(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】圧延材料の圧延のための方法および圧延スタンド
(51)【国際特許分類】
B21B 27/10 20060101AFI20220921BHJP
B21B 38/00 20060101ALI20220921BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20220921BHJP
B21B 45/02 20060101ALI20220921BHJP
B21B 1/22 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B21B27/10 B
B21B38/00 A
B21C51/00 N
B21B45/02 310
B21B1/22 L
(21)【出願番号】P 2020570690
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(86)【国際出願番号】 EP2019066297
(87)【国際公開番号】W WO2019243472
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-01-15
(31)【優先権主張番号】102018209863.8
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】デンカー・ヴォルフガング
【審査官】池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-188410(JP,A)
【文献】特開昭60-161496(JP,A)
【文献】特開昭54-149352(JP,A)
【文献】特開2007-144514(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0007628(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 27/10
B21B 38/00
B21C 51/00
B21B 45/02
B21B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延スタンド(100)を用いての、圧延材料(200)の圧延
、または冷間圧延のための方法であって、
その際、この圧延スタンドが、前記圧延材料(200)の圧延のために圧延ロール間隙を拡げる、上側および下側の作業ロール(140-I、140-II)を有しており、
この方法が、以下のステップ:即ち、
第1および第2のエマルションのための、水と潤滑剤との混合;
前記圧延スタンド(100)の入口側(E)での、前記上側の作業ロール(140-I)、及び/または、前記圧延材料(200)の上側面に対する、前記第1のエマルションの噴射;
前記圧延スタンド(100)の前記入口側での、前記下側の作業ロール(140-II)、及び/または、前記圧延材料(200)の下側面に対する、前記第2エマルションの噴射;および、
前記第1
または第2のエマルションにおける、小滴サイズの調節;
を有している上記方法において、更に以下のステップ:即ち、
前記上側の作業ロール(140-I)と前記圧延材料(200)の前記上側面との間の上側での摩擦と、前記下側の作業ロール(140-II)と前記圧延材料(200)の前記下側面との間の下側での摩擦との間の
、大きさの相違の算出;および、
前記上側での摩擦が前記下側での摩擦よりも大きい間の、
前記第1のエマルションの前記小滴サイズの減少、及び/または、前記第2のエマルションの前記小滴サイズの増大;およびその逆に、
前記上側での摩擦が前記下側での摩擦よりも小さい間の、
前記第1のエマルションの前記小滴サイズの増大、及び/または、前記第2のエマルションの前記小滴サイズの減少、
のステップを有していること
、
前記小滴サイズの変化に対して付加的に、
前記上側での摩擦が、前記下側での摩擦よりも大きい間、
前記潤滑剤の濃度が、前記第1のエマルション内において増大され、及び/または、前記第2のエマルション内において減少されること;およびその逆に、
前記上側での摩擦が、前記下側での摩擦よりも小さい間、
前記潤滑剤の濃度が、前記第1のエマルション内において減少され、及び/または、前記第2のエマルション内において増大されること;
前記上側および下側での摩擦の同化のために、前記小滴サイズの前記調節は、前記第1および第2の前記エマルション内における前記潤滑剤の、先ず第一に予調節された、最少の濃度において行われること;および、
この小滴サイズに対して付加的に、前記エマルション内における前記潤滑剤の前記濃度が、ただこの小滴サイズが更に変化され得ない、またはもはや更に減少され得ない場合にだけ、変化、または増大されること、
を特徴とする方法。
【請求項2】
前記上側の作業ロール(140-I)または上側の中間ロールまたは上側の支持ロールは、上側のロール駆動装置(160-I)によって、および、前記下側の作業ロール(140-II)または下側の中間ロールまたは下側の支持ロールが、下側のロール駆動装置(160-II)によって駆動されること;
前記上側のロール駆動装置(160-I)によって圧延作業の間じゅう生成された回転トルク(M1)と、
前記下側のロール駆動装置(160-II)によって圧延作業の間じゅう生成された回転トルク(M2)とが測定され;
前記上側での摩擦と前記下側での摩擦との間の前記大きさの相違が
、前記上側のロール駆動装置(160-I)によって生成された前記回転トルク(M1)と前記下側のロール駆動装置(160-II)によって生成された前記回転トルク(M2)との間の相違として算出されること;および、
前記上側のロール駆動装置によって生成された前記回転トルク(M1)が、前記下側のロール駆動装置によって生成された前記回転トルク(M2)よりも大きい間、
前記第1のエマルションの前記小滴サイズが減少され、及び/または、前記第2のエマルションの前記小滴サイズが増大されること;およびその逆に、
前記上側のロール駆動装置によって生成された前記回転トルク(M1)が、前記下側のロール駆動装置によって生成された前記回転トルク(M2)よりも小さい間、
