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  • 特許-水中浮遊式軌道交通システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】水中浮遊式軌道交通システム
(51)【国際特許分類】
   B63B 21/66 20060101AFI20220921BHJP
   B63H 19/00 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
B63B21/66
B63H19/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021514624
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 CN2020072638
(87)【国際公開番号】W WO2020151583
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-03-11
(31)【優先権主張番号】201910057203.7
(32)【優先日】2019-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521104090
【氏名又は名称】南京星海未来科技発展有限公司
【氏名又は名称原語表記】NANJING XINGHAI FUTURE TECHNOLOGY DEVELOPMENT CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田 祥 瑞
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108103858(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105857558(CN,A)
【文献】特開平2-225195(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0202756(US,A1)
【文献】米国特許第6237499(US,B1)
【文献】独国特許出願公開第19543614(DE,A1)
【文献】特開平11-34861(JP,A)
【文献】特開平9-193790(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0064605(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 21/66,
B63H 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中浮遊式軌道交通システムであって、第1ロープ(102)、浮力タンク(103)、軌道(104)、ギア(108)、駆動機構、ケーブル(110)、および第2ロープ(111)を含み、
前記第1ロープ(102)の一端は水中地面(101)に固定され、前記第1ロープ(102)の他端は前記浮力タンク(103)に接続され、
前記軌道(104)は前記浮力タンク(103)に設置され、前記ギア(108)は前記軌道(104)の歯に噛み合い、前記軌道(104)に駆動機構が設置され、前記駆動機構が前記ギア(108)を前記軌道(104)の延長方向に沿って移動させるように駆動し、
前記駆動機構は、ハウジング(105)と、前記ハウジング(105)内に設置された第1モーター(106)、第2モーター(107)、および回転軸(109)とを含み、前記第1モーター(106)と前記第2モーター(107)の両方が前記ハウジング(105)の内壁に固定的に接続され、前記ギア(108)は、前記回転軸(109)を介してそれぞれ前記第1モーター(106)と前記第2モーター(107)に接続され、
前記ケーブル(110)の一端は船舶(113)の発電機に電気的に接続され、前記ケーブル(110)の他端は、それぞれ前記第1モーター(106)及び前記第2モーター(107)に電気的に接続され、前記発電機を使用して前記第1モーター(106)と前記第2モーター(107)に電力を供給し、
前記第2ロープ(111)の一端は前記ハウジング(105)に接続され、前記第2ロープ(111)の他端は水面(112)の前記船舶(113)に接続され、前記第1モーター(106)と前記第2モーター(107)は同じ方向に回転して前記ギア(108)を回転させるように駆動し、それによって前記駆動機構は前記軌道(104)の延長方向に沿って移動し、前記駆動機構は、前記第2ロープ(111)を介して前記船舶(113)を移動させるように駆動し、
前記ハウジング(105)と前記軌道(104)との接触部分にボールが設置され、前記ハウジング(105)は前記ボールにより前記軌道(104)上をスライドすることを特徴とする水中浮遊式軌道交通システム。
【請求項2】
前記軌道(104)の歯は水平方向の歯状構造であることを特徴とする請求項1に記載の水中浮遊式軌道交通システム。
【請求項3】
前記第1モーター(106)と前記第2モーター(107)は、前記ハウジング(105)の内壁に対称的に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の水中浮遊式軌道交通システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年1月22日に中国特許庁に提出され、出願番号201910057203.7、発明の名称「水中浮遊式軌道交通システム」の中国特許出願の優先権を要求し、その内容全体が参照により本出願に組み込まれている。
【0002】
本発明は、軌道交通の技術分野、特に、水中浮遊式軌道交通システムに関する。
【背景技術】
【0003】
地球上の海洋面積は71%までを占め、湖や川の面積を追加すると、4分の3を超えることもある。人間は地表を移動するために、陸上において、山で道路を開いて、水で橋を架け、トンネルを掘り、高速鉄道を建設し、水上で移動するために、さまざまな船舶艦艇が発明された。しかしながら、一般的に、人間の活動は陸地に集中しているため、交通のほとんどは陸地に集中している。海洋、湖、川などの水面は依然として交通の最大の障害である。
