IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソフトハレ エヌヴイの特許一覧

<>
  • 特許-多液ノズルを備えた吸入装置および方法 図1
  • 特許-多液ノズルを備えた吸入装置および方法 図2
  • 特許-多液ノズルを備えた吸入装置および方法 図3
  • 特許-多液ノズルを備えた吸入装置および方法 図4
  • 特許-多液ノズルを備えた吸入装置および方法 図5
  • 特許-多液ノズルを備えた吸入装置および方法 図6
  • 特許-多液ノズルを備えた吸入装置および方法 図7
  • 特許-多液ノズルを備えた吸入装置および方法 図8
  • 特許-多液ノズルを備えた吸入装置および方法 図9
  • 特許-多液ノズルを備えた吸入装置および方法 図10
  • 特許-多液ノズルを備えた吸入装置および方法 図11
  • 特許-多液ノズルを備えた吸入装置および方法 図12
  • 特許-多液ノズルを備えた吸入装置および方法 図13
  • 特許-多液ノズルを備えた吸入装置および方法 図14
  • 特許-多液ノズルを備えた吸入装置および方法 図15
  • 特許-多液ノズルを備えた吸入装置および方法 図16
  • 特許-多液ノズルを備えた吸入装置および方法 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】多液ノズルを備えた吸入装置および方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 11/00 20060101AFI20220921BHJP
   A61M 15/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
A61M11/00 D
A61M15/00 Z
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019568356
(86)(22)【出願日】2018-06-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 EP2018066716
(87)【国際公開番号】W WO2018234525
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】17177462.3
(32)【優先日】2017-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】62/523,578
(32)【優先日】2017-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519084526
【氏名又は名称】ソフトハレ エヌヴイ
【氏名又は名称原語表記】SOFTHALE NV
【住所又は居所原語表記】Agoralaan building Abis, 3590 Diepenbeek Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】バルテルズ, フランク
(72)【発明者】
【氏名】ラヴェルト, ユーゲン
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/123207(WO,A1)
【文献】特表2015-528745(JP,A)
【文献】特表2007-535352(JP,A)
【文献】特表2002-528184(JP,A)
【文献】特表2012-517831(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/00
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル生成用の医学的に活性な液体(F)の吸入装置であって、液体(F)を保存するための少なくとも1つのリザーバ(2、2A、2B)を内部に含むハウジング(1)と、内部で圧力を生成する少なくとも1つのポンプ室(3、3A、3B)を含み、前記ポンプ室(3、3A、3B)は前記リザーバ(2、2A、2B)の方向にブロックする逆止弁(4、4A、4b)を介して前記リザーバ(2、2A、2B)に流体的に接続される、少なくとも1つのポンプユニットと、前記ポンプ室(3、3A、3B)内のリザーバに面する内端(5A’、5B’)の少なくとも1つによって受け取られ得る少なくとも1つのライザーパイプ(5、5A、5B)と、前記ライザーパイプ(5、5A、5B)の外端(5A’’、5B’’)に液密に接続されたノズル(6)と、を備え、前記少なくとも1つのポンプ室(3、3A、3B)の内部容積は、前記ライザーパイプ(5、5A、5B)に対する前記ポンプ室(3、3A、3B)の相対運動によって変更可能であり、前記少なくとも1つのライザーパイプ(5、5A、5B)は前記ハウジング(1)または前記ノズル(6)にしっかりと取り付けられて不動であり、前記少なくとも1つのポンプ室(3、3A、3B)は前記ハウジング(1)または前記ノズル(6)に対して移動可能であり、前記ノズル(6)は前記ハウジング(1)にしっかりと取り付けられ、前記ノズル(6)は、主軸線(Z)と、それぞれの噴出軌道に沿って液体(F、F1、F2)を噴出するように適合された少なくとも3つの噴出チャネル(6A、6B、6C、6D)とを有し、少なくとも2つの前記噴出軌道が互いに交差する少なくとも1つの衝突点(X、X1、X2)が提供される、吸入装置。
【請求項2】
個々の前記軌道が前記ノズル(6)を出るすべての噴出角(A、A1、A2)が同一である、請求項1に記載の吸入装置。
【請求項3】
個々の前記軌道が前記ノズル(6)を出る噴出角(A、A1、A2)の少なくとも1つが他の前記噴出角(A、A1、A2)とは異なる、請求項1に記載の吸入装置。
【請求項4】
少なくとも2つ、またはすべての前記衝突点(X、X1、X2)が、前記主軸線(Z)に垂直な同一平面(P)内に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項5】
少なくとも2つ、またはすべての前記衝突点(X、X1、X2)が前記主軸線(Z)に垂直な異なる平面(P1、P2)上に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項6】
前記ノズル(6)の前記主軸線(Z)に関して、すべての衝突点(X、X1、X2)が前記主軸線(Z)上に位置する、請求項1~5のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項7】
前記ノズル(6)の前記主軸線(Z)に関して、少なくとも1つの衝突点(X、X1、X2)が前記主軸線(Z)からオフセットされる、請求項1~5のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項8】
前記ノズル(6)のすべての前記噴出チャネル(6A、6B、6C、6D)の断面が同一である、請求項1~7のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項9】
前記ノズルの少なくとも1つの前記噴出チャネル(6A、6B、6C、6D)が、別の噴出チャネル(6A、6B、6C、6D)の断面とは異なる断面を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項10】
前記ノズル(6)のすべての前記噴出チャネル(6A、6B、6C、6D)が、同じ前記ポンプ室(3)または液体型リザーバ(2)に接続されることにより、すべての衝突点(X、X1、X2)に同じ前記液体(F)が供給され得る、請求項1~9のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項11】
前記ノズル(6)の少なくとも2つの前記噴出チャネル(6A、6B、6C、6D)が、個別の前記ポンプ室(3A、3B)または液体リザーバ(2A、2B)に接続されることにより、異なる液体(F1、F2)が供給され得る少なくとも1つの衝突点(X、X1、X2)が提供される、請求項1~9のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項12】