前記第1のエマルションの前記小滴サイズが増大され、及び/または、前記第2のエマルションの前記小滴サイズが減少されること;
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記上側の作業ロール(140-I)または上側の中間ロールまたは上側の支持ロールは、上側の電気的なロール駆動装置(160-I)によって、および、前記下側の作業ロール(140-II)または下側の中間ロールまたは下側の支持ロールが、下側の電気的なロール駆動装置(160-II)によって駆動されること;
圧延作業の間じゅう前記上側の電気的なロール駆動装置を通って流れる電流と、圧延作業の間じゅう前記下側の電気的なロール駆動装置を通って流れる電流とが測定されること;および、
前記上側での摩擦と前記下側での摩擦との間の前記大きさの相違が
、
前記上側の電気的なロール駆動装置(160-I)を通って流れる電流と、前記下側の電気的なロール駆動装置(160-II)を通って流れる電流との間の相違として算出され、
前記上側の電気的なロール駆動装置を通って流れる電流が、前記下側の電気的なロール駆動装置通って流れる電流よりも大きい間、
前記第1のエマルションの前記小滴サイズが減少され、及び/または、前記第2のエマルションの前記小滴サイズが増大されること;およびその逆に、
前記上側の電気的なロール駆動装置を通って流れる電流が、前記下側の電気的なロール駆動装置通って流れる電流よりも小さい間、
前記第1のエマルションの前記小滴サイズが増大され、及び/または、前記第2のエマルションの前記小滴サイズが減少されること;
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記潤滑剤は、圧延油またはケロシンであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つによる方法を実施するための、圧延材料(200)の圧延
、または冷間圧延のための圧延スタンド(100)であって、この圧延スタンドが、
前記圧延材料(200)の圧延のために圧延ロール間隙を拡げる、上側および下側の作業ロール(140-I、140-II)と;
第1および第2のエマルションのための、水と潤滑剤との混合のための、少なくとも1つの混合装置(110-I、110-II)と;
前記圧延スタンド(100)の入口側での、前記上側の作業ロール(140-I)、及び/または、前記圧延材料(200)の上側面に対する、前記第1のエマルションの噴射のための、少なくとも1つの上側の噴射ノズル(130-I)と;
前記圧延スタンド(100)の前記入口側での、前記下側の作業ロール(140-II)、及び/または、前記圧延材料(200)の下側面に対する、前記第2エマルション
の噴射のための、少なくとも1つの下側の噴射ノズル(130-II)と;および、
制御装置(150)の調節信号に応じての、前記第1および第2のエマルションにおける小滴サイズの調節のための、上側および下側の噴霧器装置(120-I、120-II)と;
を有している上記圧延スタンド(100)において、
算出装置(170)が、
前記上側の作業ロール(140-I)と前記圧延材料(200)の前記上側面との間の上側での摩擦と、前記下側の作業ロール(140-II)と前記圧延材料(200)の前記下側面との間の下側での摩擦との間の、大きさの相違の算出ために、設けられていること;および、
前記制御装置(150)が、
前記上側での摩擦が前記下側での摩擦よりも大きい間、
前記上側および下側の噴霧器装置(120-I、120-II)のための前記調節信号を、
前記上側の噴霧器装置(120-I)によって生成された前記第1のエマルションの小滴サイズが減少され、及び/または、前記下側の噴霧器装置(120-II)によって生成された前記第2のエマルションの小滴サイズが増大されるように発生するように、およびその逆に、
前記上側での摩擦が前記下側での摩擦よりも小さい間、
前記上側および下側の噴霧器装置(120-I、120-II)のための前記調節信号を、
前記上側の噴霧器装置(120-I)によって生成された前記第1のエマルションの小滴サイズが増大され、及び/または、前記下側の噴霧器装置(120-II)によって生成された前記第2のエマルションの小滴サイズが減少されるように発生するように、
形成されていること;
を特徴とする圧延スタンド(100)。
【請求項6】
上側のロール駆動装置(160-I)が、前記上側の作業ロール(140-I)、上側の中間ロールまたは上側の支持ロールの駆動のために設けられていること;
下側のロール駆動装置(160-II)が、前記下側の作業ロール(140-II)、下側の中間ロールまたは下側の支持ロールのために設けられていること;および、
前記上側での摩擦と前記下側での摩擦との間の、前記大きさの相違の算出ための、前記算出装置(170)が:
前記上側のロール駆動装置(160-I)によって生成された回転トルク(M1)の測定のための、第1の回転トルク測定装置(172-I)と;
前記下側のロール駆動装置(160-II)によって生成された回転トルク(M2)の測定のための、第2の回転トルク測定装置(172-II)と
;
前記上側のロール駆動装置によって生成された前記回転トルク(M1)と前記下側のロール駆動装置によって生成された前記回転トルク(M2)との間の相違としての、前記上側での摩擦と前記下側での摩擦との間の大きさの相違の計算のための、計算装置(176)と;
を有していること、および、
前記制御装置(150)が、
前記上側のロール駆動装置(160-I)によって生成された前記回転トルク(M1)が、前記下側のロール駆動装置(160-II)によって生成された前記回転トルク(M2)よりも大きい間、
前記上側および下側の噴霧器装置のための前記調節信号(S1、S2)を、
前記上側の噴霧器装置(120-I)によって生成された前記第1のエマルションの小滴サイズが減少され、及び/または、前記下側の噴霧器装置(120-II)によって生成された前記第2のエマルションの小滴サイズが増大されるように発生するように、およびその逆に、
