(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】生物学的試料を分析する自動分析装置のための故障状態予測
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
G01N35/00 F
(21)【出願番号】P 2019529155
(86)(22)【出願日】2017-11-27
(86)【国際出願番号】 EP2017080518
(87)【国際公開番号】W WO2018099859
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-06
(32)【優先日】2016-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100119781
【氏名又は名称】中村 彰吾
(72)【発明者】
【氏名】ハイネマン,ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】コベル,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ダールマンズ,スベン
(72)【発明者】
【氏名】ベール,ジャン-フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ジアオ,ユンローン
【審査官】岩永 寛道
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-229291(JP,A)
【文献】特開2002-222096(JP,A)
【文献】特開2011-053229(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0378807(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00
G06F 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物学的試料を分析するための自動分析装置(2)
についての
何らかの故障状態が発生
するであろうことを予測する方法であって、
過去の分析装置のデータ(5a;7a;8a)に基づいて、自動分析装置の故障状態を予測するための予測アルゴリズム(1)を生成するステップであって、前記過去のデータは、故障状態の発生に関する過去のデータ(7a;8a)、および過去の較正データおよび/または品質管理データ(5a)を含み、
前記予測アルゴリズム(1)は、自動分析装置によって生成される較正データおよび/または品質管理データ(5;52)に基づいて、前記自動分析装置(2)の故障状態を予測するよう構成される、ステップと、
前記予測アルゴリズム(1)を生成するステップが、前記故障状態の発生に関する過去のデータ(7a;8a)、および過去の較正データおよび/または品質管理データ(5a)を用いて、予測モデルの1つ又は複数のパラメータを設定することによって前記予測モデルを訓練するステップを含み、
前記自動分析装置(2)の較正データおよび/または品質管理データ(5;52)を取得するステップと、
前記自動分析装置の故障状態を予測するための前記予測アルゴリズム(1)を使用することによって、前記較正データおよび/または品質管理データ(5;52)を処理するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記過去の分析装置のデータは、複数の自動分析装置(2a)から取り出された過去のデータを含
み、前記複数の自動分析装置(2
a)
が、前記
自動分析装置(2)と1つまたは複数の特性を共有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
故障状態の発生に関する前記過去のデータは、自動分析装置のサービスデータ(7a)を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記予測アルゴリズム(1)を生成するために、故障状態の発生に関する前記過去のデータ(7a;8a)と、前記過去の較正データおよび/または品質管理データ(5a)との間の関係式を見つけるステップをさらに含む、請求項1から3までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
分類技法を用いて、故障状態の発生に関する前記過去のデータ(7a;8a)を分類するステップと、前記過去の較正データおよび/または品質管理データ(5a)との間の関係式を決定するステップとをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記予測アルゴリズム(1)を生成するために、2項分類問題(binary classification
problem)を解くステップをさらに含む、請求項1から5までのいずれか一項に記載の方
法。
【請求項7】
前記故障状態は、前記自動分析装置(2)への訪問を伴う、緊急サービスを必要とする故障状態、前記自動分析装置の操作者による介入を必要とする故障状態、または前記自動分析装置の構成部品の故障のうちの1つである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記予測アルゴリズム(1)を生成するために、前記自動分析装置(2)で得られる複数の分析評価にわたる、前記
過去の較正データおよび/または品質管理データ(5a)を平均化するステップをさらに含む、請求項1から7までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
数値的な較正データおよび/または品質管理データ(5a)についての分布情報を計算するステップと、前記計算されたデータに基づいて前記予測アルゴリズムを生成するステップとをさらに含む、請求項1から8までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
分類別の較正データおよび/または品質管理データ(5a)についての頻度情報を計算するステップと、前記計算されたデータに基づいて前記予測アルゴリズムを生成するステップとをさらに含む、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
- 既知の組成を有する1種または複数種類の基準較正物質に対する、前記自動分析
装置(2)の応答信号を決定するステップと、
- 前記応答信号と前記既知の組成との間の関係式を生成するステップと、
- 前記関係式を前記
過去の較正データおよび/または品質管理データ(5a)の中に含めるステップと
をさらに含む、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
- 既知の目標測定値を有する1種または複数種類の1種または複数種類の管理物質に対する、前記自動分析装置(2)の応答信号を決定するステップと、
- 前記自動分析装置(2)が正確性および/または精度の所定の限度内で動作することを確認するステップと、
- 前記確認するステップの結果を、
前記過去の較正データおよび/または品質管理データ(5a)の中に含めるステップと
をさらに含む、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
コンピュータシステム上で実行されるときに、前記コンピュータシステムが、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法のステップを実行するように制御する命令を有する、コンピュータプログラム製品。
【請求項14】
少なくとも1つのプロセッサを備えるコンピュータ又はコンピュータネットワークであって、前記プロセッサが、請求項1から12までのいずれか一項に記載の方法
を実行するように構成される、コンピュータ又はコンピュータネットワーク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生物学的試料を分析する自動分析装置の状態を予測するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的試料を分析するための自動分析装置は、今日の実験室環境において重要な役割を果たす。ある例では、自動分析装置(たとえば、臨床分析装置)は、多数の相異なる潜在的に複雑なタスクを実行するように構成され得る。たとえば、臨床分析装置は、臨床試料に対して多くの分析評価を実行するように設定することができる。
【0003】
自動分析装置は、購入および運用の点で、かなり費用がかかる可能性がある。したがって通常、自動分析の処理能力を最適化することは重要である。自動分析装置の処理能力は、予期しない故障(たとえば、分析装置または分析装置のモジュールの突然の破損)の発生による停止時間によって、著しく損なわれる可能性がある。ある例では、故障は、自動分析装置の配置場所では容易に利用できないサービス技術者(たとえば、異なる都市、さらには異なる国から、自動分析装置の配置場所に移動するサービス技術者)が、自動分析装置に対応することを必要とし得る。これにより、自動分析装置が比較的長い期間停止するという結果をもたらし得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明の一実施例は、例えば、生物学的試料を分析する自動分析装置のための故障状態予測に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の概略の態様では、生物学的試料を分析するための自動分析装置の故障状態を予測する方法は、自動分析装置の故障状態を予測するための予測アルゴリズムを取得するステップであって、この予測アルゴリズムは、自動分析装置によって生成された較正データおよび/または品質管理データに基づいて、自動分析装置の故障状態を予測するよう構成されているステップと、自動分析装置の較正データおよび/または品質管理データを取得するステップと、自動分析装置の故障状態を予測するための予測アルゴリズムを使用することによって、較正データおよび/または品質管理データを処理するステップとを含む。
【0006】
第2の概略の態様では、試料の自動分析装置は、試料の1つまたは複数の特性を検出するための検出ユニットと、コンピュータシステムによって実行されるときコンピュータシステムに第1の概略の態様の方法のステップを実行させる、命令を格納したメモリと、このメモリに格納された命令を実行するよう構成されるプロセッサとを備える。
【0007】
第1および第2の概略の態様の主題の特定の実施形態は、以下の利点のうちの1つまたは複数を実現するように実施することができる。
第1に、本開示の技法は、自動分析装置の故障状態の予測を可能にし得る。具体的には、故障状態は、ある例では、適切な対策を準備するのに十分な余裕をもって早期に予測され得る(たとえば、数日のリードタイムを必要とする可能性がある、自動分析装置に対応するサービス技術者との連絡)。その結果、ある例では、自動分析装置の停止時間を短縮することができる。追加的または代替的に、ある例では(たとえば、試料を失うことなく、または自動分析装置の構成部品への損傷を低減して)、故障状態予測によって、考えられる故障の原因を、より低コストのやり方で処理することができる。
【0008】
第2に、本開示の技法は、ある例では、他の監視技法では容易に予測できない可能性がある、驚くべき故障状態の予測を可能にし得る。これにより、自動分析装置の停止時間をさらに短縮することができる。なぜなら、驚くべき故障は、しばしば最も大きい停止時間を引き起こすためである。
【0009】
