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特許7144461分子間及び/又は分子内相互作用を測定するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】分子間及び/又は分子内相互作用を測定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20220921BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220921BHJP
   C09B 11/28 20060101ALN20220921BHJP
   C09B 23/08 20060101ALN20220921BHJP
   C09B 23/02 20060101ALN20220921BHJP
   C09B 57/02 20060101ALN20220921BHJP
【FI】
G01N33/543 575
G01N33/53 D
C09B11/28 D
C09B23/08
C09B23/02
C09B57/02 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019571275
(86)(22)【出願日】2018-06-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 EP2018066804
(87)【国際公開番号】W WO2018234557
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2021-05-10
(31)【優先権主張番号】17177747.7
(32)【優先日】2017-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17177746.9
(32)【優先日】2017-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515132571
【氏名又は名称】ナノテンパー・テクノロジーズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】バースケ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】デュール,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ブライトプレシェル,デニス
(72)【発明者】
【氏名】オッセフォルト,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ローデ,アクセル
(72)【発明者】
【氏名】グプタ,アーミン・ジーン
(72)【発明者】
【氏名】チャンマー,ヌスカ
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】特許第6104039(JP,B2)
【文献】米国特許第09676787(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2007/0009960(US,A1)
【文献】米国特許第05268486(US,A)
【文献】国際公開第2016/187580(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/061944(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/143106(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/140718(WO,A1)
【文献】特表2011-506673(JP,A)
【文献】大場雄介,蛍光タンパク質を用いた細胞内シグナル伝達の可視化,日薬理誌,2011年,Vol.138,Page.13-17
【文献】Duhr S et al.,Thermophoresis of DNA determined by micofluidic Fluorescence,THE EUROPEAN PHYSICAL JOURNAL E,フランス,EDP SCIENCES,2004年11月,Vol.15, No.3,pp.277-286
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
G01N 33/53
C09B 11/28
C09B 23/08
C09B 23/02
C09B 57/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
a)標識粒子とリガンドを溶液中に含んでなる試料を提供する工程、ここで該標識粒子は、該溶液中に溶解又は分散しているか又は固体支持体上に固定されており
b)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の蛍光を所定温度で検出する工程;
c)工程(a)と工程(b)をリガンドの該溶液中の異なる濃度で複数回繰り返す工程;及び
d)標識粒子の蛍光のリガンド濃度依存性の変化に基づいて、標識粒子とリガンドの間の相互作用について決定する工程を含んでなる、標識粒子とリガンドの間の相互作用を測定するための方法であって、
該方法は強い空間的温度勾配の創出より生じる熱泳動に基づく熱光学的な特性決定に依存せず、
ここで、工程(b)が以下の工程:
b1)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の蛍光を第一所定温度で検出する工程;
b2)該溶液を第二所定温度まで加熱するか又は冷却する工程;
b3)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の蛍光を第二所定温度で検出する工程を含み、
標識粒子は、一般式(I)、(IIa)、(IIb)又は(III):
【化1】
[式中:
は、O、S、又はCRであり;
は、O、S、又はCRであり;
とRは、それぞれ独立して、水素と置換されてよいアルキル基からなる群より選択され;
、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホン酸、チオール又はその塩、水素、ハロゲン、置換されてよいカルボン酸エステル基、ニトロ基、アミン、アミド、置換されてよいアルキル基、置換されてよいアルコキシ基、及び置換されてよいアルケニル基からなる群より選択され;
但し、R、R、R、R、R、R、R、及びRの少なくとも1つは、それによって色素が粒子へコンジュゲートされるスペーサー基であり、ここで該スペーサー基は、2個のCH 基より長い
aは、0~4の整数であり;
bは、0~4の整数であり;そして
nは、1~3の整数である];
【化2】
【化3】
[式中:
とXの一方はNRであって、XとXの他方は、O、S、又はCR1314であり;
は、水素と置換されてよいアルキル基からなる群より選択され;
10、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホン酸、チオール又はその塩、水素、ハロゲン、置換されてよいカルボン酸エステル基、ニトロ基、アミン、アミド、置換されてよいアルキル基、置換されてよいアルコキシ基、及び置換されてよいアルケニル基からなる群より選択され;
但し、R、R10、R11、R12、R13、及びR14の少なくとも1つは、それによって色素が粒子へコンジュゲートされるスペーサー基であり、ここで該スペーサー基は、2個のCH 基より長い
cは、0~4の整数であり;
dは、0~2の整数であり;
eは、0~4の整数であり;そして
mは、1~3の整数である];及び
【化4】
[式中:
Yは、OR18又はNR1920であり;
Zは、O又はNR2122であり;
15、R16、及びR17は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホン酸、チオール又はその塩、水素、ハロゲン、置換されてよいカルボン酸エステル基、ニトロ基、アミン、アミド、置換されてよいアルキル基、置換されてよいアルコキシ基、及び置換されてよいアルケニル基からなる群より選択され;
但し、R17の少なくとも1つは、それによって色素が粒子へコンジュゲートされるスペーサー基であり;
18は、H又はアルカリ金属イオンであり、
19、R20、R21、及びR22は、それぞれ独立して、水素と置換されてよいアルキル基からなる群より選択され;
fは、0~3の整数であり;
gは、0~3の整数であり;そして
hは、1~5の整数である]によって表される色素からなる群より選択される1種以上の色素で標識される、前記方法。
【請求項2】
式(I)の前記色素が一般式(I’):
【化5】
[式中:
は、O又はCRであり;
は、O又はCRであり;
、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、置換されてよいC1-20アルキル基であり;
とRは、それぞれ独立して、水素とスルホン酸又はその塩からなる群より選択され;
但し、R、R、R、R、R、及びRの1つは、それによって色素が粒子へコンジュゲートされるスペーサー基であり、ここで該スペーサー基は、2個のCH 基より長い;そして
nは、1又は2に等しい整数である]によって表される色素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(IIa)又は(IIb)の前記色素が一般式(IIa’)又は(IIb’):
【化6】
【化7】
[式中:
とXの一方はNRであって、XとXの他方はCR1314であり;
スルホネート基は、NRに対して4位にあり;
は、置換されてよいC~C20アルキル基であり;
11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホン酸、チオール又はその塩、水素、ハロゲン、置換されてよいカルボン酸エステル基、ニトロ基、アミン、アミド、置換されてよいアルキル基、置換されてよいアルコキシ基、及び置換されてよいアルケニル基からなる群より選択され;
但し、R、R13、及びR14の1つは、それによって色素が粒子へコンジュゲートされるスペーサー基であり、ここで該スペーサー基は、2個のCH 基より長い
dは、0~2の整数であり;
eは、0~3の整数であり;そして
mは、1又は2に等しい整数である]によって表される色素である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
一般式(I)、(I’)、(IIa)、(IIb)、(IIa’)、(IIb’)の前記色素中のスペーサー基が置換されてよいC~C20アルキレン鎖であり、ここで該アルキレン鎖の1個以上の炭素原子は、独立して、脂環式基、アリール基、複素環式基、ヘテロアリール基、又はO、N、及びSからなる群より選択されるヘテロ原子に置き換わってよい、請求項1~請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
式(III)の前記色素が一般式(III’):
【化8】
[式中:
Yは、OH又はN(CHであり;
Zは、O又はN(CHであり;
15とR16は、それぞれ独立して、水素又はハロゲンであり;
17は、それによって色素が粒子へコンジュゲートされるスペーサー基であり;そして
17aは、カルボキシ基又はその塩である]によって表される色素である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
一般式(III)又は(III’)の前記色素中のスペーサー基が置換されてよいC~C10アルキレン鎖であり、ここで該アルキレン鎖の1個以上の炭素原子は、独立して、脂環式基、アリール基、ヘテロアリール基、複素環式基、又はO、N、及びSからなる群より選択されるヘテロ原子に置き換わってよい、請求項1又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
加熱するか又は冷却する工程が、加熱又は冷却液、加熱又は冷却ガス、加熱素子、ペルティエ素子、電磁放射、及びこれらの組合せからなる群より選択される加熱又は冷却源を使用して行われる、請求項1~請求項6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
第一所定温度と第二所定温度が、-20℃~115℃の範囲にある、請求項1~請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
第一所定温度と第二所定温度が+/-1K以内に制御される、請求項1~請求項8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
第二所定温度と第一所定温度の間の差が+/-0.1K~+/-90Kの範囲にある、請求項1~請求項9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
粒子が、有機分子、生体分子、ナノ粒子、ミクロ粒子、小胞、生体細胞又は細胞内フラグメント、生体組織、ウイルス粒子、ウイルス、及び細胞小器官からなる群より選択される、請求項1~請求項10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記生体分子が、タンパク質、ペプチド、酵素、核酸、及びこれらの組合せからなる群より選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記リガンドが、イオン、金属、化合物、薬物フラグメント、炭水化物、低分子、薬物、プロドラッグ、脂質、タンパク質、ペプチド、ペプトイド、酵素、核酸、ナノ粒子、リポソーム、SUV、GUV、ポリマー、有機分子、無機分子、金属錯体、ホルモン、フレーバー、着臭剤、粒子、及びマイクロビーズまたはビーズからなる群より選択される、請求項1~請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
粒子とリガンドが、粒子→リガンドとして示される以下の組合せ:酵素→脂質、受容体→ホルモン、受容体→ケモカイン、酵素→阻害剤、受容体→神経伝達物質、受容体→サイトカイン、酵素→イオン、受容体→イオン、受容体→アミノ酸、酵素→補因子、受容体→脂質、受容体→ステロール、酵素→フラグメント、受容体→ペプチド、受容体→フラグメント、酵素→代謝産物、受容体→受容体、受容体→糖脂質、酵素→DNA、受容体→着臭剤、受容体→プロドラッグ、酵素→RNA、受容体→薬物、酵素→単糖類/二糖類/多糖類、酵素→脂肪酸、酵素→ビタミン、酵素→プロドラッグ、酵素→薬物、リポソーム→タンパク質、輸送タンパク質→基質、抗体→抗原、ウイルス粒子→受容体、ウイルス→構造タンパク質、抗体→Fc受容体、シャペロン→ATP、ssDNA→ssDNA、アプタマー→リガンド、シャペロン→イオン、RNA→低分子、多糖類→低分子、シャペロン→タンパク質、DNA→低分子、構造タンパク質→構造タンパク質、シグナル伝達タンパク質→シグナル伝達タンパク質、シグナル伝達タンパク質→低分子、シグナル伝達タンパク質→プロドラッグ、シグナル伝達タンパク質→薬物、シグナル伝達タンパク質→脂質、構造タンパク質→イオン、ナノ粒子→タンパク質、細胞小器官→タンパク質、ナノ粒子→DNA、細胞小器官→脂質、ナノ粒子→RNAからなる群より選択される、請求項1~請求項13のいずれかの方法。
【請求項15】
標識粒子とリガンドの間の相互作用を測定する方法が粒子とリガンドの解離定数を測定する方法である、請求項1~請求項14のいずれかの方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子の分子間及び/又は分子内相互作用、及び/又は粒子の修飾を測定するための改良法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶媒感受性の蛍光色素、即ちメロシアニン色素は、タンパク質への共有結合によって生体内(in vivo)で造影することに適していると報告されてきた。これらの色素は、タンパク質のコンホメーション変化を研究するために使用することができる(Hahn et al. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 4132-4145 中)。
【0003】
ポリメチン色素は、核酸やタンパク質のような生体高分子とこれら色素との非共有結合性の相互作用を研究するためのスペクトル-蛍光プローブとして有用であると報告されたことがある(Tatikolov, Journal of Photochemistry and Photobiology C: Photochemistry Reviews 2012, 13, 55-90 中)。
【0004】
さらに、シアニン色素の光物理的特性は、生体分子内の分子環境によって影響を受けるので、それによりこれらの色素は、生物物理学的研究における蛍光プローブとして好適になると報告されたことがある(Levitus et al. Quaterly Reviews of Biophysics 2010, 1-29 中)。
【0005】
タンパク質誘発性の蛍光増感は、蛍光プローブの近傍にある核酸へタンパク質が結合する場合に生じる蛍光強度の増加について記載するために報告されてきた効果である。特に、DNAへ共有結合された状態にあるシアニン色素は、あるタンパク質がDNAへ結合する場合に、蛍光強度の増加を経験する(Myong et al. PNAS 2011, 108, 7414-7418 中; Levitus et al. J. Phys. Chem. Lett. 2015, 6, 1819-1823 中)。
【0006】
メロシアニン色素は、コンホメーション変化やリガンド結合のようなタンパク質の活動を検出して定量するための色素として有用であると報告されてきた。加えて、WO2005/088308A2には、選択された標的へ結合し得るバイオセンサー分子と、標的の生体分子及びタンパク質の活性を検出するための方法が開示されている。
【0007】
WO2008/061706A1には、粒子の相互作用、特に生体分子とリガンド間の相互作用を熱光学的な特性決定によって測定するための方法が開示されている。この熱光学的な特性決定は、強い温度勾配の創出より生じる熱泳動(thermophoresis)に基づく。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、粒子の分子間及び/又は分子内相互作用、及び/又は粒子の修飾を測定するための改良法に関する。特に、本発明の方法は、感度の向上を提供する。さらに、本発明の方法は、これまでに知られている方法によっては十分な感度で測定し得なかった相互作用の検出を可能にする色素を利用する。さらに、本方法は、加熱法/加熱源に無関係であって、反応容器のジオメトリーにも無関係である(即ち、本実験は、キャピラリーにおいてだけでなく、ウェルプレートにおいても実施可能である)。
【0009】
本発明の方法では、1種以上の温度感受性色素で標識される標識粒子を利用する。