前記上側のロール駆動装置(160-I)によって生成された前記回転トルク(M1)が、前記下側のロール駆動装置(160-II)によって生成された前記回転トルク(M2)よりも小さい間、
前記上側および下側の噴霧器装置のための前記調節信号(S1、S2)を、
前記上側の噴霧器装置(120-I)によって生成された前記第1のエマルションの小滴サイズが増大され、及び/または、前記下側の噴霧器装置(120-II)によって生成された前記第2のエマルションの小滴サイズが減少されるように発生するように、
形成されていること;
を特徴とする
請求項5に記載の圧延スタンド(100)。
【請求項7】
上側の電気的なロール駆動装置(160-I)が、前記上側の作業ロール(140-I)の駆動のために設けられており;
下側の電気的なロール駆動装置(160-II)が、前記下側の作業ロール(140-II)の駆動のために設けられており;
前記上側での摩擦と前記下側での摩擦との間の、前記大きさの相違(ΔR)の算出ための、前記算出装置(170)が:
前記上側の電気的なロール駆動装置(160-I)を通って流れる電流を測定するための第1の電流測定装置(174-I)と;
前記下側の電気的なロール駆動装置(160-II)を通って流れる電流を測定するための第2の電流測定装置(174-II)と;および
、
前記上側のロール駆動装置を通って流れる電流と前記下側のロール駆動装置を通って流れる電流との間の相違としての、前記上側での摩擦と前記下側での摩擦との間の大きさの相違(ΔR)の計算のための、計算装置(176)と;
を有していること、
前記制御装置(150)が、
前記上側のロール駆動装置(160-I)を通って流れる電流が、前記下側のロール駆動装置(160-II)を通って流れる電流よりも大きい間、
前記上側および下側の噴霧器装置(120-I、120-II)のための前記調節信号(S1、S2)を、
前記上側の噴霧器装置(120-I)によって生成された前記第1のエマルションの小滴サイズが減少され、及び/または、前記下側の噴霧器装置(120-II)によって生成された前記第2のエマルションの小滴サイズが増大されるように発生するように、およびその逆に、
前記上側のロール駆動装置(160-I)を通って流れる電流が、前記下側のロール駆動装置(160-II)を通って流れる電流よりも小さい間、
前記上側および下側の噴霧器装置(120-I、120-II)のための前記調節信号(S1、S2)を、
前記上側の噴霧器装置(120-I)によって生成された前記第1のエマルションの小滴サイズが増大され、及び/または、前記下側の噴霧器装置(120-II)によって生成された前記第2のエマルションの小滴サイズが減少されるように発生するように、
形成されていること;
を特徴とする
請求項5に記載の圧延スタンド(100)。
【請求項8】
少なくとも1つの前記混合装置(110-I、110-II)は、
前記制御装置(150)の調節信号に応じての、前記第1および第2のエマルション内における前記潤滑剤の濃度の個々の調節のために、形成されていること;
前記制御装置(150)が、更に、
前記上側での摩擦が、前記下側での摩擦よりも大きい間、
前記混合装置のための調節信号(S3、S4)を、
前記混合装置(110-I、110-II)によって調節された、前記潤滑剤の濃度が、前記第1のエマルション内において増大され、及び/または、前記第2のエマルションのために減少されるように発生するように、およびその逆に、
前記上側での摩擦が、前記下側での摩擦よりも小さい間、
前記混合装置のための調節信号(S3、S4)を、
前記混合装置(110-I、110-II)によって調節された、前記潤滑剤の濃度が、前記第1のエマルション内において減少され、及び/または、前記第2のエマルションのために増大されるように発生するように、
形成されていること;
を特徴とする
請求項5から7のいずれか一つに記載の圧延スタンド(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延材料、特に金属ストリップ、更に特に鋼ストリップの圧延、特に冷間圧延のための方法および圧延スタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
圧延スタンド、および、これら圧延スタンドの作動のための方法は、従来技術において十分に公知である。更に、特に鋼ストリップを、エマルションにより、圧延スタンドの圧延ロール間隙内へのこの鋼ストリップの走入の以前に、潤滑することは公知である。
エマルション、即ち水および潤滑剤から成る混合物による潤滑において、圧延ロール間隙内における最適な摩擦状況を、圧延材料の上側面および下側面に対する、潤滑剤の異なる濃度を有するエマルションの塗布によって適当に調節することは公知である。
【0003】
圧延材料の上側面および下側面のための、エマルションにおける潤滑剤濃度の個々の調節は、例えば特許文献1から公知である。
【0004】
更に、圧延スタンドの入側で、上側および下側の噴射ノズルに混合器もしくは噴霧器装置を前接続することは公知であり、この噴霧器装置が、噴射ノズルを通って圧延材料の上に塗布されるエマルションの小滴サイズを、圧延条件に依存して調節するように形成されている。
そのように予調節された小滴サイズは、等しく、圧延材料の上側面および下側面に適用される(特許文献2を参照)。
【0005】
更に、特許文献3から、エマルションの濃度および小滴サイズを、圧延速度に依存して、個々に調節することは公知である。
【0006】
最後には、従来技術において、エマルションのための組み合わせされた混合器および噴霧器装置は公知であり;これら混合器および噴霧器装置が、例えば、シルバーソン・マシーン・会社(Firma Silverson Machines)によって製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際出願公開第2013/120750号パンフレット
【文献】特開5076920A号公報
【文献】特開2007-160367A号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の根底をなす課題は、圧延材料の圧延のための公知の圧延スタンド、および、公知の方法を、圧延ロール間隙内における摩擦状況が最適化され且つこのための経費が最小限に減らされるという趣旨で、改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1内において請求された方法によって解決される。
