(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】ポリイソシアネート組成物、フィルム形成用組成物、フィルム、フィルム積層体、接着性樹脂組成物及び接着性樹脂硬化物、塗料用組成物及び塗料硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/80 20060101AFI20220921BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20220921BHJP
C08G 18/73 20060101ALI20220921BHJP
C08G 18/62 20060101ALI20220921BHJP
C08G 18/65 20060101ALI20220921BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20220921BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20220921BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20220921BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
C08G18/80
C08G18/75
C08G18/73
C08G18/62 016
C08G18/65 011
C08J5/18 CFF
C09J175/04
C09D175/04
B32B27/40
(21)【出願番号】P 2021527718
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2020024946
(87)【国際公開番号】W WO2020262512
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2021-10-08
(31)【優先権主張番号】P 2019119464
(32)【優先日】2019-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019169623
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】山内 理計
(72)【発明者】
【氏名】船津 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】武井 麗
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-184602(JP,A)
【文献】特開昭58-080320(JP,A)
【文献】特公昭49-028255(JP,B1)
【文献】特開2005-154777(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/80
C08G 18/75
C08G 18/73
C08G 18/62
C08G 18/65
C09J 175/04
C09D 175/04
B32B 27/40
C08J 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族イソシアネート及び脂環族イソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のイソシアネート化合物を骨格として有するポリイソシアネート組成物であって、
ポリイソシアネート1分子当たりの、ブロック剤で封鎖されたイソシアネート基及びブロック剤で封鎖されていないイソシアネート基の合計数の平均値が
3以上であり、且つ、
前記ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基のうち、1モル%以上
50モル%以下がブロック剤で封鎖されて構成されて
おり、
前記ブロック剤が、ピラゾール系化合物である、ポリイソシアネート組成物。
【請求項2】
前記ポリイソシアネート組成物は、下記一般式(I)で表されるポリイソシアネートを含む、請求項
1に記載のポリイソシアネート組成物。
【化1】
(一般式(I)中、R
11は前記イソシアネート化合物から誘導されたポリイソシアネートからイソシアネート基を除いた残基である。X
11は前記ブロック剤に由来する構造単位である。m及びnはそれぞれ独立に1以上の任意の整数であり、n/(m+n)は0.01以上0.99以下である。)
【請求項3】
前記ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基のうち、10モル%以上
50モル%以下がブロック剤で封鎖されて構成されている、請求項1
または2に記載のポリイソシアネート組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物を含有する、フィルム形成用組成物。
【請求項5】
さらに、活性水素含有化合物を含有する、請求項
4に記載のフィルム形成用組成物。
【請求項6】
前記活性水素含有化合物は、アクリルポリオールを含む、請求項
5に記載のフィルム形成用組成物。
【請求項7】
前記活性水素含有化合物は、ジオールを含む、請求項
5に記載のフィルム形成用組成物。
【請求項8】
請求項
4~
7のいずれか一項に記載のフィルム形成用組成物を硬化させてなる、フィルム。
【請求項9】
基材層、加飾層及び接着層からなる群より選ばれる少なくとも2種類の層を備えるフィルム積層体であって、前記フィルム積層体を構成する層のうち少なくとも1種類の層は、請求項
8に記載のフィルムを含む、フィルム積層体。
【請求項10】
請求項
8に記載のフィルム、もしくは、請求項
