(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】内装用表面材
(51)【国際特許分類】
D06N 3/00 20060101AFI20220921BHJP
B32B 3/24 20060101ALI20220921BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
D06N3/00
B32B3/24 Z
B32B3/30
(21)【出願番号】P 2019518841
(86)(22)【出願日】2018-05-16
(86)【国際出願番号】 JP2018018964
(87)【国際公開番号】W WO2018212245
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2017099574
(32)【優先日】2017-05-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229542
【氏名又は名称】日本バイリーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】南出 慎介
(72)【発明者】
【氏名】八木 雅史
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-173195(JP,A)
【文献】特開2014-145133(JP,A)
【文献】国際公開第2012/008336(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第2017-0111892(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N1/00-7/06
B32B1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の布帛の少なくとも一方の主面上にプリント層を備えた内装用表面材であって、
前記内装用表面材における前記プリント層が露出している主面の表面粗さ(SMD)は2.71μm未満かつ平均摩擦係数(MIU)は0.27より高い値であり、
前記プリント層は平均粒子径が
35μmよりも大きく、106μm以下の中空粒子を含有していることを特徴とする、内装用表面材(ただし、布帛を構成する糸条の形態がマルチフィラメントであるものを除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内装用表面材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の内装用表面材の構成部材として、従来から繊維集合体(例えば、繊維ウェブ、不織布、織物、編物など)が使用されている。
【0003】
繊維集合体を備えた内装用表面材として、本願出願人らは、「繊維ウェブの片面にニードルパンチ処理を施し、該ニードルパンチ処理を施した面にバインダーを含浸させたのち、カレンダー処理を施し、ついで該ニードルパンチ処理を施した面の反対面にタックの少ないバインダーを含浸させた内装用表皮材」(特許文献1)や、「ニードルパンチ不織布の一方表面の起毛がおさえられ、該起毛がおさえられた表面に樹脂が含浸されてなる自動車内装材用表皮材」(特許文献2)を提案した。
しかしながら、これらの内装用表面材(内装用表皮材)は、触感が不十分であるという問題を有していた。
【0004】
触感に優れる内装用表面材として、例えば、特許文献3には、表面粗さ(SMD)が2.5μm以下かつ平均表面摩擦係数(MIU)が0.20以上であり、有機系微粒子と平均粒子径が50nm~800nmの無機系微粒子を含有する樹脂層を不織布又は織編物の最表皮として備えた、自動車内装材に使用可能な合成皮革が開示されている。
特許文献3の合成皮革は、表面粗さ(SMD)が2.5μm以下であることによって、人になめらかでキメが細かい感覚を与え、また、平均表面摩擦係数(MIU)が0.20以上であることによって、人に抵抗感やヌメリ感を与えることで、しっとり感が優れた表面を有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭62-257472号公報
【文献】特開平09-137372号公報
【文献】特開2014-145133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら近年では、より触感に優れる内装用表面材が求められており、例えば、特許文献3が開示する従来技術のみでは、その要望を満足する内装用表面材を提供するのに、限界があると考えられた。
そのため、より触感に優れる内装用表面材を提供するためには、触感を向上可能な新たな構成を備える内装用表面材の提供が必要であった。
本発明はこのような目的を達成するためになされたものであり、より触感に優れる内装用表面材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は「繊維集合体の少なくとも一方の主面上にプリント層を備えた内装用表面材であって、前記内装用表面材における前記プリント層が露出している主面の表面粗さ(SMD)は2.71μm未満かつ平均摩擦係数(MIU)は0.27より高い値であり、前記プリント層は平均粒子径が106μm以下の中空粒子を含有していることを特徴とする、内装用表面材。」である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の内装用表面材は、繊維集合体の少なくとも一方の主面上にプリント層を備えた内装用表面材であって、表面試験機(KES-FB4)で測定した、表面粗さ(SMD)が2.71μm未満かつ平均摩擦係数(MIU)が0.27より高い値の主面(内装用表面材における前記プリント層が露出している主面)を備えている。つまり、表面粗さ(SMD)が小さいということは内装用表面材が平滑な主面を有しており、平均摩擦係数(MIU)が大きいということは内装用表面材が柔軟な主面を有していることを意味する。
そして、これらの条件を満たした場合に、人になめらかでキメが細かい感覚を与えながらも、しっとり感が高いなど、触感に優れた内装用表面材を提供できる。
【0009】
そして、本発明の内装用表面材は、平均粒子径が106μm以下の中空粒子を含有するプリント層を備えていることによって、抵抗感やヌメリ感を与えることで、しっとり感が高いなど、より触感に優れる内装用表面材である。
本構成によって、より触感に優れる内装用表面材を提供できる理由は完全には明らかとなっていないが、以下の効果が発揮されているためだと考えられる。
非特許文献「渡辺信一 他「触感覚による粒子群の認識と言語評価」、精密工学会誌、出版年月:2005.11、Vol.71、PP1421-1425」には、平均粒子径が106μmの粒子、および、それよりも平均粒子径が小さい粒子は、人の指の指紋の中に入り込み人の指の指紋にひっかかり易いという知見が開示されている。
そのため、人が平均粒子径が106μm以下の中空粒子を含有する主面を触った際に、該主面に露出している中空粒子が触っている人の指の指紋の中に入り込み人の指の指紋にひっかかり易い。その結果、人は内装用表面材の該主面上を指が滑り難く抵抗感を覚える。
