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特許7144441抗酸化及び抗高血圧効果を有するヒラメ練肉及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】抗酸化及び抗高血圧効果を有するヒラメ練肉及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/07 20060101AFI20220921BHJP
   A23J 1/04 20060101ALI20220921BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20220921BHJP
   A23L 33/18 20160101ALI20220921BHJP
   A61K 38/06 20060101ALI20220921BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20220921BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20220921BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20220921BHJP
   C07K 5/097 20060101ALN20220921BHJP
   C07K 5/103 20060101ALN20220921BHJP
   C07K 7/06 20060101ALN20220921BHJP
   C12P 21/06 20060101ALN20220921BHJP
【FI】
A61K38/07 ZNA
A23J1/04
A23L17/00 101Z
A23L33/18
A61K38/06
A61K38/08
A61P9/12
A61P39/06
C07K5/097
C07K5/103
C07K7/06
C12P21/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019558790
(86)(22)【出願日】2018-08-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 KR2018010028
(87)【国際公開番号】W WO2019045467
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2019-10-28
(31)【優先権主張番号】10-2017-0111310
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2017-0111944
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514217886
【氏名又は名称】チェジュ ナショナル ユニバーシティー インダストリー-アカデミック コーポレーション ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ユ-ジン
(72)【発明者】
【氏名】オ、ジェ-ヨン
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-269139(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0015653(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0090757(KR,A)
【文献】特開平10-182696(JP,A)
【文献】Process Biochem,2016年,Vol.51,pp.535-541
【文献】長崎県工業技術センター研究報告,No.12,1992年,pp.131,132
【文献】Electrophoresis,2000年,Vol.21,pp.603-610
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K38/00-38/58
A61P9/00-9/14
A61P39/00-39/06
A23L33/00-33/29
A23J1/00-1/22
A23L17/00-17/60
C07K5/00-5/12
C07K7/00-7/66
C12P21/00-21/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、高血圧治療または予防用薬学組成物。
【請求項2】
前記ペプチドは、抗酸化活性を有するものである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項3】
前記ペプチドは、ペプシン、トリプシン、またはα-キモトリプシンの加水分解物のものである、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項4】
配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、高血圧改善または予防用食品組成物。
【請求項5】
前記ペプチドは、抗酸化活性を有する請求項4に記載の食品組成物。
【請求項6】
前記食品組成物は、健康機能食品である、請求項4に記載の食品組成物。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1項に記載の食品組成物を含む、高血圧治療または予防用のヒラメ肉。
【請求項8】
請求項4~6のいずれか1項に記載の食品組成物を含む、高血圧治療または予防用のヒラメり製品。
【請求項9】
ヒラメを磨砕及び水洗した後、精製処理するステップを含む、請求項4~6のいずれか1項に記載の食品組成物を含む、高血圧治療または予防用のヒラメ練肉の製造方法。
【請求項10】
請求項4~6のいずれか1項に記載の食品組成物と食塩とを含む、高血圧治療または予防用のヒラメ練り製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒラメ練肉の加水分解物の分画物から分離されたペプチドを含む高血圧治療または予防用薬学組成物または食品組成物、前記ペプチドを含むヒラメの練肉、練り製品、練肉の製造方法及び練り製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高血圧は、全世界的に成人の15~20%が患っている慢性循環器系疾患のうち発生頻度が最も高い疾患であり、比較的に症状がない方であるが、高い血圧により正常な機能を維持していた器官が徐々にその機能を失って脳卒中、心不全、冠動脈疾患等の致命的な合併症を誘発し得るため、より積極的で一貫した患者管理と治療が要求される疾患である。世界健康保健機構(WHO)では、最高血圧が160mmHg以上で最低血圧が95mmHg以上である場合を高血圧と規定しており、高血圧疾患の種類としては、大きく原因が不明な本態性高血圧と原因疾病による続発性高血圧とに区別されるが、このうち90%以上が本態性高血圧に属すると知られており、全世界的に約6億人以上の人々が高血圧を患っており、この高血圧のため毎年300万人が死亡していて全世界的な課題として浮上している。
【0003】
生体中に存在している不活性化アンジオテンシンI(Angiotensin I)は、アンジオテンシンI転換酵素(Angiotensin I converting Enzyme、ACE)によってC-末端His-Leuが落ちることで血管壁収縮作用を有するアンジオテンシンII(Angiotensin II)に転換されて血管を収縮し、腎臓でアルドステロンの分泌を増加させて体液量を増加させることで血圧を上昇させる作用をする。従って、ACEの活性を抑制させることで血圧上昇の原因となるアンジオテンシンIIの生成低下を通して血圧を抑制できる。
【0004】
高血圧を改善するための目的でエナラプリル(enelapril)やラミプリル(Ramipril)等のACE阻害剤が開発されて常用されているが、このような薬剤の使用による副作用で味覚異常、白血球減少、血管浮腫、肝機能異常等が発見された。
【0005】
そこで、天然物質から抗高血圧効果を有する研究への要求が続き、大豆タンパク質加水分解物、キトサン、ミルクカゼイン等から分離されたACE阻害剤は、食品医薬品安全処に個別認定機能性食品として認められた。
【0006】
一方、生体内で安定した状態で存在していた酸素が化学薬品、公害物質、光化学反応のような環境的及び生化学的要因等によりスーパーオキシドアニオンラジカル(superoxide anion radical、O2)、ヒドロキシルラジカル(hydroxyl radical、OH)、過酸化水素(hydrogen peroxide、H)、一重項酸素(singlet oxygen、O2)等のように反応性の大きな活性酸素(reactive oxygen species:ROS)に転換されると、人体の細胞構成成分であるタンパク質、脂質及びDNA等に対して非選択的、非可逆的な破壊を誘導すると知られている。このように、酸化的ストレスが各種の疾患を起こす重要な原因であることが明らかになって生体内活性酸素を効果的に除去する活性酸素消去剤を開発しようとする研究が盛んに進行している。特に、活性酸素消去活性が卓越し、かつ、より安全な新たな天然素材基盤の活性酸素消去剤の開発が切実に要求されている。
【0007】
