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特許7144510経口投与可能なHIFプロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の共結晶
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】経口投与可能なHIFプロリルヒドロキシラーゼ阻害剤の共結晶
(51)【国際特許分類】
   C07D 217/26 20060101AFI20220921BHJP
   A61K 31/472 20060101ALI20220921BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220921BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220921BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
C07D217/26 CSP
A61K31/472
A61K47/02
A61P13/12
A61P7/06
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020512856
(86)(22)【出願日】2018-07-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 EP2018068754
(87)【国際公開番号】W WO2019042641
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】17189195.5
(32)【優先日】2017-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18165661.2
(32)【優先日】2018-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】305008042
【氏名又は名称】サンド・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レンガウアー,ハンネス
(72)【発明者】
【氏名】ピヒラー,アルトウール
(72)【発明者】
【氏名】マルグライター,レナーテ
(72)【発明者】
【氏名】ゲルブリヒ,トーマス
【審査官】伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-522616(JP,A)
【文献】特表2016-523846(JP,A)
【文献】Pharm Tech Japan,2009年,Vol. 25, No.12,pp.155-166
【文献】TILBORG, A. et al.,European Journal of Medicinal Chemistry ,2014年,Vol. 74,pp. 411-426
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
20~30℃の範囲の温度で0.15419nmの波長を有するCu-Kα 1,2 線を用いて測定したとき、(3.6±0.2)°、(7.2±0.2)°及び(9.6±0.2)°の2θ角に反射を含む粉末X線回折図を有することを特徴とする、ロキサデュスタットのL-プロリンとの共結晶。
【請求項2】
式B1
【化1】
(式中、nは0.9~1.1の範囲である)
の化学構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の共結晶。
【請求項3】
式B2
【化2】
(式中、nは0.9~1.1の範囲である)
の化学構造を有することを特徴とする、請求項1に記載の共結晶。
【請求項4】
20~30℃の範囲の温度でダイヤモンド減衰全反射セルを用いて測定したとき、(3379±2)cm-1、(3071±2)cm-1及び(1705±2)cm-1の波数にピークを含むフーリエ変換赤外スペクトルを有することを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の共結晶。
【請求項5】
20~30℃の範囲の温度で785nmの波長で測定したとき、(1629±3)cm-1、(1536±3)cm-1及び(1412±3)cm-1の波数にピークを含むラマンスペクトルを有することを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の共結晶。
【請求項6】
20~30℃の範囲の温度で0.15419nmの波長を有するCu-Kα1,2線を用いて測定したとき、(8.5±0.2)°及び(16.2±0.2)°の2θ角に反射を含まない粉末X線回折図を有することを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の共結晶を含む組成物。
【請求項7】
医薬組成物の調製のための、請求項1~のいずれか1項に記載の共結晶又は請求項に記載の組成物の使用。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の共結晶又は請求項に記載の組成物、及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項9】
更に、少なくとも1つの光安定剤を含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1つの光安定剤が、二酸化チタン及び少なくとも1つの追加染料を含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物が経口固体剤形である、請求項10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記経口固体剤形が錠剤又はカプセル剤である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
医薬として使用するための、請求項1~のいずれか1項に記載の共結晶。
【請求項14】
医薬として使用するための、請求項に記載の組成物、又は請求項12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
末期腎疾患(ESRD)及び/又は慢性腎疾患(CKD)の患者における貧血の治療及び/又は予防に使用するための、請求項1~のいずれか1項に記載の共結晶。
【請求項16】
末期腎疾患(ESRD)及び/又は慢性腎疾患(CKD)の患者における貧血の治療及び/又は予防に使用するための、請求項に記載の組成物、又は請求項12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロキサデュスタットのL-プロリンとの共結晶、及びその製造方法に関する。更に、本発明は、前記ロキサデュスタットL-プロリン共結晶、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤、及び任意に少なくとも1つの光安定剤を含む医薬組成物に関する。本発明の医薬組成物は、特に末期腎疾患(ESRD)及び/又は慢性腎疾患(CKD)の患者における貧血の治療及び/又は予防のための医薬として使用され得る。
【背景技術】
【0002】
ロキサデュスタットは、経口投与可能な低酸素誘導因子(HIF)プロリルヒドロキシラーゼ阻害剤である。HIFプロリルヒドロキシラーゼ阻害剤は、HIFの安定性及び/又は活性を高めるために有用であり、よって貧血、虚血及び低酸素症関連障害を含むHIF関連障害の治療及び予防のために有用である。
【0003】
ロキサデュスタットは、化学的に[(4-ヒドロキシ-1-メチル-7-フェノキシイソキノリン-3-カルボニル)アミノ]酢酸とも称され、式A:
【0004】
【化1】
に示す化学構造により表され得る。
【0005】
化合物ロキサデュスタットは、WO 2004/108681A1に開示されている。WO 2014/014835A2は、非晶質ロキサデュスタット以外に、ロキサデュスタットの幾つかの結晶質形態、例えば無水型A、半水和型B、ヘキサフルオロプロパン-2-オール溶媒和型C、及び混合DMSO/水溶媒和型Dを開示している。同出願は、ロキサデュスタットの幾つかの結晶質及び非晶質塩、例えばアルカリ金属のナトリウム及びカリウム、アルカリ土類金属のカルシウム及びマグネシウム、アミノ酸のL-アルギニン及びL-リシン、アミンのエタノールアミン、ジエタノールアミン、トロメタミン及びトリエタルアミン、塩酸、硫酸及びメタンスルホン酸との塩をも挙げている。
【0006】
医薬品有効成分(API)の各種ソリッドステート型は、しばしば異なる物理的及び化学的特性を有しており、これらの特性には非限定的に溶解速度、溶解度、化学的安定性、物理的安定性、吸湿性、融点、形態、流動性、かさ密度及び圧縮性が例示される。多形、擬多形(水和物及び溶媒和物)及び塩のようなAPIの慣用のソリッドステート型とは別に、医薬共結晶は、APIの物理化学特性を方法又は臨床的必要性でカスタマイズするための更なる機会を広げる。例えば、これらは、医薬品のバイオアベイラビリティー及び安定性を高めるために、また医薬品製造中にAPIの加工性を高めるために適応され得る。