第3に、ある例では、本開示の技法は、分析装置の特定の状態を感知するために、自動分析装置に追加の、または自動分析装置専用のセンサを追加することなく、実施され得る。追加のセンサにより、自動分析装置の複雑さを増す可能性があるので、これは有利であり得る。さらにある例では、規制要件が、自動分析装置へのセンサの追加を、複雑で費用のかかる処置にしている。
【0010】
第4に、ある例では、品質管理データおよび/または較正データの測定プロセスが、比較的明確に定義されているので、自動分析装置の故障状態を予測するために較正データおよび品質管理データを使用することは、有利であり得る。このようにして、こうしたデータ項目に基づく予測は、自動分析装置に存在し得る他のデータ(たとえば、実際の試料の測定データ)を使用することと比較して、優れた予測結果をもたらし得る。
【0011】
本開示では、いくつかの用語が、特定の方法で使用されている。
本明細書で使用される用語「分析装置」は、実験室での作業、たとえば、生物学的試料から測定値を取得するために使用される、臨床、化学、生物学、免疫学または医薬の分野などにおいて使用するための、自動または半自動の、あらゆる種類の技術的装置を指すことができる。
【0012】
かかる実験用装置は、流体移送および配量、流体均質化(混合)、温度制御、ならびに化学的または物理的パラメータの測定を実行するための構成部品を備えることができる。たとえば装置は、流体分配構成部品(たとえば、ピペッタまたはバルブ)、掻混機、焼き戻し装置、振盪機、または攪拌機を備えることができる。
【0013】
他の例では、自動分析装置は、分析システム、または分析システムもしくは分析装置のワークセルを備えることができる。たとえば、自動分析装置は、試料の機械的、光学的、化学的、または生物学的特性を分析するための分析装置であり得る。
【0014】
「分析装置」は、必ずしも専用の実験室に配置されるわけではない。むしろ、この用語はまた、たとえば臨床的、化学的、生物学的、免疫学的、または薬学的分野において、分析手順を実施するための独立型分析装置も含む。たとえば、医師の診療所または薬局などの看護拠点の現場におけるベンチトップ装置、または家庭で使用するための装置もまた、本開示による自動実験室用装置であり得る。
【0015】
本明細書で使用される「分析装置」は、1つまたは複数の分析用、分析前、および分析後のワークセルに動作可能に結合され得る制御ユニットまたはコントローラを備え、この制御ユニットは、ワークセルを制御するよう動作可能である。さらに制御ユニットは、収集された分析データを評価および/または処理し、分析装置のうちのいずれか1つへの、かつ/またはいずれか1つからの試料の装填、格納、および/または取り出しを制御し、前記分析のための試料、試料管、または試薬を調製するために使用される分析システムの、分析またはハードウェア動作もしくはソフトウェア動作を初期化するなど、動作可能であり得る。
【0016】
本明細書で使用される用語「分析装置」/「分析用ワークセル」は、試料の物理的または化学的特性を測定することができる、任意の装置または装置の構成要素を包含する。ある例では装置は、測定値を得るために、生物学的試料と試薬との反応を引き起こすように構成され得る。
【0017】
分析装置は、様々な化学的、生物学的、物理的、光学的または他の技術的手順を使って、試料またはその成分のパラメータ値を決定するよう動作可能であり得る。分析装置は、試料または少なくとも1つの分析物の前記パラメータを測定し、得られた測定値を返すように動作可能であり得る。分析装置によって返される可能性のある分析結果のリストは、試料中の分析物の濃度、試料中の分析物の存在を示すデジタル的な(イエスまたはノー)結果(検出レベルを超える濃度に対応する)、光学的パラメータ、画像、細胞または粒子数、DNAまたはRNA配列、蛋白質または代謝物の質量分析から得られたデータ、および様々な種類の物理的、機械的、光学的、電気的または化学的パラメータを含むが、それらに限定されるものではない。分析用ワークセルは、試料および/または試薬の、ピペット操作、配量、および混合を補助するユニットを備えることができる。分析装置は、分析評価を実行するために試薬を保持する、試薬保持ユニットを備えることができる。試薬は、たとえば、個々の試薬または試薬群を収容する容器またはカセットの形態で配置されてもよく、適切な貯蔵所または保管区画もしくはコンベヤ内の位置に置かれてもよい。分析装置は、消耗品供給ユニットを含むことができる。分析装置は、その作業の流れが特定の種類の分析用に最適化されている、処理システムおよび検出システムを備えることができる。
【0018】
かかる分析装置の例は、化学的または生物学的反応の結果を検出するため、または化学的または生物学的反応の進捗を監視するために使用される、臨床化学分析装置、凝固化学分析装置、免疫化学分析装置、尿分析装置、核酸分析装置である。
【0019】
本明細書で使用される用語「通信ネットワーク」は、WIFI、GSM(登録商標)、UMTSまたは他の無線デジタルネットワークなどの任意の種類の無線ネットワーク、またはイーサネット(登録商標)などのケーブルベースのネットワークを包含する。特に通信ネットワークは、インターネットプロトコル(IP:internet protocol)を実装することができる。たとえば通信ネットワークは、ケーブルベースのネットワークと無線ネットワークとの組合せを含む。
【0020】
「制御ユニット」または「コントローラ」は、処理プロトコルに必要なステップが自動システムによって実行されるように、自動システムまたは半自動システムを制御する。それは、制御ユニットが、たとえば、液体生物学的試料を試薬と混合するための、特定のピペット操作ステップを実行するように自動システムに命令し得るか、または制御ユニットが、試料の混合物を一定時間インキュベートするように自動システムを制御することなどを意味する。制御ユニットは、特定の試料を用いて、どのステップを実行する必要があるかに関する情報をデータ管理ユニットから受け取ることができる。ある実施形態では、制御ユニットは、データ管理ユニットと一体であり得るか、または共通のハードウェアによって具現化され得る。制御ユニットは、たとえば、処理動作計画に従って動作を実行するための命令を備えた、コンピュータ可読のプログラムを実行する、プログラム可能なロジックコントローラとして具現化することができる。制御ユニットは、たとえば、以下の動作のうちのいずれか1つまたは複数を制御するように設定され得る。:キュベットおよび/またはピペットチップの装填、消耗、または洗浄、あるいはその組合せ、試料管および試薬カセットの移動および/または開口、試料および/または試薬のピペット操作、試料および/または試薬の混合、ピペット操作ニードルまたはチップの洗浄、混合パドルの洗浄、たとえば波長の選択などの光源の制御など。特に制御ユニットは、予め定義されたサイクルタイム内に一連のステップを実行するためのスケジューラを含むことができる。制御ユニットはさらに、分析評価の種類、緊急度などに応じて、処理する試料の順序を決定することができる。
【0021】
用語「生物学的試料」は、関心のある分析物を潜在的に含み得る物質を指す。試料は、血液、唾液、接眼レンズ液、脳脊髄液、汗、尿、大便、精液、母乳、腹水、粘液、滑液、腹腔液、羊水、組織、細胞などを含む、生理学的流体などの生物学的供給源から得られる。生物学的試料は、血液から血漿または血清を調製するなど、使用前に前処理することができる。処理方法は、関心のある分析物を含む試料成分の、遠心分離、濾過、蒸留、希釈、濃縮および/または分離、妨害成分の不活性化、および試薬の添加を含むことができる。
【0022】
試料は、供給源から得られるまま直接使用されてもよく、または試料の特性を改変するための前処理後に使用されてもよい。ある実施形態では、最初に固体または半固体の生物学的物質を、好適な液体媒体で溶解または懸濁することによって、液体にすることができる。ある例では、試料は、特定の抗原または核酸を含むと疑われることがある。
【0023】
分析試験を行う前に、試料を処理することができる。患者から採取した血液を、たとえば、血清を得るために遠心分離することができ、または血漿を得るために抗凝固剤を使って処理することができる。
【0024】
本開示で使用される用語「品質管理データ」用語は、品質管理された自動分析装置による測定結果を指すことができる。本開示による「品質管理」は、自動分析装置によって出力されるべき既知の目標測定値を有する、1種または複数種類の管理物質を含む。品質管理に関する測定手順は、自動分析装置が、正確性および/または精度の所定の限度の範囲内で動作することを確認することであろう。言い換えれば、本開示において「品質管理」は、分析装置の特定の試験または分析評価の性能を監視するために、1つまたは複数の監視プロセスで使用される物理的試料を指すものとして使用される。
【0025】
たとえば、かかる試験または分析評価は、血液試料の血漿中に、過剰なトロンビンが添加された後に、抗凝血剤を含む凝血塊を形成するのにかかる時間が測定される、トロンビン凝血時間の決定であり得る。この試験において、品質管理は、第1の品質管理成分(マトリックス)としての血漿、および第2の品質管理成分としてのトロンビンを含むことができる。
【0026】
ある例では、同じ特定の品質管理を使用して、分析装置の複数の試験または分析評価の性能を監視することができる。一方、任意の分析装置での特定の試験または分析評価の性能を監視することは、様々な種類の品質管理を含むことができる。
【0027】
品質管理は、1種または複数種類の品質管理成分を含み得る。用語「品質管理成分」は、自動分析装置の特定の試験の性能を監視するために使用されるべき、品質管理の成分となり得る任意の物質を含む。
【0028】
一例では、品質管理成分は、マトリックス(たとえばマトリックス溶液)を含むことができる。こうしたマトリックスは、体液または体液の成分から得ることができる。他の例では、マトリックス(たとえばマトリックス溶液)は、体液または体液の成分の特性を模倣する人工物質であり得る。ある例では、マトリックス(たとえばマトリックス溶液)は、血液、唾液、接眼レンズ液、脳脊髄液、汗、尿、大便、精液、母乳、腹水、粘液、滑液、腹腔液、羊水、組織、培養細胞、またはこうした身体物質の成分を含むことができる。他の例では、マトリックスは、こうした身体物質の濃縮形態または希釈形態を含むことができる。一例では、マトリックス溶液は、血漿または血清であり得る。一例では、マトリックス溶液は、凍結乾燥されている。一例では、品質管理成分のうちマトリックス溶液のみが、凍結乾燥される。
【0029】
追加的または代替的に、品質管理成分は、改質剤(本開示において「モディファイア」とも呼ばれる)を含むことができる。ある例では改質剤は、薬剤、薬剤の代謝物、所定の医学的または代謝的状態で蓄積する物質、体液中に通常は存在しない物質、および体液中に通常は存在する物質のうちの1種または複数種類を含むことができる。
【0030】
追加的または代替的に、品質管理成分は、試薬を含むことができる。用語「試薬」は、血液試料中の特定の反応を引き出すため、分析装置中の生物学的試料に対して特定の試験を実施するときに、生物学的試料に添加される物質を指す。試薬は、特定の試験または分析評価に固有であり得る。たとえば、血液試料の一部のトロンボプラスチン時間が決定されることになる状況では、分析装置は、凝固の固有経路を活性化するために、試薬として活性剤を血液試料に添加するよう構成され得る。特定の物質は、様々な状況での本開示による「改質剤」または「試薬」であり得る。ある例では、分析装置は分析されるべき生物学的試料に試薬を加えないかもしれない。したがってある例では、品質管理は試薬を含まないかもしれない。
【0031】
本開示では、「較正データ」は、既知の組成を有する1種または複数種類の基準較正物質への応答信号が、応答信号と既知の組成との間の関係式を生成するために、分析装置によって決定される、測定の結果のデータを含むことができる。次いでこの関係式は、自動分析装置の測定範囲を設定するために使用される。たとえば、試料の吸収値を検出する装置において、基準較正物質は、既知の吸収値を有する試料を含むことができる。較正測定に応答して、自動分析装置は、それが吸収測定において真の吸収値(または少なくとも所定の限度内で真の値に近づく値)を示すように較正することができる。
