(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】心不全を処置するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/18 20060101AFI20220921BHJP
A61P 9/04 20060101ALI20220921BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20220921BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220921BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220921BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20220921BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20220921BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220921BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220921BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20220921BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20220921BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
A61K38/18 ZNA
A61P9/04
A61P9/10
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
C12N15/85 Z
C12P21/02 C
C12N5/10
C07K14/47
C07K16/00
C07K19/00
(21)【出願番号】P 2019542466
(86)(22)【出願日】2018-02-05
(86)【国際出願番号】 US2018016794
(87)【国際公開番号】W WO2018144968
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2021-02-05
(32)【優先日】2017-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509125475
【氏名又は名称】アクセルロン ファーマ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】リー, ガン
(72)【発明者】
【氏名】グリンバーグ, アシャ
(72)【発明者】
【氏名】サコ, ダイアン
【審査官】大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0024783(US,A1)
【文献】国際公開第2016/005756(WO,A1)
【文献】特表2010-529041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K、A61P、C12N、C12P、C07K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者におけ
る心不全
または心筋梗塞の処置、予防、またはその重症度の低減に使用するための組成物であって、有効量のBMP10プロペプチドポリペプチドを含
み、前記BMP10プロペプチドポリペプチドが、配列番号85のアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含む、組成物。
【請求項2】
前記BMP10プロペプチドポリペプチドが、心筋梗塞後に前記患者に投与されるものである、請求項
1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記患者が、左心室収縮期機能不全を有する、請求項1
または2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記患者が、≦40%の駆出率を有する、請求項1から
3のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記患者が、左心室機能不全に起因する心不全、正常駆出率心不全、大動脈弁狭窄症心不全、急性心不全、慢性心不全、うっ血性心不全、先天性心不全、代償性心不全、非代償性心不全、拡張期心不全、収縮期心不全、右心(室)不全、左心(室)不全、前方心不全、後方心不全、高拍出性心不全、低拍出性心不全および心筋浮腫からなる群から選択される1つまたは複数の型の心不全を有する、請求項1から
4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記使用のための組成物が
さらに、呼吸困難、起座呼吸、発作性夜間呼吸困難、疲労、体液貯留、肺うっ血、浮腫、末梢性浮腫、狭心症、高血圧、不整脈、心室性不整脈、心筋症、心肥大、腎血流低減、大動脈弁狭窄症、腎機能不全
、心リモデリング、心線維症、心高血圧、心壁ストレス、心炎症、心圧負荷、心容量負荷、脳卒中、心腔拡張、心室真球度の増加、間質性線維症、血管周囲線維症、心筋細胞肥大、心臓喘息、夜間多尿症、腹水貯留、うっ血性肝障害、凝固障害、急性虚血傷害、再灌流傷害、左心室機能の機能障害、および右心室機能の機能障害からなる群から選択される1つまたは複数の合併症を処置する、予防する、またはその重症度を低減させる、請求項1から
5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記BMP10プロペプチド
ポリペプチドが
、
配列番号85のアミノ酸配列に対して少なくと
も91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチ
ド
である、請求項
1から
6のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記
BMP10プロペプチドポリペプチ
ドが、BMP10および/またはBMP9に結合する、かつ/または前記BMP10および/またはBMP9を阻害する、請求項1から
7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記
BMP10プロペプチドポリペプチドがホモダイマーである、請求項
1から
8のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2017年2月6日に出願された米国仮出願番号第62/455,266号からの優先権の利益を主張している。前述の出願の明細書は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
米国単独で、5百万人を超える人々が、心不全に罹患していると推定されている。American Heart Associationからの統計も、毎年約550,000人の割合で心不全の新たな症例が診断されていることを示唆している。新たに診断された患者のうち、50パーセントは、最初の診断から5年以内に死亡する可能性が高い。もちろん、これらの数は、同じく心不全に罹患している他国の患者数を数に入れていない。これらの数を考慮すると、心不全がヒトにとっての顕著な危機であることは明らかである。
【0003】
心不全は、心臓が血液を体中に循環させる能力の低減によって一部特徴付けられる状態である。典型的には、根底にある疾患、例えば、高血圧症(例えば、高血圧)、動脈の詰まり(例えば、冠動脈疾患)、心臓欠損(例えば、心筋症または心臓弁膜症)またはいくつかの他の問題(例えば、糖尿病、甲状腺機能亢進症またはアルコール乱用)が、時間と共に、循環の減少をもたらすことになる。心臓があまり効率的に働かないので、心臓が血液を循環させる能力が減少し、身体の酸素要求が満たされない。効率の減少を補償するために時間と共に心臓がより激しく働くので、心筋が肥大する傾向がある。
【0004】
処置は、典型的には、例えば、アンギオテンシン変換(ACE)酵素阻害剤、利尿薬、ベータ-ブロッカーを含むいくつかの異なる医薬品、および外科的手順の使用を含む。これらの処置は、心不全と関連するいくつかの症状を改善できるが、多くが種々の副作用と関連し、心不全の複数の所見を処置するには有効性が限定的であるので、不完全である。心不全に対する唯一の永続的な処置は、心臓移植である。結果的に、心不全の処置のためのさらなる治療薬が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
一部、本明細書に提示されるデータは、BMPアンタゴニスト(阻害剤)が心不全を処置するために使用できることを実証する。例えば、可溶性BMP10プロペプチド(BMP10pro)ポリペプチドは、心肥大、心リモデリングおよび心線維症を予防するため、またはその重症度を低減させるため、ならびに横行大動脈縮窄術(TAC)心不全モデルにおいて心機能を改善するために使用できることが示された。さらに、BMP10pro処置は、心不全患者の生存時間を増加させた。さらなる研究では、BMP10proポリペプチドは、心筋梗塞(MI)心不全モデルにおいて心肥大、心リモデリングおよび心線維症を予防すること、またはその重症度を低減させること、ならびにこれらの患者において生存時間を増加させることが示された。結合研究は、BMP10proポリペプチドが高い親和性を有し、BMP10の活性をアンタゴナイズできることを実証した。さらに、本開示のデータは、BMP10proポリペプチドが、高い親和性でBMP9、BMP6およびBMP3bに結合し、より低い程度でBMP5に結合することを示している。さらに、本明細書に記載される実験は、可溶性エンドグリンポリペプチドが心不全を処置するために使用され得ることを実証している。例えば、エンドグリンポリペプチドによる処置は、TAC心不全モデルにおいて、心肥大の重症度を低減させ、心機能および心線維症を低減させ、ならびにMI心不全モデルにおいて、心肥大、心リモデリングの重症度を低減させ、心機能および心線維症を低減させた。さらに、エンドグリンポリペプチドによる処置は、TACおよびMIの両方の心不全モデルにおいて、患者の生存時間を増加させた。さらに、本開示のデータは、エンドグリンポリペプチドが、高い親和性でBMP9およびBMP10に結合することを示している。したがって、本開示は、BMPシグナル伝達(例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3bおよびBMP5のうち1種または複数種種によるシグナル伝達)のアンタゴニストが、心不全を処置するために使用され得ることを証明する。BMP10proおよびエンドグリンポリペプチドは、BMPアンタゴニズム以外の機構を介して心不全に影響を与える可能性があるが、それにもかかわらず、本開示は、望ましい治療剤が、BMPシグナル伝達アンタゴニズム活性に基づいて選択され得ることを実証している。したがって、一部の実施形態では、本開示は、例えば、1種または複数種種のBMPリガンド、特に、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3bおよびBMP5のうち1種または複数種種を阻害するアンタゴニスト;1種または複数種種のBMP相互作用性I型受容体、II型受容体または共受容体(例えば、ALK1、ActRIIA、ActRIIB、BMPRIIおよびエンドグリン)を阻害するアンタゴニスト;ならびに1種または複数種種の下流シグナル伝達成分(例えば、Smadタンパク質、例えば、Smad2および3)を阻害するアンタゴニストを含む、心不全を処置するための種々のBMPシグナル伝達アンタゴニストを使用するための方法を提供する。本明細書で使用する場合、かかるシグナル伝達アンタゴニストは、「BMPアンタゴニスト」または「BMP阻害剤」と集合的に呼ばれる。したがって、本開示は、一部、心不全を処置するため、特に、心不全の1つまたは複数の合併症(例えば、肥大、心リモデリング、線維症、低減された心機能)を予防するため、またはその重症度を低減させるため、ならびに1種または複数種種の心合併症(事象)による死亡のリスクを低減させるための、BMPアンタゴニスト組成物および方法を提供する。本開示の方法および使用に従って使用されるBMPアンタゴニストには、例えば、リガンドトラップ(例えば、可溶性ActRIIA、ActRIIB、ALK1およびエンドグリンポリペプチド)、抗体アンタゴニスト、小分子アンタゴニストおよびヌクレオチドアンタゴニストが含まれる。必要に応じて、BMPアンタゴニストは、心不全を処置するための1種または複数種種の支持療法および/またはさらなる活性薬剤と組み合わせて使用され得る。
【0006】
ある特定の態様では、本開示は、心不全を有する患者の死亡のリスクを低減させる(生存を増加させる)方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含む方法に関する。一部の実施形態では、患者の死亡のリスクは、任意の原因による(総死亡率)。一部の実施形態では、患者の死亡のリスクは、心血管事象(合併症)による。一部の実施形態では、心血管事象は、心筋梗塞、脳卒中、狭心症、不整脈、体液貯留、および心不全の進行のうち1つまたは複数[例えば、New York Heart Association(NYHA)によって分類されるクラス進行、またはAmerican College of Cardiology/American Heart Associationワーキンググループ(AAC)によって分類されるステージ進行]を含む。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、心筋梗塞後に患者に投与される。一部の実施形態では、患者は、左心室収縮期機能不全を有する。一部の実施形態では、本開示は、心不全を有する患者の死亡のリスクを低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含み、BMPアンタゴニストが、心筋梗塞後に投与される、方法に関する。一部の実施形態では、本開示は、心不全を有する患者の死亡のリスクを低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含み、BMPアンタゴニストが、心筋梗塞後に投与され、患者が、左心室収縮期機能不全を有する、方法に関する。一部の実施形態では、患者は、≦40%の駆出率を有する。一部の実施形態では、患者は、≦35%の駆出率を有する。一部の実施形態では、本開示は、心不全を有する患者の死亡のリスクを低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含み、BMPアンタゴニストが、心筋梗塞後に投与され、患者が、≦40%の駆出率(例えば、≦35%の駆出率)で、左心室収縮期機能不全を有する、方法に関する。一部の実施形態では、患者は、左心室機能不全に起因する心不全、正常駆出率心不全、急性心不全、慢性心不全、うっ血性心不全、先天性心不全、代償性心不全、非代償性心不全、拡張期心不全、収縮期心不全、右心(室)不全、左心(室)不全、前方心不全、後方心不全、高拍出性心不全、低拍出性心不全および心筋浮腫からなる群から選択される1つまたは複数の型の心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、体高血圧、肺高血圧、糖尿病、腎臓(腎)不全(例えば、急性または慢性腎不全)、冠動脈疾患、高血圧、左心室機能不全、心臓弁疾患、先天性心臓欠損、急性虚血傷害、再灌流傷害、心リモデリング心膜障害、心筋障害、大血管障害および心内膜障害からなる群から選択される1つまたは複数の状態を有する。一部の実施形態では、患者は、New York Heart Association(NYHA)機能分類に従うと少なくともクラスIの心不全(クラスI、クラスII、クラスIIIまたはクラスIV)を有する。一部の実施形態では、患者は、AAC機能分類に従うと少なくともステージAの心不全(ステージA、ステージB、ステージCまたはステージD)を有する。一部の実施形態では、患者に、心不全または心不全の1つもしくは複数の合併症を処置する、予防する、またはその重症度を低減させるための1種または複数種種のさらなる活性薬剤または支持療法[例えば、アドレナリンブロッカー(アルファ-ブロッカーおよびベータ-ブロッカー)、中枢作用性アルファ-アゴニスト、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシン受容体ブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、陽性変力物質(positive inotrope)、血管拡張薬、ベンゾジアゼピン、レニン阻害剤、抗血栓剤、利尿薬、ペースメーカー、インプラント可能な心除細動器、心収縮力モジュレーション、心再同期治療、補助循環装置、両心室再同期治療および心臓移植]がさらに投与される。
【0007】
ある特定の態様では、本開示は、心不全を有する患者の入院のリスクを低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含む方法に関する。一部の実施形態では、患者の入院のリスクは、任意の原因による(総死亡率)。一部の実施形態では、患者の死亡の入院は、心血管事象(合併症)による。一部の実施形態では、心血管事象は、心筋梗塞、脳卒中、狭心症、不整脈、体液貯留、および心不全の進行のうち1つまたは複数[例えば、NYHAによって分類されるクラス進行またはAACによって分類されるステージ進行]を含む。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、心筋梗塞後に患者に投与される。一部の実施形態では、患者は、左心室収縮期機能不全を有する。一部の実施形態では、本開示は、心不全を有する患者の入院のリスクを低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含み、BMPアンタゴニストが、心筋梗塞後に投与される、方法に関する。一部の実施形態では、本開示は、心不全を有する患者の入院のリスクを低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含み、BMPアンタゴニストが、心筋梗塞後に投与され、患者が、左心室収縮期機能不全を有する、方法に関する。一部の実施形態では、患者は、≦40%の駆出率を有する。一部の実施形態では、患者は、≦35%の駆出率を有する。一部の実施形態では、本開示は、心不全を有する患者の入院のリスクを低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含み、BMPアンタゴニストが、心筋梗塞後に投与され、患者が、≦40%の駆出率(例えば、≦35%の駆出率)で、左心室収縮期機能不全を有する、方法に関する。一部の実施形態では、患者は、左心室機能不全に起因する心不全、正常駆出率心不全、急性心不全、慢性心不全、うっ血性心不全、先天性心不全、代償性心不全、非代償性心不全、拡張期心不全、収縮期心不全、右心(室)不全、左心(室)不全、前方心不全、後方心不全、高拍出性心不全、低拍出性心不全および心筋浮腫からなる群から選択される1つまたは複数の型の心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、体高血圧、肺高血圧、糖尿病、腎臓(腎)不全(例えば、急性または慢性腎不全)、冠動脈疾患、高血圧、左心室機能不全、心臓弁疾患、先天性心臓欠損、急性虚血傷害、再灌流傷害、心リモデリング心膜障害、心筋障害、大血管障害および心内膜障害からなる群から選択される1つまたは複数の状態を有する。一部の実施形態では、患者は、New York Heart Association(NYHA)機能分類に従うとクラスIの心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、New York Heart Association(NYHA)機能分類に従うと少なくともクラスIの心不全(クラスI、クラスII、クラスIIIまたはクラスIV)を有する。一部の実施形態では、患者は、American College of Cardiology/American Heart Associationワーキンググループ(AAC)機能分類に従うと少なくともステージAの心不全(ステージA、ステージB、ステージCまたはステージD)を有する。一部の実施形態では、患者に、心不全または心不全の1つもしくは複数の合併症を処置する、予防する、またはその重症度を低減させるための1種または複数種種のさらなる活性薬剤または支持療法[例えば、アドレナリンブロッカー(アルファ-ブロッカーおよびベータ-ブロッカー)、中枢作用性アルファ-アゴニスト、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシン受容体ブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、陽性変力物質、血管拡張薬、ベンゾジアゼピン、レニン阻害剤、抗血栓剤、利尿薬、ペースメーカー、インプラント可能な心除細動器、心収縮力モジュレーション、心再同期治療、補助循環装置、両心室再同期治療および心臓移植]がさらに投与される。
【0008】
ある特定の態様では、本開示は、患者において心不全を改善する、またはその進行を低減させる(遅延させる)方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含む方法に関する。一部の実施形態では、患者は、New York Heart Association(NYHA)機能分類に従うとクラスIの心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、New York Heart Association(NYHA)機能分類に従うとクラスIIの心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、New York Heart Association(NYHA)機能分類に従うとクラスIIIの心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、New York Heart Association(NYHA)機能分類に従うとクラスIVの心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、New York Heart Association(NYHA)機能分類に従うとクラスIIまたはIIIの心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、New York Heart Association(NYHA)機能分類に従うとクラスIIIまたはIVの心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、New York Heart Association(NYHA)機能分類に従うとクラスII、IIIまたはIVの心不全を有する。一部の実施形態では、この方法は、患者の、NYHA機能分類システムに従う心不全スコアを、少なくとも1クラス改善する(例えば、クラスIVの心不全からクラスIIIの心不全への、クラスIVの心不全からクラスIIの心不全への、クラスIVの心不全からクラスIの心不全への、ステージIIIの心不全からステージIIの心不全への、ステージIIIの心不全からステージIの心不全への、またはクラスIIの心不全からクラスIの心不全への改善)。一部の実施形態では、この方法は、患者の、NYHA機能分類システムに従う心不全スコアの進行を、少なくとも1クラス分、低減させる(例えば、クラスIの心不全からクラスIIの心不全への進行を予防するもしくは遅延させる、クラスIの心不全からクラスIIIの心不全への進行を遅延させる、クラスIの心不全からクラスIVの心不全への進行を遅延させる、クラスIIの心不全からクラスIIIの心不全への進行を遅延させる、クラスIIの心不全からクラスIVの心不全への進行を遅延させる、またはクラスIIIの心不全からクラスIVの心不全への進行を遅延させる)。一部の実施形態では、患者は、American College of Cardiology/American Heart Associationワーキンググループ(AAC)機能分類に従うとステージAの心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、American College of Cardiology/American Heart Associationワーキンググループ(AAC)機能分類に従うとステージBの心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、American College of Cardiology/American Heart Associationワーキンググループ(AAC)機能分類に従うとステージCの心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、American College of Cardiology/American Heart Associationワーキンググループ(AAC)機能分類に従うとステージDの心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、American College of Cardiology/American Heart Associationワーキンググループ(AAC)機能分類に従うとステージBまたはCの心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、American College of Cardiology/American Heart Associationワーキンググループ(AAC)機能分類に従うとステージCまたはDの心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、American College of Cardiology/American Heart Associationワーキンググループ(AAC)機能分類に従うとステージB、CまたはDの心不全を有する。一部の実施形態では、この方法は、患者の、ACC機能分類システムに従う心不全スコアを、少なくとも1ステージ改善する(例えば、ステージDの心不全からステージCの心不全への、ステージDの心不全からステージBの心不全への、ステージDの心不全からステージAの心不全への、ステージCの心不全からステージBの心不全への、ステージCの心不全からステージAの心不全への、またはステージBの心不全からステージAの心不全への改善)。一部の実施形態では、この方法は、患者の、ACC機能分類システムに従う心不全スコアの進行を、少なくとも1ステージ分、低減させる(例えば、ステージAの心不全からステージBの心不全への進行を予防するもしくは遅延させる、ステージAの心不全からステージCの心不全への進行を遅延させる、ステージAの心不全からステージDの心不全への進行を遅延させる、ステージBの心不全からステージCの心不全への進行を遅延させる、ステージBの心不全からステージDの心不全への進行を遅延させる、またはステージCの心不全からステージDの心不全への進行を遅延させる)。一部の実施形態では、患者は、以前に心筋梗塞を有した。一部の実施形態では、患者は、左心室収縮期機能不全を有する。一部の実施形態では、患者は、≦40%の駆出率を有する。一部の実施形態では、患者は、≦35%の駆出率を有する。一部の実施形態では、患者は、左心室機能不全に起因する心不全、正常駆出率心不全、急性心不全、慢性心不全、うっ血性心不全、先天性心不全、代償性心不全、非代償性心不全、拡張期心不全、収縮期心不全、右心(室)不全、左心(室)不全、前方心不全、後方心不全、高拍出性心不全、低拍出性心不全および心筋浮腫からなる群から選択される1つまたは複数の型の心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、体高血圧、肺高血圧、糖尿病、腎臓(腎)不全(例えば、急性または慢性腎不全)、冠動脈疾患、高血圧、左心室機能不全、心臓弁疾患、先天性心臓欠損、急性虚血傷害、再灌流傷害、心リモデリング心膜障害、心筋障害、大血管障害および心内膜障害からなる群から選択される1つまたは複数の状態を有する。一部の実施形態では、患者に、心不全または心不全の1つもしくは複数の合併症を処置する、予防する、またはその重症度を低減させるための1種または複数種種のさらなる活性薬剤または支持療法[例えば、アドレナリンブロッカー(アルファ-ブロッカーおよびベータ-ブロッカー)、中枢作用性アルファ-アゴニスト、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシン受容体ブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、陽性変力物質、血管拡張薬、ベンゾジアゼピン、レニン阻害剤、抗血栓剤、利尿薬、ペースメーカー、インプラント可能な心除細動器、心収縮力モジュレーション、心再同期治療、補助循環装置、両心室再同期治療および心臓移植]がさらに投与される。
【0009】
一部の実施形態では、本開示は、患者において心血管事象(合併症)の発生率を低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含む方法に関する。一部の実施形態では、心血管事象は、心筋梗塞、脳卒中、狭心症、不整脈、体液貯留、心不全の進行のうち1つまたは複数である。一部の実施形態では、心血管事象は、呼吸困難、起座呼吸、発作性夜間呼吸困難、疲労、体液貯留、肺うっ血、浮腫、末梢性浮腫、狭心症、高血圧、不整脈、心室性不整脈、心筋症、心肥大、腎血流低減、腎機能不全、心筋梗塞症、心リモデリング、心線維症、心高血圧、心壁ストレス(cardiac wall stress)、心炎症、心圧負荷、心容量負荷、脳卒中、心腔拡張、心室真球度(ventricular sphericity)の増加、間質性線維症、血管周囲線維症、心筋細胞肥大、心臓喘息、夜間多尿症、腹水貯留(ascities)、うっ血性肝障害、凝固障害、急性虚血傷害、再灌流傷害、左心室機能の機能障害、および右心室機能の機能障害のうち1つまたは複数である。一部の実施形態では、心血管事象は、患者の入院を生じることになる。患者が心血管事象に起因して入院すべきかどうかの決定は、当業者(例えば、医師、特に救急医および心臓病専門医)によって決定され得る。一部の実施形態では、患者は、New York Heart Association(NYHA)機能分類に従うと少なくともクラスIの心不全(クラスI、クラスII、クラスIIIまたはクラスIV)を有する。一部の実施形態では、患者は、American College of Cardiology/American Heart Associationワーキンググループ(AAC)機能分類に従うと少なくともステージAの心不全(ステージA、ステージB、ステージCまたはステージD)を有する。一部の実施形態では、患者は、心線維症を有する。一部の実施形態では、患者は、心肥大を有する。一部の実施形態では、患者は、心リモデリングを有する。一部の実施形態では、患者は、心機能不全(例えば、≦40%または≦35%の駆出率)を有する。一部の実施形態では、患者は高血圧である。一部の実施形態では、患者に、心不全または心不全の1つもしくは複数の合併症を処置する、予防する、またはその重症度を低減させるための1種または複数種種のさらなる活性薬剤または支持療法[例えば、アドレナリンブロッカー(アルファ-ブロッカーおよびベータ-ブロッカー)、中枢作用性アルファ-アゴニスト、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシン受容体ブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、陽性変力物質、血管拡張薬、ベンゾジアゼピン、レニン阻害剤、抗血栓剤、利尿薬、ペースメーカー、インプラント可能な心除細動器、心収縮力モジュレーション、心再同期治療、補助循環装置、両心室再同期治療および心臓移植]がさらに投与される。
【0010】
一部の実施形態では、本開示は、患者において心線維症を処置する、予防する、またはその重症度を低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含む方法に関する。一部の実施形態では、患者は、心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、左心室機能不全に起因する心不全、正常駆出率心不全、急性心不全、慢性心不全、うっ血性心不全、先天性心不全、代償性心不全、非代償性心不全、拡張期心不全、収縮期心不全、右心(室)不全、左心(室)不全、前方心不全、後方心不全、高拍出性心不全、低拍出性心不全および心筋浮腫からなる群から選択される1つまたは複数の型の心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、New York Heart Association(NYHA)機能分類に従うと少なくともクラスIの心不全(クラスI、クラスII、クラスIIIまたはクラスIV)を有する。一部の実施形態では、患者は、American College of Cardiology/American Heart Associationワーキンググループ(AAC)機能分類に従うと少なくともステージAの心不全(ステージA、ステージB、ステージCまたはステージD)を有する。一部の実施形態では、患者は、以前に心筋梗塞を有した。一部の実施形態では、患者は、左心室収縮期機能不全を有する。一部の実施形態では、患者は、以前に心筋梗塞を有した。一部の実施形態では、患者は、左心室収縮期機能不全を有する。一部の実施形態では、患者は、≦40%の駆出率を有する。一部の実施形態では、患者は、≦35%の駆出率を有する。一部の実施形態では、患者に、心不全または心不全の1つもしくは複数の合併症を処置する、予防する、またはその重症度を低減させるための1種または複数種種のさらなる活性薬剤または支持療法[例えば、アドレナリンブロッカー(アルファ-ブロッカーおよびベータ-ブロッカー)、中枢作用性アルファ-アゴニスト、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシン受容体ブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、陽性変力物質、血管拡張薬、ベンゾジアゼピン、レニン阻害剤、抗血栓剤、利尿薬、ペースメーカー、インプラント可能な心除細動器、心収縮力モジュレーション、心再同期治療、補助循環装置、両心室再同期治療および心臓移植]がさらに投与される。
【0011】
一部の実施形態では、本開示は、患者において心肥大を処置する、予防する、またはその重症度を低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含む方法に関する。一部の実施形態では、心肥大は求心性肥大である。一部の実施形態では、心肥大は遠心性肥大である。一部の実施形態では、患者は、求心性肥大および遠心性肥大の両方を有する。一部の実施形態では、患者は、心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、左心室機能不全に起因する心不全、正常駆出率心不全、急性心不全、慢性心不全、うっ血性心不全、先天性心不全、代償性心不全、非代償性心不全、拡張期心不全、収縮期心不全、右心(室)不全、左心(室)不全、前方心不全、後方心不全、高拍出性心不全、低拍出性心不全および心筋浮腫からなる群から選択される1つまたは複数の型の心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、New York Heart Association(NYHA)機能分類に従うと少なくともクラスIの心不全(クラスI、クラスII、クラスIIIまたはクラスIV)を有する。一部の実施形態では、患者は、American College of Cardiology/American Heart Associationワーキンググループ(AAC)機能分類に従うと少なくともステージAの心不全(ステージA、ステージB、ステージCまたはステージD)を有する。一部の実施形態では、患者は、以前に心筋梗塞を有した。一部の実施形態では、患者は、左心室収縮期機能不全を有する。一部の実施形態では、患者は、以前に心筋梗塞を有した。一部の実施形態では、患者は、左心室収縮期機能不全を有する。一部の実施形態では、患者は、≦40%の駆出率を有する。一部の実施形態では、患者は、≦35%の駆出率を有する。一部の実施形態では、患者に、心不全または心不全の1つもしくは複数の合併症を処置する、予防する、またはその重症度を低減させるための1種または複数種種のさらなる活性薬剤または支持療法[例えば、アドレナリンブロッカー(アルファ-ブロッカーおよびベータ-ブロッカー)、中枢作用性アルファ-アゴニスト、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシン受容体ブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、陽性変力物質、血管拡張薬、ベンゾジアゼピン、レニン阻害剤、抗血栓剤、利尿薬、ペースメーカー、インプラント可能な心除細動器、心収縮力モジュレーション、心再同期治療、補助循環装置、両心室再同期治療および心臓移植]がさらに投与される。
【0012】
一部の実施形態では、本開示は、患者において心リモデリングを処置する、予防する、またはその重症度を低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含む方法に関する。一部の実施形態では、心リモデリングは心室リモデリングである。一部の実施形態では、心リモデリングは心室拡張である。一部の実施形態では、この方法は、心室中隔リモデリングを減少させる。一部の実施形態では、この方法は、心室中隔拡張終期を減少させる。一部の実施形態では、この方法は、後壁リモデリングを減少させる。一部の実施形態では、この方法は、後壁拡張終期を減少させる。一部の実施形態では、患者は、心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、左心室機能不全に起因する心不全、正常駆出率心不全、急性心不全、慢性心不全、うっ血性心不全、先天性心不全、代償性心不全、非代償性心不全、拡張期心不全、収縮期心不全、右心(室)不全、左心(室)不全、前方心不全、後方心不全、高拍出性心不全、低拍出性心不全および心筋浮腫からなる群から選択される1つまたは複数の型の心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、New York Heart Association(NYHA)機能分類に従うと少なくともクラスIの心不全(クラスI、クラスII、クラスIIIまたはクラスIV)を有する。一部の実施形態では、患者は、American College of Cardiology/American Heart Associationワーキンググループ(AAC)機能分類に従うと少なくともステージAの心不全(ステージA、ステージB、ステージCまたはステージD)を有する。一部の実施形態では、患者は、以前に心筋梗塞を有した。一部の実施形態では、患者は、左心室収縮期機能不全を有する。一部の実施形態では、患者は、以前に心筋梗塞を有した。一部の実施形態では、患者は、左心室収縮期機能不全を有する。一部の実施形態では、患者は、≦40%の駆出率を有する。一部の実施形態では、患者は、≦35%の駆出率を有する。一部の実施形態では、患者に、心不全または心不全の1つもしくは複数の合併症を処置する、予防する、またはその重症度を低減させるための1種または複数種種のさらなる活性薬剤または支持療法[例えば、アドレナリンブロッカー(アルファ-ブロッカーおよびベータ-ブロッカー)、中枢作用性アルファ-アゴニスト、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシン受容体ブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、陽性変力物質、血管拡張薬、ベンゾジアゼピン、レニン阻害剤、抗血栓剤、利尿薬、ペースメーカー、インプラント可能な心除細動器、心収縮力モジュレーション、心再同期治療、補助循環装置、両心室再同期治療および心臓移植]がさらに投与される。
【0013】
一部の実施形態では、本開示は、患者において心機能不全を処置する、予防する、またはその重症度を低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含む方法に関する。一部の実施形態では、この方法は、心駆出率を増加させる。一部の実施形態では、患者は、≦40%の駆出率を有する。一部の実施形態では、患者は、≦35%の駆出率を有する。一部の実施形態では、この方法は、心駆出率を、少なくとも5%(例えば、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、65%またはそれよりも多く)増加させる。一部の実施形態では、この方法は、等容弛緩時間を減少させる。一部の実施形態では、この方法は、等容弛緩時間を、少なくとも2ms(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20msまたはそれよりも多く)減少させる。一部の実施形態では、この方法は、短縮率(fractional shorting)を増加させる。一部の実施形態では、この方法は、短縮率を、少なくとも5%(例えば、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%またはそれよりも多く)増加させる。一部の実施形態では、患者は、心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、左心室機能不全に起因する心不全、正常駆出率心不全、急性心不全、慢性心不全、うっ血性心不全、先天性心不全、代償性心不全、非代償性心不全、拡張期心不全、収縮期心不全、右心(室)不全、左心(室)不全、前方心不全、後方心不全、高拍出性心不全、低拍出性心不全および心筋浮腫からなる群から選択される1つまたは複数の型の心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、New York Heart Association(NYHA)機能分類に従うと少なくともクラスIの心不全(クラスI、クラスII、クラスIIIまたはクラスIV)を有する。一部の実施形態では、患者は、American College of Cardiology/American Heart Associationワーキンググループ(AAC)機能分類に従うと少なくともステージAの心不全(ステージA、ステージB、ステージCまたはステージD)を有する。一部の実施形態では、患者は、以前に心筋梗塞を有した。一部の実施形態では、患者は、左心室収縮期機能不全を有する。一部の実施形態では、患者は、以前に心筋梗塞を有した。一部の実施形態では、患者は、左心室収縮期機能不全を有する。一部の実施形態では、患者に、心不全または心不全の1つもしくは複数の合併症を処置する、予防する、またはその重症度を低減させるための1種または複数種種のさらなる活性薬剤または支持療法[例えば、アドレナリンブロッカー(アルファ-ブロッカーおよびベータ-ブロッカー)、中枢作用性アルファ-アゴニスト、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシン受容体ブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、陽性変力物質、血管拡張薬、ベンゾジアゼピン、レニン阻害剤、抗血栓剤、利尿薬、ペースメーカー、インプラント可能な心除細動器、心収縮力モジュレーション、心再同期治療、補助循環装置、両心室再同期治療および心臓移植]がさらに投与される。
【0014】
一部の実施形態では、本開示は、患者において高血圧を処置する、予防する、またはその重症度を低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含む方法に関する。一部の実施形態では、この方法は、患者の血圧を低減させる。一部の実施形態では、この方法は、収縮期血圧を低減させる。一部の実施形態では、この方法は、収縮期血圧を、少なくとも4mmHg(例えば、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20mmHgまたはそれよりも多く)低減させる。一部の実施形態では、この方法は、拡張期血圧を低減させる。一部の実施形態では、この方法は、拡張期血圧を、少なくとも2mmHg(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20mmHgまたはそれよりも多く)低減させる。一部の実施形態では、血圧は、安静時血圧として測定される。一部の実施形態では、血圧は、自由行動下血圧として測定される。一部の実施形態では、患者は、心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、左心室機能不全に起因する心不全、正常駆出率心不全、急性心不全、慢性心不全、うっ血性心不全、先天性心不全、代償性心不全、非代償性心不全、拡張期心不全、収縮期心不全、右心(室)不全、左心(室)不全、前方心不全、後方心不全、高拍出性心不全、低拍出性心不全および心筋浮腫からなる群から選択される1つまたは複数の型の心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、New York Heart Association(NYHA)機能分類に従うと少なくともクラスIの心不全(クラスI、クラスII、クラスIIIまたはクラスIV)を有する。一部の実施形態では、患者は、American College of Cardiology/American Heart Associationワーキンググループ(AAC)機能分類に従うと少なくともステージAの心不全(ステージA、ステージB、ステージCまたはステージD)を有する。一部の実施形態では、患者は、以前に心筋梗塞を有した。一部の実施形態では、患者は、左心室収縮期機能不全を有する。一部の実施形態では、患者は、以前に心筋梗塞を有した。一部の実施形態では、患者は、左心室収縮期機能不全を有する。一部の実施形態では、患者に、心不全または心不全の1つもしくは複数の合併症を処置する、予防する、またはその重症度を低減させるための1種または複数種種のさらなる活性薬剤または支持療法[例えば、アドレナリンブロッカー(アルファ-ブロッカーおよびベータ-ブロッカー)、中枢作用性アルファ-アゴニスト、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシン受容体ブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、陽性変力物質、血管拡張薬、ベンゾジアゼピン、レニン阻害剤、抗血栓剤、利尿薬、ペースメーカー、インプラント可能な心除細動器、心収縮力モジュレーション、心再同期治療、補助循環装置、両心室再同期治療および心臓移植]がさらに投与される。
【0015】
一部の実施形態では、本開示は、心臓疾患または心臓疾患の1つもしくは複数の合併症を処置する、予防する、またはその重症度を低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含む方法に関する。一部の実施形態では、心臓疾患の1つまたは複数の合併症は、呼吸困難、起座呼吸、発作性夜間呼吸困難、疲労、体液貯留、肺うっ血、浮腫、末梢性浮腫、狭心症、高血圧、不整脈、心室性不整脈、心筋症、心肥大、腎血流低減、腎機能不全、心筋梗塞症、心リモデリング、心線維症、心高血圧、心壁ストレス、心炎症、心圧負荷、心容量負荷、脳卒中、心腔拡張、心室真球度の増加、間質性線維症、血管周囲線維症、心筋細胞肥大、心臓喘息、夜間多尿症、腹水貯留、うっ血性肝障害、凝固障害、急性虚血傷害、再灌流傷害、左心室機能の機能障害、および右心室機能の機能障害のうち1つまたは複数である。一部の実施形態では、合併症は心線維症である。一部の実施形態では、合併症は心肥大である。一部の実施形態では、合併症は心リモデリングである。一部の実施形態では、合併症は心機能不全(例えば、≦40%または≦35%の駆出率)である。一部の実施形態では、合併症は高血圧である。一部の実施形態では、患者は、左心室機能不全に起因する心不全、正常駆出率心不全、急性心不全、慢性心不全、うっ血性心不全、先天性心不全、代償性心不全、非代償性心不全、拡張期心不全、収縮期心不全、右心(室)不全、左心(室)不全、前方心不全、後方心不全、高拍出性心不全、低拍出性心不全および心筋浮腫からなる群から選択される1つまたは複数の型の心不全を有する。一部の実施形態では、患者は、New York Heart Association(NYHA)機能分類に従うと少なくともクラスIの心不全(クラスI、クラスII、クラスIIIまたはクラスIV)を有する。一部の実施形態では、患者は、American College of Cardiology/American Heart Associationワーキンググループ(AAC)機能分類に従うと少なくともステージAの心不全(ステージA、ステージB、ステージCまたはステージD)を有する。一部の実施形態では、患者は、以前に心筋梗塞を有した。一部の実施形態では、患者は、左心室収縮期機能不全を有する。一部の実施形態では、患者は、以前に心筋梗塞を有した。一部の実施形態では、患者は、左心室収縮期機能不全を有する。一部の実施形態では、患者は、≦40%の駆出率を有する。一部の実施形態では、患者は、≦35%の駆出率を有する。一部の実施形態では、患者に、心不全または心不全の1つもしくは複数の合併症を処置する、予防する、またはその重症度を低減させるための1種または複数種種のさらなる活性薬剤または支持療法[例えば、アドレナリンブロッカー(アルファ-ブロッカーおよびベータ-ブロッカー)、中枢作用性アルファ-アゴニスト、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシン受容体ブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、陽性変力物質、血管拡張薬、ベンゾジアゼピン、レニン阻害剤、抗血栓剤、利尿薬、ペースメーカー、インプラント可能な心除細動器、心収縮力モジュレーション、心再同期治療、補助循環装置、両心室再同期治療および心臓移植]がさらに投与される。
【0016】
ある特定の態様では、本明細書に記載される方法および使用に従って使用されるBMPアンタゴニストは、BMP10を阻害する薬剤(BMP10アンタゴニスト)である。BMP10阻害に対する影響は、例えば、本明細書に記載されるもの(例えば、Smadシグナル伝達レポーターアッセイ)を含む細胞ベースのアッセイを使用して決定され得る。かかる細胞ベースのアッセイは、本明細書に記載されるものを含む他のBMPアンタゴニストの阻害効果を決定するために使用され得る。したがって、一部の実施形態では、BMP10アンタゴニストは、BMP10に結合し得る。リガンド結合活性は、例えば、本明細書に記載されるものなどを含む結合親和性アッセイを使用して決定され得る。かかるリガンド結合アッセイは、本明細書に記載されるものを含む他のBMPアンタゴニストの結合親和性を決定するために使用され得る。一部の実施形態では、BMP10アンタゴニストは、少なくとも1×10-8M(例えば、少なくとも少なくとも1×10-9M、少なくとも1×10-10M、少なくとも1×10-11Mまたは少なくとも1×10-12M)のKDで、BMP10に結合する。一部の実施形態では、BMP10アンタゴニストは、BMP9の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMP10アンタゴニストは、BMP6、BMP3bおよびBMP5のうち1種または複数種種をさらに阻害する。したがって、一部の実施形態では、BMP10アンタゴニストは、BMP9、BMP6、BMP3bおよびBMP5のうち1種または複数種種に結合し得る。BMP10アンタゴニストの例は、本明細書に記載され、これには、例えば、リガンドトラップ(例えば、TGFβ受容体スーパーファミリーのI型受容体、II型受容体または共受容体の可溶性リガンド結合ドメイン)、抗体、小分子およびポリヌクレオチドが含まれる。一部の実施形態では、BMP10アンタゴニストは、TGFβスーパーファミリーの1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体もしくは共受容体および/またはシグナル伝達メディエーター(例えば、Smad)をさらに阻害し得る。
【0017】
ある特定の態様では、本明細書に記載される方法および使用に従って使用されるBMPアンタゴニストは、BMP9を阻害する薬剤(BMP9アンタゴニスト)である。したがって、一部の実施形態では、BMP9アンタゴニストは、BMP9に結合し得る。一部の実施形態では、BMP9アンタゴニストは、少なくとも1×10-8M(例えば、少なくとも少なくとも1×10-9M、少なくとも1×10-10M、少なくとも1×10-11Mまたは少なくとも1×10-12M)のKDで、BMP9に結合する。一部の実施形態では、BMP9アンタゴニストは、BMP10の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMP9アンタゴニストは、BMP6、BMP3bおよびBMP5のうち1種または複数種種をさらに阻害する。したがって、一部の実施形態では、BMP9アンタゴニストは、BMP10、BMP6、BMP3bおよびBMP5のうち1種または複数種種に結合し得る。BMP9アンタゴニストの例は、本明細書に記載され、これには、例えば、リガンドトラップ(例えば、TGFβ受容体スーパーファミリーのI型受容体、II型受容体または共受容体の可溶性リガンド結合ドメイン)、抗体、小分子およびポリヌクレオチドが含まれる。一部の実施形態では、BMP9アンタゴニストは、TGFβスーパーファミリーの1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体もしくは共受容体および/またはシグナル伝達メディエーター(例えば、Smad)をさらに阻害し得る。
【0018】
ある特定の態様では、本明細書に記載される方法および使用に従って使用されるBMPアンタゴニストは、BMP6を阻害する薬剤(BMP6アンタゴニスト)である。したがって、一部の実施形態では、BMP6アンタゴニストは、BMP6に結合し得る。一部の実施形態では、BMP6アンタゴニストは、少なくとも1×10-8M(例えば、少なくとも少なくとも1×10-9M、少なくとも1×10-10M、少なくとも1×10-11Mまたは少なくとも1×10-12M)のKDで、BMP6に結合する。一部の実施形態では、BMP6アンタゴニストは、BMP10および/またはBMP9の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMP6アンタゴニストは、BMP3bおよび/またはBMP5をさらに阻害する。したがって、一部の実施形態では、BMP6アンタゴニストは、BMP10、BMP9、BMP3bおよびBMP5のうち1種または複数種種に結合し得る。BMP6アンタゴニストの例は、本明細書に記載され、これには、例えば、リガンドトラップ(例えば、TGFβ受容体スーパーファミリーのI型受容体、II型受容体または共受容体の可溶性リガンド結合ドメイン)、抗体、小分子およびポリヌクレオチドが含まれる。一部の実施形態では、BMP6アンタゴニストは、TGFβスーパーファミリーの1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体もしくは共受容体および/またはシグナル伝達メディエーター(例えば、Smad)をさらに阻害し得る。
【0019】
ある特定の態様では、本明細書に記載される方法および使用に従って使用されるBMPアンタゴニストは、BMP3bを阻害する薬剤(BMP3bアンタゴニスト)である。したがって、一部の実施形態では、BMP3bアンタゴニストは、BMP3bに結合し得る。一部の実施形態では、BMP3bアンタゴニストは、少なくとも1×10-8M(例えば、少なくとも少なくとも1×10-9M、少なくとも1×10-10M、少なくとも1×10-11Mまたは少なくとも1×10-12M)のKDで、BMP3bに結合する。一部の実施形態では、BMP3bアンタゴニストは、BMP10および/またはBMP9の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMP3bアンタゴニストは、BMP6および/またはBMP5をさらに阻害する。したがって、一部の実施形態では、BMP3bアンタゴニストは、BMP10、BMP9、BMP6およびBMP5のうち1種または複数種種に結合し得る。BMP3bアンタゴニストの例は、本明細書に記載され、これには、例えば、リガンドトラップ(例えば、TGFβ受容体スーパーファミリーのI型受容体、II型受容体または共受容体の可溶性リガンド結合ドメイン)、抗体、小分子およびポリヌクレオチドが含まれる。一部の実施形態では、BMP3bアンタゴニストは、TGFβスーパーファミリーの1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体もしくは共受容体および/またはシグナル伝達メディエーター(例えば、Smad)をさらに阻害し得る。
【0020】
ある特定の態様では、本明細書に記載される方法および使用に従って使用されるBMPアンタゴニストは、BMP5を阻害する薬剤(BMP5アンタゴニスト)である。したがって、一部の実施形態では、BMP5アンタゴニストは、BMP5に結合し得る。一部の実施形態では、BMP5アンタゴニストは、少なくとも1×10-8M(例えば、少なくとも少なくとも1×10-9M、少なくとも1×10-10M、少なくとも1×10-11Mまたは少なくとも1×10-12M)のKDで、BMP5に結合する。一部の実施形態では、BMP5アンタゴニストは、BMP10および/またはBMP9の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMP5アンタゴニストは、BMP6および/またはBMP5をさらに阻害する。したがって、一部の実施形態では、BMP5アンタゴニストは、BMP10、BMP9、BMP6およびBMP3bのうち1種または複数種に結合し得る。BMP5アンタゴニストの例は、本明細書に記載され、これには、例えば、リガンドトラップ(例えば、TGFβ受容体スーパーファミリーのI型受容体、II型受容体または共受容体の可溶性リガンド結合ドメイン)、抗体、小分子およびポリヌクレオチドが含まれる。一部の実施形態では、BMP5アンタゴニストは、TGFβスーパーファミリーの1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体もしくは共受容体および/またはシグナル伝達メディエーター(例えば、Smad)をさらに阻害し得る。
【0021】
ある特定の態様では、本明細書に記載される方法および使用に従って使用されるBMPアンタゴニストは、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3bおよびBMP5のうち1種または複数種の、1種または複数種の受容体またはシグナル伝達メディエーターを阻害する薬剤である。例えば、一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、ActRIIAを阻害し得る。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、ActRIIBを阻害し得る。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、ActRIIAおよびActRIIBを阻害し得る。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、BMPRIIを阻害し得る。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、ALK1を阻害し得る。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、エンドグリンを阻害し得る。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、1種または複数種のSmadタンパク質(例えば、Smad2および/または3)を阻害し得る。したがって、一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、エンドグリンおよびSmadタンパク質のうち1種または複数種に結合し得る。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、少なくとも1×10-8M(例えば、少なくとも少なくとも1×10-9M、少なくとも1×10-10M、少なくとも1×10-11Mまたは少なくとも1×10-12M)のKDで、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、エンドグリンおよびSmadタンパク質のうち1種または複数種に結合する。ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、エンドグリンおよびSmadタンパク質アンタゴニストの例は、本明細書に記載され、これには、例えば、抗体、小分子およびポリヌクレオチドが含まれる。
【0022】
ある特定の態様では、本開示のBMPアンタゴニストは、ActRIIポリペプチドである。用語「ActRIIポリペプチド」は、本明細書に記載されるものなどの、天然に存在するActRIIAおよびActRIIBポリペプチドならびにそれらのトランケーションおよびバリアントを集合的に指す。好ましくは、ActRIIポリペプチドは、ActRIIポリペプチドまたはその改変(バリアント)形態のリガンド結合ドメインを含む。例えば、一部の実施形態では、ActRIIAポリペプチドは、ActRIIAの細胞外ドメインを含み得る。同様に、ActRIIBポリペプチドは、ActRIIBの細胞外ドメインを含み得る。好ましくは、本明細書に記載される方法および使用に従って使用されるActRIIポリペプチドは、可溶性ポリペプチドである。一部の実施形態では、ActRIIAポリペプチドは、配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIAポリペプチドは、配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIAポリペプチドは、配列番号9のアミノ酸30~110の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIAポリペプチドは、配列番号50のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIAポリペプチドは、配列番号54のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIAポリペプチドは、配列番号57のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸29~109に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸25~131に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、配列番号65のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、配列番号133のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、配列番号58のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、配列番号60のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、配列番号63のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、配列番号64のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、配列番号66のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、配列番号123のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、配列番号131のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、配列番号132のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、配列番号1に関して79位に酸性アミノ酸(例えば、人工的に酸性のアミノ酸または天然に存在する酸性アミノ酸、例えば、DもしくはE)を含まない。
【0023】
ある特定の態様では、本開示のBMPアンタゴニストは、BMPRIIポリペプチドである。用語BMPRIIポリペプチドは、本明細書に記載されるものなどの、天然に存在するポリペプチドならびにそれらのトランケーションおよびバリアントを集合的に指す。好ましくは、BMPRIIポリペプチドは、BMPRIIポリペプチドまたはその改変(バリアント)形態のリガンド結合ドメインを含む。例えば、一部の実施形態では、BMPRIIポリペプチドは、BMPRIIの細胞外ドメインを含み得る。好ましくは、本明細書に記載される方法および使用に従って使用されるBMPRIIポリペプチドは、可溶性ポリペプチドである。一部の実施形態では、BMPRIIポリペプチドは、配列番号14のアミノ酸27~150に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、BMPRIIポリペプチドは、配列番号14のアミノ酸34~123に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、BMPRIIポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、BMPRIIポリペプチドは、配列番号69のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、BMPRIIポリペプチドは、配列番号71のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。
【0024】
ある特定の態様では、本開示のBMPアンタゴニストは、ALK1ポリペプチドである。用語ALK1ポリペプチドは、本明細書に記載されるものなどの、天然に存在するポリペプチドならびにそれらのトランケーションおよびバリアントを集合的に指す。好ましくは、ALK1ポリペプチドは、ALK1ポリペプチドまたはその改変(バリアント)形態のリガンド結合ドメインを含む。例えば、一部の実施形態では、ALK1ポリペプチドは、ALK1の細胞外ドメインを含み得る。好ましくは、本明細書に記載される方法および使用に従って使用されるALK1ポリペプチドは、可溶性ポリペプチドである。一部の実施形態では、ALK1ポリペプチドは、配列番号20のアミノ酸22~118に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、ALK1ポリペプチドは、配列番号20のアミノ酸34~95に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、ALK1ポリペプチドは、配列番号21のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、ALK1ポリペプチドは、配列番号74のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、ALK1ポリペプチドは、配列番号76のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。
【0025】
ある特定の態様では、本開示のBMPアンタゴニストは、エンドグリンポリペプチドである。用語エンドグリンポリペプチドは、本明細書に記載されるものなどの、天然に存在するポリペプチドならびにそれらのトランケーションおよびバリアントを集合的に指す。好ましくは、エンドグリンポリペプチドは、エンドグリンポリペプチドまたはその改変(バリアント)形態のリガンド結合ドメインを含む。例えば、一部の実施形態では、エンドグリンポリペプチドは、エンドグリンの細胞外ドメインを含み得る。好ましくは、本明細書に記載される方法および使用に従って使用されるエンドグリンポリペプチドは、可溶性ポリペプチドである。一部の実施形態では、エンドグリンポリペプチドは、配列番号24のアミノ酸26~378に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、エンドグリンポリペプチドは、配列番号24のアミノ酸42~333に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、エンドグリンポリペプチドは、配列番号24のアミノ酸26~346に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、エンドグリンポリペプチドは、配列番号24のアミノ酸27~581に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、エンドグリンポリペプチドは、配列番号24のアミノ酸26~359に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、エンドグリンポリペプチドは、配列番号78のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、エンドグリンポリペプチドは、配列番号80のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、エンドグリンポリペプチドは、配列番号28のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、エンドグリンポリペプチドは、配列番号29のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、エンドグリンポリペプチドは、配列番号30のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、エンドグリンポリペプチドは、配列番号31のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、エンドグリンポリペプチドは、配列番号24のアミノ酸379~430からなる配列を含まない。一部の実施形態では、エンドグリンポリペプチドは、配列番号24のアミノ酸379~586からなる配列由来の50よりも多く連続するアミノ酸を含まない。