第一の側面において、本発明は、標識粒子とリガンドの間の相互作用について測定するための方法に関する。第一の側面の方法は、以下の工程を含む:
a)標識粒子とリガンドを溶液中に含んでなる試料を提供する工程(ここで標識粒子は、該溶液中に溶解又は分散しているか又は固体支持体上に固定されている);
b)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の蛍光を所定温度で検出する工程;
c)工程(a)と工程(b)をリガンドの該溶液中の異なる濃度で複数回繰り返す工程;及び
d)標識粒子の蛍光のリガンド濃度依存性の変化に基づいて、標識粒子とリガンドの間の相互作用について決定する工程。
【0010】
第二の側面において、本発明は、分子間及び/又は分子内相互作用を測定するための方法に関する。第二の側面の方法は、以下の工程を含む:
a)標識粒子を含んでなる試料を提供する工程;
b)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の第一蛍光を第一温度で検出する工程;
c)該試料を第二温度まで加熱するか又は冷却する工程;
d)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の第二蛍光を第二温度で検出する工程;
e)第一蛍光と第二蛍光に基づいて、該粒子の分子間及び/又は分子内相互作用、及び/又は修飾/改変について特性決定する工程。
【0011】
第三の側面において、本発明は、時間依存性の変化を測定するための方法に関する。第三の側面の方法は、以下の工程を含む:
a)標識粒子を含んでなる試料を提供する工程;
b)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の第一蛍光を検出する工程;
c)所定時間の間待つ工程;
d)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の第二蛍光を検出する工程;
e)第一蛍光と第二蛍光に基づいて、該粒子の時間依存性の変化について特性決定する工程。
【0012】
第四の側面において、本発明は、環境依存性の変化を測定するための方法に関する。第四の側面の方法は、以下の工程を含む:
a)標識粒子を含んでなる第一試料を提供する工程;
b)標識粒子を蛍光で励起させて、第一試料中の励起粒子の第一蛍光を検出する工程;
c)標識粒子を実質的に同じ濃度で含んでなる第二試料を提供する工程(ここで第二試料は、第一試料とは異なる);
d)標識粒子を蛍光で励起させて、第二試料中の励起粒子の第二蛍光を検出する工程;
e)第一蛍光と第二蛍光に基づいて、該粒子の環境依存性の変化について特性決定する工程。
【0013】
第五の側面において、本発明は、2種の反応色素を含んでなるタンパク質標識化キットに関し、ここで該色素は、スペーサー基を有し、該スペーサー基は、該色素のタンパク質へのコンジュゲーションを可能にする反応基を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】図面1は、加熱源としてペルティエ(Peltier)デバイス又はIRレーザーを使用する、選択したポリメチン色素とキサンテン色素の温度誘発性の蛍光強度変化を示す。
図2】図面2は、加熱源としてペルティエデバイスを使用する、様々な色素の温度誘発性の蛍光強度変化を示す。
図3】図面3は、環境(例、pH)によって調節される、色素モノスルホCy5と色素DY647P1の温度誘発性の蛍光強度変化を示す。
図4】図面4は、ペルティエデバイス又はIRレーザーを加熱源として使用する、標識粒子のリガンド誘発性の蛍光強度変化によりリガンドEcoSSBのCy5-ssDNAへの結合親和性について決定することを示す。
図5】図面5は、単一上昇温度での標識粒子のリガンド誘発性の蛍光強度変化によりリガンドBLIPのモノスルホCy5-TEM1への結合親和性について決定することを示す。
図6】図面6は、標識粒子の35℃での温度誘発性の蛍光強度変化とリガンド誘発性の蛍光強度変化により、モノスルホCy5(A)又はD647P1(B)で標識した炭酸脱水酵素(CAII)へのリガンドフロセミドの結合親和性について決定することを示す。
図7】図面7は、標識粒子の6℃と23℃でのリガンド誘発性の蛍光強度変化により、リガンド:トラスツズマブ(Trastuzumab)のモノスルホCy5-プロテインAへの結合親和性について決定することを示す。
図8】図面8は、標識粒子の37℃でのリガンド誘発性の蛍光強度変化により、DyLight655B1~B4で標識したIL-R1タンパク質へのリガンド:アナキンラ(Anakinra)の結合親和性について決定することを示す。
図9】図面9は、標識粒子の35℃と23℃の間で冷却時のリガンド誘発性の蛍光強度変化により、Cy5で標識したp38αタンパク質へのリガンドPD169316の結合親和性について決定することを示す。
図10】図面10は、標識粒子の加熱時のリガンド誘発性の蛍光強度変化により、Cy5、Z-Cy5、Oregon Green 488、Oregon Green 488-trisNTA、TAMRA、又はTAMRA Xで標識したp38αタンパク質へのリガンドPD169316とBIRBの結合親和性について決定することを示す。
図11】図面11は、標識粒子の37℃と45℃の間で加熱時のリガンド誘発性の蛍光強度変化により、モノスルホCy5又はDY647P1で標識されている、TEM1へのリガンドBLIPの結合親和性と、p38αタンパク質へのリガンドBIRBの結合親和性について決定することを示す。
図12】図面12は、標識粒子の37℃と45℃の間で加熱時のリガンド誘発性の蛍光強度変化により、モノスルホCy5、DY630、又はDY631で標識されている、TEM1へのリガンドBLIPの結合親和性と、p38αタンパク質へのリガンドPD169316の結合親和性について決定することを示す。
図13】図面13は、標識粒子の単一の所与温度でのリガンド誘発性の蛍光強度変化が独自の熱光学的プロフィールをもたらすことを示す。
図14】図面14は、標識粒子のリガンド誘発性の蛍光強度変化に対する、色素と粒子間のスペーサー長さの影響を概略的に示す。
図15】図面15は、ペルティエデバイスを使用する、色素モノスルホCy5と色素SeTau単独の場合と、p38αタンパク質とTEM1へコンジュゲートした場合の温度誘発性の蛍光強度変化を示す。
図16】図面16は、MBKとTEM1へコンジュゲートしたモノスルホCy5の温度誘発性の蛍光強度変化により熱的アンフォールディング(thermal unfolding)について決定することを示す。
図17】図面17と図面18は、蛍光の温度に伴う変化についての例示の概略図を結合状態と非結合状態で示す。
図18】図面17と図面18は、蛍光の温度に伴う変化についての例示の概略図を結合状態と非結合状態で示す。
図19a】図面19a~図面19eは、特定の色素の構造を示す。
図19b】図面19a~図面19eは、特定の色素の構造を示す。
図19c】図面19a~図面19eは、特定の色素の構造を示す。
図19d】図面19a~図面19eは、特定の色素の構造を示す。
図19e】図面19a~図面19eは、特定の色素の構造を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、粒子の分子間及び/又は分子内相互作用、及び/又は粒子の修飾を測定するための方法を提供する。本発明の方法は、感度の向上を提供する。さらに、本発明の方法は、これまでに知られている方法によっては十分な感度で検出し得なかった相互作用の検出を可能にする色素を利用する。
【0016】
本発明によれば、粒子の修飾には、例えば、粒子のグリコシル化、リン酸化、脂質化、カルボニル化、酸化、等が含まれる。
相互作用という用語は、生体分子(例、タンパク質、DNA、RNA、ヒアルロン酸、等)間の相互作用だけでなく、(修飾された)(ナノ)粒子/(マイクロ)ビーズと生体分子間の相互作用も含む。
【0017】
特に、本発明の方法は、生体分子のような分子の安定性、又は分子(特に生体分子)の例えばさらなる(生体)分子(特に、修飾された生体分子)、粒子(例、ナノ粒子又はミクロ粒子)、ビーズ(例、マイクロビーズ)との相互作用を測定することを可能にする。また、本発明の手段及び方法を用いて、上記特性のさらなる組合せについて決定し得る。しかしながら、生体分子の測定/特性決定に本発明が限定されないことが注目される。故に、本明細書に開示される手段及び方法によって、他の化合物/粒子の特性について測定及び決定することができる、例えば分子の動的事象及び相互作用についても決定及び/又は測定し得る。従って、化学反応(無機反応又は有機反応のような)についても本発明の方法によって測定し得る。複合体形成及び/又はそれらの解離について決定することも想定される。
【0018】
この特性決定は、とりわけ、生物物理学的特性(融点又は融解曲線のような)、複合体形成、タンパク質-タンパク質相互作用、タンパク質又はペプチドのフォールディング/アンフォールディング、分子内相互作用、分子間相互作用の決定、粒子又は分子間の相互作用の決定、等を含む。
【0019】
従って、本発明で提供される方法を用いて、とりわけ、生物学的、化学的、又は生物物理学的プロセスを測定、検出、及び/又は証明すること、及び/又は試料(生体試料又は医薬品試料のような)について検討、研究、及び/又は証明することが可能である。また、診断検査が実施可能であって、本発明の態様である。とりわけ、タンパク質又は核酸分子(例えば、二本鎖DNA又は二本鎖RNA(dsDNA/dsRNA)、又はハイブリッド核酸分子(DNA/RNAハイブリッドのような)の融解特徴を測定すること、核酸配列について測定及び/又は解析すること(一塩基多型(SNP)の検出及び/又は測定のような)、又は核酸分子の安定性をそれらの長さに対応して、そしてその関数として測定すること;PCR最終産物について測定及び/又は証明すること(例えば、一般的な医療診断において、また極体診断、移植前診断、法医学的分析において)が想定されて実施可能である。従って、本発明において提供される手段及び方法が、特に、そして非限定的に、所与の粒子/分子の他の分子/粒子への親和性が関心対象となる測定及び/又は証明において有用であることが当業者には明らかである。例えば、本発明で提供される方法並びにデバイスは、核酸分子及びタンパク質の温度安定性並びに融点の検出及び測定に有用である。故に、例えば、(DNA)プライマー及び(DNA又はRNA)プローブについてそれらの合成の後又は間に測定及び/又は証明することは、本発明の範囲内にある。鋳型上の核酸分子(DNAチップのような)の測定についても想定される。本発明の文脈における「融解」という用語は、核酸(例、RNA、DNA)又はタンパク質のような生体分子の熱変性を意味する。
【0020】
本発明の文脈においてまた想定されるのは、例えば、一本鎖高次構造多型(SSCP)の形態又は制限酵素断片長多型(RFLP)の形態、等の核酸分子における突然変異及び遺伝的変異の測定、検出、及び/又は証明である。本発明はまた、ヘテロ二本鎖について解析する可能性を提供する。ヘテロ二本鎖は、例えば、野生型及び突然変異体のDNA分子の混合物の熱変性とリアニーリングによって産生される。特に、DNA分子へ結合するタンパク質の前者の安定性に対する効果について測定することも可能である。さらに、タンパク質の熱安定性とその熱変性に対する分子(例、低分子、薬物、薬物候補)の効果について測定することが可能である。
【0021】
本発明の範囲内には、例えば、タンパク質-タンパク質相互作用(タンパク様構造、又はタンパク質、又はそれらのフラグメントの複合体形成のような)の測定もある。そのような測定は、限定されないが、抗体-抗原結合反応の測定を(単鎖抗体、抗体フラグメント、クロモボディ、等の形態においても)含む。また、本発明の態様は、解離事象(例えば、タンパク質複合体の解離のような)の検出及び/又は測定にも関する。故に、本発明は、解離事象の測定、決定、及び/又は証明においても(タンパク質様複合体(例、抗体-抗原複合体、等)の解離の測定におけるように)有用である。
【0022】
本発明は、ショートDNAの検出にも、二本鎖又は一本鎖の核酸分子の決定にも限定されない。粒子/分子、例えば、タンパク質、核酸(例、DNA、RNA、PNA、LNA)、ナノ粒子、ビーズ、特にマイクロビーズ、脂質、リポソーム、小胞、細胞、バイオポリマー(ヒアルロン酸、アルギン酸塩、等)、二次元脂質シート、無機物質(例、カーボンナノチューブ、バッキーボール、等)、ポリエチレングリコール(PEG)の間の相互作用、それらのコンホメーション、流体力学的半径、結合速度論、及び安定性についても測定し得る。
【0023】
第一の側面において、本発明は、標識粒子とリガンドの間の相互作用を測定するための方法に関する。この方法において、標識粒子のリガンドとの相互作用は、リガンドの濃度に依存して測定することができる。
【0024】
本発明の第一の側面の方法は、以下の工程を含む:
a)標識粒子とリガンドを溶液中に含んでなる試料を提供する工程(ここで標識粒子は、該溶液中に溶解又は分散しているか又は固体支持体上に固定されている);
b)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の蛍光を所定温度で検出する工程;
c)工程(a)と工程(b)をリガンドの該溶液中の異なる濃度で複数回繰り返す工程;及び
d)標識粒子の蛍光のリガンド濃度依存性の変化に基づいて、標識粒子とリガンドの間の相互作用について決定する工程。
【0025】
好ましくは、標識粒子とリガンドは、工程a)において、溶液中の所定濃度で提供されるか又は、標識粒子が固体支持体上に固定されている場合、標識粒子は、所定量で提供されて、リガンドは、所定濃度で提供される。このことは、標識粒子とリガンドの量がそれぞれの蛍光測定において予め決定されていて、工程a)と工程b)の間で、例えば洗浄工程によって変化しないことを意味する。さらに、工程a)において提供される溶液は、工程b)において、標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の蛍光を所定温度で検出するために使用される。
【0026】
本発明の第一の側面の方法を使用して、標識粒子の蛍光のリガンド濃度依存性の変化を示す結合曲線を入手することができる。この結合曲線(「熱光学的プロフィール」とも言及される)より、粒子とリガンドの解離定数を決定することができる。従って、本発明の特に好ましい態様において、標識粒子とリガンドの間の相互作用について測定する方法は、粒子-リガンド結合の解離定数のような、粒子とリガンドの解離定数を測定する方法である。
【0027】
好ましくは、本発明の第一の側面の方法によって、生体分子/リガンド、タンパク質/リガンド、タンパク質/タンパク質、又は受容体/リガンドの間の相互作用について決定することができる。
【0028】
本発明の第一の側面の好ましい態様では、工程(b)が以下の工程を含む:
ba)該溶液を所定温度まで加熱するか又は冷却する工程;
bb)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の蛍光を所定温度で検出する工程。
【0029】
追加の加熱又は冷却工程は、所定温度の特定の調節に有利である。1/1000の蛍光の相対的差異について測定するためには、ペルティエ素子又はIRレーザーのような加熱又は冷却素子を使用して所定温度を制御することが好ましい。経時的な温度ドリフトを回避して、温度変動が+/-1Kより小さい、好ましくは+/-0.5Kより小さいように所定温度を制御することが有利である。
【0030】
従って、好ましい態様において、本発明の第一の側面の方法は、以下の工程を含む:
a)標識粒子とリガンドを溶液中に含んでなる試料を提供する工程(ここで標識粒子は、該溶液中に溶解又は分散しているか又は固体支持体上に固定されている);
ba)該溶液を所定温度まで加熱するか又は冷却する工程;
bb)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の蛍光を所定温度で検出する工程;
c)工程(a)と工程(b)をリガンドの該溶液中の異なる濃度で複数回繰り返す工程;及び
d)標識粒子の蛍光のリガンド濃度依存性の変化に基づいて、標識粒子とリガンドの間の相互作用について決定する工程。
【0031】
理論に縛られることを望むものではないが、リガンドがその標識粒子(即ち、色素がコンジュゲートした粒子)へ結合する場合の標識粒子の蛍光の変化は、以下の理論的原理に基づく:
熱光学的測定の最重要変数の1つは、以下のように定義される結合振幅(binding amplitude):ΔFnormである:
【式1】
【0032】
【0033】
[ここで、Fは、温度Tで測定される蛍光値である。出発温度Tstartと異なる最終温度Tendで蛍光値を比較する。この2つの蛍光値の比率より、正規化蛍光Fnormを得る。ΔFnormの値、即ち結合状態のFnorm値と非結合状態のFnorm値の間の差は、信号対雑音比が最適である最適の測定結果を達成するために、可能な限り大きくあるべきである。図面17は、蛍光の温度に伴う変化についての例示の概略図を結合状態と非結合状態で示す。使用される蛍光値は、適宜示されている。この曲線の実際の経過は、広く変動する可能性がある。さらに、該溶液が冷却される、即ちTstartとTendがそれによって交換されるようなやり方でこの測定を行うことも十分考えられる。
【0034】
一般に、ΔFnormは、TstartとTendの間の温度差が増加するにつれて高くなる。しかしながら、ΔFnormは、標識分子と用量増減(titrated)リガンドだけでなく、使用される発蛍光団(fluorophore)にもいつでも依存する。
【式2】
【0035】
【0036】
多くの相互作用において、
【式3】
【0037】
【0038】
の式は、用量増減リガンドの濃度に対する依存性をすでに示す。言い換えると、温度変化の無いTstart(即ち、所定温度)の場合には、絶対蛍光値のリガンド依存性をすでに見ることができる。しかしながら、結合状態と非結合状態の間での蛍光の相対的な変化:
【式4】
【0039】
【0040】
は、ほとんどの場合、ごく小さい(数パーセントの範囲)。試料の産生の間には、液体処理方法がマニュアルでも自動化でも、数パーセントの標的濃度(そしてひいては絶対蛍光値)の偶発偏差が生じて、それによって絶対蛍光値のTstartでのリガンド依存性が隠れてしまう(即ち、好ましくない信号対雑音比)。故に、蛍光は、2種の異なる温度で測定して、(異なる温度で測定される)2つの数値の比率(quotient)を計算することが好ましく、それによって液体処理誤差を補正することができる。
【0041】
しかしながら、リガンドの関数としての温度変化に伴う蛍光の相対的な変化、即ち、相対的な結合振幅A
【式5】
【0042】
【0043】
も、しばしば小さくて、やはり数パーセントの範囲にあって、ΔTに依存する。相対値について考慮するのでピペット操作誤差は関係ないが、未知の温度Tより低いすべての温度では、Aが約1である(図面18)。
【0044】
