(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】顕微鏡における高精度波長抽出用の位相板
(51)【国際特許分類】
G02B 21/00 20060101AFI20220921BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
G02B21/00
G01N21/64 E
(21)【出願番号】P 2019554390
(86)(22)【出願日】2018-04-04
(86)【国際出願番号】 US2018026010
(87)【国際公開番号】W WO2018187419
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-04-01
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504260058
【氏名又は名称】ザ ユニバーシティ オブ ユタ リサーチ ファウンデイション
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】マーティノー, ジェーソン
(72)【発明者】
【氏名】ガートン, ジョーダン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーゼンセン, エリック
(72)【発明者】
【氏名】アレン, ティム
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-167198(JP,A)
【文献】特表2013-539074(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0315709(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00 - 21/36
G02B 7/00
G02B 7/18 - 7/24
G01N 21/62 - 21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡システム用の位相板であって、
下面、基板本体、及び上面を通
して点光源からの
光を通過させる平面基板を備え、
前記上面が、少なくとも第1の層領域及び第2の層領域を含む分割領域アレイとして形成された点像分布関数工学プロファイルを含み、
前記第1及び第2の層領域がそれぞれ
異なる厚さを有することによって、前記光
の点像分布関数
が前記位相板により変換
されて、前記光の波長に対する依存性を有する波長依存幾何学的パターン
が形成
されるようにした、位相板。
【請求項2】
前記平面基板が、SiO
2、ガラス、石英、雲母、及びAl
2O
3のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の位相板。
【請求項3】
前記上面が、約3nm未満の表面粗さ(Ra)を有する、請求項1に記載の位相板。
【請求項4】
前記分割領域アレイが、正方形の規則的なモザイクを形成する、請求項1に記載の位相板。
【請求項5】
前記規則的なモザイクが、2×2グリッド、3×3グリッド、又は4×4グリッドである、請求項4に記載の位相板。
【請求項6】
前記点像分布関数工学プロファイルが反射対称性を有する、請求項1に記載の位相板。
【請求項7】
前記点像分布関数工学プロファイルが、前記上面の中心軸を中心とした放射対称性を有する、請求項1に記載の位相板。
【請求項8】
前記波長依存幾何学的パターンが、前記点光源の空間位置を維持する空間的に中心合わせされた形状を含む、請求項1に記載の位相板。
【請求項9】
前記点像分布関数工学プロファイルが、少なくとも3つの異なる層高さを有する少なくとも3つの層領域を含む、請求項1に記載の位相板。
【請求項10】
方法であって、
試料の観察領域を照射して、少なくとも1つ
の波長の放射光を生成すること
を含み、
前記放射光を位相板に通過させることによって、前記観察領域内の点エミッタの第1の画像を捕捉すること
を含み、前記位相板が、上面、基板本体、及び下面を有する透明基板を含み、前記上面が、少なくとも第1の層領域及び第2の層領域を含む領域のモザイクから形成された点像分布関数工学プロファイルを含み、前記第1及び第2の層領域のそれぞれが
異なる厚さを有することによって、前
記光の点像分布関数
が前記位相板により変換されて、前記光の波長に対する依存性を有する波長依存幾何学的パターン
が形成
されるようにしてあり、
前記第1の画像の分析に応答して、前記点エミッタの前記波長依存幾何学的パターンに基づいて、前記点エミッタに対応する色を決定するこ
とを含む、方法。
【請求項11】
前記第1の画像の分析に応答して、前記点エミッタの前記波長依存幾何学的パターンに基づいて、前記観察領域内の前記点エミッタの位置を判定することを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1及び第2の層領域が、規則的な正方形のモザイクを形成する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記点像分布関数工学プロファイルが、前記上面の中心軸を中心とした半径対称性を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記点像分布関数工学プロファイルが、反射対称性を有し、前記放射光の空間位置を維持する空間的に中心合わせされた形状である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
後の時点で前記点エミッタの第2の画像を捕捉することと、前記点エミッタの運動を判定することと、を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
蛍光顕微鏡撮像デバイスであって、
少なくとも1つの波長の光で試料の観察領域を照射するように配置された任意の照明源と、
前記試料からの光を捕捉して画像を形成するように配置された撮像センサと、
前記試料からの光を前記撮像センサに方向付けるように配置された撮像光学素子と、
前記撮像光学素子のフーリエ平面に配置された請求項1に記載の位相板と、
を備える、蛍光顕微鏡撮像デバイス。
【請求項17】
前記画像内の異なる色の形態を検出するように適合された検出器を更に備える、請求項16に記載の蛍光顕微鏡撮像デバイス。
【請求項18】
前記画像を表示するように適合された表示デバイスを更に備え、前記画像が、前記試料内の点エミッタを表す波長依存幾何学的パターンを含む、請求項16に記載の蛍光顕微鏡撮像デバイス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2017年4月4日に出願された米国仮出願第62/481,505号の利益を主張するものであり、あらゆる目的のために参照によりその内容を組み込む。
政府の利権
【0002】
本発明は、全米科学財団によって授与された認可番号1309041の政府支援を用いてなされた。政府は、本発明において、特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
確率的光学再構築顕微鏡(STORM)や撮像光活性化局在性顕微鏡法(PALM)などの局在顕微鏡法(LM)技術は、ナノメートル長の尺度で細胞を研究するための重要なツールとなっている。更に、高速sCMOSカメラは、LMを利用して非常に小さな時間尺度で有用なデータを取得している。しかしながら、蛍光タグの発光スペクトルの広範さにより、LMを使用して3つ以上の異なるタンパク質の運動を観察することは困難なことがある。よく点滅する蛍光染料は、赤又は遠赤(λ>600nm)で放射される傾向にある。スペクトルの赤色端での3つ以上の染料の場合、クロストークレベルは許容できないほど高くなる可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本技術によれば、顕微鏡撮像システム用の位相板は、点像分布関数(PSF)工学を含み、顕微鏡のフーリエ平面内に配置されたときに波長依存PSFを誘発することができる。顕微鏡システム用の位相板は、平面基板を含み、ある波長の光を基板の下面、基板本体、及び上面に通すことができる。上面は、少なくとも第1の層領域及び第2の層領域を含む分割領域アレイとして形成された点像分布関数工学プロファイルを含むことができる。第1及び第2の層領域はそれぞれ、光の波長の点像分布関数を変換して波長依存幾何学的パターンを形成する異なる厚さを有する。
【0005】
したがって、以降の詳細な説明が一層理解され得るように、かつ、当技術分野へのこの貢献が一層評価され得るように、本発明のより重要な特徴を幾分大まかに略述した。本発明のその他の特徴は、添付の図面及び特許請求の範囲と併せて以下の本発明の詳細な説明により明確となるか、又は本発明の実施により教示され得る。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1A】本発明の一態様による位相板を含む蛍光顕微鏡撮像デバイスの概略図である。
【
図1B】本発明の一態様による位相板を含む撮像デバイスの図である。
【
図2A】本発明の一態様による高精度波長抽出用の位相板の平面図及び斜視図である。
