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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】集電体電極シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20220921BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20220921BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
H01M4/139
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019549168
(86)(22)【出願日】2018-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2018035350
(87)【国際公開番号】W WO2019077943
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2017202718
(32)【優先日】2017-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社エンビジョンAESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】綾 大
(72)【発明者】
【氏名】小山 真佑子
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-107787(JP,A)
【文献】特開2000-208134(JP,A)
【文献】特開2012-009376(JP,A)
【文献】特開2015-069747(JP,A)
【文献】特開平10-214617(JP,A)
【文献】特開2005-183181(JP,A)
【文献】特開平10-012220(JP,A)
【文献】特開2006-024710(JP,A)
【文献】国際公開第2005/074057(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の金属箔の両面に活物質が塗布された集電体電極シートの製造方法において、
前記活物質を含むスラリを、帯状の前記金属箔上に間欠的に塗布、乾燥して、活物質層が連続して存在する前記スラリの塗布領域と、前記スラリの非塗布領域とを、前記帯状の前記金属箔の巻取方向に交互に形成する塗布工程と、
前記塗布工程で形成した各前記塗布領域の終端における尾引き部の長さを検出する第一の検出工程と、
前記活物質層が形成された前記金属箔を、その厚さ方向へ、一対の圧縮ローラを用いて、前記スラリの前記塗布領域と前記非塗布領域とを連続して圧縮する圧縮工程と、
前記第一の検出工程と前記圧縮工程とを経て前記活物質層が形成された前記金属箔を、該金属箔の巻取方向と平行に前記スラリの前記塗布領域と前記非塗布領域とを連続して裁断する裁断工程と、を含み、
前記第一の検出工程は、
下記式(A)を満たす前記スラリの前記塗布領域の終端から前記非塗布領域に連続して形成される尾引き部を検出する、集電体電極シートの製造方法。
x≧(2rtmin-tmin 1/2-ymax-zmax-wmax ・・・式(A)
ここで、xは、前記塗布工程で各前記塗布領域の終端における前記尾引き部の長さの最大値であり、rは、前記圧縮工程に用いる圧縮ローラのロール径であり、tminは、前記塗布工程で連続的に形成した各前記塗布領域の中央部のうち、加圧圧縮後の想定厚さの最小値であり、ymaxは、前記金属箔の各面の塗布開始位置の前記金属箔の巻取方向のずれ量の最大値であり、zmaxは、前記金属箔の両面の前記活物質の前記金属箔の巻取方向の塗布長のずれ量の最大値であり、および、wmaxは、前記金属箔の両面の前記活物質の塗工終端から、塗工膜の厚さが塗工域中央と同じ厚さになるまでの距離の最大値である。
【請求項2】
請求項に記載の集電体電極シートの製造方法において、
前記第一の検出工程において、前記尾引き部を検出する位置が、前記裁断工程で裁断処理を行う位置およびその周辺部である、集電体電極シートの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の集電体電極シートの製造方法において、
前記第一の検出工程は、前記塗布工程と前記裁断工程の間に行う工程であって、前記第一の検出工程で検出された該尾引き部に対し、保護層を形成する工程を有する、集電体電極シートの製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の集電体電極シートの製造方法において、
前記第一の検出工程と連続して、前記検出工程で検出された該尾引き部を含む前記塗布領域にマーキング処理を実施する工程を含む、集電体電極シートの製造方法。
【請求項5】
請求項に記載の集電体電極シートの製造方法において、
前記裁断工程を経て作製した電極を用いて電気化学デバイスを作製する前に、前記マーキング位置を検出する第二の検出工程と、
前記第二の検出工程で検出したマーキングを含む前記裁断工程後の前記電極を、前記電気化学デバイスの作製時の対象部材から除外する工程とを含む、集電体電極シートの製造方法。
【請求項6】
シート状の金属箔の両面に活物質が塗布された集電体電極シートの製造方法において、
前記活物質を含むスラリを、帯状の前記金属箔上に間欠的に塗布、乾燥して、活物質層が連続して存在する前記スラリの塗布領域と、前記スラリの非塗布領域とを、前記帯状の前記金属箔の巻取方向に交互に成する塗布工程と、
前記塗布工程で形成した各前記塗布領域の終端における尾引き部の長さを検出する検出工程と、
前記塗布工程と前記検出工程とを経て前記活物質層が形成された前記金属箔を、その厚さ方向へ、一対の圧縮ローラを用いて、前記スラリの前記塗布領域と前記非塗布領域とを連続して圧縮する圧縮工程と、
前記検出工程と前記圧縮工程とを経て前記活物質層が形成された前記金属箔を、該金属箔の巻取方向と平行に前記スラリの前記塗布領域と前記非塗布領域とを連続して裁断する裁断工程と、を含み、
前記圧縮工程は、
下記式(B)を満たすロール半径rを持つ圧縮ローラを用いて、圧縮する、集電体電極シートの製造方法。
r≧tmin/2+(xmax+ymax+zmax+wmax/(2tmin) ・・・式(B)
ここで、tminは、前記塗布工程で連続的に形成した各前記塗布領域の中央部のうち、加圧圧縮後の想定厚さの最小値であり、xmaxは、前記検出工程で検出した、前記塗布工程で連続的に形成した各前記塗布領域の終端における前記尾引き部の長さの最大値であり、ymaxは、前記金属箔の両面の前記活物質の塗布開始位置のずれ量の最大値であり、zmaxは、前記金属箔の両面の活物質の前記金属箔の巻取方向の塗布長のずれ量の最大値であり、およびwmaxは、前記金属箔の両面の前記活物質の塗工終端から、塗工膜の厚さが塗工域中央と同じ厚さになるまでの距離の最大値である。
【請求項7】
請求項乃至のいずれか1項に記載の集電体電極シートの製造方法において、
活物質としてリチウム金属複合酸化物を用いた電極シートを作製する、集電体電極シートの製造方法。
【請求項8】
請求項乃至のいずれか1項に記載の集電体電極シートの製造方法において、
前記金属箔の厚さをdとし、
粒度分布計を用いて測定した際に、測定した活物質粒子のうち、最小の粒径から粒子を順に並べたときに、測定した前記粒子の90%に当たる前記粒子の前記粒径をD90としたとき、D90≧dの関係を満たす前記金属箔と前記活物質を用いた前記電極シートを作製する、集電体電極シートの製造方法。
【請求項9】
請求項乃至のいずれか1項に記載の集電体電極シートの製造方法において、
前記圧縮工程において、前記活物質層が形成された前記金属箔のうち、前記塗布領域の中央部にかかる荷重が1.5ton/cmを超える、集電体電極シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電池用の集電体電極シートの製造方法、集電体電極シート、および電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題を踏まえ、電気自動車やハイブリッド自動車への関心が高まり、その駆動源である二次電池の高エネルギー密度化、高容量化への技術的要求が一段と高まっている。
【0003】
こうした二次電池用の電極は、アルミニウムや銅等の帯状の金属箔上に活物質を含むスラリを塗布・乾燥させた電極シートから作製される。活物質の塗布方法は、間欠塗工方式と連続塗工方式とに大別できる。
【0004】
間欠塗工方式は、帯状の金属箔に、活物質等のスラリを塗布して形成する塗布領域とスラリを塗布しない非塗布領域とを、該金属箔の巻取方向に所定の間隔で交互に形成する方式である。所定の間隔で配置された活物質の非形成部は、外部端子と電気的に接続するための引き出しタブを取り出す部位として利用される。本発明に関連する電極シートの製造方法では、主材である活物質、導電付与剤、結合材、溶剤を混合または混錬したスラリを、金属箔の一方の面に間欠的に塗布(以下、間欠塗布と称する。)した後に、再度、金属箔上の反対側の他方の面にも間欠塗布して、金属箔の両面にスラリをそれぞれ塗布する。次に、両面にスラリが塗布された金属箔を圧延ローラによって加圧成型する。その後、集電体として所望の外形寸法に切断し、集電体電極シートに電極端子部を形成している。
【0005】
ここで、リチウムイオン二次電池の正極活物質には、リチウム含有複合酸化物が用いられており、こうした金属酸化物粒子を主成分とする活物質層を加圧成型する場合、大きな圧力を必要とする。特に高エネルギー密度に設計された二次電池に用いる正極電極では、活物質層を高密度に圧縮する必要があるため、該加圧成型において、より大きな圧力をかけて成型されることが多い。
【0006】
また、高エネルギー密度に設計された二次電池に用いる電極は、集電体である金属箔の厚さを薄く設計する傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-164041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図28に示すように、前記の集電体電極シートの塗布終端部には、スラリを間欠塗布したときに、塗布領域11と非塗布領域12との境界に、スラリの尾引き部14が発生しやすい。帯状電極シート10を電極ロールの巻取方向Dxに沿って、ロールプレス機で圧延加工成型する場合、こうした尾引き部14が存在すると、塗布終端の尾引き部14には巻取方向Dxと垂直な方向Dyに活物質層が断続的にしか存在しないため、巻取方向Dxと垂直な方向Dyに活物質層が連続的に存在する塗布領域11の中央部分よりも大きな線圧がかかることになる。
【0009】
このように大きな線圧の掛かる尾引き部分14では、活物質粒子が金属箔に大きく食い込む現象がしばしば発生する。この活物質粒子が金属箔に食い込んだ部分の金属箔の残肉量がきわめて薄くなっているため、引き続き行う裁断工程で裁断する際にシート電極の切断面に活物質層の部分的に脱落したバリが発生する。発生したバリが、電極に付着すると、電池の組み立て時に短絡を発生させる原因になり、電池の不良率が高まるという問題が生じていた。
【0010】
