IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ユナイテッド ステーツ オブ アメリカ、アズ リプリゼンテッド バイ ザ セクレタリー、ディパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズの特許一覧

特許7144453多視点撮像による三次元蛍光偏光のためのシステム及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】多視点撮像による三次元蛍光偏光のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20220921BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
G02B21/00
G01N21/64 E
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019566626
(86)(22)【出願日】2018-05-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-03
(86)【国際出願番号】 US2018035303
(87)【国際公開番号】W WO2018222816
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-03-17
(31)【優先権主張番号】62/513,519
(32)【優先日】2017-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519314559
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステーツ オブ アメリカ、アズ リプリゼンテッド バイ ザ セクレタリー、ディパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】シュロフ、ハリ
(72)【発明者】
【氏名】クマール、アビシェーク
(72)【発明者】
【氏名】メータ、シャリン ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ラ リビエール、パトリック ジーン
(72)【発明者】
【氏名】オルデンブルク、ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ウー、イーツォン
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラー、タロン
【審査官】瀬戸 息吹
(56)【参考文献】
【文献】特表平11-513145(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0126046(US,A1)
【文献】国際公開第2017/035078(WO,A1)
【文献】特開2008-111916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00 - 21/36
G01N 21/00 - 21/01
G01N 21/17 - 21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを放射するための光源と、
前記光ビームを偏光ビームに変換するための第1の偏光光学系と、
前記偏光ビームを第1の偏光ビームと第2の偏光ビームに分割するビームスプリッタと、
前記第1の偏光ビームが第1の角度に沿って試料を照射することで第1の蛍光発光を生成するように、第1の軸に沿って配向された第1の対物レンズと、
前記第2の偏光ビームが、前記第1の角度に対して平行でない第2の角度で前記試料を照射することで第2の蛍光発光を生成するように、第2の軸に沿って配向された第2の対物レンズと、
前記第2の蛍光発光から画像を受け取るために前記第1の対物レンズと連通している第1の検出器と、
前記第1の蛍光発光から画像を受け取るために前記第2の対物レンズと連通している第2の検出器と、
前記第1の対物レンズからの前記第2の蛍光発光及び前記第2の対物レンズからの前記第1の蛍光発光の画像を受信するために、前記第1の検出器及び前記第2の検出器それぞれと通信し、前記第1の対物レンズ及び前記第2の対物レンズによってそれぞれ検出された前記第1の蛍光発光及び前記第2の蛍光発光に基づいて、1つ又は複数の三次元構造に結合した励起双極子の配向分布を生成するプロセッサと、を含む、
