(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】MG53突然変異体、その作製方法、およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20220921BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20220921BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220921BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220921BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220921BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220921BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220921BHJP
C12N 15/10 20060101ALI20220921BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20220921BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20220921BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220921BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20220921BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220921BHJP
A61P 9/06 20060101ALI20220921BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20220921BHJP
A61P 27/10 20060101ALI20220921BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20220921BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220921BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20220921BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20220921BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220921BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20220921BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
C12N15/12 ZNA
C07K14/47
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/10 200Z
A61P9/00
A61P27/02
A61P25/00
A61P13/12
A61P9/10
A61P9/06
A61P9/04
A61P9/10 101
A61P27/10
A61P17/02
A61P11/06
A61P1/16
A61P1/04
A61P17/00
A61P11/00
A61K38/17
(21)【出願番号】P 2019505531
(86)(22)【出願日】2017-07-20
(86)【国際出願番号】 CN2017093640
(87)【国際公開番号】W WO2018024110
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2019-11-25
(31)【優先権主張番号】201610621989.7
(32)【優先日】2016-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201610847346.4
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201710560975.3
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521013312
【氏名又は名称】ホープ・メディシン(ナンジン)・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100188374
【氏名又は名称】一宮 維幸
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,ルイ-ピン
(72)【発明者】
【氏名】ルー,フェンシャン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】グオ,シレ
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-506919(JP,A)
【文献】国際公開第2013/036610(WO,A2)
【文献】特表2009-543551(JP,A)
【文献】特表2017-508445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C07K
A61P
A61K
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
UniProt/GeneSeq
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MG53突然変異体のアミノ酸配列が、配列番号7
または8で示されたアミノ酸配
列である
、MG53突然変異体。
【請求項2】
MG53突然変異体のアミノ酸配列が、配列番号7で示されたアミノ酸配列である、請求項
1に記載のMG53突然変異体。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のMG53突然変異体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項4】
請求項1
または2に記載のMG53突然変異体のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む単離核酸。
【請求項5】
配列番号13
または14で示された核酸配
列を含む、請求項
4に記載の核酸。
【請求項6】
請求項
4に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項7】
配列番号13
または14で示された核酸配
列を含む、請求項
6に記載の発現ベクター。
【請求項8】
請求項
6または
7に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項9】
請求項1
または2に記載のMG53突然変異体を調製するための方法であって、突然変異のための1つまたは複数のセリン位置を決定すること、野生型MG53のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むプラスミドの全長配列上の位置において、部位特異的突然変異誘発を実施すること、部位特異的突然変異を有するプラスミドを、宿主細胞へとトランスフェクトすること、およびMG53突然変異体を産生するように宿主細胞を誘導することを含む方法。
【請求項10】
部位特異的突然変異誘発が、以下のステップ:
(1)cDNA配列内の、部位特異的突然変異誘発で標的とされたアミノ酸の対応するヌクレオチド部位を決定し、突然変異部位においてヌクレオチド配列を標的アミノ酸に従って改変し、突然変異部位を含む20~40bpの長さの配列を切り出すことにより、プライマーをデザインすること;
(2)ステップ(1)のプライマーを使用し、野生型MG53プラスミドを鋳型とすることによりPCR反応を実施し、PCR産物についてアガロースゲル電気泳動を実施し、PCR産物を精製すること;
(3)制限エンドヌクレアーゼを使用することにより、ステップ(2)の精製PCR産物に対する酵素反応を実施し、酵素消化産物を、適切なプラスミド発現ベクターとライゲーションし、細菌コンピテント細胞内にライゲーション産物を形質転換し、培養すること;
(4)ステップ(3)のクローンを選択して、ステップ(1)のプライマーを使用することにより、コロニーPCR同定を実施し、PCR産物についてアガロースゲル電気泳動を実施し、次いで、DNAシーケンシング同定を実施して、部位特異的突然変異を有する陽性クローンを同定すること
を含む、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置するための医薬の製造における、請求項1
または2に記載のMG53突然変異体の使用。
【請求項12】
医薬が、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置しつつ、代謝的副作用を回避する、請求項
11に記載の使用。
【請求項13】
心疾患が、心筋損傷と関連する疾患である、請求項
11または
12に記載の使用。
【請求項14】
心疾患が、糖尿病性心疾患、心筋虚血症、心虚血症/再灌流傷害、心筋梗塞、心不全、不整脈、心破裂、狭心症、心筋炎、冠動脈性心疾患、および心膜炎を含む、請求項
11から
13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
糖尿病性脳血管疾患が、脳動脈硬化症、虚血性脳血管疾患、脳出血、脳萎縮、および脳梗塞を含む、請求項
11または
12に記載の使用。
【請求項16】
糖尿病性眼合併症が、糖尿病網膜症、糖尿病性白内障、糖尿病関連ブドウ膜炎、および失明を含む、請求項
11または
12に記載の使用。
【請求項17】
糖尿病性神経障害が、糖尿病性末梢神経障害を含む、請求項
11または
12に記載の使用。
【請求項18】
腎疾患が、急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、急性腎傷害、および糖尿病性腎症を含む、請求項
11または
12に記載の使用。
【請求項19】
細胞および/または組織の損傷と関連する疾患が、腎臓、脳、肺、肝臓、心臓、脾臓、消化管、および皮膚の損傷と関連する疾患を含む、請求項
11または
12に記載の使用。
【請求項20】
細胞および/または組織の損傷と関連する疾患が、外傷、火傷、潰瘍、粘膜炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、脳卒中、および皮膚の老化を含む、請求項
19に記載の使用。
【請求項21】
MG53突然変異体のアミノ酸配列が、配列番号7で示されたアミノ酸配列である、請求項
11から
20のいずれか一項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学分野に関する。特に、本発明は、MG53突然変異体、MG53突然変異体を含む医薬組成物、MG53突然変異体をコードする核酸、MG53突然変異体を調製するための方法、ならびに心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置するための医薬の製造におけるMG53突然変異体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
TRIM72としても知られている、ミツグミン53(MG53)は、トリパータイトモチーフ含有タンパク質(TRIM)ファミリーのメンバーである。MG53は、N末端におけるTRIMモチーフと、C末端におけるSPRYモチーフとを含む。TRIMモチーフは、連続して連結された、Ringドメイン、B-boxドメイン、コイルドコイルドメインからなる(Chuanxi Caiら、the Journal of Biological Chemistry、284巻(5)、3314~3322(2009)を参照されたい)。MG53は、全身にわたり、様々な役割を果たすが、主に、横紋筋内で発現し、骨格筋および心臓のホメオスタシスを維持するのに不可欠である。MG53は、既に、細胞膜修復機能および心保護機能を有することが見出された(例えば、Chuanxi Caiら、Nature Cell Biology、11巻、56~64(2009);CN101797375Bを参照されたい)。加えて、さらなる研究は、MG53がまた、再灌流傷害サルベージキナーゼ(RISK)経路の活性化により、虚血プレコンディショニング(IPC)および虚血ポストコンディショニング(PostC)において、保護の役割も果たすことを見出した。MG53分子のN末端およびC末端はそれぞれ、カベオリン3およびp85-PI3Kキナーゼに結合して、複合体を形成することが可能であり、この複合体が、RISK経路を活性化させて、心保護を誘発する(Chun-Mei Caoら、Circulation、121、2565~2574(2010)を参照されたい)。
【0003】
MG53は、細胞膜修復機能および心保護機能を有するが、かつての研究はまた、MG53が、E3ユビキチンリガーゼ活性を有し、これが、インスリン抵抗性およびメタボリックシンドロームの発生に寄与することも見出した。MG53のN末端における、TRIMモチーフのRingドメインは、インスリン受容体(IR)およびインスリン受容体基質1(IRS1)に結合し、ユビキチン化と、プロテアソームによる、これらのタンパク質のその後の分解とを媒介し、これにより、インスリンシグナル伝達経路を遮断し、インスリン抵抗性および肥満、糖尿病、高血圧症、脂質異常症など、関連する代謝疾患をもたらす(例えば、R.Songら、Nature、494、375~379(2013);J.S.Yiら、Nature Communications、4、2354(2013)を参照されたい)。したがって、野生型MG53は、細胞膜修復機能および心保護機能を誘発するが、また、インスリン抵抗性およびこれに関連する代謝疾患など、有害な副作用も引き起こす。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、MG53突然変異体、MG53突然変異体を含む医薬組成物、MG53突然変異体をコードする核酸、MG53突然変異体を調製するための方法、ならびに心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置するための医薬の製造における、MG53突然変異体の使用に関する。特に、MG53突然変異体は、細胞修復機能および/または心保護機能を依然として保持しつつ、インスリン抵抗性、肥満、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの代謝的副作用を回避または低減しうる。
【0005】
一態様では、本発明は、欠失および/またはセリンでないもしくはトレオニンでない他の任意のアミノ酸へと突然変異している、野生型MG53のコイルドコイル-SPRY領域内の少なくとも1つのセリンを除き、野生型MG53のアミノ酸配列と同一である、MG53突然変異体に関する。ある特定の実施形態では、コイルドコイル-SPRY領域は、野生型MG53のアミノ酸配列の122~477位に位置する。ある特定の実施形態では、野生型MG53は、動物、好ましくは、哺乳動物、例えば、ヒト、マウス、ラット、サル、ブタ、イヌなどに由来する。ある特定の実施形態では、野生型MG53のアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号139、配列番号140、配列番号141、または配列番号142で示される。
【0006】
ある特定の実施形態では、MG53突然変異体は、非極性アミノ酸へと突然変異している、野生型MG53のコイルドコイル-SPRY領域内の少なくとも1つのセリンを除き、野生型MG53のアミノ酸配列と同一である。ある特定の実施形態では、非極性アミノ酸は、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、およびトリプトファンからなる群から選択される。好ましくは、ある特定の実施形態では、非極性アミノ酸は、アラニンである。ある特定の実施形態では、MG53突然変異体は、セリンでないかまたはトレオニンでない任意の極性アミノ酸へと突然変異している、野生型MG53のコイルドコイル-SPRY領域内の少なくとも1つのセリンを除き、野生型MG53のアミノ酸配列と同一である。ある特定の実施形態では、極性アミノ酸は、グルタミン、システイン、アスパラギン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、アルギニン、およびヒスチジンからなる群から選択される。好ましくは、ある特定の実施形態では、極性アミノ酸は、システインである。
【0007】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53の配列番号1で示されたアミノ酸配列の、150、189、211、214、246、255、269、296、297、301、305、306、307、314、341、377、405、418、425、または430位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0008】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53の配列番号139で示されたアミノ酸配列の、150、189、211、214、246、255、269、296、297、301、305、306、307、314、341、377、405、418、425、または430位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0009】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53の配列番号140で示されたアミノ酸配列の、150、189、211、214、246、255、269、296、297、301、305、306、307、314、341、377、405、418、425、または430位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0010】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53の配列番号141で示されたアミノ酸配列の、150、189、211、214、246、255、269、296、297、301、305、306、307、314、341、377、405、418、425、または430位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0011】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53の配列番号142で示されたアミノ酸配列の、150、189、211、214、246、255、または269位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0012】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53の配列番号2で示されたアミノ酸配列の、188、189、210、211、214、246、253、255、269、296、297、301、305、306、307、314、341、367、377、418、430、または440位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0013】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53の配列番号3で示されたアミノ酸配列の、150、188、189、210、211、214、246、253、255、269、296、297、301、305、307、314、341、367、377、418、430、440、464、または474位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0014】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53の配列番号4で示されたアミノ酸配列の、150、189、211、214、246、255、269、296、297、301、305、306、307、341、377、405、418、425、430、または464位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0015】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53の配列番号5で示されたアミノ酸配列の、150、189、211、214、246、255、269、296、301、305、307、314、341、377、411、418、425、430、または474位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0016】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53の配列番号6で示されたアミノ酸配列の、150、189、211、214、246、255、269、296、297、301、305、307、314、341、367、377、418、425、または430位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0017】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53のアミノ酸配列(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号139、配列番号140、配列番号141、または配列番号142)の、150、188~189、210~211、214、246、253~255、269、296~297、301、305~307、314、341、367、377、405、411、418、425、430、440、464、または474位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0018】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53のアミノ酸配列(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号139、配列番号140、配列番号141、または配列番号142)の、189、211、214、246、253~255、269、296、301、305、307、341、377、418、または430位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0019】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53のアミノ酸配列(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号139、配列番号140、配列番号141、または配列番号142)の、211、214、246、253~255、269、296、または297位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0020】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53のアミノ酸配列(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号139、配列番号140、配列番号141、または配列番号142)の、211、214、246、255、269、296、または297位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0021】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53のアミノ酸配列(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号139、配列番号140、配列番号141、または配列番号142)の、253~255位のうちの1つまたは複数に位置する。ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53のアミノ酸配列の253位に位置する。ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53のアミノ酸配列の255位に位置する。ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53の配列番号1で示されたアミノ酸配列の255位に位置する。ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53の配列番号139、配列番号140、配列番号141、または配列番号142で示されたアミノ酸配列の255位に位置する。