【0032】
本明細書で使用される用語「故障状態」は、アクチュエータ(モータ)、バルブ、センサ、または他のハードウェア(配管、バネ、ネジ、または他のあらゆる分析装置の部品)など、分析装置の破損または摩耗した構成部品を含む(ただし、これらに限定されるものではない)リストの1つまたは複数を示す、分析装置の状態に関する。故障状態という用語はさらに、調整/設定不良、機器の流体経路内の漏れ、腐食、電子部品の破損または欠陥などのうちの1つまたは複数を示すことに関する。特に、故障状態は、ソフトウェア、ハードウェアの故障、または生物学的試料の分析に影響を与える、分析装置の誤った構成を示す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本開示による自動分析装置の状態を予測する方法の、予測段階でのデータの流れの概略図である。
【
図2】例示的な較正データまたは品質管理データに関連する特徴、および自動分析装置の動作中に起こる様々なイベントのグラフである。
【
図3】本開示による自動分析装置の状態を予測する方法の、トレーニング段階でのデータの流れの概略図である。
【
図4】本開示による予測アルゴリズムで使用される、様々なパラメータおよびデータを示す図である。
【
図5】本開示による様々な方法を示す、流れ図である。
【
図6】
図6aは、本開示による技法を使用することによって取り出された、実験データの図である。
図6bは、本開示による技法を使用することによって取り出された、実験データの図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示による、自動分析装置の故障状態を予測する方法およびシステムについて、以降でより詳細に論じることにする。
第1に、予測アルゴリズムが故障状態を予測するために適用されるときに、予測段階で行われ得る動作を、
図1および
図5と共に示すことにする。続いて、本開示の技法で使用されるデータの態様を、
図2と共に論じることにする。次に、本開示による予測アルゴリズムの生成段階およびトレーニング段階を、
図3および
図5と共により詳細に説明することにする。
図4と共に、予測アルゴリズムの追加の態様を論じることにする。最後に、本開示の技法を使用するための具体例を、
図6aおよび
図6bと共に提示することにする。
【0035】
予測アルゴリズムの適用
図1は、試料のための自動分析装置2の故障状態を予測する例示的な方法における、データの流れを示す。
図5は、予測アルゴリズムの適用中に実行される方法ステップを示す。
【0036】
この方法は、自動分析装置2の故障状態を予測するための予測アルゴリズム1を取得するステップ201を含み、予測アルゴリズム1は、自動分析装置によって生成された較正データおよび/または品質管理データ5に基づいて、自動分析装置2の故障状態を予測するよう構成されている。さらにこの方法は、自動分析装置2の較正データおよび/または品質管理データ5を取得するステップ11、202、および自動分析装置2の故障状態を予測するために、予測アルゴリズム1を使用することによって、較正データおよび/または品質管理データを処理するステップ14、203を含む。
【0037】
本開示による予測段階で行われ得るこうした動作および追加の動作について、以降の節でさらに詳しく論じることにする。
自動分析装置2は、前述の要約の節で論じた自動分析装置のいずれでもよい。以降の節では、臨床分析装置が例示的な自動分析装置として使用されることがある。しかし、以降で提示される技法は(それぞれの技法の特定の特徴が、特定の種類の分析装置と矛盾しない限り)、前記で列挙した、他の自動分析装置のいずれにもまた適用され得る。
【0038】
予測アルゴリズム1は、いくつかの手法のうちの1つで取得され得る。一例では、予測アルゴリズム1を、後で使用するために、自動分析装置2のメモリに格納することができる。たとえば、予測アルゴリズム1を、自動分析装置2のローカルメモリで使用するために、格納することができる。
【0039】
しかし他の例では、予測アルゴリズム1は、通信ネットワークによって自動分析装置2とネットワーク接続された、自動分析装置2から遠隔のメモリに格納することができる。たとえば予測アルゴリズム1は、実験室の情報システムまたは病院の情報システム内に格納することができる。さらに他の例では、予測アルゴリズム1は、遠隔の、または分散された位置(たとえば、遠隔サーバまたはクラウド)に格納することができる。
【0040】
いずれの場合でも、予測アルゴリズム1は、自動分析装置2の較正データおよび/または品質管理データ5にアクセスするように配置構成される。
ある例では、予測アルゴリズム1は、自動分析装置2の設定プロセスにおいて(たとえば、自動分析装置の工場での設定の一部として)、自動分析装置2にインストールされる。他の例では、予測アルゴリズム1は、自動分析装置2の動作中に(たとえば、通信ネットワークを介してダウンロードされる)、取得することができる(たとえば、自動分析装置にインストールされる)。
【0041】
概して、本開示における用語「予測アルゴリズム」は、自動分析装置の状態に関する予測を行うために、較正データおよび/または品質管理データを処理するよう構成されたエンティティを抽象的に指す。予測アルゴリズムは、ハードウェア、ソフトウェアまたはそれらの任意の組合せで具現化することができる。一例では、予測アルゴリズムは、自動分析装置が制御ソフトウェアの他の機能と同様のやり方で予測アルゴリズムを使用することができるように、自動分析装置の制御ソフトウェア内に含まれている。予測アルゴリズムの具体的な実施が、予測アルゴリズムの動作にとって重要ではないことを理解されたい。
【0042】
図1の例では、予測アルゴリズムは、入力(「x」)を処理して出力(「y」)をもたらす関数として示されている。以下の節では、入力は、較正データおよび/または品質管理データを含み、出力は、故障状態が所定時間内に予測され得るかどうかの予測を含む。しかし以下で論じるように、他の例では、予測アルゴリズムは、他の形態をとることができ、他のデータを処理するように、または他の結果が得られるように構成され得る。
【0043】
図1に戻って、自動分析装置2の「正常」動作中に、操作者3は、自動分析装置2を操作する。特に操作者3は、較正手順および/または品質管理手順(本開示では、「較正動作および/または品質管理動作」あるいは「較正ルーチンおよび/または品質管理ルーチン」とも呼ばれる)を実行することができる。こうした手順の過程で、自動分析装置2は、11個の較正データおよび/または品質管理データ5を生成する。他の例では、自動分析装置2は、較正手順および/または品質管理手順を(少なくとも部分的に)自動的に実行することができる。
【0044】
品質管理手順は、既知の目標測定値を有する1種または複数種類の1種または複数種類の管理物質に対する自動分析装置(2)の応答信号を決定するステップと、自動分析装置(2)が正確性および/または精度の所定の限度内で動作することを確認するステップと、この確認するステップの結果を品質管理データ(5;5a)に含めるステップとを含むことができる。
【0045】
較正手順は、既知の組成を有する1種または複数種類の基準較正物質に対する自動分析装置(2)の応答信号を決定するステップと、応答信号と既知の組成との間の関係式を生成し、前記関係式を較正データ(5;5a)に含めるステップとを含むことができる。
【0046】
ある例では、操作者3は、所定の時間に(たとえば、臨床分析装置上で、特定の分析評価が実行される、所定の期間の開始時と終了時に)、臨床分析装置2にインストールされた、特定の分析評価向けの品質管理手順を実行することができる。ある例では、この技法は、以降の品質管理手順の間に行われるこの特定の分析評価に関するいくつかの測定値を検証するために適用される。
【0047】
他の例では、操作者3は、臨床分析装置2の特定の測定機能を較正するために、較正測定を実行することができる(たとえば、所定の日に、または所定の数の分析評価が自動分析装置によって実行された後に)。
【0048】
どちらの場合でも、この手順は、明確に定義された較正または品質管理基準の使用を含むことができる。較正または品質管理試料の例は、前述の概要の節で論じている。
次いで、較正データおよび/または品質管理データ5は、較正および/または品質管理の目的で、自動分析装置2によって使用され得る。さらに、較正データおよび/または品質管理データ5は、自動分析装置2の故障状態を予測する処理のために、予測アルゴリズムに供給される12。
【0049】
したがってある例では、予測アルゴリズムは、いずれにしても臨床分析装置2の動作中に得られるデータのみを使用することができる。他の例では、予測アルゴリズム1は、他のデータもまた処理することができる。
【0050】
たとえば、予測アルゴリズムは、較正および/または品質管理データに加えて、自動分析装置1の他の機器データを処理することができる。これは、試料の測定(たとえば、透過もしくは吸収測定、または他の光学的測定)を実行するときに得られる1つまたは複数のデータ、自動分析装置1のセンサから得られるデータ(たとえば、温度センサもしくは水分センサ、または自動分析装置の環境を監視する他のセンサ)、および自動分析装置1の動作中に生成された制御データを含むことができる。
【0051】
追加的または代替的に、自動分析装置の監視または適切な動作のための専用センサからのデータは、予測アルゴリズム1によって使用され得る。しかし他の例では、本開示の技法を使用するときに、この種の専用センサの使用は回避され得る。
【0052】
次いで、較正データおよび/または品質管理データ5は、自動分析装置2の故障状態についての予測6を得るために、予測アルゴリズム1によって処理される14。予測アルゴリズム1が、較正データおよび/または品質データ5を処理するやり方についての詳細を、以下で論じることにする。後の節では、様々な起こり得る予測結果、およびどのようにして予測結果が使用され得るかを、より詳細に論じることにする。
【0053】
一例では、自動分析装置の故障状態に関する予測6は、所定の種類のエラー(または所定の1組のエラーのうちの1つ)が発生しそうであるという予測を含む。一例では、予測6は、故障状態が発生しそうな時間窓、もしくは故障状態が発生しそうな時間、またはその両方の仕様を含む。
【0054】
所定の種類のエラー(またはエラーの組)は、サービス技術者4が、その自動分析装置2に対応する必要があるエラーを含むことができる。他の種類の故障については、
図2と共に以下で論じることにする。
【0055】
予測の種類にかかわらず、本開示の技法では、予測を様々なやり方で使用することができる。様々な例を、以降の段落で論じることにする。
一例では、較正データおよび/または品質管理データ5を処理し、故障状態の予測6を判断した結果は、サービス技術者4(または自動分析装置2のサービス提供を担当する、他のあらゆる個人、グループ、または法人)に伝えられる9。たとえば、サービス技術者(または自動分析装置2のサービス提供を担当する、他の個人、グループまたは法人)は、自動分析装置2の場所から遠隔の場所にいてもかまわない。たとえば、サービス技術者は、自動分析装置2の今後の故障状態についての予測アルゴリズム1の予測6を含む、警告メッセージを受け取る可能性がある。このようにして、サービス技術者4は、故障が発生しそうになる前に、自動分析装置2の起こり得る故障に対応するのに十分なリードタイムをもって、自動分析装置2の故障状態の予測を受け取ることができる。
【0056】