蛍光顕微鏡システム。
【請求項2】
前記第1の対物レンズの前記第1の軸と、及び前記第2の対物レンズの前記第2の軸とに対して非平行の関係である第3の軸に沿って配向された第3の対物レンズと、
記試料からの第3の蛍光発光を検出する第3の検出器と、をさらに含む、請求項1に記載の蛍光顕微鏡システム。
【請求項3】
3の蛍光発光から画像を受け取るための第3の検出器と連通している第3の対物レンズをさらに含む、請求項に記載の蛍光顕微鏡システム。
【請求項4】
前記第3の検出器は、前記第3の対物レンズからの前記第3の蛍光発光の画像を受信するためのプロセッサと通信する、請求項に記載の蛍光顕微鏡システム。
【請求項5】
前記試料を照射する前に前記第1の偏光ビームの偏光をさらに変更するための前記第1の対物レンズに関連する第2の偏光光学系と、
前記試料を照射する前に前記第2の偏光ビームの偏光をさらに変更するための前記第2の対物レンズに関連する第2の偏光光学系と、
をさらに含む、請求項1に記載の蛍光顕微鏡システム。
【請求項6】
前記第1の偏光光学系が、波長板、偏光子、及び液晶を含む、請求項1に記載の蛍光顕微鏡システム。
【請求項7】
前記第1の偏光ビームを前記第1の対物レンズに向け直すために前記ビームスプリッタと連通する第1のダイクロイックミラーと、
前記第2の偏光ビームを前記第2の対物レンズに向け直すために前記ビームスプリッタと連通する第2のダイクロイックミラーと、
をさらに含む、請求項1に記載の蛍光顕微鏡システム。
【請求項8】
前記第1の対物レンズ及び前記第2の対物レンズは、前記第1の偏光ビーム及び前記第2の対物レンズをそれぞれ交互に用いて前記試料を照射する、請求項1に記載の蛍光顕微鏡システム。
【請求項9】
前記第1の対物レンズ及び前記第2の対物レンズが、それぞれ前記第1及び第2の蛍光発光を交互の順序で検出する、請求項1に記載の蛍光顕微鏡システム。
【請求項10】
前記第2の対物レンズによって検出される前記第1の蛍光発光は、前記第2の対物レンズの前記第2の軸に対して非平行な関係にある第1の平面に沿って配向され、
前記第1の対物レンズによって検出される前記第2の蛍光発光は、前記第1の対物レンズの前記第1の軸に対して非平行な関係にある第2の平面に沿って配向される、請求項1に記載の蛍光顕微鏡システム。
【請求項11】
レーザ光ビームを放射するためのレーザ源と、
前記レーザ光ビームを偏光ビームに変換するための第1の偏光光学系と、
前記偏光ビームを第1の偏光ビームと第2の偏光ビームに分割するビームスプリッタと、
前記第1の偏光ビームが第1の角度に沿って試料を照射することで第1の複数の励起双極子から第1の蛍光発光を生成するように、第1の軸に沿って配向された第1の対物レンズと、
前記第2の偏光ビームが前記第1の角度に対して平行でない第2の角度で前記試料を照射することで第2の複数の励起双極子から第2の蛍光発光を生成するように第2の軸に沿って配向された第2の対物レンズと、
前記第1の複数の励起双極子及び前記第2の複数の励起双極子のそれぞれの位置及び配向を決定するために、前記第1の蛍光発光及び前記第2の蛍光発光を受信するプロセッサと、を含み、
前記第1の対物レンズは前記第1の軸に対して垂直な角度で配向された前記第1の複数の励起双極子を検出するように配向され、前記第2の対物レンズは前記第2の軸に対して垂直な角度で配向された前記第2の複数の励起双極子を検出するように配向される、蛍光顕微鏡システム。
【請求項12】
前記第1の対物レンズは前記第1の軸に対して平行な角度で配向された前記第1の複数の励起双極子を検出しないように配向され、前記第2の対物レンズは前記第2の軸に対して平行な角度で配向された前記第2の複数の励起双極子を検出しないように配向される、請求項11に記載の蛍光顕微鏡システム。
【請求項13】
レーザ光ビームを生成するステップと、
前記レーザ光ビームを偏光ビームに変換するステップと、
前記偏光ビームを第1の偏光ビームと第2の偏光ビームに分割するステップと、
第1の角度に沿って配向された第1の対物レンズを介して試料を照射することで第1の蛍光発光を生成するステップと、
前記第1の角度に対して平行でない第2の角度に配向された第2の対物レンズを介して前記試料を照射することで、第2の蛍光発光を生成するステップと
1の軸に対して非平行な関係にある平面に沿って配向された前記第2の対物レンズを介して前記第2の蛍光発光の第1の複数の励起双極子を検出し、2の軸に対して非平行な関係にある第2の平面に沿って配向された前記第1の対物レンズを介して前記第1の蛍光発光の第2の複数の励起双極子を検出するステップと、