【0022】
ある特定の実施形態では、MG53突然変異体は、2つ以上のセリン突然変異を含む。ある特定の実施形態では、MG53突然変異体の、2つ以上のセリン突然変異は、253~255位のうちの1つまたは複数におけるセリン突然変異を含む。ある特定の実施形態では、MG53突然変異体の、2つ以上のセリン突然変異は、253位におけるセリン突然変異を含む。ある特定の実施形態では、MG53突然変異体の、2つ以上のセリン突然変異は、255位におけるセリン突然変異を含む。ある特定の実施形態では、MG53突然変異体の、2つ以上のセリン突然変異は、253および255位におけるセリン突然変異を含む。
【0023】
当業者は、異なる種の野生型MG53タンパク質内のセリン残基は、異なる位置に位置する場合があり、したがって、欠失または突然変異したセリンの位置もまた、異なりうることを理解するであろう。ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53の配列番号1で示されたアミノ酸配列内の対応するセリン位置から、1~10アミノ酸、1~5アミノ酸、または1~3アミノ酸以内の上流または下流にある。
【0024】
ある特定の実施形態では、MG53突然変異体のアミノ酸配列は、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号147、配列番号148、配列番号149、または配列番号150で示されたアミノ酸配列である。好ましくは、ある特定の実施形態では、MG53突然変異体のアミノ酸配列は、配列番号7で示されたアミノ酸配列である。ある特定の実施形態では、MG53突然変異体のアミノ酸配列は、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号147、配列番号148、配列番号149、配列番号150で示されたアミノ酸配列のうちの1つに対する少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸配列相同性を有し、MG53突然変異体は、細胞膜修復機能および/または心保護機能を依然として保持しつつ、野生型MG53により引き起こされる代謝的副作用を回避する。
【0025】
別の態様では、本発明は、MG53突然変異体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
別の態様では、本発明は、MG53突然変異体のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む単離核酸に関する。ある特定の実施形態では、核酸は、配列番号13~18で示された核酸配列のうちのいずれか1つを含む。ある特定の実施形態では、核酸は、配列番号151~154で示された核酸配列のうちのいずれか1つを含む。
【0026】
別の態様では、本発明は、MG53突然変異体のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む発現ベクターに関する。ある特定の実施形態では、核酸は、配列番号13~18で示された核酸配列のうちのいずれか1つを含む。ある特定の実施形態では、核酸は、配列番号151~154で示された核酸配列のうちのいずれか1つを含む。
【0027】
さらに別の態様では、本発明は、本明細書で記載される発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
なおも別の態様では、本発明は、MG53突然変異体を調製するための方法であって、突然変異のための1つまたは複数のセリン位置を決定すること、野生型MG53のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むプラスミドの全長配列上の前記位置において、部位特異的突然変異誘発を実施すること、部位特異的突然変異を有するプラスミドを、宿主細胞へとトランスフェクトすること、およびMG53突然変異体を産生するように宿主細胞を誘導することを含む方法に関する。ある特定の実施形態では、部位特異的突然変異誘発は、(1)cDNA配列内の、部位特異的突然変異誘発で標的とされたアミノ酸の対応するヌクレオチド部位を決定し、突然変異部位においてヌクレオチド配列を標的アミノ酸に従って改変し、突然変異部位を含む20~40bpの長さの配列を切り出すことにより、プライマーをデザインすること;(2)ステップ(1)のプライマーを使用し、野生型MG53プラスミドを鋳型とすることにより、PCR反応を実施し、PCR産物についてアガロースゲル電気泳動を実施し、PCR産物を精製すること;(3)制限エンドヌクレアーゼを使用することにより、ステップ(2)の精製PCR産物に対する酵素反応を実施し、酵素消化産物を、適切なプラスミド発現ベクターとライゲーションし、細菌コンピテント細胞内にライゲーション産物を形質転換し、培養することを含む。ある特定の実施形態では、部位特異的突然変異誘発は、以下のステップをさらに含む:(4)ステップ(3)のクローンを選択して、ステップ(1)のプライマーを使用することにより、コロニーPCR同定を実施し、PCR産物についてアガロースゲル電気泳動を実施し、次いで、DNAシーケンシング同定を実施して、部位特異的突然変異を有する陽性クローンを同定すること。
【0028】
別の態様では、本発明は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置するための医薬の製造における、MG53突然変異体の使用に関する。ある特定の実施形態では、医薬は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置しつつ、インスリン抵抗性、肥満、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの代謝的副作用を回避または低減しうる。ある特定の実施形態では、心疾患は、糖尿病性心疾患、心筋虚血症、心虚血症/再灌流傷害、心筋梗塞、心不全、不整脈、心破裂、狭心症、心筋炎、冠動脈性心疾患、および心膜炎を含むがこれらに限定されない、心筋損傷と関連する疾患である。ある特定の実施形態では、糖尿病性脳血管疾患は、脳動脈硬化症、虚血性脳血管疾患、脳出血、脳萎縮、および脳梗塞を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、糖尿病性眼合併症は、糖尿病網膜症、糖尿病性白内障、糖尿病関連ブドウ膜炎、および失明を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、糖尿病性神経障害は、糖尿病性末梢神経障害を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、腎疾患は、急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、急性腎傷害、糖尿病性腎症などを含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、細胞および/または組織の損傷と関連する疾患は、脳傷害、肺傷害、脾臓傷害、脾臓破裂、胃潰瘍、胃炎、胃穿孔、消化管粘膜傷害、外傷、火傷、潰瘍、粘膜炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、脳卒中、皮膚の老化など、腎臓、脳、肺、肝臓、心臓、脾臓、消化管、および皮膚の細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、本発明は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置するための医薬の製造における、配列番号7で示されたポリペプチドの使用に関する。ある特定の実施形態では、本発明は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置するための医薬の製造における、配列番号147、配列番号148、配列番号149、または配列番号150で示されたポリペプチドの使用に関する。
【0029】
さらに別の態様では、本発明は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置する方法であって、それを必要とする対象へと、治療有効量のMG53突然変異体を投与するステップを含む方法に関する。ある特定の実施形態では、MG53突然変異体は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置しつつ、インスリン抵抗性、肥満、糖尿病、高血圧症、および脂質異常症などの代謝的副作用を回避または低減しうる。ある特定の実施形態では、心疾患は、糖尿病性心疾患、心筋虚血症、心虚血症/再灌流傷害、心筋梗塞、心不全、不整脈、心破裂、狭心症、心筋炎、冠動脈性心疾患、および心膜炎を含むがこれらに限定されない、心筋損傷と関連する疾患である。ある特定の実施形態では、糖尿病性脳血管疾患は、脳動脈硬化症、虚血性脳血管疾患、脳出血、脳萎縮、および脳梗塞を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、糖尿病性眼合併症は、糖尿病網膜症、糖尿病性白内障、糖尿病関連ブドウ膜炎、および失明を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、糖尿病性神経障害は、糖尿病性末梢神経障害を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、腎疾患は、急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、急性腎傷害、糖尿病性腎症などを含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、細胞および/または組織の損傷と関連する疾患は、脳傷害、肺傷害、脾臓傷害、脾臓破裂、胃潰瘍、胃炎、胃穿孔、消化管粘膜傷害、外傷、火傷、潰瘍、粘膜炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、脳卒中、皮膚の老化など、腎臓、脳、肺、肝臓、心臓、脾臓、消化管、および皮膚の細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、本発明は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置する方法であって、それを必要とする対象へと、治療有効量の、配列番号7で示されたポリペプチドを投与するステップを含む方法に関する。ある特定の実施形態では、本発明は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置する方法であって、それを必要とする対象へと、治療有効量の、配列番号147、配列番号148、配列番号149、または配列番号150で示されたポリペプチドを投与するステップを含む方法に関する。
【0030】
さらに他の態様では、本発明は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患の処置における使用のためのMG53突然変異体に関する。ある特定の実施形態では、MG53突然変異体は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置しつつ、インスリン抵抗性、肥満、糖尿病、高血圧症、および脂質異常症などの代謝的副作用を回避または低減しうる。ある特定の実施形態では、心疾患は、糖尿病性心疾患、心筋虚血症、心虚血症/再灌流傷害、心筋梗塞、心不全、不整脈、心破裂、狭心症、心筋炎、冠動脈性心疾患、および心膜炎を含むがこれらに限定されない、心筋損傷と関連する疾患である。ある特定の実施形態では、糖尿病性脳血管疾患は、脳動脈硬化症、虚血性脳血管疾患、脳出血、脳萎縮、および脳梗塞を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、糖尿病性眼合併症は、糖尿病網膜症、糖尿病性白内障、糖尿病関連ブドウ膜炎、および失明を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、糖尿病性神経障害は、糖尿病性末梢神経障害を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、腎疾患は、急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、急性腎傷害、糖尿病性腎症などを含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、細胞および/または組織の損傷と関連する疾患は、脳傷害、肺傷害、脾臓傷害、脾臓破裂、胃潰瘍、胃炎、胃穿孔、消化管粘膜傷害、外傷、火傷、潰瘍、粘膜炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、脳卒中、皮膚の老化など、腎臓、脳、肺、肝臓、心臓、脾臓、消化管、および皮膚の細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、本発明は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患の処置における使用のための、配列番号7で示されたポリペプチドに関する。ある特定の実施形態では、本発明は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患の処置における使用のための、配列番号147、配列番号148、配列番号149、または配列番号150で示されたポリペプチドに関する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】野生型MG53の分子構造を例示する図である。
【
図2】ヒト野生型MG53のアミノ酸配列である配列番号1と、これをコードする核酸配列である配列番号19とを例示する図である。
【
図3】マウス野生型MG53のアミノ酸配列である配列番号2と、これをコードする核酸配列である配列番号20とを例示する図である。
【
図4】ラット野生型MG53のアミノ酸配列である配列番号3と、これをコードする核酸配列である配列番号21とを例示する図である。
【
図5】サル野生型MG53のアミノ酸配列である配列番号4と、これをコードする核酸配列である配列番号22とを例示する図である。
【
図6】ブタ野生型MG53のアミノ酸配列である配列番号5と、これをコードする核酸配列である配列番号23とを例示する図である。
【
図7】イヌ野生型MG53のアミノ酸配列である配列番号6と、これをコードする核酸配列である配列番号24とを例示する図である。
【
図8】ヒトMG53 S255A突然変異体のアミノ酸配列である配列番号7と、これをコードする核酸配列である配列番号13とを例示する図である。
【
図9】マウスMG53 S255A突然変異体のアミノ酸配列である配列番号8と、これをコードする核酸配列である配列番号14とを例示する図である。
【
図10】ラットMG53 S255A突然変異体のアミノ酸配列である配列番号9と、これをコードする核酸配列である配列番号15とを例示する図である。
【
図11】サルMG53 S255A突然変異体のアミノ酸配列である配列番号10と、これをコードする核酸配列である配列番号16とを例示する図である。
【
図12】ブタMG53 S255A突然変異体のアミノ酸配列である配列番号11と、これをコードする核酸配列である配列番号17とを例示する図である。
【
図13】イヌMG53 S255A突然変異体のアミノ酸配列である配列番号12と、これをコードする核酸配列である配列番号18とを例示する図である。
【
図14】アデノウイルスを使用して、マウス野生型MG53およびマウスMG53 S255A突然変異体を、新生仔ラットの初代培養心筋細胞内で過剰発現させた後における、細胞内ATPおよびLDH放出の量を例示する図である。上パネルは、アデノウイルスを使用して、マウス野生型MG53およびマウスMG53 S255A突然変異体を、新生仔ラットの初代培養心筋細胞内で過剰発現させる場合の、低酸素状態および再酸素化処置の後に検出される、細胞内ATPの量を示し、ここで、Adv-β-galとは、ガラクトシダーゼを発現するが、マウス野生型MG53またはマウスMG53 S255A突然変異体を発現しない対照ウイルスを表し;Adv-MG53-mycとは、マウス野生型MG53を発現するアデノウイルスを表し;Adv-MG53-S255A-mycとは、マウスMG53 S255A突然変異体を発現するアデノウイルスを表す(n=7、
*p<0.05、
**p<0.01)。下パネルは、アデノウイルスを使用して、マウス野生型MG53およびマウスMG53 S255A突然変異体を、新生仔ラットの初代培養心筋細胞内で過剰発現させる場合の、低酸素状態および再酸素化処置の後に検出される、LDH放出の量を示し、ここで、Adv-β-galとは、ガラクトシダーゼを発現するが、マウス野生型MG53またはマウスMG53 S255A突然変異体を発現しない対照ウイルスを表し;Adv-MG53-mycとは、マウス野生型MG53を発現するアデノウイルスを表し;Adv-MG53-S255A-mycとは、マウスMG53 S255A突然変異体を発現するアデノウイルスを表す(n=7、
**p<0.01、
***p<0.005)。
【
図15】マウスMG53 S255A突然変異が、マウス野生型MG53による、AKTの活性化に影響を及ぼさないことを例示する図である。上パネルは、アデノウイルスを使用して、マウス野生型MG53およびマウスMG53 S255A突然変異体を、新生仔ラットの初代培養心筋細胞内で過剰発現させた場合に、ウェスタンブロットにより検出される、細胞内p-AKT
473の量を示し、ここで、β-galとは、ガラクトシダーゼを発現しないが、マウス野生型MG53またはマウスMG53 S255A突然変異体を発現しない対照アデノウイルスを表し;MG53とは、マウス野生型MG53を発現するアデノウイルスを表し;S255Aとは、マウスMG53 S255A突然変異体を発現するアデノウイルスを表す。下パネルは、上パネルの統計図であり、ここで、Adv β-galとは、ガラクトシダーゼを発現するが、マウス野生型MG53またはマウスMG53 S255A突然変異体を発現しない対照アデノウイルスを表し;Adv MG53とは、マウス野生型MG53を発現するアデノウイルスを表し;Adv MG53 S255Aとは、マウスMG53 S255A突然変異体を発現するアデノウイルスを表す(n=5、
*p<0.05)。
【
図16】マウスMG53 S255A突然変異が、MG53に媒介される基質の分解を阻害することを例示する図である。
図16Aの上パネルは、IRS1、マウス野生型MG53、マウスMG53 S255A突然変異体、またはマウスMG53-D-RING切断型突然変異体を、HEK293T細胞系内で過剰発現するプラスミド内で、ウェスタンブロットにより検出される、IRS1タンパク質の含量を示し、ここで、CONとは、マウス野生型MG53、マウスMG53 S255A突然変異体、およびマウスMG53-D-RING切断型突然変異体の発現を伴わない、空ベクターによるプラスミド対照を表し;MG53とは、マウス野生型MG53を発現するベクタープラスミドを表し;S255Aとは、マウスMG53 S255A突然変異体を発現するベクタープラスミドを表し;D-RINGとは、マウスRINGドメインが切断されている、マウスMG53切断型突然変異体であるMG53-D-RINGを発現するベクタープラスミドを表す。
図16Aの下パネルは、上パネルの統計図(n=5、
*p<0.05;
**p<0.01)である。
図16Bの上パネルは、IR、マウス野生型MG53、マウスMG53 S255A突然変異体、またはマウスMG53-D-RING切断型突然変異体を、HEK293T細胞系内で過剰発現するプラスミド内で、ウェスタンブロットにより検出される、IRタンパク質の含量を示し、ここで、CONとは、マウス野生型MG53、マウスMG53 S255A突然変異体、およびマウスMG53-D-RING切断型突然変異体の発現を伴わない、空ベクターによるプラスミド対照を表し;MG53とは、マウス野生型MG53を発現するベクタープラスミドを表し;S255Aとは、マウスMG53 S255A突然変異体を発現するベクタープラスミドを表し;D-RINGとは、マウスMG53-D-RING切断型突然変異体を発現するベクタープラスミドを表す。
図16Bの下パネルは、上パネルの統計図(n=5、
**p<0.01)である。
【