このようにスラリを間欠塗布するときに塗布終端部に尾引き部14が発生するのを防止するために、例えば特許文献1には、あらかじめ活物質層を塗布する塗布域のうち、箔の巻取方向Dxの始端と終端にフッ素樹脂を塗布しておく方法が提示されている。しかし、この方法では、フッ素樹脂を塗布するためのコストが増大するとともに、電極の重量や厚みが増えてしまうこととなり、高エネルギー密度に設計された二次電池に用いる電極の製造方法としては問題があった。そこで、活物質層のみを集電体電極シートに塗布しても、バリの発生を抑制し、不良率の低い電極を提供する製造方法を提供する必要があった。
【0011】
本発明は上述したような背景技術が有する課題を解決するためになされたものであり、製造コストの増大を招くことなく、裁断工程におけるバリの発生を抑制できる電極シートの製造方法、及び該電極シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の集電体電極シートは、
シート状の金属箔の両面に活物質が塗布された集電体電極シートであって、
前記金属箔の両面に、前記活物質を含むスラリを間欠的に塗布、乾燥して形成される、前記スラリの塗布領域と、非塗布領域と、を含み、
前記塗布領域と前記非塗布領域は、帯状の前記金属箔の巻取方向に交互に形成され、
前記集電体電極シートの厚さ方向へ、一対の圧縮ローラを用いて、前記スラリの塗布領域と前記非塗布領域とを連続して圧縮する圧縮工程において、各前記塗布領域の終端における尾引き部のうち、前記圧縮ローラによって圧縮されない領域を含む。
【0013】
本発明の第1の集電体電極シートの製造方法は、
シート状の金属箔の両面に活物質が塗布された集電体電極シートの製造方法において、
前記活物質を含むスラリを、帯状の前記金属箔上に間欠的に塗布、乾燥して、活物質層が連続して存在する前記スラリの塗布領域と、前記スラリの非塗布領域とを、前記帯状の前記金属箔の巻取方向に交互に形成する塗布工程と、
前記塗布工程で形成した各前記塗布領域の終端における尾引き部の長さを検出する第一の検出工程と、
前記活物質層が形成された前記金属箔を、その厚さ方向へ、一対の圧縮ローラを用いて、前記スラリの前記塗布領域と前記非塗布領域とを連続して圧縮する圧縮工程と、
前記第一の検出工程と前記圧縮工程とを経て前記活物質層が形成された前記金属箔を、該金属箔の巻取方向と平行に前記スラリの前記塗布領域と前記非塗布領域とを連続して裁断する裁断工程と、を有し、
前記第一の検出工程は、
下記式(A)を満たす前記スラリの前記塗布領域の終端から前記非塗布領域に連続して形成される尾引き部を検出する。
x≧(2rtmin-tmin 1/2-ymax-zmax-wmax ・・・式(A)
ここで、xは、前記塗布工程で各前記塗布領域の終端における前記尾引き部の長さの最大値であり、rは、前記圧縮工程に用いる圧縮ローラのロール径であり、tminは、前記塗布工程で連続的に形成した各前記塗布領域の中央部のうち、加圧圧縮後の想定厚さの最小値であり、ymaxは、前記金属箔の各面の塗布開始位置の前記金属箔の巻取方向のずれ量の最大値であり、zmaxは、前記金属箔の両面の前記活物質の前記金属箔の巻取方向の塗布長のずれ量の最大値であり、および、wmaxは、前記金属箔の両面の前記活物質の塗工終端から、塗工膜の厚さが塗工域中央と同じ厚さになるまでの距離の最大値である。
【0014】
本発明の第2の集電体電極シートの製造方法は、
シート状の金属箔の両面に活物質が塗布された集電体電極シートの製造方法において、
前記活物質を含むスラリを、帯状の前記金属箔上に間欠的に塗布、乾燥して、活物質層が連続して存在する前記スラリの塗布領域と、前記スラリの非塗布領域とを、前記帯状の前記金属箔の巻取方向に交互にを形成する塗布工程と、
前記塗布工程で形成した各前記塗布領域の終端における尾引き部の長さを検出する検出工程と、
前記塗布工程と前記検出工程とを経て前記活物質層が形成された前記金属箔を、その厚さ方向へ、一対の圧縮ローラを用いて、前記スラリの前記塗布領域と前記非塗布領域とを連続して圧縮する圧縮工程と、
前記検出工程と前記圧縮工程とを経て前記活物質層が形成された前記金属箔を、該金属箔の巻取方向と平行に前記スラリの前記塗布領域と前記非塗布領域とを連続して裁断する裁断工程と、を有し、
前記圧縮工程は、
下記式(B)を満たすロール半径rを持つ圧縮ローラを用いて、圧縮する。
r≧tmin/2+(xmax+ymax+zmax+wmax/(2tmin) ・・・式(B)
ここで、tminは、前記塗布工程で連続的に形成した各前記塗布領域の中央部のうち、加圧圧縮後の想定厚さの最小値であり、xmaxは、前記検出工程で検出した、前記塗布工程で連続的に形成した各前記塗布領域の終端における前記尾引き部の長さの最大値であり、ymaxは、前記金属箔の両面の前記活物質の塗布開始位置のずれ量の最大値であり、zmaxは、前記金属箔の両面の活物質の前記金属箔の巻取方向の塗布長のずれ量の最大値であり、およびwmaxは、前記金属箔の両面の前記活物質の塗工終端から、塗工膜の厚さが塗工域中央と同じ厚さになるまでの距離の最大値である。
【0015】
本発明の集電体電極シートは、上記製造方法により製造される。
本発明の電池は、上記集電体電極シートを用いて製造される。
【0016】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【0017】
また、本発明の各種の構成要素は、必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、複数の構成要素が一個の部材として形成されていること、一つの構成要素が複数の部材で形成されていること、ある構成要素が他の構成要素の一部であること、ある構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複していること、等でもよい。
【0018】
また、本発明の方法およびコンピュータプログラムには複数の手順(又は工程)を順番に記載してあるが、その記載の順番は複数の手順を実行する順番を限定するものではない。このため、本発明の方法およびコンピュータプログラムを実施するときには、その複数の手順の順番は内容的に支障のない範囲で変更することができる。
【0019】
さらに、本発明の方法およびコンピュータプログラムの複数の手順(又は工程)は個々に相違するタイミングで実行されることに限定されない。このため、ある手順の実行中に他の手順が発生すること、ある手順の実行タイミングと他の手順の実行タイミングとの一部ないし全部が重複していること、等でもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、製造コストの増大を招くことなく、電極シートの裁断工程におけるバリの発生を抑制できる集電体電極シートの製造方法、集電体電極シート、および電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
上述した目的、およびその他の目的、特徴および利点は、以下に述べる好適な実施の形態、およびそれに付随する以下の図面によってさらに明らかになる。
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態における両面塗布後の集電体電極シートを示す平面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る電極シートのスラリ塗布装置の概要を示す模式図である。
図3】本発明の実施形態に係る電極シートの圧縮装置の概要を示す模式図である。
図4】本発明の第1および第2の実施形態における両面塗布後の集電体電極シートと圧縮ローラの関係を示す断面図である。
図5】本発明の第1の実施形態における加圧成型後の集電体電極シートのうち、塗布後の尾引き部に裁断保護層が塗布されていない部分の断面図である。
図6】本発明の第1の実施形態における加圧成型後の集電体電極シートのうち、塗布後の尾引き部に裁断保護層が塗布された部分の断面図である。
図7】本発明の実施形態に係る電極シートを複数のシートに裁断する裁断装置の概要を示す模式図である。
図8】本発明の第1の実施形態に係る電極シートのうち、塗布後の尾引き部に裁断保護層が塗布された部分を裁断した後の、裁断面を上面から見た模式図である。
図9】本発明の第1の実施形態に係る電極シートのうち、塗布後の尾引き部に裁断保護層が塗布されていない部分を裁断した後の、裁断面を上面から見た模式図である。
図10】本発明の第2の実施形態における両面塗布後の集電体電極シートを示す平面図である。
図11】本発明の第2の実施形態に係る電極シートのスラリ塗布装置の概要を示す模式図である。
図12】本発明の第2の実施形態における加圧成型後の集電体電極シートにマーキングが施された間欠塗工部分の断面図である。
図13】本発明の第2の実施形態における加圧成型後の集電体電極シートのうち、前記マーキングがされていない間欠塗工部分の断面図である。
図14】本発明の第2の実施形態に係る電極シートのうち、塗布後の尾引き部の長さが所定の長さ以上であることを示すマーキングがされた間欠塗工部分を裁断した後の、裁断面を上面から見た模式図である。
図15】本発明の第2の実施形態に係る電極シートのうち、前記マーキングがされていない間欠塗工部分を裁断した後の、裁断面を上面から見た模式図である
図16】本発明の第3の実施形態における両面塗布後の集電体電極シートを示す平面図である。
図17】本発明の第3の実施形態に係る電極シートのスラリ塗布装置の概要を示す模式図である。
図18】本発明の第3の実施形態における両面塗布後の集電体電極シートと圧縮ローラの関係を示す断面図である。
図19】本発明の第3の実施形態における加圧成型後の集電体電極シートの断面図である。
図20】本発明の第3の実施形態に係る電極シートを裁断した後の、裁断面を上面から見た模式図である。
図21】本発明の実施の形態に係る電極シートの製造システムの構成の一例を示すブロック図である。
図22】本発明の実施の形態に係る電極シートの製造方法の工程を示すフローチャートである。
図23】本発明の実施の形態に係る電極シートの製造方法で用いるスラリ塗布装置の終端検出器の構成の一例を示す機能ブロック図である。
図24】本発明の第1および第2の実施形態における両面塗布後の集電体電極シートの上面から見た平面と断面の関係を示す図である。
図25】本発明の第2の実施形態に係る電極シート10の製造方法の工程を示すフローチャートである。
図26】本発明の実施の形態に係る電極シートの製造システムの各装置を実現するコンピュータのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図27】本発明の実施の形態に係る電池の構成の一例を示す概略図である。
図28】間欠塗工方式により、活物質を塗布して作製された電極シートを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0024】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施形態の集電体電極シートの製造方法における活物質の両面塗布後の集電体電極シート10を示す部分平面図である。
【0025】
電極シート10は、帯状の金属箔の両面に、活物質等のスラリの塗布領域11と非塗布領域12とが巻取方向Dxに交互に繰り返し配置されている。塗布領域11の終端13側の電極部分には、スラリを引きずる状態が生じることで尾引き部14が形成される。さらに、尾引き部14において、以後の工程で電極シート10の裁断を行う線17(図中、破線で示し、以後、「巻取方向裁断予定線17」とも呼ぶ)が通る領域のうち、尾引き部14の箔の流れる方向、すなわち巻取方向Dxの長さxが閾値x以上の部分には、裁断保護層15が形成されている。
