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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】放射線撮影装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
A61B6/00 320M
A61B6/00 300D
A61B6/00 300X
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019180292
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021053216
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-07-16
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】叶 真一
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-196327(JP,A)
【文献】特開平06-038956(JP,A)
【文献】特開2007-151733(JP,A)
【文献】特開2000-79115(JP,A)
【文献】特開2003-135445(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0300910(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焦点位置から放射線を発生する放射線管を有し、前記放射線を照射する照射部と、
前記照射部が取り付けられるアームであって、前記照射部と対向する位置に前記放射線を受ける受像面を有する受像部を取り付けることが可能なアームと、
前記照射部から前記受像面に照射された前記放射線に基づく放射線画像を、前記受像部から取得する画像取得部と、
前記放射線画像において示される前記受像面内における前記放射線の強度分布に基づいて、前記焦点位置に対応する、前記受像面内における前記放射線の照射野の中心位置を検出する中心位置検出部と、
前記中心位置に基づいて導出され、前記受像面の中心と前記焦点位置との位置ずれを調整するための中心位置調整用情報を出力し、かつ、前記中心位置における放射線強度に基づいて導出され、前記受像面と前記焦点位置との間隔のずれを調整するための高さ位置調整用情報を出力する、情報出力部と、
を備えた放射線撮影装置。
【請求項2】
前記中心位置検出部は、前記強度分布のピーク位置を前記中心位置として検出する請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記情報出力部は、前記中心位置調整用情報及び前記高さ位置調整用情報を表示部に出力する、請求項1または請求項2に記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記放射線管の設置位置を電動で調整する調整機構を備えており、
前記調整機構は前記中心位置調整用情報及び前記高さ位置調整用情報に基づいて制御される、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線撮影装置の一例であるX線撮影装置が知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載のX線撮影装置は、放射線の一例であるX線を照射する照射部(X線発生手段)と、受像部(X線検出手段)と、照射部から受像部に照射されたX線を部分的に透過させて調整用X線パターンを形成する調整用X線パターン形成手段と、を備えている。
【0003】
このX線撮影装置では、調整用X線パターン形成手段によって形成された調整用X線パターンに基づいて、受像部の受像面におけるX線の照射野の中心位置を特定する。そして、X線の照射野の中心位置と受像面の中心位置との位置ずれ量を算出する。こうして算出された位置ずれ量に基づいて、撮影時における照射部と受像部との相対的な位置関係を調整することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-19707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
放射線撮影装置の中には、照射部及び受像部が対向する位置にそれぞれ取り付けられるアーム(例えば側面形状がC字状のCアームなど)を持つ装置がある。このような放射線撮影装置においては、出荷時において照射部の設置位置、より具体的には放射線を発生する放射線管の設置位置の位置調整が行われる。放射線管の設置位置の位置調整には、一例として、放射線管と受像部との位置調整がある。放射線の照射野の中心位置は、放射線管の焦点位置に対応する。そのため、放射線管と受像部との位置調整において、放射線管の設置位置は、放射線の照射野の中心位置と受像部の受像面の中心位置とが一致するように調整される。
【0006】
特許文献1には、製造時のX線管(放射線管)の設置位置を調整することについて開示はないが、特許文献1に記載のX線(放射線)の照射野の中心位置と受像面の中心位置との位置ずれ量を検出する方法を、製造時の放射線管の設置位置の調整に用いることも可能である。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、専用の冶具である調整用X線パターン形成手段を用いる必要がある。このような冶具を用いると、冶具の脱着作業が必要となり、作業の煩雑化を招くおそれがあるため、より簡便な方法が求められていた。
【0008】
本開示に係る技術は、位置ずれ検出用の専用冶具を用いないで放射線管の設置位置の位置ずれを調整可能な放射線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の第1態様に係る放射線撮影装置は、焦点位置から放射線を発生する放射線管を有し、放射線を照射する照射部と、照射部が取り付けられるアームであって、照射部と対向する位置に放射線を受ける受像面を有する受像部を取り付けることが可能なアームと、照射部から受像面に照射された放射線に基づく放射線画像を、受像部から取得する画像取得部と、放射線画像において示される受像面内における放射線の強度分布に基づいて、焦点位置に対応する、受像面内における放射線の照射野の中心位置を検出する中心位置検出部と、中心位置に基づいて導出され、放射線管の設置位置の位置ずれを調整するための調整用情報を出力する情報出力部と、を備えている。
【0010】
第1態様の放射線撮影装置は、中心位置検出部と、情報出力部と、を備えている。中心位置検出部は、放射線画像において示される受像面内における放射線の強度分布に基づいて、焦点位置に対応する、受像面内における放射線の照射野の中心位置を検出する。また、情報出力部は、放射線管の設置位置の位置ずれを調整するための調整用情報を出力する。
【0011】
これにより、位置ずれ検出用の専用冶具を用いることなく放射線管の設置位置の位置ずれ量を検出できる。
【0012】
さらに、放射線画像において示される放射線の強度分布に基づいて中心位置を検出するため、比較的簡単に調整用情報を出力することができる。
【0013】
なお、放射線撮影において、放射線の撮影条件(照射条件、照射野のサイズ及び位置)は、放射線管が適切な設置位置にあることを前提に設定される。放射線管の設置位置の位置ずれが調整されることで、適切な放射線撮影が可能になる。
【0014】
本開示の第2態様に係る放射線撮影装置は、第1態様に係る放射線撮影装置において、中心位置検出部は、強度分布のピーク位置を中心位置として検出する。
【0015】
第2態様の放射線撮影装置では、放射線の強度分布のピーク位置を、放射線の中心位置として検出する。強度分布の解析処理においてピーク位置の探索は比較的しやすく、また、焦点位置の強度が最も高くなるのはピーク位置と考えられるため、簡単にかつ正確に中心位置を検出することができる。
【0016】
本開示の第3態様に係る放射線撮影装置は、第1態様又は第2態様に係る放射線撮影装置において、調整用情報は、受像面の中心と焦点位置との位置ずれを調整するための中心位置調整用情報を含む。
【0017】
第3態様の放射線撮影装置では、情報出力部が、受像面の中心と放射線管の焦点位置との位置ずれを調整するための中心位置調整用情報を出力する。これにより、受像部に対する放射線管の設置位置の位置ずれを調整することができる。
【0018】
本開示の第4態様に係る放射線撮影装置は、第1態様~第3態様のいずれか1態様に係る放射線撮影装置において、調整用情報は、受像面と焦点位置との間隔を調整するための高さ位置調整用情報を含む。
【0019】
第4態様の放射線撮影装置では、情報出力部が、受像面と放射線管の焦点位置との間隔のずれを調整するための高さ位置調整用情報を出力する。これにより、受像面に対する放射線管の設置位置の間隔を調整することができる。
【0020】