図17】ヒトMG53 S255A突然変異体が、MG53に媒介される基質の分解を阻害することを例示する図である。上パネルは、IRS1、ヒト野生型MG53、ヒトMG53 S255A突然変異体、またはヒトMG53-D-RING切断型突然変異体を、HEK293T細胞系内で過剰発現するプラスミド内で、ウェスタンブロットにより検出される、IRS1タンパク質の含量を示し、ここで、CONとは、ヒト野生型MG53、ヒトMG53 S255A突然変異体、およびヒトMG53-D-RING切断型突然変異体の発現を伴わない、空ベクターによるプラスミド対照を表し;MG53とは、ヒト野生型MG53を発現するベクタープラスミドを表し;MG53-dRとは、ヒトMG53-D-RING切断型突然変異体を発現するベクタープラスミドを表す。下パネルは、上パネルの統計図(n=5、
**p<0.01)である。
【
図18】マウスMG53 S255A突然変異体が、MG53の、基質であるIRS1への結合を阻害することを例示する図である。
図18Aは、HEK293T細胞系内で、マウス野生型MG53と、MG53の基質であるIRS1とを共発現させるか、またはマウスMG53 S255A突然変異体と、MG53の基質であるIRS1とを共発現させた後で、IRS1タンパク質を免疫沈降させ、ウェスタンブロットを実施することにより検出される、MG53-IRS1複合体の含量を示す。
図18Aでは、MG53とは、マウス野生型MG53を表し、MG53 S255Aとは、マウスMG53 S255A突然変異体を表し、IRS1とは、マウスインスリン受容体基質を表す。
図18Bは、表面プラズモン共鳴(SPR)試験時における、固定化され、精製されたタンパク質である、IRS1の、精製されたタンパク質である、マウス野生型MG53またはマウスMG53 S255A突然変異体への、移動相中の結合強度を示し、ここで、MG53とは、マウス野生型MG53を表し、MG53-S255Aとは、マウスMG53 S255A突然変異体を表し、ラットIRS1とは、ラットインスリン受容体基質を表す。
【
図19】マウスMG53 S255A突然変異体の、タンパク質であるIRS1の量に対する効果を例示する図である。上パネルは、IRS1、Ub、MG53、またはMG53 S255A突然変異体を、HEK293T細胞系内で過剰発現するプラスミド内で、ウェスタンブロットにより検出される、タンパク質であるIRS1の含量を示し、Ubとは、ユビキチンを表し、MG53とは、マウス野生型MG53を表し、MG53-S255Aとは、マウスMG53 S255A突然変異体を表す。下パネルは、上パネルの統計図であり、ここで、CONとは、マウス野生型MG53およびマウスMG53 S255A突然変異体の発現を伴わない、空ベクターによるプラスミド対照を表し;MG53-S255Aとは、マウスMG53 S255A突然変異体を発現するベクタープラスミドを表す(n=3、
*p<0.05;
***p<0.005)。
【
図20】ヒトMG53サブタイプのアミノ酸配列である、配列番号139(これは、NCBI番号:BAD18630.1に対応する)と、これをコードする核酸配列である、配列番号143とを例示する図である。
【
図21】ヒトMG53サブタイプのアミノ酸配列である、配列番号140(これは、NCBI受託番号:XP_016878743.1に対応する)と、これをコードする核酸配列である、配列番号144とを例示する図である。
【
図22】ヒトMG53サブタイプのアミノ酸配列である、配列番号141(これは、NCBI:BAC03506.1に対応する)と、これをコードする核酸配列である、配列番号145とを例示する図である。
【
図23】ヒトMG53サブタイプのアミノ酸配列である、配列番号142(これは、NCBI番号:AAH33211.1に対応する)と、これをコードする核酸配列である、配列番号146とを例示する図である。
【
図24】ヒトMG53サブタイプである、S255A突然変異体のアミノ酸配列である配列番号147と、これをコードする核酸配列である配列番号151とを例示する図である。
【
図25】ヒトMG53サブタイプである、S255A突然変異体のアミノ酸配列である配列番号148と、これをコードする核酸配列である配列番号152とを例示する図である。
【
図26】ヒトMG53サブタイプである、S255A突然変異体のアミノ酸配列である配列番号149と、これをコードする核酸配列である配列番号153とを例示する図である。
【
図27】ヒトMG53サブタイプである、S255A突然変異体のアミノ酸配列である配列番号150と、これをコードする核酸配列である配列番号154とを例示する図である。
【
図28】本発明の各種についての、全長MG53タンパク質およびこの断片のアミノ酸位置の命名法の概略図を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下では、本発明の多様な態様および実施形態が開示されるが、本出願の精神および主題の範囲から逸脱しない限りにおいて、当業者は、多様で同等な変化および改変を行うことができる。本明細書で開示される多様な態様および実施形態は、例示だけを目的とするものであり、本発明を限定することを意図するものではない。本出願の実際の保護範囲は、特許出願の範囲により規定される。そうでないことが規定されない限りにおいて、本明細書で使用される、全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により、一般に理解される意味と同じ意味を有する。本出願で引用される、全ての参考文献、特許、および特許出願は、参照によりそれらの全体に組み込まれる。
【0033】
一態様では、本発明は、MG53突然変異体に関し、該MG53突然変異体は、野生型MG53のコイルドコイル-SPRY領域内の少なくとも1つのセリンを除き、野生型MG53のアミノ酸配列と同一であり、該セリンは、欠失しているおよび/またはセリンでないかもしくはトレオニンでない他の任意のアミノ酸へと突然変異している。
【0034】
本明細書で使用される「野生型MG53」または「野生型MG53タンパク質」という用語は、対象において発現する、全長MG53タンパク質またはこの断片の天然配列を指す。MG53タンパク質は、
図1で示される構造を伴う、多機能的タンパク質である。異なる種の全長MG53タンパク質は、長さが若干異なるが、一般に、N末端におけるTRIMモチーフと、C末端におけるSPRYモチーフとを含む、約477アミノ酸を有する。TRIMモチーフは、連続して連結された、Ringドメイン、B-boxドメイン、コイルドコイルドメイン(RBCC)からなる。MG53タンパク質は、膜修復に重要な構成要素であって、虚血症-再灌流傷害に対する、プレコンディショニングおよびポストコンディショニングによる保護において、不可欠の役割を果たす構成要素のうちの1つである。一方、MG53タンパク質の高発現はまた、インスリン抵抗性およびメタボリックシンドロームも引き起こしうる。当技術分野では、MG53の構造および機能のほか、他のタンパク質とのその相互作用についても、詳細に報告されている(例えば、Chuanxi Caiら、Journal of Biological Chemistry、284(5)、3314~3322(2009);Xianhua Wangら、Circulation Research 107、76~83(2010);Eun Young Parkら、Proteins、790~795(2009)を参照されたい)。
【0035】
本明細書で使用される「対象」という用語は、ヒトおよび非ヒト動物の両方を含む。非ヒト動物は、哺乳動物および非哺乳動物など、全ての脊椎動物を含む。「対象」はまた、ウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、およびウマなどの家畜;またはラット、マウスなどの齧歯動物;または類人猿、サルなどの霊長動物;またはイヌもしくはネコなどの愛玩動物でもありうる。「対象」は、雄の場合もあり、雌の場合もあり、老齢、成体、若齢、小児、または幼児でありうる。ヒト「対象」は、白色人、アフリカ人、アジア人、セム人、もしくは他の人種、または上記の人種的背景の混合でありうる。
【0036】
ある特定の実施形態では、野生型MG53は、哺乳動物、例えば、ヒト、類人猿、サル、マウス、ラット、ブタ、イヌなどに由来することが好ましい。当業者は、オープンチャネル(例えば、National Center for Biotechnology Information(NCBI))から、参照により本明細書に組み込まれる、各種の野生型MG53のアミノ酸配列を得ることができる。ある特定の実施形態では、野生型MG53のアミノ酸配列は、それぞれ、ヒト、マウス、ラット、サル、ブタ、およびイヌの野生型MG53全長タンパク質に対応する、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、または配列番号6で示される。
【0037】
本明細書で使用される「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」という用語は、アミノ酸のポリマーを指すように、互換的に使用される。本明細書で記載されるタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドは、天然のアミノ酸、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸の類似体もしくは模倣体を含有しうる。本明細書で記載されるタンパク質、ポリペプチド、またはペプチドは、天然の単離、組換え発現、化学合成による方法などであるがこれらに限定されない、当技術分野で公知の任意の方法により得られうる。
【0038】
本明細書で使用される「コイルドコイル-SPRY領域」という用語は、野生型MG53のアミノ酸配列の対応する領域である。大半のTRIMファミリータンパク質内に存在するコイルドコイルドメインは、TRIMファミリーメンバー間の同種会合もしくは異種会合、またはTRIMメンバーと、他のタンパク質との間の同種会合もしくは異種会合を媒介して、二量体、ポリマーなどの複合体を形成し、これにより、細胞膜の修復を誘発する(例えば、Ozatoら、Nature Review Immunology、8:849~860(2008);Sanchez S.ら、PNAS、111:2494~2499(2014)を参照されたい)。SPRYドメインは、野生型MG53のアミノ酸配列のC末端に位置し、典型的に、野生型MG53のアミノ酸配列の288~477位に位置する。ある特定の実施形態では、本明細書で記載されるSPRYドメインは、PRYモチーフおよびSPRYモチーフを含む。SPRYドメインは、進化において保存され、真菌から高等動物を通じて発現する(例えば、Ozatoら、Nature Review Immunology、8:849~860(2008)を参照されたい)。これまでのところ、異なる哺乳動物ゲノム内で、約60のTRIMファミリーメンバーが同定されており、これらの中で、15のメンバーが、TRIMドメイン(すなわち、Ring-B-box-コイルドコイルドメイン)の後で、類似のSPRYドメインを保有し、MG53は、これらのTRIMサブファミリータンパク質を伴う一次構造の保存を呈示する(例えば、WO2009/073808を参照されたい)。コイルドコイル-SPRY領域に対応する具体的アミノ酸位置は、異なる種間で、若干異なりうるが、当業者は、先行技術(例えば、NCBIにおいて開示された情報)および/または規定の実験法を介して、異なる種の野生型MG53のコイルドコイル-SPRY領域に対応する、具体的アミノ酸位置を得ることができる。ある特定の実施形態では、本明細書で使用されるコイルドコイル-SPRY領域は、野生型MG53または構造的に類似する領域のアミノ酸122~477位を指す。ある特定の実施形態では、構造的に類似する領域は、アミノ酸122~477位のうちの、70%、80%、または90%の連続アミノ酸配列を含む領域でありうる。ある特定の実施形態では、構造的に類似する領域の、N末端の開始部位は、アミノ酸122~477位のN末端より、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、もしくは20アミノ酸長い場合もあり、これだけ短い場合もあり、かつ/または構造的に類似する領域の、C末端の終結部位は、アミノ酸122~477位のC末端より、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、もしくは20アミノ酸長い場合もあり、これだけ短い場合もある。例えば、ある特定の実施形態では、本明細書で使用されるコイルドコイル-SPRY領域は、配列番号1のアミノ酸122~477位に対応する、ヒト野生型MG53のコイルドコイル-SPRY領域(すなわち、配列番号1)を指す。
【0039】
本明細書で使用される「MG53突然変異体」または「MG53タンパク質突然変異体」という用語は、天然の野生型MG53のアミノ酸配列タンパク質が改変された、MG53タンパク質の変異体または断片を指す。このような改変は、1つまたは複数のアミノ酸の欠失および/または置換を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、本発明のMG53突然変異体は、欠失および/またはセリンでないもしくはトレオニンでない他の任意のアミノ酸へと突然変異している、野生型MG53のコイルドコイル-SPRY領域内の少なくとも1つのセリンを除き、野生型MG53のアミノ酸配列と同一である。
【0040】
本明細書で使用される「少なくとも1つのセリン」とは、野生型MG53のコイルドコイル-SPRY領域内の、1つまたは複数のセリン、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35個、またはこれを超えるセリンを指す。
【0041】
本明細書で使用される「セリンでないかまたはトレオニンでない他のアミノ酸」とは、セリンまたはトレオニンではない、他の任意の天然アミノ酸、置換された天然アミノ酸、非天然アミノ酸、置換された非天然アミノ酸、またはこれらの任意の組合せを指す。本出願では、天然アミノ酸の名称は、標準的な1文字コードまたは3文字コードとして表される。天然アミノ酸とは、非極性アミノ酸および極性アミノ酸を含む。別段指定されない限り、本明細書で記載されるアミノ酸のうちのいずれも、D立体配置の場合もあり、L立体配置の場合もある。
【0042】
ある特定の実施形態では、野生型MG53のコイルドコイル-SPRY領域内の少なくとも1つのセリン(SerまたはS)は、欠失または非極性アミノ酸へと突然変異している。非極性アミノ酸は、グリシン(GlyまたはG)、アラニン(AlaまたはA)、ロイシン(LeuまたはL)、イソロイシン(IleまたはI)、バリン(ValまたはV)、プロリン(ProまたはP)、フェニルアラニン(PheまたはF)、メチオニン(MetまたはM)、トリプトファン(TrpまたはW)を含む。ある特定の実施形態では、野生型MG53のコイルドコイル-SPRY領域内の少なくとも1つのセリンは、欠失またはグリシンもしくはアラニンへと突然変異している。好ましくは、ある特定の実施形態では、野生型MG53のコイルドコイル-SPRY領域内の少なくとも1つのセリンは、欠失またはアラニンへと突然変異している。より好ましくは、ある特定の実施形態では、野生型MG53のコイルドコイル-SPRY領域内の少なくとも1つのセリンは、アラニンへと突然変異している。
【0043】
ある特定の実施形態では、野生型MG53のコイルドコイル-SPRY領域内の少なくとも1つのセリンは、欠失または極性アミノ酸へと突然変異している。極性アミノ酸は、グルタミン(GlnまたはQ)、システイン(CysまたはC)、アスパラギン(AsnまたはN)、チロシン(TyrまたはY)、アスパラギン酸(AspまたはD)、グルタミン酸(GluまたはE)、リシン(LysまたはK)、アルギニン(ArgまたはR)、ヒスチジン(HisまたはH)を含む。ある特定の実施形態では、野生型MG53のコイルドコイル-SPRY領域内の少なくとも1つのセリンは、欠失またはシステインもしくはヒスチジンへと突然変異している。好ましくは、ある特定の実施形態では、野生型MG53のコイルドコイル-SPRY領域内の少なくとも1つのセリンは、欠失またはシステインへと突然変異している。より好ましくは、ある特定の実施形態では、野生型MG53のコイルドコイル-SPRY領域内の少なくとも1つのセリンは、システインへと突然変異している。
【0044】
ある特定の実施形態では、本明細書で記載されるセリン突然変異は、1つまたは複数の、セリンでないかまたはトレオニンでない他のアミノ酸で置換された1つのセリンを含み、例えば、1つのセリンは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の、セリンでないかまたはトレオニンでない他のアミノ酸で置換されうる。2つ以上のセリンが置換される場合、各セリンは、それぞれ、1つまたは複数の、セリンでないかまたはトレオニンでない他のアミノ酸で、独立に置換されうる。
【0045】
各種の野生型MG53の、具体的なセリン位置は、種間で変動しうるが、ある種の野生型MG53のアミノ酸配列と、そのコイルドコイル-SPRY領域に対応するアミノ酸領域が公知であれば、当業者は、コイルドコイル-SPRY領域内のセリンが対応する、具体的アミノ酸位置を決定することができる。例えば、当業者には、ヒト野生型MG53のアミノ酸配列が、配列番号1で示されており、そのコイルドコイル-SPRY領域が、配列番号1のアミノ酸122~477位に対応することが公知である。このような状況下で、当業者は、ヒト野生型MG53のコイルドコイル-SPRY領域内のセリンに対応する、具体的アミノ酸位置が、配列番号1の、それぞれ、150、189、211、214、246、255、269、296、297、301、305、306、307、314、341、377、405、418、425、430位であることを決定しうる。
【0046】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、配列番号1で示された、ヒト野生型MG53のアミノ酸配列の以下の位置:150、189、211、214、246、255、269、296、297、301、305、306、307、314、341、377、405、418、425、430位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0047】
ある特定の実施形態では、本明細書で記載されるMG53タンパク質は、全長MG53タンパク質、またはこの切断型突然変異体(すなわち、全長MG53タンパク質の切断型断片)、または全長MG53タンパク、またはこの切断型突然変異体と比較して、1つもしくは複数のアミノ酸の突然変異、付加、もしくは欠失を有する突然変異体を含む。この場合、異なるMG53タンパク質サブタイプのアミノ酸配列についてのアミノ酸位置の命名法を統一するために、本発明において、ある特定のMG53タンパク質サブタイプのアミノ酸位置が言及されるとき、MG53タンパク質サブタイプのアミノ酸配列が、全長MG53タンパク質(例えば、配列番号1)のアミノ酸配列に照らしてアライメントされ、必要な場合、同一なアミノ酸の数を最大化するように、関連するアミノ酸配列へと、ギャップが導入されるものとする。MG53サブタイプのアミノ酸配列内の、第1のアミノ酸の位置番号は、種の野生型MG53のアミノ酸位置が参照される場合、全長MG53タンパク質、およびこの切断型突然変異体のいずれも、全長MG53タンパク質のアミノ酸配列内の位置番号を参照するように、前記アミノ酸に対応する、全長MG53タンパク質の位置番号として命名される。
【0048】
例えば、
図28に示される通り、種の全長MG53タンパク質は、n個のアミノ酸を有し、対応するアミノ酸位置は、1~n位である。MG53サブタイプ1のアミノ酸配列は、全長MG53タンパク質のアミノ酸配列と比較して、全長配列のm~n位に位置するアミノ酸に対応する切断型突然変異体を含有する。したがって、MG53サブタイプ1アミノ酸配列の、第1のアミノ酸位置は、m位と命名され、MG53サブタイプ1アミノ酸配列の、第2のアミノ酸位置は、m+1位と命名され、同様に、MG53サブタイプ1アミノ酸配列の、最後のアミノ酸位置は、n位と命名される。別の例では、MG53サブタイプ2のアミノ酸配列は、全長MG53タンパク質のアミノ酸配列と比較して、全長配列の1~s位に位置するアミノ酸に対応する切断型突然変異体を含有する。したがって、MG53サブタイプ2アミノ酸配列の、第1のアミノ酸位置は、1位と命名され、MG53サブタイプ2アミノ酸配列の、第2のアミノ酸位置は、2位と命名され、同様に、MG53サブタイプ2アミノ酸配列の、最後のアミノ酸位置は、s位と命名される。さらに別の例では、MG53サブタイプ3のアミノ酸配列は、全長MG53タンパク質のアミノ酸配列と比較して、全長配列のp~q位に位置するアミノ酸に対応する切断型突然変異体を含有する。したがって、MG53サブタイプ3アミノ酸配列の、第1のアミノ酸位置は、p位と命名され、MG53サブタイプ3アミノ酸配列の、第2のアミノ酸位置は、p+1位と命名され、同様に、MG53サブタイプ3アミノ酸配列の、最後のアミノ酸位置は、q位と命名される。
【0049】
例えば、配列番号140は、配列番号1で示された、ヒト野生型MG53全長配列のアミノ酸145~477位に対応する333アミノ酸を有する、ヒト野生型MG53サブタイプのうちの1つである。この状況下では、アミノ酸配列である、配列番号140の、第1のアミノ酸位置(メチオニン)は、配列番号140の145位と命名され、第2のアミノ酸位置は、配列番号140の146位と命名され、同様に、アミノ酸配列である、配列番号140の、最後のアミノ酸位置は、配列番号140の477位と命名される。別の例では、配列番号141は、これもまた、333アミノ酸を有し、1アミノ酸だけが、配列番号1で示された、ヒト野生型MG53全長配列のアミノ酸145~477位と異なる、ヒト野生型MG53サブタイプのうちの1つである、すなわち、配列番号1の315位が、グルタミン酸であるのに対し、配列番号141の対応する位置は、グリシンである。この状況下では、配列番号141で示されたアミノ酸配列の、第1のアミノ酸位置(メチオニン)は、配列番号141の145位と命名され、第2のアミノ酸位置は、配列番号141の146位と命名され、同様に、最後のアミノ酸位置は、配列番号141の477位と命名される。さらに別の例として述べると、配列番号142は、配列番号1で示された、ヒト野生型MG53全長配列のアミノ酸1~269位に対応する269アミノ酸を有する、ヒト野生型MG53サブタイプのうちの1つである。この状況下では、アミノ酸配列である、配列番号142の、第1のアミノ酸位置(メチオニン)は、配列番号142の1位と命名され、アミノ酸配列である、配列番号142の、第2のアミノ酸位置は、配列番号142の2位と命名され、同様に、アミノ酸配列である、配列番号142の、最後のアミノ酸位置は、配列番号142の269位と命名される。
