(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】フォークリフトおよび荷役システム
(51)【国際特許分類】
B66F 9/075 20060101AFI20220921BHJP
B66F 9/24 20060101ALI20220921BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B66F9/075 E
B66F9/24 A
B60H1/00 101H
B60H1/00 101U
B60H1/00 101Q
(21)【出願番号】P 2021050265
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2021-03-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 良平
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-132351(JP,A)
【文献】特開2018-203224(JP,A)
【文献】特開2004-161067(JP,A)
【文献】特開2019-123364(JP,A)
【文献】特開2006-007928(JP,A)
【文献】特開2017-149375(JP,A)
【文献】特開2009-120143(JP,A)
【文献】特開2020-154976(JP,A)
【文献】特開2019-143916(JP,A)
【文献】中国実用新案第212332320(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/00-11/04
B60H 1/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータの手動操作により走行する有人運転モードと、搬送スケジュールに従って荷役作業および自動走行を行う無人運転モードと、を備えるフォークリフトであって、
運転席が設けられた車体と、
前記運転席の空調制御を行う空気調和装置と、
前記空気調和装置の制御を行う制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
外部から前記荷役作業の対象となる荷物の数量データを取得する第1情報取得部と、
前記搬送スケジュールの進行状況を特定して進行状況データを取得する第2情報取得部と、
前記数量データおよび前記進行状況データが入力されると、所定のパラメータを有する機械学習アルゴリズムを用いて、前記無人運転モードから前記有人運転モードに切り替わるタイミングを予測するように機械学習された第1学習モデル部と、
前記数量データおよび前記進行状況データを前記第1学習モデル部に入力することで、前記第1学習モデル部から前記タイミングに関するタイミング情報を取得する処理部と、
前記タイミング情報に基づいて、前記無人運転モードから前記有人運転モードに切り替わる前に前記空気調和装置に前記空調制御を開始させる制御部と、
前記運転席の温度に関する第1温度データを取得する第3情報取得部と、
前記有人運転モード時に前記運転席のオペレータの温度に関する第2温度データを取得する第4情報取得部と、
前記第1温度データおよび前記第2温度データが入力されると、所定のパラメータを有する機械学習アルゴリズムを用いて、前記オペレータの快適さの程度を示す快適スコアを生成するように機械学習された第2学習モデル部と、
を備え、
前記処理部は、前記第1温度データおよび前記第2温度データを前記第2学習モデル部に入力することで、前記第2学習モデル部から前記快適スコアを取得し、
前記制御部は、
前記運転席の温度に基づいて前記空気調和装置の風温および/または風量を設定する第1処理を実行し、
前記有人運転モード時に、前記第1処理で設定した前記風温および/または風量を前記快適スコアに基づいて変化させる第2処理を実行する
ことを特徴とするフォークリフト。
【請求項2】
請求項
1に記載のフォークリフトと、
前記フォークリフトと通信を行う管理装置と、
を含むことを特徴とする荷役システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトおよび荷役システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、冷暖房などの空気調和装置を備えたフォークリフトが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のフォークリフトでは、オペレータが操作パネルを操作することで空気調和装置が稼働する。このため、フォークリフトの走行開始前に空気調和装置を予め稼働させておくことで、フォークリフトの走行開始時までに、運転席の温度を適温にすることができる。
