IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 帝人フロンティア株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】ゴム補強用繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/564 20060101AFI20220921BHJP
   D06M 15/693 20060101ALI20220921BHJP
   D06M 13/395 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
D06M15/564
D06M15/693
D06M13/395
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020561437
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2019049291
(87)【国際公開番号】W WO2020129939
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2018238026
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501270287
【氏名又は名称】帝人フロンティア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 芳史
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-089929(JP,A)
【文献】特開2002-071057(JP,A)
【文献】特開2014-118470(JP,A)
【文献】特開平10-273880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマー、ブロックドポリイソシアネートおよびゴムラテックスを含む易接着化処理液を繊維コードに付着処理することでゴム補強用繊維を得るゴム補強用繊維の製造方法であって、易接着化処理液において熱可塑性エラストマーは水分散液として配合され、該水分散液における熱可塑性エラストマー粒子の平均粒子径(レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置により測定した平均粒子径)が0.01~1.0μmであり、該水分散液における熱可塑性エラストマーの平均粒子径に対して、該水分散液におけるゴムラテックスの平均粒子径が0.5~1.5倍であることを特徴とする、ゴム補強用繊維の製造方法。
【請求項2】
水分散液のpHが6~8かつ粘度が100~800Pa・s(20℃)である、請求項1に記載のゴム補強用繊維の製造方法。
【請求項3】
熱可塑性エラストマーがポリウレタンとポリブタジエンとの共重合体である、請求項1または2に記載のゴム補強用繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム補強用繊維の製造方法に関し、詳しくは、レゾルシン、ホルマリンおよびレゾルシンとホルマリンとの縮合化合物のいずれも製造工程で用いない、ゴム補強用繊維の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成繊維や無機繊維は、高強度、高ヤング率であり、優れた物理的特性を有している。このため、無機繊維はゴム製のタイヤやホース、ベルトの補強の用途に広く用いられている。そもそも合成繊維や無機繊維はその表面が比較的不活性であることが多いため、合成繊維や無機繊維をそのまま用いたのでは、マトリクスとして用いられるゴムや樹脂等との接着性が不十分であり、合成繊維や無機繊維が本来持つ優れた物理的特性を十分に発揮することができない。
【0003】