【0050】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、配列番号139で示された、ヒト野生型MG53サブタイプのアミノ酸配列の以下の位置:150、189、211、214、246、255、269、296、297、301、305、306、307、314、341、377、405、418、425、または430位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0051】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、配列番号140で示された、ヒト野生型MG53サブタイプのアミノ酸配列の以下の位置:150、189、211、214、246、255、269、296、297、301、305、306、307、314、341、377、405、418、425、または430位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0052】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、配列番号141で示された、ヒト野生型MG53サブタイプのアミノ酸配列の以下の位置:150、189、211、214、246、255、269、296、297、301、305、306、307、314、341、377、405、418、425、または430位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0053】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、配列番号142で示された、ヒト野生型MG53サブタイプのアミノ酸配列の以下の位置:150、189、211、214、246、255、または269位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0054】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、配列番号2で示された、マウス野生型MG53のアミノ酸配列の以下の位置:188、189、210、211、214、246、253、255、269、296、297、301、305、306、307、314、341、367、377、418、430、または440位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0055】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、配列番号3で示された、ラット野生型MG53のアミノ酸配列の以下の位置:150、188、189、210、211、214、246、253、255、269、296、297、301、305、307、314、341、367、377、418、430、440、464、または474位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0056】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、配列番号4で示された、サル野生型MG53のアミノ酸配列の以下の位置:150、189、211、214、246、255、269、296、297、301、305、306、307、341、377、405、418、425、430、または464位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0057】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、配列番号5で示された、ブタ野生型MG53のアミノ酸配列の以下の位置:150、189、211、214、246、255、269、296、301、305、307、314、341、377、411、418、425、430、または474位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0058】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、配列番号6で示された、イヌ野生型MG53のアミノ酸配列の以下の位置:150、189、211、214、246、255、269、296、297、301、305、307、314、341、367、377、418、425、または430位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0059】
欠失または突然変異したセリンの具体的位置は、種間で変動しうるが、野生型MG53タンパク質のセリンの位置は、多様な種間で高度に保存されている。例えば、ヒト、マウス、ラット、サル、ブタ、およびイヌの野生型MG53タンパク質のアミノ酸配列の、189、211、214、246、255、269、296、301、305、307、341、377、418、および430位は全て、セリンである。一部の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53のアミノ酸配列(例えば、配列番号1~6)の以下の位置:189、211、214、246、255、269、296、301、305、307、341、377、418、または430位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0060】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53のアミノ酸配列(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号139、配列番号140、配列番号141、または配列番号142)の以下の位置:150、188~189、210~211、214、246、253~255、269、296~297、301、305~307、314、341、367、377、405、411、418、425、430、440、464、または474位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0061】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53のアミノ酸配列(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号139、配列番号140、配列番号141、または配列番号142)の以下の位置:189、211、214、246、253~255、269、296、301、305、307、341、377、418、または430位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0062】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53のアミノ酸配列(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号139、配列番号140、配列番号141、または配列番号142)の以下の位置:211、214、246、253~255、269、296、または297位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0063】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53のアミノ酸配列(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号139、配列番号140、配列番号141、または配列番号142)の以下の位置:211、214、246、255、269、296、または297位のうちの1つまたは複数に位置する。
【0064】
ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53のアミノ酸配列(例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号139、配列番号140、配列番号141、または配列番号142)の253~255位のうちの1つまたは複数に位置する。ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53のアミノ酸配列の253位に位置する。ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53のアミノ酸配列の255位に位置する。ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53のアミノ酸配列である、配列番号1の255位に位置する。ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53のアミノ酸配列である、配列番号139、配列番号140、配列番号141、または配列番号142の255位に位置する。
【0065】
ある特定の実施形態では、MG53突然変異体は、2つ以上のセリン突然変異を有する。ある特定の実施形態では、MG53突然変異体の、2つ以上のセリン突然変異は、253~255位のうちの1つまたは複数におけるセリン突然変異を含む。ある特定の実施形態では、MG53突然変異体の、2つ以上のセリン突然変異は、253位におけるセリン突然変異を含む。ある特定の実施形態では、MG53突然変異体の、2つ以上のセリン突然変異は、255位におけるセリン突然変異を含む。ある特定の実施形態では、MG53突然変異体の、2つ以上のセリン突然変異は、253および255位におけるセリン突然変異を含む。
【0066】
当業者は、異なる種の野生型MG53タンパク質の中のセリン残基は、異なる位置に位置する場合があり、従って、欠失または突然変異したセリンの位置もまた、異なりうることを理解するであろう。ある特定の実施形態では、欠失または突然変異したセリンは、野生型MG53の配列番号1で示されたアミノ酸配列内の対応するセリン位置から、1~10アミノ酸、1~5アミノ酸、または1~3アミノ酸以内の上流または下流にある。
【0067】
ある特定の実施形態では、MG53突然変異体のアミノ酸配列は、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号147、配列番号148、配列番号149、または配列番号150で示されたアミノ酸配列である。より好ましくは、ある特定の実施形態では、MG53突然変異体のアミノ酸配列は、配列番号7で示されたアミノ酸配列である。ある特定の実施形態では、MG53突然変異体のアミノ酸配列は、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号147、配列番号148、配列番号149、配列番号150で示されたアミノ酸配列のうちの1つに対する少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%のアミノ酸配列相同性を有し、MG53突然変異体は、細胞膜修復機能および/または心保護機能を依然として保持しつつ、野生型MG53により引き起こされる代謝的副作用を回避する。
【0068】
本明細書で使用される「~に対する配列相同性」パーセント(%)とは、アミノ酸配列では、候補配列と、参照配列とをアライメントし、必要な場合、ギャップを導入して、同一なアミノ酸の最大数を達成した後における、2つのアミノ酸配列の間の同一性の百分率;ヌクレオチド配列では、候補配列と、参照配列とをアライメントし、必要な場合、ギャップを導入して、同一なヌクレオチドの最大数を達成した後における、2つのヌクレオチド配列の間の同一性の百分率を指す。
【0069】
相同性の百分率は、当技術分野における、多様な周知の方法により決定されうる。例えば、配列の比較は、以下の公開のツール:BLASTpソフトウェア(National Center for Biotechnology Information(NCBI)のウェブサイト:http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiから入手可能である;また、Altschul SFら、J.Mol.Biol.、215:403~410(1990);Stephen F.ら、Nucleic Acids Res.、25:3389~3402(1997)も参照されたい)、ClustalW2(European Bioinformatics Instituteのウェブサイト:http://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalw2/から入手可能である;Higgins DGら、Methods in Enzymology、266:383~402(1996);Larkin MAら、Bioinformatics(Oxford、England)、23(21):2947~8(2007)を参照されたい)、およびTCoffee(Swiss Institute of Bioinformaticのウェブサイトから入手可能である;また、Poirot O.ら、Nucleic Acids Res.、31(13):3503~6(2003);Notredame C.ら、J.Mol.Boil.、302(1):205~17(2000)も参照されたい)により達成されうる。ソフトウェアを使用して、配列のアライメントが実施される場合、ソフトウェアで利用可能なデフォルトのパラメータが使用される場合もあり、他の形で、パラメータが、アライメントを目的としてカスタマイズされる場合もある。これらの全ては、当業者の知見の範囲内にある。
【0070】
ある特定の実施形態では、配列番号7~12、配列番号147~150、ならびに配列番号7~12および配列番号147~150に対する、アミノ酸配列の相同性を有するMG53突然変異体は、細胞膜修復機能および/または心保護機能を依然として保持しつつ、野生型MG53により引き起こされる代謝的副作用を回避する。
【0071】
本発明者らは、野生型MG53のコイルドコイル-SPRY領域内の少なくとも1つのセリンを、欠失またはセリンでないもしくはトレオニンでない他の任意のアミノ酸へと突然変異させる場合、野生型MG53により引き起こされる代謝的副作用は、MG53の細胞膜修復機能および/または心保護機能に対する影響を伴わずに、回避または低減されうることを見出した。いかなる理論に束縛されることも望まないが、上記の結果は、野生型MG53のコイルドコイル-SPRY領域内のセリンのリン酸化が、MG53のE3ユビキチンリガーゼ活性を、著明に調節することが可能であり、基質であるIRβおよびIRS1を介して、MG53の、インスリンシグナル伝達系に対する調節機能をモジュレートしうるという事実に起因しうる。しかし、この領域内のセリンのリン酸化は、MG53の細胞膜修復機能および/または心保護機能を調節しない。
【0072】
本明細書で使用される「細胞膜修復機能」とは、細胞死を低減し、細胞の生存を促進し、これにより、細胞の機能を回復するように、関連するシグナル伝達経路(例えば、RISK経路)を活性化させることを介して、細胞傷害、とりわけ、急性細胞傷害時に損傷を受けた細胞膜を修復し、回復させる、野生型MG53またはMG53突然変異体の能力を指す。ある特定の実施形態では、野生型MG53または本発明のMG53突然変異体は、生細胞、in vitroにおける細胞、またはin vivoにおける細胞を修復しうる。野生型MG53または本発明のMG53突然変異体はまた、心筋細胞、横紋筋細胞、骨格筋細胞、腎近位尿細管上皮細胞、肺胞上皮細胞、消化管上皮細胞(例えば、経口上皮細胞、食道上皮細胞、胃上皮細胞、十二指腸上皮細胞、小腸上皮細胞、空腸上皮細胞、回腸上皮細胞、結腸上皮細胞)、粘膜細胞(例えば、経口粘膜細胞、経鼻粘膜細胞、胃粘膜細胞、小腸粘膜細胞、結腸粘膜細胞、十二指腸粘膜細胞)、皮膚細胞(例えば、表皮細胞、上皮細胞、真皮細胞、内皮細胞)、血管細胞(例えば、血管壁細胞、血管内皮細胞、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞)などであるがこれらに限定されない、異なる種類の細胞も修復しうる。ある特定の実施形態では、野生型MG53または本発明のMG53突然変異体は、心筋細胞、骨格筋細胞、横紋筋細胞、腎近位尿細管上皮細胞、肺胞上皮細胞などを修復しうる。
【0073】
本明細書で記載されるMG53突然変異体の細胞膜修復機能は、当技術分野で周知の方法を使用して決定されうる。例えば、本発明のMG53突然変異体の細胞膜修復機能は、新生仔ラット心室筋細胞(NRVM)内でアデノウイルスを使用して、野生型MG53および本発明のMG53突然変異体を過剰発現させ、低酸素状態を使用して、細胞を刺激し、細胞の生存を検出し(例えば、MTT法、培地中のATP濃度およびLDH濃度の測定、TUNEL染色(詳細なステップについては、Zhang.Tら、Nature Medicine、175~184(2016)などを参照されたい)による)、次いで、対照群(例えば、野生型MG53およびMG53突然変異体の発現を伴わない、空ベクターによる陰性対照群、野生型MG53を過剰発現する陽性対照群)の指標(例えば、細胞内ATPレベル、LDH放出レベルなど)と、被験群(すなわち、本発明のMG53突然変異体を過剰発現する群)の指標(例えば、細胞内ATPレベル、LDH放出レベルなど)とを比較することにより決定されうる。
【0074】
本明細書で使用される「心保護機能」とは、野生型MG53またはMG53突然変異体が、心筋細胞の保護を達成し、これにより、心保護を増強するように、任意選択で、心筋細胞関連シグナル伝達経路(例えば、RISK経路)を活性化させることを介して、心筋傷害、とりわけ、急性心筋傷害時の、心筋細胞膜の損傷を修復しうることを指す。本明細書で記載されるMG53突然変異体の心保護機能は、当技術分野で周知の方法を使用して決定されうる。例えば、本発明のMG53突然変異体の心保護機能は、新生仔ラット心室筋細胞(NRVM)内でアデノウイルスを使用して、野生型MG53および本発明のMG53突然変異体を過剰発現させ、低酸素状態を使用して、細胞を刺激し、細胞の生存を検出し(例えば、MTT法、培地中のATP濃度およびLDH濃度の測定、TUNEL染色(詳細なステップについては、Zhang.Tら、Nature Medicine、175~184(2016)などを参照されたい)による)、次いで、対照群(例えば、野生型MG53およびMG53突然変異体の発現を伴わない、空ベクターによる陰性対照群、野生型MG53を過剰発現する陽性対照群)の指標(例えば、細胞内ATPレベル、LDH放出レベルなど)と、被験群(すなわち、本発明のMG53突然変異体を過剰発現する群)の指標(例えば、細胞内ATPレベル、LDH放出レベルなど)とを比較することにより決定されうる。別の例では、心筋細胞を、野生型MG53および本明細書で記載されるMG53突然変異体のそれぞれとインキュベートし、多様な刺激(例えば、低酸素状態、H2O2)を使用して、細胞死をもたらし、対照群(例えば、陰性対照群、すなわち、野生型MG53も、MG53突然変異体も伴わずにインキュベートされる群、野生型MG53を過剰発現する陽性対照群)における生存率と、被験群(すなわち、本発明のMG53突然変異体と共にインキュベートされる群)における生存率とを比較することにより、本明細書で記載されるMG53突然変異体の心保護機能を査定する。細胞の生存率は、MTT細胞カウント、LDH、ATP、またはTUNEL染色の測定により決定されうる。
【0075】
本明細書で使用される「代謝的副作用」とは、治療量の薬物の投与の後における、治療目的外の代謝障害に起因する疾患または不快感であって、インスリン抵抗性、肥満、糖尿病、高血圧、脂質異常症などを含むがこれらに限定されない、疾患または不快感を指す。いかなる理論に束縛されることも望まないが、代謝的副作用の重症度は、MG53のE3ユビキチンリガーゼ活性を測定することにより評価されうると考えられる。ある特定の実施形態では、野生型MG53のコイルドコイル-SPRY領域内の少なくとも1つのセリンを、欠失および/またはセリンでないもしくはトレオニンでない他の任意のアミノ酸へと突然変異させる場合、野生型MG53のE3ユビキチンリガーゼ活性のうちの、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、なおまたは100%が阻害され、これにより、MG53の細胞膜修復機能および/または心保護機能に対して影響を及ぼさずに、野生型MG53により引き起こされる代謝的副作用を回避または低減する。「野生型MG53により引き起こされる代謝的副作用を回避または低減すること」とは、野生型MG53により引き起こされる代謝的副作用の非存在、または野生型MG53により引き起こされる代謝的副作用の重症度の、対応する野生型MG53と比較して、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、なおもしくは100%の低減を指す。「MG53の細胞膜修復機能および/または心保護機能に対して影響を及ぼさずに」とは、MG53の細胞膜修復機能および/もしくは心保護機能の完全な保持、または最大で5%、最大で10%、最大で15%、最大で20%、最大で25%、最大で30%などの、MG53の細胞膜修復機能および/もしくは心保護機能の低減を指す。
【0076】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるMG53突然変異体は、それらの類似体を含む。MG53突然変異体の類似体とは、本明細書で提供されるMG53突然変異体の全部または一部と実質的に同様な、機能的特徴または構造的特徴を有するポリペプチドを指すが、MG53突然変異体類似体のアミノ酸配列は、野生型MG53のアミノ酸配列と、少なくとも1つのアミノ酸位置だけ異なる。MG53突然変異体の類似体は、MG53突然変異体の部分的な断片、誘導体、または変異体であることが可能であり、化学的改変または生物学的改変を含みうる。MG53突然変異体の類似体は、MG53突然変異体の、1つまたは複数のアミノ酸上に、保存的な置換、付加、欠失、挿入、切断、修飾(例えば、リン酸化、グリコシル化、標識付けなど)、またはこれらの任意の組合せを有しうる。MG53突然変異体の類似体は、自然発生の変異体と、組換え法または化学合成により得られる、人工のポリペプチド配列など、MG53突然変異体の人工変異体とを含みうる。MG53突然変異体の類似体は、非自然発生のアミノ酸残基を含みうる。当業者は、本明細書で記載される、MG53突然変異体の類似体が、MG53突然変異体と実質的に同様な機能を依然として保持する、例えば、MG53突然変異体の類似体が、細胞修復機能および/または心保護機能を依然として保持しつつ、インスリン抵抗性、肥満、糖尿病、高血圧症、脂質異常症など、野生型MG53により引き起こされる代謝的副作用を回避または低減しうることを理解するであろう。
【0077】
