IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アメシスタム ストレージ テクノロジー カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7144552角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶方法及び装置
<>
  • 特許-角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶方法及び装置 図1
  • 特許-角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶方法及び装置 図2
  • 特許-角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶方法及び装置 図3
  • 特許-角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶方法及び装置 図4
  • 特許-角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶方法及び装置 図5
  • 特許-角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶方法及び装置 図6
  • 特許-角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶方法及び装置 図7
  • 特許-角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶方法及び装置 図8
  • 特許-角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶方法及び装置 図9
  • 特許-角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶方法及び装置 図10
  • 特許-角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶方法及び装置 図11
  • 特許-角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶方法及び装置 図12
  • 特許-角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶方法及び装置 図13
  • 特許-角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶方法及び装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G11B 7/0065 20060101AFI20220921BHJP
   G11B 7/135 20120101ALI20220921BHJP
   G11B 7/085 20060101ALI20220921BHJP
   G11B 7/004 20060101ALI20220921BHJP
   G11B 7/007 20060101ALI20220921BHJP
   G03H 1/04 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
G11B7/0065
G11B7/135
G11B7/085 D
G11B7/004 Z
G11B7/007
G03H1/04
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021005720
(22)【出願日】2021-01-18
(65)【公開番号】P2021118026
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2021-01-18
(31)【優先権主張番号】202010070660.2
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521001294
【氏名又は名称】アメシスタム ストレージ テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Amethystum Storage Technology Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ム
(72)【発明者】
【氏名】ルオ ティエウェィ
(72)【発明者】
【氏名】ティエン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】フ ドォジァオ
(72)【発明者】
【氏名】リォウ イチョン
【審査官】中野 和彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-087448(JP,A)
【文献】特開2018-137030(JP,A)