このため、繊維の表面を、レゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)で処理する所謂一浴接着処理方法や、まずポリエポキシド化合物で処理し、つぎにレゾルシン・ホルマリン・ゴムラテックス(RFL)で処理する所謂二浴接着処理方法が提案され実用化されている。しかし、この方法に用いられるレゾルシンやホルマリンは、近年、環境および人体への悪い影響が懸念され始めている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、レゾルシン、ホルマリンおよびレゾルシンとホルマリンとの縮合化合物のいずれも製造工程で用いないにもかかわらず、接着力に優れるゴム補強用繊維を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、熱可塑性エラストマー、ブロックドポリイソシアネートおよびゴムラテックスを含む易接着化処理液を繊維コードに付着処理することでゴム補強用繊維を得るゴム補強用繊維の製造方法であって、易接着化処理液において熱可塑性エラストマーは水分散液として配合され、該水分散液における熱可塑性エラストマー粒子の平均粒子径が0.01~1.0μmであることを特徴とする、ゴム補強用繊維の製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、レゾルシン、ホルマリンおよびレゾルシンとホルマリンとの縮合化合物のいずれも製造工程で用いないにもかかわらず、接着力に優れるゴム補強用繊維を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
〔熱可塑性エラストマー〕
熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとソフトセグメントからなる熱可塑性樹脂である。熱可塑性エラストマーとして、例えばスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、塩ビ系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマーを挙げることができる。なかでもウレタン系エラストマーが好ましく、ポリウレタンをハードセグメントとし、脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエーテルまたはポリオレフィンをソフトセグメントしてなるものがさらに好ましい。
【0008】
熱可塑性エラストマーは、ゴムや繊維上の反応性官能基との良好な反応性を得る観点から、ハードセグメントに、フェノール基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基のいずれかの基を置換基として有することが好ましい。
【0009】
ハードセグメントにポリウレタンを用いる場合、ポリウレタンは、フェノール性水酸基、ヒドロキシル基、アミノ基およびカルボキシル基のいずれかの基を置換基として有することが好ましい。この場合、これらの置換基がブロックドポリイソシアネートのイソシアネート基に反応するため、より高い接着性を得ることができる。
【0010】
ソフトセグメントとして、ポリオレフィンが好ましく、なかでもブタジエン、イソプレンが好ましく、ブタジエンがさらに好ましい。このソフトセグメントであると、ゴム成分と共加硫が可能であり、強固な接着力を得ることができる。
【0011】
本発明において熱可塑性エラストマーは、ポリウレタンとポリブタジエンとの共重合体であることが特に好ましい。
【0012】
熱可塑性エラストマーは水分散液として易接着化処理液に配合される。
【0013】
この水分散液における熱可塑性エラストマーの粒子の平均粒子径は0.01~1.0μm、好ましくは0.02~0.8μmである。0.01μm未満であると被膜の凝集力が低下し、1.0μmを超えると水分散液が不安定になる。
【0014】
易接着化処理液に配合される熱可塑性エラストマー水分散液のpHは、好ましくは6~8である。pHが6未満であると水分散液が不安定になり好ましくなく、8を超えても水分散液が不安定になり好ましくない。
【0015】
易接着化処理液に配合される熱可塑性エラストマー水分散液の粘度は、好ましくは100~800MPa・s(20℃)、さらに好ましくは200~750MPa・s(20℃)である。100MPa・s(20℃)未満であると繊維への付着量が低下して好ましくなく、800MPa・s(20℃)を超えると分散液の安定性が悪くなり好ましくない。
【0016】
〔ブロックドポリイソシアネート〕
ブロックドポリイソシアネートとしては、ポリイソシアネート化合物とブロック化剤との付加反応生成物を用いる。これは、加熱によりブロック成分が遊離し、活性なポリイソシアネート化合物を生ぜしめるものである。
【0017】
ポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリス(ヘキサメチレンジイソシアネート)、トリス(ヘキサメチレンジイソシアネート)のイソシアネート基を用いて鎖状に結合させた重縮合物、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート等のポリイソシアネートを挙げることができる。
【0018】
ブロック化剤としては、活性水素原子を1個以上有するブロック剤、例えばフェノール、チオフェノール、クレゾール、レゾルシノール等のフェノール類、ジフェニルアミン、キシリジン等の芳香族第2級アミン類、ピラゾール、ジメチルピラゾールなどの環状アミン類、フタル酸イミド類、カプロラクタム、バレロラクタム等のラクタム類、アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム類および酸性亜硫酸ソーダを挙げることができる。
【0019】
ブロックドポリイソシアネートは、ブロックされたイソシアネート成分を1分子中に2以上有することが好ましい。
【0020】
ブロックドポリイソシアネートは、水分散液として、易接着化処理液に配合される。
【0021】
〔ゴムラテックス〕
ゴムラテックスとしては、例えば、天然ゴムラテックス、スチレン・ブタジエン・コポリマーラテックス、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックス(以下「Vpラテックス」と称することがある)、ニトリルゴムラテックス、クロロブレンゴムラテックス、エチレン・プロピレン・ジエンモノマーラテックスを挙げることができる。これらは単独で用いてもよく併用してもよい。ゴムとの接着性をさらに向上するために、官能基で変性したゴムラテックスを用いてもよい。さらにはゴムラテックスの耐熱性を向上するため、水素原子を付加したゴムラテックスを用いてもよい。
【0022】
ゴムラテックスは、水分散液として、易接着化処理液に配合される。
【0023】
この水分散液におけるゴムラテックスの粒子の平均粒子径は、好ましくは0.01~1.0μm、さらに好ましくは0.02~0.8μmである。本発明を実施するに際し、ゴムラテックス粒子の平均粒子径は小さい方がよいが、平均粒子径を小さくすることは技術的に困難であり、かつ、製造コストが高くなるため、実用的には、0.01μm以上が好ましい。他方、1.0μmを超えるとゴムラテックス成分が易接着化処理液中で凝集して易接着化処理液が不均一になり、また、繊維コード表面での易接着化処理液による被膜の均一性が損なわれ好ましくない。
【0024】
本発明においては、易接着化処理液に配合されるゴムラテックスの水分散液におけるゴムラテックスの粒子の平均粒子径と、易接着化処理液に配合される熱可塑性エラストマーの水分散液における熱可塑性エラストマーの粒子の平均粒子径が等しいことが好ましい。ここでいう「平均粒子径が等しい」とは、水分散液における熱可塑性エラストマーの平均粒子径に対して、水分散液におけるゴムラテックスの平均粒子径が、好ましくは0.5~1.5倍、さらに好ましくは0.5~1.4倍、特に好ましくは0.6~1.3倍であることを意味する。平均粒子径が等しいことで、高い耐熱接着力または高温時接着力を得ることができる。
【0025】
〔易接着化処理液〕
易接着化処理液は、上記の熱可塑性エラストマー、ブロックドポリイソシアネートおよびゴムラテックスを固形分として含む水分散液である。この易接着化処理液における上記の熱可塑性エラストマー、ブロックドポリイソシアネートおよびゴムラテックスの総固形分濃度は、好ましくは1~35重量%、さらに好ましくは2~30重量%、特に好ましくは5~25重量%である。1重量%未満であると付着処理での付着量の低下を招き、接着性が低下して好ましくない。他方、35重量%を超えると付着処理において繊維コードに付着する固形分が多くなりすぎ、繊維が硬くなり耐疲労性が低下する傾向にあり好ましくない。
【0026】
本発明で用いる易接着化処理液は、レゾルシン、ホルマリンおよびレゾルシンとホルマリンとの縮合化合物のいずれも含ない。
【0027】
〔繊維コード〕
本発明において繊維コードは、合成繊維または無機繊維を加撚して得られ、好ましくは合成繊維を加撚して得られる。例えば、合成繊維または無機繊維の糸条を所望の本数引き揃え、これに下撚りをかけ、次いで下撚りのかかった繊維を所望の本数合わせ、下撚りとは逆方向の上撚りを与えることで繊維コードを得ることができる。撚り数は任意であるが、下撚りは上撚りよりも多い撚り数をかけるのが一般的である。
【0028】