アミノ酸残基の保存的置換とは、極性アミノ酸の間の置換(例えば、グルタミンとアスパラギンとの間の置換)、疎水性アミノ酸の間の置換(例えば、アルギニン、イソロイシン、メチオニン、およびバリンの間の置換)、および同じ電荷を伴うアミノ酸の間の置換(例えば、アルギニン、リシン、およびヒスチジンの間の置換、またはグルタミン酸とアスパラギン酸との間の置換)など、同様な特徴を伴うアミノ酸の間の置換を指す。ある特定の実施形態では、本明細書で記載されるMG53突然変異体の配列は、配列番号7~12、または配列番号147~150で示された配列と比較して、1か所だけ、または複数か所の、セリンでない位置における保存的置換を有する。ある特定の実施形態では、本明細書で記載されるMG53突然変異体の配列は、配列番号7~12、または配列番号147~150で示された配列と比較して、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、または20か所の、セリンでない位置における保存的置換を有する。
【0078】
本明細書で記載されるMG53突然変異体はまた、活性が影響を受けないことを前提として、非天然アミノ酸も含有しうる。非天然アミノ酸は、例えば、β-フルオロアラニン、1-メチルヒスチジン、γ-メチレングルタミン酸、α-メチルロイシン、4,5-デヒドロリシン、ヒドロキシプロリン、3-フルオロフェニルアラニン、3-アミノチロシン、4-メチルトリプトファンなどを含む。
【0079】
本発明のMG53突然変異体はまた、当技術分野で周知の方法を使用しても改変されうる。例えば、PEG化、グリコシル化、アミノ末端修飾、脂肪のアシル化、カルボキシル末端の修飾、リン酸化、メチル化などであるがこれらに限定されない。
【0080】
当業者は、本発明のMG53突然変異体は、当技術分野で周知の方法により改変された後で、MG53突然変異体と実質的に同様な機能を依然として保持することを理解するであろう。例えば、改変されたMG53突然変異体は、細胞修復機能および/または心保護機能を依然として保持しつつ、インスリン抵抗性、肥満、糖尿病、高血圧症、脂質異常症など、野生型MG53により引き起こされる代謝的副作用を回避または低減しうる。
【0081】
別の態様では、本発明は、本明細書で記載されるMG53突然変異体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、MG53突然変異体を、対象へと、MG53突然変異体の構造および特性に干渉せずに送達するのに使用される、薬学的に許容される溶媒、懸濁薬剤、または他の任意の薬理学的に不活性の媒体を指す。このような担体の一部は、MG53突然変異体を、例えば、対象への経口投与のための、錠剤、丸剤、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液、およびトローチとして製剤化されることを可能としうる。このような担体の一部は、MG53突然変異体が、注射、注入、または局所投与のために製剤化されることを可能とする。
【0082】
本発明の医薬組成物における使用のための、薬学的に許容される担体は、例えば、薬学的に許容される液体、ゲル、または固体担体、水性媒体(例えば、塩化ナトリウム注射媒体、リンゲル注射媒体、等張性グルコース注射媒体、滅菌水注射媒体、またはグルコースおよび乳酸のリンゲル注射媒体)、非水性媒体(例えば、植物由来の固定油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油、またはラッカセイ油)、抗微生物剤、等張剤(塩化ナトリウムまたはデキストロースなど)、緩衝剤(リン酸緩衝剤またはクエン酸緩衝剤など)、抗酸化剤(硫酸水素ナトリウムなど)、麻酔剤(プロカイン塩酸塩など)、懸濁/分散剤(カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはポリビニルピロリドンなど)、キレート化剤(EDTA(エチレンジアミン四酢酸など)またはEGTA(エチレングリコール四酢酸))、乳化剤(ポリソルベート80(TWEEN-80)など)、希釈剤、アジュバント、賦形剤、または非毒性の補助物質、当技術分野で公知の他の成分、またはこれらの多様な組合せを含みうるがこれらに限定されない。適切な成分は、例えば、充填剤、結合剤、崩壊剤、緩衝剤、保存剤、滑沢剤、芳香剤、増粘剤、着色剤、または乳化剤を含みうる。
【0083】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、経口製剤である。経口製剤は、カプセル、小袋、丸剤、錠剤、トローチ(呈味基質には、通常、スクロースおよびアカシアまたはトラガント)、粉末、顆粒、または水性もしくは非水性の溶液もしくは懸濁液、または油中水エマルジョンもしくは水中油エマルジョン、またはエリキシルもしくはシロップ、またはキャンディ(不活性基剤には、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースまたはアカシアなど)、ならびに/あるいは口腔洗浄剤およびこれらの類似物を含むがこれらに限定されない。
【0084】
ある特定の実施形態では、経口固体製剤(例えば、カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末、顆粒など)は、MG53突然変異体と、クエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウムなどの1つまたは複数の薬学的に許容される担体、ならびに/または以下:(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/もしくはケイ酸などの充填剤もしくは拡張剤;(2)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、および/もしくはアカシアなどの結合剤;(3)グリセロールなどの保湿剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、バレイショデンプンもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの切断剤;(5)パラフィンなどの遅延溶液;(6)四級アンモニウム化合物などの吸収加速剤;(7)アセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの滑沢剤;(8)カオリンおよびベントナイトなどの吸収剤;(9)滑石、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物などの滑沢剤;ならびに(10)着色剤を含む。
【0085】
ある特定の実施形態では、経口液体製剤は、薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルなどを含む。MG53突然変異体に加えて、液体剤形はまた、水、またはエタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、アクリル酸ベンゼン(メタクリル酸ベンゼン)、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、および脂肪酸ソルビトールエステル、ならびにこれらの混合物など、他の溶媒、可溶化剤、および乳化剤など、従来の不活性希釈剤も含有しうる。不活性希釈剤のほか、経口組成物はまた、保湿剤、乳化剤および懸濁剤、甘味剤、香味剤、着色剤、香味剤、および保存剤などのアジュバントも含有しうる。
【0086】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、滅菌水溶液または分散液、懸濁液、もしくはエマルジョンを含む注射用製剤でありうる。いずれの場合も、注射用製剤は、滅菌であるものとし、注射を容易とする液体であるものとする。注射用製剤は、製造条件下および保管条件下で、安定であるものとし、微生物(細菌および真菌など)の感染に対して抵抗性であるものとする。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体のポリエチレングリコールなど)、ならびにこれらの適切な混合物および/または植物油を含有する溶媒または分散媒でありうる。注射用製剤は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用したり、界面活性剤を使用するなどして、様々な方式で維持されうる、適正な流動性を維持するものとする。抗微生物汚染は、多様な抗菌剤および抗真菌剤(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなど)の添加により達成されうる。
【0087】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、経口スプレー製剤または経鼻スプレー製剤である。このようなスプレー製剤は、水性エアゾール、非水性懸濁液、リポソーム製剤、または固体粒子状製剤などを含むがこれらに限定されない。水性エアゾールは、薬剤の水溶液または水性懸濁液を、従来の薬学的に許容される担体および安定化剤と組み合わせることにより製剤化される。担体および安定化剤は、具体的化合物の必要性に従って変動しうるが、一般に、非イオン性界面活性剤(Tween、またはポリエチレングリコール)、オレイン酸、レシチン、グリシンなどのアミノ酸、緩衝剤、塩、糖、または糖アルコールを含む。エアゾールは、通常、等張性溶液から調製され、噴霧器により送達することができる。
【0088】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、1つまたは複数の他の薬物と組み合わせて使用されうる。ある特定の実施形態では、組成物は、少なくとも1つの他の薬物を含む。ある特定の実施形態では、他の薬物は、心血管薬、腎疾患を処置するための薬物、細胞膜修復のための薬物などである。
【0089】
ある特定の実施形態では、医薬組成物は、対象へと、経口経路、注射経路(例えば、静脈内注射、筋内注射、皮下注射、皮内注射、心内注射、髄腔内注射、胸膜内注射、腹腔内注射など)、粘膜経路(例えば、鼻腔内投与、経口投与など)、舌下経路、直腸内経路、経皮経路、眼内経路、肺内経路を含むがこれらに限定されない、適切な経路により送達することができる。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、注射経路により投与することができる。
【0090】
別の態様では、本発明は、本明細書で記載されるMG53突然変異体のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む単離核酸に関する。
本明細書で使用される「単離された」という用語は、物質(ポリペプチドまたは核酸など)が、天然で、それが通常存在する環境から分離されること、または天然で、それが通常見出される環境と異なる環境内にあることを指す。
【0091】
本明細書で使用される「核酸」または「ポリヌクレオチド」という用語は、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、またはDNA-RNAハイブリッド体など、リボヌクレオシド-デオキシリボ核酸の混合物を指す。核酸またはポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖の、DNAの場合もあり、RNAの場合もあり、DNA-RNAハイブリッド体の場合もある。核酸またはポリヌクレオチドは、直鎖状の場合もあり、環状の場合もある。本明細書で使用される「コードすること」または「~をコードすること」という用語は、mRNAへの転写、および/またはペプチドもしくはタンパク質への翻訳が可能であることを意味する。「コード配列」または「遺伝子」という用語は、mRNA、ペプチド、またはタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を指す。本出願では、これら2つの用語を、互換的に使用することができる。
【0092】
ある特定の実施形態では、単離核酸は、配列番号13~18で示された核酸配列のうちのいずれか1つを含む。
配列番号13は、配列番号7で示されたアミノ酸配列をコードする核酸配列であり、その具体的配列は、
図8に示される。
【0093】
配列番号14は、配列番号8で示されたアミノ酸配列をコードする核酸配列であり、その具体的配列は、
図9に示される。
配列番号15は、配列番号9で示されたアミノ酸配列をコードする核酸配列であり、その具体的配列は、
図10に示される。
【0094】
配列番号16は、配列番号10で示されたアミノ酸配列をコードする核酸配列であり、その具体的配列は、
図11に示される。
配列番号17は、配列番号11で示されたアミノ酸配列をコードする核酸配列であり、その具体的配列は、
図12に示される。
【0095】
配列番号18は、配列番号12で示されたアミノ酸配列をコードする核酸配列であり、その具体的配列は、
図13に示される。
ある特定の実施形態では、単離核酸は、配列番号151~154で示された核酸配列のうちのいずれか1つを含む。
【0096】
配列番号151は、配列番号147で示されたアミノ酸配列をコードする核酸配列であり、その具体的配列は、
図24に示される。
配列番号152は、配列番号148で示されたアミノ酸配列をコードする核酸配列であり、その具体的配列は、
図25に示される。
【0097】
配列番号153は、配列番号149で示されたアミノ酸配列をコードする核酸配列であり、その具体的配列は、
図26に示される。
配列番号154は、配列番号150で示されたアミノ酸配列をコードする核酸配列であり、その具体的配列は、
図27に示される。
【0098】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される単離核酸は、配列番号13~18、配列番号151~154で示された核酸配列のうちのいずれか1つに対する少なくとも70%の相同性、例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の相同性を有する核酸配列を含み、配列番号7~12、配列番号147~150で示されたアミノ酸配列のうちの1つを依然としてコードしうる。
【0099】
ある特定の実施形態では、本発明は、配列番号7~12、配列番号147~150をコードする核酸配列を提供するが、それらは、遺伝子コードの縮重性のために、配列番号13~18、配列番号151~154で示された核酸配列のうちのいずれか1つと異なる。
【0100】
本明細書で使用される「遺伝子コードの縮重」という用語は、1つのアミノ酸が2つ以上の対応する遺伝子コドンを有する現象を指す。例えば、プロリンは、4つの同義コドンである、CCU、CCC、CCA、およびCCGを有する。当技術分野では、遺伝子コードの縮重のために、コードされるアミノ酸配列を変化させずに、所与の核酸配列内のある特定の位置の核酸を置きかえうることが公知である。例えば、塩基の部位特異的突然変異誘発により、遺伝子コードの縮重の置きかえを行うことは、当業者にはたやすい。異なる生物は、異なるコドンに対する、異なる優先性を発達させてきた。本発明のポリペプチドを、選択された生物学的細胞内で発現させるために、生物学的細胞の好ましいコドンは、対応するコード配列を得るように選択される場合があり、本発明のMG53突然変異体配列(例えば、配列番号7~12、配列番号147~150)は、組換え発現により得られうる。
【0101】
別の態様では、本発明は、本明細書で記載される、MG53突然変異体のアミノ酸配列をコードする配列を含む発現ベクターに関する。
本発明の発現ベクターは、例えば、DNAプラスミド、細菌プラスミド、ウイルスなどでありうる。発現ベクターの非限定例は、例えば、Paulら、2002、Nature Biotechnology、19、505;MiyagishiおよびTaira、2002、Nature Biotechnology、19、497;Leeら、2002、Nature Biotechnology、19、500;ならびにNovinaら、2002、Nature Medicine、advance online publication doi: 10.1038 /nm725に記載される。発現ベクターは、発現ベクターが、宿主細胞に入った後で、プロモーターが、コード配列の発現を引き起こしうるように、MG53突然変異体のアミノ酸配列のコード配列に作動可能に連結したプロモーターをさらに含有しうる。発現ベクターは、リン酸カルシウムによるトランスフェクション、リポフェクションによるトランスフェクション、電気穿孔によるトランスフェクション、細菌ヒートショックなどであるがこれらに限定されない、適切な方法により、宿主細胞へと導入されうる。詳細については、Sambrookら、「Molecular Cloning(a laboratory manual、Cold Spring Harbor、1989)」を参照されたい。ある特定の実施形態では、本明細書で記載される発現ベクターは、配列番号13~18で示された核酸配列のうちのいずれか1つを含む。
【0102】
別の態様では、本発明は、本明細書で記載される発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
本発明において記載される宿主細胞は、真核細胞の場合もあり、原核細胞の場合もある。適切な真核細胞は、例えば、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)など、哺乳動物細胞を含みうる。適する原核細胞は、例えば、E.coliなどの細菌を含みうる。
【0103】
別の態様では、本発明は、MG53突然変異体を調製するための方法に関し、本明細書で提供されるMG53突然変異体は、当技術分野で公知の技法により調製されうる。例えば、それらは、化学合成により調製される場合もあり、遺伝子操作により調製される場合もある。
【0104】
化学合成法は、主に、固相合成および液相合成を含む。固相ポリペプチド合成法は、例えば、文献である、Merrifield、J.Am.Chem.Soc.85:2149~2154;およびM.Bodanszkyら、Peptide Synthesis、John Wiley & Sons、2版、1976;およびJ.Meienhofer、「Hormonal Proteins and Peptides」、2巻、46頁、Academic Press(New York)、1983において詳細に記載された、メリフィールド固相合成法を含む。これらの文献の全内容は、参照により、本出願へと組み込まれる。メリフィールド固相合成は、主に、標的タンパク質のアミノ酸配列に基づき、ペプチドの、保護されたC末端アミノ酸を、樹脂へと接合させるステップを含む。接合の後、樹脂を、濾過し、洗浄し、C末端アミノ酸上のアルファアミノ基上の保護基(例えば、t-ブチルオキシカルボニル)を除去する。この保護基の除去は、当然ながら、これらのアミノ酸と、樹脂との間の結合を切断せずに、行わなければならない。次いで、結果として得られる樹脂ペプチドを、C末端から二番目の、保護されたアミノ酸へとカップリングさせる。このカップリングは、アミド結合の形成により、第2のアミノ酸の遊離カルボキシ基と、樹脂へと接合させた第1のアミノ酸のアミノ基との間で生じる。ペプチドの全てのアミノ酸を、樹脂へと接合させるまで、後続のアミノ酸により、このイベントの連鎖を繰り返す。最後に、保護されたペプチドを、樹脂から切断し、保護基を除去して、所望のペプチドを得る。本明細書で開示されるポリペプチドはまた、液相合成、例えば、参照により、その全体において本明細書に組み込まれる、E.SchroderおよびK.Kubke、「The Peptide」、1巻、Academic Press(New York)、1965において、詳細に記載された、標準的な溶液ペプチド合成によっても調製されうる。液相合成は、主に、アミド結合を形成する、化学法または酵素法により、段階的に、アミノ酸またはペプチド断片をカップリングするステップを含む。
【0105】
遺伝子操作法は、対応するMG53突然変異体をコードする核酸配列を、適正な宿主細胞内で発現させて、対応する突然変異体を作出する方法である。この方法の詳細な記載については、Sambrookら、「Molecular Cloning(a laboratory manual、Cold Spring Harbor、1989)」を参照されたい。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるMG53突然変異体を調製するための方法は、突然変異のための1つまたは複数のセリン位置を決定すること、野生型MG53のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むプラスミドの全長配列上の前記位置において、部位特異的突然変異誘発を実施すること、部位特異的突然変異を有するプラスミドを、宿主細胞へとトランスフェクトすること、およびMG53突然変異体を産生するように宿主細胞を誘導することを含む。
【0106】
本明細書で使用される「部位特異的突然変異誘発」という用語は、標的DNA断片への、目的の変化の導入であって、塩基の付加、欠失、および置換などを含む変化の導入を指す。ある特定の実施形態では、標的DNA断片は、野生型MG53、すなわち、配列番号19~24および配列番号143~146のコード配列である。突然変異位置は、野生型MG53のコイルドコイル-SPRY領域のコード配列内の、1つまたは複数のセリン位置に位置する。
【0107】
配列番号19は、配列番号1で示されたアミノ酸配列をコードする核酸配列であり、その具体的配列は、
図2に示される。
配列番号20は、配列番号2で示されたアミノ酸配列をコードする核酸配列であり、その具体的配列は、
図3に示される。
【0108】
配列番号21は、配列番号3で示されたアミノ酸配列をコードする核酸配列であり、その具体的配列は、
図4に示される。
配列番号22は、配列番号4で示されたアミノ酸配列をコードする核酸配列であり、その具体的配列は、
図5に示される。
【0109】
配列番号23は、配列番号5で示されたアミノ酸配列をコードする核酸配列であり、その具体的配列は、
図6に示される。
配列番号24は、配列番号6で示されたアミノ酸配列をコードする核酸配列であり、その具体的配列は、
図7に示される。
【0110】
配列番号143は、配列番号139で示されたアミノ酸配列をコードする核酸配列であり、その具体的配列は、
図20に示される。
配列番号144は、配列番号140で示されたアミノ酸配列をコードする核酸配列であり、その具体的配列は、
図21に示される。
【0111】
配列番号145は、配列番号141で示されたアミノ酸配列をコードする核酸配列であり、その具体的配列は、
図22に示される。
配列番号146は、配列番号142で示されたアミノ酸配列をコードする核酸配列であり、その具体的配列は、
図23に示される。
【0112】
ある特定の実施形態では、部位特異的突然変異誘発は、
(1)cDNA配列内の、部位特異的突然変異誘発で標的とされたアミノ酸の対応するヌクレオチド部位を決定し、突然変異部位においてヌクレオチド配列を標的アミノ酸に従って改変し、突然変異部位を含む20~40bpの長さの配列を切り出すことにより、プライマーをデザインすること;