【0026】
ある特定の態様では、本開示のBMPアンタゴニストは、BMP10プロペプチド(BMP10pro)ポリペプチドである。用語BMP10proポリペプチドは、本明細書に記載されるものなどの、天然に存在するプロペプチドポリペプチドならびにそれらのトランケーションおよびバリアントを集合的に指す。好ましくは、BMP10proポリペプチドは、BMP10プロペプチドポリペプチドまたはその改変(バリアント)形態のリガンド結合ドメインを含む。好ましくは、本明細書に記載される方法および使用に従って使用されるBMP10proポリペプチドは、可溶性ポリペプチドである。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸1~6のいずれか1つに対応する位置において始まり、配列番号34のアミノ酸291~295のいずれか1つに対応する位置において終わる配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸1~6のいずれか1つに対応する位置において始まり、配列番号34のアミノ酸291~294のいずれか1つに対応する位置において終わる配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、このポリペプチドは、アミノ酸RIRRの配列を含まない。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸1~291に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸1~291に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、このポリペプチドは、アミノ酸RIRRの配列を含まない。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸1~294に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸1~294に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、このポリペプチドは、アミノ酸RIRRの配列を含まない。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸1~6のいずれか1つに対応する位置において始まり、配列番号34のアミノ酸291~291のいずれか1つに対応する位置において終わる配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、このポリペプチドのC末端は、配列番号34のR295ではない。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸1~6のいずれか1つに対応する位置において始まり、配列番号34のアミノ酸291~294のいずれか1つに対応する位置において終わる配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、このポリペプチドのC末端は、配列番号34のR295ではない。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸1~291に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、このポリペプチドのC末端は、配列番号34のR295ではない。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸1~294に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、このポリペプチドのC末端は、配列番号34のR295ではない。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、配列番号82のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、配列番号84のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、配列番号85のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、配列番号87のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得る。
【0027】
ある特定の態様では、それらのバリアントを含む、BMP10proポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよびエンドグリンポリペプチドは、融合タンパク質であり得る。例えば、一部の実施形態では、BMP10proポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドまたはエンドグリンポリペプチドは、BMP10proポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドまたはエンドグリンポリペプチドドメインおよび1つまたは複数の異種(非BMP10pro、非ActRII、非BMPRII、非ALK1または非エンドグリン)ポリペプチドドメインを含む融合タンパク質であり得る。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドまたはエンドグリンポリペプチドは、1つのドメインとして、BMP10proポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドまたはエンドグリンポリペプチド(例えば、BMPプロペプチド、ActRII受容体、BMPRII受容体、ALK1受容体もしくはエンドグリン受容体またはそれらのバリアントのリガンド結合ドメイン)に由来するアミノ酸配列を有し、望ましい特性、例えば、改善された薬物動態、より容易な精製、特定の組織への標的化などを提供する1つまたは複数の異種ドメインを有する、融合タンパク質であり得る。例えば、融合タンパク質のドメインは、in vivo安定性、in vivo半減期、取り込み/投与、組織局在化もしくは分布、タンパク質複合体の形成、融合タンパク質のマルチマー化、および/または精製のうち1つまたは複数を増強し得る。必要に応じて、融合タンパク質のBMP10proポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドまたはエンドグリンポリペプチドドメインは、1つもしくは複数の異種ポリペプチドドメインに直接接続(融合)され、またはリンカーなどの介在配列が、BMP10proポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドまたはエンドグリンポリペプチドのアミノ酸配列と1つまたは複数の異種ドメインのアミノ酸配列との間に位置し得る。ある特定の実施形態では、BMP10pro、ActRII、BMPRII、ALK1またはエンドグリンポリペプチド融合物は、異種ドメインとBMP10proドメイン、ActRIIドメイン、BMPRIIドメイン、ALK1ドメインまたはエンドグリンドメインとの間に位置するリンカーを含む。リンカーは、BMP10proドメイン、ActRIIドメイン、BMPRIIドメイン、ALK1ドメインもしくはエンドグリンドメインのC末端のおおよそ4~15アミノ酸の非構造領域に対応し得、または比較的二次構造をとらない、3アミノ酸と15、20、30、50またはそれよりも多くのアミノ酸との間の人工配列であり得る。リンカーは、グリシンおよびプロリン残基がリッチであり得、例えば、スレオニン/セリンおよびグリシンの反復配列を含み得る。リンカーの例には、配列TGGG(配列番号45)、SGGG(配列番号46)、TGGGG(配列番号43)、SGGGG(配列番号44)、GGGGS(配列番号47)、GGGG(配列番号42)およびGGG(配列番号41)が含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、BMP10pro、ActRII、BMPRII、ALK1およびエンドグリン融合タンパク質は、例えば、免疫グロブリンのFc部分を含む、免疫グロブリンの定常ドメインを含み得る。例えば、IgG(IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)、IgA(IgA1またはIgA2)、IgEまたはIgM免疫グロブリンのFcドメインに由来するアミノ酸配列。例えば、免疫グロブリンドメインのFc部分は、配列番号36~40のいずれか1つに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、本質的にそれからなり得、またはそれからなり得る。かかる免疫グロブリンドメインは、変更されたFc活性、例えば、1つまたは複数のFcエフェクター機能の減少を付与する、1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、欠失、付加および/または置換)を含み得る。一部の実施形態では、BMP10pro、ActRII、BMPRII、ALK1またはエンドグリン融合タンパク質は、式A-B-Cで示されるアミノ酸配列を含む。例えば、B部分は、本明細書に記載される、N末端およびC末端がトランケートされたBMP10proポリペプチドである。AおよびC部分は、独立して、ゼロ、1つ、または1つよりも多いアミノ酸であり得、AおよびC部分は共に、Bに対して異種である。Aおよび/またはC部分は、リンカー配列を介してB部分に付加され得る。ある特定の実施形態では、BMP10pro、ActRII、BMPRII、ALK1またはエンドグリン融合タンパク質は、リーダー配列を含む。リーダー配列は、ネイティブのBMP10pro、ActRII、BMPRII、ALK1もしくはエンドグリンのリーダー配列、または異種リーダー配列であり得る。ある特定の実施形態では、リーダー配列は、組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)リーダー配列である。
【0028】
そのバリアントを含む、BMP10pro、ActRII、BMPRII、ALK1またはエンドグリンポリペプチドは、精製部分配列、例えば、エピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジン配列およびGST融合物を含み得る。必要に応じて、BMP10pro、ActRII、BMPRII、ALK1またはエンドグリンポリペプチドは、グリコシル化されたアミノ酸、PEG化されたアミノ酸、ファルネシル化されたアミノ酸、アセチル化されたアミノ酸、ビオチン化されたアミノ酸、脂質部分にコンジュゲートされたアミノ酸、および有機誘導体化剤にコンジュゲートされたアミノ酸から選択される1つまたは複数の改変されたアミノ酸残基を含む。BMP10pro、ActRII、BMPRII、ALK1およびエンドグリンポリペプチドは、少なくとも1つのN結合型糖を含み得、2つ、3つまたはそれよりも多くのN結合型糖を含み得る。かかるポリペプチドは、O結合型糖もまた含み得る。一般に、BMP10pro、ActRII、BMPRII、ALK1およびエンドグリンポリペプチドは、患者における好ましくない免疫応答の可能性を減弱するために、ポリペプチドの天然のグリコシル化を適切に媒介する哺乳動物細胞株において発現させることが好ましい。BMP10pro、ActRII、BMPRII、ALK1およびエンドグリンポリペプチドは、操作された昆虫または酵母細胞、ならびに哺乳動物細胞、例えば、COS細胞、CHO細胞、HEK細胞およびNSO細胞を含む、患者での使用に適した様式でタンパク質をグリコシル化する種々の細胞株において産生され得る。一部の実施形態では、BMP10pro、ActRII、BMPRII、ALK1またはエンドグリンポリペプチドは、グリコシル化され、チャイニーズハムスター卵巣細胞株から取得可能なグリコシル化パターンを有する。一部の実施形態では、本開示のBMP10pro、ActRII、BMPRII、ALK1およびエンドグリンポリペプチドは、哺乳動物(例えば、マウスまたはヒト)において、少なくとも4、6、12、24、36、48または72時間の血清半減期を示す。必要に応じて、BMP10pro、ActRII、BMPRII、ALK1およびエンドグリンポリペプチドは、哺乳動物(例えば、マウスまたはヒト)において、少なくとも6、8、10、12、14、20、25または30日間の血清半減期を示し得る。
【0029】
ある特定の態様では、本開示の教示に従って使用されるBMPアンタゴニストは、抗体または抗体の組合せである。一部の実施形態では、抗体または抗体の組合せは、少なくともBMP10に結合する。一部の実施形態では、BMP10に結合する抗体または抗体の組合せは、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRII、BMPRII、ALK1およびエンドグリンのうち1種または複数種にさらに結合する。一部の実施形態では、抗体または抗体の組合せは、少なくともBMP9に結合する。一部の実施形態では、BMP9に結合する抗体または抗体の組合せは、BMP10、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRII、BMPRII、ALK1およびエンドグリンのうち1種または複数種にさらに結合する。一部の実施形態では、抗体または抗体の組合せは、少なくともBMP6に結合する。一部の実施形態では、BMP6に結合する抗体または抗体の組合せは、BMP9、BMP10、BMP3b、BMP5、ActRII、BMPRII、ALK1およびエンドグリンのうち1種または複数種にさらに結合する。一部の実施形態では、抗体または抗体の組合せは、少なくともBMP3bに結合する。一部の実施形態では、BMP10に結合する抗体または抗体の組合せは、BMP9、BMP6、BMP10、BMP5、ActRII、BMPRII、ALK1およびエンドグリンのうち1種または複数種にさらに結合する。一部の実施形態では、抗体または抗体の組合せは、少なくともBMP5に結合する。一部の実施形態では、BMP5に結合する抗体または抗体の組合せは、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP10、ActRII、BMPRII、ALK1およびエンドグリンのうち1種または複数種にさらに結合する。一部の実施形態では、抗体または抗体の組合せは、少なくともActRIIに結合する。一部の実施形態では、ActRIIに結合する抗体または抗体の組合せは、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、BMPRII、ALK1およびエンドグリンのうち1種または複数種にさらに結合する。一部の実施形態では、抗体または抗体の組合せは、少なくともBMPRIIに結合する。一部の実施形態では、BMPRIIに結合する抗体または抗体の組合せは、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRII、ALK1およびエンドグリンのうち1種または複数種にさらに結合する。一部の実施形態では、抗体または抗体の組合せは、少なくともALK1に結合する。一部の実施形態では、ALK1に結合する抗体または抗体の組合せは、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRII、BMPRIIおよびエンドグリンのうち1種または複数種にさらに結合する。一部の実施形態では、抗体または抗体の組合せは、少なくともエンドグリンに結合する。一部の実施形態では、エンドグリンに結合する抗体または抗体の組合せは、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRII、BMPRIIおよびALK1のうち1種または複数種にさらに結合する。一部の実施形態では、抗体または抗体の組合せは、少なくともBMP10およびBMP9に結合する。一部の実施形態では、BMP10およびBMP9に結合する抗体または抗体の組合せは、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRII、BMPRII、ALK1およびエンドグリンのうち1種または複数種にさらに結合する。ある特定の好ましい実施形態では、本明細書に開示される抗体または抗体の組合せは、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRII、BMPRII、ALK1およびエンドグリンのうち1種または複数種の活性を阻害する。ある特定の好ましい実施形態では、BMP10抗体は、成熟BMP10タンパク質に結合する。ある特定の好ましい実施形態では、BMP10抗体は、成熟BMP10タンパク質に、BMP10プロペプチドと競合的に結合する。
【0030】
ある特定の態様では、本開示の教示に従って使用されるBMPアンタゴニストは、小分子または小分子の組合せである。一部の実施形態では、小分子または小分子の組合せは、少なくともBMP10活性を阻害する。一部の実施形態では、BMP10活性を阻害する小分子または小分子の組合せは、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよびSmadタンパク質(例えば、Smad2および/または3)のうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、小分子または小分子の組合せは、少なくともBMP9活性を阻害する。一部の実施形態では、BMP9活性を阻害する小分子または小分子の組合せは、BMP10、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよびSmadタンパク質(例えば、Smad2および/または3)のうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、小分子または小分子の組合せは、少なくともBMP6活性を阻害する。一部の実施形態では、BMP6活性を阻害する小分子または小分子の組合せは、BMP10、BMP9、BMP3b、BMP5、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよびSmadタンパク質(例えば、Smad2および/または3)のうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、小分子または小分子の組合せは、少なくともBMP3b活性を阻害する。一部の実施形態では、BMP3b活性を阻害する小分子または小分子の組合せは、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよびSmadタンパク質(例えば、Smad2および/または3)のうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、小分子または小分子の組合せは、少なくともBMP5活性を阻害する。一部の実施形態では、BMP5活性を阻害する小分子または小分子の組合せは、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよびSmadタンパク質(例えば、Smad2および/または3)のうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、小分子または小分子の組合せは、少なくともActRII活性を阻害する。一部の実施形態では、ActRII活性を阻害する小分子または小分子の組合せは、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよびSmadタンパク質(例えば、Smad2および/または3)のうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、小分子または小分子の組合せは、少なくともBMPRII活性を阻害する。一部の実施形態では、BMPRII活性を阻害する小分子または小分子の組合せは、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRII、ALK1、エンドグリンおよびSmadタンパク質(例えば、Smad2および/または3)のうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、小分子または小分子の組合せは、少なくともALK1活性を阻害する。一部の実施形態では、ALK1活性を阻害する小分子または小分子の組合せは、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRII、BMPRII、エンドグリンおよびSmadタンパク質(例えば、Smad2および/または3)のうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、小分子または小分子の組合せは、少なくともエンドグリン活性を阻害する。一部の実施形態では、エンドグリン活性を阻害する小分子または小分子の組合せは、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRII、BMPRII、ALK1およびSmadタンパク質(例えば、Smad2および/または3)のうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、小分子または小分子の組合せは、少なくとも1種または複数種のSmad(例えば、Smad2および/または3)の活性を阻害する。一部の実施形態では、1種または複数種のSmadの活性を阻害する小分子または小分子の組合せは、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRII、BMPRII、ALK1およびエンドグリンのうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、小分子または小分子の組合せは、少なくともBMP10およびBMP9の活性を阻害する。一部の実施形態では、BMP10およびBMP9の活性を阻害する小分子または小分子の組合せは、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよびSmadタンパク質(例えば、Smad2および/または3)のうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。
【0031】
ある特定の態様では、本開示の教示に従って使用されるBMPアンタゴニストは、ヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せである。一部の実施形態では、ヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、少なくともBMP10活性を阻害する。一部の実施形態では、BMP10活性を阻害するヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよびSmadタンパク質(例えば、Smad2および/または3)のうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、ヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、少なくともBMP9活性を阻害する。一部の実施形態では、BMP9活性を阻害するヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、BMP10、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよびSmadタンパク質(例えば、Smad2および/または3)のうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、ヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、少なくともBMP6活性を阻害する。一部の実施形態では、BMP6活性を阻害するヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、BMP10、BMP9、BMP3b、BMP5、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよびSmadタンパク質(例えば、Smad2および/または3)のうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、ヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、少なくともBMP3b活性を阻害する。一部の実施形態では、BMP3b活性を阻害するヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよびSmadタンパク質(例えば、Smad2および/または3)のうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、ヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、少なくともBMP5活性を阻害する。一部の実施形態では、BMP5活性を阻害するヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよびSmadタンパク質(例えば、Smad2および/または3)のうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、ヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、少なくともActRII活性を阻害する。一部の実施形態では、ActRII活性を阻害するヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよびSmadタンパク質(例えば、Smad2および/または3)のうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、ヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、少なくともBMPRII活性を阻害する。一部の実施形態では、BMPRII活性を阻害するヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRII、ALK1、エンドグリンおよびSmadタンパク質(例えば、Smad2および/または3)のうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、ヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、少なくともALK1活性を阻害する。一部の実施形態では、ALK1活性を阻害するヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRII、BMPRII、エンドグリンおよびSmadタンパク質(例えば、Smad2および/または3)のうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、ヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、少なくともエンドグリン活性を阻害する。一部の実施形態では、エンドグリン活性を阻害するヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRII、BMPRII、ALK1およびSmadタンパク質(例えば、Smad2および/または3)のうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、ヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、少なくとも1種または複数種のSmad(例えば、Smad2および/または3)の活性を阻害する。一部の実施形態では、1種または複数種のSmadの活性を阻害するヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRII、BMPRII、ALK1およびエンドグリンのうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。一部の実施形態では、ヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、少なくともBMP10およびBMP9の活性を阻害する。一部の実施形態では、BMP10およびBMP9の活性を阻害するヌクレオチドまたはヌクレオチドの組合せは、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよびSmadタンパク質(例えば、Smad2および/または3)のうち1種または複数種の活性をさらに阻害する。
【0032】
ある特定の態様では、本開示は、BMP10プロペプチドを提供する。本明細書の実施例によって示されるように、成熟BMP10ポリペプチドに結合し、その活性をアンタゴナイズするBMP10プロペプチドが生成された。これらのBMP10プロペプチドは、他のBMPタンパク質に、特にBMP9、BMP6およびBMP3bに結合し、より低い程度でBMP5に結合することが、さらに発見された。したがって、BMPプロペプチドは、BMPファミリーの他のメンバーをアンタゴナイズし得、したがって、これらの他のBMPタンパク質と関連するさらなる障害または状態(例えば、BMP9、BMP6、BMP3bおよびBMP6関連障害または状態)の処置において有用であり得る。さらに、プロペプチドドメインの4つのC末端アミノ酸を欠く、C末端がトランケートされたBMP10プロペプチドバリアントは、驚くべきことに、より長い長さのBMP10プロペプチドバリアントと比較して増加したBMP10アンタゴナイズ活性を有することが見出された。したがって、BMP10プロペプチドは、BMP10アンタゴナイズ活性を喪失することなしに、1、2、3または4アミノ酸のC末端トランケーションを許容し得る。さらに、4つのC末端アミノ酸を欠くBMP10プロペプチドバリアントは、増加したBMP10アンタゴナイズ活性を有し得、したがって、かかる増加したBMP10アンタゴニズムが望ましいある特定の実験状況および臨床状況において有用であり得る。本開示は、BMP10プロペプチドをコードする核酸配列、BMP10プロペプチドを含む医薬組成物およびキット、ならびにBMP10プロペプチドを製造する方法をさらに提供する。
【0033】
ある特定の態様では、本開示は、配列番号34のアミノ酸1~6のいずれか1つに対応する位置において始まり、配列番号34のアミノ酸292~295のいずれか1つに対応する位置において終わる配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むBMP10プロペプチド(BMP10pro)ポリペプチドを提供する。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、アミノ酸RIRRの配列を含まない。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドのC末端は、配列番号34のR296ではない。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸1~292に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸1~292に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、このポリペプチドは、アミノ酸RIRRの配列を含まない。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸1~292に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、このポリペプチドのC末端は、配列番号34のR296ではない。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸1~295に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸1~295に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、このポリペプチドは、アミノ酸RIRRの配列を含まない。
【0034】
一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸1~295に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、このポリペプチドのC末端は、配列番号34のR296ではない。
【0035】
以前に論じたように、本開示は、BMP10proポリペプチドドメインおよび1つまたは複数の異種(非BMP10pro)ポリペプチドドメインを含む融合タンパク質であるBMP10proポリペプチドを提供する。例えば、BMP10proポリペプチドは、BMP10proポリペプチドドメインおよび免疫グロブリンFcドメインを含むFc融合タンパク質である。必要に応じて、融合タンパク質のBMP10proポリペプチドドメインは、1つもしくは複数の異種ポリペプチドドメインに直接接続(融合)され、またはリンカーなどの介在配列が、BMP10proポリペプチドのアミノ酸配列と1つもしくは複数の異種ドメインのアミノ酸配列との間に位置し得る。ある特定の実施形態では、BMP10proポリペプチド融合物は、異種ドメインとBMP10proドメインとの間に位置するリンカーを含む。リンカーは、BMP10proドメインのC末端のおおよそ4~15アミノ酸の非構造領域に対応し得、または比較的二次構造をとらない、3アミノ酸と15、20、30、50またはそれよりも多くのアミノ酸との間の人工配列であり得る。リンカーは、グリシンおよびプロリン残基がリッチであり得、例えば、スレオニン/セリンおよびグリシンの反復配列を含み得る。リンカーの例には、配列TGGG(配列番号45)、SGGG(配列番号46)、TGGGG(配列番号43)、SGGGG(配列番号44)、GGGGS(配列番号47)、GGGG(配列番号42)およびGGG(配列番号41)が含まれるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、BMP10proエンドグリン融合タンパク質は、例えば、免疫グロブリンのFc部分を含む、免疫グロブリンの定常ドメインを含み得る。例えば、IgG(IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)、IgA(IgA1またはIgA2)、IgEまたはIgM免疫グロブリンのFcドメインに由来するアミノ酸配列。例えば、免疫グロブリンドメインのFc部分は、配列番号36~40のいずれか1つに対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列からなり得る。かかる免疫グロブリンドメインは、変更されたFc活性、例えば、1つまたは複数のFcエフェクター機能の減少を付与する、1つまたは複数のアミノ酸改変(例えば、欠失、付加および/または置換)を含み得る。一部の実施形態では、BMP10pro融合タンパク質は、式A-B-Cで示されるアミノ酸配列を含む。例えば、B部分は、本明細書に記載される、N末端およびC末端がトランケートされたBMP10proポリペプチドである。AおよびC部分は、独立して、ゼロ、1つ、または1つよりも多いアミノ酸であり得、AおよびC部分は共に、Bに対して異種である。Aおよび/またはC部分は、リンカー配列を介してB部分に付加され得る。ある特定の実施形態では、BMP10pro融合タンパク質は、リーダー配列を含む。リーダー配列は、ネイティブのBMP10proリーダー配列または異種リーダー配列であり得る。ある特定の実施形態では、リーダー配列は、組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)リーダー配列である。
【0036】
ある特定の態様では、本開示は、BMP10proポリペプチドドメインおよび免疫グロブリンFcドメインを含むFc融合タンパク質であるBMP10proポリペプチドを提供する。ある特定の態様では、本開示は、配列番号34のアミノ酸1~6のいずれか1つに対応する位置において始まり、配列番号34のアミノ酸292~295のいずれか1つに対応する位置において終わる配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むBMP10pro-Fc融合タンパク質を提供する。一部の実施形態では、BMP10pro-Fc融合タンパク質は、アミノ酸RIRRの配列を含まない。一部の実施形態では、BMP10pro-Fc融合タンパク質のBMP10proドメインのC末端は、配列番号34のR296ではない。一部の実施形態では、BMP10pro-Fc融合タンパク質は、配列番号34のアミノ酸1~292に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、BMP10pro-Fc融合タンパク質は、配列番号34のアミノ酸1~292に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、このポリペプチドは、アミノ酸RIRRの配列を含まない。一部の実施形態では、BMP10pro-Fc融合タンパク質は、配列番号34のアミノ酸1~292に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、BMP10proドメインのC末端は、配列番号34のR296ではない。一部の実施形態では、BMP10pro-Fc融合タンパク質は、配列番号34のアミノ酸1~295に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、BMP10pro-Fc融合タンパク質は、配列番号34のアミノ酸1~295に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、BMP10proドメインは、アミノ酸RIRRの配列を含まない。一部の実施形態では、BMP10pro-Fc融合タンパク質は、配列番号34のアミノ酸1~295に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、BMP10proドメインのC末端は、配列番号34のR296ではない。一部の実施形態では、BMP10pro-Fc融合タンパク質は、配列番号82のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、BMP10pro-Fc融合タンパク質は、配列番号82のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、この融合タンパク質は、アミノ酸RIRRの配列を含まない。一部の実施形態では、BMP10pro-Fc融合タンパク質は、配列番号82のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、BMP10proドメインのC末端は、配列番号34のR296ではない。一部の実施形態では、BMP10pro-Fc融合タンパク質は、配列番号87のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、BMP10pro-Fc融合タンパク質は、配列番号87のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、この融合タンパク質は、アミノ酸RIRRの配列を含まない。一部の実施形態では、BMP10pro-Fc融合タンパク質は、配列番号87のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、BMP10proドメインのC末端は、配列番号34のR296ではない。
【0037】
そのバリアントを含むBMP10proポリペプチドは、精製部分配列、例えば、エピトープタグ、FLAGタグ、ポリヒスチジン配列およびGST融合物を含み得る。必要に応じて、BMP10proポリペプチドは、グリコシル化されたアミノ酸、PEG化されたアミノ酸、ファルネシル化されたアミノ酸、アセチル化されたアミノ酸、ビオチン化されたアミノ酸、脂質部分にコンジュゲートされたアミノ酸、および有機誘導体化剤にコンジュゲートされたアミノ酸から選択される1つまたは複数の改変されたアミノ酸残基を含む。BMP10proポリペプチドは、少なくとも1つのN結合型糖を含み得、2つ、3つまたはそれよりも多くのN結合型糖を含み得る。かかるポリペプチドは、O結合型糖もまた含み得る。一般に、BMP10proポリペプチドは、患者における好ましくない免疫応答の可能性を減弱するために、ポリペプチドの天然のグリコシル化を適切に媒介する哺乳動物細胞株において発現させることが好ましい。BMP10proポリペプチドは、操作された昆虫または酵母細胞、ならびに哺乳動物細胞、例えば、COS細胞、CHO細胞、HEK細胞およびNSO細胞を含む、患者での使用に適した様式でタンパク質をグリコシル化する種々の細胞株において産生され得る。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、グリコシル化され、チャイニーズハムスター卵巣細胞株から取得可能なグリコシル化パターンを有する。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、哺乳動物(例えば、マウスまたはヒト)において、少なくとも4、6、12、24、36、48または72時間の血清半減期を示す。必要に応じて、BMP10proは、哺乳動物(例えば、マウスまたはヒト)において、少なくとも6、8、10、12、14、20、25または30日間の血清半減期を示し得る。
【0038】
ある特定の態様では、本開示は、BMP10の完全な翻訳可能な成熟部分をコードしない、BMP10プロペプチドをコードする核酸を提供する。単離されたおよび/または組換えポリヌクレオチドは、例えば上記のような、BMP10プロペプチドのコード配列を含み得る。単離された核酸には、BMP10プロペプチドをコードする配列、および成熟部分内に位置するまたはプロペプチドと成熟部分との間に位置する終止コドンを別にして成熟部分の一部または全てをコードする配列が含まれ得る。一部の実施形態では、本開示は、配列番号83の核酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な核酸配列を提供する。一部の実施形態では、本開示は、配列番号86の核酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な核酸配列を提供する。本明細書に開示される核酸は、発現のためのプロモーターに作動可能に連結し得、本開示は、かかるポリヌクレオチドを含むベクター、ならびにかかるポリヌクレオチドで形質転換された細胞を提供する。好ましくは、細胞は、CHO細胞などの哺乳動物細胞である。
【0039】
ある特定の態様では、本開示は、BMP10プロペプチドを作製するための方法を提供する。かかる方法は、本明細書に開示されるプロペプチドコード核酸のいずれかを、適切な細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞において発現させるステップを含み得る。かかる方法は、プロペプチドの発現に適した条件下で細胞を培養するステップを含み得、この細胞は、BMP10プロペプチド発現構築物を含む。この方法は、プロペプチド発現されたBMP10プロペプチドを回収するステップをさらに含み得る。BMP10プロペプチドは、細胞培養物からタンパク質を取得するための周知の技術のいずれかを使用して、粗製画分、部分的に精製された画分、または高度に精製された画分として回収され得る。
【0040】
ある特定の態様では、本開示は、心不全または心不全の1つもしくは複数の合併症を予防する、処置する、またはその重症度を低減させるための医薬を作製するため、ならびに本明細書に記載される他の心関連の使用のためのBMP10プロペプチドの使用を提供する。ある特定の態様では、本開示は、心不全または心不全の1つもしくは複数の合併症を予防する、処置する、またはその重症度を低減させる使用のため、ならびに本明細書に記載される他の心関連の使用のためのBMP10プロペプチドを提供する。
【0041】
ある特定の態様では、本開示は、心不全または心不全の1つもしくは複数の合併症を処置するために使用され得る薬剤を同定するための方法を提供する。方法は、a)成熟BMP10ポリペプチドに、BMP10プロペプチドと競合的に結合する試験薬剤を同定するステップ;およびb)心臓障害に対するその薬剤の効果を評価するステップを含み得る。試験薬剤は、例えば、バリアントBMP10プロペプチド、抗体または小分子であり得る。
【0042】
ある特定の態様では、本開示は、BMP10proポリペプチドおよび薬学的に許容される担体を含む医薬調製物(組成物)を提供する。BMP10proポリペプチドを含む医薬調製物は、1種または複数種のさらなる活性薬剤、例えば、本明細書に記載される障害または状態[例えば、心不全または心不全の1つもしくは複数の合併症]を処置または予防するために使用される化合物もまた含み得る。一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドを含む医薬調製物は、発熱物質を含まない(例えば、治療的使用のための製品の品質を管理する規制によって要求される程度まで、発熱物質を含まない)。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、複数のActRIIB結晶構造およびActRIIA結晶構造の複合解析に基づき、本明細書においてリガンドと直接接触すると推定された残基を四角で表示した、ヒトActRIIBおよびヒトActRIIAの細胞外ドメインのアライメントを示す。
【0044】
【
図2】
図2は、種々の脊椎動物ActRIIBタンパク質(配列番号100~105)およびヒトActRIIA(配列番号122)の複数の配列アライメントならびにこのアライメントから得られたコンセンサスActRII配列(配列番号106)を示す。
【0045】
【
図3】
図3は、種々の脊椎動物ActRIIAタンパク質およびヒトActRIIA(配列番号107~114)の複数の配列アライメントを示す。
【0046】
【
図4】
図4は、Clustal 2.1を使用するヒトIgGアイソタイプからのFcドメインの複数の配列アライメントを示す。ヒンジ領域を点線の下線により表示する。二重下線は、非対称性鎖対形成を促進するためにIgG1 Fc中に操作された位置ならびに他のアイソタイプIgG2、IgG3およびIgG4に関する対応する位置の例を示す。
【0047】
【
図5】
図5は、ActRIIB(25-131)-hFcについての完全な、プロセシングされていないアミノ酸配列(配列番号123)を示す。TPAリーダー(残基1~22)および二重トランケーション型ActRIIB細胞外ドメイン(残基24~131、配列番号1のネイティブな配列に基づく番号付けを使用)にそれぞれ下線を付ける。配列番号1に関して25位の、成熟融合タンパク質のN末端アミノ酸であると配列決定により明らかになったグルタミン酸を強調表示する。
【0048】
【
図6-1】
図6は、ActRIIB(25-131)-hFcをコードするヌクレオチド配列を示す(コード鎖、配列番号124を上に示し、相補鎖、配列番号125を下に3’から5’に示す)。TPAリーダー(ヌクレオチド1~66)およびActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド73~396)をコードする配列に下線を付ける。ActRIIB(25-131)についての対応するアミノ酸配列も示す。
【
図6-2】
図6は、ActRIIB(25-131)-hFcをコードするヌクレオチド配列を示す(コード鎖、配列番号124を上に示し、相補鎖、配列番号125を下に3’から5’に示す)。TPAリーダー(ヌクレオチド1~66)およびActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド73~396)をコードする配列に下線を付ける。ActRIIB(25-131)についての対応するアミノ酸配列も示す。
【0049】
【
図7-1】
図7は、ActRIIB(25-131)-hFcをコードする代替的なヌクレオチド配列を示す(コード鎖、配列番号126を上に示し、相補鎖、配列番号127を下に3’から5’に示す)。この配列は、より大きいレベルのタンパク質発現を最初の形質転換体に付与し、細胞株の発生をより迅速なプロセスにする。TPAリーダー(ヌクレオチド1~66)およびActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド73~396)をコードする配列に下線を付け、ECDの野生型ヌクレオチド配列(
図6参照)中の置換を強調表示する。ActRIIB(25-131)についての対応するアミノ酸配列も示す。
【
図7-2】
図7は、ActRIIB(25-131)-hFcをコードする代替的なヌクレオチド配列を示す(コード鎖、配列番号126を上に示し、相補鎖、配列番号127を下に3’から5’に示す)。この配列は、より大きいレベルのタンパク質発現を最初の形質転換体に付与し、細胞株の発生をより迅速なプロセスにする。TPAリーダー(ヌクレオチド1~66)およびActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド73~396)をコードする配列に下線を付け、ECDの野生型ヌクレオチド配列(
図6参照)中の置換を強調表示する。ActRIIB(25-131)についての対応するアミノ酸配列も示す。
【0050】
【
図8】
図8は、TPAリーダー(
二重下線)、トランケーション型ActRIIB細胞外ドメイン(配列番号1における残基25~131;
一重下線)、およびhFcドメインを含むトランケーション型GDFトラップActRIIB(L79D 25-131)-hFc(配列番号131)についての完全アミノ酸配列を示す。ネイティブな配列中の79位で置換されたアスパラギン酸に
二重下線を付け、強調表示し、配列決定により成熟融合タンパク質中のN末端残基であることが明らかになったグルタミン酸も同様である。
【0051】
【
図9】
図9は、リーダーを有さないトランケーション型GDFトラップActRIIB(L79D 25-131)hFcについてのアミノ酸配列(配列番号132)を示す。トランケーション型ActRIIB細胞外ドメイン(配列番号1における残基25~131)に下線を付ける。ネイティブな配列中の79位で置換されたアスパラギン酸に
二重下線を付け、強調表示し、配列決定により成熟融合タンパク質中のN末端残基であることが明らかになったグルタミン酸も同様である。
【0052】
【
図10】
図10は、リーダー、hFcドメイン、およびリンカーを有さないトランケーション型GDFトラップActRIIB(L79D 25-131)についてのアミノ酸配列(配列番号133)を示す。ネイティブな配列中の79位で置換されたアスパラギン酸に下線を付け、強調表示し、配列決定により成熟融合タンパク質中のN末端残基であることが明らかになったグルタミン酸も同様である。
【0053】
【
図11-1】
図11は、ActRIIB(L79D 25-131)-hFcをコードするヌクレオチド配列を示す。配列番号134は、センス鎖に対応し、配列番号135は、アンチセンス鎖に対応する。TPAリーダー(ヌクレオチド1~66)に
二重下線を付け、トランケーション型ActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド76~396)に
一重下線を付ける。ActRIIB細胞外ドメイン(配列番号1における残基25~131)についてのアミノ酸配列も示す。
【
図11-2】
図11は、ActRIIB(L79D 25-131)-hFcをコードするヌクレオチド配列を示す。配列番号134は、センス鎖に対応し、配列番号135は、アンチセンス鎖に対応する。TPAリーダー(ヌクレオチド1~66)に
二重下線を付け、トランケーション型ActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド76~396)に
一重下線を付ける。ActRIIB細胞外ドメイン(配列番号1における残基25~131)についてのアミノ酸配列も示す。
【0054】
【
図12-1】
図12は、ActRIIB(L79D 25-131)-hFcをコードする代替的なヌクレオチド配列を示す。配列番号136は、センス鎖に対応し、配列番号137は、アンチセンス鎖に対応する。TPAリーダー(ヌクレオチド1~66)に
二重下線を付け、トランケーション型ActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド76~396)に下線を付け、細胞外ドメインの野生型ヌクレオチド配列中の置換に
二重下線を付け、強調表示する。ActRIIB細胞外ドメイン(配列番号1における残基25~131)についてのアミノ酸配列も示す。
【
図12-2】
図12は、ActRIIB(L79D 25-131)-hFcをコードする代替的なヌクレオチド配列を示す。配列番号136は、センス鎖に対応し、配列番号137は、アンチセンス鎖に対応する。TPAリーダー(ヌクレオチド1~66)に
二重下線を付け、トランケーション型ActRIIB細胞外ドメイン(ヌクレオチド76~396)に下線を付け、細胞外ドメインの野生型ヌクレオチド配列中の置換に
二重下線を付け、強調表示する。ActRIIB細胞外ドメイン(配列番号1における残基25~131)についてのアミノ酸配列も示す。
【0055】
【
図13】
図13は、hENG-Fc融合構築物のドメイン構造を示す。完全長ENG細胞外ドメイン(一番上の構造の残基26~586)は、オーファンドメインならびにN末端およびC末端透明帯(ZP)ドメインからなる。選択されたトランケーション型バリアントの構造を下に示し、SPRベースのアッセイにおいてそれらがBMP-9およびBMP-10と高親和性結合を示すかどうか(+/-)を示す。
【0056】
【
図14】
図14は、マウスTACモデルにおける心肥大に及ぼすBMP10pro(22-312)-Fcの効果を示す。偽処置動物、TAC-PBS(ビヒクル対照)処置動物、およびTAC-BMP10pro(22-312)-Fc処置動物からの体重あたりの心重量(HW/BW;mg/g)を比較した。TAC-PBS対照動物は、偽手術動物と比較して有意な心肥大を示した。BMP10pro(22-312)-Fc処置は、心不全のこのTACモデルにおいて心肥大を阻害した。(*)は、一元配置ANOVAに続くチューキーを意味する。
【0057】
【
図15】
図15は、マウスTACモデルにおける拡張終期での心室中隔厚に及ぼすBMP10pro(22-312)-Fcの効果を示す。偽処置動物、TAC-PBS(ビヒクル対照)処置動物、およびTAC-BMP10pro(22-312)-Fc処置動物における拡張終期での心室中隔厚を測定するためにMモード心エコーを取得した。TAC-PBSマウスは、偽手術動物と比較して増加した心室中隔拡張終期(LVSd mm)を示した。BMP10pro(22-312)-Fc処置は、心不全のこのTACモデルにおいて心室中隔拡張終期を有意に減少させた。(*)および(#)は、一元配置ANOVAに続くチューキーを意味する。
【0058】
【
図16】
図16は、マウスTACモデルにおける拡張終期での左心室後壁厚に及ぼすBMP10pro(22-312)-Fcの効果を示す。Mモード心エコーを取得して、偽処置動物、TAC-PBS(ビヒクル対照)処置動物、およびTAC-BMP10pro(22-312)-Fc処置動物における拡張終期での左心室後壁厚を測定した。TAC-PBSマウスは、偽手術動物と比較して増加した左心室後壁拡張終期(LVPTd mm)を示した。BMP10pro(22-312)-Fc処置は、心不全のこのTACモデルにおいて左心室後壁拡張終期を有意に減少させた。(*)および(#)は、一元配置ANOVAに続くチューキーを意味する。
【0059】
【
図17】
図17は、マウスTACモデルにおける短縮率に及ぼすBMP10pro(22-312)-Fcの効果を示す。Mモード心エコーを取得して、偽処置動物、TAC-PBS(ビヒクル対照)処置動物、およびTAC-BMP10pro(22-312)-Fc処置動物における左心室拡張終期径および左心室収縮終期径を測定した。次式を使用して、拡張終期径(EDD)および収縮終期径(ESD)から短縮率(FS)を計算した:FS=100%×[(EDD-ESD)/EDD]。TAC-PBSマウスは、偽手術動物と比較して約20%減少した短縮率を示した。BMP10pro(22-312)-Fc処置は、心不全のこのTACモデルにおいて短縮率拡張を有意に増加させた。(*)は、一元配置ANOVAに続くチューキーを意味する。
【0060】
【
図18】
図18は、マウスTACモデルにおける駆出率に及ぼすBMP10pro(22-312)-Fcの効果を示す。Mモード心エコーを取得して、偽処置動物、TAC-PBS(ビヒクル対照)処置動物、およびTAC-BMP10pro(22-312)-Fc処置動物における拡張終期容積(EDD)および収縮終期容積(ESD)を測定した。次式を使用して駆出率(EF)を計算した:EF%=(EDV-ESV)/EDV。TAC-PBSマウスは、偽手術動物と比較して減少した駆出率を示した。BMP10pro(22-312)-Fc処置は、心不全のこのTACモデルにおいて駆出率を有意に増加させた。(*)は、一元配置ANOVAに続くチューキーを意味する。
【0061】
【
図19】
図19は、マウスTACモデルにおける等容性弛緩時間に及ぼすBMP10pro(22-312)-Fcの効果を示す。Mモード心エコーを取得して、偽処置動物、TAC-PBS(ビヒクル対照)処置動物、およびTAC-BMP10pro(22-312)-Fc処置動物における等容性弛緩時間(IVRT ms)を測定した。TAC+PBSマウスは、偽手術動物と比較して増加したIVRTを示した。BMP10pro(22-312)-Fc処置は、心不全のこのTACモデルにおいてIVRTを有意に減少させた。(*)および(#)は、一元配置ANOVAに続くチューキーを意味する。
【0062】
【
図20】
図20は、マウスTACモデルにおける心線維症に及ぼすBMP10pro(22-312)-Fcの効果を示す。偽処置動物、TAC-PBS(ビヒクル対照)処置動物、およびTAC-BMP10pro(22-312)-Fc処置動物から心臓を取り出し、10%ホルマリン中で固定し、次いでマッソン三色染色のために薄片を作製して、線維症を評価した。TAC-PBSマウスは、偽手術動物と比較して増加した心線維症を示した。BMP10pro(22-312)-Fc処置は、心不全のこのTACモデルにおいて心線維症を有意に減少させた。(*)および(#)は、一元配置ANOVAに続くチューキーを意味する。
【0063】
【
図21】
図21は、配列番号33と名付けられるヒトBMP10前駆タンパク質をコードする核酸配列を示す。
【0064】
【
図22】
図22は、配列番号35と名付けられるヒトBMP10プロペプチドドメインタンパク質をコードする核酸配列を示す。
【0065】
【
図23】
図23は、マウスTACモデルにおける心肥大に及ぼすhENG(27-581)-mFcの効果を示す。偽処置動物、TAC-PBS(ビヒクル対照)処置動物、およびTAC-hENG(27-581)-mFc処置動物からの体重あたりの心重量(HW/BW;mg/g)を比較した。TAC-PBS対照動物は、偽手術動物と比較して有意な心肥大を示した。hENG(27-581)-mFc処置は、心不全のこのTACモデルにおいて心肥大を阻害した。(*)は、一元配置ANOVAに続くチューキーを意味する。
【0066】
【
図24】
図24は、マウスTACモデルにおける短縮率に及ぼすhENG(27-581)-mFcの効果を示す。Mモード心エコーを取得して、偽処置動物、TAC-PBS(ビヒクル対照)処置動物、およびTAC-hENG(26-5861)-mFc処置動物における左心室拡張終期径および左心室収縮終期径を測定した。次式を使用して拡張終期径(EDD)および収縮終期径(ESD)から短縮率(FS)を計算した:FS=100%×[(EDD-ESD)/EDD]。TAC-PBSマウスは、偽手術動物と比較して約20%減少した短縮率を示した。hENG(267-581)-mFc処置は、心不全のこのTACモデルにおいて短縮率拡張を有意に増加させた。(*)は、一元配置ANOVAに続くチューキーを意味する。
【0067】
【
図25】
図25は、マウスTACモデルにおける駆出率に及ぼすhENG(27-581)-mFcの効果を示す。Mモード心エコーを取得して、偽処置動物、TAC-PBS(ビヒクル対照)、およびTAC-hENG(27-581)-mFc処置動物における拡張終期容積(EDD)および収縮終期容積(ESD)を測定した。次式を使用して駆出率(EF)を計算した:EF%=(EDV-ESV)/EDV。TAC-PBSマウスは、偽手術動物と比較して減少した駆出率を示した。hENG(27-581)-mFc処置は、心不全のこのTACモデルにおける駆出率を有意に増加させた。(*)は、一元配置ANOVAに続くチューキーを意味する。
【0068】
【
図26】
図26は、マウスTACモデルにおける心線維症に及ぼすhENG(27-581)-mFcの効果を示す。偽処置動物、TAC-PBS(ビヒクル対照)処置動物、およびTAC-hENG(27-581)-mFc処置動物から心臓を取り出し、10%ホルマリン中で固定し、次いでマッソン三色染色のために薄片を作製して、線維症を評価した。TAC-PBSマウスは、偽手術動物と比較して増加した心線維症を示した。hENG(27-581)-mFc処置は、心不全のこのTACモデルにおいて心線維症を有意に減少させた。(*)は、一元配置ANOVAに続くチューキーを意味する。
【0069】
【
図27】
図27は、マウスMIモデルにおける心肥大に及ぼすBMP10pro(22-312)-FcまたはhENG(26-5861)-mFcの効果を示す。体重あたりの心重量(HW/BW;mg/g)をMI-PBS(ビヒクル対照)処置動物、MI-BMP10pro(22-312)-Fc処置動物およびTAC-hENG(27-581)-mFc処置動物と比較した。MI-PBS対照動物は、偽手術動物と比較して有意な心肥大を示した。hENG(27-581)-mFcまたはBMP10pro(22-312)-Fc処置は、心不全のこのMIモデルにおいて心肥大を阻害した。(*)は、一元配置ANOVAに続くチューキーを意味する。
【0070】
【
図28】
図28は、マウスMIモデルにおける収縮終期での左心室拡張に及ぼすBMP10pro(22-312)-FcまたはhENG(27-581)-mFcの効果を示す。Mモード心エコーを取得して、偽処置動物、MI-PBS(ビヒクル対照)処置動物、MI-hENG(27-581)-mFc処置動物およびMI-BMP10pro(22-312)-Fc処置動物における収縮終期での左心室拡張を測定した。MI-PBSマウスは、偽手術動物と比較して増加した左心室収縮終期径(LVESD mm)を示した。BMP10pro(22-312)-FcまたはhENG(27-581)-mFc処置は、心不全のこのMIモデルにおいて左心室収縮終期径を有意に減少させた。(*)は、一元配置ANOVAに続くチューキーを意味する。
【0071】
【
図29】
図29は、マウスMIモデルにおける拡張終期での左心室拡張に及ぼすBMP10pro(22-312)-FcまたはhENG(27-581)-mFcの効果を示す。Mモード心エコーを取得して、偽処置動物、MI-PBS(ビヒクル対照)処置動物、MI-hENG(27-581)-mFc処置動物およびMI-BM10Ppro(22-312)-Fc処置動物における拡張終期での左心室拡張を測定した。MI-PBSマウスは、偽手術動物と比較して増加した左心室拡張終期径(LVEDD mm)を示した。BMP10pro(22-312)-FcまたはhENG(27-581)-mFc処置は、心不全のこのMIモデルにおいて左心室拡張終期径を有意に減少させた。(*)は、一元配置ANOVAに続くチューキーを意味する。
【0072】
【
図30】
図30は、マウスMIモデルにおける心線維症に及ぼすBMP10pro(22-312)-FcまたはhENG(27-581)-mFcの効果を示す。MI-PBS(ビヒクル対照)処置動物、MI-BMP10pro(22-312)-Fc処置動物およびMI-hENG(27-581)-mFc処置動物から心臓を取り出し、10%ホルマリン中で固定し、次いでマッソン三色染色のために薄片を作製して、線維症を評価した。MI-PBSマウスは、偽手術動物と比較して増加した心線維症を示した。BMP10pro(22-312)-FcまたはhENG(27-581)-mFc処置は、心不全のこのMIモデルにおいて心線維症を有意に減少させた。(*)は、一元配置ANOVAに続くチューキーを意味する。
【0073】
【
図31】
図31は、マウスMIモデルにおける短縮率に及ぼすBMP10pro(22-312)-FcまたはhENG(27-581)-mFcの効果を示す。Mモード心エコーを取得して、偽処置動物、MI-PBS(ビヒクル対照)処置動物、MI-BMP10pro(22-312)-Fcまたは/およびMI-hENG(27-581)-mFc処置動物における左心室拡張終期径および左心室収縮終期径を測定した。次式を使用して拡張終期径(EDD)および収縮終期径(ESD)から短縮率(FS)を計算した:FS=100%×[(EDD-ESD)/EDD]。TAC-PBSマウスは、偽手術動物と比較して約20%減少した短縮率を示した。hENG(27-581)-mFc処置は、心不全のこのMIモデルにおいて短縮率拡張を有意に増加させた。(*)は、一元配置ANOVAに続くチューキーを意味する。
【0074】
【
図32】
図32は、マウスMIモデルにおける駆出率に及ぼすBMP10pro(22-312)-FcまたはhENG(27-581)-mFcの効果を示す。Mモード心エコーを取得して、偽処置動物、MI-PBS(ビヒクル対照)処置動物、MI-BMP10pro(22-312)-Fc処置動物およびMI-hENG(27-581)-mFc処置動物における拡張終期容積(EDD)および収縮終期容積(ESD)を測定した。次式を使用して駆出率(EF)を計算した:EF%=(EDV-ESV)/EDV。MI-PBSマウスは、偽手術動物と比較して減少した駆出率を示した。hENG(27-581)-mFc処置は、心不全のこのMIモデルにおいて駆出率を有意に増加させた。(*)は、一元配置ANOVAに続くチューキーを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0075】
発明の詳細な説明
1.概観
TGFβスーパーファミリーは、TGFβ、アクチビン、ノダル、骨形成タンパク質(BMP)、増殖および分化因子(GDF)、ならびに抗ミュラー管ホルモン(AMH)を含む、30種を超える分泌型因子から構成される[Weissら(2013年)Developmental Biology、2巻(1号):47~63頁]。脊椎動物および無脊椎動物の両方において見出されるスーパーファミリーのメンバーは、多様な組織において遍在的に発現され、動物の寿命を通じた発生の最も初期の段階の間に機能する。実際、TGFβスーパーファミリータンパク質は、幹細胞自己再生、原腸陥入、分化、臓器形態形成および成体組織恒常性の重要なメディエーターである。この遍在的な活性と一致して、異常なTGFβスーパーファミリーシグナル伝達は、広範なヒト病理と関連する。
【0076】
TGFβスーパーファミリーのリガンドは、一方のモノマーの中央の3-1/2ターンのらせんが、他方のモノマーのベータ鎖によって形成される凹面表面に対してパッキングされた、同じダイマー構造を共有する。TGFβファミリーメンバーの大部分は、分子間ジスルフィド結合によってさらに安定化される。このジスルフィド結合は、2つの他のジスルフィド結合によって形成される環をくぐり抜け、「システインノット」モチーフと呼ばれるものを生成する[Linら(2006年)Reproduction 132巻:179~190頁;およびHinckら(2012年)FEBS Letters 586巻:1860~1870頁]。
【0077】
TGFβスーパーファミリーシグナル伝達は、リガンド刺激の際に下流のSMADタンパク質(例えば、SMADタンパク質1、2、3、5および8)をリン酸化および活性化するI型およびII型セリン/スレオニンキナーゼ受容体のヘテロマー複合体によって媒介される[Massague(2000年)Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 1巻:169~178頁]。これらのI型およびII型受容体は、システインリッチ領域を有するリガンド結合性細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および予測されたセリン/スレオニンキナーゼ特異性を有する細胞質ドメインから構成される膜貫通タンパク質である。一般に、I型受容体は細胞内シグナル伝達を媒介し、II型受容体は、TGF-ベータスーパーファミリーリガンドに結合するために必要である。I型およびII型受容体は、リガンド結合後に安定な複合体を形成し、II型受容体によるI型受容体のリン酸化を生じる。
【0078】
TGFβファミリーは、それらが結合するI型受容体およびそれらが活性化するSmadタンパク質に基づいて、2つの系統学的分岐へと分割され得る。一方は、より最近進化した分岐であり、例えば、Smad2および3を活性化するI型受容体を介してシグナル伝達するTGFβ、アクチビン、GDF8、GDF9、GDF11、BMP3およびノダルを含む[Hinck(2012年)FEBS Letters 586巻:1860~1870頁]。他方の分岐は、このスーパーファミリーのより遠縁のタンパク質を含み、例えば、Smad1、5および8を介してシグナル伝達するBMP2、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8a、BMP8b、BMP9、BMP10、GDF1、GDF5、GDF6およびGDF7を含む。