本開示の第5態様に係る放射線撮影装置は、第1態様~第4態様のいずれか1態様に係る放射線撮影装置において、情報出力部は、調整用情報を表示部に出力する。
【0021】
第5態様の放射線撮影装置では、情報出力部は、調整用情報を表示部に出力する。これにより、放射線撮影装置の操作者は表示部に出力された調整用情報を視認して位置ずれを調整することができる。
【0022】
本開示の第6態様に係る放射線撮影装置は、第1態様~第5態様のいずれか1態様に係る放射線撮影装置において、放射線管の設置位置を電動で調整する調整機構を備えており、調整機構は調整用情報に基づいて制御される。
【0023】
第6態様の放射線撮影装置では、調整機構が、放射線管の設置位置を電動で調整する。このため、位置ずれを手動ではなく機械的に調整することができる。これにより調整精度を向上できる。
【0024】
本開示の第7態様に係る放射線撮影装置は、放射線を照射する照射部であって、焦点位置から放射線を発生する放射線管と、照射開口のサイズを変化させることにより放射線の照射野を限定する照射野限定器とを有する照射部と、照射部が取り付けられるアームであって、照射部と対向する位置に、放射線を受ける受像面を有する受像部を取り付けることが可能なアームと、照射部から受像面に照射された放射線に基づく放射線画像を、受像部から取得する画像取得部と、放射線画像に基づいて、受像面における照射野のエッジ位置を検出するエッジ検出部と、照射開口のサイズを変化させた場合のエッジ位置の変化量を算出する変化量算出部と、エッジ位置及び変化量に基づいて導出され、放射線管の設置位置の位置ずれを調整するための調整用情報を出力する情報出力部と、を備えている。
【0025】
第7態様の放射線撮影装置は、エッジ検出部と、変化量算出部と、情報出力部と、を備えている。エッジ検出部は、放射線画像に基づいて、受像面における照射野のエッジを検出する。変化量算出部は、照射開口のサイズを変化させた場合のエッジ位置の変化量を算出する。情報出力部は、エッジ位置及び変化量に基づいて導出され、放射線管の設置位置の位置ずれを調整するための調整用情報を出力する。
【0026】
これにより、位置ずれ検出用の専用冶具を用いることなく放射線管の設置位置の位置ずれ量を検出できる。
【0027】
さらに、調整用情報が照射野のエッジ位置及び変化量に基づいて導出されるので、強度分布を基にした調整用情報に基づいて導出された調整用情報と比較して、受像部と放射線管との位置ずれを正確に調整することができる。
【0028】
本開示の第8態様に係る放射線撮影装置は、第7態様に係る放射線撮影装置において、調整用情報は、受像面と焦点位置との間隔のずれを調整するための高さ位置調整用情報を含む。
【0029】
第8態様の放射線撮影装置では、情報出力部が、受像面と放射線管の焦点位置との間隔のずれを調整するための高さ位置調整用情報を出力する。これにより、受像部に対する放射線管の設置位置の位置ずれを調整することができる。
【0030】
本開示の第9態様に係る放射線撮影装置は、第7態様又は第8態様に係る放射線撮影装置において、情報出力部は、調整用情報を表示部に出力する。
【0031】
第9態様の放射線撮影装置では、情報出力部は、調整用情報を表示部に出力する。これにより、放射線撮影装置の操作者は表示部に出力された調整用情報を視認して位置ずれを調整することができる。
【0032】
本開示の第10態様に係る放射線撮影装置は、第7態様~第9態様のいずれか1態様に係る放射線撮影装置において、放射線管の設置位置を電動で調整する調整機構を備えており、調整機構は調整用情報に基づいて制御される。
【0033】
第10態様の放射線撮影装置では、調整機構が、放射線管の設置位置を電動で調整する。このため、位置ずれを手動ではなく機械的に調整することができる。これにより調整精度を向上できる。
【発明の効果】
【0034】
本開示によれば、位置ずれ検出用の専用冶具を用いないで放射線管の設置位置の位置ずれを調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】第1実施形態及び第2実施形態に係る放射線撮影装置を示す全体斜視図である。
図2A】第1実施形態に係る放射線撮影装置の側面図である。
図2B図2Aに示す放射線撮影装置のアームを矢印M1方向に回転させた状態を示す側面図である。
図2C図2Aに示す放射線撮影装置のアームを矢印M2方向に回転させた状態を示す側面図である。
図3A】第1実施形態及び第2実施形態に係る放射線撮影装置の正面図である。
図3B図3Aに示す放射線撮影装置のアームを矢印N1方向に回転させた状態を示す側面図である。
図3C図3Aに示す放射線撮影装置のアームを矢印N2方向に180°回転させた状態を示す側面図である。
図4】第1実施形態及び第2実施形態に係る照射部の構成の一例を示す断面図である。
図5A】第1実施形態及び第2実施形態に係る照射部と受像部との理想的な配置の一例を示した斜視図である。
図5B】第1実施形態及び第2実施形態に係る照射部と受像部と位置ずれした状態を示した断面図である。
図6A】第1実施形態及び第2実施形態に係る調整機構の概要を示した断面図である。
図6B】第1実施形態及び第2実施形態に係る調整機構において、照射部の外郭を形成する筐体に調整用金具を固定する構造を示した断面図である。
図6C】第1実施形態及び第2実施形態に係る調整機構において、放射線源の外郭を形成する筐体に調整用金具を固定する構造を示した断面図である。
図7】第1実施形態に係る放射線撮影装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図8A】第1実施形態に係る放射線撮影装置において受像面の中心と放射線管の焦点位置とが位置ずれしていない状態を示す側面図である。
図8B図8Aの状態において放射線を照射した場合における放射線画像P1の一例を示す平面図である。
図8C図8Aの状態において放射線を照射した場合における放射線強度分布を示すグラフである。
図9A】第1実施形態に係る放射線撮影装置において受像面の中心位置と放射線管の焦点位置とが位置ずれしている状態を示す側面図である。
図9B図9Aの状態において放射線を照射した場合における放射線画像P1の一例を示す平面図である。
図9C図9Aの状態において放射線を照射した場合における放射線強度分布を示すグラフである。
図10A】第1実施形態に係る放射線撮影装置において受像面と放射線管の焦点位置とが高さ方向に位置ずれしている状態を示す側面図である。
図10B図10Aの状態において放射線を照射した場合における放射線画像P1の一例を示す平面図である。
図10C図10Aの状態において放射線を照射した場合における放射線強度分布を示すグラフである。
図11A】第1実施形態に係る放射線撮影装置において受像面の中心位置と放射線管の焦点位置とが位置ずれし、かつ、受像面と放射線管の焦点位置とが高さ方向に位置ずれしている状態を示す側面図である。
図11B図11Aの状態において放射線を照射した場合における放射線画像P1の一例を示す平面図である。
図11C図11Aの状態において放射線を照射した場合における放射線強度分布を示すグラフである。
図12】第1実施形態に係る放射線撮影装置における位置ずれ調整処理を示すフローチャートである。
図13A】第1実施形態に係る放射線撮影装置において出力される調整用情報が表示された調整用画像の一例を示す平面図である。
図13B】第1実施形態に係る放射線撮影装置において出力される調整用情報が数字で表示された調整用画像の一例を示す平面図である。
図13C】第1実施形態に係る放射線撮影装置において出力される調整用情報が数字及び矢印で表示された調整用画像の一例を示す平面図である。
図14】第2実施形態に係る放射線撮影装置の機能的な構成を示すブロック図である。
図15】第2実施形態に係る放射線撮影装置において示される放射線の照射野の一例を示す平面図である。
図16A】第2実施形態に係る放射線撮影装置において、受像面と放射線管の焦点位置とが高さ方向に位置ずれしていない状態で照射野限定器を用いた場合の、照射野のエッジ位置の変化を示す断面図である。
図16B】第2実施形態に係る放射線撮影装置において、受像面と放射線管の焦点位置とが高さ方向に位置ずれしている状態で照射野限定器を用いた場合の、照射野のエッジ位置の変化を示す断面図である。
図17】第2実施形態に係る放射線撮影装置における位置ずれ調整処理を示すフローチャートである。
図18】第2実施形態に係る放射線撮影装置において、受像面の中心と放射線管の焦点位置とが位置ずれしている状態で照射野限定器を用いた場合の、照射野のエッジ位置を示す断面図である。
図19】第1実施形態及び第2実施形態に係る調整機構を電動にした場合の構成の概要を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本開示の第1、第2実施形態に係る放射線撮影装置について、図面を参照して順に説明する。なお、図中において、矢印Xは放射線撮影装置の前後方向、矢印Yは放射線撮影装置の幅方向、矢印Zは鉛直方向を指す。
【0037】
<第1実施形態>
まず、本開示の第1実施形態に係る放射線撮影装置について、図1図13を用いて説明する。