前記ノズル(6)の少なくとも2つの前記噴出チャネル(6A、6B、6C、6D)が、上流に配置された共通の混合室に接続される、請求項1~11のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項13】
前記ノズル(6)の少なくとも2つの前記噴出チャネル(6A、6B、6C、6D)が共通の入口を共有し、噴出チャネルの対またはグループを形成するような交差する軌道を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項14】
前記ノズル(6)のすべての噴出チャネル(6A、6B、6C、6D)が個別の入口を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項15】
2つの噴出チャネル(6A、6B、6C、6D)が対を形成しており、第1の噴出チャネル(6A、6B、6C、6D)の上流端に接続するように配置された主供給チャネル(10、10A、10B)と、前記主供給チャネル(10、10A、10B)を第2の噴出チャネル(6A、6B、6C、6D)の上流端に接続する交差チャネル(11、11A、11B)と、をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項16】
複数の対を有するノズル(6)を備え、前記対の一方の前記噴出チャネル(6A、6B、6C、6D)の出口開口部は、対称軸線を形成する前記主軸線(Z)に関して、前記対のもう一方の前記噴出チャネル(6A、6B、6C、6D)の出口開口部に対して回転位置にあり、それぞれの前記交差チャネルは前記対称軸線に沿って互いに間隔を空けられている、請求項15に記載の吸入装置。
【請求項17】
前記ノズル(6)が、前面と、前記前面の反対側の背面とを有し、前記前面は、前記噴出チャネル(6A、6B、6C、6D)の出口開口部を含み、前記背面は本質的に平坦であり、前記主供給チャネル(10、10A、10B)への入口を形成する複数の開口部(12、12A、12B)を含む、請求項15または16に記載の吸入装置。
【請求項18】
前記ノズル(6)が二次元プレートの積み重ねとして構築されるか、または前記ノズル(6)が三次元回転対称の基本形状から構築される、請求項1~17のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項19】
前記ノズル(6)が、異なる液体(F1、F2)が供給され得る少なくとも2つの噴出チャネル(6A、6B、6C、6D)を有し、前記噴出チャネル(6A、6B、6C、6D)は、上流に配置された個別のポンプユニットのそれぞれの前記ポンプ室(3、3A、3B)に接続される、請求項1~18のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項20】
前記ノズル(6)が、異なる液体(F1、F2)が供給され得る少なくとも2つの噴出チャネル(6A、6B、6C、6D)を有し、前記噴出チャネル(6A、6B、6C、6D)は、1つの共通のポンプユニットに統合された個別のポンプ室(3、3A、3B)に接続される、請求項1~18のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項21】
前記ノズル(6)が、異なる液体(F1、F2)が供給される共通の混合室から供給可能な少なくとも2つの噴出チャネル(6A、6B、6C、6D)を有し、前記混合室は、上流に配置された個別のポンプユニットのそれぞれのポンプ室(3、3A、3B)に接続される、請求項1~18のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項22】
前記ノズル(6)が、異なる液体(F1、F2)が供給される共通の混合室から供給可能な少なくとも2つの噴出チャネル(6A、6B、6C、6D)を有し、前記混合室は、1つの共通のポンプユニットに統合された個別のポンプ室(3、3A、3B)に接続される、請求項1~18のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項23】
前記リザーバ(2、2A、2B)が、前記ポンプ室(3、3A、3B)にしっかりと取り付けられていることにより、前記ハウジング(1)内で移動可能である、請求項1~22のいずれか一項に記載の吸入装置。
【請求項24】
前記リザーバ(2、2A、2B)が、可撓性要素によって前記ポンプ室(3、3A、3b)に接続され、前記ハウジング(1)にしっかりと取り付けられている、請求項1~22のいずれか一項に記載の吸入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体用の吸入装置の分野に関する。特に、本発明は、噴霧ノズルを有する吸入装置、およびそのような吸入装置によって医学的に活性な液体のエアロゾルを生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体用の噴霧器または他のエアロゾル発生器は、古くから当技術分野で知られている。とりわけ、そのような装置は医学および治療に使用されている。医学および治療において、噴霧器または他のエアロゾル発生器は、エアロゾル、すなわち気体に埋め込まれた小さな液滴の形態の活性成分の用途のための吸入装置として機能する。そのような吸入装置は、例えば、欧州特許第0627230号明細書から知られている。この吸入装置の重要な構成要素は、エアロゾル化される液体が含有されるリザーバ、噴霧するのに十分高い圧力を発生させるためのポンプユニット、およびノズルの形態の霧化装置、である。ポンプユニットは、流体材料を移動もしくは圧縮でき、少なくとも1つのポンプ室を備え、随意的に本体、界面などのような補助構成要素もさらに備えているユニットまたは装置構成要素として規定される。ポンプユニットにより、液体は個別の量で、すなわち、連続的ではなく、リザーバから引き出され、ノズルに供給される。ポンプユニットは推進剤なしで作動し、機械的に圧力を発生させる。
【0003】
そのような吸入装置の既知の実施形態は、国際公開第91/14468号パンフレットに提示されている。そのような装置では、ハウジングに接続されたポンプ室内の圧力は、可動中空ピストンの動きによって生成される。ピストンは、不動のポンプ室の内側に移動可能に配置されている。中空ピストンの(上流に配置された)入口は、リザーバ(リザーバパイプ部)の内部に流体的に接続されている。その(下流に配置された)先端はポンプ室に通じている。さらに、リザーバへの液体の逆流を防ぐ逆止弁がピストンの先端の内側に配置されている。
【0004】
ピストンを充填するために、ピストンの上流端がリザーバに直接接続されている。ポンプ室のピストンを引き出すことにより、その内部容積が拡大され、その結果、ポンプ室の内部において負圧が進んで蓄積される。この圧力は、中空のピストンを介してリザーバに伝播し、リザーバからピストンに液体が吸引される。同時に、リザーバ内の圧力が(まだ空の)ポンプ室内よりも高いため、その先端で上記弁が開く。ポンプ室が満たされる。同時に、可動ピストンがその下死点に到達してポンプ室が満たされると、ばねがロードされ、動作の最後でロックされる。
【0005】
ばねは手動でロック解除され得る。その後、蓄積されたエネルギーが突然放出される。ピストンはポンプ室の方向に再び押され、その中に押し込まれ、内部容積が減少する。前述の逆止弁はこの時点で閉じられており、液体がリザーバに逆流するのが抑制されているため、ポンプ室内で圧力が上昇する。最終的に、この圧力により、ポンプ室の下流端に配置されたノズルから液体が噴出される。
【0006】
すでに噴出された液体または外気の逆流のリスクに直面するために、以降で出口弁と呼ばれる追加の逆止弁をノズルの直前のポンプ室の下流端に配置して、放出した液体を通過させつつ、入ってくるガスをブロックする。
【0007】
ピストンは、コイルばねとして設計された圧力ばねの内側に配置されているため、その外径が制限されている。また、通常は小さい容積(例:15μl)のため、ピストンは細い内径(およびしばしば外径)で設計されている。