【0026】
ここで、本実施形態に係る電極シート10から作製される電極は特に限定されないが、例えば、リチウムイオン一次電池やリチウムイオン二次電池等のリチウムイオン電池用電極(正極や負極)である。
【0027】
以下、電極の構成について詳細に説明する。
【0028】
はじめに、本実施形態に係るスラリの塗布領域11を形成する電極活物質層を構成する各成分について説明する。
電極活物質層は、電極活物質を含み、必要に応じてバインダー樹脂、導電助剤、増粘剤等を含む。本実施形態において、電極活物質は、例えば、リチウム金属複合酸化物を用いることができる。
【0029】
本実施形態に係る電極活物質層に含まれる電極活物質は用途に応じて適宜選択される。正極を作製するときは正極活物質を使用し、負極を作製するときは負極活物質を使用する。
【0030】
正極活物質としてはリチウムイオン電池の正極に使用可能な通常の正極活物質であれば特に限定されない。例えば、リチウム-ニッケル複合酸化物、リチウム-コバルト複合酸化物、リチウム-マンガン複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン複合酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト複合酸化物、リチウム-ニッケル-アルミニウム複合酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-アルミニウム複合酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト-マンガン-アルミニウム複合酸化物等のリチウムと遷移金属との複合酸化物;TiS、FeS、MoS等の遷移金属硫化物;MnO、V、V13、TiO等の遷移金属酸化物、オリビン型リチウムリン酸化物等が挙げられる。
オリビン型リチウムリン酸化物は、例えば、Mn、Cr、Co、Cu、Ni、V、Mo、Ti、Zn、Al、Ga、Mg、B、Nb、およびFeよりなる群のうちの少なくとも1種の元素と、リチウムと、リンと、酸素とを含んでいる。これらの化合物はその特性を向上させるために一部の元素を部分的に他の元素に置換したものであってもよい。
【0031】
これらの中でも、オリビン型リチウム鉄リン酸化物、リチウム-ニッケル複合酸化物、リチウム-コバルト複合酸化物、リチウム-マンガン複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン複合酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト複合酸化物、リチウム-ニッケル-アルミニウム複合酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト-アルミニウム複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト複合酸化物、リチウム-ニッケル-マンガン-アルミニウム複合酸化物、リチウム-ニッケル-コバルト-マンガン-アルミニウム複合酸化物が好ましい。これらの正極活物質は作用電位が高いことに加えて容量も大きく、大きなエネルギー密度を有する。
正極活物質は、一種のみを単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
負極活物質としては、リチウムイオン電池の負極に使用可能な通常の負極活物質であれば特に限定されない。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、樹脂炭、炭素繊維、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料;リチウム金属、リチウム合金等のリチウム系金属材料;シリコン、スズ等の金属材料;ポリアセン、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性ポリマー材料等が挙げられる。これらの中でも炭素材料が好ましく、特に天然黒鉛や人造黒鉛等の黒鉛質材料が好ましい。
負極活物質は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
電極活物質の平均粒子径は、充放電時の副反応を抑えて充放電効率の低下を抑える点から、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましく、入出力特性や電極作製上の観点(電極表面の平滑性等)から、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましい。ここで、平均粒径は、レーザ回折散乱法による粒度分布(体積基準)における積算値50%での粒子径(メジアン径:D50)を意味する。
【0034】
電極活物質の含有量は、電極活物質層の全体を100質量部としたとき、85質量部以上99.8質量部以下であることが好ましい。
【0035】
本実施形態に係る電極活物質層に含まれるバインダー樹脂は用途に応じて適宜選択される。例えば、溶媒に溶解可能なフッ素系バインダー樹脂や、水に分散可能な水系バインダー等を使用することができる。
【0036】
フッ素系バインダー樹脂としては電極成形が可能であり、十分な電気化学的安定性を有していれば特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、フッ素ゴム等が挙げられる。これらのフッ素系バインダー樹脂は一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が好ましい。フッ素系バインダー樹脂は、例えば、N-メチル-ピロリドン(NMP)等の溶媒に溶解させて使用することができる。
【0037】
水系バインダーとしては電極成形が可能であり、十分な電気化学的安定性を有していれば特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、スチレン・ブタジエン系ゴム、ポリイミド系樹脂等が挙げられる。これらの水系バインダーは一種単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、スチレン・ブタジエン系ゴムが好ましい。
なお、本実施形態において、水系バインダーとは、水に分散し、エマルジョン水溶液を形成できるものをいう。
水系バインダーを使用する場合は、さらに増粘剤を使用することができる。増粘剤としては特に限定されないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系ポリマーおよびこれらのアンモニウム塩並びにアルカリ金属塩;ポリカルボン酸;ポリエチレンオキシド;ポリビニルピロリドン;ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸塩;ポリビニルアルコール;等の水溶性ポリマー等が挙げられる。
【0038】
バインダー樹脂の含有量は、電極活物質層の全体を100質量部としたとき、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。バインダー樹脂の含有量が上記範囲内であると、電極スラリの塗工性、バインダーの結着性および電池特性のバランスがより一層優れる。
また、バインダー樹脂の含有量が上記上限値以下であると、電極活物質の割合が大きくなり、電極質量当たりの容量が大きくなるため好ましい。バインダー樹脂の含有量が上記下限値以上であると、電極剥離が抑制されるため好ましい。
【0039】
本実施形態に係る電極活物質層に含まれる導電助剤としては電極の導電性を向上させるものであれば特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、天然黒鉛、人工黒鉛、炭素繊維等が挙げられる。これらの導電助剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
導電助剤の含有量は、電極活物質層の全体を100質量部としたとき、0.1質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。導電助剤の含有量が上記範囲内であると、電極スラリの塗工性、バインダーの結着性および電池特性のバランスがより一層優れる。
また、導電助剤の含有量が上記上限値以下であると、電極活物質の割合が大きくなり、電極質量当たりの容量が大きくなるため好ましい。導電助剤の含有量が上記下限値以上であると、電極の導電性がより良好になるため好ましい。
【0041】
本実施形態に係る電極活物質層は、電極活物質層の全体を100質量部としたとき、電極活物質の含有量は好ましくは85質量部以上99.8質量部以下である。また、バインダー樹脂の含有量は好ましくは0.1質量部以上10.0質量部以下である。また、導電助剤の含有量は好ましくは0.1質量部以上5.0質量部以下である。
電極活物質層を構成する各成分の含有量が上記範囲内であると、リチウムイオン電池用電極の取扱い性と、得られるリチウムイオン電池の電池特性のバランスが特に優れる。
【0042】
電極活物質層の密度は特に限定されないが、電極活物質層が正極活物質層の場合は、例えば、2.0g/cm以上4.0g/cm以下であることが好ましく、2.4g/cm以上3.8g/cm以下であることがより好ましく、2.8g/cm以上3.6g/cm以下であることがさらに好ましい。また、電極活物質層が負極活物質層の場合は、例えば、1.2g/cm以上2.0g/cm以下であることが好ましく、1.3g/cm以上1.9g/cm以下であることがより好ましく、1.4g/cm以上1.8g/cm以下であることがさらに好ましい。
電極活物質層の密度を上記範囲内とすると、高放電レートでの使用時における放電容量が向上するため好ましい。
【0043】
電極活物質層の厚みは特に限定されるものではなく、所望の特性に応じて適宜設定することができる。例えば、エネルギー密度の観点からは厚く設定することができ、また出力特性の観点からは薄く設定することができる。電極活物質層の厚み(片面の厚み)は、例えば、10μm以上250μm以下の範囲で適宜設定でき、20μm以上200μm以下が好ましく、30μm以上150μm以下がより好ましい。
【0044】
本実施形態に係る集電体層(金属箔9)としては特に限定されないが、正極集電体層としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはこれらの合金等を用いることができる。その形状としては、例えば、箔、平板状、メッシュ状等が挙げられる。特にアルミニウム箔を好適に用いることができる。
また、負極集電体層としては、銅、ステンレス鋼、ニッケル、チタンまたはこれらの合金を用いることができる。その形状としては、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。特に銅箔を好適に用いることができる。
【0045】
正極集電体層の厚みは特に限定されないが、例えば1μm以上30μm以下である。また、負極集電体層の厚みは特に限定されないが、例えば1μm以上20μm以下である。
【0046】
はじめに、電極スラリを調製する。
