供給する。具体的には、水供給部31は、水貯溜部311と、ポンプ312と、水供給管313とを備える。水貯溜部311は、水(例えば、純水)を貯溜するタンクである。水貯溜部311は、水供給管313を介して、水蒸気生成部32に接続される。ポンプ312は、水供給管313上に設けられ、水貯溜部311に貯溜されている水を水蒸気生成部32へと供給する。
【0028】
凝縮部33は、燃料電池システム1の定常運転時に排ガス中の水蒸気を凝縮して水を生成し、水供給部31を介して水蒸気生成部32に供給する。上述の定常運転とは、燃料電池システム1が所定の出力にて定常的に発電を行っている運転状態を意味する。当該所定の出力は、燃料電池システム1の定格出力、または、定格出力未満の一定の出力である。また、既述の起動運転とは、起動時から当該定常運転に至るまで(すなわち、セルスタック23の出力が定常運転出力に到達して安定するまで)の燃料電池システム1の運転状態を意味する。
【0029】
水蒸気生成部32は、水供給部31から供給される水を加熱して水蒸気を生成する蒸発器である。水蒸気生成部32は、水蒸気供給管321を介して原燃料供給管291に接続される。水蒸気供給管321は、原燃料供給管291上に設けられた熱交換器71よりも上流において(具体的には、熱交換器71と不純物除去部42との間において)、原燃料供給管291に接続される。水蒸気生成部32からの水蒸気は、不純物除去部42を通過した原燃料と共に、熱交換器71を通過して、
図2ないし
図4に示す改質器22の供給ポート225へと供給される。
【0030】
複数のセルスタック23は、改質器22の径方向外側において、中心軸J1を中心とする周方向(以下、単に「周方向」とも呼ぶ。)に並べて配置される。複数のセルスタック23は、改質器22と径方向に対向する。
図2ないし
図4に示す例では、燃料電池システム1は、24個のセルスタック23を備える。当該24個のセルスタック23は、改質器22の周囲を囲んで略六角筒状に配置された6枚の支持板239の外側面に取り付けられる。各支持板239には、軸方向に略等間隔にて配列された4つのセルスタック23が取り付けられる。
【0031】
軸方向の位置が略同じである6つのセルスタック23をまとめて「セルスタック群231」と呼ぶと、複数のセルスタック23は、軸方向に配列される4段のセルスタック群231を備える。各セルスタック群231では、6つのセルスタック23は、周方向において略等角度間隔にて配列される。各セルスタック群231に含まれるセルスタック23の数および配置等は様々に変更されてよい。また、セルスタック群231の段数も様々に変更されてよい。なお、セルスタック群231の段数は、3段以上であることが好ましい。
【0032】
複数のセルスタック23はそれぞれ、複数の平板状のセル(単電池)が径方向に積層された固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)である。各セルスタック23の形状は、例えば、略直方体状である。各セルスタック23の径方向(すなわち、水平方向)の厚さは、縦および横の長さよりも小さい。換言すれば、各セルスタック23は、主面の法線方向が径方向に略平行な略平板状である。
【0033】
各セルスタック23の負極(アノード)には、改質器22にて生成された燃料ガスが供給される。各セルスタック23の正極(カソード)は、
図1に示す酸化剤ガス供給管293を介して、ハウジング21の外部に配置されるブロワ51に接続される。ブロワ51により、酸化剤ガスである酸素を含む空気が、各セルスタック23の正極に供給される。すなわち、ブロワ51は、セルスタック23に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給部である。
【0034】