各偏光状態について1つ以上の検出器を介して前記第1及び第2の蛍光発光の一連の画像を収集するステップと、
前記第1及び第2の複数の励起双極子のそれぞれの位置及び配向を決定するために、前記第1及び第2の蛍光発光の前記収集された一連の画像を処理するステップと、を含む、
試料からの蛍光発光によって生成される励起双極子の位置及び配向を決定する方法。
【請求項14】
前記レーザ光ビームの偏光状態が任意に変更される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1及び第2の蛍光発光の前記収集された一連の画像を処理するときに、再構成アルゴリズムが適用される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は三次元蛍光偏光励起のためのシステム及び方法に関し、特に、三次元以上の蛍光分子の位置及び配向のマップを生成する蛍光顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光タンパク質を含むほとんどの蛍光体は双極子として光を吸収し、発する。これは、蛍光体の位置だけでなく、蛍光体及び蛍光体が結合する分子集合体の配向も明らかにする可能性を作り出す。偏光蛍光を励起及び/又は検出する装備を有する偏光顕微鏡は、この可能性をすでに利用している。分子集合体の配向及び運動は、細胞機能又は疾患の方向性を決定する。例えば、創傷治癒又は転移の際の方向性細胞移動は、移動方向へ向かう正味の力を生成するパターン化されたアクチンネットワークの流れに依存する。
【0003】
分子配向は、双極子励起のための偏光又は双極子放射の偏光分析のいずれか、又はその両方を使用することによって明らかになる。しかしながら、現在の顕微鏡は単一の観察方向から試料を照射し、画像化している。したがって、励起光及び発せられた蛍光の偏光は、図2A及び2Bに示されるように、照射/観察方向に対して垂直な平面に主に限定される。照射/観察方向に対して平行な双極子は、効率的に励起も検出もできず、したがって、三次元構造に結合した蛍光体の完全な配向分布を決定することを困難にするか、又は不可能にさえする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の様々な態様は、とりわけ、これらの観察を念頭に置いて考案され、開発されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、本開示の一態様による蛍光顕微鏡システムの一実施形態を示す簡略図である。
【0006】
図2図2Aは、従来の落射蛍光顕微鏡の概略図を示し、図2Bは、本開示の一態様による、従来のデュアルビュー選択的平面照射顕微鏡システムの概略図を示す。
【0007】
図3図3A及び3Bは、本開示の一態様による、偏光分解励起によって生成された蛍光強度の落射検出を使用して三次元双極子配向を得るための測定スキームを示す。
【0008】
図4図4A及び4Bは、本開示の一態様による、偏光分解励起によって生成された蛍光強度の直交検出を使用して三次元双極子配向を得るための別の測定スキームを示す。
【0009】
図5図5Aは、照射光の異なる偏光で得られた撮像ボリュームに対応する最大強度投影画像を示す画像であり、図5Bは、本開示の一態様による、結果として得られる再構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
対応する参照符号は、図面中の対応する要素を示す。図面で使用される見出しは、特許請求の範囲を限定するものではない。
【0011】
本明細書に記載されるように、試料から発せられる蛍光色素の双極子モーメントが双極子の三次元配向に関わりなく励起され得るように、蛍光偏光画像化を拡張するためのシステム及び方法を開示する。一態様では、双極子は複数の方向から励起され、それによって、双極子が検出対物レンズの軸(伝播)軸に沿って好ましくない向きになっている場合であっても、試料の励起が複数の向きに沿って起こることを保証する。一実施形態では、デュアルビュー倒立選択的平面照射顕微鏡(diSPIM)を使用して、試料を照射し、試料から、互いに対して非平行な関係にある2つの異なる方向から発せられる、結果として生じる偏光蛍光発光を検出する。一実施形態では、試料の偏光分解励起及び発せられた偏光蛍光の落射検出が、試料を励起し、発せられた蛍光を検出するために使用される同じ励起/検出対物レンズの焦点面に沿って励起双極子の三次元配向を捕捉する。