電極スラリは、電極活物質と、必要に応じてバインダー樹脂と、導電助剤と、増粘剤と、を混合することにより調製することができる。電極活物質、バインダー樹脂、および導電助剤の配合比率は電極活物質層中の電極活物質、バインダー樹脂、および導電助剤の含有比率と同じため、ここでは説明を省略する。
【0047】
電極スラリは、電極活物質と、必要に応じてバインダー樹脂と、導電助剤と、増粘剤と、を溶媒に分散または溶解させたものである。
各成分の混合手順は特に限定されないが、例えば、電極活物質と導電助剤とを乾式混合した後に、バインダー樹脂および溶媒を添加して湿式混合することにより電極スラリを調製することができる。
このとき、用いられる混合機としては、ボールミルやプラネタリーミキサー等の公知のものが使用でき、特に限定されない。
電極スラリに用いる溶媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等の有機溶媒や、水を用いることができる。
【0048】
電極スラリを集電体層上に塗布する方法は、一般的に公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ドクターブレード法、ナイフ法、エクストルージョン法、カーテン法、グラビア法、バー法、ディップ法およびスクイーズ法等を挙げることができる。これらの中でも、電極スラリの粘性等の物性および乾燥性に合わせて、良好な塗布層の表面状態を得ることが可能となる点で、ドクターブレード法、ナイフ法、エクストルージョン法が好ましい。
【0049】
集電体層上に塗布した電極スラリの乾燥方法としては特に限定されないが、例えば、加熱ロールを用いて集電体層側または既に乾燥した電極活物質層側から電極スラリを間接的に加熱し、電極スラリを乾燥させる方法;赤外線、遠赤外線・近赤外線のヒーター等の電磁波を用いて電極スラリを乾燥させる方法;集電体層側または既に乾燥した電極活物質層側から熱風を当てて電極スラリを間接的に加熱し、電極スラリを乾燥させる方法等が挙げられる。
【0050】
金属箔9の厚さをdとし、さらに、粒度分布計を用いて測定した際に、測定した活物質粒子のうち、最小の粒径から粒子を順に並べたときに、測定した粒子の90%に当たる粒子の粒径:D90としたとき、D90≧dの関係を満たす金属箔と活物質を用いるのが好ましい。
【0051】
図21は、本発明の第1の実施形態に係る電極シート10の製造システム1の構成例を示すブロック図である。
製造システム1は、スラリ塗布装置20と、圧縮装置40と、裁断装置60と、を備える。さらに、製造システム1の各装置を制御する制御装置を備えてもよい。
【0052】
図26は、本発明の実施の形態に係る電極シートの製造システムの各装置を実現するコンピュータのハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
スラリ塗布装置20、圧縮装置40、および裁断装置60は、それぞれ少なくとも1つのコンピュータ100により実現される。コンピュータ100は、CPU(Central Processing Unit)102、メモリ104、メモリ104にロードされた各装置を実現するプログラム110、そのプログラム110を格納するストレージ105、I/O(Input Output)106、およびネットワーク接続用通信インタフェース(I/F)107を備える。CPU102と各要素は、バス109を介して互いに接続され、CPU102によりコンピュータ100全体が制御される。ただし、CPU102などを互いに接続する方法は、バス接続に限定されない。
【0053】
CPU102が、ストレージ105に記憶されるプログラム110をメモリ104に読み出して実行することにより、各装置の各機能を実現することができる。
【0054】
スラリ塗布装置20、圧縮装置40、および裁断装置60は、それぞれコンピュータ100のハードウェアとソフトウェアの任意の組合せによって実現される。そして、その実現方法、装置にはいろいろな変形例があることは、当業者には理解されるところである。
【0055】
プログラム110は、コンピュータ100で読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。記録媒体は特に限定されず、様々な形態のものが考えられる。また、プログラムは、記録媒体からコンピュータ100のメモリ104にロードされてもよいし、ネットワークを通じてコンピュータ100にダウンロードされ、メモリ104にロードされてもよい。
【0056】
プログラム110を記録する記録媒体は、非一時的な有形のコンピュータ100が使用可能な媒体を含み、その媒体に、コンピュータ100が読み取り可能なプログラムコードが埋め込まれる。プログラム110が、コンピュータ100上で実行されたとき、コンピュータ100に、各装置を実現させる電極シート10の製造方法を実行させる。
【0057】
図22は、本発明の第1の実施形態に係る電極シート10の製造方法の工程を示すフローチャートである。
本発明の第1の実施形態の電極シート10の製造方法は、塗布工程(S1)と、第1の検出工程(S2)と、裁断保護層形成工程(S4)と、圧縮工程(S5)と、裁断工程(S6)と、を含む。本発明の実施形態に係る電極シート10は、図22に示される製造方法によって製造される。各工程の詳細については、各装置の説明とともに後述する。
【0058】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る電極シートのスラリ塗布装置20の概要を示す模式図である。
【0059】
まず、塗布工程(図22のS1)において、塗布装置20に設置された金属箔9には、例えば第1のダイコータ21等を用いて、一方の面9aに活物質を含むスラリを間欠的に塗布、乾燥することで活物質(スラリ)の塗布領域11が形成される。
【0060】
上述のように、塗布領域11の形成にダイコータ21等を用いる場合、塗布装置20などの限界性能の影響により、活物質(スラリ)の塗布を遮断する際の塗布領域11から非塗布領域12に移る瞬間、スラリの切れが悪くなる。このため、塗布領域11の終端13側の電極部分には、スラリを引きずる状態が生じ、尾引き部14(図1)が発生する。
【0061】
塗布装置20は、終端検出器23と、始端検出器24と、裁断保護層吐出機30とを備える。終端検出器23は、上述の活物質(スラリ)の塗布領域11を形成する塗布工程(図22のS1)に続く、第1の検出工程(図22のS2)において、金属箔9の各面に形成された塗布領域11の尾引き部14の長さをそれぞれ検出する。図2の例では、2つの終端検出器23がそれぞれ金属箔9の各面の尾引き部14の長さを検出している。裁断保護層吐出機30は、終端検出器23に連動して、尾引き部14に裁断保護層15を形成する。
【0062】
終端検出器23は、例えば、図23に示すように、レーザ光などを電極シート10の一方の面(9a又は9b)に照射し、反射する光を受光した信号を検出する信号検出部27と、得られた信号を処理して、それぞれの尾引き部14の箔の流れる方向、すなわち巻取方向Dxの長さを算出する第1の演算部28と、上述の方法で検出した尾引き部14の長さをxとしたときに、xが閾値x以上か否かを判定する第2の演算部29とを備えている。
【0063】
第2の演算部29の上記判定で用いる閾値xは、下記の式(1)で示される値である。
=(2rt-t1/2-ymax-zmax-wmax ・・・式(1)
ここで、式(1)の各値について、図24を用いて説明する。
図24(a)は、電極シート10に形成された活物質の塗布領域11の一部を含む電極シート10の上面図であり、図24(b)は、図24(a)の線I-Iについての塗布領域11が形成された電極シート10の断面図である。
【0064】
rは、次工程の圧縮工程(図22のS5)に用いる圧縮ローラのロール半径である。
tは、塗布領域11の中央部が次工程の圧縮工程(図22のS5)を経た後の見込み平均厚さである。
maxは、金属箔9の両面にそれぞれ連続して形成される各塗布領域11の活物質(スラリ)の塗布開始位置の金属箔9の巻取方向のずれ量yの最大値である。
maxは、金属箔9の両面にそれぞれ連続して形成される各塗布領域11の活物質(スラリ)の金属箔9の巻取方向の塗布長のずれ量zの最大値である。
maxは、金属箔9の両面にそれぞれ連続して形成される各塗布領域11の活物質(スラリ)の塗工終端11aから、塗工膜の厚さが塗工域中央と同じ厚さになる終端16までの金属箔9の巻取方向の距離wの最大値である。
【0065】
裁断保護層形成工程(図22のS4)では、終端検出器23で、尾引き部14の箔の流れる方向、すなわち巻取方向Dxの長さxが閾値x以上である値を検出した場合(図22のS3のY)、第2の演算部29から裁断保護層吐出機30に信号が送られ、尾引き部14に裁断保護層15を塗布、乾燥する。尾引き部14の長さxが閾値x以上の値が検出されなかった場合(図22のS3のN)、裁断保護層形成工程(図22のS4)はバイパスされ、裁断工程(図22のS6)に進む。
【0066】
ここで、裁断保護層15は、以後の裁断工程(図22のS6)で裁断を行う近傍を少なくとも塗布すればよい。よって、終端検出器23が、尾引き部14の長さを検出する位置は、少なくとも図1の巻取方向裁断予定線17、およびその周辺部(例えば、巻取方向裁断予定線17に沿って巻取方向裁断予定線17を含む3mm幅の範囲)とし、尾引き部14の長さを検出できる位置とするのがよい。
【0067】
裁断保護層15は、箔の流れる方向、すなわち巻取方向Dxについては、塗布領域11の終端13側の電極部分の尾引き開始部分から尾引き部14の少なくとも全体を覆い、かつ、非塗布領域12の少なくとも一部まで塗布されるのがよい。裁断保護層15は、箔の流れる方向、すなわち巻取方向Dxの長さが、8mm程度であるのが好ましい。
【0068】
また、箔の流れる方向、すなわち巻取方向Dxに対して垂直な方向Dyにおいて、終端検出器23による検出領域の幅および裁断保護層15の幅は、裁断機の公差などを考慮して3mm程度とするのが好ましい。
【0069】
また、裁断保護層15の材質は特に制限しないが、後述する裁断工程において、裁断箇所の箔を補強し破断(切断バリの発生)を抑制または防止できる厚さと強度を備えたものであれば良く、裁断保護層15の材料として、例えば紫外線硬化樹脂などを選択することが好ましい。
【0070】
より詳細には、裁断保護層15としては、上記交点Xの領域を補強し、積層体(電池150)の切断時に凹凸構造Bの脱落を防止できる強度を有するものであれば特に限定されないが、例えば、熱可塑性樹脂層、電離放射線硬化型樹脂層および熱硬化性樹脂層等の樹脂層や、インクにより形成されたインク層等が挙げられる。
【0071】
熱可塑性樹脂層を形成する熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;塩化ビニル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート(PET);アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS樹脂);アクリロニトリル-スチレン-アクリル酸エステル樹脂;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0072】