【
図2B】本発明の一態様による高精度波長抽出用の位相板の平面図及び斜視図である。
【
図3A】本発明の一態様による高精度波長抽出用の位相板の、2つの異なる層に4つの領域を有する点像分布関数(PSF)工学プロファイルの図である。
【
図3B】本発明の一態様による、2つの異なる層に4つの領域を有する、
図3AのPSF工学プロファイルの高さマップ図である。
【
図3C】本発明の一態様による、2つの異なる層に4つの領域を有する、
図3AのPSF工学プロファイルの斜視図である。
【
図3D】2つの異なる層に4つの領域を有する、
図3AのPSF工学プロファイルの波長依存幾何学的パターンの図である。
【
図3E】2つの異なる層に4つの領域を有する
図3AのPSF工学プロファイルを使用して、光信号からx、y、z、及びλを抽出することに関連する理論的に最小の統計的不確定性を示すグラフである。
【
図4A】本発明の一態様による高精度波長抽出用の位相板の、2つの異なる層に4つの領域を有する基板上のPSF工学プロファイルの図である。
【
図4B】本発明の一態様による、2つの異なる層に4つの領域を有する、
図4AのPSF工学プロファイルの高さマップ図である。
【
図4C】2つの異なる層に4つの領域を有する、
図4AのPSF工学プロファイルの斜視図である。
【
図4D】2つの異なる層に4つの領域を有する、
図4AのPSF工学プロファイルの波長依存幾何学的パターンの図である。
【
図4E】2つの異なる層に4つの領域を有する
図4AのPSF工学プロファイルを使用して、光信号からx、y、z、及びλを抽出することに関連する理論的に最小の統計的不確定性を示すグラフである。
【
図5A】本発明の一態様による高精度波長抽出用の位相板の、4つの異なる層に4つの領域を有する基板上のPSF工学プロファイルの図である。
【
図5B】本発明の一態様による、4つの異なる層に4つの領域を有する
図5AのPSF工学プロファイルの高さマップ図である。
【
図5C】4つの異なる層に4つの領域を有する、
図5AのPSF工学プロファイルの斜視図である。
【
図5D】4つの異なる層に4つの領域を有する、
図5AのPSF工学プロファイルの波長依存幾何学的パターンの図である。
【
図5E】4つの異なる層に4つの領域を有する
図5AのPSF工学プロファイルを使用して、光信号からx、y、z、及びλを抽出することに関連する理論的に最小の統計的不確定性を示すグラフである。
【
図6A】本発明の一態様による高精度波長抽出用の位相板の、4つの異なる層に4つの領域を有する基板上のPSF工学プロファイルの図である。
【
図6B】本発明の一態様による、4つの異なる層に4つの領域を有する、
図6AのPSF工学プロファイルの高さマップ図である。
【
図6C】4つの異なる層に4つの領域を有する、
図6AのPSF工学プロファイルの斜視図である。
【
図6D】4つの異なる層に4つの領域を有する、
図6AのPSF工学プロファイルの波長依存幾何学的パターンの図である。
【
図6E】4つの異なる層に4つの領域を有する
図6AのPSF工学プロファイルを使用して、光信号からx、y、z、及びλを抽出することに関連する理論的に最小の統計的不確定性を示すグラフである。
【
図7A】本発明の一態様による高精度波長抽出用の位相板の、2つの異なる層に9つの領域を有する基板上のPSF工学プロファイルの図である。
【
図7B】本発明の一態様による、2つの異なる層に9つの領域を有する、
図7AのPSF工学プロファイルの高さマップ図である。
【
図7C】2つの異なる層に9つの領域を有する、
図7AのPSF工学プロファイルの斜視図である。
【
図7D】2つの異なる層に9つの領域を有する、
図7AのPSF工学プロファイルの波長依存幾何学的パターンの図である。
【
図7E】2つの異なる層に9つの領域を有する
図7AのPSF工学プロファイルを使用して、光信号からx、y、z、及びλを抽出することに関連する理論的に最小の統計的不確定性を示すグラフである。
【
図8A】本発明の一態様による高精度波長抽出用の位相板の、3つの異なる層に9つの領域を有する基板上のPSF工学プロファイルの図である。
【
図8B】本発明の一態様による、3つの異なる層に9つの領域を有する、
図8AのPSF工学プロファイルの高さマップ図である。
【
図8C】3つの異なる層に9つの領域を有する、
図8AのPSF工学プロファイルの斜視図である。
【
図8D】3つの異なる層に9つの領域を有する、
図8AのPSF工学プロファイルの波長依存幾何学的パターンの図である。
【
図8E】3つの異なる層に9つの領域を有する
図8AのPSF工学プロファイルを使用して、光信号からx、y、z、及びλを抽出することに関連する理論的に最小の統計的不確定性を示すグラフである。
【
図9A】本発明の更に別の態様による高精度波長抽出用の位相板の、3つの異なる層に9つの領域を有する基板上のPSF工学プロファイルの図である。
【
図9B】本発明の一態様による、3つの異なる層に9つの領域を有する、
図9AのPSF工学プロファイルの高さマップ図である。
【
図9C】3つの異なる層に9つの領域を有する、
図9AのPSF工学プロファイルの斜視図である。
【
図9D】3つの異なる層に9つの領域を有する、
図9AのPSF工学プロファイルの波長依存幾何学的パターンの図である。
【
図9E】3つの異なる層に9つの領域を有する
図9AのPSF工学プロファイルを使用して、光信号からx、y、z、及びλを抽出することに関連する理論的に最小の統計的不確定性を示すグラフである。
【
図10A】本発明の一態様による高精度波長抽出用の位相板の、3つの異なる層に9つの領域を有する基板上のPSF工学プロファイルの図である。
【
図10B】本発明の一態様による、3つの異なる層に9つの領域を有する、
図10AのPSF工学プロファイルの高さマップ図である。
【
図10C】3つの異なる層に9つの領域を有する、
図10AのPSF工学プロファイルの斜視図である。
【
図10D】3つの異なる層に9つの領域を有する、
図10AのPSF工学プロファイルの波長依存幾何学的パターンの図である。
【
図10E】3つの異なる層に9つの領域を有する
図10AのPSF工学プロファイルを使用して、光信号からx、y、z、及びλを抽出することに関連する理論的に最小の統計的不確定性を示すグラフである。
【
図11】本発明の一態様による高精度波長抽出方法のフローチャートである。
【
図12】本発明の一態様による高精度波長抽出を示すユーザインタフェースを示す図である。
【
図13A】本発明の一実施例による、高精度波長抽出を使用した空間及び波長位置を示す画像である。
【
図13B】本発明の一実施例による、高精度波長抽出を使用した空間及び波長位置を示す画像である。
【
図13C】本発明の一実施例による、高精度波長抽出を使用した空間及び波長位置を示す画像である。
【
図14】本発明の一態様による、高精度波長抽出を使用した空間及び波長位置特定の適用を示す図である。
【
図15】本発明の一態様による高精度波長抽出のための方法又は動作を実行することができるコンピューティングデバイスの図である。
【0007】
これらの図面は本発明の種々の態様を示すために提供され、特許請求の範囲により別段に制限されない限り、寸法、材料、構成、配置、又は比率の観点から、範囲を制限することを意図するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0008】
これらの例示的な実施形態は、当業者による本発明の実施を可能にするよう十分詳細に記載されてはいるが、その他の実施形態も実現され得ること、並びに本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく本発明に対する種々の変更をなし得る、と理解すべきである。したがって、本発明の実施形態についての以下のより詳細な記載は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定することを意図するものではないが、限定ではなく例示のみを目的として、本発明の特徴及び特性を記載し、本発明の操作の最良の形態を説明し、かつ当業者による本発明の実施を十分に可能にするために、提示される。したがって、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲のみによって規定されるものとする。
【0009】
定義
本発明を説明し、特許請求する際に、以下の用語を使用する。
【0010】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、その内容について別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば「領域」への言及は、1つ以上のこのような特徴への言及を含み、また「指示」への言及は、1つ以上のこのような工程を指す。
【0011】
本明細書で使用するとき、用語「約」は、所与の用語、メトリック、又は値に関連する融通性及び不正確性を提供するために使用される。特定の変数に対する許容差は、文脈に基づいて、当業者によって容易に判定することができる。しかしながら、特に明記しない限り、用語「約」は、一般に5%未満、大抵の場合1%未満、及び場合によっては0.01%未満の許容差を意味する。