【0008】
可動ピストンのこの典型的な小さな内径(例えば、0.3~1.0mm)は、内部に配置される小さなサイズの逆止弁とともに、記載された構造の欠点である。直径が小さいと高い流動抵抗が生じるため、特に高粘度の媒体は非常にゆっくりとピストンに流入してピストンを通過する。言い換えれば、記載された構造は、低粘度(水性)の液体およびその低用量の放出に特に適している。さらに、小さな直径で十分に漏れのない逆止弁を製造することは困難である。
【0009】
記載された解決策の別の欠点は、一度に1種類の液体しか放出できないこと、すなわち、それぞれのリザーバの内容物に依存することである。別の液体をエアロゾル化する場合は、リザーバを交換し、吸入装置を再び使用する前に、ノズルを以前の液体の残りをきれいに洗浄する必要がある。
【0010】
欧州特許第1747035号明細書から、上述の技術に基づくが、2つの別個のポンプ機構を介して2つの個々の噴出ノズルに接続される2つの別個のリザーバを含む吸入装置が知られている。これらのノズルは、上記2種類の液体からなる2つの個別のスプレーを形成するか、これら2種類の液体からなる単一のスプレーを形成することができる。ただし、前述の欠点は依然として当てはまる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許第0627230号明細書
【文献】国際公開第91/14468号パンフレット
【文献】欧州特許第1747035号明細書
【発明の概要】
【0012】
本発明の目的は、既知の技術の欠点を回避する装置を提供することである。
【0013】
吸入装置はまた、短時間でより高い粘度の媒体を高い再現性で噴出できるものでなければならない。特に、装置は複数の異なる液体を噴出できなければならない。
【0014】
この目的は、請求項1に記載の吸入装置により解決される。有利な実施形態は、従属請求項、後続の説明、および添付の図面に記載されている。
【0015】
はじめに、説明および特許請求の範囲全体で使用される用語の定義をいくつか示す。定義は、文脈が別の意味を必要としない限り、それぞれの表現の意味を決定するために使用されるべきである。
【0016】
「吸入器」または「吸入装置」とは、吸入可能な霧、蒸気、またはスプレーを生成するように構成および適合された装置である。
【0017】
吸入器の文脈における「霧化」および「噴霧化」とは、液体の微細で吸入可能な液滴の生成を意味する。霧化された液滴の典型的な寸法は、数ミクロンの範囲である。
【0018】
「エアロゾル」は、気相中に固相または液相が分散している状態である。不連続相とも呼ばれる分散相は、複数の固体粒子または液体粒子で構成されている。本発明の吸入装置により生成されるエアロゾルは、典型的には空気である気相中に吸入可能な液滴の形態の液相が分散している状態である。分散液相は、液体中に分散した固体粒子を随意的に含んでもよい。
【0019】
「液体」とは、その形状を、液体を保持する容器の形状に変えることができるが、圧力に関係なくほぼ一定の体積を保持する流体材料である。液体は、単相溶液、または、連続液相と液体であってもなくてもよい分散相との分散液を表してもよい。
【0020】
液体は、その適用が医療目的に有用である生物学的に活性なもしくは医学的に活性な化合物または材料を表すかあるいは含む場合、「医学的に活性」である。
【0021】
「複数」とは、2つ以上を意味する。
【0022】
「内部」とは、内側を意味するのみならず、内側を向いていることも意味し、「外部」とは、外側を意味するのみならず、外側を向いていることも意味する。
【0023】
「ノズル」は、液体の霧化/噴霧化に役立つユニットである。一般的に、この用語はユニット全体を意味する。しかしながら、ノズルは、個別の、同一の、または異なるサブユニットの1つまたは複数のセットを含み得る。ノズルは、液体を放出するための複数の噴出チャネルを備えていてもよい。
【0024】
ノズルの「主軸線」は、放出されたエアロゾルの大部分がノズルを出た後に移動する方向に平行または同一直線上のノズルの中心軸線である。
【0025】
「水平」面は、主軸線に垂直な平面である。
【0026】
「噴出軌道」は、噴出チャネルの終端から始まる想像上の比較的直線の線である。噴出軌道は、吸入装置が作動しているときに噴出チャネルから放出される液体の最初の移動経路に似ている。ノズル(および吸入装置全体)は、例えば放出された液体が上記直線状に鋭い流れで提供され得るように、適切なチャネル形状および十分に高い圧力を用いて適合および構成されなければならないことは明らかである。
【0027】
2つ以上の噴出軌道が交差する場合、「衝突点」が形成される。
【0028】
「衝突角」とは、衝突点における噴出軌道と主軸線との間の角度である。「噴出角」は、90度から、主軸線に平行でありかつ噴出軌道と交差する線と噴出軌道との間の角度(「中間角I」)を引いたものとして定義される。衝突点が主軸線上にある場合、平行線は主軸線自体であり、中間角は衝突角である。衝突点が主軸線でない場合、平行線は主軸線からオフセットされる。この「噴出オフセット」は、主軸線と、主軸線に垂直な平面で測定された衝突点との間の距離である。噴出角は、それぞれの衝突点が主軸線上にある場合、噴出軌道と、主軸線に垂直で噴出チャネルの出口開口部を主軸線に接続する線との間の角度として理解することもでき、それぞれの衝突点が主軸線上にない場合、噴出角は、噴出軌道と、主軸線に垂直で噴出チャネルの出口開口部を主軸線に平行で噴出軌道と交差する線に接続する線との間の角度として理解することもできる。
【0029】
さらなる定義は、以降の説明で明らかにされる。
【0030】
本発明による吸入装置は、医学的に活性な液体のエアロゾル、特に吸入可能なエアロゾルの生成に役立つ。
【0031】
吸入装置は、好ましくは片手で快適に保持できるハウジングを含む。このハウジング内には、少なくとも1つの医学的に活性な液体を貯蔵するための少なくとも1つのリザーバと、内部で圧力を発生させる少なくとも1つのポンプ室を備えた少なくとも1つのポンプユニットとが配置され、および随意的に該ハウジングに接続されまたは接続可能とされており、少なくとも1つのポンプ室は、随意的に少なくとも1つのリザーバパイプ(またはリザーバパイプ部)によって、リザーバの方向にブロックする少なくとも1つの逆止弁を介して、少なくとも1つのリザーバと流体接続されている。したがって、少なくとも1つの逆止弁は、リザーバからポンプ室への液体の流れを可能にし、反対方向の流れをブロックする。
【0032】
吸入装置は、リザーバに面する少なくとも1つの内端を有するとともに前記ポンプ室に収容され得る少なくとも1つのライザーパイプと、ライザーパイプの外端に直接的にまたは間接的に液密に接続されるノズル(またはノズルのセット)とをさらに備える。
【0033】
少なくとも1つのポンプ室の内部容積は、そのそれぞれのポンプ室に各ライザーパイプが押し込まれることで体積が増加し、そのそれぞれのポンプ室から引き出されることで体積が減少するという点で、ライザーパイプに対するポンプ室の相対運動によって変更可能である。「内部容積」という用語は、各ポンプ室のリザーバに面した入口から、それぞれのライザーパイプの内端が位置する場所まで延びる容積を表す。
【0034】
本発明の一実施形態では、各ポンプ室がハウジングに対して移動可能である一方、各ライザーパイプは固定され、直接的もしくは間接的に、および/または恒久的もしくは取り外し可能にハウジングにしっかりと取り付けられる。言い換えれば、各ライザーパイプはハウジングに対するその位置を維持し、各ポンプ室は、特に可動ポンプ室内の固定ライザーパイプのシリンダ内のピストンのタイプの動きを実行するためなど、ハウジングに対するその位置を、特にその縦軸線に沿って変更することができる。
【0035】
別の実施形態では、各ライザーパイプの不動性は、ハウジングよりむしろノズルに主に関係している。したがって、ノズルとライザーパイプとは、可動性の観点から1つのユニットを形成する。しかし、ノズル自体がハウジングに対して不動である場合、これはライザーパイプにも当てはまり、したがって最初に説明した実施形態に到達する。