天然物質から抗高血圧、抗酸化効果を有する研究への要求が続き、特に、生理活性ペプチド(Bioactive peptide)は、様々なタンパク質加水分解酵素を通して作られ得、天然物由来のペプチドは、食べ物が腸内で消化される間、新陳代謝過程で潜在的な生理的調節因子として機能し得る。また、構造、組成、アミノ酸配列によって抗酸化、抗菌、抗高血圧効能等を期待できる。
【0008】
また、従来の化学合成方法等を通して製造されていた抗高血圧、抗酸化製剤が副作用等の問題が発生するにつれ、近年、世界各国では、天然物質から抗高血圧及び抗酸化効果を有する物質を得るための努力が持続されている。また、各国では、医薬品はもちろん、酵素と健康補助剤のような食品素材等、様々な用途に活用され得る新たな物質を探索するために自然状態の生物、特に大量培養及び繁殖が容易な生物に関する研究も盛んに進行している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、海洋生物は、陸上生物にない特有の代謝過程とユニークな環境によって様々な新規生理活性物質の探索機能性を有している。また、陸上生物は、既に多くの研究が進行したが、海洋生物は、まだ十分に研究されておらず、新たな有用性を有する天然物質開発への期待値が高い分野でもある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、高血圧治療または予防用薬学組成物を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、高血圧改善または予防用食品組成物を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、ヒラメの練肉を提供することである。
【0013】
本発明の他の目的は、配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、ヒラメの練り製品を提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、ヒラメを磨砕及び水洗した後、精製処理するステップを含む、配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、ヒラメ練肉の製造方法を提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、前記練肉の製造方法により製造されたヒラメ練肉と食塩を混合するステップを含む、ヒラメ練り製品の製造方法を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを個体に投与するステップを含む、高血圧の予防または治療方法を提供することである。
【0017】
本発明のまた他の目的は、配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを高血圧の予防または治療のための医薬品の製造に使用するための用途を提供することである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、ヒラメ練肉の加水分解物の分画物から分離されたペプチドを有効成分として含む、高血圧治療または予防用薬学組成物または食品組成物に関し、ヒラメ練肉が血圧降下効果を有し、ヒラメ練肉の加水分解物、前記ヒラメ練肉の加水分解物の分画物と前記分画物から分離されたペプチドがアンジオテンシンI転換酵素(Angiotensin I converting Enzyme、ACE)阻害活性を有することを確認した。従って、前記ヒラメ練肉の加水分解物の分画物から分離されたペプチドを利用して、高血圧治療または予防用薬学組成物または食品組成物に使用することができる。
【0019】
また、ヒラメ練肉の加水分解物とこれから分離されたペプチドがラジカル消去効果、酸化的ストレスに対する保護効果を有してROS生成を抑制し、脂質過酸化、そして細胞死を抑制することを確認した。従って、前記ヒラメ練肉の加水分解物の分画物から分離されたペプチドを利用して、抗酸化用食品組成物に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】ヒラメ練肉とヒラメ練り製品を示す。
図2】ヒラメ練肉加水分解物のACE阻害活性を測定したものである。
図3】血管内皮細胞でヒラメ練肉加水分解物のNO生成効果を示したものである。
図4】ヒラメ練肉の本態性高血圧ラット(Spontaneously hypertensive rats、SHR)への給餌による血圧変化を測定したものである。
図5】Sephadex G-25カラムを用いたヒラメ練肉加水分解物のサイズ排除クロマトグラフィーを示したものである。
図6】ヒラメ練肉加水分解物の分画物の逆相クロマトグラムの結果を示したものである。
図7】Sephadex G-25を用いたサイズ排除クロマトグラフィー分画物のACE阻害活性を示したものである。
図8】Fraction 2分画物由来ペプチドのアミノ酸配列、Ile-Val-Asp-Arg(IVDR)とその分子量を示す。
図9】Fraction 2分画物由来ペプチドのアミノ酸配列、Val-Ala-Ser-Val-Ile(VASVI)とその分子量を示す。
図10】Fraction 2分画物由来ペプチドのアミノ酸配列、Trp-Tyr-Lys(WYK)とその分子量を示す。
図11】ヒラメ練肉加水分解物のラジカル消去活性を測定したものである。
図12】Veroでのヒラメ練肉加水分解物の酸化的ストレス保護効果を示したものである。
図13】ヒラメ練肉加水分解物のapoptosis抑制効果を示したものである。
図14】ゼブラフィッシュを用いたヒラメ練肉加水分解物の処理による生存率及び心拍数の測定結果を示したものである。
図15】ゼブラフィッシュを用いたヒラメ練肉加水分解物の処理によるROS生成量、脂質過酸化、細胞死を測定したものである。
図16】ゼブラフィッシュで練肉加水分解物を処理した時のPro-apoptosis mRNA発現阻害効果を示したものである。
図17】Sephadex G-25カラムを用いたヒラメ練肉加水分解物のサイズ排除クロマトグラフィーを示したものである。
図18】ヒラメ練肉加水分解物の分画物の逆相クロマトグラムの結果を示したものである。
図19】サイズ排除クロマトグラフィー分画物のAlkylラジカル消去能の測定結果を示したものである。
図20】Fraction 2分画物由来ペプチドのアミノ酸配列、Ile-Val-Asp-Arg(IVDR)とその分子量を示す。
図21】Fraction 2分画物由来ペプチドのアミノ酸配列、Val-Ala-Ser-Val-Ile(VASVI)とその分子量を示す。
図22】Fraction 2分画物由来ペプチドのアミノ酸配列、Trp-Tyr-Lys(WYK)とその分子量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者は、ヒラメ(flounder)を磨砕及び水洗した後、精製処理して、ヒラメ練肉を製造し、ペプシンを含む人工胃液と、トリプシン、α-キモトリプシンを含む人工腸液を利用して、ヒラメ練肉の加水分解物を製造し、前記加水分解物の各分子量別の分画物と前記分画物から分離された特定アミノ酸配列を有するペプチドがアンジオテンシンI転換酵素(Angiotensin I converting Enzyme、ACE)阻害活性があることを確認した。
【0022】
従って、前記ヒラメ練肉の加水分解物の分画物から分離されたペプチドを利用して、高血圧治療または予防用薬学組成物または食品組成物に使用できることを確認し、本発明を完成した。
【0023】
また、本発明者は、ヒラメ(flounder)を磨砕及び水洗した後、精製処理して、ヒラメ練肉を製造し、ペプシンを含む人工胃液と、トリプシン、α-キモトリプシンを含む人工腸液を利用して、ヒラメ練肉の加水分解物を製造し、前記加水分解物の各分子量別の分画物と前記分画物から分離された特定アミノ酸配列を有するペプチドがラジカル消去効果、酸化的ストレスに対する保護効果を有してROS生成を抑制し、脂質過酸化、そして細胞死を抑制することを確認した。従って、前記ヒラメ練肉の加水分解物の分画物から分離されたペプチドを利用して、抗酸化用食品組成物に使用できることを確認し、本発明を完成した。
【0024】
前記目的を達成するための一つの様態として、本発明は、配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、高血圧治療または予防用薬学組成物を提供する。
【0025】
本発明において、配列番号1で表示されるアミノ酸配列はIle-Val-Asp-Arg(IVDR)であり、前記配列番号2で表示されるアミノ酸配列はVal-Ala-Ser-Val-Ile(VASVI)であり、前記配列番号3で表示されるアミノ酸配列はTrp-Tyr-Lys(WYK)であり、前記高血圧治療または予防用薬学組成物は、前記配列番号1で表示されるIle-Val-Asp-Arg(IVDR)、前記配列番号2で表示されるアミノ酸配列Val-Ala-Ser-Val-Ile(VASVI)、または前記配列番号3で表示されるアミノ酸配列Trp-Tyr-Lys(WYK)からなるペプチドを有効成分として含む。
【0026】
前記ペプチドは、ヒラメ(flounder)の加水分解物から分離され得、より具体的に、ヒラメ練肉の加水分解物の分画物から分離され得る。
【0027】
前記ペプチドは、抗酸化活性を有することができる。