【0007】
共結晶は塩とは異なり、その成分が中性状態にあり、非イオン的に相互作用するので、共結晶は塩と構造的に容易に区別され得る。加えて、共結晶は、結晶格子中の分子の異なる配置又は立体配座を有する単一成分結晶形態を含むとして定義される多形と構造的に異なる。むしろ、共結晶は、結晶格子中に複数の成分を含有し、且つこれらの成分間の相互作用が非イオン性である点で、構造上溶媒和物及び水和物により類似している。物理化学観点から、共結晶は、第2成分の共結晶形成物質が非揮発性である溶媒和物及び水和物の特殊な例と見なされ得る(“Regulatory Classification of Pharmaceutical Co-Cryatals”,Guidance for Industry,FDA,Revision 1,August 2016も参照されたい)。
【0008】
WO 2014/014835A2に記載されているロキサデュスタットの公知の水和物及び溶媒和物は幾つかの欠点を有している。例えば、これらは温度ストレス時に物理的に不安定であり、当該出願に記載されているDSC曲線に示されているようにWO 2014/014835A2の無水型Aに容易に変換する。これは重要である。なぜならば、医薬品有効成分のソリッドステート型が突然現れたり、消えたりすることは方法開発において問題を提起し得る。同様に、変換が剤形中で起こるならば、重大な薬学的結果が起こり得る。加えて、型C及びDは大量の有機溶媒、例えばヘキサフルオロプロパンプロパン-2-オール溶媒和物(型C)及びDMSO(型D)を含有しており、有機溶媒には治療上利点がないのでこれらの溶媒は可能な限り除去されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2004/108681号
【文献】国際公開第2014/014835号
【非特許文献】
【0010】
【文献】Regulatory Classification of Pharmaceutical Co-Cryatals”,Guidance for Industry,FDA,Revision 1,August 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
よって、本発明の目的は、温度ストレスに対して物理的に安定であるロキサデュスタットの改良されたソリッドステート型、特にロキサデュスタットの共結晶を提供することである。本発明の更なる目的は、例えば光分解に対して化学的に安定であり、本質的に有機溶媒を含まず、改善された溶解性/溶解度を特徴とする、及び/又は流動性、かさ密度及び圧縮性のような改善された粉末特性を特徴とするロキサデュスタットの改良されたソリッドステート型、特にロキサデュスタットの共結晶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ロキサデュスタットのL-プロリンとの医薬共結晶を提供することにより上記目的の1つ以上を解決する。本発明の共結晶は、溶解速度、溶解度、化学的安定性、物理的安定性、吸湿性、融点、形態、流動性、かさ密度及び圧縮性から選択される1つ以上の改善された物理化学的特性を有する。特に、本発明の共結晶は、いずれも加熱すると脱溶媒和/脱水和し、最終的に少なくともロキサデュスタットの無水型Aへの部分的相変換を示すWO 2014/014835A2の半水和型B、及び溶媒和型C及びDと比較して、熱的により安定である。
【0013】
<略語>
PXRD 粉末X線回折図
SXRD 単結晶X線回折
FTIR フーリエ変換赤外
ATR 減衰全反射
DSC 示差走査熱量測定
TGA 熱重量分析
NMR 核磁気共鳴
RT 室温
RH 相対湿度
API 医薬品有効成分
THF テトラヒドロフラン
【0014】
<定義>
本明細書中で使用されている「室温」は、20~30℃の範囲の温度を指す。
【0015】
本明細書中で使用されている用語「ロキサデュスタット」は、本明細書中に上に開示した式Aに示す化学構造の[(4-ヒドロキシ-1-メチル-7-フェノキシイソキノリン-3-カルボニル)アミノ]酢酸を指す。
【0016】
本明細書中で使用されている用語「共結晶」は、同一結晶格子中で非イオン性及び非共役結合により結合している2つ以上の異なる分子及び/又はイオン性化合物から構成され、個々の分子及び/又はイオン性化合物の少なくとも2つは室温で固体である結晶質物質を指す。
【0017】
本明細書中で互換可能に使用されている用語「L-プロリンとのロキサデュスタット共結晶」、「ロキサデュスタットのL-プロリンとの共結晶」、又は「ロキサデュスタットL-プロリン共結晶」は、医薬品有効成分としてロキサデュスタット、及び同一結晶格子中に共結晶形成物質として、好ましくは両性イオンとして存在するL-プロリンを含み、ロキサデュスタット及びL-プロリンの相互作用が非イオン性且つ非共役性である結晶質化合物を指す。
【0018】
本明細書中で使用されている用語「両性イオン」は、陽電荷及び陰電荷の両方を有する中性分子を表す。両性イオンは時々「分子内塩」と呼ばれる。
【0019】
本明細書中で使用されている用語「ロキサデュスタット型A」は、WO 2014/014835A2に開示されているロキサデュスタットの結晶質形態を指す。ロキサデュスタットの型Aは、20~30℃の範囲の温度で0.15419nmの波長を有するCu-Kα1,2線を用いて測定したとき、(8.5±0.2)°、(16.2±0.2)°及び(27.4±0.2)°の2θ角に反射を含む粉末X線回折図を有することを特徴とし得る。
【0020】
本明細書中で使用されている用語「20~30℃の範囲の温度で測定したとき」は、標準条件での測定を指す。典型的には、標準条件は、20~30℃の範囲の温度、すなわち室温を意味する。標準条件は、約22℃の温度を意味し得る。典型的には、標準条件は、更に20~50%の相対湿度での測定を意味し得る。
【0021】
本明細書中で使用されている粉末X線回折に関する用語「反射」は、長距離位置秩序中に規則的な反復パターンで分布している固体物質中の原子の平行平面により散乱するX線からの強め合う干渉により特定の回折角(ブラッグ角)に生ずるX線回折図中のピークを意味する。前記固体物質は結晶質物質として分類されるのに対して、非晶質物質は長距離秩序を欠き、短距離秩序のみを示し、よって幅広い散乱が生ずる固体物質として規定される。文献によれば、長距離秩序は例えば約100~100原子に広がるのに対して、短距離秩序は数原子にしか広がらない(“Fundamentals of Powder Diffraction and Structural Characterization of Materials”,by Vitalij K.Pecharsky and Peter Y.Zavalij,Kluwer Academic Publishers,2003,p.3を参照されたい)。
【0022】
粉末X線回折に関連して、用語「本質的に同一」は、反射位置及び反射の相対強度の変動を考慮しなければならないことを意味する。例えば、2θ値の典型的な精度は、±0.2°2θの範囲、好ましくは±0.1°2θの範囲である。よって、通常3.6°2θに表れる反射は、例えば大部分のX線回折器を用いて標準条件下で3.4°~3.8°2θ、好ましくは3.5~3.7°2θに表れ得る。更に、当業者は、相対反射強度が装置間変動、並びに結晶化度、好ましい配向、サンプル調製及び当業者に公知の他の要因による変動を示し、定性的測定値としてのみ解釈されなければならないことを認識している。
【0023】
フーリエ変換赤外分光法に関連して、用語「本質的に同一」は、ピーク位置及びピークの相対強度の変動を考慮しなければならないことを意味する。例えば、波数値の典型的な精度は±2cm-1の範囲である。よって、3379cm-1のピークは、例えば大部分の赤外分光計で標準条件下で3381~3377cm-1の範囲に表れ得る。相対強度の差は、典型的にはX線回折に比較して小さい。しかしながら、当業者は、結晶化度、サンプル調製及び他の要因に起因するピーク強度の小さな差は赤外分光法でも起こり得ることを認識している。したがって、相対ピーク強度は定性的測定値としてのみ解釈されなければならない。
【0024】
ラマン分光法に関連して、用語「本質的に同一」は、ピーク位置及びピークの相対強度の変動を考慮しなければならないことを意味する。例えば、波数値の典型的な精度は±3cm-1の範囲である。よって、1629cm-1のピークは、例えば大部分のラマン分光計で標準条件下で1626~1632cm-1の範囲に表れ得る。相対強度の差は、典型的にはX線回折に比較して小さい。しかしながら、当業者は、結晶化度、サンプル調製及び他の要因に起因するピーク強度の小さな差はラマン分光法でも起こり得ることを認識している。したがって、相対ピーク強度は定性的測定としてのみ解釈されなければならない。
【0025】
本明細書中で使用されている用語「ソリッドステート型」は、化合物の結晶質相及び/又は非晶質相を指す。結晶質相には、化合物及びその多形の無水/非溶媒和型、化合物及びその多形の水和物及び溶媒和物、化合物の塩及び共結晶、並びにその混合物が含まれる。