各セルスタック23では、ブロワ51からの酸化剤ガスと、改質器22からの燃料ガスとを利用して電気化学反応が生じ、発電が行われる。換言すれば、各セルスタック23は、燃料ガスおよび酸化剤ガスを用いて発電を行う。セルスタック23における電気化学反応(すなわち、発電)は発熱反応である。セルスタック23による発電は、例えば600℃~1000℃の高温下にて行われる。上述の燃料ガスは、例えば水素ガスである。酸化剤ガスは、例えば酸素である。燃料ガスは、水素ガス以外の様々なガスであってよく、酸化剤ガスも、酸素以外の様々なガスであってよい。各セルスタック23における発電後の排ガスは、
図2ないし
図4に示す排ガス燃焼器24へと導かれる。
【0035】
排ガス燃焼器24は、改質器22の径方向内側に配置される。具体的には、排ガス燃焼器24は、改質器22の略円筒状の下部の径方向内側に位置し、改質器22の当該下部と径方向に対向する。排ガス燃焼器24は、例えば、中心軸J1を中心とする略円柱状の部位である。排ガス燃焼器24は、複数のセルスタック23から排出される排ガスを燃焼させる。排ガス燃焼器24の内部には、平行斜線を付して示すように、排ガスの燃焼に利用される燃焼触媒241が収容されている。排ガス燃焼器24では、各セルスタック23の正極および負極からそれぞれ排出される正極排ガスおよび負極排ガスが、燃焼触媒241を通過することにより燃焼される。これにより、負極排ガスに含まれる未利用の燃料ガス(すなわち、セルスタック23における発電で消費されなかった余剰の燃料ガスであり、以下、「未利用燃料ガス」とも呼ぶ。)が燃焼される。排ガス燃焼器24における排ガスの燃焼は発熱反応である。
【0036】
排ガス燃焼器24から排出された燃焼済みの排ガス(以下、「燃焼ガス」とも呼ぶ。)は、排ガス燃焼器24の上端部に接続された複数(例えば、20本)の燃焼ガス流路242により、改質器22の内部を通過する。具体的には、各燃焼ガス流路242は、改質器22内において、排ガス燃焼器24の上端部から第2改質流路222内を軸方向(すなわち、上方)に延び、第2改質流路222の上方にて略180°折り返されて第1改質流路221内を軸方向(すなわち、下方)に延びる管路である。換言すれば、各燃焼ガス流路242は、改質器22内において軸方向に延びる略U字状の管路である。第1改質流路221内では、複数の燃焼ガス流路242は、例えば略等角度間隔にて周方向に配列される。燃焼ガス流路242の本数は、様々に変更されてよい。燃焼ガス流路242の本数は、例えば、1本であってもよく、2本以上であってもよい。
【0037】
次に、
図1および
図5を参照しつつ、燃料電池システム1による発電の詳細について説明する。
図5は、圧力容器25の内部におけるガスの流れを説明するための図である。
図5では、図の理解を容易にするために、燃料電池システム1の構成の一部を破線にて描き、一部の構成の図示を省略している。また、
図5では、複数のセルスタック23のうち、1つのセルスタック23に関するガスの流れのみを矢印にて示す。
【0038】
燃料電池システム1では、原燃料供給源41から供給された原燃料(例えば、都市ガス)、および、水蒸気生成部32から供給された水蒸気が、原燃料供給管291および供給ポート225を介して、改質器22のバッファ流路224へと供給される。原燃料および水蒸気は、バッファ流路224において周方向に略均等に広がり、第1改質流路221内を改質触媒223に接触しつつ上方へと流れる。第1改質流路221内では、水蒸気改質法により原燃料が水蒸気を利用して高温下にて改質され、燃料ガスである水素ガスを含む改質ガスが生成される。
【0039】
第1改質流路221を通過した改質ガスは、第1改質流路221の上方にて下方へと折り返し、第2改質流路222内を改質触媒223に接触しつつ下方へと流れる。第2改質流路222内においても、第1改質流路221内と同様に、改質ガスに含まれる原燃料が、水蒸気を利用して水蒸気改質法により高温下にて改質され、燃料ガスが生成される。改質器22の第1改質流路221および第2改質流路222における改質ガスの生成は、上述のように吸熱反応である。当該吸熱反応は、ガス中の原燃料の含有率が高い供給ポート225近傍の部位(例えば、第1改質流路221の下半分の部位)において、特に強く発生する。換言すれば、改質器22において、供給ポート225近傍の部位における吸熱量は、他の部位における吸熱量よりも大きい。第2改質流路222の下端部から送出された改質ガスは、配管281を介して各セルスタック23の負極へと供給される。