【0036】
これらの解決策の利点は、既知の解決策と比較して、ポンプ室とリザーバとの間の通路をより少ない制限で設計できることである。例えば当技術分野で知られている中空ピストン内に収容する必要がないため、製造がより容易な、非常に大きな逆止弁を設計することが可能である。その結果、それぞれの逆止弁のサイズは、主にハウジングの内部サイズ、またはそのような構造が望まれる場合、ポンプユニットを囲むばねの内部サイズによってのみ制限される。当技術分野で知られているように、バルブ、ライザーパイプ、およびリザーバパイプの直径が(おおよそ)同一であることは時代遅れになる。さらに、それぞれのリザーバに可動ピストンを接続する必要がないため、リザーバに入る構成要素と可動構成要素(すなわち、ポンプ室)とを互いに独立して設計することができ、個々の機能をより適切に適合させることができる。これに関して、本発明は、少なくとも1つの可動ポンプ室が、その堅牢な構造および寸法により、通常は堅牢性が低いそれぞれの可動ライザーパイプよりもリザーバとの機械的に安定した接続を設計するより良い機会を提供するため、より高い設計柔軟性を提供する。また、ポンプ室とリザーバとの間の接続をより大きな直径で設計することができるので、より高い流速および流体粘度が実現可能になる。さらに、リザーバのための機械的支持体は、ポンプ室を含む構成要素に統合することができる。さらに、リザーバの圧力平衡のための通気口は、リザーバ本体自体から離れて、構築を容易にし、基本的に「開いた」リザーバ本体を提供する必要性を回避しつつ、例えばリザーバとポンプ室との間の界面を形成するコネクタに移動することができる。
【0037】
前述の両方の実施形態において、ノズルは、主軸線と、各々の噴出軌道に沿って液体を噴出するように適合された少なくとも3つの噴出チャネルとを有し、前記噴出軌道のうちの少なくとも2つが互いに交差する少なくとも1つの衝突点が設けられる。
【0038】
主軸線は、液体から生成されたエアロゾルが吸入装置からユーザに向けて放出される方向に平行または同一直線上にある。主軸線は、ノズル本体の回転軸でもあり得る。
【0039】
各噴出チャネルは、それ自体の噴出軌道、すなわち、それぞれ放出された液体流がそのチャネルを離れる方向を有している。本質的に、軌道は、少なくとも最初は、または各噴出チャネルの出口開口から対応する衝突点まで、比較的直線である。出口開口部からさらに離れた(すなわち、ノズル本体の内側の)前記チャネルの部分は、前記噴出軌道とは異なる方向に追従できることは明らかである。また、勢いがますます減少し、空気抵抗と重力の影響が強くなるため、ノズル表面からさらに離れた液体が上記直線から外れることも明らかである。後者の方向は、主として、正にそれぞれの出口開口部におけるチャネルの方向によって規定される。しかし、後者の方向は、出口開口部の正確な形状、および随意的に出口開口部のすぐ後ろに配置されて放出された流体の方向を変えることができるデフレクタなどの影響も受け得る。
【0040】
衝突点において、前記軌道のうちの少なくとも2つが交差することにより、衝突型(または衝突に基づく)エアロゾル形成が達成される。本発明によれば、少なくとも第3の噴出チャネルが存在するので、より多くの量の液体を霧化できるようにチャネルを前記衝突点に向けてもよいし、または第2の衝突点が形成されるように、第3のチャネルを、例えばバッフルなどに対して、前記衝突点から遠ざけるように向けてもよい。
【0041】
一実施形態によれば、各噴出軌道は、少なくとも1つの他の噴出軌道と交差することが好ましい。このことは、他の噴出軌道と交差しない噴出軌道はなく、すべての噴出軌道が少なくとも1つの他の噴出軌道に衝突することを意味する。したがって、3つのチャネルの場合、すべての噴出軌道が1つの共通の衝突点で衝突する。4つのチャネルの場合、1つまたは2つの衝突点が存在する可能性がある。
【0042】
好ましい実施形態によれば、噴霧器は、ポテンシャルエネルギーの貯蔵手段をさらに備え、装置は、ポンプ室に結合され、装填位置でロック可能であり、ロック解除すると、貯蔵されたエネルギーはポンプ室の動きに変換可能である。ばねだけでなく、ガスまたは磁力を利用する材料も、ポテンシャルエネルギーの貯蔵手段として使用できる。手段の一方の端部は、適切な場所のハウジングでまたはその中に支持されており、したがって、この端部は本質的に不動である。他方の端部はポンプ室に接続されており、したがって、この端部は本質的に可動である。
【0043】
一実施形態によれば、逆止弁は、弁の上流側と下流側、すなわちリザーバ側とポンプ室側との間の圧力差が所定のしきい値を超えた場合にのみ開くように適合され、圧力差がしきい値を下回っているときは閉じたままである。「圧力差」とは、具体的な圧力値に関係なく、逆止弁がブロックするか開くかを決定するために、両側間の相対的な圧力差のみが関係することを意味する。
【0044】
ポンプ装置の起動時にのみ、高いポンプ室圧力を構築することにより、圧力差(ポンプ室の高圧とリザーバの大幅な低圧とにより大きな圧力差が生じる)が十分に高くなり、圧力差のしきい値を超えるため、逆止弁が最終的に開き、圧力室がリザーバからの液体で満たされるようになる。
【0045】
さらなる実施形態によれば、吸入装置は、ライザーパイプの内側に、ライザーパイプの外端への液体または空気の逆流を回避するための出口弁を備える。
【0046】
別の実施形態によれば、吸入装置は、ライザーパイプとノズルとの間に、ライザーパイプの外端に向かう液体または空気の逆流を回避するための出口弁を備える。
【0047】
必要に応じて、出口弁は、上記のようにしきい値圧力差より下でブロックする(および上で開く)タイプのものであり得る。
【0048】
一実施形態によれば、個々の軌道がノズルを出るすべての噴出角は、主軸線に関して、および典型的には、ノズルの前面に関して(本質的に平坦で、主軸線に対して垂直である場合)同一である。したがって、すべてのチャネルが前記主軸線の周りに対称的に配置される場合、1つの共通の衝突点が提供され得る。これに関連して、主軸線の周りに対称的に配置されるとは、すべてのチャネルの出口開口部が主軸線に垂直な同じ平面にあり、主軸線に対して同じ距離に配置されることを意味する。この場合、すべての軌道の共通の衝突点は、軌道と主軸線との交点に提供される。そのような実施形態では、ノズルは、合計で3つまたは4つのチャネルを示すことが好ましい。
【0049】
そのような共通の衝突点は、例えばすべての個々の軌道が円錐台の表面に配置され、すべての軌道の交点が円錐台の仮想先端にある場合に得られ得る。噴出軌道が共通の平面にある場合、つまり、同一の角度を使用することによって二次元の設定にある場合、複数の衝突点が提供され得る。
【0050】
別の実施形態によれば、やはりノズルの主軸線に関して、主軸線とチャネル出口開口部との間の横方向距離が同一である設定では、上記噴出角のうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つが、異なる衝突点を提供できるようにその他の噴出角とは異なっている。円錐台の例を再度使用すると、4つの噴出チャネルを使用することにより、チャネルの第1の対は第1の衝突点を提供し、チャネルの第2の対は第2の衝突点を提供し、一方または両方が、円錐台の仮想先端から横方向にオフセットされる2つの衝突点を伴うノズルを提供することができる。この場合、すべての噴出角が(例えば、円錐台の)主軸線に対して同じというわけではない。随意的に、チャネルの第1の対に対応する2つの噴出軌道のそれぞれは第1の噴出角を示し、チャネルの第2の対に対応する2つの噴出軌道のそれぞれは第2の噴出角を示し、第1の噴出角は第2の噴出角と異なる。すべてのチャネルの出口開口部が主軸線の周りに(主軸線に対して同じ横方向距離で)対称に配置されている場合、そのような構成は、2つの衝突点、つまり、チャネルの第1の対に対応する2つの軌道の交点における主軸線との第1の衝突点と、チャネルの第2の対に対応する軌道の交点における主軸線との第2の衝突点とを有することになる。
【0051】