【0012】
特定の性質又は状況に関して本発明で使用する場合、「実質的に」とは、ばらつきが、特定の性質又は状況から測定され得る程に外れるようなものではなく、十分わずかなものであることを意味する。許容され得るばらつきの正確な程度は、場合によっては具体的な文脈に依存し得る。
【0013】
本明細書で使用する場合、「隣接する」とは、2つの構造又は要素の近接性を意味する。特に、「隣接」していると特定される要素は、当接していても又は接続していてもよい。また、上記の要素は、互いに直接接触することも考えられる。
【0014】
本発明で使用する場合、複数の項目、構造要素、構成要素、及び/又は材料は、便宜上、共通の一覧で示されてよい。しかしながら、これらの一覧は、あたかも一覧の各要素が、別個の独自の要素として個々に認識されるように解釈されるべきである。したがって、このような一覧の個々の要素は、別途記載のない限り、共通の群の中でのこれらの提示のみに基づき、同じ一覧の任意のその他の要素の事実上の均等物として、解釈されるべきでない。
【0015】
本明細書で使用する場合、「のうちの少なくとも1つ」という用語は、「1つ以上の」と同義語であることが意図される。例えば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」は明示的に、Aのみ、Bのみ、Cのみ、及びそれぞれの組み合わせを含む。
【0016】
濃度、量、及びその他の数値データは、本明細書において範囲の形式で提示されてよい。このような範囲の形式は、単に便宜上及び簡潔性のために用いられると理解すべきであり、かつ、範囲の限定として明示的に列挙される数値を含むだけでなく、あたかも各数値及び部分範囲が明示的に列挙されているかのように、その範囲内に包含されている個々の数値又は部分範囲全ても含むと、柔軟に解釈するべきである。例えば、約1~約4.5の数的範囲は、1~約4.5の明示的に列挙された限界だけでなく、2、3、4等の個々の数字、及び1~3、2~4等の副範囲も含む、と解釈するべきである。同じ原理は、「約4.5未満」等の1つの数的値のみを列挙する範囲に適用され、これは、上で列挙される値及び範囲の全てを含む、と解釈するべきである。更に、記載されている範囲の幅又は特性に関係なく、このような解釈を適用するべきである。
【0017】
請求項で請求される任意の方法又はプロセスにて詳述する任意の工程は、任意の順序で実行されてよく、特許請求の範囲に提示される順序に限定されるものではない。ミーンズ・プラス・ファンクション又はステップ・プラス・ファンクションの限定は、特定の請求項の限定に対し、以下の条件の全て、a)「~のための手段(means for)」又は「~のための工程(step for)」が明示的に列挙され、かつb)対応する機能が明示的に列挙される場合にのみ、用いられるであろう。ミーンズ・プラス・ファンクションを支える構造、材料又は動作は、本明細書における説明で明示的に列挙される。したがって、本発明の範囲は、単に本明細書で与えられる説明及び実施例ではなく、添付の特許請求の範囲及びこれらの法的均等物によってのみ決定されるべきである。
【0018】
顕微鏡における高精度波長抽出用の位相板
本実施形態による位相板を組み込むことができる顕微鏡デバイスは、確率的光学再構築顕微鏡(STORM)や撮像光活性化局在性顕微鏡法(PALM)などの局在顕微鏡法を使用するものである。一実施例では、染料を使用して試料をマークすることができる。試料は、光源を使用して照射することができる。染料からの蛍光は、顕微鏡のフーリエ平面に配置された位相板を通過することができる。位相板は、光波長の点像分布関数を変換して、波長依存幾何学的パターンを形成することができる。
【0019】
図1Aは、本発明の一態様による蛍光顕微鏡撮像デバイス100の図である。蛍光顕微鏡撮像デバイス100は、STORM及びPALMなどの局在顕微鏡を提供することができる。蛍光顕微鏡撮像デバイス100は、観察システム102、対物レンズ104、ミラー106、光学前処理段108、光学処理段110、後処理段112、撮像システム114を含むことができる。あるいは、顕微鏡撮像デバイスは、他の種類の光学顕微鏡、立体顕微鏡、又は天体のスペクトル特性を測定するために使用される望遠鏡を含む任意の撮像システムであってもよく、撮像システムの点像分布関数を修正する位相板がフーリエ平面(瞳孔面とも呼ばれる)に装着されて、検出された信号波長に対して感度を高めることができる。
【0020】
1つ以上の周囲、間接、又は直接照明源(図示せず)を使用して、既知のLP及び超解像顕微鏡技術に従って、観察システム102による観察下の試料を照射、活性化、又は不活性化することができる。対物レンズ104は、観察システム102による観察下の試料が放出した光を捕捉することができる。放射光120は、対物レンズ104から、ミラー106に方向付けられるように、光学前処理段108、光学処理段110、光学後処理段112、及び撮像システム114を通る経路をたどることができる。
【0021】
ミラー106及び光学前処理段108は、放射光120が光学処理段110を通過する前に、放射光120を処理することができる。ミラー106及び光学前処理段108は、放射光120が光学処理段110を通過する前に、放射光120に対して1つ以上の動作を実行する1つ以上の段要素を含んでもよい。放射光120で実行される動作のいくつかの例としては、透過、反射、屈折、偏向、回折、分極、脱分極、コリメーション、フィルタリング、空間フィルタリング、スペクトルフィルタリング、焦点合わせ、焦点外れ、ファイバ結合、ファイバ分離、高次高調波モード生成、3波混合、4波混合、光学パラメトリック増幅、自発パラメトリックダウンコンバージョンなどを挙げることができる。
【0022】
光学処理段110は、第1の光学システム130、第2の光学システム132、及び位相板システム134を含むことができる。第1の光学システム130は、放射光120が位相板システム134を通過する前に、放射光を処理することができる。第1の光学システム130は、ミラー106及び光学前処理段108から受け取った放射光120に対して1つ以上の動作を実行する1つ以上の段要素を含むことができる。第2の光学システム132は、放射光120が光後処理システム112を通過する前に、放射光120を処理することができる。第2の光学システム132は、位相板システム134から受け取った放射光120に対して1つ以上の動作を実行する1つ以上の段要素を含むことができる。
【0023】
特定の顕微鏡システムに関係なく、位相板134は、対物レンズシステムのフーリエ平面に配向され得る。
図1Bは、本発明の一態様による位相板を含む撮像デバイスを示す図である。フーリエ平面(例えば、フーリエ変換面)では、空間画像は空間周波数スペクトルに変換される。有効なことに、レンズは、その時点で既に2次元フーリエ変換を実行している。この事実は、レンズを通過する光の数学的説明から導かれる。光学顕微鏡の設計及び構造に関連する長さ尺度(大まかには~約0.1cm~10cm)について、光の伝播はいわゆるフレネル回折積分によって近似値を求められる。レンズの存在下でこの積分が解かれる(すなわち、レンズを通過する光に関して求められる)場合、積分の形態が2次元フーリエ変換の形態に単純化される。この意味において、PSFは、瞳孔面と呼ばれることもあるフーリエ平面内の光の周波数スペクトルの大きさである。フーリエ平面は、レンズ130から離れた1つの焦点距離で生じる。この事実は、フレネル回折積分のフーリエ変換近似への単純化からは外れる。しかしながら、この位置は、2つのレンズから成る無限遠補正光学システムにおいて、試料上の異なる位置から検出された光の全てが一致する唯一の位置である。
【0024】
位相板134は、放射光120の波長を波長依存幾何学的パターンに変換する1つ以上の段要素を含むことができる。位相板134は、蛍光顕微鏡撮像デバイス100のフーリエ平面内に配置されて、点エミッタの点像分布関数の形態を修正することができる。一般的なガイドラインとして、位相板は、フーリエ平面の10%以内、場合によっては3%以内、大抵の場合は1%以内に配向させることができる。位相板システム134は、点エミッタの点像分布関数に波長依存幾何学的パターンを持たせることができる。波長依存幾何学的パターンは、例えば、目で又はコンピュータビジョンモデルを介して区別可能である、光の波長ごとに認識可能な形状を含むことができる。位相板システム134は、蛍光顕微鏡撮像デバイス100又はユーザが異なる色を区別できるように固有又は半固有の形状-色マッピングを生成することができる。
【0025】