一実施形態では、試料から発せられる蛍光の励起及び非平行検出の交互シーケンスにおける試料の偏光分解励起は、それぞれの検出対物レンズの軸平面又は子午面における励起双極子の三次元配向の投影の実質的に大部分を捕捉する。一実施形態では、システムが1つ又は複数の対物レンズによって検出された試料によって発せられた偏光蛍光発光において検出された各励起双極子の位置及び三次元配向に関連するデータを捕捉するために、1つ又は複数の検出器と動作可能に通信するプロセッサを含む。プロセッサは、照射されている試料から発せられた蛍光発光において検出された各ボクセルにおける励起双極子の三次元方向及び位置を計算するように操作可能である。いくつかの実施形態では、システムがプロセッサが1つ又は複数の検出器によって検出された各励起双極子の位置及び三次元配向を決定することができるように、異なる励起偏光を有する複数の画像を捕捉する。図面を参照すると、照射された試料の各ボクセルの三次元双極子配向及び位置を決定するためのシステムの実施形態が示されており、図1図4に100として一般的に示されている。
【0012】
図1を参照すると、100で示される蛍光顕微鏡システムの一実施形態が示されている。一態様では、蛍光顕微鏡システム100は、照射されている試料114から発せられる蛍光発光における励起双極子の位置及び配向を決定するように操作可能である。
【0013】
いくつかの実施形態では、蛍光顕微鏡システム100は、光ビーム101を偏光103に偏光させるための第1の偏光光学系129によって偏光された光ビーム101を放射するための、光源102を含む。いくつかの実施形態では、第1の偏光光学系129は、光ビーム101を偏光させるために、波長板、偏光子、及び/又は1つ又は複数の液晶を含むことができる。いくつかの実施形態では、光源102はレーザ光ビームを放射するためのレーザであってもよいが、他の実施形態では、光源102は偏光可能な光ビームを放射するランプなどの他の光源であってもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、偏光103はビームスプリッタ106によって分割偏光103A及び103Bに分割されてもよい。いくつかの実施形態では、分割偏光103Aは、第1の軸300に沿って試料114を照射するために、分割偏光103Aを分割偏光103Cにさらに偏光させるための第2の偏光光学系130を含み得る第1の対物レンズ108を介して第1のダイクロイックミラー134によって方向転換される。図示のように、分割偏光103Bは、第1の軸300に対して直交関係にある第2の軸302に沿って試料114を照射するために、分割偏光103Bを分割偏光103Dにさらに偏光させるための第3の偏光光学系132を含み得る第2の対物レンズ110を介してダイクロイックミラー136によって方向転換される。
【0015】
試料114が照射されると、試料114から第1の軸300に実質的に直交する平面に沿って発せられる偏光蛍光発光105は、第1の対物レンズ108によって検出されるが、試料から第1の軸300に実質的に平行な平面に沿って発せられる偏光蛍光発光105は、第1の対物レンズ108によって検出されない。さらに、試料114から第2の軸302に実質的に直交する平面に沿って発せられる偏光蛍光発光105は、第2の対物レンズ110によって検出されるが、試料114から第2の軸302に実質的に平行な平面に沿って発せられる偏光蛍光発光105は、第2の対物レンズ110によって検出されない。この構成では、第1の対物レンズ108と第2の対物レンズ110との間の直交関係により、蛍光顕微鏡システム100は励起双極子を、それらの配向軸に関係なく検出することができる。他の実施形態では、第1の対物レンズ108及び第2の対物レンズ110は、互いに対して平行でない角度で配向されてもよい。
【0016】
一構成では、第1の対物レンズ108によって検出された偏光蛍光発光105は、第1の検出器116による検出のために、第1の管レンズ122を通して第1のダイクロイックミラー134によって方向転換されてもよい。さらなる構成では、第2の対物レンズ110によって検出された蛍光発光105が第2の検出器118による検出のために、第2の管レンズ124を通って第2のダイクロイックミラー136によって方向転換されてもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、第3の対物レンズ112を、試料114の平面304の下に配置し、第1の軸300及び第2の軸302に対してそれぞれ135度の角度を形成する第3の軸306に沿って配向してもよい。