合成繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、芳香族ポリアミド繊維、レーヨン繊維、ビニロン繊維を例示することができ、特にポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維が好ましい。
【0029】
ポリエステル繊維としては、テレフタル酸またはナフタレンジカルボン酸を主たる酸成分とし、エチレングリコール、1,3-プロパンジオールまたはテトラメチレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルからなる繊維であることが好ましい。
【0030】
芳香族ポリアミド繊維としては、ポリパラアミノベンズアミド、ポリパラフェニレンテレフタラミド、ポリパラアミノベンヒドラジドテレフタルアミド、ポリテレフタル酸ヒドラジド、ポリメタフェニレンイソフタラミド、もしくはこれらの共重合体からなるいわゆるアラミド繊維であることが好ましい。なかでも、特に強力が高いパラ型アラミド繊維が好ましい。合成繊維のデニール、フィラメント数および断面形状は任意である。
【0031】
無機繊維としては、例えば炭素繊維、ガラス繊維を挙げることができ、好ましくは炭素繊維を用いる。
【0032】
〔付着処理〕
易接着化処理液の繊維コードへの付着処理により、熱可塑性エラストマー、ブロックドポリイソシアネートおよびゴムラテックスを、繊維コードに付着させる。易接着化処理液の繊維コードへの付着処理は、例えば易接着化処理液を塗ったローラーと繊維コードとの接触、ノズルからの易接着化処理液の繊維コードへの噴霧、繊維コードの易接着化処理液への浸漬により行うことができる。
【0033】
易接着化処理液の繊維コードに対する付着量は、付着後の繊維コードの重量を基準として、熱可塑性エラストマー、ブロックドポリイソシアネートおよびゴムラテックスの合計の固形分付着量として、好ましくは0.1~20重量%、さらに好ましくは0.3~18重量%、特に好ましくは0.5~16重量%である。繊維コードに対する固形分付着量を制御には、圧接ローラーによる絞り、スクレバー等によるかき落とし、空気吹きつけによる吹き飛ばし、吸引などの手段を適用することができる。
【0034】
繊維コードの合成繊維が、ポリエステル繊維またはアラミド繊維である場合には、ポリエポキシド化合物を含む前処理剤で繊維コードが前処理されていることが好ましい。
【実施例
【0035】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、実施例におけるコード剥離接着力は、下記の測定法により行った。
(1)コード剥離接着力(初期接着力、耐熱接着力、高温時接着力)
(1-1)コードが合成繊維の場合のコード剥離接着力
コード剥離接着力は、繊維コードとゴムとの接着力を表す。
【0036】
天然ゴムを主成分とするカーカス配合の未加硫ゴムシート(22cm×2.5cm、厚み0.4cm)に、評価対象の繊維コードの3本(長さ22cm)を、繊維コードの表面がゴムシートの表面に隠れるように埋め、150℃の温度で30分間、50kg/cmのプレス圧力をかけて加硫して、初期接着力評価用の試験片を作成した。さらに180℃の温度で40分間、50kg/cmのプレス圧力で加硫して、耐熱接着力評価用の試験片を作成した。初期接着力評価用の試験片および耐熱接着力評価用の試験片について、それぞれ20℃の雰囲気下で剥離試験を行い、初期接着力と耐熱接着力を測定した。また、初期接着力評価用の試験片を、恒温槽中150℃の雰囲気下で剥離試験を行い、高温時接着力を測定した。
【0037】
なお、剥離試験ではインストロン社製万能材料試験機を用いて、評価対象の繊維コードの3本の一端を平板チャックで把持して、ゴムシートと繊維コードの角度が90°になるよう剥離するときに要する力を測定した。このとき、剥離距離16cm分の剥離力の平均値を接着力とした。
(1-2)コードが炭素繊維の場合のコード剥離接着力
上記の(1-1)において、未加硫ゴムシートの代わりにウレタンゴムを主成分とする未加硫ゴムを使用した他は(1-1)と同様の方法で測定した。
(2)水分散液中の粒子の平均粒子径
(2-1)マイクロトラック粒子径分布測定装置による測定
Leeds&Northrup社製マイクロトラック粒子径分布測定装置を使用して測定した。
(2-2)レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置による測定