【0004】
水上交通を容易にするために、ヨーロッパのイギリス海峡海底トンネル、中国の杭州湾橋、珠江河口の広東-香港-マカオ橋などの海底トンネルと海上橋が建設されている。トンネルや橋を渡って水面を硬い地面に変え、便利な交通を実現する。近年来、渤海湾の海底トンネルは、広範囲にわたる白熱した議論を引き起こし、海南を結ぶ瓊州海峡は、橋であるかトンネルであるかについてまだ議論が続いている。
【0005】
水面に橋を架ける場合でも、水面下にトンネルを掘る場合でも、莫大な投資プロジェクトであり、水面を活用することはできない。水面の利点は浮力があり、船舶輸送が最も低コストの輸送方法であるということである。ただし、速度の制限により、船舶輸送は最も効率的ではない。原因は以下の通りである。船舶がプロペラによって水を排斥することで前方に前進されるが、運動量保存の観点から、船舶を前進させるためには、プロペラによって力を水に加える必要があり、水は流体であるため、推力の作用で後に向いて流れて去る。したがって、エネルギー保存の法則上で言えば、船舶の前進は必然的に水流を逆流させ、これはエネルギーを効率的に使用する方法ではない。このため、人間も、川を跨るロープを設置して、川を渡るように渡船業者がボートに立ってロープを引っ張り、浅瀬にあう場合竹の棒を使ってボートを駆動した上に労働者が川岸で引綱を使用して移動して船を前方に引くなどのことを工夫した。が、しかしながら、すべて低効率の問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに基づいて、本発明は、従来技術における低水中交通輸送効率の問題を解決するための水中浮遊式軌道交通システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、水中浮遊式軌道交通システムを提供する。前記水中浮遊式軌道交通システムには、第1ロープ、浮力タンク、軌道、ギア、駆動機構、ケーブル、および第2ロープが含まれ、
前記第1ロープの一端は水中地面に固定され、前記第1ロープの他端は前記浮力タンクに接続され、
前記軌道は前記浮力タンクに設置され、前記ギアは前記軌道の歯に係合し、前記軌道に駆動機構が設置され、前記ギアは、前記駆動機構に駆動されて、前記軌道104の延長方向に沿って移動する。
【0008】
前記駆動機構は、ハウジングと、前記ハウジング内に設置された第1モーター、第2モーター、および回転軸とを含む。前記第1モーターと前記第2モーターの両方が前記ハウジングの内壁に固定的に接続されている。前記ギアは、前記回転軸を介してそれぞれ前記第1モーターと前記第2モーターに接続されている。
【0009】
前記ケーブルの一端は前記船舶の発電機に電気的に接続され、前記ケーブルの他端は、それぞれ前記第1モーター及び前記第2モーターに電気的に接続され、前記発電機を使用して、前記第1モーターと前記第2モーターに電力を供給し、
前記第2ロープの一端は前記ハウジングに接続され、前記第2ロープの他端は水面での船舶に接続され、前記第1モーターと前記第2モーターは同じ方向に回転して前記ギアを回転させ、それによって前記駆動機構は前記軌道の延長方向に沿って移動し、前記駆動機構は、前記船舶を移動させるように前記第2ロープを介して駆動する。
【0010】
任意選択的に、前記軌道の歯は水平方向の歯状構造である。
任意選択的に、前記ハウジングと前記軌道との接触部分にボールが設置され、前記ハウジングは前記ボールにより前記軌道上をスライドする。
【0011】
任意選択的に、前記第1モーターと前記第2モーターは、前記ハウジングの内壁に対称的に設置されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって提供される特定の実施例によれば、本発明は、以下の技術的効果を開示する。
【0013】
本発明は、水中浮遊式軌道交通システムを開示し、第1ロープ、浮力タンク、軌道、ギア、駆動機構、ケーブル及び第2ロープを含み、第1ロープの一端は水中地面に固定され、第1ロープの他端は浮力タンクに接続され、軌道は浮力タンクに設置され、ギアは軌道の歯に噛み合い、軌道に駆動機構が設置され、ギアは駆動機構に駆動されて軌道の延長方向に沿って移動し、駆動機構は、ハウジング、第1モーター、第2モーター、および回転軸を含み、第2ロープの一端はハウジングに接続され、第2ロープの他端は水面での船舶に接続され、第1モーターと第2モーターが同じ方向に回転することで、ギアは駆動されて回転して、よって牽引力を生成し、それによって駆動機構が軌道の延長方向に沿って移動し、駆動機構が第2ロープを介して船舶が移動するようにそれを引っ張る。本発明の上記システムにより、従来技術における水中交通輸送効率が低いという問題が解決され、水面での効率的な交通輸送が実現される。
【0014】
本発明の実施例または従来技術における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下に、実施例に必要な図面を簡単に紹介する。明らかに、以下の説明の図面は、本発明の一部の実施例にすぎない。当業者にとって、創造的な労力なしで、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施例による水中浮遊式軌道交通システムの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下は、本発明の実施例における添付の図面を参照して、本発明の実施例における技術的解決手段を明確かつ完全に説明する。明らかに、記載された実施例は、本発明の実施例の一部に過ぎず、すべての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、創造的な作業なしに当業者によって得られる他のすべての実施例は、本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【0017】
本発明は、従来技術における低水中交通輸送効率の問題を解決するための水中浮遊式軌道交通システムを提供することを目的とする。
【0018】