より高い温度の場合のみ、Aが1から逸脱し始めて、この場合においてのみ結合を高い精度で測定することができる。この測定結果は、Aがより大きくなるか又はより小さくなるにつれて、即ちAが1より大きく逸脱するにつれて、より良好になる。
【0045】
要約すると、このことは、ピペット操作誤差をなくすためには、蛍光を1つより多くの温度で測定すべきであることを意味する。一方、Aが測定の開始時に1より逸脱する温度Tは、使用される発蛍光団、標識される標的分子、及び用量増減されるリガンドに依存する。このことは、Tを決定するには、広い温度範囲を走査すべきであることを意味する。温度Tendは、理想的には、Tより高い。Aが1より異なる量に依存して、十分な信号対騒音比を達成するために、いくつかの事例では、より大きなΔTも好ましい。しかしながら、大きなΔT値では、結合の熱力学的平衡がTstartでの熱力学的平衡より大きく異なる可能性があるので、小さなΔT値が好ましい。
【0046】
図面18は、蛍光の温度に伴う変化についての例示の概略図を結合状態と非結合状態で示す。上記に言及したさらなる条件及び数値を明記している。この図面より、Tstart>Tである場合にのみ、Tstartが大きくなるにつれてΔFstartが大きくなることも明らかである。この図示された蛍光変化は、必ずしも線形である必要はなくて、指数関数的減衰もあり得る。図面18では、簡素化のために線形関数を示している。
【0047】
注目すべきことに、本発明の方法は、強い空間的温度勾配の創出より生じる熱泳動に基づく熱光学的な特性決定に依存しない。
従って、本発明の第一の側面のより好ましい態様では、工程(b)が以下の工程を含む:
b1)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の蛍光を第一所定温度で検出する工程;
b2)該溶液を第二所定温度まで加熱するか又は冷却する工程;
b3)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の蛍光を第二所定温度で検出する工程。
【0048】
この好ましい態様において、標識粒子の蛍光は、2つの異なる温度で濃度が変動するリガンドの存在下で決定される。上記に説明したように、この手順によりピペット操作誤差をなくすことが可能になる。
【0049】
この好ましい態様において、標識粒子とリガンドの間の相互作用は、第二所定温度での蛍光F2を第一所定温度での蛍光F1で割った比(即ち、F2/F1)のリガンド濃度依存性の変化に基づいて決定することができる。
【0050】
本発明の第一の側面において、所定温度とは、リガンドが標識粒子へ結合するときの温度である。言い換えると、所定温度とは、蛍光励起においてコンホメーション変化を受ける色素の一部がリガンドの標識粒子への結合により変化するときの温度である。さらに、所定温度とは、色素の光異性化率又は内部転換率がリガンドの標識粒子への結合により変化するときの温度である。
【0051】
本発明の文脈において、リガンドの標識粒子への「結合」という用語は、共有結合か又は、イオン結合、水素結合、及びファン・デル・ワールス力のような分子間力による結合を意味する。
【0052】
以下において「所定温度」への言及がなされる場合、同じことは、本発明の第一の側面のより好ましい態様における第一所定温度と第二所定温度にも適用される。
所定温度は、各粒子の性質に依拠して選択することが有利である。この点において、所定温度は、好ましくは、粒子が溶解する、アンフォールドする、及び/又は改変するときの温度未満であるべきである。粒子がタンパク質である場合を例とすると、所定温度は、好ましくは、タンパク質の熱変性の開始温度未満であるように調整してよい。開始温度は、とりわけWO2017/055583A1に記載されているような熱安定性測定を実施することによって決定することができる。
【0053】
本発明の第一の側面における所定温度は、好ましくは、-20℃~115℃、好ましくは0.1℃~100℃の範囲、より好ましくは10℃~60℃の範囲、最も好ましくは10℃~40℃の範囲にある。安定した所定温度をもたらすこと、即ち、所定温度を狭い範囲内に、好ましくは+/-1K以内に、より好ましくは+/-0.5K以内に制御することが好ましい。
【0054】
典型的には、室温は、たとえ例えば空気調節によって活発に制御したとしても、+/-1Kより多く変動するものである。故に、所定温度が室温であれば、安定した所定温度を達成するために、所定温度のさらなる制御が必要となる。より好ましくは、所定温度は、室温とは異なる。室温は、20℃~25℃の間の温度、好ましくは25℃を意味する。
【0055】
同様に、本発明の第一の側面のより好ましい態様において、加熱又は冷却工程における第一及び第二所定温度は、好ましくは-20℃~115℃、好ましくは0.1℃~100℃の範囲、より好ましくは5℃~60℃の範囲、なおより好ましくは10℃~60℃の範囲、最も好ましくは10℃~40℃の範囲にある。第一所定温度は、好ましくは-20℃~115℃、好ましくは0.1℃~100℃の範囲、より好ましくは5℃~60℃の範囲、なおより好ましくは10℃~60℃の範囲、最も好ましくは10℃~40℃の範囲にある。第二所定温度は、好ましくは-20℃~115℃、好ましくは0.1℃~100℃の範囲、より好ましくは5℃~60℃の範囲、なおより好ましくは10℃~60℃の範囲、最も好ましくは10℃~40℃の範囲にある。加熱工程の場合、第一所定温度は、第二所定温度が上記に記載したその上限を超えないように、十分低く選択されると理解される。同様に、冷却工程の場合、第一所定温度は、第二所定温度が上記に記載したその下限を超えないように、十分高く選択されると理解される。上記に記載したように、ここでも、第一所定温度と第二所定温度は、温度変動を好ましくは+/-1Kより小さいように安定的に制御することが有利である。
【0056】
第一所定温度と第二所定温度の間の差は、通常、+/-0.1K~+/-90Kの範囲にある。このことは、この温度差の絶対値:|T2nd-T1st|が0.1Kと90Kの間にある、即ち、温度差は、正(加熱)又は負(冷却)であり得ることを意味する。好ましくは、温度差は、+/-1Kと+/-40Kの範囲、より好ましくは+/-1K~+/-20Kの範囲にある。このシステムは、温度の変化によってごくわずかしか混乱しないので、低い温度差が有利である。当業者には、試料全体を冷却することによって、温度感受性の材料に対して損害を与えることなく、より高い温度上昇の振幅(即ち、レーザー加熱による)が可能であることが分かっている。
【0057】
本発明の第一の側面の好ましい態様の方法において、加熱するか又は冷却する工程は、加熱又は冷却の液体又はガス、加熱素子(例えば、発熱素子、又は金属加熱素子、セラミック加熱素子、ポリマーPTC加熱素子、複合加熱素子、半導体加熱素子のような、ジュール加熱に基づく他の素子)、又は熱電素子(例えば、ペルティエ素子)、又は電磁放射(LED、例、IR-LED、又はレーザー、例、IR-レーザー、又はマイクロ波)からなる群より選択される加熱源又は冷却源を使用して行うことができる。
【0058】
ペルティエ素子が好ましくは使用されるのは、試料を加熱する、及び/又は試料を冷却する(例えば、試料を環境温度未満に冷却する)ためにそれを使用し得るからである。特に、ペルティエ素子を通して電流の向きを逆転させることによって、加熱から冷却へ変換することが可能である。ペルティエ素子は、加熱するだけでなく室温以下へ能動的に冷却することができる数少ない素子の1つである。
【0059】
レーザー、好ましくはその電磁放射が試料によって直接吸収されるレーザーが好ましくは使用されるのは、試料中の温度を試料への機械的接触無しに迅速かつ直接的に変化させることができるからである。
【0060】
レーザー放射は、試料によって直接吸収されて熱へ変換され、例えば、波長:980nm+/-30nm、1480nm+/-30nm、1550nm+/-30nm、1940nm+/-30nmのIRレーザー光線は、水によって非常によく吸収されて、ごく迅速に熱を上げる。この加熱法には接触が無い、即ち、速やかで汚染のリスクが無い。試料チャンバは、レーザー光線に対して透明でなければならないが、加熱素子による接触加熱とは対照的に、良好な熱伝導性を必要としない。
【0061】
温度誘発性の蛍光強度変化は、色素の物理化学的特性にのみ依存する(図面1)。温度誘発性の蛍光強度変化の度合いは、色素の物理化学的特性にのみ依存するので、それは、使用される加熱源に無関係である。従って、規定される定時IR-レーザーでの色素の蛍光強度に基づいて、プローブの温度を推定することができる。
【0062】
レーザーを用いれば、ナノリットル量の範囲でも加熱されて、その蛍光が蛍光顕微鏡(optics)によって測定される(検出量は、しばしば、100μmx100μmx100μm=1nl量にすぎない)。より多くの量を加熱する必要がなく、その量では蛍光顕微鏡によって蛍光を検出し得ないことが多い。
【0063】
本発明の第一の側面の好ましい態様では、工程(b2)と工程(b3)を連続的又は同時的に行うことができる。
本発明の第一の側面によれば、粒子には、生体分子、ナノ粒子、ミクロ粒子、及び小胞が含まれる。粒子には、生体細胞(例、細菌細胞又は真核細胞)又は細胞内フラグメント、ウイルス粒子又はウイルス、及び細胞小器官、等も含まれる。ナノ粒子には、ナノディスクも含まれる。ナノディスクは、疎水性の先端が2つの両親媒性タンパク質によって仕切られたリン脂質の脂質二重層から構成される、合成モデル膜システムである。
【0064】
生体分子は、好ましくは、アミノ酸、タンパク質、ペプチド、単糖類及び二糖類、多糖類、脂質、糖脂質、脂肪酸、ステロール、ビタミン、神経伝達物質、酵素、ヌクレオチド、代謝産物、核酸、及びこれらの組合せからなる群より選択される。より好ましくは、生体分子は、タンパク質、ペプチド、酵素、核酸、及びこれらの組合せからなる群より選択される。
【0065】
好ましくは、(標識粒子中の)粒子は、生体分子であり、最も好ましくは、タンパク質又は核酸である。
タンパク質は、酵素(例、炭酸脱水酵素、βラクタマーゼTEM1、又はMEK1及びp38のようなキナーゼ)、輸送タンパク質(例、MBP)、阻害タンパク質(例、βラクタマーゼ阻害タンパク質BLIP、アナキンラ)、構造タンパク質、シグナル伝達タンパク質、リガンド結合タンパク質、シャペロン(例、熱ショックタンパク質、HSP90)、抗体(例、トラスツズマブ)、及び受容体(例、インターロイキン1受容体)からなる群より選択される。
【0066】
核酸には、DNA、RNA、LNA、及びPNAが含まれる。アクセス不能(inaccessible)RNAと呼ばれることが多いロックト(locked)核酸(LNA)は、修飾RNAヌクレオチドである。LNAヌクレオチドのリボース部分は、2’酸素と4’炭素を連結する余剰の架橋で修飾されている。ペプチド核酸(PNA)は、DNA又はRNAに類似した人工合成ポリマーである。DNAとRNAがデオキシリボースとリボースの糖骨格をそれぞれ有するのに対し、PNAの骨格は、ペプチド結合によって連結される反復性のN-(2-アミノエチル)-グリシン単位のようなペプチドから構成される。この骨格には、様々なプリン塩基とピリミジン塩基がメチレン架橋(-CH-)とカルボニル基(-(C=O)-)によって連結する。
【0067】
本発明の文脈において、ナノ粒子は、100nm未満の平均サイズを有する粒子である。「平均サイズ」という用語は、例えば、Brookhaven Instruments の 90Plus 又は Malvern Zetasizer Z90 粒径測定機器を使用する動的光散乱法によって測定されるような平均有効径について記載する。好ましくは、粒径は、1nm~100nm、好ましくは1~70nmの範囲にある。ナノ粒子は、有機粒子でも無機粒子でもよい。ナノ粒子はまた、有機分子がその表面に付着した無機コアのような、複合粒子としても存在し得る。
【0068】
ミクロ粒子は、1mm未満、しかし通常は100nm以上の最長寸法を有する微視的粒子である。ミクロ粒子の特性決定をするには、透過型電子顕微鏡(TEM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、及び準弾性光散乱法(QELS)を利用するサイズ測定法を使用してよい。ミクロ粒子は、マイクロビーズの形態でも存在し得る。
【0069】
ミクロ粒子は、例えば、コート化又は未コート化のシリカ/ガラス/生分解性粒子、ポリスチレン/コート化/フローサイトメトリー/PMMA/メラミン/NIST粒子、アガロース粒子、磁性粒子、コート化又は未コート化の金粒子又は銀粒子又は他の金属粒子、遷移金属粒子、生体材料、半導体、有機及び無機粒子、蛍光ポリスチレンマイクロスフェア、非蛍光ポリスチレンマイクロスフェア、複合材料、リポソーム、細胞、等であり得る。
【0070】
市販のミクロ粒子は、セラミクス、ガラス、ポリマー、及び金属が含まれる多種多様な材料において利用可能である。日常生活で遭遇するミクロ粒子には、花粉、砂、埃、小麦粉、及び粉砂糖が含まれる。生体系において、ミクロ粒子は、血小板や内皮細胞のような、血流と接触状態にある細胞に由来して血中を循環する、膜結合性の小胞である。
【0071】
マイクロビーズは、好ましくは、その最大寸法が5ミリメートル未満である固体プラスチック製粒子である。マイクロビーズはまた、典型的には直径0.5~500マイクロメートルの均質なポリマー粒子であってよい。
【0072】
「修飾粒子」又は「修飾ビーズ」という用語は、特に、分子、好ましくは生体分子を含むか又はそれへ連結したビーズ又は粒子に関する。これは、そのようなビーズ又は粒子のこれら(生体)分子でのコーティングも含む。
【0073】
本発明による粒子又はビーズは、例えば、生体分子(例、DNA、RNA、又はタンパク質)が粒子又はビーズへ結合し得る(いくつかの態様では、特異的に、及び/又は共有結合的に)ようなやり方で修飾され得る。故に、本発明の範囲内には、ビーズ及び/又は粒子、そしてそのようなビーズ又は粒子へ付着又は連結した分子の特性についての分析がある。特に、そのような分子は、生体分子である。従って、「修飾(マイクロ)ビーズ/(ナノ又はマイクロ)粒子」という用語は、特に、分析されるか又は特性決定される追加の分子を含むビーズ又は粒子に関する。修飾又は非修飾ミクロ粒子/(ナノ又はマイクロ)粒子は、溶液中の生体分子(例、DNA、RNA、又はタンパク質)のような他の粒子/分子と相互作用することが可能であり得る。
【0074】
本発明の方法では、1種以上の温度感受性色素で標識された標識粒子を利用する。本発明の文脈において、「標識粒子」は、蛍光手段によって検出することが可能である、蛍光標識された分子/粒子又は他の分子/粒子、例えば、固有の発蛍光団を含んでなる分子/粒子、又は発蛍光団が付着した粒子/分子を意味する。特に、標識粒子は、好ましくは、例えば、色素へ付着した、例えば色素へ共有結合した粒子、又はポリヒスチジンタグ、FLAG-タグ、又は類似物のような高親和性タンパク質タグにより色素へ可逆的に結合した粒子である。
【0075】
タンパク質タグとは、組換えタンパク質上へ遺伝子工学に移植されるペプチド配列である。これらには、ポリ(His)タグ、FLAG-タグのようなポリアニオンアミノ酸、V5-タグ、Myc-タグ、HA-タグ、及びNE-タグのようなエピトープタグ、特異的な酵素的修飾(ビオチンリガーゼによるビオチニル化のような)又は化学的修飾(蛍光造影のためのFlAsH-EDT2との反応のような)を可能にし得るタグが含まれる。
【0076】
本発明に有用な色素は、温度依存性の蛍光強度を示す(即ち、温度が冷却又は加熱によって変化するときに色素の蛍光強度が増加するか又は減少する)色素である。この現象は、温度関連性の蛍光強度変化と呼ばれる。本発明の文脈では、この挙動を示す色素を「温度感受性色素」と呼ぶ。好ましくは、本発明において使用される色素は、蛍光強度における温度誘発性の変化だけでなく、粒子、即ち標識粒子へ結合するときに、その蛍光強度の温度依存性において、リガンド結合誘発性の変化も示す。
【0077】
本発明者は、生体分子のような粒子へ結合している色素の温度依存性を使用して、リガンドと生体分子の間の相互作用パラメータを決定することができることを見出した。
理論に縛られることを望むものではないが、今回の知見は、以下の理論的原理に基づくと考えられる:
Cy5のようなシアニン色素のトランス(trans)型が蛍光性であるのに対し、シス(cis)型は非蛍光性である。シアニン色素のトランス型が蛍光性であるのは、下記に図示されるような非局在化電子によって引き起こされる共鳴又はメソメリズム(mesomerism)による:
【0078】
【化1】
【0079】
ポリメチン色素の蛍光量子収率は、プローブが位置する分子環境に強く依存し、そのことがシス-トランス光異性化の効率を決定する。異性化が大きな分子運動を伴う活性化プロセスであるので、蛍光寿命は、温度と溶媒粘度に強く依存する。蛍光の効率は、結合の回転が立体的に妨害されているときに、生体分子のような粒子へ色素が結合しているときに観測されるように、有意に増加する。タンパク質の上又は内部に結合した色素分子は、励起状態のC=C回転から立体的に妨害されるので、シス異性体へ変換する可能性がより低い。より高い温度では、タンパク質へ結合した色素の振動自由度の増加によって、「暗い」シス状態への変換率が高くなり、それが測定蛍光の減少をもたらす。実施例において示す実験によって実証されるように、生体分子のリガンド誘発性コンホメーション変化は、色素の蛍光強度を調節する(これは、タンパク質へ結合した色素の振動自由度の変化の結果である)。この理由の故に、単一温度での結合親和性の測定が可能なのである。色素の温度依存性だけを使用してリガンドと生体分子間の相互作用パラメータを決定するアプローチは、これまで報告されていない。
【0080】
光異性体は、生成されるとすぐに熱戻り異性化反応を受けて、熱力学的に安定な全トランス異性体を生じる。他の2つのプロセスに関する光異性化の相対効率は、温度、溶媒粘度、及び立体障害を創出する可能性がある置換基の存在に依存する。重要にも、温度が低いほど、低い異性化率と高い蛍光収率をもたらす。
【0081】
色素の温度依存性、即ち、蛍光強度の変化を伴う、温度変化に応じて反応する色素の固有特性は、色素の化学構造にのみ依存する。蛍光分子の温度依存性は、その置換基の振動自由度によって影響される。限定されないが、ATTO647N、ATTO655、及びCF640Rのような、強く硬直化した構造を有する色素は、温度上昇に対して、無視し得る蛍光強度の変化で応じる(図面2)。従って、これらの色素は、本発明の目的に適していない。さほど硬直でない構造を有する色素(限定されないが、フルオレセイン、Oregon Green 488、DY495、ローダミン、TAMRA、IR640のような)は、温度上昇時に蛍光強度の有意な増加を示す。最も感受性が高い色素は、ポリメチン色素のファミリー(限定されないが、Cy3、モノスルホCy3、DY567、Cy5、モノスルホCy5、DY630、DY647P1、DY650、Alexa 647、及びDyLight 655 B1-B4のような)に属する。これら色素の蛍光は、強く温度依存的である(図面2)。