マイクロトラック・ベル社製レーザ回折・散乱式粒子径分布測定装置を使用して測定した。この測定では、固形分濃度が5重量%となるように水で希釈した水分散液を測定に供した。
(3)水分散液の粘度
エー・アンド・デイ社製音叉型振動式粘度計を使用して温度20℃にて測定した。
【0038】
〔実施例1〕
ソルビトールポリグリシジルエーテル構造を有するポリエポキシド化合物(デナコール EX-614B ナガセケムテックス社製)をアルカリ水溶液中に溶解させ、次いで、Vpラテックス(日本エイアンドエル社製、商品名ピラテックス)、ブロックドポリイソシアネート(第一工業製薬社製、商品名F8894ENB)を、これらの固形分重量比として10:75:50で、この順に配合し、総固形分濃度4重量%の配合液を作成した。これを第一浴処理用の前処理液(処理液1)とした。
【0039】
ポリブタジエンとポリウレタンとの共重合物である熱可塑性エラストマー(第一工業製薬社製、F2471D-2、水分散液)、ブロックドポリイソシアネート(明成化学工業社製、DM6400、ジフェニルメタンビス-4,4’カルバモイル-ε-カプロラクタムを成分とする水分散液)、Vpラテックス(日本ゼオン製、商品名2518FS、水分散液)を、これらの固形分重量比として50:15:50で混合し、総固形分濃度を20重量%とした易接着化処理液(処理液2)を作成した。なお、熱可塑性エラストマーの水分散液中の熱可塑性エラストマーの平均粒子径は0.11μm(2-1の測定方法による測定値)および0.14μm(2-2の測定方法による測定値)、水分散液の粘度は500MPa・s(20℃)、pHは6.6であった。Vpラテックスの水分散液中のVpラテックスの平均粒子径は、0.10μm(2-2の方法による測定値)であった。
【0040】
ポリエステル繊維(PET、帝人社製)として1670dtex/384のフィラメントのマルチフィラメント糸を使用し、40T/10cmで下撚りを施し、次いで40T/cmで上撚りを施して繊維コードを得た。この繊維コードを、コンビュートリーター処理機(CAリッツラー社製、タイヤコード処理機)を用いて、前記の前処理液(処理液1)に浸漬した後、150℃の温度で2分間乾燥し、引き続き、240℃の温度で1分間の熱処理を行い、続いて易接着化処理液(処理液2)に浸漬した後に、170℃の温度で2分間乾燥し、引続いて240℃の温度で1分間の熱処理を行い、ゴム補強用繊維を得た。
【0041】
得られたゴム補強用繊維には、易接着化処理液の熱可塑性エラストマー、ブロックドポリイソシアネートおよびゴムラテックスが、固形分として合計5重量%(付着後のゴム補強繊維の総重量を基準とする)付着していた。得られたゴム補強用繊維のコード剥離接着力を評価した。結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
〔実施例2〕
前処理液(処理液1)および易接着化処理液(処理液2)は実施例1と同じものを用いた。アラミド繊維(帝人アラミド社製 商標名トワロン)として1680dtex/1000フィラメントのマルチフィラメント糸を使用し、30T/10cmで下撚りを施し、次いで30T/cmで上撚りを施して繊維コードを得た。
【0044】
この繊維コードを、コンビュートリーター処理機(CAリッツラー社製、タイヤコード処理機)を用いて、前記の前処理液(処理液1)に浸漬した後、150℃の温度で2分間乾燥し、引き続き、240℃の温度で1分間の熱処理を行い、続いて、易接着化処理液(処理液2)に浸漬した後に、170℃の温度で2分間乾燥し、引続いて240℃の温度で1分間の熱処理を行った。
【0045】
得られたゴム補強用繊維には、易接着化処理液の熱可塑性エラストマー、ブロックドポリイソシアネートおよびゴムラテックスが、固形分として合計5重量%(付着後のゴム補強繊維の総重量を基準とする)付着していた。得られたゴム補強用繊維のコード剥離接着力を評価した。結果を表1に示す。
【0046】
〔比較例1〕
前処理液(処理液1)は実施例1と同じものを用いた。レゾルシン/ホルマリン(R/F)のモル比が1/0.6、固形分濃度が65重量%である初期縮合物をアルカリ条件下で溶解し9重量%の水分散液とした。この水分散液109重量部を、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックスの40重量%水分散液の180重量部に対して添加した。この液に、ホルマリン5重量部、33重量%のメチルエチルケトオキシムブロックドフェニルメタシジイソシアネート分散液(分散媒は水)を23重量部添加し、48時間熟成して総固形分濃度18重量%の配合液を得て易接着化処理液(処理液2)として用いた。この易接着化処理液(処理液2)を用いる他は実施例1と同様に実施した。得られたゴム補強用繊維のコード剥離接着力を評価した。評価結果を表1に示す。