【0010】
また、中空粒子は中実粒子よりも、粒子径方向へ変形し易い。
そのため、人が中空粒子を含有する主面を触った際に、該主面および該主面に露出している中空粒子が触っている人の指の動きに追従して変形し易い。その結果、人は硬質なものを触った際の触感ではなく弾性を有するものを触った際の触感を覚えることで、内装用表面材の該主面上を指が滑り難く抵抗感を覚えると共に、主面形状が指の圧力に追従してまとわり付いてくるかのようなヌメリ感を覚える。
以上から、本発明の内装用表面材は、人になめらかでキメが細かい感覚を与えながらも、更に、抵抗感やヌメリ感を与えることで、しっとり感が高いなど、より触感に優れる内装用表面材である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明では、例えば以下の構成など、各種構成を適宜選択できる。
本発明の内装用表面材は繊維集合体とその一方の主面上にプリント層を備えた構造を有している。
本発明でいう繊維集合体とは、例えば、繊維ウェブや不織布、あるいは、織物や編み物などの、シート状の布帛である。本発明の内装用表面材は、繊維集合体(特に、不織布)を含んでいるため柔軟であり、人に抵抗感やヌメリ感を与えることで、しっとり感が高いなど、より触感に優れる内装用表面材となる。なお、全ての構成繊維がランダムに絡合してなる繊維集合体(特に、不織布)を備えた内装用表面材は、より柔軟であり、人に抵抗感やヌメリ感を与えることで、しっとり感が高いなど、更に触感に優れていて好ましい。
また、本発明の内装用表面材は、繊維集合体を含んでいるため、柔軟で金型への追従性に優れる。特に、本発明の内装用表面材を構成する繊維集合体が不織布(特に、全ての構成繊維がランダムに絡合してなる不織布)であると、更に柔軟で金型への追従性に優れ好ましい。
【0012】
繊維集合体の構成繊維は、例えば、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、炭化水素の一部をシアノ基またはフッ素或いは塩素といったハロゲンで置換した構造のポリオレフィン系樹脂など)、スチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエーテル系樹脂(例えば、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、芳香族ポリエーテルケトンなど)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、全芳香族ポリエステル樹脂など)、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド系樹脂(例えば、芳香族ポリアミド樹脂、芳香族ポリエーテルアミド樹脂、ナイロン樹脂など)、二トリル基を有する樹脂(例えば、ポリアクリロニトリルなど)、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスルホン系樹脂(例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンなど)、フッ素系樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンなど)、セルロース系樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、アクリル系樹脂(例えば、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルなどを共重合したポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリルと塩化ビニルまたは塩化ビニリデンを共重合したモダアクリル系樹脂など)など、公知の有機樹脂を用いて構成できる。
【0013】
なお、これらの有機樹脂は、直鎖状ポリマーまたは分岐状ポリマーのいずれからなるものでも構わず、また有機樹脂がブロック共重合体やランダム共重合体でも構わず、また有機樹脂の立体構造や結晶性の有無がいかなるものでも、特に限定されるものではない。更には、多成分の有機樹脂を混ぜ合わせたものでも良い。
【0014】
なお、内装用表面材に難燃性が求められる場合には、繊維集合体の構成繊維が難燃性の有機樹脂を含んでいるのが好ましい。このような難燃性の有機樹脂として、例えば、モダアクリル樹脂、ビニリデン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂、ノボロイド樹脂、ポリクラール樹脂、リン化合物を共重合したポリエステル樹脂、ハロゲン含有モノマーを共重合したアクリル樹脂、アラミド樹脂、ハロゲン系やリン系又は金属化合物系の難燃剤を練り込んだ樹脂などを挙げることができる。また、顔料を練り込み調製された繊維や、染色された繊維などの原着繊維であってもよい。
また、バインダ等を用いることで難燃剤を担持した内装用表面材であってもよい。
【0015】
構成繊維は、例えば、溶融紡糸法、乾式紡糸法、湿式紡糸法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法など)、複合繊維から一種類以上の樹脂成分を除去することで繊維径が細い繊維を抽出する方法、繊維を叩解して分割された繊維を得る方法など公知の方法により得ることができる。
【0016】
構成繊維は、一種類の有機樹脂から構成されてなるものでも、複数種類の有機樹脂から構成されてなるものでも構わない。複数種類の有機樹脂から構成されてなる繊維として、一般的に複合繊維と称される、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型、オレンジ型、バイメタル型などの態様であることができる。
【0017】
また、構成繊維は、略円形の繊維や楕円形の繊維以外にも異形断面繊維を含んでいてもよい。なお、異形断面繊維として、中空形状、三角形形状などの多角形形状、Y字形状などのアルファベット文字型形状、不定形形状、多葉形状、アスタリスク形状などの記号型形状、あるいはこれらの形状が複数結合した形状などの繊維断面を有する繊維であってもよい。
【0018】
繊維集合体が構成繊維として熱融着性繊維を含んでいる場合には、繊維同士を熱融着することによって、繊維集合体に強度と形態安定性を付与し、毛羽立ちや繊維の飛散を抑制でき好ましい。このような熱融着性繊維は、全融着型の熱融着性繊維であっても良いし、上述した複合繊維のような態様の一部融着型の熱融着性繊維であっても良い。熱融着性繊維において熱融着性を発揮する成分(有機樹脂)として、例えば、低融点ポリオレフィン系樹脂や低融点ポリエステル系樹脂を含む熱融着性繊維などを適宜選択して使用することができる。
【0019】
繊維集合体が捲縮性繊維を含んでいる場合には、伸縮性が増して金型への追従性に優れ好ましい。このような捲縮性繊維として、例えば、潜在捲縮性繊維の捲縮を発現した捲縮性繊維やクリンプを有する繊維などを使用することができる。
また、繊維集合体が加熱することで捲縮を発現する潜在捲縮性繊維を含んでいてもよい。
【0020】