【0082】
色素の温度依存性は、粒子(生体分子)へのコンジュゲーションによって調節され、独自の熱光学的プロフィールをもたらす(図面15)。温度誘発性の蛍光強度変化は、ポリメチン色素の代表としてのモノスルホCy5について示すように、生体分子の存在下で強く抑制されて、それは、色素へコンジュゲートする生体分子の特性に有意に依存する(図面15A)。SeTauのようなスクアラインロタキサン類の蛍光強度は、温度変化に対してずっと低感受性である。SeTauの生体分子へのコンジュゲーション時に、温度に対する感受性は、有意には変化しない(図面15B)。
【0083】
中等度~強度の温度依存性がある色素(限定されないが、キサンテン色素(例、フルオレセイン、ローダミン、TAMRA、及びDY495)とポリメチン色素(例、Cy3、モノスルホCy3、DY547、Cy5、モノスルホCy5、DY630、DY631、及びDY647P1)のような)は、熱光学的研究に十分適している。それらの温度依存性は、生体分子へのコンジュゲーションによって有意に影響される。
【0084】
有意な温度依存性を有する色素(限定されないが、DyLight 655 B3、IR650のような)は、それらの温度感受性が生体分子へのコンジュゲーションによって影響されないので、熱光学的研究に適さないかもしれない。
【0085】
従って、温度誘発性の蛍光強度変化をもたらす色素の温度依存性は、熱光学的研究に最適の色素にとって必要条件であるが、十分条件ではない。色素と生体分子間の相互作用こそが色素の熱光学的プロフィールの有効性と感度を独自に決定するのである(図面5と図面13)。色素の温度依存性だけを使用してリガンドと生体分子の間の相互作用パラメータを決定する今回のアプローチについては、これまで記載されていない。
【0086】
本発明において使用し得る色素は、遊離形態では、好ましくは>0.3%/K、より好ましくは>0.5%、そして最も好ましくは>1%/Kである温度依存性を明示すべきである。
【0087】
色素の温度依存性は、標識粒子へのコンジュゲーションによって調節されなければならない。色素は、コンジュゲートした形態において、好ましくは>0.3%/K、より好ましくは>0.5%/K、そして最も好ましくは>1%/Kである温度依存性を明示すべきである。
【0088】
色素は、好ましくは、標識化時に標識粒子の凝集を引き起こす傾向をほとんど有さないべきである。
スルホネート基又は類似基の色素中への取込みは、標識生体分子の凝集の抑制をもたらすが、色素の最適な熱光学的プロフィールのためには、生体分子とのコンジュゲーション時の色素の低い正味荷電(好ましくは、≧-2)が好ましい。
【0089】
リガンド⇔標識粒子の相互作用又は生体分子の熱的アンフォールディングの熱光学的測定に最適の色素は、ポリメチン色素(共役二重結合のあるメチン基(=CH-)から構成される鎖を含有する有機化合物として定義される)の成員、好ましくは、限定されないが、対称性及び非対称性のシアニン色素、即ち、一般式:RN[CH=CH]CH=N⇔R=CH[CH=CH]NR(ここでnは、小さな数である)の合成色素であって、ここでは通常、窒素と場合によっては共役鎖の一部が、限定されないが、イミダゾール、ピリジン、ピロール、キノリン、及びチアゾールのような複素環式系の一部となる。
【0090】
リガンド⇔標識粒子の相互作用又は生体分子の熱的アンフォールディングの熱光学的測定に最適の色素は、キサンテン色素の成員(即ち、限定されないがフルオレセインとローダミンベースの色素が含まれる、キサンテンの誘導体である有機化合物であって、その置換基の回転が自由なことを特徴とする)であってもよい。
【0091】
熱光学的な読出しの感度は、色素と生体分子間のスペーサーの長さや化学的性質を変化させることによって操作することができる(図面10と図面14)。Z-Cy5中の双性イオン特性のような独自の化学的性質があるより長いリンカー基は、典型的なヘキサノイルスペーサーのあるCy5と比較して、リガンド誘発性のコンホメーション変化の広範な感知に貢献する(図面10A)。OregonGreen 488又はTAMRAにあるようにスペーサーがあまりに短いと、生体分子中のリガンド誘発性のコンホメーション変化による微小環境での変化を効率的に感知することが妨げられる場合がある(図面10B~図面10C)。このように、色素と生体分子間のスペーサーの長さと化学的性質は、熱光学的プロファイリングの感度を決定する。コンジュゲーション時の色素と生体分子間の距離を支配するスペーサー長さは、最も好ましくは、2個のCH基より長くあるべきである。
【0092】
色素の温度依存性の生体分子による調節は、生体分子へのコンジュゲーション後に色素が明示する正味荷電に依存する。ベンゾピリリウムコアと様々な数のスルホネート基を含有するポリメチン色素でIL-R1が標識された実験で実証されるように、スルホネート基の数の増加は、熱光学的読出しの質に逆相関する(図面8)。標識されたIL-R1へのリガンド、アナキンラ(Anakinra)の親和性について決定した。スルホネート基の数が大きくなる(>2)と、この色素の熱光学的プロファイリングへの適用性は、低下した。1個又は2個のスルホネート基をそれぞれ担う、カルボシアニン色素のモノスルホCy5とDY647P1の比較によって同様の効果が示され、このことは、スルホネート基の数がこの色素の熱光学的研究への適用性を重大に決定することを例証する(図面11)。
【0093】
最良の信号対雑音比を達成するための特定の応用には、特異的な色素を使用し得る。雑音とは、リガンドの結合が原因ではない、熱光学的信号における変動と定義される。図面12に示されるように、非対称的なポリメチン色素のDY630とDY631は、タンパク質-タンパク質相互作用を検出するアッセイに優れている(図面12A)が、低分子のタンパク質への結合を検出するアッセイでは、不十分な熱光学的プロフィールを示す(図面12B)。一方、対称性のカルボシアニン色素のモノスルホCy5は、低分子のタンパク質への結合を検出するアッセイにおいて優れたプロフィールを示す。
【0094】
本発明において使用し得る温度感受性色素は、好ましくは、ポリメチン色素とキサンテン色素からなる群より選択される。ポリメチン色素には、好ましくは、ベンゾピリリウムコアを有する対称性及び非対称性のシアニン色素又はポリメチン色素が含まれる。キサンテン色素には、ローダミン色素とフルオレセイン色素が含まれる。
【0095】
ベンゾピリリウムコアを有する好ましいポリメチン色素には、限定されないが、Chromeo P543、DY630、DY631、DY650、DyLight 655 B2、DyLight 655 B3が含まれる。好ましいシアニン色素には、限定されないが、シアニン2、Cy3、モノスルホCy3、Cy5、モノスルホCy5(バージョン1)、モノスルホCy5(バージョン2)、ジスルホCy5、Z-Cy2、Z-Cy5、モノスルホZ-Cy5、Alexa647、DY547P1、及びDY647P1が含まれる。好ましいキサンテン色素には、限定されないが、TAMRA、TAMRA X、DY495、及びOregon Greenが含まれる。より好ましいキサンテン色素には、限定されないが、TAMRAX、及びDY495が含まれる。
【0096】
特に好ましい色素は、DY630、DY631、DyLight 655 B2、DyLight 655 B3、シアニン2、Z-Cy2、Z-Cy5、モノスルホCy5(バージョン1)、モノスルホCy5(バージョン2)、及びTAM RAXである。図面19a~図面19eは、上記に言及した色素の構造式を示す。図面19a~図面19eにおいて、色素は、スペーサー基の無い純粋な色素として示す場合もあれば、スペーサーと反応基が含まれる反応色素として示す場合もある。
【0097】
本発明の第一の側面によれば、標識粒子は、好ましくは、一般式(I)、(IIa)、(IIb)又は(III):
【0098】
【化2】
【0099】
[式中:
は、O、S、又はCRであり;
は、O、S、又はCRであり;
とRは、それぞれ独立して、水素と置換されてよいアルキル基からなる群より選択され;
、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホン酸、チオール又はその塩、水素、ハロゲン、置換されてよいカルボン酸エステル基、ニトロ基、アミン、アミド、置換されてよいアルキル基(好ましくは、C1-4アルキル)、置換されてよいアルコキシ基、及び置換されてよいアルケニル基からなる群より選択され;
但し、R、R、R、R、R、R、R、及びRの少なくとも1つは、それによって色素が粒子へコンジュゲートされるスペーサー基であり(ここで該スペーサー基は、2個のCH基より長い);
aは、0~4の整数であり;
bは、0~4の整数であり;そして
nは、1~3の整数、好ましくは1又は2である];
【0100】
【化3】
【0101】
【化4】
【0102】
[式中:
とXの一方はNRであって、XとXの他方は、O、S、又はCR1314であり;
は、水素と置換されてよいアルキル基からなる群より選択され;
10、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホン酸、チオール又はその塩、水素、ハロゲン、置換されてよいカルボン酸エステル基、ニトロ基、アミン、アミド、置換されてよいアルキル基(好ましくは、C1-4アルキル)、置換されてよいアルコキシ基、及び置換されてよいアルケニル基からなる群より選択され;
但し、R、R10、R11、R12、R13、及びR14の少なくとも1つは、それによって色素が粒子へコンジュゲートされるスペーサー基であり(ここで該スペーサー基は、2個のCH基より長い);
cは、0~4の整数であり;
dは、0~2の整数であり;
eは、0~4の整数であり;そして
mは、1~3の整数、好ましくは1又は2である];及び
【0103】
【化5】
【0104】
[式中:
Yは、OR18又はNR1920であり;
Zは、O又はNR2122であり;
15、R16、及びR17は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホン酸、チオール又はその塩、水素、ハロゲン、置換されてよいカルボン酸エステル基、ニトロ基、アミン、アミド、置換されてよいアルキル基(好ましくは、C1-4アルキル)、置換されてよいアルコキシ基、及び置換されてよいアルケニル基からなる群より選択され;
但し、R17の少なくとも1つは、それによって色素が粒子へコンジュゲートされるスペーサー基であり;
18は、H又はアルカリ金属イオンであり、
19、R20、R21、及びR22は、それぞれ独立して、水素と置換されてよいアルキル基からなる群より選択され、好ましくは、R19、R20、R21、及びR22は、それぞれ同じであり;
fは、0~3の整数であり;
gは、0~3の整数であり;そして
hは、1~5の整数である]によって表される色素からなる群より選択される1種以上の色素で標識される。
【0105】
、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R19、R20、R21、及びR22のアルキル基は、好ましくは、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、n-ブチル、tert-ブチル、メトキシエチルのような、置換されてよいC1-4アルキル基である。
【0106】
基:R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R19、R20、R21、及びR22は、好ましくは、リガンドの標識粒子への結合時に蛍光強度変化を妨害する場合がある大きな立体障害を持ち込む、アリール基のような大きな基を含有しない。
【0107】
、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、及びR17のアルケニル基は、好ましくは、置換されてよいC1-4アルケニル基である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16、及びR17のアルコキシ基は、好ましくは、置換されてよいC1-4アルコキシ基である。
【0108】
とRのアルキル基は、アルコキシとスルホネート、好ましくはメトキシとスルホネートからなる群より選択される1以上の置換基で置換されてよい。
、R、R、R、R、及びRのカルボン酸エステル基、アルキル基、アルケニル基、又はアルコキシ基は、オキソ基とスルホネートからなる群より選択される1以上の置換基で置換されてよくて、好ましくは、置換基無しでよい。
【0109】
のアルキル基は、R及びRのアルキル基と同じ置換基で置換されてよくて、好ましくは、1以上のスルホネート基で置換されてよい。
10、R11、R12、R13、及びR14のカルボン酸エステル基、アルキル基、アルケニル基、又はアルコキシ基は、R、R、R、R、R、及びRのアルキル基、アルケニル基、又はアルコキシ基と同じ置換基で置換されてよくて、好ましくは、1以上のアルキル基、好ましくはメチル基で置換されてよい。
【0110】
15、R16、及びR17のカルボン酸エステル基、アルキル基、アルケニル基、又はアルコキシ基は、R、R、R、R、R、及びRのアルキル基、アルケニル基、又はアルコキシ基と同じ置換基で置換されてよくて、好ましくは、置換基を有さなくてよい。
【0111】
19、R20、R21、及びR22のアルキル基は、RとRのアルキル基と同じ置換基で置換されてよくて、好ましくは、置換基を有さなくてよい。
スペーサー基とは、それによって色素が粒子へコンジュゲートされる基である。最も好ましくは、スペーサー基は、ヘキサノイルスペーサー基のように、2個のCH基より長い。
【0112】
本発明の文脈において、「スルホン酸」及び「スルホネート基」という用語は、交換可能的に使用されて、基「-SO 」を意味する。当業者によって理解されるように、この基は、負に帯電している。この負電荷は、対応する正電荷を標識粒子内に必要とする(分子内塩)か又は対応する陽イオンが溶液中に存在しなければならない。この陽イオンは、標識粒子を含んでなる溶液に溶けるどのイオンでもよくて、好ましくは、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン、及びアルカリ土類金属イオンより、最も好ましくはナトリウムイオン又はカリウムイオンより選択され得る。同様に、全体として陽電荷を有する標識粒子には、対応する陰イオンが溶液中に必要とされる。この陰イオンは、標識粒子を含んでなる溶液に溶けるどのイオンでもよくて、好ましくは、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、及びテトラフルオロホウ酸イオンより選択され得る。
【0113】
式(I)の色素は、好ましくは、一般式(I’):
【0114】
【化6】
【0115】
[式中:
は、O又はCRであり;
は、O又はCRであり;
、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、置換されてよいC1-20アルキル基であり;
とRは、それぞれ独立して、水素とスルホン酸又はその塩からなる群より選択され;
但し、R、R、R、R、R、及びRの1つは、それによって色素が粒子へコンジュゲートされるスペーサー基であり(ここで該スペーサー基は、2個のCH基より長い);そして
nは、1又は2に等しい整数である]によって表される色素である。
【0116】
式(IIa)又は(IIb)の色素は、好ましくは、一般式(IIa’)又は(IIb’):
【0117】
【化7】
【0118】
【化8】
【0119】
[式中:
とXの一方はNRであって、XとXの他方はCR1314であり;
スルホネート基は、NRに対して4位にあり;
は、置換されてよいC~C20アルキル基であり;
11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホン酸、チオール又はその塩、水素、ハロゲン、置換されてよいカルボン酸エステル基、ニトロ基、アミン、アミド、置換されてよいアルキル基(好ましくはC1-4アルキル)、置換されてよいアルコキシ基、及び置換されてよいアルケニル基からなる群より選択され;
但し、R、R13、及びR14の1つは、それによって色素が粒子へコンジュゲートされるスペーサー基であり(ここで該スペーサー基は、2個のCH基より長い);
dは、0~2の整数であり;
eは、0~3の整数であり;そして
mは、1又は2に等しい整数である]によって表される色素である。
【0120】
なおより好ましくは、式(IIa’)又は(IIb’)の色素は、一般式(IIa’’)又は(IIb’’):
【0121】
【化9】
【0122】
【化10】
【0123】
[式中:
とXの一方はNRであって、XとXの他方はCR1314であり;
スルホネート基は、NRに対して4位にあり;
は、置換されてよいC-Cアルキル基であり;
13とR14は、それぞれ独立して、置換されてよいC1-4アルキル基であり;
但し、R、R13、及びR14の1つは、それによって色素が粒子へコンジュゲートされるスペーサー基であり(ここで該スペーサー基は、2個のCH基より長い);そして
mは、1又は2に等しい整数である]によって表される色素である。
【0124】
式(III)の色素は、好ましくは、一般式(III’):
【0125】
【化11】
【0126】
[式中:
Yは、OH又はN(CHであり;
Zは、O又はN(CHであり;
15とR16は、それぞれ独立して、水素又はハロゲンであり;
17は、それによって色素が粒子へコンジュゲートされるスペーサー基であり;そして
17aは、カルボキシ基又はその塩である]によって表される。
【0127】
好ましくは、一般式(I)、(I’)、(IIa)、(IIb)、(IIa’)、(IIb’)、(IIa’’)又は(IIb’’)の前記色素中のスペーサー基は、置換されてよいC~C20アルキレン鎖であって、ここで該アルキレン鎖の1個以上の炭素原子は、独立して、脂環式基、アリール基、複素環式基、ヘテロアリール基、又はO、N、及びSからなる群より選択されるヘテロ原子に置き換わってよい。より好ましくは、一般式(I’)、(IIa’)、(IIb’)、(IIa’’)又は(IIb’’)の色素は、この好ましいスペーサー基を含む。なおより好ましくは、一般式(I’)、(IIa’)、(IIb’)、(IIa’’)又は(IIb’’)の色素は、生体分子へコンジュゲートした、好ましくはタンパク質へコンジュゲートした、この好ましいスペーサー基を含む。
【0128】
なおより好ましくは、一般式(I)、(I’)、(IIa)、(IIb)、(IIa’)、(IIb’)、(IIa’’)又は(IIb’’)のスペーサー基は、置換されてよいC~Cアルキレン鎖であって、ここで1個の炭素原子は、1つのアリール基に置き換わってよい。なおより好ましくは、一般式(I’)、(IIa’)、(IIb’)、(IIa’’)又は(IIb’’)の色素は、このなおより好ましいスペーサー基を含む。最も好ましくは、一般式(I’)、(IIa’)、(IIb’)、(IIa’’)又は(IIb’’)の色素は、生体分子へコンジュゲートした、好ましくはタンパク質へコンジュゲートした、このなおより好ましいスペーサー基を含む。