【0026】
本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶を含む組成物に関連して、本明細書中で使用されている用語「本質的に他のソリッドステート型を含まない」は、ロキサデュスタットL-プロリン共結晶が組成物の重量に基づいて多くとも20重量%、好ましくは多くとも10重量%、より好ましくは多くとも5重量%、4重量%、3重量%、2重量%、又は1重量%のロキサデュスタットの他のソリッドステート型、特にロキサデュスタット型Aを含有していることを意味する。
【0027】
本明細書中で使用されている用語「無水」又は「無水物」は、水が結晶構造中で協働していないか、又は結晶構造により収容されていない結晶性固体を指す。無水型はなお残留水を含有していることがあり得、これらの水は結晶構造の一部ではないが、結晶の表面に吸着され得るか、又は結晶の無秩序領域に吸収され得る。典型的には、無水型は、結晶質型の重量に基づいて1.0重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、最も好ましくは0.3重量%、0.2重量%、又は0.1重量%以下の水しか含有していない。含水量は、カールフィッシャー電量分析により、及び/又は熱重量分析(TGA)により、例えば10K/分の加熱速度で25から180℃、190℃、又は200℃の範囲で質量損失を測定することにより調べられ得る。
【0028】
本明細書中で使用されている用語「非溶媒和」は、結晶質固体について言うと、有機溶媒が結晶構造中で協働していないか、又は結晶構造により収容されていないことを示す。非溶媒和型はなお残留有機溶媒を含有しているおそれがあり、これらの溶媒は結晶構造の一部ではないが、結晶の表面に吸着され得るか、又は結晶の無秩序領域に吸収され得る。典型的には、非溶媒和型は、結晶質型の重量に基づいて1.0重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、最も好ましくは0.3重量%、0.2重量%、又は0.1重量%以下しか有機溶媒を含有していない。有機溶媒含量は、熱重量分析(TGA)により測定され得、例えば10K/分の加熱速度で25から180℃、190℃又は200℃の範囲で質量損失を測定することにより、又はH-NMRにより調べられ得る。
【0029】
ロキサデュスタットL-プロリン共結晶は、本明細書中で、図に示す粉末X線回折図、フーリエ変換赤外スペクトル及び/又はラマンスペクトルにより特性づけられると言及され得る。当業者は、計器タイプの違い、応答、並びにサンプル方向性、サンプル濃度、サンプル純度、サンプル履歴及びサンプル調製の変動のような要因が例えば正確な反射、又はピーク位置及び強度に関する変化をもたらし得ることを理解している。しかしながら、図に示すグラフィカルデーターの未知の物理的形態について作成したグラフィカルデーターとの比較、及び2組のグラフィカルデーターが同一結晶型に関することの確認は、当業者の知識の範囲内である。
【0030】
本明細書中で使用されている用語「母液」は、溶液から固体を結晶化した後に残る溶液を指す。
【0031】
本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶に関連して本明細書中で使用されている「所定量」は、ロキサデュスタットの所望の有効成分含量を有する医薬組成物を製造するために使用されるロキサデュスタットL-プロリン共結晶の初期量を指す。
【0032】
本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶に関連して、本明細書中で使用されている「有効量」は、所望の治療又は予防効果をもたらすロキサデュスタットL-プロリン共結晶の量を包含する。
【0033】
本明細書中で使用されている用語「約」は、値の統計上有意な範囲内であることを意味する。前記範囲は、指定されている値又は範囲の1桁の範囲内、典型的には10%以内、より典型的には5%以内、更により典型的には1%以内、最も典型的には0.1%以内であり得る。時には、前記範囲は典型的には所定の値又は範囲の測定及び/又は計測のために使用される標準方法に特有の実験誤差の範囲内にあり得る。
【0034】
本明細書中で使用されている用語「薬学的に許容される賦形剤」は、所与の用量で有意な薬学的活性を示さず、医薬品有効成分に加えて医薬組成物に添加される物質を指す。賦形剤は、特にビヒクル、希釈剤、離型剤、分解剤、溶解調節剤、吸収促進剤、安定剤又は製造助剤の機能を発揮し得る。賦形剤には、増量剤(希釈剤)、結合剤、崩壊剤、滑沢剤及び流動促進剤が含まれ得る。
【0035】
本明細書中で使用されている「増量剤」又は「希釈剤」は、送達前に医薬品有効成分を希釈するために使用される物質を指す。希釈剤及び増量剤は安定剤としても役立ち得る。
【0036】
本明細書中で使用されている「結合剤」は、凝集した部分及びばらばらの部分を維持するために医薬品有効成分及び薬学的に許容される賦形剤を一緒に結合させる物質を指す。
【0037】
本明細書中で使用されている用語「崩壊剤」又は「崩壊物質」は、固体医薬組成物に添加したとき、投与後その分解又は崩壊を促進し、医薬品有効成分を迅速溶解し得るようにできるだけ効率的に放出させ得る物質を指す。
【0038】
本明細書中で使用されている用語「滑沢剤」は、錠剤化又はカプセル化工程中に圧縮された粉末塊が装置に付着するのを防止するために粉末ブレンドに添加される物質を指す。前記物質は錠剤のダイからの取り出しを助け、粉末流を改善し得る。
【0039】
本明細書中で使用されている用語「流動促進剤」は、錠剤圧縮中の流動特性を改善し、固結防止効果を得るために錠剤及びカプセル処方物に対して使用される物質を指す。
【0040】
本明細書中で使用されている用語「光安定剤」は、露光したときに医薬品有効成分の光崩壊又は光分解を防止又は減少させる物質を指す。換言すると、光安定剤は、光分解生成物の形成を防止又は減少させるように機能する。典型的には、光安定剤は、分子の波長範囲内の光への露出を遮断し、又は減らすことにより感光性医薬品有効成分の光分解を防止又は減少させる。
【0041】
光安定剤と関連して、本明細書中で使用されている用語「有効量」は、生成される光分解産物の量が特定の光条件下で所望の最大レベルに制限されるように医薬品有効成分の光崩壊を防止又は減少させるのに十分な光安定剤の量を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶の代表的PXRDを図示する。x軸は散乱角を°2θで示し、y軸は散乱されたX線ビームの強度を検出された光子のカウント数で示す。
図2】本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶の代表的FTIRスペクトルを図示する。x軸は波数をcm-1で示し、y軸は相対強度を透過パーセントで示す。
図3】本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶の代表的ラマンスペクトルを図示する。x軸は波数をcm-1で示し、y軸はラマン強度を示す。
図4】本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶の代表的DSC曲線を図示する。x軸は温度を摂氏(℃)で示し、y軸は吸熱ピークを上昇させながら熱流量をワット/グラム(W/g)で示す。
図5】本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶の代表的TGA曲線を図示する。x軸は温度を摂氏(℃)で示し、y軸はサンプルの質量(損失)を重量パーセント(重量%)で示す。
図6】本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶の単位格子を示す。
図7】25℃で測定した、本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶(黒三角)及びWO 2014/014835A2のロキサデュスタットA型(白四角)のリン酸緩衝液pH6中の溶解曲線を示す。x軸は時間を分で示し、y軸は溶液のロキサデュスタット濃度をg/L単位で示す。
図8】本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶の、物質を40℃及び75% RHの加速ストレス条件に7日間曝す前(上部)及びその後(下部)のPXRDの比較を示す。x軸は散乱角を°2θで示し、y軸は散乱されたX線ビームの強度を検出された光子のカウント数で示す。明確にするために、初期サンプルのPXRDをy軸に沿ってシフトして回折図を分ける。
図9】本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶の、物質を約100kNの圧力をかける前(上部)及びその後(下部)のPXRDの比較を示す。x軸は散乱角を°2θで示し、y軸は散乱されたX線ビームの強度を検出された光子のカウント数で示す。明確にするために、初期サンプルのPXRDをy軸に沿ってシフトして回折図を分ける。