【0079】
アクチビンは、TGFβスーパーファミリーのメンバーであり、卵胞刺激ホルモンの分泌の調節因子として当初発見されたが、引き続いて、種々の生殖性および非生殖性の役割が特徴付けられている。2つの密接に関連したβサブユニットのホモ/ヘテロダイマー(それぞれ、βAβA、βBβBおよびβAβB)である3つの主要なアクチビン形態(A、BおよびAB)が存在する。ヒトゲノムもまた、アクチビンCおよびアクチビンEをコードし、これらは、肝臓で主に発現され、βCまたはβEを含むヘテロダイマー形態もまた公知である。TGF-ベータスーパーファミリー中で、アクチビンは、卵巣および胎盤細胞におけるホルモン産生を刺激でき、神経細胞の生存を支持でき、細胞型に依存して細胞周期の進行に正または負の影響を与えることができ、少なくとも両生類の胚において中胚葉分化を誘導できる、独自の多機能性因子である[DePaoloら(1991年)Proc Soc Ep Biol Med. 198巻:500~512頁;Dysonら(1997年)Curr Biol. 7巻:81~84頁;およびWoodruff(1998年)Biochem Pharmacol. 55巻:953~963頁]。いくつかの組織では、アクチビンシグナル伝達は、その関連のヘテロダイマーであるインヒビンによってアンタゴナイズされる。例えば、下垂体からの卵胞刺激ホルモン(FSH)分泌の調節において、アクチビンは、FSHの合成および分泌を促進するが、インヒビンは、FSHの合成および分泌を低減させる。アクチビン生理活性を調節し得る、および/またはアクチビンに結合し得る他のタンパク質には、フォリスタチン(FS)、フォリスタチン関連タンパク質(FLRGまたはFSTL3としても公知のFSRP)およびα2-マクログロブリンが含まれる。
【0080】
BMPおよびGDFは一緒になって、TGFβスーパーファミリーの特徴的フォールディングを共有するシステイン-ノットサイトカインのファミリーを形成する[Riderら(2010年)Biochem J.、429巻(1号):1~12頁]。このファミリーは、例えば、BMP2、BMP4、BMP6、BMP7、BMP2a、BMP3、BMP3b(GDF10としても公知)、BMP4、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8、BMP8a、BMP8b、BMP9(GDF2としても公知)、BMP10、BMP11(GDF11としても公知)、BMP12(GDF7としても公知)、BMP13(GDF6としても公知)、BMP14(GDF5としても公知)、BMP15、GDF1、GDF3(VGR2としても公知)、GDF8(ミオスタチンとしても公知)、GDF9、GDF15およびデカペンタプレジックを含む。BMPという名称を与えた骨形成を誘導する能力に加えて、BMP/GDFは、広範な組織の発生において形態形成活性を示す。BMP/GDFホモダイマーおよびヘテロダイマーは、I型およびII型受容体ダイマーの組合せと相互作用して、複数の可能なシグナル伝達複合体を産生し、2つの競合するセットのSMAD転写因子のうち一方の活性化をもたらす。BMP/GDFは、高度に特異的な局在化した機能を有する。これらは、BMP/GDF発現の発生的制限、および高い親和性でサイトカインに結合するいくつかの特異的BMPアンタゴニストタンパク質の分泌を介することを含めたいくつかの方法で調節される。不思議なことに、いくつかのこれらのアンタゴニストは、TGFβスーパーファミリーリガンドと似ている。
【0081】
本明細書で示されるように、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3bおよびBMP5を含む種々のBMPタンパク質に結合する可溶性BMP10proポリペプチドは、心肥大、心リモデリングおよび心線維症の重症度を低減させること、ならびに横行大動脈縮窄術(TAC)心不全モデルにおいて心機能を改善することにおいて有効である。さらに、BMP10pro処置は、この研究において心不全患者の生存時間を増加させた。BMP10proポリペプチドは、心筋梗塞(MI)心不全モデルにおいても同様の有利な効果を有した。さらに、BMP9およびBMP10に結合する可溶性エンドグリンポリペプチドは、TACおよびMIの両方の心不全モデルにおいて種々の有利な効果を有することが示された。いずれの特定の機構にも束縛されることは望まないが、BMP10proポリペプチドおよびエンドグリンポリペプチドの効果は、特にBMP10、BMP9、BMP6、BMP3bおよびBMP5のうち1種または複数種のBMPシグナル伝達アンタゴニスト効果によって主に引き起こされると予測される。機構にかかわらず、本明細書に提示されるデータから、BMPシグナル伝達アンタゴニストが、心肥大の重症度を低減させ、心リモデリングを減少させ、心線維症を減少させ、心不全を処置するにあたり他の正の効果を有することが明らかである。血圧、肥大、心リモデリングおよび線維症はダイナミックであり、変化は、血圧、肥大、心リモデリングおよび線維症を増加させる因子と血圧、肥大、心リモデリングおよび線維症を減少させる因子とのバランスに依存することに留意すべきである。血圧、肥大、心リモデリングおよび線維症は、血圧、肥大、心リモデリングおよび線維症を低減させる因子を増加させること;血圧、肥大、心リモデリングおよび線維症を促進する因子を減少させること;またはそれら両方によって、減少され得る。血圧、肥大、心リモデリングおよび線維症を減少させる(低減させる)という用語は、血圧、肥大、心リモデリングおよび線維症における観察可能な物理的変化を指し、変化が生じる機構に関して中立であることが意図される。
【0082】
本明細書に記載される研究において使用した心臓についての動物モデルは、ヒトにおける有効性を予測するとみなされ、したがって、本開示は、ヒトにおいて心不全を処置するため、特に、心不全の1つまたは複数の合併症を処置する、予防する、またはその重症度もしくは持続時間を低減させるためにBMP10proポリペプチド、エンドグリンポリペプチドおよび他のBMPアンタゴニストを使用するための方法を提供する。本明細書に開示される場合、用語BMPアンタゴニストは、例えば、1種または複数種のBMPリガンド[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3bおよびBMP5]を阻害するアンタゴニスト;1種または複数種のBMP相互作用性I型受容体、II型受容体または共受容体(例えば、ALK1、ActRIIA、ActRIIB、BMPRIIおよびエンドグリン)を阻害するアンタゴニスト;および1種または複数種の下流シグナル伝達成分(例えば、Smadタンパク質、例えば、Smad2および3)を阻害するアンタゴニストを含む、BMPシグナル伝達をアンタゴナイズするために使用され得る種々の薬剤を指す。本開示の方法および使用に従って使用されるBMPアンタゴニストには、種々の形態、例えば、リガンドトラップ(例えば、可溶性BMP10proポリペプチド、ActRIIAポリペプチド、ActRIIBポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよびエンドグリンポリペプチド)、抗体アンタゴニスト(例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、ALK1、ActRIIA、ActRIIB、BMPRIIおよびエンドグリンのうち1種または複数種を阻害する抗体)、小分子アンタゴニスト[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、ALK1、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、エンドグリンおよび1種もしくは複数のSmadタンパク質(例えば、Smad2および3)のうち1種または複数種を阻害する小分子]、およびヌクレオチドアンタゴニスト[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、ALK1、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、エンドグリンおよび1種もしくは複数のSmadタンパク質(例えば、Smad2および3)のうち1つまたは複数を阻害するヌクレオチド配列]が含まれる。
【0083】
本明細書で使用される用語は一般に、本開示の文脈の範囲内および各用語が使用される具体的な文脈において、当技術分野におけるその通常の意味を有する。ある特定の用語は、本開示の組成物および方法、ならびにそれらをどのように作製し使用するかを記述する際のさらなるガイダンスを実施者に提供するために、本明細書の以下および他の箇所で論じられる。用語の任意の使用の範囲または意味は、それが使用される具体的な文脈から明らかである。
【0084】
「相同な」は、その全ての文法的形態およびつづりのバリエーションで、同じ種の生物中のスーパーファミリーからのタンパク質、ならびに異なる種の生物からの相同なタンパク質を含む、「共通の進化的起源」を有する2つのタンパク質間の関係性を指す。かかるタンパク質(およびそれらをコードする核酸)は、パーセント同一性に関してであれ、特定の残基またはモチーフおよび保存された位置の存在によってであれ、それらの配列類似性によって反映される配列相同性を有する。しかし、一般的な用法および本出願では、用語「相同な」は、「高度に」などの副詞を用いて修飾される場合、配列類似性を指し得、共通の進化的起源に関連してもしなくてもよい。
【0085】
用語「配列類似性」は、その全ての文法的形態で、共通の進化的起源を共有してもしなくてもよい核酸またはアミノ酸配列間での同一性または対応の程度を指す。
【0086】
「パーセント(%)配列同一性」は、参照ポリペプチド(またはヌクレオチド)配列に関して、配列をアラインし、必要に応じてギャップを導入して、いずれの保存的置換も配列同一性の一部とみなさずに、最大のパーセント配列同一性を達成した後の、参照ポリペプチド(ヌクレオチド)配列中のアミノ酸残基(または核酸)に対して同一な、候補配列中のアミノ酸残基(または核酸)の百分率として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定することを目的としたアラインメントは、例えば、公に入手可能なコンピューターソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアを使用して、当技術分野の技術範囲内の種々の方法で達成され得る。当業者は、比較されている配列の全長にわたって最大のアラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインするための適切なパラメーターを決定することができる。しかし、本明細書の目的のために、%アミノ酸(核酸)配列同一性値は、配列比較コンピュータープログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータープログラムは、Genentech,Inc.の著作であり、ソースコードは、米国著作権局、Washington D.C.、20559においてユーザー文書と共に提出されており、米国著作権登録第TXU510087号の下で登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.、South San Francisco、Calif.から公に入手可能であり、またはソースコードからコンパイルされ得る。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX(登録商標) V4.0Dを含むUNIX(登録商標)オペレーティングシステムでの使用のためにコンパイルすべきである。全ての配列比較パラメーターは、ALIGN-2プログラムによって設定され、変動しない。
【0087】
「アゴナイズする」は、その全ての文法的形態で、タンパク質および/もしくは遺伝子を活性化するプロセス(例えば、そのタンパク質の遺伝子発現を活性化もしくは増幅することによる、または不活性タンパク質を活性状態に入るように誘導することによる)またはタンパク質の活性および/もしくは遺伝子の活性を増加させるプロセスを指す。
【0088】
「アンタゴナイズする」は、その全ての文法的形態で、タンパク質および/もしくは遺伝子を阻害するプロセス(例えば、そのタンパク質の遺伝子発現を阻害もしくは減少させることによる、または活性タンパク質を不活性状態に入るように誘導することによる)またはタンパク質の活性および/もしくは遺伝子の活性を減少させるプロセスを指す。
【0089】
用語「約」および「およそ」は、本明細書および特許請求の範囲を通じて数値に関連して使用される場合、当業者が精通し許容できる正確さの区間を示す。一般に、かかる正確さの区間は、±10%である。あるいは、特に生物学的系では、用語「約」および「およそ」は、所与の値の、あるオーダーの大きさ以内、好ましくは≦5倍、より好ましくは≦2倍以内である値を意味し得る。
【0090】
本明細書に開示される数値範囲は、その範囲を規定する数字を含む。
【0091】
用語「1つの(a)」および「1つの(an)」は、その用語が使用される文脈が明らかに他を示さない限り、複数形の指示対象を含む。用語「1つの(a)」(または「1つの(an)」)、ならびに用語「1つまたは複数の」および「少なくとも1つの」は、本明細書で相互交換可能に使用され得る。さらに、「および/または」は、本明細書で使用する場合、残りのものを伴うまたは伴わない、2つまたはそれよりも多くの特定された特色または成分の各々の具体的な開示と解釈すべきである。したがって、用語「および/または」は、本明細書で「Aおよび/またはB」などの語句において使用する場合、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単独)および「B」(単独)を含むことが意図される。同様に、用語「および/または」は、「A、Bおよび/またはC」などの語句において使用する場合、以下の態様の各々を包含することが意図される:A、BおよびC;A、BまたはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単独);B(単独);ならびにC(単独)。
【0092】
2.BMP10プロペプチド、ActRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチド、BMPRIIポリペプチドおよびエンドグリンポリペプチド
ある特定の態様では、本開示は、BMP10プロペプチド(BMP10pro)ポリペプチドおよびその使用(例えば、心不全または心不全の合併症を処置する)に関する。本明細書で使用する場合、用語「BMP10ポリペプチド」は、任意の種に由来する10型の骨形成タンパク質のファミリーを指す。用語「BMP10ポリペプチド」は、天然に存在するBMP10ポリペプチドならびに有用な活性を保持するその任意のバリアント(変異体、断片、融合物およびペプチド模倣形態を含む)のいずれかを含む。天然に存在するBMP10タンパク質は、一般に、そのN末端のシグナル配列、その後の二塩基性アミノ酸切断部位およびプロペプチド、その後の別の二塩基性アミノ酸切断部位および成熟ドメインを典型的には含む、より大きい前駆体としてコードされる。ヒトBMP10前駆体配列(NCBI NP_055297)は、以下に示される:
【化1】
シグナルペプチド(アミノ酸1~21)には下線が付される;成熟タンパク質(アミノ酸317~424)には
二重下線が付される;潜在的N結合型グリコシル化部位は四角で囲まれる。
図21は、配列番号32のBMP10前駆体タンパク質をコードする核酸配列を示す(この核酸は、配列番号33と称される)。
【0093】
用語「BMP10プロペプチド」または「BMP10pro」は、BMP10ファミリーメンバーの任意の天然に存在するプロペプチドならびに有用な活性を保持するその任意のバリアント(変異体、断片およびペプチド模倣形態を含む)を含むポリペプチドを指すために使用される。BMP10proポリペプチドの有用な活性の例には、BMP10タンパク質の成熟部分への結合、および成熟BMP10の活性のアンタゴニストとしての作用が含まれる。本明細書で示されるように、BMP10proポリペプチドは、BMP9、BMP6、BMP3bおよびBMP5のうち1種または複数種にも結合し得る。したがって、一部の実施形態では、BMP10proポリペプチドは、BMP9、BMP6、BMP3bおよびBMP5のうち1種または複数種のアンタゴニストとしてさらに使用され得る。BMP10プロペプチドの機能的バリアントは、例えば、成熟BMP10タンパク質への結合、ならびに/またはII型受容体、例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII;I型受容体、例えばALK1;および/もしくは共受容体、例えばエンドグリンへのBMP10の結合を競合的に阻害する能力によって特徴付けられ得る。
【0094】
ヒトBMP10プロペプチド配列は、以下に示される:
【化2-1】
【化2-2】
図22は、配列番号34に対応するBMP10プロペプチドをコードする核酸配列を示す(この核酸は、配列番号35と称される)。
【0095】
BMP10プロペプチドは、脊椎動物において保存されている。したがって、当技術分野で周知のおよび本明細書に記載される技術を使用して異なる脊椎動物由来のBMP10プロペプチド配列のアラインメントを生成でき、これらのアラインメントを使用して、成熟BMP10結合活性にとって重要なプロペプチドドメイン内の重要なアミノ酸位置を予測できるだけでなく、成熟BMP10結合活性を顕著に変更することなしに置換に対して許容性がある可能性が高いアミノ酸位置を予測できる。したがって、本明細書で開示された方法に従って有用な活性なヒトBMP10proバリアントポリペプチドは、別の脊椎動物BMP10proポリペプチドの配列由来の対応する位置に1つもしくは複数のアミノ酸を含み得、または、ヒトもしくは他の脊椎動物配列中の残基と類似の残基を含み得る。
【0096】
本明細書で示されるように、プロペプチド配列のC末端アルギニンの欠失(配列番号34の296位のアミノ酸の欠失)を有するBMP10proドメインを含むバリアントBMP10proポリペプチドは、BMP10に対する高い親和性を保持し、BMP10アンタゴニストとして使用され得る。プロペプチド配列のC末端に4アミノ酸の欠失(配列番号34の293~296位のアミノ酸の欠失)を有するBMP10proドメインを含む別のバリアントBMP10proポリペプチドを生成した。驚くべきことに、プロペプチド配列のC末端から4アミノ酸が欠失されたバリアントBMP10proポリペプチドは、C末端アルギニンのみの欠失を有するBMP10proポリペプチドよりも強力な、BMP10活性のアンタゴニストであった。したがって、配列番号34に関してアミノ酸292、293、294、295および296のうちいずれか1つにおいて停止するBMP10proポリペプチドドメインは全て、活性であると予測されたが、292において停止する構築物が最も活性であり得る。これらの形態のいずれかが、臨床設定または実験設定によっては、使用するのに望ましい可能性がある。
【0097】
BMP10proポリペプチドは、N末端に種々のリーダー配列のいずれかをさらに含み得る。かかる配列は、真核生物の系においてペプチドが発現され、分泌経路に標的化されるのを可能にする。例えば、Ernstら、米国特許第5,082,783号(1992年)を参照のこと。あるいは、ネイティブのBMP10シグナル配列が、細胞からの突出をもたらすために使用され得る。可能なリーダー配列には、本明細書に開示される、ミツバチメリチン、TPAおよびネイティブのリーダーが含まれる。TPAリーダー配列を取り込んでいるBMP10pro-Fc融合タンパク質の例には、配列番号82および85が含まれる。シグナルペプチドのプロセシングは、数ある変量のうち、選択されるリーダー配列、使用される細胞型、および培養条件に依存して変動し得、したがって、成熟BMP10proポリペプチドの実際のN末端開始部位は、N末端方向に1、2、3、4または5アミノ酸シフトし得る。したがって、BMP10proのN末端において、配列番号34に関してアミノ酸1、2、3、4、5または6のいずれか1つにおいて始まるタンパク質は全て、活性であると予測されることが予測される。
【0098】
合わせて考えると、BMP10proの活性部分(例えば、成熟BMP10結合部分)の一般式は、配列番号34のアミノ酸6~292を含む。したがって、BMP10proポリペプチドは、例えば、配列番号34のアミノ酸1~6のいずれか1つに対応する残基において始まり(例えば、アミノ酸1、2、3、4、5または6のいずれか1つにおいて始まる)、配列番号34のアミノ酸292~296のいずれか1つに対応する位置において終わる(例えば、アミノ酸292、293、294、295または296のいずれか1つにおいて終わる)BMP10proの部分に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、本質的にそれからなり得、またはそれからなり得る。例えば、一部の実施形態では、本開示のBMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸1~296に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、それからなり得、または本質的にそれからなり得る。一部の実施形態では、本開示のBMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸1~295に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、それからなり得、または本質的にそれからなり得る。一部の実施形態では、本開示のBMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸1~294に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、それからなり得、または本質的にそれからなり得る。一部の実施形態では、本開示のBMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸1~293に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、それからなり得、または本質的にそれからなり得る。一部の実施形態では、本開示のBMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸1~292に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、それからなり得、または本質的にそれからなり得る。一部の実施形態では、本開示のBMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸2~295に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、それからなり得、または本質的にそれからなり得る。一部の実施形態では、本開示のBMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸2~292に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、それからなり得、または本質的にそれからなり得る。一部の実施形態では、本開示のBMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸3~295に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、それからなり得、または本質的にそれからなり得る。一部の実施形態では、本開示のBMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸3~294に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、それからなり得、または本質的にそれからなり得る。一部の実施形態では、本開示のBMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸3~292に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、それからなり得、または本質的にそれからなり得る。一部の実施形態では、本開示のBMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸4~292に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、それからなり得、または本質的にそれからなり得る。一部の実施形態では、本開示のBMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸5~292に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、それからなり得、または本質的にそれからなり得る。一部の実施形態では、本開示のBMP10proポリペプチドは、配列番号34のアミノ酸6~292に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、それからなり得、または本質的にそれからなり得る。好ましくは、BMP10proポリペプチドは、可溶性である。上記BMP10proポリペプチドは、成熟BMP10結合およびアンタゴナイズ活性を保持すると予測される。一部の実施形態では、かかるBMP10proポリペプチドは、BMP9、BMP6、BMP3bおよびBMP5のうち1種または複数種にさらに結合し得る。
【0099】
ある特定の態様では、本開示は、ActRIIポリペプチドおよびその使用(例えば、心不全または心不全の合併症を処置する)に関する。本明細書で使用する場合、用語「ActRII」は、II型アクチビン受容体のファミリーを指す。このファミリーは、アクチビン受容体IIA型(ActRIIA)およびアクチビン受容体IIB型(ActRIIB)を含む。
【0100】
本明細書で使用する場合、用語「ActRIIB」は、任意の種由来のアクチビン受容体IIB型(ActRIIB)タンパク質のファミリー、および変異誘発または他の改変によってかかるActRIIBタンパク質から誘導されたバリアントを指す。ActRIIBに対する本明細書の言及は、現在同定されている形態のいずれか1つに対する言及であると理解される。ActRIIBファミリーのメンバーは、一般に、システインリッチ領域を含むリガンド結合性細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および予測されたセリン/スレオニンキナーゼ活性を有する細胞質ドメインから構成される膜貫通タンパク質である。
【0101】
用語「ActRIIBポリペプチド」は、ActRIIBファミリーメンバーの任意の天然に存在するポリペプチドならびに有用な活性を保持するその任意のバリアント(変異体、断片、融合物およびペプチド模倣形態を含む)を含むポリペプチドを含む。かかるバリアントActRIIBポリペプチドの例は、本開示を通じて、ならびにその全体が参照によって本明細書に組み込まれる国際特許出願公開番号WO2006/012627、WO2008/097541およびWO2010/151426に提供される。本明細書に記載される全てのActRIIB関連ポリペプチドについてのアミノ酸の番号付けは、他が具体的に示されない限り、以下に提供されるヒトActRIIB前駆体タンパク質配列(配列番号1)の番号付けに基づく。
【0102】
ヒトActRIIB前駆体タンパク質配列は、以下の通りである:
【化3】
【0103】
シグナルペプチドは、一重下線で示される;細胞外ドメインは、太字で示される;潜在的な内因性N結合型グリコシル化部位は、二重下線で示される。
【0104】
プロセシングされた細胞外ActRIIBポリペプチド配列は、以下の通りである:
【化4】
【0105】
一部の実施形態では、このタンパク質は、N末端に「SGR…」配列を伴って産生され得る。細胞外ドメインのC末端「テイル」は、
一重下線によって示される。「テイル」が欠失した配列(Δ15配列)は、以下の通りである:
【化5】
【0106】
配列番号1の64位にアラニン(A64)を有するActRIIBの形態もまた、文献中で報告されている。例えば、Hildenら(1994年)Blood、83巻(8号):2163~2170頁を参照のこと。A64置換を有するActRIIBの細胞外ドメインを含むActRIIB-Fc融合タンパク質は、アクチビンおよびGDF11に対する比較的低い親和性を有することが確認されている。対照的に、64位にアルギニン(R64)を有する同じActRIIB-Fc融合タンパク質は、低ナノモル濃度から高ピコモル濃度の範囲の、アクチビンおよびGDF11に対する親和性を有する。したがって、R64を有する配列は、本開示では、ヒトActRIIBについての「野生型」参照配列として使用される。
【0107】
64位にアラニンを有するActRIIBの形態は、以下の通りである:
【化6】
【0108】
シグナルペプチドは、一重下線によって示され、細胞外ドメインは、太字によって示される。
【0109】
代替的A64形態のプロセシングされた細胞外ActRIIBポリペプチド配列は、以下の通りである:
【化7】
【0110】
一部の実施形態では、このタンパク質は、N末端に「SGR…」配列を伴って産生され得る。細胞外ドメインのC末端「テイル」は、
一重下線によって示される。「テイル」が欠失した配列(Δ15配列)は、以下の通りである:
【化8】
【0111】
ヒトActRIIB前駆体タンパク質をコードする核酸配列は、以下に示され(配列番号7)、これは、ActRIIB前駆体のアミノ酸1~513をコードするGenbank参照配列NM_001106.3のヌクレオチド25~1560を示す。示される配列は、64位にアルギニンを提供し、代わりにアラニンを提供するように改変され得る。シグナル配列には下線が付される。
【化9-1】
【化9-2】
【0112】
プロセシングされた細胞外ヒトActRIIBポリペプチドをコードする核酸配列は、以下の通りである(配列番号8)。示される配列は、64位にアルギニンを提供し、代わりにアラニンを提供するように改変され得る。
【化10】
【0113】
ヒトActRIIB細胞外ドメインおよびヒトActRIIA細胞外ドメインのアミノ酸配列のアラインメントは、
図1に示される。このアラインメントは、ActRIIリガンドと直接接触すると考えられている、両方の受容体内のアミノ酸残基を示す。例えば、複合ActRII構造は、ActRIIB-リガンド結合ポケットが、残基Y31、N33、N35、L38~T41、E47、E50、Q53~K55、L57、H58、Y60、S62、K74、W78~N83、Y85、R87、A92、およびE94~F101によって一部規定されることを示した。これらの位置では、保存的変異が許容されると予測される。
【0114】
さらに、ActRIIBは、脊椎動物において十分に保存されており、細胞外ドメインの大きいストレッチは完全に保存されている。例えば、
図2は、種々のActRIIBオルソログと比較した、ヒトActRIIB細胞外ドメインの多配列アラインメントを示す。ActRIIBに結合するリガンドの多くもまた、高度に保存されている。したがって、これらのアラインメントから、正常なActRIIB-リガンド結合活性にとって重要なリガンド結合ドメイン内の重要なアミノ酸位置を予測できるだけでなく、正常なActRIIB-リガンド結合活性を顕著に変更することなしに置換に対して許容性がある可能性が高いアミノ酸位置を予測できる。したがって、本明細書で開示された方法に従って有用な活性なヒトActRIIBバリアントポリペプチドは、別の脊椎動物ActRIIBの配列由来の対応する位置に1つもしくは複数のアミノ酸を含み得、または、ヒトもしくは他の脊椎動物配列中の残基と類似の残基を含み得る。限定を意味しないが、以下の例は、活性ActRIIBバリアントを定義するためのこのアプローチを示す。ヒト細胞外ドメイン(配列番号103)中のL46は、Xenopus ActRIIB(配列番号105)ではバリンであり、したがって、この位置は変更され得、必要に応じて、別の疎水性残基、例えば、V、IもしくはF、または非極性残基、例えばAに変更され得る。ヒト細胞外ドメイン中のE52は、XenopusではKであり、このことは、この部位が、極性残基、例えば、E、D、K、R、H、S、T、P、G、YおよびおそらくはAを含む広範な種々の変化に対して許容性があり得ることを示している。ヒト細胞外ドメイン中のT93は、XenopusではKであり、このことは、好ましい極性残基、例えば、S、K、R、E、D、H、G、P、GおよびYによる広い構造的バリエーションが、この位置において許容されることを示している。ヒト細胞外ドメイン中のF108は、XenopusではYであり、したがって、Yまたは他の疎水性基、例えば、I、VもしくはLが許容されるはずである。ヒト細胞外ドメイン中のE111は、XenopusではKであり、このことは、D、R、KおよびH、ならびにQおよびNを含む荷電残基が、この位置において許容されることを示している。ヒト細胞外ドメイン中のR112は、XenopusではKであり、このことは、RおよびHを含む塩基性残基が、この位置において許容されることを示している。ヒト細胞外ドメイン中の119位は、比較的あまり保存されておらず、げっ歯類ではPとして現れ、XenopusではVとして現れ、したがって、本質的に任意のアミノ酸がこの位置において許容されるはずである。
【0115】
さらに、ActRIIタンパク質は、構造的および機能的特徴に関して、特にリガンド結合に関して、当技術分野で特徴付けられている[Attisanoら(1992年)Cell 68巻(1号):97~108頁;Greenwaldら(1999年)Nature Structural Biology 6巻(1号):18~22頁;Allendorphら(2006年)PNAS 103巻(20号):7643~7648頁;Thompsonら(2003年)The EMBO Journal 22巻(7号):1555~1566頁;ならびに米国特許第7,709,605号、同第7,612,041号および同第7,842,663号]。本明細書の教示に加えて、これらの参考文献は、1つまたは複数の正常な活性(例えば、リガンド結合活性)を保持するActRIIBバリアントを生成するための方法についてのガイダンスを十分に提供している。
【0116】
例えば、スリーフィンガー毒素フォールディング(three-finger toxinfold)として公知の特徴的構造モチーフは、I型およびII型受容体によるリガンド結合にとって重要であり、各モノマー受容体の細胞外ドメイン内の変動する位置に位置する保存されたシステイン残基によって形成される[Greenwaldら(1999年)Nat Struct Biol 6巻:18~22頁;およびHinck(2012年)FEBS Lett 586巻:1860~1870頁]。したがって、これらの保存されたシステインのうち最も外側のシステインが境界となる、ヒトActRIIBのコアリガンド結合ドメインは、配列番号1(ActRIIB前駆体)の29~109位に対応する。これらの、システインが境界となるコア配列に隣接する構造的にあまり秩序だっていないアミノ酸は、リガンド結合を必ずしも変更せずに、N末端において1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27もしくは28残基、および/またはC末端において1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24もしくは25残基、トランケートされ得る。N末端および/またはC末端トランケーションのための例示的なActRIIB細胞外ドメインには、配列番号2、3、5および6が含まれる。
【0117】
Attisanoらは、ActRIIBの細胞外ドメインのC末端におけるプロリンノットの欠失が、アクチビンに対する受容体の親和性を低減させたことを示した。本配列番号1のアミノ酸20~119を含むActRIIB-Fc融合タンパク質「ActRIIB(20-119)-Fc」は、プロリンノット領域および完全な膜近傍ドメインを含むActRIIB(20-134)-Fcと比較して、GDF11およびアクチビンへの結合を低減させた(例えば、米国特許第7,842,663号を参照のこと)。しかし、ActRIIB(20-129)-Fcタンパク質は、プロリンノット領域が破壊されていても、野生型と比較して類似ではあるが幾分低減された活性を保持する。
【0118】
したがって、(配列番号1に関して)アミノ酸134、133、132、131、130および129において停止するActRIIB細胞外ドメインは全て、活性であると予測されるが、134または133において停止する構築物が最も活性であり得る。同様に、(配列番号1に関して)残基129~134のいずれかにおける変異は、リガンド結合親和性を大幅には変更しないと予測される。このことの支持として、(配列番号1に関して)P129およびP130の変異は、リガンド結合を実質的に減少させないことが、当技術分野で公知である。したがって、本開示のActRIIBポリペプチドは、アミノ酸109(最後のシステイン)ほどの早期に終わり得るが、109および119または109と119との間(例えば、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118または119)において終わる形態は、低減されたリガンド結合を有すると予測される。(本配列番号1に関して)アミノ酸119は、あまり保存されておらず、したがって、容易に変更またはトランケートされる。ActRIIBポリペプチド、および(配列番号1に関して)128またはそれ以降において終わるActRIIBベースのGDFトラップは、リガンド結合活性を保持するはずである。ActRIIBポリペプチド、および配列番号1に関して119および127または119と127との間(例えば、119、120、121、122、123、124、125、126または127)において終わるActRIIBベースのGDFトラップは、中間の結合能を有する。これらの形態のいずれかが、臨床設定または実験設定によっては、使用するのに望ましい可能性がある。
【0119】
ActRIIBのN末端において、(配列番号1に関して)アミノ酸29またはその前において始まるタンパク質は、リガンド結合活性を保持すると予測される。アミノ酸29は、最初のシステインを示す。(配列番号1に関して)24位におけるアラニンからアスパラギンへの変異は、リガンド結合に実質的に影響を与えることなしに、N結合型グリコシル化配列を導入する[米国特許第7,842,663号]。このことは、アミノ酸20~29に対応する、シグナル切断ペプチドとシステイン架橋された領域との間の領域中の変異が十分に許容されることを確認する。特に、(配列番号1に関して)20、21、22、23および24位において始まるActRIIBポリペプチドは、一般的なリガンド結合活性を保持するはずであり、(配列番号1に関して)25、26、27、28および29位において始まるActRIIBポリペプチドもまた、リガンド結合活性を保持すると予測される。驚くべきことに、22、23、24または25において始まるActRIIB構築物が最も高い活性を有することが、例えば、米国特許第7,842,663号において実証されている。
【0120】
合わせて考えると、ActRIIBの活性部分(例えば、リガンド結合部分)の一般式は、配列番号1のアミノ酸29~109を含む。したがって、ActRIIBポリペプチドは、例えば、配列番号1のアミノ酸20~29のいずれか1つに対応する残基において始まり(例えば、アミノ酸20、21、22、23、24、25、26、27、28または29のいずれか1つにおいて始まる)、配列番号1のアミノ酸109~134のいずれか1つに対応する位置において終わる(例えば、アミノ酸109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133または134のいずれか1つにおいて終わる)ActRIIBの部分に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、本質的にそれからなり得、またはそれからなり得る。他の例には、配列番号1の20~29(例えば、20、21、22、23、24、25、26、27、28または29位のいずれか1つ)または21~29(例えば、21、22、23、24、25、26、27、28または29位のいずれか1つ)の位置において始まり、配列番号1の119~134(例えば、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133または134位のいずれか1つ)、119~133(例えば、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132または133位のいずれか1つ)、129~134(例えば、129、130、131、132、133または134位のいずれか1つ)または129~133(例えば、129、130、131、132または133位のいずれか1つ)の位置において終わるポリペプチドが含まれる。他の例には、配列番号1の20~24(例えば、20、21、22、23または24位のいずれか1つ)、21~24(例えば、21、22、23または24位のいずれか1つ)または22~25(例えば、22、22、23または25位のいずれか1つ)の位置において始まり、配列番号1の109~134(例えば、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133または134位のいずれか1つ)、119~134(例えば、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133または134位のいずれか1つ)または129~134(例えば、129、130、131、132、133または134位のいずれか1つ)の位置において終わる構築物が含まれる。これらの範囲内のバリアント、特に、配列番号1の対応する部分に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなるものもまた企図される。
【0121】
本明細書に記載されるバリエーションは、種々の方法で組み合わされ得る。一部の実施形態では、ActRIIBバリアントは、リガンド結合ポケット中に1、2、5、6、7、8、9、10または15個以下の保存的アミノ酸変化を含み、必要に応じて、リガンド結合ポケット中の40、53、55、74、79および/または82位に、ゼロ、1つまたは複数の非保存的変更を含む。可変性が特に十分に許容され得る結合ポケットの外側の部位は、細胞外ドメインのアミノ末端およびカルボキシ末端(上述の通り)、ならびに(配列番号1に関して)42~46および65~73位を含む。65位におけるアスパラギンからアラニンへの変更(N65A)は、R64背景でのリガンド結合を減少させないようである[米国特許第7,842,663号]。この変化は、おそらくは、A64背景でのN65におけるグリコシル化を排除し、したがって、この領域中では顕著な変化が許容される可能性が高いことを実証している。R64A変化はあまり許容されないが、R64Kは十分に許容され、したがって、別の塩基性残基、例えばHが、64位において許容され得る[米国特許第7,842,663号]。さらに、当技術分野で記載された変異誘発プログラムの結果は、保存するのが有益な場合が多いActRIIB中のアミノ酸位置が存在することを示している。配列番号1に関して、これらには、80位(酸性または疎水性アミノ酸)、78位(疎水性、特に、トリプトファン)、37位(酸性、特に、アスパラギン酸またはグルタミン酸)、56位(塩基性アミノ酸)、60位(疎水性アミノ酸、特に、フェニルアラニンまたはチロシン)が含まれる。したがって、本開示は、ActRIIBポリペプチド中の保存され得るアミノ酸のフレームワークを提供する。保存するのが望ましい可能性がある他の位置は、全て配列番号1に関して、以下の通りである:52位(酸性アミノ酸)、55位(塩基性アミノ酸)、81位(酸性)、98(極性または荷電、特に、E、D、RまたはK)。
【0122】
ActRIIB細胞外ドメイン中へのさらなるN結合型グリコシル化部位(N-X-S/T)の付加は、十分に許容されることが以前に実証されている(例えば、米国特許第7,842,663号を参照のこと)。したがって、N-X-S/T配列は、一般に、本開示のActRIIBポリペプチド中の、例えば
図1で規定されたリガンド結合ポケットの外側の位置において導入され得る。非内因性N-X-S/T配列の導入に特に適した部位には、(配列番号1に関して)アミノ酸20~29、20~24、22~25、109~134、120~134または129~134が含まれる。N-X-S/T配列はまた、ActRIIB配列とFcドメインまたは他の融合成分との間のリンカー中に、ならびに必要に応じて融合成分自体の中に導入され得る。かかる部位は、既存のSもしくはTに関して正確な位置にNを導入すること、または既存のNに対応する位置にSもしくはTを導入することによって、最小限の労力で導入され得る。したがって、N結合型グリコシル化部位を創出する望ましい変更は、(配列番号1に関して)A24N、R64N、S67N(おそらくはN65A変更と組み合わせて)、E105N、R112N、G120N、E123N、P129N、A132N、R112SおよびR112Tである。グリコシル化されると予測される任意のSは、グリコシル化によって得られる保護に起因して、免疫原性部位を創出することなくTに変更され得る。同様に、グリコシル化されると予測される任意のTは、Sに変更され得る。したがって、(配列番号1に関して)変更S67TおよびS44Tが企図される。同様に、A24Nバリアントでは、S26T変更が使用され得る。したがって、本開示のActRIIBポリペプチドは、上記1つまたは複数のさらなる非内因性N結合型グリコシル化コンセンサス配列を有するバリアントであり得る。
【0123】
ある特定の実施形態では、本開示は、その断片、機能的バリアントおよび改変形態を含むActRIIBポリペプチド、ならびにその使用(例えば、心不全または心不全の合併症を処置する)に関する。好ましくは、ActRIIBポリペプチドは、可溶性である(例えば、ActRIIBの細胞外ドメイン)。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、1種または複数種のTGF-ベータスーパーファミリーリガンド[例えば、GDF11、GDF8、アクチビン(アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE)、BMP6、GDF3、BMP10および/またはBMP9]の活性(例えば、Smadシグナル伝達)をアンタゴナイズする。したがって、一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、1種または複数種のTGF-ベータスーパーファミリーリガンド[例えば、GDF11、GDF8、アクチビン(アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE)、BMP6、GDF3、BMP10および/またはBMP9]に結合する。一部の実施形態では、本開示のActRIIBポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸20~29に対応する残基において始まり(例えば、アミノ酸20、21、22、23、24、25、26、27、28または29のいずれか1つにおいて始まる)、配列番号1のアミノ酸109~134に対応する位置において終わる(例えば、アミノ酸109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133または134のいずれか1つにおいて終わる)ActRIIBの部分に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。一部の実施形態では、ActRIIBポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸29~109に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、それからなり、または本質的にそれからなる。一部の実施形態では、本開示のActRIIBポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸29~109に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、それからなり、または本質的にそれからなり、ここで、配列番号1のL79に対応する位置は、酸性アミノ酸(天然に存在する酸性アミノ酸DおよびE、または人工酸性アミノ酸)である。ある特定の実施形態では、本開示のActRIIBポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸25~131に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、それからなり、または本質的にそれからなる。ある特定の実施形態では、本開示のActRIIBポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸25~131に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、それからなり、または本質的にそれからなり、ここで、配列番号1のL79に対応する位置は、酸性アミノ酸である。一部の実施形態では、本開示のActRIIBポリペプチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、58、59、60、63、64、65、66、123、131、132および133のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、それからなり、または本質的にそれからなる。一部の実施形態では、本開示のActRIIBポリペプチドは、配列番号1、2、3、4、5、6、58、59、60、63、64、65、66、123、131、132および133のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、それからなり、または本質的にそれからなり、ここで、配列番号1のL79に対応する位置は、酸性アミノ酸である。一部の実施形態では、本開示のActRIIBポリペプチドは、少なくとも1つのActRIIBポリペプチドを含み、それからなり、または本質的にそれからなり、ここで、配列番号1のL79に対応する位置は、酸性アミノ酸ではない(即ち、天然に存在する酸性アミノ酸DでもEでもなく、人工酸性アミノ酸残基でもない)。
【0124】
ある特定の実施形態では、本開示は、ActRIIAポリペプチドに関する。本明細書で使用する場合、用語「ActRIIA」は、任意の種由来のアクチビン受容体IIA型(ActRIIA)タンパク質のファミリー、および変異誘発または他の改変によってかかるActRIIAタンパク質から誘導されたバリアントを指す。ActRIIAに対する本明細書の言及は、現在同定されている形態のいずれか1つに対する言及であると理解される。ActRIIAファミリーのメンバーは、一般に、システインリッチ領域を含むリガンド結合性細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、および予測されたセリン/スレオニンキナーゼ活性を有する細胞質ドメインから構成される膜貫通タンパク質である。
【0125】
用語「ActRIIAポリペプチド」は、ActRIIAファミリーメンバーの任意の天然に存在するポリペプチドならびに有用な活性を保持するその任意のバリアント(変異体、断片、融合物およびペプチド模倣形態を含む)を含むポリペプチドを含む。かかるバリアントActRIIAポリペプチドの例は、本開示を通じて、ならびにその全体が参照によって本明細書に組み込まれる国際特許出願公開番号WO2006/012627およびWO2007/062188に提供される。本明細書に記載される全てのActRIIA関連ポリペプチドについてのアミノ酸の番号付けは、他が具体的に示されない限り、以下に提供されるヒトActRIIA前駆体タンパク質配列(配列番号9)の番号付けに基づく。
【0126】
ヒトActRIIA前駆体タンパク質配列は、以下の通りである:
【化11】
【0127】
シグナルペプチドは、一重下線によって示される;細胞外ドメインは、太字で示される;潜在的な内因性N結合型グリコシル化部位は、二重下線によって示される。
【0128】
プロセシングされた細胞外ヒトActRIIAポリペプチド配列は、以下の通りである:
【化12】
【0129】
細胞外ドメインのC末端「テイル」は、
一重下線によって示される。「テイル」が欠失した配列(Δ15配列)は、以下の通りである:
【化13】
【0130】
ヒトActRIIA前駆体タンパク質をコードする核酸配列は、Genbank参照配列NM_001616.4のヌクレオチド159~1700として、以下に示される(配列番号12)。シグナル配列には下線が付される。
【化14-1】
【化14-2】
【0131】
プロセシングされたヒトActRIIAポリペプチドをコードする核酸配列は、以下の通りである:
【化15】
【0132】
ActRIIAは、脊椎動物において十分に保存されており、細胞外ドメインの大きいストレッチは完全に保存されている。例えば、
図3は、種々のActRIIAオルソログと比較した、ヒトActRIIA細胞外ドメインの多配列アラインメントを示す。ActRIIAに結合するリガンドの多くもまた、高度に保存されている。したがって、これらのアラインメントから、正常なActRIIA-リガンド結合活性にとって重要なリガンド結合ドメイン内の重要なアミノ酸位置を予測できるだけでなく、正常なActRIIA-リガンド結合活性を顕著に変更することなしに置換に対して許容性がある可能性が高いアミノ酸位置を予測できる。したがって、本明細書で開示された方法に従って有用な活性なヒトActRIIAバリアントポリペプチドは、別の脊椎動物ActRIIAの配列由来の対応する位置に1つもしくは複数のアミノ酸を含み得、または、ヒトもしくは他の脊椎動物配列中の残基と類似の残基を含み得る。
【0133】
限定を意味しないが、以下の例は、活性ActRIIAバリアントを定義するためのこのアプローチを示す。
図3に示されるように、ヒト細胞外ドメイン中のF13は、Ovis aries(配列番号108)、Gallus gallus(配列番号111)、Bos Taurus(配列番号112)、Tyto alba(配列番号113)およびMyotis davidii(配列番号114)のActRIIAではYであり、このことは、F、WおよびYを含む芳香族残基が、この位置において許容されることを示している。ヒト細胞外ドメイン中のQ24は、Bos TaurusのActRIIAではRであり、このことは、D、R、K、HおよびEを含む荷電残基が、この位置において許容されることを示している。ヒト細胞外ドメイン中のS95は、Gallus gallusおよびTyto albaのActRIIAではFであり、このことは、この部位が、極性残基、例えば、E、D、K、R、H、S、T、P、G、Y、およびおそらくは疎水性残基、例えば、L、IまたはFを含む広範な種々の変化に対して許容性があり得ることを示している。ヒト細胞外ドメイン中のE52は、Ovis ariesのActRIIAではDであり、このことは、DおよびEを含む酸性残基が、この位置において許容されることを示している。ヒト細胞外ドメイン中のP29は、比較的あまり保存されておらず、Ovis ariesのActRIIAではSとして現れ、Myotis davidiiのActRIIAではLとして現れ、したがって、本質的に任意のアミノ酸がこの位置において許容されるはずである。
【0134】
さらに、上で論じたように、ActRIIタンパク質は、構造的/機能的特徴に関して、特にリガンド結合に関して、当技術分野で特徴付けられている[Attisanoら(1992年)Cell 68巻(1号):97~108頁;Greenwaldら(1999年)Nature Structural Biology 6巻(1号):18~22頁;Allendorphら(2006年)PNAS 103巻(20号):7643~7648頁;Thompsonら(2003年)The EMBO Journal 22巻(7号):1555~1566頁;ならびに米国特許第7,709,605号、同第7,612,041号および同第7,842,663号]。本明細書の教示に加えて、これらの参考文献は、1つまたは複数の所望の活性(例えば、リガンド結合活性)を保持するActRIIAバリアントを生成するための方法についてのガイダンスを十分に提供している。
【0135】
例えば、スリーフィンガー毒素フォールディングとして公知の特徴的構造モチーフは、I型およびII型受容体によるリガンド結合にとって重要であり、各モノマー受容体の細胞外ドメイン内の変動する位置に位置する保存されたシステイン残基によって形成される[Greenwaldら(1999年)Nat Struct Biol 6巻:18~22頁;およびHinck(2012年)FEBS Lett 586巻:1860~1870頁]。したがって、これらの保存されたシステインのうち最も外側のシステインが境界となる、ヒトActRIIAのコアリガンド結合ドメインは、配列番号9(ActRIIA前駆体)の30~110位に対応する。したがって、これらの、システインが境界となるコア配列に隣接する構造的にあまり秩序だっていないアミノ酸は、リガンド結合を必ずしも変更せずに、N末端において約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28または29残基、およびC末端において約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24または25残基、トランケートされ得る。例示的なActRIIA細胞外ドメイントランケーションには、配列番号10および11が含まれる。
【0136】
したがって、ActRIIAの活性部分(例えば、リガンド結合)の一般式は、配列番号9のアミノ酸30~110を含む、それから本質的になる、またはそれからなるポリペプチドである。したがって、ActRIIAポリペプチドは、例えば、配列番号9のアミノ酸21~30のいずれか1つに対応する残基において始まり(例えば、アミノ酸21、22、23、24、25、26、27、28、29または30のいずれか1つにおいて始まる)、配列番号9のアミノ酸110~135のいずれか1つに対応する位置において終わる(例えば、アミノ酸110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133または135のいずれか1つにおいて終わる)ActRIIAの部分に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み得、本質的にそれからなり得、またはそれからなり得る。他の例には、配列番号9の21~30(例えば、アミノ酸21、22、23、24、25、26、27、28、29または30のいずれか1つにおいて始まる)、22~30(例えば、アミノ酸22、23、24、25、26、27、28、29または30のいずれか1つにおいて始まる)、23~30(例えば、アミノ酸23、24、25、26、27、28、29または30のいずれか1つにおいて始まる)、24~30(例えば、アミノ酸24、25、26、27、28、29または30のいずれか1つにおいて始まる)から選択される位置において始まり、配列番号9の111~135(例えば、アミノ酸111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134または135のいずれか1つにおいて終わる)、112~135(例えば、アミノ酸112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134または135のいずれか1つにおいて終わる)、113~135(例えば、アミノ酸113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134または135のいずれか1つにおいて終わる)、120~135(例えば、アミノ酸120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134または135のいずれか1つにおいて終わる)、130~135(例えば、アミノ酸130、131、132、133、134または135のいずれか1つにおいて終わる)、111~134(例えば、アミノ酸110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133または134のいずれか1つにおいて終わる)、111~133(例えば、アミノ酸110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132または133のいずれか1つにおいて終わる)、111~132(例えば、アミノ酸110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131または132のいずれか1つにおいて終わる)または111~131(例えば、アミノ酸110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130または131のいずれか1つにおいて終わる)から選択される位置において終わる構築物が含まれる。これらの範囲内のバリアント、特に、配列番号9の対応する部分に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなるものもまた企図される。したがって、一部の実施形態では、ActRIIAポリペプチドは、配列番号9のアミノ酸30~110に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なポリペプチドを含み得る、それから本質的になり得る、またはそれからなり得る。必要に応じて、ActRIIAポリペプチドは、配列番号9のアミノ酸30~110に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であり、リガンド結合ポケット中に1、2、5、10または15個以下の保存的アミノ酸変化を含むポリペプチドを含む。
【0137】
ある特定の実施形態では、本開示は、その断片、機能的バリアントおよび改変形態を含むActRIIAポリペプチド、ならびにその使用(例えば、それを必要とする患者において免疫応答を増加させる、およびがんを処置する)に関する。好ましくは、ActRIIAポリペプチドは、可溶性である(例えば、ActRIIAの細胞外ドメイン)。一部の実施形態では、ActRIIAポリペプチドは、1種または複数種のTGF-ベータスーパーファミリーリガンド[例えば、GDF11、GDF8、アクチビン(アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE)、BMP6、GDF3、BMP10および/またはBMP9]の(例えば、Smadシグナル伝達)を阻害する。一部の実施形態では、ActRIIAポリペプチドは、1種または複数種のTGF-ベータスーパーファミリーリガンド[例えば、GDF11、GDF8、アクチビン(アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンC、アクチビンE)、BMP6、GDF3、BMP10および/またはBMP9]に結合する。一部の実施形態では、本開示のActRIIAポリペプチドは、配列番号9のアミノ酸21~30に対応する残基において始まり(例えば、アミノ酸21、22、23、24、25、26、27、28、29または30のいずれか1つにおいて始まる)、配列番号9のアミノ酸110~135のいずれか1つに対応する位置において終わる(例えば、アミノ酸110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133または135のいずれか1つにおいて終わる)ActRIIAの部分に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む、それから本質的になる、またはそれからなる。一部の実施形態では、ActRIIAポリペプチドは、配列番号9のアミノ酸30~110に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、それからなり、または本質的にそれからなる。ある特定の実施形態では、ActRIIAポリペプチドは、配列番号9のアミノ酸21~135に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、それからなり、または本質的にそれからなる。一部の実施形態では、ActRIIAポリペプチドは、配列番号9、10、11、50、54および57のいずれか1つのアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含み、それからなり、または本質的にそれからなる。
【0138】
ある特定の態様では、本開示は、GDFトラップポリペプチド(「GDFトラップ」とも呼ばれる)に関する。一部の実施形態では、バリアントActRIIポリペプチドが、対応する野生型ActRIIポリペプチドと比較して変更された1つまたは複数のリガンド結合活性を有するように、本開示のGDFトラップは、ActRIIポリペプチド(例えば、「野生型」または未改変のActRIIポリペプチド)の細胞外ドメイン(リガンド結合ドメインとも呼ばれる)中に1つまたは複数の変異(例えば、アミノ酸付加、欠失、置換、およびそれらの組合せ)を含むバリアントActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAおよびActRIIBポリペプチド)である。好ましい実施形態では、本開示のGDFトラップポリペプチドは、対応する野生型ActRIIポリペプチドと類似の少なくとも1つの活性を保持する。例えば、好ましいGDFトラップは、GDF11および/またはGDF8に結合し、その機能を阻害する(例えば、アンタゴナイズする)。一部の実施形態では、本開示のGDFトラップはさらに、TGF-ベータスーパーファミリーのリガンドのうち1種または複数種に結合し、それを阻害する。したがって、本開示は、1種または複数種のActRIIリガンドに対する変更された結合特異性を有するGDFトラップポリペプチドを提供する。
【0139】
説明するために、1種または複数種のActRII結合リガンド、例えば、アクチビン(アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンCおよび/またはアクチビンE)、特に、アクチビンAを超えて、GDF11および/またはGDF8に対する変更されたリガンド結合ドメインの選択性を増加させる、1つまたは複数の変異が選択され得る。必要に応じて、変更されたリガンド結合ドメインは、野生型リガンド結合ドメインについての比と比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍またはさらには1000倍大きい、アクチビン結合についてのKdの、GDF11および/またはGDF8結合についてのKdに対する比を有する。必要に応じて、変更されたリガンド結合ドメインは、野生型リガンド結合ドメインと比較して、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍またはさらには1000倍大きい、アクチビンを阻害する際のIC50の、GDF11および/またはGDF8を阻害する際のIC50に対する比を有する。必要に応じて、変更されたリガンド結合ドメインは、アクチビンを阻害する際のIC50と比較して少なくとも2分の1、5分の1、10分の1、20分の1、50分の1、100分の1またはさらには1000分の1のIC50で、GDF11および/またはGDF8を阻害する。
【0140】
ある特定の好ましい実施形態では、本開示のGDFトラップは、GDF11および/またはGDF8(ミオスタチンとしても公知)に優先的に結合するように設計される。必要に応じて、GDF11および/またはGDF8結合トラップは、アクチビンBにさらに結合し得る。必要に応じて、GDF11および/またはGDF8結合トラップは、BMP6にさらに結合し得る。必要に応じて、GDF11および/またはGDF8結合トラップは、BMP10にさらに結合し得る。必要に応じて、GDF11および/またはGDF8結合トラップは、アクチビンBおよびBMP6にさらに結合し得る。ある特定の実施形態では、本開示のGDFトラップは、例えば、野生型ActRIIポリペプチドと比較して、アクチビン(例えば、アクチビンA、アクチビンA/B、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE)に対する減弱された結合親和性を有する。ある特定の好ましい実施形態では、本開示のGDFトラップポリペプチドは、アクチビンAに対する減弱された結合親和性を有する。
【0141】
ActRIIBタンパク質のアミノ酸残基(例えば、配列番号1に関してE39、K55、Y60、K74、W78、L79、D80およびF101)は、ActRIIBリガンド結合ポケット中にあり、例えば、アクチビンA、GDF11およびGDF8を含むそのリガンドへの結合の媒介を助ける。したがって、本開示は、これらのアミノ酸残基において1つまたは複数の変異を含むActRIIB受容体の変更されたリガンド結合ドメイン(例えば、GDF8/GDF11結合ドメイン)を含むGDFトラップポリペプチドを提供する。
【0142】
具体的な例として、ActRIIBのリガンド結合ドメインの正に荷電したアミノ酸残基Asp(D80)は、GDF8に優先的に結合するがアクチビンには結合しないGDFトラップポリペプチドを産生するために、異なるアミノ酸残基へと変異され得る。好ましくは、配列番号1に関してD80残基は、非荷電アミノ酸残基、陰性アミノ酸残基および疎水性アミノ酸残基からなる群から選択されるアミノ酸残基に変化される。さらなる具体的な例として、配列番号1の疎水性残基L79は、変更されたアクチビン-GDF11/GDF8結合特性を付与するために変更され得る。例えば、L79P置換は、アクチビン結合よりも高い程度まで、GDF11結合を低減させる。対照的に、酸性アミノ酸[アスパラギン酸またはグルタミン酸]によるL79の置き換え[L79DまたはL79E置換]は、GDF11結合親和性を保持しつつ、アクチビンA結合親和性を大きく低減させる。例示的な実施形態では、本明細書に記載される方法は、1つまたは複数のさらなるアミノ酸置換、付加または欠失と必要に応じて組み合わせて配列番号1の79位に対応する位置に酸性アミノ酸(例えば、DまたはE)を含むバリアントActRIIBポリペプチドであるGDFトラップポリペプチドを利用する。