ある例では、サービス技術者4(または自動分析装置2のサービス提供を担当する他の法人)との通信は、予測アルゴリズム1が故障状態の発生を予測する場合にのみ、実行される。他の例では、サービス技術者4(または自動分析装置2のサービス提供を担当する他の法人)との通信は、予測アルゴリズム1が、所定のしきい値の見込みを用いて、故障状態の発生を予測する場合にのみ、実行される。さらに他の例では、予測アルゴリズム1によって生成されたすべての予測データは、サービス技術者4に伝えられる。ある例では、予測6の通信は自動的に行われてもよい。
【0057】
追加的または代替的に、予測アルゴリズム1の予測6を、自動分析装置2の操作者3に伝えることができる10。他の例では、予測アルゴリズム1の予測6は、自動分析装置2の環境内にいる他の人員または装置に伝えることができる。
【0058】
たとえば、警告または情報メッセージは、自動分析装置2を含むネットワーク環境(たとえば、実験室のネットワークまたは病院のネットワーク)内で、生成および回覧することができる。追加的または代替的に、警告または情報メッセージを自動分析装置2の表示装置上、または自動分析装置2とネットワーク接続された装置のディスプレイ上に出力することができる。
【0059】
さらに、予測6は、自動分析装置2の故障状態が予測される場合、または自動分析装置2の故障状態が発生する可能性が、所定のしきい値よりも高くなると予測される場合にのみ伝えられ得る。このようにして、ある例では、自動分析装置2の故障状態を回避するための、または故障状態が発生した結果を、少なくとも改善するための、対策を始めることができる。
【0060】
前節では、本開示による予測アルゴリズムを使用する複数の例について論じてきた。続いて、
図2と共に、自動分析装置の較正データおよび/または品質管理データがどのように使用されるかについての、追加の説明を提供することにする。
【0061】
図2は、例示的な較正データおよび/または品質管理データに関連する特徴51、および自動分析装置の動作中に起こる様々なイベント21~24のグラフ20である。
図2から分かるように、較正データおよび/または品質管理データは、経時的に変化するスカラパラメータを含む。最初に、自動分析装置が設定される21。自動分析装置の耐用期間の過程において、較正および/または品質管理ルーチン22、23が実行される(たとえば上記で、特に要約の節で論じたように)。ある時点で、分析装置の予期せぬ故障が発生する(
図2において「分析装置破損」と記述される)。例示的グラフ20から分かるように、較正データおよび/または品質管理データのパラメータは、自動分析装置の故障に先行する期間中に、大幅に上昇する。本開示の技法は、自動分析装置の故障状態を予測するために、この挙動を利用することができる(ある例では、所定の時間だけ前もって)。言い換えれば、ある例では、較正データおよび/または品質管理データは、自動分析装置の特定の故障状態について、予測する力を備え得る。
【0062】
図2の例では、図解するために、較正データおよび/または品質管理データに含まれるスカラパラメータが使用されている。他の例では、較正データおよび/または品質管理データは、以降の段落に列挙されている1つまたは複数の特性を有することができる。
【0063】
たとえば、較正データおよび/または品質管理データは、較正イベントまたは品質管理イベントの頻度データ(たとえば、較正ルーチンおよび/または品質管理ルーチンが実行される頻度)を含むことができる。
【0064】
さらに代替的に、較正データおよび/または品質管理データは、較正イベントまたは品質管理イベント中に測定された信号の分布情報を含むことができる。この分布情報は、較正イベントまたは品質管理イベント中に測定された信号の、平均値(たとえば、算術平均または中央値)、変動値(たとえば、標準偏差、拡散、分位点情報、または変動を特徴づける他の値)のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0065】
たとえば、較正データおよび/または品質管理データは、較正イベントまたは品質管理イベント中に測定された信号の算術平均を含むことができる。他の例では、較正データおよび/または品質管理データは、較正イベントまたは品質管理イベント中に測定された信号の標準偏差(または測定ノイズを定量化する別の尺度)を含むことができる。
【0066】
追加的または代替的に、較正データおよび/または品質管理データは、較正イベントまたは品質管理イベント中に測定された信号の変化に関するデータを含むことができる。他の例では、較正データおよび/または品質管理データは、品質管理および較正イベント中に測定された信号の導出(または較正イベントまたは品質管理イベント中に測定された信号の、より高次の導出)から得られる情報を含むことができる。
【0067】
さらに他の例では、較正データおよび/または品質管理データは、予測アルゴリズムによって処理されるべき較正データおよび/または品質管理データの、複数の異なる項目を組み合わせた式に処理することができる。たとえば、較正データおよび/または品質管理データの相異なる項目を処理して、たとえば、重み付けされた合計、比率、または他の組合せ式を得ることができる。
【0068】
図2の例では、自動分析装置の故障状態は、分析装置の破損である。しかし、本開示の予測技法を用いて、様々な故障状態が予測され得る(たとえば、前述で論じた故障状態)。
【0069】
たとえば、本開示の予測技法は、自動分析装置の様々な構成部品の故障を予測するよう構成され得る。追加的または代替的に、本開示の予測技法は、自動分析装置が実行することができる様々な機能の故障(たとえば、所定の分析評価または分析評価群の実行における故障)を予測するよう構成され得る。
【0070】
さらに他の例では、本開示の予測技法は、所定の深刻度を有する故障状態を予測するように構成され得る。たとえば、故障状態は、自動分析装置への訪問を伴う、緊急サービスを必要とする故障状態であり得る。追加的または代替的に、故障状態は、遠隔サービスによって解決可能であることが必要となる故障状態であり得る。
【0071】
他の例では、故障状態は、自動分析装置の適切な動作を確保するために、自動分析装置に対して特定の操作が行われるべき状態であり得る。さらに他の例では、エラーの種類は、自動分析装置の構成部品を交換するために、特定のスペアまたは交換部品を必要とするエラーであり得る。たとえば、故障状態は、自動分析装置の特定の構成部品(たとえば、分配装置または照明装置)の寿命末期を含むことができる。
【0072】
図2の例では、故障状態は「壊滅的なイベント」を指す。しかし他の例では、本開示の技法を使用して、自動分析装置のライフサイクルにおける、より一般的なイベントを予測することができる。たとえば、故障状態は、自動分析装置が所定の限度内で動作していない、あらゆる状態を含むことができる。一例では、自動分析装置の構成部品は、その寿命が尽きるか、またはサービスのイベントに近づく可能性がある。たとえば、照明ユニットのランプは、その寿命が尽きるかもしれない。
【0073】
一例では、自動分析装置の分配装置は、時間と共に徐々に詰まることがある。その結果、ある時点で、分配装置はもはや適切な量の流体を分配しない可能性がある。分配装置がある程度詰まっている場合、自動分析装置が正しく動作しない可能性があるため、この時点で故障状態である。本開示の技法は、故障状態を予測するために使用することができる。その結果、自動分析装置の操作者は、故障状態の発生での不利な結果を回避するのに十分適時に、介入することができる。たとえば、自動分析装置の動作中に、分配装置が適切に動作しなくなると、不正確な結果が得られ、かつ/または試料がプロセス中に損なわれるか、もしくは失われる可能性がある。ある例では、本開示の予測技法を使用すると、こうした不利な結果を回避することができる。
【0074】
予測アルゴリズムの生成およびトレーニング
前述の
図1および
図2と共に、本開示の予測アルゴリズムの使用に関する様々な態様を論じてきた。以下の節では、
図3および
図5と共に、使用することができる予測アルゴリズムの種類に関する追加の詳細、および予測アルゴリズムの生成に関する詳細を、より詳細に論じることにする。
【0075】
図3は、本開示による自動分析装置2aの状態を予測する方法の、トレーニング段階でのデータの流れの概略図を含む。
概して、予測アルゴリズム1の生成およびトレーニング段階中に、予測アルゴリズム1を生成しトレーニングするために、過去の自動分析装置のデータを使用する301。特に、過去の分析装置のデータは、過去の較正データおよび/または品質管理データ5a、ならびに故障状態の発生に関する過去のデータ7a、8aを含む。
【0076】
生成およびトレーニング段階は、様々なステップを含むことができる。一例では、初期予測モデルは、過去のデータを使用することによって調整および改良される(たとえば、モデルの1つまたは複数のパラメータが設定される)。他の例では、生成およびトレーニング段階はまた、予測アルゴリズムを最初から設定するステップ(たとえば、使用されるべき分類指標の種類および過去のデータを選択するステップ)も含むことができる。
【0077】
本開示では、用語「過去の」は、予測アルゴリズム1のトレーニング段階で使用される、較正データおよび/または品質管理データ(あるいは他の任意のデータ)と、自動分析装置の故障状態を予測するために予測アルゴリズム1を適用するときに使用される、較正データおよび/または品質管理データ(あるいは他の任意のデータ)を区別するために使用される。したがって、用語「過去のデータ」は、自動分析装置の故障状態を予測するために予測アルゴリズムが適用される時点から見て過去に、収集されたデータを指す。これは、予測アルゴリズムのトレーニング段階において、不必要な較正および/または品質管理データ(あるいは他の任意のデータ)が、過去に収集されたデータであることを意味する。さらに、用語「過去の」は、どんな特定の時間の遠さを伝えることも意図していない。たとえば、過去のデータは、予測アルゴリズムが適用される現時点の、ほんの数分前または数秒前に収集され得る。
【0078】
そうは言っても、予測アルゴリズムを生成し訓練するために使用される過去のデータは、自動分析装置の故障状態を予測するための予測アルゴリズムの使用に関連して上記で論じたものと同じ種類のデータを含むことができる。特に、過去のデータは、動作中に自動分析装置によってもまた生成される、同じ種類の較正データおよび/または品質管理データを(少なくとも部分的に)含むことができる。
【0079】
さらに、生成およびトレーニング段階は、自動分析装置の故障状態の発生に関するデータ7a、8aを使用するステップを含む。一例では、故障状態の発生に関するデータは、自動分析装置のサービスデータ7aを含む。たとえば、サービスデータは、サービス技術者(または自動分析装置へのサービス提供を委任された他の任意の人)によるレポートから取り出されたデータを含む。
【0080】
一例では、サービスデータ7aは、自動分析装置ID、サービス技術者の訪問日(または他の任意のタイムスタンプ)、構成部品の消耗情報、および自動分析装置上で実行される作業の説明のうちの、1つまたは複数を含むことができる。概して、サービスデータ7aは、故障状態発生の時間を計るデータを含むことができる。
【0081】
追加的または代替的に、故障状態の発生に関する過去のデータは、自動分析装置自体によって生成された、エラーに関する情報を含むことができる。たとえば、自動分析装置は、エラーメッセージまたは故障状態の内部ログを生成することができる。たとえば、自動分析装置は、特定の構成部品または特定の機能がもはや適切に動作していないことを検出することができる(たとえば、所定の分配装置によって分配される液体の量が不適当である)。このイベントは、記録され得るか、または対応するエラーメッセージが、自動分析装置によって生成され得る。