【文献】国際公開第2011/064838(WO,A1)
【文献】特開2018-137031(JP,A)
【文献】特開2006-343714(JP,A)
【文献】特開2016-219088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 7/0065
G11B 7/135
G11B 7/085
G11B 7/004
G11B 7/007
G03H 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
参照光の入射角度が参照光の位置に一対一に対応すること
信号光ベクトル、参照光ベクトル及び格子ベクトルで構成されるブラッグ条件に不整合が発生する場合、参照光の入射角及び入射波長を制御することにより補正することができることを特徴とする、角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶方法。
【請求項2】
記録エリアブロック内の重なるホログラムの間に、参照光の入射角が異なることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
媒体の平行移動及び回転により記録/再生位置にアクセスすることを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
各行のシフト多重記録されたホログラムシーケンスの間に、45°以上の夾角で記録することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ガイドスロットでのマークを検出することによりクロスシフト多重記録/再生時のホログラムの位置及びクロス角度を確定することを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
書き込みプロセスでは、参照光の入射角度は、参照光の記憶媒体での書き込み位置に一対一に対応し、参照光の入射角度と参照光の記憶媒体での書き込み位置とを同時に変更することにより、前記一対一対応を実現することを特徴とする、角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶方法。
【請求項7】
参照光を複数の等角度Δθに変化するサブビームに分割し、前記サブビームの記憶媒体での書き込み位置を等間隔dxに変化させ、又は記憶媒体を移動させることにより前記サブビームの記憶媒体での書き込み位置を等間隔dxに変化させ、書き込みごとに、1つのサブビームのみを記憶媒体に照射するように制御し、ここで、dxは、シフト多重のシフトステップ幅であることを特徴とする、請求項に記載のホログラフィック記憶方法。
【請求項8】
前記シフト多重方向であるx方向にn回のシフト多重を行って、幅が2Rxの行を形成し、x方向に垂直なy方向に沿ってm回の行のシフト多重を行い、シフトステップ幅をdyとし、サイズが2Rx×2Ryであり、かつ異なる書き込み位置での参照光の入射角度が異なるユニットを形成し、ここで、Rxはホログラム画像情報のx方向での幅であり、Ryはホログラム画像情報のy方向での幅であり、dx=Rx/n、dy=Ry/mであることを特徴とする、請求項又はに記載のホログラフィック記憶方法。
【請求項9】
参照光を複数の等角度Δθに変化しマトリクス状に配列されるサブビームに分割し、前記サブビームを記憶媒体での2つの互いに垂直なx及びy方向に等間隔dx及びdyに変化させ、又は記憶媒体を移動させることにより前記サブビームを記憶媒体での2つの互いに垂直な方向に等間隔dx及びdyに変化させ、書き込みごとに、1つのサブビームのみを記憶媒体に照射するように制御し、ここで、dx及びdyはそれぞれ、横方向と縦方向のシフト多重のシフトステップ幅であることを特徴とする、請求項に記載のホログラフィック記憶方法。
【請求項10】
前記参照光は、ガルバノミラーにより、等角度Δθに変化するとともに記憶媒体での書き込み位置が等間隔dxに変化するリニア走査型照射を実現することを特徴とする、請求項7~9のいずれか1項に記載のホログラフィック記憶方法。
【請求項11】
前記参照光は、2軸のガルバノミラーにより、等角度Δθに変化するとともに記憶媒体での2つの互いに垂直なx及びy方向に等間隔dx及びdyに変化するマトリクス走査型照射を実現することを特徴とする、請求項7~9のいずれか1項に記載のホログラフィック記憶方法。
【請求項12】
参照光に対してx方向に沿って1行のシフト多重と書き込みを完了すると、記憶媒体を移動させることにより、参照光の書き込み位置を、x方向に初期位置に戻し、y方向にdyシフトし、新しい行に書き込み、このように繰り返して、マトリクス走査型照射プロセス全体を完了することを特徴とする、請求項11に記載のホログラフィック記憶方法。
【請求項13】
円形記憶媒体においてユニットの重畳多重及びクロス多重を行い、まずユニットをx方向に沿って重畳多重してユニット行を形成し、重畳幅をRxとし、次に円形記憶媒体を回転させてユニット行のクロス多重を実現することを特徴とする、請求項に記載のホログラフィック記憶方法。