【0129】
好ましくは、一般式(III)又は(III’)の前記色素中のスペーサー基は、置換されてよいC~C10アルキレン鎖であって、ここで該アルキレン鎖の1個以上の炭素原子は、独立して、脂環式基、アリール基、ヘテロアリール基、複素環式基、又はO、N、及びSからなる群より選択されるヘテロ原子に置き換わってよい。より好ましくは、一般式(III’)の色素は、この好ましいスペーサー基を含む。なおより好ましくは、一般式(III’)の色素は、生体分子へコンジュゲートした、好ましくはタンパク質へコンジュゲートした、この好ましいスペーサー基を含む。
【0130】
なおより好ましくは、一般式(III)又は(III’)の前記色素中のスペーサー基は、置換されてよいC~Cアルキレン鎖であって、ここで該アルキレン鎖の1個以上の炭素原子は、独立して、O、N、及びSからなる群より選択されるヘテロ原子に置き換わってよい。なおより好ましくは、一般式(III’)の色素は、このなおより好ましいスペーサー基を含む。最も好ましくは、一般式(III’)の色素は、生体分子へコンジュゲートした、好ましくはタンパク質へコンジュゲートした、このなおより好ましいスペーサー基を含む。
【0131】
一般式(III)又は(III’)の色素は、一般式(I’)、(IIa’)、(IIb’)、(IIa’’)又は(IIb’’)の色素のスペーサー基に関して定義されるようなスペーサー基も含んでよい。
【0132】
一般式(I)、(I’)、(IIa)、(IIb)、(IIa’)、(IIb’)、(IIa’’)、(IIb’’)、(III)又は(III’)のスペーサー基は、通常、2個の連続したヘテロ原子を含有しない。R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、及びR17のいずれものスペーサー基は、通常、メチレン基を介して色素構造へ結合している基であり、即ち、スペーサー基のR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R13、R14、及びR17は、色素構造の近傍にある末端からメチレン基で始まる。スペーサー基の遠端、即ち、粒子へ付くスペーサー基の末端は、しばしばカルボニル基である。さらに、一般式(I)、(I’)、(IIa)、(IIb)、(IIa’)、(IIb’)、(IIa’’)、(IIb’’)、(III)又は(III’)のスペーサー基は、好ましくは、置換されてよいC~C20アルキレン鎖であり、ここで該アルキレン鎖の1個以上の炭素原子は、独立して、O、N、及びSからなる群より選択されるヘテロ原子に置き換わってよく、ここで該スペーサー基の遠端は、3個のNi(II)イオンを含むTrisNTA-Ni錯体である。言い換えると、スペーサー基は、TrisNTA647とtrisNTA Oregon Green 488では、図面19に例示的に示されるように色素へ付く。TrisNTAは、Niイオンを介して粒子へコンジュゲートする。
【0133】
一般式(I)、(I’)、(IIa)、(IIb)、(IIa’)、(IIb’)、(IIa’’)、(IIb’’)、(III)又は(III’)のスペーサー基の置換基は、オキソ基、C1-4アルキレンスルホネート、及びC1-4アルキルより選択され得る。
【0134】
一般式(I)、(I’)、(IIa)、(IIb)、(IIa’)、(IIb’)、(IIa’’)又は(IIb’’)のスペーサー基のC~C20アルキレン鎖は、オキソ基、C1-4アルキレンスルホネート、及びC1-4アルキル、好ましくは、オキソ基、メチレンスルホネート、及びC1-4アルキルからなる群より選択される1以上の置換基で置換されてよい。
【0135】
一般式(I)、(I’)、(IIa)、(IIb)、(IIa’)、(IIb’)、(IIa’’)又は(IIb’’)のスペーサー基のC~Cアルキレン鎖は、それぞれのC~C20アルキレン鎖と同じ置換基で置換されてよくて、好ましくは、オキソ基からなる群より選択される1以上の置換基で置換されてよい。
【0136】
一般式(I)、(I’)、(IIa)、(IIb)、(IIa’)、(IIb’)、(IIa’’)又は(IIb’’)の上記C~C20アルキレン鎖中の有ってもよい(optional)N-ヘテロ原子は、水素とC1-4アルキルからなる群より選択される置換基で置換されてよい。
【0137】
一般式(III)又は(III’)のスペーサー基のC~C10アルキレン鎖は、オキソ基とC1-4アルキル、好ましくはオキソ基からなる群より選択される1以上の置換基で置換されてよい。
【0138】
一般式(III)又は(III’)の上記C~C10アルキレン鎖中の有ってもよいN-ヘテロ原子は、水素とC1-4アルキル、好ましくは水素からなる群より選択される1以上の置換基で置換されてよい。
【0139】
一般式(I)、(I’)、(IIa)、(IIb)、(IIa’)、(IIb’)、(IIa’’)、(IIb’’)、(III)又は(III’)のスペーサー基のアルキレン鎖中の有ってもよい脂環式基、アリール基、ヘテロアリール基、複素環式基は、オキソ基とC1-4アルキル、好ましくはオキソ基からなる群より選択される1以上の置換基で置換されてよい。
【0140】
色素は、Dyomics、Thermo Fischer Scientific、Lumiprobe、Cyandye、又は Kerafast より入手することができる。あるいは、本発明において利用される色素は、既知の方法によって製造することができる。DY631のようなベンゾピリリウム色素を製造することの具体的な方法がUS6,924,372B2に記載され;DY647P1とモノスルホDY647P1の製造についてはUS2013/0251637 A9に記載され;Z-Cy5のような色素の合成についてはUS8,197,758B2に記載され;そして、モノスルホCy5を製造する方法がUS5,268,486に提供されている。これらの文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0141】
標識粒子は、色素の粒子へのコンジュゲーションを可能にする反応基を有する反応色素と粒子(生体分子のような)を反応させることによって生成することができる。特に好ましい反応基は、N-ヒドロキシスクシンイミド活性化エステル(NHS)基であり、実施例ではこれを使用した。しかしながら、反応基は、NHSに限定されないが、色素の粒子へのコンジュゲーションを可能にする、マレイミド、アミド、スルホンアミド、尿素、及びN-ヒドロキシスクシンイミド活性化エステルとのチオ尿素生成物、塩化スルホニル、イソシアネート、イソチオシアネート、アジド、アルキン、ヒドラジン、カルボン酸、及びアミン基のような他の基も利用してよい。原理的には、生体分子へのそのコンジュゲーションを可能にする色素のどの修飾物も利用することができる。生体分子を修飾する方法については、その全体が参照により本明細書に組み込まれる Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 2009; 48(38): 6974-6998 において、E. M. Sletten と C. R. Bertozzi によって研究されたことがある。
【0142】
例示の一般的なタンパク質標識手順は、以下の工程を含む:
1.対応する標識化緩衝液において粒子を調製する工程;
2.色素を加えて、それを粒子と混合する工程;
3.暗所にて所与の温度で所与の時間の間(ほとんどの時間、氷上、室温、又は37℃のいずれかで)インキュベートする工程;及び
4.非結合性の色素を、限定されないが、ゲルクロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーのような精製法によって除去する工程(溶出緩衝液としてアッセイ緩衝液を使用してよい)。
【0143】
タンパク質-タグの標識化では、すべての色素がタグへ結合した状態にある化学量論的な標識比の故に、遊離色素の除去は、通常必要とされない。
色素は、スペーサー基を介して粒子へ付くので、上記に言及した反応基は、通常、反応色素中のスペーサー基の他端へ付く、即ち、スペーサー基は、一方の端で色素へ付いて、他端で反応基へ付く。反応基を有する反応色素の粒子との反応の後で、色素は、スペーサー基を介して粒子へ付く。
【0144】
反応色素は、タンパク質標識化キットにおいて提供することができる。各キットは、2~8、好ましくは3~5のタンパク質標識反応のような多重タンパク質標識反応に十分な材料を含有し得る。使用されるタンパク質の量に依存して、概ね1000マイクロスケールの実験に十分な材料を提供することができる。
【0145】
標識化キットには、主要成分として、反応色素が含まれる。好ましくは、該キットには、本発明の第五の側面におけるように、2又は3種の異なる色素、より好ましくは2種の異なる色素といった、1種より多い色素が別々に含まれ得る。タンパク質標識化キットは、好ましくは、本発明の方法の少なくとも1つにおける該キットの使用について説明する取扱いマニュアルをさらに含む。
【0146】
付言すると、該キットには、しばしば、緩衝液交換カラム、精製カラム、標識化緩衝液、アダプター、及びこれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1つがさらに含まれる。
【0147】
タンパク質のような標的生体分子へのリガンド結合は、アミノ酸側鎖、ループ又はドメインの運動といった、広範囲のコンホメーション変化をもたらす可能性がある。本発明の第一の側面において使用し得るリガンドは、(限定されないが)イオン、金属、化合物、薬物フラグメント(生体標的に対してごく弱く結合する場合がある、低分子の化学フラグメント)、炭水化物、ATPのような低分子(低分子量(<900ダルトン)を有する有機化合物;低分子は、生体プロセスを調節するのに役立つ場合があって、通常1nmオーダーのサイズを有する)、薬物、プロドラッグ、脂質、生体分子、ケモカインとサイトカインのようなタンパク質、ペプチド、ペプトイド、酵素、抗原、補因子、核酸、アプタマー、阻害剤、Fc受容体、ssDNA、ナノ粒子、リポソーム、単層小胞(小型単層小胞(SUV)と大型単層小胞(GUV)が含まれる)、ポリマー、有機分子、無機分子、金属錯体、ホルモン、フレーバー、着臭剤、粒子、及び(マイクロ)ビーズからなる群より選択され得る。好ましくは、リガンドは、イオン、金属、化合物、薬物フラグメント、炭水化物、低分子、薬物、プロドラッグ、脂質、タンパク質、ペプチド、ペプトイド、酵素、核酸、アプタマー、ホルモン、フレーバー、及び着臭剤からなる群より選択される。
【0148】
以下において、粒子-リガンドの組合せを「粒子→リガンド」の表記法を使用して示す。即ち、矢印の左側に粒子を示して、対応するリガンドを矢印の右側に示す。
好ましい粒子→リガンドの組合せは、酵素→脂質、受容体→ホルモン、受容体→ケモカイン、酵素→阻害剤、受容体→神経伝達物質、受容体→サイトカイン、酵素→イオン、受容体→イオン、受容体→アミノ酸、酵素→補因子、受容体→脂質、受容体→ステロール、酵素→フラグメント、受容体→ペプチド、受容体→フラグメント、酵素→代謝産物、受容体→受容体、受容体→糖脂質、酵素→DNA、受容体→着臭剤、受容体→プロドラッグ、酵素→RNA、受容体→薬物、酵素→単糖類/二糖類又は多糖類、酵素→脂肪酸、酵素→ビタミン、酵素→プロドラッグ、酵素→薬物、リポソーム→タンパク質、輸送タンパク質→基質、抗体→抗原、ウイルス粒子→受容体、ウイルス→構造タンパク質、抗体→Fc受容体、シャペロン→ATP、ssDNA→ssDNA、アプタマー→リガンド、シャペロン→イオン、RNA→低分子、多糖類→低分子、シャペロン→タンパク質、DNA→低分子、構造タンパク質→構造タンパク質、シグナル伝達タンパク質→シグナル伝達タンパク質、シグナル伝達タンパク質→低分子、シグナル伝達タンパク質→プロドラッグ、シグナル伝達タンパク質→薬物、シグナル伝達タンパク質→脂質、構造タンパク質→イオン、ナノ粒子→タンパク質、細胞小器官→タンパク質、ナノ粒子→DNA、細胞小器官→脂質、ナノ粒子→RNAからなる群より選択される。より好ましい粒子→リガンドの組合せは、酵素→脂質、受容体→ホルモン、受容体→ケモカイン、酵素→阻害剤、受容体→神経伝達物質、受容体→サイトカイン、酵素→イオン、受容体→イオン、受容体→アミノ酸、酵素→補因子、受容体→脂質、受容体→ステロール、酵素→フラグメント、受容体→ペプチド、受容体→フラグメント、酵素→代謝産物、受容体→受容体、受容体→糖脂質、酵素→DNA、受容体→着臭剤、受容体→プロドラッグ、酵素→RNA、受容体→薬物、酵素→単糖類/二糖類又は多糖類、酵素→脂肪酸、酵素→ビタミン、酵素→プロドラッグ、酵素→薬物、リポソーム→タンパク質、輸送タンパク質→基質、抗体→抗原、ウイルス粒子→受容体、ウイルス→構造タンパク質、抗体→Fc受容体、シャペロン→ATP、ssDNA→ssDNA、アプタマー→リガンド、シャペロン→イオン、RNA→低分子、シャペロン→タンパク質、DNA→低分子、構造タンパク質→構造タンパク質、シグナル伝達タンパク質→シグナル伝達タンパク質、シグナル伝達タンパク質→低分子、シグナル伝達タンパク質→プロドラッグ、シグナル伝達タンパク質→薬物、シグナル伝達タンパク質→脂質、構造タンパク質→イオンからなる群より選択される。
【0149】
最も好ましい粒子→リガンドの組合せは、酵素→脂質、受容体→ホルモン、受容体→ケモカイン、酵素→阻害剤、受容体→神経伝達物質、受容体→サイトカイン、酵素→イオン、受容体→イオン、受容体→アミノ酸、酵素→補因子、受容体→脂質、受容体→ステロール、酵素→フラグメント、受容体→ペプチド、受容体→フラグメント、酵素→代謝産物、受容体→受容体、受容体→糖脂質、酵素→DNA、受容体→着臭剤、受容体→プロドラッグ、酵素→RNA、受容体→薬物、酵素→単糖類/二糖類又は多糖類、酵素→脂肪酸、酵素→ビタミン、酵素→プロドラッグ、酵素→薬物、リポソーム→タンパク質、輸送タンパク質→基質、抗体→抗原、抗体→Fc受容体、シャペロン→ATP、ssDNA→ssDNA、アプタマー→リガンド、シャペロン→イオン、RNA→低分子、シャペロン→タンパク質、DNA→低分子、構造タンパク質→構造タンパク質、シグナル伝達タンパク質→シグナル伝達タンパク質、シグナル伝達タンパク質→低分子、シグナル伝達タンパク質→プロドラッグ、シグナル伝達タンパク質→薬物、シグナル伝達タンパク質→脂質、構造タンパク質→イオンからなる群より選択される。上記の最も好ましい粒子→リガンドの組合せにおいて、粒子とリガンドは、好ましくは、真核細胞から、より好ましくはヒト、マウス、ラット、又は霊長動物の細胞から;又はマラリア原虫(Plasmodium ssp.)、トリパノソーマ(Trypanosoma ssp.)、ビブリオ属菌(Vibrio ssp.)、サルモネラ属菌(Salmonella ssp.)、結核菌(Mycobacterium tubercolosis)のような病原体とジカ、エボラ、マールブルグウイルス、ニパ(Nipah)、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)、クリミア・コンゴ出血熱(CCHF)、リフトバレー熱(RVF)、HIVのようなウイルスから生じる。
【0150】
色素の温度依存性は、色素が存在する局所環境によって影響を受けるので、リガンド-誘発性のコンホメーション変化は、本システム中に存在するリガンドの濃度に依存した独自の熱光学的プロフィールへ翻案されると予測される(図面13)。タンパク質:EcoSSB(即ち、大腸菌一本鎖DNA-結合タンパク質、図面4)へのCy5-ssDNAの結合について示されるように、色素が存在する局所環境による、該色素の温度依存性の調節は、熱光学的アプローチとペルティエデバイス又はIRレーザーのいずれかを加熱源として使用する、結合親和性の決定に使用し得る(図面4)。この熱光学的アプローチは、プローブが冷却される場合にも適用することができる。図面9に示すように、プローブは、IRレーザーで予熱して、温度誘発性の蛍光変化について冷却時にモニターした。冷却するペルティエデバイスの追加供給源として、冷却液又は冷却ガス(空気が含まれる)を使用することができる。
【0151】
タンパク質のような生体分子の熱的アンフォールディングは、大きなコンホメーション変化を特徴とする。色素の温度依存性が局所の微小環境とアンフォールディング時のこの環境変化によって影響されるので、MBPとTEM1について示されるように、この熱光学的アプローチを使用して、生体分子の融解温度を決定し得る(図面16)。
【0152】
本発明の第一の側面において使用される試料は、標識粒子とリガンドを含んでなる溶液である。ここで、標識粒子は、該溶液中に溶解又は分散させることができる。あるいは、標識粒子は、リガンドを含有する溶液と接触状態にした固体支持体上に固定することができる。好ましくは、標識粒子は、溶液中に溶解又は分散している。この水溶液は、好ましくは、緩衝液を使用して、2~10、より好ましくは4~10、なおより好ましくは5~9、最も好ましくは6~8.5のpH値へ調整される。
【0153】
本発明の第一の側面において、標識粒子の溶液中の好ましい濃度は、10ピコモル濃度~1マイクロモル濃度、より好ましくは100ピコモル濃度~100ナノモル濃度である。リガンドの濃度は、好ましくは0.01ピコモル濃度~1モル濃度、より好ましくは1ピコモル濃度~100ミリモル濃度、なおより好ましくは10ピコモル濃度~10ミリモル濃度である。
【0154】
試料は、好ましくは、マルチウェルプレート、マイクロ流体チップ、キャピラリー、キュベット、反応管、ピペットチップ、マイクロ流体素子(microfluidics)、液滴、透明容器からなる群より選択される試料チャンバにおいて提供される。透明容器は、及びガラス容器又はプラスチック容器であり得る。
【0155】
試料プローブは、蛍光励起ビームの方向に1μm~500μm、特に1μm~250μm、特に1μm~100μm、特に3μm~50μm、特に5μm~30μmの厚さを有するチャンバ内で提供することが有利である。当業者は、チャンバという用語が、例えば、キャピラリー、マイクロ流体チップ、又はマルチウェルウェルプレートにも関することを理解されよう。
【0156】
当業者には、本明細書において利用されるような「蛍光」という用語が「蛍光」それ自体に限定されないこと、本明細書において開示される手段、方法、及びデバイスが他の手段、特に燐光のような発光の使用によっても使用及び利用し得ることが理解される。従って、「前記標識粒子を蛍光で励起させて、前記励起粒子の蛍光を第一に検出及び/又は測定する工程」という用語は、上記の確定された方法における「励起工程」に関して、対応する発光の励起も含み得る、即ち、励起は、後続の放射の検出より短い波長で行われる。故に、本発明の文脈における「粒子の蛍光を第二に検出及び/又は測定する工程」という用語は、励起後の前記放射の検出の工程を意味する。当業者には、本発明の文脈において「励起」波長と「放射」波長が別々でなければならないことがわかっている。
【0157】