繊維集合体が繊維ウェブや不織布である場合、例えば、上述の繊維をカード装置やエアレイ装置などに供することで繊維を絡み合わせる乾式法、繊維を溶媒に分散させシート状に抄き繊維を絡み合わせる湿式法、直接紡糸法(メルトブロー法、スパンボンド法、静電紡糸法、紡糸原液と気体流を平行に吐出して紡糸する方法(例えば、特開2009-287138号公報に開示の方法)など)を用いて繊維の紡糸を行うと共にこれを捕集する方法、などによって調製できる。
【0021】
調製した繊維ウェブの構成繊維を絡合および/または一体化させて不織布を調製できる。構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法として、例えば、ニードルや水流によって絡合する方法、繊維ウェブを加熱処理へ供するなどしてバインダあるいは接着繊維によって構成繊維同士を接着一体化あるいは溶融一体化させる方法などを挙げることができる。
【0022】
加熱処理の方法は適宜選択できるが、例えば、ロールにより加熱または加熱加圧する方法、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する方法、無圧下で赤外線を照射して含まれている有機樹脂を加熱する方法などを用いることができる。
【0023】
使用可能なバインダの種類は適宜選択するが、例えば、ポリオレフィン(変性ポリオレフィンなど)、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体などのエチレン-アクリレート共重合体、各種ゴムおよびその誘導体(スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)など)、セルロース誘導体(カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(PVdF-HFP)、アクリル系樹脂などを使用できる。
バインダがアクリル系樹脂を含有していると、金型を用いたヒートプレス等の熱成型時に適度に軟化するため、金型への追従性に優れる内装用表面材を提供でき好ましい。
【0024】
また、バインダは上述した樹脂以外にも、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0025】
繊維集合体に含まれるバインダの目付は適宜選択するが、バインダ量が多いほど主面が平滑な(表面粗さ(SMD)が2.71μm未満の)内装用表面材を提供し易いことから、バインダの目付は、2g/m2以上であるのが好ましい。一方、バインダ量が過剰に多い場合には、主面における柔軟性が劣る(平均摩擦係数(MIU)が0.27以下の)内装用表面材となる恐れがあることから、バインダの目付は、50g/m2以下であるのが好ましく、30g/m2以下であるのが好ましく、20g/m2以下であるのが好ましい。なお、前記の下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0026】
繊維集合体が織物や編物である場合、上述のようにして調製した繊維を織るあるいは編むことで、織物や編物を調製できる。
【0027】
なお、繊維ウェブ以外にも不織布あるいは織物や編物など繊維集合体を、上述した構成繊維同士を絡合および/または一体化させる方法へ供しても良い。
【0028】
繊維集合体の構成繊維の繊度は特に限定するものではないが、剛性に優れる内装用表面材を提供できるように、1dtex以上であるのが好ましく、1.5dtex以上であるのがより好ましく、2dtex以上であるのがより好ましい。他方、均質な地合いであることで主面が平滑な内装材を調製可能な内装用表面材となるように、100dtex以下であるのが好ましく、50dtex以下であるのがより好ましく、30dtex以下であるのがより好ましく、10dtex以下であるのが更に好ましい。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0029】
また、繊維集合体の構成繊維の繊維長も特に限定するものではないが、剛性の観点から、20mm以上であるのが好ましく、25mm以上であるのがより好ましく、30mm以上であるのが更に好ましい。他方、繊維長が110mmを超えると、繊維集合体の調製時に繊維塊が形成される傾向があり主面が平滑な内装用表面材の提供が困難となるおそれがあることから、110mm以下であるのが好ましく、60mm以下であるのがより好まし
い。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
なお、「繊維長」は、JIS L1015(2010)、8.4.1c)直接法(C法)に則って測定した値をいう。
【0030】
繊維集合体の、例えば、厚さ、目付などの諸構成は、特に限定されるべきものではなく適宜調整する。
繊維集合体の厚さは、0.5~5mmであるのが好ましく、1~3mmであるのがより好ましく、1.1~1.9mmであるのが最も好ましい。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
また、繊維集合体の目付は、例えば、50~500g/m2であるのが好ましく、80~300g/m2であるのがより好ましく、100~250g/m2であるのが最も好ましい。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
なお、本発明において厚さとは主面と垂直方向へ20g/cm2圧縮荷重をかけた時の該垂直方向の長さをいい、目付とは測定対象物の最も広い面積を有する面(主面)における1m2あたりの質量をいう。
【0031】
本発明でいうプリント層とは、繊維集合体の一方の主面上に存在する、プリント樹脂を含有する層を指す。なお、本発明における「主面」は繊維集合体が有する面の中で、最も広い面積を有する面を意味する。
【0032】
プリント層を構成するプリント樹脂は、繊維集合体の少なくとも一方の主面上に中空粒子を担持する役割を担う樹脂であり、その種類は適宜選択でき、上述したバインダと同様の樹脂を採用することができる。特に、金型を用いたヒートプレス等の熱成型時に適度に軟化するため、金型への追従性に優れる内装用表面材を提供できることから、プリント層を構成するプリント樹脂がアクリル系樹脂を含んでいるのが好ましい。
【0033】
なお、プリント層はそのプリント樹脂以外に、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤、増粘剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0034】
また、繊維集合体の一方の主面上に存在するプリント層の態様は適宜選択でき、該主面全面を覆うように存在している態様、格子状などのパターンを有する柄や線状やドット状あるいは不定形状などの柄を形成するように該主面の一部を覆い存在している態様であることができる。また、プリント層は一種類のプリント樹脂を含有する層を備えていても、一種類あるいは複数種類のプリント樹脂を含有する層を複数備えていても良く、具体的には、柄あるいはプリント樹脂や含有物が同一あるいは異なるプリント層を複数備えていても良い。
