(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】低温配管用特殊貫通ピース
(51)【国際特許分類】
F16L 5/00 20060101AFI20220921BHJP
F17C 13/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
F16L5/00 J
F17C13/00 302D
(21)【出願番号】P 2020212019
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2020-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000146814
【氏名又は名称】株式会社新来島どっく
(74)【代理人】
【識別番号】100090044
【氏名又は名称】大滝 均
(72)【発明者】
【氏名】古賀 志郎
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-145899(JP,U)
【文献】国際公開第2020/008148(WO,A1)
【文献】特開2013-160330(JP,A)
【文献】特開昭61-092399(JP,A)
【文献】特開平06-257464(JP,A)
【文献】特開2017-003014(JP,A)
【文献】特開2006-170221(JP,A)
【文献】実開昭61-023586(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 5/00
F17C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
LNG燃料船のLNG低温配管の船殻部材貫通部及びタイト壁貫通部に使用する低温配管用特殊貫通ピースであって、
通しフランジ
にのみ接合される低温配管と、
貫通する壁面の貫通開孔に接合される壁側フランジと
、壁側フランジと接合される呼び出し管型貫通ピースと、呼び出し管型貫通ピースと接合される配管側中フランジと、
呼び出し管型貫通ピースの配管側中フランジと通しフランジとの間にPTFE製断熱パッキンシートと、を有することを特徴とする低温配管用特殊貫通ピース。
【請求項2】
呼び出し管型貫通ピースが熱伝搬が少ない低温適合鋼材のSUS316L材質であることを特徴とする請求項1に記載の低温配管用特殊貫通ピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LNG燃料船のLNG低温配管の船殻部材貫通部及びタイト壁貫通部に使用する低温配管用特殊貫通ピースに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の低温配管用特殊貫通ピースに関しては、例えば、特開平7-98079号公報に開示のものが知られている。
特開平7-98079号公報の開示は、発明名称「低温タンクの配管用貫通ピース」に係り、「大きな熱応力の発生を防止し、形状が簡単で工作,溶接及び検査が容易な信頼性の大きい低温タンクの配管用貫通ピースを提供することを目的とする」発明解決課題において(同公報明細書段落番号0004参照)、「低温流体が内部を流れるパイプと、同パイプが貫通するタンク壁とを接続する配管用貫通ピースにおいて、上記パイプに接続される同径の短管の外周央部に軸方向の適長にわたって一体的にかつ同軸的に形成された外径肥大部と、上記外径肥大部の外周面央部に形成され上記タンク壁に穿設された貫通孔に強固に溶接される溶接部とを具えた」構成とすることにより(同公報特許請求の範囲請求項1の記載等参照)、「(1)・・・従来必要であった切断,溶接,検査といった複雑な工程及び検査を省略でき、工作の容易化によるコスト低減とシンプルな形状による信頼性の向上が期待できる。(2)・・・材料費の歩留まり向上によるコスト低減効果が期待できる。」等の効果を奏するものである(同公報明細書段落番号0015参照)。
【0003】
図3(A)(B)は、特開平7-98079号公報に
図1として添付されるLNGタンクのドーム貫通ピースに適用した開示発明の第1実施例を示す全体縦断面図及び部分拡大図であり、
図3(A)(B)において、符号101は、貫通継手(ピース)、101aは、継手短管部、101bは、外径肥大部、102は、ドーム壁(タンク壁)である(符号は、先行技術であることを明らかにするために、本願出願人において、3桁に変更して説明した。)。
【0004】
しかしながら、特開平7-98079号公報に開示の発明は、「LNGタンクドーム貫通ピース」に適用するを前提とするものであり、配管温度マイナス163℃の低温配管を船殻部材(SS鋼材)に熱伝播させず貫通するものではない。
そして、LNG燃料船等の船殻部材たるタイト壁面の貫通部に低温配管を施工する場合には、当該貫通部に突合せ継ぎ手を配置する施工が必要となるが、同継ぎ手の貫通ピース内で船級規則が要求する非破壊試験を実施は、およそ不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本願発明は、配管温度マイナス163℃の低温配管を船殻部材(SS鋼材)に熱伝播させず貫通させることができ、タイト壁貫通部での非破壊試験の実施を要することのない低温配管用特殊貫通ピースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願請求項1に係る発明は、LNG燃料船のLNG低温配管の船殻部材貫通部及びタイト壁貫通部に使用する低温配管用特殊貫通ピースであって、通しフランジにのみ接合される低温配管と、貫通する壁面の貫通開孔に接合される壁側フランジと、壁側フランジと接合される呼び出し管型貫通ピースと、呼び出し管型貫通ピースと接合される配管側中フランジと、呼び出し管型貫通ピースの配管側中フランジと通しフランジとの間にPTFE製断熱パッキンシートと、を有することを特徴とする。