【0143】
用語「BMPRIIポリペプチド」は、BMPRIIファミリーメンバーの任意の天然に存在するポリペプチドならびに有用な活性を保持するその任意のバリアント(変異体、断片、融合物およびペプチド模倣形態を含む)を含むポリペプチドを含む。本明細書に記載されるタンパク質は、特記しない限り、ヒト形態である。本明細書に記載される全てのBMPRII関連ポリペプチドについてのアミノ酸の番号付けは、他が具体的に示されない限り、以下に提供されるヒトBMPRII前駆体タンパク質配列(配列番号14)の番号付けに基づく。
【0144】
ヒトBMPRII前駆体のプロセシングされていないカノニカルアイソフォームのアミノ酸配列(NCBI参照配列NP_001195.2)は、以下の通りである:
【化16】
【0145】
シグナルペプチドには下線が付され、細胞外ドメインは太字で示される。
【0146】
プロセシングされた細胞外BMPRIIポリペプチドの配列(配列番号15)は、以下の通りである:
【化17】
【0147】
配列中のシステイン残基の位置に基づいて、BMPRIIポリペプチドは、配列番号15のアミノ酸1、2、3、4、5、6、7または8において始まり、配列番号15のアミノ酸97~124のいずれかにおいて終わるアミノ酸配列を含み得る。カノニカルヒトBMPRII前駆体タンパク質をコードする核酸配列は、以下に示され(配列番号16)、これは、NCBI参照配列NM_001204.6のヌクレオチド1149~4262に対応する。シグナル配列には下線が付される。
【化18-1】
【化18-2】
【0148】
プロセシングされた細胞外BMPRIIポリペプチドをコードする核酸配列(配列番号17)は、以下の通りである:
【化19】
【0149】
ヒトBMPRII前駆体のより短いアイソフォーム(アイソフォームA)が報告されており、これは、上記カノニカルBMPRII前駆体と同じ細胞外ドメイン配列を含む。ヒトBMPRII前駆体アイソフォームAのアミノ酸配列(NCBI受託番号AAA86519.1)は、以下の通りである:
【化20-1】
【化20-2】
【0150】
シグナルペプチドには下線が付され、細胞外ドメインは太字で示される。
【0151】
ヒトBMPRII前駆体タンパク質のアイソフォームAをコードする核酸配列は、以下に示され(配列番号19)、これは、NCBI受託番号U25110.1のヌクレオチド163~1752に対応する。シグナル配列には下線が付される。
【化21】
【0152】
スリーフィンガー毒素フォールディングとして公知の特徴的構造モチーフは、TGFベータスーパーファミリーI型およびII型受容体によるリガンド結合にとって重要であり、各モノマー受容体の細胞外ドメイン内の変動する位置に位置する10、12または14個の保存されたシステイン残基によって形成される。例えば、Greenwaldら(1999年)Nat Struct Biol 6巻:18~22頁;Galat(2011年)Cell Mol Life Sci 68巻:3437~3451頁;Hinck(2012年)FEBS Lett 586巻:1860~1870頁を参照のこと。これらの保存されたシステインのうち最も外側のシステインが境界となる、BMPRII受容体のコアリガンド結合ドメインは、配列番号14の34~123位を含む。配列番号14のアミノ酸34(ECDの最初のシステイン)またはそれよりも前において始まり、配列番号14のアミノ酸123(ECDの最後のシステイン)またはそれよりも後において終わるBMPRIIポリペプチドは、リガンド結合活性を保持すると予測される。したがって、リガンド結合性BMPRIIポリペプチドの例には、例えば、配列番号14のアミノ酸27~34のいずれか1つ(27、28、29、30、31、32、33または34)において始まり、配列番号14のアミノ酸123~150のいずれか1つ(123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、147、148、149または150)において終わるアミノ酸配列を含むポリペプチドが含まれる。一部の実施形態では、本開示のBMPRIIポリペプチドは、配列番号14のアミノ酸34~123に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本開示のBMPRIIポリペプチドは、配列番号14のアミノ酸27~150に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本開示のBMPRIIポリペプチドは、配列番号14の27~123に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本開示のBMPRIIポリペプチドは、配列番号14の34~150に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、BMPRIIポリペプチドは、BMP9、BMP10、BMP15および/またはアクチビンBに結合し、BMPRIIポリペプチドは、カノニカルBMP、例えば、BMP2、BMP4、BMP6および/またはBMP7への実質的な結合を示さない。結合は、例えば、精製されたタンパク質を使用して、溶液中で、または表面プラズモン共鳴システム、例えばBiacore(商標)システムにおいて、評価され得る。
【0153】
用語「ALK1ポリペプチド」は、ALK1ファミリーメンバーの任意の天然に存在するポリペプチドならびに有用な活性を保持するその任意のバリアント(変異体、断片、融合物およびペプチド模倣形態を含む)を含むポリペプチドを含む。
【0154】
ヒトALK1前駆体タンパク質配列(NCBI参照配列NP_000011.2)は、以下の通りである:
【化22】
【0155】
シグナルペプチドは、一重下線によって示され、細胞外ドメインは、太字で示される。
【0156】
プロセシングされた細胞外ALK1ポリペプチド配列は、以下の通りである:
【化23】
【0157】
ヒトALK1前駆体タンパク質をコードする核酸配列は、以下に示され(配列番号22)、これは、Genbank参照配列NM_000020.2のヌクレオチド284~1792に対応する。シグナル配列には下線が付される。
【化24-1】
【化24-2】
【0158】
プロセシングされた細胞外ALK1ポリペプチドをコードする核酸配列は、以下の通りである:
【化25】
【0159】
上で論じたように、スリーフィンガー毒素フォールディングとして公知の特徴的構造モチーフは、TGFベータスーパーファミリーI型およびII型受容体によるリガンド結合にとって重要であり、各モノマー受容体の細胞外ドメイン内の変動する位置に位置する10、12または14個の保存されたシステイン残基によって形成される。これらの保存されたシステインのうち最も外側のシステインが境界となる、ALK1受容体のコアリガンド結合ドメインは、配列番号20の34~95位を含む。配列番号20のアミノ酸34(ECDの最初のシステイン)またはそれよりも前において始まり、配列番号20のアミノ酸95(ECDの最後のシステイン)またはそれよりも後において終わるALK1ポリペプチドは、リガンド結合活性を保持すると予測される。したがって、リガンド結合性ALK1ポリペプチドの例には、例えば、配列番号20のアミノ酸22~34のいずれか1つ(22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33または34)において始まり、配列番号20のアミノ酸95~118のいずれか1つ(95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117または118)において終わるアミノ酸配列を含むポリペプチドが含まれる。一部の実施形態では、本開示のALK1ポリペプチドは、配列番号20のアミノ酸34~95に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本開示のALK1ポリペプチドは、配列番号20のアミノ酸22~118に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本開示のALK1ポリペプチドは、配列番号20の22~95に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、本開示のALK1ポリペプチドは、配列番号20の34~95に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、ALK1ポリペプチドは、BMP9およびBMP10に結合する。結合は、例えば、精製されたタンパク質を使用して、溶液中で、または表面プラズモン共鳴システム、例えばBiacore(商標)システムにおいて、評価され得る。
【0160】
用語「エンドグリンポリペプチド」は、エンドグリンファミリーメンバーの任意の天然に存在するポリペプチドならびに有用な活性を保持するその任意のバリアント(変異体、断片、融合物およびペプチド模倣形態を含む)を含むポリペプチドを含む。
【0161】
ヒトエンドグリンアイソフォーム1前駆体タンパク質配列(GenBank NM_001114753)は、以下の通りである:
【化26】
【0162】
リーダー配列および予測された膜貫通ドメインは各々、一重下線によって示される。
【0163】
ヒトエンドグリンアイソフォーム1前駆体タンパク質をコードする核酸配列は、以下に示される(配列番号25;Genbank参照配列NM_001114753)。リーダー配列および予測された膜貫通ドメインは各々、
一重下線によって示される。
【化27-1】
【化27-2】
【0164】
ヒトエンドグリンアイソフォーム2前駆体タンパク質配列(GenBank NM_001114753)は、以下の通りである:
【化28】
【0165】
リーダー配列および予測された膜貫通ドメインは各々、一重下線によって示される。
【0166】
ヒトALK1アイソフォーム2前駆体タンパク質をコードする核酸配列は、以下に示される(配列番号27;Genbank参照配列NM_001114753)。リーダー配列および予測された膜貫通ドメインは各々、
一重下線によって示される。
【化29-1】
【化29-2】
【0167】
本出願人は、より短い、C末端がトランケートされたENGポリペプチドのバリアントを含むFc融合タンパク質が、TGF-β1およびTGF-β3への感知できる結合を示さないが、その代わり、ENG(26-437)-Fc、または全長ENG ECDを含むFc融合タンパク質のいずれかと比較して顕著により緩徐な解離速度で、BMP9へのより高い親和性の結合を示すことを以前に実証している(例えば、その教示の全体が参照によって本明細書に組み込まれるUS2015/0307588を参照のこと)。具体的には、配列番号24のアミノ酸378、359および346において終わるC末端がトランケートされたバリアントは全て、ENG(26-437)またはENG(26-586)と比較して、実質的により高い親和性でBMP9に結合する(および、減弱されていない親和性でBMP10に結合する)ことが見出された。しかし、BMP9およびBMP10への結合は、アミノ酸332、329または257までのより広範なC末端トランケーションによって完全に破壊された。したがって、アミノ酸333とアミノ酸378との間で終結するENGポリペプチドは全て、活性であると予測されるが、アミノ酸346および359において、またはアミノ酸346と359との間において終わる構築物が、最も活性であり得る。アミノ酸360および378において、またはアミノ酸360と378との間において終わる形態は、ENG(26-378)によって示される中間のリガンド結合親和性に向かう傾向があると予測される。他の重要なパラメーターの改善は、全長ENG ECDを含む融合タンパク質と比較した、ENG(26-346)-Fcを用いて観察されたタンパク質発現および排出半減期の改善に基づいて、アミノ酸333および378において、またはアミノ酸333と378との間において終わるある特定の構築物を用いた場合に予測される(例えば、US2015/0307588を参照のこと)。これらのトランケートされたバリアント形態のいずれかが、臨床設定または実験設定によっては、使用するのに望ましい可能性がある。
【0168】
N末端において、配列番号24のアミノ酸26(最初のグルタミン酸)またはその前において始まるENGポリペプチドは、リガンド結合活性を保持すると予測される。本明細書およびUS2015/0307588に記載されるように、配列番号24のアミノ酸61までのN末端トランケーションは、より広範なN末端トランケーションと同様、リガンド結合を消失させる。しかし、本明細書にも開示されるように、ENG一次配列のコンセンサスモデル化は、配列番号24のアミノ酸26~60によって規定される領域内の秩序だった二次構造が、配列番号24の42~45位において高い信頼度で予測される4残基ベータ鎖、および配列番号24の28~29位において非常に低い信頼度で予測される2残基ベータ鎖に限定されることを示している。したがって、活性ENGポリペプチドは、配列番号24のアミノ酸26において(またはその前において)優先的に、またはアミノ酸27~42のいずれかにおいて始まることになる。
【0169】
合わせて考えると、ENGポリペプチドの活性部分は、配列番号24のアミノ酸27~42のいずれか1つ(例えば、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41または42)において始まり、配列番号24のアミノ酸333~378のいずれか1つ(333、334、335、336、337、338、339、340、341、342、344、345、346、347、348、349、350、351、352、353、354、355、356、357、358、359、360、361、362、363、364、365、366、367、368、369、370、371、372、373、374、375、376、277または378)において終わるアミノ酸配列、ならびに配列番号24の対応する部分に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有する配列を含み得る。例えば、活性ENGポリペプチドは、配列番号24のアミノ酸配列26~333、26~334、26~335、26~336、26~337、26~338、26~339、26~340、26~341、26~342、26~343、26~344、26~345または26~346、ならびに配列番号24のアミノ酸27~42のいずれかにおいて始まるこれらの配列のバリアントを含み得る。例示的なENGポリペプチドは、配列番号24のアミノ酸配列26~346、26~359および26~378を含む。これらの範囲内のバリアント、特に、配列番号24の対応する部分に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するものもまた企図される。ENGポリペプチドは、配列番号24のアミノ酸379~430からなる配列を含まなくてもよい。ある特定の実施形態では、ENGポリペプチドは、BMP-9およびBMP-10に結合し、ENGポリペプチドは、TGF-β1に対してもTGF-β3に対しても実質的な結合を示さない。結合は、精製されたタンパク質を使用して、溶液中で、または表面プラズモン共鳴システム、例えばBiacore(商標)システムにおいて、評価され得る。
【0170】
ENGポリペプチドは、N末端に種々のリーダー配列のいずれかをさらに含み得る。かかる配列は、真核生物の系においてペプチドが発現され、分泌経路に標的化されるのを可能にする。例えば、Ernstら、米国特許第5,082,783号(1992年)を参照のこと。あるいは、ネイティブのENGシグナル配列が、細胞からの突出をもたらすために使用され得る。可能なリーダー配列には、ミツバチメリチン、TPAおよびネイティブのリーダーが含まれる。シグナルペプチドのプロセシングは、数ある変量のうち、選択されるリーダー配列、使用される細胞型、および培養条件に依存して変動し得、したがって、成熟ENGポリペプチドの実際のN末端開始部位は、N末端またはC末端のいずれかの方向に、1、2、3、4または5アミノ酸シフトし得る。成熟ENG-Fc融合タンパク質の例には、下線を付したENGポリペプチド部分を伴って以下に示される配列番号28~31が含まれる。
【0171】
ヒトENG(26-378)-hFc(トランケートされたFc)
【化30】
【0172】
ヒトENG(26-359)-hFc
【化31-1】
【化31-2】
【0173】
ヒトENG(26-359)-hFc(トランケートされたFc)
【化32】
【0174】
ヒトENG(26-346)-hFc(トランケートされたFc)
【化33】
【0175】
一部の実施形態では、本開示は、治療有効性または安定性(例えば、有効期間、およびin vivoでのタンパク質分解性分解に対する耐性)を増強するなどの目的のために、BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドの構造を改変することによって機能的バリアントを作製することを企図する。バリアントは、アミノ酸置換、欠失、付加、またはそれらの組合せによって産生され得る。例えば、イソロイシンまたはバリンによるロイシンの、グルタミン酸によるアスパラギン酸の、セリンによるスレオニンの単独の置き換え、または構造的に関連するアミノ酸によるあるアミノ酸の類似の置き換え(例えば、保存的変異)が、得られた分子の生物学的活性に対して主要な影響を有さないと予測することは、合理的である。保存的置き換えは、側鎖において関連があるアミノ酸のファミリー内で起こる置き換えである。本開示のポリペプチドのアミノ酸配列における変化が機能的ホモログを生じるかどうかは、バリアントポリペプチドが、野生型ポリペプチドと類似の様式で細胞における応答を生じる能力、またはバリアントポリペプチドが、例えば、BMP2、BMP2/7、BMP3、BMP4、BMP4/7、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8a、BMP8b、BMP9、BMP10、GDF3、GDF5、GDF6/BMP13、GDF7、GDF8、GDF9b/BMP15、GDF11/BMP11、GDF15/MIC1、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、ノダル、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アルテミン(artemin)、パーセフィン、MISおよびLeftyを含む1種もしくは複数のTGF-ベータリガンドに結合する能力を評価することによって、容易に決定され得る。
【0176】
ある特定の実施形態では、本開示は、ポリペプチドのグリコシル化を変更するための、BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドの具体的な変異を企図する。かかる変異は、1つまたは複数のグリコシル化部位、例えば、O結合型またはN結合型グリコシル化部位を導入または排除するために選択され得る。アスパラギン連結型グリコシル化認識部位は、一般に、適切な細胞性グリコシル化酵素によって特異的に認識されるトリペプチド配列であるアスパラギン-X-スレオニンまたはアスパラギン-X-セリン(式中、「X」は任意のアミノ酸である)を含む。変更は、ポリペプチドの配列への1つもしくは複数のセリンもしくはスレオニン残基の付加、または1つもしくは複数のセリンもしくはスレオニン残基による置換によっても行われ得る(O結合型グリコシル化部位について)。グリコシル化認識部位の第1または第3のアミノ酸位置の一方または両方における種々のアミノ酸置換または欠失(および/または第2の位置におけるアミノ酸欠失)は、改変されたトリペプチド配列における非グリコシル化を生じる。ポリペプチド上の炭水化物部分の数を増加させる別の手段は、ポリペプチドへのグリコシドの化学的または酵素的カップリングによる。使用されるカップリング様式に依存して、糖(複数可)が、(a)アルギニンおよびヒスチジン;(b)遊離カルボキシル基;(c)遊離スルフヒドリル基、例えば、システインのもの;(d)遊離ヒドロキシル基、例えば、セリン、スレオニンもしくはヒドロキシプロリンのもの;(e)芳香族残基、例えば、フェニルアラニン、チロシンもしくはトリプトファンのもの;または(f)グルタミンのアミド基に付加され得る。ポリペプチド上に存在する1つまたは複数の炭水化物部分の除去は、化学的におよび/または酵素的に達成され得る。化学的脱グリコシル化には、例えば、化合物トリフルオロメタンスルホン酸または等価な化合物へのポリペプチドの曝露が関与し得る。この処理は、アミノ酸配列をインタクトなままにしながら、連結糖(N-アセチルグルコサミンまたはN-アセチルガラクトサミン)を除くほとんどまたは全ての糖の切断を生じる。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、Thotakuraら[Meth. Enzymol.(1987年)138巻:350頁]によって記載されるように、種々のエンドグリコシダーゼおよびエキソグリコシダーゼの使用によって達成され得る。哺乳動物、酵母、昆虫および植物細胞は全て、ペプチドのアミノ酸配列によって影響され得る異なるグリコシル化パターンを導入し得るので、ポリペプチドの配列は、使用される発現系の型に依存して、必要に応じて調整され得る。一般に、ヒトにおける使用のための本開示のBMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドは、適切なグリコシル化を提供する哺乳動物細胞株、例えば、HEK293またはCHO細胞株において発現され得るが、他の哺乳動物発現細胞株も同様に有用であると予測される。
【0177】
本開示は、変異体、特に、BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドのコンビナトリアル変異体、ならびにトランケーション変異体のセットを生成する方法をさらに企図する。コンビナトリアル変異体のプールは、機能的に活性な(例えば、TGF-ベータスーパーファミリーリガンド結合性)ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチド配列を同定するために特に有用である。かかるコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする目的は、例えば、変更された薬物動態または変更されたリガンド結合などの変更された特性を有するポリペプチドバリアントを生成することであり得る。種々のスクリーニングアッセイが以下に提供され、かかるアッセイは、バリアントを評価するために使用され得る。例えば、BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドバリアントは、TGF-ベータスーパーファミリー受容体へのTGF-ベータスーパーファミリーリガンドの結合を防止するため、および/またはTGF-ベータスーパーファミリーリガンドによって引き起こされるシグナル伝達を妨害するために、1種または複数種のTGF-ベータスーパーファミリーリガンド(例えば、BMP2、BMP2/7、BMP3、BMP4、BMP4/7、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8a、BMP8b、BMP9、BMP10、GDF3、GDF5、GDF6/BMP13、GDF7、GDF8、GDF9b/BMP15、GDF11/BMP11、GDF15/MIC1、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB、アクチビンAC、ノダル、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アルテミン、パーセフィン、MISおよびLefty)に結合する能力についてスクリーニングされ得る。
【0178】
BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドの活性はまた、細胞ベースのアッセイでまたはin vivoで試験され得る。例えば、筋肉細胞における筋肉産生に関与する遺伝子の発現に対するBMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドの影響が評価され得る。これは、必要に応じて、1種または複数種の組換えTGF-ベータスーパーファミリーリガンドタンパク質(例えば、BMP2、BMP2/7、BMP3、BMP4、BMP4/7、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8a、BMP8b、BMP9、BMP10、GDF3、GDF5、GDF6/BMP13、GDF7、GDF8、GDF9b/BMP15、GDF11/BMP11、GDF15/MIC1、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、ノダル、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アルテミン、パーセフィン、MISおよびLefty)の存在下で実施され得、細胞は、BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチド、ならびに必要に応じてTGF-ベータスーパーファミリーリガンドを産生するためにトランスフェクトされ得る。同様に、BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドは、マウスまたは他の動物に投与され得、1つまたは複数の測定値、例えば、筋肉の形成および強度が、当技術分野で認識された方法を使用して評価され得る。同様に、BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/もしくはエンドグリンポリペプチド、またはそれらのバリアントの活性は、例えば、本明細書に記載されるアッセイおよび当技術分野では常識のアッセイによって、がん細胞の成長に対する任意の影響について、これらの細胞において試験され得る。SMAD応答性レポーター遺伝子が、下流のシグナル伝達に対する影響をモニタリングするために、かかる細胞株において使用され得る。
【0179】
参照BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドと比較して増加した選択性、または一般には、増加した効力を有するコンビナトリアル由来のバリアントが生成され得る。かかるバリアントは、組換えDNA構築物から発現される場合、遺伝子治療プロトコールにおいて使用され得る。同様に、変異誘発が、対応する未改変のBMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドとは劇的に異なる細胞内半減期を有するバリアントを生じ得る。例えば、変更されたタンパク質は、未改変のポリペプチドの破壊を生じるタンパク質分解性分解もしくは他の細胞性プロセス、または他の方法によるその不活性化に対してより安定に、またはあまり安定でなくなるようにされ得る。かかるバリアント、およびそれをコードする遺伝子は、ポリペプチドの半減期をモジュレートすることによって、ポリペプチド複合体レベルを変更するために利用され得る。例えば、短い半減期は、より一過的な生物学的効果を生じ得、誘導性の発現系の一部である場合、細胞内での組換えポリペプチド複合体レベルのより緊密な制御を可能にし得る。Fc融合タンパク質では、変異は、BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドの半減期を変更するために、リンカー(存在する場合)および/またはFc部分において行われ得る。
【0180】
コンビナトリアルライブラリーは、潜在的ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチド配列の少なくとも一部分を各々が含むポリペプチドのライブラリーをコードする遺伝子の縮重ライブラリーによって産生され得る。例えば、潜在的ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドをコードするヌクレオチド配列の縮重セットが、個々のポリペプチドとして発現可能であるように、またはあるいは、より大きい融合タンパク質のセットとして発現可能であるように(例えば、ファージディスプレイのため)、合成オリゴヌクレオチドの混合物が、遺伝子配列へと酵素的にライゲーションされ得る。
【0181】
潜在的ホモログのライブラリーが縮重オリゴヌクレオチド配列から生成され得る多くの方法が存在する。縮重遺伝子配列の化学的合成は、自動DNA合成機で実施され得、次いで、合成遺伝子が、発現に適したベクター中にライゲーションされ得る。縮重オリゴヌクレオチドの合成は、当技術分野で周知である[Narang, SA(1983年)Tetrahedron 39巻:3頁;Itakuraら(1981年)Recombinant DNA、Proc. 3rd Cleveland Sympos. Macromolecules、AGWalton編、Amsterdam: Elsevier 273~289頁;Itakuraら(1984年)Annu. Rev. Biochem. 53巻:323頁;Itakuraら(1984年)Science 198巻:1056頁;およびIkeら(1983年)Nucleic Acid Res. 11巻:477頁]。かかる技術は、他のタンパク質の定向進化において使用されてきた[Scottら(1990年)Science 249巻:386~390頁;Robertsら(1992年)PNAS USA 89巻:2429~2433頁;Devlinら(1990年)Science 249巻:404~406頁;Cwirlaら(1990年)PNAS USA 87巻:6378~6382頁;ならびに米国特許第5,223,409号、同第5,198,346号および同第5,096,815号]。
【0182】
あるいは、他の形態の変異誘発が、コンビナトリアルライブラリーを生成するために利用され得る。例えば、本開示のBMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドは、例えば、アラニンスキャニング変異誘発を使用するスクリーニングによって[Rufら(1994年)Biochemistry 33巻:1565~1572頁;Wangら(1994年)J. Biol. Chem. 269巻:3095~3099頁;Balintら(1993年)Gene 137巻:109~118頁;Grodbergら(1993年)Eur. J. Biochem. 218巻:597~601頁;Nagashimaら(1993年)J. Biol. Chem. 268巻:2888~2892頁;Lowmanら(1991年)Biochemistry 30巻:10832~10838頁;およびCunninghamら(1989年)Science 244巻:1081~1085頁]、リンカースキャニング変異誘発によって[Gustinら(1993年)Virology 193巻:653~660頁;およびBrownら(1992年)Mol. Cell Biol. 12巻:2644~2652頁;McKnightら(1982年)Science 232巻:316頁]、飽和変異誘発によって[Meyersら(1986年)Science 232巻:613頁];PCR変異誘発によって[Leungら(1989年)Method Cell Mol Biol 1巻:11~19頁];または化学的変異誘発を含むランダム変異誘発によって[Millerら(1992年)A Short Course in BacterialGenetics、CSHL Press、Cold SpringHarbor、NY;およびGreenerら(1994年)Strategies in Mol Biol 7巻:32~34頁]、生成され得、ライブラリーから単離され得る。特にコンビナトリアル設定でのリンカースキャニング変異誘発は、BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドのトランケートされた(生理活性な)形態を同定するための代替的方法である。
【0183】
点変異およびトランケーションによって作製されたコンビナトリアルライブラリーの遺伝子産物をスクリーニングするため、もっと言えばある特定の特性を有する遺伝子産物についてcDNAライブラリーをスクリーニングするための広範な技術が、当技術分野で公知である。かかる技術は、一般に、BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドのコンビナトリアル変異誘発によって生成された遺伝子ライブラリーの迅速なスクリーニングのために適応可能である。大きい遺伝子ライブラリーをスクリーニングするために最も広く使用される技術は、典型的には、遺伝子ライブラリーを複製可能な発現ベクター中にクローニングするステップ、ベクターの得られたライブラリーで適切な細胞を形質転換するステップ、およびその産物が検出された遺伝子をコードするベクターの比較的容易な単離を、所望の活性の検出が促進する条件下で、コンビナトリアル遺伝子を発現させるステップを含む。好ましいアッセイには、TGF-ベータリガンド(例えば、BMP2、BMP2/7、BMP3、BMP4、BMP4/7、BMP5、BMP6、BMP7、BMP8a、BMP8b、BMP9、BMP10、GDF3、GDF5、GDF6/BMP13、GDF7、GDF8、GDF9b/BMP15、GDF11/BMP11、GDF15/MIC1、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンC、アクチビンE、アクチビンAB、アクチビンAC、ノダル、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニュールツリン、アルテミン、パーセフィン、MISおよびLefty)結合アッセイおよび/またはTGF-ベータリガンド媒介性細胞シグナル伝達アッセイが含まれる。
【0184】
ある特定の実施形態では、BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドは、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチド中に天然に存在する任意の改変に加えて、翻訳後修飾をさらに含み得る。かかる修飾には、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化およびアシル化が含まれるがこれらに限定されない。結果として、BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドは、非アミノ酸要素、例えば、ポリエチレングリコール、脂質、多糖または単糖、およびリン酸を含み得る。BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドの機能性に対するかかる非アミノ酸要素の影響は、他のバリアントについて本明細書に記載されるように試験され得る。本開示のポリペプチドが、新生形態のポリペプチドを切断することによって細胞において産生される場合、翻訳後プロセシングもまた、タンパク質の正確なフォールディングおよび/または機能のために重要であり得る。異なる細胞(例えば、CHO、HeLa、MDCK、293、WI38、NIH-3T3またはHEK293)は、かかる翻訳後活性のための特定の細胞マシナリーおよび特徴的機構を有し、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンまたはBMP10プロペプチドポリペプチドの正確な修飾およびプロセシングを確実にするために選択され得る。
【0185】
ある特定の態様では、本開示のBMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドは、ActRIIポリペプチド(例えば、ActRIIAまたはActRIIBポリペプチド)、BMPRII、ALK1、エンドグリンまたはBMP10プロペプチドポリペプチドの少なくとも一部分(ドメイン)および1つまたは複数の異種部分(ドメイン)を含む融合タンパク質である。かかる融合ドメインの周知の例には、ポリヒスチジン、Glu-Glu、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、チオレドキシン、プロテインA、プロテインG、免疫グロブリン重鎖定常領域(Fc)、マルトース結合タンパク質(MBP)またはヒト血清アルブミンが含まれるがこれらに限定されない。融合ドメインは、所望の特性を付与するために選択され得る。例えば、一部の融合ドメインは、アフィニティクロマトグラフィーによる融合タンパク質の単離に特に有用である。親和性精製を目的として、アフィニティクロマトグラフィー、例えば、グルタチオン、アミラーゼ、およびニッケルまたはコバルトコンジュゲートした樹脂のための適切なマトリックスが使用される。かかるマトリックスの多くは、「キット」形態、例えば、Pharmacia GST精製システム、および(HIS6)融合パートナーを用いて有用なQIAexpress(商標)システム(Qiagen)で入手可能である。別の例として、融合ドメインは、BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドの検出を促進するために選択され得る。かかる検出ドメインの例には、通常はそれに対する特異的抗体が入手可能な短いペプチド配列である種々の蛍光タンパク質(例えば、GFP)ならびに「エピトープタグ」が含まれる。それに対する特異的モノクローナル抗体が容易に入手可能な周知のエピトープタグには、FLAG、インフルエンザウイルス赤血球凝集素(HA)およびc-mycタグが含まれる。一部の場合には、融合ドメインは、適切なプロテアーゼに融合タンパク質を部分的に消化させ、それによって組換えタンパク質をそれから遊離させる、例えば、第Xa因子またはトロンビンのためのプロテアーゼ切断部位を有する。次いで、遊離されたタンパク質は、引き続くクロマトグラフィー分離によって、融合ドメインから単離され得る。選択され得る他の型の融合ドメインには、例えば、免疫グロブリン由来の定常ドメイン(例えば、Fcドメイン)を含む、マルチマー化(例えば、ダイマー化、テトラマー化)するドメインおよび機能的ドメイン(これは、さらなる生物学的機能を付与する)が含まれる。
【0186】
ある特定の態様では、本開示のBMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドは、ポリペプチドを「安定化する」ことが可能な1つまたは複数の改変を含む。「安定化する」は、減少した破壊、腎臓による減少したクリアランス、または薬剤の他の薬物動態効果にこれが起因するかどうかにかかわらず、in vitro半減期、血清半減期を増加させる一切のことを意味する。例えば、かかる改変は、ポリペプチドの有効期間を増強し、ポリペプチドの循環半減期を増強し、および/またはポリペプチドのタンパク質分解性分解を低減させる。かかる安定化性の改変には、融合タンパク質(例えば、BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドドメインならびに安定剤ドメインを含む融合タンパク質を含む)、グリコシル化部位の改変(例えば、本開示のポリペプチドへのグリコシル化部位の付加を含む)、および炭水化物部分の改変(例えば、本開示のポリペプチドからの炭水化物部分の除去を含む)が含まれるがこれらに限定されない。本明細書で使用する場合、用語「安定剤ドメイン」は、融合タンパク質の場合の融合ドメイン(例えば、免疫グロブリンFcドメイン)を指すだけでなく、非タンパク質性改変、例えば炭水化物部分、または非タンパク質性部分、例えばポリエチレングリコールもまた含む。ある特定の好ましい実施形態では、BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドは、ポリペプチドを安定化する異種ドメイン(「安定剤」ドメイン)、好ましくは、ポリペプチドの安定性をin vivoで増加させる異種ドメインと融合される。免疫グロブリンの定常ドメイン(例えば、Fcドメイン)との融合は、望ましい薬物動態特性を広範なタンパク質に付与することが公知である。同様に、ヒト血清アルブミンへの融合は、望ましい安定化特性を付与し得る。
【0187】
一部の実施形態では、本開示のActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチドは、Fc融合タンパク質である。ヒトIgG1のFc部分(G1Fc)として使用され得るネイティブのアミノ酸配列の例は、以下に示される(配列番号36)。点線の下線は、ヒンジ領域を示し、実線の下線は、天然に存在するバリアントがある位置を示す。一部、本開示は、配列番号36に対して70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなるポリペプチドを提供する。G1Fcにおいて天然に存在するバリアントは、配列番号36において使用される番号付けシステムに従うとE134DおよびM136Lを含むであろう(Uniprot P01857を参照のこと)。
【化34】
【0188】
必要に応じて、IgG1 Fcドメインは、Asp-265、リシン322およびAsn-434などの残基において、1つまたは複数の変異を有する。ある特定の場合には、これらの変異のうち1つまたは複数(例えば、Asp-265変異)を有する変異体IgG1 Fcドメインは、野生型Fcドメインと比較して、Fcγ受容体に結合する低減された能力を有する。他の場合には、これらの変異のうち1つまたは複数(例えば、Asn-434変異)を有する変異体Fcドメインは、野生型IgG1 Fcドメインと比較して、MHCクラスI関連Fc受容体(FcRN)に結合する増加された能力を有する。
【0189】
ヒトIgG2のFc部分(G2Fc)として使用され得るネイティブのアミノ酸配列の例は、以下に示される(配列番号37)。点線の下線は、ヒンジ領域を示し、
二重下線は、配列中にデータベースの矛盾が存在する位置を示す(UniProt P01859に従う)。一部、本開示は、配列番号37に対して70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなるポリペプチドを提供する。
【化35】
【0190】
ヒトIgG3のFc部分(G3Fc)として使用され得るアミノ酸配列の2つの例は、以下に示される。G3Fc中のヒンジ領域は、他のFc鎖中のヒンジ領域の最大で4倍の長さであり得、類似の17残基セグメントが先行する3つの同一な15残基セグメントを含む。以下に示される最初のG3Fc配列(配列番号38)は、単一の15残基セグメントからなる短いヒンジ領域を含むが、2番目のG3Fc配列(配列番号39)は、全長ヒンジ領域を含む。各場合において、点線の下線は、ヒンジ領域を示し、実線の下線は、UniProt P01859に従う天然に存在するバリアントがある位置を示す。一部、本開示は、配列番号38または39に対して70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなるポリペプチドを提供する。
【化36】
【0191】
G3Fcにおいて天然に存在するバリアント(例えば、Uniprot P01860を参照のこと)は、配列番号38において使用される番号付けシステムに変換した場合、E68Q、P76L、E79Q、Y81F、D97N、N100D、T124A、S169N、S169del、F221Yを含み、本開示は、これらのバリエーションのうち1つまたは複数を含むG3Fcドメインを含む融合タンパク質を提供する。さらに、ヒト免疫グロブリンIgG3遺伝子(IGHG3)は、異なるヒンジ長さを特徴とする構造的多型を示す[Uniprot P01859を参照のこと]。具体的には、バリアントWISは、V領域のほとんどおよびCH1領域の全てを欠いている。これは、ヒンジ領域中に通常存在する11位に加えて、7位に余分の鎖間ジスルフィド結合を有する。バリアントZUCは、V領域のほとんど、CH1領域の全て、およびヒンジの一部を欠く。バリアントOMMは、対立遺伝子形態または別のガンマ鎖サブクラスを示し得る。本開示は、これらのバリアントのうち1つまたは複数を含むG3Fcドメインを含むさらなる融合タンパク質を提供する。
【0192】
ヒトIgG4のFc部分(G4Fc)として使用され得るネイティブのアミノ酸配列の例は、以下に示される(配列番号40)。点線の下線は、ヒンジ領域を示す。一部、本開示は、配列番号40に対して70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなるポリペプチドを提供する。
【化37】
【0193】
Fcドメイン中の種々の操作された変異は、G1Fc配列(配列番号36)に関して本明細書で示され、G2Fc、G3FcおよびG4Fcにおける類似の変異は、
図4中のそれらとG1Fcとのアラインメントから誘導され得る。不等なヒンジ長さに起因して、アイソタイプアラインメント(
図4)に基づく類似のFc位置は、配列番号36、37、38、39および40において異なるアミノ酸番号を有する。ヒンジ、C
H2およびC
H3領域からなる免疫グロブリン配列(例えば、配列番号36、37、38、39および40)中の所与のアミノ酸位置は、番号付けがIgG1重鎖定常ドメイン全体(C
H1、ヒンジ、C
H2およびC
H3領域からなる)を包含する場合、Uniprotデータベース中の同じ位置とは異なる番号によって同定されることもまた理解され得る。
【0194】
本出願は、操作されたまたはバリアントFc領域を有する抗体およびFc融合タンパク質をさらに提供する。かかる抗体およびFc融合タンパク質は、例えば、エフェクター機能、例えば、抗原依存性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)をモジュレートする際に有用であり得る。さらに、改変が、抗体およびFc融合タンパク質の安定性を改善し得る。抗体およびFc融合タンパク質のアミノ酸配列バリアントは、適切なヌクレオチド変化をDNA中に導入することによって、またはペプチド合成によって調製される。かかるバリアントは、例えば、本明細書に開示される抗体およびFc融合タンパク質のアミノ酸配列からの欠失、および/またはかかるアミノ酸配列中への挿入、および/またはかかるアミノ酸配列内の残基の置換を含む。欠失、挿入および置換の任意の組合せが、最終構築物が所望の特徴を有することを条件として、最終構築物に到達するために行われる。アミノ酸変化はまた、抗体およびFc融合タンパク質の翻訳後プロセスを変更し得、例えば、グリコシル化部位の数または位置を変化させる。
【0195】
低減されたエフェクター機能を有する抗体およびFc融合タンパク質は、Bluestoneら(WO94/28027およびWO98/47531を参照のこと;Xuら、2000年、Cell Immunol 200巻;16~26頁もまた参照のこと)によって記載されるAla-Ala変異が含まれるがこれに限定されない変化をアミノ酸配列中に導入することによって産生され得る。したがって、ある特定の実施形態では、定常領域内にAla-Ala変異を含む変異を有する本開示の抗体およびFc融合タンパク質は、エフェクター機能を低減または消失させるために使用され得る。これらの実施形態によれば、抗体およびFc融合タンパク質は、234位におけるアラニンへの変異もしくは235位におけるアラニンへの変異、またはそれらの組合せを含み得る。一実施形態では、抗体またはFc融合タンパク質は、IgG4フレームワークを含み、Ala-Ala変異は、234位におけるフェニルアラニンからアラニンへの変異および/または235位におけるロイシンからアラニンへの変異を記述する。別の実施形態では、抗体またはFc融合タンパク質は、IgG1フレームワークを含み、Ala-Ala変異は、234位におけるロイシンからアラニンへの変異および/または235位におけるロイシンからアラニンへの変異を記述する。抗体またはFc融合タンパク質は、あるいはまたはさらに、CH2ドメイン中の点変異K322Aを含む他の変異を保有し得る(Hezarehら、2001年、J Virol. 75巻:12161~8頁)。
【0196】
一部の実施形態では、抗体またはFc融合タンパク質は、補体依存性細胞傷害(CDC)を増強または阻害するために改変され得る。モジュレートされたCDC活性は、Fc領域中に1つまたは複数のアミノ酸置換、挿入または欠失を導入することによって達成され得る(例えば、米国特許第6,194,551号を参照のこと)。あるいはまたはさらに、システイン残基(複数可)がFc領域中に導入され得、それによって、この領域における鎖間ジスルフィド結合の形成を可能にする。こうして生成されたホモダイマー抗体では、内部移行能が改善もしくは低減されていることがあり、および/または補体媒介性細胞死滅が増加もしくは減少していることがある。Caronら、J. Exp Med. 176巻:1191~1195頁(1992年)ならびにShopes, B. J. Immunol. 148巻:2918~2922頁(1992年)、WO99/51642、DuncanおよびWinter Nature 322巻:738~40頁(1988年);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;ならびにWO94/29351を参照のこと。
【0197】
融合タンパク質(例えば、免疫グロブリンFc融合タンパク質)の異なる要素は、所望の機能性と一致する任意の様式で整列され得ることが理解される。例えば、BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドドメインは、異種ドメインに対してC末端側に配置され得、またはあるいは、異種ドメインは、BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドドメインに対してC末端側に配置され得る。BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドドメインならびに異種ドメインは、融合タンパク質中で隣接している必要はなく、さらなるドメインまたはアミノ酸配列が、いずれかのドメインに対してC末端側もしくはN末端側に、またはドメイン間に含まれ得る。
【0198】
例えば、BMP10プロペプチド(ActRII、BMPRII、ALK1またはエンドグリン)融合タンパク質は、式A-B-Cで示されるアミノ酸配列を含み得る。B部分は、BMP10プロペプチド(ActRII、BMPRII、ALK1またはエンドグリン)ポリペプチドドメインに対応する。AおよびC部分は、独立して、ゼロ、1つ、または1つよりも多いアミノ酸であり得、AおよびC部分は共に、存在する場合には、Bに対して異種である。Aおよび/またはC部分は、リンカー配列を介してB部分に付加され得る。リンカーは、グリシン(例えば、2~10、2~5、2~4、2~3個のグリシン残基)またはグリシンおよびプロリン残基がリッチであり得、例えば、スレオニン/セリンおよびグリシンの単一配列またはスレオニン/セリンおよび/もしくはグリシンの反復配列、例えば、GGG(配列番号41)、GGGG(配列番号42)、TGGGG(配列番号43)、SGGGG(配列番号44)、TGGG(配列番号45)、SGGG(配列番号46)またはGGGGS(配列番号47)シングレットまたはリピートを含み得る。ある特定の実施形態では、BMP10プロペプチド(ActRII、BMPRII、ALK1またはエンドグリン)融合タンパク質は、式A-B-Cで示されるアミノ酸配列を含み、式中、Aはリーダー(シグナル)配列であり、Bは、BMP10プロペプチド(ActRII、BMPRII、ALK1またはエンドグリン)ポリペプチドドメインからなり、Cは、in vivo安定性、in vivo半減期、取り込み/投与、組織局在化もしくは分布、タンパク質複合体の形成、および/または精製のうち1つまたは複数を増強するポリペプチド部分である。ある特定の実施形態では、BMP10プロペプチド(ActRII、BMPRII、ALK1またはエンドグリン)融合タンパク質は、式A-B-Cで示されるアミノ酸配列を含み、式中、AはTPAリーダー配列であり、Bは、BMP10プロペプチド(ActRII、BMPRII、ALK1またはエンドグリン)受容体ポリペプチドドメインからなり、Cは免疫グロブリンFcドメインである。好ましい融合タンパク質は、配列番号28、29、30、31、50、54、57、58、60、63、64、66、69、71、74、76、78、80、82、84、85、87、123、131および132のいずれか1つで示されるアミノ酸配列を含む。
【0199】
ある特定の好ましい実施形態では、本明細書に記載される方法に従って使用されるBMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドは、単離された複合体である。本明細書で使用する場合、単離されたタンパク質(もしくはタンパク質複合体)またはポリペプチド(もしくはポリペプチド複合体)は、その天然の環境の成分から分離されたものである。一部の実施形態では、本開示のポリペプチドは、例えば、電気泳動(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィー(例えば、イオン交換または逆相HPLC)によって決定した場合、95%、96%、97%、98%または99%よりも高い純度まで精製される。抗体純度の評価のための方法は、当技術分野で周知である[Flatmanら(2007年)J. Chromatogr. B 848巻:79~87頁]。
【0200】
ある特定の実施形態では、本開示のBMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドは、当技術分野で公知の種々の技術によって産生され得る。例えば、本開示のポリペプチドは、Bodansky, M. Principles of Peptide Synthesis、Springer Verlag、Berlin(1993年)およびGrant G. A.(編)、Synthetic Peptides: A User'sGuide、W. H. Freeman and Company、New York(1992年)に記載されるものなどの標準的なタンパク質化学技術を使用して合成され得る。さらに、自動ペプチド合成機が市販されている(Advanced ChemTech Model 396;Milligen/Biosearch 9600)。あるいは、その断片またはバリアントを含む本開示のポリペプチドおよび複合体は、当技術分野で周知の種々の発現系[E.coli、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS細胞、バキュロウイルス]を使用して組換え産生され得る。さらなる実施形態では、改変されたまたは未改変の本開示のポリペプチドは、例えば、プロテアーゼ、例えば、トリプシン、サーモリシン、キモトリプシン、ペプシンまたは塩基性アミノ酸対変換酵素(paired basic amino acid converting enzyme)(PACE)を使用した、組換え産生された全長BMP10プロペプチドポリペプチド、ActRIIポリペプチド、BMPRIIポリペプチド、ALK1ポリペプチドおよび/またはエンドグリンポリペプチドの消化によって産生され得る。コンピューター分析(市販のソフトウェア、例えば、MacVector、Omega、PCGene、Molecular Simulation,Inc.を使用する)が、タンパク質分解性切断部位を同定するために使用され得る。
【0201】
3.BMP10プロペプチド、ActRII、BMPRII、ALK1およびエンドグリンポリペプチドをコードする核酸
ある特定の実施形態では、本開示は、本明細書に開示されるActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチド(その断片、機能的バリアントおよび融合タンパク質を含む)をコードする単離されたおよび/または組換え核酸を提供する。例えば、配列番号16は、天然に存在するヒトBMPRII前駆体ポリペプチドをコードし、配列番号17は、BMPRIIのプロセシングされた細胞外ドメインをコードする。対象核酸は、一本鎖または二本鎖であり得る。かかる核酸は、DNAまたはRNA分子であり得る。これらの核酸は、例えば、本明細書に記載されるActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチドを作製するための方法において使用され得る。
【0202】
本明細書で使用する場合、単離された核酸(複数可)は、その天然の環境の成分から分離された核酸分子を指す。単離された核酸は、その核酸分子を通常含む細胞中に含まれた核酸分子を含むが、この核酸分子は、染色体外に存在する、またはその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。
【0203】
ある特定の実施形態では、本開示のActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチドをコードする核酸は、配列番号7、8、12、13、16、17、19、22、23、25、27、33、35、55、61、67、70、72、79、83、86、124、125、126、127、134、135、136および137のいずれか1つ、ならびにそれらのバリアントを含むことが理解される。バリアントヌクレオチド配列は、対立遺伝子バリアントを含む、1つまたは複数のヌクレオチド置換、付加または欠失により異なる配列を含み、したがって、配列番号7、8、12、13、16、17、19、22、23、25、27、33、35、55、61、67、70、72、79、83、86、124、125、126、127、134、135、136および137のいずれか1つで指定されたヌクレオチド配列とは異なるコード配列を含む。
【0204】
ある特定の実施形態では、本開示のActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチドは、配列番号7、8、12、13、16、17、19、22、23、25、27、33、35、55、61、67、70、72、75、79、83、86、124、125、126、127、134、135、136および137に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる単離されたまたは組換え核酸配列によってコードされる。当業者は、配列番号7、8、12、13、16、17、19、22、23、25、27、33、35、55、61、67、70、72、79、83、86、124、125、126、127、134、135、136および137に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一な配列に対して相補的な配列を含む、本質的にそれからなる、またはそれからなる核酸配列もまた、本開示の範囲内であることを理解する。さらなる実施形態では、本開示の核酸配列は、単離され得、組換えであり得、および/もしくは異種ヌクレオチド配列と融合され得、またはDNAライブラリー中にあり得る。
【0205】
他の実施形態では、本開示の核酸は、配列番号7、8、12、13、16、17、19、22、23、25、27、33、35、55、61、67、70、72、79、83、86、124、125、126、127、134、135、136および137で指定されるヌクレオチド配列、またはその断片に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列もまた含む。当業者は、DNAハイブリダイゼーションを促進する適切なストリンジェンシーの条件が変動され得ることを容易に理解する。例えば、約45℃で6.0×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)におけるハイブリダイゼーションとその後の50℃で2.0×SSCの洗浄を実施することができる。例えば、洗浄ステップにおける塩濃度は、50℃で約2.0×SSCの低いストリンジェンシーから50℃で約0.2×SSCの高いストリンジェンシーまでから選択され得る。さらに、洗浄ステップにおける温度は、室温、約22℃における低いストリンジェンシーの条件から約65℃における高いストリンジェンシーの条件まで増加され得る。温度および塩は共に変動され得、または温度もしくは塩濃度は、他の変量が変化されていても一定に維持され得る。一実施形態では、本開示は、室温で6×SSCの低いストリンジェンシーの条件下でハイブリダイズし、その後室温で2×SSCで洗浄される核酸を提供する。
【0206】
配列番号7、8、12、13、16、17、19、22、23、25、27、33、35、55、61、67、70、72、79、83、86、124、125、126、127、134、135、136および137で示される核酸とは、遺伝コードにおける縮重まで異なる単離された核酸もまた、本開示の範囲内である。例えば、いくつかのアミノ酸は、1つよりも多いトリプレットによって指定される。同じアミノ酸または同義語(例えば、CAUおよびCACは、ヒスチジンについて同義語である)を特定するコドンは、タンパク質のアミノ酸配列に影響しない「サイレント」変異を生じ得る。しかし、対象タンパク質のアミノ酸配列中に変化をもたらすDNA配列多型が哺乳動物細胞において存在すると予測される。当業者は、特定のタンパク質をコードする核酸の1つまたは複数のヌクレオチド(ヌクレオチドの最大で約3~5%)におけるこれらのバリエーションが、天然の対立遺伝子バリエーションに起因して所与の種の個体において存在し得ることを理解する。ありとあらゆるかかるヌクレオチドバリエーションおよび得られたアミノ酸多型は、本開示の範囲内である。
【0207】
ある特定の実施形態では、本開示の組換え核酸は、発現構築物中の1つまたは複数の調節ヌクレオチド配列に作動可能に連結し得る。調節ヌクレオチド配列は一般に、発現のために使用される宿主細胞にとって適切である。多数の型の適切な発現ベクターおよび適切な調節配列が、種々の宿主細胞について当技術分野で公知である。典型的には、前記1つまたは複数の調節ヌクレオチド配列には、プロモーター配列、リーダーまたはシグナル配列、リボソーム結合部位、転写開始および終結配列、翻訳開始および終結配列、ならびにエンハンサーまたはアクチベーター配列が含まれ得るがこれらに限定されない。当技術分野で公知の構成的または誘導性プロモーターが、本開示によって企図される。プロモーターは、天然に存在するプロモーター、または1つよりも多いプロモーターのエレメントを組み合わせるハイブリッドプロモーターのいずれかであり得る。発現構築物は、細胞中で、プラスミドなどのエピソーム上に存在し得、または発現構築物は、染色体中に挿入され得る。一部の実施形態では、発現ベクターは、形質転換された宿主細胞の選択を可能にする選択可能なマーカー遺伝子を含む。選択可能なマーカー遺伝子は、当技術分野で周知であり、使用される宿主細胞によって変動することになる。
【0208】
本開示のある特定の態様では、対象核酸は、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチドをコードし、少なくとも1つの調節配列に作動可能に連結したヌクレオチド配列を含む発現ベクター中で提供される。調節配列は、当技術分野で認識され、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチドの発現を指示するために選択される。したがって、用語調節配列は、プロモーター、エンハンサーおよび他の発現制御エレメントを含む。例示的な調節配列は、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology、Academic Press、San Diego、CA(1990年)に記載されている。例えば、それに作動可能に連結したDNA配列の発現を制御する広範な種々の発現制御配列のいずれかが、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチドをコードするDNA配列を発現するために、これらのベクターにおいて使用され得る。かかる有用な発現制御配列には、例えば、SV40の初期および後期プロモーター、tetプロモーター、アデノウイルスまたはサイトメガロウイルス最初期プロモーター、RSVプロモーター、lac系、trp系、TACまたはTRC系、その発現がT7 RNAポリメラーゼによって指示されるT7プロモーター、ファージラムダの主要オペレーターおよびプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、3-ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の解糖酵素のプロモーター、酸性ホスファターゼのプロモーター、例えば、Pho5、酵母α-接合因子のプロモーター、バキュロウイルス系の多面体プロモーター、および原核もしくは真核細胞またはそれらのウイルスの遺伝子の発現を制御することが公知の他の配列、ならびにそれらの種々の組合せが含まれる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞および/または発現されることが所望されるタンパク質の型の選択などの因子に依存し得ることを理解すべきである。さらに、ベクターのコピー数、そのコピー数を制御する能力、およびベクターによってコードされる任意の他のタンパク質、例えば抗生物質マーカーの発現もまた考慮すべきである。
【0209】
本開示の組換え核酸は、クローニングされた遺伝子またはその一部分を、原核細胞、真核細胞(酵母、トリ、昆虫または哺乳動物)、またはその両方のいずれかにおける発現に適したベクター中にライゲーションすることによって産生され得る。組換えActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチドの産生のための発現ビヒクルには、プラスミドおよび他のベクターが含まれる。例えば、適切なベクターには、以下の型のプラスミドが含まれる:E.coliなどの原核細胞における発現のための、pBR322由来プラスミド、pEMBL由来プラスミド、pEX由来プラスミド、pBTac由来プラスミドおよびpUC由来プラスミド。
【0210】
一部の哺乳動物発現ベクターは、細菌中でのベクターの拡大増殖を促進するための原核生物配列、および真核細胞において発現される1つまたは複数の真核生物転写単位の両方を含む。pcDNAI/amp、pcDNAI/neo、pRc/CMV、pSV2gpt、pSV2neo、pSV2-dhfr、pTk2、pRSVneo、pMSG、pSVT7、pko-neoおよびpHyg由来ベクターは、真核細胞のトランスフェクションに適した哺乳動物発現ベクターの例である。これらのベクターの一部は、原核細胞および真核細胞の両方における複製および薬物耐性選択を促進するために、pBR322などの細菌プラスミド由来の配列で改変される。あるいは、ウイルス、例えば、ウシパピローマウイルス(BPV-1)またはエプスタイン・バーウイルス(pHEBo、pREP由来およびp205)の誘導体は、真核細胞におけるタンパク質の一過的発現のために使用され得る。他のウイルス(レトロウイルスを含む)発現系の例は、遺伝子治療送達系の説明において以下に見出され得る。プラスミドの調製および宿主生物の形質転換において使用される種々の方法は、当技術分野で周知である。原核細胞および真核細胞の両方に適した他の発現系、ならびに一般的組換え手順について[Molecular Cloning A Laboratory Manual、第3版、Sambrook、FritschおよびManiatis編、ColdSpring Harbor Laboratory Press、2001年]。一部の場合には、バキュロウイルス発現系の使用によって組換えポリペプチドを発現させることが望ましい場合がある。かかるバキュロウイルス発現系の例には、pVL由来ベクター(例えば、pVL1392、pVL1393およびpVL941)、pAcUW由来ベクター(例えば、pAcUW1)およびpBlueBac由来ベクター(例えば、β-gal含有pBlueBac III)が含まれる。
【0211】
好ましい実施形態では、Pcmv-Scriptベクター(Stratagene、La Jolla、Calif.)、pcDNA4ベクター(Invitrogen、Carlsbad、Calif.)およびpCI-neoベクター(Promega、Madison、Wisc.)などのベクターは、CHO細胞における対象ALK4および/またはActRIIポリペプチドの産生のために設計される。明らかなように、対象遺伝子構築物は、精製のために、例えば、融合タンパク質またはバリアントタンパク質を含むタンパク質を産生するために、培養物中で拡大増殖した細胞において対象ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチドの発現を引き起こすために使用され得る。
【0212】
本開示は、対象ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチドのうち1種または複数種のコード配列を含む組換え遺伝子をトランスフェクトした宿主細胞にも関する。宿主細胞は、任意の原核細胞または真核細胞であり得る。例えば、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチドは、細菌細胞、例えばE.coli、昆虫細胞(例えば、バキュロウイルス発現系を使用する)、酵母または哺乳動物細胞[例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株]において発現され得る。他の適切な宿主細胞は、当業者に公知である。
【0213】