【0038】
(放射線撮影装置の全体構成)
図1に示す本実施形態の放射線撮影装置10は、被写体Hの放射線画像を撮影する装置である。放射線撮影装置10は、例えば、被写体Hの動画撮影および静止画撮影が可能である。動画撮影は、例えば、手術の際に被写体Hの処置対象部位を動画で表示する場合(透視撮影などとも呼ばれる)に行われる。
【0039】
動画撮影においては、例えば、放射線撮影装置10とは別に設置された図示しないモニタに被写体Hの動画が表示される。もちろん、撮影した動画のデータを放射線撮影装置10のメモリ内に保存することも可能である。また、静止画撮影の場合も、撮影した静止画をモニタに表示したり、放射線撮影装置10内のメモリ内に保存したりすることが可能である。
【0040】
図1に示すように、放射線撮影装置10は、側面形状がC字形状(円弧形状)とされたアーム12(Cアーム等と呼ばれる)と、支持部14が取り付けられる本体部16と、を有している。なお、以下において、放射線撮影装置10におけるアーム12が設けられている側を放射線撮影装置10の前方、本体部16が設けられている側を放射線撮影装置10の後方とする。
【0041】
(アームの構成)
アーム12は2つの端部を有しており、アーム12の一端部には照射部18が設けられ、他端部には受像部20が設けられている。アーム12は、照射部18と受像部20とを対向する姿勢で保持することが可能である。すなわち、照射部18は、アーム12に取付られている。アーム12には、照射部18と対向する位置に、放射線を受ける受像面20Aを有する受像部20を取り付けることが可能である。
【0042】
照射部18と受像部20との間には被写体H及び被写体Hが仰臥される寝台Sを挿入可能な間隔が確保されている。なお、以下、アーム12の側面視(図1においてY方向から見る方向)にて、照射部18及び受像部20が設けられている方向をアーム12の前方、支持部14側をアーム12の後方と呼ぶことがある。
【0043】
また、図2Aに示すように、アーム12は、少なくとも2つの異なる軸線M(Y軸と平行な軸線)又は軸線N(X軸と平行な軸線)を中心として、本体部16に対して回転可能とされている。具体的には、支持部14には、レール22Bが形成されている。一方、アーム12の外周面には、レール22Bに嵌合するレール嵌合部22Aが設けられている。レール22Bは、例えば溝形状であり、凸状のレール嵌合部22Aが嵌合する。レール嵌合部22Aは、アーム12の形状に沿った円弧形状をしている。レール22Bも、アーム12の円弧と同じ半径を持つ円弧形状をしている。
【0044】
アーム12に形成されたレール嵌合部22Aが支持部14に形成されたレール22Bに沿って摺動することにより、アーム12は、アーム12の円弧中心の軸線Mを回転中心として、支持部14及び本体部16に対して軌道回転可能とされている。
【0045】
すなわち、図2B及び図2Cに示すように、アーム12を軸線M周りに矢印M1方向(図2Bにおける反時計回り)及び矢印M2方向(図2Cにおける時計回り)にそれぞれ軌道回転させることが可能とされている。これにより、アーム12の両端に設けられた照射部18及び受像部20を被写体H(図1参照)の体軸(Y軸と平行な軸)回りに回転させることができる。
【0046】
また、支持部14は、放射線撮影装置10の前後方向に延びる支持軸24を有しており、この支持軸24は図示しない軸受けを介して本体部16に支持されている。これにより、図3A図3Cに示すように、支持軸24の軸線Nを回転中心として、支持部14が本体部16に対して軸回転可能とされており、支持部14とともにアーム12も本体部16に対して軸回転可能とされている。
【0047】
すなわち、図3B図3Cに示すように、アーム12を軸線N周りに矢印N1方向(図3Bにおける反時計回り)又は矢印N2方向(図3Cにおける時計回り)に軸回転させることが可能とされている。これにより、アーム12の両端に設けられた照射部18及び受像部20の被写体H(図1参照)に対する上下方向(Z軸方向)の位置を反転させることができる。
【0048】
ここで、図3Aに示す照射部18が受像部20より上に配置されたアーム12の姿勢は、照射部18に含まれる放射線管32(図1参照)が被写体Hの上方に位置するため、オーバーチューブ姿勢などと呼ばれる。一方、図3Cに示す照射部18が受像部20より下に配置されたアーム12の姿勢は、放射線管32が被写体Hの下方に位置するため、アンダーチューブ姿勢と呼ばれる。
【0049】
オーバーチューブ姿勢は、アンダーチューブ姿勢と比較して、照射部18と被写体H(図1参照)との間の距離を広くとることができるため、比較的広範な領域を撮影することが可能である。このため、オーバーチューブ姿勢は、主に被写体Hの静止画撮影時に用いられる。一方、アンダーチューブ姿勢は、照射部18から照射される放射線が寝台S等によって一部遮蔽されるため、被写体H(図1参照)の周囲にいる術者や操作者等(図示せず)の被ばく量を低減することができる。このため、アンダーチューブ姿勢は、放射線の継続的な照射が行われる、被写体Hの動画撮影時に用いられる。
【0050】
(本体部の構成)
図1に示すように、放射線撮影装置10の本体部16は、下部に複数のキャスター26が取り付けられており、操作者が手で押すことによって例えば手術室内や病棟内等で走行可能とされている。すなわち、本実施形態の放射線撮影装置10は、移動型とされている。
【0051】
また、本体部16は、照射部18等の放射線撮影装置10の各部を制御する制御装置28と、例えばタッチパネル式の操作パネル30と、を有している。なお、制御装置28の構成については後に詳述する。
【0052】
操作パネル30は、例えば照射部18等の放射線撮影装置10の各部に操作指示を入力することで各部を操作する操作部として機能するとともに、例えば警告メッセージ、及び受像部20から出力された放射線画像等の各種の情報を表示する表示部として機能する。本体部16は、その他、放射線撮影装置10の電源スイッチ等の図示しない各種のスイッチ、放射線撮影装置10の各部に電力を供給する電源回路、及びバッテリ等を備えている。
【0053】
(照射部の構成)
照射部18は、焦点位置Rから放射線を発生する放射線管を有し、放射線を照射する。具体的には、照射部18は、放射線源31と照射野限定器34とを備えている。放射線源31は、放射線を発生する放射線管32を備えている。放射線は例えばX線である。放射線管32は、陰極から発生する電子をターゲット(陽極)に衝突させることにより、放射線を発生する。ターゲットにおいて電子が衝突する位置が、放射線が放射される焦点位置Rとなる。
【0054】
また、図4にも示すように、放射線源31の下方には照射野限定器34が設けられている。照射野限定器34(コリメータ等とも呼ばれる)は、矩形状の照射開口34A(図1参照)を有している。放射線管32で発生した放射線は、照射開口34Aを通って被写体Hへ照射される。照射野限定器34は、照射開口34Aの開口面積を調整することができる。照射野限定器34は、例えば放射線を遮蔽する4枚の遮蔽板34Bを有している。なお、図4においては、4枚の遮蔽板34Bのうち、X方向に対向する2枚の遮蔽板34Bのみを示している。4枚の遮蔽板34Bは、それぞれの一辺が照射開口34Aの各辺に対応しており、照射開口34Aを画定する。この遮蔽板34Bの位置を変えることにより、照射開口34Aの開口面積が調整され、照射部18から照射される放射線の照射野が変更される。
【0055】
また、図1に示すように、照射部18は、放射線撮影装置10の幅方向(図1においてY方向)に延びる回転軸36の軸線を回転中心として、アーム12に対して回転可能とされている。
【0056】
なお、照射部18は、制御信号を送信するための信号線、及び電力供給用の電源線が配線された図示しないケーブルによって、図1に示す本体部16の制御装置28及び図示しない電源回路等に接続されている。
【0057】
(受像部の構成)
図1に示すように、受像部20は、照射部18と対向する位置である、アーム12の他端部に設けられている。受像部20は、筐体内に、画像検出器を備えている。受像部20は、照射部18から照射され被写体Hを透過した放射線を受ける受像面20Aを備えている。受像面20Aは、被写体Hの情報が担持された放射線が入射する面であり、画像検出器の検出面に対応する位置に配置されている。
【0058】
画像検出器は、例えば、デジタルラジオグラフィ(DR;Digital Radiography)方式のフラットパネルディテクタ(FPD;flat panel detector)である。FPDは、複数の画素を2次元に配列した検出面と、画素を駆動するための図示しない薄膜トランジスタ(TFT;thin film transistor)パネルと、を有している。受像面20Aを通じて画像検出器の検出面に放射線が入射する。画像検出器は、入射した放射線を電気信号に変換し、変換された電気信号に基づいて被写体Hを示す放射線画像を出力する。画像検出器としては、例えば、放射線をシンチレータによって可視光に変換し、変換された可視光を電気信号に変換する間接変換型が使用される。なお、画像検出器としては、放射線を直接電気信号に変換する直接変換型でもよい。また、受像部20としては、FPDを用いる構成以外でもよく、例えば、イメージインテンシファイア(I.I;Image Intensifier)とカメラを組み合わせた構成を採用することも可能である。