対照的に、二次元構成では、異なる噴出角を選択することにより、すべての噴出軌道を同じ衝突点に向けることができる。チャネルは、ノズルを実質的に2つのミラーリング半体に分割する主軸線が存在する(「垂直」)平面が存在するように、対称的に配置されることが好ましい。各軌道について、衝突点における噴出軌道と主軸線との間の角度である衝突角は、15°(鋭角)~75°(鈍角)の範囲であることが好ましく、30°~60°の範囲がより好ましく、約45°の角度も特に好ましいと考えられる。
【0052】
一実施形態では、各々の衝突点が同じ噴出角を有する少なくとも2つの噴出軌道によって形成される少なくとも2つの衝突点が提供される。したがって、2つの噴出チャネルは第1の噴出角を有し、他の2つの噴出チャネルは第1の噴出角とは異なる第2の噴出角を有する。
【0053】
別の実施形態では、噴出角は互いに異なるが、それぞれの噴出軌道は依然として交差しており、したがって1つの衝突点を提供する。これは、例えばノズル面が主軸線に対して傾斜している場合、またはノズル面が平面でない場合である。
【0054】
3つ以上(および好ましくはすべて)の噴出チャネルによって供給される衝突点を備えた実施形態の1つの利点は、個々の噴出チャネルの断面を拡大する必要なく大量の液体を噴霧できることである。したがって、各チャネルの流体パラメータは、単に追加のチャネルを追加することにより、そのままにすることができる。
【0055】
複数の衝突点を備えた実施形態の利点は、ある特定の状況下では、1箇所(=衝突点)の液体濃度が高すぎると望ましくない大きな液滴の形成が促進され得るため、特に、より大量の液体が噴霧される場合、複数の衝突点を提供することにより、大きな液滴形成のリスクを場合によって低減できることである。1つの大きな衝突点を2つ(またはそれ以上)の小さな衝突点に分けることにより、個々の衝突点での噴霧に必要な液体の量は大幅に少なくなる。
【0056】
また、複数の衝突点が提供される場合、これらのそれぞれに、衝突点間で異なる個々の液体の液体流を供給することができる。したがって、霧化段階が完了するまでこれらの液体の混合は行われず、このことは、互いに接触してはならない特定の液体にとって有利な場合がある。
【0057】
別の実施形態によれば、ノズルの主軸線に沿って、少なくとも2つ、またはすべての衝突点が同じ垂直面内に、すなわち主軸線に対して垂直に配置される。このことは、各衝突点とノズルの前面との間の距離が本質的に同じであることを意味する。これは、個々の噴霧された液体(スプレー、霧)がほぼ同じサイズであり、同様の量として吸入される場合に有利である。
【0058】
別の実施形態では、ノズルの主軸線に沿って、少なくとも2つまたはすべての衝突点が異なる垂直面上にある。このことは、ノズルの前面に対する少なくとも2つの衝突点の距離が異なることを意味する。
【0059】
例えば、2つの衝突点が両方とも主軸線上にある場合、第1の液体から中央エアロゾル流れを生成するとともに、第2の液体のエアロゾルからなる周囲のシース流れを生成することができる。そのようなコアおよびシースの流れは、例えば流れの1つの成分(シース)が気管に分配され、別の成分(流れのコア)が細気管支に分配される場合に、吸入の目的で有利に使用され得る。
【0060】
別の実施形態によれば、ノズルの主軸線に関して、すべての衝突点は主軸線上に位置する(対称配置)。このことは、複数の衝突点が存在する場合、それらが主軸線と交差する平行な平面内に位置することを意味する。同時に、主軸線の方向から見ると、1つの衝突点だけが見えている。
【0061】
別の実施形態では、少なくとも1つの衝突点が主軸線から横方向にオフセットされる(非対称配置)。このことは、主軸線の方向から見ると、複数の衝突点が見えており、1つまたはすべての衝突点が主軸線から横方向にずれていることを意味する。衝突点は、異なる平面に配置されることもできるし、1つの共通平面に配置されることもできる。
【0062】
一実施形態によれば、ノズルの噴出チャネルはすべて同じ断面を有する。そのような実施形態は、1つの液体のみ、または同様の物理的パラメータを有し、同等の量のいくつかの液体を霧化する場合に特に有用である。
【0063】
別の実施形態では、ノズルの少なくとも1つの噴出チャネルまたは噴出チャネル対は、別の噴出チャネルまたは噴出チャネル対とは異なる断面を有する。つまり、個々のチャネルまたはチャネルのペアの断面は互いに異なる。このような設定は、物理パラメータが異なる2つ以上の液体を霧化する場合、および/または異なる量で霧化する場合に有利である。
【0064】
複数の衝突点が提供される上記のすべての実施形態に関して、衝突点の好ましい総数は2つまたは3つであり、特に2つである。
【0065】
一実施形態によれば、すべての衝突点に同じ液体を供給することができるように、ノズルのすべての噴出チャネルは同一のポンプ室または液体タイプのリザーバに接続される。このことは、噴出チャネルの数に関係なく、1つの液体のみがノズルによって霧化されることを意味する。さらにまた、すべてのチャネルについて液体のタイプが同じであるため、すべての噴出チャネルが同じ寸法であることが好ましい。
【0066】
吸入装置に複数のポンプ室またはポンプユニットがある場合、すべてのポンプ室またはポンプユニットは同じリザーバ、または同じ液体タイプを保持するリザーバに接続される。
【0067】
吸入装置にポンプ室が1つしかない場合、1つ以上のリザーバからポンプ室に液体を供給することができる。ポンプ室はまた、ノズルに液体が供給される前に、混合室としても機能する。
【0068】
別の実施形態によれば、ノズルの少なくとも2つの噴出チャネルは、個別のポンプ室または液体リザーバに接続されており、そのため異なる液体(すなわち、組成が第1のまたは前述の液体とは異なる第2の液体)が供給され得る少なくとも1つの衝突点が提供される。したがって、このような構成は、同時に複数のエアロゾルを生成するのに役立つ。この場合、望ましくない混合を避けるために、各液体には独自のポンプ室が必要であることは明らかである。また、各ポンプ室を個別のリザーバに接続する必要があること、または少なくとも2つの異なる液体を霧化できるように、少なくとも2つのポンプ室を個別のリザーバに接続する必要があることも明らかである。
【0069】
1つの液体のみが噴霧される場合であっても、複数のポンプ室および/またはリザーバを有する吸入装置が有利であり得ることに留意されたい。単一のポンプ室で圧力をかけることができる液体の量は制限される場合があり、したがって、ポンプ室の数を増やすことで、より多くの液体を霧化することができる。また、リザーバの形状を標準化することができる。したがって、そのような標準化されたリザーバを収容する1つの吸入装置は、個々の液体の混合物、および複数のリザーバから生じる同じ液体の「混合物」の生成に使用できる。さらに、異なる液体の混合比は、個々の液体で満たされた所望の数のリザーバを使用するだけで簡単に調整できる。例えば、1つの液体が医学的に活性な薬剤を含み、別の液体が溶媒または希釈剤であり、ハウジングが3つのリザーバを保持する場合、薬剤:希釈剤の比率は1:1(1つはダミーリザーバ)、1:2、または2:1が可能である。
【0070】
別の実施形態では、ノズルの少なくとも2つの噴出チャネルが、チャネルの上流およびそれぞれのリザーバの下流に配置された共通の混合室に接続される。このような混合室は、ポンプ室とノズルとの間に配置された別個の容積が提供されるという点で、噴出チャネルに供給する前にいくつかの(おそらくは同一の)供給源からの液体を混合する目的を有する共通のポンプ室による前述の混合とは異なる。
【0071】
一実施形態によれば、ノズルの少なくとも2つの噴出チャネルは、対(または3つ以上の噴出チャネルの場合はグループ)を形成し、共通の入口および交差する軌道を共有する。チャネルの対またはグループは、最も均一な霧化結果を得るために、同一の形状の2つ(または3つまたはそれ以上)のチャネルから構成されることが好ましい。対またはグループは、1つの衝突点でエアロゾルを生成する。複数の対が衝突点を共有するか、各対またはグループが独自の固有の衝突点を有する場合がある。これらの異なる衝突点は、同一の水平面または異なる水平面に配置されてもよい。