標識粒子を蛍光で励起させて励起粒子の蛍光を検出する手段は、限定されてなくて、当業者に知られたどの好適な手段も利用してよい。
本発明によれば、標識粒子/分子を励起する、好ましくは蛍光で励起させるのに好ましい手段は、レーザー、ファイバーレーザー、ダイオードレーザー、LED、ハロゲン、LEDアレイ、HBO(HBOランプとは、例えば、放電アークが水銀蒸気の雰囲気において高い気圧の下で発火するショートアークランプである)、HXP(HXPランプとは、例えば、放電アークが水銀蒸気の雰囲気においてきわめて高い気圧で燃焼するショートアークランプである。例えば、HBOランプと対照的に、それらは、実質的により高い気圧で操作されて、それらはハロゲンサイクルを利用する。HXPランプは、UVとかなりの部分の赤色光が含まれる可視光を発生する)からなる群より選択されるどの好適なデバイスでもよい。
【0158】
本発明によれば、溶液において励起粒子を検出する、特に蛍光を検出するのの好ましい手段は、CCDカメラ(2D又はラインスキャンCCD)、ライン-カメラ(Line-Camera)、光電子増倍管(PMT)、アバランシェフォトダイオード(Avalanche Photodiode)(APD)、CMOS-カメラからなる群より選択されるどの好適なデバイスでもよい。
【0159】
本発明の方法は、どの好適なデバイスでも行ってよい。好ましくは、本方法は、以下のデバイス:Monolith NT.115 G/R MO-G009、Monolith NT.115 R/B MO-G008、Monolith NT.115B/G MO-007、又は Monolith NT.115 Pico MO-006 の1つを使用して行ってよいが、それらに限定されない。
【0160】
第二の側面において、本発明は、分子間及び/又は分子内相互作用を測定するための方法に関する。第二の側面の方法は、以下の工程を含む:
a)標識粒子を含んでなる試料を提供する工程;
b)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の第一蛍光を第一温度で検出する工程;
c)該試料を第二温度まで加熱するか又は冷却する工程;
d)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の第二蛍光を第二温度で検出する工程;
e)第一蛍光と第二蛍光に基づいて、該粒子の分子間及び/又は分子内相互作用、及び/又は修飾/改変について特性決定する工程。
【0161】
本発明の第二の側面の方法には、限定されないが、本発明の第一の側面にあるようなリガンド対標識粒子の結合相互作用が含まれる。さらに、本発明の第二の側面の方法には、化学反応(粒子のグリコシル化、リン酸化、脂質化、カルボニル化、酸化が含まれる、無機又は有機反応のような)並びに複合体形成及び/又はそれらの解離を測定する方法が含まれる。
【0162】
第三の側面において、本発明は、時間依存性の変化を測定するための方法に関する。第三の側面の方法は、以下の工程を含む:
a)標識粒子を含んでなる試料を提供する工程;
b)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の第一蛍光を検出する工程;
c)所定時間の間待つ工程;
d)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の第二蛍光を検出する工程;
e)第一蛍光と第二蛍光に基づいて、該粒子の時間依存性の変化について特性決定する工程。
【0163】
本発明の第三の側面の方法は、例えば、コンホメーション変化の速度論的測定、結合速度論、又は安定性測定のために、又は品質管理測定のために標識粒子の時間依存性の変化を測定するのに有用である。
【0164】
第四の側面において、本発明は、環境依存性の変化を測定するための方法に関する。第四の側面の方法は、以下の工程を含む:
a)標識粒子を含んでなる第一試料を提供する工程;
b)標識粒子を蛍光で励起させて、第一試料中の励起粒子の第一蛍光を検出する工程;
c)標識粒子を実質的に同じ濃度で含んでなる第二試料を提供する工程(ここで第二試料は、第一試料とは異なる);
d)標識粒子を蛍光で励起させて、第二試料中の励起粒子の第二蛍光を検出する工程;
e)第一蛍光と第二蛍光に基づいて、該粒子の環境依存性の変化について特性決定する工程。
【0165】
本発明の第四の側面の方法は、標識粒子に対する環境変化の影響を決定するために使用することができる。そのような環境変化には、限定されないが、pH変化、温度変化、気圧変化、溶媒の変化、塩類のような他の溶質の濃度の変化、等が含まれる。
【0166】
本発明の第二、第三、及び第四の側面の方法では、本発明の第一の側面におけるものと同じ色素で標識される同じ標識粒子が利用される。相互作用という用語は、本発明の第一の側面におけるものと同じやり方で使用される。本発明の第二、第三、及び第四の側面が行われる温度は、好ましくは、本発明の第一の側面の所定温度に対応する。本発明の第二の側面における温度差は、好ましくは、本発明の第一の側面におけるものと同じである。同じことが加熱法と冷却法に適用される。本発明の第二、第三、及び第四の側面における、標識粒子の試料溶液中の濃度は、好ましくは、本発明の第一の側面におけるものと同じである。本発明の第二、第三、及び第四の側面における好ましい粒子-リガンドの組合せは、好ましくは、本発明の第一の側面におけるものと同じである。また、同じ試料チャンバを利用してよい。本発明の第二、第三、及び第四の側面における、標識粒子を蛍光で励起させるための手段も、好ましくは、本発明の第一の側面におけるものと同じである。
【0167】
米国特許:US9,676,787 B2には、ある種のベンゾピリリウム化合物と生体分子の標識化におけるそれらの使用が開示されている。この文献では、リガンドが検出されるだけであった。希釈系列を作製したのは、既存の色素と比較して、開示されるベンゾピリリウム色素の検出範囲が改善することを示すためだけである。原理的には、この効果を実証するのであれば、単一のリガンド濃度で十分であったろう。従って、件の色素が免疫ブロット法のような標準的な応用に適していることが実証されただけである。そこでは、蛍光強度は、測定試料中に残存する発蛍光団の数に依存する。詳細には、この文献は、以下の手順について記載する:
(a)溶液中で一定濃度の抗原(リガンド)をある表面へ結合させる。
【0168】
(b)この抗原溶液を除去して、該表面を洗浄する。
(c)引き続き、蛍光色素で標識した抗体を該表面へ加えて、インキュベートした。
(d)標識抗体を含有する溶液を除去して、該表面を洗浄する。
【0169】
(e)抗原を介して該表面へ結合した抗体の蛍光を検出する。
(f)この実験が行われる温度については記載されていない。しかしながら、蛍光の変化が大きいので、その温度の注意深い制御は、必要とされなかった。
【0170】
当業者は、US9,676,787 B2を読めば、蛍光強度の変化が生じたのは、多少の抗原が抗体へ結合していたので、蛍光検出の時点で多少の抗体が該表面へ結合していたことによると仮定されよう。各抗体は、リガンドが結合していてもいなくても、同じ蛍光強度を示すと考えられる。さらに言えば、抗原の検出には、単一濃度の抗原で十分である。これは、本発明とは根本的に異なる。
【0171】
本発明の方法では、リガンドと粒子間の結合定数を検出することができて、リガンドの存在を検出するだけではない。このように、すでに本アッセイの開始時点で、リガンドと粒子の濃度は、予め決定されている。主たる違いは、測定される蛍光強度の変化が蛍光で標識される粒子の量の変化より生じるのではなくて、環境を感知する蛍光色素の輝度の変化より生じることである。従って、輝度の変化は、粒子の結合状態に依存する。詳細には、本発明は、上記の文献より、以下のように異なる:
(a)それぞれの蛍光測定において、粒子とリガンドの量は予め決定されていて、例えば、洗浄工程によって変化しない。
【0172】
(b)各標識(発蛍光団)の輝度は、標識粒子がリガンドへ結合しているか否かに依存する。
(c)予測される蛍光変化がごく小さい可能性があって、小さな温度依存性の蛍光変化によってマスクされる可能性があるので、温度は、注意深く制御される。
【0173】
本発明において、蛍光変化は、異なる蛍光粒子量より生じるのではなくて、リガンドが結合しているか否かに基づいた、個々の粒子の蛍光強度の変化より生じる。特に、蛍光は、リガンドが標識(蛍光)粒子へ結合している場合に増加するか又は減少する可能性がある。結合定数(K又はKと呼ばれる)を決定するには、希釈系列を必要とする。さらに、リガンドも粒子も、蛍光測定の間、予め決定されたのと同じ濃度で存在する。洗浄工程は、無い。
【0174】
本発明は、以下の項目に要約される:
1.以下の工程:
a)標識粒子とリガンドを溶液中に含んでなる試料を提供する工程(ここで標識粒子は、該溶液中に溶解又は分散しているか又は固体支持体上に固定されている);
b)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の蛍光を所定温度で検出する工程;
c)工程(a)と工程(b)をリガンドの該溶液中の異なる濃度で複数回繰り返す工程;及び
d)標識粒子の蛍光のリガンド濃度依存性の変化に基づいて、標識粒子とリガンドの間の相互作用について決定する工程を含んでなる、標識粒子とリガンドの間の相互作用を測定するための方法。ここで標識粒子は、一般式(I)、(IIa)、(IIb)又は(III):
【0175】
【化12】
【0176】
[式中:
は、O、S、又はCRであり;
は、O、S、又はCRであり;
とRは、それぞれ独立して、水素と置換されてよいアルキル基からなる群より選択され;
、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホン酸、チオール又はその塩、水素、ハロゲン、置換されてよいカルボン酸エステル基、ニトロ基、アミン、アミド、置換されてよいアルキル基(好ましくはC1-4アルキル)、置換されてよいアルコキシ基、及び置換されてよいアルケニル基からなる群より選択され;
但し、R、R、R、R、R、R、R、及びRの少なくとも1つは、それによって色素が粒子へコンジュゲートされるスペーサー基であり(ここで該スペーサー基は、2個のCH基より長い);
aは、0~4の整数であり;
bは、0~4の整数であり;そして
nは、1~3の整数、好ましくは1又は2である];
【0177】
【化13】
【0178】
【化14】
【0179】
[式中:
とXの一方はNRであって、XとXの他方は、O、S、又はCR1314であり;
は、水素と置換されてよいアルキル基からなる群より選択され;
10、R11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホン酸、チオール又はその塩、水素、ハロゲン、置換されてよいカルボン酸エステル基、ニトロ基、アミン、アミド、置換されてよいアルキル基(好ましくはC1-4アルキル)、置換されてよいアルコキシ基、及び置換されてよいアルケニル基からなる群より選択され;
但し、R、R10、R11、R12、R13、及びR14の少なくとも1つは、それによって色素が粒子へコンジュゲートされるスペーサー基であり(ここで該スペーサー基は、2個のCH基より長い);
cは、0~4の整数であり;
dは、0~2の整数であり;
eは、0~4の整数であり;そして
mは、1~3の整数、好ましくは1又は2である];及び
【0180】
【化15】
【0181】
[式中:
Yは、OR18又はNR1920であり;
Zは、O又はNR2122であり;
15、R16、及びR17は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホン酸、チオール又はその塩、水素、ハロゲン、置換されてよいカルボン酸エステル基、ニトロ基、アミン、アミド、置換されてよいアルキル基(好ましくはC1-4アルキル)、置換されてよいアルコキシ基、及び置換されてよいアルケニル基からなる群より選択され;
但し、R17の少なくとも1つは、それによって色素が粒子へコンジュゲートされるスペーサー基であり;
18は、H又はアルカリ金属イオンであり、
19、R20、R21、及びR22は、それぞれ独立して、水素と置換されてよいアルキル基からなる群より選択され、好ましくは、R19、R20、R21、及びR22は、それぞれ同じであり;
fは、0~3の整数であり;
gは、0~3の整数であり;そして
hは、1~5の整数である]によって表される色素からなる群より選択される1種以上の色素で標識される。
【0182】
2.標識粒子とリガンドが工程a)において溶液中の所定濃度で提供されるか又は、標識粒子が固体支持体上に固定された所定量で提供されて、リガンドが所定濃度で提供され;そして、工程a)において提供される溶液は、工程b)において、標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の蛍光を所定温度で検出するために使用される、項目1の方法。
【0183】
3.工程(b)が以下の工程:
ba)該溶液を所定温度まで加熱するか又は冷却する工程;
bb)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の蛍光を所定温度で検出する工程を含む、項目1又は項目2に記載の方法。
【0184】
4.以下の工程:
a)標識粒子とリガンドを溶液中に含んでなる試料を提供する工程(ここで標識粒子は、該溶液中に溶解又は分散しているか又は固体支持体上に固定されている);
ba)該溶液を所定温度まで加熱するか又は冷却する工程;
bb)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の蛍光を所定温度で検出する工程;
c)工程(a)と工程(b)をリガンドの該溶液中の異なる濃度で複数回繰り返す工程;及び
d)標識粒子の蛍光のリガンド濃度依存性の変化に基づいて、標識粒子とリガンドの間の相互作用について決定する工程を含んでなる、項目1又は項目2に記載の方法。
【0185】
5.工程(b)が以下の工程:
b1)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の蛍光を第一所定温度で検出する工程;
b2)該溶液を第二所定温度まで加熱するか又は冷却する工程;
b3)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の蛍光を第二所定温度で検出する工程を含む、項目1又は項目2に記載の方法。
【0186】
6.式(I)の前記色素が一般式(I’):
【0187】
【化16】
【0188】
[式中:
は、O又はCRであり;
は、O又はCRであり;
、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、置換されてよいC1-20アルキル基であり;
とRは、それぞれ独立して、水素とスルホン酸又はその塩からなる群より選択され;
但し、R、R、R、R、R、及びRの1つは、それによって色素が粒子へコンジュゲートされるスペーサー基であり(ここで該スペーサー基は、2個のCH基より長い);そして
nは、1又は2に等しい整数である]によって表される色素である、項目1~項目5のいずれかに記載の方法。
【0189】
7.式(IIa)又は(IIb)の前記色素が一般式(IIa’)又は(IIb’):
【0190】
【化17】
【0191】
【化18】
【0192】
[式中:
とXの一方はNRであって、XとXの他方はCR1314であり;
スルホネート基は、NRに対して4位にあり;
は、置換されてよいC~C20アルキル基であり;
11、R12、R13、及びR14は、それぞれ独立して、ヒドロキシ、カルボキシ、スルホン酸、チオール又はその塩、水素、ハロゲン、置換されてよいカルボン酸エステル基、ニトロ基、アミン、アミド、置換されてよいアルキル基(好ましくはC1-4アルキル)、置換されてよいアルコキシ基、及び置換されてよいアルケニル基からなる群より選択され;
但し、R、R13、及びR14の1つは、それによって色素が粒子へコンジュゲートされるスペーサー基であり(ここで該スペーサー基は、2個のCH基より長い);
dは、0~2の整数であり;
eは、0~3の整数であり;そして
mは、1又は2に等しい整数である]によって表される色素である、項目1~項目5のいずれかに記載の方法。
【0193】
8.式(IIa’)又は(IIb’)の前記色素が一般式(IIa’’)又は(IIb’’):
【0194】
【化19】
【0195】
【化20】
【0196】
[式中:
とXの一方はNRであって、XとXの他方はCR1314であり;
スルホネート基は、NRに対して4位にあり;
は、置換されてよいC-Cアルキル基であり;
13とR14は、それぞれ独立して、置換されてよいC1-4アルキル基であり;
但し、R、R13、及びR14の1つは、それによって色素が粒子へコンジュゲートされるスペーサー基であり(ここで該スペーサー基は、2個のCH基より長い);そして
mは、1又は2に等しい整数である]によって表される色素である、項目7に記載の方法。
【0197】
9.一般式(I)、(I’)、(IIa)、(IIb)、(IIa’)、(IIb’)、(IIa’’)又は(IIb’’)の前記色素中のスペーサー基が置換されてよいC~C20アルキレン鎖であり、ここで該アルキレン鎖の1個以上の炭素原子は、独立して、脂環式基、アリール基、複素環式基、ヘテロアリール基、又はO、N、及びSからなる群より選択されるヘテロ原子に置き換わってよい、項目1~項目8のいずれかに記載の方法。
【0198】
10.スペーサー基が置換されてよいC~C20アルキレン鎖であり、ここで1個の炭素原子は、1つのアリール基に置き換わってよい、項目9に記載の方法。
11.式(III)の前記色素が一般式(III’):
【0199】
【化21】
【0200】
[式中:
Yは、OH又はN(CHであり;
Zは、O又はN(CHであり;
15とR16は、それぞれ独立して、水素又はハロゲンであり;
17は、それによって色素が粒子へコンジュゲートされるスペーサー基であり;そして
17aは、カルボキシ基又はその塩である]によって表される色素である、項目1~項目5のいずれかに記載の方法。
【0201】
12.一般式(III)又は(III’)の前記色素中のスペーサー基が置換されてよいC~C10アルキレン鎖であり、ここで該アルキレン鎖の1個以上の炭素原子は、独立して、脂環式基、アリール基、ヘテロアリール基、複素環式基、又はO、N、及びSからなる群より選択されるヘテロ原子に置き換わってよい、項目1~項目5又は項目11のいずれかに記載の方法。
【0202】
13.スペーサー基が置換されてよいC~Cアルキレン鎖であり、ここで該アルキレン鎖の1個以上の炭素原子は、独立して、O、N、及びSからなる群より選択されるヘテロ原子に置き換わってよい、項目12に記載の方法。
【0203】
14.所定温度が、-20℃~115℃、好ましくは0.1℃~100℃の範囲、より好ましくは5℃~60℃の範囲、なおより好ましくは10℃~60℃の範囲、最も好ましくは10℃~40℃の範囲にある、項目1~項目13のいずれかに記載の方法。
【0204】