【0003】
しかしながら、有人運転モードと無人運転モードとを備えるフォークリフトの場合、オペレータは有人運転モードの開始時刻を正確に把握することができないため、空気調和装置を適切なタイミングで稼働させることが難しいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、空気調和装置を適切なタイミングで稼働させることが可能なフォークリフトおよび荷役システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るフォークリフトは、
オペレータの手動操作により走行する有人運転モードと、搬送スケジュールに従って荷役作業および自動走行を行う無人運転モードと、を備えるフォークリフトであって、
運転席が設けられた車体と、
前記運転席の空調制御を行う空気調和装置と、
前記空気調和装置の制御を行う制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
外部から前記荷役作業の対象となる荷物の数量データを取得する第1情報取得部と、
前記搬送スケジュールの進行状況を特定して進行状況データを取得する第2情報取得部と、
前記数量データおよび前記進行状況データが入力されると、所定のパラメータを有する機械学習アルゴリズムを用いて、前記無人運転モードから前記有人運転モードに切り替わるタイミングを予測するように機械学習された第1学習モデル部と、
前記数量データおよび前記進行状況データを前記第1学習モデル部に入力することで、前記第1学習モデル部から前記タイミングに関するタイミング情報を取得する処理部と、
前記タイミング情報に基づいて、前記無人運転モードから前記有人運転モードに切り替わる前に前記空気調和装置に前記空調制御を開始させる制御部と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成では、第1学習モデル部が、無人運転モードから有人運転モードに切り替わるタイミングを予測し、制御部が、当該予測に基づいて無人運転モードから有人運転モードに切り替わる前に空気調和装置に空調制御を開始させる。したがって、この構成によれば、空気調和装置を適切なタイミングで稼働させることができる。
【0008】
前記フォークリフトにおいて、
前記制御装置は、
前記運転席の温度に関する第1温度データを取得する第3情報取得部を備え、
前記制御部は、
前記運転席の温度に基づいて前記空気調和装置の前記風温および/または風量を設定する第1処理を実行するよう構成できる。
【0009】
前記フォークリフトにおいて、
前記制御装置は、
前記有人運転モード時に前記運転席のオペレータの温度に関する第2温度データを取得する第4情報取得部と、
前記第1温度データおよび前記第2温度データが入力されると、所定のパラメータを有する機械学習アルゴリズムを用いて、前記オペレータの快適さの程度を示す快適スコアを生成するように機械学習された第2学習モデル部と、
を備え、
前記処理部は、前記第1温度データおよび前記第2温度データを前記第2学習モデル部に入力することで、前記第2学習モデル部から前記快適スコアを取得し、
前記制御部は、前記有人運転モード時に、前記第1処理で設定した前記風温および/または風量を前記快適スコアに基づいて変化させる第2処理を実行するよう構成できる。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る荷役システムは、
前記いずれかのフォークリフトと、
前記フォークリフトと通信を行う管理装置と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、空気調和装置を適切なタイミングで稼働させることが可能なフォークリフトおよび荷役システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る荷役システムのブロック図である。
【
図2】第1実施形態に係るフォークリフトを示す図であって、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【
図3】第1実施形態に係る荷役システムの平面図である。
【
図4】第2実施形態に係る荷役システムのブロック図である。
【
図5】第2実施形態に係る空気調和装置の制御方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るフォークリフトおよび荷役システムの実施形態について説明する。
【0014】
[第1実施形態]
図1に、本発明の第1実施形態に係る荷役システム1Aのブロック図を示す。荷役システム1Aは、管理装置100Aと、レーザー誘導方式のフォークリフト200A(本発明の「フォークリフト」に相当)とを備える。