したがって、本開示は、対象ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチドを産生する方法にさらに関する。例えば、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチドをコードする発現ベクターをトランスフェクトした宿主細胞は、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチドの発現を生じさせるのに適した条件下で培養され得る。ポリペプチドは、分泌され得、細胞とこのポリペプチドを含む培地との混合物から単離され得る。あるいは、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチドは、回収および溶解された細胞から取得された細胞質画分または膜画分から単離され得る。細胞培養物は、宿主細胞、培地および他の副産物を含む。細胞培養に適した培地は、当技術分野で周知である。対象ポリペプチドは、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、限外濾過、電気泳動、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチドの特定のエピトープに特異的な抗体を用いた免疫親和性精製、ならびにActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチドに融合したドメインに結合する薬剤を用いた親和性精製(例えば、プロテインAカラムは、ActRII-Fc、BMPRII-Fc、ALK1-Fc、エンドグリン-Fcおよび/またはBMP10プロペプチド-Fc融合タンパク質を精製するために使用され得る)を含む、タンパク質を精製するための当技術分野で公知の技術を使用して、細胞培養培地、宿主細胞、またはその両方から単離され得る。一部の実施形態では、ActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチドは、その精製を促進するドメインを含む融合タンパク質である。
【0214】
一部の実施形態では、精製は、例えば、以下:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーおよびカチオン交換クロマトグラフィーのうち3つまたはそれよりも多くを任意の順序で含む、一連のカラムクロマトグラフィーステップによって達成される。精製は、ウイルス濾過および緩衝液交換で完了され得る。ActRII-Fc、BMPRII-Fc、ALK1-Fc、エンドグリン-Fcおよび/またはBMP10プロペプチド-Fc融合タンパク質は、サイズ排除クロマトグラフィーによって決定した場合には>90%、>95%、>96%、>98%または>99%の純度まで、SDS PAGEによって決定した場合には>90%、>95%、>96%、>98%または>99%の純度まで精製され得る。純度の標的レベルは、哺乳動物系、特に、非ヒト霊長類、げっ歯類(マウス)およびヒトにおいて望ましい結果を達成するのに十分なレベルであるべきである。
【0215】
別の実施形態では、組換えActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチドの所望の部分のN末端において精製リーダー配列、例えば、ポリ-(His)/エンテロキナーゼ切断部位配列をコードする融合遺伝子は、Ni2+金属樹脂を使用するアフィニティクロマトグラフィーによる、発現された融合タンパク質の精製を可能にし得る。次いで、精製リーダー配列は引き続いて、精製されたActRII、BMPRII、ALK1、エンドグリンおよび/またはBMP10プロペプチドポリペプチドを提供するために、エンテロキナーゼによる処理によって除去され得る[Hochuliら(1987年)J. Chromatography 411巻:177頁;およびJanknechtら(1991年)PNAS USA 88巻:8972頁]。
【0216】
融合遺伝子を作製するための技術は、周知である。本質的には、異なるポリペプチド配列をコードする種々のDNA断片の接続は、ライゲーションのための平滑末端または付着末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、必要に応じた粘着末端の平滑化(filling-in)、望ましくない接続を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、および酵素的ライゲーションを使用して、従来技術に従って実施される。別の実施形態では、融合遺伝子は、自動DNA合成機を含む従来技術によって合成され得る。あるいは、遺伝子断片のPCR増幅は、キメラ遺伝子配列を生成するために引き続いてアニーリングされ得る2つの連続する遺伝子断片間の相補的オーバーハングを生じるアンカープライマーを使用して実施され得る。例えば、Current Protocols in Molecular Biology、Ausubelら編、John Wiley & Sons:1992年を参照のこと。
【0217】
4.抗体アンタゴニスト
他の態様では、本開示は、抗体または抗体の組合せであるBMPアンタゴニスト(阻害剤)に関する。BMPアンタゴニスト抗体または抗体の組合せは、例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5および/もしくはBMP3bまたは1種もしくは複数のBMP相互作用性受容体[例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRIIおよびエンドグリン]に結合し得る。特に、本開示は、それを必要とする対象において所望の効果を達成する(例えば、心不全または心不全の1つもしくは複数の合併症を処置する)ために、BMPアンタゴニスト抗体またはBMPアンタゴニスト抗体の組合せを、単独でまたは1種もしくは複数のさらなる支持療法および/もしくは活性薬剤と組み合わせて使用する方法を提供する。
【0218】
ある特定の態様では、本開示のBMPアンタゴニスト抗体または抗体の組合せは、少なくともBMP10を阻害する抗体である。したがって、一部の実施形態では、BMPアンタゴニスト抗体または抗体の組合せは、少なくともBMP10に結合する。本明細書で使用する場合、BMP10抗体(抗BMP10抗体)は一般に、その抗体が、BMP10の標的化に際して診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分な親和性でBMP10に結合する抗体を指す。ある特定の実施形態では、無関係の非BMP10タンパク質への抗BMP10抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、Biacore、または他のタンパク質-タンパク質相互作用もしくは結合親和性アッセイによって測定した場合、BMP10へのその抗体の結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または約1%未満である。ある特定の実施形態では、抗BMP10抗体は、異なる種由来のBMP10間で保存されたBMP10のエピトープに結合する。ある特定の好ましい実施形態では、抗BMP10抗体は、ヒトBMP10に結合する。他の好ましい実施形態では、抗BMP10抗体は、BMP10が同族I型受容体、II型受容体または共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1およびエンドグリン)に結合するのを阻害し得、したがって、これらの受容体を介したBMP10媒介性シグナル伝達(例えば、Smadシグナル伝達)を阻害し得る。BMP10は、BMP9に対していくらかの配列相同性を有し、したがって、BMP10に結合する抗体はまた、一部の場合には、BMP9に結合し得るおよび/またはBMP9を阻害し得ることに留意すべきである。一部の実施形態では、抗BMP10抗体は、1種もしくは複数のさらなるリガンド(例えば、BMP9、BMP6、BMP5およびBMP3b)に結合するならびに/または1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1およびエンドグリン)に結合する多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。一部の実施形態では、BMP10抗体は、BMP9にさらに結合する。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組合せ、ならびにその使用に関し、抗体のこの組合せは、抗BMP10抗体、ならびに例えば、異なるリガンド(例えば、BMP9、BMP6、BMP5およびBMP3b)に結合するならびに/または1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1およびエンドグリン)に結合する1種または複数種のさらなる抗体を含む。一部の実施形態では、抗BMP10抗体を含む組合せ抗体は、抗BMP9抗体をさらに含む。好ましくは、BMP10抗体は、成熟BMP10ドメインに、BMP10プロペプチドと競合的に結合する。
【0219】
ある特定の態様では、本開示のBMPアンタゴニスト抗体または抗体の組合せは、少なくともBMP9を阻害する抗体である。したがって、一部の実施形態では、BMPアンタゴニスト抗体または抗体の組合せは、少なくともBMP9に結合する。本明細書で使用する場合、BMP9抗体(抗BMP9抗体)は一般に、その抗体が、BMP9の標的化に際して診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分な親和性でBMP9に結合する抗体を指す。ある特定の実施形態では、無関係の非BMP9タンパク質への抗BMP9抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、Biacore、または他のタンパク質-タンパク質相互作用もしくは結合親和性アッセイによって測定した場合、BMP9へのその抗体の結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または約1%未満である。ある特定の実施形態では、抗BMP9抗体は、異なる種由来のBMP9間で保存されたBMP9のエピトープに結合する。ある特定の好ましい実施形態では、抗BMP9抗体は、ヒトBMP9に結合する。他の好ましい実施形態では、抗BMP9抗体は、BMP9が同族I型受容体、II型受容体または共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1およびエンドグリン)に結合するのを阻害し得、したがって、これらの受容体を介したBMP9媒介性シグナル伝達(例えば、Smadシグナル伝達)を阻害し得る。BMP9は、BMP10に対していくらかの配列相同性を有し、したがって、BMP9に結合する抗体はまた、一部の場合には、BMP10に結合し得るおよび/またはBMP10を阻害し得ることに留意すべきである。一部の実施形態では、抗BMP9抗体は、1種もしくは複数のさらなるリガンド[例えば、BMP10、BMP6、BMP5およびBMP3b]に結合するならびに/または1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1およびエンドグリン)に結合する多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。一部の実施形態では、BMP9抗体は、BMP10にさらに結合する。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組合せ、ならびにその使用に関し、抗体のこの組合せは、抗BMP9抗体、ならびに例えば、異なるリガンド(例えば、BMP10、BMP6、BMP5およびBMP3b)に結合するならびに/または1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1およびエンドグリン)に結合する1種または複数種のさらなる抗体を含む。一部の実施形態では、抗BMP9抗体を含む組合せ抗体は、抗BMP10抗体をさらに含む。
【0220】
ある特定の態様では、本開示のBMPアンタゴニスト抗体または抗体の組合せは、少なくともBMP6を阻害する抗体である。したがって、一部の実施形態では、BMPアンタゴニスト抗体または抗体の組合せは、少なくともBMP6に結合する。本明細書で使用する場合、BMP6抗体(抗BMP6抗体)は一般に、その抗体が、BMP6の標的化に際して診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分な親和性でBMP6に結合する抗体を指す。ある特定の実施形態では、無関係の非BMP6タンパク質への抗BMP6抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、Biacore、または他のタンパク質-タンパク質相互作用もしくは結合親和性アッセイによって測定した場合、BMP6へのその抗体の結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または約1%未満である。ある特定の実施形態では、抗BMP6抗体は、異なる種由来のBMP6間で保存されたBMP6のエピトープに結合する。ある特定の好ましい実施形態では、抗BMP6抗体は、ヒトBMP6に結合する。他の好ましい実施形態では、抗BMP6抗体は、BMP6が同族I型受容体、II型受容体または共受容体に結合するのを阻害し得、したがって、これらの受容体を介したBMP6媒介性シグナル伝達(例えば、Smadシグナル伝達)を阻害し得る。一部の実施形態では、抗BMP6抗体は、1種もしくは複数のさらなるリガンド(例えば、BMP10、BMP9、BMP5およびBMP3b)に結合するならびに/または1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1およびエンドグリン)に結合する多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。一部の実施形態では、BMP6抗体は、BMP9および/またはBMP10にさらに結合する。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組合せ、ならびにその使用に関し、抗体のこの組合せは、抗BMP6抗体、ならびに例えば、異なるリガンド(例えば、BMP10、BMP9、BMP5およびBMP3b)に結合するならびに/または1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1およびエンドグリン)に結合する1種または複数種のさらなる抗体を含む。一部の実施形態では、抗BMP6抗体を含む組合せ抗体は、抗BMP10および/またはBMP9抗体をさらに含む。
【0221】
ある特定の態様では、本開示のBMPアンタゴニスト抗体または抗体の組合せは、少なくともBMP5を阻害する抗体である。したがって、一部の実施形態では、BMPアンタゴニスト抗体または抗体の組合せは、少なくともBMP5に結合する。本明細書で使用する場合、BMP5抗体(抗BMP5抗体)は一般に、その抗体が、BMP5の標的化に際して診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分な親和性でBMP5に結合する抗体を指す。ある特定の実施形態では、無関係の非BMP5タンパク質への抗BMP5抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、Biacore、または他のタンパク質-タンパク質相互作用もしくは結合親和性アッセイによって測定した場合、BMP5へのその抗体の結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または約1%未満である。ある特定の実施形態では、抗BMP5抗体は、異なる種由来のBMP5間で保存されたBMP5のエピトープに結合する。ある特定の好ましい実施形態では、抗BMP5抗体は、ヒトBMP5に結合する。他の好ましい実施形態では、抗BMP5抗体は、BMP5が同族I型受容体、II型受容体または共受容体に結合するのを阻害し得、したがって、これらの受容体を介したBMP5媒介性シグナル伝達(例えば、Smadシグナル伝達)を阻害し得る。一部の実施形態では、抗BMP5抗体は、1種もしくは複数のさらなるリガンド(例えば、BMP10、BMP9、BMP6およびBMP3b)に結合するならびに/または1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1およびエンドグリン)に結合する多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。一部の実施形態では、BMP5抗体は、BMP9および/またはBMP10にさらに結合する。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組合せ、ならびにその使用に関し、抗体のこの組合せは、抗BMP5抗体、ならびに例えば、異なるリガンド(例えば、BMP10、BMP9、BMP6およびBMP3b)に結合するならびに/または1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1およびエンドグリン)に結合する1種または複数種のさらなる抗体を含む。一部の実施形態では、抗BMP5抗体を含む組合せ抗体は、抗BMP10および/またはBMP9抗体をさらに含む。
【0222】
ある特定の態様では、本開示のBMPアンタゴニスト抗体または抗体の組合せは、少なくともBMP3bを阻害する抗体である。したがって、一部の実施形態では、BMPアンタゴニスト抗体または抗体の組合せは、少なくともBMP3bに結合する。本明細書で使用する場合、BMP3b抗体(抗BMP3b抗体)は一般に、その抗体が、BMP3bの標的化に際して診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分な親和性でBMP3bに結合する抗体を指す。ある特定の実施形態では、無関係の非BMP3bタンパク質への抗BMP3b抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、Biacore、または他のタンパク質-タンパク質相互作用もしくは結合親和性アッセイによって測定した場合、BMP3bへのその抗体の結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または約1%未満である。ある特定の実施形態では、抗BMP3b抗体は、異なる種由来のBMP3b間で保存されたBMP3bのエピトープに結合する。ある特定の好ましい実施形態では、抗BMP3b抗体は、ヒトBMP5に結合する。他の好ましい実施形態では、抗BMP3b抗体は、BMP3bが同族I型受容体、II型受容体または共受容体に結合するのを阻害し得、したがって、これらの受容体を介したBMP3b媒介性シグナル伝達(例えば、Smadシグナル伝達)を阻害し得る。一部の実施形態では、抗BMP3b抗体は、1種もしくは複数のさらなるリガンド(例えば、BMP10、BMP9、BMP6およびBMP5)に結合するならびに/または1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1およびエンドグリン)に結合する多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。一部の実施形態では、BMP3b抗体は、BMP9および/またはBMP10にさらに結合する。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組合せ、ならびにその使用に関し、抗体のこの組合せは、抗BMP3b抗体、ならびに例えば、異なるリガンド(例えば、BMP10、BMP9、BMP6およびBMP5)に結合するならびに/または1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1およびエンドグリン)に結合する1種または複数種のさらなる抗体を含む。一部の実施形態では、抗BMP3b抗体を含む組合せ抗体は、抗BMP10および/またはBMP9抗体をさらに含む。
【0223】
他の態様では、本開示のBMPアンタゴニスト抗体または抗体の組合せは、少なくともActRII受容体(例えば、ActRIIAおよび/またはActRIIB)を阻害する抗体である。したがって、一部の実施形態では、BMPアンタゴニスト抗体または抗体の組合せは、少なくともActRIIAに結合するが、ActRIIBには結合しないまたは実質的に結合しない(例えば、1×10-7Mよりも大きいKDでActRIIBに結合する、または比較的中程度の結合、例えば、約1×10-8Mもしくは約1×10-9Mを有する)。他の実施形態では、ActRIIアンタゴニスト抗体または抗体の組合せは、少なくともActRIIBに結合するが、ActRIIAには結合しないまたは実質的に結合しない(例えば、1×10-7Mよりも大きいKDでActRIIAに結合する、または比較的中程度の結合、例えば、約1×10-8Mもしくは約1×10-9Mを有する)。なお他の実施形態では、ActRIIアンタゴニスト抗体または抗体の組合せは、少なくともActRIIAおよびActRIIBに結合する。本明細書で使用する場合、ActRII抗体(抗ActRII抗体)は一般に、その抗体が、ActRIIの標的化に際して診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分な親和性でActRII(例えば、ActRIIAおよび/またはActRIIB)に結合する抗体を指す。ある特定の実施形態では、無関係の非ActRIIタンパク質への抗ActRII抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、Biacore、または他のタンパク質-タンパク質相互作用もしくは結合親和性アッセイによって測定した場合、ActRIIへのその抗体の結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または約1%未満である。ある特定の実施形態では、抗ActRII抗体は、異なる種由来のActRII間で保存されたActRII(例えば、ActRIIAおよび/またはActRIIB)のエピトープに結合する。ある特定の好ましい実施形態では、抗ActRII抗体は、ヒトActRII(例えば、ActRIIAおよび/またはActRIIB)に結合する。他の好ましい実施形態では、抗ActRII抗体は、1種または複数種のリガンド(例えば、BMP10、BMP9、BMP6およびBMP5)がActRII(例えば、ActRIIAおよび/またはActRIIB)に結合するのを阻害し得る。ActRIIAは、ActRIIBに対して配列相同性を有し、したがって、ActRIIAに結合する抗体はまた、一部の場合には、ActRIIBに結合し得るおよび/またはActRIIBを阻害し得、逆もまたあてはまることに留意すべきである。一部の実施形態では、抗ActRII抗体は、ActRII(例えば、ActRIIAおよび/またはActRIIB)および1種または複数種のリガンド(例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5およびBMP3b)に結合する多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。一部の実施形態では、抗ActRII抗体は、ActRIIAおよびActRIIBに結合する多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組合せ、ならびにその使用に関し、抗体のこの組合せは、少なくとも抗ActRIIA抗体および少なくともActRIIB抗体を含む。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組合せ、ならびにその使用に関し、抗体のこの組合せは、抗ActRIIA抗体、ならびに例えば、1種または複数種のリガンド(例えば、BMP10、BMP9、BMP6およびBMP5)、BMPRII、ALK1および/またはエンドグリンに結合する1種または複数種のさらなる抗体を含む。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組合せ、ならびにその使用に関し、抗体のこの組合せは、抗ActRIIB抗体、ならびに例えば、1種または複数種のリガンド(例えば、BMP10、BMP9、BMP6およびBMP5)、BMPRII、ALK1および/またはエンドグリンに結合する1種または複数種のさらなる抗体を含む。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組合せ、ならびにその使用に関し、抗体のこの組合せは、抗ActRIIA抗体、抗ActRIIB抗体、ならびに例えば、1種または複数種のリガンド(例えば、BMP10、BMP9、BMP6およびBMP5)、BMPRII、ALK1および/またはエンドグリンに結合する少なくとも1種または複数種のさらなる抗体を含む。
【0224】
他の態様では、本開示のBMPアンタゴニスト抗体または抗体の組合せは、少なくともALK1を阻害する抗体である。したがって、一部の実施形態では、BMPアンタゴニスト抗体または抗体の組合せは、少なくともALK1に結合する。本明細書で使用する場合、ALK1抗体(抗ALK1抗体)は一般に、その抗体が、ALK1の標的化に際して診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分な親和性でALK1に結合する抗体を指す。ある特定の実施形態では、無関係の非ALK1タンパク質への抗ALK1抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、Biacore、または他のタンパク質-タンパク質相互作用もしくは結合親和性アッセイによって測定した場合、ALK1へのその抗体の結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または約1%未満である。ある特定の実施形態では、抗ALK1抗体は、異なる種由来のALK1間で保存されたALK1のエピトープに結合する。ある特定の好ましい実施形態では、抗ALK1抗体は、ヒトALK1に結合する。他の好ましい実施形態では、抗ALK1抗体は、1種または複数種のリガンド(例えば、BMP10およびBMP9)がALK1に結合するのを阻害し得る。一部の実施形態では、抗ALK1抗体は、ALK1および1種または複数種のリガンド(例えば、BMP9およびBMP10)、BMPRII、ActRII(ActRIIAおよび/またはActRIIB)および/またはエンドグリンに結合する多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組合せ、ならびにその使用に関し、抗体のこの組合せは、抗ALK1抗体、ならびに例えば、1種または複数種のリガンド(例えば、BMP9およびBMP10)、BMPRII、ActRII(ActRIIAおよび/またはActRIIB)および/またはエンドグリンに結合する1種または複数種のさらなる抗体を含む。
【0225】
他の態様では、本開示のBMPアンタゴニスト抗体または抗体の組合せは、少なくともBMPRIIを阻害する抗体である。したがって、一部の実施形態では、BMPアンタゴニスト抗体または抗体の組合せは、少なくともBMPRIIに結合する。本明細書で使用する場合、BMPRII抗体(抗BMPRII抗体)は一般に、その抗体が、BMPRIIの標的化に際して診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分な親和性でBMPRIIに結合する抗体を指す。ある特定の実施形態では、無関係の非BMPRIIタンパク質への抗BMPRII抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、Biacore、または他のタンパク質-タンパク質相互作用もしくは結合親和性アッセイによって測定した場合、BMPRIIへのその抗体の結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または約1%未満である。ある特定の実施形態では、抗BMPRII抗体は、異なる種由来のBMPRII間で保存されたBMPRIIのエピトープに結合する。ある特定の好ましい実施形態では、抗BMPRII抗体は、ヒトBMPRIIに結合する。他の好ましい実施形態では、抗BMPRII抗体は、1種または複数種のリガンド(例えば、BMP10およびBMP9)がBMPRIIに結合するのを阻害し得る。一部の実施形態では、抗BMPRII抗体は、BMPRIIおよび1種または複数種のリガンド(例えば、BMP9およびBMP10)、ALK1、ActRII(ActRIIAおよび/またはActRIIB)および/またはエンドグリンに結合する多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組合せ、ならびにその使用に関し、抗体のこの組合せは、抗BMPRII抗体、ならびに例えば、1種または複数種のリガンド(例えば、BMP9およびBMP10)、ALK1、ActRII(ActRIIAおよび/またはActRIIB)および/またはエンドグリンに結合する1種または複数種のさらなる抗体を含む。
【0226】
他の態様では、本開示のBMPアンタゴニスト抗体または抗体の組合せは、少なくともエンドグリンを阻害する抗体である。したがって、一部の実施形態では、BMPアンタゴニスト抗体または抗体の組合せは、少なくともエンドグリンに結合する。本明細書で使用する場合、エンドグリン抗体(抗エンドグリン抗体)は一般に、その抗体が、エンドグリンの標的化に際して診断剤および/または治療剤として有用であるように、十分な親和性でエンドグリンに結合する抗体を指す。ある特定の実施形態では、無関係の非エンドグリンタンパク質への抗エンドグリン抗体の結合の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、Biacore、または他のタンパク質-タンパク質相互作用もしくは結合親和性アッセイによって測定した場合、エンドグリンへのその抗体の結合の約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%未満、または約1%未満である。ある特定の実施形態では、抗エンドグリン抗体は、異なる種由来のエンドグリン間で保存されたエンドグリンのエピトープに結合する。ある特定の好ましい実施形態では、抗エンドグリン抗体は、ヒトエンドグリンに結合する。他の好ましい実施形態では、抗エンドグリン抗体は、1種または複数種のリガンド(例えば、BMP10およびBMP9)がエンドグリンに結合するのを阻害し得る。一部の実施形態では、抗エンドグリン抗体は、エンドグリンおよび1種または複数種のリガンド(例えば、BMP9およびBMP10)、ALK1、ActRII(ActRIIAおよび/またはActRIIB)および/またはBMPRIIに結合する多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。一部の実施形態では、本開示は、抗体の組合せ、ならびにその使用に関し、抗体のこの組合せは、抗エンドグリン抗体、ならびに例えば、1種または複数種のリガンド(例えば、BMP9およびBMP10)、ALK1、ActRII(ActRIIAおよび/またはActRIIB)および/またはBMPRIIに結合する1種または複数種のさらなる抗体を含む。
【0227】
用語抗体は、最も広い意味で本明細書で使用され、それらが所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)および抗体断片が含まれるがこれらに限定されない種々の抗体構造を包含する。抗体断片は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の部分を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ディアボディ(diabody);直鎖抗体;単鎖抗体分子(例えば、scFv);および抗体断片から形成される多特異性抗体が含まれるがこれらに限定されない。例えば、Hudsonら(2003年)Nat. Med. 9巻:129~134頁;Pluckthun、The Pharmacology of MonoclonalAntibodies、113巻、RosenburgおよびMoore編(Springer-Verlag、New York)、269~315頁(1994年);WO93/16185;ならびに米国特許第5,571,894号、同第5,587,458号および同第5,869,046号を参照のこと。本明細書に開示される抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。ある特定の実施形態では、本開示の抗体は、それに付加された、検出することができる標識を含む(例えば、標識は、放射性同位体、蛍光化合物、酵素または酵素補因子であり得る)。好ましい実施形態では、本開示の抗体は、単離された抗体である。
【0228】
ディアボディは、二価または二重特異性であり得る、2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP404,097;WO1993/01161;Hudsonら(2003年)Nat. Med. 9巻:129~134頁(2003年);およびHollingerら(1993年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90巻:6444~6448頁を参照のこと。トリアボディ(triabody)およびテトラボディ(tetrabody)もまた、Hudsonら(2003年)Nat. Med. 9巻:129~134頁に記載されている。
【0229】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部分または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部分を含む抗体断片である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である。例えば、米国特許第6,248,516号を参照のこと。
【0230】
抗体断片は、本明細書に記載されるような、インタクトな抗体のタンパク質分解性消化ならびに組換え宿主細胞(例えば、E.coliまたはファージ)による産生が含まれるがこれらに限定されない種々の技術によって作製され得る。
【0231】
本明細書の抗体は、任意のクラスのものであり得る。抗体のクラスは、その重鎖が有する定常ドメインまたは定常領域の型を指す。抗体には、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在し、これらのうちいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2へとさらに分割され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマおよびミューと呼ばれる。
【0232】
一般に、本明細書に開示される方法における使用のための抗体は、好ましくは高い結合親和性で、その標的抗原に特異的に結合する。親和性は、KD値として表され得、(例えば、最小限の結合活性効果(avidity effect)を伴った)固有の結合親和性を反映する。典型的には、結合親和性は、無細胞設定であれ細胞関連設定であれ、in vitroで測定される。例えば、表面プラズモン共鳴(Biacore(商標)アッセイ)、放射能標識抗原結合アッセイ(RIA)およびELISAを含む、本明細書に開示されるものを含む当技術分野で公知のいくつかのアッセイのいずれかが、結合親和性測定値を取得するために使用され得る。一部の実施形態では、本開示の抗体は、少なくとも、1×10-7もしくはそれよりも強い、1×10-8もしくはそれよりも強い、1×10-9もしくはそれよりも強い、1×10-10もしくはそれよりも強い、1×10-11もしくはそれよりも強い、1×10-12もしくはそれよりも強い、1×10-13もしくはそれよりも強い、または1×10-14もしくはそれよりも強いKDで、それらの標的抗原[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5、BMP3b、ActRII(ActRIIAおよび/またはActRIIB)、BMPRII、ALK1およびエンドグリン]に結合する。
【0233】
ある特定の実施形態では、KDは、以下のアッセイによって記載されるように、Fabバージョンの目的の抗体およびその標的抗原を用いて実施されるRIAによって測定される。抗原に対するFabの溶液結合親和性は、未標識の抗原の滴定シリーズの存在下で、Fabを最小濃度の放射能標識抗原(例えば、125I標識されたもの)で平衡化し、次いで、結合した抗原を抗Fab抗体コートされたプレートで捕捉することによって測定される[例えば、Chenら(1999年)J. Mol. Biol. 293巻:865~881頁を参照のこと]。アッセイのための条件を確立するために、マルチウェルプレート(例えば、Thermo ScientificのMICROTITER(登録商標))は、捕捉性抗Fab抗体(例えば、Cappel Labsのもの)で(例えば、一晩)コートされ、引き続いて、好ましくは室温(例えば、およそ23℃)で、ウシ血清アルブミンでブロッキングされる。非吸着プレートにおいて、放射能標識抗原は、目的のFabの段階希釈と混合される[例えば、Prestaら(1997年)Cancer Res. 57巻:4593~4599頁における抗VEGF抗体Fab-12の評価と一致して]。次いで、目的のFabは、好ましくは一晩インキュベートされるが、このインキュベーションは、平衡状態に達したことを確実にするために、より長い期間(例えば、約65時間)にわたって継続し得る。その後、混合物は、好ましくは室温で約1時間のインキュベーションのために、捕捉プレートに移される。次いで、溶液が除去され、プレートは、好ましくはポリソルベート20およびPBS混合物で、数回洗浄される。プレートが乾燥したところで、シンチラント(例えば、PackardのMICROSCINT(登録商標))が添加され、プレートは、ガンマカウンター(例えば、PackardのTOPCOUNT(登録商標))でカウントされる。
【0234】
別の実施形態によれば、KDは、例えば、約10応答単位(RU)で固定化された抗原CM5チップを用いて、BIACORE(登録商標)2000またはBIACORE(登録商標)3000(Biacore,Inc.、Piscataway、N.J.)を使用する表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。簡潔に述べると、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5、Biacore,Inc.)が、供給業者の指示に従ってN-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて活性化される。例えば、抗原は、およそ10応答単位(RU)のカップリングされたタンパク質を達成するために、5μl/分の流速での注入の前に、10mM酢酸ナトリウム、pH4.8で5μg/ml(約0.2μM)に希釈され得る。抗原の注入後、1Mエタノールアミンを注入して、未反応の基をブロックする。速度論測定のために、Fabの2倍段階希釈(0.78nM~500nM)が、およそ25μl/分の流速で、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))界面活性剤を含むPBS(PBST)中で注入される。会合速度(kon)および解離速度(koff)は、例えば、会合センサーグラムおよび解離センサーグラムを同時にフィッティングすることによって、単純一対一ラングミュア結合モデル(simple one-to-one Langmuir binding model)(BIACORE(登録商標)Evaluation Softwareバージョン3.2)を使用して計算される。平衡解離定数(KD)は、比koff/konとして計算される[例えば、Chenら(1999年)J. Mol. Biol. 293巻:865~881頁を参照のこと]。オンレート(on-rate)が、例えば、上記表面プラズモン共鳴アッセイによって106M-1s-1を超える場合、オンレートは、分光計、例えば、ストップフローを備えた分光光度計(stop-flow equipped spectrophometer)(Aviv Instruments)または撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCO(登録商標)分光光度計(ThermoSpectronic)で測定した場合の、漸増濃度の抗原の存在下で、PBS中20nMの抗抗原抗体(Fab形態)の蛍光発光強度(例えば、励起=295nm;発光=340nm、16nmバンドパス)の増加または減少を測定する蛍光クエンチ技術を使用することによって決定され得る。
【0235】
ヒトBMP10、BMP9、BMP6、BMP5、BMP3b、ActRII(ActRIIAおよび/またはActRIIB)、BMPRII、ALK1およびエンドグリンの核酸およびアミノ酸配列は、当技術分野で周知であり、したがって、本開示に従う使用のための抗体アンタゴニストは、当技術分野の知識および本明細書で提供される教示に基づいて、当業者によって慣用的に作製され得る。
【0236】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、キメラ抗体である。キメラ抗体は、重鎖および/または軽鎖の一部分が特定の供給源または種に由来するが、重鎖および/または軽鎖の残部が異なる供給源または種に由来する、抗体を指す。ある特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら(1984年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、81巻:6851~6855頁に記載されている。一部の実施形態では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギまたは非ヒト霊長類、例えばサルに由来する可変領域)およびヒト定常領域を含む。一部の実施形態では、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のものから変化している、「クラススイッチされた」抗体である。一般に、キメラ抗体には、その抗原結合性断片が含まれる。
【0237】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるキメラ抗体は、ヒト化抗体である。ヒト化抗体は、非ヒト超可変領域(HVR)由来のアミノ酸残基およびヒトフレームワーク領域(FR)由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、HVR(例えば、CDR)の全てまたは実質的に全ては、非ヒト抗体のものに対応し、FRの全てまたは実質的に全ては、ヒト抗体のものに対応する。ヒト化抗体は、必要に応じて、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含み得る。抗体、例えば非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0238】
ヒト化抗体およびそれを作製する方法は、例えば、AlmagroおよびFransson(2008年)Front. Biosci. 13巻:1619~1633頁で概説されており、例えば、Riechmannら(1988年)Nature 332巻:323~329頁;Queenら(1989年)Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 86巻:10029~10033頁;米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号および同第7,087,409号;Kashmiriら(2005年)Methods 36巻:25~34頁[SDR(a-CDR)移植を記載している];Padlan、Mol. Immunol.(1991年)28巻:489~498頁(「表面再処理(resurfacing)」を記載している);Dall'Acquaら(2005年)Methods 36巻:43~60頁(「FRシャッフリング」を記載している);Osbournら(2005年)Methods 36巻:61~68頁;ならびにKlimkaら、Br. J. Cancer(2000年)83巻:252~260頁(FRシャッフリングへの「ガイド選択(guided selection)」アプローチを記載している)にさらに記載されている。
【0239】
ヒト化のために使用され得るヒトフレームワーク領域には、「ベストフィット」法を使用して選択されるフレームワーク領域[例えば、Simsら(1993年)J. Immunol. 151巻:2296頁を参照のこと];軽鎖または重鎖可変領域の特定の下位群のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域[例えば、Carterら(1992年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、89巻:4285頁;およびPrestaら(1993年)J. Immunol.、151巻:2623頁を参照のこと];ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域またはヒト生殖系列フレームワーク領域[例えば、AlmagroおよびFransson(2008年)Front. Biosci. 13巻:1619~1633頁を参照のこと];およびFRライブラリーをスクリーニングすることから誘導されたフレームワーク領域[例えば、Bacaら(1997年)J. Biol. Chem. 272巻:10678~10684頁;およびRosokら(1996年)J. Biol. Chem. 271巻:22611~22618頁を参照のこと]が含まれるがこれらに限定されない。
【0240】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、ヒト抗体である。ヒト抗体は、当技術分野で公知の種々の技術を使用して産生され得る。ヒト抗体は、van Dijkおよびvan de Winkel(2001年)Curr. Opin. Pharmacol. 5巻:368~74頁ならびにLonberg(2008年)Curr. Opin. Immunol. 20巻:450~459頁に一般に記載されている。
【0241】
ヒト抗体は、免疫原[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5、BMP3b、ActRII(ActRIIAおよび/またはActRIIB)、BMPRII、ALK1およびエンドグリン]を、抗原チャレンジに応答してインタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物に投与することによって調製され得る。かかる動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座を置き換える、または染色体外に存在するもしくは動物の染色体中にランダムに組み込まれる、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部分を含む。かかるトランスジェニック動物では、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、一般に、不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を取得するための方法の概説については、例えば、Lonberg(2005年)Nat. Biotechnol. 23巻:1117~1125頁;米国特許第6,075,181号および同第6,150,584号(XENOMOUSE(商標)テクノロジーを記載している);米国特許第5,770,429号(HuMab(登録商標)テクノロジーを記載している);米国特許第7,041,870号(K-M MOUSE(登録商標)テクノロジーを記載している);ならびに米国特許出願公開第2007/0061900号(VelociMouse(登録商標)テクノロジーを記載している)を参照のこと。かかる動物によって生成されたインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによって、さらに改変され得る。
【0242】
本明細書で提供されるヒト抗体は、ハイブリドーマベースの方法によっても作製され得る。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株は、記載されている[例えば、Kozbor J. Immunol.(1984年)133巻:3001頁;Brodeurら(1987年)Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、51~63頁、Marcel Dekker, Inc.、New York;およびBoernerら(1991年)J. Immunol.、147巻:86頁を参照のこと]。ヒトB細胞ハイブリドーマテクノロジーを介して生成されるヒト抗体はまた、Liら(2006年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、103巻:3557~3562頁に記載されている。さらなる方法には、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載している)およびNi、Xiandai Mianyixue(2006年)26巻(4号):265~268頁(2006年)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載している)に記載されるものが含まれる。ヒトハイブリドーマテクノロジー(トリオーマ(Trioma)テクノロジー)はまた、VollmersおよびBrandlein(2005年)Histol. Histopathol.、20巻(3号):927~937頁(2005年)ならびにVollmersおよびBrandlein(2005年)Methods Find Exp. Clin. Pharmacol.、27巻(3号):185~91頁に記載されている。
【0243】
本明細書で提供されるヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリーから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することによっても生成され得る。次いで、かかる可変ドメイン配列は、所望のヒト定常ドメインと組み合わされ得る。抗体ライブラリーからヒト抗体を選択するための技術は、本明細書に記載されている。
【0244】
例えば、本開示の抗体は、所望の活性(単数または複数)を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることによって単離され得る。ファージディスプレイライブラリーを生成し、所望の結合特徴を有する抗体についてかかるライブラリーをスクリーニングするための種々の方法が、当技術分野で公知である。かかる方法は、例えば、Hoogenboomら(2001年)、Methods in MolecularBiology 178巻:1~37頁、O'Brienら編、HumanPress、Totowa、N.J.で概説されており、例えば、McCaffertyら(1991年)Nature 348巻:552~554頁;Clacksonら(1991年)Nature 352巻:624~628頁;Marksら(1992年)J. Mol. Biol. 222巻:581~597頁;MarksおよびBradbury(2003年)、Methods in Molecular Biology 248巻:161~175頁、Lo編、Human Press、Totowa、N.J.;Sidhuら(2004年)J. Mol. Biol. 338巻(2号):299~310頁;Leeら(2004年)J. Mol. Biol. 340巻(5号):1073~1093頁;Fellouse(2004年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101巻(34号):12467~12472頁;およびLeeら(2004年)J. Immunol. Methods 284巻(1~2号):119~132頁にさらに記載されている。
【0245】
ある特定のファージディスプレイ法では、VHおよびVL遺伝子のレパートリーは、Winterら(1994年)Ann. Rev. Immunol.、12巻:433~455頁に記載されるように、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって別々にクローニングされ、ファージライブラリー中でランダムに組換えられ、このライブラリーは次いで、抗原結合ファージについてスクリーニングされ得る。ファージは、典型的には、単鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとして、抗体断片をディスプレイする。免疫化された供給源由来のライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なしに、免疫原[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5、BMP3b、ActRII(ActRIIAおよび/またはActRIIB)、BMPRII、ALK1およびエンドグリン]に対する高親和性抗体を提供する。あるいは、ナイーブなレパートリーが、Griffithsら(1993年)EMBO J、12巻:725~734頁により記載されるように、いずれの免疫化もなしに、広範な非自己抗原およびまた自己抗原に対する抗体の単一の供給源を提供するために、(例えば、ヒトから)クローニングされ得る。最後に、ナイーブなライブラリーはまた、HoogenboomおよびWinter(1992年)J. Mol. Biol.、227巻:381~388頁により記載されるように、再編成されていないV遺伝子セグメントを幹細胞からクローニングすること、および高度に可変性のCDR3領域をコードし、in vitroでの再編成を達成するためのランダム配列を含むPCRプライマーを使用することによって、合成により作製され得る。ヒト抗体ファージライブラリーを記載している特許公報には、例えば、米国特許第5,750,373号ならびに米国特許公開第2005/0079574号、同第2005/0119455号、同第2005/0266000号、同第2007/0117126号、同第2007/0160598号、同第2007/0237764号、同第2007/0292936号および同第2009/0002360号が含まれる。
【0246】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、多特異性抗体、例えば、二重特異性抗体である。多特異性抗体(典型的にはモノクローナル抗体)は、1種または複数種の(例えば、2、3、4、5、6つまたはそれよりも多くの)抗原上の少なくとも2つの(例えば、2、3、4、5もしくは6つまたはそれよりも多くの)異なるエピトープに対する結合特異性を有する。
【0247】
「オクトパス抗体」を含む、3つまたはそれよりも多くの機能的抗原結合部位を有する操作された抗体もまた、本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576A1を参照のこと)。
【0248】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される抗体は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から取得される抗体を指し、即ち、その集団を構成する個々の抗体は、例えば、天然に存在する変異を含むまたはモノクローナル抗体調製物の産生の間に生じる可能なバリアント抗体を除いて、同一でありおよび/または同じエピトープに結合し、かかるバリアントは、一般に、微量で存在する。異なるエピトープに対する異なる抗体を典型的には含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、ある抗原上の単一のエピトープに対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、抗体の特徴を、抗体の実質的に均一な集団から取得されるものとして示し、任意の特定の方法による抗体の産生を要求すると解釈すべきでない。例えば、本方法に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン遺伝子座の全てまたは一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法が含まれるがこれらに限定されない種々の技術によって作製され得、かかる方法およびモノクローナル抗体を作製するための他の例示的な方法は、本明細書に記載されている。
【0249】
例えば、BMP10に由来する免疫原を使用することによって、抗タンパク質/抗ペプチド抗血清またはモノクローナル抗体は、標準的なプロトコールによって作製され得る[例えば、Antibodies: A Laboratory Manual(1988年)、HarlowおよびLane編、Cold Spring Harbor Pressを参照のこと]。哺乳動物、例えば、マウス、ハムスターまたはウサギは、免疫原性形態のBMP10ポリペプチド、抗体応答を惹起することが可能な抗原性断片、または融合タンパク質で免疫化され得る。タンパク質またはペプチドに免疫原性を付与するための技術には、担体へのコンジュゲーションまたは当技術分野で周知の他の技術が含まれる。BMP10ポリペプチドの免疫原性部分は、アジュバントの存在下で投与され得る。免疫化の進行は、血漿または血清中の抗体力価の検出によってモニタリングされ得る。標準的なELISAまたは他のイムノアッセイが、抗体産生のレベルおよび/または結合親和性のレベルを評価するために、抗原としての免疫原と共に使用され得る。
【0250】
BMP10の抗原性調製物による動物の免疫化後、抗血清が取得され得、必要に応じて、ポリクローナル抗体が、血清から単離され得る。モノクローナル抗体を産生するために、抗体産生細胞(リンパ球)が、免疫化された動物から回収され得、骨髄腫細胞などの不死化細胞と、標準的な体細胞融合手順によって融合されて、ハイブリドーマ細胞を生じ得る。かかる技術は、当技術分野で周知であり、これには、例えば、ハイブリドーマ技術[例えば、KohlerおよびMilstein(1975年)Nature、256巻:495~497頁を参照のこと]、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術[例えば、Kozbarら(1983年)Immunology Today、4巻:72頁を参照のこと]、およびヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBV-ハイブリドーマ技術[Coleら(1985年)Monoclonal Antibodies and CancerTherapy、Alan R. Liss, Inc. 77~96頁]が含まれる。ハイブリドーマ細胞は、BMP10ポリペプチドと特異的に反応性である抗体、およびかかるハイブリドーマ細胞を含む培養物から単離されたモノクローナル抗体の産生のために、免疫化学的にスクリーニングされ得る。
【0251】
ある特定の実施形態では、1つまたは複数のアミノ酸改変が、本明細書で提供される抗体のFc領域中に導入され得、それによって、Fc領域バリアントを生成する。Fc領域バリアントは、1つまたは複数のアミノ酸位置にアミノ酸改変(例えば、置換、欠失および/または付加)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4Fc領域)を含み得る。
【0252】
例えば、本開示は、全てではないが一部のエフェクター機能を有する抗体バリアントを企図し、それによってその抗体バリアントは、抗体のin vivo半減期は重要であるが、ある特定のエフェクター機能[例えば、補体依存性細胞傷害(CDC)および抗体依存性細胞傷害(ADCC)]が不要であるかまたは有害である適用のための望ましい候補になる。in vitroおよび/またはin vivo細胞毒性アッセイが、CDCおよび/またはADCC活性の低減/枯渇を確認するために実施され得る。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイは、抗体がFcγR結合を欠く(したがって、ADCC活性を欠いている可能性が高い)が、FcRn結合能を保持することを確実にするために実施され得る。ADCCを媒介する主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、例えば、RavetchおよびKinet(1991年)Annu. Rev. Immunol. 9巻:457~492頁にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号;Hellstrom, I.ら(1986年)Proc. Nat'l Acad. Sci.USA 83巻:7059~7063頁;Hellstrom, Iら(1985年)Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 82巻:1499~1502頁;米国特許第5,821,337号;およびBruggemann, M.ら(1987年)J. Exp. Med. 166巻:1351~1361頁に記載されている。あるいは、非放射活性アッセイ法が使用され得る(例えば、ACTI(商標)、フローサイトメトリーのための非放射活性細胞毒性アッセイ;CellTechnology,Inc.Mountain View、Calif.;およびCytoTox 96(登録商標)非放射活性細胞毒性アッセイ、Promega、Madison、Wis.)。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核球(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、またはさらに、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynesら(1998年)Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 95巻:652~656頁に開示されるものなどの動物モデルにおいて、in vivoで評価され得る。C1q結合アッセイもまた、抗体がC1qに結合できず、したがってCDC活性を欠くことを確認するために実施され得る[例えば、WO2006/029879およびWO2005/100402中のC1qおよびC3c結合ELISAを参照のこと]。補体活性化を評価するために、CDCアッセイが実施され得る[例えば、Gazzano-Santoroら(1996年)J. Immunol. Methods 202巻:163頁;Cragg, M. S.ら(2003年)Blood 101巻:1045~1052頁;ならびにCragg, M. SおよびM. J. Glennie(2004年)Blood 103巻:2738~2743頁を参照のこと]。FcRn結合およびin vivoクリアランス/半減期の決定は、当技術分野で公知の方法を使用して実施することもできる[例えば、Petkova, S. B.ら(2006年)Int. Immunol. 18巻(12号):1759~1769頁を参照のこと]。
【0253】
低減されたエフェクター機能を有する本開示の抗体には、Fc領域残基238、265、269、270、297、327および329のうち1つまたは複数の置換を有する抗体が含まれる(米国特許第6,737,056号)。かかるFc変異体には、残基265および297のアラニンへの置換を有するいわゆる「DANA」Fc変異体を含む、アミノ酸位置265、269、270、297および327のうち2つまたはそれよりも多くに置換を有するFc変異体が含まれる(米国特許第7,332,581号)。
【0254】
ある特定の実施形態では、システイン操作された抗体、例えば、抗体の1つまたは複数の残基がシステイン残基で置換された「チオMAb」を創出することが望まれ得る。特定の実施形態では、置換された残基は、抗体のアクセス可能な部位に存在する。これらの残基をシステインで置換することによって、反応性チオール基を、抗体のアクセス可能な部位に位置させ、本明細書にさらに記載されるイムノコンジュゲートを創出するために、抗体を他の部分、例えば、薬物部分またはリンカー-薬物部分にコンジュゲートするために使用し得る。ある特定の実施形態では、以下の残基のうちいずれか1つまたは複数が、システインで置換され得る:軽鎖のV205(Kabat番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);および重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン操作された抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号に記載されるように生成され得る。
【0255】
さらに、望ましい抗体を同定するために抗体をスクリーニングするために使用される技術は、取得された抗体の特性に影響し得る。例えば、抗体が溶液中の抗原を結合するために使用される場合、溶液結合を試験することが望まれ得る。特に望ましい抗体を同定するために抗体と抗原との間の相互作用を試験するために、種々の異なる技術が利用可能である。かかる技術には、ELISA、表面プラズモン共鳴結合アッセイ(例えば、Biacore(商標)結合アッセイ、Biacore AB、Uppsala、Sweden)、サンドイッチアッセイ(例えば、IGEN International,Inc.、Gaithersburg、Marylandの常磁性ビーズシステム)、ウエスタンブロット、免疫沈降アッセイおよび免疫組織化学が含まれる。
【0256】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体および/または結合ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントが企図される。例えば、抗体および/または結合ポリペプチドの結合親和性および/または他の生物学的特性を改善することが望まれ得る。抗体および/または結合ポリペプチドのアミノ酸配列バリアントは、その抗体および/もしくは結合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列中に適切な改変を導入することによって、またはペプチド合成によって調製され得る。かかる改変には、例えば、抗体および/または結合ポリペプチドのアミノ酸配列からの欠失、および/またはかかるアミノ酸配列中への挿入、および/またはかかるアミノ酸配列内の残基の置換が含まれる。欠失、挿入および置換の任意の組合せが、最終構築物が所望の特徴、例えば、標的結合(BMP10、BMP9、BMP6、BMP5、BMP3b、ActRII(ActRIIAおよび/またはActRIIB)、BMPRII、ALK1およびエンドグリン結合)を有することを条件として、最終構築物に到達するために行われ得る。
【0257】
変更(例えば、置換)は、例えば、抗体親和性を改善するために、HVRにおいて行われ得る。かかる変更は、HVR「ホットスポット」、即ち、体細胞成熟化プロセスの間に高い頻度で変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury(2008年)Methods Mol. Biol. 207巻:179~196頁(2008年)を参照のこと)、および/またはSDR(a-CDR)において行われ得、得られたバリアントVHまたはVLは、結合親和性について試験される。二次ライブラリーを構築しそこから再選択することによる親和性成熟化は、当技術分野で記載されている[例えば、Hoogenboomら、Methods in Molecular Biology 178巻:1~37頁、O'Brienら編、Human Press、Totowa、N.J.(2001年)を参照のこと]。親和性成熟化の一部の実施形態では、多様性は、種々の方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリングまたはオリゴヌクレオチド指定変異誘発)のいずれかによって、成熟化のために選択された可変遺伝子中に導入される。次いで、二次ライブラリーが創出される。次いで、ライブラリーは、所望の親和性を有する任意の抗体バリアントを同定するためにスクリーニングされる。多様性を導入するための別の方法は、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6残基)がランダム化されるHVR指向性アプローチを含む。抗原結合に関与するHVR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発またはモデル化を使用して具体的に同定され得る。特に、CDR-H3およびCDR-L3が標的化される場合が多い。
【0258】
ある特定の実施形態では、置換、挿入または欠失は、かかる変更が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減させない限り、1つまたは複数のHVR内に存在し得る。例えば、結合親和性を実質的に低減させない保存的変更(例えば、本明細書で提供される保存的置換)が、HVRにおいて行われ得る。かかる変更は、HVR「ホットスポット」またはSDRの外側にあり得る。上で提供されたバリアントVHおよびVL配列のある特定の実施形態では、各HVRは、未変更であるか、または1、2もしくは3つ以下のアミノ酸置換を含むのいずれかである。
【0259】
変異誘発のために標的化され得る抗体および/または結合ポリペプチドの残基または領域の同定のための有用な方法は、「アラニンスキャニング変異誘発」と呼ばれ、CunninghamおよびWells(1989年)Science、244巻:1081~1085頁に記載されている。この方法では、残基または標的残基の群(例えば、荷電残基、例えば、arg、asp、his、lysおよびglu)が同定され、抗体または結合ポリペプチドと抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを決定するために、中性または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられる。さらなる置換が、最初の置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸位置において導入され得る。あるいは、またはさらに、抗原-抗体複合体の結晶構造が、抗体と抗原との間の接触点を同定するために使用され得る。かかる接触残基および隣接残基は、置換のための候補として標的化または排除され得る。バリアントは、所望の特性を含むかどうかを決定するためにスクリーニングされ得る。