【0040】
一方、各セルスタック23の正極には、上述のように、ブロワ51からの酸化剤ガス(正確には、酸化剤ガスである酸素を含む空気)が、酸化剤ガス供給管293を介して供給される。各セルスタック23では、上述のように、負極に供給された燃料ガスと、正極に供給された酸化剤ガスとを利用して発電が行われる。セルスタック23における発電は、上述のように発熱反応である。複数のセルスタック23にて発生した熱は、複数のセルスタック23と径方向に対向する改質器22に付与され、吸熱反応である原燃料の改質に利用される。
【0041】
上述のように、複数のセルスタック23は、4段のセルスタック群231を備えている。軸方向の両端に位置するセルスタック群231(すなわち、最上段および最下段のセルスタック群231)では、軸方向の一方側にセルスタック群231が存在しないため、他のセルスタック群231に比べて熱が、ある程度逃げやすい。一方、軸方向の両端を除くセルスタック群231では、軸方向の双方で他のセルスタック群231と隣接するため、熱が逃げにくく、発電中に高温になる傾向がある。
【0042】
図5に示す例では、改質器22において吸熱量が大きい供給ポート225近傍の部位(例えば、第1改質流路221の下半分の部位)と、複数段のセルスタック群231のうち比較的高温な軸方向中央の2段のセルスタック群231とが、径方向に対向している。これにより、複数のセルスタック23から改質器22に効率良く熱を付与することができる。その結果、改質器22における原燃料の改質が効率良く行われる。
【0043】
また、セルスタック23では、発電時の温度が増大すると、発電効率は増大する一方で電池寿命が短くなる。上述のように、軸方向の両端に比べて高温になる中央のセルスタック群231を、改質器22の吸熱反応が大きい部位と対向させることにより、当該中央のセルスタック群231の温度を低減することができる。これにより、発電時における複数のセルスタック23の温度均一性を向上することができ、複数のセルスタック23の寿命の均一性を向上することができる。なお、改質器22の供給ポート225近傍の部位と対向するセルスタック群231は、必ずしも中央の2段のセルスタック群231には限定されず、複数段のセルスタック群231のうち、軸方向の両端を除く少なくとも1段のセルスタック群231であればよい。
【0044】
各セルスタック23では、圧力容器25の内部空間250に向かって開口する正極排出口(図示省略)が、正極に設けられている。各セルスタック23の正極から正極排出口を介して圧力容器25の内部空間250に直接的に排出されたガス(すなわち、正極排ガス)は、内部空間250の略全体に亘って拡散する。したがって、セルスタック23の内部の圧力と、圧力容器25の内部空間250の圧力とが略同じになる。これにより、セルスタック23の内部からガス(たとえば、正極に供給されて正極排出口に到達する前の酸化剤ガス)が漏出することを抑制することができる。また、セルスタック23と配管との接続部、および、圧力容器25内における配管同士の接続部等からのガスの漏出も抑制することができる。圧力容器25の内部空間250に拡散した正極排ガスは、一端が内部空間250に向けて開口している配管283により、排ガス燃焼器24の下端部へと供給される。
【0045】
また、各セルスタック23では、負極から排出されたガス(すなわち、負極排ガス)は、配管282を介して排ガス燃焼器24の下端部へと供給される。負極排ガスには、燃料ガスである水素ガスがセルスタック23における発電に使用されることにより生成される水蒸気、および、セルスタック23における発電に利用されなかった上述の未利用燃料ガス等が含まれる。
【0046】