【請求項14】
光源、参照光路、信号光路及び媒体ステージを含み、前記光源から射出された光は、分割された後に、参照光路に沿って伝送された参照光と信号光路に沿って伝送された信号光とを形成し、参照光と信号光は、媒体ステージが支持する記憶媒体で干渉が生じることにより、ホログラフィック記憶画像情報を形成する角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶装置であって、参照光の入射角度を制御することにより、参照光の入射角度と参照光の記憶媒体での書き込み位置を一対一に対応させる制御機構をさらに含み、
前記制御機構は、参照光を複数の等角度Δθに変化するサブビームに分割し、かつ書き込みごとに、1つのサブビームのみを記憶媒体に照射するように制御するビームスプリッタであることを特徴とする、角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶装置。
【請求項15】
光源、参照光路、信号光路及び媒体ステージを含み、前記光源から射出された光は、分割された後に、参照光路に沿って伝送された参照光と信号光路に沿って伝送された信号光とを形成し、参照光と信号光は、媒体ステージが支持する記憶媒体で干渉が生じることにより、ホログラフィック記憶画像情報を形成する角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶装置であって、参照光の入射角度を制御することにより、参照光の入射角度と参照光の記憶媒体での書き込み位置を一対一に対応させる制御機構をさらに含み、
前記制御機構は、参照光を複数の等角度Δθに変化しマトリクス状に配列されるサブビームに分割し、かつ書き込みごとに、1つのサブビームのみを記憶媒体に照射するように制御するビームスプリッタであることを特徴とする、角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶装置。
【請求項16】
光源、参照光路、信号光路及び媒体ステージを含み、前記光源から射出された光は、分割された後に、参照光路に沿って伝送された参照光と信号光路に沿って伝送された信号光とを形成し、参照光と信号光は、媒体ステージが支持する記憶媒体で干渉が生じることにより、ホログラフィック記憶画像情報を形成する角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶装置であって、参照光の入射角度を制御することにより、参照光の入射角度と参照光の記憶媒体での書き込み位置を一対一に対応させる制御機構をさらに含み、
前記制御機構は、参照光を等角度Δθに変化させ反射し、かつ参照光を記憶媒体で等間隔dxに走査するように制御することができるガルバノミラー構造であり、
前記制御機構は、参照光の垂直方向でのシフト多重を実現する別のガルバノミラー構造をさらに含むことを特徴とする、角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶装置。
【請求項17】
前記媒体ステージは、記憶媒体を平行移動させるように動かしてシフト多重及びクロス多重を実現する平行移動機構と、記憶媒体を回転させるように動かしてシフト多重を実現する回転機構とをさらに含むことを特徴とする、請求項14~16のいずれか1項に記載のホログラフィック記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィック光記憶の技術分野に属し、具体的には、角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
角度多重記録方法に用いられる参照光が平面波であり、参照光の入射角を変更することにより多重/記録を実現する。該方法において、参照光の入射角を0.1°だけ変更すれば、元のホログラムを再生することができず、このように該角度で新しいホログラムを記録することができ、このように複数回繰り返して、約100回の多重記録を実現することができる。該方法において、角度の選択性は、ブラッグ条件によって決められ、厚膜媒体を使用するため、再生光の強度は、角度の変化に非常に敏感であり、角度が0.1度変化する場合に、再生光の強度が大幅に低下する。しかしながら、該方法における信号光の入射位置が変化せず、クロス書き込みノイズが多重プロセスの進行につれて絶えず蓄積され、信号対ノイズ比が低下する。また、入射角の変化範囲が制限されるため、多重回数を無制限に向上させることができない。したがって、ノイズの蓄積と角度の変化範囲は、いずれも媒体の記憶容量を制限する。これに反して、シフト多重記録は、これらに制限されず、媒体容量を大幅に向上させることができる。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、上記従来技術における少なくとも1つの欠陥を解消し、記憶媒体の記憶容量を向上させるホログラフィック記憶方法及び装置並びに記憶媒体を提供することを目的とする。