9に記載のフィルム積層体を含む物品。
【請求項11】
請求項
8に記載のフィルム、もしくは、請求項
9に記載のフィルム積層体を加熱しながら物品に追従させて貼り付ける工程、その後、貼り付けたフィルム又はフィルム積層体を硬化させる工程を含む製造方法にて得られる、請求1
0に記載の物品。
【請求項12】
請求項1~
3のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物を含有する、接着性樹脂組成物。
【請求項13】
さらに、活性水素含有化合物を含有する、請求項1
2に記載の接着性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1
2又は1
3に記載の接着性樹脂組成物を硬化させてなる、接着性樹脂硬化物。
【請求項15】
少なくとも片方の被着体に請求項1
2又は1
3に記載の接着性樹脂組成物を塗布する工程、および
前記接着性樹脂組成物を塗布した被着体と、もう一つの被着体とを張り合わせる工程を含む、積層物の製造方法。
【請求項16】
前記張り合わせた被着体を加熱する工程を、さらに含む、請求項1
5に記載の積層物の製造方法。
【請求項17】
請求項1~
3のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物を含有する、塗料用組成物。
【請求項18】
さらに、活性水素含有化合物を含有する、請求項1
7に記載の塗料用組成物。
【請求項19】
請求項1
7又は1
8に記載の塗料用組成物を硬化させてなる、塗料硬化物。
【請求項20】
請求項1
7又は1
8に記載の塗料用組成物と、
基材として、金属、ガラス、プラスチック、又は木材成分と、
を含む複合樹脂硬化物。
【請求項21】
請求項1
7又は1
8に記載の塗料用組成物を塗装する工程を含む、塗膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイソシアネート組成物、フィルム形成用組成物、フィルム、フィルム積層体、接着性樹脂組成物及び接着性樹脂硬化物、並びに塗料用組成物及び塗料硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族ジイソシアネート及び脂環族ジイソシアネートから得られるポリイソシアネート組成物は、耐候性及び耐熱性に優れるため、従来から、各種用途に幅広く使用されている。
また、ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基をブロック剤で封鎖したブロックポリイソシアネート組成物は、硬化後の物性を維持しつつ、活性水素化合物と混合後の貯蔵安定性を発現することができるため、自動車塗装等の硬化剤として、幅広く使用されている。
特許文献1には、ブロックポリイソシアネート組成物の改良技術として、低温硬化性及び各種基材との密着性を発現するため、ピラゾール系ブロック剤とオキシム系ブロック剤の2種のブロック剤で封鎖されたブロックポリイソシアネートが開示されている。また、特許文献2には、架橋密度及び硬化歪を両立する技術として、ブロックポリイソシアネート化合物と非ブロックポリイソシアネート化合物が混合されたポリイソシアネート組成物を使用した硬化性接着剤組成物が開示されている。
しかし、各種ウレタン系熱硬化性組成物のさらなる性能を発現するため、ポリイソシアネート、あるいはブロックポリイソシアネートにはさらなる改良が望まれている。
【0003】
改良が望まれている分野の1例として、自動車の内外装部品用加飾フィルムが挙げられる。自動車の内外装部品等の立体基材の表面を加飾する方法として、基材の表面に意匠を持つフィルム(以下、「加飾フィルム」という)を貼り付ける方法が知られている。代表的なフィルムの貼り付け方法としては、真空・圧空成形法が挙げられる。真空・圧空成形法では、予め成形された基材に対し、加飾フィルムを室温で又は加熱雰囲気下で、延伸させながら、圧力差を利用して基材に貼り付ける。この方法では、基材の成形とは別途の作業にて、部品の基材面へ加飾フィルムが貼り付けられるため、一台の真空・圧空成形装置にて、様々な材質、形状の基材に対し加飾フィルムを貼り付けることができる。プラスチック、金属又はその他の各種材料から得られた成型品においては、表面に意匠性を付与したり、表面を保護したりする目的で表面への加飾が一般的に行われている。
【0004】
加飾フィルムとして、特許文献3~4等に記載されたような積層フィルムが知られている。真空・圧空成形法に用いる加飾フィルムには、高い延伸性が求められる。また、自動車の外装部品に代表される立体基材に加飾フィルムを用いる場合、延伸性だけでなく、耐候性や耐溶剤性も必要とされる。しかしながら、特許文献3、4の技術では、延伸性、と耐溶剤性の両立が難しい場合がある。
【0005】
さらに、フィルムの製造や保管、運搬等の工程においてはフィルムをロール状に巻き取る必要がある。その際に、ブロッキングによって巻き取ったフィルム同士が接着してしまうことがある。このような問題を生じない耐ブロッキング性能も求められている。
【0006】
また、改良が望まれている分野の他の例として、光学部材が挙げられる。近年、光学部材が過酷な条件で使用されるようになったことから、光学部材に使用されるポリエステルフィルムにおいては、積層前の耐溶剤性、上層として使用される各種機能層との密着性及び高温高湿度下での安定性等の性能を発揮しうる接着性樹脂組成物に対する期待が高まっている。そのため、これら用途に使用可能なポリイソシアネート組成物、及びそれを用いた接着性樹脂組成物が望まれている。
【0007】