【0028】
本発明において、前記加水分解物は、前記ヒラメ(flounder)練肉を消化酵素を利用して分解した加水分解物であってよく、前記消化酵素としては、ペプシン(pepsin)、トリプシン(Trypsin)またはα-キモトリプシン(α-キモトリプシン)であってよい。従って、本発明の前記ヒラメ練肉の加水分解物は、ペプシン、トリプシン、またはα-キモトリプシンの加水分解物であってよい。
【0029】
本発明の一実施例においては、ヒラメを磨砕及び水洗した後、精製処理して、ヒラメの練肉を製造した。具体的に、済州ヒラメの頭部と内臓、皮、骨等を除去して魚肉だけを得た後、chopper(M-12S、韓国フジー工業、韓国)で磨砕した後、試料の5倍の0.2%重合リン酸塩(Na5P3O10、(株)イーエス技術研究所、韓国)を添加して20分間浸漬後、同じ体積の冷水を追加して水洗した後、夾雑物を除去し、脱水機(W-110、(株)ハンイル、韓国)で脱水された魚肉をstephan mixer(774027-01、UMC 5 Electronic Co.LTD、Germany)を利用して4%ソルビトール((株)LG生活健康、韓国)、0.2%重合リン酸塩を混合した後、精製処理してヒラメ練肉を製造した。
【0030】
本発明の一実施例においては、ペプシンを含む人工胃液と、トリプシン、α-キモトリプシンを含む人工腸液を利用して、ヒラメ練肉の加水分解物を製造し、前記加水分解物、そして前記加水分解物の各分子量別の分画物と前記分画物から分離された配列番号1、2または3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドがアンジオテンシンI転換酵素(Angiotensin I converting Enzyme、ACE)阻害活性があることを確認した。
【0031】
また、本発明の一実施例においては、ペプシンを含む人工胃液と、トリプシン、α-キモトリプシンを含む人工腸液を利用して、ヒラメ練肉の加水分解物を製造し、前記製造されたヒラメ練肉の人工消化液を用いた加水分解物、そして前記加水分解物の各分子量別の分画物と前記分画物から分離された配列番号1、2または3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドがラジカル消去効果、酸化的ストレスに対する保護効果を有してROS生成を抑制し、脂質過酸化、そして細胞死を抑制することを確認した。
【0032】
また、本発明において、前記分画物は、ヒラメ練肉の加水分解物をサイズ排除クロマトグラフィーを利用して分子量サイズ別に分画した分画物であってよい。
【0033】
本発明の一実施例においては、前記ヒラメ練肉の加水分解物をSephadex G-25とサイズ排除クロマトグラフィーを利用して、分子量サイズ別に分画して計3個の分画物を得ており、この中でF2分画物でACE阻害活性に最も優れて抗高血圧活性に最も優れたことを確認し、前記F2分画物で抗高血圧活性(ACE阻害活性)を示す配列番号1~3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチド3個を分離した。
【0034】
また、本発明の一実施例においては、前記ヒラメ練肉の加水分解物をSephadex G-25とサイズ排除クロマトグラフィーを利用して、分子量サイズ別に分画して計3個の分画物を得ており、この中でF2分画物でアルキルラジカル消去能に最も優れて抗酸化活性に最も優れたことを確認し、前記F2分画物で抗酸化活性を示す配列番号1~3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチド3個を分離した。
【0035】
本発明において、ヒラメは別称でフラットフィッシュと呼ばれ、フラットフィッシュの学名はParalichthys olivaceusであり、体長は60cm程であり、模様は上下に平たい長い楕円形である。口が大きく、歯がよく発達しており、目は体の左側にある。目のある側は濃い黄褐色の地に黒色及び白色斑点が散らばっているが、目のない側は白色である。水深10-200m沿岸の砂や干潟地域に生息し、2-6月に産卵する。韓国の全沿岸に出現し、クリル列島、日本、南シナ海に分布する。平たい体形のため、よく「ヒラメ」と呼び、目が左側にあるため、一般的に目が右側にあるカレイ類と容易に区別される。
【0036】
本発明において、用語、「抗酸化」は、酸化を抑制する作用を意味するものであり、人体は、酸化促進物質(prooxidant)と酸化抑制物質(antioxidant)が均衡を取っているが、様々な要因によりこのような均衡状態が不均衡になって酸化促進の方に傾くと、酸化的ストレス(oxidative stress)が誘発されて潜在的な細胞損傷及び病理的疾患を起こすこととなる。このような酸化的ストレスの直接的な原因となる活性酸素種(reactive oxygen species、ROS)は、不安定で反応性が高く、様々な生体物質と容易に反応し、体内高分子を攻撃して細胞と組織に非可逆的な損傷を起こすか、突然変異、細胞毒性及び発癌等を招くようになる。NO、HNO、ONOOのような活性窒素種(reactive nitrogen species、RNS)、ROSのような活性酸素は、体内で細胞を酸化させて破壊させ、それによって各種の疾患に曝露されるようになる。また、前記抗酸化は、細胞内代謝または紫外線の影響による酸化的ストレスによって反応性の高いフリーラジカル(free radical)または活性酸素種(Reactive oxygen species、ROS)による細胞の酸化を抑制する機能を意味し、フリーラジカルまたは活性酸素種を除去して、これによる細胞の損傷が減少することを含む。
【0037】
前記ACE(Angiotensin I converting enzyme)は、デカペプチド(decapeptide)であるアンジオテンシンIからジペプチド(dipeptide、His-Leu)を切断することで血管収縮作用を有するアンジオテンシンIIに転換させる役割を果たす酵素である。アンジオテンシンIIの増加は、強い血圧上昇作用と抗利尿ホルモンであるアルドステロン(aldosterone)の分泌を促進し、水とナトリウムの排泄を抑制して循環血液量を増加させることで高血圧を起こすようにする。また、ACEは、血管弛緩作用をするブラジキニン(bradykinin)を分解して不活性化させることで結果的に血圧上昇を誘発する役割を果たす。
【0038】
本発明の用語「高血圧(hypertension)」と関連して、世界健康保健機構(WHO)では、最高血圧が160mmHg以上で最低血圧が95mmHg以上である場合を高血圧と規定しており、高血圧疾患の種類としては、大きく原因が不明な本態性高血圧と原因疾病による続発性高血圧とに区別されるが、このうち90%以上が本態性高血圧に属すると知られている。
【0039】
本発明において使用される用語、「予防」とは、本発明に係る組成物を個体に投与して高血圧の発病を抑制または遅延させる全ての行為を意味し得る。本発明において使用される用語、「治療」とは、本発明の前記組成物を高血圧発病疑い個体に投与して高血圧による症状が好転するようにするか、有益になるようにする全ての行為を意味し得る。
【0040】
本発明の前記ペプチドを含む薬学組成物は、薬学組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形体または希釈剤をさらに含むことができる。このとき、前記組成物に含まれるペプチドは、特にこれに制限されないが、組成物の総重量に対して0.001重量%~99重量%であり、好ましくは0.01重量%~50重量%を含むことができる。
【0041】
前記薬学組成物は、錠剤、丸剤、散剤、粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤及び坐剤からなる群から選択されるいずれか一つの剤形を有することができ、経口または非経口の様々な剤形であってよい。製剤化する場合は、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤等の希釈剤または賦形剤を使用して調製される。
【0042】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、粒剤、カプセル剤等が含まれ、このような固形製剤は、少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチン等を混ぜて調製され得る。また、単純な賦形剤以外にステアリン酸マグネシウム、タルク等のような潤滑剤も使用され得る。経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤等が該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤等が含まれ得る。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステル等が使用され得る。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチン等が使用され得る。
【0043】