【0004】
本発明に係る角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶方法は、参照光の入射角度が参照光の位置に一対一に対応することを特徴とする。
【0005】
記録エリアブロック内の重なるホログラムの間に、参照光の入射角が異なる。
【0006】
媒体の平行移動及び回転により記録/再生位置にアクセスする。
【0007】
各回のクロスシフト多重記録されたホログラムシーケンスの間に、45°以上の夾角で記録する。
【0008】
ガイドスロットでのマークを検出することによりクロスシフト多重記録/再生時のホログラムの位置及びクロス角度を確定する。
【0009】
信号光ベクトル、参照光ベクトル及び格子ベクトルで構成されるブラッグ条件に不整合が発生する場合、参照光の入射角及び入射波長を制御することにより補正することができる。
【0010】
本発明は、前記方法に適用される、角度多重及びシフト多重を組み合わせるホログラフィック記録/再生装置をさらに提供する。
【0011】
本発明は、上記方法及び装置に適用される角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶媒体をさらに提供し、ホログラフィック情報は、ユニットの形式で記憶媒体に記憶され、各ユニットは、複数の規則に従ってシフト多重されたホログラム画像情報を含み、同じユニットにおける異なる位置でのホログラム画像情報が記憶時に対応する格子ベクトル角度が異なる。
【0012】
記憶媒体において、複数の互いに重畳するユニットを含み、互いに重畳する2つの異なるユニットにおいて、同じ格子ベクトル角度に対応する2つのホログラム画像情報は、互いにずれて重ならない。
【0013】
前記規則は、1つの方向、例えばx方向に沿ってシフト多重し、かつx方向に垂直なy方向に沿ってシフト多重することであり、前記x方向のシフトステップ幅dxは、y方向のシフトステップ幅dyとは異なり、ホログラム画像情報のx方向の幅がRxとして定義され、y方向の幅がRyとして定義され、dx=Rx/n、dy=Ry/mであり、ここで、前記n、mは、それぞれホログラム画像情報のx方向、y方向のシフト多重回数であり、前記ユニットのサイズは、2Rx×2Ryである。
【0014】
記憶媒体において、複数の互いに重畳するユニットを含み、x方向及び/又はy方向に沿って重畳し、互いに重畳する2つの異なるユニットの重畳エリアのサイズは、Rx及び/又はRy以上である。
【0015】
前記ホログラム画像情報は、円形ホログラム画像であり、Rx=Ry=Dであり、ここで、Dは、円形ホログラム画像の直径であり、同じユニットにおいて、前記x方向は、シフト多重方向であり、前記y方向は、x方向に垂直であり、前記dy>dxである。
【0016】
前記ユニットのサイズは、2D×2Dであり、記憶媒体において、複数のx方向及び/又はy方向に沿って互いに重畳するユニットを含み、重畳幅がDである。
【0017】
前記ユニットは、x方向に沿ってDを重畳幅として連続重畳して、ユニット行を形成する。
【0018】
前記記憶媒体は、矩形を呈し、複数の平行に分布するユニット行を記憶している。
【0019】
前記記憶媒体は、円形を呈し、複数の同心円状に分布する記憶リングを有し、前記記憶リングのそれぞれは、少なくとも複数の径方向に沿って分布するユニット行を含み、これらのユニット行が径方向に沿って分布するx方向をx1として定義する。
【0020】
前記記憶リングは、複数のx方向がx1と一定の角度をなすユニット行をさらに含み、角度クロス多重を実現し、これらのユニット行が径方向に沿って分布するx方向をxi(i=2,3,4......)として定義する。
【0021】
前記一定の角度は、45°よりも大きい。
【0022】
前記記憶媒体は、円形を呈し、少なくとも1つの記憶リングを有し、前記記憶リングは、6つのx方向が異なるユニット行を含み、x方向をx1、x2......x6として定義し、2方向ずつの差は60°である。
【0023】
上記角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶方法の具体的なプロセスは、書き込みプロセスでは、参照光の入射角度が参照光の記憶媒体での書き込み位置に一対一対応し、参照光の入射角度と参照光の記憶媒体での書き込み位置とを同時に変更することにより、前記一対一対応を実現する。
【0024】
参照光を複数の等角度Δθに変化するサブビームに分割し、前記サブビームの記憶媒体での書き込み位置を等間隔dxに変化させ、又は記憶媒体を移動させることにより前記サブビームの記憶媒体での書き込み位置を等間隔dxに変化させ、書き込みごとに、1つのサブビームのみを記憶媒体に照射するように制御し、ここで、dxは、シフト多重のシフトステップ幅であることを特徴とする、請求項7に記載のホログラフィック記憶方法。
【0025】