それに従って、この方法は、以下のステップ:即ち、
前記上側の作業ロールと前記圧延材料の前記上側面との間の上側での摩擦と、前記下側の作業ロールと前記圧延材料の前記下側面との間の下側での摩擦との間の、場合によっては生じる、大きさの相違の算出、および、
前記上側での摩擦が前記下側での摩擦よりも大きい間の、
前記第1のエマルションの前記小滴サイズの減少、及び/または、前記第2のエマルションの前記小滴サイズの増大;およびその逆に、
前記上側での摩擦が前記下側での摩擦よりも小さい間の、
前記第1のエマルションの前記小滴サイズの増大、及び/または、前記第2のエマルションの前記小滴サイズの減少、
のステップを有していること、
前記小滴サイズの変化に対して付加的に、
前記上側での摩擦が、前記下側での摩擦よりも大きい間、
前記潤滑剤の濃度が、前記第1のエマルション内において増大され、及び/または、前記第2のエマルション内において減少されること;およびその逆に、
前記上側での摩擦が、前記下側での摩擦よりも小さい間、
前記潤滑剤の濃度が、前記第1のエマルション内において減少され、及び/または、前記第2のエマルション内において増大されること;
前記上側および下側での摩擦の同化のために、前記小滴サイズの前記調節は、前記第1および第2の前記エマルション内における前記潤滑剤の、先ず第一に予調節された、最少の濃度において行われること;および、
この小滴サイズに対して付加的に、前記エマルション内における前記潤滑剤の前記濃度が、ただこの小滴サイズが更に変化され得ない、またはもはや更に減少され得ない場合にだけ、変化、または増大されること、
によって特徴付けられている。
【発明の効果】
【0010】
概念「上側での摩擦」および「下側での摩擦」は、これらが請求項1内において規定されているように理解されるべきである。
【0011】
概念「第1のエマルション」は、上側の作業ロール及び/または圧延材料200の上側面に対して噴射されるエマルションを意味する。類似して、概念「第2のエマルション」は、下側の作業ロール及び/または圧延材料200の下側面に対して噴射されるエマルションを意味する。
【0012】
概念「圧延スタンド」は、特に、2重式-、4重式-、6重式圧延スタンドを意味する。圧延スタンドのそれぞれの様式に応じて、上側の作業ロール、上側の中間ロール、または、上側の支持ロールの駆動のための上側のロール駆動装置が設けられており;および、下側の作業ロール、下側の中間ロール、または、下側の支持ロールの駆動のための下側のロール駆動装置が設けられている。
【0013】
エマルションの小滴サイズの減少によって、圧延ロール間隙内における摩擦は減少され得;その逆に、小滴サイズの増大が、摩擦の増大を生じる。
【0014】
請求項1の最後における用語「およびその逆に(明細書内における用語「およびその逆もまたその通りである」)」は、
最後の方法のステップのための選択肢:即ち、
前記上側での摩擦が前記下側での摩擦よりも小さい間の、前記第1のエマルションの前記小滴サイズの増大、及び/または、前記第2のエマルションの前記小滴サイズの減少、
というような選択肢を意味する。
【0015】
一義的に小滴サイズの適当な変化による、圧延ロール間隙内における摩擦状況の、請求された最適な調節、即ち、上側での摩擦と下側での摩擦との間の達成しようとされている補整(均衡(Ausgleich))は、このやり方が、エマルション内における潤滑剤の濃度の変化よりも低廉であることの利点を提供する。潤滑剤は、基本的に、高価であり、且つ、有利には、価格の理由から、および、不必要な環境の負荷の回避のために、最小限の量に低減されるべきである。
小滴サイズの請求された変化による、圧延ロール間隙内における摩擦状況の請求された調節が、有利として考慮に値するので、そこで、この処置方法において、如何なる不必要な潤滑剤の使用も必要とせず、即ち、同様に仕上げ圧延されたストリップ表面の上への不必要な潤滑剤の排出という事態にもならない。このことは、ストリップ清潔性に有利な影響を及ぼす。
上側の作業ロールと、ストリップの上側面との間の、および、下側の作業ロールとストリップの下側面との間の摩擦状況の補整は、基本的に、即ちこの補整が油濃度の変化によってまたは小滴サイズの変化によって行われるかどうかに依存せずに、有利には、圧延スタンド内における回転トルクの歪み、並びに、チャタリングの問題に対する影響力の行使を生じさせ、および、更に、所定の圧延スタンドのための生産多様性の適宜の拡大を可能にする。
【0016】
第1の実施例に従い、上側での摩擦と下側での摩擦との間の相違が、代表的に、上側のロール駆動装置によって生成された回転トルクと下側のロール駆動装置によって生成された回転トルクとの間の相違として算出される。
この回転トルクの補整のため、および、これに伴って、同様に、場合によっては生じる、上側での摩擦と下側での摩擦との間の摩擦の相違の補整のためにも、第1の実施例は、
上側のロール駆動装置によって生成された回転トルクが、下側のロール駆動装置によって生成された回転トルクよりも大きい間、
第1のエマルションの小滴サイズが減少され、及び/または、第2のエマルションの小滴サイズが増大され;およびその逆もまたその通りである、
ことを意図する。
【0017】
選択的に、上側での摩擦と下側での摩擦との間の、場合によっては生じる摩擦の相違は、代表的に、同様に、上側のロール駆動装置を通って流れる電流と、下側のロール駆動装置を通って流れる電流との間の相違としても算出され得る。
同様にこの第2の実施例においても、その場合に、
上側のロール駆動装置を通って流れる電流が、下側の電気的なロール駆動装置通って流れる電流よりも大きい間、
第1のエマルションの小滴サイズが減少されるべきであり、及び/または、第2のエマルションの小滴サイズが増大されるべきであり;およびその逆もまたその通りである。
【0018】
上述の経費の理由から、本発明に従う方法は、つい今しがた説明したように、一義的に、第1と第2のエマルションの小滴サイズの適当な変化による、下側での摩擦に対する上側での摩擦の適合を意図する。