【0260】
アミノ酸配列挿入には、1残基から100またはそれよりも多くの残基を含むポリペプチドまでの長さ範囲のアミノ末端および/またはカルボキシル末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入バリアントには、酵素(例えば、ADEPTのため)または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドへの、抗体のN末端またはC末端の融合が含まれる。
【0261】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体および/または結合ポリペプチドは、当技術分野で公知であり容易に利用可能なさらなる非タンパク質性部分を含むようにさらに改変され得る。抗体および/または結合ポリペプチドの誘導体化に適した部分には、水溶性ポリマーが含まれるがこれに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、およびデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール(propropylene glycol)ホモポリマー、ポリプロピレンオキシド(prolypropyleneoxide)/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにそれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性に起因して、製造における利点を有し得る。ポリマーは、任意の分子量のものであり得、分枝していても分枝していなくてもよい。抗体および/または結合ポリペプチドに付加されるポリマーの数は、変動し得、1つよりも多いポリマーが付加される場合、これらは、同じまたは異なる分子であり得る。一般に、誘導体化のために使用されるポリマーの数および/または型は、改善される抗体および/または結合ポリペプチドの特定の特性または機能、抗体誘導体および/または結合ポリペプチド誘導体が規定された条件下で治療において使用されるかどうかが含まれるがこれらに限定されない検討事項に基づいて決定され得る。
【0262】
5.小分子アンタゴニスト
他の態様では、本開示は、小分子または小分子の組合せであるBMPアンタゴニスト(阻害剤)に関する。BMPアンタゴニスト小分子は、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5、およびBMP3b]ならびに/または1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体、および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1、およびエンドグリン)、ならびに/または1種もしくは複数の下流シグナル伝達成分(例えば、Smad2および/もしくは3)を阻害し得る。特に、本開示は、それを必要とする対象において所望の効果を達成する(例えば、心不全または心不全の1つもしくは複数の合併症を処置する)ために、BMPアンタゴニスト小分子またはBMPアンタゴニスト小分子の組合せを、単独で、または1種もしくは複数のさらなる支持療法および/もしくは活性薬剤と組み合わせて使用する方法を提供する。
【0263】
一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、少なくともBMP10を阻害する小分子アンタゴニストまたは小分子アンタゴニストの組合せである。一部の実施形態では、BMP10を阻害する小分子アンタゴニストまたは小分子アンタゴニストの組合せは、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP9、BMP6、BMP5およびBMP3b]、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1、エンドグリン、および/または1種もしくは複数のSmad(例えば、Smad2および3)をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、少なくともBMP9を阻害する小分子アンタゴニストまたは小分子アンタゴニストの組合せである。一部の実施形態では、BMP9を阻害する小分子アンタゴニストまたは小分子アンタゴニストの組合せは、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP6、BMP5およびBMP3b]、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1、エンドグリン、ならびに/または1種もしくは複数のSmad(例えば、Smad2および3)をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、少なくともBMP6を阻害する小分子アンタゴニストまたは小分子アンタゴニストの組合せである。一部の実施形態では、BMP6を阻害する小分子アンタゴニストまたは小分子アンタゴニストの組合せは、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP9、BMP5およびBMP3b]、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1、エンドグリン、ならびに/または1種もしくは複数のSmad(例えば、Smad2および3)をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、少なくともBMP5を阻害する小分子アンタゴニストまたは小分子アンタゴニストの組合せである。一部の実施形態では、BMP5を阻害する小分子アンタゴニストまたは小分子アンタゴニストの組合せは、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP9、BMP5およびBMP3b]、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1、エンドグリン、ならびに/または1種もしくは複数のSmad(例えば、Smad2および3)をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、少なくともBMP3bを阻害する小分子アンタゴニストまたは小分子アンタゴニストの組合せである。一部の実施形態では、BMP3bを阻害する小分子アンタゴニストまたは小分子アンタゴニストの組合せは、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、およびBMP5]、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1、エンドグリン、ならびに/または1種もしくは複数のSmad(例えば、Smad2および3)をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、少なくともActRIIAおよび/またはActRIIBを阻害する小分子アンタゴニストまたは小分子アンタゴニストの組合せである。一部の実施形態では、ActRIIAおよび/またはActRIIBを阻害する小分子アンタゴニストまたは小分子アンタゴニストの組合せは、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5およびBMP3b]、BMPRII、ALK1、エンドグリン、ならびに/または1種もしくは複数のSmad(例えば、Smad2および3)をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、少なくともBMPRIIを阻害する小分子アンタゴニスト、または小分子アンタゴニストの組合せである。一部の実施形態では、BMPRIIを阻害する小分子アンタゴニストまたは小分子アンタゴニストの組合せは、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5およびBMP3b]、ActRIIA、ActRIIB、ALK1、エンドグリン、および/または1種もしくは複数のSmad(例えば、Smad2および3)をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、少なくともALK1を阻害する小分子アンタゴニストまたは小分子アンタゴニストの組合せである。一部の実施形態では、ALK1を阻害する小分子アンタゴニストまたは小分子アンタゴニストの組合せは、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5およびBMP3b]、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、エンドグリン、ならびに/または1種もしくは複数のSmad(例えば、Smad2および3)をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、少なくともエンドグリンを阻害する小分子アンタゴニストまたは小分子アンタゴニストの組合せである。一部の実施形態では、エンドグリンを阻害する小分子アンタゴニストまたは小分子アンタゴニストの組合せは、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5およびBMP3b]、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1、ならびに/または1種もしくは複数のSmad(例えば、Smad2および3)をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、少なくとも1種または複数種のSmad(例えば、Smad2および/または3)を阻害する小分子アンタゴニストまたは小分子アンタゴニストの組合せである。一部の実施形態では、Smadを阻害する小分子アンタゴニストまたは小分子アンタゴニストの組合せは、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5およびBMP3b]、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1、ならびに/またはエンドグリンをさらに阻害する。
【0264】
小分子アンタゴニストは、直接または間接阻害剤であり得る。例えば、間接小分子アンタゴニストまたは小分子アンタゴニストの組合せは、少なくとも1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5およびBMP3b]、1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、およびALK)、1種もしくは複数の共受容体(エンドグリン)、ならびに/または1種もしくは複数の下流シグナル伝達成分(例えば、Smad2および/もしくは3)の発現(例えば、転写、翻訳、細胞分泌、またはそれらの組合せ)を阻害し得る。あるいは、直接小分子BMPアンタゴニストまたは小分子アンタゴニストの組合せは、例えば、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5およびBMP3b]、1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、およびALK)、1種もしくは複数の共受容体(エンドグリン)、ならびに/または1種もしくは複数の下流シグナル伝達成分(例えば、Smad2および/もしくは3)のうち1種または複数種と直接結合し得る。1種または複数種の間接小分子アンタゴニストと、1種または複数種の直接小分子アンタゴニストとの組合せが、本明細書において開示された方法に従って使用される場合がある。
【0265】
本開示の結合性有機小分子アンタゴニストは、公知の方法論(例えば、PCT公報番号WO00/00823およびWO00/39585を参照されたい)を使用して同定および化学合成され得る。一般に、本開示の小分子アンタゴニストは、通常、サイズが約2000ダルトン未満、あるいはサイズが約1500、750、500、250または200ダルトン未満であり、ここで、かかる有機小分子は、本明細書に記載のポリペプチドと、好ましくは特異的に結合することが可能である。かかる小分子アンタゴニストは、過度の実験なしに周知の技術を使用して同定され得る。これについて、ポリペプチド標的と結合することが可能な分子について有機小分子ライブラリーをスクリーニングするための技術が当技術分野において周知であることが、留意される(例えば、国際特許公報番号WO00/00823およびWO00/39585を参照されたい)。
【0266】
本開示の結合性有機小分子は、例えば、アルデヒド、ケトン、オキシム、ヒドラゾン、セミカルバゾン、カルバジド、一級アミン、二級アミン、三級アミン、N置換ヒドラジン、ヒドラジド、アルコール、エーテル、チオール、チオエーテル、ジスルフィド、カルボン酸、エステル、アミド、尿素、カルバメート、カルボネート、ケタール、チオケタール、アセタール、チオアセタール、アリールハライド、アリールスルホネート、アルキルハライド、アルキルスルホネート、芳香族化合物、複素環化合物、アニリン、アルケン、アルキン、ジオール、アミノアルコール、オキサゾリジン、オキサゾリン、チアゾリジン、チアゾリン、エナミン、スルホンアミド、エポキシド、アジリジン、イソシアネート、スルホニルクロリド、ジアゾ化合物、および酸塩化物であり得る。
【0267】
6.ヌクレオチドアンタゴニスト
他の態様では、本開示は、ポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの組合せであるBMPアンタゴニスト(阻害剤)に関する。BMPアンタゴニストポリヌクレオチドは、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5、およびBMP3b]、1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1、およびエンドグリン)、ならびに/または1種もしくは複数の下流シグナル伝達成分(例えば、Smad2および/もしくは3)を阻害し得る。特に、本開示は、それを必要とする対象において所望の効果を達成する(例えば、心不全または心不全の1つもしくは複数の合併症を処置するために、BMPアンタゴニストポリヌクレオチドまたはBMPアンタゴニストポリヌクレオチドの組合せを、単独で、または1種もしくは複数のさらなる支持療法および/もしくは活性薬剤と組み合わせて使用する方法を提供する。
【0268】
一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、少なくともBMP10を阻害するポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せである。一部の実施形態では、BMP10を阻害するポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せは、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP9、BMP6、BMP5、およびBMP3b]、1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1、およびエンドグリン)、ならびに/または1種もしくは複数の下流シグナル伝達成分(例えば、Smad2および/もしくは3)をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、少なくともBMP9を阻害するポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せである。一部の実施形態では、BMP9を阻害するポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せは、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP6、BMP5、およびBMP3b]、1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1、およびエンドグリン)、ならびに/または1種もしくは複数の下流シグナル伝達成分(例えば、Smad2および/もしくは3)をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、少なくともBMP6を阻害するポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せである。一部の実施形態では、BMP6を阻害するポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せは、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP9、BMP5、およびBMP3b]、1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1、およびエンドグリン)、ならびに/または1種もしくは複数の下流シグナル伝達成分(例えば、Smad2および/もしくは3)をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、少なくともBMP5を阻害するポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せである。一部の実施形態では、BMP5を阻害するポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せは、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、およびBMP3b]、1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1、およびエンドグリン)、ならびに/または1種もしくは複数の下流シグナル伝達成分(例えば、Smad2および/もしくは3)をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、少なくともBMP3bを阻害するポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せである。一部の実施形態では、BMP3bを阻害するポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せは、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、およびBMP5]、1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1、およびエンドグリン)、ならびに/または1種もしくは複数の下流シグナル伝達成分(例えば、Smad2および/もしくは3)をさらに阻害する。一部の実施形態では、少なくともActRIIAおよび/またはActRIIBを阻害するBMPアンタゴニストは、ポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せである。一部の実施形態では、ActRIIAおよび/またはActRIIBを阻害するポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せは、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5、およびBMP3b]、1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、BMPRII、ALK1、およびエンドグリン)、ならびに/または1種もしくは複数の下流シグナル伝達成分(例えば、Smad2および/もしくは3)をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、少なくともBMPRIIを阻害するポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せである。一部の実施形態では、BMPRIIを阻害するポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せは、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5、およびBMP3b]、1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、ALK1、およびエンドグリン)、ならびに/または1種もしくは複数の下流シグナル伝達成分(例えば、Smad2および/もしくは3)をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、少なくともALK1を阻害するポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せである。一部の実施形態では、ALK1を阻害するポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せは、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5、およびBMP3b]、1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、およびエンドグリン)、ならびに/または1種もしくは複数の下流シグナル伝達成分(例えば、Smad2および/もしくは3)をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、少なくともエンドグリンを阻害するポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せである。一部の実施形態では、エンドグリンを阻害するポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せは、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5、およびBMP3b]、1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、およびALK1)、ならびに/または1種もしくは複数の下流シグナル伝達成分(例えば、Smad2および/もしくは3)をさらに阻害する。一部の実施形態では、BMPアンタゴニストは、少なくとも1種または複数種のSmad(例えば、Smad2および/もしくは3を阻害するポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せである。一部の実施形態では、1種または複数種のSmadを阻害するポリヌクレオチドアンタゴニストまたはポリヌクレオチドアンタゴニストの組合せは、1種もしくは複数のリガンド[例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5、およびBMP3b]ならびに/または1種もしくは複数のI型受容体、II型受容体および/もしくは共受容体(例えば、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1、およびエンドグリン)をさらに阻害する。
【0269】
本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストは、アンチセンス核酸、RNAi分子[例えば、低分子干渉RNA(siRNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)]、アプタマーおよび/またはリボザイムであり得る。ヒトBMP10、BMP9、BMP6、BMP5、BMP3b、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1、エンドグリン、およびSmad(例えば、Smad2および3)の核酸配列およびアミノ酸配列は、当技術分野において公知であり、したがって、本開示の方法に従う使用のためのポリヌクレオチドアンタゴニストは、当技術分野における知識および本明細書において提供される教示に基づき当業者によって日常的に作製され得る。
【0270】
例えば、アンチセンス技術を使用して、アンチセンスDNAもしくはRNAにより、または三重らせん形成により遺伝子発現を制御することができる。アンチセンス技術は、例えば、Okano(1991年)J.Neurochem.56巻:560頁;Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression、CRC Press、Boca Raton、Fla.(1988年)に論じられている。三重らせん形成は、例えば、Cooneyら(1988年)Science 241巻:456頁;およびDervanら、(1991年)Science 251巻:1300頁に論じられている。これらの方法は、ポリヌクレオチドの相補性DNAまたはRNAへの結合に基づく。一部の実施形態では、アンチセンス核酸は、所望の遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部分と相補的な一本鎖RNAまたはDNA配列を含む。しかし、絶対相補性は、好ましいものの、必要なわけではない。
【0271】
本明細書において言及される「RNAの少なくとも一部分に相補的な」配列は、RNAとハイブリダイズして安定な二重鎖を形成することができるために十分な相補性を有する配列を意味する。したがって、本明細書開示の遺伝子の二本鎖アンチセンス核酸の場合、二重鎖DNAの単一の鎖が試験される場合があり、または三重鎖形成がアッセイされる場合がある。ハイブリダイズする能力は、相補性の程度およびアンチセンス核酸の長さの両方に依存する。一般的に、ハイブリダイズする核酸が長いほど、それは、RNAとより多くの塩基ミスマッチを含有し、それでも安定な二重鎖(または場合によっては三重鎖)を形成する場合がある。当業者は、標準的な手順の使用によりミスマッチの許容度を確認して、ハイブリダイズした複合体の融点を決定することができる。
【0272】
メッセージの5’末端、例えば、AUG開始コドンまでおよびそれを含む5’非翻訳配列と相補的なポリヌクレオチドは、翻訳を阻害するのに最も効率的に働くはずである。しかし、mRNAの3’非翻訳配列と相補的な配列も、同様に、mRNAの翻訳を阻害するのに有効であることが示されている[例えば、Wagner, R.、(1994年)Nature 372巻:333~335頁を参照されたい]。したがって、本開示の遺伝子の5’または3’のいずれかの非翻訳非コード領域に相補的なオリゴヌクレオチドをアンチセンスアプローチに使用して、内因性mRNAの翻訳を阻害することができよう。mRNAの5’非翻訳領域と相補的なポリヌクレオチドは、AUG開始コドンの相補体を含むはずである。mRNAコード領域と相補的なアンチセンスポリヌクレオチドは、翻訳のあまり効率的でない阻害物質であるが、本開示の方法に従って使用できよう。本開示のmRNAの5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、またはコード領域のいずれにハイブリダイズするように設計されようと、アンチセンス核酸は、少なくとも6ヌクレオチド長であるべきであり、好ましくは6~約50ヌクレオチド長の範囲のオリゴヌクレオチドである。具体的な態様では、オリゴヌクレオチドは、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、または少なくとも50ヌクレオチドである。
【0273】
一実施形態では、本開示のアンチセンス核酸は、外因性配列からの転写により細胞内で生成される。例えば、ベクターまたはその一部分は、転写され、本開示の遺伝子のアンチセンス核酸(RNA)を生成する。かかるベクターは、所望のアンチセンス核酸をコードする配列を含有する。かかるベクターは、それが転写されて所望のアンチセンスRNAを生成できる限り、エピソーマルのままである、または染色体に組み込まれる場合がある。かかるベクターは、当技術分野において標準的な組換えDNA技術により構築することができる。ベクターは、脊椎動物細胞における複製および発現のために使用される、プラスミド、ウイルス、または当技術分野において公知のその他であり得る。本開示の所望の遺伝子をコードする配列またはその断片の発現は、当技術分野において脊椎動物、好ましくはヒト細胞において作用することが公知の任意のプロモーターによることができる。このようなプロモーターは、誘導性または構成的であり得る。かかるプロモーターには、SV40初期プロモーター領域[例えば、BenoistおよびChambon(1981年)Nature 29巻:304~310頁を参照されたい]、ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反復配列中に含有されるプロモーター[例えば、Yamamotoら(1980年)Cell 22巻:787~797頁を参照されたい]、ヘルペスチミジンプロモーター[例えば、Wagnerら(1981年)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.78巻:1441~1445頁を参照されたい]、およびメタロチオネイン遺伝子の調節配列[例えば、Brinsterら(1982年)Nature 296巻:39~42頁を参照されたい]が含まれるが、これに限定されない。
【0274】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドアンタゴニストは、1種または複数種の遺伝子の発現を標的化する干渉性RNAまたはRNAi分子である。RNAiは、標的化mRNAの発現を干渉するRNAの発現を指す。具体的には、RNAiは、siRNA(低分子干渉RNA)を経由して特異的mRNAを干渉することにより標的化遺伝子をサイレンシングする。次いで、dsRNA複合体が、細胞による分解の標的にされる。siRNA分子は、10~50ヌクレオチド長の二本鎖RNA二重鎖であり、十分に相補的な(例えば遺伝子に対して少なくとも80%の同一性の)標的遺伝子の発現を干渉する。一部の実施形態では、siRNA分子は、標的遺伝子のヌクレオチド配列に対して少なくとも85、90、95、96、97、98、99、または100%同一なヌクレオチド配列を含む。
【0275】
さらなるRNAi分子には、低分子干渉性ヘアピンとも呼ばれる低分子ヘアピン型RNA(shRNA)およびマイクロRNA(miRNA)が含まれる。shRNA分子は、標的遺伝子からのセンス配列とアンチセンス配列とがループにより接続されたものを含有する。shRNAは、核から細胞質中に輸送され、mRNAと共に分解される。Pol IIIまたはU6プロモーターを使用して、RNAiのためのRNAを発現させることができる。Paddisonら[Genes & Dev.(2002年)16巻:948~958頁、2002年]は、RNAiを引き起こすための手段としてヘアピンに折り畳まれた小RNA分子を使用している。したがって、かかる低分子ヘアピン型RNA(shRNA)分子も、本明細書に記載の方法に有利に使用される。機能的shRNAのステムおよびループの長さは様々であり、サイレンシング活性に影響せずに、ステムの長さは、約25~約30ntの任意の長さの範囲である場合があり、ループのサイズは、4~約25ntの間の範囲である場合がある。任意の特定の理論に縛られることを望むわけではないが、これらのshRNAは、DICER RNアーゼの二本鎖RNA(dsRNA)生成物に類似しており、いずれにせよ、特定の遺伝子の発現を阻害する同じ能力を有すると考えられる。shRNAは、レンチウイルスベクターから発現し得る。miRNAは、「ステム-ループ」構造によって特徴付けられるプレmiRNAとして最初に転写され、その後RISCを経由するさらなるプロセシング後に成熟miRNAにプロセシングされる、約10~70ヌクレオチド長の一本鎖RNAである。
【0276】
RNAiを媒介する、siRNAを含むがこれに限定されない分子は、化学合成(Hohjoh、FEBS Lett 521巻:195~199頁、2002年)、dsRNAの加水分解(Yangら、Proc Natl Acad Sci USA 99巻:9942~9947頁、2002年)により、T7 RNAポリメラーゼを用いたin vitro転写(Donzeetら、Nucleic Acids Res 30巻:e46頁、2002年;Yuら、Proc Natl Acad Sci USA 99巻:6047~6052頁、2002年)、およびE.coli RNアーゼIIIなどのヌクレアーゼを使用する二本鎖RNAの加水分解(Yangら、Proc Natl Acad Sci USA 99巻:9942~9947頁、2002年)により、in vitroで生成することができる。
【0277】
別の態様に従って、本開示は、デコイDNA、二本鎖DNA、一本鎖DNA、複合DNA、封入DNA、ウイルスDNA、プラスミドDNA、裸のRNA、封入RNA、ウイルスRNA、二本鎖RNA、RNA干渉を発生することが可能な分子、またはその組合せを含むがこれに限定されない、ポリヌクレオチドアンタゴニストを提供する。
【0278】
一部の実施形態では、本開示のポリヌクレオチドアンタゴニストは、アプタマーである。アプタマーは、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5、BMP3b、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1、エンドグリン、およびSmad(例えば、Smad2および3)などの標的分子と結合し、これらの標的分子と特異的に結合する三次構造を形成する、二本鎖DNA分子および一本鎖RNA分子を含む核酸分子である。アプタマーの発生およびその治療的使用は、当技術分野において十分に確立されている。例えば、米国特許第5,475,096号を参照されたい。アプタマーに関するさらなる情報は、米国特許出願公開第20060148748号に見出すことができる。核酸アプタマーは、当技術分野において公知の方法を使用して、例えば試験管内進化(SELEX)プロセスを介して選択される。SELEXは、例えば、米国特許第5,475,096号、同第5,580,737号、同第5,567,588号、同第5,707,796号、同第5,763,177号、同第6,011,577号、および同第6,699,843号に記載の、標的分子と高度に特異的な結合性を有する核酸分子のin vitro進化のための方法である。アプタマーを同定するための別のスクリーニング方法は、米国特許第5,270,163号に記載されている。SELEXプロセスは、核酸が多様な二次元および三次元構造を形成する能力、ならびにモノマーであろうとポリマーであろうと、他の核酸分子およびポリペプチドを含む事実上任意の化学化合物に対してリガンドとして作用する(特異的結合対を形成する)ためにヌクレオチドモノマー内で利用可能な化学的多用途性に基づく。任意のサイズまたは組成の分子が標的として役立ち得る。SELEX法は、所望の結合親和性および選択性を獲得するために同じ一般的選択スキームを使用する、候補オリゴヌクレオチドの混合物からの選択ならびに結合、分割および増幅のステップ的な反復を伴う。ランダム配列のセグメントを含み得る核酸混合物から開始して、SELEX法は、結合に好都合な条件下で混合物を標的と接触させるステップ;標的分子と特異的に結合した核酸から未結合の核酸を分割するステップ;核酸-標的複合体を解離させるステップ;核酸-標的複合体から解離した核酸を増幅して、リガンドが富化された核酸混合物を産出するステップを含む。結合させるステップ、分割するステップ、解離させるステップおよび増幅するステップは、標的分子に対して高度に特異的な高親和性の核酸リガンドを産出するために、望むだけ多くのサイクルを経由して繰り返される。
【0279】
概して、かかる結合分子は、動物に別々に投与される[例えば、O'Connor(1991年)J. Neurochem.56巻:560頁を参照されたい]が、かかる結合分子は、宿主細胞により取り込まれたポリヌクレオチドからin vivoで発現されることも、in vivoで発現されることもできる[例えば、Oligodeoxynucleotides as Antisense Inhibitors of Gene Expression、CRC Press、Boca Raton、Fla.(1988年)を参照されたい]。
【0280】
7.スクリーニングアッセイ
ある特定の態様では、本開示は、BMPアンタゴニストである化合物(薬剤)を同定するためのBMP10プロペプチドの使用に関する。このスクリーニングにより同定された化合物を試験して、それらが心臓組織をモジュレートする能力を評価すること、およびそれらが組織変化をin vivoまたはin vitroでモジュレートする能力を評価することができる。これらの化合物は、例えば動物モデルにおいて試験することができる。
【0281】
TGFβスーパーファミリーリガンドシグナル伝達(例えば、SMADシグナル伝達)を標的化することにより組織の成長をモジュレートするための治療剤についてスクリーニングするために、数多くのアプローチがある。ある特定の実施形態では、選択された細胞株に対するTGFβスーパーファミリー受容体媒介効果を撹乱する薬剤を同定するために化合物の高スループットスクリーニングを実施することができる。ある特定の実施形態では、例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5、およびBMP3bを含む結合パートナーへのBMP10プロペプチドの結合を特異的に阻害または低減する化合物をスクリーニングおよび同定するためにアッセイが実施される。あるいは、リガンドなどの結合パートナーへのBMP10プロペプチドの結合を増強する化合物を同定するためにアッセイを使用することができる。さらなる実施形態では、化合物は、それらがBMP10プロペプチドと相互作用する能力により同定することができる。
【0282】
多様なアッセイ形式が十分であり、本開示に照らして、本明細書に明白に記載されない形式が、それでも当業者により理解されるであろう。本明細書に記載されるように、本発明の試験化合物(薬剤)は、任意のコンビナトリアルケミストリー法により創出され得る。あるいは、対象化合物は、in vivoまたはin vitroで合成される、天然に存在する生体分子であり得る。組織の成長のモジュレーターとして作用する能力について試験されるべき化合物(薬剤)は、例えば、細菌、酵母、植物または他の生物により生成される(例えば、天然生成物)、化学的に生成される(例えば、ペプチド模倣薬を含む小分子)、または組換え生成される場合がある。本発明により考えられる試験化合物には、非ペプチド有機分子、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド模倣薬、糖、ホルモン、および核酸分子が含まれる。ある特定の実施形態では、試験薬剤は、約2,000ダルトン未満の分子量を有する小有機分子である。
【0283】
本開示の試験化合物は、単一の別個の実体として提供される、またはコンビナトリアルケミストリーにより作製されるような、より大きい複雑さのライブラリーとして提供される場合がある。これらのライブラリーは、例えば、アルコール、アルキルハライド、アミン、アミド、エステル、アルデヒド、エーテルおよび他のクラスの有機化合物を含み得る。試験システムへの試験化合物の提示は、単離された形態で、または特に最初のスクリーニングステップでは化合物の混合物としてのいずれかであり得る。必要に応じて、化合物は、必要に応じて他の化合物を用いて誘導体化される場合があり、化合物の単離を容易にする誘導体化基を有する場合がある。誘導体化基の非限定的な例には、ビオチン、フルオレセイン、ジゴキシゲニン、緑色蛍光タンパク質、同位体、ポリヒスチジン、磁気ビーズ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、光活性化可能な架橋剤またはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0284】
化合物および天然抽出物のライブラリーを試験する多くの薬物スクリーニングプログラムにおいて、所与の期間に調査される化合物の数を最大化するために、高スループットアッセイが望ましい。例えば精製または半精製タンパク質を用いて得られる場合があるような、無細胞システムで行われるアッセイは、試験化合物により媒介される分子標的における変化の迅速な進展および比較的容易な検出を可能にするために産生できるという点で、「一次」スクリーニングと称されることが多い。そのうえ、試験化合物の細胞毒性またはバイオアベイラビリティーの効果は、一般的に、in vitroシステムでは無視することができ、その代わりに、アッセイは、BMP10プロペプチドと、例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5、およびBMP3bを含む結合パートナーとの間の結合親和性の変化に現れ得る、主として分子標的に及ぼす薬物の効果に焦点が当てられる。
【0285】
単に例証すると、本開示の例示的なスクリーニングアッセイにおいて、目的の化合物は、アッセイの目的のために必要に応じて、通常、TGF-ベータスーパーファミリーリガンドと結合することが可能な単離および精製されたBMP10プロペプチドと接触される。次いで、化合物とBMP10プロペプチドとの混合物が、適切なリガンド(例えば、BMP10、BMP9、BMP6、BMP5、およびBMP3b)を含有する組成物に添加される。BMP10プロペプチド-スーパーファミリーリガンド複合体の検出および定量は、BMP10プロペプチドとその結合タンパク質との間の複合体形成を阻害(または強化)することへの化合物の効力を決定するための手段を提供する。化合物の効力は、種々の濃度の試験化合物を使用して得られたデータから用量反応曲線を作製することにより評価することができる。そのうえ、対照アッセイも行って、比較のためのベースラインを提供することができる。例えば、対照アッセイでは、単離および精製されたリガンドが、BMP10プロペプチドを含有する組成物に添加され、BMP10プロペプチド-リガンド複合体の形成が、試験化合物の非存在下で定量される。一般に、反応物が混和され得る順序は様々である可能性があり、同時に混和できることが理解されるであろう。そのうえ、精製タンパク質の代わりに、細胞抽出物および溶解物を使用して適切な無細胞アッセイシステムにされる場合がある。
【0286】
BMP10プロペプチドの別のタンパク質との結合は、種々の技術により検出され得る。例えば、複合体形成のモジュレーションは、例えば放射性標識(例えば、32P、35S、14Cもしくは3H)、蛍光標識(例えば、FITC)、もしくは酵素標識BMP10プロペプチドなどの検出可能に標識されたタンパク質および/または結合タンパク質を使用して、イムノアッセイまたはクロマトグラフィー検出により定量することができる。
【0287】
ある特定の実施形態では、本開示は、BMP10プロペプチドと結合タンパク質との間の相互作用の程度を直接的または間接的のいずれかで測定することへの、蛍光偏光アッセイおよび蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイの使用を考えている。さらに、他の検出様式、例えば光導波路(PCT公報WO96/26432および米国特許第5,677,196号)、表面プラズモン共鳴(SPR)、表面電荷センサー、および表面力センサーに基づくものが、本開示の多くの実施形態と適合する。
【0288】
そのうえ、本開示は、BMP10プロペプチドと結合パートナーとの間の相互作用を破壊または強化する薬剤を同定するために、「ツーハイブリッドアッセイ」としても公知の相互作用トラップアッセイの使用を考えている。例えば、米国特許第5,283,317号;Zervosら(1993年)Cell 72巻:223~232頁;Maduraら(1993年)J Biol Chem 268巻:12046~12054頁;Bartelら(1993年)Biotechniques 14巻:920~924頁;およびIwabuchiら(1993年)Oncogene 8巻:1693~1696頁)を参照されたい。具体的な実施形態では、本開示は、BMP10プロペプチドと結合タンパク質との間の相互作用を解離させる化合物(例えば、小分子またはペプチド)を同定するために逆ツーハイブリッドシステムの使用を考えている[VidalおよびLegrain、(1999年)Nucleic Acids Res 27巻:919~29頁;VidalおよびLegrain、(1999年)Trends Biotechnol 17巻:374~81頁;ならびに米国特許第5,525,490号;同第5,955,280号;および同第5,965,368号]。
【0289】
ある特定の実施形態では、対象化合物は、それらがBMP10プロペプチドと相互作用する能力により同定される。化合物とBMP10プロペプチドとの間の相互作用は、共有結合的または非共有結合的であり得る。例えば、かかる相互作用は、光架橋、放射性リガンド結合、およびアフィニティークロマトグラフィーを含むin vitro生化学法を使用してタンパク質レベルで同定することができる[Jakoby WBら(1974年)Methods in Enzymology 46巻:1頁]。ある特定の場合、化合物は、BMP10プロペプチドと結合する化合物を検出するためのアッセイなどの、メカニズムベースのアッセイでスクリーニングされる場合がある。これは、固相または液相結合事象を含み得る。あるいは、レポーターシステム(例えば、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、または緑色蛍光タンパク質)を用いて、BMP10プロペプチドをコードする遺伝子を細胞中にトランスフェクトし、好ましくは高スループットスクリーニングによりライブラリーに対して、またはライブラリーの個別のメンバーを用いてスクリーニングすることができる。他のメカニズムベースの結合アッセイ、例えば、自由エネルギーの変化を検出する結合アッセイが使用される場合がある。結合アッセイは、ウェル、ビーズもしくはチップに固定された標的を用いて行う、または固定化抗体により捕捉する、またはキャピラリー電気泳動により分割することができる。結合した化合物は、通常、比色エンドポイントまたは蛍光または表面プラズモン共鳴を使用して検出され得る。
【0290】
8.例示的な治療的使用
本明細書に記載されるように、BMPアンタゴニストが心不全の種々の編集物の処置および予防に対して驚くべき効果を有することが発見されている。例えば、可溶性BMP10プロペプチド(BMP10pro)ポリペプチドは、心肥大、心リモデリング、および心線維症を予防するため、またはその重症度を低減させるため、ならびに横行大動脈縮窄術(TAC)心不全モデルにおいて心機能を改善するために使用できることが示された。そのうえ、BMP10pro処置は、心不全患者の生存期間を増加させた。BMP10pro処置の類似の有益効果は、心筋梗塞症(MI)心臓疾患モデルで観察された。そのうえ、BMP10およびBMP9と結合する可溶性エンドグリンポリペプチドも、TACおよびMI心不全モデルの両方でプラス効果を示した。したがって、本開示は、一部では、心不全を処置、予防、またはその重症度を低減させる、特に心不全(例えば、心肥大、心リモデリング、および心線維症)の1種または複数種の合併症を処置、予防、またはその重症度を低減させる、ならびに心不全患者の心機能を改善し、生存期間を増加させるために、BMPアンタゴニストを単独でまたは1種もしくは複数のさらなる支持療法および/もしくはさらなる活性薬剤と組み合わせて使用する方法を提供する。
【0291】
本明細書で使用される、障害または状態を「予防する」治療薬は、統計試料において未処置対照試料と比べて処置試料における障害もしくは状態の発生率を低減させる、または未処置対照試料と比べて障害または状態の発生を遅延させる化合物を指す。本明細書で使用される、「処置する」という用語は、状態が確立した後のその回復または消失を含む。いずれの場合も、予防または処置は、医師または他の医療提供者により提供される診断および治療剤の投与の意図される結果で識別され得る。
【0292】
一般に、本開示に記載されるような疾患または状態の処置または予防は、1種または複数種のBMPアンタゴニストを有効量で投与することにより達成される。薬剤の有効量は、所望の治療結果または予防結果を達成するために必要な投薬量および期間で有効な量を指す。本開示の薬剤の治療有効量は、個体の病状、年齢、性別、および体重、ならびに薬剤が個体において所望の応答を誘発する能力などの要因に応じて様々であり得る。予防有効量は、所望の予防結果を達成するために必要な投薬量および期間で有効な量を指す。
【0293】
心不全は、心臓のある特定の構造または機能的異常に起因する典型的な症状および徴候により定義される臨床症候群である(ESC Guidelines for the diagnosis and treatment of acute and chronicheart failure. McMurray J Jら、EuropeanHeart Journal 2012年、14巻(8号):803~69頁;2013 ACCF/AHAGuideline for the Management of Heart Failure、Yanzy C Wら、Circulation 2013年、128巻、e240~e327頁)。例えば、心臓の異常は、血液を充満もしくは駆出する能力の機能障害をもたらし、かつ/または充満圧が正常であっても代謝を行っている組織の要求に見合う十分な酸素を送達できない、もしくは充満圧を増加させることと引き換えにしか送達できないこととなる場合がある。本明細書で使用される、心不全という用語は、左心室機能不全による心不全、正常な駆出率を有する心不全、大動脈狭窄による心不全、急性心不全、慢性心不全、うっ血性心不全、先天性心不全、代償性心不全、非代償性心不全、拡張期心不全、収縮期心不全、右心(室)不全、左心(室)不全、両室心不全、前方心不全、後方心不全、高拍出性心不全、低拍出性心不全が含まれるがこれに限定されない、多様な心血管状態を包含する。心不全には、心筋浮腫などの心臓における体液蓄積に関する心臓の状態も含まれる。
【0294】
一般に、心不全の臨床症状発現には、例えば、呼吸困難(息切れ)、起座呼吸、発作性夜間呼吸困難、および疲労(運動耐容能を制限し得る)、体液貯留(これは、例えば、肺うっ血および末梢浮腫をもたらし得る)、狭心症、高血圧、不整脈、心室性不整脈、心筋症、心肥大、心臓喘息、夜間多尿症、腹水貯留、うっ血性肝障害、凝固障害、腎血流低減、腎機能不全、心筋梗塞、および脳卒中が含まれる。
【0295】
「うっ血性心不全」という語句は、上記の種類を含む全ての種類の心不全を記載するために使用されることが多いものの、うっ血性心不全は、肺での肺うっ血または体液蓄積に関係する心不全の症状をより的確に描写している。このうっ血は、収縮期および左心不全のより一般的な症状である。肺系統の効率が低下するにつれ、心臓のインプット側近くの血液体積増加が、肺毛細血管と肺の肺胞腔との間の界面である肺胞-動脈界面の圧を変化させる。この界面での圧変化は、血漿を肺内の肺胞腔中に押し出す。呼吸困難および全身疲労は、うっ血性心不全の典型的な知覚される症状発現である。
【0296】
心不全を分類するために多数の異なる方法がある。例えば、心不全は、該当する心臓の側(左心不全に対して右心不全)に基づき特徴付けられる場合がある。右心不全は、肺への肺血流を損なう。左心不全は、身体および脳への大動脈血流を損なう。混ざった症状(mixed presentation)が一般的であり;左心不全は、しばしば、より長期で右心不全をもたらす。心不全は、また、異常が収縮不十分(収縮機能不全;収縮期心不全)、または心臓の弛緩不十分(拡張機能不全;拡張期心不全)、またはその両方が原因であるかどうかで分類される場合がある。加えて、心不全は、問題が、主として静脈の後方圧増加(前負荷)、または十分な動脈灌流を供給できないこと(後負荷)であるかで分類される場合がある。心不全は、異常が高い全身血管抵抗を有する低い心拍出量または低い血管抵抗を有する高い心拍出量(低拍出量心不全に対する高拍出量心不全)が原因であるかどうかで分類され得る。また、心不全は、共存する病気、例えば、心不全/全身性高血圧、心不全/肺高血圧、心不全/糖尿病、および心不全/腎不全症の程度に基づき分類され得る。
【0297】
さらに、心不全は、心臓異常により付与される機能障害の程度に基づき分類され得る。機能分類は、一般的にNew York Heart Association(NYHA)機能分類に依拠する。クラス(I~IV)は、以下の通りである:クラスI:いかなる活動にも制限はない;通常の活動で症状を生じない;クラスII:活動のわずかな軽度の制限;患者は安静時または軽度の労作で無症状;クラスIII:任意の活動で顕著な制限;患者は安静時にのみ無症状;およびクラスIV:いかなる身体活動も不快感を起こさせ、安静時にも症状が起こる。このスコアは、症状の重症度を記述し、処置に対する応答を評価するために使用することができる。
【0298】
American College of Cardiology/American Heart Association(ACC)ワーキンググループは、その2001年ガイドラインにおいて心不全の4つのステージを導入した[例えば、Hunt, S.、「ACC/AHA 2005 Guideline Update forthe Diagnosis and Management of Chronic Heart Failure in the Adult: A Report ofthe American College of Cardiology/American Heart Association Task Force onPractice Guidelines (Writing Committee to Update the 2001 Guidelines for theEvaluation and Management of Heart Failure)」、J. Am,Coll. Cardiol、46巻:e1~e82頁(2005年を参照されたい]。第1ステージであるステージAは、心不全の高いリスクがあるが、器質的心臓疾患も心不全の症状もない対象である(例えばこれらは、高血圧、動脈硬化性疾患、糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームを有する患者または心臓毒を使用している患者である)。第2ステージであるステージBは、器質的心臓疾患を有するが、心不全の徴候も症状もない対象である(例えば、これらは、以前に心筋梗塞を経験したことがあり、肥大および低駆出率を含む心リモデリングを示す患者、ならびに無症候性弁膜症のある患者である)。第3ステージであるステージCは、器質的心臓疾患を有し、心不全の以前または現在の症状がある対象である(例えば、これらは、器質的心臓疾患を有することが分かっており、息切れおよび疲労を示し、運動耐容能が低減した患者である)。第4最終ステージであるステージDは、専門的な介入を要する治療抵抗性心不全である(例えば、最大限の医学治療にもかかわらず安静時に顕著な症状を有する患者(すなわち、入院を繰り返す、または専門的な介入なしに病院から安全に退院できない患者)。ACCステージ分類システムは、ステージAが「心不全前」(処置による介入が明らかな症状への進行をおそらく予防できるステージ)を包含する点で有用である。ACCのステージAは、対応するNYHAクラスを有さない。ACCのステージBは、NYHAのクラスIに対応するであろう。ACCのステージCは、NYHAのクラスIIおよびIIIに対応するのに対し、ACCのステージDは、NYHAのクラスIVと一部重複する。
【0299】
通常、心不全の臨床徴候に先行する心リモデリングは、一般的に心臓負荷または心傷害に起因して、心臓のサイズ、形状および機能の変化として臨床的に現れる、分子、細胞および/または間質の変化を指す(Cohn J Nら、JACC 2000年.35巻(3号):569~82頁)。心リモデリングのトリガーには、例えば、心筋梗塞、高血圧、壁ストレス、炎症、圧負荷、および容量負荷が含まれる。心筋構造の変更が、傷害の数時間以内と急速に起こる可能性があり、数ヶ月および数年にわたり進行する場合がある。これらの変化は、最初は有益であるものの、時間と共に(数ヶ月~数年で)、慢性難治性心不全のポイントまで心筋機能の機能障害をもたらす可能性がある。心リモデリングの特徴には、例えば、心腔拡張、心室真球度における増加、ならびに間質および血管周囲線維症の発生が含まれる。増加した真球度は、僧帽弁逆流と正の関連性がある。心室拡張は、主に心筋細胞の肥大および伸長、ならびに程度は少ないものの心室質量における増加に起因する。
【0300】
一部の実施形態では、本開示のBMPアンタゴニストは、心リモデリングを処置、予防、またはその進行を低減させるために使用される場合がある。例えば、BMPアンタゴニストは、対象における心臓の心筋構造を維持するまたは心筋構造の変更を減少させるために使用される場合がある。心リモデリングの進行は、第1の群(処置群)が本発明の方法により処置され、第2の群(プラセボ群)が、本発明の方法による処置と置き換えてまたはその代わりにプラセボを使用することにより処置される2群の対象の間で、ある期間にわたり心臓の心筋構造における変更を比較することにより評価することができる。処置群の対象における心臓の心筋構造の変更が、プラセボ群の対象における心臓の心筋構造の変更よりも小さいならば、心リモデリングの進行が低減したという判定が下される。心リモデリングなどの疾患の進行または発生を判定するための方法は、例えば、身体検査、ドップラーフロー併用二次元心エコー試験、超音波、MRI、コンピューター断層撮影、心カテーテル、放射性核種イメージング(放射性核種心室造影など)およびそれらの任意の組合せを含む、周知の方法を使用して評価することができる。
【0301】
一般に、心リモデリングおよび心不全は、心仕事負荷または心傷害に持続的増加を引き起こす障害および状態に起因する。心不全をもたらす障害および状態には、例えば、心筋梗塞後の生存可能な心筋の喪失、冠動脈疾患、高血圧、心筋症(例えば、拡張型心筋症、感染症またはアルコール/薬物乱用からの心筋症など)、例えば、大動脈弁疾患(例えば、大動脈弁閉鎖不全、大動脈弁逆流、および大動脈狭窄(大動脈弁狭窄))を含む心臓弁疾患および機能不全、肺障害(例えば、肺高血圧)、先天性心臓欠損、急性虚血傷害、再灌流傷害、心膜障害および異常、心筋障害、大血管障害、心内膜障害、心房細動、左心室心筋機能障害、右心室心筋機能障害、心不整脈、甲状腺疾患、腎疾患、糖尿病、心筋が十分な血液を送出できないままにする心筋の衰弱、甲状腺疾患、神経ホルモン不均衡、ウイルス感染、ならびに貧血が含まれる。かかる障害および状態は、心リモデリングおよび/または心不全をもたらすおそれがあるので、これらの状態のうち1つまたは複数を有するまたは有する疑いのある対象は、本発明に従って心リモデリングおよび/または心不全を処置するための1種または複数種のさらなる活性薬剤または支持療法と必要に応じて組み合わせた、1種または複数種のBMPアンタゴニストを用いた処置に好ましい対象である。一部の実施形態では、たとえ基礎となる病因を検出できない場合であっても、心リモデリング(例えば、心筋肥大および心室拡張)の徴候または明白な心不全を有する対象も、本開示に従う処置に適している。さらなる心リモデリングを予防するまたは既存の心リモデリングを処置するまたは心リモデリングを低減させることがこれらの対象において有益であるからである。一部の実施形態では、心リモデリングおよび/または心不全の発生についてのリスク因子を有する対象(例えば、本明細書に記載の心リモデリングおよび/または慢性心不全をもたらすおそれがある状態を有する対象)も、本開示に従う処置に適している。
【0302】
一般に、高血圧または高血圧症は、例えば血圧計で測定されるとき、120mmHg(収縮期)/80mmHg(拡張期)よりも高い安静時血圧を指す。121~139/81~89の間の血圧は、高血圧前症と見なされ、このレベルを超える(140/90mmHgまたはそれよりも高い)と、高い(高血圧)と見なされる。特に示さない限り、高血圧前症および高血圧の両方の血圧が、本明細書に使用される「高血圧」の意味に含まれる。例えば、安静時血圧135mmHg/87または140mmHg/90mmHgは、135/87が一般的に高血圧前症の範疇に入ると見なされるにしても、「高血圧」という用語の範囲内に入ることが意図される。血圧145mmHg/90mmHg、140mmHg/95mmHg、および142mmHg/93mmHgは、高血圧症のさらなる例である。血圧は、通常、1日を通して変動することが認識されている。血圧は、心拍毎にさえ、わずかに変動し得る。通常、血圧は活動の間に増加し、安静時に減少する。血圧は、寒い天候の方が高いことが多く、ストレス下で上昇する可能性がある。外部要因の影響を最小限にするために、血圧の読取りを毎日同じ時間に行う、血圧を毎日モニタリングすることにより、より正確な血圧の読取りを得ることができる。血圧が高いかどうかを判定するために、経時的ないくつかの読取りが必要な場合がある。一般に、慢性高血圧は、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも2ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも1年、少なくとも2年、少なくとも3年、少なくとも4年、少なくとも5年、少なくとも10年などであるが、これに限定されない長期間、連続的または断続的のいずれかで高血圧を示す対象を指す。
【0303】
一般に、心不整脈は、心臓の筋収縮が不規則になる状態を指す。異常に速い調律(例えば、1分間に100回よりも多い)は、頻脈と呼ばれる。異常に遅い調律(例えば、1分間に60回よりも少ない)は、徐脈と呼ばれる。
【0304】
一般に、心肥大は、心臓および個別の心筋細胞、特に心室筋細胞のサイズの増加、ならびに心腔の空洞内部のサイズの増加によって特徴付けられる状態である心拡大を指す。
【0305】
駆出率は、心拍の度に左心室から送出される血液のパーセンテージである。駆出率は、例えば心エコーの間に測定される場合がある。駆出率は、心臓がどれだけ十分に送出しているかの重要な測定値であり、心不全を分類し、処置をガイドするために使用することができる。心不全は、駆出率が保たれた心不全(拡張期心不全とも称される)または駆出率が低減した心不全(収縮期心不全とも称される)として分類することができる。最近の研究により、駆出率が保たれた心不全の有病率は、15年間にわたり増加し、死亡率に顕著な改善がなかったことが実証された。これらの傾向が続くならば、駆出率が保たれた心不全が、最もよく見られる形態の心不全になり得、ますます増大する公衆衛生上の問題であることを実証している(Owanら、2006年、N Engl J Med;355巻(3号):251~9頁)。
【0306】
一部の実施形態では、本開示のBMPアンタゴニストは、非致死性または致死性心血管イベント(例えば、心筋梗塞、脳卒中、狭心症、不整脈、体液貯留、および心不全の進行)の発生率を低減させるために使用される場合がある。本明細書に使用される、心血管イベントの発生率を低減させることは、ある期間の経過の間または経過にわたり対象によって経験される心血管イベントの数を維持または低減させることを指す。心血管イベントの発生率における低減は、第1の群(処置群)が本発明の方法により処置され、第2の群(プラセボ群)が、本発明の方法による処置と置き換えてまたはその代わりにプラセボ(すなわち偽薬)を使用することにより処置される2群の対象の間で、期間の経過にわたるまたは経過の間の心血管イベントの発生率を比較することにより評価または決定することができる。処置群についての心血管イベント数が、プラセボ群についての心血管イベント数よりも少ないならば、心血管イベントの発生率に減少があった、またはそれが減少しているという判定がなされる。あるいは、心血管イベントの発生率の低減は、第1の期間での対象集団についての心血管イベントのベースラインの数を決定すること、および次いで第2のその後の期間での対象集団についての心血管イベントの数を測定することにより、評価または決定することができる。第2のその後の期間での対象集団についての心血管イベントの数が、第1の期間での対象集団についての心血管イベントの数と同じまたはそれよりも少ないならば、前記対象集団について心血管イベントの発生率が低減しているという判定がなされる。
【0307】
一部の実施形態では、本開示のBMPアンタゴニストは、心不全についての入院の発生率を低減させるために使用される場合がある。本明細書で使用される、心不全についての入院の発生率を低減させることは、ある期間の経過の間または経過にわたり対象により経験される心不全についての入院数を維持または低減させることを指す。心不全についての入院の発生率の低減は、第1の群(処置群)が本発明の方法により処置され、第2の群(プラセボ群)が、本発明の方法による処置と置き換えてまたはその代わりにプラセボ(すなわち偽薬)を使用することにより処置される2群の対象の間で、ある期間の経過にわたりまたは経過の間の心不全についての入院の発生率を比較することにより評価または決定することができる。処置群についての心不全の入院数がプラセボ群についての心不全の入院数よりも少ないならば、心不全についての入院の発生率が低減したまたは低減しているという判定がなされる。あるいは、心不全についての入院の発生率の低減は、第1の期間での対象集団についての心不全のベースラインの入院数を決定すること、および次いで第2のその後の期間での対象集団についての心不全についての入院数を測定することにより評価または決定することができる。第2のその後の期間での対象集団についての心不全についての入院数が、第1の期間での対象集団についての心不全についての入院数と同じまたはそれよりも小さいならば、前記対象集団についての心不全についての入院の発生率が低減しているという判定がなされる。
【0308】
一部の実施形態では、本開示のBMPアンタゴニストは、心不全患者の生存率を改善するために使用される場合がある。本明細書で使用される、心不全患者の生存率を改善することは、ある期間の経過の間または経過にわたり対象集団により経験される致死性心血管イベントの数を維持または低減させることを指す。心不全患者の生存率における改善は、第1の群(処置群)が本発明の方法により処置され、第2の群(プラセボ群)が、本発明の方法による処置と置き換えてまたはその代わりにプラセボ(すなわち偽薬)を使用することにより処置される2群の対象の間で、ある期間の経過にわたりまたは経過の間の致死性心血管イベントの発生率を比較することにより評価または決定することができる。処置群についての致死性心血管イベントの数が、プラセボ群についての致死性心血管イベントの数よりも少ないならば、心不全患者の生存率に改善があったまたは改善しているという判定がなされる。あるいは、致死性心血管イベントの発生率における低減は、第1の期間での対象集団についての致死性心血管イベントのベースラインの数を決定することおよび次いで第2のその後の期間での対象集団についての致死性心血管イベントの数を測定することにより評価または決定することができる。第2のその後の期間での対象集団についての致死性心血管イベントの数が、第1の期間での対象集団についての致死性心血管イベントの数と同じまたはそれよりも少ないならば、前記対象集団についての心不全患者の生存率が改善しているという判定がなされる。
【0309】
一部の実施形態では、本開示のBMPアンタゴニストは、心不全患者における心血管死のリスクを低減させるために使用される場合がある。本明細書で使用される、心不全患者の心血管死のリスクを低減させることは、ある期間の経過の間または経過にわたり対象集団により経験される致死性心血管イベントの数を維持または低減させること指す。心不全患者における心血管死の低減は、第1の群(処置群)が本発明の方法により処置され、第2の群(プラセボ群)が、本発明の方法による処置と置き換えてまたはその代わりにプラセボ(すなわち偽薬)を使用することにより処置される2群の対象の間で、ある期間の経過にわたりまたは経過の間の致死性心血管イベントの発生率を比較することにより評価または決定することができる。処置群についての致死性心血管イベントの数がプラセボ群についての致死性心血管イベントの数よりも少ないならば、心不全患者において心血管死が低減したまたは低減しているという判定がなされる。あるいは、心不全患者における心血管死の低減は、第1の期間での対象集団についての致死性心血管イベントのベースラインの数を決定すること、および次いで第2のその後の期間での対象集団についての致死性心血管イベントの数を測定することにより評価または決定することができる。第2のその後の期間での対象集団についての致死性心血管イベントの数が、第1の期間での対象集団についての致死性心血管イベントの数と同じまたはそれよりも少ないならば、前記対象集団についての心不全患者における心血管死が低減しているという判定がなされる。
【0310】
心不全を有する患者ならびに心不全のリスクがある患者(例えば、高血圧、脂質障害、糖尿病、および血管障害を有する患者)を管理するために、多種多様な承認薬および支持療法が現在使用されている。かかる薬物には、例えば、アドレナリンブロッカー(アルファ-ブロッカーおよびベータ-ブロッカー)、中枢作用性アルファ-アゴニスト、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシン受容体ブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、陽性変力物質、血管拡張薬、ベンゾジアゼピン、レニン阻害剤、抗血栓剤、および複数の型の利尿薬(例えば、ループ、カリウム保持性、チアジドおよびチアジド様)が含まれる。心不全を処置または予防するための外科手技には、例えば、狭窄した動脈の内部サイズをバルーン血管形成またはステント留置により増加させようとする物理的操作が含まれる。一部の実施形態では、本開示は、心不全または心不全の1つもしくは複数の合併症を処置する方法であって、心不全を処置、予防またはその進行を低減させるためのさらなる活性薬剤または支持療法(例えば、アドレナリンブロッカー、中枢作用性アルファ-アゴニスト、ACE阻害剤、アンギオテンシンII受容体ブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、陽性変力物質、利尿薬、および種々の外科手技)と組み合わせたBMPアンタゴニストの投与を含む方法を提供する。
【0311】