(2)ステップ(1)のプライマーを使用し、野生型MG53プラスミドを鋳型とすることによりPCR反応を実施し、PCR産物についてアガロースゲル電気泳動を実施し、PCR産物を精製すること;
(3)制限エンドヌクレアーゼを使用することにより、ステップ(2)の精製PCR産物に対する酵素反応を実施し、酵素消化産物を、適切なプラスミド発現ベクターとライゲーションし、細菌コンピテント細胞内にライゲーション産物を形質転換し、培養すること
を含む。
【0113】
ある特定の実施形態では、部位特異的突然変異誘発は、
(4)ステップ(3)のクローンを選択して、ステップ(1)のプライマーを使用することにより、コロニーPCR同定を実施し、PCR産物についてアガロースゲル電気泳動を実施し、次いで、DNAシーケンシング同定を実施して、部位特異的突然変異を有する陽性クローンを同定するステップ
をさらに含む。
【0114】
野生型MG53の部位特異的突然変異誘発は、様々な、市販の部位特異的突然変異誘発キットを使用して、例えば、Beijing Transgen Biotech製のEasy Mutagenesis System Kitのための指示書であって、部位特異的突然変異誘発のための方法および手順について詳述する指示書を参照して実行されうる。
【0115】
別の態様では、本発明は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置するための医薬の製造における、MG53突然変異体の使用に関する。ある特定の実施形態では、医薬は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置しつつ、インスリン抵抗性、肥満、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの代謝的副作用を回避または低減しうる。ある特定の実施形態では、心疾患は、糖尿病性心疾患、心筋虚血症、心虚血症/再灌流傷害、心筋梗塞、心不全、不整脈、心破裂、狭心症、心筋炎、冠動脈性心疾患、および心膜炎を含むがこれらに限定されない、心筋損傷と関連する疾患である。ある特定の実施形態では、糖尿病性脳血管疾患は、脳動脈硬化症、虚血性脳血管疾患、脳出血、脳萎縮、および脳梗塞を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、糖尿病性眼合併症は、糖尿病網膜症、糖尿病性白内障、糖尿病関連ブドウ膜炎、および失明を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、糖尿病性神経障害は、糖尿病性末梢神経障害を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、腎疾患は、急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、急性腎傷害、糖尿病性腎症などを含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、細胞および/または組織の損傷と関連する疾患は、脳傷害、肺傷害、脾臓傷害、脾臓破裂、胃潰瘍、胃炎、胃穿孔、消化管粘膜傷害、外傷、火傷、潰瘍、粘膜炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、脳卒中、皮膚の老化など、腎臓、脳、肺、肝臓、心臓、脾臓、消化管、および皮膚の細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、本発明は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置するための医薬の製造における、配列番号7で示されたポリペプチドの使用に関する。ある特定の実施形態では、本発明は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置するための医薬の製造における、配列番号147、配列番号148、配列番号149、または配列番号150で示されたポリペプチドの使用に関する。
【0116】
さらに別の態様では、本発明は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置する方法であって、それを必要とする対象へと、治療有効量のMG53突然変異体を投与するステップを含む方法に関する。ある特定の実施形態では、MG53突然変異体は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置しつつ、インスリン抵抗性、肥満、糖尿病、高血圧症、および脂質異常症などの代謝的副作用を回避または低減しうる。ある特定の実施形態では、心疾患は、糖尿病性心疾患、心筋虚血症、心虚血症/再灌流傷害、心筋梗塞、心不全、不整脈、心破裂、狭心症、心筋炎、冠動脈性心疾患、および心膜炎を含むがこれらに限定されない、心筋損傷と関連する疾患である。ある特定の実施形態では、糖尿病性脳血管疾患は、脳動脈硬化症、虚血性脳血管疾患、脳出血、脳萎縮、および脳梗塞を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、糖尿病性眼合併症は、糖尿病網膜症、糖尿病性白内障、糖尿病関連ブドウ膜炎、および失明を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、糖尿病性神経障害は、糖尿病性末梢神経障害を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、腎疾患は、急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、急性腎傷害、糖尿病性腎症などを含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、細胞および/または組織の損傷と関連する疾患は、脳傷害、肺傷害、脾臓傷害、脾臓破裂、胃潰瘍、胃炎、胃穿孔、消化管粘膜傷害、外傷、火傷、潰瘍、粘膜炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、脳卒中、皮膚の老化など、腎臓、脳、肺、肝臓、心臓、脾臓、消化管、および皮膚の細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、本発明は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置する方法であって、それを必要とする対象へと、治療有効量の、配列番号7で示されたポリペプチドを投与するステップを含む方法に関する。ある特定の実施形態では、本発明は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置する方法であって、それを必要とする対象へと、治療有効量の、配列番号147、配列番号148、配列番号149、または配列番号150で示されたポリペプチドを投与するステップを含む方法に関する。
【0117】
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、対象の疾患および障害を、阻害もしくは緩和するか、または疾患もしくは障害の発症を、予防的に阻害もしくは防止することにより、治療効果を達成する、医薬の量を指す。治療有効量は、対象における疾患もしくは障害の、1つもしくは複数の症状を、ある程度軽減し;疾患もしくは障害と関連するか、もしくはこの原因となる、1つもしくは複数の生理学的パラメータもしくは生化学的パラメータを、部分的に、もしくは完全に正常に戻し;かつ/または疾患もしくは障害の発症の可能性を低減する、医薬の量でありうる。
【0118】
さらに他の態様では、本発明は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患の処置における使用のためのMG53突然変異体に関する。ある特定の実施形態では、MG53突然変異体は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を処置しつつ、インスリン抵抗性、肥満、糖尿病、高血圧症、および脂質異常症などの代謝的副作用を回避または低減しうる。ある特定の実施形態では、心疾患は、糖尿病性心疾患、心筋虚血症、心虚血症/再灌流傷害、心筋梗塞、心不全、不整脈、心破裂、狭心症、心筋炎、冠動脈性心疾患、および心膜炎を含むがこれらに限定されない、心筋損傷と関連する疾患である。ある特定の実施形態では、糖尿病性脳血管疾患は、脳動脈硬化症、虚血性脳血管疾患、脳出血、脳萎縮、および脳梗塞を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、糖尿病性眼合併症は、糖尿病網膜症、糖尿病性白内障、糖尿病関連ブドウ膜炎、および失明を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、糖尿病性神経障害は、糖尿病性末梢神経障害を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、腎疾患は、急性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群、急性腎傷害、糖尿病性腎症などを含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、細胞および/または組織の損傷と関連する疾患は、脳傷害、肺傷害、脾臓傷害、脾臓破裂、胃潰瘍、胃炎、胃穿孔、消化管粘膜傷害、外傷、火傷、潰瘍、粘膜炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、脳卒中、皮膚の老化など、腎臓、脳、肺、肝臓、心臓、脾臓、消化管、および皮膚の細胞および/または組織の損傷と関連する疾患を含むがこれらに限定されない。ある特定の実施形態では、本発明は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患の処置における使用のための、配列番号7で示されたポリペプチドに関する。ある特定の実施形態では、本発明は、心疾患、糖尿病性脳血管疾患、糖尿病性眼合併症、糖尿病性神経障害、糖尿病足病変、腎疾患、ならびに細胞および/または組織の損傷と関連する疾患の処置における使用のための、配列番号147、配列番号148、配列番号149、または配列番号150で示されたポリペプチドに関する。
【実施例】
【0119】
当業者には、全ての実施例で使用される生物学的材料であって、E.Coli株、多様なクローン、および発現プラスミド、培地、酵素、緩衝液、および多様な培養法、タンパク質の抽出法および精製法、ならびに他の分子生物学的操作法などの材料は全て、周知である。詳細については、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Sambrookら編(Cold Spring Harbor、1989);および「Short Protocols in Molecular Biology」(Frederick M.Ausubelら;Yan Ziyingら訳、Science Press(Beijing)、1998)を参照されたい。
【0120】
実施例1
MG53突然変異体の調製
1.ヒトMG53突然変異体の調製
ヒトMG53 S255A突然変異体
(1)プライマーデザイン:cDNA配列内の、部位特異的突然変異誘発で標的とされたアミノ酸の対応するヌクレオチド部位を決定し、突然変異部位においてヌクレオチド配列を突然変異したアミノ酸に従って改変し、突然変異部位の20bp上流および10bp下流にある配列を切り出すことにより、プライマーをデザインする。プライマーの配列は、以下の通り:
ヒトMG53 S255Aのフォワードプライマー:tgcagaagatcctggcagaggctcccccacccg(配列番号25)
ヒトMG53 S255Aのリバースプライマー:tccagacgggcgggtgggggagcctctgccagg(配列番号26)
である。
【0121】
(2)プラスミド全長クローンのポリメラーゼ連鎖反応(PCR):部位特異的突然変異誘発のためにデザインされたプライマーを使用し、Taq Polymerase High Fidelityを使用し、元の遺伝子発現プラスミドを鋳型とすることにより、PCR反応を実施する。反応系および反応条件は、以下:
【0122】
【0123】
の通りである。
(3)PCR産物についてのアガロースゲル電気泳動:PCR産物についてアガロースゲル電気泳動を実施して、その純度および量を同定する。
【0124】
(4)PCR産物のエタノール沈殿:エタノール沈殿法により、適正なサイズおよび単一のバンドを伴うPCR産物を精製する。
(5)Dpn Iによる消化:制限エンドヌクレアーゼであるDpn Iを使用することにより、精製されたPCR産物に対する酵素反応を実施する。
【0125】
(6)酵素消化産物の形質転換:細菌コンピテント細胞中にDpn I消化産物を形質転換し、培養に適切なスクリーンプレート上に塗布する。
陽性クローンの同定:適正なサイズを伴うクローンを選択して、コロニーPCR同定を実施し、PCR産物についてアガロースゲル電気泳動を実施し、明瞭なバンドおよび適正なサイズを伴うクローンについての、小容量の振盪増幅培養を実施し、次いで、シーケンシング同定を実施する。
【0126】
同じ方法を使用して、ヒトMG53の、S255G、S255L、S255V、S255P、S255F、S255W、S255Q、S255C、S255Y、S255D、S255R、S211A、S214A、S246A、S269A、S296A、S297A突然変異体を調製した。プライマーを除き、他のステップの全ては、ヒトMG53 S255A突然変異体を調製するためのステップと同じである。各突然変異体のプライマーは、以下:
(i)ヒト野生型MG53(すなわち、配列番号1)の255位のセリンが、グリシンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ヒトMG53 S255Gのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ヒトMG53 S255Gのフォワードプライマー:tgcagaagatcctggcagagggtcccccacccg(配列番号27)
ヒトMG53 S255Gのリバースプライマー:tccagacgggcgggtgggggaccctctgccagg(配列番号28)
の通りである。
【0127】
(ii)ヒト野生型MG53(すなわち、配列番号1)の255位のセリンが、ロイシンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ヒトMG53 S255Lのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ヒトMG53 S255Lのフォワードプライマー:tgcagaagatcctggcagagcttcccccacccg(配列番号29)
ヒトMG53 S255Lのリバースプライマー:tccagacgggcgggtgggggaagctctgccagg(配列番号30)
の通りである。
【0128】
(iii)ヒト野生型MG53(すなわち、配列番号1)の255位のセリンが、バリンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ヒトMG53 S255Vのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ヒトMG53 S255Vのフォワードプライマー:tgcagaagatcctggcagaggttcccccacccg(配列番号31)
ヒトMG53 S255Vのリバースプライマー:tccagacgggcgggtgggggaacctctgccagg(配列番号32)
の通りである。
【0129】
(iv)ヒト野生型MG53(すなわち、配列番号1)の255位のセリンが、プロリンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ヒトMG53 S255Pのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ヒトMG53 S255Pのフォワードプライマー:tgcagaagatcctggcagagcctcccccacccg(配列番号33)
ヒトMG53 S255Pのリバースプライマー:tccagacgggcgggtgggggaggctctgccagg(配列番号34)
の通りである。
【0130】
(v)ヒト野生型MG53(すなわち、配列番号1)の255位のセリンが、フェニルアラニンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ヒトMG53 S255Fのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ヒトMG53 S255Fのフォワードプライマー:tgcagaagatcctggcagagtttcccccacccg(配列番号35)
ヒトMG53 S255Fのリバースプライマー:tccagacgggcgggtgggggaaactctgccagg(配列番号36)
の通りである。
【0131】
(vi)ヒト野生型MG53(すなわち、配列番号1)の255位のセリンが、トリプトファンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ヒトMG53 S255Wのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ヒトMG53 S255Wのフォワードプライマー:tgcagaagatcctggcagagtggcccccacccg(配列番号37)
ヒトMG53 S255Wのリバースプライマー:tccagacgggcgggtgggggccactctgccagg(配列番号38)
の通りである。
【0132】
(vii)ヒト野生型MG53(すなわち、配列番号1)の255位のセリンが、グルタミンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ヒトMG53 S255Qのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ヒトMG53 S255Qのフォワードプライマー:tgcagaagatcctggcagagcaacccccacccg(配列番号39)
ヒトMG53 S255Qのリバースプライマー:tccagacgggcgggtgggggttgctctgccagg(配列番号40)
の通りである。
【0133】
(viii)ヒト野生型MG53(すなわち、配列番号1)の255位のセリンが、システインへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ヒトMG53 S255Cのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ヒトMG53 S255Cのフォワードプライマー:tgcagaagatcctggcagagtgtcccccacccg(配列番号41)
ヒトMG53 S255Cのリバースプライマー:tccagacgggcgggtgggggacactctgccagg(配列番号42)
の通りである。
【0134】
(ix)ヒト野生型MG53(すなわち、配列番号1)の255位のセリンが、チロシンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ヒトMG53 S255Yのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ヒトMG53 S255Yのフォワードプライマー:tgcagaagatcctggcagagtatcccccacccg(配列番号43)
ヒトMG53 S255Yのリバースプライマー:tccagacgggcgggtgggggatactctgccagg(配列番号44)
の通りである。
【0135】
(x)ヒト野生型MG53(すなわち、配列番号1)の255位のセリンが、アスパラギン酸へと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ヒトMG53 S255Dのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ヒトMG53 S255Dのフォワードプライマー:tgcagaagatcctggcagaggatcccccacccg(配列番号45)
ヒトMG53 S255Dのリバースプライマー:tccagacgggcgggtgggggctactctgccagg(配列番号46)
の通りである。
【0136】
(xi)ヒト野生型MG53(すなわち、配列番号1)の255位のセリンが、アルギニンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ヒトMG53 S255Rのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ヒトMG53 S255Rのフォワードプライマー:tgcagaagatcctggcagagcgtcccccacccg(配列番号47)
ヒトMG53 S255Rのリバースプライマー:tccagacgggcgggtgggggacgctctgccagg(配列番号48)
の通りである。
【0137】
(xii)ヒト野生型MG53(すなわち、配列番号1)の211位のセリンが、アラニンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ヒトMG53 S211Aのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ヒトMG53 S211Aのフォワードプライマー:ccttgcgccgggagctgggggccctgaactctt(配列番号49)
ヒトMG53 S211Aのリバースプライマー:gctgctccaggtaagagttcagggcccccagctcc(配列番号50)
の通りである。
【0138】
(xiii)ヒト野生型MG53(すなわち、配列番号1)の214位のセリンが、アラニンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ヒトMG53 S214Aのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ヒトMG53 S214Aのフォワードプライマー:gggagctggggagcctgaacgcttacctggagc(配列番号51)
ヒトMG53 S214Aのリバースプライマー:tgccgcagctgctccaggtaagcgttcaggctc(配列番号52)
の通りである。
【0139】
(xiv)ヒト野生型MG53(すなわち、配列番号1)の246位のセリンが、アラニンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ヒトMG53 S246Aのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ヒトMG53 S246Aのフォワードプライマー:tgaaatactgcctggtgaccgccaggctgcaga(配列番号53)