これら摩擦のこの試みられる同化は、経費の理由から、潤滑剤のための経費を可能な限り少なく保持するために、上述されているように、有利には、第1および第2のエマルション内における潤滑剤の、先ず第一に予調節された、最少の濃度において行われる。
この小滴サイズに対して付加的に、しかしながら同様に、特に摩擦状況が小滴サイズの変化によって専ら十分に適合され得ない場合にだけ、第1及び/または第2のエマルション内における前記潤滑剤の前記濃度が変化され得る。摩擦をなお更に減少するために、両方のエマルションの内の少なくとも1つのエマルション内における潤滑剤の濃度は、小滴サイズの十分な減少がもはや可能でない場合に、増大され得;およびその逆もまたその通りである。
【0019】
本発明の上述の課題は、更に、請求項5から8までに従う圧延スタンドによって解決される。本発明に従う圧延スタンドの利点は、請求された方法に関して上述のされた利点に相応する。
【0020】
本発明の更なる有利な構成は、従属請求項の対象である。
【0021】
本発明に、唯一の図が添付されており、この図がエマルションの塗布のための各種の構成要素を有する圧延スタンドを示している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】エマルションの塗布のための各種の構成要素を有する圧延スタンドの図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明を、以下で、実施例の様式におけるこの図との関連のもとで、詳細に説明する。
【0024】
図1は、圧延材料200、特に金属ストリップの圧延、特に冷間圧延のための圧延スタンド100を示している。
この圧延スタンドは、圧延材料200の圧延のために圧延ロール間隙を拡げる、上側および下側の作業ロール140-I、140-IIを備えている。これら上述の作業ロールが、それぞれに、支持ロールによって支持されていることは可能である。
【0025】
圧延スタンドに、この圧延スタンド100の入口側での、上側の作業ロール140-I、及び/または、圧延材料200の上側面に対する、第1のエマルションの噴射のための、上側の噴射ノズル130-Iが所属して設けられている。類似して、下側の噴射ノズル130-IIが、同様にこの圧延スタンド100の入口側Eでの、下側の作業ロール140-II、及び/または、圧延材料200の下側面に対する、第2エマルションの噴射のために、設けられている。
【0026】
回転トルクの相違の算出の際に、ロールが、直接的に駆動されていること、または、間接的に、隣接して駆動されるロールの牽引駆動によって駆動されていることは可能である。
【0027】
第1のエマルションの製造のために、第1の混合装置110-Iが設けられており、この第1の混合装置は、第1のエマルションの製造のために、水タンク180からの水を、予め与えられた混合比率において、潤滑剤タンク190からの潤滑剤、例えば圧延油またはケロシンと混合する。
そのように上側の混合装置110-Iの出側において準備された第1のエマルションは、後接続された上側の噴霧器装置120-Iに供給され、この上側の噴霧器装置が、第1のエマルションの小滴サイズを、このエマルションが上側の噴射ノズル130-Iに供給される前に、第1の調節信号S1に依存して調節するように形成されている。
【0028】
類似する混合装置110-II、および、噴霧器装置120-IIは、第2のエマルションの生成のため、および、第2の調節信号S2に応じてのこの第2のエマルション内における小滴サイズの調節のために、準備されている。このようにして、類似して製造された第2のエマルションは、次いで、下側の噴射ノズル130-IIに供給される。
【0029】
図内において、更に、上側の作業ロール140-Iが、例えばスピンドルを介して、上側のロール駆動装置160-Iによって駆動されることは認識され得る。類似して、下側の作業ロール140-IIは、例えばスピンドルを介して、下側のロール駆動装置160-IIによって駆動される。
本発明に従い、算出装置170が、上側の作業ロール140-Iと圧延材料200の上側面との間の上側での摩擦と、下側の作業ロール140-IIと圧延材料200の下側面との間の下側での摩擦との間の、(大きさの)相違ΔRの算出のために設けられている。本発明に従い、更に、制御装置150が、算出装置170によって算出された、場合によっては生じる上側での摩擦と下側での摩擦との間の相違ΔRに依存する、上側の噴霧器装置120-Iのための第1の調節信号S1、および、下側の噴霧器装置120-IIのための第2の調節信号S2の発生のために設けられている。
具体的に、制御装置150は、
上側での摩擦が下側での摩擦よりも大きい間、
上側の噴霧器装置120-Iのための第1の調節信号S1を、第1のエマルションのための小滴サイズが減少されるように発生し、及び/または、
下側の噴霧器装置120-IIのための第2の調節信号S2を、第2のエマルションのための小滴サイズが増大されるように発生する。
その逆に、制御装置150は、
上側での摩擦が下側での摩擦よりも小さい間、
同様に第1の調節信号S1と第2の調節信号S2とを、第1のエマルションの小滴サイズが増大され、及び/または、第2のエマルションの小滴サイズが減少されるように形成することも可能である。
【0030】
上側および下側での、小滴サイズの本発明に従う(場合によっては相違する)調節は、常に、上側および下側での、摩擦の補整を目標としており、即ち、上側での摩擦と下側での摩擦とが同じ大きさであるべきである、もしくは、同じ大きさになるべきである。
【0031】
上側での摩擦と下側での摩擦との間の、場合によっては生じる摩擦の相違の算出のために、本発明は、基本的に、1つの算出装置の形成のための2つの選択肢を提供する。
【0032】
第1の実施例に従い、算出装置170は、上側のロール駆動装置160-Iによって生成された回転トルクM1の測定のための、第1の回転トルク測定装置172-Iと、下側のロール駆動装置160-IIによって生成された回転トルクM2の測定のための、第2の回転トルク測定装置172-IIとを有している。