位相板システム134は、ある厚さの分散性透明材料が堆積、積層、又はスピンコーティングされた、一部の波長の光を通すガラス又は他の基板のエッチング片を含むことができる。位相板システム134は、フーリエ平面内に配置されたときに、点エミッタの点像分布関数の形態を修正するように1つ以上の方法でエッチング又は積層することができる。位相板システム134は、ある波長の光を下面、基板本体、及び上面に透過させる平面基板を含むことができる。基板の上面は、層高さの異なる複数の層領域を含む分割領域アレイとして形成された点像分布関数工学プロファイルを含むことができる。層領域は、光波長の点像分布関数を変換して、波長依存幾何学的パターンを形成する異なる厚さを有することができる。一般的に、PSF工学プロファイルは、隣接領域の分割モザイク又はタイリングを形成することができる。一般に、PSF工学プロファイルは、正方形、矩形、三角形、六角形、菱形などであり得る規則的なモザイク、正方形及び八角形などの半規則的なモザイク、任意の不規則なモザイク、又はペンローズタイリングのような非周期的なタイリング、に基づくパターンを有することができる。多くの場合、プロファイルは、各領域が他の領域とは無関係の層高さを有する規則的な正方形のモザイクであり得る。しかし、より一般的には、隣接領域は、上述のタイリング又はモザイクパターンのうちの1つ内に配向され得る。領域の層高さ及び数は、様々な波長依存幾何学的パターンを生成するように選択することができる。一実施例では、PSF工学プロファイルは、規則的な正方形グリッド(例えば、2×2、3×3、4×4など)に基づくことができる。
【0026】
場合によっては、プロファイルは、上面の中心軸を中心に放射対称パターンを有することができる。それに代えて又はそれに加えて、プロファイルは、対称軸に沿った反射対称性を有することができる。更に、場合によっては、幾何学的パターンは、元の点光源の空間位置情報が幾何学的パターンに保持されるように、空間質量中心を維持することができる。
【0027】
第1の光学システム130、第2の光学システム132、又は位相板システム134は、分散曲線の勾配を修正する1つ以上の要素を含むことができる。例えば、位相板システム134は、分散曲線の勾配(波長の関数としての屈折率)を増加させる1つ以上のフィルム、層、又は光学要素を含むことができる。位相板システム134は、波長範囲内の感度(情報コンテンツ)を高めるための屈折率工学を含むことができる。例えば、小さいが実験的に重要な光波長帯域にわたって屈折率が大きく変化する好適な特性を備えた材料又はメタ材料を使用することで、上述の光帯域内の波長の仮定的変化に応答して、その特定の波長範囲内の光のPSFが変化する速度を速めることができる。
【0028】
再び
図1Aを参照すると、光学処理段110は、光波長の点像分布関数を変換して波長依存幾何学的パターンを形成するように放射光120を処理することができる。任意の光後処理段112は、放射光120が撮像システム114を通過する前に、放射光120を処理することができる。光学後処理段112は、放射光120が撮像システム114をに通過する前に、放射光120に対して1つ以上の動作を実行する1つ以上の段要素を含むことができる。例えば、スペクトルフィルタリング、偏光子要素、球面レンズ、円柱レンズ、ビームアポダイジング要素などを使用することができる。
【0029】
撮像システム114は、光学後処理段112から受け取った放射光120の撮像を処理することができる。撮像システム114は、CMOS、sCMOS、CCDなどが挙げられるが、これらに限定されない1つ以上の画像捕捉要素を含むことができる。撮像システム114は、放射光120から捕捉された画像を処理して、視覚的に表示された画像を生成する、又は捕捉された画像上でパターン認識を実行するためにデータ解析を実行するための1つ以上の画像処理要素を更に含むことができる。このようにして、捕捉された幾何学的パターンは、手動で(例えば、ユーザによって視覚的に)特定の波長に相関させる、又は標準パターン認識アルゴリズムを介して自動化することができる。したがって、撮像システム114は、放射光120から捕捉された画像の分析のための1つ以上の画像解析素子を任意で更に含むことができる。
【0030】
撮像システム114によって捕捉された画像は、観察システム102を用いて観察される試料内に点エミッタに関する情報を含むことができる。撮像システム114によって捕捉された画像は、点エミッタによって放出される光の波長に関連付けられた波長依存幾何学的パターンを含んでもよい。放射された点の波長依存幾何学的パターンは、空間及び波長情報を提供することができる。例えば、点エミッタの波長依存幾何学的パターンは、所定波長の光に対応させることができる。別の実施例では、波長依存幾何学的パターンは、点エミッタの2次元又は3次元座標などの空間情報を提供することができる。
【0031】
図2A~
図2Bは、本発明の一実施例による高精度波長抽出用の位相板200を示す。本実施例では、位相板200は、点像分布関数工学プロファイル210を含む。位相板200は、
図1Aの蛍光顕微鏡撮像デバイス100との使用に適した任意の形状を有することができる。例えば、位相板200は、円形、楕円形、又は多角形の形状を有することができる。しかしながら、PSF工学プロファイル210は、所望の点源からの光を受け取り、修正するのに適したサイズと配向を有することができる。
【0032】
位相板200は、ある波長の光を平面基板220の下面222、基板本体224、及び上面226を透過させる基板220を含むことができる。一実施例では、位相板のこれらの部分は、材料が断絶せずに均質である単一の一体片で形成することができる。あるいは、位相板は、層で形成することができる(すなわち、光路に平行な方向)。これに代えて、又はこれに加えて、位相板は、様々な材料の隣接領域で形成することができる(すなわち、光路を横切る方向)。平面基板220は、1つ以上の波長の電磁放射線を通す1つ以上の材料を含むことができる。基板220を構築するために使用される材料のいくつかの非限定的な例としては、二酸化ケイ素(SiO2)、ガラス、石英、雲母、サファイア、フォトレジストなどを挙げることができる。
【0033】
下面222、上面226、又はその両方の組み合わせは、平滑面を生成するように形成され得る。平滑面は、典型的には約4nm未満、及び大抵の場合、約3nm未満の表面粗さを有することができる(RMS粗度として測定される)。このような平滑面は、任意の好適な技術を使用して形成することができる。非限定的な例としては、特に有効であるプラズマ化学蒸着(PECVD)、物理蒸着、イオンビーム蒸着などが挙げられる。下面222、上面226、又はその両方の組み合わせは、基板本体224への材料の追加又は材料の除去によって形成された1つ以上の領域を含むことができる。
【0034】
本実施例では、基板本体224の上面226は、点像分布関数工学プロファイル210を形成するように処理されている。点像分布関数工学プロファイル210は、少なくとも第1の層領域及び第2の層領域を含むことができる。層領域は、固定位置に対する、例えば、表面222、226又は別の層領域のうちの1つに対するレベルに一連の構造又は空隙のうちの1つを含むことができる。
図2Bの符号1で示される第1の層領域は、符号2で示される第2の厚さを有する第2の層領域を形成する上面226の1つ以上の領域に対して、第1の厚さを有する上面226の1つ以上の領域を含むことができる。上面226は、第1の層領域を含むことができ、第2の層領域は、第1の層領域の約1マイクロメートル上方に形成される。よって、第1の層領域は、基板本体の厚さと等しい厚さを有することができる。
【0035】
本明細書に記載される任意の例示的な位相板に適用可能な一般ガイドラインとして、位相板は、約1~約2mm、及び多くの場合、約1~約1.001mmの光透過厚(例えば、基板厚+基板の上方の領域厚)を有することができる。更に、隣接領域は一般的に、約10μm以内、多くの場合約3μm以内の段差を有することができる。
【0036】
点像分布関数工学プロファイル210の層領域は、波長依存幾何学的パターンを形成するように配置することができる。一実施例では、
図2Bに示すように、第1及び第2の層領域の層は、点像分布関数工学プロファイル210の中心軸を中心に交互に並んでいる。層の他の構成も企図され、上記の原理に従って採用することができる。例えば、層高さは、中心の周りを時計回りに規則的又は不規則な間隔で増加させることができる。層高さは、左上層が最も薄く、左下及び右上層は高さが等しく左上層よりも厚く、右下層が全ての層の中で最も厚くすることができる。左下層が最も薄く、左上層が左下層より厚く、右下層及び右上層は、一定係数だけ対応する左下層及び左上層よりも厚くてもよい。また、点像分布関数工学プロファイル210は、複数の層領域、場合によっては3つ以上の領域を含むことができる。層領域の数に対する理論上の上限は存在しないが、大半の用途は、2~4つの層高さ及び4~16個の層領域を効果的に扱うことができる。
【0037】
位相板200は、放射光120を偏光させたり高価な光学フィルタを使用したりする必要なく、蛍光顕微鏡撮像デバイス100内の波長の光を高精度に区別することができる。一実施例では、位相板200は、蛍光分子の撮像を含む用途で使用することができる。位相板200の点像分布関数工学プロファイル210は、検出光の固定偏光を使用する別のデバイスを必要とする偏光依存空間光変調器を使用したり、電磁帯域通過フィルタを使用したりすることなく、2つの異なる種類の蛍光分子を区別することができる。位相板200はまた、既存の光学システムに組み込むために平坦かつコンパクトに製造することができる。
【0038】
位相板200は、ポータブル平坦分光計の構造など、他の用途で使用することができる。分光計は、ピンホールの背後に位相板200を取り付けたスマートフォンカメラに搭載することができる。ピンホールは、点源として機能し、通って入る光は、位相板200を通過した後にスマートフォンのカメラに当たる。次いで、ピンホールを通過する光のスペクトル情報を、ピンホールによって生成される点像分布関数の幾何学的形態としてセンサで収集することができる。