図10】本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶の、粉砕前(上部)及びその後(下部)のPXRDの比較を示す。x軸は散乱角を°2θで示し、y軸は散乱されたX線ビームの強度を検出された光子のカウント数で示す。明確にするために回折図を分けるために初期サンプルのPXRDをy軸に沿ってシフトさせた。
図11】本明細書中の実施例11に従って製造したロキサデュスタット1,4-ジオキサン溶媒和物のPXRDを図示する。x軸は散乱角を°2θで示し、y軸は散乱されたX線ビームの強度を検出された光子のカウント数で示す。
図12】本明細書中の実施例12に従って製造したロキサデュスタット酢酸溶媒和物のPXRDを図示する。x軸は散乱角を°2θで示し、y軸は散乱されたX線ビームの強度を検出された光子のカウント数で示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は、医薬品有効成分としてロキサデュスタット、及び共結晶形成物質として、好ましくは両性イオンとして存在するL-プロリンから構成される医薬共結晶を提供する。
【0044】
本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶は温度ストレスに対して物理的に安定である。例えば、この共結晶はDSC実験において約206℃で融解し始めるまで熱事象を示さない。更に、本発明の共結晶を用いて実施したTGA実験は融解まで大きな質量損失を示さなかった。このことは、無水及び非溶媒和リッドステート型の存在を示し、最終的にSXRDにより立証された。加えて、本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶は、有利な溶解挙動、例えば光分解に対して良好な化学的安定性を示し、良好な流動性、高いかさ密度及び良好な圧縮性のような優れた粉末特性により特性づけられる。概して、これらの有利な属性によりロバストな製剤化が可能になり、本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶を含有する医薬品の信頼できる安全性及び有効性プロフィールが製品の全保存期間中保証される。
【0045】
本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶は、結晶質固体を特性づけるために製薬業界の分野で公知の分析方法により特性づけられ得る。前記方法には、粉末及び単結晶X線回折、フーリエ変換及びラマン分光法、DSC、TGA及びGMSが含まれるが、これらに限定されない。本発明の共結晶は、上記した分析方法の1つにより、又はこれらの2つ以上を組み合わせることにより特性づけられ得る。特に、本発明の共結晶は、以下の実施形態の1つにより、又は以下の実施形態の2つ以上を組み合わせることにより特性づけられ得る。
【0046】
第1の態様において、本発明は、ロキサデュスタットのL-プロリンとの共結晶に関する。
【0047】
1つの実施形態では、本発明は、式B1
【0048】
【化2】
(式中、nは0.8~1.2、好ましくは0.9~1.1、更により好ましくは0.95~1.05の範囲であり、最も好ましくはnは1.0である)
に示す化学構造を有することを特徴とするロキサデュスタットのL-プロリンとの共結晶に関する。
【0049】
別の実施形態では、本発明は、式B2
【0050】
【化3】
(式中、nは0.8~1.2、好ましくは0.9~1.1、更により好ましくは0.95~1.05の範囲であり、最も好ましくはnは1.0である)
に示す化学構造を有することを特徴とするロキサデュスタットのL-プロリンとの共結晶に関する。
【0051】
別の実施形態では、本発明は、RTで0.15419nmの波長を有するCu-Kα1,2線を用いて測定したとき、
(3.6±0.2)°、(7.2±0.2)°及び(9.6±0.2)°;又は
(3.6±0.2)°、(7.2±0.2)°、(9.6±0.2)°及び(10.8±0.2)°;又は
(3.6±0.2)°、(7.2±0.2)°、(9.6±0.2)°、(10.8±0.2)°及び(14.4±0.2)°;又は
(3.6±0.2)°、(7.2±0.2)°、(9.6±0.2)°、(10.8±0.2)°、(14.4±0.2)°及び(17.3±0.2)°;又は
(3.6±0.2)°、(7.2±0.2)°、(9.6±0.2)°、(10.8±0.2)°、(14.4±0.2)°、(17.3±0.2)°及び(21.4±0.2)°;又は
(3.6±0.2)°、(7.2±0.2)°、(9.6±0.2)°、(10.8±0.2)°、(14.4±0.2)°、(17.3±0.2)°、(21.4±0.2)°及び(22.9±0.2)°;又は
(3.6±0.2)°、(7.2±0.2)°、(9.6±0.2)°、(10.8±0.2)°、(14.4±0.2)°、(17.3±0.2)°、(21.4±0.2)°、(22.9±0.2)°及び(25.4±0.2)°;又は
(3.6±0.2)°、(7.2±0.2)°、(9.6±0.2)°、(10.2±0.2)°、(10.8±0.2)°、(14.4±0.2)°、(17.3±0.2)°、(21.4±0.2)°、(22.9±0.2)°及び(25.4±0.2)°
の2θ角に反射を含むPXRDを有することを特徴とするロキサデュスタットのL-プロリンとの共結晶に関する。
【0052】
更なる実施形態では、本発明は、20~30℃の範囲の温度で0.15419nmの波長を有するCu-Kα1,2線を用いて測定したとき、
(3.6±0.1)°、(7.2±0.1)°及び(9.6±0.1)°;又は
(3.6±0.1)°、(7.2±0.1)°、(9.6±0.1)°及び(10.8±0.1)°;又は
(3.6±0.1)°、(7.2±0.1)°、(9.6±0.1)°、(10.8±0.1)°及び(14.4±0.1)°;又は
(3.6±0.1)°、(7.2±0.1)°、(9.6±0.1)°、(10.8±0.1)°、(14.4±0.1)°及び(17.3±0.1)°;又は
(3.6±0.1)°、(7.2±0.1)°、(9.6±0.1)°、(10.8±0.1)°、(14.4±0.1)°、(17.3±0.1)°及び(21.4±0.1)°;又は
(3.6±0.1)°、(7.2±0.1)°、(9.6±0.1)°、(10.8±0.1)°、(14.4±0.1)°、(17.3±0.1)°、(21.4±0.1)°及び(22.9±0.1)°;又は
(3.6±0.1)°、(7.2±0.1)°、(9.6±0.1)°、(10.8±0.1)°、(14.4±0.1)°、(17.3±0.1)°、(21.4±0.1)°、(22.9±0.1)°及び(25.4±0.1)°;又は
(3.6±0.1)°、(7.2±0.1)°、(9.6±0.1)°、(10.2±0.1)°、(10.8±0.1)°、(14.4±0.1)°、(17.3±0.1)°、(21.4±0.1)°、(22.9±0.1)°及び(25.4±0.1)°
の2θ角に反射を含むPXRDを有することを特徴とするロキサデュスタットのL-プロリンとの共結晶に関する。
【0053】
更に別の実施形態では、本発明は、RTで0.15419nmの波長を有するCu-Kα1,2線を用いて測定したとき、本明細書の図1に示すのと本質的に同一のPXRDを有することを特徴とするロキサデュスタットのL-プロリンとの共結晶に関する。
【0054】
更なる実施形態では、本発明は、RTでダイヤモンドATRセルを用いて測定したとき、
(3379±2)cm-1、(3071±2)cm-1及び(1705±2)cm-1;又は
(3379±2)cm-1、(3071±2)cm-1、(1705±2)cm-1及び(1624±2)cm-1;又は
(3379±2)cm-1、(3071±2)cm-1、(1705±2)cm-1、(1624±2)cm-1及び(1529±2)cm-1;又は
(3379±2)cm-1、(3071±2)cm-1、(1705±2)cm-1、(1624±2)cm-1、(1529±2)cm-1及び(1487±2)cm-1;又は
(3379±2)cm-1、(3071±2)cm-1、(1705±2)cm-1、(1624±2)cm-1、(1529±2)cm-1、(1487±2)cm-1及び(1408±2)cm-1;又は
(3379±2)cm-1、(3071±2)cm-1、(1705±2)cm-1、(1624±2)cm-1、(1529±2)cm-1、(1487±2)cm-1、(1408±2)cm-1及び(1332±2)cm-1;又は
(3379±2)cm-1、(3071±2)cm-1、(1705±2)cm-1、(1624±2)cm-1、(1529±2)cm-1、(1487±2)cm-1、(1408±2)cm-1、(1332±2)cm-1及び(1244±2)cm-1;又は
(3379±2)cm-1、(3071±2)cm-1、(1705±2)cm-1、(1624±2)cm-1、(1529±2)cm-1、(1487±2)cm-1、(1408±2)cm-1、(1332±2)cm-1、(1244±2)cm-1及び(1203±2)cm-1
の波数にピークを含むFTIRスペクトルを有することを特徴とするロキサデュスタットのL-プロリンとの共結晶に関する。