更に、2液型塗料用組成物における硬化剤に対しても、近年、高機能化の観点から高い耐溶剤性が求められている。特許文献5では、塗料用組成物の架橋をより促進させるため、イソシアネートの官能基数を増加させたポリイソシアネート組成物が提供されている。一方、2液型の塗料用組成物の場合、2液を配合後に塗料として使用できる可使時間が長いことが望ましい。上記塗料用組成物において、塗膜の架橋が増加する場合には耐溶剤性が優れる傾向にあるが、官能基数を増加させた場合に塗料の可使時間が短くなるという懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第5371884号公報
【文献】特開2016-027153号公報
【文献】特開2016-203434号公報
【文献】特開2016-120642号公報
【文献】特開2017-82076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献3、4に記載されている技術を用いることにより、延伸性が良好なフィルムを得ることは可能である。しかしながら、高延伸性に加えて、耐溶剤性や耐ブロッキング性を両立した加飾フィルムについては検討されていない。また、光学部材の分野においては、接着性樹脂硬化物としたときの積層前の耐溶剤性、上層として使用される各種機能層との密着性、高温高湿度下での安定性等の性能を発揮しうるポリイソシアネート組成物が求められている。更に、2液型塗料用組成物の高機能化の観点から、より高い塗膜の耐溶剤性とより長い塗料の可使時間とを両立しうるポリイソシアネート組成物が望まれている。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、フィルム形成用組成物として使用したときに、フィルムの延伸性を良好に保ちながら、耐ブロッキング性及び耐溶剤性に優れ、且つ、接着性樹脂組成物として使用したときに、積層前の耐溶剤性、上層として使用される各種機能層との密着性及び高温高湿度下での安定性に優れ、且つ、塗料用組成物として使用したときに、塗膜の耐溶剤性及び塗料の可使時間を両立しうるポリイソシアネート組成物、並びに、前記ポリイソシアネート組成物を用いたフィルム形成用組成物、フィルム、フィルム積層体、接着性樹脂組成物及び接着性樹脂硬化物、塗料用組成物並びに塗料硬化物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]脂肪族イソシアネート及び脂環族イソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のイソシアネート化合物を骨格として有するポリイソシアネート組成物であって、
ポリイソシアネート1分子当たりの、ブロック剤で封鎖されたイソシアネート基及びブロック剤で封鎖されていないイソシアネート基の合計数の平均値が2以上であり、且つ、
前記ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基のうち、1モル%以上99モル%以下がブロック剤で封鎖されて構成されている、ポリイソシアネート組成物。
[2]前記ポリイソシアネート1分子当たりのブロック剤で封鎖されたイソシアネート基及びブロック剤で封鎖されていないイソシアネート基の合計数の平均値が3以上である、[1]に記載のポリイソシアネート組成物。
[3]前記ポリイソシアネート組成物は、下記一般式(I)で表されるポリイソシアネートを含む、[1]又は[2]に記載のポリイソシアネート組成物。
【化1】
(一般式(I)中、R
11は前記イソシアネート化合物から誘導されたポリイソシアネートからイソシアネート基を除いた残基である。X
11は前記ブロック剤に由来する構造単位である。m及びnはそれぞれ独立に1以上の任意の整数であり、n/(m+n)は0.01以上0.99以下である。)
[4]前記ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基のうち、10モル%以上90モル%以下がブロック剤で封鎖されて構成されている、[1]~[3]のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物。
[5][1]~[4]のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物を含有する、フィルム形成用組成物。
[6]さらに、活性水素含有化合物を含有する、[5]に記載のフィルム形成用組成物。
[7]前記活性水素含有化合物は、アクリルポリオールを含む、[6]に記載のフィルム形成用組成物。
[8]前記活性水素含有化合物は、ジオールを含む、[6]に記載のフィルム形成用組成物。
[9][5]~「8」のいずれか一項に記載のフィルム形成用組成物を硬化させてなる、フィルム。
[10]基材層、加飾層及び接着層からなる群より選ばれる少なくとも2種類の層を備えるフィルム積層体であって、前記フィルム積層体を構成する層のうち少なくとも1種類の層は、[9]に記載のフィルムを含む、フィルム積層体。
[11][9]に記載のフィルム、もしくは、[10]に記載のフィルム積層体を含む物品。
[12][9]に記載のフィルム、もしくは、[10]に記載のフィルム積層体を加熱しながら物品に追従させて貼り付ける工程、その後、貼り付けたフィルム又はフィルム積層体を硬化させる工程を含む製造方法にて得られる、[11]に記載の物品。
[13][1]~「4」のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物を含有する、接着性樹脂組成物。
[14]さらに、活性水素含有化合物を含有する、[13]に記載の接着性樹脂組成物。
[15][13]又は「14」に記載の接着性樹脂組成物を硬化させてなる、接着性樹脂硬化物。
[16]少なくとも片方の被着体に[13]又は[14]に記載の接着性樹脂組成物を塗布する工程、および