付加的に、この算出装置170は、計算装置176を、代表的に、上側のロール駆動装置によって生成された回転トルクM1と下側のロール駆動装置によって生成された回転トルクM2との間の相違としての、上側での摩擦と下側での摩擦との間の大きさの相違ΔRの計算のために有している。この相違は、例えば、両方の回転トルクM1とM2との間の、差分または比率として計算される。
【0033】
算出装置のために説明された第1の実施例において、制御装置150は、回転トルクM1とM2との間の計算された相違に依存して、上側および下側の噴霧器装置120-I、120-IIのための、両方の調節信号S1およびS2を発生する。
具体的に、制御装置150は、
上側のロール駆動装置160-Iによって生成された回転トルクM1が、下側のロール駆動装置160-IIによって生成された回転トルクM2よりも大きい間、
調節信号S1およびS2を、
上側の噴霧器装置120-Iによって生成された、第1のエマルションのための小滴サイズが減少され、及び/または、下側の噴霧器装置120-IIによって生成された、第2のエマルションにおける小滴サイズが増大されるように発生するように、
形成されており;およびその逆もまたその通りである。
【0034】
第2の実施例に従い、算出装置170は、これらロール駆動装置を通る電流に依存して、上側での摩擦と下側での摩擦との間の大きさの相違ΔRの算出のために形成されている。
この場合、算出装置170は、
上側のロール駆動装置160-Iを通って流れる電流の測定のための、第1の電流測定装置174-Iと、下側のロール駆動装置160-IIを通って流れる電流の測定のための、第2の電流測定装置174-IIとを有している。
更に、この算出装置170は、計算装置176を有しており、この計算装置が、この場合、代表的に、上側のロール駆動装置を通って流れる電流と、下側のロール駆動装置を通って流れる電流との間の相違としての、上側での摩擦と下側での摩擦との間の大きさの相違ΔRの計算のために形成されている。摩擦の相違ΔRは、電流の差分または比率として算出される。
制御装置150は、この第2の実施例に従い、
上側のロール駆動装置160-Iを通って流れる電流が、下側のロール駆動装置160-IIを通って流れる電流よりも大きい間、
上側および下側の噴霧器装置120-I、120-IIのための、調節信号S1およびS2を、
第1のエマルションの、上側の噴霧器装置120-Iによって生成された小滴サイズが減少され、及び/または、第2のエマルションの、下側の噴霧器装置120-IIによって生成された小滴サイズが増大される、
ように発生するように形成されている。
同様にこのことは、他方また、逆も言えることである。
【0035】
小滴サイズの変化に対して付加的に、同様に、第1及び/または第2のエマルション内における潤滑剤の濃度の変化も所望される、または、必要となる場合、制御装置150が、同様に、更に別の調節信号S3およびS4を、混合装置110-Iおよび110-IIのために発生するようにも形成され得る。
これら調節信号は、その場合に、制御装置によって、
上側での摩擦が、下側での摩擦よりも大きい間、
第1のエマルション内における、混合装置によって調節された潤滑剤の濃度が増大されるように発生され、及び/または、第2のエマルションのために減少されるように発生され;およびその逆もまたその通りである。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も包含し得る。
1. 圧延スタンド(100)を用いての、圧延材料(200)の圧延、特に冷間圧延のための方法であって、
その際、この圧延スタンドが、前記圧延材料(200)の圧延のために圧延ロール間隙を拡げる、上側および下側の作業ロール(140-I、140-II)を有しており、
この方法が、以下のステップ:即ち、
第1および第2のエマルションのための、水と潤滑剤との混合;
前記圧延スタンド(100)の入口側(E)での、前記上側の作業ロール(140-I)、及び/または、前記圧延材料(200)の上側面に対する、前記第1のエマルションの噴射;
前記圧延スタンド(100)の前記入口側での、前記下側の作業ロール(140-II)、及び/または、前記圧延材料(200)の下側面に対する、前記第2エマルションの噴射;および、
前記第1および第2のエマルションにおける、小滴サイズの調節;
を有している上記方法において、更に以下のステップ:即ち、
前記上側の作業ロール(140-I)と前記圧延材料(200)の前記上側面との間の上側での摩擦と、前記下側の作業ロール(140-II)と前記圧延材料(200)の前記下側面との間の下側での摩擦との間の、場合によっては生じる、大きさの相違の算出;および、
前記上側での摩擦が前記下側での摩擦よりも大きい間の、
前記第1のエマルションの前記小滴サイズの減少、及び/または、前記第2のエマルションの前記小滴サイズの増大;およびその逆に、
前記上側での摩擦が前記下側での摩擦よりも小さい間の、
前記第1のエマルションの前記小滴サイズの増大、及び/または、前記第2のエマルションの前記小滴サイズの減少、
のステップを有していることを特徴とする方法。
2. 前記上側の作業ロール(140-I)または上側の中間ロールまたは上側の支持ロールは、上側のロール駆動装置(160-I)によって、および、前記下側の作業ロール(140-II)または下側の中間ロールまたは下側の支持ロールが、下側のロール駆動装置(160-II)によって駆動されること;
前記上側のロール駆動装置(160-I)によって圧延作業の間じゅう生成された回転トルク(M1)と、
前記下側のロール駆動装置(160-II)によって圧延作業の間じゅう生成された回転トルク(M2)とが測定され;
前記上側での摩擦と前記下側での摩擦との間の前記大きさの相違が、代表的に、前記上側のロール駆動装置(160-I)によって生成された前記回転トルク(M1)と前記下側のロール駆動装置(160-II)によって生成された前記回転トルク(M2)との間の相違として算出されること;および、
前記上側のロール駆動装置によって生成された前記回転トルク(M1)が、前記下側のロール駆動装置によって生成された前記回転トルク(M2)よりも大きい間、