【0035】
なお、プリント層は繊維集合体の一方の主面上に存在するのであれば、繊維集合体の両主面上にプリント層が存在していても良い。
また、プリント層は繊維集合体の主面上にのみ存在する態様以外にも、プリント層を構成する成分(プリント樹脂など)の一部が繊維集合体を構成する構成繊維間に侵入している態様であってもよい。
【0036】
プリント層の目付は適宜選択するが、例えば、2~50g/m2であることができ、10~30g/m2であることができる。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0037】
本発明の内装用表面材におけるプリント層が露出している主面は、表面粗さ(SMD)が2.71μm未満、かつ平均摩擦係数(MIU)が0.27より高い値である。
表面粗さは文字通り、主面における凹凸、つまり平滑性を示す指標であり、本発明者らは、表面粗さ(SMD)が2.71μm未満であれば、優れた触感であることに寄与できることを見出した。
表面粗さ(SMD)の値が小さい方が、平滑で、より優れた触感となる傾向があるため、表面粗さ(SMD)は2.70μm以下であるのが好ましく、2.60μm以下であるのが好ましく、2.50μm以下であるのが好ましく、2.30μm以下であるのが好ましく、2.25μm以下であるのが好ましく、2.15μm以下であるのが好ましく、2.10μm以下であるのがより好ましい。なお、表面粗さ(SMD)の下限は特に限定するものではないが、下限値は、全く凹凸のない表面粗さを示す0μmである。なお、前記の下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0038】
表面粗さ(SMD;surface roughness)は表面試験機(KES-FB4、カトーテック株式会社製)を用いて測定される値であり、表面材の試料(20cm角)を試験機に400gの荷重をかけてセットし、粗さ接触子(0.5mmワイヤー、接触面幅:5mm)に10.0gの加重をかけて試料に接触させ、試料を1mm/sec.の速度で移動させて測定された表面の凹凸データの平均偏差(average deviation of surface roughness data)を意味し、単位はμmである。
【0039】
平均摩擦係数(MIU)は内装用表面材の柔軟性を示す指標であり、本発明者らは、平均摩擦係数(MIU)が0.27より高い値であれば、優れた触感であることに寄与できることを見出した。つまり、この平均摩擦係数(MIU)の測定は摩擦子に加重を掛けて表面材と接触させ、表面材が柔らかいと、摩擦子が表面材に沈み込んだ状態となり、その状態で表面材を移動させることから、平均摩擦係数が大きくなる。
【0040】
平均摩擦係数(MIU)の値が大きい方が、柔軟性に冨み、より優れた触感となる傾向があるため、平均摩擦係数(MIU)は0.30以上であるのが好ましく、0.31以上であるのが好ましく、0.32以上であるのが好ましく、0.40以上であるのがより好ましい。一方で、平均摩擦係数(MIU)の値が大き過ぎると、摩擦抵抗が強過ぎて、逆に触感を損なう恐れがあるため、1.00以下であるのが好ましい。なお、前記の各下限と上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0041】
平均摩擦係数(MIU;frictional coefficient)は、表面試験機(KES-FB4)を用いて測定されるμ(摩擦係数)の20mm間の平均値(average value of μ in a distance of 20 mm)であり、次に説明する平均摩擦係数の変動(MMD)を測定する条件と同じ条件で測定された平均値を意味する。
【0042】
内装用表面材におけるプリント層が露出している主面の、他物性は適宜選択できるが、例えば、該主面の平均摩擦係数の変動(MMD)は0.025以下であるのが好ましい。
平均摩擦係数の変動(MMD;fluctuations of average frictional coefficient)は表面試験機(KES-FB4)を用いる測定により求められる値であって、摩擦子を内装用表面材の該主面と当接させ、内装用表面材を移動させることにより、摩擦子が表面材を撫でるような状態で測定するため、内装用表面材の該主面の均一性を意味する。
【0043】
本発明者らは、平均摩擦係数の変動(MMD)が0.025以下であれば、優れた触感であることに寄与できることを見出した。この平均摩擦係数の変動(MMD)の値が小さければ小さい程、主面が均一で、より優れた触感となる傾向があるため、平均摩擦係数の変動(MMD)は0.020以下であるのが好ましく、0.015以下であるのが好ましい。なお、平均摩擦係数の変動(MMD)の下限は特に限定するものではないが、理想的には、摩擦係数が全く同じで、主面が均一であることを示す0である。なお、前記の下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0044】
この平均摩擦係数の変動(MMD)は、表面試験機(KES-FB4)を用いて測定される値であり、表面材の試料(20cm角)を試験機に400gの荷重をかけてセットし、摩擦子(10mm×10mm)に50gの加重をかけて試料に接触させ、試料を1mm/sec.の速度で移動させて測定されたμ(摩擦係数)の平均偏差を意味する。
【0045】
本発明の内装用表面材にかかるプリント層は、平均粒子径が106μm以下の中空粒子を含有している。
本発明でいう中空粒子とは、内部に空洞を有する粒子を意味する。また、本発明において粒子の平均粒子径は以下の方法で算出される値をいう。
【0046】
(平均粒子径の算出方法)
(1)室温(25℃)雰囲気下に置いた複数の中空粒子の200倍の光学顕微鏡写真を撮影する、あるいは、室温(25℃)雰囲気下に置いた内装用表面材の両主面の200倍の光学顕微鏡写真を各々撮影する。
(2)撮影した写真のうち粒子の存在が認められた写真から、ランダムに10個の粒子を選出する。
(3)選出した10個の粒子の粒子径を各々算出し、算出した値の平均値を平均粒子径とする。なお、写真に写る粒子の面積と同じ面積を有する円の直径を算出し、その直径の値を粒子の粒子径とみなす。
【0047】
本発明で用いる中空粒子の平均粒子径は106μm以下であるが、中空粒子の平均粒子径が小さいほど、より人の指の指紋の中に入り込み人の指の指紋にひっかかり易いことから、平均粒子径は85μm以下であるのが好ましい。なお、平均粒子径の下限は適宜選択できるが、30μm以上であるのが現実的である。また、前記非特許文献によれば、中空粒子の平均粒子径が余りにも小さい場合には、人が該主面に露出している中空粒子を触った際に覚える感覚が鈍いものとなり、触感の向上効果が意図せず低くなる恐れがあることから、中空粒子の平均粒子径は35μmよりも大きいのが好ましい。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0048】