【0072】
別の実施形態では、ノズルのすべての噴出チャネルは個別の入口を有する。したがって、対はチャネルを流れる同一の液体によって特徴付けられるため、噴出チャネルは対を形成しない。ただし、1つ以上の衝突点が提供されるように、それらは依然として互いに交差する噴出軌道を有し得る。
【0073】
ノズルの2つの噴出チャネルが対を形成する一実施形態によれば、第1の噴出チャネルの上流端に1つの主供給チャネルが接続するように配置されるとともに、上記主供給チャネルを第2の噴出チャネルの上流端に接続する交差チャネルが存在する。主供給チャネルの上流端は、直接的にまたはポンプユニットを介して間接的に液体リザーバに接続される。このような構造は、すべてのチャネルが同じ平面に配置されている二次元構成で実現することが好ましい。
【0074】
交差チャネルは、上記主供給チャネルに対して垂直方向を有してもよく、したがって、可能な限り最短の流体接続が提供される。交差チャンネルは、主軸に垂直な平面にあるアーチ型の経路など、別の経路をたどることもできる。交差チャネルは、それぞれの対の噴出チャネルが位置する平面に対してオフセットすることもできるが、いずれの場合でも、交差チャネルと対応する噴出チャネルとの間に流体接続を提供する必要があることは明らかである。
【0075】
対の2つの噴出チャネルが主軸線に対して反対側に配置され、交差チャネルが対の2つの噴出チャネルを接続するため、この対には1つの(共通)主供給チャネルだけで十分である。したがって、ポンプ室に結合する必要がある入口開口部は1つだけである。このようにして、1対のノズルを上流に配置された構成要素に接続するのに必要な面積の量に関して空間を節約する解決策が提供される。
【0076】
2対などの複数の対を有するノズルを備えた吸入装置の一実施形態では、(回転)対称軸も形成する主軸線に関して、第1の対の噴出チャネルの出口開口部が、第2の対の噴出チャネルの出口開口部に対して例えば60°(または360°の別の整数因子)の回転位置にあり、それぞれの交差チャネルは、上記対称軸に沿って、互いに交差しないように互いに間隔を空けている。言い換えれば、前述の交差チャネル構成は、例えば二重にまたは三重に数回繰り返され、一対の噴出チャネル、対応する交差チャネル、および主供給チャネルを含むそれぞれのユニットを主軸線の周りに回転させることにより、互いに離れて配置される。個々の交差チャネルが主軸線に沿って異なる平面に配置されている場合、それらは互いに交差しない。その結果、ノズル本体と液体を供給する構成要素との間の界面に配置された円形経路上にある、異なる対(したがって異なる液体)の入口開口部のタレットのような配置になる。
【0077】
別の実施形態によれば、ノズルは、前面と、前面の反対側の背面とを示す。装置が操作されるときに使用者に向けられた装置の面である前面は、噴出チャネルの出口開口部を含む。装置の内部に面するノズルの背面または後面は、本質的に平坦であり、主供給チャネルへの入口を形成する複数の開口部を含む。
【0078】
好ましくは、ノズルの背面に接続する装置構成要素は、供給開口部を有する対応する表面を提供し、その結果、上記装置構成要素の各供給開口部は、ノズルの入口開口部に接続する。言い換えれば、ノズルとノズルに供給する構成要素、例えばポンプ室の出口側との間の界面は、単純な平らなガスケットで十分であるように設計されている。このようなガスケットは、適切な位置に穴がある弾性材料の平らなシートから本質的に構成されている。
【0079】
このような構造の利点は、流体接続を安全かつ簡単に確立できること、ならびにシールおよび界面表面を提供するコストが低いことである。
【0080】
いくつかの実施形態では、ノズルは、比較的平坦なプレートの積み重ねとして構築される。そのようなプレートは、好ましくは、エッチングなどの材料除去技術によって製造することができる。シリコン、ガラス、金属、セラミック、またはプラスチックなどのさまざまな材料のウェーハが半製品を形成し得る。チャネルは、基板の2つの平坦な側面のいずれか、または両側に導入される。次に、そのようなプレートのいくつかを積み重ねることにより、複数の噴出チャネル対を提供するノズルの積み重ねを製造することができる。
【0081】
他の実施形態では、ノズルは三次元回転対称の基本形状から構築される。このような基本形状は、円錐形、円柱形、またはピラミッド形であり得る。通常、基本形状の回転軸線または対称軸線は、完成したノズルの主軸線と一致する。
【0082】
好ましくは、吸入装置は、2つ(またはそれ以上)の液体を噴出するように構成および適合されている。
【0083】
したがって、ノズルには少なくとも2つの噴出チャネルがあり、これらのチャネルには2つ(またはそれ以上)の異なる液体を供給することができ、つまり、各チャネルは別のチャネルに供給される液体とは異なる液体を受け取るか、これらの異なる液体が順に供給される共通の混合室から供給される。したがって、2つ(またはそれ以上)の液体の噴出が可能である。
【0084】
これを達成するために、前記噴出チャネルまたは前記混合室は、上流に配置された個々のポンプユニットのそれぞれのポンプ室、または1つの共通のポンプユニットに統合された個々の内部容積(ポンプ室)のいずれかに接続される。
【0085】
言い換えれば、吸入装置は、それぞれが好ましくは1つの液体の噴出に役立つ複数の個別のポンプユニットのいずれかを含み得るか、またはポテンシャルエネルギーを貯蔵するための1つの手段(例:圧力ばね)のみに好ましくは接続される1つの主ポンプユニット(主ポンプ本体)に統合された複数のポンプ室を備えた構造が提供される。統合された各ポンプ室は、個別の液体リザーバに接続され得る。後者の実施形態は、より統合された、したがってより小さい解決策を提供する。
【0086】
一実施形態によれば、少なくとも1つのリザーバは、ポンプ室にしっかりと取り付けられ、したがって、ハウジング内で移動可能である。これは、各噴出サイクルで、少なくとも1つのリザーバが少なくとも1つのポンプ室と一緒に、ポンプ室が最大内部容積を持つ初期位置から、最小内部容積の最終位置まで移動し、そして最終的に最初の位置に戻ることを意味する。本明細書で使用される場合、「しっかりと取り付けられた」という表現は、永続的および非永続的(すなわち解放可能な)形式の両方の取り付けを含む。この構造の利点の1つは、リザーバとポンプ室との間に可能な限り小さな死容積を提供することである。
【0087】
別の実施形態によれば、少なくとも1つのリザーバは、例えばホースのような1つ(または複数の)可撓性要素によって少なくとも1つのポンプ室に接続され、ハウジングにしっかりと取り付けられている。したがって、この実施形態によれば、リザーバはポンプ室と一緒に移動するのではなく、ハウジングにしっかりと(しかし、典型的には取り外し可能に)取り付けられる。この構造の利点の1つは、ポテンシャルエネルギーの貯蔵手段のロックを解除すると突然放出されるエネルギーが、それを加速するポンプ室のみに作用し、通常は(そして特にその使用開始時に)比較的大きな質量を有し得るリザーバには作用しないことである。ポンプ室の加速度が高くなるため、圧力が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
図1】本発明による吸入装置の主要な構成要素を示す図である。
図2図1のものと同様だが、随意的な出口弁はない、装置を示す図である。
図3】最初にポンプ室を満たす前の図1の実施形態を示す図である。
図4】最初の起動中の状況を示す図である。
図5】最初の起動の終了時の状況を示す図である。
図6】ポンプ室を再充填した後の状況を示す図である。
図7】第1の実施形態によるノズルを示す図である。
図8】第1の実施形態によるノズルの詳細を示す図である。
図9】第2の実施形態によるノズルを示す図である。
図10】第3の実施形態によるノズルを示す図である。
図11】第3の実施形態によるノズルの詳細を示す図である。
図12】第4の実施形態によるノズルを示す図である。
図13】第5の実施形態によるノズルを示す図である。
図14】第5の実施形態によるノズルの断面を示す図である。