【0015】
管理装置100Aは、通信部101と、統括制御部102と、表示部103とを備える。管理装置100Aは、フォークリフト200Aが走行する作業場(例えば、
図3に示すように、複数のラック3を有する倉庫2)の外に設けてもよいし、作業場の中に設けてもよい。
【0016】
通信部101は、管理装置100Aに予め登録されたフォークリフト200Aおよび他の作業車(例えば、無人フォークリフトや有人無人フォークリフト)と無線通信を行うよう構成されている。
【0017】
統括制御部102は、フォークリフト200Aの走行および荷役作業を管理するよう構成されている。例えば、統括制御部102は、フォークリフト200Aによる荷役作業のための搬送スケジュールを作成するとともに荷役作業を円滑に行うための走行ルートを決定する。統括制御部102は、通信部101を介して搬送スケジュールおよび走行ルートをフォークリフト200Aに通知する。
【0018】
表示部103は、例えば、液晶ディスプレイで構成されている。表示部103には、フォークリフト200Aおよび他の作業車の搬送スケジュールおよび走行ルートが表示される。
【0019】
フォークリフト200Aは、有人運転モードと無人運転モードとを切り替え可能な有人無人フォークリフトである。
図2に示すように、フォークリフト200Aは、車体201と、車体201の前部に設けられた荷役装置202と、車体201の後部に設けられた運転席203とを備える。荷役装置202は、左右一対のマストと、マストに昇降可能に取り付けられた左右一対のフォークとを含む。運転席203には、オペレータが足で操作するブレーキペダルが設けられている。
【0020】
運転席203の前方にはレバー類204が設けられており、運転席203の側方にはステアリングハンドル205が設けられている。レバー類204には、車体201を前後進させるための走行レバーと、荷役装置202を操作して荷役作業を行うための荷役レバー(リフトレバー、リーチレバー、ティルトレバー)が含まれる。
【0021】
レバー類204とステアリングハンドル205との間には、表示部206が設けられている。表示部206は、例えば、液晶ディスプレイで構成される。表示部206は、搬送スケジュールや、後述する空気調和装置210の情報(例えば、風温および風量等)を表示することができる。
【0022】
運転席203の上方には、落下物からオペレータを保護するためのヘッドガード207が設けられている。なお、
図2(A)ではヘッドガード207を省略している。
【0023】
ヘッドガード207のピラーには、運転席203にいるオペレータを撮影してオペレータの画像データ(静止画および/または動画)を取得する撮影手段208が設けられている。撮影手段208は、本発明の「画像データ生成部」に相当し、例えば、赤外線カメラおよびカラーカメラ(もしくは、カラー画像を取得可能な赤外線カメラ)で構成される。本実施形態では、撮影手段208を省略してもよい。
【0024】
ヘッドガード207の天板には、レーザースキャナ209および空気調和装置210が設けられており、車体201の内部には、制御装置220Aが設けられている。
【0025】
図3に示すように、レーザースキャナ209は、レーザー光源を回転させながら周囲にレーザーLを投光し、倉庫2内に配置された複数の反射板4からの反射光L’を検出する。レーザースキャナ209の演算部は、反射板4の位置を所定のマップ上で記憶しており、三角測量の原理に基づいて車体201の現在地(自己位置)を算出する。このようにして、フォークリフト200Aは、車体201の現在地に関する現在地情報を取得しながら、通知された走行ルートに従って走行する。
【0026】
空気調和装置210は、温風と冷風とを切り替えて運転席203に供給することで、運転席203の空調制御を行うことが可能な冷暖房装置である。空気調和装置210は、制御装置220Aの制御下で、風温および風量が自動調整される。
【0027】
制御装置220Aは、
図1に示すように、第1情報取得部221と、第2情報取得部222と、第1学習モデル部223と、処理部224と、制御部225とを備える。
【0028】
第1情報取得部221は、荷役作業の対象となる荷物の数量に関する数量データを取得する。具体的には、第1情報取得部221は、管理装置100Aから、無人運転モードでの荷役作業の対象となる荷物の数量データを所定の周期で取得する。数量データは、フォークリフト200Aの搬送スケジュールの進行状況によって変化し、他の作業車の搬送スケジュールの進行状況によっても変化する。
【0029】