プリント層に含有されている中空粒子の粒子径における変動係数(以降、CV値と略称することがある)は、適宜選択できるが、CV値が小さいほど中空粒子の分布が狭いことで、より触感に優れる内装用表面材を意図したとおり効率良く提供することができる。そのため、中空粒子の粒子径におけるCV値は、17%以下であるのが好ましく、16%以下であるのが好ましい。なお、平均粒子径の下限は適宜選択できるが、理想的には0%である。なお、前記の下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0049】
中空粒子を構成する成分は適宜選択できるが、粒子径方向へ変形し易い中空粒子であるよう、中空粒子を構成する成分は有機樹脂を含んでいるのが好ましい。
また、中空粒子として、有機樹脂と無機成分を含んだ構成を備える中空粒子を採用すると、分散媒に中空粒子が均一に分散してなる塗布液を調製し易くなる。その結果、該塗布液を用いることで、中空粒子が均一に分布してなるプリント層を備えることで、より触感に優れる内装用表面材を意図したとおり効率良く提供でき好ましい。
【0050】
更に、内装用表面材の調製工程における加熱工程において、中空粒子が意図せず膨張すると、平均粒子径が106μm以下の中空粒子を含有するプリント層を備える内装用表面材を提供することが困難となる恐れがある。
そのため、内装用表面材の調製工程における加熱温度範囲内で、粒子径が変化し難い中空粒子であるのが好ましく、具体的には、加熱温度150℃雰囲気下であっても粒子径が変化し難い中空粒子であるのが好ましい。
【0051】
中空粒子の熱膨張率は、内装用表面材を構成可能な中空粒子、あるいは、内装用表面材から採取した中空粒子の、加熱温度(150℃)雰囲気下および室温(25℃)雰囲気下における平均粒子径の各値から算出することができる。つまり、室温(25℃)雰囲気下における中空粒子の平均粒子径に対する、加熱温度(150℃)雰囲気下における中空粒子の平均粒子径の百分率を算出することで、中空粒子の熱膨張率を算出することができる。具体的には、熱膨張率が100%に近い(80%以上120%以下、好ましくは、85%以上115%以下)中空粒子であるのが好ましい。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0052】
本発明の内装用表面材を構成するのに適する、上述の物性を満たす中空粒子の具体例として、松本油脂製薬株式会社のMFL-81GTA、MFL-81GCA、MFL-SEVEN、MFL-HD30CA、MFL-HD60CA、MFL-100MCA、MFL-110CALなどを挙げることができる。これらの中空粒子は、アクリルニトリル系コポリマーからなる中空微小球の表面を不活性無機紛体(例えば、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタン)でコーティングしたものである。
【0053】
プリント層が中空粒子を含有している、その態様は適宜選択でき、プリント層の露出する主面上のみに中空粒子が存在している態様や、プリント層の内部および露出する主面上に中空粒子が存在している態様であることができる。
なお、プリント層の露出する主面上に中空粒子が存在している態様として、例えば、プリント層の露出する主面上にプリント樹脂によって中空粒子が接着担持されている態様や、プリント層の露出する主面に中空粒子の一部がめり込むことで担持されている態様などであることができる。そして、プリント層の主面上に中空粒子の一部が露出する態様であることができる。
【0054】
プリント層に含有されている中空粒子の量は適宜選択するが、15g/m2以下であることができ、12g/m2以下であることができ、9g/m2以下であることができる。一方、含有量の下限値は適宜調整するが、本発明に係る特性を有する内装用表面材を提供できるよう、1g/m2よりも多いのが好ましい。なお、前記の下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0055】
また、プリント層は中空粒子以外にも、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤などの添加剤を含んでいてもよい。
プリント層は本発明にかかる中空粒子以外の粒子を含有していても良いが、抵抗感やヌメリ感を与えることで、しっとり感が高いなど、より触感に優れる内装用表面材を提供できるよう、粒子として上述した構成を備えた中空粒子のみを含有するプリント層を備えた内装用表面材であるのが好ましい。特に、上述した効果が効率良く発揮された内装用表面材を提供できるよう、粒子として本発明にかかる中空粒子を一種類のみ含有するプリント層を備えた内装用表面材であるのが、より好ましい。
【0056】
プリント層を構成するプリント樹脂の固形分質量に対する中空粒子の固形分質量の百分率は適宜調整できるが、25質量%よりも多いのが好ましい。該百分率が25質量%よりも多いことによって、抵抗感やヌメリ感を感じることによるしっとり感が高いという感覚を人に与え、より触感に優れる内装用表面材を提供できる。
そのため、該百分率は28質量%以上であるのが好ましく、28質量%よりも多いのが好ましく、30質量%以上であるのが好ましく、30質量%よりも多いのが好ましく、35質量%以上であるのが好ましく、40質量%以上であるのが好ましい。また、該百分率の上限値は適宜選択でき、400質量%以下であることができ、200質量%以下であることができ、100質量%以下であることができる。なお、前記の各下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0057】
なお、プリント層を構成するプリント樹脂の固形分質量に対する中空粒子の固形分質量の百分率は、以下の方法で算出した値の小数点以下を四捨五入して算出できる。
A=100×B/C
A:プリント層を構成するプリント樹脂の固形分質量に対する中空粒子の固形分質量の百分率(単位:質量%)
B:プリント層を構成する中空粒子の固形分質量(単位:g/m2)
C:プリント層を構成するプリント樹脂の固形分質量(単位:g/m2)
【0058】
また、内装用表面材が備えているプリント層を構成している、中空粒子およびプリント樹脂の固形分質量を測定することが困難である場合には、内装用表面材の製造工程においてプリント層を構成するため繊維集合体の一方の主面上に付与した、中空粒子の固形分質量をBとして上述の式へ代入すると共に、プリント樹脂の固形分質量をCとして上述の式へ代入することで、プリント層を構成するプリント樹脂の固形分質量に対する中空粒子の固形分質量の百分率(単位:質量%)を算出する。あるいは、内装用表面材の製造工程においてプリント層を構成するため繊維集合体の一方の主面上に付与する、プリント層を構成する中空粒子とプリント樹脂を含有する塗布液中の、中空粒子の固形分質量をBとして上述の式へ代入すると共に、プリント樹脂の固形分質量をCとして上述の式へ代入することで、プリント層を構成するプリント樹脂の固形分質量に対する中空粒子の固形分質量の百分率(単位:質量%)を算出する。
【0059】
内装用表面材の厚さは適宜選択するが、2.5mm以下であることができ、2.0mm以下であることができ、1.4mm以下であることができる。一方、厚さの下限値は適宜調整するが、0.5mm以上であるのが現実的である。なお、前記の下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