第3の対物レンズ112は、試料114の平面304の下で、試料114の平面304に垂直な角度で発せられる蛍光発光105を検出するように機能する。いくつかの実施形態では、第3の対物レンズ112によって検出された蛍光発光105は、第3の検出器120による検出のために、第3の管レンズ126を通して撮像されてもよい。いくつかの実施形態では、第3の対物レンズ112が第1の軸300及び第2の軸302に対してそれぞれ平行でない角度で配向されてもよい。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1の検出器116、第2の検出器118、及び第3の検出器120はそれぞれ、第1の検出器116、第2の検出器118、及び第3の検出器120から捕捉された蛍光発光105の画像に基づいて励起双極子の位置及び三次元配向を計算するための1つ又は複数のアルゴリズムを利用する1つ又は複数のプロセッサ128と動作可能に通信する。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の対物レンズ108及び110は、例えば、ニコンNA0.8レンズ、ニコンNA0.8レンズ、ニコンNA1.1レンズ、スペシャルオプティクス社NA0.71レンズとすることができるが、他のタイプ又は種類の対物レンズも考えられる。
【0020】
いくつかの実施形態では、蛍光顕微鏡システム100は、落射検出動作モード(図2A)又は直交検出動作モード(図2B)のいずれかで動作することができる。図2Aに示す落射検出動作モードでは、単一の対物レンズ、例えば、第1の対物レンズ108が偏光光線を軸Aに沿った方向に集束させて試料114を照射し、次いで、同じ対物レンズが試料によって発せられた結果として生じる蛍光発光を検出する。この検出モードでは、第1の対物レンズ108の軸に対して垂直な平面に沿って試料によって発せられた偏光蛍光発光が第1の対物レンズ108によって検出される。
【0021】
図3A及び3Bに示すように、落射検出動作モードでは、蛍光顕微鏡システム100が同じ対物レンズ、例えば、第1の対物レンズ108を照射し、次いで、第1の対物レンズ108の軸300に対して非平行な関係にある平面304に沿って配向された放射双極子の偏光蛍光発光を検出する。この構成では、第2の対物レンズ110は、第1の対物レンズ108が試料114を照射し結果として生じる偏光蛍光発光を検出するときは、不使用状態である。交互に、第1の対物レンズ108が照射及び検出のシーケンスを完了すると、第2の対物レンズ110が試料114を照射し、次いで、第2の対物レンズ110に対して平行に配向されていない励起双極子の偏光蛍光発光を検出する。換言すれば、第1の対物レンズ108は第2の対物レンズ110によって検出できない励起双極子の偏光蛍光発光を検出し、その逆も同様である。
【0022】
図2Bに示す直交検出動作モードでは、二つの対物レンズ構成がそれぞれの検出対物レンズの軸に対して垂直な平面に沿って交互に、照射し、結果として生じる偏光蛍光発光を検出する。具体的には、第1の対物レンズ108が試料114を照射し、次いで第2の対物レンズ110が第2の対物レンズ110の軸に対して非平行な関係にある平面に沿って配向された励起双極子を検出する。次に、交互に、第2の対物レンズ110が試料114を照射し、第1の対物レンズ108が、第1の対物レンズ108の軸に対して非平行な関係にある平面に沿って配向された励起双極子を検出する。このようにして、第1及び第2の対物レンズ108及び110は、それぞれの対物レンズの軸に直接平行でない軸に沿って配向された励起双極子を検出することができ、その結果、第1及び第2の対物レンズ108及び110は集合的に、任意の特定の配向に沿って整列された励起双極子を検出することができる。
【0023】
図4A及び図4Bに示すように、直交検出動作モードでは、蛍光顕微鏡システム100が上述の2つの対物レンズ構成を利用して、それぞれの検出対物レンズの軸に対して非平行な関係にある平面に沿って交互に、照射し、配向された励起双極子の結果として生じる蛍光発光を検出する。図4Aを参照すると、第1の動作シーケンスにおいて、第1の対物レンズ108は第1の対物レンズ108の軸300に沿って試料114を照射し、試料114から発せられる蛍光発光を生成する。次に、第2の対物レンズ110は、第2の対物レンズ110の軸302に対して非平行な関係にある平面に沿って配向された励起双極子からの蛍光発光を検出する。図4Bを参照すると、第2の動作シーケンスにおいて、第2の対物レンズ110は第2の対物レンズ110の軸302に沿って試料114を照射し、試料114から発せられる蛍光発光を生成する。次いで、第1の対物レンズ108は、第1の対物レンズ108の軸300に対して非平行な関係にある平面に沿って配向された励起双極子からの蛍光発光を検出する。励起双極子は第1の対物レンズ108又は第2の対物レンズ110のいずれかに対して平行でない関係にある平面に沿って配向されるので、照射及び検出の交互のシーケンスは蛍光顕微鏡システム100がそれぞれの励起双極子の配向に関わりなく、励起双極子によって発せられる蛍光発光を検出することを可能にする。