排ガス燃焼器24では、配管283,282により供給された正極排ガスおよび負極排ガスが、排ガス燃焼器24内を燃焼触媒241に接触しつつ上方へと流れる。排ガス燃焼器24内では、上述のように、負極排ガスに含まれる未利用燃料ガス(例えば、水素ガス)が燃焼され、水蒸気が生成される。排ガス燃焼器24において燃焼した高温のガス(以下、「燃焼ガス」とも呼ぶ。)は、排ガス燃焼器24の上端部から送出され、複数の燃焼ガス流路242へと導かれる。ただし、
図5では、図の理解を容易とするために、1本の燃焼ガス流路242のみを描いており、他の燃焼ガス流路242の図示を省略している。燃焼ガスは、改質器22の内部を通過する各燃焼ガス流路242内を上方へと流れた後、下方へと流れる。
【0047】
改質器22の内部では、各燃焼ガス流路242内を流れる高温の燃焼ガスから周囲(すなわち、改質触媒223および改質器22内を流れるガス)に熱が付与される。これにより、改質器22における原燃料の改質が効率良く行われる。燃焼ガス流路242から送出された燃焼ガス(すなわち、改質器22を通過した後の燃焼ガス)は、配管285を介して圧力容器25の外部へと導かれ、ハウジング21の外部へと排出される。
【0048】
排ガス燃焼器24における未利用燃料ガス等の燃焼は、上述のように発熱反応である。排ガス燃焼器24にて発生した熱は、排ガス燃焼器24と径方向に対向する改質器22に付与され、吸熱反応である原燃料の改質に利用される。
図5に示す例では、改質器22において吸熱量が大きい供給ポート225近傍の部位(例えば、第1改質流路221の下半分の部位)と、排ガス燃焼器24の燃焼触媒241が設けられている部位とが、径方向に対向している。これにより、排ガス燃焼器24から改質器22に効率良く熱を付与することができる。その結果、改質器22における原燃料の改質がさらに効率良く行われる。
【0049】
配管285により圧力容器25から排出された燃焼ガスは、ハウジング21外において、燃焼ガス管292により
図1に示す熱交換器71へと導かれる。熱交換器71は、上述のように、原燃料供給管291上に配置されている。熱交換器71では、燃焼ガス管292を流れる高温の燃焼ガスを利用して、原燃料供給源41および水蒸気生成部32から改質器22に供給される原燃料および水蒸気が予備加熱される。すなわち、熱交換器71は、原燃料を予備加熱する原燃料予熱器である。
【0050】
熱交換器71を通過した燃焼ガスは、燃焼ガス管292により上述の凝縮部33へと導かれる。凝縮部33では、燃焼ガス中の水蒸気が凝縮されて水が生成される。凝縮部33により生成された水は、水供給管331を介して水供給部31の水貯溜部311に送られ、水貯溜部311内の水がポンプ312により水蒸気生成部32へと供給される。凝縮部33を通過した燃焼ガスは、燃焼ガス管294を介して系外(すなわち、燃料電池システム1の外部)へと排出される。
【0051】
燃料電池システム1では、上述のように、複数のセルスタック23および排ガス燃焼器24にて発生する熱が改質器22に付与され、原燃料の改質に利用される。また、燃焼ガスを利用して、改質器22に供給される原燃料および水蒸気の予備加熱が行われる。これらの熱の利用により、燃料電池システム1では、定常運転時にシステム内にて必要とされる熱を、システム内にて生成しつつ定常運転を行うことが可能となる。換言すれば、定常運転時の燃料電池システム1では、熱自立運転が可能である。
【0052】
燃料電池システム1では、燃焼ガスに含まれる水蒸気を、改質器22において行われる水蒸気改質に利用することにより、定常運転時にシステム内にて必要とされる水蒸気を、システム内にて生成しつつ定常運転を行うことも可能となる。換言すれば、定常運転時の燃料電池システム1では、水自立運転も可能である。
【0053】