内装用表面材の目付は適宜選択するが、300g/m2以下であることができ、250g/m2以下であることができる。一方、目付の下限値は適宜調整するが、100g/m2以上であるのが現実的である。なお、前記の下限と各上限は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0060】
内装用表面材の通気度は適宜選択するが、吸音効果が期待される周波数領域の範囲が広い内装用表面材を提供できるように、通気度は5cm3/cm2・s以上であるのが好ましい。上限値は適宜選択できるが、吸音効果に富むよう、通気度は60cm3/cm2・s以下であるのが好ましい。
なお、この「通気度」はJIS L1913:2010「一般不織布試験方法」に規定される6.8.1(フラジール形法)によって測定される値をいう。
【0061】
本発明の内装用表面材は、更に別の多孔体、フィルム、発泡体などの構成部材を備えていてもよい。これらの構成部材は内装用表面材における、中空粒子を含有する主面とは異なる主面側に積層して備えることができる。
【0062】
次に、本発明の内装用表面材の製造方法について説明する。なお、上述の内装用表面材について説明した項目と構成を同じくする点については説明を省略する。
本発明にかかる内装用表面材の製造方法は適宜選択することができるが、一例として、
(1)繊維集合体を用意する工程、
(2)プリント層を構成可能な樹脂と、平均粒子径が106μm以下の中空粒子を溶媒あるいは分散媒に混合して、塗布液を調製する工程、
(3)繊維集合体の一方の主面上に、塗布液を付与する工程、
(4)塗布液を付与した繊維集合体を加熱することで、溶媒あるいは分散媒を除去する工程、
を備える、内装用表面材の製造方法を挙げることができる。
【0063】
まず、(1)繊維集合体を用意する工程、について説明する。
繊維集合体として、例えば、繊維ウェブや不織布、あるいは、織物や編み物などの、シート状の布帛を用意する。
繊維集合体における構成繊維の繊度や繊維長、繊維集合体の厚さや目付は上述した数値のものを採用することができる。
【0064】
次いで、(2)プリント層を構成可能な樹脂と、平均粒子径が106μm以下の中空粒子を溶媒あるいは分散媒に混合して、塗布液を調製する工程、について説明する。
溶媒あるいは分散媒の種類は適宜選択できるが、繊維集合体の一方の主面上へ好適に塗布液を塗布できるよう、プリント層を構成可能な樹脂が溶解すると共に、中空粒子が溶解せず分散可能な溶媒を採用する、あるいは、プリント層を構成可能な樹脂粒子および中空粒子が溶解せず分散可能な分散媒を採用するのが好ましい。
また、塗布液には中空粒子以外にも、例えば、難燃剤、香料、顔料、抗菌剤、抗黴材、光触媒粒子、乳化剤、分散剤、界面活性剤などの添加剤を溶解あるいは分散させ、含有させてもよい。
【0065】
そして、(3)繊維集合体の一方の主面上に、塗布液を付与する工程、について説明する。
繊維集合体の一方の主面上に、塗布液を付与する方法は適宜選択できるが、繊維集合体の一方の主面に塗布液をそのまま、あるいは泡立てた状態で、スプレーや含浸ロールなどを用いて散布あるいは塗布する方法、繊維集合体の一方の主面を塗布液中に浸漬する方法などを採用することができる。
【0066】
繊維集合体の一方の主面上に付与する、塗布液の態様は適宜選択できるが、主面上全てを被覆するように付与する方法、主面上に模様を形成するようにプリントや捺染して付与する方法などを選択できる。なお、一種類の塗布液を付与する、あるいは、複数種類の塗布液を付与しても良い。また、複数種類の塗布液を付与する場合には、各塗布液の付与態様(模様、塗布液の組成)は異なっていても良い。
【0067】
更に、(4)塗布液を付与した繊維集合体を加熱することで、溶媒あるいは分散媒を除去する工程、について説明する。
溶媒あるいは分散媒を除去する方法は適宜選択できるが、例えば、オーブンドライヤー、遠赤外線ヒーター、乾熱乾燥機、熱風乾燥機などの加熱機へ供し加熱する、室温雰囲気下や減圧雰囲気下に静置するなどして、溶媒あるいは分散媒を蒸発させ除去できる。
溶媒あるいは分散媒を除去する際の加熱温度は溶媒あるいは分散媒が揮発可能な温度であると共に、繊維集合体や中空粒子など構成部材の形状や機能などが意図せず低下することがないよう、加熱温度の上限を選択する。
【0068】
なお、繊維集合体が繊維ウェブの場合には、本(4)工程によって構成繊維同士を接着する(溶融したバインダで接着する、あるいは、構成繊維に含まれる熱可塑性成分を溶融させ接着する)ことで、不織布を形成してもよい。
【0069】
上述の製造方法を用いることで、本発明に係る内装用表面材を製造することができる。
上述の内装用表面材の製造方法では、更に別の多孔体、フィルム、発泡体などの構成部材を積層する工程、用途や使用態様に合わせて形状を打ち抜くなどして加工する工程、などの、各種二次工程を備えた内装用表面材の製造方法であってもよい。
なお、これらの構成部材は内装用表面材における、中空粒子を含有する主面とは異なる主面側に積層して備えることができる。
【0070】
更に、リライアントプレス処理などの、表面を平滑とするためにプリント層側主面に加圧処理する工程へ供してもよい。本工程を備える内装用表面材の製造方法によって、表面粗さ(SMD)が2.71μm未満の内装用表面材を提供でき好ましい。
【実施例】
【0071】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
【0072】
(繊維集合体の調製)
原着ポリエステル繊維(繊度:2.2dtex、繊維長:38mm)を100%用いて、カード機により開繊して繊維ウェブを形成した後、片面から針密度400本/m2でニードルパンチ処理を行い、その後、熱ロール間(ギャップ間隔:0.6mm、ロール加熱温度:165℃)へ供することで、ニードルパンチ不織布(目付:180g/m2、厚さ:1.6mm)を調製した。
次いで、ニードルパンチ不織布のニードリングを施した面とは反対の面から、以下に記載の割合で配合したバインダ液を泡立てた状態で塗布し、ロール間(ギャップ間隔:0.25mm)へ供した後、温度160℃のキャンドライヤーで乾燥することで、繊維集合体としてバインダ接着不織布(目付:182g/m2、厚さ:1.6mm、全ての構成繊維がランダムに絡合してなる不織布)を調製した。
【0073】
バインダ液
・アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(アクリル酸エステル樹脂のTg:-40℃、アクリル酸エステル樹脂エマルジョンの固形分質量:50質量%):2.3部
・増粘剤:0.2部
・界面活性剤:0.2部
・25%アンモニア水:0.1部
・水:97.2部
【0074】
(プリント液の調製)
次の割合で配合した各種プリント液A~Fを調製した。
なお、プリント液A~C、E~Fに配合した中空粒子は、有機樹脂からなる中空粒子の外周に無機成分が存在している中空粒子であった。一方、プリント液Dに配合した中空粒子は、有機樹脂のみからなる中空粒子であった。
【0075】