【0059】
また、受像部20は、制御信号を送信するための信号線、及び電力供給用の電源線が配線された図示しないケーブルによって、本体部16の制御装置28及び図示しない電源回路等に接続されている。
【0060】
(照射部と受像部との配置)
図4に示すように、放射線管32と受像部20とは、受像面20Aが放射線管32の焦点位置Rから放射された放射線を受けることができるように、互いに対向して配置される。
【0061】
より具体的には、図5Aに示すように、放射線管32と受像部20とは、受像面20Aの中心位置O2と、受像面20A内における放射線の照射野の中心位置とが一致するように配置される。
【0062】
上述したとおり、受像部20は、筐体内に画像検出器が設けられており、受像面20Aと画像検出器の検出面とは対応する位置に配置されている。そのため、「受像面20Aの中心位置O2」とは、画像検出器の検出面の中心位置を意味する。また、「受像面20A内における放射線の照射野の中心位置」とは、図5Bに示すように「放射線管32から照射され、焦点位置Rから錘形に拡がる放射線のビーム(線束)Bの中心軸CL1(焦点位置Rから延びる中心軸CL1)と受像面20Aとの交点位置O1」のことである。また、この中心位置O1は、照射野限定器34の遮蔽板34Bが無い場合(遮蔽板34Bによって照射野が限定されない場合)を前提とした放射線の照射野の中心位置O1である。以下の説明においては、「受像面20A内における放射線の照射野の中心位置」を、「放射線の中心位置O1」又は単に「中心位置O1」と称す。
【0063】
以下において説明する調整機構は、放射線管32の焦点位置Rと、受像部20の受像面20Aとの位置ずれを調整するための機構である。位置ずれは、例えば、放射線撮影装置10の製造時における個体間の組付け誤差などによって生じる。放射線管32と受像部20との間の適切な位置関係は予め決められている。調整機構は、放射線管32と受像部20との間に位置ずれが生じている場合に、放射線管32及び受像部20の一方(例えば放射線管32)を目標位置に調整することで、放射線管32と受像部20との位置関係を調整する。こうした調整は、製造時、あるいはメインテナンス時に行われる。
【0064】
調整機構の調整対象は、X方向の位置ずれΔX、Y方向の位置ずれΔY、及びZ方向の位置ずれΔZである。位置ずれΔXと位置ずれΔYは、受像面20Aの中心位置O2と、放射線の中心位置O1との位置ずれである。位置ずれΔXは、図5AにおけるX方向の位置ずれであり、位置ずれΔYは、図5AにおけるY方向の位置ずれである。また、位置ずれΔZは、Z方向の位置ずれであり、具体的には、受像面20Aと放射線管32の焦点位置Rとの間隔(SID:SOURCE TO IMAGE RECEPTOR DISTANCE)のずれである。なお、以下の説明においては位置ずれΔX、ΔY、ΔZを総称して「放射線管32の位置ずれ」と称す場合がある。
【0065】
(調整機構)
図4に示すように、照射部18は、内部に放射線管32が配置され、放射線源31の外郭を形成する筐体31Eと、内部に遮蔽板34Bが配置され、照射野限定器34の外郭を形成する筐体34Eと、内部に筐体31E及び筐体34Eが配置され、照射部18の外郭を形成する筐体18Eと、を備えている。筐体18Eがアーム12(図1参照)に固定されることにより、照射部18がアーム12に取り付けられる。一方、照射部18と対向する受像部20もアーム12に取り付けられている。
【0066】
ここで、受像面20Aの中心位置O2と放射線の中心位置O1との位置ずれΔXを調整するためには、例えば、筐体18Eの内部で、筐体31EをX方向へ移動させる。同様に、位置ずれΔY(不図示)を調整するためには、例えば、筐体18Eの内部で、筐体31EをY方向へ移動させる。また、位置ずれΔZを調整するためには、例えば、筐体18Eの内部で、筐体31EをZ方向へ移動させる。
【0067】
図6Aには、筐体18Eに対する筐体31Eの調整機構50の概略が示されている。調整機構50は、一例として、筐体31Eの上面と、筐体18Eの上板との間に設けられる。図6Bに示すように、筐体18Eには、L字状のアングル材等で形成された固定金具52が溶接などによって接合されている。筐体31Eは、L字状のアングル材等で形成された調整金具54を介して、固定金具52にボルト56A及びナット56Bを用いて固定される。
【0068】
固定金具52にはボルト56Aを挿通させる貫通孔52Aが形成されている。一方、調整金具54において固定金具52と対向する部分には、貫通孔52Aより大径の貫通孔54Aが形成されている。
【0069】
調整金具54は、ワッシャ58を介して固定金具52にボルト固定される。これにより調整金具54は、Z方向及びY方向に可動領域を持って固定金具52に固定される。可動領域は、貫通孔54Aとボルト56Aとの間の隙間寸法に相当する。なお、可動領域とは、ボルト56Aの固定を緩めた状態における可動領域である。
【0070】
図6Cに示すように、筐体31Eには、ボルト56Aを挿通させる貫通孔31Aが形成されている。貫通孔52Aの裏側(放射線管32がある側)にはナット56Cが溶接などにより固定されている。一方、調整金具54において筐体31Eと対向する部分には、貫通孔31Aより大径の貫通孔54Aが形成されている。
【0071】
調整金具54は、ワッシャ58を介して筐体31Eにボルト固定される。これにより調整金具54は、X方向及びY方向に可動領域を持って固定金具52に固定される。可動領域は、貫通孔54Aとボルト56Aとの間の隙間寸法に相当する。
【0072】
なお、筐体18Eには、ボルト56Aを捩じ込む又は緩める工具を挿通するための図示しない作業口が形成されている。これにより、放射線管32の位置を調整することができる。
【0073】
(放射線撮影装置の機能構成)
図7には、放射線撮影装置10の機能構成として、上述の位置ずれを調整するための機能的な構成を中心としたブロック図で示されている。放射線撮影装置10は、制御装置28を備えている。制御装置28は、受像部20から取得された放射線画像P1を基に、位置ずれを調整するための調整用情報を操作パネル30へ出力する。この機能を実現するために、制御装置28は、制御部28Aと、画像取得部28Bと、分析部28Cと、情報出力部28Dと、を備えている。
【0074】
制御部28Aは、放射線撮影装置10の各部を統括的に制御する。放射線撮影を行う際には、制御部28Aは、照射部18の放射線管32に制御信号を送信することで、放射線管32の管電圧、管電流、及び放射線の照射時間等を制御する。管電圧を制御することにより、放射線のエネルギーが制御され、管電流及び照射時間を制御することにより、放射線の線量が制御される。実際には、放射線管32に対しては高電圧が印加されるため、制御部28Aは、図示しない高電圧発生装置を通じて放射線管32を制御する。撮影に際しては、操作パネル30を通じて、管電圧、管電流及び照射時間などを含む撮影条件が設定される。制御部28Aは、設定された撮影条件に基づいて照射部18を動作させる。なお、制御装置28には、操作パネル30とは別に照射スイッチ(図示せず)が設けられている。制御部28Aは、照射スイッチからの照射開始信号に基づいて、放射線管32の照射タイミングを制御する。また、制御部28Aは、放射線管32の照射タイミングと受像部20内の画像検出器の動作タイミングとを同期させる制御を行う。これにより、放射線管32から照射される放射線を受けて、受像部20内の画像検出器が放射線画像を出力する。
【0075】
また、制御部28Aは、調整用情報を出力するために、画像取得部28B、分析部28C、及び情報出力部28Dを制御する。操作パネル30には、動作メニューを選択する画面が表示され、動作メニューの中には調整用情報を出力する調整用情報出力モードが含まれている。操作パネル30から調整用情報出力モードを選択されると、制御部28Aは、画像取得部28B、分析部28C、及び情報出力部28Dを動作させて調整用情報出力モードを実行する。
【0076】
画像取得部28Bは、受像面20A(図5A参照)に照射された放射線に基づく放射線画像P1を、受像部20から取得する。
【0077】
分析部28Cは、中心位置検出部28CAと、高さ位置検出部28CBと、を備えている。詳しくは後述するが、中心位置検出部28CAは、放射線画像P1において示される受像面20A(図5B参照)内における放射線の強度分布に基づいて、焦点位置R(図5B参照)に対応する、受像面20A内における放射線の照射野の中心位置O1(図5B参照)を検出する。
【0078】
また、高さ位置検出部28CBは、放射線画像P1において示される受像面20A(図5B参照)内における放射線の強度分布に基づいて、受像面20Aと放射線管32の焦点位置Rとの間隔(Z方向の間隔)を検出する。