電離放射線硬化型樹脂層を形成する電離放射線硬化型樹脂としては特に限定されないが、例えば、不飽和ポリエステル系樹脂、アクリレート系樹脂、メタクリレート系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。電離放射線硬化型樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
ここで、電離放射線硬化型樹脂とは、電離放射線を照射することにより硬化する樹脂である。電離放射線硬化型樹脂層の硬化に用いる電離放射線は特に限定されず、電離放射線硬化型樹脂や、電離放射線硬化型樹脂層に添加された光ラジカル重合開始剤や、増感剤等に作用してこれらを電離(ラジカル化)させ、ラジカル重合反応を開始せしめるに十分なエネルギーを有する電離放射線を用いることが可能である。例えば、可視光線、紫外線、X線、γ線等の電磁波や、電子線、α線、β線等の荷電粒子線等を用いることができ、感度や硬化能力、照射装置(光源・線源)の簡便性等の観点から、紫外線および電子線が好ましい。
【0073】
熱硬化性樹脂層を形成する熱硬化性樹脂としては特に限定されないが、例えば、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ系樹脂、アミノアルキド系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0074】
インク層を形成するインクとしては、上記交点Xの領域を補強し、積層体(電極シート10)の切断時に凹凸構造Bの脱落を防止できる強度を有するインク層を形成できるものであれば特に限定されず、公知のインクから適宜選択することができる。
【0075】
裁断保護層15の厚さは上記交点Xの領域を補強し、電極シート10の切断時に凹凸構造Bの脱落を防止できる厚さであれば特に限定されないが、例えば、1μm以上50μm以下であることが好ましく、3μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0076】
裁断保護層15は、例えば、樹脂層やインク層を形成するための樹脂組成物やインクを上記交点Xの近傍に塗布し、次いで、乾燥および/または硬化させることによって形成することができる。
樹脂組成物やインクの塗工方法は特に限定されないが、例えば、グラビアコート法、ダイコート法、リップコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、スプレーコート法、フローコート法、ロールコート法、ディップコート法、インクジェット法等の塗工方法を用いることができる。これらの方法は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、上記交点Xの近傍のみに裁断保護層15を連続的に形成できる点から、インクジェット法が好ましい。
【0077】
こうして、金属箔9の一方の面9aに、活物質塗布領域11と、尾引き部14のうち、長さxが閾値x以上の箇所に裁断保護層15が塗布された電極シート10を乾燥機25を通して乾燥させた後、金属箔9の他方の面9bにも同様の手法で活物質塗布領域11と裁断保護層15を形成する。このとき、他方の面9bにおいて、始端検出器24が一方の面9aに形成された活物質塗布領域の位置を検出する。始端検出器24の検出信号を受信して動作するダイコータ22等を用いて、一方の面9aにおいて検出した位置に対応する位置の、一方の面9aの裏面となる他方の面9bの部位に活物質塗布領域11を形成することで、電極シート10の両面に形成する活物質塗布領域11の位置をそれぞれ一致させる。また、活物質(スラリ)の塗布始め及び塗布終わり位置も電極シート10の両面でそれぞれ一致させる。電極シート10の両面における活物質(スラリ)の塗布始めの位置ずれ量yは、その巻取方向Dxにおいて、例えば1mm未満となるように調整する。
【0078】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る電極シート10の圧縮装置40の概要を示す模式図である。
圧縮工程(図22のS6)において、図2に示すスラリ塗布装置20で、金属箔9の両面に活物質塗布領域11と裁断保護層15を形成した電極シート10を、図3で示すように一対の圧縮ローラ50で圧縮する。電極シート10は、一対の圧縮ローラ50の隙間を通過する際に加圧圧縮されて、巻取方向Dxに巻き取られる。
なお、この圧縮工程(図22のS6)では、電極シート10を流れる方向、すなわち巻取方向Dxを塗布終端側から塗布始端側になるように設定しても、反対に塗布始端側から塗布終端側になるように設定しても良い。
【0079】
圧縮工程(図22のS6)において、圧縮装置40は、活物質層が形成された金属箔9のうち、塗布領域11の中央部にかかる荷重が1.5ton/cmを超える圧力となるように加圧するのが好ましい。
【0080】
図4は、本発明の第1の実施形態における両面塗布後の集電体電極シート10と圧縮ローラ50の関係を示す断面図である。
圧縮ローラ50が塗布領域11を圧縮したとき、塗布領域11の終端13側の電極部分から金属箔9の流れる方向、すなわち巻取方向Dxの一定の長さxの範囲には、圧縮ローラ50が電極シート10に接触しないか、ごくわずか接触する領域が存在する。
【0081】
このように、本実施形態において製造される電極シート10は、各塗布領域11の終端13における尾引き部14のうち、圧縮ローラ50によって圧縮されない領域を含む。
【0082】
ここで、発明者は、鋭意研究の結果、閾値xは、下記の式(2)となることを見出した。
=(2rtmin-tmin 1/2-ymax-zmax-wmax ・・・式(2)
ここで、r、ymax、zmax、wmaxは、上述した式(1)と同じである。
minは、塗布工程(図22のS1)で活物質を含むスラリを塗布して連続的に形成した各塗布領域11の中央部のうち、加圧圧縮後の想定厚さtの最小値である。
【0083】
すなわち、尾引き部14の箔の流れる方向、すなわち巻取方向Dxの長さxが閾値x未満である場合は、圧縮工程(図22のS5)において圧縮ローラ50が電極シート10に接触しないので、尾引き部14に線圧はかからない。そのため、図5に断面図を示すように、活物質粒子70の金属箔に対する食い込みはほとんど発生しない。よって、尾引き部14部分の金属箔9の厚さは、活物質等のスラリの非塗布領域12の金属箔9の厚さとほぼ同等となる。
【0084】
一方、図6に断面図を示すように、尾引き部14の箔の流れる方向、すなわち巻取方向Dxの長さxが閾値x以上の場合には、圧縮工程(図22のS5)で圧縮ローラ50が電極シート10に接触する。こうした尾引き部14は、図1に示すように箔の流れる方向、すなわち巻取方向Dxと垂直な方向Dyに活物質層が断続的にしか存在していないため、箔の流れる方向、すなわち巻取方向Dxと垂直な方向Dyに活物質層が連続的に存在する活物質の塗布領域11よりも局所的に大きな線圧がかかる。このため、図6に断面図を示すように、尾引き部14では、活物質粒子が金属箔9に食い込んで金属箔9の残肉量がきわめて薄くなる。
【0085】
図7は、本発明の各実施形態に係る裁断装置60の概要を示す模式図である。
裁断装置60は、電極シート10を複数のシートに裁断する。裁断装置60は、第1の裁断刃61と、第2の裁断刃62と、2つのバックアップローラ63と、一対のガイドローラ64と、を備える。
【0086】
電極シート10を所定の大きさに切断して複数の電極を得ることができる。電極シート10から電極を切り出す方法は特に限定されないが、例えば、電極シート10の長手方向と平行に切断し(図1の巻取方向裁断予定線17に沿って切断)、所定幅の複数の電極を切り出す方法が挙げられる。さらに用途に応じて所定の寸法に打ち抜いて、電池用の電極を得ることができる。
ここで、電極シート10の切断方法は特に限定されず、例えば金属等からなる刃を用いて電極シート10を切断することができる。
【0087】
図8は、本発明の第1の実施形態に係る電極シート10のうち、裁断保護層15の塗布後に裁断保護層15が塗布された尾引き部14の部分を裁断した後の、裁断面80を上面から見た模式図である。図9は、本発明の第1の実施形態に係る電極シート10のうち、裁断保護層15の塗布後に裁断保護層15が塗布されていない尾引き部14の部分を裁断した後の、裁断面80を上面から見た模式図である。
【0088】
図3に示す圧縮装置40で加圧成型された電極シート10を、図1に示すように電極シート10の箔の流れる方向、すなわち巻取方向Dxに裁断予定線17に沿って、図7に示すように、電極シート10を電極シートローラ90を使って巻取りを行いながら、一方向に(図中、左方向に向かって)引出し、箔の上下両面に設置されたスリット刃61、62によって連続的に裁断する。
【0089】
このとき、尾引き部14のうち、その長さxが閾値x以上の箇所では、図6に示すように、加圧成型によって箔に活物質粒が食い込むことによって金属箔9の残肉厚さが薄くなっているが、当該尾引き部14に裁断保護層15が塗布されているので、裁断面80は十分厚くなっている。このため、裁断工程(図22のS6)において、刃の流れる方向Dxにのみ金属箔9が切断され、刃が当たった衝撃により横方向Dyに金属箔9が破断することはない。したがって、図8に示すように、裁断面80には活物質層のバリが発生しない形状となる。
【0090】
尾引き部14のうち、その長さxが閾値x未満の箇所では、図5に示すように活物質粒子の金属箔9に対する食い込みはほとんど発生していないので、十分な金属箔9の残肉厚さが確保されている。したがって、裁断工程(図22のS6)において、刃の流れる方向Dxにのみ金属箔9が切断され、刃が当たった衝撃により横方向Dyに金属箔9が破断することはなく、図9に示すように、裁断面80には活物質層のバリが発生しない形状となる。
【0091】
なお、以上説明した第1の実施形態では、活物質塗布領域11を塗布および乾燥した後に、引き続き裁断保護層15を塗布する方法について述べたが、裁断保護層15を塗布するタイミングは、活物質を含むスラリの塗布工程(図22のS1)を行った後から裁断工程(図22のS6)の直前の工程間であればどのタイミングであっても良い。例えば、裁断保護層吐出機30を塗布装置20ではなく、圧縮装置40や、裁断装置60のうち、箔の流れる方向、すなわち巻取方向Dxに対し裁断工程(図22のS6)の前に吐出が行える位置に設置しても良い。
【0092】
以上説明したように、本実施形態によれば、尾引き部14のうち、その長さxが閾値x以上の箇所では、圧縮工程における加圧成型が施されて箔に活物質粒が食い込むことによって金属箔9の残肉厚さが薄くなるが、当該尾引き部14に裁断保護層15が塗布されているので、裁断面80は十分厚くなっている。また、尾引き部14のうち、その長さxが閾値x未満の箇所では、活物質粒子の金属箔9に対する食い込みはほとんど発生せず、十分な金属箔9の残肉厚さが確保される。したがって、裁断工程(図22のS6)において、刃の流れる方向Dxにのみ金属箔9が切断され、横方向Dyに金属箔9が破断することはない。このように、本実施形態の電極シート10の製造方法によれば、尾引き部14の長さに依らず、裁断工程(図22のS6)において、切断バリの発生を抑制もしくは防止することができるという効果を奏する。
【0093】
さらに、本実施形態の電極シート10によれば、電極シート10から作製された電極を用いて製造される電池において、電極のバリによる電池の不良を未然に防ぐことができるという効果を奏する。
【0094】
(第2の実施の形態)