前記第1のエマルションの前記小滴サイズが減少され、及び/または、前記第2のエマルションの前記小滴サイズが増大されること;およびその逆に、
前記上側のロール駆動装置によって生成された前記回転トルク(M1)が、前記下側のロール駆動装置によって生成された前記回転トルク(M2)よりも小さい間、
前記第1のエマルションの前記小滴サイズが増大され、及び/または、前記第2のエマルションの前記小滴サイズが減少されること;
を特徴とする上記1に記載の方法。
3. 前記上側の作業ロール(140-I)または上側の中間ロールまたは上側の支持ロールは、上側の電気的なロール駆動装置(160-I)によって、および、前記下側の作業ロール(140-II)または下側の中間ロールまたは下側の支持ロールが、下側の電気的なロール駆動装置(160-II)によって駆動されること;
圧延作業の間じゅう前記上側の電気的なロール駆動装置を通って流れる電流と、圧延作業の間じゅう前記下側の電気的なロール駆動装置を通って流れる電流とが測定されること;および、
前記上側での摩擦と前記下側での摩擦との間の前記大きさの相違が、
代表的に、前記上側の電気的なロール駆動装置(160-I)を通って流れる電流と、前記下側の電気的なロール駆動装置(160-II)を通って流れる電流との間の相違として算出され、
前記上側の電気的なロール駆動装置を通って流れる電流が、前記下側の電気的なロール駆動装置通って流れる電流よりも大きい間、
前記第1のエマルションの前記小滴サイズが減少され、及び/または、前記第2のエマルションの前記小滴サイズが増大されること;およびその逆に、
前記上側の電気的なロール駆動装置を通って流れる電流が、前記下側の電気的なロール駆動装置通って流れる電流よりも小さい間、
前記第1のエマルションの前記小滴サイズが増大され、及び/または、前記第2のエマルションの前記小滴サイズが減少されること;
を特徴とする上記1に記載の方法。
4. 前記潤滑剤は、圧延油またはケロシンであることを特徴とする上記1から3のいずれか一つに記載の方法。
5. 前記小滴サイズの変化に対して付加的に、
前記上側での摩擦が、前記下側での摩擦よりも大きい間、
前記潤滑剤の濃度が、前記第1のエマルション内において増大され、及び/または、前記第2のエマルション内において減少されること;およびその逆に、
前記上側での摩擦が、前記下側での摩擦よりも小さい間、
前記潤滑剤の濃度が、前記第1のエマルション内において減少され、及び/または、前記第2のエマルション内において増大されること;
を特徴とする上記1から4のいずれか一つに記載の方法。
6. 前記上側および下側での摩擦の同化のために、前記小滴サイズの前記調節は、前記第1および第2の前記エマルション内における前記潤滑剤の、先ず第一に予調節された、最少の濃度において行われること;および、
この小滴サイズに対して付加的に、前記エマルション内における前記潤滑剤の前記濃度が、ただこの小滴サイズが更に変化され得ない、特にもはや更に減少され得ない場合にだけ、変化、特に増大されること、
を特徴とする上記5に記載の方法。
7. 圧延材料(200)の圧延、特に冷間圧延のための圧延スタンド(100)であって、この圧延スタンドが、
前記圧延材料(200)の圧延のために圧延ロール間隙を拡げる、上側および下側の作業ロール(140-I、140-II)と;
第1および第2のエマルションのための、水と潤滑剤との混合のための、少なくとも1つの混合装置(110-I、110-II)と;
前記圧延スタンド(100)の入口側での、前記上側の作業ロール(140-I)、及び/または、前記圧延材料(200)の上側面に対する、前記第1のエマルションの噴射のための、少なくとも1つの上側の噴射ノズル(130-I)と;
前記圧延スタンド(100)の前記入口側での、前記下側の作業ロール(140-II)、及び/または、前記圧延材料(200)の下側面に対する、前記第2エマルションの噴射のための、少なくとも1つの下側の噴射ノズル(130-II)と;および、
制御装置(150)の調節信号に応じての、前記第1および第2のエマルションにおける小滴サイズの調節のための、上側および下側の噴霧器装置(120-I、120-II)と;
を有している上記圧延スタンド(100)において、
算出装置(170)が、
前記上側の作業ロール(140-I)と前記圧延材料(200)の前記上側面との間の上側での摩擦と、前記下側の作業ロール(140-II)と前記圧延材料(200)の前記下側面との間の下側での摩擦との間の、大きさの相違の算出ために、設けられていること;および、
前記制御装置(150)が、
前記上側での摩擦が前記下側での摩擦よりも大きい間、
前記上側および下側の噴霧器装置(120-I、120-II)のための前記調節信号を、
前記上側の噴霧器装置(120-I)によって生成された前記第1のエマルションの小滴サイズが減少され、及び/または、前記下側の噴霧器装置(120-II)によって生成された前記第2のエマルションの小滴サイズが増大されるように発生するように、およびその逆に、
前記上側での摩擦が前記下側での摩擦よりも小さい間、
前記上側および下側の噴霧器装置(120-I、120-II)のための前記調節信号を、
前記上側の噴霧器装置(120-I)によって生成された前記第1のエマルションの小滴サイズが増大され、及び/または、前記下側の噴霧器装置(120-II)によって生成された前記第2のエマルションの小滴サイズが減少されるように発生するように、
形成されていること;
を特徴とする圧延スタンド(100)。
8. 上側のロール駆動装置(160-I)が、前記上側の作業ロール(140-I)、上側の中間ロールまたは上側の支持ロールの駆動のために設けられていること;
下側のロール駆動装置(160-II)が、前記下側の作業ロール(140-II)、下側の中間ロールまたは下側の支持ロールのために設けられていること;および、
前記上側での摩擦と前記下側での摩擦との間の、前記大きさの相違の算出ための、前記算出装置(170)が:
前記上側のロール駆動装置(160-I)によって生成された回転トルク(M1)の測定のための、第1の回転トルク測定装置(172-I)と;
前記下側のロール駆動装置(160-II)によって生成された回転トルク(M2)の測定のための、第2の回転トルク測定装置(172-II)と;