管理装置100Aは、荷役作業の対象となる荷物のうち、有人運転モードでの荷役作業の対象となる荷物と無人運転モードでの荷役作業の対象となる荷物とを、予め区別して管理している。そして、管理装置100Aは、無人運転モードでの荷役作業の対象となる荷物のうち、荷物001~100はフォークリフト200Aが搬送、荷物101~200は作業車Aが搬送、荷物201~300は作業車Bが搬送、・・・というように割り当てを行い、搬送スケジュールの進行状況に応じて上記割り当てを修正する。
【0030】
第2情報取得部222は、フォークリフト200Aの搬送スケジュールの進行状況を特定することで、フォークリフト200Aの進行状況データを取得する。第2情報取得部222は、例えば、無人運転モードにおける搬送スケジュールの進行状況を0%~100%のパーセンテージで特定したり、進行速度で特定したりする。進行状況データは、上記のパーセンテージおよび/または進行速度を含むデータである。
【0031】
第1学習モデル部223は、数量データおよび進行状況データが入力されると、所定のパラメータを有するニューラルネットワーク等の機械学習アルゴリズムを用いて、無人運転モードから有人運転モードに切り替わるタイミングを予測するように機械学習された学習済みモデルである。本実施形態では、無人運転モードにおける搬送スケジュールの進行状況が100%になったタイミングで、無人運転モードから有人運転モードに切り替わるものとする。
【0032】
学習済みモデルの機械学習では、上記のとおりニューラルネットワーク等の機械学習アルゴリズムを用いて、教師データを大量に入力する。教師データは、数量データおよび進行状況データに所定のタイミング(例えば、今から1時間後等)を紐付けしたデータを含む。例えば、数量データに含まれる数量が大きいとタイミングは遅くなり、数量が小さいとタイミングは早くなる。進行状況データに含まれる進行状況が0%に近いほどタイミングは遅くなり、進行状況が100%に近いほどタイミングは早くなる。数量データおよび進行状況データと上記タイミングとの間には、相関関係等の一定の関係が存在することを推認できる。
【0033】
処理部224は、第1情報取得部221から取得した数量データおよび第2情報取得部222から取得した進行状況データを第1学習モデル部223に入力することで、第1学習モデル部223から上記タイミングに関するタイミング情報を取得する。処理部224は、取得したタイミング情報を制御部225と共有する。
【0034】
制御部225は、空気調和装置210の風温および風量の自動制御を行うよう構成されている。具体的には、制御部225は、タイミング情報に基づいて、無人運転モードから有人運転モードに切り替わる前に(例えば、10分前に)、空気調和装置210に空調制御を開始させる。なお、何分前に開始させるかは、適宜設定・変更することができる。
【0035】
制御部225および処理部224は、例えば、少なくとも1つのマイコンで構成され、マイコンのCPUが所定のプログラムを実行すること等によって制御部225および処理部224の各種機能が実現される。
【0036】
本実施形態に係るフォークリフト200Aでは、第1学習モデル部223が、無人運転モードから有人運転モードに切り替わるタイミングを予測し、制御部225が、当該予測に基づいて無人運転モードから有人運転モードに切り替わる前に空気調和装置210に空調制御を開始させる。したがって、本実施形態に係るフォークリフト200Aによれば、空気調和装置210を適切なタイミングで稼働させることができる。
【0037】
[第2実施形態]
図4に、本発明の第2実施形態に係る荷役システム1Bのブロック図を示す。荷役システム1Bは、管理装置100Bと、レーザー誘導方式のフォークリフト200B(本発明の「フォークリフト」に相当)とを備える。
【0038】
管理装置100Bは、第1実施形態の管理装置100Aと共通する。フォークリフト200Bは、制御装置220Bの構成を除いて第1実施形態のフォークリフト200Aと共通する。
【0039】
制御装置220Bは、第1実施形態の制御装置220Aに、第3情報取得部226、第4情報取得部227および第2学習モデル部228を追加したものである。
【0040】
第3情報取得部226は、運転席203の温度に関する第1温度データを取得する。第3情報取得部226は、例えば、運転席203に設けられた温度センサ(図示せず)から第1温度データを取得してもよいし、撮影手段208が取得したオペレータの画像データに基づいてオペレータの周囲の温度を算出することにより第1温度データを取得してもよい。
【0041】
第4情報取得部227は、撮影手段208が取得したオペレータの画像データに対して所定の画像処理を行うことにより、運転席203のオペレータの温度(例えば、体表温度)に関する第2温度データを取得する。第4情報取得部227は、例えば、撮影手段208が取得したオペレータの画像データに基づいて、オペレータの体表温度(皮膚温度)を算出できる。