本発明の薬学組成物は、薬学的に有効な量で投与し得る。本発明において、用語、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受益/危険割合で疾患を治療するに十分な量を意味し、有効容量水準は、個体の種類及び重症度、年齢、性別、疾病の種類、薬物の活性、薬物への敏感度、投与時間、投与経路及び排出割合、治療期間、同時使用される薬物を含む要素及びその他の医学分野によく知られている要素によって決定され得る。本発明の組成物は、個別治療剤で投与するか、他の治療剤と併用して投与され得、従来の治療剤とは順次または同時に投与され得る。そして、単一または多重投与され得る。前記要素を全て考慮して副作用なしに最小限の量で最大の効果を得ることができる量を投与することが重要であり、当業者によって容易に決定され得る。
【0044】
本発明の薬学組成物は、高血圧治療を目的とする個体であれば特に限定されず、いずれのものでも適用可能である。例えば、サル、犬、猫、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ等のような非ヒト動物、ヒト、鳥類及び魚類等をいずれも使用することができ、前記薬学組成物は、非経口、皮下、腹腔内、肺内及び鼻腔内に投与され得、局部的治療のために、必要であれば病変内投与を含む適した方法によって投与され得る。本発明の前記薬学組成物の好ましい投与量は、個体の状態及び体重、疾病の程度、薬物形態、投与経路及び期間によって異なるが、当業者によって適切に選択され得る。例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内頸膜または脳血管内注射によって投与され得るが、これに制限されるものではない。
【0045】
適した1日の総使用量は、正しい医学的判断範囲内で処置医により決定され得、一般的に0.001~1000mg/kgの量、好ましくは0.05~200mg/kg、より好ましくは0.1~100mg/kgの量を1日1回~数回に分けて投与できる。
【0046】
他の一つの様態として、本発明は、配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、高血圧改善または予防用食品組成物を提供する。
【0047】
本発明において、配列番号1で表示されるアミノ酸配列はIle-Val-Asp-Arg(IVDR)であり、前記配列番号2で表示されるアミノ酸配列はVal-Ala-Ser-Val-Ile(VASVI)であり、前記配列番号3で表示されるアミノ酸配列はTrp-Tyr-Lys(WYK)であり、前記高血圧改善または予防用食品組成物は、前記配列番号1で表示されるIle-Val-Asp-Arg(IVDR)、前記配列番号2で表示されるアミノ酸配列Val-Ala-Ser-Val-Ile(VASVI)または前記配列番号3で表示されるアミノ酸配列Trp-Tyr-Lys(WYK)からなるペプチドを有効成分として含む。
【0048】
前記ペプチドは、ヒラメ(flounder)の加水分解物から分離され得、より具体的に、ヒラメ練肉の加水分解物の分画物から分離され得る。
【0049】
前記ペプチドは、抗酸化活性を有することができる。
【0050】
本発明において、前記ペプチド、高血圧、ヒラメ、練肉、加水分解物、抗酸化、予防については、前述したとおりである。
【0051】
発明における用語、「改善」は、前記配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを利用して予防または治療される高血圧のような疾患の疑い及び発病個体の症状が好転するか、有益になる全ての行為をいう。
【0052】
具体的に、本発明の前記配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを高血圧の改善または予防を目的として食品組成物に添加し得る。
【0053】
本発明の食品組成物は、丸剤、粉末、顆粒、浸剤、錠剤、カプセルまたは液剤等の形態を含むことができ、本発明の前記ペプチドを添加し得る食品の種類には特別な制限がなく、例えば、各種の飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、健康補助食品類等がある。
【0054】
前記食品組成物には、前記配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチド以外にも他の成分を加えることができ、その種類は、特に制限されない。例えば、通常の食品のように様々な生薬抽出物、食品学的に許容可能な食品補助添加剤または天然炭水化物等を追加成分として含有することができ、これに制限されない。
【0055】
本発明において、用語、「食品補助添加剤」とは、食品に補助的に添加され得る構成要素を意味し、各剤形の健康機能食品を製造するのに添加されるものであって、当業者が適宜選択して使用できる。食品補助添加剤の例としては、様々な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤等の風味剤、着色剤及び充填剤、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤等が含まれるが、前記例によって本発明の食品補助添加剤の種類が制限されるものではない。
【0056】
前記天然炭水化物の例は、ブドウ糖、果糖等の単糖類;マルトース、スクロース等の二糖類;及びデキストリン、シクロデキストリン等の多糖類と、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等の糖アルコールがあり、上記したもの以外の香味剤として、天然香味剤(タウマチン等)、ステビア抽出物(レバウディオサイドA、グリチルリチン等)及び合成香味剤(サッカリン、アスパルテーム等)を有利に使用することができる。
【0057】
本発明の食品組成物には、健康機能食品が含まれ得、本発明において、前記食品組成物は、健康機能食品であってよい。本発明において使用された用語「健康機能食品」とは、人体に有用な機能性を有する原料や成分を使用して錠剤、カプセル、粉末、顆粒、液状及び丸等の形態に製造及び加工した食品をいう。ここで、機能性とは、人体の構造及び機能に対して栄養素を調節するか、生理学的作用等のような保健用途に有用な効果を得ることを意味する。本発明の健康機能食品は、当業界で通常使用される方法によって製造可能であり、前記製造時には、当業界で通常添加する原料及び成分を添加して製造し得る。また、一般の薬品とは異なり食品を原料として薬品の長期服用時に発生し得る副作用等がない長所があり、携帯性に優れ得る。
【0058】
有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康または治療的処置)によって適するように決定され得る。一般的に、食品の製造時に、本発明の前記ペプチドは、原料組成物中、1~50重量%、好ましくは5~10重量%の量で添加され得るが、これに制限されるものではない。しかし、健康及び衛生を目的とするか、または健康調節を目的とする長期間の摂取の場合は、前記量は、前記範囲以下でも使用され得る。
【0059】
前記食品の種類には、特別な制限はない。前記物質を添加できる食品の例としては、練肉、練り製品、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種のスープ、飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料、及びビタミン複合剤等があり、通常の意味での健康機能食品を全て含む。
【0060】
他の一つの様態として、本発明は、配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、ヒラメの練肉を提供する。
【0061】
前記練肉(surimi)は、魚の皮と内臓、骨を除去した肉を冷水で数回水洗後に脱水し、糖とリン酸塩を加えて混合したものである。
【0062】
本発明の一実施例においては、ヒラメを磨砕及び水洗した後、精製処理して、ヒラメの練肉を製造した。
【0063】
前述したように、前記ヒラメ練肉の加水分解物の分画物で前記配列番号1~3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドが存在することを確認しており、ヒラメ練肉にも前記配列番号1~3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドが存在する。従って、本発明は、配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、ヒラメの練肉を提供できる。
【0064】
他の一つの様態として、本発明は、配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、ヒラメの練り製品を提供する。
【0065】
本発明の一実施例においては、ヒラメを磨砕及び水洗した後、精製処理してヒラメの練肉を製造し、前記ヒラメ練肉を食塩と混合してヒラメの練り製品を製造した。具体的に、製造された練肉を冷凍した後、冷凍された練肉を4で低温解凍させた後、20分間stephan mixerで初すり、20分間2%食塩添加後2回すり、20分間2%デンプン添加後3回すりをし、以後、直径2cmの円筒状ポリエチレンビニールに注入してケーシングし、24時間の間4で自然凝固させてヒラメの練り製品を製造した。
【0066】
前記練り製品とは、魚肉に食塩を加えて肉すりした後、成形して加熱した食品の総称を意味し、かまぼこ、揚かまぼこ、ちくわ、魚肉ハム、ソーセージ等がこれに属する。
【0067】