【0047】
比較例1と実施例1とを対比すると、実施例1では、レゾルシンとホルマリンとの縮合化合物を用いていないにもかかわらず、レゾルシンとホルマリンとの縮合化合物を用いた比較例1と同じ程度の接着力を有することが判る。
【0048】
〔比較例2〕
この例は、易接着化処理液(処理液2)としてレゾルシンとホルマリンとの縮合化合物を含有する処理液を用いた例である。
【0049】
前処理液(処理液1)および易接着化処理液(処理液2)は比較例1と同じものを用いた。繊維として実施例2と同じアラミド繊維を用いる他は比較例1と同様に実施した。評価結果を表1に示す。比較例2と実施例2とを対比すると、実施例2では、レゾルシンとホルマリンとの縮合化合物を用いていないにもかかわらず、レゾルシンとホルマリンとの縮合化合物を用いた比較例2と同じ程度の接着力を有することが判る。
【0050】
〔比較例3〕
前処理液(処理液1)は実施例1と同じものを用いた。ポリブタジエンとポリウレタンとの共重合物である熱可塑性エラストマー(水分散液)、ブロックドポリイソシアネート(明成化学工業社製、DM6400、ジフェニルメタンビス-4,4’カルバモイル-ε-カプロラクタムを成分とする水分散液)、Vpラテックス(日本ゼオン社製、商品名2518FS、水分散液)を、これらの固形分重量比として50:15:50で混合し、総固形分濃度を20重量%とした易接着化処理液(処理液2)を作成した。なお、熱可塑性エラストマーの水分散液中の熱可塑性エラストマーの平均粒子径は1.2μm(2-2の方法による測定値)、水分散液の粘度は500mPa・s(20℃)、pHは6.6であった。Vpラテックスの水分散液中のVpラテックスの平均粒子径は、0.10μm(2-2の方法による測定値)であった。
【0051】
ポリエステル繊維(PET、帝人社製)として1670dtex/384のフィラメントのマルチフィラメント糸を使用し、40T/10cmで下撚りを施し、次いで40T/cmで上撚りを施して繊維コードを得た。
【0052】
この繊維コードを、コンビュートリーター処理機(CAリッツラー社製、タイヤコード処理機)を用いて、前処理液(処理液1)に浸漬した後、150℃の温度で2分間乾燥し、引き続き240℃の温度で1分間の熱処理を行い、続いて、易接着化処理液(処理液2)に浸漬した後に、170℃の温度で2分間乾燥し、引続いて、240℃の温度で1分間の熱処理を行いゴム補強用繊維を得た。
【0053】
得られたゴム補強用繊維には、易接着化処理液の熱可塑性エラストマー、ブロックドポリイソシアネートおよびゴムラテックスが、固形分として合計5重量%(付着後のゴム補強繊維の総重量を基準とする)付着していた。得られたゴム補強用繊維のコード剥離接着力を評価した。結果を表1に示す。
【0054】
〔比較例4〕
前処理液(処理液1)は実施例1と同じものを用いた。ポリブタジエンとポリウレタンとの共重合物である熱可塑性エラストマー(水分散液)、ブロックドポリイソシアネート(明成化学工業社製、DM6400、ジフェニルメタンビス-4,4’カルバモイル-ε-カプロラクタムを成分とする水分散液)、Vpラテックス(日本ゼオン製、商品名2518FS、水分散液)を、これらの固形分重量比として50:15:50で混合し、総固形分濃度を20重量%とした易接着化処理液(処理液2)を作成した。なお、熱可塑性エラストマーの水分散液中の熱可塑性エラストマーの平均粒子径は0.11μm(2-2の方法による測定値)、水分散液の粘度は900mPa・s(20℃)、pHは6.6であった。Vpラテックスの水分散液中のVpラテックスの平均粒子径は、0.10μm(2-2の方法による測定値)であった。
【0055】
ポリエステル繊維(PET、帝人社製)として1670dtex/384のフィラメントのマルチフィラメント糸を使用し、40T/10cmで下撚りを施し、次いで40T/cmで上撚りを施して繊維コードを得た。
【0056】
この繊維コードを、コンビュートリーター処理機(CAリッツラー社製、タイヤコード処理機)を用いて、前処理液(処理液1)に浸漬した後、150℃の温度で2分間乾燥し、引き続き、240℃の温度で1分間の熱処理を行い、続いて、易接着化処理液(処理液2)に浸漬した後に、170℃の温度で2分間乾燥し、引続いて、240℃の温度で1分間の熱処理を行い、ゴム補強用繊維を得た。