代表的に、前記上側のロール駆動装置によって生成された前記回転トルク(M1)と前記下側のロール駆動装置によって生成された前記回転トルク(M2)との間の相違としての、前記上側での摩擦と前記下側での摩擦との間の大きさの相違の計算のための、計算装置(176)と;
を有していること、および、
前記制御装置(150)が、
前記上側のロール駆動装置(160-I)によって生成された前記回転トルク(M1)が、前記下側のロール駆動装置(160-II)によって生成された前記回転トルク(M2)よりも大きい間、
前記上側および下側の噴霧器装置のための前記調節信号(S1、S2)を、
前記上側の噴霧器装置(120-I)によって生成された前記第1のエマルションの小滴サイズが減少され、及び/または、前記下側の噴霧器装置(120-II)によって生成された前記第2のエマルションの小滴サイズが増大されるように発生するように、およびその逆に、
前記上側のロール駆動装置(160-I)によって生成された前記回転トルク(M1)が、前記下側のロール駆動装置(160-II)によって生成された前記回転トルク(M2)よりも小さい間、
前記上側および下側の噴霧器装置のための前記調節信号(S1、S2)を、
前記上側の噴霧器装置(120-I)によって生成された前記第1のエマルションの小滴サイズが増大され、及び/または、前記下側の噴霧器装置(120-II)によって生成された前記第2のエマルションの小滴サイズが減少されるように発生するように、
形成されていること;
を特徴とする上記7に記載の圧延スタンド(100)。
9. 上側の電気的なロール駆動装置(160-I)が、前記上側の作業ロール(140-I)の駆動のために設けられており;
下側の電気的なロール駆動装置(160-II)が、前記下側の作業ロール(140-II)の駆動のために設けられており;
前記上側での摩擦と前記下側での摩擦との間の、前記大きさの相違(ΔR)の算出ための、前記算出装置(170)が:
前記上側の電気的なロール駆動装置(160-I)を通って流れる電流を測定するための第1の電流測定装置(174-I)と;
前記下側の電気的なロール駆動装置(160-II)を通って流れる電流を測定するための第2の電流測定装置(174-II)と;および、
代表的に、前記上側のロール駆動装置を通って流れる電流と前記下側のロール駆動装置を通って流れる電流との間の相違としての、前記上側での摩擦と前記下側での摩擦との間の大きさの相違(ΔR)の計算のための、計算装置(176)と;
を有していること、
前記制御装置(150)が、
前記上側のロール駆動装置(160-I)を通って流れる電流が、前記下側のロール駆動装置(160-II)を通って流れる電流よりも大きい間、
前記上側および下側の噴霧器装置(120-I、120-II)のための前記調節信号(S1、S2)を、
前記上側の噴霧器装置(120-I)によって生成された前記第1のエマルションの小滴サイズが減少され、及び/または、前記下側の噴霧器装置(120-II)によって生成された前記第2のエマルションの小滴サイズが増大されるように発生するように、およびその逆に、
前記上側のロール駆動装置(160-I)を通って流れる電流が、前記下側のロール駆動装置(160-II)を通って流れる電流よりも小さい間、
前記上側および下側の噴霧器装置(120-I、120-II)のための前記調節信号(S1、S2)を、
前記上側の噴霧器装置(120-I)によって生成された前記第1のエマルションの小滴サイズが増大され、及び/または、前記下側の噴霧器装置(120-II)によって生成された前記第2のエマルションの小滴サイズが減少されるように発生するように、
形成されていること;
を特徴とする上記7に記載の圧延スタンド(100)。
10. 少なくとも1つの前記混合装置(110-I、110-II)は、
前記制御装置(150)の調節信号に応じての、前記第1および第2のエマルション内における前記潤滑剤の濃度の個々の調節のために、形成されていること;
前記制御装置(150)が、更に、
前記上側での摩擦が、前記下側での摩擦よりも大きい間、
前記混合装置のための調節信号(S3、S4)を、
前記混合装置(110-I、110-II)によって調節された、前記潤滑剤の濃度が、前記第1のエマルション内において増大され、及び/または、前記第2のエマルションのために減少されるように発生するように、およびその逆に、
前記上側での摩擦が、前記下側での摩擦よりも小さい間、
前記混合装置のための調節信号(S3、S4)を、
前記混合装置(110-I、110-II)によって調節された、前記潤滑剤の濃度が、前記第1のエマルション内において減少され、及び/または、前記第2のエマルションのために増大されるように発生するように、
形成されていること;
を特徴とする上記7から9のいずれか一つに記載の圧延スタンド(100)。
【符号の説明】
【0036】
100 圧延スタンド
110-I 第1のエマルションのための混合装置
110-II 第2のエマルションのための混合装置
120-I 上側の噴霧器装置
120-II 下側の噴霧器装置
130-I 上側の噴射ノズル
130-II 下側の噴射ノズル
140-I 上側の作業ロール
140-II 下側の作業ロール
150 制御装置
160-I 上側のロール駆動装置
160-II 下側のロール駆動装置
170 摩擦の相違のための算出装置
172-I 上側のロール駆動装置のための、(第1の)回転トルク測定装置
172-II 下側のロール駆動装置のための、(第2の)回転トルク測定装置
174-I 上側のロール駆動装置のための、(第1の)電流測定装置
174-II 下側のロール駆動装置のための、(第2の)電流測定装置
176 計算装置
180 水タンク
190 潤滑剤タンク
200 圧延材料
A 圧延スタンドの出口側
E 圧延スタンドの入口側
M1 上側のロール駆動装置の回転トルク
M2 下側のロール駆動装置の回転トルク
S1 上側の噴霧器装置のための調節信号
S2 下側の噴霧器装置のための調節信号
S3 上側の混合装置のための調節信号
S4 下側の混合装置のための調節信号
ΔR 上側での摩擦と前記下側での摩擦との間の相違