以上に説明したように、燃料電池システム1は、改質器22と、複数のセルスタック23と、排ガス燃焼器24とを備える。改質器22は、軸方向に延びる筒状であり、原燃料を改質して燃料ガスを生成する。複数のセルスタック23は、燃料ガスおよび酸化剤ガスを用いて発電を行う。複数のセルスタック23は、改質器22の径方向外側において周方向に並べて配置されて、改質器22と径方向に対向する。排ガス燃焼器24は、複数のセルスタック23からの排ガスに含まれる未利用の燃料ガスを燃焼させる。排ガス燃焼器24は、改質器22の径方向内側に配置されて、改質器22と径方向に対向する。複数のセルスタック23はそれぞれ、径方向に積層される複数の平板状のセルを備える。
【0054】
燃料電池システム1では、吸熱反応が生じる改質器22を、発熱反応が生じる複数のセルスタック23および排ガス燃焼器24によって径方向にて挟むことにより、改質器22と複数のセルスタック23および排ガス燃焼器24との間で効率良く熱交換を行うことができる。その結果、燃料電池システム1の発電効率を向上することができる。また、各セルスタック23を、複数のセルが径方向に積層されるように配置することにより、軸方向に垂直な方向における燃料電池システム1の小型化を実現することができる。換言すれば、燃料電池システム1を径方向に小型化して、燃料電池システム1のフットプリントを小型化することができる。さらに、燃料電池システム1の小型化により、燃料電池システム1から周囲への放熱を低減することができるため、燃料電池システム1の発電効率をさらに向上することもできる。
【0055】
上述のように、燃料電池システム1では、改質器22と複数のセルスタック23および排ガス燃焼器24との間で効率良く熱交換を行うことができるため、燃料電池システム1の構造は、複数のセルスタック23がそれぞれ固体酸化物形の燃料電池であり、高温下で発電が行われる燃料電池システムに特に適している。
【0056】
上述のように、排ガス燃焼器24は、改質器22のうち、原燃料が供給される供給ポート225近傍の部位と径方向に対向することが好ましい。このように、改質器22のうち吸熱反応が大きい部位を排ガス燃焼器24と対向させることにより、改質器22と排ガス燃焼器24との間の熱交換を効率良く行うことができる。
【0057】
上述のように、複数のセルスタック23は、軸方向に3段以上に亘って配置される複数段のセルスタック群231を備えることが好ましい。また、複数段のセルスタック群231のうち、軸方向の両端を除く少なくとも1段のセルスタック群231が、改質器22のうち、原燃料が供給される供給ポート225近傍の部位と径方向に対向することが好ましい。このように、改質器22のうち吸熱反応が大きい部位を、複数段のセルスタック群231のうち比較的高温なセルスタック群231と対向させることにより、改質器22と複数のセルスタック23との間の熱交換を効率良く行うことができる。また、上述のように、複数のセルスタック群231の温度均一性を向上することができるため、複数のセルスタック23の寿命の均一性を向上することもできる。
【0058】
上述のように、燃料電池システム1は、排ガス燃焼器24から排出された燃焼ガスを、改質器22の内部を通過させる燃焼ガス流路242をさらに備えることが好ましい。これにより、燃焼ガス流路242を流れる燃焼ガスの熱を、改質器22に効率良く付与することができる。その結果、改質器22における原燃料の改質効率を向上することができる。
【0059】
上述のように、燃焼ガス流路242は、改質器22内において軸方向に延びるU字状であることが好ましい。これにより、改質器22内における燃焼ガス流路242の長さを増大することができ、燃焼ガスの熱を改質器22にさらに効率良く付与することができる。さらに、U字状の管路を用いることにより、燃焼ガス流路242の両端部に生じる熱応力を緩和することもできる。その結果、改質器22における原燃料の改質効率を、簡素な構造によってさらに向上することができる。
【0060】