また、本願請求項2に係る発明は、前記請求項1に記載の低温配管用特殊貫通ピースにおいて、呼び出し管型貫通ピースが熱伝搬が少ない低温適合鋼材のSUS316L材質であることを特徴とする。
【0008】
上記のような構成としたので、本発明に係る低温配管用特殊貫通ピースにおいては、貫通ピースの材質を熱伝搬が少ない低温適合鋼材のSUS316Lを使用し、かつ、両端フランジの接触域を少なくし、さらに、配管側中フランジ7と通しフランジ9との間をPTFE製断熱パッキンシート8を介する分離する接合構造としたので、次の効果を奏する。
(1)低温配管から貫通ピースを通じ熱伝播が発生し、船殻部材(図示外)及びタイト壁が脆性破壊を起こすことを避けることができる。
(2)低温配管の貫通ピース5との接合フランジ7、9は、通しフランジ形状とすることで低温配管に継ぎ手を設ける必要がなくなり、このため、フランジ部のドリップトレイも不要となる。
(3)貫通ピース部での突合せ継ぎ手自体が不要となるので、貫通ピース内での非破壊試験を要することもない。
(4)従来施工が不可能だった低温配管貫通が施工可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明に係る低温配管用特殊貫通ピースを実施するための実施例1に係る低温配管用特殊貫通ピースの全体概略を示す部分断面図である。
【
図2】
図2(A)は、貫通ピース本体概略図、
図2(B)は、PTFE製断熱パッキンシートの概略図、
図2(C)は、低温配管に通しフランジが接合された配管側概略図である。
【
図3】
図3(A)(B)は、特開平7-98079号公報に
図1として添付されるLNGタンクのドーム貫通ピースに適用した開示発明の第1実施例を示す全体縦断面図及び部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る低温配管用特殊貫通ピースを実施するための形態として一実施例を示す図面に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明に係る低温配管用特殊貫通ピースを実施するための実施例1に係る低温配管用特殊貫通ピースの全体概略を示す部分断面図であり、
図2(A)(B)は、
図1に示す実施例1に係る低温配管用特殊貫通ピースを分解概略図であり、
図2(A)は、貫通ピース本体概略図、
図2(B)は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン:(polytetrafluoroethylene)製断熱パッキンシートの概略図、
図2(C)は、低温配管に通しフランジが接合された配管側概略図である。
【0012】
図1、
図2(A)~(C)において、符号1は、本実施例1に係る低温配管用特殊貫通ピース、2は、SS鋼材の船殻部材からなるタイト壁面、3(3a-3b)は、タイト壁面2に開けられた3aー3bの径の貫通開孔、4は、低温配管、5は、呼び出し管型貫通ピース、6は、呼び出し管型貫通ピースの壁側フランジ、7は、配管側中フランジ、8は、PTFE製断熱パッキンシート、9は、低温配管4に接合される通しフランジである。
【0013】
図1、
図2(A)(B)から明らかなように、本実施例1に係る低温配管用特殊貫通ピース1においては、呼び出し管型貫通ピース5を低温適合鋼材であるSUS316Lを使用し、
図2(A)(B)に示すように、貫通ピース5と低温配管4を熱伝搬を低減する分離構造としたものである。このため、
図1、
図2(A)(B)から明らかなように、貫通ピース5の形状を配管側中フランジ7を有する呼び出し管型として,この面からも熱伝播を低減させる構造としたものである。
【0014】
そして、低温配管4と貫通ピース5の接合には低温配管4に接合した通しフランジ9と配管側中フランジ7との間で接合する構造とし、さらに、通しフランジ9と配管側中フランジ7との間にPTFE製断熱パッキンシート8を挟むことでさらに熱伝播を阻害するようにしたものである。
【0015】
すなわち、本実施例1に係る低温配管用特殊貫通ピース1においては、貫通ピース5の材質を熱伝搬が少ない低温適合鋼材のSUS316Lを使用し、かつ、両端フランジ6、7の接合領域を少なくし、さらに、フランジ7と通しフランジ9との間をPTFE製断熱パッキンシート8を介する分離する接合構造としたので、低温配管4から貫通ピース5を通じ熱伝播が発生し、船殻部材(図示外)及びタイト壁面2が脆性破壊を起こすことを避けることができるようになったことに加え、貫通ピース部での突合せ継ぎ手自体が不要となり、貫通ピース内での非破壊試験を要することなく、また、低温配管4の貫通ピース5との接合フランジ7、9は、通しフランジ形状とすることで低温配管に継ぎ手を設ける必要がなくなり、このため、フランジ部のドリップトレイも不要となる。
そして、もっとも効果的なのは、従来、施工が不可能だった低温配管貫通が施工可能となったことである。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、LNG燃料船のLNG低温配管の船殻部材貫通部及びタイト壁貫通部に使用する低温配管用特殊貫通ピースに利用する。
【符号の説明】
【0017】
1 実施例1に係る低温配管用特殊貫通ピース
2 タイト壁面
3(3a-3b) 貫通開孔
4 低温配管
5 呼び出し管型貫通ピース
6 壁側フランジ
7 配管側中フランジ
7 配管側中フランジ
8 PTFE製断熱パッキンシート
9 通しフランジ
101 通継手(ピース)
101a 継手短管部
101b 外径肥大部
102 ドーム壁(タンク壁)