【0024】
いくつかの実施形態では、プロセッサ128が第1の対物レンズ108、第2の対物レンズ110、及び第3の対物レンズ112によってそれぞれ検出された第1の蛍光発光、第2の蛍光発光、及び第3の蛍光発光の画像に基づいて、各励起双極子の位置及び配向を生成する。そのようなものとして、プロセッサ128は、少なくとも三次元配向で1つ以上の三次元構造に結合された検出された励起双極子の配向分布を生成する。
【0025】
さらに、レーザ光ビーム101の偏光状態は、第1の偏光光学系129、第2の偏光光学系130及び/又は第3の偏光光学系132によって任意に変更することができる。検出器128は、各偏光状態について、第1、第2、及び/又は第3の蛍光発光105の画像を収集することができる。
【0026】
いくつかの実施形態ではビームスプリッタ106は必要とされず、第1、第2、及び第3の対物レンズ108、110、及び112のそれぞれは、必ずしも他の2つの光源102から必ずしも独立しているわけではない専用光源101を有することができる。
【0027】
[試験]
プロトタイプの顕微鏡システムを、この方法を実施に移すことができるように構築した。プロトタイプ顕微鏡システムは、各対物レンズを通して偏光励起を生成するための偏光光学系を装備した非対称対物レンズ(図1に示す第1及び第2の対物レンズ110及び108に対応する、ニコンNA1.1、スペシャルオプティクス社0.71NA)を有するデュアルビュー倒立SPIMを含んでいた。この方法を実証するため、Alexa Fluor(登録商標)488ファロイジンで免疫染色したアクチンフィラメントを画像化した。この標識はアクチンフィラメントに強く結合し、結合したフィラメントの相対配向及び分極励起に依存する強く分極した蛍光を生成する。8つの容積積スタックを得たが、まず、108の異なる配向(0°、45°、90°、及び135°、図5の実施例、左側)によって導入された偏光照射で試料を励起し、110を通して蛍光を収集し、次にこの過程を、110を通して偏光照射(配向0°、45°、90°、及び135°、108を通して蛍光を収集)によって繰り返すことによって得た。
【0028】
次に、各ボクセルの平均配向を予測するアルゴリズムを利用して、プロセッサ上で再構成を実行した。このアルゴリズムは、励起及び放射プロセスのモデルを使用して、平均双極子配向と機材によって測定された強度との間の関係を推測する。測定された強度から平均双極子配向を回復するために、物体を球面調和関数に展開し、角周波数空間における線形化再構成問題を解いた。図5Aに示すように、例示的な生データ(固定U202細胞中のAlexa Fluor(登録商標)ファロイジン標識アクチン)は、照射光の異なる偏光(NA0.71対物レンズ(第1の対物レンズ108)を通して導入され、NA1.1対物レンズ(第2の対物レンズ110)を通して収集された)で得られた撮像容積に対応する最大強度投影画像を示す。入力照射の向きは、各画像への挿入図に示されている。このデータに加えて、第1の対物レンズ108を介して収集された(第2の対物レンズ110を介して異なる向きで励起された)4つの容積の追加のセットが再構成アルゴリズムへの入力データを形成する。図5Bは再構成の結果を示している。データからの例示的な投影は、各ボクセル内の向き(ブラウングリフ)を示す。一態様では、再構成が照射の異なる向きで捕捉されたマルチビュー蛍光画像から向きを導出することを可能にする。
【0029】
以上から、特定の実施形態を図示し、説明したが、当業者には明らかなように、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことができることを理解されたい。そのような変更及び修正は、添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲及び教示の範囲内である。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A-5B】