前記接着性樹脂組成物を塗布した被着体と、もう一つの被着体とを張り合わせる工程を含む、積層物の製造方法。
[17]前記張り合わせた被着体を加熱する工程を、さらに含む、[16]に記載の積層物の製造方法。
[18][1]~[4]のいずれか一項に記載のポリイソシアネート組成物を含有する、塗料用組成物。
[19]さらに、活性水素含有化合物を含有する、[18]に記載の塗料用組成物。
[20][18]又は「19」に記載の塗料用組成物を硬化させてなる、塗料硬化物。
[21][18]又は[19]に記載の塗料用組成物と、
基材として、金属、ガラス、プラスチック、又は木材成分と、
を含む複合樹脂硬化物。
[22][18]又は[19]に記載の塗料用組成物を塗装する工程を含む、塗膜の製造方法。
[23]脂肪族イソシアネート及び脂環族イソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のイソシアネート化合物を骨格として有するポリイソシアネート組成物と、活性水素含有組成物とを硬化させてなる、一次硬化フィルムであって、
前記活性水素含有化合物と前記ポリイソシアネート組成物との硬化によって生成したウレタン基、ウレア基、アミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基Xと、活性水素基と、ブロック剤で封鎖されたイソシアネート基とを含む、一次硬化フィルム。
[24]前記一次硬化フィルムに含まれる、官能基Xのモル数γとブロック剤で封鎖されたイソシアネート基のモル数βとの比、γ/βが0.1以上9.0以下である、[23]に記載の一次硬化フィルム。
[25]前記一次硬化フィルム1kgに含まれる官能基Xのモル数γが0.05以上1.0以下である、[23]または[24]に記載の一次硬化フィルム。
[26]前記活性水素含有化合物は、アクリルポリオールを含む、[23]~[25]の何れか一項に記載の一次硬化フィルム。
[27]前記活性水素含有化合物は、ジオールを含む、[23]~[26]のいずれか一項に記載の一次硬化フィルム。
[28][20]~[27]のいずれか一項に記載の一次硬化フィルムを、さらに加熱することにより、硬化させてなる、二次硬化フィルム。
[29][23]~[27]のいずれか一項に記載の一次硬化フィルムを、50℃以上140℃以下にて加熱しながら成形体に追従させて貼り付ける工程、
その後50℃以上180℃以下にて加熱して貼り付けた樹脂組成物を硬化させる工程を含む、二次硬化フィルムの製造方法。
[30]前記一次硬化フィルムに含まれる官能基Xのモル数γと前記二次硬化フィルムに含まれる官能基Xのモル数γ´の比γ/γ´が0.1以上0.9以下である、[29]に記載の二次硬化フィルムの製造方法。
[31]前記一次硬化フィルム1kgに含まれる官能基Xのモル数γが0.05以上1.0以下、かつ、
前記二次硬化フィルム1kgに含まれる官能基Xのモル数γ’が0.5以上10以下である、[29]または[30]に記載の二次硬化フィルムの製造方法。
[32][23]~[27]のいずれか一項に記載の一次硬化フィルムを、50℃以上140℃以下にて加熱しながら成形体に追従させて貼り付ける工程、
その後50℃以上180℃以下にて加熱して貼り付けた樹脂組成物を硬化させる工程を含む、一次硬化フィルムの使用方法。
[33]架橋構造と、硬化性官能基Aとを持つことを特徴とする、一次硬化フィルム。
[34][33]に記載の一次硬化フィルムの架橋構造を生成可能であり、かつ、[33に記載の一次硬化フィルムの硬化性官能基Aを含む、フィルム形成用組成物。
[35][33]に記載の一次硬化フィルムを硬化させてなる、二次硬化フィルム。
[36][33]に記載の一次硬化フィルムを、加熱しながら成形体に追従させて貼り付ける工程、その後、貼り付けた樹脂組成物を硬化させる工程を含む、二次硬化フィルムの製造方法。
[37][33]に記載の一次硬化フィルム、又は[34]に記載の二次硬化フィルムを含む物品。
[38][36]記載の製造方法により得られる二次硬化フィルムを含む、物品。
【発明の効果】
【0012】
上記態様のポリイソシアネート組成物によれば、フィルム形成用組成物として使用したときに、フィルムの延伸性を良好に保ちながら、耐ブロッキング性及び耐溶剤性に優れ、且つ、接着性樹脂組成物として使用したときに、積層前の耐溶剤性、上層として使用される各種機能層との密着性及び高温高湿度下での安定性に優れ、且つ、塗料用組成物として使用したときに、塗膜の耐溶剤性及び塗料の可使時間を両立しうるポリイソシアネート組成物を提供することができる。上記態様のフィルム形成用組成物及びフィルムによれば、延伸性を良好に保ちながら、耐ブロッキング性及び耐溶剤性に優れるフィルムを提供することができる。上記態様のフィルム積層体は、前記フィルムからなる層を備え、耐ブロッキング性及び耐溶剤性に優れる。上記態様の接着性樹脂組成物及び接着性樹脂硬化物によれば、積層前の耐溶剤性、上層として使用される各種機能層との密着性及び高温高湿度下での安定性に優れる接着性樹脂硬化物を提供することができる。上記態様の塗料用組成物及び塗料硬化物によれば、塗膜の耐溶剤性に優れ、塗料の可使時間(以下、「ポットライフ」と称する場合がある)が充分な塗料硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0014】
本明細書において、「ポリイソシアネート」とは、1つ以上のイソシアネート基(-NCO)を有するモノマーが複数結合した重合体を意味する。
【0015】
また、本明細書において、「ポリオール」とは、2つ以上の水酸(ヒドロキシ)基(-OH)を有する化合物を意味する。
【0016】
なお、特に断りがない限り、「(メタ)アクリル」はメタクリルとアクリルを包含するものとする。