図10は、本発明の第2の実施形態における両面塗布後の集電体電極シート10を示す平面図である。
【0095】
尾引き部14の箔の流れる方向、すなわち巻取方向Dxの長さxがx以上の部分に、裁断保護層15ではなく、マーキング18が形成されている以外、図1に示す、本発明の第1の実施形態における両面塗布後の集電体電極シートと同様の構成となっている。
【0096】
なお、図10では、マーキング18を、スラリの塗布領域11の終端13に対し、箔の流れる方向、すなわち巻取方向Dxの後ろの非塗布領域12上に形成しているが、該スラリの塗布領域11の塗工始端13aに対し、箔の流れる方向Dxの前の非塗布領域12上に形成しても良い。
【0097】
図25は、本発明の第2の実施形態に係る電極シート10の製造方法の工程を示すフローチャートである。
本発明の第2の実施形態の電極シート10の製造方法は、図22の製造方法の裁断保護層形成工程(S4)に替えて、マーキング18を形成するマーキング工程(S11)を含むとともに、マーキング18を検出する第2の検出工程(S12)をさらに含む以外は、図22の製造方法と同様である。
【0098】
図11は、本発明の第2の実施形態に係る電極シート10のスラリ塗布装置20の概要を示す模式図である。
【0099】
尾引き部14に裁断保護層15を塗布できる裁断保護層吐出機30(図2)に替えて、尾引き部14の長さxがx以上の部分に、マーキング18を形成するマーキング装置31を備えた構成となっている以外、図2に示す本発明の第1の実施形態に係る電極シート10のスラリ塗布装置20と同様の構成となっている。
【0100】
ここで、マーキング18のサイズは、以後の裁断工程(図25のS6)の第2の検出工程(図25のS12)で検出できれば十分であるので、長さ10mm程度、幅2mm程度で形成されていれば十分であり、例えばインクジェットなどの方法で形成することができる。
【0101】
次に、第1の実施形態と同様に、電極シート10を図3に示す圧縮装置40を用いて加圧成型する。
【0102】
図12は、本発明の第2の実施形態における加圧成型後の集電体電極シート10のうち、塗布領域11の尾引き部14の長さxが閾値x以上の部分であり、マーキング18が形成された箇所の断面図である。図13は、電極シート10のうち、塗布領域11の尾引き部14の長さxが閾値x未満の部分であり、マーキング18が形成されていない箇所の断面図である。
【0103】
第1の実施形態と同様、マーキング18が形成された尾引き部14の長さxが閾値x以上の部分では、圧縮ローラ50が電極シート10を圧縮する際に、尾引き部14にも接触するため、局所的に大きな線圧がかかり、活物質粒子が金属箔9に食い込んで金属箔9の残肉量がきわめて薄くなる(図6)。一方、マーキング18のない尾引き部14の長さxが閾値x未満の部分では、活物質粒子の金属箔9に対する食い込みはほとんど発生せず、金属箔9の厚さも活物質等のスラリ非塗布領域12の金属箔9の厚さとほぼ同等となる(図5)。
【0104】
次に、第1の実施形態と同様に、裁断工程(図25のS6)において、電極シート10を図7に示す裁断装置60で箔の巻取方向Dxに沿って裁断する。
図14は、本発明の第2の実施形態に係る電極シート10のうち、塗布領域11の尾引き部14の長さxが閾値x以上の部分であり、前記のマーキング18が形成された箇所を裁断した後の裁断面を上面から見た模式図である。図15は、電極シート10のうち、塗布領域11の尾引き部14の長さxが閾値x未満の部分であり、前記マーキング18が形成されていない箇所の裁断面を上面から見た模式図である。
【0105】
マーキング18のない、尾引き部14の長さが閾値x未満の箇所では、図13に示すように十分な箔の残肉厚さが確保されており、裁断工程(図22のS6)において、刃の流れる方向Dxにのみ箔が切断され、刃が当たった衝撃により横方向Dyに箔が破断することはなく、図15に示すように、裁断面には活物質層のバリが発生しない形状となる。これに対し、マーキング18が施された、尾引き部14の長さが閾値x以上の箇所では、箔の残肉厚さがスラリ塗布領域11やスラリ非塗布領域12に比べ薄くなっており(図12)、裁断工程(図22のS6)において、図14に示すように、刃が当たった際の衝撃で、刃の流れる方向Dx以外に破断が生じてしまう。この破断の発生した箇所の尾引き部14から脱落したスラリ合材層がバリ19となる。
【0106】
さらに、本実施形態の電極シート10の製造方法は、マーキング18の位置を検出する第二の検出工程と、第二の検出工程は裁断工程(図25のS6)を経て作製した電極を用いて電気化学デバイスを作製する前に実施するものであって、第二の検出工程で検出したマーキング18を含む裁断後の電極を、電気化学デバイスの作製時の対象部材から除外する工程と、を含んでもよい。
【0107】
このような過程で発生したバリ19を含む電極を用いて、電池を組立てた場合、組立工程中や、電池完成後にバリが脱落し、対向する異電位の電極に短絡することになり、電池の不良率が高まる。しかし、本実施形態の電極シート10によれば、このようなバリ19の発生確率の高い箇所にあらかじめマーキング18が施されているため、電極を用いて電池に組み立てる前にマーキング18が施されている該電極を除外し、以降の工程に流さないようにすることが可能となる。このように、本実施形態の製造方法により製造された電極シート10から得られるバリのない電極片を製造できるので、本実施形態によれば、電極のバリによる電池の不良を未然に防ぐことができるという効果がある。
【0108】
なお、図示しないが、こうしたマーキング18を検知する検知機は、裁断工程(図25のS6)にて使用される裁断装置60に含めても良い。あるいは、検知機は、裁断工程を経た後に、箔の巻取方向Dxに裁断した電極シート10を、さらに間欠塗工された一組の活物質等のスラリ塗布領域11およびスラリ非塗布領域12ごとに、箔の巻取方向Dxと垂直な方向Dyに切断する工程において使用しても良い。
【0109】
(第3の実施の形態)
図16は、本発明の第3の実施形態における両面塗布後の集電体電極シート10を示す平面図である。尾引き部14の箔の流れる方向、すなわち巻取方向Dxの長さxが閾値x以上の部分に、裁断保護層15が形成されていないこと以外、図1に示す、本発明の第1の実施形態における両面塗布後の集電体電極シート10と同様の構成となっている。
【0110】
図17は、本発明の第3の実施形態に係る電極シート10のスラリ塗布装置20の概要を示す模式図である。
【0111】
尾引き部14に裁断保護層15を塗布できる裁断保護層吐出機30がないこと以外、図2に示す本発明の第1の実施形態に係る電極シートのスラリ塗布装置20と同様の構成となっている。
【0112】
終端検出器23の第1の演算部28(図23)が、電極シート10の各塗布領域11の尾引き部14の箔の流れる方向、すなわち巻取方向Dxの長さxを算出し、終端検出器23の第2の演算部29(図23)に信号を送信する。すべてのスラリ塗布領域11の尾引き部14の長さxが送信された後、第2の演算部29は結果を集計し、長さxの最大値xmaxを出力する。
【0113】
さらに、第2の演算部29または他の演算装置は、次工程の圧縮工程(図22のS5)で用いる圧縮ローラ50のロール径rの選択値として、下記の式(3)となるロール径rを出力する。
r≧tmin/2+(xmax+ymax+zmax+wmax/(2tmin) ・・・式(3)
ここで、他の演算装置とは、終端検出器23の第2の演算部29が出力した尾引き部14の長さの最大値xmaxの入力を受け付け、又は、最大値xmaxを受信して、演算処理を行うコンピュータである。
【0114】
式(3)において、tmin、ymax、zmax、wmaxは、上述した式(2)と同じであり、各値は、終端検出器23または他の演算装置に入力される。これらの各値の入力手段は、特に限定されないが、例えば、終端検出器23または他の演算装置を実現するコンピュータの操作部(キーボード、キーパッド、操作ボタン、タッチパネル等)をオペレータが操作することで入力した値を受け付けたり、コンピュータから通信路又は通信網を介して送信された値を受信したりしてもよい。
【0115】
また、上記の算出された最大値xmax又はロール径rの各値の出力手段は、特に限定されないが、オペレータに通知することができればよい。出力手段は、例えば、終端検出器23を実現するコンピュータのメモリに各値を記録したり、終端検出器23の表示器(不図示)に各値を表示したりしてもよい。また、メモリに記録された各値は、さらに他の記録媒体に記録または記憶装置や演算装置に対応する通信路又は通信網を介して送信されてもよい。
【0116】
次いで、圧縮工程(図25のS5)において、図3に示す圧縮装置40によって、電極シート10を加圧圧縮する。圧縮ローラ50のロール径rの値を前述した方法によって出力された値としている以外、本発明の第1の実施形態に係る電極シートの圧縮装置40と同様の構成となっている。
【0117】
図18は、本発明の第3の実施形態における両面塗布後の集電体電極シート10と圧縮ローラ50の関係を示す断面図である。
圧縮ローラ50のロール径rを適切に選択することによって、圧縮ローラ50が活物質の塗布領域11を圧縮したとき、塗布終端13側の電極部分から箔の流れる方向、すなわち巻取方向Dxに、圧縮ローラ50が電極シート10に接触しないか、ごくわずか接触する領域の長さは、上記のxmax以上となる。
【0118】
このため、尾引き部14に線圧がかからず、活物質粒子の金属箔9に対する食い込みはほとんど発生しない。図19に本発明の第3の実施形態における加圧成型後の集電体電極シート10の断面図を示すが、尾引き部14部分の金属箔9の厚さは、活物質等のスラリ非塗布領域12の金属箔9の厚さとほぼ同等となる。
【0119】
このように、本実施形態において製造される電極シート10は、各塗布領域11の終端13における尾引き部14のうち、圧縮ローラ50によって圧縮されない領域を含む。
【0120】
次に、実施形態1と同様に、裁断工程(図22のS6)において、電極シート10を図7に示す裁断装置60で箔の巻取方向Dxに沿って裁断する。
図20は、本発明の第3の実施形態に係る電極シート10を裁断した後の、裁断面80を上面から見た模式図である。
【0121】
本実施形態によれば、上記の式(3)によって算出された圧縮ローラ50のロール径rにより、適切なロール径の圧縮ローラ50を選択することができる。そして、圧縮工程(図22のS5)後の電極シート10において、尾引き部14の長さに依らず、図19に示すように十分な金属箔9の残肉厚さが確保されており、裁断工程(図22のS6)において、刃の流れる方向Dxにのみ箔が切断され、横方向Dyに箔が破断することはなく、図20に示すように、裁断面80には活物質層のバリが発生しない形状となる。
【0122】
(第4の実施の形態)
図27は、本発明の実施の形態に係る電池150の構成の一例を示す概略図である。
本実施形態に係る電池は、上記実施形態で説明した電極シート10から作製される電極を備える。以下、本実施形態に係る電池について、電池がリチウムイオン電池の積層型電池150である場合を代表例として説明する。
積層型電池150は、正極121と負極126とが、セパレータ120を介して交互に複数層積層された電池要素を備えており、これらの電池要素は電解液(図示せず)とともに可撓性フィルム140からなる容器に収納されている。電池要素には正極端子131および負極端子136が電気的に接続されており、正極端子131および負極端子136の一部または全部が可撓性フィルム140の外部に引き出されている構成になっている。