上述のように、燃焼ガス流路242内における燃焼ガスの流れ方向は、改質器22内におけるガスの流れ方向と反対向きであることが好ましい。換言すれば、燃焼ガス流路242内の燃焼ガスの流れ、および、改質器22内のガスの流れにより対向流が形成されることが好ましい。燃料電池システム1では、改質器22内の上流側におけるガスの温度は、下流側におけるガスの温度よりも低い。一方、燃焼ガス流路242の上流側(すなわち、改質器22の下流側)における燃焼ガスの温度は、燃焼ガス流路242の下流側(すなわち、改質器22の上流側)における燃焼ガスの温度よりも高い。したがって、燃焼ガスおよび改質器22内のガスの流れ方向を反対向きにすることにより、改質器22の上流側における改質器22と燃焼ガスとの温度差を、改質器22の下流側における改質器22と燃焼ガスとの温度差に近づけることができる。換言すれば、改質器22の略全長に亘って、改質器22と燃焼ガスとの温度差を略一定とすることができる。これにより、燃焼ガスの熱を改質器22にさらに効率良く付与することができる。その結果、改質器22における原燃料の改質効率をさらに向上することができる。
【0061】
上述のように、燃料電池システム1は、改質器22、複数のセルスタック23および排ガス燃焼器24を、密閉された内部空間250に収容する圧力容器25をさらに備えることが好ましい。また、複数のセルスタック23はそれぞれ、正極排ガスを圧力容器25の内部空間250へと排出する正極排出口を備えることが好ましい。これにより、セルスタック23の内部圧力と、圧力容器25内におけるセルスタック23の周囲の圧力との差を小さくすることができる。その結果、セルスタック23からのガスの漏出を抑制することができる。また、セルスタック23と配管との接続部、および、圧力容器25内における配管同士の接続部等からのガスの漏出も抑制することができる。
【0062】
燃料電池システム1では、
図6および
図7に示すように、圧力容器25の周囲に配置される酸化剤ガス予熱器73が設けられてもよい。酸化剤ガス予熱器73は、例えば、中心軸J1を中心とする略円筒状の中空部材であり、圧力容器25の外側面に接触(または近接)して取り付けられ、圧力容器25と径方向に対向する。
図7では、図示の都合上、圧力容器25内の一部の構成の図示を省略している。
【0063】
酸化剤ガス予熱器73は、予熱器本体731と、酸化剤ガス流路732と、排ガス流路733とを備える。
図7では、図の理解を容易にするために、酸化剤ガス流路732に平行斜線を付す。予熱器本体731は、酸化剤ガス予熱器73の筐体であり、上述のように、中心軸J1を中心とする略円筒状である。予熱器本体731の内部は、略円弧状の隔壁734により、内周部と外周部とに区画されている。予熱器本体731では、内周部と外周部とは、周方向の一部において連通している。また、予熱器本体731の内部は、隔壁により周方向において約半分に分割されている。
【0064】
酸化剤ガス流路732は、予熱器本体731の内部に配置される配管である。酸化剤ガス流路732は、予熱器本体731の周方向の約半分の領域に亘って設けられる。具体的には、酸化剤ガス流路732は、予熱器本体731の外周部において約180°に亘って延び、予熱器本体731の内周部へと折り返され、当該内周部において約180°に亘って延びる。酸化剤ガス流路732の一方の端部は、予熱器本体731の外側面において酸化剤ガス供給管293に接続される。また、酸化剤ガス流路732の他方の端部は、予熱器本体731の内側面を貫通してセルスタック23の正極に接続される。
【0065】
酸化剤ガス流路732には、ブロワ51(
図1参照)から複数のセルスタック23に供給される途上の酸化剤ガス(すなわち、複数のセルスタック23に供給される前の酸化剤ガス)が流れる。酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路732の外周部から内周部へと流れ、酸化剤ガス予熱器73から圧力容器25内へと導かれる。酸化剤ガス流路732は、圧力容器25の周囲に配置されて圧力容器25と対向しているため、圧力容器25から外部へと放出される熱により、酸化剤ガス流路732内を流れる酸化剤ガスが予備加熱される。
【0066】