【0079】
情報出力部28Dは、調整用情報として、中心位置調整用情報及び高さ位置調整用情報とを出力する。まず、情報出力部28Dは、中心位置検出部28CAで検出された中心位置O1に基づいて導出され、受像面20Aの中心位置O2と放射線管32の焦点位置との位置ずれ(位置ずれΔX及びΔY)を調整するための中心位置調整用情報を、表示部の一例である操作パネル30に出力する。
【0080】
なお、詳しくは後述するが、図13Aには、中心位置調整用情報の一例として、受像面20Aの中心位置O2と放射線の中心位置O1とが示されている。このように、中心位置調整用情報としては、例えば、照射野の中心位置O1のみが表示されるのではなく、中心位置O1における受像面20Aの中心位置O2との相対的な位置関係が提示される。相対的な位置関係が提示されることで、中心位置O1と中心位置O2との調整が可能となる。中心位置調整用情報が中心位置O1に基づいて「導出される」とは、例えば、位置ずれ量が何ミリといった情報が導出されることを意味するだけではなく、係る相対的な関係が導き出されることも意味する。
【0081】
また、情報出力部28Dは、高さ位置検出部28CBで検出された受像面20Aと放射線管32の焦点位置Rとの間隔に基づいて導出され、受像面20Aと放射線管32の焦点位置Rとの間隔のずれ(位置ずれΔZ)を調整するための高さ位置調整用情報を表示部の一例である操作パネル30に出力する。
【0082】
情報出力部28Dで出力された調整用情報は、調整用画像P2として操作パネル30へ送信される。操作パネル30には、調整用画像P2が表示される。なお、調整用情報の出力先は、操作パネル30に限定されない。例えば外付けのパソコン等の機器のディスプレイとしてもよい。
【0083】
(位置ずれ検出方法)
図8A図12Cを参照しながら、上述した分析部28Cによる放射線管32の位置ずれ検出方法を説明する。
【0084】
図8Aには、受像面20Aと放射線管32との適切な位置関係が示されている。適切な位置関係においては、受像面20Aの中心位置O2と放射線の中心位置O1とは略一致している。また、Z方向においては、受像面20Aと焦点位置Rとの間隔が予め設定された目標間隔(一例として間隔Z1)となっている。
【0085】
図8Bには、図8Aに示した状態で放射線管32から放射線を照射した場合に、受像部20によって取得される放射線画像P1が示されている。放射線画像P1は、照射部18と受像部20との間に被写体を配置しない状態で取得される画像である。すなわち、照射部18から受像部20に対して直接入射する放射線に基づく画像である。放射線画像P1が四角形なのは、照射部18からの放射線が照射野限定器34の照射開口34Aによって照射野が四角形に限定されるためである。
【0086】
図8Cには、受像面20Aにおける放射線の強度分布がグラフで示されている。このグラフには、放射線の中心位置O1を通るX方向に沿った断面(図8BにおいてC-C線で示す断面)における放射線の強度分布が示されている。このグラフの横軸Xは受像面20Aの中心位置O2からのX方向の距離X(mm)を示しており、縦軸Bは放射線の強度B(Bq)を示している。
【0087】
このグラフにおいて強度分布のピーク値は一例としてB1(Bq)とされている。そして、このピーク位置は、放射線の中心位置O1に対応している。
【0088】
放射線画像P1は、放射線の中心位置O1における濃度が最も濃く、O1から離れるに従って同心円状に濃度が薄くなる。換言すると、受像面20Aにおいて放射線管32の焦点位置Rに対応する位置における濃度が最も濃く、焦点位置Rとの距離が離れるに従って徐々に濃度が薄くなる。
【0089】
図8Cに示された放射線の強度分布と、図8Bに示された放射線画像P1の濃度とを対応させると、放射線の強度が大きい部分は放射線画像P1において濃度が濃く、放射線の強度が小さい部分は濃度が薄い。すなわち、「受像面20A内における放射線の強度分布」は、「放射線画像P1の濃度分布」として示される。
【0090】
図9Aには、受像面20Aの中心位置O2と放射線管32とが位置ずれした配置が示されている。具体的には、放射線管32の焦点位置Rが、受像面20Aの中心位置O2に対してX方向にΔX、Y方向にΔY(不図示)だけ位置ずれしている。
【0091】
図9Bには、図9Aに示した状態で放射線管32から放射線を照射した場合に、受像部20によって取得される放射線画像P1が示されている。この放射線画像P1には、放射線強度が最大となるピーク位置(ピーク値B1となる位置。図9C参照)が、濃度が最も濃い位置として示される。図9Bに示すように、放射線画像P1において濃度が最大となる位置が放射線の中心位置O1となる。
【0092】
中心位置検出部28CAは、受像面20A内における放射線の強度分布を放射線画像P1の濃度分布から読み取って、強度分布のピーク位置を放射線の照射野の中心位置(中心位置O1)として検出する。また、受像面20Aの中心位置O2は、予め分かっている。そのため、受像面20A内における放射線の中心位置O1を検出すれば、中心位置検出部28CAは、中心位置O1に対応する、放射線管32の焦点位置Rが、受像面20Aの中心位置O2に対して、X方向及びY方向にどの程度ずれているか、すなわち、X方向の位置ずれΔXとY方向の位置ずれΔYとを検出することができる。
【0093】
図10Aには、受像面20Aと放射線管32とが、Z方向の目標位置から位置ずれした配置が示されている。具体的には、放射線管32の焦点位置Rが、目標位置を基準としてΔZだけ受像面20Aに近づく方向に位置ずれしている。
【0094】
図10Bには、図10Aに示した状態で放射線管32から放射線を照射した場合に、受像部20によって取得される放射線画像P1が示されている。この放射線画像P1には、放射線強度が最大となるピーク位置(ピーク値B2となる位置。図10C参照)が、濃度が最も濃い位置として示される。図10Bに示す放射線画像P1は、受像面20Aの中心位置O2において濃度が最大となっている例である。すなわち、図10Bにおいては、放射線の中心位置O1と受像面20Aの中心位置O2とが一致しており、X方向及びY方向の位置ずれが生じていない例である。
【0095】
しかし、図10Bに示す放射線画像P1では、放射線の中心位置O1における濃度が、図8B及び図9Bに示した中心位置O1における濃度より濃くなる。
【0096】
つまり図10Cにも示すように、放射線の中心位置O1における放射線強度B2は、Z方向において、焦点位置Rが目標位置にある場合における放射線強度B1(図8C及び図9C)より大きく、その結果、図10Bに示す放射線画像P1において、中心位置O1の濃度が濃くなる。そのため、図10Bに示す放射線画像P1の濃度分布に基づいて、高さ位置検出部28CBは、放射線管32の焦点位置Rが、受像面20Aに近づく方向に位置ずれしていることを検出することができる。
【0097】
なお、放射線管32の焦点位置Rが、受像面20Aから離れる方向に位置ずれしている場合、図10Cに点線で示すように放射線の中心位置O1における放射線強度が放射線強度B1より小さくなる。この結果、図10Bに示す放射線画像P1において中心位置O1の濃度は薄くなる。これにより、高さ位置検出部28CBは、放射線管32の焦点位置Rが、受像面20Aから離れる方向に位置ずれしていることを検出することができる。
【0098】
高さ位置検出部28CBは、受像面20A内における放射線の強度のピーク値を放射線画像P1の濃度のピーク値から読み取って、放射線の焦点位置R(高さ位置)及び受像面20Aと焦点位置Rとの間隔を検出する。具体的には、放射線管32の焦点位置RがZ方向の目標位置にある場合における放射線画像P1の濃度のピーク値を予め取得しておく。さらに、受像面20Aと焦点位置Rとの間隔の変化量と、濃度のピーク値の変化量との相関関係を関数又はテーブルデータの形式で予め取得しておく。取得したピーク値及び相関関係はメモリ(図示せず)内に格納される。高さ位置検出部28CBは、調整時に検出した放射線画像P1の濃度のピーク値と、目標位置にある場合の濃度のピーク値とを比較することにより、両者の濃度値の差と上述の相関関係に基づいて、受像面20Aと焦点位置Rとの間隔を検出する。
【0099】
図11Aには、受像面20Aと放射線管32とが位置ずれした配置が示されている。具体的には、放射線管32の焦点位置Rが、受像面20Aの中心位置O2に対してX方向にΔX、Y方向にΔY(不図示)だけ位置ずれしている。さらに、放射線管32の焦点位置Rが、受像面20Aに対してZ方向にΔZだけ近い方向に位置ずれしている。
【0100】
図11Bには、図11Aに示した状態で放射線管32から放射線を照射した場合に、受像部20によって取得される放射線画像P1が示されている。この放射線画像P1には、放射線強度が最大となるピーク位置(ピーク値B2となる位置。図11C参照)が、濃度が最も濃い位置として示される。これにより、放射線の中心位置O1と、受像面20Aの中心位置O2とがX方向及びY方向に位置ずれしていることを検出することができる。
【0101】