ヒトMG53 S246Aのリバースプライマー:gccaggatcttctgcagcctggcggtcaccagg(配列番号54)
の通りである。
【0140】
(xv)ヒト野生型MG53(すなわち、配列番号1)の269位のセリンが、アラニンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ヒトMG53 S269Aのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ヒトMG53 S269Aのフォワードプライマー:aggagctgacctttgacccggcctctgcgcacc(配列番号55)
ヒトMG53 S269Aのリバースプライマー:accaggctcgggtgcgcagaggccgggtcaaag(配列番号56)
の通りである。
【0141】
(xvi)ヒト野生型MG53(すなわち、配列番号1)の297位のセリンが、アラニンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ヒトMG53 S297Aのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ヒトMG53 S297Aのフォワードプライマー:agctgacctttgacccgagcgctgcgcacccga(配列番号57)
ヒトMG53 S297Aのリバースプライマー:accaccaggctcgggtgcgcagcgctcgggtca(配列番号58)
の通りである。
【0142】
2.マウスMG53突然変異体の調製
マウスMG53の、S255A、S255G、S255L、S255W、S255Q、S255Y、S255D、およびS255R突然変異体は、ヒトMG53 S255A突然変異体を調製するための方法に従って調製した。プライマーを除き、他のステップの全ては、ヒトMG53 S255A突然変異体を調製するためのステップと同じである。各突然変異体のプライマーは、以下:
(i)マウス野生型MG53(すなわち、配列番号2)の255位のセリンが、アラニンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、マウスMG53 S255Aのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
マウスMG53 S255Aのフォワードプライマー:tgcagaagatcctgtcagaggcaccaccaccgg(配列番号59)
マウスMG53 S255Aのリバースプライマー:tctagccttgccggtggtggtgcctctgacagg(配列番号60)
の通りである。
【0143】
(ii)マウス野生型MG53(すなわち、配列番号2)の255位のセリンが、グリシンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、マウスMG53 S255Gのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
マウスMG53 S255Gのフォワードプライマー:tgcagaagatcctgtcagagggaccaccaccgg(配列番号61)
マウスMG53 S255Gのリバースプライマー:tctagccttgccggtggtggtccctctgacagg(配列番号62)
の通りである。
【0144】
(iii)マウス野生型MG53(すなわち、配列番号2)の255位のセリンが、ロイシンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、マウスMG53 S255Lのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
マウスMG53 S255Lのフォワードプライマー:tgcagaagatcctgtcagagttaccaccaccgg(配列番号63)
マウスMG53 S255Lのリバースプライマー:tctagccttgccggtggtggtaactctgacagg(配列番号64)
の通りである。
【0145】
(iv)マウス野生型MG53(すなわち、配列番号2)の255位のセリンが、トリプトファンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、マウスMG53 S255Wのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
マウスMG53 S255Wのフォワードプライマー:tgcagaagatcctgtcagagtggccaccaccgg(配列番号65)
マウスMG53 S255Wのリバースプライマー:tctagccttgccggtggtggccactctgacagg(配列番号66)
の通りである。
【0146】
(v)マウス野生型MG53(すなわち、配列番号2)の255位のセリンが、グルタミンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、マウスMG53 S255Qのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
マウスMG53 S255Qのフォワードプライマー:tgcagaagatcctgtcagagcaaccaccaccgg(配列番号67)
マウスMG53 S255Qのリバースプライマー:tctagccttgccggtggtggttgctctgacagg(配列番号68)
の通りである。
【0147】
(vi)マウス野生型MG53(すなわち、配列番号2)の255位のセリンが、チロシンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、マウスMG53 S255Yのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
マウスMG53 S255Yのフォワードプライマー:tgcagaagatcctgtcagagtatccaccaccgg(配列番号69)
マウスMG53 S255Yのリバースプライマー:tctagccttgccggtggtggatactctgacagg(配列番号70)
の通りである。
【0148】
(vii)マウス野生型MG53(すなわち、配列番号2)の255位のセリンが、アスパラギン酸へと突然変異しているMG53突然変異体を表す、マウスMG53 S255Dのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
マウスMG53 S255Dのフォワードプライマー:tgcagaagatcctgtcagaggatccaccaccgg(配列番号71)
マウスMG53 S255Dのリバースプライマー:tctagccttgccggtggtggatcctctgacagg(配列番号72)
の通りである。
【0149】
(viii)マウス野生型MG53(すなわち、配列番号2)の255位のセリンが、アルギニンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、マウスMG53 S255Rのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
マウスMG53 S255Rのフォワードプライマー:tgcagaagatcctgtcagagcgaccaccaccgg(配列番号73)
マウスMG53 S255Rのリバースプライマー:tctagccttgccggtggtggtcgctctgacagg(配列番号74)
の通りである。
【0150】
3.ラットMG53突然変異体の調製
ラットMG53の、S255A、S255G、S255L、S255W、S255Q、S255Y、S255D、およびS255R突然変異体は、ヒトMG53 S255A突然変異体を調製するための方法に従って調製した。プライマーを除き、他のステップの全ては、ヒトMG53 S255A突然変異体を調製するためのステップと同じである。各突然変異体のプライマーは、以下:
(i)ラット野生型MG53(すなわち、配列番号3)の255位のセリンが、アラニンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ラットMG53 S255Aのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ラットMG53 S255Aのフォワードプライマー:tgcagaagattctgtcagaggcaccacccccag(配列番号75)
ラットMG53 S255Aのリバースプライマー:tctagccttgctgggggtggtgcctctgacaga(配列番号76)
の通りである。
【0151】
(ii)ラット野生型MG53(すなわち、配列番号3)の255位のセリンが、グリシンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ラットMG53 S255Gのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ラットMG53 S255Gのフォワードプライマー:tgcagaagattctgtcagagggaccacccccag(配列番号77)
ラットMG53 S255Gのリバースプライマー:tctagccttgctgggggtggtccctctgacaga(配列番号78)
の通りである。
【0152】
(iii)ラット野生型MG53(すなわち、配列番号3)の255位のセリンが、ロイシンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ラットMG53 S255Lのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ラットMG53 S255Lのフォワードプライマー:tgcagaagattctgtcagagttaccacccccag(配列番号79)
ラットMG53 S255Lのリバースプライマー:tctagccttgctgggggtggtaactctgacaga(配列番号80)
の通りである。
【0153】
(iv)ラット野生型MG53(すなわち、配列番号3)の255位のセリンが、トリプトファンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ラットMG53 S255Wのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ラットMG53 S255Wのフォワードプライマー:tgcagaagattctgtcagagtggccacccccag(配列番号81)
ラットMG53 S255Wのリバースプライマー:tctagccttgctgggggtggccactctgacaga(配列番号82)
の通りである。
【0154】
(v)ラット野生型MG53(すなわち、配列番号3)の255位のセリンが、グルタミンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ラットMG53 S255Qのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ラットMG53 S255Qのフォワードプライマー:tgcagaagattctgtcagagcaaccacccccag(配列番号83)
ラットMG53 S255Qのリバースプライマー:tctagccttgctgggggtggttgctctgacaga(配列番号84)
の通りである。
【0155】
(vi)ラット野生型MG53(すなわち、配列番号3)の255位のセリンが、チロシンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ラットMG53 S255Yのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ラットMG53 S255Yのフォワードプライマー:tgcagaagattctgtcagagtatccacccccag(配列番号85)
ラットMG53 S255Yのリバースプライマー:tctagccttgctgggggtggatactctgacaga(配列番号86)
の通りである。
【0156】
(vii)ラット野生型MG53(すなわち、配列番号3)の255位のセリンが、アスパラギン酸へと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ラットMG53 S255Dのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ラットMG53 S255Dのフォワードプライマー:tgcagaagattctgtcagaggatccacccccag(配列番号87)
ラットMG53 S255Dのリバースプライマー:tctagccttgctgggggtggatcctctgacaga(配列番号88)
の通りである。
【0157】
(viii)ラット野生型MG53(すなわち、配列番号3)の255位のセリンが、アルギニンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ラットMG53 S255Rのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ラットMG53 S255Rのフォワードプライマー:tgcagaagattctgtcagagcgaccacccccag(配列番号89)
ラットMG53 S255Rのリバースプライマー:tctagccttgctgggggtggtcgctctgacaga(配列番号90)
の通りである。
【0158】
4.サルMG53突然変異体の調製
サルMG53の、S255A、S255G、S255L、S255W、S255Q、S255Y、S255D、およびS255R突然変異体は、ヒトMG53 S255A突然変異体を調製するための方法に従って調製した。プライマーを除き、他のステップの全ては、ヒトMG53 S255A突然変異体を調製するためのステップと同じである。各突然変異体のプライマーは、以下:
(i)サル野生型MG53(すなわち、配列番号4)の255位のセリンが、アラニンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、サルMG53 S255Aのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
サルMG53 S255Aのフォワードプライマー:aagatcctggcagaggctcccccacccgcccgtctg(配列番号91)
サルMG53 S255Aのリバースプライマー:cagacgggcgggtgggggagcctctgccaggatctt(配列番号92)
の通りである。
【0159】
(ii)サル野生型MG53(すなわち、配列番号4)の255位のセリンが、グリシンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、サルMG53 S255Gのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
サルMG53 S255Gのフォワードプライマー:aagatcctggcagagggtcccccacccgcccgtctgg(配列番号93)
サルMG53 S255Gのリバースプライマー:ccagacgggcgggtgggggaccctctgccaggatctt(配列番号94)
の通りである。
【0160】
(iii)サル野生型MG53(すなわち、配列番号4)の255位のセリンが、ロイシンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、サルMG53 S255Lのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
サルMG53 S255Lのフォワードプライマー:agatcctggcagagttacccccacccgcccgtctgga(配列番号95)
サルMG53 S255Lのリバースプライマー:tccagacgggcgggtgggggtaactctgccaggatct(配列番号96)
の通りである。
【0161】
(iv)サル野生型MG53(すなわち、配列番号4)の255位のセリンが、トリプトファンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、サルMG53 S255Wのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
サルMG53 S255Wのフォワードプライマー:agatcctggcagagtggcccccacccgcccgtctgga(配列番号97)
サルMG53 S255Wのリバースプライマー:tccagacgggcgggtgggggccactctgccaggatct(配列番号98)
の通りである。
【0162】
(v)サル野生型MG53(すなわち、配列番号4)の255位のセリンが、グルタミンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、サルMG53 S255Qのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
サルMG53 S255Qのフォワードプライマー:aagatcctggcagagcaacccccacccgcccgtctgga(配列番号99)
サルMG53 S255Qのリバースプライマー:tccagacgggcgggtgggggttgctctgccaggatctt(配列番号100)
の通りである。
【0163】
(vi)サル野生型MG53(すなわち、配列番号4)の255位のセリンが、チロシンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、サルMG53 S255Yのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
サルMG53 S255Yのフォワードプライマー:agatcctggcagagtatcccccacccgcccgtctgg(配列番号101)
サルMG53 S255Yのリバースプライマー:ccagacgggcgggtgggggatactctgccaggatct(配列番号102)
の通りである。
【0164】
(vii)サル野生型MG53(すなわち、配列番号4)の255位のセリンが、アスパラギン酸へと突然変異しているMG53突然変異体を表す、サルMG53 S255Dのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
サルMG53 S255Dのフォワードプライマー:aagatcctggcagaggatcccccacccgcccgtctgg(配列番号103)
サルMG53 S255Dのリバースプライマー:ccagacgggcgggtgggggatcctctgccaggatctt(配列番号104)
の通りである。
【0165】
(viii)サル野生型MG53(すなわち、配列番号4)の255位のセリンが、アルギニンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、サルMG53 S255Rのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
サルMG53 S255Rのフォワードプライマー:aagatcctggcagagcgtcccccacccgcccgtctgg(配列番号105)
サルMG53 S255Rのリバースプライマー:ccagacgggcgggtgggggacgctctgccaggatctt(配列番号106)
の通りである。
【0166】
5.ブタMG53突然変異体の調製
ブタMG53の、S255A、S255G、S255L、S255W、S255Q、S255Y、S255D、およびS255R突然変異体は、ヒトMG53 S255A突然変異体を調製するための方法に従って調製した。プライマーを除き、他のステップの全ては、ヒトMG53 S255A突然変異体を調製するためのステップと同じである。各突然変異体のプライマーは、以下:
(i)ブタ野生型MG53(すなわち、配列番号5)の255位のセリンが、アラニンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ブタMG53 S255Aのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ブタMG53 S255Aのフォワードプライマー:aagatcctggcagaggcgcccccacctgcccgcctg(配列番号107)
ブタMG53 S255Aのリバースプライマー:caggcgggcaggtgggggcgcctctgccaggatctt(配列番号108)
の通りである。
【0167】
(ii)ブタ野生型MG53(すなわち、配列番号5)の255位のセリンが、グリシンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ブタMG53 S255Gのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ブタMG53 S255Gのフォワードプライマー:aagatcctggcagaggggcccccacctgcccgcctgg(配列番号109)
ブタMG53 S255Gのリバースプライマー:ccaggcgggcaggtgggggcccctctgccaggatctt(配列番号110)
の通りである。
【0168】
(iii)ブタ野生型MG53(すなわち、配列番号5)の255位のセリンが、ロイシンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ブタMG53 S255Lのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ブタMG53 S255Lのフォワードプライマー:agatcctggcagagttgcccccacctgcccgcctgg(配列番号111)
ブタMG53 S255Lのリバースプライマー:ccaggcgggcaggtgggggcaactctgccaggatct(配列番号112)
の通りである。
【0169】
(iv)ブタ野生型MG53(すなわち、配列番号5)の255位のセリンが、トリプトファンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ブタMG53 S255Wのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ブタMG53 S255Wのフォワードプライマー:agatcctggcagagtggcccccacctgcccgcctgg(配列番号113)
ブタMG53 S255Wのリバースプライマー:ccaggcgggcaggtgggggccactctgccaggatct(配列番号114)
の通りである。
【0170】