図15】第5の実施形態によるノズルの断面を示す図である。
図16】第5の実施形態によるノズルの断面を示す図である。
図17】この実施形態の三次元図である。
【発明を実施するための形態】
【0089】
図1において、本発明による吸入装置の主要な構成要素は、概略的であり、縮尺通りではない、最初の使用前の状況が図示されている。
【0090】
吸入装置は、ハウジング1を備え、ハウジング1は、片手で保持でき、1本の指、例えば親指(図示せず)で操作できるような形状および寸法であることが好ましい。ハウジング1の内部には、医学的に活性な液体F1、F2のそれぞれの貯蔵のための2つのリザーバ2A、2Bが配置されている。図示されたリザーバ2A、2Bは、折りたたみ式に設計されており、つまり、空にする作業中に、弾性壁または少なくとも柔軟な壁が曲がり、一定量の液体F1、F2の抽出に必要な負圧が増加しないか、ほとんど増加しないことを意味する。剛性容器が可動底部を有し、それによりそれぞれのリザーバの内部容積も連続的に減少させることができる場合(図示せず)、同様の効果を達成することができる。
【0091】
さらに、吸入装置は、液体F1、F2を放出し、それを噴霧するのに必要な所望の圧力を生成するために、ハウジング1内に2つのポンプ室3A、3Bを備えたポンプユニットを備えている。ポンプユニットは、図示されていない追加の構成要素(プッシュボタン、ロック装置など)を含むこともできる。
【0092】
ポンプ室3A、3Bは、本実施例に示されるように、別個のポンプユニット内に存在してもよく、または単一のポンプユニット(図示せず)に統合されて存在してもよい。
【0093】
ポンプ室3A、3Bは、それぞれの入口逆止弁4A、4Bによってリザーバ2A、2Bと流体接続されている。逆止弁4A、4Bは、液体F1、F2のそれぞれのポンプ室3A、3Bへの流入を可能にし、図示されていないロック機構の解放時にリザーバ2A、2Bへの液体F1、F2の逆流をブロックするのに役立つ。
【0094】
ポテンシャルエネルギーの貯蔵手段7として、ポンプ室3A、3Bの一端(上向き)に結合され、ハウジング1(図の下部)で支持されるばねが設けられている。
【0095】
吸入装置はさらに、上記ポンプ室3A、3Bに受け取られ得る少なくとも1つのそれぞれのリザーバに面する内端5A’、5B’を備えた2つのライザーパイプ5A、5Bを備えている。言い換えれば、ライザーパイプ5A、5Bは、ポンプ室3A、3Bに少なくとも部分的に押し込むことができ、その結果、ポンプ室3A、3Bの内部容積が減少する。「内部容積」という用語は、ポンプ室3A、3Bのリザーバに面する入口から、ライザーパイプ5A、5Bの内端5A’、5B’が位置する場所まで延びる容積を表す。描かれた状況では、ライザーパイプ5A、5Bは、ほぼ完全にそれぞれのポンプ室3A、3Bに含有されている。その結果、逆止弁4A、4Bとライザーパイプ5A、5Bの内端5A’、5B’との間に位置するそれぞれの内部容積は最小である。
【0096】
好ましくは、ライザーパイプの受け入れに役立つ部分において、ポンプ室3A、3Bは、ライザーパイプ部分の(そしてまた)円形外側断面に対応する円形内側断面を有する部分を有する。もちろん、他の断面形状も可能である。
【0097】
図示の実施形態によれば、逆止弁4A、4Bは、リザーバ2A、2Bとポンプ室3A、3Bの入口との間に配置されている。
【0098】
さらに、吸入装置は、ライザーパイプ5A、5Bのそれぞれの外端5A’’、5B’’に液密に接続されたノズル6を備えている。ノズル6は、2つの衝突する液体ジェットの原理を使用して、液体の噴霧/霧化に適している。一例として示されているノズル6は、2つの噴出チャネル6A、6Bを備えている。同時に、ノズルの2つの噴出チャネル6A、6Bのそれぞれは、個別のポンプ室3A、3Bに接続されているため、液体リザーバ2A、2Bに接続され、異なる液体が供給され得る衝突点が提供される。望ましくない混合を避けるために、各液体F1、F2は独自のポンプ室3A、3Bを有する。
【0099】
好ましくは、液体含有チャネルの断面は比較的小さく、典型的にはミクロンの領域にある。この例では、主軸線Z(破線)に対する噴出チャネル6A、6Bの角度は、それらの噴出軌道(点線)が1つの共通の衝突点Xで交差するようになっている。
【0100】
また、外部から液体または空気がその外端5A’’、5B’’に流入するのを防ぐためのライザーパイプ5A、5B内部の随意的な出口弁8A、8Bも示されている。出口弁8A、8Bは、ライザーパイプ5A、5Bの内端5A’、5B’に配置されている。液体F1、F2は、ノズル6の方向に出口弁8A、8Bを通過できるが、出口弁8A、8Bは反対方向の望ましくない逆流をブロックする。
【0101】
図1からわかるように、ライザーパイプ5A、5Bはハウジング1との外端5A’’、5B’’の領域での接続によって示されているように、ハウジング1に動かないようにしっかりと取り付けられるように設計されている。ライザーパイプ5A、5Bはまた、ノズル6にしっかりと取り付けられており、ノズル6もハウジング1に取り付けられている。対照的に、ポンプ室3A、3Bは、ハウジング1およびノズル6に対して移動可能に設計されている。この設計の利点はすでに説明されており、上記の各部分を参照されたい。
【0102】
図2を参照すると、図1のものと同様の装置が示されている。しかしながら、図2に示される実施形態は、(随意的な)出口弁8A、8Bを欠いている。他のすべての実質的な構成要素は存在し、機能も同等である。
【0103】
明確にするために以前に紹介した参照番号のいくつかを省略した図3は、ポンプ室3A、3Bを最初に充填する直前の図1の実施形態を示している。ポンプ室3A、3Bが引き下げられ、ポテンシャルエネルギーの貯蔵手段7がロードされる。出口弁8A、8Bは、ポンプ室3A、3B内の負圧により閉じられ、逆止弁4A、4Bはリザーバ2A、2Bに対して開いている。リザーバ2A、2Bの壁の折りたたみにより、その内部圧力はほぼ一定に保たれるが、ポンプ室3A、3Bを上昇運動によりライザーパイプ5A、5Bから引き離しているため、ポンプ室3A、3B内の圧力は低下し、ポンプ室3A、3Bのそれぞれの内部容積が増加する。
結果として、ポンプ室3A、3Bのそれぞれの内部容積は、リザーバ2A、2Bからの液体F1、F2で満たされる。
【0104】
図4では、吸入装置の第1の起動中の状況が示されている。ポテンシャルエネルギーの貯蔵手段7は、図3に示すように、負荷位置から解放されている。ポテンシャルエネルギーの貯蔵手段7は、ポンプ室3A、3Bを備えるポンプユニットをライザーパイプ5A、5Bに押し込み、ライザーパイプ5A、5Bの内端5A’、5B’は、閉じられている逆止弁4A、4Bに接近する。その結果、ポンプ室3A、3B内の圧力は上昇し、バルブ4A、4Bを閉じたままにするが、出口弁8A、8Bを開く。液体F1、F2は、ライザーパイプ5A、5Bの内部で、その外端5A’’、5B’’、およびノズル6に向かって上昇する。
【0105】
図5は、最初の起動の終了時の状況を示す図である。ポテンシャルエネルギーの貯蔵手段7は、最も弛緩した位置(ばねが完全に伸びている)にある。また、ポンプ室3A、3Bは、ポンプ室3A、3Bのそれぞれの内部容積がその最小値に達するように、ほぼ完全に一致してライザーパイプ5A、5B上に押し込まれている。ポンプ室3A、3B内に以前に含有されていた液体F1、F2の大部分は、出口弁8A、8Bを通ってライザーパイプ5A、5B内に流入している。ライザーパイプ5A、5B内にすでに含有されている液体F1、F2は、ノズル6の噴出チャネル6Aおよび6Bに向かって押し出されているが、そこを通過し、そこでは所望の噴霧が行われ、共通の衝突点Xでスプレーが生成される。
【0106】
図6では、ポンプ室3A、3Bを再充填した後の状況が描かれている。ポンプ室3A、3Bは、ライザーパイプ5A、5Bの内端5A’、5B’から再び引き出され、ポンプ室3A、3Bのそれぞれの内部容積が増加する。ポテンシャルエネルギーの貯蔵手段7がロード(ばね圧縮)されている。ポンプ室3A、3Bがライザーパイプ5A、5Bから離れて移動する間に、内部容積に負圧が発生し、出口弁8A、8Bを閉じ、逆止弁4A、4Bを開く。その結果、リザーバ2A、2Bからポンプ室3A、3Bに新しい液体F1、F2が引き込まれる。吸入装置のポンプ室3A、3Bが再び満たされ、ばねを放すことにより、液体F1、F2の次の噴出の準備が整う。