前記シフト多重方向であるx方向にn回のシフト多重を行って、幅が2Rxの行を形成し、x方向に垂直なy方向に沿ってm回の行のシフト多重を行い、シフトステップ幅をdyとし、サイズが2Rx×2Ryであり、かつ異なる書き込み位置での参照光の入射角度が異なるユニットを形成する。
【0026】
参照光を複数の等角度Δθに変化しマトリクス状に配列されるサブビームに分割し、前記サブビームを記憶媒体での2つの互いに垂直なx及びy方向に等間隔dx及びdyに変化させ、又は記憶媒体を移動させることにより前記サブビームを記憶媒体での2つの互いに垂直な方向に等間隔dx及びdyに変化させ、書き込みごとに、1つのサブビームのみを記憶媒体に照射するように制御し、ここで、dx及びdyはそれぞれ、横方向と縦方向のシフト多重のシフトステップ幅であることを特徴とする、請求項7に記載のホログラフィック記憶方法。
【0027】
前記参照光は、ガルバノミラーにより、等角度Δθに変化するとともに記憶媒体での書き込み位置に等間隔dxに変化するリニア走査型照射を実現する。
【0028】
前記参照光は、2軸のガルバノミラーにより、等角度Δθに変化し、かつ記憶媒体上での、2つの互いに垂直なx及びy方向に等間隔dx及びdyに変化するマトリクス走査型照射を実現する。
【0029】
参照光に対してx方向に沿って1行のシフト多重と書き込みを完了すると、記憶媒体を移動させることにより、参照光の書き込み位置を、x方向に初期位置に戻し、y方向にdyシフトし、新しい行に書き込み、このように繰り返して、マトリクス走査型照射プロセス全体を完了する。
【0030】
書き込みプロセスでは、2Rx×2Ryのユニットを記憶ユニットとし、前記ユニットにおける横方向と縦方向に沿っったシフト多重のシフトステップ幅がそれぞれdxとdyであり、前記ユニットにおける異なる書きみ位置での参照光の入射角度が異なる。
【0031】
該方法において、ホログラム画像情報のx方向の幅がRxであり、y方向の幅がRyであり、dx=Rx/n、dy=Ry/mであり、ここで、前記n、mは、それぞれホログラム画像情報のx方向、y方向のシフト多重回数である。
【0032】
該方法において、方形記憶媒体においてx方向とy方向に沿って、それぞれユニットの重畳多重を行い、前記x方向の重畳幅がRxであり、前記y方向の重畳幅がRyである。
【0033】
該方法において、円形記憶媒体においてユニットの重畳多重とクロス多重を行う。
【0034】
まずユニットをx方向に沿って重畳多重してユニット行を形成し、重畳幅をRxとし、次に円形記憶媒体を回転させてユニット行のクロス多重を実現する。
【0035】
本発明に係る角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶装置は、光源、参照光路、信号光路及び媒体ステージを含み、前記光源から射出された光は、分割された後に、参照光路に沿って伝送された参照光と信号光路に沿って伝送された信号光とを形成し、参照光と信号光は、媒体ステージが支持する記憶媒体で干渉が生じることにより、ホログラフィック記憶画像情報を形成し、該装置の改良点として、参照光の入射角度を制御することにより、参照光の入射角度と参照光の記憶媒体での書き込み位置を一対一に対応させる制御機構をさらに含む。
【0036】
前記制御機構は、参照光を複数の等角度Δθに変化するサブビームに分割し、かつ書き込みごとに、1つのサブビームのみを記憶媒体に照射するように制御するビームスプリッタである。
【0037】
前記制御機構は、参照光を複数の等角度Δθに変化しマトリクス状に配列されるサブビームに分割し、かつ書き込みごとに、1つのサブビームのみを記憶媒体に照射するように制御するビームスプリッタである。
【0038】
前記制御機構は、参照光を等角度Δθに変化させ反射し、かつ参照光を記憶媒体で等間隔dxに走査するように制御するガルバノミラー構造である。
【0039】
前記制御機構は、参照光を垂直方向にシフト多重する別のガルバノミラー構造をさらに含む。
【0040】
前記媒体ステージは、記憶媒体を平行移動させるように動かして、シフト多重及びクロス多重を実現する平行移動機構をさらに含む。
【0041】
前記媒体ステージは、記憶媒体を回転させるように動かして、記憶媒体でのシフト多重を実現する回転機構をさらに含む。
【0042】
従来技術に比べて、本発明の有益な効果は、本発明は、角度多重技術とシフト多重技術の利点を組み合わせてシステムの容量及び安定性を向上させる、ホログラフィック多重記録方法を開示する。環境温度波動による媒体の収縮及び膨張のため、ブラッグ条件の不整合を引き起こし、角度多重記録の利点は、参照ビームの入射角とレーザーの出射波長とを制御することにより、媒体の膨張によるブラッグ条件の不整合を補正し、環境温度変動により引き起こされる、再生信号が弱いという課題を解決することである。一方、シフト多重記録の利点は、クロス書き込みノイズを蓄積せず、かつクロスシフト多重方法を利用して多重回数を向上させることである。本発明は、両者を組み合わせることにより、容量が大きく、安定性が高い記録装置を実現する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、角度多重記録の原理図である。