【0055】
更に別の実施形態では、本発明は、RTでダイヤモンドATRセルを用いて測定したとき、本明細書の図2に示すのと本質的に同一のFTIRスペクトルを有することを特徴とするロキサデュスタットのL-プロリンとの共結晶に関する。
【0056】
更なる実施形態では、本発明は、RT及び785nmの波長で測定したとき、
(1629±3)cm-1、(1536±3)cm-1及び(1412±3)cm-1;又は
(1629±3)cm-1、(1583±3)cm-1、(1536±3)cm-1及び(1412±3)cm-1;又は
(1629±3)cm-1、(1583±3)cm-1、(1536±3)cm-1、(1412±3)cm-1及び(1366±3)cm-1;又は
(1629±3)cm-1、(1583±3)cm-1、(1536±3)cm-1、(1412±3)cm-1、(1366±3)cm-1及び(1296±3)cm-1;又は
(1629±3)cm-1、(1583±3)cm-1、(1536±3)cm-1、(1412±3)cm-1、(1366±3)cm-1、(1296±3)cm-1及び(1186±3)cm-1;又は
(1629±3)cm-1、(1583±3)cm-1、(1536±3)cm-1、(1412±3)cm-1、(1366±3)cm-1、(1296±3)cm-1、(1186±3)cm-1及び(1003±3)cm-1;又は
(1629±3)cm-1、(1583±3)cm-1、(1536±3)cm-1、(1412±3)cm-1、(1366±3)cm-1、(1296±3)cm-1、(1186±3)cm-1、(1003±3)cm-1及び(821±3)cm-1;又は
(1629±3)cm-1、(1583±3)cm-1、(1536±3)cm-1、(1412±3)cm-1、(1366±3)cm-1、(1296±3)cm-1、(1186±3)cm-1、(1003±3)cm-1、(821±3)cm-1及び(518±3)cm-1;の波数にピークを含むラマンスペクトルを有することを特徴とするロキサデュスタットのL-プロリンとの共結晶に関する。
【0057】
更に別の実施形態では、本発明は、RT及び785nmの波長で測定したとき、本明細書の図3に示すのと本質的に同一のラマンスペクトルを有することを特徴とするロキサデュスタットのL-プロリンとの共結晶に関する。
【0058】
更なる実施形態では、本発明は、(173±2)Kで0.71073オングストロームの波長を有するMo-Kα1,2線を用いて単結晶X線回折で測定したとき、以下のパラメーターの空間群P2
a=9.1583
b=4.9686
c=24.655
α=90°
β=90.415°
γ=90°
を有する単斜晶系単位格子を示すことを特徴とするロキサデュスタットのL-プロリンとの共結晶に関する。
【0059】
1つの実施形態では、本発明は、共結晶が無水であることを特徴とするロキサデュスタットのL-プロリンとの共結晶に関する。
【0060】
別の実施形態では、本発明は、共結晶が非溶媒和であることを特徴とするロキサデュスタットのL-プロリンとの共結晶に関する。
【0061】
別の実施形態では、本発明は、10K/分の加熱速度でDSCで測定したとき、(206±1)℃の開始温度を有する吸熱ピーク、好ましくは単一吸熱ピークを含むDSC曲線を有することを特徴とするロキサデュスタットのL-プロリンとの共結晶に関する。
【0062】
更なる実施形態では、本発明は、10K/分の加熱速度でDSCで測定したとき、(207±1)℃のピーク温度を有する吸熱ピーク、好ましくは単一吸熱ピークを含むDSC曲線を有することを特徴とするロキサデュスタットのL-プロリンとの共結晶に関する。
【0063】
別の実施形態では、本発明は、10K/分の速度でRTから180℃に加熱したとき、共結晶の重量に基づいて0.5重量%以下、好ましくは0.1重量%以下の質量損失を示すTGA曲線を有することを特徴とするロキサデュスタットのL-プロリンとの共結晶に関する。
【0064】
更なる実施形態では、本発明は、10K/分の速度でRTから190℃に加熱したとき、共結晶の重量に基づいて0.5重量%以下、好ましくは0.2重量%以下の質量損失を示すTGA曲線を有することを特徴とするロキサデュスタットのL-プロリンとの共結晶に関する。
【0065】
更に更なる実施形態では、本発明は、10K/分の速度でRTから200℃に加熱したとき、共結晶の重量に基づいて0.5重量%以下、好ましくは0.3重量%以下の質量損失を示すTGA曲線を有することを特徴とするロキサデュスタットのL-プロリンとの共結晶に関する。
【0066】
DSCやTGAのような熱分析は、本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶は熱的に非常に安定である、例えば約206℃で融解するまで相変態又は分解を受けないことを示している。このことは、DSC実験中に、溶媒/水の損失及び相変換を示す脱水/脱溶媒和及び再結晶事象のような熱事象を示すWO 2014/014835A2に開示されている半水和型B、並びに溶媒和型C及びDとは全く対照的である。型B、C及びDはすべてDSC実験中に少なくとも部分的に型Aに変換し、このことは型Aの融解に当てはまり得る約224℃のピーク温度を有する最終融解吸熱により示されることを言及する価値がある(WO 2014/014835A2の図4、6及び8を参照し、図2と比較されたい)。
【0067】
加えて、WO 2014/014835A2に示すTGA曲線によれば、型B、C及びDは加熱時その溶媒/水を容易に失う。
【0068】
よって、本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶の熱安定性は、WO 2014/014835A2の水和/溶媒和型B、C及びDと比較して優れている。
【0069】
別の態様において、本発明は、上記した実施形態のいずれかに規定されている本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶を含み、本質的にロキサデュスタットの他のソリッドステート型を含まない組成物に関する。例えば、本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶を含む組成物は、組成物の重量に基づいて多くとも20重量%、好ましくは多くとも10重量%、より好ましくは多くとも5重量%、4重量%、3重量%、2重量%又は1重量%のロキサデュスタットの他のソリッドステート型を含む。好ましくは、ロキサデュスタットの他のソリッドステート型はWO 2014/014835A2の型Aである。ロキサデュスタットの型Aは、20~30℃の範囲の温度で0.15419nmの波長を有するCu-Kα1,2線を用いて測定したとき、特に(8.5±0.2)°及び(16.2±0.2)°の2θ角に特徴的な反射を含むPXRDを有する。したがって、PXRD中に(8.5±0.2)°及び(16.2±0.2)°の2θ角に反射がないことから、組成物中にロキサデュスタット型Aの不在が確認される。
【0070】
よって、好ましい実施形態では、本発明は、20~30℃の範囲の温度で0.15419nmの波長を有するCu-Kα1,2線を用いて測定したとき、(8.5±0.2)°及び(16.2±0.2)°の2θ角に反射を含まないPXRDを有する、上記した実施形態のいずれかに規定されている本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶を含む組成物に関する。
【0071】
更なる態様において、本発明は、上記した態様のいずれか1つ及びその対応する実施形態に規定されている本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶、又はロキサデュスタットL-プロリン共結晶を含む組成物の製造方法に関し、
(a)ロキサデュスタットをL-プロリンと一緒にメタノール及び少なくとも1つの環状エーテルを含む溶媒混合物中に溶解させ、
(b)(a)で用意した溶液に少なくとも1つの脂肪族エーテルを添加し、
(c)任意に、(c)で得た混合物に本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶を播種し、
(d)任意に、(b)又は(c)で得た結晶の少なくとも一部を母液から分離し、
(e)任意に、(d)で得た単離結晶を洗浄し、
(f)任意に、(b)~(e)のいずれか1つで得た結晶を乾燥する
ことを含む。
【0072】
ロキサデュスタットは、例えばWO 2014/014835A2の実施例10に記載されている手順に従って製造され得る。ロキサデュスタットは、上記した手順のステップ(a)において結晶質及び/又は非晶質物質として適用され得る。非晶質ロキサデュスタットは、WO 2014/014835A2の実施例6に開示されている手順に従って製造され得る。使用され得る適当な結晶形態は、例えばWO 2014/014835A2の型A、B、C及びD(型の製造:WO 2014/014835A2の実施例1~4を参照されたい)、本明細書中に記載されているジオキサン溶媒和物(製造:本明細書中の実施例11を参照されたい)、又は本明細書中に記載されている酢酸溶媒和物(製造:実施例12を参照されたい)である。好ましくは、本明細書中に記載されているジオキサン溶媒和物は、本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶を製造するための出発材料として使用される。
