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特許7144521ナノ水硬性石灰を含む注入材料(グラウト)の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】ナノ水硬性石灰を含む注入材料(グラウト)の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 2/06 20060101AFI20220921BHJP
   B28C 7/04 20060101ALI20220921BHJP
   C04B 24/22 20060101ALI20220921BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20220921BHJP
   C04B 28/12 20060101ALI20220921BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20220921BHJP
   C04B 111/72 20060101ALN20220921BHJP
【FI】
C04B2/06
B28C7/04
C04B24/22 Z
C04B24/26 E
C04B28/12
E04G23/02 A
C04B111:72
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020536172
(86)(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-25
(86)【国際出願番号】 TR2018050907
(87)【国際公開番号】W WO2019132842
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】2017/22327
(32)【優先日】2017-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(31)【優先権主張番号】2018/18529
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(73)【特許権者】
【識別番号】520224133
【氏名又は名称】イルディズ テクニク ユニヴァーシテシ
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ユゼル,ナビ
(72)【発明者】
【氏名】ハザルヨリュク,アフィフェ ビアンズ
(72)【発明者】
【氏名】ウグルヨル,メフメト フェヴズィ
(72)【発明者】
【氏名】オクタイ,ディデム
(72)【発明者】
【氏名】グネル,メフメト ブグラ
【審査官】小川 武
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-026572(JP,A)
【文献】特開昭59-223259(JP,A)
【文献】特表2003-519614(JP,A)
【文献】特開昭60-155555(JP,A)
【文献】米国特許第04479503(US,A)
【文献】EWA M P et al.,Nano-Lime as a Binder for Injection Grouts and Repair Mortars,CONSTRUCTION AND BUILDING MATERIALS,2010年09月24日,p.1159-1167
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00-32/02
C04B 40/00-40/06
C04B 103/00-111/94
B28C 1/00-9/04
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ水硬性石灰を含む注入材料(グラウト)の製造方法であって、前記製造方法は、以下のステップ:
a.原料として、70重量%以上のCaCOを含む泥灰土(粘土質石灰石)を選択するステップと、
b.前記原料として使用される前記泥灰土の粒経を400μm以下に縮小する粉砕工程を実行するステップと、
c.前記原料として選択された前記泥灰土(粘土質石灰石)を焼成するステップであって、温度は1000~1200℃であるステップと、
d.前記焼成のプロセス後、前記原料として選択された前記泥灰土(粘土質石灰石)を再粉砕するステップと、
e.前記ステップd)の粉砕のプロセス後、焼成泥灰土のd90粒を486nmまで縮小するステップと、
f.粒径を縮小した材料に乾式混合処理を施すステップと、
g.プロセスステップf)で得られた乾燥粉末材料に水を加え、機械的混合を水-乾燥粉末材料に800~1000rpmので3~6分間行うステップと、
h.プロセスステップg)の結果として得られた前記材料に超流動化化学添加剤を加えるステップと、
i.超音波ホモジナイザー及び機械的混合を使用して、3~6分間前記材料を混合するステップと、を含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
ステップa)において、少なくとも70重量%のCaCO3を含む前記泥灰土(粘土質石灰石)が、CaCOに加えて、SiO、Al、Fe及びMgOの化合物も含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップg)において、前記水/乾燥粉末の割合が重量を基準にして1.6~1.9で変化する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ステップh)において、前記材料に添加される前記超流動化化学添加剤が、ナフタレンまたはポリカルボキシレートベースの超流動化剤から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来の天然水硬性石灰と比較した場合に、より良好な注入特性を提供するナノ水硬性石灰を含む注入材料(グラウト)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