15.所定温度が室温とは異なる、項目14に記載の方法。
16.所定温度が、リガンドが標的粒子へ結合するときの温度である、項目14又は項目15に記載の方法。
【0205】
17.所定温度が、蛍光励起においてコンホメーション変化を受ける色素の一部がリガンドの標識粒子への結合により変化するときの温度である、項目14又は項目15に記載の方法。
【0206】
18.所定温度が、色素の光異性化率又は内部転換率がリガンドの標識粒子への結合により変化するときの温度である、項目14又は項目15に記載の方法。
19.所定温度が+/-1K以内、好ましくは+/-0.5K以内に制御される、項目1~項目18のいずれかに記載の方法。
【0207】
20.加熱するか又は冷却する工程が、加熱又は冷却液、加熱又は冷却ガス、加熱素子、ペルティエ素子、電磁放射、及びこれらの組合せからなる群より選択される加熱又は冷却源を使用して行われる、項目3~項目19のいずれかに記載の方法。
【0208】
21.第一所定温度が、-20℃~115℃、好ましくは0.1℃~100℃の範囲、より好ましくは5℃~60℃の範囲、なおより好ましくは10℃~60℃の範囲、最も好ましくは10℃~40℃の範囲にある、項目5~項目21のいずれかに記載の方法。
【0209】
22.第二所定温度が、-20℃~115℃、好ましくは0.1℃~100℃の範囲、より好ましくは5℃~60℃の範囲、なおより好ましくは10℃~60℃の範囲、最も好ましくは10℃~40℃の範囲にある、項目5~項目20のいずれかに記載の方法。
【0210】
23.第一所定温度と第二所定温度が、-20℃~115℃、好ましくは0.1℃~100℃の範囲、より好ましくは5℃~60℃の範囲、なおより好ましくは10℃~60℃の範囲、最も好ましくは10℃~40℃の範囲にある、項目5~項目20のいずれかに記載の方法。
【0211】
24.第一所定温度と第二所定温度が+/-1K以内、好ましくは+/-0.5K以内に制御される、項目5~項目23のいずれかに記載の方法。
25.第二温度と第一温度の間の差が+/-0.1K~+/-90Kの範囲、好ましくは+/-1K~+/-40Kの範囲、より好ましくは+/-1K~+/-20Kの範囲にある、項目5~項目24のいずれかに記載の方法。
【0212】
26.試料が、マルチウェルプレート、キャピラリー、キュベット、反応管、ピペットチップ、マイクロ流体素子、液滴、及び透明容器からなる群より選択されるチャンバにおいて提供される、項目1~項目25のいずれかに記載の方法。
【0213】
27.粒子が、有機分子、生体分子、ナノ粒子、ミクロ粒子、小胞、生体細胞又は細胞内フラグメント、生体組織、ウイルス粒子、ウイルス、及び細胞小器官からなる群より選択される、項目1~項目26のいずれかに記載の方法。
【0214】
28.前記生体分子が、アミノ酸、タンパク質、ペプチド、単糖類及び二糖類、多糖類、脂質、糖脂質、脂肪酸、ステロール、ビタミン、神経伝達物質、酵素、ヌクレオチド、代謝産物、核酸、及びこれらの組合せからなる群より選択される、項目27に記載の方法。
【0215】
29.前記生体分子が、タンパク質、ペプチド、酵素、核酸、及びこれらの組合せからなる群より選択される、項目28に記載の方法。
30.前記タンパク質が、酵素、輸送タンパク質、阻害タンパク質、構造タンパク質、シグナル伝達タンパク質、リガンド結合タンパク質、シャペロン、抗体、及び受容体からなる群より選択される、項目29に記載の方法。
【0216】
31.前記タンパク質が、酵素、輸送タンパク質、阻害タンパク質、シャペロン、抗体、及び受容体からなる群より選択される、項目30に記載の方法。
32.前記核酸が、DNA、RNA、LNA、及びPNAからなる群より選択される、項目29に記載の方法。
【0217】
33.標識粒子の溶液中の濃度が10ピコモル濃度~1マイクロモル濃度、好ましくは100ピコモル濃度~100ナノモル濃度である、項目1~項目32のいずれかに記載の方法。
【0218】
34.リガンドの濃度が、0.01ピコモル濃度~1モル濃度、好ましくは1ピコモル濃度~100ミリモル濃度、より好ましくは10ピコモル濃度~10ミリモル濃度である、項目1~項目34のいずれかに記載の方法。
【0219】
35.前記リガンドが、イオン、金属、化合物、薬物フラグメント、炭水化物、低分子、薬物、プロドラッグ、脂質、タンパク質、ペプチド、ペプトイド、酵素、核酸、ナノ粒子、リポソーム、SUV、GUV、ポリマー、有機分子、無機分子、金属錯体、ホルモン、フレーバー、着臭剤、粒子、及び(マイクロ)ビーズからなる群より選択される、項目1~項目34のいずれかに記載の方法。
【0220】
36.粒子とリガンドが、粒子→リガンドとして示される以下の組合せ:酵素→脂質、受容体→ホルモン、受容体→→ケモカイン、酵素→阻害剤、受容体→神経伝達物質、受容体→サイトカイン、酵素→イオン、受容体→イオン、受容体→アミノ酸、酵素→補因子、受容体→脂質、受容体→ステロール、酵素→フラグメント、受容体→ペプチド、受容体→フラグメント、酵素→代謝産物、受容体→受容体、受容体→糖脂質、酵素→DNA、受容体→着臭剤、受容体→プロドラッグ、酵素→RNA、受容体→薬物、酵素→単糖類/二糖類又は多糖類、酵素→脂肪酸、酵素→ビタミン、酵素→プロドラッグ、酵素→薬物、リポソーム→タンパク質、輸送タンパク質→基質、抗体→抗原、ウイルス粒子→受容体、ウイルス→構造タンパク質、抗体→Fc受容体、シャペロン→ATP、ssDNA→ssDNA、アプタマー→リガンド、シャペロン→イオン、RNA→低分子、多糖類→低分子、シャペロン→タンパク質、DNA→低分子、構造タンパク質→構造タンパク質、シグナル伝達タンパク質→シグナル伝達タンパク質、シグナル伝達タンパク質→低分子、シグナル伝達タンパク質→プロドラッグ、シグナル伝達タンパク質→薬物、シグナル伝達タンパク質→脂質、構造タンパク質→イオン、ナノ粒子→タンパク質、細胞小器官→タンパク質、ナノ粒子→DNA、細胞小器官→脂質、ナノ粒子→RNAからなる群より選択される、項目1~項目35のいずれかの方法。
【0221】
37.標識粒子とリガンドの間の相互作用を測定する方法が粒子とリガンドの解離定数を測定する方法である、項目1~項目36のいずれかの方法。
38.以下の工程:
a)標識粒子を含んでなる試料を提供する工程;
b)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の第一蛍光を第一温度で検出する工程;
c)該試料を第二所定温度まで加熱するか又は冷却する工程;
d)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の第二蛍光を第二温度で検出する工程;
e)第一蛍光と第二蛍光に基づいて、該粒子の分子間及び/又は分子内相互作用、及び/又は修飾/改変について特性決定する工程を含んでなる、分子間及び/又は分子内相互作用を測定するための方法であって、ここで標識粒子は、項目1又は項目6~項目13のいずれかに定義されるような一般式(I)、(IIa)、(IIb)又は(III)によって表される色素からなる群より選択される1種以上の色素で標識される。
【0222】
39.以下の工程:
a)標識粒子を含んでなる試料を提供する工程;
b)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の第一蛍光を検出する工程;
c)所定時間の間待つ工程;
d)標識粒子を蛍光で励起させて、励起粒子の第二蛍光を検出する工程;
e)第一蛍光と第二蛍光に基づいて、該粒子の時間依存性の変化について特性決定する工程を含んでなる、時間依存性の変化を測定するための方法であって、ここで標識粒子は、項目1又は項目6~項目13のいずれかに定義されるような一般式(I)、(IIa)、(IIb)又は(III)によって表される色素からなる群より選択される1種以上の色素で標識される。
【0223】
40.以下の工程:
a)標識粒子を含んでなる第一試料を提供する工程;
b)標識粒子を蛍光で励起させて、第一試料中の励起粒子の第一蛍光を検出する工程;
c)標識粒子を実質的に同じ濃度で含んでなる第二試料を提供する工程(ここで第二試料は、第一試料とは異なる);
d)標識粒子を蛍光で励起させて、第二試料中の励起粒子の第二蛍光を検出する工程;
e)第一蛍光と第二蛍光に基づいて、該粒子の環境依存性の変化について特性決定する工程を含んでなる、環境依存性の変化を測定するための方法であって、ここで標識粒子は、項目1又は項目6~項目13のいずれかに定義されるような一般式(I)、(IIa)、(IIb)又は(III)によって表される色素からなる群より選択される1種以上の色素で標識される。
【0224】
41.2種以上の反応色素を含んでなるタンパク質標識化キットであって、ここで各色素は、独立して、項目1又は項目6~項目13のいずれかに定義されるような一般式(I)、(IIa)、(IIb)又は(III)によって表される構造単位を含み、該色素は、スペーサー基を有し、該スペーサー基は、該色素のタンパク質へのコンジュゲーションを可能にする反応基を有する。
【0225】
42.項目1~項目31のいずれか1項の方法の少なくとも1つにおけるキットの使用について説明する説明マニュアルをさらに含んでなる、項目41のタンパク質標識化キット。
【0226】
43.緩衝液交換カラム、精製カラム、標識化緩衝液、アダプター、及びこれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1つをさらに含んでなる、項目41又は項目42のタンパク質標識化キット。
【実施例
【0227】
試薬:
N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)誘導化色素を Thermo Fischer Scientific(フルオレセイン、Oregon Green 488、TAMRA)、Lumiprobe(Cy3、Cy5、ジスルホCy5、Cy5.5)、Dyomics(DY495、DY567P1、DY630、DY631、DY647P1、DY650)、Seta Biochemicals(SeTau-647)、Cyandye(モノスルホCy3、モノスルホCy5)、及び ATTO TECH(ATTO488、ATTO647N、ATTO655)より入手した。使用するすべての色素の構造を図面19a~図面19eに示す。タンパク質(Hsp90、p38α(p38アルファ)、TEM1、BLIP、マルトース結合タンパク質(MBP))を Crelux より入手して、炭酸脱水酵素II(CAII)をシグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)より購入した。NHS標識化緩衝液と色素分離カラムは、NanoTemper Technologies GmbH より入手した。アッセイ緩衝液として、0.05% Tween 20を補充したTris-MgCl緩衝液を使用した[50mM Tris-HCl,150mM NaCl,10mM MgCl)。
【0228】
タンパク質標識化:
標的タンパク質(p38α、炭酸脱水酵素、TEM1、Hsp90)を炭酸塩緩衝液においてpH8.2で標識した。色素対タンパク質比は、3:1と5:1の間で変動した。標識反応は、室温で30分間行われた。NanoTemper Technologies によって提供される色素分離カラムを使用して、標識タンパク質より遊離色素を分離した。
【0229】
使用デバイス:
A)IR.Red、IR.Green、又は IR.Blue:赤色、緑色、又は青色の蛍光検出チャネルとIRレーザー(波長1480nm)を組み込んだ NanoTemper Technologies プロトタイプを加熱源として使用した。使用した光フィルター(励起/放射(nm))は、IR.Red 500~580/655~720nm、IR.Green 515~555/618~652nm、及び IR.Blue 450~490/600~650nmである。使用したLEDは、IR.Red 20mA、2.1V、630nm;IR.Green 20mA、3.4V、540nm;及び IR.Blue 20mA、3.4V、480nmである。これらのデバイスを異なる発蛍光団とそれらの感度の熱光学的特性決定のために使用して、結合事象について報告した。
【0230】
B)Prometheus NT.48:UV範囲の励起及び検出顕微鏡(optics)を有する、NanoTemper Technologies 製の標準NT.48デバイス。試料の加熱は、ペルティエデバイスで達成した。主たる適用は、タンパク質の融解曲線の検出である。
【0231】
C)PR.Red:赤色蛍光検出チャネル(500~580/655~720nm)と組み合わせてペルティエデバイスベースの試料加熱を使用する、NanoTemper Technologies のプロトタイプ。このデバイスは、異なる発蛍光団と結合事象やタンパク質の熱的アンフォールディングへのそれらの感度の熱光学的特性決定のために使用した。
【0232】
蛍光測定:
加熱時の蛍光強度の変化については、IRレーザーを使用してプローブを加熱するには IR.Red、IR.Green、又は IR.Blue を使用して、又はペルティエデバイスを使用してプローブを加熱するには PR.Red を使用して、測定した。実験では、プローブを384ウェルプレート又はカスタマイズされたガラス容器のいずれかへロードした。プローブは、遊離色素、所与の濃度で単独的に蛍光標識された標的、又は所与の濃度で蛍光標識された標的と混合した特定リガンドの希釈系列のいずれかを含有した。
【0233】
データの獲得及び解析:
データ獲得の間、アナログ-デジタル変換器由来の生データを蛍光強度として(任意単位で)表示した。次いで、それぞれの個別トレース(trace)を1で始まるように正規化した。結合曲線の図示のために、加熱の前と後の間隔を設定して、この間隔内のデータを平均化して、Fnormを計算した。結合曲線中の各データ点は、あるリガンド濃度での平均Fnormを表す。
【0234】
解離定数(K)は、MO Affinity 解析ソフトウェア(NanoTemper Technologies GmbH)又は Origin(Origin Lab)のいずれかで決定した。蛍光強度の温度誘発性の変化は、以下のように正規化した:イニシャル蛍光(F)強度を1と定義して、データを正規化F/F(ここでFは、所与の増加温度での蛍光強度である)として正規化した。得られるFnormを所与のリガンドの増加濃度に対してプロットした。解離定数(K)は、質量作用の法則に従って1:1の化学量論を有する分子相互作用について記載する適合度(fit)に従って決定した。Kは、等式:
【式6】
【0235】
【0236】
[式中、f(c) は、所与のリガンド濃度 c で結合した分率であり、Unbound は、標的のFnorm信号であり、Bound は、複合体のFnorm信号であり、Kは、解離定数又は結合親和性であって、ctarget は、標的のアッセイ中の最終濃度である]に適合させることによって推定する。
【0237】
参考実施例1
アッセイ緩衝液中100nMのNHS-エステル発蛍光団(IR色素650(LI-COR Biotechnology)、CF647(Biotium)、Dylight 655 B1、B2、及びB3(Thermo Scientific)、及びCF640R(Biotium))を Prometheus NT.48 標準処理済キャピラリー(NanoTemper Technologies)の中へ同一2検体でロードして、4、8、16、24、32、及び40mWのIRレーザ出力を使用する、Monolith NT.115 Blue/Red 顕微鏡付きのIR-デバイスでの熱光学的実験へ処した。IR-レーザー誘発性の蛍光の変化について20秒間モニターした。同じ試料をペルティエ素子により1K/分で加熱することによって直線温度ランプへも処した。Monolith NT.115 Blue/Red 顕微鏡(NanoTemper Technologies)を使用して、試料の蛍光を採取した。解析には、この熱光学的実験における相対蛍光損失量を、温度と、ペルティエデバイスにおける線形加熱を使用する実験からの相対蛍光損失量に関連付けた。この結果を図面1に提供する。
【0238】
PR.Red で観測された蛍光強度の温度誘発性の変化は、同じ温度での IR.Red で観測された蛍光強度の温度誘発性の変化と完全に相関する(図面1Aと図面1B)。
参考実施例2
色素をDMSOに予め希釈して、アッセイ緩衝液で100nMの最終濃度までさらに希釈した。次いで、色素を高感度 Prometheus ガラスキャピラリー中へ充填して、PR.Red 中へ同一3検体でロードした。加熱ランプを1K/分に設定して、データを293~368Kで記録した。この結果を図面2に提供する。
【0239】
参考実施例3
色素をDMSOに予め希釈して、所与の緩衝液で100nMの最終濃度までさらに希釈した。次いで、色素を高感度 Prometheus ガラスキャピラリー中へ充填して、PR.Red 中へ同一3検体でロードした。加熱ランプを1K/分に設定して、データを293~368Kで記録した。
【0240】
図面3に示すように、温度誘発性の蛍光強度変化は、色素が存在する環境によっても追加的に調節されることがわかった。この感度の程度は、色素の構造に依存している。DY647P1とモノスルホCy5は、ポリメチン色素であるが、スルホネート基の数が異なる。DY647P1が2つのスルホネート基を保有して、モノスルホCy5は、スルホネート基を1つだけ保有する。
【0241】
実施例1
組換えEcoSSBタンパク質を、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Biochemistry, 1993, 32(10), pp 2585-2591 中の Curth U. et al. によって記載されるように精製した。このタンパク質を1μMより、50mM Hepes(pH7.4)、150mM NaCl及び2mM EDTAの系列希釈液において0.4nMまで希釈して、各濃度につき10μlの最終容量とした。引き続き、20nM Cy5-OligodT35(Metabion)を同じ緩衝液に含有する10μlの溶液をそれぞれのEcoSSB濃度液へ加えた。各溶液の10μlを Monolith NT.LabelFree Premium Coated Capillaries(PR.Red ペルティエデバイスを使用する実験用)と Monolith NT.115 Premium Coated Capillaries(レーザーデバイス IR.Red での実験用)の中へ充填した。PR.Red では7K/分で293Kから368Kへの線形勾配で、そして IR.Red では16mWのレーザ出力で加熱を実施した。302Kの温度での正規化蛍光変化をEcoSSBの濃度に対してプロットした。この結果を図面4に提供する。
【0242】
実施例2