【0073】
ロキサデュスタットを溶媒混合物中に約20~30g/Lの範囲の濃度で溶解させ、最も好ましくは(a)で用意した溶液のロキサデュスタット濃度は25g/Lである。適用するロキサデュスタット及びL-プロリンのモル比は、1.0:0.8~1.0:1.2、好ましくは1.0:0.9~1.0:1.1、更により好ましくは1.0:0.95~1.0:1.05の範囲であり、最も好ましくはモル比は1.0:1.0である。溶媒混合物を、好ましくは1:1容量比のメタノール及び少なくとも1つの環状エーテルから構成する。好ましくは、少なくとも1つの環状エーテルはTHF及び/又は1,4-ジオキサンから選択される。溶液をRT又は高温で調製し、好ましくは溶液をRTで調製する。
【0074】
ロキサデュスタットL-プロリン共結晶の結晶化を開始するために、上記手順のステップ(b)において少なくとも1つの脂肪族エーテルから選択される貧溶媒を添加する。脂肪族エーテルは、ジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル及びジエチルエーテル、又はその混合物からなる群から選択され得る。好ましくは、ジイソプロピルエーテル及び/又はtert-ブチルメチルエーテルを使用する。ステップ(a)で用意した溶媒混合物とステップ(b)で添加する貧溶媒の容量比は、1.0:0.5~1.0:1.5、好ましくは1.0:0.5~1.0:1.0の範囲である。
【0075】
任意に、結晶化を促進させ及び/又は粒子サイズ分布をコントロールするために、ロキサデュスタットL-プロリン共結晶を種晶として添加してもよい。使用する種晶の量は、適用するロキサデュスタット出発物質の重量に基づいて約1~20重量%、好ましくは約1~10重量%、最も好ましくは約1~5重量%の範囲であり得る。種晶は、上記手順のステップ(a)~(b)に従って、例えば本明細書の実施例2に開示されている手順に従って作製され得る。
【0076】
得られた懸濁液を任意に、好ましくは室温でスラリー化してもよいが、スラリー化は高温で、例えば約40~50℃の範囲の温度でも行い得る。スラリー化は、非限定的に例示されるアジテーション、攪拌、混合、振とう、振動、超音波処理、湿式ミリング等により引き起こされる水中に懸濁させた固体物質の任意の種類の動きを含む。
【0077】
スラリー化は、少なくともロキサデュスタット出発物質の大部分、好ましくはすべてを本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶に変換させるのに十分な時間実施し得る。好ましくは、スラリー化を数時間~数日間の範囲の期間実施する。スラリー化を、例えば2時間~7日間の範囲の期間実施し得る。当業者は、スラリーからサンプルを取り出し、サンプルを例えば粉末X線回折により分析することにより、本発明のロキサデュスタットのロキサデュスタットL-プロリン共結晶への変換をモニターし得る。
【0078】
本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶が得られたなら、好ましくは本質的に純粋な形態で得られたなら、結晶の少なくとも一部を任意に母液から分離し得る。好ましくは、結晶をその母液から濾過、遠心、溶媒蒸発又はデカンテーションのような慣用の方法により、より好ましくは濾過又は遠心により、最も好ましくは濾過により分離する。
【0079】
任意に、更なるステップにおいて、単離した結晶をジイソプロピルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル及びジエチルエーテル、又はその混合物からなる群から選択される少なくとも1つの脂肪族エーテルで洗浄する。好ましくは、ジイソプロピルエーテル及び/又はtert-ブチルメチルエーテルを使用する。
【0080】
次いで、得られた結晶を任意に乾燥させ得る。乾燥を約20~80℃の範囲、好ましくは約20~40℃の範囲の温度で実施し得、最も好ましくは乾燥をRTで実施する。乾燥を約1~72時間、好ましくは約2~48時間、より好ましくは約4~24時間、最も好ましくは約6~18時間の範囲実施し得る。乾燥は大気圧下及び/又は減圧下で実施し得る。好ましくは、乾燥を約100mbar以下、より好ましくは約50mbar以下、最も好ましくは約30mbar以下の圧力下で実施する。乾燥のために、例えば約25mbarの真空を適用する。
【0081】
更なる態様において、本発明は、上記した態様のいずれか1つ及びその対応する実施形態に規定されている本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶、又はロキサデュスタットL-プロリン共結晶を含む組成物の、医薬組成物の製造のための使用に関する。
【0082】
更なる態様において、本発明は、好ましくは有効及び/又は所定量の、上記した態様のいずれか1つ及びその対応する実施形態に規定されている本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶、又はロキサデュスタットL-プロリン共結晶を含む組成物、及び少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。任意に、医薬組成物は更に、好ましくは有効及び/又は所定量の少なくとも1つの光安定剤を含む。
【0083】
好ましくは、本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶の所定及び/又は有効量は、ロキサデュスタットとして計算して、20~200mgの範囲である。例えば、本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶の所定及び/又は有効量は、ロキサデュスタットとして計算して、20mg、50mg、100mg、150mg又は200mg、好ましくは20mg、50mg又は100mg、最も好ましくは20又は50mgである。
【0084】
本発明の医薬組成物中に含まれる少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤は、好ましくは増量剤、希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤及びその組合せからなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つの薬学的に許容される賦形剤は、ラクトース一水和物、結晶セルロース、ポビドン、クロスカルメロースナトリウム、ステアリン酸マグネシウム及びその組合せからなる群から選択される。更により好ましくは、これらの薬学的に許容される賦形剤のすべてが本発明の医薬組成物に含まれる。
【0085】
別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの光安定剤は、二酸化チタン及び少なくとも1つの追加染料を含む。
【0086】
1つの実施形態では、少なくとも1つの追加染料は、100~800nm、好ましくは150~700nm、より好ましくは200~550nm、最も好ましくは360~440nmの波長範囲の光を遮断又は減少させる。更なる実施形態では、少なくとも1つの追加染料は、黒色染料、青色染料、緑色染料、赤色染料、オレンジ色染料、パープル色染料、バイオレット色染料、黄色染料及びその組合せ、好ましくは赤色染料、オレンジ色染料、黄色染料及びその組合せからなる群から選択される。なお更なる実施形態では、少なくとも1つの追加染料は、カラメル、黒色酸化鉄、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、アルラレッドAC、アルラレッドACアルミニウムレーキ、カルミン、エリスロシン、β-カロテン又はカロテンの混合物、クルクミン、サンセットイエローFCF、サンセットイエローFCFアルミニウムレーキ、タートラジン、クロロフィル、及びクロロフィリン又はそのCu錯体、ファストグリーンFCF、ブリリアントブルーFCF、インジゴチン、インジゴチンアルミニウムレーキ及びその組合せからなる群から選択される。好ましくは、少なくとも1つの追加染料は、アルラレッドAC、アルラレッドACアルミニウムレーキ、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、サンセットイエローFCF、サンセットイエローFCFアルミニウムレーキ、インジゴチン、インジゴチンアルミニウムレーキ及びその組合せからなる群から選択される
【0087】