【0107】
図7では、3つの噴出チャネル6A、6B、6Cを含むノズル6が示されている。噴出軌道(点線)は、1つの共通の衝突点Xで交差する。この衝突点は、主軸線Zに対して垂直方向を持つ平面P内に位置する(これが、異なる旨の明記がない限り、この文書全体を通じて衝突点が存在する平面の共通の方向である)。すべてのチャネル6A、6B、6Cは、主軸線Zの周りに対称的かつ三次元的に配置されている。ここで定義されている噴出角(ノズルチップの詳細図である図8にもプロットされており、角度A1、A2のみが示されている)は同一である。中間角Iが測定される線が主軸線であり、したがって、中間角は衝突角である。この例では、円錐台の表面に個々の軌跡のすべてが配置されている。この例では、円錐台の表面6’は底面円(参照番号なし)に平行であるため、両方の位置で測定された角度A1、A2は同一である。好ましくは、チャネル6A、6B、6Cは、液体(図示せず)がチャネルを通過できるが、望ましくない(横)方向には出ることができないように蓋(図示せず)などのクロージャで(横方向に)閉じられる。これは、例えば円錐形状のキャップ(図示せず)の内側に円錐台を配置して、壁がチャネルの蓋を形成することにより達成され得る。チャネルは、図示のように円錐台の表面に製造できるが、キャップの表面に溝として製造することもできる。
【0108】
両方のタイプは、互いに組み合わせることができ、その場合、チャネルは円錐と開口部とで交互に提供されるか、関連する半チャネルが円錐と開口部とで提供される。
【0109】
図9では、ノズル6の断面図が示されており、ここでも、ノズル6の主軸線Zに関して、すべての噴出角Aが同一であり(1つの参照符号Aのみがプロットされている)、したがって、すべての中間角も同一であり、それらはすべて主軸線Zに対して測定される。ただし、噴出チャネル6A~6Dは共通の断面(ハッチングは省略)にあり、異なる衝突点X1、X2が提供されている。これらは、主軸線Zに垂直な異なる平面P1、P2に位置し、つまり、衝突点X1およびX2は、ノズル6の前面6’までの距離が異なる。同時に、すべての衝突点X1、X2は主軸線Z上にある。噴出チャネル6Aおよび6Bは第1の対を形成し、噴出チャネル6Cおよび6Dは第2の対を形成する。この例では、ノズル6は「二次元」ブロックとして構成されている。
【0110】
本実施例は、第1の液体のエアロゾルの中央流れ(図示せず)、および第2の液体のエアロゾルの周囲のシース流れを生成するために使用され得る。
【0111】
図10には、噴出チャネル6A~6Dが円錐台の表面に再び配置されている実施形態が示されている。この構成では、噴出チャネル6A、6Bの第1の対の噴出角A1、A1’は、噴出チャネル6C、6Dの第2の対の噴出角A2、A2’に対応する。ただし、この構成では、噴出オフセットにより、2つの異なる衝突点X1およびX2が生じる。図11は、ノズルの先端の詳細である。円錐の底面円は円錐台の表面6’に平行であるため、図10の角度A1、A2は図11と同じであることに留意されたい。
【0112】
例えば、図10からわかるように、チャネル6Bの軌道は主軸線Zから一方向、すなわち角度A1’’の方向にわずかに傾いているが、チャネル6Dの軌道は反対方向、すなわち角度A2’’の方向に傾いている。また、(現在同様の)角度A1およびA2は、細い破線から始まる角度A1およびA2よりもわずかに小さい。これらは、円錐の底面円で始まり、その想像上の先端で終わる線を表し、細い破線に沿ったチャネルも同じ角度A1、A2(およびA1’、A2’、A1’’、A2’’)を持つが、1つの共通の衝突点も生じる。したがって、この例では、2組の噴出チャネル6A、6Bおよび6C、6Dが提供され、すべて同じ噴出角A1、A2、A1’、A2’(図11を参照)を有するため、前の例のように、2つの衝突点X1、X2が提供される。前述の角度の配置の結果として横方向の噴出オフセットDが存在する。この実施形態では、すべての衝突点X1、X2が、ノズルの主軸線Zに沿って、ノズル6の前面6’に対して同じ平面(図示せず)内に位置する。同時に、すべての衝突点X1、X2は、主軸線Zから横方向にオフセットして配置される(横方向の噴出オフセットD)。
【0113】
図12は、4つの噴出チャネル6A~6Dを有するノズル6を示しており、その噴出軌道は、対ごとに異なる噴出角(A1およびA1’が同様、A2およびA2’も同様)を有し、噴出チャネル(および軌道)は、共通の平面(ハッチングされた断面)内にある。ノズル6も「二次元」ブロックタイプである。角度A1、A1’、A2、A2’は、すべての噴出軌道(点線)が1つの共通の衝突点Xで交差するように配置されている。
【0114】
図13では、ノズルの別の実施形態の透過上面図が示されている。さらなる詳細については、同じ実施形態に関する以下の図12図15の説明を参照されたい。
【0115】
図14および図15には、図11のノズル6の2つの断面A-AおよびB-Bが示されており(ハッチングは省略)、噴出チャネル6A、6Bおよび6C、6Dは、上流に配置された共通の分割室9A、9Bに接続されている。したがって、ポンプ室(図示せず)と噴出チャネル6A、6B/6C、6Dとの間に配置され、噴出チャネル6A、6B/6C、6Dに供給する前にノズルに(随意的にいくつかの供給源から)供給される液体を分割する目的を有する別個の室または容積が提供される。
【0116】
図示された実施形態では、ノズル6の2つの噴出チャネル6Aおよび6B、ならびに6Cおよび6Dがそれぞれ対を形成し、第1の噴出チャネル6A、6Cの始まりと接続するように1つの主供給チャネル10A、10Bが配置され、上記主供給チャネル10A、10Bをそれぞれの第2の噴出チャネル6A、6Cの端部に接続する交差チャネル11A、11Bが存在する。分割室9A、9Bとして機能する交差チャネル11A、11Bは、主供給チャネル10A、10Bに対して垂直に延びている。ポンプ室またはポンプユニット(図示せず)に結合しなければならないそれぞれ1つの入口開口部12A、12Bのみが存在する。
【0117】
描かれた実施形態では、対称軸をも形成する主軸線Z(図示せず)に関して最初に重なり合う噴出チャネルの対は、互いに対して例えば60°(または360°の別の整数因子)の回転位置にあり、それぞれの交差チャネル11A、11Bは、上記対称軸に沿って、互いに交差しないように、互いに離間している。
【0118】
透過側面図である図16では、軸方向に離れたすべての主要な交差チャネル(参照番号が省略された第3の交差チャネル)がよく見えるように、隠線を含有する断面が描かれている。視線方向のために、噴出チャネルは2対しか見えない。
【0119】
前述の設計は、図14および図15の断面を含有するノズル6の三次元透過図である図17にも見ることができる。断面を仮想的に回転させることにより、入口開口部(参照番号は省略)が円形の経路(一点鎖線の円)上にあるコンパクトで単純なノズルが得られる。したがって、上流に配置された構成要素(すなわち、ポンプ室、バルブ部、図示せず)に対するそれぞれの界面は、比較的単純になるように設計され得る。
【符号の説明】
【0120】
1 ハウジング
2、2A、2B リザーバ
3、3A、3B ポンプ室
4、4A、4B 逆止弁
5、5A、5B ライザーパイプ
5A’、5B’ 内端
5A”、5B” 外端
6 ノズル
6’ 前面
6A-6D 噴出チャネル
7 ポテンシャルエネルギーの貯蔵手段
8、8A、8B 出口弁
9A、9B 分割室
10、10A、10B 主供給チャネル
11、11A、11B 交差チャネル
12、12A、12B 入口開口部
F、F1、F2 液体
X、X1、X2 衝突点
A、A1、A2 噴出角
A1、A2、A1’、A2’、A1’’、A2’’ 角度
I 中間角
Z 主軸線
D 噴出オフセット
P、P1、P2 平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17