タンパク質標識化:タンパク質のTEM1は、NHS標識化緩衝液と1:3のタンパク質対色素標識比を使用して、モノスルホ-Cy5で標識した。故に、100μlの24μM色素溶液を100μlの8μMタンパク質溶液と混合して、反応を暗所にて室温で30分間行った。サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、遊離色素を除去した。このためには、9mlのアッセイ緩衝液を使用してBカラムを平衡化した後で、標識反応液をロードしてこの樹脂に入れた。300μlのアッセイ緩衝液の添加後、600μlのアッセイ緩衝液を使用して、標識タンパク質を溶出させた。ここで、最初の100μlはどのタンパク質も含有しないので、捨てた。
【0243】
系列希釈液の調製:タンパク質標識化の後で、リガンドの系列希釈液を調製した。BLIPをアッセイ緩衝液で1μMへ希釈した。この溶液から始めて、10μlの試料容量を使用して16段階の系列希釈液を調製した。この系列希釈液の調製後、132nMの標識TEM1の10μlをこの希釈系列へ加えた。上下のピペッティング操作によって試料を混合した。premium coated ガラスキャピラリーにロードする前に、試料を4℃及び15,000gで10分間遠心分離した。
【0244】
PR.Red での測定とデータ解析:この実験は、PR.Red を使用して実施した。TEM1のBLIPへの親和性についての測定は、20% LEDを使用して行った。データは、MO Affinity 解析ソフトウェア(NanoTemper Technologies)を使用して解析した。この結果を図面5に提供する。
【0245】
実施例3
タンパク質標識化:タンパク質のCAIIは、NHS標識化緩衝液と1:3のタンパク質対色素標識比を使用して、モノスルホCy5又はDY647P1で標識した。故に、100μlの24μM色素溶液を100μlの8μMタンパク質溶液と混合して、反応を暗所にて室温で30分間行った。実施例2に記載のように、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、遊離色素を除去した。
【0246】
系列希釈液の調製:タンパク質標識化の後で、リガンドの系列希釈液を調製した。フロセミドをアッセイ緩衝液で50μMへ希釈した。この溶液から始めて、10μlの試料容量を使用して16段階の系列希釈液を調製した。この系列希釈液の調製後、100nMの標識CAIIの10μlをこの希釈系列へ加えた。上下のピペッティング操作によって試料を混合した。premium coated ガラスキャピラリーにロードする前に、試料を4℃及び15,000gで10分間遠心分離した。
【0247】
PR.Red での測定とデータ解析:この実験は、PR.Red を使用して実施した。CAIIのフロセミドへの親和性についての測定は、20% LEDを使用して行った。データは、Origin ソフトウェア(Origin Lab Corporation)を使用して解析した。この結果を図面6に提供する。
【0248】
実施例4
タンパク質標識化:プロテインAは、NHS標識化緩衝液と1:3のタンパク質対色素標識比を使用して、モノスルホCy5で標識した。故に、100μlの24μM色素溶液を100μlの8μMタンパク質溶液と混合して、反応を暗所にて室温で30分間行った。実施例2に記載のように、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、遊離色素を除去した。
【0249】
系列希釈液の調製:タンパク質標識化の後で、リガンドの系列希釈液を調製した。トラスツズマブをPBS-0.05% Tween 20緩衝液で2.5μMへ希釈した。この溶液から始めて、10μlの試料容量を使用して16段階の系列希釈液を調製した。この系列希釈液の調製後、10nMの標識プロテインAの10μlをこの希釈系列へ加えた。上下のピペッティング操作によって試料を混合した。premium coated ガラスキャピラリーにロードする前に、試料を4℃及び15,000gで10分間遠心分離した。
【0250】
IR.Red での測定とデータ解析:この実験は、IR.Red を使用して実施した。プロテインAのトラスツズマブへの親和性についての測定は、20% LEDを使用して行って、IR-レーザーのスイッチは切った。データは、MO Affinity 解析ソフトウェア(NanoTemper Technologies)と GraphPad Prism 7.0(GraphPad Software 社)を使用して解析した。この結果を図面7に提供する。
【0251】
実施例5
タンパク質標識化:IL-R1タンパク質は、標準的なNHS標識化プロトコールに従って、DyLight655誘導体で標識した。このために、色素は、DMSOに予め希釈して、NHS標識化緩衝液で6μMの最終濃度までさらに希釈した。タンパク質は、同じ標識反応最適化緩衝液で2μMの最終濃度まで希釈した。標識反応では、100μlの色素溶液を100μlのタンパク質溶液と混合して、反応を暗所にて室温で30分間行った。その後、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、遊離色素を除去した。このためには、9mlのアッセイ緩衝液を使用してBカラムを平衡化した後で、標識反応液をロードしてこの樹脂に入れた。300μlのアッセイ緩衝液の添加後、600μlのアッセイ緩衝液を使用して、標識タンパク質を溶出させた。ここで、最初の100μlはどのタンパク質も含有しないので、捨てた。
【0252】
系列希釈液の調製:タンパク質標識化の後で、リガンド・アナキンラ(Anakinra)の系列希釈液を10μlの試料容量で調製した。この系列希釈液の調製後、1nM標識タンパク質の10μlをすべてのリガンド希釈液へ加えた。上下のピペッティング操作によって試料を混合した。premium coated ガラスキャピラリーにロードする前に、試料を4℃及び15,000gで1分間遠心分離した。
【0253】
IR.Red での測定とデータ解析:この実験は、IR.Red を12mWのIR-レーザー出力で使用して、プローブを60%のLED出力で310Kまで加熱して実施した。データは、MO Affinity 解析ソフトウェア(NanoTemper Technologies)を使用して解析した。この結果を図面8に提供する。
【0254】
実施例6
タンパク質標識化:p38αタンパク質は、NHS標識化ケミストリーを使用して、Cy5で標識した。このために、色素は、DMSOに予め希釈して、NHS標識化緩衝液で24μMの最終濃度までさらに希釈した。タンパク質は、同じ標識反応最適化緩衝液を使用して8μMの最終濃度まで希釈した。標識反応では、100μlの色素溶液を100μlのタンパク質溶液と混合して、反応を暗所にて室温で30分間行った。その後、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、遊離色素を除去した。このためには、9mlのアッセイ緩衝液を使用してBカラムを平衡化した後で、標識反応液をロードしてこの樹脂に入れた。300μlのアッセイ緩衝液の添加後、600μlのアッセイ緩衝液を使用して、標識タンパク質を溶出させた。ここで、最初の100μlはどのタンパク質も含有しないので、捨てた。
【0255】
系列希釈液の調製:タンパク質標識化の後で、リガンドの系列希釈液を調製した。4% DMSOを含むアッセイ緩衝液をアッセイ緩衝液として役立てた。PD169316をアッセイ緩衝液で10μMと4% DMSOへ希釈した。この溶液から始めて、10μlの試料容量を使用して16段階の系列希釈液を調製した。この系列希釈液の調製後、100nMの標識タンパク質の10μlをすべてのリガンド希釈液へ加えた。上下のピペッティング操作によって試料を混合した。premium coated ガラスキャピラリーにロードする前に、試料を4℃及び15,000gで10分間遠心分離した。
【0256】
IR.Red での測定とデータ解析:この実験は、IR.Red を24mWのIR-レーザー出力と20%のLED出力で使用して実施した。プローブは、IR-レーザーで308Kの温度まで予熱した。このプローブを296Kへ冷却してすぐに、蛍光変化をモニターした。データは、MO Affinity 解析ソフトウェア(NanoTemper Technologies)を使用して解析した。この結果を図面9に提供する。
【0257】
実施例7
タンパク質標識化:Hisタグ付きp38αをOregon Green 488 tris-NTA誘導体で標識した。このためには、色素をPBSTで100nMの最終濃度へ希釈し、一方タンパク質濃度は、PBST緩衝液を使用して200nMへ調整した。両方の試料を200μlの最終容量で1:1に混合して、標識反応は、暗所にて室温で30分間行った。その後、この反応混合物を4℃及び15,000gで10分間遠心分離した。
【0258】
Hisタグ付きp38αは、NHS標識化ケミストリーを使用して、Oregon Green488、Cy5、ZCy5、TAMRA、及びTAMRAXで標識した。このために、色素は、DMSOに予め希釈して、NHS標識化緩衝液で、Z-Cy5については6μMで他の色素については24μMの最終濃度までさらに希釈した。タンパク質は、同じ標識反応最適化緩衝液を使用して、Z-Cy5については2μMで他の色素については8μMの最終濃度まで希釈した。標識反応では、100μlの色素溶液を100μlのタンパク質溶液と混合して、反応を暗所にて室温で30分間行った。その後、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、遊離色素を除去した。このためには、9mlのアッセイ緩衝液を使用してBカラムを平衡化した後で、標識反応液をロードしてこの樹脂に入れた。300μlのアッセイ緩衝液の添加後、600μlのアッセイ緩衝液を使用して、標識タンパク質を溶出させた。ここで、最初の100μlはどのタンパク質も含有しないので、捨てた。
【0259】
系列希釈液の調製:タンパク質標識化の後で、リガンドの系列希釈液を調製した。4% DMSOを含むアッセイ緩衝液をアッセイ緩衝液として役立てた。Z-Cy5標識p38ではPD169316を、そして他の標識産物ではBIRBをアッセイ緩衝液で10μMと4% DMSOへ希釈した。この溶液から始めて、10μlの試料容量を使用して16段階の系列希釈液を調製した。この系列希釈液の調製後、100nMの標識タンパク質の10μlをすべてのリガンド希釈液へ加えた。上下のピペッティング操作によって試料を混合した。premium coated ガラスキャピラリーにロードする前に、試料を4℃及び15,000gで10分間遠心分離した。
【0260】
IR.Red での測定とデータ解析:この実験は、IR.Red を24mWのIR-レーザー出力で使用して実施した。色素:Cy5、Z-Cy5、Oregon Green 488、及びOregon Green 488-tris NTAでは、プローブを296Kから310Kへ、TAMRAとTAMRA Xでは、318Kへ加熱した。色素の蛍光強度の固有差のために、LED出力は、それぞれの色素について最適化しなければならなかった。p38α-Cy5では20%、一方p38α Z-Cy5では60%のLED出力を使用して測定した。TAMRAとTAMRAX標識p38αでは、100%と40%のLED出力を使用して試験した。Oregon Green 488とOregon Green 488-tris-NTA標識p38αでは、それぞれ100%と40%のLED出力を使用して検出した。データは、MO Affinity 解析ソフトウェア(NanoTemper Technologies)を使用して解析した。この結果を図面10に提供する。
【0261】
実施例8
タンパク質標識化:タンパク質のTEM1とp38αは、NHS標識化緩衝液と1:3のタンパク質対色素標識比を使用して、DY647P1とモノスルホCy5でともに標識した。故に、24μM色素溶液の100μlを8μMタンパク質溶液の100μlと混合して、反応を暗所にて室温で30分間行った。実施例2に記載のように、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、遊離色素を除去した。
【0262】
系列希釈液の調製:タンパク質標識化の後で、リガンドの系列希釈液を調製した。4% DMSOを含むアッセイ緩衝液は、BIRBに対するp38αのアッセイ緩衝液として役立てた。一方、アッセイ緩衝液は、BLIPに対するTEM1に使用した。BIRBとBLIPをアッセイ緩衝液でそれぞれ10μM及び4% DMSOと1μMへともに希釈した。これらの溶液から始めて、10μlの試料容量を使用して16段階の系列希釈液を調製した。この系列希釈液の調製後、100nMの標識p38α又は132nMの標識TEM1の10μlを希釈系列へ加えた。上下のピペッティング操作によって試料を混合した。premium coated ガラスキャピラリーにロードする前に、試料を4℃及び15,000gで10分間遠心分離した。
【0263】
IR.Red での測定とデータ解析:この実験は、IR.Red を24mWのIR-レーザー出力で、310Kと318Kの間の温度で使用して実施した。色素の蛍光強度の固有差のために、LED出力は、それぞれの色素について最適化しなければならなかった。BLIPについてのTEM1親和性の測定は、DY647P1標識TEM1では30%のLED出力を使用して、モノスルホ-Cy5標識TEM1では80%のLED出力を使用して行った。BIRBについてのp38α-DY647P1親和性は、30%のLED出力を使用して測定し、一方、p38モノスルホ-Cy5については、80%のLED出力を使用して分析した。データは、MO Affinity 解析ソフトウェア(NanoTemper Technologies)を使用して解析した。この結果を図面11に提供する。
【0264】
実施例9
タンパク質標識化:タンパク質のTEM1とp38αをモノスルホ-Cy5、DY630、及びDY631で、NHS標識化ケミストリーと1:3、1:3、及び1:5の色素対タンパク質標識比をそれぞれ使用して標識した。故に、100μlの24μM色素溶液を100μlの8μMタンパク質溶液と混合して、反応を暗所にて室温で30分間行った。実施例2に記載のように、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、遊離色素を除去した。
【0265】
系列希釈液の調製:タンパク質標識化の後で、リガンドのBLIPとPD169316の系列希釈液を調製した。4% DMSOを含むアッセイ緩衝液は、PD169316に対するp38αのアッセイ緩衝液として役立てた。一方、アッセイ緩衝液は、BLIPに対するTEM1に使用した。PD169316とBLIPをアッセイ緩衝液でそれぞれ10μM及び4% DMSOと1μMへともに希釈した。これらの溶液から始めて、10μlの試料容量を使用して16段階の系列希釈液を調製した。この系列希釈液の調製後、100nMの標識p38α又は132nMの標識TEM1の10μlを希釈系列へ加えた。上下のピペッティング操作によって試料を混合した。premium coated ガラスキャピラリーにロードする前に、試料を4℃及び15,000gで10分間遠心分離した。
【0266】
IR.Red での測定とデータ解析:この実験は、IR.Red を24mWのIR-レーザー出力で使用して、プローブを310Kと318Kの間の温度まで加熱して実施した。色素の蛍光強度の固有差のために、LED出力は、それぞれの色素について最適化しなければならなかった:DY630標識TEM1では100%のLED出力、DY631標識TEM1では80%のLED出力、そしてモノスルホ-Cy5標識TEM1では60%のLED出力。データは、MO Affinity 解析ソフトウェア(NanoTemper Technologies)を使用して解析した。この結果を図面12に提供する。
【0267】
実施例10
タンパク質のp38αとTEM1をモノスルホ-Cy5でともに標識した。さらに、SeTau647を使用して、p38αを標識した。このためには、色素をDMSOに溶かして、NHS標識化緩衝液を使用して、24μMの最終濃度までさらに希釈した。1:3のタンパク質対色素比のために、NHS標識化緩衝液を使用して、タンパク質を8μMの最終濃度まで希釈した。標識反応では、100μlの色素溶液を100μlのタンパク質溶液と混合して、反応を暗所にて室温で30分間行った。その後、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、遊離色素を除去した。このためには、9mlのアッセイ緩衝液を使用してBカラムを平衡化した後で、標識反応液をロードしてこの樹脂に入れた。300μlのアッセイ緩衝液の添加後、600μlのアッセイ緩衝液を使用して、標識タンパク質を溶出させた。ここで、最初の100μlはどのタンパク質も含有しないので、捨てた。Bカラム精製の後で、タンパク質を高感度 Prometheus ガラスキャピラリー(1.6μM)中へ直接ロードして、PR.Red を以下のデバイス設定:1K/分;293~368Kで使用して、同一2検体で測定した。
【0268】
遊離色素をDMSOに予め希釈して、アッセイ緩衝液で100nMの最終濃度までさらに希釈した。次いで、色素を高感度 Prometheus ガラスキャピラリー中へ充填して、PR.Red デバイス中へ同一3検体でロードした。加熱ランプを1K/分に設定して、データを293~368Kで記録した。マイクロソフト Excel を使用して、データを解析した。この結果を図面15に提供する。
【0269】
実施例11
タンパク質のTEM1とMBPを、NHS標識化ケミストリーと1:3のタンパク質対色素標識比を使用してモノスルホ-Cy5で標識した。このためには、色素をDMSOに溶かして、NHS標識化緩衝液において、24μMの最終濃度までさらに希釈した。同一の標識反応最適化緩衝液を使用して、タンパク質を8μMの最終濃度まで希釈した。標識反応では、100μlの色素溶液を100μlのタンパク質溶液と混合して、反応を暗所にて室温で30分間行った。その後、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、遊離色素を除去した。このためには、9mlのアッセイ緩衝液を使用してBカラムを平衡化した後で、標識反応液をロードしてこの樹脂に入れた。300μlのアッセイ緩衝液の添加後、600μlのアッセイ緩衝液を使用して、標識タンパク質を溶出させた。ここで、最初の100μlはどのタンパク質も含有しないので、捨てた。Bカラム精製の後で、タンパク質を高感度 Prometheus ガラスキャピラリー(1.6μM)中へ直接ロードして、2つのデバイス:PR.Red(1K/分を293~368Kで使用する)と Prometheus NT.48(5K/分を293~368Kで使用する)を使用して同一2検体で測定した。データは、このデバイスのソフトウェアより直接転送した。この結果を図面16に提供する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
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図19b
図19c
図19d
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