さらに、図11Bに示す放射線画像P1では、放射線の中心位置O1における濃度が、図8B及び図9Bに示した中心位置O1における濃度より濃い。これにより、放射線管32の焦点位置Rが、受像面20Aに近づく方向に位置ずれしていることを検出することができる。
【0102】
中心位置検出部28CAは、受像面20A内における放射線の強度分布を放射線画像P1の濃度分布から読み取って、強度分布のピーク位置を放射線の照射野の中心位置(中心位置O1)として検出する。さらに高さ位置検出部28CBは、受像面20A内における放射線の強度のピーク値を放射線画像P1の濃度のピーク値から読み取って、放射線の焦点位置R(高さ位置)及び受像面20Aと焦点位置Rとの間隔を検出する。
【0103】
(作用)
製造時において、放射線撮影装置10の組み立てが完了した後、例えば、出荷前の検査において、放射線管32の焦点位置Rと受像面20Aとの位置ずれの調整が行われる。検査者は、位置ずれの調整に際して、どのような位置ずれがあり、どの程度調整すべきかを把握するために、放射線撮影装置10を調整用情報出力モードで動作させる。
【0104】
検査者によって操作パネル30から調整用情報出力モードが選択されると、制御部28Aは、画像取得部28B、分析部28C、及び情報出力部28Dを動作させて調整用情報出力モードを実行する。
【0105】
図12に示すように、調整用情報出力モードが開始されると、ステップ100で、制御部28Aは、放射線管32を制御して、受像部20の受像面20Aへ向かって放射線を照射させる。調整用情報出力モードにおいては、当然ながら照射部18と受像部20の間に被写体はなく、照射部18からの放射線が受像部20の受像面20Aに直接入射する。受像部20は、入射した放射線に基づいて検出した放射線画像P1を画像検出器から出力する。
【0106】
ステップ102で、画像取得部28Bは、放射線画像P1を受像部20から取得する。
【0107】
ステップ106及びステップ108において、分析部28Cは、放射線画像P1を分析することにより放射線画像P1の強度分布を調べて、強度分布に基づいて、放射線管32と受像面20Aとの位置ずれを検出する。
【0108】
具体的には、ステップ106において、中心位置検出部28CAは、放射線画像P1内の濃度のピーク値を示す位置を探索し、探索したピーク値の位置を、受像面20A内における放射線の中心位置O1(図5B参照)として検出する。さらに、中心位置検出部28CAは、受像面20Aの中心位置O2に対する放射線の中心位置O1の位置ずれ量、具体的にはΔXとΔYを検出する。また、高さ位置検出部28CBは、放射線画像P1内の濃度のピーク値と、予め取得した目標位置に濃度のピーク値とを比較することにより、受像面20Aと放射線管32の焦点位置Rとの間隔(Z方向の間隔)を検出する。
【0109】
ステップ108で、情報出力部28Dは、中心位置調整用情報及び高さ位置調整用情報を調整用画像P2として操作パネル30に出力する。この出力に伴って、制御装置28による調整用情報出力モードが終了する。
【0110】
図13Aから図13Cに調整用画像P2の例を示す。図13Aに示す調整用画像P2においては、受像面20Aの中心位置O2と、放射線の中心位置O1とが中心位置調整用情報として「点」で示されている。
【0111】
放射線撮影装置の検査者は、この調整用画像P2を見ることでX方向とY方向との位置ずれを把握する。そして、検査者は、中心位置O1が中心位置O2と一致するように、上述した調整機構50を操作して、放射線管32の位置を調整する。
【0112】
なお、この調整用画像P2において、Z方向の位置ずれを調整するための高さ位置調整用情報は示されていない。Z方向の位置ずれΔZについては、例えば、Z方向の一次元の目盛り付きのインジケータを表示し、インジケータにZ方向の目標位置と実測した位置とが示される。
【0113】
図13Bに示す調整用画像P2においては、中心位置調整用情報及び高さ位置調整用情報として、放射線管32を移動させるべき距離が調整寸法として数字で表示されている。放射線撮影装置の検査者は、この数字を見ることでX方向、Y方向及びZ方向の位置ずれを把握する。例えば調整用寸法が0(ゼロ)に近づくように、上述した調整機構を操作して、放射線管32の位置を調整する。
【0114】
図13Cに示す調整用画像P2においては、上述した受像面20Aの中心位置O2及び放射線の中心位置O1が点で示されている。また、放射線管32を移動させるべき距離が数字で表示されている。さらに、放射線管32を動かす方向が矢印で示されている。放射線撮影装置の検査者は、これらの情報を見ることでX方向、Y方向及びZ方向の位置ずれを調整できる。
【0115】
以上説明したように、本実施形態に係る放射線撮影装置10は、図7に示すように、中心位置検出部28CAと、情報出力部28Dと、を備えている。中心位置検出部28CAは、放射線画像P1において示される受像面20A内における放射線の強度分布に基づいて、焦点位置Rに対応する、受像面20A内における放射線の照射野の中心位置O1を検出する。情報出力部28Dは、放射線管32の設置位置の位置ずれを調整するための調整用情報を出力する。
【0116】
これにより、位置ずれ検出用の専用冶具を用いることなく放射線管32の設置位置の位置ずれ量を検出できる。
【0117】
さらに、放射線画像P1において示される放射線の強度分布に基づいて中心位置を検出するため、比較的簡単に調整用情報を出力することができる。
【0118】
また、放射線撮影装置10は、図8A図11Cに示すように、放射線の強度分布のピーク位置を、放射線の中心位置O1として検出する。強度分布の解析処理においてピーク位置の探索は比較的しやすく、また、焦点位置Rの強度が最も高くなるのはピーク位置と考えられるため、簡単にかつ正確に中心位置O1を検出することができる。
【0119】
また、放射線撮影装置10は、情報出力部28Dが、図13A図13Cに示すように、受像面20Aの中心位置O2と放射線管32の焦点位置R(受像面20Aにおける中心位置O1)との位置ずれを調整するための中心位置調整用情報を出力する。これにより、受像部20に対する放射線管の設置位置の位置ずれを調整することができる。
【0120】
また、放射線撮影装置10は、情報出力部28Dが、図13B図13Cに示すように、受像面20Aと放射線管32の焦点位置Rとの間隔のずれを調整するための高さ位置調整用情報を出力する。これにより、受像面20Aに対する放射線管32の設置位置の間隔を調整することができる。
【0121】
また、放射線撮影装置10では、情報出力部28Dは、調整用情報を表示部(操作パネル30)に出力する。これにより、放射線撮影装置10の操作者は表示部に出力された調整用情報を視認して位置ずれを調整することができる。
【0122】
<第2実施形態>
次に、本開示の第2実施形態に係る放射線撮影装置40について、図14図18を用いて説明する。放射線撮影装置40の主な構成は、図1図6に示す通り第1実施形態に係る放射線撮影装置10と同様であり説明は省略する。
【0123】
(放射線撮影装置の機能構成)
図14に示すように、放射線撮影装置40は、制御部28Aの制御対象及び分析部28Cの構成が、第1実施形態に係る放射線撮影装置10と異なっている。
【0124】
第2実施形態に係る放射線撮影装置40の制御部28Aは、調整用情報出力モードにおいて放射線管32及び受像部20を制御するだけでなく、照射野限定器34を制御する。照射野限定器34は、上述したように、照射開口34Aのサイズを変化させることにより放射線の照射野を限定する装置である。
【0125】
具体的には、制御部28Aは、図6に示す照射野限定器34の遮蔽板34Bを移動させる移動機構を駆動するためのモータM(図14参照)を制御して、照射開口34Aのサイズを限定する。これにより、図15は、受像面20Aにおける、照射開口34Aによって限定された放射線の照射野Q1を示す。
【0126】
さらに制御部28Aは、モータM(図14参照)を制御して、照射開口34Aのサイズを変化させる。これにより、受像面20Aにおける照射野Q1は、例えば、照射野Q1よりもサイズが小さな照射野Q2となる。
【0127】
第2実施形態に係る放射線撮影装置40の分析部28Cは、図14に示すように、エッジ検出部28CCと、変化量算出部28CDと、演算部28CEと、を備えて構成されている。
【0128】
エッジ検出部28CCは、照射部18から受像面20Aに照射された放射線に基づく放射線画像に基づいて、受像面20Aにおける照射野のエッジ位置を検出する。
【0129】
また、変化量算出部28CDは、照射開口34Aのサイズを変化させた場合のエッジ位置の変化量を算出する。
【0130】
また、演算部28CEは、受像面20Aにおける照射野のエッジ位置及びエッジ位置の変化量から、放射線管32の焦点位置Rの位置ずれを算出し、放射線管32の設置位置の位置ずれを調整するための調整用情報を導出する。
【0131】
情報出力部28Dは、演算部28CEによって導出された調整用情報(エッジ位置及び変化量に基づいて導出され、放射線管32の焦点位置Rの位置ずれを調整するための調整用情報)を出力する。情報出力部28Dで出力された調整用情報は、調整用画像P2として操作パネル30へ送信される。操作パネル30には、調整用画像P2が表示される。