プリント液A
・アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(アクリル酸エステル樹脂のTg:-40℃、アクリル酸エステル樹脂エマルジョンの固形分質量:50質量%):10部
・中空粒子(マツモトマイクロスフェアー(登録商標)MFL-100MCA、松本油脂製薬株式会社、熱膨張率:112.3%、中空粒子の固形分質量:100質量%):2部
・増粘剤(固形分質量:100質量%):0.405部
・消泡剤(固形分質量:17質量%):0.4部
・25%アンモニア水:1部
・増粘剤(固形分質量:28質量%):1.5部
・柔軟剤(固形分質量:41質量%):3部
・水:81.695部
【0076】
プリント液B
・アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(アクリル酸エステル樹脂のTg:-40℃、アクリル酸エステル樹脂エマルジョンの固形分質量:50質量%):10部
・中空粒子(マツモトマイクロスフェアー(登録商標)MFL-110CAL、松本油脂製薬株式会社、熱膨張率:100.5%、中空粒子の固形分質量:100質量%):2部
・増粘剤(固形分質量:100質量%):0.405部
・消泡剤(固形分質量:17質量%):0.4部
・25%アンモニア水:1部
・増粘剤(固形分質量:28質量%):1.5部
・柔軟剤(固形分質量:41質量%):3部
・水:81.695部
【0077】
プリント液C
・アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(アクリル酸エステル樹脂のTg:-40℃、アクリル酸エステル樹脂エマルジョンの固形分質量:50質量%):5部
・中空粒子(マツモトマイクロスフェアー(登録商標)MFL-100MCA、松本油脂製薬株式会社、熱膨張率:112.3%、中空粒子の固形分質量:100質量%):1部
・増粘剤(固形分質量:100質量%):0.405部
・消泡剤(固形分質量:17質量%):0.4部
・25%アンモニア水:1部
・増粘剤(固形分質量:28質量%):1.5部
・柔軟剤(固形分質量:41質量%):1.5部
・水:89.195部
【0078】
プリント液D
・アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(アクリル酸エステル樹脂のTg:-40℃、アクリル酸エステル樹脂エマルジョンの固形分質量:50質量%):10部
・中空粒子(マツモトマイクロスフェアー(登録商標)FN-180、松本油脂製薬株式会社、熱膨張率:300%以上、中空粒子の固形分質量:100質量%):2部
・増粘剤(固形分質量:100質量%):0.405部
・消泡剤(固形分質量:17質量%):0.4部
・25%アンモニア水:1部
・増粘剤(固形分質量:28質量%):1.5部
・柔軟剤(固形分質量:41質量%):3部
・水:81.695部
【0079】
プリント液E
・アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(アクリル酸エステル樹脂のTg:-40℃、アクリル酸エステル樹脂エマルジョンの固形分質量:50質量%):10部
・中空粒子(マツモトマイクロスフェアー(登録商標)MFL-81GCA、松本油脂製薬株式会社、熱膨張率:113.8%、中空粒子の固形分質量:100質量%):2部
・増粘剤(固形分質量:100質量%):0.405部
・消泡剤(固形分質量:17質量%):0.4部
・25%アンモニア水:1部
・増粘剤(固形分質量:28質量%):1.5部
・柔軟剤(固形分質量:41質量%):3部
・水:81.695部
【0080】
プリント液F
・アクリル酸エステル樹脂エマルジョン(アクリル酸エステル樹脂のTg:-40℃、アクリル酸エステル樹脂エマルジョンの固形分質量:50質量%):10部
・中空粒子(マツモトマイクロスフェアー(登録商標)MFL-SEVEN、松本油脂製薬株式会社、熱膨張率:82.7%、中空粒子の固形分質量:100質量%):2部
・増粘剤(固形分質量:100質量%):0.405部
・消泡剤(固形分質量:17質量%):0.4部
・25%アンモニア水:1部
・増粘剤(固形分質量:28質量%):1.5部
・柔軟剤(固形分質量:41質量%):3部
・水:81.695部
【0081】
(実施例1)
バインダ接着不織布のバインダ付着面に対して、シリンダを用いてプリント液Aを塗布した後、温度150℃のドライヤーで乾燥した。
そして、最後にリライラントプレス機(温度:150℃、プレス圧力:2kgf、処理時間:12秒)へ供することで、バインダ接着不織布の一方の主面上にプリント液A由来のプリント層を備えた内装用表面材(目付:212g/m2、厚さ:1.3mm、通気度:46.1cc/cm2/sec、プリント層の目付:30g/m2、中空粒子の平均粒子径:73.0μm、CV値:8.4%)を調製した。
このようにして調製した内装用表面材の、プリント層が露出している主面におけるSMDは2.09μm、MIUは0.45、MMDは0.015であった。
【0082】
(実施例2)
プリント液Aの代わりにプリント液Bを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、バインダ接着不織布の一方の主面上にプリント液B由来のプリント層を備えた内装用表面材(目付:212g/m2、厚さ:1.4mm、通気度:55.5cc/cm2/sec、プリント層の目付:30g/m2、中空粒子の平均粒子径:105.6μm、CV値:15.9%)を調製した。
このようにして調製した内装用表面材の、プリント層が露出している主面におけるSMDは2.21μm、MIUは0.45、MMDは0.015であった。
【0083】
(比較例1)
バインダ接着不織布をそのまま、プリント層を備えていない内装用表面材(目付:182g/m2、厚さ:1.8mm、通気度:79.2cc/cm2/sec)とした。
このようにして調製した内装用表面材の、バインダ付着面側の主面におけるSMDは3.39μm、MIUは0.36、MMDは0.013であった。
【0084】
(比較例2)
バインダ接着不織布をリライラントプレス機(温度:150℃、プレス圧力:2kgf、処理時間:12秒)へ供することで、プリント層を備えていない内装用表面材(目付:182g/m2、厚さ:1.3mm、通気度:69.9cc/cm2/sec)を調製した。
このようにして調製した内装用表面材の、バインダ付着面側の主面におけるSMDは2.71μm、MIUは0.36、MMDは0.012であった。
【0085】
(比較例3)
バインダ接着不織布のバインダ付着面に対して、シリンダを用いてプリント液Dを塗布した後、温度150℃のドライヤーで乾燥したことで、バインダ接着不織布の一方の主面上にプリント液D由来のプリント層を備えた内装用表面材(目付:212g/m2、厚さ:1.4mm、通気度:52.8cc/cm2/sec、プリント層の目付:30g/m2、中空粒子の平均粒子径:121.0μm、CV値:28.1%)を調製した。
このようにして調製した内装用表面材の、プリント層が露出している主面におけるSMDは2.97μm、MIUは0.27、MMDは0.012であった。