前述したように、前記ヒラメ練肉の加水分解物の分画物で前記配列番号1~3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドが存在することを確認しており、ヒラメ練肉を食塩と混合して製造されたヒラメ練り製品にも配列番号1~3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドが存在する。従って、本発明は、配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、ヒラメの練肉を提供できる。
【0068】
他の一つの様態として、本発明は、ヒラメを磨砕及び水洗した後、精製処理するステップを含む、配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、ヒラメ練肉の製造方法を提供する。
【0069】
前記配列番号1、配列番号2、配列番号3、ペプチド、ヒラメ、練肉、練肉の製造方法についての説明は、前述したとおりである。
【0070】
他の一つの様態として、本発明は、前記ヒラメ練肉の製造方法により製造されたヒラメ練肉と食塩を混合するステップを含む、ヒラメ練り製品の製造方法を提供する。
【0071】
前記配列番号1、配列番号2、配列番号3、ペプチド、ヒラメ、練肉、練り製品、練り製品の製造方法についての説明は、前述したとおりである。
【0072】
他の一つの様態として、本発明は、配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを個体に投与するステップを含む、高血圧の予防または治療方法を提供するものである。
【0073】
本発明において、用語「配列番号1、配列番号2、配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチド」、「高血圧」、「予防」、「治療」についての説明は、前述したとおりである。
【0074】
本発明において、用語「個体」とは、高血圧が発生したヒトを含む全ての動物を意味する。ウシ、ブタ、ヒツジ、ニワトリ、犬、ヒト等を含む哺乳動物、鳥類等を含み、本発明の前記配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチド投与により高血圧が治療または予防される個体は制限なく含む。
【0075】
他の一つの様態として、本発明は、配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを高血圧の予防または治療のための医薬品の製造に使用するための用途を提供するものである。
【0076】
本発明において、用語「配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチド」、「高血圧」、「予防」、「治療」についての説明は、前述したとおりである。
【0077】
以下、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように、本発明の実施例について添付の図面を参考にして詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な異なる形態で具現され得、ここで説明する実施例に限定されない。
【0078】
<A.抗高血圧効果測定>
実施例1:原料購入及び練肉、練り製品の製造
本発明に使用された練肉は、済州ヒラメの頭部と内臓、皮、骨等を除去して魚肉だけを得た後、chopper(M-12S、韓国フジー工業、韓国)で磨砕した。この後、試料の5倍の0.2%重合リン酸塩(Na5P3O10、(株)イーエス技術研究所、韓国)を添加して20分間浸漬後、同じ体積の冷水を追加して水洗し、水洗水を除去する工程を4回繰り返した。この後、篩に掛けてその他の夾雑物を除去し、脱水機(W-110、(株)ハンイル、韓国)で脱水した。脱水された魚肉をstephan mixer(774027-01、UMC 5 Electronic Co.LTD、Germany)を利用して4%ソルビトール((株)LG生活健康、韓国)、4%砂糖((株)BEKSUL、韓国)、0.2%重合リン酸塩を混合した後、500gずつケースに保管して-70℃で保管した。練り製品は、冷凍された練肉を4℃で低温解凍させた後、20分間stephan mixerで初すり、20分間2%食塩添加後2回すり、20分間2%デンプン添加後3回すりをした。以後、直径2cmの円筒状ポリエチレンビニールに注入してケーシングし、24時間の間4℃で自然凝固させた。この後、85℃water bathで30分間加熱し、4℃で低温冷却させて練り製品の物理的特性実験に使用した。図1は、前記方法で製造されたヒラメ練肉とヒラメ練り製品を示す。
【0079】
実施例2:ヒラメを利用して製造した練肉及び練り製品の理化学的特性分析
1)一般成分含量分析
一般成分は、AOAC法(1995)によって、水分は常圧加熱乾燥法、粗タンパク質はsemimicro Kjeldahl法、粗灰分は乾式灰化法、及び粗脂肪はSoxhlet法でそれぞれ測定した。重金属のうち総水銀は、試料を凍結乾燥した後、水銀分析器(SP-3A、Nippon instrument Co.,Tokyo、Japan)を利用するcombustion gold amalgamation法で分析し、鉛は、硝酸で有機質を湿式分解して試料を調製した後、inductively coupled plasma spectrophotometer(ICP)(Atomscan 25、TJA、USA)で分析した。
【0080】
2)構成アミノ酸分析
構成アミノ酸分析のためにAgilent 6890N GC-FID機器を使用し、カラム:ZB-AAA(10meter * 0.25mm)、注入部の温度250℃、温度条件:110℃~320℃、検出器320℃、注入量:2μl、split ratio 5:1、運搬気体:Nitrogen、1.5mL/minの条件で分析し、標準溶液は、phenomenex社のAmino acid standardを使用した。
【0081】
実施例3:ヒラメを利用して製造した練肉及び練り製品の物理的特性分析
1)白色度測定
白色度は、Park(1994)が言及した方法を若干変形して直視色差計(NE4000、Nippon Denshoku Industries Co.,Japan)で測定した。白色度は、解凍したすり身(surimi、練肉)の場合、容器に満たして、そして円形かまぼこ(練り製品)の場合、表面が一定の大きさ(2.5×2.5cm)で平衡になるように切断した全断面を試料として色差計でHunter L、a及びb値を測定した。このとき、直視色差計の標準白板は、L値が100.05、a値が-0.03、及びb値が0.01であった。
【0082】
2)ゲル強度測定
ゲル強度は、Okada(1963)の方法を若干変形して測定し、試料は、円形かまぼこ(練り製品)を一定の大きさ(2.5×2.5cm)に切断して使用した。即ち、ゲル強度は、Sun rheometer(COMPAC-100、Sun Scientific Co.,Japan)を利用して試料の荷重と深さをそれぞれ測定した後、荷重×深さで示した。このとき、rheometerのloadは1kgとし、plungerの速度は20mm/minとし、plungerは直径5mmの球形を使用した。
【0083】
実施例4:ヒラメ練肉摂取時の生理活性測定
1)人工消化液の製造及び人工消化液の処理
人工消化モデルに使用される人工胃液と人工腸液は、Hur(2011)の方法を若干変更して使用し、組成は表1に示した。ヒラメ練肉500gに人工胃液1Lを添加後、pHを1.5に調整し、37℃で4時間の間撹拌させた。この後、pHを8に調整後、人工腸液1Lを添加して、37℃で4時間の間さらに撹拌し、この後、95℃で酵素不活性化ステップを経て残渣を除去し、実験に使用した。
【0084】
【表1】
【0085】
2)ACE阻害活性測定
ACE阻害活性測定は、CushmanとCheungの方法を変形して測定し、粗酵素液は、rabbit lung acetone powder(Sigma-Aldrich Co.)を0.2g/10mL(w/v)の濃度で4℃で24時間抽出した後、遠心分離(4℃、4,000rpm、40min)して上澄み液を粗酵素液として使用した。基質は、0.3M NaClが含有された0.1M sodium borate buffer(pH8.3)にhippurylhistidyl-leucine(HLL、Sigma-Aldrich Co.)を5mg/mL(w/v)の濃度で溶かした後、基質として使用した。
【0086】
ACE阻害活性は、試料抽出液50μLにACE粗酵素液50μLを加えた後、37℃で5分間反応をさせた後、基質50μLを加え、さらに37℃で1時間反応させた。次に1N HCl 150μLを加えて反応を停止させ、750μLのethyl acetateを加えた後、1分間撹拌し、遠心分離(3,500rpm、10min)した後、500μLの上澄み液を得た。この上澄み液を105℃で4時間の間完全に乾燥させて2mLのethyl acetateを入れた後、228nmで吸光度を測定した。対照区としては、試料抽出液の代わりに蒸留水50μLを加えて測定した。
【0087】
3)血管のNO生成効果確認
血管のNO生成効果を確認するために、血管内皮細胞(HUVEC cell)を1×105で96wellにseedingし、24時間後、各ウェルの培地をgrowth培地からbase培地に取り替えた。2時間以後、試料を処理し、試料処理直後300μMのDAF-FM-DA(sigma、USA)を10μl処理して、1時間30分後、蛍光値を測定した。