なお、燃料電池システム1では、複数のセルスタック23にそれぞれ対応する複数の酸化剤ガス流路732が、予熱器本体731の内部に配置される。
図6では、1つの酸化剤ガス流路732を実線で描き、他の酸化剤ガス流路732を破線にて描いている。
【0067】
排ガス流路733は、予熱器本体731の内部空間のうち、複数の酸化剤ガス流路732を除く領域である。換言すれば、排ガス流路733は、予熱器本体731内において酸化剤ガス流路732に隣接して配置される。排ガス流路733も、酸化剤ガス流路732と同様に、予熱器本体731の外周部において約180°に亘って延び、予熱器本体731の内周部へと折り返され、当該内周部において約180°に亘って延びる。排ガス流路733は、予熱器本体731の内側面において配管285に接続され、燃焼ガス流路242を介して排ガス燃焼器24に接続される。排ガス流路733には、排ガス燃焼器24から燃焼ガス流路242を介して圧力容器25外へと排出された高温の燃焼ガスが流れる。燃焼ガスは、排ガス流路733の内周部から外周部へと流れ、酸化剤ガス予熱器73から外部へと排出されて燃焼ガス管292を流れる。燃焼ガスの熱は、排ガス流路733を通過する酸化剤ガス流路732内の酸化剤ガスに付与される。これにより、ブロワ51からセルスタック23に供給される酸化剤ガスが予備加熱される。
【0068】
以上に説明したように、
図6および
図7に示す例では、燃料電池システム1は、上述の改質器22、複数のセルスタック23および排ガス燃焼器24に加えて、圧力容器25と、酸化剤ガス流路732とをさらに備える。圧力容器25は、改質器22、複数のセルスタック23および排ガス燃焼器24を、密閉された内部空間250に収容する。酸化剤ガス流路732は、圧力容器25の周囲に配置されて圧力容器25と対向する。酸化剤ガス流路732には、複数のセルスタック23に供給される酸化剤ガスが流れる。これにより、圧力容器25から外部に放出される熱を酸化剤ガスに付与して酸化剤ガスを予備加熱することができる。その結果、燃料電池システム1の発電効率を向上することができる。
【0069】
上述のように、燃料電池システム1は、酸化剤ガス流路732に隣接して配置される排ガス流路733をさらに備え、排ガス流路733には、排ガス燃焼器24から排出された燃焼ガスが流れることが好ましい。これにより、燃焼ガスの熱も酸化剤ガスに付与して酸化剤ガスを予備加熱することができる。その結果、燃料電池システム1の発電効率をさらいに向上することができる。
【0070】
上述のように、酸化剤ガス流路732内における酸化剤ガスの流れ方向は、排ガス流路733内におけるガスの流れ方向と反対向きであることが好ましい。換言すれば、酸化剤ガス流路732内の酸化剤ガスの流れ、および、排ガス流路733内の燃焼ガスの流れにより対向流が形成されることが好ましい。燃料電池システム1では、酸化剤ガス流路732内の上流側における酸化剤ガスの温度は、下流側における酸化剤ガスの温度よりも低い。一方、排ガス流路733の上流側(すなわち、酸化剤ガス流路732の下流側)における燃焼ガスの温度は、排ガス流路733の下流側(すなわち、酸化剤ガス流路732の上流側)における燃焼ガスの温度よりも高い。したがって、酸化剤ガスおよび燃焼ガスの流れ方向を反対向きにすることにより、酸化剤ガス流路732の上流側における酸化剤ガスと燃焼ガスとの温度差を、酸化剤ガス流路732の下流側における酸化剤ガスと燃焼ガスとの温度差に近づけることができる。換言すれば、酸化剤ガス流路732の略全長に亘って、酸化剤ガスと燃焼ガスとの温度差を略一定とすることができる。これにより、燃焼ガスの熱を酸化剤ガスにさらに効率良く付与して、酸化剤ガスをさらに効率良く予備加熱することができる。
【0071】