注入法(グラウチング)は、歴史的建造物の修復で頻繁に使用される方法のうちの1つである。注入が適用されている間、使用される注入材料(グラウト)は、歴史的建造物内に存在する固有の材料に適合し、かつ修復される亀裂に浸透できるものとする。注入材料の注入性能を高めるためには、組成物中に存在する材料の粒子寸法を考慮に入れる必要がある。ナノサイズの石灰を使用することにより製造された注入材料により、はるかに薄い亀裂の修復が容易に実現される。現在の技術によって、歴史的建造物を補強するために必要とされる浸透、体積固定及び抵抗値を提供することは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明により、強度が高く、注入に好適である石灰を製造することを目的とする。本技術の既知の状態では、ナノサイズの石灰の製造及び天然の水硬性石灰の製造に関連する別の研究が存在する。主題特許出願では、単一の原料を使用することにより、天然の水硬性石灰をナノサイズで開発している。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の構造的及び特徴的特性及びすべての利点は、以下に記載の詳細な説明により、より明確な方法で理解され、評価は、以下に記載の詳細な説明を考慮することによって行われるものとする。
【発明を実施するための形態】
【0005】
この詳細な説明では、ナノ水硬性石灰を含む注入材料(グラウト)の主題の製造方法は、任意の限定的な効果を形成することなく、主題をより理解しやすくするためにのみに実施例を参照して説明する。
【0006】
主題の方法により、ナノサイズの水硬性石灰の製造が実現される。この方法の結果として、注入に好適であり、強度のある石灰が形成される。特に、原料として単一の材料を使用することは、この方法の最も重要なステップのうちの1つである。
本発明は、ナノ水硬性石灰を含む注入材料(グラウト)の製造方法に関し、この製造方法は、以下のステップ:
a.原料として、70重量%以上のCaCOを含む泥灰土(粘土質石灰石)を選択するステップと、
b.前記原料として使用される前記泥灰土の粒経を400μm以下に縮小する粉砕工程を実行するステップと、
c.原料として選択された泥灰土(粘土質石灰石)を焼成するステップであって、温度は1000~1200℃であるステップと、
d.焼成プロセス後、原料として選択された泥灰土(粘土質石灰石)を再粉砕するステップと、
e.ステップd)の粉砕プロセス後、焼成泥灰土のd90粒を486nmまで縮小するステップと、
f.粒径を縮小した材料に乾式混合処理を施すステップと、
g.プロセスステップf)で得られた乾燥粉末材料に水を加え、機械的混合を水-乾燥粉末材料に800~1000rpmので3~6分間行うステップと、
h.プロセスステップg)の結果として得られた材料に超流動化化学添加剤を加えるステップと、
i.超音波ホモジナイザー及び機械的混合を使用して、3~6分間材料を混合するステップと、を含むことを特徴とする。
【0007】
ステップa)では、少なくとも70%のCaCO3を含む泥灰土(粘土質石灰石)は、CaCO3に加えて、SiO2、Al2O3、Fe2O3及びMgOの化合物も含む。
【0008】
ステップb)では、製品全体が400μm未満の粒径を有するように粉砕される。
【0009】
ステップg)では、水/乾燥粉末の割合は、重量を基準として1.6~1.9で変化する。このステップでは、水の添加により、流動性、体積固定性及び浸透特性が材料にもたらされる。
【0010】
ステップh)では、材料に添加される超流動化化学添加剤は、ナフタレンまたはポリカルボキシレートベースの超流動化剤から選択される。
【0011】
本発明では、ナノ水硬性石灰を含む注入材料(グラウト)の製造方法の最も重要なステップは、原料の選択である。本方法のステップのうちの1つである粉砕プロセスでは、使用する材料を縮小してナノサイズにする。別の重要なステップは焼成である。焼成は、石灰製造の主要プロセスである。所望のサイズに縮小された原材料は、既知の方法を使用することにより好適な温度で焼成され、天然の水硬性石灰の製造が実現される。
【0012】
この方法の最も重要なステップのうちの1つである注入材料(グラウト)の調製ステップの間、選択された量の水、化学添加剤の割合及び適用された混合手順によって、注入材料によってもたらされるべきである流動性、体積固定性及び浸透特性の制限条件が満たされる。
【0013】
本発明は、ナノ水硬性石灰を含む注入材料(グラウト)の製造方法であり、本技術により形成される欠点を排除するために開発されている。
【0014】
別の観点から、本発明は、主題の製造方法によって得られたナノ水硬性石灰を含む注入材料(グラウト)に関する。
【0015】
本主題の方法により製造された注入材料(グラウト)は、既知の方法により得られた材料と比較したときに、高い水硬性効果を有し、より耐性がある。
【0016】
したがって、本発明の別の項目は、ナノ水硬性石灰を含む注入材料(グラウト)であり、以下のステップによって形成される方法によって得られることを特徴とする:
a.原料として、70重量%以上のCaCOを含む泥灰土(粘土質石灰石)を選択するステップと、
b.前記原料として使用される前記泥灰土の粒経を400μm以下に縮小する粉砕工程を実行するステップと、
c.原料として選択された泥灰土(粘土質石灰石)を焼成するステップであって、温度は1000~1200℃であるステップと、
d.焼成プロセス後、原料として選択された泥灰土(粘土質石灰石)を再粉砕するステップと、
e.ステップd)の粉砕プロセス後、焼成泥灰土のd90粒を486nmまで縮小するステップと、
f.粒径を縮小した材料に乾式混合処理を施すステップと、
g.プロセスステップf)で得られた乾燥粉末材料に水を加え、機械的混合を水-乾燥粉末材料に800~1000rpmので3~6分間行うステップと、
h.プロセスステップg)の結果として得られた材料に超流動化化学添加剤を加えるステップと、
i.超音波ホモジナイザー及び機械的混合を使用して、3~6分間材料を混合するステップと、を含むことを特徴とする。
【0017】
当業者が、本発明において提供される新規性を同様の方法を用いることによって提供できること、及び/または当業者がこれらの方法を関連技術で使用される同様の目的で他の領域に適用できることは明らかである。したがって、こうした方法は新規性に欠け、特に既知の最新技術を超える基準を欠いていることも明らかである。