【0017】
≪ポリイソシアネート組成物≫
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、脂肪族イソシアネート及び脂環族イソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のイソシアネート化合物を骨格として有する。
【0018】
ポリイソシアネート組成物におけるポリイソシアネート1分子当たりのブロック剤で封鎖されたイソシアネート基及びブロック剤で封鎖されていないイソシアネート基の合計数の平均値(以下、「イソシアネート基合計平均数」と略記する場合がある)が2以上である。イソシアネート基合計平均数の下限値は、2であり、2.3が好ましく、3がより好ましく、3.4がさらに好ましく、4.5が特に好ましい。一方、イソシアネート基合計平均数の上限値は、特に限定されないが、20が好ましく、15がより好ましく、10がさらに好ましく、8が特に好ましい。すなわち、イソシアネート基合計平均数は、2以上であり、2以上20以下が好ましく、2.3以上15以下がより好ましく、3以上10以下がさらに好ましく、3.4以上10以下が特に好ましく、4.5以上8以下が最も好ましい。
イソシアネート基合計平均数が上記下限値以上であることによって、架橋性がより向上し、耐ブロッキング性や耐溶剤性により優れたフィルムが得られる。一方、イソシアネート基合計平均数が上記上限値以下であることによって、過度な架橋をより効果的に抑制し、得られるフィルムの延伸性をより良好に保つことができる。
【0019】
イソシアネート基合計平均数は、以下の数式により求められる。以下の式において、「Mn」は加熱等によりブロック剤を解離させた後、測定したポリイソシアネート組成物の数平均分子量である。「NCO含有率」は、加熱等によりブロック剤を解離させた後、測定したポリイソシアネート組成物の全質量に対して存在するイソシアネート基の含有率である。また、NCO含有率を百分率から小数に換算するために「0.01」をNCO含有率に乗じている。「42」はイソシアネートの式量である。
【0020】
イソシアネート基合計平均数(NCO合計平均数)=
(Mn×NCO含有率×0.01)/42
【0021】
なお、数平均分子量(Mn)は例えば、ポリイソシアネート組成物についてゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定を行なうことで算出することができる。NCO含有率は、例えば、加熱等でブロック剤を解離したポリイソシアネート組成物を試料として用いて、滴定法により算出することができる。具体的には、後述する実施例に示す方法を用いて算出することができる。
【0022】
或いは、ポリイソシアネート組成物を試料として用いて13C-NMR測定を行なうことでイソシアネート基合計平均数を算出することもできる。
【0023】
イソシアネート基合計平均数が上記範囲内であるポリイソシアネートとしては、ジイソシアネートを3量化してなるイソシアヌレート型ポリイソシアネート、イソシアネート基3分子と水1分子との反応により形成されるビウレット型ポリイソシアネート、イソシアネート基2分子とアルコールの水酸基1分子との反応により形成されるアロファネート型ポリイソシアネート等が挙げられる。中でも、耐候性の観点から、イソシアネート基合計平均数が上記範囲内であるポリイソシアネートとしては、イソシアヌレート型ポリイソシアネートが好ましい。
【0024】
ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基のうち、ブロック剤で封鎖されているイソシアネート基の割合(以下、「ブロック化率」と称する場合がある)は、1モル%以上99モル%以下である。
ポリイソシアネート組成物をフィルム形成用組成物に使用する場合には、ブロック化率は10モル%以上90モル%以下が好ましく、30モル%以上90モル%以下がより好ましく、50モル%以上80モル%以下がさらに好ましく、50モル%以上80モル%以下が特に好ましい。
ブロック化率が上記下限値以上であることで、得られるフィルムの延伸性をより良好に保つことができる。一方で、ブロック化率が上記上限値以下であることで、得られるフィルムの室温でのハンドリング性、すなわち室温での耐ブロッキング性をより優れたものとすることができる。
一方、ポリイソシアネート組成物を接着性樹脂組成物に使用する場合には、ブロック化率は10モル%以上90モル%以下が好ましく、20モル%以上80モル%以下が好ましく、30モル%以上70モル%以下がより好ましく、40モル%以上60モル%以下が特に好ましい。
ブロック化率が上記下限値以上であることで、得られる接着性樹脂硬化物の上層として使用される各種機能層との密着性(以下、「上層との密着性」と略記する場合がある)、及び、80℃、95%RH等の高温高湿度下での安定性をより優れたものとすることができる。一方で、ブロック化率が上記上限値以下であることで、得られる該接着性樹脂硬化物の上層に各種機能層が積層される前の耐溶剤性(以下、「積層前の耐溶剤性」と略記する場合がある)をより優れたものとすることができる。
一方、ポリイソシアネート組成物を塗料用組成物に使用する場合には、ブロック化率は10モル%以上90モル%以下が好ましく、20モル%以上85モル%以下がより好ましく、30モル%以上75モル%以下がさらに好ましい。ブロック化率が上記範囲内であることで、得られる塗料硬化物の耐溶剤性及び低温乾燥性がより優れ、また、塗料のポットライフがより長いものとすることができる。ブロック化率の含有量は、後述する実施例に示す方法を用いて測定することができる。
【0025】