【0042】
第2学習モデル部228は、オペレータの画像データ、第1温度データおよび第2温度データが入力されると、所定のパラメータを有するニューラルネットワーク等の機械学習アルゴリズムを用いて、オペレータの快適さの程度を示す快適スコアを生成するように機械学習された学習済みモデルである。学習済みモデルの機械学習では、上記のとおりニューラルネットワーク等の機械学習アルゴリズムを用いて、教師データを大量に入力する。教師データは、オペレータの画像データ、第1温度データおよび第2温度データに所定の快適スコアを紐付けしたデータを含む。
【0043】
快適スコアとしては、数値パラメータ(例えば、1~5の数値パラメータ)を用いる。数値パラメータの設定は、人またはコンピュータが行う。例えば、オペレータの画像データから推定したオペレータの性別、年齢等のバイオメトリック情報と、第1温度データに含まれる運転席203の温度とに基づいて所定の閾値を決定し、当該閾値と第2温度データに含まれるオペレータの体表温度とを比較する。
【0044】
体表温度が閾値よりもはるかに大きい場合(例えば、+7℃以上)を快適スコア5(不快な暑さを感じる状態)とし、体表温度が閾値よりも大きい場合(例えば、+7℃から+3℃)を快適スコア4(暑さを感じる状態)とし、体表温度が閾値と同じか閾値近傍の場合(例えば、+3℃から-3℃)を快適スコア3(快適な状態)とし、体表温度が閾値よりも小さい場合(例えば、-3℃から-7℃)を快適スコア2(寒さを感じる状態)とし、体表温度が閾値よりもはるかに小さい場合(例えば、-7℃以下)を快適スコア1(不快な寒さを感じる状態)とする。バイオメトリック情報、運転席203の温度およびオペレータの体表温度と、オペレータの快適さの程度との間には、相関関係等の一定の関係が存在することを推認できる。
【0045】
処理部224は、第1実施形態の機能に加えて、第2学習モデル部228から快適スコアを取得する機能を有する。すなわち、処理部224は、オペレータの画像データ、第3情報取得部226から取得した第1温度データ、および第4情報取得部227から取得した第2温度データを第2学習モデル部228に入力することで、第2学習モデル部228から快適スコアを取得する。処理部224は、取得した快適スコアを制御部225と共有する。
【0046】
制御部225は、第1実施形態の機能に加えて、空気調和装置210の風温および風量の自動制御に関する第1処理および第2処理を実行する機能を有する。制御部225は、第1処理において、空気調和装置210の風温および風量を設定し、第2処理において、第1処理で設定した風温および風量の少なくとも一方を快適スコアに基づいて変化させる。
【0047】
図5に、制御部225が行う空気調和装置210の制御方法のフローチャートを示す。制御部225は、第1実施形態と同様に、無人運転モードから有人運転モードに切り替わる前に(例えば、10分前に)、空気調和装置210に空調制御を開始させる(S1)。
【0048】
次いで、制御部225は第1処理を実行する(S2)。制御部225は、第1処理において、外気温(本実施形態では、作業場の温度)に基づいて、空気調和装置210の風温および風量を設定する。制御部225は、図示しない温度センサから外気温を取得してもよいし、管理装置100Bとの通信により外気温を取得してもよい。
【0049】
第1処理を実行した制御部225は、運転モードが有人運転モードか否かを判定する(S3)。運転モードが無人運転モードから有人運転モードに切り替わっていない場合(S3でNO)、制御部225は、再び第1処理を実行する(S2)。
【0050】
運転モードが無人運転モードから有人運転モードに切り替わっている場合(S3でYES)、制御部225は、再び第1処理を実行した後に、第2処理を実行する(S4)。すなわち、制御部225は、第1処理において、外気温に基づいて空気調和装置210の風温および風量を設定した後、第2処理において、第1処理で設定した風温および風量の少なくとも一方を快適スコアに基づいて変化させる。なお、ステップS3の直後のステップS4の処理においては、直前のステップS2に第1処理が行われているので、第1処理を省略してもよい。
【0051】
制御部225は、第2処理における風温の基準変化量をA[℃](ただし、Aは正の数値)とする。制御部225は、例えば、快適スコア5の場合に風温を(1.2×A)[℃]下げるとともに風量を強くし、快適スコア4の場合に風温をA[℃]下げ、快適スコア3の場合には風温および風量を変化させず、快適スコア2の場合に風温をA[℃]上げ、快適スコア1の場合に風温を(1.2×A)[℃]上げるとともに風量を強くする。
【0052】