【0082】
概して、故障状態の発生に関するデータは、自動分析装置の故障状態の発生に関する任意の情報を含むことができる。たとえば、故障状態の発生に関するデータはまた、追加のセンサまたは検出器を使用することによって、またはトレーニング段階中の操作者による目視検査によっても、生成することができる。
【0083】
故障状態の発生に関するデータは、自動分析装置の適切な動作を確認するデータ8aもまた含むことができる。言い換えれば、故障状態の発生に関するデータは、故障が発生していないという情報(たとえば、所定の期間内に)を含むことができる。たとえば、この情報は、故障が発生していないという2進情報、または自動分析装置2aが所定の限度内で動作していることを示す情報であり得る。
【0084】
トレーニング段階では、予測アルゴリズム1には、自動分析装置2aの故障状態に関する予測6aを行うために、予測アルゴリズム1によって処理される14a、前述のデータが提供される12a、15a、16a。生成およびトレーニング段階では、この予測6aが、自動分析装置2aの実際に発生している故障状態と比較される。このようにして、予測6aの質を判定することができ、予測アルゴリズム1を、この評価に応じて修正および調整することができる。
【0085】
自動分析装置2aの故障状態を、ある程度の確実性をもって予測するために、予測アルゴリズム1を選択しトレーニングすることができる(たとえば、生成およびトレーニング段階において、生産アルゴリズム1の予測力を最適化することができる)。他の例では、生産アルゴリズム1は、誤警報の数を低減するように選択されてトレーニングされ、すなわちこのアルゴリズムは、自動分析装置2aの故障状態をある程度の確実性をもって予測することと、誤警報の数を減らすこととの組合せである。
【0086】
ある例では、予測アルゴリズム1を選択することは、故障状態の発生に関する過去のデータ7a、8aと、過去の較正データおよび/または品質管理データ5aとの間の関係式を見つけることを含むことができる。たとえば、予測アルゴリズム1を選択することは、故障状態の発生に関する過去のデータ7a、8aと、過去の較正データおよび/または品質管理データ5aとを相関させることを含むことができる。
【0087】
たとえば、このプロセスは、故障状態の発生に関する過去のデータ7a、8a、および過去の較正データおよび/または品質管理データに対して、その関係式を見つけるために5a、分類技法を使用することを含むことができる。
【0088】
本開示による予測アルゴリズム1を選択するために使用され得る例示的な分類技法の例は、決定木の利用、サポートベクトルマシンを使用する技法、ランダムフォレストマシン学習アルゴリズム、ディープラーニングアルゴリズム、ロジスティック回帰技法、(単純)ベイズ技法、勾配ブースティング技法、または線形判別分析を含む技法のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0089】
以下の例では、決定木の利用を含む技法が、使用される。ある例では、この技法は、特定の利点を有することができるが、本開示の技法は、その点で限定されるものではない。たとえば、本開示に記載される、過去の較正および/または品質管理データならびに故障状態の発生に関する過去のデータはまた、ディープラーニングの手順においてもまた、使用することができる(たとえば、ニューラルネットワークをトレーニングして、自動分析装置の故障状態を予測するために)。さらに他の例では、本開示に記載される過去の較正および/または品質管理データならびに故障状態の発生に関する過去のデータを使用して、サポートベクターマシンを設定してトレーニングすることができる。他の分類指標および予測技法を、それに応じて適用することができる。
【0090】
予測アルゴリズムを生成後、自動分析装置の故障状態を予測するために、予測アルゴリズムを自動分析装置に提供することができる302(
図1と共に上記で論じたように)。
予測アルゴリズム1を生成しトレーニングするための例示的な技法を、
図4と共に後で説明することにする。しかし、
図4と共に説明した技法が、特定の利点を有することができるとしても、他の技術もまた、本開示の予測技術において使用することができる。さらに、
図4の技法と共に説明する様々なデータ処理ステップは、(それらが
図4の特定の技法に固有のものでない限り)前述の予測アルゴリズムを生成するための他の技法にもまた適用することができる。
【0091】
図4の例では、故障状態を予測するための予測アルゴリズムは、2項分類問題を解くことによって生成される。したがって、予測アルゴリズムは、2値出力、すなわち、故障状態が予想されることを示す一方の出力状態と、故障状態が予測されないことを示す第2の出力状態とを有するように構成される。言い換えれば、2項分類問題は、2値のイベントとして、所定の時間に発生する故障状態の有無を含むことができる。
【0092】
他の例では、分類問題は、3つ以上のクラス(たとえば、3つ、4つ、または5つ以上のクラス)を有することができる。たとえば、分類問題は、訪問を必要とする故障状態、自動分析装置の操作者によって解決可能な故障状態、遠隔サービスによって解決可能な故障状態、およびサービスが不要な状態を含む、4つのクラスを含むことができる。上記で論じた他の故障状態は、追加的または代替的に、分類問題の2つ以上のクラスのうちの1つのクラスを形成することができる。
【0093】
図4に示すように、較正データおよび/または品質管理データ52を処理して、予測アルゴリズムをトレーニングすることができる。
一例では、較正データおよび/または品質管理データ52は、予測アルゴリズムをトレーニングするために、複数の較正ルーチンおよび/または品質管理ルーチンにわたって平均化され得る。この例では、平均化された較正データおよび/または品質管理データは、複数の相異なる較正ルーチンおよび/または品質ルーチンの結果を含むことができる。
【0094】
較正データおよび/または品質管理データ52を、1つまたは複数の次元で平均化することができる。一例では、較正データおよび/または品質管理データ52を、所定の期間にわたって平均化することができる。追加的または代替的に、相異なる種類の較正データおよび/または品質管理データを、平均化することができる。
【0095】
一例では、自動分析装置は、そのために較正ルーチンまたは品質管理ルーチンが実行される様々な機能(たとえば、自動分析装置で得られる複数の分析評価)を提供することができる。較正データおよび/または品質管理データは、自動分析装置の様々な機能についての、または機能のサブセットについての、すべての較正データおよび/または品質管理データに対する平均値(たとえば、自動分析装置のすべての分析評価、または分析評価のサブセットに対する平均値)を含むことができる。
【0096】
ある例では、較正データおよび/または品質管理データは、平均値が計算され得る前に処理される。たとえば、自動分析装置の相異なる較正ルーチンまたは品質ルーチンから生じる(たとえば、様々な分析評価からのルーチンの)較正データおよび/または品質管理データは、平均化の前に正規化される。一例では、較正データおよび/または品質管理データは、較正データおよび/または品質管理データそれぞれの、平均値および変動値を利用することによって使用される。このようにして、異なる供給源のデータが組み合わされ、予測アルゴリズムを生成しトレーニングするために使用され得る。
【0097】
ある例では、較正データおよび/または品質管理データは、異なるデータ種類のデータ(たとえば、数値的な、または名目的なデータ)であり得る。異なるデータ種類の較正データおよび/または品質管理データの処理は、数値的な較正データおよび/または品質管理データに関する分布情報(たとえば平均値および/または変動情報)を生成することを含むことができる。追加的または代替的に、較正データおよび/または品質管理データの処理は、名目的な較正データおよび/または品質管理データについて使用される、頻度の情報を決定することを含むことができる。
【0098】
たとえば、品質管理ルーチンの結果は、自動分析装置の測定結果が所定の限度内にあることを示すことができる。この例では、品質管理データは、2つの異なる状態、すなわち「限度内」または「限度外」を有する名目的な変数であり得る。別の例では、品質管理ルーチンの結果は、品質管理における所定の結果の濃度に対する濃度値を含むことができる。この例では、品質管理データは、数値(すなわち濃度値)を含む。
【0099】
追加的または代替的に、品質管理および/または較正データの処理は、品質管理データおよび/または較正データを所定の期間にわたって積分または平均することを含むことができる。
【0100】
さらに他の例では、品質管理および/または較正データは、所定の期間の時間ビンと関連することができる。さらに、わずか1種の試料の品質管理および/または較正データが、各時間ビンで処理され得る(または各時間ビンを代表する平均値が決定され得る)。このようにして、様々な供給源の較正データおよび/または品質管理データを組み合わせて予測アルゴリズムを生成またはトレーニングすることができる。さらに、較正データおよび/または品質管理データ用のビンを提供することにより、変化する頻度で発生するイベントに対処することを可能にすることができる。
【0101】
図4の例は、色分けされたデータ値のマトリックスとしての、較正データおよび/または品質管理データ52を示す。各フィールドは、特定の較正ルーチンおよび/または品質ルーチンで得られたパラメータを表す。当然のことながら、この特定の表現は純粋に例示的なものであり、本開示の技法が使用されるとき、他の例では異なり得る。
【0102】
図4の例では、予測区間101(これは以下で、より詳細に説明することにする)は複数の重なり合うビンに分割される。特定のビン内に入る予測アルゴリズムの生成およびトレーニングのプロセスで使用される、すべての較正データおよび/または品質管理データは、組合せ値をもたらすよう組み合わされる。このようにして、相異なる予測区間は、予測アルゴリズムの生成およびトレーニング手順を容易にする可能性がある、同じ長さを有することができる。
【0103】
追加的または代替的に、品質管理および/もしくは較正データ、または故障状態の発生に関するデータ(あるいはその両方)は、それらを使用して予測アルゴリズムを生成しトレーニングする前に、フィルタ処理され得る。一例では、利用可能なデータのサブセットのみが、予測アルゴリズムを生成しトレーニングするために使用される。
【0104】
たとえば、故障状態の発生に関するデータは、(たとえば、自動分析装置のサービスデータから取り出された)実際の故障状態の発生の、所定の数の記録を含むことができる。一方、陰性のイベント(すなわち、「正常」動作)の数は、陽性のイベント(故障)の数よりもかなり大きい可能性がある。言い換えれば、大部分の時間、自動分析装置は正常な動作状態にあり得る。それを考慮すると、故障状態の発生に関するデータセットは、(かなり)不均衡になり得る。したがって、自動分析装置の、故障状態に関連するデータ点および正常動作に関連するデータ点に関して、(より)釣合の取れたデータセットを提供するために、データをフィルタ処理することができる。
【0105】
一例では、フィルタ処理技法は、データセット内に含まれる故障状態ごとに、故障状態が発生しなかった時点に関連する複数のデータセットの中から1つのデータセットを選択することを含むことができる。そのデータセットは、たとえば、故障状態が発生しなかった時点に関連する複数のデータセットの中から、無作為にサンプリングすることができる(たとえば、故障状態の前の、所定期間の時点のデータセット)。
【0106】