ブロック化率は、例えば、滴定法や後述する実施例に示す方法を用いて、算出することができる。具体的には、ブロック化率は以下の式より求めることができる。
【0026】
ブロック化率=ブロック剤モル数/イソシアネート基モル数
【0027】
なお、上記式中の、「イソシアネート基モル数」は、加熱処理にてブロック剤を解離させた後のポリイソシアネート組成物における単位質量あたりのイソシアネート基モル数であり、NCO含有率を用いて、以下の式にて定量することができる。ここで、NCO含有率を百分率から小数に換算するために「0.01」をNCO含有率に乗じている。「42」はイソシアネートの式量である。
【0028】
イソシアネート基モル数=(NCO含有率×0.01)/42
【0029】
また、上記式中の、「ブロック剤モル数」は、ブロック剤解離時のブロック剤をトラップし、ブロック剤のモル数をガスクロマトグラフィー質量分析測定により定量することができる。
【0030】
本実施形態のポリイソシアネート組成物は、上記構成を有することで、フィルム形成用組成物として使用したときに、フィルムの延伸性を良好に保ちながら、耐ブロッキング性及び耐溶剤性に優れ、且つ、接着性樹脂組成物として使用したときに、積層前の耐溶剤性、上層として使用される各種機能層との密着性及び高温高湿度下での安定性に優れ、且つ、塗料用組成物として使用したときに、塗膜の耐溶剤性及び塗料の可使時間を両立しうるポリイソシアネート組成物を提供することができる。
本実施形態のポリイソシアネート組成物に含まれる各構成成分について、以下に詳細を説明する。
【0031】
前記ポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネートとブロック剤とから誘導されるブロックポリイソシアネートを含む。ブロックポリイソシアネートは、ブロックポリイソシアネート1分子中のイソシアネート基の一部又は全部がブロック剤で封鎖されて構成されている。以下、ブロックポリイソシアネート1分子中のイソシアネート基の一部がブロック剤で封鎖されて構成されているブロックポリイソシアネートを「部分ブロックポリイソシアネート」と称する。また、ブロックポリイソシアネート1分子中のイソシアネート基の全部がブロック剤で封鎖されて構成されているブロックポリイソシアネートを「全体ブロックポリイソシアネート」と称する。
【0032】
また、前記ポリイソシアネート組成物は、ブロックポリイソシアネートに加えて、ブロック化させていないポリイソシアネート(以下、「未ブロック化ポリイソシアネート」と称する場合がある)を含んでもよい。
【0033】
ポリイソシアネート組成物が、ブロックポリイソシアネートのみを含む場合には、部分ブロックポリイソシアネートを単独で用いる、或いは部分ブロックポリイソシアネートと全体ブロックポリイソシアネートとの混合比を調整して組み合わせて用いることで、ブロック化率を上記範囲に制御することができる。一方で、ポリイソシアネート組成物がブロックポリイソシアネートと未ブロック化ポリイソシアネートを含む場合には、部分ブロックポリイソシアネート又は全体ブロックポリイソシアネートと、未ブロック化ポリイソシアネートとの混合比を調整することで、ブロック化率を上記範囲に制御することができる。
【0034】
[ポリイソシアネート]
ポリイソシアネート組成物の原料であるポリイソシアネートは、脂肪族イソシアネート及び脂環族イソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のイソシアネート化合物から誘導されたものであり、当該イソシアネート化合物の骨格を有する。ポリイソシアネートは、イソシアヌレート基、ビウレット基、アロファネート基、オキサジアジントリオン基、尿素基、ウレタン基を含んでもよく、イソシアヌレート基を有することが好ましい。ポリイソシアネートの骨格となるイソシアネート化合物としては、特に限定されないが、具体的には、その構造の中にベンゼン環等の芳香族環を含まないものが好ましい。
【0035】
(脂肪族イソシアネート)
脂肪族イソシアネートとしては、特に限定されないが、具体的には、脂肪族モノイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、リジントリイソシアネート、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタメチレンジイソシアネート(トリマートリイソシアネート)等が挙げられる。中でも、脂肪族ジイソシアネートが好ましい。
【0036】
脂肪族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、具体的には、炭素数4以上30以下のものが好ましく、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、「HDI」と記載する)、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、リジンジイソシアネート等が挙げられる。中でも、工業的入手のしやすさから、HDIが好ましい。脂肪族ジイソシアネートは1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
(脂環族イソシアネート)
脂環族イソシアネートとしては、特に限定されないが、具体的には、脂環族モノイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。中でも、脂環族ジイソシアネートが好ましい。
【0038】