【0088】
4)血圧変化測定
ヒラメ練肉を本態性高血圧ラット(Spontaneously hypertensive rats、SHR)に給餌した後、血圧変化を測定した。具体的に、250~300gのSHRに凍結乾燥されたヒラメ練肉を水に練って50mg/Kgの量を給餌し、0、3、6、9時間の際、tail-cuff method CODATM blood pressure monitor(Kent Scientific Corp.,Torrington、CT、USA)装備を利用して血圧変化を測定した。
【0089】
実験例1.ヒラメを利用して製造した練肉の一般成分分析及び重金属含量分析
本発明に使用された魚種であるヒラメを利用して冷凍練肉を製造し、製造した練肉の一般成分分析の結果は表2に示した。その結果、ヒラメ練肉の水分含量は73.18%であり、タンパク質含量は18.93%を示した。
【0090】
【表2】
【0091】
練肉(surimi、すり身)の重金属含量規格基準は、淡水産魚介類で製造したものは、重金属が10.0mg以下/kgであるものと定義しており、水銀含量の場合、海産魚介類(深海性魚介類及びマグロ類を除く)で製造したものは、総水銀が0.5mg以下/kgであるもの、鉛含量は、海産魚介類(深海性魚介類及びマグロ類を除く)で製造したものは、鉛が2.0mg以下/kgであるものと規定している。
【0092】
ヒラメ練肉の重金属含量分析の結果、表3に示されたように、ヒラメ練肉で鉛、カドミウム、ヒ素は検出されず、水銀は、基準値未達である0.02mg/kgを示すことを確認した。
【0093】
【表3】
【0094】
実験例2:ヒラメ冷凍練肉の構成アミノ酸分析
ヒラメ練肉500gに人工胃液1Lを添加後、pHを1.5に調整し、37℃で4時間の間撹拌させた。この後、pHを8に調整後、人工腸液1Lを添加して、37℃で4時間の間さらに撹拌し、この後、95℃で酵素不活性化ステップを経て残渣を除去し、実験に使用した。
【0095】
ヒラメ練肉とヒラメ練肉加水分解物の構成アミノ酸を分析した結果は、表4に示した。主要アミノ酸であるLeucine、Glutamic acidとLysineが多くの含量を占めることは変わらず、Lysineの場合、加水分解後、減少し、Cystineの場合、加水分解後、検出されることを確認した。
【0096】
【表4】
【0097】
実験例3:ヒラメ冷凍練肉の白色度
凍結練肉の一般的なアジアの等級基準には、水分含量、ゲル強度、せん断ひずみ、弾力官能検査、白色度等の項目があり、そのうち、白色度は、45以上がA等級、47以上SA等級、49以上3A等級に分類される。従って、白色度は、冷凍練肉の等級を決定する重要な項目であり、白色度が高い練肉は、プレミアム練り製品に使用される高級素材として使用されている。Heu(2010)の研究結果によると、一般的に、市販練肉は、SA、FA、AA、A KA、KB、RA等級が使用されており、これらの等級は、白色度が高いほど練肉の等級が高くなったと報告している。
【0098】
ヒラメ練肉の場合、63.6の高い数値を示し、SA級市販練肉より白色度に優れたものと示された。
【0099】
【表5】
【0100】
実験例4:ヒラメ練り製品の白色度及びゲル強度
練り製品のゲル強度は、練り製品の等級を決定する重要な要因であり、製品の食感を上昇させる要因と評価されている。Heu(2010)の研究結果によると、SA級メンタイ練り製品のゲル強度は、SA級945.2g×cm、FA級782.0g×cm、AA級747.3g×cm、A級611.1g×cm、KA級628.1g×cm、KB級444.5g×cm、RA級256.8g×cmのゲル強度を示し、練り製品の等級別に異なるゲル強度を有していると報告された。
【0101】
メンタイ練り製品のゲル強度は1012g×cmであり、SA級と類似したゲル強度を示し、練り製品の製造条件の差によって若干のゲル強度差があるものと見られる。
【0102】
ヒラメ練り製品の場合、1064g×cmのゲル強度を示し、また加熱及び冷却過程を経てタンパク質の特性上よく変性するので、加熱及び調理過程を経て色度が下がる現象が現れ得、練り製品を作った後、白色度を再び測定した。その結果、調理過程を経て練肉状態での値と相違点が大きいことを確認することができ、ヒラメ練り製品は89.32の値を示し、メンタイ練り製品より優れた白色度を示した。
【0103】
【表6】

【0104】
実験例5:ヒラメ練肉摂取時の生理活性測定
イ)ヒラメ練肉加水分解物のACE阻害効果
アンジオテンシノーゲン(Angiotensinogen)は、レニン(Renin)によりアンジオテンシンI(Angiotensin I)に変換され、アンジオテンシンIは、Angiotensin I converting enzyme(ACE)によりAngiotensin IIに転換される。前記アンジオテンシンII(Angiotensin II)は、高血圧を誘発させると知られているが、Angiotensin IIに転換させる役割を果たすACEを阻害するものが高血圧を抑制させることができると知られている。従って、ヒラメ練肉加水分解物を利用してACE阻害活性を測定し、図2に示した。図2は、ヒラメ練肉加水分解物のACE阻害活性を測定したものである。その結果、加水分解物の濃度が高くなるにつれACE阻害率が有意的に増加することを確認した。
【0105】
ロ)ヒラメ練肉加水分解物のHUVECでのNO生成効果
血管内皮細胞(HUVEC)でのNO生成は、血管を弛緩させて高血圧を緩和させると知られており、これによって、ヒラメ練肉加水分解物を処理することでNO生成量の変化を測定した(図3)。図3は、ヒラメ練肉加水分解物のNO生成効果を示したものである。その結果、ヒラメ練肉加水分解物6.25μl/mlの濃度で有意的にNO生成が増加することを確認し、ヒラメ練肉を摂取したとき、高血圧を抑制させることができることが分かった。
【0106】
ハ)ヒラメ練肉の本態性高血圧ラット(Spontaneously hypertensive rats、SHR)への給餌による血圧変化測定
高血圧と高脂血症は、冠動脈疾患、心筋梗塞、脳卒中等、心血管疾患の代表的な危険因子であり、その発病率が増加している。高血圧は、慢性循環器系疾患のうち発生頻度が最も高く、特に原因不明の本態性高血圧が全高血圧の90%に該当する。SHRは、生後6~10週齢に高血圧が発生して収縮期血圧200mmHg以上を維持するシロネズミであり、血圧増加原因が不明でヒトの本態性高血圧の機序研究に多く活用されてきた。
【0107】
そこで、本発明においては、SHRにヒラメ練肉を給餌した後、血圧変化を図4に示した。図4は、ヒラメ練肉の本態性高血圧ラット(Spontaneously hypertensive rats、SHR)への給餌による血圧変化を測定したものである。その結果、ヒラメ練肉給餌3時間後、収縮期血圧を測定したとき、salineを給餌したグループでは31%が増加したのに対し、ヒラメ練肉を給餌したとき、2%のみ増加して対照群に対比して29%血圧が降下したことを確認することができた。参考までに、鰹節(katsuobushi)とマイワシ(sardinops melanostictus)から分離されたペプチドは、陽性対照群として使用した。
【0108】
ニ)Sephadex G-25カラムを用いたヒラメ練肉加水分解物由来の抗高血圧活性ペプチドの分離
Sephadex G-25とサイズ排除クロマトグラフィーを利用して、ヒラメ練肉加水分解物を分子量サイズ別に分画して計3個の分画物を得ており、図5は、Sephadex G-25カラムを用いたヒラメ練肉加水分解物のサイズ排除クロマトグラフィーの結果を示したものである。各分画物の逆相クロマトグラムは図6に示し、各分画物は、220nmと280nmの波長で測定した。分画物1は、非常に多くのピークが検出され、分画物内に多量の物質が含有されたものと見られ、分画物2は、主要ピーク1個の他の小さなピークが検出され、90%以上の純度を示し、分画物3は、主要ピーク1個の他にピークが検出されず、95%以上の純度を示した。
【0109】
ホ)サイズ排除クロマトグラフィー分画物のACE阻害活性測定
前記Sephadex G-25を利用して得られた3個の分画物のACE阻害活性を測定した。表7を参考にすると、分画物1は5kDaを超えるタンパク質を含み、分画物2は1kDa以下、分画物3は1Kda未満のタンパク質を含むことが分かった。
【0110】
【表7】
【0111】
図7は、Sephadex G-25を用いたサイズ排除クロマトグラフィー分画物のACE阻害活性を示したものである。その結果、F2とF3の分画物で優れたACE阻害能を示した。
【0112】
次に、分画物の中で収率が高く、ACE阻害活性が高いF2分画物を利用してペプチドの分子量及びアミノ酸配列をQ-TOF mass spectrometer(Micromass、Altrincham、UK)electrospray ionization(ESI)を使用して測定し、その結果を図8乃至図10に示した。図8乃至図10は、Fraction 2分画物由来ペプチドのアミノ酸配列と分子量を示す。図8を参考にすると、Fraction 2分画物由来ペプチドのアミノ酸配列は、Ile-Val-Asp-Arg(IVDR)であり、分子量は、502.30Daと示された。図9を参考にすると、Fraction 2分画物由来ペプチドのアミノ酸配列は、Val-Ala-Ser-Val-Ile(VASVI)であり、分子量は、488.32Daと示された。また、図10を参考にすると、Fraction 2分画物由来ペプチドのアミノ酸配列は、Trp-Tyr-Lys(WYK)であり、分子量は、496.25Daと示された。