予測アルゴリズムを生成およびトレーニングするための、品質管理および/または較正データ処理のいくつかの態様が上記で論じられた後、以下の節では、生成およびトレーニングの段階で使用される品質管理および/または較正データの、データ源に関する様々な詳細を含めることとする。
【0107】
一例では、品質管理および/または較正データは、予測アルゴリズムが適用されることになるだろう自動分析装置と所定の特性を共有する、1つまたは複数の自動分析装置から取得することができる。
【0108】
たとえば、その較正データおよび/または品質管理データが予測アルゴリズムを生成およびトレーニングするために使用される、1つまたは複数の自動分析装置は、予測アルゴリズムが適用されるべき自動分析装置と、同じ種類の自動分析装置であり得る(たとえば、予測アルゴリズムが適用されるべき自動分析装置と、同じモデルまたは同じ製品ファミリの自動分析装置)。
【0109】
他の例では、その較正データおよび/または品質管理データが予測アルゴリズムを生成およびトレーニングするために使用される、1つまたは複数の自動分析装置は、予測アルゴリズムが適用されるべき自動分析装置と、所定の構成部品または構成部品群を共有することができる。たとえば、2つの異なる種類の自動分析装置は、試料を分析するための同じ検出モジュールを備えることができる。
【0110】
さらに他の例では、その較正データおよび/または品質管理データが予測アルゴリズムを生成およびトレーニングするために使用される、1つまたは複数の自動分析装置は、予測アルゴリズムが適用されるべき自動分析装置と、所定の機能または機能群を共有することができる。たとえば、自動分析装置は、自動分析装置によって実行することができる特定の分析評価、または分析評価群を共有することができる。
【0111】
概して、これで分かるように、生成およびトレーニング段階で使用される自動分析装置は、予測アルゴリズムが適用されるべき自動分析装置と、いくつかの類似点を有している可能性がある。
【0112】
一例では、その予測アルゴリズムが適用されるべき自動分析装置は、予測アルゴリズムの生成およびトレーニング段階で使用され得る(または自動分析装置は、その段階で使用される自動分析装置のうちの1つであり得る)。しかし、他の例では、予測アルゴリズムが適用されるべき自動分析装置は、その較正データおよび/または品質管理データが、予測アルゴリズムを生成して首を伸ばすために使用される、分析装置群の一部ではないかもしれない。
【0113】
追加的または代替的に、予測アルゴリズムの生成およびトレーニング段階は、予測アルゴリズムの1つまたは複数のパラメータを設定するステップを含むことができる。
図4に示すように、予測アルゴリズムの1つのパラメータは、反応区間102であり得る。反応区間は、予測に使用される較正データおよび/または品質管理データが収集される時間と、故障状態が予測され得る時間とを分離する期間である。反応区間102の長さは、故障状態を防止するための、または故障状態の深刻な結果を回避するための対策を開始するのに十分な時間を残すために、重要であり得る。
【0114】
したがって、予測アルゴリズムを生成することは、品質管理および/または較正データが故障イベントを予測するために使用される期間と、故障イベントとの間の、反応区間102の長さを決定することを含むことができる。
【0115】
しかし他の例では、反応区間は、予測アルゴリズムを適用した結果、取得することができる(たとえば、特定の故障状態は、特定の反応区間を伴う較正データおよび/または品質管理データから予測可能であり得る)。こうした例では、反応区間は、予測アルゴリズムの予測の一部であり得る。
【0116】
さらに、
図4に示すように、予測アルゴリズムを生成することは、その品質管理および/または較正データが自動分析装置の故障イベントを予測するために使用される予測区間101を画定することを含む。さらに、予測区間は、複数の小区間に分割することができ、各小区間内の品質管理および/または較正データは統合される(たとえば、上記で論じたように)。
【0117】
概して、予測区間の長さおよび/または小区間の数は、以下の目的のうちの1つまたは複数を満たすように選択することができる。一方、予測アルゴリズムの予測力が向上するように、予測区間の長さおよび/または小区間の数を選択することができる。たとえば、予測間隔を長くするほど、誤警報の数を減らすことができる。しかし、予測区間を長くするほど、予測アルゴリズムの感度もまた低下する可能性がある。
図4の例では、予測区間は60日に設定されている。ただし、この長さは単に例示的なものであり、本開示の技法が使用されている他の例では異なり得る。
【0118】
図3および
図4と共に、較正データおよび/または品質管理データを処理するための様々な技法を論じてきた。
図1の概略図を考察すると分かるように、実際の予測段階では、予測アルゴリズムの品質管理および/または較正データは、生成段階およびトレーニング段階のときと同様なやり方で使用され得る。したがって、自動分析装置の故障状態を予測するためにトレーニングされた予測アルゴリズムが適用されるとき、生成およびトレーニング段階に関連する前述のデータ処理技法が、予測段階と等しく適用され得る(それぞれの処理技法が、トレーニング段階に固有のものでない限り)。たとえば、較正データおよび/または品質管理データは、予測段階において、トレーニング段階に関連して前述したのと同じやり方で、平均化、正規化、および結合することができる。
【0119】
一例では、生成およびトレーニング段階で決定された予測区間101もまた、予測段階で使用することができる。他の例では、予測区間101の長さは、トレーニング段階と予測段階とで異なり得る。
【0120】
図1および
図5に戻ると、本開示のある例では、予測アルゴリズム1は、更新され得る303、304ことが分かる。たとえば、故障状態の発生に関するデータ7、8を、自動分析装置の動作中に、予測アルゴリズムを更新するために使用することができる15、16。
【0121】
一例では、ある時点で、サービス技術者4が、自動分析装置2に対応しなければならない可能性がある。この訪問から得られたサービスデータ7を使用して、自動分析装置2に適用された予測アルゴリズム1を更新することができる。概して、更新手順は、予測アルゴリズムのトレーニングおよび生成の面に関して、
図3および
図4に関連して前述したのと同じ動作を含むことができる。
【0122】
ある例では、予測アルゴリズム1は、自動分析装置の動作中に、連続的に更新することができる。ある例では、
図1に示すように、予測アルゴリズム1が適用される自動分析装置2の故障状態の発生に関するデータは、予測アルゴリズム1を更新するために使用される。さらに代替的に、他の自動分析装置(たとえば、予測アルゴリズム1が適用される自動分析装置2と、所定の特性を共有する自動分析装置)から得られたデータを使用して、予測アルゴリズム1を更新することができる。
【0123】
一例では、更新された予測アルゴリズムを、定期的に、または遠隔地からの特定のトリガ要素の発生時に、自動分析装置2に提供することができる。
予測技法の例
前節では、予測アルゴリズムを生成しトレーニングすること、および自動分析装置内で予測アルゴリズムを適用して、自動分析装置の故障状態を予測することの、様々な態様について論じてきた。続いて、
図6aおよび
図6bと共に、本開示の技法の適用の具体例、ならびにこの実験的な適用、およびこの適用を評価した結果について論じることにする。この特定の適用事例の特定の態様は、例示目的のためだけに記載されている。残りの開示において論じているように、本開示の技法はまた、他の例において異なって適用され得る。ただし、以下で論じる具体例の様々な態様はまた、本開示の他の箇所に記載された技法のいくつかと組み合わせて適用することもできる。
【0124】
図6aおよび
図6bの例では、予測アルゴリズムを生成する問題は、2項分類問題として定式化されており、ここで初期トレーニングのためのそれぞれのインスタンスは、それぞれの時点での緊急サービス訪問の有/無のような、かかる2値イベントである、目標ラベルを与えられる。
【0125】
イベントを分類する1つのやり方は、次の通りである。緊急サービスの訪問によってマークされた日は、陽性とタグ付けされ、記録に訪問がないいずれの日も、陰性のイベントとして認識される。ただし、サービス訪問が行われるまで記録がないという事実にもかかわらず、機器は、訪問直前の数日不安定な状態の下で動いていると思われ、それはトレーニング手順を混乱させ損なう可能性がある。予想外の故障は通常稀であり、対向するクラスの大きさは不均衡になる可能性があり、この場合、学習アルゴリズムの問題につながる可能性がある(図示する例で使用されるデータセットでは、緊急サービスイベントに対する訪問なし日数の比が、1000を超える)。
【0126】
不安定な条件下での異常な性能を理解し、またトレーニングデータの釣合をとるために、y=+1で示される陽性のインスタンスには、サービスデータ内の緊急サービス訪問のすべての真の記録、および訪問前の2つの時間ビン(以下の段落で定義される)を含める。一方、y=-1で示される陰性のインスタンスは、サービス訪問から少なくとも7日離れた日付から無作為にサンプリングされる。
【0127】
釣合のとれたトレーニングセットを得るために、無作為にサンプリングされた陰性のインスタンスの数は、陽性のインスタンスの数に匹敵するように選択される。
図6aおよび
図6bに図示する例で使用される、較正データおよび品質管理データについて、次に論じることにする。較正データおよび品質管理データは、各自動分析装置についての数千の動作記録からなることができ、各記録は詳細な、特定の時間に実行された1つの動作に固有のものである。いくつかの特性のために、その記録を分析することは困難であり得る。第1に、動作の詳細は、多数の種類の混じった属性(分類別の、または数値的な)によって文書化されている。第2に、データは等間隔の時系列ではなく、これは特に各動作記録が、実行時間を示すタイムスタンプを付与されているが、相異なる動作が、必ずしも等しい時間間隔で実行されるわけではないことを意味する。第3に、動作データであるデータは、操作者が、基礎となる機器の真の状態を表さない、個人的な間違いを犯すことがあるという意味で、ノイズが多い可能性がある。
【0128】
図6aおよび
図6bの例では、較正データおよび品質管理データは、特定の期間にわたって存在する記録を統合することによって前処理され、以下のやり方で陽性のインスタンスについての予測特徴を抽出する。
【0129】
陽性のインスタンスの15日前の反応期間が選択され(故障状態、たとえば予期しない機器の破損の直前の反応から警報までの期間をシミュレーションする)、そして[-60、-1]日の予測区間、すなわち反応区間開始の60日前から1日前までの範囲内の、すべての較正と品質管理の記録をプールする。
【0130】
図6aおよび
図6bの例では、D監視属性が選択されており、各属性について、分類別属性の頻度、ならびに数値的な属性の平均および分散を計算することによって、60日の予測区間からのデータがB変数に組み合わされる。具体的には、予測区間[-60、-1]は、隣り合うビンが半分のサイズずつ横に並んで重なるように、均一なサイズのビンに切断される。較正データのビンのサイズは14日として選択され、その結果例示的な例では、BCal=7のビンが形成され、[-56、-43]、[-49、-36]、[-42、-29]、・・・、[-14、-1]で表され、DCal=11の関連する属性は、この研究で調査中である。品質管理データのビンのサイズは6日として選択され、その結果BQC=19のビンが形成され、[-60、-55]、・・・、[-6、-1]で表され、DQC=3の関連する属性が、この研究で考慮される。最後に、全部でP=BCal×DCal+BQC×DQC=134の予測変数のリストが得られ、特徴ベクトルx∈RPで表される。
【0131】