(v)ブタ野生型MG53(すなわち、配列番号5)の255位のセリンが、グルタミンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ブタMG53 S255Qのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ブタMG53 S255Qのフォワードプライマー:aagatcctggcagagcagcccccacctgcccgcctgg(配列番号115)
ブタMG53 S255Qのリバースプライマー:ccaggcgggcaggtgggggctgctctgccaggatctt(配列番号116)
の通りである。
【0171】
(vi)ブタ野生型MG53(すなわち、配列番号5)の255位のセリンが、チロシンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ブタMG53 S255Yのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ブタMG53 S255Yのフォワードプライマー:agatcctggcagagtatcccccacctgcccgcctgga(配列番号117)
ブタMG53 S255Yのリバースプライマー:tccaggcgggcaggtgggggatactctgccaggatct(配列番号118)
の通りである。
【0172】
(vii)ブタ野生型MG53(すなわち、配列番号5)の255位のセリンが、アスパラギン酸へと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ブタMG53 S255Dのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ブタMG53 S255Dのフォワードプライマー:aagatcctggcagaggatcccccacctgcccgcctgga(配列番号119)
ブタMG53 S255Dのリバースプライマー:tccaggcgggcaggtgggggatcctctgccaggatctt(配列番号120)
の通りである。
【0173】
(viii)ブタ野生型MG53(すなわち、配列番号5)の255位のセリンが、アルギニンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、ブタMG53 S255Rのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
ブタMG53 S255Rのフォワードプライマー:aagatcctggcagagcggcccccacctgcccgcctgg(配列番号121)
ブタMG53 S255Rのリバースプライマー:ccaggcgggcaggtgggggccgctctgccaggatctt(配列番号122)
の通りである。
【0174】
6.イヌMG53突然変異体の調製
イヌMG53の、S255A、S255G、S255L、S255W、S255Q、S255Y、S255D、およびS255R突然変異体は、ヒトMG53 S255A突然変異体を調製するための方法に従って調製した。プライマーを除き、他のステップの全ては、ヒトMG53 S255A突然変異体を調製するためのステップと同じである。各突然変異体のプライマーは、以下:
(i)イヌ野生型MG53(すなわち、配列番号6)の255位のセリンが、アラニンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、イヌMG53 S255Aのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
イヌMG53 S255Aのフォワードプライマー:aagatcctggcagaagcaccaccgcctgcccgtttg(配列番号123)
イヌMG53 S255Aのリバースプライマー:caaacgggcaggcggtggtgcttctgccaggatctt(配列番号124)
の通りである。
【0175】
(ii)イヌ野生型MG53(すなわち、配列番号6)の255位のセリンが、グリシンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、イヌMG53 S255Gのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
イヌMG53 S255Gのフォワードプライマー:aagatcctggcagaaggaccaccgcctgcccgtttgg(配列番号125)
イヌMG53 S255Gのリバースプライマー:ccaaacgggcaggcggtggtccttctgccaggatctt(配列番号126)
の通りである。
【0176】
(iii)イヌ野生型MG53(すなわち、配列番号6)の255位のセリンが、ロイシンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、イヌMG53 S255Lのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
イヌMG53 S255Lのフォワードプライマー:agatcctggcagaattaccaccgcctgcccgtttgg(配列番号127)
イヌMG53 S255Lのリバースプライマー:ccaaacgggcaggcggtggtaattctgccaggatct(配列番号128)
の通りである。
【0177】
(iv)イヌ野生型MG53(すなわち、配列番号6)の255位のセリンが、トリプトファンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、イヌMG53 S255Wのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
イヌMG53 S255Wのフォワードプライマー:agatcctggcagaatggccaccgcctgcccgtttgga(配列番号129)
イヌMG53 S255Wのリバースプライマー:tccaaacgggcaggcggtggccattctgccaggatct(配列番号130)
の通りである。
【0178】
(v)イヌ野生型MG53(すなわち、配列番号6)の255位のセリンが、グルタミンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、イヌMG53 S255Qのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
イヌMG53 S255Qのフォワードプライマー:aagatcctggcagaacaaccaccgcctgcccgtttgg(配列番号131)
イヌMG53 S255Qのリバースプライマー:ccaaacgggcaggcggtggttgttctgccaggatctt(配列番号132)
の通りである。
【0179】
(vi)イヌ野生型MG53(すなわち、配列番号6)の255位のセリンが、チロシンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、イヌMG53 S255Yのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
イヌMG53 S255Yのフォワードプライマー:agatcctggcagaatatccaccgcctgcccgtttgga(配列番号133)
イヌMG53 S255Yのリバースプライマー:tccaaacgggcaggcggtggatattctgccaggatct(配列番号134)
の通りである。
【0180】
(vii)イヌ野生型MG53(すなわち、配列番号6)の255位のセリンが、アスパラギン酸へと突然変異しているMG53突然変異体を表す、イヌMG53 S255Dのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
イヌMG53 S255Dのフォワードプライマー:aagatcctggcagaagatccaccgcctgcccgtttgga(配列番号135)
イヌMG53 S255Dのリバースプライマー:tccaaacgggcaggcggtggatcttctgccaggatctt(配列番号136)
の通りである。
【0181】
(viii)イヌ野生型MG53(すなわち、配列番号6)の255位のセリンが、アルギニンへと突然変異しているMG53突然変異体を表す、イヌMG53 S255Rのフォワードプライマーおよびリバースプライマー
イヌMG53 S255Rのフォワードプライマー:aagatcctggcagaacgaccaccgcctgcccgtttgg(配列番号137)
イヌMG53 S255Rのリバースプライマー:ccaaacgggcaggcggtggtcgttctgccaggatctt(配列番号138)
の通りである。
【0182】
各セリン位置において、セリンの欠失および/または突然変異を伴う多様な種のMG53突然変異体を、ヒトMG53 S255A突然変異体を調製するための方法に従って調製することができる。プライマーを除き、他のステップの全ては、ヒトMG53 S255A突然変異体を調製するためのステップと同じである。当業者は、当技術分野における従来の技法手段により、各突然変異体のプライマーをデザインすることができる。
【0183】
実施例2
マウスMG53 S255A突然変異体の、マウス野生型MG53の、細胞膜修復機能および心保護機能に対する影響
マウスMG53 S255A突然変異体(そのアミノ酸配列は、配列番号8で示される)の、マウス野生型MG53の、細胞膜修復機能および心保護機能に対する影響を査定するために、本発明者らは、初代培養された新生仔ラット心室筋細胞(NRVM)内で、アデノウイルスを使用して、マウス野生型MG53およびマウスMG53突然変異体を過剰発現させ、細胞の生存率を検出した。結果を、低酸素状態/再酸素化により刺激される、虚血症-再灌流傷害が、大量の乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出、およびNRVM内の細胞内ATPの減少を結果としてもたらし、マウス野生型MG53およびマウスMG53 S255A突然変異体の過剰発現が、LDHの放出およびATPの低減を、同様に阻害しうることを指し示す、
図14に示す。これは、マウス野生型MG53が、虚血症-再灌流により誘導されるアポトーシスおよび壊死に対する保護効果を有する一方で、マウスMG53 S255A突然変異体も、マウス野生型MG53の、細胞膜修復機能および心保護機能に影響を及ぼさない、すなわち、マウスMG53S255位のリン酸化が、MG53の細胞膜修復機能および心保護機能を調節しないことを示唆する。
【0184】
マウスMG53 S255A突然変異は、RISKシグナル伝達経路に対する、MG53による活性化に影響を及ぼさない
MG53の心保護機能の機構は、以下の通りである:MG53は、心保護のRISKシグナル伝達経路内の不可欠の構成要素であり、カベオリン3と、p85-PI3Kタンパク質との相互作用を媒介して、RISKシグナル伝達経路、例えば、重要な下流シグナル伝達分子であるAKTを活性化させる(Zhang Y.ら、Cardiovascular Research、91、108~115(2011)を参照されたい)。したがって、本発明者らは、マウスMG53 S255A突然変異が、MG53の心保護機能に影響を及ぼさない機構についてさらに研究して、それが、マウスMG53 S255A突然変異体と、マウス野生型MG53とが、RISKシグナル伝達経路を、同様に活性化させるという事実に関するのかどうかを同定した。実験結果を、NRVM内のマウス野生型MG53の過剰発現が、RISKシグナル伝達経路の、下流シグナル伝達分子であるAKTの473位におけるセリンのリン酸化を増強する、すなわち、AKTを活性化させうることを指し示す、
図15に示す。マウスMG53 S255A突然変異体と、マウス野生型MG53とは、AKTの473位におけるセリンのリン酸化を、同様に増強する、すなわち、AKTを活性化させうる。これは、マウスMG53 S255A突然変異が、RISKシグナル伝達経路の、マウス野生型MG53による活性化に影響を及ぼさない、すなわち、マウスMG53S 255のリン酸化に対する調節が、RISKシグナル伝達心保護経路に影響を及ぼさないことを示唆する。
【0185】
実施例3
ヒトMG53 S255A突然変異体またはマウスMG53 S255A突然変異体の、野生型MG53のE3ユビキチンリガーゼ活性に対する影響
MG53の高発現により誘導される、インスリンシグナル伝達経路の抑制は、インスリン抵抗性およびメタボリックシンドロームの発生の重要な機構のうちの1つであり、また、MG53の重要な機能のうちの1つでもある。第1に、本発明者らは、マウス野生型MG53のセリン突然変異である、マウスMG53 S255Aの発現プラスミドを構築した(そのアミノ酸配列は、配列番号8で示される)。加えて、本発明者らはまた、IRS1、ユビキチン、およびマウス野生型MG53の発現プラスミドも構築した。第2に、本発明者らのかつての研究は、MG53が、インスリン基質であるIRS1のE3ユビキチンリガーゼであり、プロテアソーム経路によるタンパク質の分解を媒介することを示唆する(Song,R.ら、Nature、494、375~379(2013))。したがって、本発明者らは、HEK293T細胞系に、IRS1、ユビキチンの発現プラスミドと、マウス野生型MG53またはマウスMG53 S255A突然変異体のプラスミドとを共トランスフェクトし、マウスMG53 S255A突然変異の、IRS1タンパク質の含量の変化を介する、MG53機能に対する影響を査定した。実験結果を、マウス野生型MG53が、IRS1の発現を著明に低減しうるのに対し、マウスMG53 S255A突然変異体は、MG53に媒介されるIRS1タンパク質の低減を、著明に阻害しうることを示唆する、
図19に示す。これは、HEK293T細胞系の共発現系では、マウス野生型MG53は、正常なE3ユビキチンリガーゼ活性をもたらし、IRS1のユビキチン分解を媒介しうることを示唆する。これはまた、検出されたマウスMG53 S255A突然変異体が、MG53のE3ユビキチンリガーゼ活性を阻害した、すなわち、MG53 S255位のリン酸化状態が、MG53のE3ユビキチンリガーゼ活性を調節しうることも示唆する。
【0186】
ヒトMG53 S255A突然変異体またはマウスMG53 S255A突然変異体は、MG53に媒介される基質の分解を阻害する
MG53は、E2ユビキチンコンジュゲート酵素と会合して、基質のユビキチン化と、さらなるプロテアソーム分解とを媒介する、RINGドメインを伴うE3ユビキチンリガーゼである。したがって、RINGドメインを伴わない、MG53-D-RING切断型突然変異体は、MG53のE3ユビキチンリガーゼ活性を喪失する。さらに、ヒトMG53 S255A突然変異体(そのアミノ酸配列は、配列番号7で示される)およびマウスMG53 S255A突然変異体(そのアミノ酸配列は、配列番号8で示される)の、ヒト野生型MG53またはマウス野生型MG53のE3ユビキチンリガーゼ活性に対する影響を、定量的に査定するために、本発明者ら、ヒトMG53-D-RINGまたはマウスMG53-D-RINGを、陽性対照とすることにより、ヒトまたはマウスの、野生型MG53、MG53 S255A突然変異体、またはMG53-D-RING切断型突然変異体と、MG53の基質であるIRS1、またはインスリン受容体であるIRとを、ヒト胎児腎臓上皮細胞系であるHEK293T内で共発現させ、異なる突然変異の、MG53に媒介された基質分解に対する影響を検出した。結果を、ヒト野生型MG53またはマウス野生型MG53が、IRS1分解を、著明に媒介しうるが、ヒトMG53-D-RING切断型突然変異体またはマウスMG53-D-RING切断型突然変異体が、IRS1分解を、ほとんど媒介しえないのに対し、マウスMG53 S255A突然変異体は、IRS1のうちの約40%の分解だけを媒介しうるが、ヒトMG53 S255A突然変異体は、IRS1のうちの約10%の分解だけを媒介しうることを指し示す、
図16(マウス)および
図17(ヒト)に示す。マウス野生型MG53は、IRβの約50%の分解を媒介しうるが、マウスMG53-D-RING切断型突然変異体およびマウスMG53 S255A突然変異体は、IRβの分解を、ほとんど媒介しない。加えて、HEK293T共発現系内では、マウス野生型MG53が、IRβの前駆体タンパク質の分解を媒介しうるのに対し、マウスMG53-D-RING切断型突然変異体およびマウスMG53 S255A突然変異体は、MG53に媒介された分解をほぼ完全に阻害した。この研究は、ヒトMG53-D-RING切断型突然変異体またはマウスMG53-D-RING切断型突然変異体が、MG53のE3ユビキチンリガーゼ活性を、著明に阻害するのに対し、ヒトMG53 S255A突然変異体またはマウスMG53 S255A突然変異体は、少なくとも約50%の、MG53 E3ユビキチンリガーゼ活性を阻害することを示唆する。
【0187】
マウスMG53 S255A突然変異体は、MG53の、基質であるIRS1タンパク質への結合を阻害する
マウスMG53 S255A突然変異体(そのアミノ酸配列は、配列番号8で示される)が、MG53の、基質であるIRS1タンパク質の認識およびこれへの結合に影響を及ぼしうるのかどうかについて研究するために、本発明者らは、一態様では、基質であるIRS1と、マウス野生型MG53またはマウスMG53 S255A突然変異体との結合強度を、ex vivoのHEK293T細胞系内の、活性状態下で、共免疫沈降を介して検出し、別の態様では、精製タンパク質であるIRS1と、マウス野生型MG53またはマウスMG53 S255A突然変異体との、直接的な結合強度を、表面プラズモン共鳴(SPR)試験を介して検出した。実験結果を、
図18に示す。
図18Aは、IRS1が、マウス野生型MG53に、物理的に結合しうるのに対し、同量のIRS1は、極少量のマウスMG53 S255A突然変異体だけに結合しうることを示し;
図18Bは、マウス野生型MG53タンパク質が、IRS1タンパク質に、64.2nMのKDで、極めて良好に結合しうるのに対し、マウスMG53 S255A突然変異体は、IRS1タンパク質に結合しえないことを示す。上記に照らし、マウスMG53 S255A突然変異は、MG53のE3ユビキチンリガーゼ活性を阻害するように、MG53の、基質であるIRS1タンパク質の認識およびこれへの結合を阻害した。
【0188】
実施例4
ヒトMG53 S255A突然変異体のin vivo活性
ヒトMG53 S255A突然変異体(そのアミノ酸配列は、配列番号7で示される)が、in vivoにおいても、細胞膜修復機能および心保護機能を保持しつつ、野生型MG53により引き起こされる代謝的副作用を依然として回避または低減しうるのかどうかを検証するために、本発明者らは、ヒトMG53 S255A突然変異体およびヒト野生型MG53を、それぞれ、ラットの体内へと導入して、ヒトMG53 S255A突然変異体のin vivo活性について、さらに解析した。第1に、本発明者らは、本出願の実施例1に従うヒトMG53 S255A突然変異体を調製する。第2に、15匹の雄Sprague-Dawley(SD)ラット(ラット1匹当たり約250g;Beijing Vital River Laboratory Animal Technology Co.,Ltd.製)を選択し、群1つ当たりのラット5匹ずつとする3つの群、すなわち、試験群、陽性対照群、および陰性対照群へと群分けする。30mg/kgのペントバルビタールナトリウム(腹腔内注射)を介して、ラットに麻酔をかけ、次いで、左第3肋骨において、開胸術を実施して、心臓を露出させる。次いで、ヒトMG53 S255A突然変異体タンパク質(6mg/kg、iv)を、被験群内のラットの心臓へと、静脈内注射し、ヒト野生型MG53タンパク質(そのアミノ酸配列は、配列番号1で示される)(6mg/kg、iv)を、陽性対照群内のラットの心臓へと、静脈内注射し、ウシ血清アルブミン(BSA)(6mg/kg、iv)を、陰性対照群内のラットの心臓へと静脈内注射する。各群内のラットの下行左前動脈の結紮を、上記のタンパク質の静脈内注射の5分後に行い、45分間にわたり続行した。結紮の終了の前に、各群のラットに、それぞれ、対応する、ヒトMG53 S255A突然変異体タンパク質、ヒト野生型MG53タンパク質、およびBSA(6mg/kg、iv)を、再度静脈内注射し、次いで、冠動脈を開放する。24時間にわたる再灌流時間の後、生存率を、被験群、陽性対照群、および陰性対照群の間で比較する。インスリンを使用して、各群内のラットを刺激し、次いで、ラットを屠殺して、被験群内、陽性対照群内、および陰性対照群内のラットの、梗塞サイズ、血清LDH濃度、および心筋断面についてのTUNEL染色を比較する。まとめると、これらの指標は、各群内のラットの心損傷のレベルを測定する。被験群内のラットの梗塞サイズが、陰性対照群内のラットの梗塞サイズより著明に小さいか、または被験群内のラットが、陰性対照群内のラットと比較して、著明に阻害されたLDH放出を裏付けるか、または被験群内のラットについての、心筋断面についてのTUNEL染色結果が、細胞死の、陰性対照群内のラットの細胞死と比較した減少を指し示す場合、ヒトMG53 S255A突然変異体が、ヒト野生型MG53の細胞膜修復機能および心保護機能に影響を及ぼさず、心筋梗塞、心虚血症/再灌流傷害などの心疾患を処置するために使用されうることが示唆される。最後に、被験群内、陽性対照群内、および陰性対照群内のラットの、各組織(例えば、心筋、骨格筋、肝臓など)内のp-AKT/t-AKTの変化を比較して、被験群内、陽性対照群内、および陰性対照群内のラットの各組織のインスリン応答性について査定する。陽性対照群内のラットの組織内のp-AKT/t-AKTの比が減少する場合は、ヒト野生型MG53タンパク質が、インスリン感受性の低減を誘導しうることが示唆され、陰性対照群内のラットの組織内のp-AKT/t-AKTの比が正常な場合は、BSAが、インスリン感受性に対して効果を及ぼさないことが示唆され、被験群内のラットの組織内のp-AKT/t-AKTの比が、陽性対照群より大きい場合は、ヒトMG53 S255A突然変異体が、ヒト野生型MG53タンパク質により誘導されたインスリン感受性の低減を消失または減弱させうることが示唆される。
【0189】
まとめると、MG53コイルドコイル-SPRY領域内の少なくとも1つのセリン(とりわけ、255位におけるセリン)を、欠失またはセリンでないもしくはトレオニンでない他の任意のアミノ酸(例えば、アラニン)へと突然変異させる場合、結果として得られるMG53突然変異体は、細胞修復機能および/または心保護機能を依然として保持しつつ、野生型MG53により引き起こされる、インスリン抵抗性などの代謝的副作用を回避または低減しうる。
【0190】
本発明は、具体的実施形態を導入することにより、開示および記載されるが、当業者は、本発明の精神および主題の範囲から逸脱しない限りにおいて、上記の内容に対して、多様な、形式上の改変および詳細な改変を施しうることを理解するであろう。
【配列表】