第2処理を実行した制御部225は、運転モードが無人運転モードか否かを判定する(S5)。運転モードが有人運転モードの場合(S5でNO)はステップS4に移行し、運転モードが無人運転モードの場合(S5でYES)はステップS2に移行する。
【0053】
本実施形態に係るフォークリフト200Bによれば、有人運転モードにおいて、第2学習モデル部228がオペレータの快適さの程度を示す快適スコアを生成し、制御部225が快適スコアに基づいて風温および/または風量を変化させるので、オペレータの温度感覚に合わせた空気調和装置210の自動制御が可能となる。
【0054】
以上、本発明に係るフォークリフトおよび荷役システムの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0055】
本発明に係るフォークリフトは、運転席が設けられた車体と、運転席の空調制御を行う空気調和装置と、空気調和装置の制御を行う制御装置とを備え、制御装置は、外部から荷役作業の対象となる荷物の数量データを取得する第1情報取得部と、搬送スケジュールの進行状況を特定して進行状況データを取得する第2情報取得部と、数量データおよび進行状況データが入力されると、所定のパラメータを有する機械学習アルゴリズムを用いて、無人運転モードから有人運転モードに切り替わるタイミングを予測するように機械学習された第1学習モデル部と、数量データおよび進行状況データを第1学習モデル部に入力することで、第1学習モデル部からタイミングに関するタイミング情報を取得する処理部と、タイミング情報に基づいて、無人運転モードから有人運転モードに切り替わる前に空気調和装置に空調制御を開始させる制御部とを備えるのであれば、適宜構成を変更できる。
【0056】
例えば、本発明の空気調和装置は、温風および冷風の少なくとも一方を運転席に供給するのであれば、適宜構成を変更でき、設置場所も適宜変更できる。空気調和装置として、任意の蓄熱手段および/または蓄冷手段を用いることができる。
【0057】
本発明の制御部は、タイミング情報に基づいて、無人運転モードから有人運転モードに切り替わる前に空気調和装置に空調制御を開始させ、さらに、空調制御を開始させるタイミングを温度(例えば、第3情報取得部226が取得した運転席203の温度および/または作業場の温度)に応じて変更するように構成できる。
【0058】
本発明の第2学習モデル部では、第1温度データに含まれる運転席の温度に基づいて所定の閾値を決定し、当該閾値と第2温度データに含まれるオペレータの体表温度とを比較することで、快適スコアの数値パラメータを設定してもよい。数値パラメータは、上記実施形態では1~5の範囲で設定しているが、当該範囲は適宜変更できる。
【0059】
本発明の制御部は、荷役作業のときは第2処理を実行しないよう構成できる。荷役作業中か否かは、例えば、オペレータが荷役レバー(リフトレバー、リーチレバー、ティルトレバー)を操作しているか否かで判断できる。すなわち、制御部は、荷役レバーの操作量に応じて荷役作業中か否かを判定できる。この構成によれば、オペレータの荷役作業中に風温および風量が急に変化して、オペレータの集中力が乱れるのを抑制できる。
【符号の説明】
【0060】
1A、1B 荷役システム
2 倉庫(作業場)
3 ラック
4 反射板
100A、100B 管理装置
101 通信部
102 統括制御部
103 表示部
200A、200B フォークリフト
201 車体
202 荷役装置
203 運転席
204 レバー類
205 ステアリングハンドル
206 表示部
207 ヘッドガード
208 撮影手段
209 レーザースキャナ
210 空気調和装置
220A、220B 制御装置
221 第1情報取得部
222 第2情報取得部
223 第1学習モデル部
224 処理部
225 制御部
226 第3情報取得部
227 第4情報取得部
228 第2学習モデル部
【要約】
【課題】空気調和装置を適切なタイミングで稼働させることが可能なフォークリフトおよび荷役システムを提供する。
【解決手段】有人運転モードと無人運転モードとを備えるフォークリフト200Aであって、空気調和装置210と制御装置220Aとを備え、制御装置220Aは、荷物の数量データを取得する第1情報取得部221と、搬送スケジュールの進行状況データを取得する第2情報取得部222と、無人運転モードから有人運転モードに切り替わるタイミングを予測するように機械学習された第1学習モデル部223と、第1学習モデル部223から上記タイミングに関するタイミング情報を取得する処理部224と、無人運転モードから有人運転モードに切り替わる前に空気調和装置210に空調制御を開始させる制御部225と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1