特に、警報が受け取られなくても、陰性のインスタンスは、同じやり方で処理される。あるインスタンスに対して、あるビン内の較正または品質管理動作が報告されていない場合、対応する特徴値は、他の観測されたインスタンスの中央値によって代入される(学習アルゴリズムを適合させる前に)。
【0132】
予測アルゴリズムの生成について、次に論じることとする。学習アルゴリズムに適合するデータは、D={(xi,yi)}Ni=1であり、ここでNは、相異なる機器から相異なる日に収集されたインスタンスの総数を表す。各インスタンスは、yi∈{+1,-1}、緊急サービス訪問の有/無を表す2値イベントの目標ラベル、およびxi∈RP、イベントの前の機器性能の挙動を表す特徴変数のリストからなる。Dが与えられた場合、目標は、見えない結果を有するインスタンスを、正しく分類する分類指標を取得することである。
【0133】
図6aおよび
図6bの例では、Breimanによって提案されているランダムフォレストアルゴリズム(Machine learning(機械学習)、45(1):5-32頁、2001年において)が、分類問題を解くために選択されている。一連の分類木は、トレーニングデータの相異なるサブセットを使用して構築され、それぞれの木は、見えないインスタンスのためのラベルを個別に予測する。フォレストは、インスタンスが陽性である確率を、個々の木からの陽性の予測の割合によって予測する。これは、機器が、緊急サービス訪問を求めるべきであるという確信を定量化する、0から1の間の数である。最後に、識別しきい値が事前に決定され、予測された確率がしきい値を超える場合、フォレストは、インスタンスを陽性と分類する。起こり得る結果は2つしかないので、別段の指定が無い限り、これ以降識別しきい値は、通常0.5として選択される。
【0134】
実際には、学習アルゴリズムは、RのrandomForestの実装(LiawとWienerによって「Classification and regression by randomforest(ランダムフォレストによる分類と回帰)」R news、2(3):18-22頁、2002年で提案されている)から、組み込まれたデフォルトのパラメータを引き継いでいる。
【0135】
予測アルゴリズムの評価結果は、次の箇所で論じることにする。学習アルゴリズムから構築された予測モデルは、実際の展開の前に、過去のデータを使って評価される。データセットDは、2つの部分に分けられ、一方は、モデルをトレーニングするためのものであり、他方は、基準として、評価スコアを計算することによって、モデルの予測性能を試験するためのものである。特に関心のあるスコアは、以下である。
【0136】
・偽陽性率(FPR:False Positive Rate):特定の識別しきい値設定で、そのための保守が不要である、予測された緊急サービス訪問の数を、訪問なしイベントの総数で割ったもの。すなわち、FPR=FP/(FP+TN)。不必要な訪問に対する支払いをより少なくするために、望ましいモデルは、低いFPRを有する予測を行うべきであることは、特に興味深くあり得る。
【0137】
・真陽性率(TPR:True Positive Rate):特定の識別しきい値設定で、そのための保守が実際に必要である、予測された緊急サービス訪問の数を、緊急サービス訪問の総数で割ったもの。すなわち、TRP=TP/(TP+FN)。TPRがより高いほど、学習モデルは、起ころうとしている故障を検出するための感度がより高くなる。
【0138】
・受信者動作特性曲線の下面積(AUROC:Area under Receiver Operating Characteristic Curve):様々な識別しきい値設定で、FPRに対してTPRをプロットするROC曲線の下の面積。ビジネスニーズに応じた意思決定では、TPRとFPRとの間のトレードオフが一般的であるため、AUROCは概してモデル性能の優れた指標である。スコアは、0と1との間の数値であり、スコアが大きいほど、モデルは、トレードオフを調整するために、より効果的であり得る。
【0139】
・陽性の予測値(PPV:Positive Predictive Value):特定の識別しきい値設定で、そのための保守が不要な、予測された緊急サービス訪問の数を、予測された緊急サービス訪問の総数で割ったもの。すなわちPPV=TP/(TP+FP)。PPVは、予測アルゴリズムによって発生した、いくつの陽性のアラームの数が真の警報であるかということの土台となる。PPVを使って、検出される真の故障の一定レベルの精度を達成するために、より肯定的な予測を認めることにより、予測モデルがどれだけ犠牲を払う必要があるのかが分かる。この研究で採用された2つの評価アプローチは、以下の通り。
【0140】
・k分割交差検証(crossVal:k-fold cross-validation):全体のデータセットDは、(以下の第2の手法とは反対に、時間要因に関係なく)ほぼ等しいサイズの「分割」と呼ばれるk個のばらばらのサブセットに、無作為に分割される。それぞれの分割は、それに対して他の分割でトレーニングされたモデルが評価される、テストセットとして使用され、すべての分割に対して計算された評価スコアは、最終スコアとして平均化される。
【0141】
・予測ホールドアウト検証(prosVal:Prospective hold-out validation):最初に時点Tが決定され、全体のデータセットDが、各イベントのタイムスタンプに従って2つの部分に分割される。評価スコアを計算することによって、モデルはTの前のデータでトレーニングされ、Tの後のデータに対して検証される。この手法は、以前に観測されたデータに基づいて後続のイベントを予測することを考慮しているにすぎず、これが現実に適用されるケースである。
【0142】
較正データおよび品質管理データから、緊急サービス訪問を予測する能力が推定される。この目的のために、数年にわたって多数の臨床分析装置から収集されたデータが使用されている。
【0143】
5分割交差検証については、合計3139の陽性インスタンスおよび合計7034の陰性インスタンスをプールし、その20%は各分割でテストのために無作為に提供されたものである。予測ホールドアウト検証では、2014の陽性インスタンスと5702の陰性インスタンスからなるトレーニングセットと、1383の陽性インスタンスと3342の陰性インスタンスからなる独立したテストセットをプールした。両方の検証手法の混同行列を表1にまとめる。
【0144】
【0145】
図6aに示すように、0.8より大きいAUROCスコアが、交差検証および予測ホールドアウト検証の両方で達成され、これは較正および品質管理性能が機器の状態の重要な指標であるという本研究の動機をしっかりと支持し、また較正および品質管理データから機械学習方法を使って、緊急サービス訪問を予測することが特に有効であることを肯定的に実証している。交差検証手法を使った結果は、わずか1%の偽アラームを維持しながら、緊急サービスコールの21%を(少なくとも)15日までに事前に検出することができ、発生した陽性のアラームのうち91%が、実際に真のアラームであったことを示している。実際、この反応から警告までの期間の長さは、予測精度とビジネス価値との間のより良いトレードオフを調節するために、さらに調整することができる。一方、予測ホールドアウト検証手法を使って、予測モデルが常に過去のデータに基づいてトレーニングされ、将来のデータに対して検証される場合、結果は、わずか1%の真のサービスコールが1%の偽アラームの許容範囲で検出され、陽性のアラームのうちの24%だけが真の関心事であった。
【0146】
図6bのROC曲線は、識別しきい値を調整し、10%の偽コールを大まかに認めることによって、約25%の真の陽性警報を実現できることを示している。
2つの検証手法の間の差異の理由は、おそらく、過去からの較正および品質管理データが、将来のデータと矛盾することがあるためである。化学試薬、較正物質、および管理物質の生産物は、経時的に変化し、以前のバッチを分析することによって新しいバッチの性能パターンを特徴づけることは困難である。交差検証は、トレーニングおよびテストのために時間に沿ってインスタンスを混ぜることにより、データの不均質な表現を回避する一方、予測検証の場合は、必然的に一定量の偽アラームを許容することによってのみ、機器破損での故障を事前により多く特定することができる。
【0147】
さらなる態様
前述の詳細な説明では、自動分析装置の状態を予測するシステムおよび方法の複数の例について論じてきた。しかし、自動分析装置の状態を予測するシステムおよび方法はまた、以下の態様に記載されているように構成され得る。
【0148】
1.生物学的試料を分析するための自動分析装置の故障状態を予測する方法であって、
自動分析装置の故障状態を予測するための予測アルゴリズムを取得するステップであって、予測アルゴリズムは、自動分析装置によって生成された較正データおよび/または品質管理データに基づいて、自動分析装置の故障状態を予測するよう構成されるステップと、
自動分析装置の較正データおよび/または品質管理データを取得するステップと、
自動分析装置の故障状態を予測するために、予測アルゴリズムを使用することによって較正データおよび/または品質管理データを処理するステップと
を含む、方法。
【0149】
2.過去の分析装置のデータに基づいて、予測アルゴリズムを生成するステップをさらに含む、請求項1の方法。
3.過去の分析装置のデータは、自動分析装置と1つまたは複数の特性を共有する、複数の自動分析装置から取り出された過去のデータを含む、態様2の方法。
【0150】
4.過去のデータは、自動分析装置から取り出された過去のデータを含む、態様2または3のいずれか一項の方法。
5.過去のデータは、故障状態の発生に関する過去のデータ、ならびに過去の較正データおよび/または品質管理データを含む、態様2~4のいずれか一項の方法。
【0151】
6.故障状態の発生に関する過去のデータは、自動分析装置のサービスデータを含む、態様5の方法。
7.サービスデータは、技術者による報告から取り出されたデータを含む、態様6の方法。
【0152】
8.サービスデータは、自動分析装置ID、サービス技術者の訪問日、構成部品の消耗情報、および自動分析装置上で実行される作業の説明のうちの、1つまたは複数を含む、態様6または態様7の方法。
【0153】
9.故障状態の発生に関する過去のデータは、自動分析装置によって生成されたエラーに関する情報を含む、前述の態様5~7のいずれか一項の方法。
10.過去の較正データおよび/または品質管理データは、較正イベントまたは品質管理イベントの頻度データを含む、前述の態様5~9のいずれか一項の方法。
【0154】
11.過去の較正データおよび/または品質管理データは、較正イベントまたは品質管理イベント中に測定された信号の分布情報(たとえば、平均値および/または変動値)を含む、前述の態様5~10のいずれか一項の方法。
【0155】
12.過去の較正データおよび/または品質管理データは、較正イベントまたは品質管理イベント中に測定された信号の変化に関するデータを含む、前述の態様5~11のいずれか一項の方法。
【0156】
13.過去の較正データおよび/または品質管理データは、較正頻度、較正曲線の傾きおよび切片、以前の較正の傾きに対する現在の較正の傾きの比率、較正された2重の測定での信号変動、品質管理頻度、および品質管理目標値濃度に対する測定された品質管理濃度の比率、ならびにそれらの変形のうちの1つまたは複数に関するデータを含む、前述の態様10~12のいずれか一項の方法。
【0157】
14.予測アルゴリズムを生成するために、故障状態の発生に関する過去のデータと、過去の較正データおよび/または品質管理データとの間の関係式を見つけるステップをさらに含む、前述の態様5~13のいずれか一項の方法。
【0158】