【0123】
正極121には正極集電体層123の表裏に、正極活物質の塗布部(正極活物質層122)と未塗布部がそれぞれ設けられており、負極126には負極集電体層128の表裏に、負極活物質の塗布部(負極活物質層127)と未塗布部が設けられている。
【0124】
正極集電体層123における正極活物質の未塗布部を正極端子131と接続するための正極タブ130とし、負極集電体層128における負極活物質の未塗布部を負極端子136と接続するための負極タブ125とする。
正極タブ130同士は正極端子131上にまとめられ、正極端子131とともに超音波溶接等で互いに接続され、負極タブ125同士は負極端子136上にまとめられ、負極端子136とともに超音波溶接等で互いに接続される。そのうえで、正極端子131の一端は可撓性フィルム140の外部に引き出され、負極端子136の一端も可撓性フィルム140の外部に引き出されている。
【0125】
正極活物質の塗布部(塗布領域11)(正極活物質層122)と未塗布部(非塗布領域12)の境界部124には、必要に応じて絶縁部材を形成することができ、当該絶縁部材は境界部124だけでなく、正極タブ130と正極活物質の双方の境界部付近に形成することができる。
【0126】
負極活物質の塗布部(負極活物質層127)と未塗布部の境界部129にも同様に、必要に応じて絶縁部材を形成することができ、負極タブ125と負極活物質の双方の境界部付近に形成することができる。
【0127】
通常、負極活物質層127の外形寸法は正極活物質層122の外形寸法よりも大きく、セパレータ120の外形寸法よりも小さい。
【0128】
(リチウム塩を含有する非水電解液)
本実施形態に用いるリチウム塩を含有する非水電解液は、電極活物質の種類やリチウムイオン電池の用途等に応じて公知のものの中から適宜選択することができる。
【0129】
具体的なリチウム塩の例としては、例えば、LiClO、LiBF、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiB10Cl10、LiAlCl、LiCl、LiBr、LiB(C、CFSOLi、CHSOLi、LiCSO、Li(CFSON、低級脂肪酸カルボン酸リチウム等を挙げることができる。
【0130】
リチウム塩を溶解する溶媒としては、電解質を溶解させる液体として通常用いられるものであれば特に限定されるものではなく、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC),ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等のラクトン類;トリメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン等のオキソラン類;アセトニトリル、ニトロメタン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド等の含窒素溶媒;ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等の有機酸エステル類;リン酸トリエステルやジグライム類;トリグライム類;スルホラン、メチルスルホラン等のスルホラン類;3-メチル-2-オキサゾリジノン等のオキサゾリジノン類;1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、ナフタスルトン等のスルトン類等が挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0131】
(容器)
本実施形態において容器には公知の部材を用いることができ、電池の軽量化の観点からは可撓性フィルム140を用いることが好ましい。可撓性フィルム140は、基材となる金属層の表裏面に樹脂層が設けられたものを用いることができる。金属層には電解液の漏出や外部からの水分の侵入を防止する等のバリア性を有するものを選択することができ、アルミニウム、ステンレス鋼等を用いることができる。金属層の少なくとも一方の面には変性ポリオレフィン等の熱融着性の樹脂層が設けられ、可撓性フィルム140の熱融着性の樹脂層同士を電池要素を介して対向させ、電池要素を収納する部分の周囲を熱融着することで外装体を形成する。熱融着性の樹脂層が形成された面と反対側の面となる外装体表面にはナイロンフィルム、ポリエステルフィルム等の樹脂層を設けることができる。
【0132】
(端子)
本実施形態において、正極端子131にはアルミニウムやアルミニウム合金で構成されたもの、負極端子136には銅や銅合金あるいはそれらにニッケルメッキを施したもの等を用いることができる。それぞれの端子は容器の外部に引き出されるが、それぞれの端子における外装体の周囲を熱溶着する部分に位置する箇所には熱融着性の樹脂をあらかじめ設けることができる。
【0133】
(絶縁部材)
活物質の塗布部と未塗布部の境界部124、129に絶縁部材を形成する場合には、ポリイミド、ガラス繊維、ポリエステル、ポリプロピレンあるいはこれらを構成中に含むものを用いることができる。これらの部材に熱を加えて境界部124、129に溶着させるか、または、ゲル状の樹脂を境界部124、129に塗布、乾燥させることで絶縁部材を形成することができる。
【0134】
(セパレータ)
本実施形態に係るセパレータ120は、耐熱性樹脂を主成分として含む樹脂層を備えることが好ましい。
ここで、上記樹脂層は主成分である耐熱性樹脂により形成されている。ここで、「主成分」とは、樹脂層中における割合が50質量%以上であることをいい、好ましくは70質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよいことを意味する。
本実施形態に係るセパレータ120を構成する樹脂層は、単層であっても、二種以上の層であってもよい。
【0135】
上記樹脂層を形成する耐熱性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ-m-フェニレンテレフタレート、ポリ-p-フェニレンイソフタレート、ポリカーボネート、ポリエステルカーボネート、脂肪族ポリアミド、全芳香族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、全芳香族ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、フッ素系樹脂、ポリエーテルニトリル、変性ポリフェニレンエーテル等から選択される一種または二種以上を挙げることができる。
【0136】
これらの中でも、耐熱性や機械的強度、伸縮性、価格等のバランスに優れる観点から、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、脂肪族ポリアミド、全芳香族ポリアミド、半芳香族ポリアミドおよび全芳香族ポリエステルから選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリアミド、全芳香族ポリアミドおよび半芳香族ポリアミドから選択される一種または二種以上がより好ましく、ポリエチレンテレフタレートおよび全芳香族ポリアミドから選択される一種または二種以上がさらに好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0137】
本実施形態に係るセパレータ120を構成する樹脂層は多孔性樹脂層であることが好ましい。これにより、リチウムイオン電池に異常電流が発生し、電池の温度が上昇した場合等に多孔性樹脂層の微細孔が閉塞して電流の流れを遮断することができ、電池の熱暴走を回避することができる。
【0138】
上記多孔性樹脂層の空孔率は、機械的強度およびリチウムイオン伝導性のバランスの観点から、20%以上80%以下が好ましく、30%以上70%以下がより好ましく、40%以上60%以下が特に好ましい。
空孔率は、下記式(4)から求めることができる。
ε={1-Ws/(ds・t)}×100 ・・・式(4)
ここで、ε:空孔率(%)、Ws:目付(g/m)、ds:真密度(g/cm)、t:膜厚(μm)である。
【0139】
本実施形態に係るセパレータ120の平面形状は、特に限定されず、電極や集電体の形状に合わせて適宜選択することが可能であり、例えば、矩形とすることができる。
【0140】
本実施形態に係るセパレータ120の厚みは、機械的強度およびリチウムイオン伝導性のバランスの観点から、好ましくは5μm以上50μm以下である。
【0141】
以上、説明したように、本実施形態によれば、上記実施形態の製造方法により作製された電極シート10を用いて電池を製造することができる。
本発明の電極の製造方法によれば、金属箔等の厚さの薄い集電体上に活物質層を形成し、乾燥後に圧縮、裁断する工程(図22のS5、S6)を経て電極を作製する場合に生じる集電体のバリの発生を抑制、もしくはバリの発生した電極シートの使用を未然に防止した電池等の電気化学デバイスの組み立てを実施することができ、特性が良好な電池等の電気化学デバイスを提供することが可能となる。
【0142】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0143】
以下、具体的な実施例について、さらに詳しく説明する。
【0144】
(実施例1)
正極活物質として、粒度分布測定値から求めた50%累積径(D50)が8μm、同じく90%累積径(D90)が12μmである、Li(Ni0.6Co0.2Mn0.2)Oを質量94.8%、導電補助材として黒鉛材料を質量2.5%、バインダとしてポリフッ化ビニリデンを質量2.7%とを混合したものに、N-メチルピロリドンを加えてさらに混合して正極スラリを作製した。
【0145】
前記スラリを、ダイヘッドから吐出することで、バックアップローラ上を移動する厚さ12μmの帯状アルミ箔集電箔面上に、塗布領域11と非塗布領域12が箔の巻取方向Dxに交互に形成されるように間欠的に塗布した。次いで、箔の流れ方向に沿って、ダイヘッドに引き続き設置されたレーザ式検出器を用いて、各塗布領域11の終端13の形状を検出し、裁断予定領域の尾引き部14が2.6mm以上である尾引き部14を検出し、引き続き設置された樹脂吐出機を用いて、第1の検出工程(図22のS2)で検出された尾引き部14には、尾引き部14を覆うように幅3mm、長さ8mmの紫外線硬化型樹脂を塗布し、さらに紫外線照射機を用いて塗布した樹脂層を固化して裁断保護層15を形成した。
【0146】
さらに、引き続き設置された乾燥炉によって、アルミ箔に塗布された前記活物質等含むスラリを、乾燥固化させた。さらに、塗布工程(図22のS1)でスラリを塗布させた裏面に対して、表面に塗布された塗布領域の始端を検出し、裏面の塗布領域の始端のずれが1mm以下になるよう制御しつつ、同様の方法でスラリ塗布、尾引き部分の検出、紫外線樹脂の塗布、硬化、スラリの乾燥固化を行い、アルミ箔両面にスラリの塗布された電極シートを得た。なお、前記のスラリ塗布工程(図22のS1)においては同一アルミ箔ロール内で塗布領域11の長さのずれ量が2mm以下に、塗工膜の厚さが塗工域中央と同じ厚さになるまでの距離が1.8mmとなるように、スラリの吐出圧力、バックアップローラの速度等パラメータを調整した。また、紫外線硬化型樹脂の硬化後の裁断保護層15の厚さは約3μmとなるように吐出量を調整した。
【0147】