脂環族ジイソシアネートとしては、特に限定されないが、具体的には、炭素数8以上30以下のものが好ましく、例えば、イソホロンジイソシアネート(以下、「IPDI」と記載する)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。中でも、耐候性、工業的入手の容易さの観点から、IPDIが好ましい。脂環族ジイソシアネートは1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
[ブロック剤]
ブロック剤としては、特に限定されないが、具体的には、活性水素を分子内に1個有する化合物が挙げられる。このようなブロック剤としては、特に限定されないが、具体的には、アルコール系化合物、アルキルフェノール系化合物、フェノール系化合物、活性メチレン系化合物、メルカプタン系化合物、酸アミド系化合物、酸イミド系化合物、イミダゾール系化合物、尿素系化合物、オキシム系化合物、アミン系化合物、イミン系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物が挙げられる。これらブロック剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。より具体的なブロック剤の例を下記に示す。
【0040】
アルコール系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール等が挙げられる。
【0041】
アルキルフェノール系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、炭素数3以上12以下のアルキル基を置換基として有するモノ及びジアルキルフェノール類が挙げられる。モノアルキルフェノール類としては、例えば、n-プロピルフェノール、iso-プロピルフェノール、n-ブチルフェノール、sec-ブチルフェノール、tert-ブチルフェノール、n-ヘキシルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ノニルフェノール等が挙げられる。ジアルキルフェノール類としては、例えば、ジ-n-プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ-n-ブチルフェノール、ジ-tert-ブチルフェノール、ジ-sec-ブチルフェノール、ジ-n-オクチルフェノール、ジ-2-エチルヘキシルフェノール、ジ-n-ノニルフェノール等が挙げられる。
【0042】
フェノール系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等が挙げられる。
【0043】
活性メチレン系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジイソプロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、イソブタノイル酢酸エチル等が挙げられる。
【0044】
メルカプタン系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等が挙げられる。
【0045】
酸アミド系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、アセトアニリド、酢酸アミド、ε-カプロラクタム、δ-バレロラクタム、γ-ブチロラクタム等が挙げられる。
【0046】
酸イミド系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド等が挙げられる。
【0047】
イミダゾール系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0048】
尿素系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等が挙げられる。
【0049】
オキシム系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。
【0050】
アミン系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジ-n-プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等が挙げられる。
【0051】
イミン系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
【0052】
ピラゾール系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ピラゾール、3-メチルピラゾール、3,5-ジメチルピラゾール等が挙げられる。
【0053】
トリアゾール系化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、1,2,4-トリアゾール、1,2,3-トリアゾール等が挙げられる。
【0054】
中でも、入手容易性や得られるポリイソシアネート組成物の粘度、硬化温度及び硬化時間の点で、酸アミド系化合物、オキシム系化合物、活性メチレン系化合物、又はピラゾール系化合物が好ましい。また、ポリイソシアネート組成物中の一部イソシアネート基を残存させる場合の合成のしやすさを考慮した場合、酸アミド系化合物、オキシム系化合物、又はピラゾール系化合物がより好ましい。具体的には、メチルエチルケトオキシム、ε-カプロラクタム、マロン酸ジエチル、3―メチルピラゾール又は3,5-ジメチルピラゾールが好ましく、メチルエチルケトオキシム、ε-カプロラクタム、3―メチルピラゾール又は3,5-ジメチルピラゾールがさらに好ましく、メチルエチルケトオキシム、又は3,5-ジメチルピラゾールが特に好ましく、3,5-ジメチルピラゾールが最も好ましい。
【0055】
[部分ブロックポリイソシアネート]