本発明の上記目的、特徴及び利点をより顕著で分かりやすくするために、以下に図面及び発明を実施するための形態を参照しながら本発明をさらに詳しく説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施例による水中浮遊式軌道交通システムの構造模式図である。図1に示すように、本発明の水中浮遊式軌道交通システムは、第1ロープ102、浮力タンク103、軌道104、ギア108、駆動機構、ケーブル110、および第2ロープ111を含む。
【0020】
前記第1ロープ102の一端は水中地101面に固定され、前記第1ロープ102の他端は前記浮力タンク103に接続される。
【0021】
前記軌道104は前記浮力タンク103に設置され、前記ギア108は前記軌道104の歯に噛み合い、前記軌道104に駆動機構が設置され、前記ギア108は、前記駆動機構に駆動されて前記軌道104の延長方向に沿って移動する。
【0022】
具体的には、軌道104は、浮力タンク103によって支持され、浮力タンク103の浮力は、浮力タンク103の上の軌道104の重力よりわずかに大きく、第1ロープ102によって水中地面101に固定され、その結果、軌道104は、水中に浮遊し、水面の交通に影響を与えることなく、水面の波によって妨害されず、軌道104の浮遊深さは、地域の水深、水面船舶の喫水深さ、波のサイズなどの水文学的条件に従って設定することができ、航行条件が満たされている場合に浮遊深さが小さいほど、良好である。
【0023】
前記駆動機構は、ハウジング105と、前記ハウジング105内に設置された第1モーター106、第2モーター107、および回転軸109とを含む。前記第1モーター106と前記第2モーター107の両方が前記ハウジング105の内壁に固定的に接続されている。前記ギア108は、前記回転軸109を介してそれぞれ前記第1モーター106と前記第2モーター107に接続されている。
【0024】
好ましくは、前記第1モーター106と前記第2モーター107は、前記ハウジング105の内壁に対称的に設置されている。
【0025】
具体的には、前記駆動機構は浮遊式軌道104上で逆さまに座屈され、ハウジング105は軌道104上で座屈され、第1モーター106と第2モーター107両方がハウジングに固定的に接続され、第1モーター106と第2モーター107は左右対称に配置され、且つ回転軸190を介してギア108に接続されている。
【0026】
前記ケーブル110の一端は前記船舶113の発電機に電気的に接続され、前記ケーブル110の他端は、それぞれ前記第1モーター106及び前記第2モーター107に電気的に接続され、前記発電機を使用して前記第1モーター106と前記第2モーター107に電力を供給する。
【0027】
具体的には、発電機は船舶113の燃料エンジンに駆動されて発電し、それにより、前記第1モーター106および前記第2モーター107に電力を供給する。
【0028】
前記第2ロープ111の一端は前記ハウジング105に接続され、前記第2ロープ111の他端は、水面112に浮かんでいる船舶113に接続されている。前記第1モーター106と前記第2モーター107は同じ方向に回転して前記ギア108を回転させるように駆動し、前記ギア108は、前記軌道104の軌道の歯と噛み合い、それによって牽引力を生成し、その結果、前記駆動機構は、前記軌道104の延長方向に沿って移動する。前記駆動機構は、前記第2ロープ111を介して前記船舶113を移動させるように駆動する。
【0029】
具体的には、前記第2ロープ111は、ロープの方式のソフトトラクションであってもよいし、または牽引フレームの方式のハードトラクションであってもよく、ソフトトラクションまたはハードトラクションで駆動機構は、前記第2ロープ111によって前記船舶113を移動させるように駆動する。
【0030】
好ましくは、前記軌道104の歯は水平方向の歯状構造である。
具体的には、前記軌道104の下面は、前記浮力タンク103の上面に接続され、前記軌道104の歯は水平方向の歯状構造であり、前記軌道104は、前記水平方向の歯状構造を介して前記ギア108と噛み合う。
【0031】
好ましくは、前記ハウジング105と前記軌道104との接触部分にボールが設置され、前記ハウジング105は前記ボールにより前記軌道104上をスライドする。
【0032】
具体的には、前記接触部分は、ハウジング105が軌道の側壁114および軌道の下縁部115と接触していることを意味する。前記ハウジング105上にボールが設置され、前記ハウジング105は前記ボールにより前記軌道104上をスライドする。
【0033】
本発明は、水中浮遊式軌道交通システムを提供する。地上での効率的な鉄道輸送と水面の船舶輸送を組み合わせ、長大深海斜張橋の設計方法や海上プラットフォームの固定方法に鑑み、それぞれの利点を生かして水面での効率的な輸送を実現する。同時に、このような水中浮遊式軌道交通システムは必ず、水運のあり方に大きな変化をもたらし、交通上の水域の制限を打ち破り、より省エネルギーでより速い交通輸送を実現し、社会経済的価値が高いという見込みである。
【0034】
本発明によって提供される水中浮遊式軌道交通システムは、河川、湖、および海上での交通輸送に適しており、それは、省エネルギーで、高速かつより効率的である。
【0035】
この明細書では、本発明の原理および実施形態を説明するために特定の例を使用する。上記の実施例の説明は、本発明の方法およびコアアイデアを理解するのを助けるためにのみ使用される。同時に、当業者にとって、本発明のアイデアによれば、発明を実施するための形態および適用範囲について変更をすることもできる。要約すると、本明細書の内容は、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0036】
ここで、101、水中地面、
102、第1ロープ、
103、浮力タンク、
104、軌道、
105、ハウジング、
106、第1モーター、
107、第2モーター、
108、ギア、
109、回転軸、
110、ケーブル、
111、第2ロープ、
112、水面、
113、船舶、
114、軌道側壁、
115、軌道の下縁部。
図1