特定の実施形態では、少なくとも1つの光安定剤は、二酸化チタン及びアルラレッドACアルミニウムレーキからなる。別の実施形態では、少なくとも1つの光安定剤は、二酸化チタン及び赤色酸化鉄からなる。別の実施形態では、少なくとも1つの光安定剤は、二酸化チタン、アルラレッドAC及び黄色酸化鉄からなる。別の実施形態では、少なくとも1つの光安定剤は、二酸化チタン、赤色酸化鉄、アルラレッドAC及び黄色酸化鉄からなる。別の実施形態では、少なくとも1つの光安定剤は、二酸化チタン、赤色酸化鉄及び黄色酸化鉄からなる。別の実施形態では、少なくとも1つの光安定剤は、二酸化チタン及び黄色酸化鉄からなる。
【0088】
好ましくは、上記した本発明の医薬組成物は経口固体剤形である。
【0089】
特定の実施形態では、上記した本発明の医薬組成物は、錠剤、好ましくは錠剤コア及びコーティングからなるフィルムコーティング錠である。
【0090】
錠剤又は錠剤コアは、ロキサデュスタットL-プロリン共結晶を少なくとも1つの賦形剤、例えば増量剤、希釈剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、流動促進剤又はその組合せ、及び任意に少なくとも1つの光安定剤と混合し、その後混合物を圧縮することにより作製され得る。任意に、圧縮前に、乾式造粒ステップを実施する。好ましくは、錠剤コアにその後フィルムコートを被せ、コーティングの非限定例には、ポリビニルアルコールベース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムポリエチレングリコール4000及び酢酸フタル酸セルロースコーティングが含まれる。前記錠剤、錠剤コア及びフィルムコーティング錠の製造方法は製薬業界で周知である。
【0091】
フィルムコーテイング錠の少なくとも1つの光安定剤は、錠剤コア及び/又はコーティング中に存在し得る。
【0092】
別の特定の実施形態では、上記した本発明の医薬組成物はカプセル剤である。更なる実施形態では、カプセルシェルは、ゼラチンシェル又はヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)シェルである。
【0093】
カプセル剤の少なくとも1つの光安定剤は、カプセルフィル及び/又はカプセルシェル中に存在し得る。
【0094】
更なる態様において、本発明は、医薬として使用するための、上記した態様のいずれか1つ及びその対応する実施形態に規定されているロキサデュスタットL-プロリン共結晶、ロキサデュスタットL-プロリン共結晶を含む組成物、又はロキサデュスタットL-プロリン共結晶を含む医薬組成物に関する。
【0095】
更に別の態様において、本発明は、貧血の治療及び/又は予防に使用するための、上記した態様のいずれか1つ及びその対応する実施形態に規定されているロキサデュスタットL-プロリン共結晶、ロキサデュスタットL-プロリン共結晶を含む組成物、又はロキサデュスタットL-プロリン共結晶を含む医薬組成物に関する。例えば、貧血は、鉄欠乏性貧血、鎌状赤血球症、体質性再生不良性貧血、不特定再生不良性貧血、非自己免疫性溶血性貧血、妊娠、出産又は産じゅくに合併する貧血、悪性貧血、栄養性貧血、自己免疫性溶血性貧血及び酵素欠損症に起因する貧血、鬱血性心不全(CHF)、慢性腎疾患(CKD)、骨髄異形性症候群、妊娠、クローン病、限局性腸炎、炎症性腸疾患(IBS)、潰瘍性大腸炎、潰瘍性直腸炎、特発性大腸炎、心筋梗塞(MI)、心臓発作、全身性エリテマトーデス(SLE)、無顆粒球症、癌、末期腎疾患(ESRD)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、関節リウマチ(RA)、急性腎不全(ARF)、肺炎及び肺動脈高血圧症からなる群から選択される。
【0096】
特に好ましい実施形態では、本発明は、末期腎疾患(ESRD)及び/又は慢性腎疾患(CKD)の患者における貧血の治療及び/又は予防に使用するための、上記した態様のいずれか1つ及びその対応する実施形態に規定されているロキサデュスタットL-プロリン共結晶、ロキサデュスタットL-プロリン共結晶を含む組成物、又はロキサデュスタットL-プロリン共結晶を含む医薬組成物に関する。更により好ましくは、患者には、透析依存性及び非透析依存性患者が含まれる。
【0097】
別の好ましい実施形態では、本発明は、有効量の、上記した態様及びその対応する実施形態に規定されているロキサデュスタットL-プロリン共結晶を治療を要する患者に対して投与することを含む貧血の治療及び/又は予防方法に関する。
【0098】
更に別の好ましい実施形態では、本発明は、有効量の、上記した態様及びその対応する実施形態に規定されているロキサデュスタットL-プロリン共結晶を治療を要する患者に対して投与することを含む末期腎疾患(ESRD)及び/又は慢性腎疾患(CKD)の患者における貧血の治療及び/又は予防方法に関する。
【0099】
なお別の好ましい実施形態では、本発明は、有効量の、上記した態様及びその対応する実施形態に規定されているロキサデュスタットL-プロリン共結晶を治療を要する患者に対して投与することを含む末期腎疾患(ESRD)及び/又は慢性腎疾患(CKD)の患者における貧血の治療及び/又は予防方法に関し、前記患者には、透析依存性及び非透析依存性患者が含まれる。
【0100】
更に別の態様において、本発明は、上記した態様及のいずれか1つ及びその対応する実施形態に規定されている本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶を含む医薬組成物、好ましくは本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶が有効量及び/又は所定量で存在している医薬組成物を含む容器に関する。好ましくは、容器に収容されているロキサデュスタットL-プロリン共結晶を含む医薬組成物は錠剤又はカプセル剤である。
【0101】
容器は、大量輸送用包装、例えばプラスチックライナー付きファイバードラム、バルクボックス、又は他の輸送容器であり得る。しかしながら、好ましくは、容器は患者に対して意図される医薬組成物を包装するために有用な包装、例えばブリスターパッケージ、ガラス瓶又はプラスチックボトルである。包装が、輸送及び貯蔵中更なる光保護を与えるために100~550nm、好ましくは360~440nmの波長範囲の光を遮断し、吸収し、及び/又は反射させることができる包装材料を含むことが好ましい。例えば、包装材料は、アルミニウムホイル(Alu/Aluブリスター)から構成され得、又は450nmの波長までのUV露光を遮断し、吸収し、及び/又は反射させるように選択されるアルミニウムホイル、及び/又はポリ塩化ビニル(PVC)又はポリ塩化ビニリデン(PVDC)を含むブリスターであり得、或いは別の例として、複合アルミニウム/ポリマーホイルから作製され得る。
【実施例
【0102】
次の非限定的実施例を開示のために例示し、本発明の範囲を限定すると決して解釈すべきでない。
【0103】
<実施例1:本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶の製造>
ロキサデュスタット(2.0g;例えば、WO 2014/014835A2の実施例10に開示されている方法に従って製造)及びL-プロリン(690mg;Sigma Aldrichの市販サンプル)をメタノール(40mL)及びTHF(40mL)の混合物中に室温で溶解させた。結晶化を開始するために、溶液にジイソプロピルエーテル(40mL)及び種晶(20mg;本明細書中の実施例2に従って製造したロキサデュスタットL-プロリン共結晶)を順次添加した。得られた懸濁液を2時間攪拌した後、得られた結晶を濾過により集め、真空(25mbar)下、室温で乾燥して、1.8g(収率:理論の67%)の本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶を得た。
【0104】
<実施例2:ロキサデュスタットL-プロリン共結晶種晶の製造>
ロキサデュスタット(100mg;例えば、WO 2014/014835A2の実施例10に開示されている方法に従って製造)及びL-プロリン(34.5mg;Sigma Aldrichの市販サンプル)をメタノール(2mL)及び1,4-ジオキサン(2mL)の混合物中に室温で溶解させた。ジイソプロピルエーテル(5mL)を添加し、結晶化を開始するために溶液を約2~8℃の冷蔵庫に16時間放置した。得られた結晶を濾過により集め、真空(25mbar)下、室温で乾燥して、本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶を得た。
【0105】
<実施例3:粉末X線回折>
本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶を、透過幾何的にθ/θ連結ゴニオメーター、集光ミラーを有するCu-Kα1,2線(波長0.15419nm)、及びソリッドステートPIXcel検出器を備えたPANalytical X’Pert PRO回折計で実施した粉末X線回折により調べた。回折図は、2°~40°2θの角度範囲において40s/ステップ(255チャネル)で0.013°2θのステップサイズを周囲条件下で適用して、45kVの管電圧及び40mAの管電流で記録した。2θ値の典型的な精度は±0.2°2θ、好ましくは±0.1°2θの範囲である。よって、本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶の3.6°2θでの回折ピークは、多くのX線回折計で標準条件下で3.4~3.8°2θの範囲、好ましくは3.5~3.7°2θの範囲に現れ得る。