次に、上下2個で1対を成したロール半径が250mmである圧縮ローラを備える加圧圧縮装置を用いて、前記で間欠的にスラリが塗布された電極シート10を、前記ギャップ幅前記圧縮ローラの間を通り、巻取張力が230Nになるよう設置し、バックアップローラ上を回転速度60m/分で移動させることで加圧圧縮を行った。このとき、圧縮圧は活物質スラリの塗工域上の線圧が1.8t/cmになるように調整しており、上下圧縮ローラのギャップは平均0.4mm、ローラ圧縮圧は平均19MPaとなった。得られた電極シートの一部を抽出し、片面活物質層の最小厚さは62.6μmとなった。
【0148】
引き続き、上部にシャー刃、下部にギャング刃を備えた裁断装置を用いて、前記で加圧圧縮された電極シート10を、前記刃の間を通し、巻取張力が一定になるよう設置し、バックアップローラ上を一定速度で移動させることで裁断を行った。得られた裁断シートの一部を抽出し、裁断工程(図22のS6)後の尾引き部14からのバリの有無を確認した。
【0149】
(比較例1)
前記実施例1で、紫外線硬化樹脂を吐出しない状態で、同様に電極シート10を作製し、裁断後のバリの有無を確認した。
【0150】
実施例1、および比較例1について、尾引き部14の長さごとに、10検体の観察を行った結果を表1に示した。
【表1】
10検体観察し、バリ発生が3検体以下の場合を発生量小、4検体以上の場合を発生量大とした。
【0151】
実施例1の製造方法で作製した電極シート10では、バリの発生が観察されなかったのに対し、比較例1の製造方法で作製した電極シート10では、バリの発生が観察された。
【0152】
(実施例2)
実施例1の製造方法において、スラリ塗布機のうち、尾引き部14の検出器は動作させながら、紫外線硬化樹脂を吐出しない状態で、同様に電極シート10を作製した。同一アルミ箔ロール内で、検出された最大の尾引き部14の長さは2mmとなった。
【0153】
そして、尾引き部14の長さの最大値に基づいて、上記式(2)を用いて、適切な加圧圧縮装置の圧縮ロール半径rが369mmであることを算出した。実施例1の加圧圧縮装置に替えて、ロール半径rが375mmである圧縮ローラを備える加圧圧縮装置を用いて、上記の電極シート10の加圧圧縮を行った。引き続き、実施例1と同じ裁断装置を用いて、電極シート10の裁断を行い、尾引き部14の長さごとに、10検体観察し、バリの有無を確認した。実施例2、および比較例1について、尾引き部14の長さごとに、10検体の観察を行った結果を表2に示した。
【表2】
【0154】
実施例2の製造方法で作製した電極シート10では、バリの発生が観察されなかったのに対し、比較例1の製造方法で作製した電極シート10では、バリの発生が観察された。
【0155】
(比較例2)
比較例1に対し、加圧圧縮後の片面活物質層の最小厚さが84.8μmになるようにしたこと以外、比較例1と同様の方法で電極シートを作製し、バリの有無を確認した。
【0156】
(比較例3)
比較例1に対し、用いるアルミ箔の厚さを15μmにしたこと以外、比較例1と同様の方法で電極シート10を作製し、バリの有無を確認した。
【0157】
比較例1乃至3について、尾引き部14の長さごとに、10検体の観察を行った結果を表3に示した。
【表3】
【0158】
比較例2の製造方法で作製した電極シート10ではバリの発生が観察されず、比較例3の製造方法で作製した電極シート10では比較例1の製造方法で作製した電極シート10に比べバリの発生が少なかった。
【0159】
(比較例4)
粒度分布測定値から求めた90%累積径(D90)が10μmである活物質を使用したこと以外、実施例1と同様の方法で電極シート10を作製し、バリの有無を確認した。なお、実施例1では、D90=12μm、金属箔9の厚さd=12μmであり、D90≧dの関係を満たしている。
比較例4では、D90(10μm)<d(12μm)であり、D90≧dの関係を満たさないが、この場合、金属箔9への活物質粒子の食い込み量が少ないため、上記課題を生じず、バリの発生は確認されなかった。(表1)
【0160】
(比較例5)
圧縮工程における塗布領域11の中央部にかかる荷重が1.4t/cmであること以外、実施例1と同様の方法で電極シート10を作製し、バリの有無を確認した。なお、実施例1では、線圧が1.8t/cmであり、線圧が1.5t/cmを超えている。
比較例5では、線圧が1.5t/cm未満であるが、この場合も、金属箔9への活物質粒子の食い込み量が少ないため、上記課題を生じず、バリの発生は確認されなかった。(表1)
【0161】
以上、実施形態および実施例を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0162】
上記の実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下に限られない。
1. シート状の金属箔の両面に活物質が塗布された集電体電極シートであって、
前記金属箔の両面に、前記活物質を含むスラリを間欠的に塗布、乾燥して形成される、前記スラリの塗布領域と、非塗布領域と、を含み、
前記塗布領域と前記非塗布領域は、帯状の前記金属箔の巻取方向に交互に形成され、
前記集電体電極シートの厚さ方向へ、一対の圧縮ローラを用いて、前記スラリの塗布領域と前記非塗布領域とを連続して圧縮する圧縮工程において、各前記塗布領域の終端における尾引き部のうち、前記圧縮ローラによって圧縮されない領域を含む、集電体電極シート。
2. シート状の金属箔の両面に活物質が塗布された集電体電極シートの製造方法において、
前記活物質を含むスラリを、帯状の前記金属箔上に間欠的に塗布、乾燥して、活物質層が連続して存在する前記スラリの塗布領域と、前記スラリの非塗布領域とを、前記帯状の前記金属箔の巻取方向に交互に形成する塗布工程と、
前記塗布工程で形成した各前記塗布領域の終端における尾引き部の長さを検出する第一の検出工程と、
前記活物質層が形成された前記金属箔を、その厚さ方向へ、一対の圧縮ローラを用いて、前記スラリの前記塗布領域と前記非塗布領域とを連続して圧縮する圧縮工程と、
前記第一の検出工程と前記圧縮工程とを経て前記活物質層が形成された前記金属箔を、該金属箔の巻取方向と平行に前記スラリの前記塗布領域と前記非塗布領域とを連続して裁断する裁断工程と、を含み、
前記第一の検出工程は、
下記式(A)を満たす前記スラリの前記塗布領域の終端から前記非塗布領域に連続して形成される尾引き部を検出する、集電体電極シートの製造方法。
x≧(2rtmin-tmin 1/2-ymax-zmax-wmax ・・・式(A)
ここで、xは、前記塗布工程で各前記塗布領域の終端における前記尾引き部の長さの最大値であり、rは、前記圧縮工程に用いる圧縮ローラのロール径であり、tminは、前記塗布工程で連続的に形成した各前記塗布領域の中央部のうち、加圧圧縮後の想定厚さの最小値であり、ymaxは、前記金属箔の各面の塗布開始位置の前記金属箔の巻取方向のずれ量の最大値であり、zmaxは、前記金属箔の両面の前記活物質の前記金属箔の巻取方向の塗布長のずれ量の最大値であり、および、wmaxは、前記金属箔の両面の前記活物質の塗工終端から、塗工膜の厚さが塗工域中央と同じ厚さになるまでの距離の最大値である。
3. 2.に記載の集電体電極シートの製造方法において、
前記検出工程において、前記尾引き部を検出する位置が、前記裁断工程で裁断処理を行う位置およびその周辺部である、集電体電極シートの製造方法。
4. 2.又は3.に記載の集電体電極シートの製造方法において、
前記検出工程は、前記塗布工程と前記裁断工程の間に行う工程であって、前記検出工程で検出された該尾引き部に対し、保護層を形成する工程を有する、集電体電極シートの製造方法。
5. 2.又は3.に記載の集電体電極シートの製造方法において、
前記検出工程と連続して、前記検出工程で検出された該尾引き部を含む前記塗布領域にマーキング処理を実施する工程を含む、集電体電極シートの製造方法。
6. 5.に記載の集電体電極シートの製造方法において、
前記裁断工程を経て作製した電極を用いて電気化学デバイスを作製する前に、前記マーキング位置を検出する第二の検出工程と、
前記第二の検出工程で検出したマーキングを含む前記裁断工程後の前記電極を、前記電気化学デバイスの作製時の対象部材から除外する工程とを含む、集電体電極シートの製造方法。
7. シート状の金属箔の両面に活物質が塗布された集電体電極シートの製造方法において、
前記活物質を含むスラリを、帯状の前記金属箔上に間欠的に塗布、乾燥して、活物質層が連続して存在する前記スラリの塗布領域と、前記スラリの非塗布領域とを、前記帯状の前記金属箔の巻取方向に交互にを形成する塗布工程と、
前記塗布工程で形成した各前記塗布領域の終端における尾引き部の長さを検出する検出工程と、
前記塗布工程と前記検出工程とを経て前記活物質層が形成された前記金属箔を、その厚さ方向へ、一対の圧縮ローラを用いて、前記スラリの前記塗布領域と前記非塗布領域とを連続して圧縮する圧縮工程と、
前記検出工程と前記圧縮工程とを経て前記活物質層が形成された前記金属箔を、該金属箔の巻取方向と平行に前記スラリの前記塗布領域と前記非塗布領域とを連続して裁断する裁断工程と、を含み、
前記圧縮工程は、
下記式(B)を満たすロール半径rを持つ圧縮ローラを用いて、圧縮する、集電体電極シートの製造方法。
r≧tmin/2+(xmax+ymax+zmax+wmax/(2tmin) ・・・式(B)
ここで、tminは、前記塗布工程で連続的に形成した各前記塗布領域の中央部のうち、加圧圧縮後の想定厚さの最小値であり、xmaxは、前記検出工程で検出した、前記塗布工程で連続的に形成した各前記塗布領域の終端における前記尾引き部の長さの最大値であり、ymaxは、前記金属箔の両面の前記活物質の塗布開始位置のずれ量の最大値であり、zmaxは、前記金属箔の両面の活物質の前記金属箔の巻取方向の塗布長のずれ量の最大値であり、およびwmaxは、前記金属箔の両面の前記活物質の塗工終端から、塗工膜の厚さが塗工域中央と同じ厚さになるまでの距離の最大値である。
8. 2.乃至7.のいずれか1つに記載の集電体電極シートの製造方法において、
活物質としてリチウム金属複合酸化物を用いた電極シートを作製する、集電体電極シートの製造方法。
9. 2.乃至8.のいずれか1つに記載の集電体電極シートの製造方法において、
前記金属箔の厚さをdとし、
粒度分布計を用いて測定した際に、測定した活物質粒子のうち、最小の粒径から粒子を順に並べたときに、測定した前記粒子の90%に当たる前記粒子の前記粒径をD90としたとき、D90≧dの関係を満たす前記金属箔と前記活物質を用いた前記電極シートを作製する、集電体電極シートの製造方法。
10. 2.乃至9.のいずれか1つに記載の集電体電極シートの製造方法において、
前記圧縮工程において、前記活物質層が形成された前記金属箔のうち、前記塗布領域の中央部にかかる荷重が1.5ton/cmを超える、集電体電極シートの製造方法。
11. 2.乃至10.のいずれか1つに記載の集電体電極シートの製造方法を用いて製造された集電体電極シート。
12. 1.又は11.に記載の集電体電極シートを用いて製造された電池。
【0163】
この出願は、2017年10月19日に出願された日本出願特願2017-202718号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
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