【0039】
以下の説明では、点エミッタの位置及び波長を抽出するために使用可能ないくつかの正方形のグリッドプロファイルを例示する。これらの特定の位相板は、1.5の屈折率をとるが、この数は位相板用に選択された特定の材料に応じて変化し得る。それぞれの場合において、図#Eは、光信号からのx、y、z、及びλの抽出に関連する理論的に最小の統計的不確定性を示し、これは、検出ノイズによって固有に歪曲される(光の検出統計値はポアソン分布に従う)。この固有ノイズは、不確定性をゼロよりも大きくする。この最小不確定性は、「クラメール・ラオの下限(CRLB)」と呼ばれる。全ての長さ単位は、マイクロメートル(例えば、0.561μm~561μm)である。図#Bはそれぞれ、板厚をマイクロメートル単位で示すカラーバーを有する位相板設計を示す。図#Dはそれぞれ、視野の中心及び焦点(すなわち、エミッタの軸方向位置がゼロである)における生成された点像分布関数を示す。各点像分布関数が計算されたマイクロメートル単位の波長を、各図上に示す。一般に、他の態様の中でこれらの実施例が示すように、位相板の厚さを増加させると周波数が上昇し、点像分布関数、したがって、波長精度は波長の関数としてとり得る様々な形状を循環する。
【0040】
図3Aは、本発明の一態様による高精度波長抽出用の位相板に関して、2つの異なる層高さに4つの領域を有する点像分布関数(PSF)工学プロファイル300の図である。符号1で示される第1の層領域は、位相板の上面の2つの領域を含むことができる。符号2で示される第2の層領域は、第1の層領域に対して異なる厚さを有する2つの領域を位相板の上面に含むことができる。第1及び第2の層領域は、中心軸又はその他の位置を中心に領域を交互に並べて、チェッカー盤パターンを形成することができる。
【0041】
図3Bは、本発明の一態様による、2つの異なる層に4つの領域を有する、
図3AのPSF工学プロファイル300の高さマップ図である。第1の層領域(暗色で示される)及び第2の層領域(明色で示される)は、0~1マイクロメートルの色スケール勾配によって示されるように、1マイクロメートルの相対厚を有することができる。第2の層領域は、位相板の上面の1つ以上の位置に最大1マイクロメートルの材料を追加することによって形成することができる。別の実施例では、第1の層領域は、位相板の上面の1つ以上の位置で最大1マイクロメートルの材料を除去することによって形成することができる。位相板の上面への材料の追加又は除去の他の組み合わせは、第1の層領域と第2の層領域との間の異なる相対厚を提供することができる。
【0042】
2つの層領域間の相対厚は、光波長に応じて選択することができる。例えば、90度の入射を仮定すると、相対厚は2π(例えば、光の全周期)であり得る。別の例では、相対厚はπ未満であり得る。
【0043】
図3Cは、本発明の一実施形態による、2つの異なる層に4つの領域を有する、
図3AのPSF工学プロファイル300の斜視図である。図示されるように、第1の層領域は、位相板の上面の第1のレベルに存在することができる。第2の層領域は、第1の層領域の約1マイクロメートル上方の、位相板の上面の第2のレベルに存在することができる。
【0044】
図3Dは、本発明の一実施形態による、2つの異なる層に4つの領域を有する、
図3AのPSF工学プロファイル300の波長依存幾何学的パターンの図である。PSF工学プロファイル300は、明確な色-形状マッピングを生成する。図示されるように、PSF工学プロファイル300は、この特定のプロファイルを有する「クローバの葉」の形状を生成する。PSF工学プロファイル300は、中心軸に対して放射方向に対称なパターンを生成することができる。パターンはまた、顕微鏡の開口数にかかわらずほぼ同じ形状を維持することができる。
【0045】
図3Eは、本発明の一態様による、2つの異なる層に4つの領域を有する
図3AのPSF工学プロファイルを使用して、光信号からx、y、z、及びλを抽出することに関連する理論的に最小の統計的不確定性を示すグラフである。
【0046】
図4Aは、高精度波長抽出用の位相板の、2つの異なる層高さに4つの領域(4×4グリッド)を有する基板上のPSF工学プロファイル400の図である。符号1で示される第1の層領域は、位相板の上面の2つの領域を含むことができる。符号2で示される第2の層領域は、第1の層領域に対して異なる厚さを有する2つの領域を位相板の上面に含むことができる。第1及び第2の層領域は、中心軸又はその他の位置を中心に領域を交互に並べて、チェッカー盤パターンを形成することができる。
【0047】
図4Bは、本発明の一実施形態による、2つの異なる層に4つの領域を有する、
図4AのPSF工学プロファイルの高さマップ図である。第1の層領域(暗い色で示される)及び第2の層領域(明るい色で示される)は、0~3マイクロメートルの色スケール勾配によって示されるように、3マイクロメートルの相対厚を有することができる。第2の層領域は、位相板の上面の1つ以上の位置に最大3マイクロメートルの材料を追加することによって形成することができる。別の実施例では、第1の層領域は、位相板の上面の1つ以上の位置で最大3マイクロメートルの材料を除去することによって形成することができる。位相板の上面への材料の追加又は除去の他の組み合わせは、第1の層領域と第2の層領域との間の異なる相対厚を提供することができる。
【0048】
図4Cは、2つの異なる層に4つの領域を有する、
図4AのPSF工学プロファイルの斜視図である。図示されるように、第1の層領域は、位相板の上面の第1のレベルに存在することができる。第2の層領域は、第1の層領域の約3マイクロメートル上方の、位相板の上面の第2のレベルに存在することができる。
【0049】
図4Dは、2つの異なる層に4つの領域を有する
図4AのPSF工学プロファイル400によって生成された波長依存幾何学的パターンの図である。PSF工学プロファイル400は、明確な色-形状マッピングを生成する。図示されるように、PSF工学プロファイル300は、中心軸に対して放射方向に対称なパターンを生成することができる。パターンは、顕微鏡の開口数に関係なくほぼ同じ形状を保つことができる。本実施例では、2つの層領域間の相対厚が増加すると、周波数が上昇し、点像分布関数、したがって波長精度が、様々な起こり得る形状を周期的に繰り返す。
【0050】
図4Eは、2つの異なる層に4つの領域を有する
図4AのPSF工学プロファイルを使用して、光信号からx、y、z、及びλを抽出することに関連する理論的に最小の統計的不確定性を示すグラフである。このグラフは、位置×、y、及びz並びに波長を判定することができることを示す。位置特定精度は波長に応じて変化し、バイナリグリッド設計の場合には、厚い領域の厚さを増加させると、PSFはより迅速に周期的に変化する。一般的なガイドラインとして、波長は、このアプローチを介して、約10nm未満、多くの場合1nm未満の解像度又は分解能で抽出することができる。
【0051】
図5Aは、高精度波長抽出用の位相板の、4つの異なる層高さに4つの領域(4×4グリッド)を有する基板上のPSF工学プロファイル500の図である。符号1で示される第1の層領域は、位相板の上面の1つの領域を含むことができる。符号2で示される第2の層領域は、第1の層領域に対して異なる厚さを有する1つの領域を位相板の上面に含むことができる。符号3で示される第3の層領域は、第2の層領域に対して異なる厚さを有する1つの領域を位相板の上面に含むことができる。符号4で示される第4の層領域は、第3の層領域に対して異なる厚さを有する1つの領域を位相板の上面に含むことができる。第1、第2、第3、及び第4の層領域は、中心軸又は他の位置を中心に領域を交互に並べて、チェッカー盤パターンを形成することができる。
【0052】
図5Bは、4つの異なる層に4つの領域を有する、
図5AのPSF工学プロファイルの高さマップ図である。第1の層領域(最も暗い色で示される)及び第4の層領域(最も明るい色で示される)は、0~3マイクロメートルの色スケール勾配によって示されるように、3マイクロメートルの相対厚を有することができる。第2の層領域は、第1の層領域よりも厚く、第3の層領域よりも薄くてもよい。第3の層領域は、第2の層領域よりも厚く、第4の層領域よりも薄くてもよい。
【0053】
図5Cは、本発明の一実施形態による、4つの異なる層に4つの領域を有する、
図5AのPSF工学プロファイルの斜視図である。図示されるように、第1の層領域は、位相板の上面の第1のレベルに存在することができる。第2の層領域は、第1の層領域の約1マイクロメートル上方の、位相板の上面の第2のレベルに存在することができる。第3の層領域は、第2の層領域の約1マイクロメートル上方、及び第1の層領域の2マイクロメートル上方の、位相板の上面の第3のレベルに存在することができる。第4の層領域は、第3の層領域の約1マイクロメートル上方、第2の層領域の2マイクロメートル上方、及び第3の層領域の1マイクロメートル上方の、位相板の上面の第4のレベルに存在することができる。
【0054】
図5Dは、4つの異なる層に4つの領域を有する、