酸化剤ガス予熱器73では、排ガス流路733を流れるガスは必ずしも排ガス燃焼器24からの燃焼ガスである必要はなく、圧力容器25から外部へと排出された正極排ガスであってもよい。この場合であっても、上記と略同様に、正極排ガスの熱を酸化剤ガスに付与して酸化剤ガスを予備加熱することができる。その結果、燃料電池システム1の発電効率をさらに向上することができる。排ガス流路733を通過した正極排ガスは、圧力容器25内へと戻されて排ガス燃焼器24へと供給される。正極排ガスは、上述のように、酸化剤ガス予熱器73における酸化剤ガスとの熱交換により降温しているため、排ガス燃焼器24に上限温度が存在する場合、正極排ガスの温度が当該上限温度を超過することを好適に防止または抑制することができる。
【0072】
上述の燃料電池システム1は、様々な変更が可能である。
【0073】
例えば、酸化剤ガス予熱器73では、酸化剤ガス流路732内における酸化剤ガスの流れ方向と、排ガス流路733内におけるガスの流れ方向とは、必ずしも反対向きである必要はなく、例えば同じ向きであってもよい。また、排ガス流路733は、酸化剤ガス流路732に隣接して配置される配管であってもよい。なお、酸化剤ガス予熱器73では、予熱器本体731および排ガス流路733は省略されてもよい。
【0074】
セルスタック23からの正極排ガスは、必ずしも圧力容器25の内部空間250に排出される必要はなく、セルスタック23に接続された配管等を介して、圧力容器25およびハウジング21の外部へと排出されてもよい。燃料電池システム1では、圧力容器25は省略されてもよい。
【0075】
燃焼ガス流路242内における燃焼ガスの流れ方向と改質器22内におけるガスの流れ方向とは、必ずしも反対向きである必要はなく、例えば同じ向きであってもよい。燃焼ガス流路242の形状は、必ずしも軸方向に延びるU字状である必要はなく、様々な形状(例えば、直線状または螺旋状)に変更されてよい。燃焼ガス流路242は、必ずしも改質器22の内部を通過する必要はなく、改質器22近傍を通過してもよい。この場合であっても、燃焼ガス流路242を流れる燃焼ガスから改質器22への熱付与が行われる。なお、燃焼ガス流路242は省略されてもよい。
【0076】
改質器22のうち供給ポート225近傍の部位は、複数段のセルスタック群231のうち、必ずしも軸方向の両端を除くセルスタック群231と対向する必要はなく、軸方向端部のセルスタック群231と径方向に対向してもよい。
【0077】
排ガス燃焼器24は、必ずしも触媒燃焼器である必要はなく、様々な種類の燃焼器(例えば、バーナー等)であってもよい。排ガス燃焼器24は、改質器22のうち供給ポート225近傍の部位と必ずしも対向する必要はなく、改質器22の他の部位と径方向に対向してもよい。
【0078】
燃料電池システム1では、燃焼ガス中に含まれる水蒸気を、凝縮部33にて水として取り出した上で、水供給部31を介して水蒸気生成部32に供給しているが、水蒸気を含む当該燃焼ガスの一部が、ガス状のまま改質器22へと供給されてもよい。あるいは、セルスタック23から排出された負極排ガスは、排ガス燃焼器24に導かれる前に一旦圧力容器25外に導出され、熱交換器71および凝縮部33等を経由した後に、排ガス燃焼器24へと導かれてもよい。
【0079】
燃料電池システム1では、定常運転の際に、必ずしも熱自立運転が行われる必要はなく、バーナー等によりハウジング21内の加熱が継続的に行われてもよい。また、燃料電池システム1では、定常運転の際に、必ずしも水自立運転は行われる必要はなく、例えば、凝縮部33から水貯溜部311へと送られる水に加えて、装置外部から水貯溜部311へと供給される水が、水蒸気生成部32に継続的に供給されてもよい。
【0080】
上述のセルスタック23は、必ずしも固体酸化物形の燃料電池である必要はなく、他の種類の燃料電池であってもよい。
【0081】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0082】
1 燃料電池システム
22 改質器
23 セルスタック
24 排ガス燃焼器
25 圧力容器
225 供給ポート
231 セルスタック群
242 燃焼ガス流路
250 (圧力容器の)内部空間
732 酸化剤ガス流路
733 排ガス流路
J1 中心軸