【0057】
得られたゴム補強用繊維には、易接着化処理液の熱可塑性エラストマー、ブロックドポリイソシアネートおよびゴムラテックスが、固形分として合計5重量%(付着後のゴム補強繊維の総重量を基準とする)付着していた。得られたゴム補強用繊維のコード剥離接着力を評価した。結果を表1に示す。
【0058】
〔比較例5〕
易接着化処理液(処理液2)に用いる熱可塑性エラストマーの水分散液中の熱可塑性エラストマーの平均粒子径を1.2μm(2-2の方法による測定値)とする以外は実施例2と同様に実施する。
【0059】
〔実施例3〕
ポリブタジエンとポリウレタンとの共重合物である熱可塑性エラストマー(第一工業製薬社製、F2471D-2、水分散液)、ブロックドポリイソシアネート(明成化学工業社製、DM6400、ジフェニルメタンビス-4,4’カルバモイル-ε-カプロラクタムを成分とする水分散液)、Vpラテックス(日本ゼオン製、商品名2518FS、水分散液)を、これらの固形分重量比として50:15:50で混合し、総固形分濃度を20重量%とした処理液Aを作成した。なお、熱可塑性エラストマーの水分散液中の熱可塑性エラストマーの平均粒子径は0.14μm(2-2の方法による測定値)、水分散液の粘度は500MPa・s(20℃)、pHは6.6であった。また、Vpラテックスの水分散液中のVpラテックスの平均粒子径は、0.10μm(2-2の方法よる測定値)であった。
【0060】
次に、ソルビトールポリグリシジルエーテル構造を有するポリエポキシド化合物(デナコール EX-614B ナガセケムテックス社製)を撹拌機を使用して水溶中に溶解させ、次いでブロックドポリイソシアネート(第一工業製薬社製、商品名F8894ENB、水分散液)を配合し、総固形分濃度16重量%の配合液(ポリエポキシド化合物とブロックドポリイソシアネートの固形分重量比が1:1.8)を作成した。この配合液を前記の処理液Aに徐々に添加して、最終的に総固形分濃度25重量%に調整し易接着化処理液Bを得た。
【0061】
ナイロン繊維として1400dtexのマルチフィラメント糸(旭化成せんい社製)を使用し、40T/10cmで下撚りを施し、次いで40T/cmで上撚りを施して繊維コードを得た。この繊維コードを、コンビュートリーター処理機(CAリッツラー社製、タイヤコード処理機)を用いて、前記の易接着化処理液Bに浸漬した後、150℃の温度で2分間乾燥し、引き続き、230℃の温度で1分間の熱処理を行い、ゴム補強用繊維を得た。
【0062】
得られたゴム補強用繊維には、易接着化処理液Bの熱可塑性エラストマー、ブロックドポリイソシアネート、ゴムラテックスおよびポリエポキシド化合物が、固形分として合計5重量%(付着後のゴム補強繊維の総重量を基準とする)付着していた。得られたゴム補強用繊維のコード剥離接着力を評価した。結果を表1に示す。
【0063】
〔実施例4〕
上記の実施例3の処理液Aを、易接着化処理液Aとして用いた。
【0064】
レーヨン繊維として1840dtexのマルチフィラメント糸(Cordenka社製)を使用し、40T/10cmで下撚りを施し、次いで40T/cmで上撚りを施して繊維コードを得た。この繊維コードを、コンビュートリーター処理機(CAリッツラー社製、タイヤコード処理機)を用いて、易接着化処理液Aに浸漬した後、150℃の温度で2分間乾燥し、引き続き、180℃の温度で2分間の熱処理を行い、ゴム補強用繊維を得た。
【0065】
得られたゴム補強用繊維には、易接着化処理液Aの熱可塑性エラストマー、ブロックドポリイソシアネートおよびゴムラテックスが、固形分として合計5重量%(付着後のゴム補強繊維の総重量を基準とする)付着していた。得られたゴム補強用繊維のコード剥離接着力を評価した。結果を表1に示す。
【0066】
〔比較例6〕
この例は、易接着化処理液としてレゾルシンとホルマリンとの縮合化合物を含有する処理液を用いた例である。
【0067】
レゾルシン/ホルマリン(R/F)のモル比が1/2となるように、アルカリ条件下でレゾルシンとホルマリンとを24時間反応させ、固形分濃度5.7重量%のレゾルシン/ホルマリン樹脂の水分散液を得た。この水分散液の427重量部を、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックス40重量%水分散液の331重量部に対して添加した。30分間攪拌後、さらに水を加えて総固形分濃度が17重量%となるよう調整し、レゾルシンとホルマリンとの縮合化合物を含有する易接着化処理液を得た。この易接着化処理液を易接着化処理液Bとして用いる他は実施例3と同様に実施した。