図2図2は、角度多重記録方法を採用する光路システムの構造図である。
図3図3は、シフト多重記録の原理図である。
図4図4は、クロスシフト多重記録の原理図である。
図5図5は、媒体収縮及び波長波動の補正方法である。
図6図6は、参照光の入射角度を変更する方法の概略図である
図7図7は、角度-シフト多重記録方法の概略図である。
図8図8は、角度-シフト多重2次元記録方法の概略図である。
図9図9は、角度-シフト多重記録方法の概略図である。
図10図10は、ホログラフィック多重記録のフローチャートである。
図11図11は、参照光の入射角度を調整するシステムの光路図である。
図12図12は、角度多重記録における多重回数の推定方法の概略図である。
図13図13は、ディスク媒体でのクロスシフト多重記録方法の概略図である。
図14図14は、格子に基づく角度-シフト多重光路システムの構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の図面は、例示的な説明に過ぎず、本発明を限定するものであると理解すべきではない。以下の実施例をよりよく説明するために、図面におけるいくつかの部品を省略、拡大又は縮小する可能性があるが、実際の製品の寸法を示すものではない。図面におけるいくつかの公知の構造及びその説明を省略する可能性があることが、当業者であれば理解されるであろう。
【0045】
[実施例]
従来の角度多重記録方法は、平面波を参照光として、媒体上の同じ位置に、入射角度を変更すると同時にホログラムの多重記録を行い、図1に示すとおりである。ホログラムを予定の回数記録した後、該位置に重ならない別の位置に次回のホログラム角度多重記録を行う。再生時、媒体に参照ビームのみを照射し、フィルタを使用して他の位置のホログラムからのクロストークを防止する。典型的な角度多重ホログラフィック記録/再生装置は、図2に示すとおりであり、参照光の入射角がガルバノミラー90により調整される。
【0046】
球面波を参照光とするシフト多重記録原理は、図3に示すとおりであり、これは、球面参照波を利用してホログラムのシフト多重記録と再生を行う方法である。ホログラムを記録した後に媒体を一定の距離移動させると、このホログラムを再生することができず、即ち新しいホログラムを改めて記録することができる。具体的には、ブラッグ原理によれば、信号ビームks、参照ビームkr及び格子ベクトルkgが共に三角形を構成し、媒体を数ミクロン移動させると、元の三角形を破壊し、ホログラムを再生することができない。該方法において、参照光軸及び信号光軸が位置する平面と媒体表面との交差線を軸とし、媒体が該軸方向に沿ってシフト多重を行い、該軸方向でのシフト選択性がブラッグ条件によって決められ、わずか数ミクロンのシフト距離で条件を満たすことができる。該軸に垂直な方向に、回折強度がシフト距離に敏感ではなく、記憶密度を向上させるのが困難である。図4は、本発明に関するクロスシフト多重記録方法を示し、該方法は、軸方向にシフト多重記録を実行して2次元のホログラムアレイを得て、そして媒体を媒体表面の中心法線の周りに一定の角度回転させた後、第2回のシフト多重の上書き記録を行い、このように、クロスシフト多重記録を完了し、球面波を用いるシフト多重記録方法の多重回数が不足であるという課題を解決する。角度多重方法と比べて、球面波参照光を用いたシフト多重方法は、より高い信号対ノイズ比とより大きい記憶容量を有する。
【0047】
実際の応用では、ホログラフィック記憶において、環境温度の変化のため、媒体が収縮するか又は膨張し、またレーザ波長の波動により、ホログラムの再生を困難にし、これらが信号品質を低下させ、この点について、上記2種類の方法を比べる。
【0048】
図5は、媒体収縮、波長波動などの補正方法を説明する。ここで、krは参照光ベクトルを示し、ksは信号光ベクトルを示し、kgは格子ベクトルを示し、丸は波長の変化によるエワルド球(Ewald sphere)の変化を示す。波長の増加につれて、エワルド球の半径が小さくなり、したがって、ホログラムの再生に最も有利なkr方向が変化し、ホログラムの回折効率が低くなる。これに反して、平面波を参照ビームとする角度多重は、参照ビームの入射角を変更することにより、非常に容易にブラッグ条件を再度満たすことができる。一方、球面波を参照光とするシフト多重において、波面が複数の方向に沿って伝搬されたサブ波面の重畳によってなるものであり、参照光の傾斜角を変更しても、一部しか最適化することができず、全てのkr方向を最適化しにくい。したがって、基本的には劣化信号を復元することができず,信号のマージンが小さくなる。
【0049】
図6は、球面波参照ビームの光軸を変更する方法を説明し、レンズをモータに設け、3つの空間次元に光軸を変更する。しかしながら、該方法は、理論的に、参照ビーム中の全ての波ベクトルkrの方向を補正するが可能でない。したがって、本発明は、角度多重とシフト多重とのそれぞれの利点を組み合わせることにより、上記状況を補正可能な大容量記憶方法を確立する。