【0113】
【表8】
【0114】
また、それぞれのペプチドのACE阻害効果を測定し、結果は表8にIC50値で示した。IVDRペプチドは、32ug/mlの濃度でACEを50%阻害し、WYKペプチドは、16ug/mlで最も低いIC50値を示し、VASVIペプチドは、57ug/mlの濃度でACEを50%抑制できる効果を示した。
【0115】
<B.抗酸化効果測定>
実施例1:原料購入及び練肉、練り製品の製造
本発明に使用された練肉、練り製品の製造方法は、抗高血圧効果測定で使用されたものと同じ方法を使用して、練肉の一般成分分析、重金属含量、ヒラメのアミノ酸組成、練肉の白色度、練り製品の白色度、及びゲル強度もまた同じ値を示した。
【0116】
実施例2:ヒラメ練肉摂取時の生理活性測定
1)人工消化液の製造及び人工消化液の処理
人工胃液と人工腸液を利用してヒラメ練肉の加水分解物を製造し、人工消化液の製造及び人工消化液の処理方法もまた抗高血圧効果測定で使用されたものと同じ方法を使用した。
【0117】
2)ラジカル消去能測定
ESR(Electron Spin Resonance Spectrometer、JES-FA ESR、JEOL、Japan)を用いたラジカル消去能を確認するために、済州大学校共同実験実習館に保有しているESR機器を使用し、実験方法は、Hiramoto(1993)の方法を変形して使用した。試料20μLと蒸留水20μLを混合後、40mM AAPH 20μLと40mM POBN 20μLを添加して37℃で30分間反応させた後、毛細管チューブに移した後、測定した。分析に使用された条件は、central field 3475G、modulation width 0.2mT、amplitude 500mT、scan width 10mT、microwave power 8mWに設定した後、測定した。
【0118】
3)酸化的ストレスからの細胞保護効果
酸化的ストレスからの細胞保護効果を測定するために、monkey kidney fibroblast cell line(Vero、KCKB No.10081)が使用され、細胞は、37℃のインキュベーターで5%のCO2を供給しながら培養した。培養に使用された培地は、Dulbecco’s modified Eagle’s medium(DMEM、Gibco、USA)に10%fetal bovine serum(FBS、Gibco、USA)とstreptomycin(100μL/mL)を添加して使用した。
【0119】
4)細胞でのapoptosisとnecrosisを形態学的に確認
細胞でのapoptosisとnecrosisを形態学的に確認するために、McKeagueの方法を若干変形して使用した。Vero cellを24-well platesに各well当たり5×104で500μLのmediumと共に分注し、5%CO2が供給されるincubatorで16時間培養した。その後、サンプルを濃度別に処理した後、48時間の間培養し、Hoechst 33342(1X)とpropidium iodide染色薬を10分間反応させ、蛍光顕微鏡で観察した。
【0120】
5)ゼブラフィッシュでの抗酸化効果
24well plateに1well当たり15-20個の受精後、7-9hpf(hour post fertilization)が過ぎたゼブラフィッシュembryoを入れ、embryo media 0.9mLを満たした。sampleを1時間処理した後、AAPHを50μLを処理し、3dpf(day post fertilization)時に蛍光(ROS production、Lipid peroxidation production、Cell death)を通して抗酸化活性を測定し、生存率は7日まで確認した。
【0121】
6)ゼブラフィッシュでの活性酸素(ROS)測定
ゼブラフィッシュで活性酸素(ROS)を測定するために、24well plateでsampleと刺激物質が処理されたゼブラフィッシュを1匹ずつ96well plateに移し、DCFH-DA溶液(20μg/mL)を1時間の間28.5℃の暗室で反応させ、ROS生成量を測定した。反応時間が終了した後、新たなembryo mediaで2回洗浄後にMS-222(0.003%)で1分間麻酔させた後、蛍光顕微鏡を利用して形態学的に観察し、image Jプログラムを利用して数値化させた。
【0122】
7)脂質過酸化(Lipid peroxidation)の生成量測定
脂質過酸化(Lipid peroxidation)の生成量を測定するために、24well plateでsampleと刺激物質が処理されたゼブラフィッシュを1匹ずつ96well plateに移し、DPPP(25μg/ml)を2時間の間28.5℃の暗室で反応させ、lipid peroxidation生成量を測定した。反応時間が終了した後、新たなembryo mediaで2回洗浄後にMS-222(0.003%)で1分間麻酔させた後、蛍光顕微鏡を利用して形態学的に観察し、image Jプログラムを利用して数値化させた。
【0123】
8)ゼブラフィッシュでの細胞死測定
ゼブラフィッシュで細胞死を測定するために、24well plateでsampleと刺激物質が処理されたゼブラフィッシュを1匹ずつ96well plateに移し、Acridine orange溶液(7μg/mL)を30分間28.5℃の暗室で反応させ、細胞死を測定した。反応時間が終了した後、新たなembryo mediaで2回洗浄後にMS-222(0.003%)で1分間麻酔させた後、蛍光顕微鏡を利用して観察し、image Jプログラムを利用して数値化させた。
【0124】
9)ゼブラフィッシュでの毒性(Toxicity)測定
ゼブラフィッシュでの毒性(Toxicity)測定は、24well plateに1well当たり15-20個の受精後、3-4hpf(hour post fertilization)が過ぎたゼブラフィッシュembryoを入れ、embryo media 0.95mLを満たした後、sampleを50μL処理した。2dpf(day post fertilization)時に心拍数を測定し、3dpfに細胞死(Cell death)を通して毒性の程度を測定し、生存率は7日まで確認した。
【0125】
10)ゼブラフィッシュでの心拍数(Heart Beating rate)測定
ゼブラフィッシュでの心拍数(Heart Beating rate)測定は、2dpfのゼブラフィッシュをスライドガラスの上に載せて、顕微鏡を通して1分間の心拍数を測定した。
【0126】
11)ゼブラフィッシュでのreal-time PCRを通したpre-apoptosisサイトカイン(cytokine)測定
3dpfのゼブラフィッシュをe-tubeに入れ、TRIzol Reagentを入れてlysisをさせた。室温で5分間反応させた後、クロロホルムを入れて2-3分間反応させた後、12,000g、4℃で20分間遠心処理して上層液を得た。得た上層液を新たなe-tubeに移し、100%isopropanolを入れて10分間反応後、12,000g、4℃で10分間遠心処理して上層液を捨てた。得たペレットを75%エタノールで洗った後、7500g、4℃で5分間遠心分離後、上層液を捨てて5-10分間空気中にドライさせた。RNAを溶かすために、50ΜlのRNase-free waterを入れて60℃で10-15分間溶かした。RNAを定量後にcDNAを合成させて作製されたp53、Bac、Bid、caspase8、caspase3増幅用プライマーと反応させ、real-time PCRを通して発現の程度を確認した。
【0127】
実験例1:ヒラメ練肉摂取時の生理活性測定
イ)ESRを用いたヒラメ練肉加水分解物のラジカル消去能活性
Free radicalは、生物学的損傷の主な要因とよく知られているが、DPPHとAlkyl radicalは、抗酸化活性評価をするのに主に使用するラジカルの一つである。従って、ヒラメ練肉が消化されたとき、体内でどのような抗酸化活性を有するかを評価し、DPPHとalkyl radical消去能の結果は図11に示した。全般的に濃度が高くなるにつれ活性が増加する傾向を示し、濃度別に有意的にラジカル消去能が増加することを確認した。DPPH radical消去能の場合、10.61mg/mLのIC50値を示し、alkyl radicalの場合、1.09mg/mLのIC50値を示した。
【0128】
ロ)Veroでのヒラメ練肉加水分解物(surimi digest)の酸化的ストレス保護効果
ESR機器を利用してラジカルを消去する結果を得て、次に細胞で酸化的ストレスを誘導させた後、練肉加水分解物がどれほどROSから細胞を保護するかをMTT法を利用して測定し、結果は図12に示した。細胞でAAPHのみ処理して刺激を与えたとき、生存率が70%であるのに対し、ヒラメ練肉加水分解物を濃度別に処理したとき、濃度依存的に細胞生存率が増加する傾向を示した。
【0129】
ハ)ヒラメ練肉加水分解物のapoptosis抑制効果