図5AのPSF工学プロファイル500によって生成された波長依存幾何学的パターンの図である。PSF工学プロファイル500は、明確な色-形状マッピングを生成する。図示されるように、PSF工学プロファイル500は、中心軸に対して放射方向に対称なパターンを生成することができる。パターンは、顕微鏡の開口数にかかわらずほぼ同じ形状を維持することができる。
【0055】
図5Eは、4つの異なる層に4つの領域を有する
図5AのPSF工学プロファイルを使用して、光信号からx、y、z、及びλを抽出することに関連する理論的に最小の統計的不確定性を示すグラフである。
【0056】
図6Aは、高精度波長抽出用の位相板の、4つの異なる層高さに4×4の4つの領域を有する基板上のPSF工学プロファイル600の図である。符号1で示される第1の層領域は、位相板の上面の1つの領域を含むことができる。符号2で示される第2の層領域は、第1の層領域に対して異なる厚さを有する1つの領域を位相板の上面に含むことができる。符号3で示される第3の層領域は、第2の層領域に対して異なる厚さを有する1つの領域を位相板の上面に含むことができる。符号4で示される第4の層領域は、第3の層領域に対して異なる厚さを有する1つの領域を位相板の上面に含むことができる。第1、第2、第3、及び第4の層領域は、中心軸又は他の位置を中心に領域を交互に並べて、チェッカー盤パターンを形成することができる。
【0057】
図6Bは、4つの異なる層に4つの領域を有する、
図6AのPSF工学プロファイルの高さマップ図である。第1の層領域(最も暗い色で示される)及び第4の層領域(最も明るい色で示される)は、0~3マイクロメートルの色スケール勾配によって示されるように、3マイクロメートルの相対厚を有することができる。第2の層領域は、第1の層領域よりも厚く、第3の層領域よりも薄くてもよい。第3の層領域は、第2の層領域よりも厚く、第4の層領域よりも薄くてもよい。
【0058】
図6Cは、4つの異なる層に4つの領域を有する、
図6AのPSF工学プロファイルの斜視図である。図示されるように、第1の層領域は、位相板の上面の第1のレベルに存在することができる。第2の層領域は、第1の層領域の約1マイクロメートル上方の、位相板の上面の第2のレベルに存在することができる。第3の層領域は、第2の層領域の約1マイクロメートル上方、及び第1の層領域の2マイクロメートル上方の、位相板の上面の第3のレベルに存在することができる。第4の層領域は、第3の層領域の約1マイクロメートル上方、第2の層領域の2マイクロメートル上方、及び第3の層領域の1マイクロメートル上方の、位相板の上面の第4のレベルに存在することができる。
【0059】
図6Dは、4つの異なる層に4つの領域を有する、
図6AのPSF工学プロファイル600によって生成される波長依存幾何学的パターンの図である。PSF工学プロファイル600は、明確な色-形状マッピングを生成する。図示されるように、PSF工学プロファイル600は、中心軸に対して放射方向に対称なパターンを生成することができる。パターンは、光スポットのサイズにかかわらず、同じサイズのままであり得る。この図は、波長の変化と共にPSFが回転することを示す。これは、エミッタの軸方向位置(z位置)が焦点に対して変化するとき、二重螺旋点像分布関数が回転するという点で独特である。
【0060】
図6Eは、4つの異なる層に4つの領域を有する
図6AのPSF工学プロファイルを使用して、光信号からx、y、z、及びλを抽出することに関連する理論的に最小の統計的不確定性を示すグラフである。
【0061】
図7Aは、高精度波長抽出用の位相板の、2つの異なる層高さで3×3グリッド内に9つの領域を有する基板上のPSF工学プロファイル700の図である。符号1で示される第1の層領域は、位相板の上面の1つ以上の領域を含むことができる。本実施例では、第1の層領域は、位相板の上面の5つの領域を含む。符号2で示される第2の層領域は、第1の層領域に対して異なる厚さを有する1つ以上の領域を位相板の上面に含むことができる。本実施例では、第2の層領域は、位相板の上面の4つの領域を含む。第1及び第2の層領域は、チェッカー盤パターンを形成することができる。
【0062】
図7Bは、2つの異なる層高さに9つの領域を有する、
図7AのPSF工学プロファイルの高さマップ図である。第1の層領域(暗い色で示される)及び第2の層領域(明るい色で示される)は、0~1マイクロメートルの色スケール勾配によって示されるように、1マイクロメートルの相対厚を有することができる。第2の層領域は、位相板の上面の1つ以上の位置に最大1マイクロメートルの材料を追加することによって形成することができる。別の実施例では、第1の層領域は、位相板の上面の1つ以上の位置で最大1マイクロメートルの材料を除去することによって形成することができる。位相板の上面への材料の追加又は除去の他の組み合わせは、第1の層領域と第2の層領域との間の異なる相対厚を提供することができる。
【0063】
図7Cは、2つの異なる層に9つの領域を有する、
図7AのPSF工学プロファイルの斜視図である。図示されるように、第1の層領域は、位相板の上面の第1のレベルに存在することができる。第2の層領域は、第1の層領域の約1マイクロメートル上方の、位相板の上面の第2のレベルに存在することができる。
【0064】
図7Dは、2つの異なる層に9つの領域を有する、
図7AのPSF工学プロファイル700の波長依存幾何学的パターンの図である。PSF工学プロファイル700は、明確な色-形状マッピングを生成する。図示されるように、PSF工学プロファイル700は、特定の波長の「クローバの葉」の形状を生成する。PSF工学プロファイル700は、中心軸に対して放射方向に対称な幾何学的パターンを生成することができる。この構成では、他の構成(例えば、先に記載した4つの領域パターン)と同様に、開口数の影響を受けない。
【0065】
図7Eは、2つの異なる層に9つの領域を有する
図7AのPSF工学プロファイルを使用して、光信号からx、y、z、及びλを抽出することに関連する理論的に最小の統計的不確定性を示すグラフである。
【0066】
図8Aは、高精度波長抽出用の位相板の、3つの異なる層高さで3×3グリッド内に9つの領域を有する基板上のPSF工学プロファイル800の図である。符号1で示される第1の層領域は、位相板の上面の1つ以上の領域を含むことができる。本実施例では、第1の層領域は、位相板の上面の4つの領域を含む。符号2で示される第2の層領域は、第1の層領域に対して異なる厚さを有する1つ以上の領域を位相板の上面に含むことができる。本実施例では、第2の層領域は、位相板の上面の1つの領域を含む。符号3で示される第3の層領域は、第1及び第2の層領域に対して異なる厚さを有する、位相板の上面の1つ以上の領域を含むことができる。本実施例では、第3の層領域は、位相板の上面の4つの領域を含む。第1、第2、及び第3の層領域は、中央に第2の層領域を有するチェッカー盤パターンを形成することができる。
【0067】
図8Bは、3つの異なる層高さで9つの領域を有する、
図8AのPSF工学プロファイルの高さマップ図である。第1の層領域(最も暗い色で示される)及び第3の層領域(最も明るい色によって示される)は、0~2マイクロメートルの色スケール勾配によって示されるように、2マイクロメートルの相対厚を有し得る。第2の層領域は、位相板の上面の1つ以上の位置に約1マイクロメートルの材料を追加する、又はより厚い元の基板から材料を除去することによって形成することができる。
【0068】
図8Cは、3つの異なる層に9つの領域を有する、
図8AのPSF工学プロファイルの斜視図である。図示されるように、第1の層領域は、位相板の上面の第1のレベルに存在することができる。第2の層領域は、第1の層領域の約1マイクロメートル上方の、位相板の上面の第2のレベルに存在することができる。第3の層領域は、第2の層領域の約1マイクロメートル上方、及び第1の層領域の約2マイクロメートル上方の、位相板の上面の第3のレベルに存在することができる。
【0069】
図8Dは、3つの異なる層高さで9つの領域を有する、
図8AのPSF工学プロファイル800の波長依存幾何学的パターンの図である。PSF工学プロファイル800は、明確な色-形状マッピングを生成する。図示されるように、PSF工学プロファイル800は、入射光の特定の波長に対して「クローバの葉」の形状を生成する。PSF工学プロファイル800は、中心軸に対して放射方向に対称な幾何学的パターンを生成することができる。
【0070】
図8Eは、本発明の一実施形態による、3つの異なる層に9つの領域を有する
図8AのPSF工学プロファイルを使用して、光信号からx、y、z、及びλを抽出することに関連する理論的に最小の統計的不確定性を示すグラフである。
【0071】
図9Aは、高精度波長抽出用の位相板の、3つの異なる層高さで3×3グリッド内に9つの領域を有する基板上のPSF工学プロファイルの図である。符号1で示される第1の層領域は、位相板の上面の1つの領域を含むことができる。符号2で示される第2の層領域は、第1の層領域に対して異なる厚さを有する1つの領域を位相板の上面に含むことができる。符号3で示される第3の層領域は、第2の層領域に対して異なる厚さを有する1つの領域を位相板の上面に含むことができる。第1、第2、第3、及び第4の層領域は、階段状パターンを形成するように配置され得る。