15.関係式を見つけるステップは、故障状態の発生に関する過去のデータと、過去の較正データおよび/または品質管理データとを相関させるステップを含む、態様14の方法。
【0159】
16.関係式を見つけるステップは、その関係式を見つけるために、故障状態の発生に関する過去のデータ、ならびに過去の較正データおよび/または品質管理データに対して、分類技法を使用するステップを含む、前述の態様14または15のいずれか一項の方法。
【0160】
17.分類技法は、サポートベクトルマシン、ランダムフォレストマシン学習アルゴリズム、ディープラーニングアルゴリズム、ロジスティック回帰技法、(単純)ベイズ技法、勾配ブースティング技法、または線形判別分析を使用する技法の使用を含む、技法のうちの1つまたは複数を含む、態様16の方法。
【0161】
18.予測アルゴリズムを生成するために、2項分類問題を解くステップをさらに含む、前述の態様1~17のいずれか一項の方法。
19.予測アルゴリズムを生成するために、3つ以上のクラスを有する分類問題を解くステップをさらに含む、前述の態様1~17のいずれか一項の方法。
【0162】
20.2項分類問題は、2値イベントとして、所定の時間に発生する故障状態の有無を含む、態様18の方法。
21.故障状態は、自動分析装置への訪問を伴う緊急サービスを必要とする故障状態、自動分析装置の操作者による介入を必要とする故障状態、または自動分析装置の構成部品の故障のうちの1つである、態様20の方法。
【0163】
22.予測アルゴリズムを生成するために、自動分析装置で得られる複数の分析評価にわたる、較正データおよび/または品質管理データを平均化するステップをさらに含む、態様1~21のいずれか一項の方法。
【0164】
23.様々な分析評価の較正データおよび/または品質管理データは、平均化の前に正規化される、態様22の方法。
24.数値的な較正データおよび/または品質管理データについての分布情報(たとえば、平均値または変動情報)を計算するステップと、その計算されたデータに基づいて予測アルゴリズムを生成するステップとをさらに含む、態様1~23のいずれか一項の方法。
【0165】
25.予測アルゴリズムを生成するために、較正データおよび/または品質管理データが所定の期間にわたって統合される、態様1~24のいずれか一項の方法。
26.予測アルゴリズムを生成するステップは、品質管理および/または較正データが故障イベントを予測するために使用される期間と、故障イベントとの間の、所定の反応区間の長さを決定するステップを含む、態様2~25のいずれか一項の方法。
【0166】
27.予測アルゴリズムを生成するステップは、その品質管理および/または較正データが、自動分析装置の故障イベントを予測するために使用される予測区間を画定するステップを含む、態様2~26のいずれか一項の方法。
【0167】
28.予測区間は、複数の小区間に分割され、各小区間内の品質管理および/または較正データが統合される、態様27の方法。
29.較正データおよび/または品質管理データは、態様10~13のいずれか一項における過去の較正データおよび/または品質管理データについて定義されたデータを含む、前述の態様1~28のいずれか一項の方法。
【0168】
30.過去の較正データおよび/または品質管理データを処理するための、前述の態様に記載の方法ステップは、自動分析装置の故障状態を予測するために予測アルゴリズムを使用することによって、較正データおよび/または品質管理データを処理するステップにおいて使用される、前述の態様1~29のいずれか一項の方法。
【0169】
31.自動分析装置が試験管内分析装置であるとき、前述の態様1~30のいずれか一項の方法。
32.品質管理データは、所定量の1種または複数種類の物質を含む液体の配合組成である、前述の態様1~31のいずれか一項の方法。
【0170】
33.較正データは、既知の組成を有する1種または複数種類の基準較正物質に対する応答信号が、応答信号と既知の組成との間の関係式を生成するために、分析装置によって決定される、測定の結果のデータを含む、前述の態様1~32のいずれか一項の方法。
【0171】
34.品質管理データは、自動分析装置が所定の精度の限度内で動作することを確認するために、分析装置によって出力されるべき、既知の目標測定値を有する1種または複数種類の管理材料を試験するときに得られるデータを含む、前述の態様1~33のいずれか一項の方法。
【0172】
35.以下のステップをさらに含む、前述の態様1~34のいずれか一項の方法:
- 既知の組成を有する1種または複数種類の基準較正物質に対する、自動分析装置の応答信号を決定するステップ、
- 応答信号と既知の組成との間の関係式を生成するステップ、
- 前記関係式を較正データ(5;5a)の中に含めるステップ。
【0173】
36.以下のステップをさらに含む、前述の態様1~35のいずれか一項の方法:
- 既知の目標測定値を有する1種または複数種類の1種または複数種類の管理物質に対する、自動分析装置の応答信号を決定するステップ、
- 自動分析装置が、正確性および/または精度の所定の限度内で動作することを確認するステップ、
- 確認するステップの結果を、品質管理データの中に含めるステップ。
【0174】
37.以下をさらに含む、前述の態様1~36のいずれか一項の方法:
追加の、較正データおよび/または品質管理データ、ならびに故障状態の発生に関するデータを使用することによって、予測アルゴリズムを更新するステップ、および
自動分析装置で、更新された予測アルゴリズムを取得するステップ。
【0175】
38.更新動作は、定期的または連続的に実行される、態様37の方法。
39.以下をさらに含む、前述の態様1~38のいずれか一項の方法:
故障状態が発生しそうになることの指標を出力するステップ。
【0176】
40.故障状態が発生しそうになることの指標を出力するステップは、自動分析装置の操作者に対する警告メッセージを生成するステップを含む、態様39の方法。
41.故障状態が発生しそうになることの指標を出力するステップは、自動分析装置の遠隔サービス人員に対する警告メッセージを生成するステップを含む、態様39または態様40の方法。
【0177】
42.分析装置の故障状態を予測するための予測アルゴリズムは、故障状態の予測専用のセンサからのいかなるデータも処理しない、前述の態様1~41のいずれか一項の方法。
【0178】
43.以下をさらに含む、前述の態様1~42のいずれか一項の方法:
複数の自動分析装置の状態に関するデータを収集するステップ、
複数の自動分析装置の状態に関するデータに基づいて、自動分析装置の故障状態を予測するための予測アルゴリズムを生成するステップ。
【0179】
44.自動分析装置の故障状態を予測するための予測アルゴリズムは、その故障状態が予測されるべき自動分析装置と、所定の数の特性を共有する、複数の自動分析装置の状態に関するデータに基づいて生成される、前述の態様1~43のいずれか一項の方法。
【0180】
45.方法は、コンピュータで実施される方法である、前述の態様1~44のいずれか一項の方法。
46.コンピュータシステム上で実行されるときに、コンピュータシステムに、態様1~45のいずれか一項の方法のステップを実行させる命令を格納したコンピュータ可読媒体。
【0181】
47.以下を備える、生物学的試料を分析するための自動分析装置:
試料の1つまたは複数の特性を検出するための検出ユニット、および
コンピュータシステム上で実行されるときに、コンピュータシステムに態様1から45のいずれか一項の方法のステップを実行させる命令を格納したメモリ、および
メモリに格納された命令を実行するように構成されるプロセッサ。
【0182】
コンピュータでの実施態様
プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されるとき、本明細書に含まれる1つまたは複数の実施形態において、本発明による方法を実行するためのコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムについて、さらに開示および提案する。具体的には、コンピュータプログラムは、コンピュータ可読データ記憶媒体に格納することができる。したがって、具体的には、本明細書で開示されている方法ステップのうちの1つ、2つ以上、またはすべてでさえも、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって、好ましくはコンピュータプログラムを使用することによって実行することができる。
【0183】
プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されるとき、本明細書に含まれる1つまたは複数の実施形態において、本発明による方法を実行するためのプログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品について、さらに開示および提案する。具体的には、プログラムコード手段は、コンピュータ可読データ記憶媒体に格納することができる。
【0184】
コンピュータまたはコンピュータネットワークの作業メモリまたはメインメモリ内など、コンピュータまたはコンピュータネットワーク内にロードした後に、本明細書に開示されている1つまたは複数の実施形態による方法を実行し得る、それに格納されたデータ構造体を有するデータ記憶媒体について、さらに開示および提案する。
【0185】
プログラムがコンピュータまたはコンピュータネットワーク上で実行されるときに、本明細書に開示されている1つまたは複数の実施形態による方法を実行するために、機械可読記憶媒体に格納された、プログラムコード手段を有するコンピュータプログラム製品について、さらに開示および提案する。本明細書で使用されるとき、コンピュータプログラム製品は、取引可能な製品としてのプログラムを指す。製品は、概して、紙の形式など任意の形式で、またはコンピュータ可読データ記憶媒体上に存在し得る。具体的には、コンピュータプログラム製品を、データネットワークを介して配布することができる。
【0186】
本明細書に開示された1つまたは複数の実施形態による方法を実行するための、コンピュータシステムまたはコンピュータネットワークによって読み取り可能な命令を含む、変調されたデータ信号について、さらに開示および提案する。
【0187】
本発明のコンピュータでの実施態様を参照すると、本明細書で開示されている1つまたは複数の実施形態による方法の、1つまたは複数の方法ステップ、またはすべての方法ステップさえも、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって、実行することができる。したがって、概ね、データの提供および/または操作を含む任意の方法ステップは、コンピュータまたはコンピュータネットワークを使用することによって実行することができる。概してこうした方法ステップは通常、試料を供給することなど、手作業を必要とする方法ステップ、および/または測定を実行することの特定の態様を除いて、任意の方法ステップを含むことができる。
【0188】
少なくとも1つのプロセッサを備えるコンピュータまたはコンピュータネットワークについて、さらに開示および提案する。ここでプロセッサは、本明細書に記載される実施形態のうちの1つによる方法を実行するよう構成される。
【0189】
データ構造体がコンピュータ上で実行されている間に、本明細書に記載された実施形態のうちの1つによる方法を実行するよう構成された、コンピュータへのロード可能なデータ構造体について、さらに開示および提案する。
【0190】
記憶媒体について、さらに開示および提案する。ここでデータ構造体は、記憶媒体に格納され、またデータ構造体は、コンピュータまたはコンピュータネットワークの主記憶装置または作業記憶装置内にロードされた後に、本明細書に記載される実施形態のうちの1つによる方法を実行するよう構成される。