【0050】
本発明は、参照ビームの角度を変更することによりシフト多重記録を記録する方法を開示する。図7に示すように、ホログラムを図面において丸で示し、直径が500μmである。システム光源は、短パルスレーザーを使用し、媒体が左に移動すると同時に、ホログラムを記録する。本発明に係る方法において、800回の多重を実現することができる。図から分かるように、上記ホログラム画像情報は、円形ホログラム画像であり、即ちRx=Ry=D=500μmである。
【0051】
図7に示すように、基準角0(1番目の角度)のところに第1枚のホログラムを記録し、その後に5μmごと移動すると、参照ビームの角度が0.1度変化し、同時に1枚のホログラムを記録し、このように繰り返して、計100枚のホログラムを記録する。各ホログラムは、異なる参照光の角度を有するため、平面波を参照光として使用しても、クロストークが発生しない。該記録シーケンスは、図7において右へ多重記録を行う。該ホログラムシーケンスにおいて、参照ビーム角度を0度(1番目の角度)から+9.9度に変化させてホログラムを記録し、これは、ホログラムが右へ連続配列される形態である。即ち、上記x方向のシフトステップ幅dx=5μm、ホログラム画像情報のx方向のシフト多重回数n=100であり、多重ごとに、参照光が等角度Δθ=0.1度に変化する。
【0052】
該方法の2次元記録プロセスは、図8に示すように、図7に示す方法を利用して右へ連続シフト多重した後、記憶媒体を媒体のシフト方向に垂直な方向に移動させ、さらに第2回の連続シフト多重を繰り返し、図8に示すとおりである。具体的には、第1のホログラムシーケンス(実線)の参照光入射角が0~+9.9度であり、第2のホログラムシーケンス(破線)は、第1のホログラムシーケンスとの中心距離が62.5μmであり、同様に100枚のホログラムを含み、その参照光の入射角変化範囲が+10度~+19.9度である。上記プロセスを繰り返して、8つのホログラムシーケンスで構成される1つのホログラム記録ユニットを得て、800回の多重を実現することができる。即ち、上記y方向のシフトステップ幅dy=62.5μm、ホログラム画像情報のy方向のシフト多重回数m=8であり、同様に、横方向多重ごとに、参照光が等角度Δθ=0.1度に変化し、隣接する2行のホログラムシーケンスの参照光開始角度の差が10度である。
【0053】
シフト方向にシフト多重して得られた、互いに重畳する複数のホログラムシーケンスのそれぞれは、100枚のホログラムを含み、その配列を図9に示す。多重記録のシフト距離は5ミクロンでり、隣接する2つのシーケンスにおける第1枚のホログラムの間隔は500μmであり、即ちホログラムの直径であり、したがって、この2枚のホログラムを形成する参照光の入射角が同じであるが、互いに重ならないため、クロストークが発生しない。ホログラムが重なるエリアにおいて、参照光の入射角が異なるため、ホログラムの間にもクロストークが発生しない。したがって、本発明に係る角度-シフト多重方法に記載のホログラムはいずれも単独に再生することができ、該方法の記録フローを図10に示す。上記ユニットのサイズは、2D×2D=1mm×1mmであり、記憶媒体において、x方向及び/又はy方向に沿って複数の互いに重畳するユニットが存在し、重畳幅がD=0.5mmである。
【0054】
本発明は、参照光の入射角度を調整する方法及び装置をさらに提供する。本発明が高速角度変化機能を求めることを考慮し、音響光学変調器(AOD)を使用して角度を変更することを提案する。AODは、搬送波の振幅を変調することにより、搬送波及びサイドバンドで構成されるスペクトルを生成し、サイドバンドに対応する回折光、即ち参照ビームを生成することができる。その後、振幅変調信号の周波数を変更することにより角度を変更する。
【0055】
サイドバンドのスペクトルは、レンズL1の開口数(NA)によって決められ、数十MHzの帯域幅に達することができる。図12は、AODを利用して角度多重を実現する方法における多重回数に対する推定を示し、NA=0.85の対物レンズを使用すれば、多重回数が800に達することができる。
【0056】
ホログラムの記録密度をさらに向上させるために、本発明は、クロスシフト多重方法を提供する。図13に示すように、記憶媒体内にガイドスロットが設けられ、ガイドスロット内に初期位置マークが設けられ、記憶媒体は、マークを初期位置として、図13の矢印(1)、(2)及び(3)の方向に沿って右へシフト多重を行う。媒体を少しずつ回転させ、毎回回転した後に初期位置マークを定位し、シフト多重記録を行う。記憶媒体と光ヘッドとの相対位置を変更すると、記録格子のベクトル方向と記憶媒体のシフト方向との夾角を変更することができ、(1)、(2)及び(3)の位置にシフト多重して得られたホログラムシーケンスのクロス角を50度以上に設定することができ、このように、記憶媒体の表面全体に6回のクロスシフト多重を実現することができ、即ち多重回数が6倍になる。
【0057】