【0132】
(位置ずれ算出方法)
放射線管32の焦点位置Rの位置ずれは、次のようにして算出される。図16Aに示すように、放射線管32の焦点位置R0から照射された放射線は、照射野限定器34の遮蔽板34Bによってサイズが規定された照射開口34Aによって照射野が限定され、受像面20Aに入射する。エッジ検出部28CCは、照射開口34Aのサイズを変化させた場合の変化前後における照射野のエッジ位置を検出する。
【0133】
図16Aは、焦点位置R0がZ方向における目標位置にある場合を示している。焦点位置R0が目標位置にある場合の受像面20Aと放射線管32の焦点位置R0との間隔を間隔bとする。
【0134】
遮蔽板34Bを動かして照射開口34Aのサイズを変化させると、照射野が限定されて照射野のエッジ位置が変化する。例えば、図16Aにおいては、受像面20Aと平行な面内において、遮蔽板34Bを移動距離dだけ、受像面20Aの中心位置O2方向に移動させると、照射開口34Aのサイズが小さくなり、照射野のエッジ位置が中心位置O2に近づく。エッジ検出部28CCは、例えば、照射開口34Aのサイズが相対的に小さい場合の照射野のエッジ位置と、照射開口34Aのサイズが相対的に大きい場合の照射野のエッジ位置との2つのエッジ位置を検出する。ここで、照射開口34Aが大きい場合のサイズを第1サイズ、照射開口34Aが小さい場合のサイズを第2サイズとする。
【0135】
図16Aに示すように、焦点位置Rが目標位置にある場合において、照射開口34Aが第1サイズの場合の照射野のエッジ位置をE01、照射開口34Aのサイズが第2サイズ場合の照射野のエッジ位置をE02とする。エッジ検出部28CCは、照射野のエッジ位置E01及びエッジ位置E02を検出する。また、変化量算出部28CDは、エッジ位置E01とエッジ位置E02との差である変化量ΔE0を検出する。
【0136】
図16Bは、放射線管32の焦点位置R1が、Z方向において目標位置からΔZだけ上方にずれている状態を示している。焦点位置R1と受像面20Aとの間隔は、目標位置における間隔bよりもΔZだけ長い。
【0137】
エッジ検出部28CCは、まず、照射開口34Aが第1サイズ(大サイズ)の場合の照射野のエッジ位置E11を検出する。そして、遮蔽板34Bを動かして照射開口34Aのサイズを小さくすると(遮蔽板34Bの移動距離d)、照射野のエッジ位置が変化する。エッジ検出部28CCは、照射開口34Aが小さい場合の照射野のエッジ位置E12を検出する。また、変化量算出部28CD(図14参照)は、エッジ位置の変化量ΔE1を算出する。図16Aに示す変化量ΔE0も、図16Bに示す変化量ΔE1も、どちらも、照射開口34Aを第1サイズから第2サイズに変化させた場合の変化量であるが、変化量ΔE0と変化量ΔE1は異なる。変化量算出部28CDは、変化量ΔE1に基づいて、放射線管32の焦点位置RのZ方向の位置ずれΔZを検出する。
【0138】
以下にZ方向の位置ずれΔZの計算方法の一例を示す。まず、図16Aに示すように、目標位置である焦点位置R0と、遮蔽板34Bの下面(放射線を規制して照射野のエッジを規定する位置)との間隔(Z方向の間隔)を間隔aとする。そして、目標位置である焦点位置R0と受像面20Aとの間隔(Z方向の間隔)を間隔bとする。遮蔽板34Bの移動距離は移動距離dとされている。これらの間隔a、間隔b及び移動距離dは既知の値である。さらに、エッジ位置の変化量ΔE1は上記の通り、変化量算出部28CDによって算出される。
【0139】
位置ずれΔZは、これらの値を次の演算式(1)に代入することで算出される。
【0140】
ΔZ={b×d-a×(ΔE1)}/{(ΔE1)-d} ・・・(1)
【0141】
演算式は、制御装置28における図示しない記憶部に記憶されている。演算部28CEは、演算式(1)を呼び出して位置ずれΔZを算出する。演算部28CEは、算出された位置ずれΔZを情報出力部28Dへ送る。
【0142】
(作用)
図17に示すように、調整用出力モードが開始されると、ステップ200で、制御部28Aは、照射野限定器34の遮蔽板34Bを駆動することにより、照射開口34Aを第1サイズに設定する。そして、制御部28Aは、放射線管32を制御して、放射線を照射させる。
【0143】
ステップ202で、画像取得部28Bは、受像面20Aに照射された放射線に基づく放射線画像P1を、受像部20から取得する。
【0144】
ステップ204で、分析部28Cにおけるエッジ検出部28CCは、画像取得部28Bが取得した放射線画像P1における照射野のエッジ位置(例えばエッジ位置E11、図16B参照)を検出する。
【0145】
ステップ206で、制御部28Aは、照射野限定器34の遮蔽板34Bを駆動することにより、遮蔽板34Bを例えば移動距離dだけ移動させる(図16B参照)。これにより、照射開口34Aを第2サイズに設定する。そして、制御部28Aは、放射線管32を制御して、放射線を照射させる。
【0146】
ステップ208で、画像取得部28Bは、受像面20Aに照射された放射線に基づく放射線画像P1を、受像部20から取得する。
【0147】
ステップ210で、分析部28Cにおけるエッジ検出部28CCは、画像取得部28Bが取得した放射線画像P1における照射野のエッジ位置(例えばエッジ位置E12、図16B参照)を検出する。
【0148】
ステップ212で、分析部28Cにおける変化量算出部28CDは、照射野のエッジ位置の変化量を算出する(例えば変化量ΔE1、図16B参照)。さらに、演算部28CEは、上述した演算式(1)を読み出して、放射線管32の焦点位置Rの高さ方向の位置ずれΔZを算出する。
【0149】
ステップ214で、情報出力部28Dは、高さ位置調整用情報を調整用画像P2として操作パネル30に出力する。この出力によって、制御装置28による調整用情報出力モードが終了する。
【0150】
なお、高さ位置調整用情報としては、例えば放射線管32を移動させるべき高さ方向の距離を数字で示す。放射線撮影装置の操作者は、この数字を見ることでZ方向の位置ずれを調整できる。具体的には、調整用寸法が0(ゼロ)に近づくように、上述した調整機構を操作して、放射線管32の位置を調整する。
【0151】
また、ここまでは、焦点位置Rの高さ方向における位置ずれΔZを、照射野のエッジ位置の変化量に基づいて算出する例で説明したが、第2実施形態においても、照射野のエッジ位置に基づいて、受像面の中心位置O2と焦点位置Rとの位置ずれΔX、ΔYを算出することができる。
【0152】
具体的には、図18に示す放射線管32の焦点位置Rは、受像面20Aの中心位置O2とΔXだけ位置ずれしている。エッジ検出部28CCは、このときの照射野のエッジ位置E1を検出する。すなわち、受像面20Aの中心位置O2とエッジ位置E1との間隔X1を検出する。
【0153】
ここで、上述のとおり、遮蔽板34Bの下面(放射線を規制して照射野のエッジを規定する位置)と焦点位置R0との間隔(Z方向の間隔)は間隔aであり、受像面20Aと焦点位置R0との間隔(Z方向の間隔)は間隔bである。また、受像面20Aの中心位置O2と遮蔽板34Bとの間隔は間隔cである。そして、これらの間隔a、間隔b及び間隔cは既知の値である。さらに、受像面20Aの中心位置O2とエッジ位置E1との間隔X1がエッジ検出部28CCによって検出される。
【0154】
位置ずれΔXは、これらの値を次の演算式(2)に代入することで算出される。
【0155】
ΔX={(b×c)-(a×X1)}/(b-a) ・・・(2)
【0156】
演算式は、制御装置28における図示しない記憶部に記憶されている。演算部28CEは、演算式(2)を呼び出して位置ずれΔXを算出し、算出された位置ずれΔXを情報出力部28Dへ送る。位置ずれΔYの算出も同様である。放射線撮影装置40の検査者は、これらの位置ずれΔX、ΔYを基に情報出力部28Dによって出力された調整用情報を基に、これらの位置ずれを調整することができる。
【0157】
以上説明したように、第2実施形態に係る放射線撮影装置40は、図14に示すように、エッジ検出部28CCと、変化量算出部28CDと、情報出力部28Dと、を備えている。エッジ検出部28CCは、放射線画像P1に基づいて、受像面20Aにおける照射野のエッジを検出する。変化量算出部28CDは、照射開口34Aのサイズを変化させた場合のエッジ位置の変化量を算出する。情報出力部28Dは、エッジ位置及び変化量に基づいて導出され、放射線管32の設置位置の位置ずれを調整するための調整用情報を出力する。
【0158】
これにより、位置ずれ検出用の専用冶具を用いることなく放射線管32の設置位置の位置ずれ量を検出できる。さらに、調整用情報が照射野のエッジ位置及び変化量に基づいて導出されるので、強度分布を基にした調整用情報に基づいて導出された調整用情報と比較して、受像部20と放射線管32との位置ずれを正確に調整することができる。
【0159】