【0086】
(比較例4)
プリント液Aの代わりにプリント液Dを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、バインダ接着不織布の一方の主面上にプリント液D由来のプリント層を備えた内装用表面材(目付:212g/m2、厚さ:1.4mm、通気度:59.7cc/cm2/sec、プリント層の目付:30g/m2、中空粒子の平均粒子径:151.7μm、CV値:17.2%)を調製した。
このようにして調製した内装用表面材の、プリント層が露出している主面におけるSMDは2.88μm、MIUは0.20、MMDは0.010であった。
【0087】
(比較例5)
プリント液Aの代わりにプリント液Eを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、バインダ接着不織布の一方の主面上にプリント液E由来のプリント層を備えた内装用表面材(目付:212g/m2、厚さ:1.3mm、通気度:46.3cc/cm2/sec、プリント層の目付:30g/m2、中空粒子の平均粒子径:17.1μm、CV値:8.5%)を調製した。
このようにして調製した内装用表面材の、プリント層が露出している主面におけるSMDは2.31μm、MIUは0.16、MMDは0.010であった。
【0088】
(実施例3)
リライラントプレス機の処理時間を20秒に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、バインダ接着不織布の一方の主面上にプリント液A由来のプリント層を備えた内装用表面材(目付:212g/m2、厚さ:1.1mm、通気度:42.4cc/cm2/sec、プリント層の目付:30g/m2、中空粒子の平均粒子径:73.0μm、CV値:8.4%)を調製した。
このようにして調製した内装用表面材の、プリント層が露出している主面におけるSMDは1.98μm、MIUは0.44、MMDは0.012であった。
【0089】
(実施例4)
プリント液Aの代わりにプリント液Cを用いて、実施例1と同様に、バインダ接着不織布の一方の主面上にプリント液C由来のプリント層を備えた内装用表面材(目付:202g/m2、厚さ:1.3mm、通気度:49.7cc/cm2/sec、プリント層の目付:20g/m2、中空粒子の平均粒子径:73.0μm、CV値:8.4%)を調製した。
このようにして調製した内装用表面材の、プリント層が露出している主面におけるSMDは2.14μm、MIUは0.49、MMDは0.015であった。
【0090】
(実施例5)
リライラントプレス機の処理時間を20秒に変更したこと以外は、実施例4と同様にして、バインダ接着不織布の一方の主面上にプリント液C由来のプリント層を備えた内装用表面材(目付:202g/m2、厚さ:1.1mm、通気度:46.8cc/cm2/sec、プリント層の目付:20g/m2、中空粒子の平均粒子径:73.0μm、CV値:8.4%)を調製した。
このようにして調製した内装用表面材の、プリント層が露出している主面におけるSMDは2.02μm、MIUは0.48、MMDは0.015であった。
【0091】
(比較例6)
プリント液Aの代わりにプリント液Fを用いて、実施例1と同様に、バインダ接着不織布の一方の主面上にプリント液F由来のプリント層を備えた内装用表面材(目付:202g/m2、厚さ:1.8mm、通気度:60.1cc/cm2/sec、プリント層の目付:20g/m2、中空粒子の平均粒子径:24.8μm、CV値:14.3%)を調製した。
このようにして調製した内装用表面材の、プリント層が露出している主面におけるSMDは2.62μm、MIUは0.17、MMDは0.010であった。
【0092】
(比較例7、実施例6~8)
プリント液Cに配合される中空粒子の部数を変更すると共に、該部数の変更に合わせてプリント液の構成成分の合計が100部となるよう水の部数を変更したこと以外は、実施例4と同様にして、バインダ接着不織布の一方の主面上にプリント液由来のプリント層を備えた内装用表面材を調製した。
なお、調製した比較例7、実施例6~8の内装用表面材におけるプリント層の構成、および、内装用表面材の各物性は表1に記載の通りであった。
【0093】
【0094】
上述のようにして調製した、実施例および比較例の各内装用表面材における主面(実施例1~8および比較例3~7においてはプリント層が露出している主面、比較例1~2においてはバインダ付着面側の主面)を触った際の触感を、モニター8名に触ってもらうことで、なめらかでキメが細かい感覚を覚えるか否か評価してもらうと共に、抵抗感やヌメリ感を感じることでしっとり感が高いという感覚をどの程度覚えるか、5段階で評価した。
【0095】
なお、モニター8名中6名以上がなめらかでキメが細かい感覚を覚えた場合には、評価した内装用表面材はなめらかでキメが細かい感覚を覚えるものであると評価した。一方、それ以外の場合には、評価した内装用表面材はなめらかでキメが細かい感覚を覚えるものではないと評価した。
【0096】
また、比較例1の内装用表面材におけるバインダ付着面側の主面を触った際に感じた、抵抗感やヌメリ感を感じることによるしっとり感が高いという感覚を「3」として、該感覚を高く感じた場合には「4」、該感覚をより高く感じた場合には「5」とした。一方、該感覚を低く感じた場合には「2」、該感覚をより低く感じた場合には「1」とした。
なお、該感覚を「3」より高く「4」より低く感じた場合には「3.5」、該感覚を「4」より高く「5」より低く感じた場合には「4.5」、該感覚を「3」より低く「2」より高く感じた場合には「2.5」、該感覚を「2」より低く「1」より高く感じた場合には「1.5」とした。
そして、8名が評価した数値の平均値の小数点2桁以下を四捨五入し、抵抗感やヌメリ感を感じることによるしっとり感の評価点とした。
上述の評価結果を表2および表3にまとめた。
【0097】
【0098】
【0099】
評価結果から、実施例の内装用表面材は、人になめらかでキメが細かい感覚を与えながらも、比較例より抵抗感やヌメリ感を与えることで、しっとり感が高いと感じさせる、触感に優れるものであった。
一方、比較例の内装用表面材は、人になめらかでキメが細かい感覚を与えるものではなく、実施例より該しっとり感が低いと感じさせる、触感に劣るものであった。
【0100】
更に、表3の結果から、プリント層を構成するプリント樹脂の固形分質量に対する中空粒子の固形分質量の百分率が25質量%である実施例6の内装用表面材よりも、該百分率が高い実施例7~8および実施例4の内装用表面材の方が、抵抗感やヌメリ感を感じることによるしっとり感がより高いという感覚を人に与える内装用表面材であることが判明した。
そのため、該百分率が25質量%よりも多い内装用表面材によって、より触感に優れる内装用表面材を提供できることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の内装用表面材は、より触感に優れているため、天井、ドアサイド、ピラーガーニッシュ、リヤパッケージなど自動車用;パーティションなどのインテリア用;壁装材などの建材用に、好適に使用することができる。