ACE阻害剤は、長年、高血圧の処置のために使用されている。ACE阻害剤は、特に心不全患者において心臓および循環に対して有害作用を有するホルモンであるアンギオテンシンIIの形成を遮断する。これらの薬物の副作用には、例えば、空咳、低血圧、悪化する腎機能および電解質不均衡、ならびに時にアレルギー反応が含まれる。ACE阻害剤の例には、カプトプリル(例えば、カポテン(Capoten))、エナラプリル(例えば、バソテック(Vasotec)、レニテック(Renitec)、およびエナカード(Enacard))、リシノプリル(ゼストリル(Zestril)およびプリニビル(Prinivil))、ベナゼプリル(ロテンシン(Lotensin))、ラミプリル(例えば、アルテース(Altace)、プリレース(Prilace)、ラメース(Ramace)、ラミウィン(Ramiwin)、トリアテック(Triatec)、およびトリテース(Tritace))、ゾフェノプリル、キナプリル(例えば、アキュプリル(Accupril))、ペリンドプリル(perinodopril)(例えば、コバシル(Coversyl)、アセオン(Aceon)、およびペリンド(Perindo))、リシノプリル(例えば、リストリル(Listril)、ロプリル(Lopril)、ノバテック(Novatec)、プリニビル(Prinivil)、およびゼストリル(Zestril))、ベナゼプリル(例えば、ロテンシン(Lotensin))、イミダプリル(例えば、タナトリル)、トランドラプリル(例えば、マビク(Mavik)、オドリック(Odrik)、およびゴプテン(Gopten))、シラザプリル(例えば、インヒベース(Inhibace))、およびホシノプリル(例えば、ホシテン(Fositen)およびモノプリル(Monopril))が含まれる。
【0312】
一般に、ACE阻害剤に不耐性の患者は、アンギオテンシン受容体ブロッカーで処置される。これらの薬物は、ACE阻害剤と同じホルモン経路に作用するが、それよりもむしろアンギオテンシンIIの作用をその受容体部位で直接遮断する。これらの薬物の副作用は、ACE阻害剤と関連する副作用と類似しているが、空咳はあまり見られない。本開示に従って使用され得るアンギオテンシン受容体ブロッカーには、例えば、ロサルタン(例えば、コザール(Cozaar))、カンデサルタン(例えば、アタカンド(Atacand))、バルサルタン(例えば、ディオバン(Diovan))、イルベサルタン(例えば、アバプロ(Avapro))、テルミサルタン(例えば、ミカルディス(Micardis))、エプロサルタン(例えば、テベテン(Teveten))、オルメサルタン(例えば、ベニカル(Benicar)およびオルメテック(Olmetec))、アジルサルタン(イダービ(Edarbi))、およびフィマサルタン(例えば、カナーブ(Kanarb))が含まれる。
【0313】
アドレナリンブロッカーは、エピネフリン(アドレナリン)、ノルエピネフリン、および種々の身体組織のベータ受容体に作用する他の類似のホルモンなどのある特定の刺激ホルモンの作用を遮断する薬物である。心臓のアドレナリン受容体に対するこれらのホルモンの自然効果は、心筋のより力強い収縮である。これらのホルモンの刺激効果は、最初は心機能の維持に有用であるとはいえ、時間が経つと心筋に有害作用を有するように見える。ベータ-ブロッカー(例えば、非特異的、β1選択的、β2選択的、およびβ3選択的ブロッカー)は、これらの刺激ホルモンのベータ受容体に対する作用を遮断する薬剤である。アルファ-ブロッカー(例えば、非特異的、α1選択的、およびα2選択的)は、これらの刺激ホルモンのアルファ受容体に対する作用を遮断する薬剤である。一般的に、慢性心臓患者がアドレナリンブロッカーの投与を受ける場合、アドレナリンブロッカーは、最初に非常に低用量で与えられ、次いで用量は徐々に増加される。副作用には、例えば、体液貯留、低血圧、低脈拍数、ならびに全身疲労および立ちくらみが含まれる。アドレナリンブロッカーは、また、気道疾患(例えば、喘息および肺気腫)または非常に低い安静時心拍数を有する人々に使用すべきでない。本開示に従って使用され得るアドレナリンブロッカーには、例えば、プロプラノロール、ブシンドロール、カルテオロール(例えば、カルトロール(Cartrol)、オクプレス(Ocupress)、テオプティック(Teoptic)、アルテオロール(Arteolol)、アルテオプティック(Arteoptic)、カルテ(Calte)、カルテアバク(Carteabak)、カルテオール(Carteol)、カルテオール(Carteol)、カルトロール(Cartrol)、エレブロク(Elebloc)、エンダク(Endak)、グラウテオロール(Glauteolol)、ミケラン(Mikelan)、ポエングラウコール(Poenglaucol)、およびシングラウク(Singlauc))、カルベジロール(例えば、コレグ(Coreg))、ラベタロール(例えば、ノルモダイン(Normodyne)およびトランデート(Trandate))、ナドロール(例えば、コルガード(Corgard))、オクスプレノロール(例えば、トラサコール(Trasacor)、トラシコール(Trasicor)、コレタール(Coretal)、ララコール(Laracor)、スロープレン(Slow-Pren)、カプトール(Captol)、コルベトン(Corbeton)、スロートラシコール(Slow-Trasicor)、テバコール(Tevacor)、トラシテンシン(Trasitensin)、トラシデクス(Trasidex))、ペンブトロール(例えば、レバトール(Levatol)、レバトロール(Levatolol)、ロベータ(Lobeta)、パギノール(Paginol)、ホスタブロック(Hostabloc)、ベータプレシン(Betapressin))、ピンドロール(例えば、ビスケン(Visken))、ソタロール(例えば、ベタペース(Betapace)、ベタペースAF、ソタレックス(Sotalex)、ソタコール(Sotacor)、およびソチライズ(Sotylize))、チモロール(例えば、ベチモール(betimol))、アセブトロール(例えば、セクトラール(Sectral)およびプレント(Prent))、アテノロール(例えば、テノーミン(tenormin))、ベタキソロール(例えば、ベトプティック(Betoptic)、ベトプティックS、ロクレン(Lokren)、およびケルロン(Kerlone))、ビソプロロール(例えば、ゼベータ(Zebeta)およびコンコール(Concor))、セリプロロール(例えば、カーデム(Cardem)、セレクトール(Selectol)、セリプレス(Celipres)、セリプロ(Celipro)、セロール(Celol)、コルディアックス(Cordiax)、ディラノーム(Dilanorm))、エスモロール(例えば、ブレビブロック(brevibloc))、メトプロロール(例えば、ロプレソール(Lopressor)およびメトラー(Metolar)XR)、ネビボロール(例えば、ネビレット(Nebilet)およびバイストリック(Bystolic))、ブタザミン(butazamine)、ICI-118,551、SR59230A、フェノキシベンザミン(例えば、ジベンジリン(Dibenzyline))、フェントラミン(例えば、レジチン(Regitine))、トラゾリン、トラゾドン、アルフゾシン(例えば、ウロキサトラール(uroxatral)、キサト(Xat)、キサトラール(Xatral)、プロステトロール(Prostetrol)およびアルフラール(Alfural))、メシル酸ドキサゾシン(カルデュラ(Cardura)およびカルデュラン(Carduran))、プラゾシン(例えば、ミニプレス(Minipress)、バソフレックス(Vasoflex)、レントプレス(Lentopres)およびヒポベース(Hypovase))、タムスロシン(フロマックス(Flomax))、テラゾシン(例えば、ハイトリン(Hytrin)およびザヤセル(Zayasel))、シロドシン(例えば、ラパフロ(Rapaflo)、シロジクス(Silodyx)、ラピリフ(Rapilif)、シロダール(Silodal)、ユリーフ(Urief)、スルーパス(Thrupas)、およびウロレック(Urorec))、アチパメゾール(atipanmezole)(例えば、アンチセダン(Antisedan))、イダゾキサン、ミルタザピン(例えば、レメロン(Remeron))、およびヨヒンビンが含まれる。
【0314】
利尿薬は、体液貯留の症状を予防または緩和するために、しばしば心不全患者の処置に使用される。これらの薬物は、腎臓を通過する体液の流れを促進することにより、体液が肺および他の組織内に蓄積しないようにすることを助ける。これらの薬物は、息切れおよび脚のむくみなどの症状を軽減するのに有効であるものの、長期生存率によい影響を及ぼすことは実証されていない。利尿薬の副作用には、脱水、電解質異常、特に低カリウムレベル、聴覚の乱れ、および低血圧が含まれる。電解質不均衡により患者は重度の心調律の乱れを被りやすくなり得るので、一部の患者では、患者にサプリメントを提供することにより低カリウムレベルを予防することが重要である。利尿薬の種々のクラスの例には、酸性化塩(例えば、CaCl2およびNH4CL)、アルギニンバソプレシン受容体2アンタゴニスト(例えば、アンホテリシンBおよびクエン酸リチウム)、選択的バソプレシンV2アンタゴニスト(例えば、トルバプタン(tolvapatan)およびコニバプタン)、Na-H交換体アンタゴニスト(例えば、ドーパミン)、炭酸脱水酵素阻害剤(例えば、アセタゾラミドおよびドルゾラミド)、ループ利尿薬(例えば、ブメタニド、エタクリン酸、フロセミド、およびトルセミド)、浸透圧利尿薬(例えば、グルコースおよびマンニトール)、カリウム保持性利尿薬(例えば、アミロライド、スピロノラクトン、エプレレノン、トリアムテレン、およびカンレノ酸カリウム)、チアジド(例えば、ベンドロフルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、およびメトラゾン)、キサンチン(例えば、テオフィリンおよびテオブロミン)が含まれる。
【0315】
カルシウムチャネルブロッカーは、カルシウムチャネルを通過するカルシウムの移動を妨害し、しばしば降圧薬として使用される。カルシウムチャネルブロッカーは、高齢患者における上昇した収縮期血圧のよく見られる原因の1つである大血管の硬化を処置するのに特に有効である。カルシウムチャネルブロッカーは、心拍数を変化させるため、脳血管攣縮を予防するため、および狭心症により引き起こされる胸痛を低減させるためにも、しばしば使用される。カルシウムチャネルブロッカーの副作用には、例えば、めまい、頭痛、浮腫、変更された心拍数、および便秘が含まれる。カルシウムチャネルブロッカーの種々のクラスの例には、ジヒドロピリジンカルシウムチャネルブロッカー[例えば、アムロジピン(例えば、ノルバスク(Norvasc))、アラニジピン(例えば、サプレスタ(Sapresta))、アゼルニジピン(例えば、カルブロック(Calblock))、バルニジピン(例えば、ハイポカ(HypoCa))、ベニジピン(例えば、コニール(Coniel))、シルニジピン(例えば、アテレック(Atelec)、シナロング(Cinalong)、およびシスカード(Siscard))、クレビジピン(例えば、クレビプレクス(Cleviprex))、イスラジピン(例えば、ダイナサーク(DynaCirc)およびプレスカール(Prescal))、エホニジピン(例えば、ランデル(Landel))、フェロジピン(例えば、プレンディル(Plendil))、ラシジピン(例えば、モテンス(Motens)、ラシピル(Lacipil))、レルカニジピン(例えば、ザニディプ(Zanidip))、マニジピン(例えば、カルスロット(Calslot)およびマジピン(Madipine))、ニカルジピン(例えば、カルデン(Cardene)およびカルデンSR)、ニフェジピン(例えば、プロカルディア(Procardia)およびアダラート(Adalat))、ニルバジピン(例えば、ニバジール(Nivadil))、ニモジピン(例えば、ニモトップ(Nimotop))、ニソルジピン(例えば、バイミカード(Baymycard)、スラー(Sular)、およびシスコール(Syscor))、ニトレンジピン(例えば、カーディフ(Cardif)、ニトレピン(Nitrepin)、およびバイロテンシン(Baylotensin))、およびプラニジピン(例えば、アカラス(Acalas))]、フェニルアルキルアミンカルシウムチャネルブロッカー[例えば、ベラパミル(例えば、カラン(Calan)およびイソプチン(Isoptin))、ガロパミル、およびフェンジリン]、ベンゾチアゼピンカルシウムチャネルブロッカー(例えば、ジルチアゼム)、ミベフラジル、ベプリジル、フルナリジン、フルスピリレン、フェンジリン、ガバペンチノイド(例えば、ガバペンチンおよびプレガバリン)、およびジコノチドが含まれる。
【0316】
変力物質は、筋収縮の力またはエネルギーを変更する薬剤である。細胞内カルシウム濃度を増加させることまたはカルシウムに対する受容体タンパク質の感受性を増加させることにより、陽性変力剤は、心筋の収縮性を増加させることができる。陽性変力剤の例には、ジゴキシン、アミオダロン、ベルベリン、カルシウム、レボシメンダン、オメカムチブ、カテコラミン(例えば、ドーパミン、ドブタミン、ドペキサミン、エピネフリン、イソプレナリン、およびノルエピネフリン)、アンギオテンシンII、エイコサノイド(例えば、プロスタグランジン)、ホスホジエステラーゼ阻害剤(例えば、エノキシモン、ミルリノン、アムリノン、およびテオフィリン)、グルカゴン、およびインスリンが含まれる。
【0317】
血管拡張薬は、動脈の平滑筋に直接作用して、血液が動脈を通過してより容易に移動できるように動脈壁を弛緩させる。一般に、血管拡張薬は、高血圧緊急時に、または他の薬物が失敗したときにだけ使用され、単独で与えられることはまれである。心不全を処置するために使用される主な血管拡張薬には、ニトレートおよびヒドララジンならびにそれらの誘導体が含まれる。本開示に従って使用され得る血管拡張薬には、例えば、ニトロプルシドナトリウム、ヒドララジン(例えば、アペソリン(Apesoline)およびバイディル(BiDil))、二硝酸イソソルビド(ジラトレート(Dilatrate)およびイソルディル(Isordil))、および一硝酸イソソルビド(例えば、ISMO)、ニトログリセリン(例えば、ニトロデュール(Nitro-Dur)、ニトロリンギュアル(Nitrolingual)、およびニトロスタット(Nitrostat))が含まれる。
【0318】
議論の余地があるものの、ベンゾジアゼピンは、血圧を低下するのに役割を果たし得る。ベンゾジアゼピンは、脳内でGABA-a受容体のアゴニストとして働くことで、神経伝達を減速させ、血管を拡張する。GABAは、他(グリシン、アデニンなど)にもある中で、抑制性神経伝達物質である。GABA-a受容体は、ベンゾジアゼピンについての主な標的であるイオンチャネルである。アゴニストがこの受容体部位に結合すると、タンパク質チャネルが開口し、塩化物陰イオンをチャネルに進入させ、電位依存性イオン部位に透過させる。したがって、神経伝達に負のフィードバックを与え、上昇した血圧と関連し得る、患者におけるストレス、不安、緊張を軽減する。GABAに加えて、ベンゾジアゼピンは、上記の阻害性化学物質として役立つ、アデノシンと呼ばれるヌクレオシド化学物質の再取り込みを阻害する。ベンゾジアゼピンは、冠血管拡張薬としても役立ち、心筋を弛緩させ、心臓動脈を拡張させる。しかし、ベンゾジアゼピンの長期使用は、依存性および耐性と関連し、それは、GABA-a受容体のダウンレギュレーションの結果の可能性が高い。したがって、健康な個体であっても、離脱症状は高血圧を含む。
【0319】
レニンは、レニン-アンギオテンシンシステムにおいてアンギオテンシン変換酵素(ACE)よりも一段上である。したがって、レニン阻害剤は、高血圧を効果的に低減させることができる。アリスキレンは、高血圧の処置のために承認されているレニン阻害剤である。
【0320】
中枢性アルファアゴニストは、末梢動脈を開き血流を容易にする脳内のアルファ-受容体を刺激することにより血圧を低下させる。これらのアルファ2受容体は、神経伝達(この場合、アドレナリンの血管収縮効果)に負のフィードバックを提供する自己受容体として公知である。中枢性アルファアゴニストは、通常、全ての他の降圧医薬が失敗したときに処方される。高血圧を処置するために、これらの薬物は、通常、利尿薬と組み合わせて投与される。このクラスの薬物の有害作用には、鎮静、鼻粘膜の渇きおよびリバウンド高血圧が含まれる。本開示に従って使用され得る中枢性アルファアゴニストには、例えば、クロニジン(例えば、カタプレス(Catapres)、カプベイ(Kapvay)、ネキシクロン(Nexiclon)、およびクロフェリン(Clophelin))、グアナベンズ(例えば、ウイテンシン(Wytensin))、グアンファシン(例えば、エスタリック(Estulic)、テネックス(Tenex)、およびインツニブ(Intuniv))、メチルドパ(例えば、アルドメット(Aldomet)、アルドリル(Aldoril)、およびドパメット(Dopamet))、およびモクソニジン(フィジオテンス(Physiotens))、ミノキシジル(例えば、ロニテン(Loniten))、グアネチジン(例えば、ミクロメデックス(Micromedex))、メカミラミン(例えば、インバーシン(Inversine)およびベカミル(Vecamyl))、およびレセルピン(例えば、ラウディクシン(Raudixin)、セルパラン(Serpalan)、およびセルパシル(Serpasil))が含まれる。
【0321】
一般に、抗血栓剤は、血餅(血栓)の形成を低減させる薬物である。抗血栓薬は、危険な血餅(急性血栓)の予防(一次予防、二次予防)または処置のために治療的に使用することができる。異なる抗血栓薬は、異なる血液凝固プロセスに影響する。抗血小板薬は、血小板の遊走または凝集を制限する。抗凝固薬は血液が凝固する能力を制限する。血栓溶解薬は、形成した後の血餅を溶解するように作用する。本開示に従って使用され得る抗血栓剤には、例えば、不可逆的シクロオキシゲナーゼ阻害剤[例えば、アスピリンおよびトリフルサル(例えば、ジスグレン(Disgren))]、アデノシン二リン酸受容体阻害剤[例えば、クロピドグレル(例えば、プラビックス(Plavix))、プラスグレル(prasugrel)(例えば、エフィエント(Effient))、チカグレロル(例えば、ブリリンタ(Brilinta))、およびチクロピジン(例えば、チクリド(Ticlid))]、ホスホジエステラーゼ阻害剤[例えば、シロスタゾール(例えば、プレタール(Pletal))]、プロテアーゼ活性化受容体-1アンタゴニスト[例えば、ボラパクサール(例えば、ゾンティビティー(Zontivity))]、糖タンパク質IIB/IIIA阻害剤[例えば、アブシキシマブ(例えば、レオプロ(ReoPro))、エプチフィバチド(例えば、インテグリリン(Integrilin))、チロフィバン(例えば、アグラスタット(Aggrastat))]、アデノシン再取り込み阻害剤[例えば、ジピリダモール(例えば、ペルサンチン(Persantine))]、トロンボキサン阻害剤[例えば、トロンボキサンシンターゼ阻害剤およびトロンボキサン受容体アンタゴニスト(例えば、テルトロバン(Terutroban))]、組織プラスミノーゲンアクチベーター[例えば、アルテプラーゼ(例えば、アクチバーゼ(Activase))、レテプラーゼ(例えば、レタバーゼ(Retavase))、テネクテプラーゼ(例えば、TNKアーゼ(TNKase))]、アニストレプラーゼ(例えば、エミナーゼ(Eminase))、ストレプトキナーゼ(例えば、カビキナーゼ(Kabikinase)およびストレプターゼ(Streptase))、ウロキナーゼ(例えば、アボキナーゼ(Abbokinase))、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、クマリン(例えば、ワルファリン、ブロディファコウム、およびジフェナコウム(difenacoum))、ヘパリンおよびその誘導体、第Xa因子阻害剤(例えば、フォンダパリヌクスおよびイドラパリヌクス)、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ベトリキサバン(betrixaban)、レタキサバン(letaxaban)、エリバキサバン(eribaxaban)、ヒルジン、レピルジン、ビバリルジン、アルガトロバン、ダビガトラン、キシメラガトラン(例えば、エキサンタ(Exanta))、アンチトロンビンタンパク質(例えば、アトリン(Atryn))、バトロキソビン、ヘメンチン(hementin)、およびビタミンEが含まれる。
【0322】
心不全のための薬理処置に加えて、例えば、外科手技および医療装置を含む、心不全または心不全の1つもしくは複数の合併症を処置するための多種多様な支持療法がある。
【0323】
最も一般的な心不全医療装置の1つは、ペースメーカーである。ペースメーカーは、一般的に、患者の胸部または腹部に留置されて異常な心調律の制御を助ける小型装置である。これらの装置は、低エネルギーパルスを使用して、正常な速さで拍動するよう心臓に促す(例えば不整脈を処置する)。異なる種類の不整脈のための処置を提供する、異なる種類のペースメーカー装置がある。
【0324】
重症の心筋症(例えば、35%を下回る左心室駆出率)を有する人々または再発心室頻脈もしくは悪性不整脈を有する人々では、重症の命に関わる不整脈のリスクを低減させるために、インプラント可能な自動心除細動器を用いた処置が適応される。インプラント可能な自動心除細動器は、悪性不整脈の症状を改善せず、その発生率も低減させないが、しばしば抗不整脈医薬と一緒になって、それらの不整脈による死亡率を低減させる。35%を下回る左心室駆出を有する人々では、心室頻脈または心突然死の発生率は、AICD留置を正当化するために足るほど高い。
【0325】
心収縮力モジュレーション(CCM)は、心室収縮の強度および心臓のポンプ能力の両方を増強する、中等度から重症の左心室収縮期心不全(NYHAクラスII~IV)を有する人々のための処置である。CCMのメカニズムは、ペースメーカー様装置により送達される、非興奮性電気シグナルによる心筋の刺激に基づく。CCMは、正常なQRS複合時間長(120msまたはそれよりも短い)を有する心不全の処置に特に適しており、症状、生活の質および運動耐容能を改善することが実証されている。
【0326】
35%を下回る左心室駆出率を有する人々の約3分の1は、心室への顕著に変更された伝導を有し、右心室および左心室の同期不全脱分極を招く。これは、左脚ブロック(心臓の基部に起始し、左心室に脱分極興奮を運ぶ2つの一次伝導線維束のうち1つの遮断)を有する人々において特に問題である。特別なペーシングアルゴリズムを使用して、両心室再同期(CRT)は、心室脱分極の正常なシーケンスを開始することができる。35%を下回る左心室駆出率および心電図でのQRS持続時間延長(150msまたはそれよりも長いLBBBまたはQRS)を有する人々では、CRTが標準的な医学治療に追加されるときに症状および死亡率の改善がある。
【0327】
最も重症の心不全を有する人々は、補助循環装置(VAD)についての候補であり得る。VADは、心臓移植への橋渡しとして一般に使用されているが、さらに最近では進行性心不全のための心臓移植代替処置(destination treatment)として使用されている。選ばれた症例では、心臓移植を考慮することができる。これが心不全に関連する問題を解決する場合がある一方で、その人物は、拒絶を予防するために一般的に免疫抑制レジメンを受け続けなければならず、それは、それ自体で顕著な欠点を有する。この処置選択肢の大きな限界は、移植に利用可能な心臓が不足していることである。
【0328】
9.医薬組成物
ある特定の態様では、本開示のBMPアンタゴニストまたはかかるアンタゴニストの組合せは、単独で、または医薬製剤(治療用組成物または医薬組成物とも称される)の成分として投与することができる。医薬形成物は、その中に含有される活性成分(例えば、本開示の薬剤)の生物学的活性を有効にさせる形態の調製物であって、製剤が投与される対象に許容されない毒性のさらなる成分を含有しない調製物を指す。対象化合物は、ヒトまたは動物薬での使用のために任意の好都合な方法での投与用に製剤化される場合がある。例えば、本開示の1種または複数種の薬剤は、薬学的に許容される担体と一緒に製剤化される場合がある。薬学的に許容される担体は、一般的に対象に無毒である、活性成分以外の医薬製剤中の成分を指す。薬学的に許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定化剤、および/または保存剤が含まれるが、これに限定されない。一般に、本開示における使用のための医薬製剤は、対象に投与される場合に発熱物質不含の生理的に許容される形態である。必要に応じて上記の製剤に含まれる場合がある、本明細書に記載の薬剤以外の治療的に有用な薬剤は、本開示の方法において対象薬剤と一緒に投与される場合がある。
【0329】
ある特定の実施形態では、組成物は、非経口的に[例えば、静脈内(I.V.)注射、動脈内注射、骨内注射、筋肉内注射、髄腔内注射、皮下注射、または皮内注射により]投与される。非経口投与に適した医薬組成物は、本開示の1種または複数種の薬剤を、1種もしくは複数の薬学的に許容される無菌で等張性の水性もしくは非水性の液剤、分散剤、懸濁剤もしくはエマルション、または無菌散剤と一緒に含む場合があり、この散剤は、使用直前に無菌注射液または分散剤に復元され得る。注射液または分散剤は、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、懸濁化剤、粘稠化剤、または製剤を目的のレシピエントの血液と等張にする溶質を含有する場合がある。本開示の医薬製剤に採用され得る適切な水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、植物油(例えば、オリーブ油)、注射用有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)、およびそれらの適切な混合物が含まれる。妥当な流動性は、例えば、コーティング物質(例えばレシチン)の使用により、分散剤の場合は所要の粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により維持することができる。
【0330】
一部の実施形態では、化合物は、例えば、心臓内投与、心膜内投与、またはインプラントもしくは装置などにより、心臓に投与される。例えば、囲心腔へのアクセスは、心嚢にアクセスしてそれを切断または貫通するために胸部または剣状突起下切開を行うことにより体外から達成され得る。カニューレまたはカテーテル型装置を胸壁に通すこと、およびその後にカニューレもしくはカテーテルまたはさらなる器具を、心膜を経由して囲心腔内に通すことによって達成される、体外から囲心腔へのアクセスは、例えば、米国特許第5,336,252号、同第5,827,216号、同第5,900,433号、同第5,972,013号、同第6,162,195号、同第6,206,004号、および同第6,592,552号に開示されている。ある特定の場合では、心嚢は、例えば、米国特許第5,931,810号、同第6,156,009号、および同第6,231,518号に開示されるように、切断器具により切断される場合がある。
【0331】
一部の実施形態では、本開示の治療法は、インプラントまたは装置から医薬組成物を全身的または局所的に投与することを含む。さらに、医薬組成物は、標的組織部位(例えば、骨髄または筋肉)への送達のための形態に封入または注射される場合がある。ある特定の実施形態では、本開示の組成物は、本開示の薬剤のうち1種または複数種を標的組織部位(例えば、骨髄または筋肉)に送達し、発達中の組織に構造を与えることが可能なマトリックスであって、最適には体内に再吸収可能なマトリックスを含み得る。例えば、マトリックスは、本開示の1種または複数種の薬剤の徐放を提供し得る。かかるマトリックスは、他のインプラント型医学的適用のために現在使用されている材料から形成されている場合がある。
【0332】
マトリックス材料の選択は、生体適合性、生分解性、機械的特性、美容的外観、および界面特性のうち1つまたは複数に基づき得る。対象組成物の特定の適用が、適切な製剤を規定する。組成物のための潜在的マトリックスは、生分解性で、化学的に規定された、硫酸カルシウム、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ポリ乳酸、およびポリ無水物であり得る。例えば、骨または真皮コラーゲンを含む、他の潜在的材料は、生分解性であり、生物学的に明確に規定されている。さらなるマトリックスは、純粋なタンパク質または細胞外マトリックス成分から構成される。例えば、焼結ヒドロキシアパタイト、バイオガラス、アルミン酸塩、または他のセラミックスを含む他の潜在的マトリックスは、非生分解性であり、化学的に規定されている。マトリックスは、例えば、ポリ乳酸およびヒドロキシアパタイト、またはコラーゲンおよびリン酸三カルシウムを含む、上記の型の材料のうちいずれかの組合せから構成され得る。バイオセラミックスは、組成(例えば、カルシウム-アルミン酸塩-リン酸塩)が変更される場合があり、加工して孔径、粒子径、粒子形状、および生分解性のうち1つまたは複数が変更される場合がある。
【0333】
ある特定の実施形態では、本開示の医薬組成物は、局所投与することができる。「局所適用」または「局所に」は、医薬組成物の、例えば、皮膚、創傷部位、および粘膜を含む体表面との接触を意味する。局所医薬組成物は、種々の適用形態を有することができ、典型的には、組成物を局所投与するときに組織近くまたは組織と直接接触して配置されることに適合する薬物含有層を含む。局所投与に適した医薬組成物は、液体、ゲル、クリーム、ローション、軟膏、泡、ペースト、パテ、半固形物、または固形物として製剤化された配合物中に1種または複数種の本開示のBMPアンタゴニストを含み得る。液体、ゲル、クリーム、ローション、軟膏、泡、ペースト、またはパテ形態の組成物は、組成物を標的組織上に延展、噴霧、塗抹、塗布またはロールすることにより適用することができる。組成物は、無菌ドレッシング材、経皮パッチ、硬膏剤、および包帯に含浸される場合もある。パテ、半固形または固形形態の組成物は、変形可能な場合がある。それらは、弾性または非弾性(例えば、柔軟または剛性)の場合がある。ある特定の態様では、組成物は、複合物の部分を形成し、同じまたは異なる組成を有する繊維、微粒子、または多層を含み得る。
【0334】
液体形態の局所組成物には、薬学的に許容される液剤、エマルション、マイクロエマルション、および懸濁剤が含まれ得る。活性成分に加えて、液体剤形は、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および/または乳化剤[例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、もしくは1,3-ブチレングリコール、油(例えば、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、およびそれらの混合物]を含む、当技術分野において一般に使用されている不活性希釈剤を含有する場合がある。
【0335】
局所ゲル、クリーム、ローション、軟膏、半固形または固形組成物は、多糖、合成ポリマーまたはタンパク質ベースのポリマーなどの1種または複数種の粘稠化剤を含み得る。本発明の一実施形態では、本明細書におけるゲル化剤は、しかるべく無毒であり、所望の粘度を与えるゲル化剤である。粘稠化剤は、ビニルピロリドン、メタクリルアミド、アクリルアミド、N-ビニルイミダゾール、カルボキシビニル、ビニルエステル、ビニルエーテル、シリコーン、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ビニルアルコール、アクリル酸ナトリウム、アクリレート、マレイン酸、NN-ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、プルロニック、コラーゲン、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニレン、ポリビニルシリケート、糖(例えば、スクロース、グルコース、グルコサミン、ガラクトース、トレハロース、マンノース、またはラクトース)で置換されたポリアクリレート、アシルアミドプロパンスルホン酸、テトラメトキシオルトシリケート、メチルトリメトキシオルトシリケート、テトラアルコキシオルトシリケート、トリアルコキシオルトシリケート、グリコール、プロピレングリコール、グリセリン、多糖、アルギネート、デキストラン、シクロデキストリン、セルロース、加工セルロース、酸化セルロース、キトサン、キチン、グアー、カラゲナン、ヒアルロン酸、イヌリン、デンプン、加工デンプン、アガロース、メチルセルロース、植物ガム、ヒアルロナン(hylaronan)、ヒドロゲル、ゼラチン、グリコサミノグリカン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ペクチン、低メトキシペクチン、架橋デキストラン、デンプン-アクリロニトリルグラフトコポリマー、ポリアクリル酸ナトリウムデンプン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニレン、ポリエチルビニルエーテル、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアルカノエート、ポリ乳酸、ポリラクテート、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、スルホン化ヒドロゲル、AMPS(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)、SEM(スルホエチルメタクリレート)、SPM(スルホプロピルメタクリレート)、SPA(スルホプロピルアクリレート)、N,N-ジメチル-N-メタクリルオキシエチル-N-(3-スルホプロピル)アンモニウムベタイン、メタクリル酸アミドプロピル-ジメチルアンモニウムスルホベタイン、SPI(イタコン酸-ビス(1-プロピルスルホン酸(sulfonizacid)-3)エステル二カリウム塩)、イタコン酸、AMBC(3-アクリルアミド-3-メチルブタン酸)、ベータ-カルボキシエチルアクリレート(アクリル酸ダイマー)、および無水マレイン酸-メチルビニルエーテルポリマー、それらの誘導体、それらの塩、それらの酸、およびそれらの組合せのポリマー、コポリマー、およびモノマーを含み得る。ある特定の実施形態では、本開示の医薬組成物は、各々が、本開示の化合物の所定量と、必要に応じて1つまたは複数の他の活性成分とを含有する、例えば、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤(スクロースおよびアカシアまたはトラガカントなどの香味基剤を使用する)、散剤、顆粒剤、水性もしくは非水性液体としての液剤もしくは懸濁剤、水中油もしくは油中水型液体エマルション、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤、または香錠(ゼラチンおよびグリセリン、もしくはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤を使用する)、ならびに/またはマウスウォッシュの形態で経口投与することもできる。本開示の化合物と、必要に応じて1種または複数種の他の活性成分とは、ボーラス、舐剤、またはペースト剤としても投与され得る。
【0336】
経口投与のための固形剤形(例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、糖剤、散剤、および顆粒剤)において、本開示の1種または複数種の化合物は、例えば、クエン酸ナトリウム、リン酸二カルシウム、充填剤または増量剤(例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸)、結合剤(例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアカシア)、保水剤(例えば、グリセロール)、崩壊剤(例えば、アガー-アガー、炭酸カルシウム、バレイショデンプンもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、シリケート、および炭酸ナトリウム)、溶解遅延剤(例えば、パラフィン)、吸収加速剤(例えば、四級アンモニウム化合物)、湿潤剤(例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロール)、吸収剤(例えば、カオリンおよびベントナイトクレイ)、潤滑剤(例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム)、着色剤およびそれらの混合物を含む、1種または複数種の薬学的に許容される担体と共に混合され得る。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、医薬製剤(組成物)は、緩衝化剤も含み得る。また、同様の種類の固形組成物も、例えば、ラクトースまたは乳糖に加えて、高分子量ポリエチレングリコールを含む、1種または複数種の賦形剤を使用して、軟充填ゼラチンカプセル中および硬充填ゼラチンカプセル中の充填剤として採用される場合がある。
【0337】
医薬組成物の経口投与のための液体剤形には、薬学的に許容されるエマルション、マイクロエマルション、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれ得る。活性成分に加えて、液体剤形は、例えば、水または他の溶媒を含む、当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、可溶化剤および/または乳化剤[例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、もしくは1,3-ブチレングリコール、油(例えば、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、およびこれらの混合物]を含有し得る。不活性希釈剤に加えて、経口製剤は、また、例えば、加湿剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤、着色剤、芳香剤、保存剤およびそれらの組合せを含む佐剤も含み得る。
【0338】
懸濁剤は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、ソルビタンエステル、結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガー-アガー、トラガカント、およびそれらの組合せを含む、懸濁化剤を含有し得る。
【0339】
微生物の作用および/または成長の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、およびソルビン酸フェノールを含む、種々の抗細菌剤および抗真菌剤の包含により保証され得る。
【0340】
ある特定の実施形態では、例えば、糖、または塩化ナトリウムを含む等張化剤を組成物中に含めることが、望ましい場合がある。加えて、注射可能な医薬形態の長期吸収は、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含む、吸収を遅延させる薬剤の包含により、もたらされ得る。
【0341】
投薬レジメンは、本開示の1種または複数種の薬剤の作用を改変する種々の要因を考慮して、担当医師により決定されると理解される。赤血球の形成を促進するBMPアンタゴニストの場合、種々の要因には、患者の赤血球数、ヘモグロビンレベル、所望の標的赤血球数、患者の年齢、患者の性別、患者の食餌、赤血球レベルの低下に寄与し得る任意の疾患の重症度、投与時間、および他の臨床的要因が含まれ得るが、これに限定されない。他の公知の活性薬剤の最終組成物への添加もまた、投与量に影響を及ぼし得る。進行は、赤血球レベル、ヘモグロビンレベル、網状赤血球レベル、および造血プロセスの他の指標のうち1つまたは複数の定期的な評価によりモニタリングすることができる。
【0342】
ある特定の実施形態では、本開示はまた、本開示の1種または複数種の薬剤のin vivo産生のための遺伝子治療を提供する。かかる治療は、上に列挙したような障害のうち1つまたは複数を有する細胞または組織中に薬剤の配列を導入することによりその治療効果を達成する。薬剤の配列の送達は、例えば、キメラウイルスのような組換え発現ベクターまたはコロイド分散システムを使用することにより達成することができる。本開示の1つまたは複数の薬剤の配列の好ましい治療的送達は、標的化リポソームの使用である。
【0343】
本明細書において教示されるような遺伝子治療に利用することができる種々のウイルスベクターには、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニア、またはRNAウイルス(例えば、レトロウイルス)が含まれる。レトロウイルスベクターは、マウスレトロウイルスまたはトリレトロウイルスの派生物であり得る。単一の外来遺伝子を挿入できるレトロウイルスベクターの例には、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、ハーベーマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳がんウイルス(MuMTV)、およびラウス肉腫ウイルス(RSV)が含まれるが、これに限定されない。いくつかのさらなるレトロウイルスベクターにも、複数の遺伝子を組み込むことができる。これらのベクターの全てに、形質導入された細胞が同定および産生され得るように、選択マーカーについての遺伝子を移入または組み込むことができる。レトロウイルスベクターは、例えば、糖、糖脂質またはタンパク質を付加することによって、標的特異的にすることができる。好ましい標的化は、抗体を使用することにより達成される。当業者は、本開示の1種または複数種の薬剤を含有するレトロウイルスベクターの標的特異的な送達を可能にするために、特定のポリヌクレオチド配列をレトロウイルスゲノム中に挿入すること、またはウイルスエンベロープに付加することができることを認識する。
【0344】
あるいは、従来のリン酸カルシウムトランスフェクションにより、レトロウイルスの構造遺伝子(gag、polおよびenv)をコードするプラスミドを組織培養細胞に直接トランスフェクトすることができる。次いで、目的の遺伝子を含有するベクタープラスミドがこれらの細胞にトランスフェクトされる。結果として生じた細胞は、培養培地中にレトロウイルスベクターを放出する。
【0345】
本開示の1種または複数種の薬剤のための別の標的化送達システムは、コロイド分散システムである。コロイド分散システムには、例えば、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、および脂質ベースのシステム(水中油型エマルション、ミセル、混合型ミセルおよびリポソームを含む)が含まれる。ある特定の実施形態では、本開示の好ましいコロイドシステムは、リポソームである。リポソームは、in vitroおよびin vivoで送達ビヒクルとして有用な人工の膜小胞である。RNA、DNAおよび無傷のビリオンが、水性の内部に封入され得、生物学的に活性な形態で細胞に送達され得る[Fraleyら(1981年)Trends Biochem. Sci.、6巻:77頁]。リポソームビヒクルを使用する効率的な遺伝子移入方法は、当技術分野において公知である[Manninoら(1988年)Biotechniques、6巻:682頁、1988年]。
【0346】
リポソームの組成物は、通常、ステロイド(例えば、コレステロール)を含み得るリン脂質の組合せである。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度、および二価陽イオンの存在に依存する。例えば、ホスファチジル化合物(例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、およびガングリオシド)、卵ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、およびジステアロイルホスファチジルコリンを含む、他のリン脂質または他の脂質も使用され得る。例えば、器官特異性、細胞特異性、およびオルガネラ特異性に基づくリポソームの標的化もまた可能であり、当技術分野で公知である。
【実施例】
【0347】
本発明は、今や一般的に説明されているが、以下の実施例を参照するとより容易に理解され、実施例は、単にある特定の実施形態および本発明の実施形態を例示する目的のために炭に含められるものであり、本発明を限定することは意図されない。
【0348】
(実施例1)
ActRIIa-Fc融合タンパク質
間にリンカーをはさんでヒトActRIIAの細胞外ドメインをヒトまたはマウスFcドメインと融合させたActRIIA融合タンパク質を産生した。この構築物をそれぞれActRIIA-hFcおよびActRIIA-mFcと名付ける。
【0349】
CHO細胞株から精製されたようなActRIIA-hFcを下に示す(配列番号50):
【化38】
【0350】
ActRIIA-hFcおよびActRIIA-mFcタンパク質をCHO細胞株に発現させた。3つの異なるリーダー配列を検討した:
(i)ミツバチメリチン(HBML):MKFLVNVALVFMVVYISYIYA(配列番号51)
(ii)組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA):MDAMKRGLCCVLLLCGAVFVSP(配列番号52)
(iii)ネイティブ:MGAAAKLAFAVFLISCSSGA(配列番号53)。
【0351】
選択された形態は、TPAリーダーを採用し、以下のプロセシングされていないアミノ酸配列:
【化39】
を有する。
【0352】
このポリペプチドは、以下の核酸配列によりコードされる:
【化40-1】
【化40-2】
【0353】
ActRIIA-hFcおよびActRIIA-mFcの両方は、組換え発現が顕著に容易であった。タンパク質を明確な単一ピークのタンパク質として精製した。N末端配列決定により、-ILGRSETQE(配列番号56)の単一配列であることが明らかとなった。精製は、例えば、以下:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および陽イオン交換クロマトグラフィーのうち3つまたはそれよりも多くを任意の順序で含む、一連のカラムクロマトグラフィーステップにより達成することができた。精製は、ウイルス濾過および緩衝液交換を用いて完了することができた。ActRIIA-hFcタンパク質を、サイズ排除クロマトグラフィーにより決定されたとき>98%およびSDS PAGEにより決定されたとき>95%の純度まで精製した。
【0354】
ActRIIA-hFcおよびActRIIA-mFcは、種々のリガンドに対して高い親和性を示した。標準的なアミンカップリング手順を使用して、リガンドをBiacore(商標)CM5チップ上に固定化した。ActRIIA-hFcおよびActRIIA-mFcタンパク質をシステム上にロードし、結合を測定した。ActRIIA-hFcは、例えば、3.33×10-10Mの解離定数(KD)でBMP10、1.04×10-8MのKDでBMP9、5.56×10-10MのKDでBMP6、および1.14×10-9MのKDでBMP5を含む、種々のリガンドと結合した。ActRIIA-mFcは、同じように挙動した。
【0355】
本明細書に記載の方法に従って使用され得る多様なActRIIAバリアントは、その全体が参照により本明細書に組み込まれているWO2006/012627およびWO2007/062188として公開された国際特許出願に記載されている。代替的な構築物は、ActRIIAのC末端尾部(細胞外ドメインの最終の15アミノ酸の欠失を有し得る。かかる構築物についての配列を、下に提示する(Fc部分に下線)(配列番号57):
【化41】
【0356】
(実施例2)
ActRIIB-Fc融合タンパク質の産生
間にリンカーをはさんでヒトActRIIBの細胞外ドメインをヒトまたはマウスFcドメインと融合させたActRIIB融合タンパク質を構築した。この構築物をそれぞれActRIIB-hFcおよびActRIIB-mFcと名付ける。
【0357】
CHO細胞株から精製されたようなActRIIB-hFcを下に示す(配列番号58):
【化42】
【0358】
ActRIIB-hFcおよびActRIIB-mFcタンパク質をCHO細胞株に発現させた。3つの異なるリーダー配列を検討した:(i)ミツバチメリチン(HBML)、ii)組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)、および(iii)ネイティブ:MGAAAKLAFAVFLISCSSGA(配列番号59)。
【0359】
選択された形態は、TPAリーダーを採用し、以下のプロセシングされていないアミノ酸配列(配列番号60):
【化43】
を有する。
【0360】
このポリペプチドは、以下の核酸配列(配列番号61):
【化44】
によりコードされる。
【0361】
CHO細胞生成物質のN末端配列決定により、-GRGEAE(配列番号62)という主要な配列が明らかとなった。特に、文献に報告された他の構築物は、-SGR…配列で開始する。
【0362】
精製は、例えば、以下:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および陽イオン交換クロマトグラフィーのうち3つまたはそれよりも多くを任意の順序で含む、一連のカラムクロマトグラフィーステップにより達成することができた。精製は、ウイルス濾過および緩衝液交換で完了することができた。
【0363】
ActRIIB-hFcおよびActRIIB-mFcは、種々のリガンドに対して高い親和性を示した。標準的なアミンカップリング手順を使用してリガンドをBiacore(商標)CM5チップ上に固定化した。ActRIIB-hFcおよびActRIIB-mFcタンパク質をシステム上にロードし、結合を測定した。ActRIIB-hFcは、例えば、1.73×10-11Mの解離定数(KD)でBMP10、3.35×10-11MのKDでBMP9、1.64×10-10MのKDでBMP6、および2.92×10-9MのKDでBMP5を含む、種々のリガンドと結合した。ActRIIB-mFcは、同じように挙動した。
【0364】
ActRIIBの細胞外ドメイン中に一連の変異を産生し、これらの変異型タンパク質を、ActRIIBのバリアント細胞外ドメインとFcドメインとの間の可溶性融合タンパク質として生成した。バックグラウンドのActRIIB-Fc融合物は、配列番号58の配列を有する。N末端トランケーションおよびC末端トランケーションを含む種々の変異をバックグラウンドActRIIB-Fcタンパク質に導入した。本明細書に提示されたデータに基づき、これらの構築物は、TPAリーダーと共に発現された場合、N末端セリンを欠如すると予想される。PCR変異誘発によりActRIIB細胞外ドメイン中に変異を産生した。PCRの後に、Qiagenカラムを通して断片を精製し、SfoIおよびAgeIで消化し、ゲル精製した。ライゲーションによりヒトIgG1と融合キメラを創出するように、これらの断片を発現ベクターpAID4中にライゲートした(WO2006/012627参照)。E.coli DH5アルファ中に形質転換後、コロニーをピックし、DNAを単離した。マウス構築物(mFc)について、ヒトIgG1をマウスIgG2aに代用した。全ての変異体の配列を検証した。変異体の全てを、HEK293T細胞において一過性トランスフェクションにより生成した。要約すると、500mlスピナー中で、HEK293T細胞を体積250mlのFreestyle(Invitrogen)培地中に細胞6×105個/mlで準備し、一晩成長させた。翌日、これらの細胞をDNAの終濃度0.5ug/mlのDNA:PEI(1:1)複合体で処理した。4時間後、培地250mlを添加し、細胞を7日間成長させた。細胞を遠心沈殿することにより馴化培地を回収し、濃縮した。例えば、プロテインAカラムを含む多様な技術を使用して変異体を精製し、低pH(3.0)グリシン緩衝液で溶出した。中和後、これらをPBSに対して透析した。同様の方法論によりCHO細胞からも変異体を生成した。参照により本明細書に組み込まれているWO2008/097541およびWO2006/012627に記載された結合アッセイ/またはバイオアッセイで変異体を試験した。場合によっては、精製タンパク質ではなく馴化培地を用いてアッセイを行った。ActRIIBのさらなる変種は、米国特許第7,842,663号に記載されている。
【0365】
N末端トランケーションおよびC末端トランケーションを有するヒトActRIIB細胞外ドメイン(ネイティブなタンパク質、配列番号1の残基25~131)を含むActRIIB(25-131)-hFc融合タンパク質を、N末端でネイティブなActRIIBリーダーの代わりにTPAリーダー配列と融合し、C末端でリンカーを介してヒトFcドメインと融合した(
図5;配列番号123)。この融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を
図6に示す(配列番号124はコード鎖、配列番号125は相補鎖)。コドンを改変し、ActRIIB(25-131)-hFcタンパク質をコードするバリアント核酸が見出されたが、これは、融合タンパク質の発現レベルに実質的な改善を与えた(
図7;配列番号126はコード鎖、配列番号127は相補鎖)。
【0366】
成熟タンパク質は、以下のアミノ酸配列(N末端をN末端配列決定により確認)(配列番号63):
【化45】
を有する。アミノ酸1~107は、ActRIIB由来である。
【0367】
例えば、以下:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および陽イオン交換クロマトグラフィーのうち3つまたはそれよりも多くを任意の順序で含む、一連のカラムクロマトグラフィーステップを使用して、発現された分子を精製することができる。ウイルス濾過および緩衝液交換で精製を完了することができる。
【0368】
いくつかのリガンドのActRIIB(25-131)-hFcに対する親和性を、Biacore(商標)器具を用いてin vitroで評価した。標準的なアミンカップリング手順を使用してBiacore(商標)CM5チップ上にリガンドを固定化した。ActRIIB(25-131)-hFcをシステム上にロードし、結合を測定した。ActRIIB(25-131)-hFcは、例えば、5.5×10-11Mの解離定数(KD)でBMP10、3.2×10-10MのKDでBMP9、1.46×10-10MのKDでBMP6、および2.19×10-8MのKDでBMP5を含む、種々のリガンドと結合した。
【0369】
配列番号1の79位にロイシンからアスパラギン酸への置換を有するActRIIB(20-134)のバリアントを、間にリンカーをはさんでFcドメインと融合させた。この構築物をActRIIB(L79D 20-134)-hFcと名付ける。79位のアスパラギン酸に代えてグルタミン酸を有する代替形態(L79E)は、結合アッセイにおいて同様の性能を発揮した。下記の配列番号64に関して226位のバリンに代えてアラニンを有する代替形態も産生したが、これらは、試験したあらゆる点で同等の性能を発揮した。79位(配列番号1に関して、または配列番号64に関して60位)のアスパラギン酸を下に二重下線を付けて表示する。配列番号64に関する226位のバリンも、下に二重下線を付けて表示する。
【0370】
CHO細胞株から精製されたようなActRIIB(L79D 20-134)-hFcを下に示す(配列番号64):
【化46】
【0371】
ActRIIB(L79D 20-134)-hFcのActRIIB由来部分は、下に示されるアミノ酸配列(配列番号65)を有し、その部分は、モノマーとして、またはモノマー、ダイマー、もしくはより高い次元の複合体としての非Fc融合タンパク質として使用できた。
【化47】
【0372】
ActRIIB(L79D 20-134)-hFc融合タンパク質をCHO細胞株から発現させた。3つの異なるリーダー配列を検討した:
(i)ミツバチメリチン(HBML)、(ii)組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)、および(iii)ネイティブ。
【0373】
選択された形態は、TPAリーダーを採用し、以下のプロセシングされていないアミノ酸配列:
【化48】
を有する。
【0374】
このポリペプチドは、以下の核酸配列(配列番号67):
【化49】
によりコードされる。
【0375】
例えば、以下:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および陽イオン交換クロマトグラフィーのうち3つまたはそれよりも多くを任意の順序で含む、一連のカラムクロマトグラフィーステップにより精製を達成することができた。精製は、ウイルス濾過および緩衝液交換で完了することができた。精製スキームの一例では、細胞培養培地にプロテインAカラムを通過させ、150mMトリス/NaCl(pH8.0)中で洗い、次いで50mMトリス/NaCl(pH8.0)中で洗い、0.1Mグリシン(pH3.0)で溶出した。ウイルス浄化ステップとして低pHの溶出液を室温で30分間保った。次いで溶出液を中和し、Q-セファロースイオン交換カラムを通過させ、50mMトリス(pH8.0)、50mM NaCl中で洗い、NaCl濃度が150mM~300mMの間の50mMトリス(pH8.0)中に溶出した。次いで溶出液を50mMトリス(pH8.0)、1.1M硫酸アンモニウムに交換し、フェニルセファロースカラムを通過させ、洗浄し、150~300mMの間の硫酸アンモニウムを有する50mMトリス(pH8.0)中に溶出した。溶出液を透析し、使用のために濾過した。
【0376】
配列番号1の79位でロイシンからアスパラギン酸への置換を有するActRIIB(25-131)バリアントを、その間にリンカーをはさんでFcドメインと融合させた。TPAリーダー配列を含む構築物を
図8(配列番号131)に示す。ActRIIB(L79D 25-131)-hFcの細胞精製形態の配列を
図9(配列番号132)に提示し、リーダー、リンカーまたはFcドメインを有さない成熟細胞外ドメインを
図10(配列番号133)に提示する。この融合タンパク質をコードする1つのヌクレオチド配列(配列番号134)を、その相補配列(配列番号135)と共に
図11に示し、まったく同じ融合タンパク質をコードする代替的なヌクレオチド配列(配列番号136)およびその相補的配列(配列番号137)を
図12に示す。
【0377】
いくつかのリガンドのActRIIB(L79D 25-131)-hFcに対する親和性を、Biacore(商標)器具を用いてin vitroで評価した。標準的なアミンカップリング手順を使用してリガンドをBiacore(商標)CM5チップ上に固定化した。ActRIIB(L79D 25-131)-hFcをシステム上にロードし、結合を測定した。ActRIIB(L79D 25-131)-hFcは、例えば、1.56×10-10Mの解離定数(KD)でBMP10および1.79×10-10MのKDでBMP6を含む種々のリガンドと結合した。ActRIIB(L79D 25-131)-hFcは、BMP9に対して一過性の親和性だけを有し、BMP5に対して検出可能な結合親和性を有さなかった。ActRIIB(L79D 25-131)-mFcは同じように挙動した。
【0378】
(実施例3)
BMPRII-Fc融合タンパク質の産生
ヒトBMPRIIの細胞外ドメインをヒト免疫グロブリンG1 Fcドメインと、リンカーを用いて融合したものを含むホモダイマー性BMPRII-Fc融合タンパク質を産生した。BMPRII-Fc融合ポリペプチドで使用するためのリーダー配列には、ネイティブなヒトBMPRII前駆体リーダー、MTSSLQRPWRVPWLPWTILLVSTAAA(配列番号68)、および組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)リーダーが含まれる。
【0379】
TPAリーダーを有するヒトBMPRII-Fcポリペプチド配列(配列番号69)を下に示す:
【化50】
【0380】
リーダー配列およびリンカーに下線を付ける。配列番号69のアミノ酸配列は、必要に応じて、C末端から除去されたリシンを備える場合がある。
【0381】
このBMPRII-Fc融合タンパク質は、以下の核酸配列(配列番号70):
【化51】
によりコードされる。
【0382】
プロセシングされたBMPRII-Fc融合ポリペプチド(配列番号71)は、以下の通りであり、必要に応じて、C末端から除去されたリシンを備える場合がある。
【化52】
【0383】
このBMPRII-Fc融合タンパク質は、以下の核酸配列(配列番号72):
【化53】
によりコードされる。
【0384】
配列番号71のBMPRII-Fc融合ポリペプチドは、CHO細胞株から発現および精製されて、ホモダイマー性BMPRII-Fc融合タンパク質複合体を生じる場合がある。
【0385】
種々のBMPRII-Fc複合体の精製は、例えば、以下:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および陽イオン交換クロマトグラフィーのうち3つまたはそれよりも多くを任意の順序で含む、一連のカラムクロマトグラフィーステップにより達成することができた。精製は、ウイルス濾過および緩衝液交換で完了することができた。
【0386】
Biacore(商標)ベースの結合アッセイを使用して、上記のBMPRII-Fcタンパク質複合体のリガンド結合選択性を決定した。抗Fc抗体を使用してBMPRII-Fcホモダイマーをシステム上に捕捉し、リガンドを注入し、捕捉した受容体タンパク質上に流した。結果を下の表にまとめる。
【表1】
【0387】
これらのリガンド結合データは、ホモダイマー性BMPRII-Fc融合タンパク質がBMP10とピコモル濃度の高い親和性で結合し、BMP9と約10分の1の親和性で結合することを実証している。リガンドトラップとして、BMPRII-Fcポリペプチドは、好ましくは低速のリガンド解離を示すべきであるので、特にBMP10について観察されるオフレートが望ましい。驚くべきことに、BMPRIIが、BMP2、BMP4、BMP6またはBMP7などの古典的BMPタンパク質に対する主なII型受容体として作用することを示唆している文献にもかかわらず、BMPRII-Fc融合タンパク質は、BMP2、BMP4、BMP6またはBMP7のいずれとも実質的な結合を示さない。したがって、ホモダイマー性BMPRII-Fcは、BMP10およびBMP9のアンタゴニズムが有利なある特定の治療適用に有用であろう。
【0388】
(実施例4)
ALK1-Fc融合タンパク質
間にリンカーをはさんでヒトALK1の細胞外ドメインをヒトFcドメインと融合させた、またはマウスALK1の細胞外ドメインをマウスFcドメインと融合させたALK1融合タンパク質を産生した。この構築物を、それぞれALK1-hFcおよびmALK1-mFcと名付ける。
【0389】
特に、ヒトALK1タンパク質の細胞外ドメインの従来のC末端が、配列番号20のアミノ酸118であるのに対し、本発明者らは、グルタミン残基で終わるドメインを有することを回避することが理想的であると判定した。したがって、ヒトALK1から得られる配列番号76の部分には、Q118のC末端側にロイシンおよびアラニンの2つの残基が組み込まれている。したがって、本開示は、Q118の1~5アミノ酸上流(配列番号20に関して113~117)または下流(119~123)のどこかである、ALK1由来配列のC末端を有するALK1 ECDポリペプチド(Fc融合タンパク質を含む)を提供する。
【0390】
ALK1-hFcおよびALK1-mFcタンパク質をCHO細胞株において発現させた。3つの異なるリーダー配列:(i)ミツバチメリチン(HBML)、(ii)組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)、およびネイティブ:MTLGSPRKGLLMLLMALVTQG(配列番号73)を検討した。
【0391】
選択されたALK1-hFc形態は、TPAリーダーを使用し、下に示されるプロセシングされていないアミノ酸配列:
【化54】
を有する。
【0392】
ALK1の細胞外ドメインに下線を付ける。
【0393】
CHO細胞株から精製されたようなALK1-hFcを下に示す:
【化55】
【0394】
精製は、例えば、以下:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および陽イオン交換クロマトグラフィーのうち3つまたはそれよりも多くを任意の順序で含む、一連のカラムクロマトグラフィーステップにより達成することができる。精製は、ウイルス濾過および緩衝液交換で完了することができる。サイズ排除クロマトグラフィーにより決定されるとき>98%およびSDS PAGEにより決定されるとき>95%の純度にALK1-hFcタンパク質を精製した。
【0395】
Biacore(商標)器具を用いていくつかのリガンドのALK1-hFcに対する親和性をin vitroで評価した。標準的なアミンカップリング手順を使用してBiacore(商標)CM5チップ上に種々のリガンドを固定化した。ALK1-hFcをシステム上にロードし、結合を測定した。ALK1-hFcは、1.49×10-11Mの解離定数(KD)でBMP10、および3.14×10-11MのKDでBMP9と結合した。ALK1-hFcは、BMP5またはBMP6に対して検出可能な結合親和性を有さなかった。ALK1-mFcは同じように挙動した。
【0396】
(実施例5)
ENG-Fc融合タンパク質の産生
ヒトENG完全長細胞外ドメイン(ECD)(配列番号24のアミノ酸26~586)がヒトIgG1 Fcドメインに、これらのドメインの間にリンカーをはさんで付加されたエンドグリン(ENG)融合タンパク質[hENG(26-586)-hFc]。
【0397】
3つの異なるリーダー配列:(i)ミツバチメリチン(HBML)、(ii)組織プラスミノーゲンアクチベーター(TPA)、および(iii)ネイティブなヒトENG:MDRGTLPLAVALLLASCSLSPTSLA(配列番号77)を検討した。
【0398】
hENG(26-586)-hFcの選択された形態は、TPAリーダーを使用し、下に示されるプロセシングされていないアミノ酸配列:
【化56-1】
【化56-2】
を有する。
【0399】
ENG細胞外ドメインを、一重下線を付けて表示し;TPAリーダーを、二重下線を付けて表示する。
【0400】
上記のhENG(26-586)-hFcは、下に示されるヌクレオチド配列:
【化57-1】
【化57-2】
によりコードされる。
【0401】
ENG細胞外ドメインを、一重下線を付けて表示し;TPAリーダーを、二重下線を付けて表示する。
【0402】
N末端トランケーション型hFcドメインがTリンカーによりhENG(26-586)に付加されたものを含む、TPAリーダーを有する代替的なhENG(26-586)-hFc配列も構想した:
【化58】
【0403】
例えば、馴化培地の濾過、それに続くプロテインAクロマトグラフィー、低pH(3.0)グリシン緩衝液を用いた溶出、試料の中和、およびPBSに対する透析を含む、多様な技術を使用して精製を達成した。分析用サイズ排除クロマトグラフィー、SDS-PAGE、銀染色、およびウエスタンブロットにより試料の純度を評価した。成熟タンパク質の分析により、予想されたN末端配列を確認した。
【0404】
検討した共受容体であるENGは、I型受容体およびII型受容体の多タンパク質複合体とのTGF-β1およびTGF-β3の結合を容易にすることにより機能すると広く考えられている。単離されたENGによる直接リガンド結合の可能性を検討するために、表面プラズモン共鳴(SPR)方法論(Biacore(商標)器具)を使用して、多様な可溶性ヒトTGF-βファミリーリガンドに対する、ENGの完全長細胞外ドメインを含む捕捉されたタンパク質の結合についてスクリーニングした。
【表2】
【0405】
この表に示すように、低リガンド濃度で評価された場合、hENG(26-586)-hFcに対する結合親和性は、hBMP9およびhBMP10について高かった(++++、KD<1nM)。40倍高い濃度であっても、TGF-β1、TGF-β2、TGF-β3、アクチビンA、BMP2、およびBMP7のhENG(26-586)-hFcへの結合は、検出不能(-)であった。この後者の群のリガンドについて、単離されたENG融合タンパク質との直接結合の欠如は、注目に値する。それは、I型およびII型受容体の多タンパク質複合体が、ENGの非存在下よりもその存在下でそれらの大部分とより良好に結合することが示されていたからである。上の表に同じく示されるように、Fcドメインを有さないヒトバリアントである固定化hENG(26-586)(R&D Systems、カタログ番号1097-EN)とリガンドが結合する能力についてリガンドをスクリーニングしたときに類似の結果が得られた。SPRによる特徴付けにより、捕捉されたhENG(26-586)-hFcが可溶性BMP9と29pMのKDで、および可溶性BMP10と400pMのKDで結合すると決定された。したがって、BMP9およびBMP10の選択的高親和性結合は、ENG細胞外ドメインのこれまでに認識されていない特性である。
【0406】
間にリンカーをはさんでヒトENG ECDのトランケーション型バリアントがヒトIgG
1 Fcドメインと融合されたENG融合タンパク質も産生した。これらのバリアントを下に挙げ、選択されたバリアントの構造を
図13に概略的に示す。
【表3】
【0407】
示したように、HEK293細胞またはCOS細胞における一過性トランスフェクションによりこれらのバリアントを発現させた。
【0408】
SPR方法論を使用して、ヒトBMP9およびBMP10との高親和性結合についてこれらのhENG-hFcタンパク質バリアントをスクリーニングした。これらの実験では、捕捉されたhENG-hFcタンパク質をそれぞれ100nMで可溶性BMP9またはBMP10に曝露した。
【表4】
【0409】
上の表に示されるように、BMP9およびBMP10との高親和性結合は、完全長構築物およびhENG(26-346)-hFcのように短いC末端トランケーション型バリアントについてのみ観察された。試験した61アミノ酸よりも長い全てのN末端トランケーションについて、BMP9およびBMP10との高親和性結合は失われた。
【0410】
C末端トランケーション型バリアントhENG(26-346)-hFc、hENG(26-359)-hFc、およびhENG(26-437)-hFcとの潜在的結合についてリガンドのパネルをスクリーニングした。これらの3種のタンパク質の高親和性結合は、BMP9およびBMP10に選択的であった。hENG(26-346)-hFc、hENG(26-359)-hFc、およびhENG(26-437)-hFcのいずれも、高いリガンド濃度であってもBMP2、BMP7、TGFβ1、TGFβ2、TGFβ3、またはアクチビンAと検出可能な結合を示さなかった。