Vero細胞で試料の濃度が増加するにつれ細胞の生存率が増加することをpropidium iodid(PI)とHoechst 33342で染色して顕微鏡で観察した。図13の結果を見ると、Control群では、Hoechst 33342により白いか、propidium iodid(PI)により赤色に染色された細胞がほとんど見られないが、AAPHを処理したとき、細胞死が起こることを確認することができた。このように酸化的ストレスを起こして細胞死が誘導された細胞にヒラメ練肉加水分解物を濃度別に処理したとき、濃度依存的に細胞死が減少することを確認した。
【0130】
ニ)ヒラメ練肉人工消化液加水分解物のin vivo modelでの抗酸化活性評価
ゼブラフィッシュは、実験動物モデルであるマウスの代わりとなり得る実験動物として脚光を浴びているモデルであり、速い生活史を持っており、卵から孵化して6ヶ月なら成体に成長し、一度に200個余りの卵を産むため、多くの実験モデルを確保することができる。また、ヒトの臓器システムと相当部分類似しており、遺伝子も相同性が高く、ヒトの疾病及び機能性の研究に多く使用されているモデルである。実験のために、水温は28℃に維持し、pHは7.0~7.5、1日に14時間ずつ光を照射した。
【0131】
(1)ゼブラフィッシュを用いた生存率及び心拍数測定
本発明においては、ゼブラフィッシュを利用してin vivoでヒラメ練肉加水分解物の抗酸化実験を進行した。ゼブラフィッシュでもまたAAPHを酸化的ストレスを誘導させる刺激物質として使用し、7日間AAPHを処理したとき、生存率が60%に減少し、ヒラメ練肉加水分解物を処理することで生存率が増加した(図14)。心拍数もまたAAPHで誘発された酸化的ストレスにより心拍数が増加することを示したのに対し、ヒラメ練肉加水分解物を処理したとき、心拍数が正常数値に近接する結果を確認することができた。
【0132】
(2)ヒラメ練肉加水分解物のROS生成抑制活性測定
ヒラメ練肉加水分解物が酸化的ストレスによるROS生成量をどれほど減少させるかを確認した結果(図15A)、AAPHだけを単独で処理したとき、ROS生成量が30%増加し、ヒラメ練肉加水分解物を処理することで濃度依存的にROS生成量が減少することを確認することができた。これを蛍光顕微鏡を利用して形態学的に観察したとき、ROSが発生することで発光する部分がヒラメ練肉加水分解物を処理することで減少することを目視でも観察することができた。
【0133】
酸化的ストレスにより発生する脂質過酸化もまたヒラメ練肉加水分解物の濃度依存的に減少する傾向を示し(図15B)、細胞死もまた濃度依存的に減少することを確認することができた(図15C)。
【0134】
従って、本発明においては、前記In vitroとIn vivo実験を通して、ヒトがヒラメ練肉を実際に摂取し、胃腸管を経て消化液により消化をしたとき、体内での抗酸化活性を有することを確認したのである。
【0135】
(3)ヒラメ練肉加水分解物のPro-apoptosis mRNA発現阻害効果
ゼブラフィッシュにヒラメ練肉加水分解物を処理したとき、pro-apoptosisに関与するmRNAが阻害されるかを確認し、結果は図16に示した。細胞のapoptosisに関与する主要経路としては、細胞が外部からダメージを受けるようになると、p53を通してBaxが発現され、これはCaspase3、6、7の増加につながり、さらにcaspase8、10とBidが発現すると知られている。従って、細胞のapoptosisに関与する因子の変化を測定するために、ヒラメ練肉加水分解物を濃度別に処理した。
【0136】
全てのmRNAでAAPHを処理したとき、数値が上昇することを確認することができ、これは刺激物質AAPHがゼブラフィッシュに酸化的ストレスを誘導させると予想できる。また、ヒラメ練肉加水分解物試料を濃度別に処理したとき、p53、Bax、Bidが濃度依存的に減少し、caspase8とcaspase3もまた濃度依存的に減少することはないが、ヒラメ練肉加水分解物により発現が減少することを確認することができた。
【0137】
ホ)Sephadex G-25カラムを用いたヒラメ練肉加水分解物由来の抗酸化活性ペプチドの分離
Sephadex G-25とサイズ排除クロマトグラフィーを利用して、ヒラメ練肉加水分解物を分子量サイズ別に分画して計3個の分画物を得ており、図17は、Sephadex G-25カラムを用いたヒラメ練肉加水分解物のサイズ排除クロマトグラフィーの結果を示したものである。各分画物の逆相クロマトグラムは図18に示し、各分画物は、220nmと280nmの波長で測定した。分画物1は、非常に多くのピークが検出され、分画物内に多量の物質が含有されたものと見られ、分画物2は、主要ピーク1個の他に小さなピークが検出され、90%以上の純度を示し、分画物3は、主要ピーク1個の他にピークが検出されず、95%以上の純度を示した。
【0138】
ヘ)サイズ排除クロマトグラフィー分画物のAlkylラジカル消去能測定
前記Sephadex G-25を利用して得られた3個の分画物のAlkylラジカル消去能を測定した。表9を参考にすると、分画物1は5kDaを超えるタンパク質を含み、分画物2は1kDa以下、分画物3は1Kda未満のタンパク質を含むことが分かった。
【0139】
【表9】
【0140】
図19は、Sephadex G-25を用いたサイズ排除クロマトグラフィー分画物のAlkylラジカル消去能を測定した結果を示したものである。その結果、F2とF3の分画物で優れたアルキルラジカル消去能を示した。
【0141】
次に、分画物の中で収率が高く、アルキルラジカル消去能が高いF2分画物を利用してペプチドの分子量及びアミノ酸配列をQ-TOF mass spectrometer(Micromass、Altrincham、UK)electrospray ionization(ESI)を使用して測定し、その結果を図20乃至図22に示した。図20乃至図22は、Fraction 2分画物由来ペプチドのアミノ酸配列と分子量を示す。図20を参考にすると、Fraction 2分画物由来ペプチドのアミノ酸配列は、Ile-Val-Asp-Arg(IVDR)であり、分子量は、502.30Daと示された。図21を参考にすると、Fraction 2分画物由来ペプチドのアミノ酸配列は、Val-Ala-Ser-Val-Ile(VASVI)であり、分子量は、488.32Daと示された。また、図22を参考にすると、Fraction 2分画物由来ペプチドのアミノ酸配列は、Trp-Tyr-Lys(WYK)であり、分子量は、496.25Daと示された。
【0142】
【表10】
【0143】
ヒラメ練肉加水分解物の分画物2から分離された3つのペプチドの抗酸化効果を確認するために、アルキルラジカル消去能を測定した。その結果は表10に示し、IVDRは、68μg/mlの濃度で50%のラジカル消去能を示し、WYKペプチドは40μg/ml、VASVIペプチドは77μg/mlの濃度で50%の消去能を示した。
【0144】
以上において、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は、これに限定されるものではなく、下記の請求の範囲において定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態もまた本発明の権利範囲に属するものである。
本発明は以下の態様を含む。
<1> 配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、高血圧治療または予防用薬学組成物。
<2> 前記ペプチドは、ヒラメの加水分解物またはヒラメ練肉の加水分解物の分画物から分離されたものである、<1>に記載の薬学組成物。
<3> 前記ペプチドは、抗酸化活性を有するものである、<1>に記載の薬学組成物。
<4> 前記加水分解物は、ペプシン、トリプシン、またはα-キモトリプシンの加水分解物のものである、<2>に記載の薬学組成物。
<5> 配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、高血圧改善または予防用食品組成物。
<6> 前記ペプチドは、ヒラメの加水分解物またはヒラメ練肉の加水分解物の分画物から分離されたものである、<5>に記載の食品組成物。
<7> 前記ペプチドは、抗酸化活性を有するものである、<5>に記載の食品組成物。
<8> 前記食品組成物は、健康機能食品のものである、<5>に記載の食品組成物。
<9> 配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、ヒラメの練肉。
<10> 配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、ヒラメの練り製品。
<11> ヒラメを磨砕及び水洗した後、精製処理するステップを含む、配列番号1、配列番号2または配列番号3で表示されるアミノ酸配列からなるペプチドを有効成分として含む、ヒラメ練肉の製造方法。
<12> <11>に記載の製造方法により製造されたヒラメ練肉と食塩を混合するステップを含む、ヒラメ練り製品の製造方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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【配列表】
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