また、放射線撮影装置40では、情報出力部28Dが、受像面20Aと放射線管32の焦点位置Rとの間隔のずれを調整するための高さ位置調整用情報を出力する。これにより、受像部20に対する放射線管の設置位置の位置ずれを調整することができる。
【0160】
また、放射線撮影装置40では、情報出力部28Dは、調整用情報を表示部(操作パネル30)に出力する。これにより、放射線撮影装置40の操作者は操作パネル30に出力された調整用情報を視認して位置ずれを調整することができる。
【0161】
なお、調整用情報のうち、中心位置調整用情報は照射野のエッジ位置に基づいて導出される。また、調整用情報のうち、高さ位置調整用情報は照射野のエッジ位置の変化量に基づいて導出される。
【0162】
第2実施形態の方法によれば、特に、高さ位置については、放射線画像P1の強度分布に基づいて高さ位置を調整する場合と比較して、正確に調整することができる。理由は次の通りである。
【0163】
第1実施形態の放射線画像P1の強度分布に基づく高さ位置調整方法では、位置ずれΔX及びΔYは比較的精度よく求めることができるが、位置ずれΔZについては相対的に精度が低い。これは、ΔX及びΔYが、放射線画像P1内において相対的に濃度が高いピーク位置を探索することにより検出されるのに対して、ΔZは、ピーク位置の濃度値の絶対値に基づいて算出する必要があるためである。画像検出器を含む受像部20は、個体差がある上、画像信号のノイズもあり、これらが濃度値に与える影響は大きい。つまり、相対的に濃度が高いピーク位置を探索する場合は、比較によって受像部20の個体差及びノイズに起因するノイズ成分がキャンセルされるのに対して、濃度値の絶対値では絶対値そのものが問題となるため、受像部20の個体差及びノイズに起因するノイズ成分をキャンセルし難いためである。
【0164】
これに対して第2実施形態の高さ位置調整方法は、エッジ位置の変化量に基づいて位置ずれΔZを検出する方法であるため、受像部20の個体差及びノイズに起因するノイズ成分をキャンセルすることができる。そのため、第1実施形態と比較して第2実施形態の方が、Z方向の位置ずれΔZの検出精度は高い。
【0165】
一方、第1実施形態は、第2実施形態と比較して、簡易な方法で調整用情報を出力することができるというメリットがある。どちらにもメリットもあるため、要求される位置調整の精度に応じて第1実施形態と第2実施形態とが選択されることが好ましい。また、第1実施形態と第2実施形態を組み合わせた態様としてもよい。
【0166】
また、第1実施形態及び第2実施形態においては、位置ずれの調整を手動で行うものとしたが、本開示の技術はこれに限らない。例えば図19に示すように、照射部18の筐体18Eと放射線源31にける筐体31Eとの間に、調整機構として電動モータで駆動するXYテーブル60を設置して、このXYテーブル60を用いて放射線管32の位置ずれを調整してもよい。
【0167】
XYテーブル60は、例えば、ボールねじとギヤとを組み合わせることにより、X方向及びY方向に移動自在なテーブルである。XYテーブル60によって、照射部18の筐体18Eに対して、放射線源31を移動する。
【0168】
この場合、制御部28Aは、調整用情報として、放射線管32を移動させるべき距離をデータで取得して、XYテーブル60を駆動させる。すなわち、調整機構としてのXYテーブル60が、放射線管32の設置位置を電動で調整する。このため、位置ずれを手動ではなく機械的に調整することができる。これにより調整精度を向上できる。
【0169】
また、上記各実施形態において、アーム12として、側面形状がC字形状のCアームを例に説明したが、側面形状がU字形状のUアームでもよい。Uアームも、Cアームと同様に、照射部18と受像部20等を対向する姿勢で保持することが可能である。
【0170】
また、上記各実施形態において、受像部20は、アーム12に着脱不能に取り付けられていてもよいし、アーム12に着脱可能に取り付けられていてもよい。また、受像部20を、画像検出器と画像検出器を着脱可能に収容する収容部とで構成することにより、収容部をアーム12に取り付けた状態で画像検出器のみを取り外せるようにしてもよい。この場合において、収容部は、アーム12に対して着脱不能でもよいし、アーム12に対して着脱可能でもよい。このようにアーム12に対して少なくとも画像検出器を着脱可能とすることで、例えば、異なる画面サイズの画像検出器を選択的に使用することが可能となる。
【0171】
なお、放射線としてX線を例に説明したが、X線に限らず、γ線等であってもよい。
【0172】
上記各実施形態において、制御部28A、画像取得部28B、中心位置検出部28CA、及び高さ位置検出部28CBといった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェアを実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0173】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、および/または、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0174】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0175】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【0176】
また、上記の説明から以下の付記項に記載の技術を把握することができる。
「付記項1」
焦点位置から放射線を発生する放射線管を有し、前記放射線を照射する照射部と、
前記照射部が取り付けられるアームであって、前記照射部と対向する位置に前記放射線を受ける受像面を有する受像部を取り付けることが可能なアームと、を備えた放射線撮影装置に用いられ、前記放射線管の設置位置の位置ずれを調整するための調整用情報出力方法であって、
前記照射部から前記受像面に照射された前記放射線に基づく放射線画像を、前記受像部から取得する画像取得ステップと、
前記放射線画像において示される前記受像面内における前記放射線の強度分布に基づいて、前記焦点位置に対応する、前記受像面内における前記放射線の照射野の中心位置を検出する中心位置検出ステップと、
前記中心位置に基づいて導出され、前記放射線管の設置位置の位置ずれを調整するための調整用情報を出力する情報出力ステップと、
を備えた放射線撮影装置に用いられる調整用情報出力方法。
「付記項2」
放射線を照射する照射部であって、焦点位置から放射線を発生する放射線管と、照射開口のサイズを変化させることにより前記放射線の照射野を限定する照射野限定器とを有する照射部と、
前記照射部が取り付けられるアームであって、前記照射部と対向する位置に、前記放射線を受ける受像面を有する受像部を取り付けることが可能なアームと、を備えた放射線撮影装置に用いられ、前記放射線管の設置位置の位置ずれを調整するための調整用情報出力方法であって、
前記照射部から前記受像面に照射された前記放射線に基づく放射線画像を、前記受像部から取得する画像取得ステップと、
前記放射線画像に基づいて、前記受像面における前記照射野のエッジ位置を検出するエッジ検出ステップと、
前記照射開口のサイズを変化させた場合の前記エッジ位置の変化量を算出する変化量算出ステップと、
前記エッジ位置及び前記変化量に基づいて導出され、前記放射線管の設置位置の位置ずれを調整するための調整用情報を出力する情報出力ステップと、
を備えている放射線撮影装置に用いられる調整用情報出力方法。
【符号の説明】
【0177】
10 放射線撮影装置
12 アーム
14 支持部
16 本体部
18 照射部
18E 筐体
20 受像部
20A 受像面
22A レール嵌合部
22B レール
24 支持軸
26 キャスター
28 制御装置
28A 制御部
28B 画像取得部
28C 分析部
28CA 中心位置検出部
28CB 高さ位置検出部
28CC エッジ検出部
28CD 変化量算出部
28CE 演算部
28D 情報出力部
30 操作パネル(表示部)
31 放射線源
31A 貫通孔
31E 筐体
32 放射線管
34 照射野限定器
34A 照射開口
34B 遮蔽板
34E 筐体
36 回転軸
38 取付板
40 放射線撮影装置
50 調整機構
52 固定金具
52A 貫通孔
54 調整金具
54A 貫通孔
56A ボルト
56B ナット
56C ナット
58 ワッシャ
60 XYテーブル(調整機構)
ΔE0 変化量
ΔE1 変化量
E01 エッジ位置
E1 エッジ位置
E02 エッジ位置
E11 エッジ位置
E12 エッジ位置
H 被写体
M モータ
O1 放射線の照射野の中心位置
O2 受照面の中心位置
P1 放射線画像
P2 調整用画像
Q1 照射野
Q2 照射野
R0 焦点位置
R 焦点位置
R1 焦点位置
S 寝台
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12
図13A
図13B
図13C
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19