【0068】
〔比較例7〕
この例は、易接着化処理液としてレゾルシンとホルマリンとの縮合化合物を含有する処理液を用いた例である。
【0069】
レゾルシン/ホルマリン(R/F)のモル比が1/2となるように、アルカリ条件下でレゾルシンとホルマリンとを24時間反応させ、固形分濃度5.4重量%のレゾルシン/ホルマリン樹脂の水分散液を得た。この水分散液の590重量部を、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックス40重量%水分散液の410重量部に対して添加した。4時間静置後、さらに水を添加して総固形分濃度が15重量%となるよう調整し、レゾルシンとホルマリンとの縮合化合物を含有する易接着化処理液を得た。この易接着化処理液を易接着化処理液Aとして用いる他は実施例4と同様に実施した。
【0070】
〔比較例8〕
易接着化処理液Bに用いる熱可塑性エラストマーの水分散液中の熱可塑性エラストマーの平均粒子径を1.2μm(2-2の方法による測定値)とする以外は実施例3と同様に実施する。
【0071】
〔比較例9〕
易接着化処理液Aに用いる熱可塑性エラストマーの水分散液中の熱可塑性エラストマーの平均粒子径を1.2μm(2-2の方法による測定値)とする以外は実施例4と同様に実施する。
【0072】
〔実施例5〕
ソルビトールポリグリシジルエーテル構造を有するポリエポキシド化合物(デナコール EX-614B ナガセケムテックス社製)をアルカリ水溶液中に溶解させ、次いで、Vpラテックス(日本エイアンドエル社製、商品名ピラテックス)、ブロックドポリイソシアネート(第一工業製薬社製、商品名F8894ENB)をこれらの固形分重量比10:75:50で、この順に配合し、総固形分濃度4重量%の配合液を作成した。これを第一浴処理用の前処理液(処理液1)とした。
【0073】
ポリブタジエンとポリウレタンとの共重合物である熱可塑性エラストマー(第一工業製薬社製、F2471D-2、水分散液)、ブロックドポリイソシアネート(明成化学工業社製、DM6400、ジフェニルメタンビス-4,4’カルバモイル-ε-カプロラクタムを成分とする水分散液)、Vpラテックス(日本ゼオン製、商品名2518FS、水分散液)を、これらの固形分重量比として50:15:50で混合し、総固形分濃度を20重量%とした易接着化処理液(処理液2)を作成した。なお、熱可塑性エラストマーの水分散液中の熱可塑性エラストマーの平均粒子径は0.11μm(2-1の測定方法による測定値)および0.14μm(2-2の測定方法による測定値)、水分散液の粘度は500MPa・s(20℃)、pHは6.6であった。Vpラテックスの水分散液中のVpラテックスの平均粒子径は、0.10μm(2-2の方法による測定値)であった。
【0074】
炭素繊維として8000dtex/12000フィラメントのマルチフィラメント糸(TENAX、帝人社製)を使用し、6T/10cmの撚りを施して繊維コードを得た。この繊維コードを、プレートヒーターを用いて、前記の前処理液(処理液1)に浸漬した後、200℃の温度で2分間乾燥し、続いて易接着化処理液(処理液2)に浸漬した後に、240℃の温度で2分間乾燥しゴム補強用繊維を得た。得られたゴム補強用繊維のコード剥離接着力を評価した結果を表1に示す。
【0075】
〔比較例10〕
前処理液(処理液1)には、実施例1と同じものを用いた。レゾルシン/ホルマリン(R/F)のモル比が1/0.6、固形分濃度が65重量%である初期縮合物をアルカリ条件下で溶解して9重量%の水分散液とした。この水分散液109重量部を、ビニルピリジン・スチレン・ブタジエンターポリマーラテックスの40重量%水分散液の180重量部に対して添加した。この液に、ホルマリン5重量部、33重量%のメチルエチルケトオキシムブロックドフェニルメタシジイソシアネート分散液(分散媒は水)を23重量部添加し、48時間熟成して固形分濃度18重量%の配合液を得て易接着化処理液(処理液2)として用いた。この易接着化処理液(処理液2)を用いる他は実施例5と同様に実施した。得られたゴム補強用繊維のコード剥離接着力を評価した。評価結果を表1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のゴム補強用繊維の製造方法により得られるゴム補強用繊維は、ゴム製のタイヤやホース、ベルト等の補強に用いることができる。