【0072】
図9Bは、3つの異なる層高さで9つの領域を有する、
図9AのPSF工学プロファイルの高さマップ図である。第1の層領域(最も暗い色で示される)及び第3の層領域(最も明るい色によって示される)は、0~3マイクロメートルの色スケール勾配によって示されるように、3マイクロメートルの相対厚を有することができる。第2の層領域は、第1の層領域よりも厚く、第3の層領域よりも薄くてもよい。
【0073】
図9Cは、3つの異なる層高さで9つの領域を有する、
図9AのPSF工学プロファイルの斜視図である。図示されるように、第1の層領域は、位相板の上面の第1のレベルに存在することができる。第2の層領域は、第1の層領域の約1マイクロメートル上方の、位相板の上面の第2のレベルに存在することができる。第3の層領域は、第2の層領域の約1マイクロメートル上方、及び第1の層領域の2マイクロメートル上方の、位相板の上面の第3のレベルに存在することができる。
【0074】
図9Dは、
図9AのPSF工学プロファイル900によって生成された波長依存幾何学的パターンを示す図であり、PSF工学プロファイル900は、明確な色-形状マッピングを生成する。図示されるように、PSF工学プロファイル900は、中心軸に対して放射方向に対称なパターンを生成することができる。
【0075】
図9Eは、
図9AのPSF工学プロファイルを使用して、光信号からx、y、z、及びλを抽出することに関連する理論的に最小の統計的不確定性を示すグラフである。
【0076】
図10Aは、高精度波長抽出用の位相板の、3つの異なる層高さに9つの領域を有する基板上の、更に別のPSF工学プロファイル1000の図である。符号1で示される第1の層領域は、位相板の上面の1つの領域を含むことができる。符号2で示される第2の層領域は、第1の層領域に対して異なる厚さを有する1つの領域を位相板の上面に含むことができる。符号3で示される第3の層領域は、第2の層領域に対して異なる厚さを有する1つの領域を位相板の上面に含むことができる。第1、第2、第3、及び第4の層領域は、階段状パターンを形成するように配置され得る。
【0077】
図10Bは、本発明の一実施形態による、3つの異なる層に9つの領域を有する、
図10AのPSF工学プロファイルの高さマップ図である。第1の層領域(最も暗い色で示される)及び第3の層領域(最も明るい色によって示される)は、0~3マイクロメートルの色スケール勾配によって示されるように、3マイクロメートルの相対厚を有することができる。第2の層領域は、第1の層領域よりも厚く、第3の層領域よりも薄くてもよい。
【0078】
図10Cは、3つの異なる層高さに9つの領域を有する、
図10AのPSF工学プロファイルの斜視図である。第2の層領域は、第1の層領域の約1マイクロメートル上方の、位相板の上面の第2のレベルに存在することができる。第3の層領域は、第2の層領域の約1マイクロメートル上方、及び第1の層領域の2マイクロメートル上方の、位相板の上面の第3のレベルに存在することができる。
【0079】
図10Dは、
図10AのPSF工学プロファイル1000によって生成された波長依存幾何学的パターンの図であり、PSF工学プロファイル1000は、明確な色-形状マッピングを生成する。図示されるように、PSF工学プロファイル1000は、中心軸に対して放射方向に対称なパターンを生成することができる。
【0080】
図10Eは、
図10AのPSF工学プロファイルを使用して、光信号からx、y、z、及びλを抽出することに関連する理論的に最小の統計的不確定性を示すグラフである。
【0081】
図11は、本発明の一実施形態による高精度波長抽出用の方法1100のフローチャートである。本方法1100は、コンピュータシステム若しくは情報処理デバイスなどの論理マシンの中央処理ユニット(CPU又はプロセッサ)により実行されるときのソフトウェア(例えば、命令又はコードモジュール)、電子デバイス若しくは特定用途向け集積回路のハードウェア構成要素、又はソフトウェアとハードウェア要素の組み合わせによって実行することができる。方法1100は、PSF工学プロファイルを有する位相板を用いて明確な色-形状マッピングを生成することで、光源からの高精度波長抽出を可能にする。
【0082】
工程1102では、デバイスは、試料の観察領域を照射して放射光を生成する。観察領域は、周囲光、間接光、又は直接光を使用して照射することができる。工程1104では、本デバイスは、少なくとも1つの波長の光の点像分布関数を修正する位相板に放射光を通過させて、波長依存幾何学的パターンを形成することによって、画像を捕捉する。工程1106では、デバイス又は観察者が、波長依存幾何学的パターンに基づいて、試料内の点エミッタに対応する色を判定する。任意の工程1108では、デバイスは、波長依存幾何学的パターンに基づいて、試料内の点エミッタの位置を判定する。
【0083】
有益なことに、本明細書の方法及びシステムは、運動の追跡のために使用することができる。これは、特定のタンパク質又は生物学的マーカーの追跡に特に有用であり得る。例えば、本方法は、放射光を位相板に通過させることによって、観察領域内の次の時間ステップで点エミッタの第2の画像を捕捉することを更に含むことができる。次に、点エミッタの運動は、第1の画像と第2の画像との間の空間差に応答して、観察領域内で判定することができる。この情報は、特定の生理学的構造、タンパク質、又はその他の特徴と関連付けられ得る特定の点光源を追跡するために使用することができる。この具体例の1つは、バイオマーカーでタグ付けされた2つ以上の異なる種類の分子モータを同時に追跡している。位相板の色感度の別の適用は、蛍光バイオマーカーの小さなスペクトルシフトを使用して、細胞内の位置に関してリアルタイムで細胞環境内の変化を感知することができる。最後に、類似のモードでは、タンパク質に付着されるバイオマーカーを用いて、配座変化に応答するバイオマーカーの小さなスペクトルシフトを利用し、タンパク質の配座変化を測定することができる。
【0084】
第2の点エミッタに対応する色は、他の点エミッタの波長依存幾何学的パターンに基づくこともできる。このように、複数の異なる特徴を、共通位相板及び顕微鏡システムを用いて同時に追跡することができる。例えば、他の点エミッタの位置は、他の点エミッタの波長依存幾何学的パターン、及びその点エミッタに関する以前の空間情報の比較に基づき、観察領域内で判定することができる。あるいは、追跡される点エミッタ間の相対運動を観察領域内で判定することができる。
【0085】
図12は、高精度波長抽出を示すユーザインタフェース1200である。ユーザインタフェース1200は、少なくとも1つの波長の光の点像分布関数を修正する位相板に放射光を通過させて、波長依存幾何学的パターンを形成する1つ以上の画像を表示することができる。ユーザインタフェース1200は、1つ以上の波長依存幾何学的パターンに、対応する空間及び波長位置特定情報を注釈付ける1つ以上のユーザインタフェース素子を含むことができる。このようなディスプレイを用いて、手動で幾何学的パターンを識別し、特定波長と相関させることができる。あるいは、このようなデータは、幾何学的パターンと波長とを相関付ける画像認識アルゴリズムを含むプロセッサに伝送することができる。
【0086】
図13A~13Cは、本発明の一実施例による、高精度波長抽出を使用した空間及び波長位置を示す画像である。これらの図は、
図12に対する制御を示す。
図12では、3つの異なる色の蛍光ビーズが存在する。
【0087】
図14は、幾何学的パターンが波長の関数として変化する高精度波長抽出を使用する空間及び波長位置特定の適用例を示す。この具体例は、2つの異なる種類の分子モータが蛍光バイオマーカーでタグ付けされる実験からデータがどのように見えるかを示す
図3Dと相関関係を有する。微小管群(青の曲線)に沿って反対方向に移動する。各モータの種は、バイオマーカーの自身の色でラベル付けされ、固有のPSFにより相互に区別することができる。
【0088】
図15は、点光源からの高精度波長抽出の方法及び動作を実行することができるコンピューティングデバイス1510を示す図である。コンピューティングデバイス1510は、各種方法及び動作を実行することができる高度な実施例で示される。コンピューティングデバイス1510は、メモリデバイス1520と通信する1つ以上のプロセッサ1512を含むことができる。コンピューティングデバイス1510は、コンピューティングデバイス内の構成要素のためのローカル通信インタフェース1518を含むことができる。例えば、ローカル通信インタフェースは、ローカルデータバス及び/又は所望に応じて任意の関連するアドレス若しくは制御バスであってもよい。
【0089】
メモリデバイス1520は、プロセッサ1512によって実行可能なモジュール、及びモジュールのためのデータを含むことができる。メモリデバイス1520内には、プロセッサによって実行可能なモジュールが配置される。例えば、高精度波長抽出モジュール及びその他のモジュールをメモリデバイス1520に配置することができる。モジュールは、上述の機能を実行することができる。プロセッサ1512によって実行可能なオペレーティングシステムと共に、モジュール及び他のアプリケーションに関連するデータを記憶するために、データストア1522がメモリデバイス1520内に配置されてもよい。