【0106】
本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶の代表的回折図を図1に示し、2~30°2θの対応する反射リスト(ピークリスト)を下表1に記載する。
【0107】
【表1】
【0108】
<実施例4:フーリエ変換赤外分光法>
本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶をFTIR分光法により調べた。FTIRスペクトルを、4cm-1解像能のBruker Tensor 27 FTIR分光計を有するMKII Golden Gate(TM) Single Reflection Diamond ATRセルを用いてRTで記録した(得た)。スペクトルを記録するために、サンプルのスパチュラチップを粉末形態でダイヤモンド表面に適用した。次いで、サンプルをサファイアアンビルを用いてダイヤモンド上にプレスし、スペクトルを記録した。クリーンなダイヤモンドのスペクトルをバックグラウンドスペクトルとして使用した。波数値の典型的な精度は約±2cm-1の範囲である。よって、本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶の3379cm-1での赤外ピークは、多くの赤外分光計で標準条件下で3377~3381cm-1の間に現れ得る。
【0109】
ロキサデュスタットL-プロリン共結晶の代表的FTIRスペクトルを図2に示し、対応するピークリストを下表2に記載する。
【0110】
【表2】
【0111】
<実施例5:ラマン分光法>
本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶をラマン分光法により調べた。ラマンスペクトルは、室温で785nmレーザーを用いてBRUKER Senterraラマン分光マイクロスコープで記録した。サンプルに20×長作動距離対物レンズで焦点を合わせた。次いで、スペクトルを9~12cm-1解像度で集めた。波数値の典型的な精度は±1~±3cm-1の範囲である。よって、本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶の1629cm-1でのピークは、多くのラマン分光計で標準条件下で1626~1632cm-1の間、好ましくは1628~1630cm-1の間に現れ得る。
【0112】
本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶の代表的ラマンスペクトルを図3に示し、対応するピークリストを下表3に記載する。
【0113】
【表3】
【0114】
<実施例6:単結晶X線回折>
本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶の結晶構造についての強度データをOxford Diffraction Gemini-R Ultra回折計においてMo(λ=0.71073オングストローム)線を用いて173Kで集めた。構造をSHELXTにおいて直接方法手順を用いて解析し、SHELXL-2014を用いてFでの完全行列最小二乗法により精密化した。すべてのH原子を異なるマップに位置決めした。O又はN原子に結合したH原子を拘束距離
【0115】
【化4】
で精密化し、そのUisoパラメーターを自由に精密化した。C原子に結合したH原子を、親C原子の1.2Ueq又は1.5UeqでUisoセットを有する騎乗モデルを用いて精密化した。
【0116】
<実施例7:示差走査熱量測定(DSC)>
本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶を、Mettler Polymer DSC R計器で実施したDSCにより調べた。サンプル(2.72mg)を、穴のあいたアルミニウム蓋の付いた40μlアルミニウムパンにおいて25から250℃に10K/分の速度で加熱した。窒素(パージ速度:50mL/分)をパージガスとして使用した。
【0117】
DSC曲線は、サンプルの融解に起因する約206℃の開始温度及び約207℃のピーク温度を有する単一吸熱ピークを示す。共結晶の無水及び非溶媒和性、並びにその優れた熱安定性は、サンプルが融解するまで相変化も脱溶媒和事象も検出されない事実により立証される。
【0118】
<実施例8:熱重量分析(TGA)>
本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶を、Mettler TGA/DSC 1計器で実施したTGAにより調べた。サンプル(16.28mg)をアルミニウム蓋で閉じた100μlアルミニウムパンにおいて加熱した。測定の開始時に蓋に自動的に穴を開けた。サンプルを25から250℃に10K/分の速度で加熱した。窒素(パージ速度:50mL/分)をパージガスとして使用した。
【0119】
TGA曲線は、サンプルが融解するまで大きな質量損失を示さない。例えば、約180℃の温度まで約0.1重量%、約190℃の温度まで約0.2重量%、及び約200℃の温度まで約0.3重量%の質量損失のみが観察された。これは無水及び非溶媒和共結晶の存在を証明する。
【0120】
<実施例9:本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶の物理的安定性>
実施例9.1:温度及び湿度に対する安定性
本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶を40℃の温度及び75%の相対湿度を有する雰囲気に7日間曝した。粉末X線回折によれば、この期間中に相変化は生じなかった(本明細書中の図8を参照されたい)。
【0121】
実施例9.2:圧力に対する安定性
本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶をIRプレスを用いて約100kNの圧力でペレットにプレスした。粉末を得るためにペレットを再び粉砕し、その後PXRDにより調べた。粉末X線回折によれば、相変化は生じなかった(本明細書中の図9を参照されたい)。
【0122】
実施例9.3:機械的ストレスに対する安定性
本発明のロキサデュスタットL-プロリン共結晶をRetschミキサミルMM 301を用いて乾式粉砕した。いずれもステンレススチール製の1つのボール(直径5mm)付き1.5mL粉砕ジャーに約70mgのサンプルを供給し、25振動数/秒の振動数で20分間粉砕した。粉末X線回折によれば、相変化は生じなかった(本明細書中の図10を参照されたい)。
【0123】
<実施例10:リン酸緩衝液pH6中、25℃での溶解速度>
ロキサデュスタットの型A及び本発明のL-プロリン共結晶について粉末溶解実験をリン酸緩衝液pH6中、25℃で実施した。それぞれの濃度をHPLCにより254nmの波長で調べた。本明細書中の表4及び図7から分かるように、ロキサデュスタットL-プロリン共結晶は、型Aと比較して、1分後水性溶解度の約20倍の増加を示した。L-プロリンとロキサデュスタット間で形成された錯体は、たった約5分後に水溶液中でばらばらになって、その純粋な成分を生じた。
【0124】
【表4】
【0125】
<例11:ロキサデュスタットジオキサン溶媒和物の製造>
ロキサデュスタット(1.0g;例えば、WO 2014/014835A2の実施例10に開示されている方法に従って製造)を加熱しながら1,4-ジオキサン(7mL)中に溶解させた。得られた透明溶液をRTまで冷却し、結晶化を開始するために約2~8℃の冷蔵庫中に68時間保存した。得られた結晶を濾過により集め、フィルターを用いて吸引乾燥して、0.75gのロキサデュスタットジオキサン溶媒和物を得た。
【0126】
ロキサデュスタットジオキサン溶媒和物を、本明細書中の実施例3に概説した実験条件を適用して粉末X線回折により調べた。ロキサデュスタットジオキサン溶媒和物の代表的回折図を図11に示し、2~30°2θの対応する反射リスト(ピークリスト)を下表5に記載する。
【0127】
【表5】
【0128】
<例12:ロキサデュスタット酢酸溶媒和物の製造>
ロキサデュスタット(1.0g;例えば、WO 2014/014835A2の実施例10に開示されている方法に従って製造)を加熱しながら氷酢酸(20mL)中に溶解させた。結晶化を開始するために、得られた透明溶液を約2~8℃の冷蔵庫中に68時間保存した。懸濁液をRTに温度上昇させた後、結晶を濾過により集め、真空(25mbar)下、室温で乾燥して、0.8gの酢酸溶媒和物を得た。
【0129】
ロキサデュスタット酢酸溶媒和物を、本明細書中の実施例3に概説した実験条件に適用して粉末X線回折により調べた。ロキサデュスタット酢酸溶媒和物の代表的回折図を図12に示し、2~30°2θの対応する反射リスト(ピークリスト)を下表6に記載する。
【0130】
【表6】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12