【表5】
【0411】
SPR方法論は、5種の構築物:hENG(26-586)-hFc、hENG(26-437)-hFc、hENG(26-378)-hFc、hENG(26-359)-hFc、およびhENG(26-346)-hFcによるBMP9の結合動態を比較することであった。ヒトBMP-9のhENG(26-359)-hFcまたはhENG(26-346)-hFcに対する親和性(低ピコモル濃度範囲のK
Dを有する)は、完全長構築物に対する親和性よりもほぼ1桁大きかった。ENG-Fcなどのリガンドトラップが比較的低速のリガンド解離を示すことが大いに望ましいので、完全長構築物と比較してhENG(26-346)-hFcに対するBMP9の解離速度における10倍の改善(減少)は、特に注目すべきである。
【表6】
【0412】
下に示すように、完全長構築物と比較してトランケーション型バリアントのそれぞれは、BMP10とも高い親和性で、より良好な動態で結合した。たとえそうであっても、トランケーション型バリアントは、BMP10と比べてBMP9に対する選好度が異なり(K
D比に基づく)、hENG(26-346)-hFcが最大の差を、hENG(26-437)-hFCが最小の差を示した。トランケーション型バリアントの間のリガンド選好度のこの差異は、ことによると、それらのin vivo活性における意味のある差異につながる可能性があろう。
【表7】
【0413】
前述の結果は、hENG ECDのある特定のC末端トランケーション型バリアントを含む融合タンパク質が、BMP9およびBMP10と高親和性結合を示すが、TGFβ1およびTGFβ3を含む多様な他のTGF-βファミリーリガンドと高親和性結合を示さないことを示している。特に、トランケーション型バリアントhENG(26-359)-hFc、hENG(26-346)-hFc、およびhENG(26-378)-hFcは、完全長構築物hENG(26-586)-hFcおよびトランケーション型バリアントhENG(26-437)-hFcの両方と比較して、BMP-9に対して平衡時に高い結合親和性および改善された速度論特性を示す。
【0414】
上に開示されたように、36アミノ酸のように短いN末端トランケーション(hENG(61-346)-hFc)は、ENGポリペプチドとのリガンド結合を打ち消すことが見出された。リガンド結合に対するいっそう短いN末端トランケーションの効果を予想するために、修正Psipredバージョン3(Jones、1999年、J Mol Biol 292巻:195~202頁)を用いてヒトエンドグリンオーファンドメインについての二次構造をコンピューター予測した。この解析により、配列番号24のアミノ酸26~60によって規定されるENGポリペプチド領域内の秩序だった二次構造が、配列番号24の42~45位において高い信頼度で予測される4残基ベータ鎖、および配列番号24の28~29位において非常に低い信頼度で予測される2残基ベータ鎖に限定されることが示されている。したがって、配列番号24のアミノ酸27または28で開始するENGポリペプチドバリアントおよび必要に応じてアミノ酸29~42のいずれかで開始するENGポリペプチドバリアントは、重要な構造エレメントおよびリガンド結合を保持する可能性が高い。
【0415】
下記のマウス研究について、ヒトエンドグリンの細胞外ドメインのトランケーション型部分(すなわち、アミノ酸27~581)をマウスIgG1のFcドメインと、その2つのドメインの間に位置する最小リンカー(TGGG)を用いて融合することによりENG-Fc融合タンパク質を構築した。この構築物は、hENG(27-581)-mFcと名付けられ、hENG(26-581)-hFcについて上に記載されたものと類似の結合親和性を示した。
【0416】
(実施例6)
BMP10プロペプチド融合タンパク質
C末端トランケーション型ヒトBMP10プロペプチドドメイン(配列番号32のアミノ酸22~315をヒト免疫グロブリンG1 Fcドメインと、オプショナルなリンカーを用いて融合したものを含むBMP10プロペプチド-Fc融合タンパク質を産生した。この融合タンパク質をBMP10pro(22-315)-hFcと名付けた。マウス免疫グロブリンG1 Fcドメインを使用して類似の融合タンパク質を産生し、これをBMP10pro(22-315)-mFcと名付ける。検討した、BMP10プロペプチド-Fc融合タンパク質で使用するためのシグナル配列は、例えば、ネイティブなヒトBMP10前駆体リーダー、MGSLVLTLCALFCLAAYLVSG(配列番号81)、ミツバチメリチン、および組織型TPAリーダーを含む。
【0417】
TPAリーダーを有するヒトBMP10pro(22-315)-hFcポリペプチド配列(配列番号82)を下に示す:
【化59】
【0418】
BMPプロペプチドドメインに下線を付ける。配列番号82のアミノ酸配列は、必要に応じて、C末端から除去されたリシンを備える場合がある。
【0419】
このBMP10pro(22-315)-hFc融合タンパク質は、以下の核酸配列(配列番号83)によりコードされる:
【化60-1】
【化60-2】
【0420】
プロセシングされたBMP10pro(22-315)-hFc融合タンパク質(配列番号84)は、以下の通りであり、必要に応じて、C末端から除去されたリシンを備える場合がある。
【化61】
【0421】
BMPプロペプチドドメインに下線を付ける。
【0422】
ヒトBMP10プロペプチドドメインのより長いC末端トランケーション(配列番号32のアミノ酸22~312)をヒト免疫グロブリンG1 Fcドメインと、オプショナルなリンカーを用いて融合したものを含む、別のBMP10プロペプチド-Fc融合タンパク質を産生した。この融合タンパク質をBMP10pro(22-312)-hFcと名付けた。マウス免疫グロブリンG1 Fcドメインを使用して類似の融合タンパク質を産生し、これをBMP10pro(22-312)-mFcと名付ける。検討した、BMP10pro(22-312)-Fc融合タンパク質で使用するためのシグナル配列には、例えば、ネイティブなヒトBMP10前駆体リーダー、ミツバチメリチン、およびTPAリーダーが含まれる。
【0423】
TPAリーダーを有するヒトBMP10pro(22-312)-hFcポリペプチド配列(配列番号85)を下に示す:
【化62】
【0424】
BMPプロペプチドドメインに下線を付ける。配列番号85のアミノ酸配列は、必要に応じて、C末端から除去されたリシンを備える場合がある。
【0425】
このBMP10pro(22-312)-hFc融合タンパク質は、以下の核酸配列(配列番号86)によりコードされる:
【化63-1】
【化63-2】
【0426】
プロセシングされたBMP10pro(22-312)-hFc融合タンパク質(配列番号87)は、以下の通りであり、必要に応じて、C末端から除去されたリシンを備える場合がある。
【化64】
【0427】
BMPプロペプチドドメインに下線を付ける。
【0428】
上記のBMP10pro-Fc融合タンパク質は、COSまたはCHO細胞株から発現および精製されて、ホモダイマー性BMP10pro-Fc融合タンパク質複合体を生じる場合がある。
【0429】
種々のBMP10pro-Fc融合タンパク質複合体の精製は、例えば、以下:プロテインAクロマトグラフィー、Qセファロースクロマトグラフィー、フェニルセファロースクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および陽イオン交換クロマトグラフィーのうち3つまたはそれよりも多くを任意の順序で含む、一連のカラムクロマトグラフィーステップにより達成することができる。精製は、ウイルス濾過および緩衝液交換で完了した。
【0430】
C末端トランケーション型バリアントBMP10pro(22-315)-hFcおよびBMP10pro(22-312)-hFc、ならびに対応するマウス融合タンパク質に対する潜在的結合について、Biacore(商標)ベースの結合アッセイを使用してリガンドのパネルをスクリーニングした。抗Fc抗体を使用してBMP10pro-Fcタンパク質を別々にシステム上に捕捉し、リガンドを注入し、捕捉された受容体タンパク質上に流した。BMP10pro(22-315)-hFcおよびBMP10pro(22-312)-hFcは、両方ともBMP10およびBMP9に対して高親和性を示した。両方の構築物は、BMP6およびBMP5に対しても高度~中等度の親和性を示した。マウスFc等価構築物も同じように挙動した。BMP10pro(22-312)-hFcもBMP3bに対して高い親和性を示した。BMP3bに対するBMP10pro(22-315)-hFcの親和性は、評価しなかった。
【0431】
Smad1/4/8媒介シグナル伝達に応答性の4つの順次的なコンセンサスSBE部位(SBE4-luc)の制御下でルシフェラーゼレポーター構築物を使用して、BMP10pro(22-315)-hFcおよびBMP10pro(22-312)-hFcの個別の存在下および非存在下における成熟BMP10媒介活性を、HMVEC細胞において測定した。結果を下の表に示す。
【表8】
【0432】
このデータは、BMP10プロペプチドはBMP10のアンタゴナイズ活性を喪失することなしに、1、2、3、または4アミノ酸のC末端トランケーションを許容し得ることを示している。そのうえ、両方の融合タンパク質がBMP10活性の強力な阻害剤であることが示されたのに対し、BMP10pro(22-312)-hFc融合タンパク質は、BMP10活性をBMP10pro(22-315)-hFcの3倍またはそれよりも大きくアンタゴナイズすると決定された。BMP10pro(22-312)-hFcはBMP10pro(22-315)-hFcよりも大きいC末端トランケーションを有することを考えると、BMP10pro(22-312)-hFcの増加した活性は、驚くべきことである。したがって、BMP10阻害を最大化することが望ましいある特定の使用では、配列番号32に関して残基312で終わるBMP10proドメインを含むポリペプチドは、配列番号32に関して残基313~315のうちの任意の1つで終わるBMP10proドメインよりも好ましい場合がある。より大きい活性を有することに加えて、より短いBMP10proドメインは、BMP10proポリペプチドに対する免疫反応のリスクを下げることが望ましいある特定の治療適用において好ましい場合があり、すなわち、より少ないアミノ酸が、患者の免疫システムにより認識され得る潜在エピトープの数を減少させる。
【0433】
(実施例7)
心不全モデルにおけるBMP10プロペプチド処置の効果
心不全の進行に対するBMP10pro(22-312)-Fcの効果を、大動脈狭窄を模倣するマウス横行大動脈縮窄(TAC)モデルを使用して検討した。例えば、Nakamuraら(2001年)Am J Physiol Heart CircPhysiol.281巻:H1104~H1112頁を参照されたい。
【0434】
10週齢C57/B6雄性マウス30匹に0日目にTAC手術を受けさせ、齢適合動物10匹に、TACを除く同じ外科手技を受けさせた(偽マウス)。手術から覚醒後、TACマウスを無作為化して2群に分けた。3日毎に21日間、マウス15匹の1つの群にBMP10pro(22-312)-mFcを用量10mg/kgで皮下注射し(TAC-BMP10proマウス)、マウス15匹の第2の群にリン酸緩衝生理食塩水を皮下注射した(ビヒクル対照マウス;TAC-PBSマウス)。試験の終わりに、心エコーを行って、左心室機能およびリモデリングを測定し、その後、心臓採取のために動物を安楽死させた。それぞれの心臓を撮影し、10%ホルマリン中で固定し、マッソン三色染色のために薄片を作製して、線維症を評価した。
【0435】
意識のあるマウスにおいて経胸壁心エコー(Acuson P300、18MHzトランスデューサー;Siemens)によりin vivo心機能を評価した。左心室短軸像から、Mモード心エコーを取得して、拡張終期の心室中隔厚、拡張終期の左心室後壁厚、左心室拡張終期径、および左心室収縮終期径を測定した。次式を使用して拡張終期径(EDD)および収縮終期径(ESD)から短縮率(FS)を計算した:FS=100%×[(EDD-ESD)/EDD]。組織ドップラー画像から僧帽弁レベルで内側壁または中隔壁から拡張早期の充満ピーク速度(E)、終期の充満ピーク速度(A)、および等容性弛緩時間(IVRT)を測定した。E/A比およびIVRTを測定することにより左心室拡張機能を評価した。各マウスの測定について3~5拍を平均した。全体の21日死亡率も計算した。
【0436】
本研究では、BMP10pro(22-312)-Fcを用いたマウスの処置は、有意に、心肥大を阻害し(
図14参照)、心リモデリングを抑制し(
図15および16参照)、心機能を改善し(
図17~19参照)、組織学的データにより、心線維症の阻害が確認された(
図20参照)。さらに、この心不全モデルにおいて、BMP10pro(22-312)-Fc処置は、動物の生存期間を増加させた。まとめると、これらのデータは、BMP10プロペプチド処置が心不全を処置するのに有効であり、心不全の多数の別個の合併症を処置するのに驚くほど有効であることを実証している。これは、BMP10プロペプチドが心不全の1つまたは少数の合併症だけを処置する現行の標準治癒処置よりも心不全の処置に利点を有し得ることを示している。さらに、BMP10プロペプチドが選択的BMP結合プロファイル(特にBMP10、BMP9、BMP6、およびBMP3bと高親和性で結合し、BMP5とより少ない程度で結合する)を有するので、本明細書において提示されたデータは、類似の結合特性を有する他のBMPアンタゴニストが、心不全の処置に、特に心不全の種々の合併症の予防に、またはその重症度を低減させるのに類似の有益効果を有し得ることを示唆している。
【0437】
(実施例8)
心不全モデルにおけるEndo-Fc処置の効果
心不全の進行に対するhENG(27-581)-mFcの効果を、大動脈狭窄を模倣するマウス横行大動脈縮窄(TAC)モデルを使用して検討した。例えば、Nakamuraら(2001年)Am J Physiol Heart CircPhysiol.281巻:H1104~H1112頁を参照されたい。
【0438】
0日目に10週齢C57/B6雄性マウス30匹にTAC手術を受けさせ、齢適合動物10匹に、TACを除く同じ外科手技を受けさせた(偽マウス)。手術から覚醒後、TACマウスを無作為化して2群に分けた。3日毎に21日間、マウス15匹の1つの群にhENG(27-581)-mFcを用量10mg/kgで皮下注射し(TAC-Endo)、マウス15匹の第2の群にリン酸緩衝生理食塩水を皮下注射した(ビヒクル対照マウス;TAC-PBSマウス)。試験の終わりに、心エコーを行って、左心室機能およびリモデリングを測定し、その後、心臓採取のために動物を安楽死させた。それぞれの心臓を撮影し、10%ホルマリン中で固定し、マッソン三色染色のために薄片を作製して、線維症を評価した。
【0439】
意識のあるマウスにおいて経胸壁心エコー(Acuson P300、18MHzトランスデューサー;Siemens)によりin vivo心機能を評価した。左心室短軸像から、Mモード心エコーを取得して、拡張終期の心室中隔厚、拡張終期の左心室後壁厚、左心室拡張終期径、および左心室収縮終期径を測定した。次式を使用して拡張終期径(EDD)および収縮終期径(ESD)から短縮率(FS)を計算した:FS=100%×[(EDD-ESD)/EDD]。組織ドップラー画像から僧帽弁レベルで内側壁または中隔壁から拡張早期の充満ピーク速度(E)、終期の充満ピーク速度(A)、および等容性弛緩時間(IVRT)を測定した。E/A比およびIVRTを測定することにより左心室拡張機能を評価した。各マウスの測定について3~5拍を平均した。全体の21日死亡率も計算した。
【0440】
本研究では、hENG(27-581)-mFcを用いたマウスの処置は、有意に、心肥大を阻害し(
図23参照)、心機能を改善し(
図24および25参照)、組織学的データにより、心線維症の阻害が確認された(
図26参照)。さらに、この心不全モデルにおいて、hENG(27-581)-mFc処置は、動物の生存期間を増加させた。まとめると、これらのデータは、エンドグリンポリペプチド処置が心不全を処置するのに有効であり、心不全の多数の別個の合併症を処置するのに驚くほど有効であることを実証している。これは、エンドグリンポリペプチドが心不全の1つまたは少数の合併症だけを処置する現行の標準治癒処置よりも心不全の処置に利点を有し得ることを示している。
【0441】
(実施例9)
心筋梗塞モデルにおけるBMP10プロペプチドおよびEndo-Fc処置の効果
心不全の進行に対するBMP10pro(22-312)-FcおよびhENG(27-581)-mFcの効果を、マウス心筋梗塞(MI)モデルを使用して検討した。例えば、Patten R. D.ら(1998年)Am J Physiol.274巻:H1812~1820頁を参照されたい。
【0442】
0日目に10週齢C57/B6雄性マウス30匹にLAD手術を受けさせて心筋梗塞を誘導し(MIマウス)、齢適合動物10匹に、LADを除く同じ外科手技を受けさせた(偽マウス)。手術から覚醒後、MIマウスを無作為化して3群に分けた。3日毎に28日間、マウス15匹の1つの群にBMP10pro(22-312)-Fcを用量10mg/kgで皮下注射し(MI-BMP10pro)、マウス15匹の第2の群にhENG(27-581)-mFcを用量10mg/kgで皮下注射し(MI-Endo)、マウス15匹の第3の群にリン酸緩衝生理食塩水を皮下注射した(ビヒクル対照マウス;MI-PBSマウス)。試験の終わりに、心エコーを行って、左心室機能およびリモデリングを測定し、その後、心臓採取のために動物を安楽死させた。それぞれの心臓を撮影し、10%ホルマリン中で固定し、マッソン三色染色のために薄片を作製して、線維症を評価した。
【0443】
意識のあるマウスにおいて経胸壁心エコー(Acuson P300、18MHzトランスデューサー;Siemens)によりin vivo心機能を評価した。左心室短軸像から、Mモード心エコーを取得して、拡張終期の心室中隔厚、拡張終期の左心室後壁厚、左心室拡張終期径、および左心室収縮終期径を測定した。次式を使用して拡張終期径(EDD)および収縮終期径(ESD)から短縮率(FS)を計算した:FS=100%×[(EDD-ESD)/EDD]。組織ドップラー画像から僧帽弁レベルで内側壁または中隔壁から拡張早期の充満ピーク速度(E)、終期の充満ピーク速度(A)、および等容性弛緩時間(IVRT)を測定した。E/A比およびIVRTを測定することにより左心室拡張機能を評価した。各マウスの測定について3~5拍を平均した。全体の28日死亡率も計算した。
【0444】
本研究では、BMP10pro(22-312)-FcまたはhENG(27-581)-mFcを用いたマウスの処置は、有意に、心肥大を阻害し(
図27参照)、心リモデリングを抑制し(
図28および29参照)、心線維症を阻害した(
図30参照)。hENG(27-581)-mFcを用いた処置は、心機能をさらに改善した(
図31および32参照)。さらに、この心不全モデルにおいて、hENG(27-581)-mFcまたはBMP10pro(22-312)-Fc処置は、動物の生存期間を増加させた。まとめると、これらのデータは、エンドグリンポリペプチドBMP10proポリペプチド処置が心筋梗塞に続く心不全を処置するのに有効であり、心不全の多数の別個の合併症を処置するのに驚くほど有効であることを実証している。これは、エンドグリンポリペプチドおよびBMP10proポリペプチドが、心不全の1つまたは少数の合併症だけを処置する現行の標準治癒処置よりも心不全の処置に利点を有し得ることを示している。
【0445】
参照による組込み
本明細書において言及された全ての刊行物および特許は、各個別の刊行物または特許が参照により組み込まれていると具体的かつ個別に示されたかの如く、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0446】
主題の具体的な実施形態が論じられているものの、上記の明細書は、例証的であって限定するものではない。本明細書および下記の特許請求の範囲を調査すると多数の変形が当業者に明白になるであろう。本発明の全範囲は、均等物の全範囲に加えて特許請求の範囲、およびかかる変形に加えて明細書への参照により決定されるべきである。
特定の実施形態では、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
心不全を有する患者の死亡および/または入院のリスクを低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含む、方法。
(項目2)
前記患者の死亡が、任意の原因による、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記患者の死亡が、心血管事象による、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記心血管事象が、心筋梗塞、脳卒中、狭心症、不整脈、体液貯留、および心不全の進行からなる群から選択される、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記患者の入院が、任意の原因による、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記患者の入院が、心血管事象による、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記心血管事象が、心筋梗塞、脳卒中、狭心症、不整脈、体液貯留、心不全の進行からなる群から選択される、項目6に記載の方法。
(項目8)
患者において心不全の進行を低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含む、方法。
(項目9)
患者において心血管事象の発生率を低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含む、方法。
(項目10)
前記心血管事象が、心筋梗塞、脳卒中、狭心症、不整脈、体液貯留、心不全の進行からなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記心血管事象が、患者の入院を生じることになる、項目9または10に記載の方法。
(項目12)
患者において心線維症を処置する、予防する、またはその重症度を低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含む、方法。
(項目13)
患者において心肥大を処置する、予防する、またはその重症度を低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含む、方法。
(項目14)
心筋肥大が、求心性および/または遠心性肥大である、項目13に記載の方法。
(項目15)
患者において心リモデリングを処置する、予防する、またはその重症度を低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含む、方法。
(項目16)
前記心リモデリングが心室リモデリングである、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記心リモデリングが心室拡張である、項目15に記載の方法。
(項目18)
心室中隔拡張終期を減少させる、項目15に記載の方法。
(項目19)
後壁拡張終期を減少させる、項目15に記載の方法。
(項目20)
患者において心機能不全を処置する、予防する、またはその重症度を低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含む、方法。
(項目21)
心駆出率を増加させる、項目20に記載の方法。
(項目22)
心駆出率を、少なくとも5%(例えば、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、65%またはそれよりも多く)増加させる、項目21に記載の方法。
(項目23)
等容弛緩時間を減少させる、項目20から22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
等容弛緩時間を、少なくとも2ms(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20msまたはそれよりも多く)減少させる、項目23に記載の方法。
(項目25)
短縮率を増加させる、項目20から24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
短縮率を、少なくとも5%(例えば、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%またはそれよりも多く)増加させる、項目25に記載の方法。
(項目27)
患者において高血圧を処置する、予防する、またはその重症度を低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含む、方法。
(項目28)
前記患者の血圧を低減させる、項目27に記載の方法。
(項目29)
収縮期血圧を低減させる、項目28に記載の方法。
(項目30)
収縮期血圧を、少なくとも4mmHg(例えば、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20mmHgまたはそれよりも多く)低減させる、項目29に記載の方法。
(項目31)
拡張期血圧を低減させる、項目27に記載の方法。
(項目32)
拡張期血圧を、少なくとも2mmHg(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20mmHgまたはそれよりも多く)低減させる、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記血圧が、安静時血圧として測定される、項目28から32のいずれか一項に記載の方法。
(項目34)
前記血圧が、自由行動下血圧として測定される、項目28から32のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
心臓疾患または心臓疾患の1つもしくは複数の合併症を処置する、予防する、またはその重症度を低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含む、方法。
(項目36)
心臓疾患の前記1つまたは複数の合併症が、呼吸困難(息切れ)、起座呼吸、発作性夜間呼吸困難、および疲労(これは、運動耐容能を制限し得る)、体液貯留(これは、例えば、肺うっ血および末梢性浮腫をもたらし得る)、狭心症、高血圧、不整脈、心室性不整脈、心筋症、心肥大、心臓喘息、夜間多尿症、腹水貯留、うっ血性肝障害、凝固障害、腎血流低減、腎機能不全、心筋梗塞、および脳卒中からなる群から選択される、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記BMPアンタゴニストが、心筋梗塞後に前記患者に投与される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記患者が、左心室収縮期機能不全を有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記患者が、≦40%の駆出率を有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記患者が、≦35%の駆出率を有する、項目1から38のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記駆出率が、放射性核種心室造影法、放射性核種血管造影法、心エコー法または心室コントラスト血管造影法(ventricular contrast angiography)のうち1つまたは複数によって測定される、項目39または40に記載の方法。
(項目42)
前記患者が、左心室機能不全に起因する心不全、正常駆出率心不全、大動脈弁狭窄症心不全、急性心不全、慢性心不全、うっ血性心不全、先天性心不全、代償性心不全、非代償性心不全、拡張期心不全、収縮期心不全、右心(室)不全、左心(室)不全、前方心不全、後方心不全、高拍出性心不全、低拍出性心不全および心筋浮腫からなる群から選択される1つまたは複数の型の心不全を有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記患者が、呼吸困難、起座呼吸、大動脈弁狭窄症、発作性夜間呼吸困難、疲労、体液貯留、肺うっ血、浮腫、末梢性浮腫、狭心症、高血圧、不整脈、心室性不整脈、心筋症、心肥大、腎血流低減、腎機能不全、心筋梗塞症、心リモデリング、心線維症、心高血圧、心壁ストレス、心炎症、心圧負荷、心容量負荷、脳卒中、心腔拡張、心室真球度の増加、間質性線維症、血管周囲線維症、心筋細胞肥大、心臓喘息、夜間多尿症、腹水貯留、うっ血性肝障害、凝固障害、急性虚血傷害、再灌流傷害、左心室機能の機能障害、および右心室機能の機能障害からなる群から選択される1つまたは複数の合併症を有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
呼吸困難、起座呼吸、発作性夜間呼吸困難、疲労、体液貯留、肺うっ血、浮腫、末梢性浮腫、狭心症、高血圧、不整脈、心室性不整脈、心筋症、心肥大、腎血流低減、大動脈弁狭窄症、腎機能不全、心筋梗塞症、心リモデリング、心線維症、心高血圧、心壁ストレス、心炎症、心圧負荷、心容量負荷、脳卒中、心腔拡張、心室真球度の増加、間質性線維症、血管周囲線維症、心筋細胞肥大、心臓喘息、夜間多尿症、腹水貯留、うっ血性肝障害、凝固障害、急性虚血傷害、再灌流傷害、左心室機能の機能障害、および右心室機能の機能障害からなる群から選択される1つまたは複数の合併症を処置する、予防する、またはその重症度を低減させる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記患者が、体高血圧、肺高血圧、糖尿病、腎臓(腎)不全(例えば、急性または慢性腎不全)、冠動脈疾患、高血圧、左心室機能不全、心臓弁疾患、先天性心臓欠損、急性虚血傷害、再灌流傷害、心リモデリング心膜障害、心筋障害、大血管障害および心内膜障害からなる群から選択される1つまたは複数の状態を有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記患者が、New York Heart Association(NYHA)機能分類に従うと少なくともクラスIの心不全を有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記患者が、NYHA機能分類に従うとクラスII、クラスIIIまたはクラスIVの心不全を有する、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記患者が、NYHA機能分類に従うとクラスIIまたはクラスIIIの心不全を有する、項目46に記載の方法。
(項目49)
前記患者が、NYHA機能分類に従うとクラスIIIまたはクラスIVの心不全を有する、項目46に記載の方法。
(項目50)
前記患者が、NYHA機能分類に従うとクラスIVの心不全を有する、項目46に記載の方法。
(項目51)
前記患者の、NYHA機能分類システムに従う心不全スコアを、少なくとも1クラス改善する(例えば、クラスIVの心不全からクラスIIIの心不全への、クラスIVの心不全からクラスIIの心不全への、クラスIVの心不全からクラスIの心不全への、ステージIIIの心不全からステージIIの心不全への、ステージIIIの心不全からステージIの心不全への、またはクラスIIの心不全からクラスIの心不全への改善)、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目52)
前記患者の、NYHA機能分類システムに従う心不全スコアの進行を、少なくとも1クラス分、予防するまたは遅延させる(例えば、クラスIの心不全からクラスIIの心不全への進行を遅延させる、クラスIの心不全からクラスIIIの心不全への進行を遅延させる、クラスIの心不全からクラスIVの心不全への進行を遅延させる、クラスIIの心不全からクラスIIIの心不全への進行を遅延させる、クラスIIの心不全からクラスIVの心不全への進行を遅延させる、またはクラスIIIの心不全からクラスIVの心不全への進行を遅延させる)、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目53)
前記患者が、American College of Cardiology/American Heart Associationワーキンググループ(AAC)機能分類に従うと少なくともステージAの心不全を有する、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目54)
前記患者が、ACC機能分類に従うとステージB、ステージCまたはステージDの心不全を有する、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記患者の、ACC機能分類システムに従う心不全スコアを、少なくとも1ステージ改善する(例えば、ステージDの心不全からステージCの心不全への、ステージDの心不全からステージBの心不全への、ステージDの心不全からステージAの心不全への、ステージCの心不全からステージBの心不全への、ステージCの心不全からステージAの心不全への、またはステージBの心不全からステージAの心不全への改善)、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目56)
前記患者の、ACC機能分類システムに従う心不全スコアの進行を、少なくとも1ステージ分、予防するまたは遅延させる(例えば、ステージAの心不全からステージBの心不全への進行を予防するもしくは遅延させる、ステージAの心不全からステージCの心不全への進行を遅延させる、ステージAの心不全からステージDの心不全への進行を遅延させる、ステージBの心不全からステージCの心不全への進行を遅延させる、ステージBの心不全からステージDの心不全への進行を遅延させる、またはステージCの心不全からステージDの心不全への進行を遅延させる)、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
心線維症を処置する、予防する、またはその重症度を低減させる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目58)
心肥大を処置する、予防する、またはその重症度を低減させる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
前記心筋肥大が、求心性および/または遠心性肥大である、項目58に記載の方法。
(項目60)
患者において心リモデリングを処置する、予防する、またはその重症度を低減させる方法であって、それを必要とする患者に、有効量のBMPアンタゴニストを投与するステップを含む、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目61)
前記心リモデリングが、心室リモデリングおよび/または心室拡張である、項目60に記載の方法。
(項目62)
心室中隔拡張終期および/または後壁拡張終期を減少させる、項目60に記載の方法。
(項目63)
患者において心機能不全を処置する、予防する、またはその重症度を低減させる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
心駆出率を増加させる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目65)
心駆出率を、少なくとも5%(例えば、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、60%、65%またはそれよりも多く)増加させる、項目64に記載の方法。
(項目66)
等容弛緩時間を減少させる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目67)
等容弛緩時間を、少なくとも2ms(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20msまたはそれよりも多く)減少させる、項目66に記載の方法。
(項目68)
短縮率を増加させる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目69)
短縮率を、少なくとも5%(例えば、少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%またはそれよりも多く)増加させる、項目68に記載の方法。
(項目70)
患者において高血圧を処置する、予防する、またはその重症度を低減させる、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目71)
前記患者の血圧を低減させる、項目70に記載の方法。
(項目72)
収縮期血圧を低減させる、項目71に記載の方法。
(項目73)
収縮期血圧を、少なくとも4mmHg(例えば、少なくとも4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20mmHgまたはそれよりも多く)低減させる、項目72に記載の方法。
(項目74)
拡張期血圧を低減させる、項目70に記載の方法。
(項目75)
拡張期血圧を、少なくとも2mmHg(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20mmHgまたはそれよりも多く)低減させる、項目74に記載の方法。
(項目76)
前記BMPアンタゴニストがActRIIAポリペプチドである、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目77)
前記ActRIIAポリペプチドが、
a.配列番号10のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b.配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
c.配列番号9のアミノ酸30~110の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群から選択される、項目76に記載の方法。
(項目78)
前記BMPアンタゴニストがActRIIBポリペプチドである、項目1から75のいずれか一項に記載の方法。
(項目79)
前記ActRIIBポリペプチドが、
a.配列番号1のアミノ酸29~109に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b.配列番号1のアミノ酸25~131に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
c.配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
d.配列番号3のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
e.配列番号5のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
f.配列番号6のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
g.配列番号65のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
h.配列番号133のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群から選択される、項目78に記載の方法。
(項目80)
前記ポリペプチドが、配列番号1に関して79位に酸性アミノ酸を含まない、項目79に記載の方法。
(項目81)
前記ポリペプチドが、配列番号1に関して79位にDもEも含まない、項目80に記載の方法。
(項目82)
前記BMPアンタゴニストがBMPRIIポリペプチドである、項目1から75のいずれか一項に記載の方法。
(項目83)
前記BMPRIIポリペプチドが、
a.配列番号14のアミノ酸27~150に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b.配列番号14のアミノ酸34~123に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
c.配列番号15のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群から選択される、項目82に記載の方法。
(項目84)
前記BMPアンタゴニストがALK1ポリペプチドである、項目1から75のいずれか一項に記載の方法。
(項目85)
前記ALK1ポリペプチドが、
a.配列番号20のアミノ酸22~118に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b.配列番号20のアミノ酸34~95に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
c.配列番号21のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群から選択される、項目84に記載の方法。
(項目86)
前記BMPアンタゴニストがエンドグリンポリペプチドである、項目1から75のいずれか一項に記載の方法。
(項目87)
前記エンドグリンポリペプチドが、
a.配列番号24のアミノ酸26~378に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b.配列番号24のアミノ酸42~333に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
c.配列番号24のアミノ酸26~346に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
d.配列番号24のアミノ酸27~3581に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
e.配列番号24のアミノ酸26~359に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群から選択される、項目86に記載の方法。
(項目88)
前記エンドグリンポリペプチドが、配列番号24のアミノ酸379~430からなる配列を含まない、項目87に記載の方法。
(項目89)
前記エンドグリンポリペプチドが、配列番号24のアミノ酸379~586からなる配列由来の50よりも多く連続するアミノ酸を含まない、項目87に記載の方法。
(項目90)
前記BMPアンタゴニストがBMP10プロペプチドポリペプチドである、項目1から75のいずれか一項に記載の方法。
(項目91)
前記BMP10プロペプチドポリペプチドが、
a.配列番号34のアミノ酸1~6のいずれか1つに対応する位置において始まり、配列番号34のアミノ酸292~296のいずれか1つに対応する位置において終わる配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b.配列番号34のアミノ酸1~6のいずれか1つに対応する位置において始まり、配列番号34のアミノ酸292~295のいずれか1つに対応する位置において終わる配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、アミノ酸RIRRの配列を含まないポリペプチド;
c.配列番号34のアミノ酸1~292に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
d.配列番号34のアミノ酸1~292に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、アミノ酸RIRRの配列を含まないポリペプチド;
e.配列番号34のアミノ酸1~295に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
f.配列番号34のアミノ酸1~295に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、アミノ酸RIRRの配列を含まないポリペプチド;
g.配列番号34のアミノ酸1~6のいずれか1つに対応する位置において始まり、配列番号34のアミノ酸292~295のいずれか1つに対応する位置において終わる配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、前記ポリペプチドのC末端が、配列番号34のR296ではない、ポリペプチド;
h.配列番号34のアミノ酸1~6のいずれか1つに対応する位置において始まり、配列番号34のアミノ酸292~295のいずれか1つに対応する位置において終わる配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、前記ポリペプチドのC末端が、配列番号34のR296ではない、ポリペプチド;
i.配列番号34のアミノ酸1~292に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、前記ポリペプチドのC末端が、配列番号34のR296ではない、ポリペプチド;および
j.配列番号34のアミノ酸1~295に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、前記ポリペプチドのC末端が、配列番号34のR296ではない、ポリペプチド
からなる群から選択される、項目90に記載の方法。
(項目92)
前記ActRIIA、ActRIIB、ALK1、エンドグリンまたはBMP10proポリペプチドが、免疫グロブリンFcドメインを含む融合タンパク質である、項目76から91のいずれか一項に記載の方法。
(項目93)
前記免疫グロブリンFcドメインが、IgG1 Fc免疫グロブリンドメインである、項目92に記載の方法。
(項目94)
前記融合タンパク質が、前記ActRIIA、ActRIIB、ALK1、エンドグリンまたはBMP10proポリペプチドドメインと前記Fc免疫グロブリンドメインとの間に位置するリンカードメインを含む、項目92または93に記載の方法。
(項目95)
前記リンカーが、GGG(配列番号41)、GGGG(配列番号42)、TGGGG(配列番号43)、SGGGG(配列番号44)、TGGG(配列番号45)、SGGG(配列番号46)またはGGGGS(配列番号47)からなる群から選択される、項目94に記載の方法。
(項目96)
ActRIIA-Fc融合タンパク質が、
a.配列番号50のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b.配列番号54のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
c.配列番号57のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群から選択される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目97)
前記融合タンパク質が、
a.配列番号58のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b.配列番号60のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
c.配列番号63のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
d.配列番号64のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
e.配列番号66のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
f.配列番号123のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
g.配列番号131のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
h.配列番号132のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群から選択されるActRIIB-Fc融合タンパク質である、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目98)
前記ActRIIB-Fc融合タンパク質が、配列番号1に関して79位に酸性アミノ酸を含むActRIIBポリペプチドドメインを含まない、項目97に記載の方法。
(項目99)
前記ActRIIBポリペプチドドメインが、配列番号1に関して79位にDもEも含まない、項目98に記載の方法。
(項目100)
前記BMPRII-Fc融合タンパク質が、
a.配列番号69のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
b.配列番号71のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群から選択される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目101)
前記ALK1-Fc融合タンパク質が、
a.配列番号74のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
b.配列番号76のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群から選択される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目102)
前記エンドグリン-Fc融合タンパク質が、
a.配列番号78のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b.配列番号80のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
c.配列番号28のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
d.配列番号29のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド
e.配列番号30のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
f.配列番号31のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群から選択される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目103)
前記BMP10プロペプチド-Fc融合タンパク質が、
a.配列番号82のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b.配列番号84のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
c.配列番号85のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
d.配列番号87のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群から選択される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目104)
前記ポリペプチドまたは融合タンパク質が、グリコシル化されたアミノ酸、PEG化されたアミノ酸、ファルネシル化されたアミノ酸、アセチル化されたアミノ酸、ビオチン化されたアミノ酸、および脂質部分にコンジュゲートされたアミノ酸からなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸改変を含む、項目76から103のいずれか一項に記載の方法。
(項目105)
前記ポリペプチドまたは融合タンパク質が、チャイニーズハムスター卵巣細胞株から取得可能なグリコシル化パターンを有する、項目104に記載の方法。
(項目106)
前記ポリペプチドまたは融合タンパク質が、BMP10および/またはBMP9に結合する、項目76から104のいずれか一項に記載の方法。
(項目107)
前記ポリペプチドまたは融合タンパク質が、BMP6、BMP3bおよびBMP5からなる群から選択される1種または複数種のリガンドにさらに結合する、項目106に記載の方法。
(項目108)
前記ポリペプチドまたは融合タンパク質が、BMP10および/またはBMP9を阻害する、項目76から107のいずれか一項に記載の方法。
(項目109)
前記ポリペプチドまたは融合タンパク質が、細胞ベースのアッセイにおいてBMP10および/またはBMP9活性を阻害する、項目108に記載の方法。
(項目110)
前記ポリペプチドまたは融合タンパク質が、BMP6、BMP3bおよびBMP5からなる群から選択される1種または複数種のリガンドをさらに阻害する、項目108または109に記載の方法。
(項目111)
前記ポリペプチドまたは融合タンパク質が、細胞ベースのアッセイにおいてBMP6、BMP3bおよびBMP5のうち1種または複数種の活性を阻害する、項目110に記載の方法。
(項目112)
前記融合タンパク質がホモダイマーである、項目92から110のいずれか一項に記載の方法。
(項目113)
前記BMPアンタゴニストが、抗体または抗体の組合せである、項目1から75のいずれか一項に記載の方法。
(項目114)
前記抗体または抗体の組合せが、BMP10および/またはBMP9に結合する、項目113に記載の方法。
(項目115)
前記抗体または抗体の組合せが、BMP6、BMP3bおよびBMP5からなる群から選択される1種または複数種のリガンドにさらに結合する、項目114に記載の方法。
(項目116)
前記抗体または抗体の組合せが、BMP10および/またはBMP9活性を阻害する、項目113に記載の方法。
(項目117)
前記抗体または抗体の組合せが、BMP6、BMP3bおよびBMP5からなる群から選択される1種または複数種のリガンドの活性をさらに阻害する、項目115に記載の方法。
(項目118)
前記抗体または抗体の組合せが、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1およびエンドグリンからなる群から選択される1種または複数種のポリペプチドに結合する、項目113に記載の方法。
(項目119)
前記抗体または抗体の組合せが、少なくとも成熟BMP10に結合し、かつBMP10プロペプチドと競合的に結合する、項目113から118のいずれか一項に記載の方法。
(項目120)
前記抗体または抗体の組合せが、BMP9、BMP6、BMP3bおよびBMP5のうち1種または複数種に結合し、かつBMP10プロペプチドと競合的に結合する、項目113から119のいずれか一項に記載の方法。
(項目121)
前記BMPアンタゴニストが小分子である、項目1から75のいずれか一項に記載の方法。
(項目122)
前記小分子が、BMP9および/またはBMP10の活性を阻害する、項目121に記載の方法。
(項目123)
前記小分子が、BMP6、BMP3bおよびBMP5からなる群から選択される1種または複数種のリガンドの活性をさらに阻害する、項目122に記載の方法。
(項目124)
前記小分子が、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1、エンドグリン、および1種または複数種のSmad(例えば、Smad2および/または3)からなる群から選択される1種または複数種の薬剤の活性を阻害する、項目121に記載の方法。
(項目125)
前記BMPアンタゴニストがヌクレオチドである、項目1から75のいずれか一項に記載の方法。
(項目126)
前記ヌクレオチドが、BMP9および/またはBMP10の活性を阻害する、項目125に記載の方法。
(項目127)
前記ヌクレオチドが、BMP6、BMP3bおよびBMP5からなる群から選択される1種または複数種のリガンドの活性をさらに阻害する、項目126に記載の方法。
(項目128)
前記ヌクレオチドが、BMP10、BMP9、BMP6、BMP3b、BMP5、ActRIIA、ActRIIB、BMPRII、ALK1、エンドグリン、および1種または複数種のSmad(例えば、Smad2および/または3)からなる群から選択される1種または複数種の薬剤の活性を阻害する、項目125に記載の方法。
(項目129)
前記患者に、心不全または心不全の1つもしくは複数の合併症を処置する、予防する、またはその重症度を低減させるためのさらなる活性薬剤または他の支持療法が投与される、前記項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目130)
心不全または心不全の1つもしくは複数の合併症を処置する、予防する、またはその重症度を低減させるための前記さらなる活性薬剤または他の支持療法が、ペースメーカー、インプラント可能な心除細動器、心収縮力モジュレーション、心再同期治療、補助循環装置、両心室再同期治療、心臓移植、アドレナリンブロッカー(アルファ-ブロッカーおよびベータ-ブロッカー)、中枢作用性アルファ-アゴニスト、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、アンギオテンシン受容体ブロッカー、カルシウムチャネルブロッカー、陽性変力物質、血管拡張薬、ベンゾジアゼピン、レニン阻害剤、抗血栓剤、複数の型の利尿薬、カプトプリル、エナラプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、ラミプリル、ゾフェノプリル、キナプリル、ペリンドプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、イミダプリル、トランドラプリル、シラザプリルおよびホシノプリル、ロサルタン、カンデサルタン、バルサルタン、イルベサルタン、テルミサルタン、エプロサルタン、オルメサルタン、アジルサルタン、フィマサルタン、プロプラノロール、ブシンドロール、カルテオロール、カルベジロール、ラベタロール、ナドロール、オクスプレノロール、ペンブトロール、ピンドロール、ソタロール、チモロール、アセブトロール、アテノロール、ベタキソロール、ビソプロロール、セリプロロール、エスモロール、メトプロロール、ネビボロール、ブタザミン、ICI-118,551、SR 59230A、フェノキシベンザミン、フェントラミン、トラゾリン、トラゾドン、アルフゾシン、メシル酸ドキサゾシン(CarduraおよびCarduran)、プラゾシン、タムスロシン、テラゾシン、シロドシン、アチパメゾール(例えば、Antisedan)、イダゾキサン、ミルタザピン、ヨヒンビン、酸性化塩(例えば、CaCl
2
およびNH
4
CL)、アルギニンバソプレシン受容体2アンタゴニスト、選択的バソプレシンV2アンタゴニスト、Na-H交換体アンタゴニスト、炭酸脱水酵素阻害剤、ループ利尿薬、浸透圧利尿薬、カリウム保持性利尿薬、チアジド、キサンチン、ジヒドロピリジン、アムロジピン、アラニジピン、アゼルニジピン、バルニジピン、ベニジピン、シルニジピン、クレビジピン、イスラジピン、エホニジピン、フェロジピン、ラシジピン、レルカニジピン、マニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニモジピン、ニソルジピン、ニトレンジピン、プラニジピン、フェニルアルキルアミンカルシウムチャネルブロッカー、ベラパミル、ガロパミル、フェンジリン、ベンゾチアゼピンカルシウムチャネルブロッカー、ジルチアゼム、ミベフラジル、ベプリジル、フルナリジン、フルスピリレン、フェンジリン、ガバペンチノイド、ジコノチド、ジゴキシン、アミオダロン、ベルベリン、レボシメンダン、オメカムチブ、カテコラミン、エイコサノイド、ホスホジエステラーゼ阻害剤、エノキシモン、ミルリノン、アムリノン、テオフィリン、グルカゴン、インスリン、ニトロプルシドナトリウム、ヒドララジン、二硝酸イソソルビドおよび一硝酸イソソルビド、ニトログリセリン、ベンゾジアゼピン、レニン阻害剤、クロニジン、グアナベンズ、グアンファシン、メチルドパおよびモクソニジン、ミノキシジル、グアネチジン、メカミラミン、レセルピン、不可逆的シクロオキシゲナーゼ阻害剤、アデノシン二リン酸受容体阻害剤、クロピドグレル、プラスグレル、チカグレロルおよびチクロピジン、ホスホジエステラーゼ阻害剤、シロスタゾール、プロテアーゼ活性化受容体-1アンタゴニスト、ボラパクサール、糖タンパク質IIB/IIIA阻害剤、アブシキシマブ、エプチフィバチド、チロフィバン、アデノシン再取り込み阻害剤、ジピリダモール、トロンボキサン阻害剤、トロンボキサンシンターゼ阻害剤およびトロンボキサン受容体アンタゴニスト、組織プラスミノーゲンアクチベーター、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ、ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、クマリン、ヘパリンおよびその誘導体、第Xa因子阻害剤、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ベトリキサバン、レタキサバン、エリバキサバン、ヒルジン、レピルジン、ビバリルジン、アルガトロバン、ダビガトラン、キシメラガトラン、アンチトロンビンタンパク質、バトロキソビン、ヘメンチン、ならびにビタミンEからなる群から選択される、項目129に記載の方法。
(項目131)
配列番号34のアミノ酸1~6のいずれか1つに対応する位置において始まり、配列番号34のアミノ酸292~295のいずれか1つに対応する位置において終わる配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むBMP10プロペプチド(BMP10pro)ポリペプチドであって、アミノ酸RIRRの配列を含まないBMP10プロペプチド(BMP10pro)ポリペプチド。
(項目132)
配列番号34のアミノ酸1~292に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む、項目131に記載のBMP10proポリペプチド。
(項目133)
配列番号34のアミノ酸1~295に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む、項目131に記載のBMP10proポリペプチド。
(項目134)
配列番号34のアミノ酸1~6のいずれか1つに対応する位置において始まり、配列番号34のアミノ酸292~295のいずれか1つに対応する位置において終わる配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むBMPプロペプチド(BMP10pro)ポリペプチドであって、前記ポリペプチドのC末端が、配列番号34のR296ではない、BMPプロペプチド(BMP10pro)ポリペプチド。
(項目135)
配列番号34のアミノ酸1~292に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む、項目134に記載のBMP10proポリペプチド。
(項目136)
配列番号34のアミノ酸1~295に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含む、項目134に記載のBMP10proポリペプチド。
(項目137)
免疫グロブリンFcドメインを含む融合タンパク質である、項目131から136のいずれか一項に記載のBMP10proポリペプチド。
(項目138)
前記免疫グロブリンFcドメインが、IgG1 Fc免疫グロブリンドメインである、項目137に記載のBMP10proポリペプチド。
(項目139)
BMP10proドメインおよびFc免疫グロブリンドメインを含むBMP10pro-Fc融合タンパク質であって、前記BMP10proドメインが、配列番号34のアミノ酸1~6のいずれか1つに対応する位置において始まり、配列番号34のアミノ酸292~295のいずれか1つに対応する位置において終わる配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列からなる、BMP10pro-Fc融合タンパク質。
(項目140)
前記BMP10proドメインが、配列番号34のアミノ酸1~292に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列からなる、項目139に記載のBMP10pro-Fc融合タンパク質。
(項目141)
前記BMP10proドメインが、配列番号34のアミノ酸1~295に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列からなる、項目139に記載のBMP10pro-Fc融合タンパク質。
(項目142)
前記BMP10proドメインが、アミノ酸RIRRの配列を含まない、項目139から141のいずれか一項に記載のBMP10pro-Fc融合タンパク質。
(項目143)
ポリペプチドのC末端が、配列番号34のR296ではない、項目139から141のいずれか一項に記載のBMP10pro-Fc融合タンパク質。
(項目144)
BMP10proポリペプチドドメインと前記Fc免疫グロブリンドメインとの間に位置するリンカードメインを含む、項目137から143のいずれか一項に記載のBMP10pro-Fc融合タンパク質。
(項目145)
前記リンカーが、GGG(配列番号41)、GGGG(配列番号42)、TGGGG(配列番号43)、SGGGG(配列番号44)、TGGG(配列番号45)、SGGG(配列番号46)またはGGGGS(配列番号47)からなる群から選択される、項目144に記載のBMP10pro-Fc融合タンパク質。
(項目146)
a.配列番号82のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
b.配列番号84のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;
c.配列番号85のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド;および
d.配列番号87のアミノ酸配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一なアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群から選択される、項目131に記載のBMP10pro-Fc融合タンパク質。
(項目147)
前記ポリペプチドまたは融合タンパク質が、グリコシル化されたアミノ酸、PEG化されたアミノ酸、ファルネシル化されたアミノ酸、アセチル化されたアミノ酸、ビオチン化されたアミノ酸、および脂質部分にコンジュゲートされたアミノ酸からなる群から選択される1つまたは複数のアミノ酸改変を含む、項目131から146のいずれか一項に記載のBMP10proポリペプチド。
(項目148)
前記ポリペプチドまたは融合タンパク質が、チャイニーズハムスター卵巣細胞株から取得可能なグリコシル化パターンを有する、項目147に記載の方法。
(項目149)
BMP10および/またはBMP9に結合する、項目131から148のいずれか一項に記載のBMP10proポリペプチドまたはBMP10pro-Fc融合タンパク質。
(項目150)
BMP6、BMP3bおよびBMP5からなる群から選択される1種または複数種のリガンドにさらに結合する、項目149に記載のBMP10proポリペプチドまたはBMP10pro-Fc融合タンパク質。
(項目151)
BMP10および/またはBMP9の活性を阻害する、項目131から150のいずれか一項に記載のBMP10proポリペプチドまたはBMP10pro-Fc融合タンパク質。
(項目152)
BMP6、BMP3bおよびBMP5からなる群から選択される1種または複数種のリガンドの活性をさらに阻害する、項目151に記載のBMP10proポリペプチドまたはBMP10pro-Fc融合タンパク質。
(項目153)
細胞ベースのアッセイにおいてBMP10、BMP9、BMP6、BMP3bおよびBMP5のうち1種または複数種の活性を阻害する、項目151または152に記載のBMP10proポリペプチドまたはBMP10pro-Fc融合タンパク質。
(項目154)
項目131から153のいずれか一項に記載のBMP10proポリペプチドまたはBMP10pro-Fc融合タンパク質および薬学的に許容される担体を含む医薬調製物。
(項目155)
発熱物質を実質的に含まない、項目154に記載の医薬調製物。
(項目156)
項目131から153のいずれか一項に記載のBMP10proポリペプチドまたはBMP10pro-Fc融合タンパク質のコード配列を含む、単離されたおよび/または組換えポリヌクレオチド。
(項目157)
からなる群から選択される核酸配列を含む、項目156に記載の単離されたおよび/または組換えポリヌクレオチド。
(項目158)
項目156または157に記載のポリヌクレオチドに作動可能に連結したプロモーター配列を含む組換えポリヌクレオチド。
(項目159)
項目156から158のいずれか一項に記載の単離されたおよび/または組換えポリヌクレオチドを含むベクター。
(項目160)
項目156から159のいずれか一項に記載の単離されたおよび/もしくは組換えポリヌクレオチドまたはベクターを含む細胞。
(項目161)
哺乳動物細胞である、項目160に記載の細胞。
(項目162)
CHO細胞である、項目161に記載の細胞。
(項目163)
BMP10proポリペプチドを作製する方法であって、前記BMP10proポリペプチドの発現に適した条件下で細胞を培養するステップを含み、前記細胞が、項目156から159のいずれか一項に記載の単離されたおよび/もしくは組換えポリヌクレオチドまたはベクターを含む、方法。
(項目164)
前記発現されたBMP10proポリペプチドを回収するステップをさらに含む、項目163に記載の方法。
(項目165)
前記細胞がCHO細胞である、項目163または164に記載の方法。
(項目166)
前記BMP10proポリペプチドが、組織プラスミノーゲンアクチベーターシグナル配列を使用して発現される、項目163から165のいずれか一項に記載の方法。
【配列表】