【0090】
他のアプリケーションもまた、メモリデバイス1520に記憶され、プロセッサ1512によって実行可能であってもよい。本説明において考察される構成要素又はモジュールは、ハイブリッドの方法によってコンパイル、解釈、又は実行される高水準プログラミング言語を使用してソフトウェアの形で実装され得る。
【0091】
コンピューティングデバイスはまた、コンピューティングデバイスによって使用可能であるI/O(入力/出力)デバイス1514へのアクセスを有し得る。I/Oデバイスの一例は、コンピューティングデバイスからの出力を表示するために利用可能なディスプレイ画面1540である。所望に応じて、他の既知なI/Oデバイスが、コンピューティングデバイスと共に使用されてもよい。ネットワーキングデバイス1516及び類似の通信デバイスが、コンピューティングデバイスに含まれてもよい。ネットワーキングデバイス1516は、インターネット、LAN、WAN、又は他のコンピューティングネットワークに接続する有線又は無線ネットワーキングデバイスであってよい。
【0092】
メモリデバイス1520に記憶されているように示されている構成要素又はモジュールは、プロセッサ1512によって実行されてもよい。「実行可能」という用語は、プロセッサ1512によって実行することができる形式のプログラムファイルを意味し得る。例えば、高水準言語のプログラムは、メモリデバイス1520のランダムアクセス部にロードされプロセッサ1512によって実行され得るフォーマットで機械コードにコンパイルすることができる、又はソースコードは、別の実行可能プログラムによってロードされ、プロセッサによって実行されるべきメモリのランダムアクセス部に命令を生成するように解釈することができる。実行可能プログラムは、メモリデバイス1520の任意の部分又は構成要素に記憶され得る。例えば、メモリデバイス1520は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、ソリッドステートドライブ、メモリカード、ハードドライブ、光ディスク、フロッピーディスク、磁気テープ、又は任意の他のメモリ構成要素であり得る。
【0093】
プロセッサ1512は、複数のプロセッサを表してもよく、メモリ1520は、処理回路と並列に動作する複数のメモリユニットを表してもよい。これにより、システム内の処理及びデータのための並列処理チャネルを提供することができる。ローカルインタフェース1518は、複数のプロセッサのいずれかと複数のメモリとの間の通信を容易にするネットワークとして使用することができる。ローカルインタフェース1518は、負荷分散、大量データ転送、及び類似のシステムなどの通信を連携するために設計された追加のシステムを使用してもよい。
【0094】
本技術に関して提示されたフローチャートは、特定の実行順序を示唆し得るが、実行の順序は、例示されているものと異なってもよい。例えば、もう2つのブロックの順序は、示されている順序に対して並べ替えられてもよい。更に、連続して示されている2つ以上のブロックは、並列に、又は部分並列化して実行されてもよい。いくつかの構成では、フロー図に示されている1つ以上のブロックは、省略又はスキップしてもよい。ユーティリティ、計算、性能、測定、トラブルシューティングを向上させる目的で、又は類似の理由で、任意の数のカウンタ、状態変数、セマフォの警告、又はメッセージが論理フローに追加されてもよい。
【0095】
本明細書に記載されている機能ユニットのいくつかは、それらの実施の独立性をより特に強調するために、モジュールとしてラベル付けされている。例えば、モジュールは、カスタムVLSI回路又はゲートアレイ、論理チップなどの既製の半導体、トランジスタ、又は他のディスクリート部品を含むハードウェア回路として実装されてもよい。モジュールはまた、フィールドプログラマブルゲートアレイ、プログラマブルアレイロジック、プログラマブルロジック装置等のようなプログラマブルハードウェア装置に実装されてもよい。
【0096】
モジュールはまた、様々な種類のプロセッサによる実行のためのソフトウェアに実装されてもよい。実行可能コードの識別されたモジュールは、例えば、オブジェクト、手順、又は機能として編成され得るコンピュータ命令の1つ以上のブロックを含んでもよい。にもかかわらず、識別されたモジュールの実行ファイルは、物理的に一緒に配置される必要はなく、モジュールを構成し、論理的に一緒に結合されたときにモジュールに関して述べられた目的を達成する、異なる場所に記憶された異なる命令を含んでもよい。
【0097】
実際、実行可能コードのモジュールは、単一の命令、又は多数の命令であってもよく、更には異なるプログラムの間で、及び複数のメモリデバイスにまたがって、複数の異なるコードセグメントにわたって分散されてもよい。同様に、動作データは、本明細書ではモジュール内で識別され及び例示され、任意の適切な形式で具現化され、任意の適切なタイプのデータ構造内に編成されてもよい。動作データは、単一のデータセットとして収集されてもよく、又は異なる記憶デバイスにわたることを含めて異なる場所にわたって分散されてもよい。モジュールは、所望の機能を行うように動作可能なエージェントを含めて、受動的であっても又は能動的であってもよい。
【0098】
本明細書に記載の技術は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、又はその他のデータなどの情報を記憶するための任意の技術で実装された揮発性及び不揮発性、取り外し可能及び非取り外し可能媒体を含むコンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよい。コンピュータ可読記憶媒体としては、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ若しくは他のメモリ技術、CD-ROM、デジタル多用途ディスク(DVD)若しくは他の光学記憶デバイス、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶デバイス若しくは他の磁気記憶デバイス、又は所望の情報及び記載された技術を記憶するために使用され得る任意の他のコンピュータ記憶媒体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
本明細書に記載のデバイスはまた、デバイスが他のデバイスと通信することを可能にする通信接続又はネットワーキング装置及びネットワーキング接続を含むことができる。通信接続は、通信媒体の一例である。通信媒体は、典型的には、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、及び搬送波又は他の移送機構などの変調データ信号内の他のデータを具現化し、任意の情報配信媒体を含む。「変調データ信号」は、信号内の情報を符号化するような様態で設定又は変更されたその特性のうちの1つ以上を有する信号を意味する。限定ではなく例として、通信媒体には、有線ネットワーク又は直接配線接続などの有線媒体、及び音響、無線周波数、赤外線などの無線媒体並びに他の無線媒体が含まれる。本明細書で使用されるコンピュータ可読媒体という用語は、通信媒体を含む。
【0100】
図面に図示された例を参照し、本明細書では同じことを説明するために特定言語を使用した。それでもなお、それにより本技術の範囲の限定が意図されない、と理解されるであろう。本明細書に例示した特徴の変更及び更なる改変、並びに本明細書に例示したような実施例の追加の応用は、本説明の範囲内であると見なされるべきである。
【0101】
更に、説明された特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施例において、任意の好適な様態で組み合わされてもよい。先行する説明において、説明される技術の実施例の完全な理解を提供するために、種々の構成の実施例等の多数の具体的な詳細を提供した。しかしながら、本技術は、1つ以上の具体的な詳細なしで、又は他の方法、構成要素、装置、等を伴って実施され得ることが認識されるであろう。その他の例では、本技術の態様を不明瞭にすることを回避するために、周知の構造又は動作は、詳細には図示又は説明されていない。
【0102】
主題は、構造的特徴及び/又は動作に特有の言語で説明されてきたが、添付の特許請求の範囲で定義される主題は、必ずしも上記の特定の特徴及び動作に限定されないことを理解されたい。むしろ、上記の特定の特徴及び作用は、特許請求の範囲を実施する例示的な形態として開示されている。記載された技術の精神及び範囲から逸脱することなく、多数の改変及び代替の構成が考案され得る。
【0103】
前述の詳細な説明は、特定の代表的実施形態を参照して本発明について記載している。しかし、添付の特許請求の範囲に説明される本発明の範囲を逸脱することなく、種々の修正及び変更を行うことができる、と理解されよう。詳細な説明及び添付図面は、制限するものではなく、単に例示的なものとして見なされるものとし、このような全ての修正又は変更は、たとえあったとしても、本明細書で記載及び説明される本発明の範囲内に収まることが意図されている。