具体的に図13の右側拡大図を参照し、該図から分かるように、矢印(1)は、記憶リングの径方向に沿う方向であり、該方向を1番目のx方向とし、x1として定義し、記憶リング内側を開始点とし、矢印(1)の方向に沿って複数の記憶ユニットの重畳記録を実現し、各ユニットは、サイズが1mm×1mmであり、重畳幅が0.5mmであり、100×8枚のホログラムを含み、800枚のホログラムが100×8のアレイで配列され、x1方向のシフトステップ幅dx=5μmであり、x1方向に垂直なy1方向のシフトステップ幅dy=62.5μmであり、同じ行において、隣接する2枚のホログラムの記録参照光が等角度Δθ=0.1度に変化し、隣接する2行のホログラムシーケンスの参照光開始角度の差が10度である。
【0058】
矢印(1)の方向に沿って、記憶リングにより次のユニット行を内から外へ記録した後に、小さな角度回転させ、同じ開始位置に同じ方向矢印(1)に沿って継続して回転させてシフト多重を行い、矢印(1)の方向に沿って記録するのが一回りの記憶リングを使用し、即ち1回転するに至ったら停止する。
【0059】
そして、記憶媒体を矢印(2)の開始位置に移動させ、矢印(2)の開始位置、矢印(1)の開始位置及び円心がなす夾角が60度であり、矢印(2)の方向に沿って、複数の記憶ユニットの重畳記録を実現し、記憶リングによって矢印(2)の方向に沿って内から外へ記録されたユニット行と矢印(1)に沿って記録されたユニット行とのクロス多重角度が60度である。同様に、記憶媒体を小さな角度回転させ、同じ開始位置に同じ方向矢印(2)に沿って継続してシフト多重を行い、矢印(2)の方向に沿って記録するのが一回りの記憶リングを使用し、即ち1回転するに至ったら停止し、矢印(2)と矢印(1)の2つの方向のクロス多重を完了する。
【0060】
同様に、例えば、矢印(3)と前の2つの方向矢印(2)/矢印(1)とのクロス多重を実現することができ、60度をクロス多重夾角とし、このように6回繰り返す。
【0061】
図14は、本発明に係る、従来の角度多重記録可能な光学システムにおいて実現できる角度-シフト多重システムの構造の例である。図面に示す角度-シフト多重に基づくホログラフィック記憶装置は、レーザー10を含み、光源としてのレーザー10から射出された光がシャッタ20及びアナモルフィックプリズム群40を順に通過し、第1の偏光ビームスプリッタプリズム51により参照光路及び信号光路に分割される。信号光は、第2のビーム拡大コリメータ102を通過して第2の偏光ビームスプリッタプリズム52により空間光変調器110へ反射されて信号をロードし、第2の偏光ビームスプリッタプリズム52を改めて通過し、リレーレンズ群120及び第1のフーリエレンズ131を順に通過してホログラフィックディスク140に到達する。参照光は、減衰器60及び2分の1波長板70を通過して第1の反射ミラー81により反射され、次に音響光学変調器(AOM)160又はガルバノミラーに入って角度が変調され、そして第2の反射ミラー82及び第1のビーム拡大コリメータ101で構成されるコリメート構造によってビーム拡大コリメートされ、ホログラフィックディスク140に到達する。参照光と信号光は、媒体ステージが支持するホログラフィックディスク140で干渉が生じることによりホログラフィック記憶画像情報を形成し、上記音響光学変調器(AOM)160又はガルバノミラーは、参照光の入射角度を制御することにより、参照光の入射角度と参照光の記憶媒体での書き込み位置とを1対1に対応させる。
【0062】
また、参照光を複数の等角度Δθに変化するサブビームに分割する格子と、書き込みごとに1つのサブビームのみを記憶媒体に照射するように制御する光ゲートスイッチとで構成されるビームスプリッタを採用してもよい。
【0063】
明らかに、本発明の上記実施例は、本発明の技術手段を明確に説明するための例に過ぎず、本発明の実施形態を制限することを意図するものではない。本発明の特許請求の範囲の精神及び原則内で行われるいかなる修正、同等置換、改善などは、いずれも本発明の特許請求の範囲の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0064】
10: レーザー
20: シャッタ(AOM)
30: 偏光板
40: アナモルフィックプリズム群
50: 偏光ビームスプリッタプリズム
51: 第1の偏光ビームスプリッタプリズム
52: 第2の偏光ビームスプリッタプリズム
60: 減衰器
70: 2分の1波長板
80: 反射ミラー
81: 第1の反射ミラー
82: 第2の反射ミラー
90: ガルバノミラー
100: ビーム拡大コリメータ
101: 第1のビーム拡大コリメータ
102: 第2のビーム拡大コリメータ
110: 空間光変調器
120: リレーレンズ群
130: フーリエレンズ
131: 第1のフーリエレンズ
132: 第2のフーリエレンズ
140: ホログラフィックディスク
150: カメラ
160: 音響光学変調器(AOM) ガルバノミラーで代わってもよい
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14