ポリイソシアネート組成物は、下記一般式(I)で表される部分ブロックポリイソシアネート(以下、「部分ブロックポリイソシアネート(I)」と称する場合がある)を含むことが好ましい。
【0056】
【0057】
(一般式(I)中、R11は前記イソシアネート化合物から誘導されたポリイソシアネートからイソシアネート基を除いた残基である。X11は前記ブロック剤に由来する構造単位である。m及びnはそれぞれ独立に1以上の任意の整数であり、n/(m+n)は0.01以上0.99以下である。)
【0058】
部分ブロックポリイソシアネート(I)は、ポリイソシアネートとブロック剤とから誘導されたものであり、ブロックポリイソシアネート1分子中のイソシアネート基の一部がブロック剤で封鎖されて構成されている。
【0059】
一般式(I)に示すように、ブロック剤に由来する構造単位であるX11は、ブロック剤の活性水素とイソシアネート基との反応により形成されたアミド結合を介して、イソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた残基であるR11に結合している。
【0060】
(R11)
R11は、上記イソシアネート化合物から誘導されたポリイソシアネートからイソシアネート基を除いた残基である。すなわち、R11は、特定の官能基を含んでもよい脂肪族アルキル基及び脂環族アルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルキル基である。特定の官能基としては、例えば、イソシアヌレート基、ビウレット基、アロファネート基、オキサジアジントリオン基、尿素基、ウレタン基等が挙げられる。R11におけるアルキル基は、これら官能基を1種単独で含んでもよく、2種以上を組み合わせて含んでもよい。
【0061】
(X11)
X11は、ブロック剤に由来する構造単位であり、ブロック剤から活性水素を除いた残基ともいえる。X11としては、上記「ブロック剤」において例示されたものと同様のブロック剤に由来する構造単位が挙げられる。中でも、X11としては、酸アミド系化合物、オキシム系化合物、活性メチレン系化合物、又はピラゾール系化合物に由来する構造単位が好ましい。また、酸アミド系化合物、オキシム系化合物、又はピラゾール系化合物に由来する構造単位がより好ましい。具体的には、メチルエチルケトオキシム、ε-カプロラクタム、マロン酸ジエチル、3―メチルピラゾール又は3,5-ジメチルピラゾールに由来する構造単位が好ましく、メチルエチルケトオキシム、ε-カプロラクタム、3―メチルピラゾール又は3,5-ジメチルピラゾールに由来する構造単位がさらに好ましく、メチルエチルケトオキシム、又は3,5-ジメチルピラゾールに由来する構造単位が特に好ましく、3,5-ジメチルピラゾールに由来する構造単位が最も好ましい。
【0062】
(m及びn)
mは部分ブロックポリイソシアネート(I)1分子中のブロック剤で封鎖されていないイソシアネート基の数を表している。nは部分ブロックポリイソシアネート(I)1分子中のブロック剤で封鎖されて構成されているイソシアネート基の数を表している。
m及びnはそれぞれ独立に1以上の任意の整数であり、n/(m+n)は0.01以上0.99以下である。架橋性の観点から、mは2以上が好ましい。
【0063】
「n/(m+n)」は、部分ブロックポリイソシアネート(I)1分子中のブロック剤で封鎖されていないイソシアネート基の数及びブロック剤で封鎖されて構成されているイソシアネート基の数の合計数に対する、ブロック剤で封鎖されて構成されているイソシアネート基の数の割合である。
ポリイソシアネート組成物をフィルム形成用組成物に使用する場合には、n/(m+n)は0.01以上0.99以下であり、0.10以上0.90以下が好ましく、0.30以上0.90以下がより好ましく、0.50以上0.90以下がさらに好ましく、0.50以上0.80以下が特に好ましい。
また、ポリイソシアネート組成物を接着性樹脂組成物に使用する場合には、n/(m+n)は0.01以上0.99以下であり、0.10以上0.90以下が好ましく、0.20以上0.80以下がより好ましく、0.30以上0.70以下がさらに好ましく、0.40以上0.60以下が特に好ましい。
また、ポリイソシアネート組成物を塗料用組成物に使用する場合には、n/(m+n)は0.01以上0.99以下であり、0.10以上0.90以下が好ましく、0.20以上0.85以下がより好ましく、0.30以上0.75以下がさらに好ましい。
【0064】
好ましい部分ブロックポリイソシアネート(I)としては、例えば、下記一般式(I-1)で表される部分ブロックポリイソシアネート等が挙げられる。
【0065】
【0066】
(一般式(I-1)中、R12は上記R11と同じである。m1及びn1はそれぞれ上記m及びnと同じである。)
【0067】
本実施形態のポリイソシアネート組成物をフィルム形成用組成物に使用する場合、部分ブロックポリイソシアネートの含有量は、部分ブロックポリイソシアネート、全体ブロックポリイソシアネート及び未ブロック化ポリイソシアネートの合計モル量に対して、0モル%以上100モル%以下とすることができ、10モル%以上90モル%以下が好ましく、30モル%以上90モル%以下がより好ましく、50モル%以上90モル%以下がさらに好ましく、50モル%以上80モル%以下が特に好ましい。
部分ブロックポリイソシアネートの含有量が上記範囲内であることで、得られるフィルムの延伸性をより良好に保つことができる。
また、本実施形態のポリイソシアネート組成物を接着剤樹脂組成物に使用する場合、部分ブロックポリイソシアネートの含有量は、部分ブロックポリイソシアネート、全体ブロックポリイソシアネート及び未ブロック化ポリイソシアネートの合計モル量に対して、0モル%以上100モル%以下とすることができ、10モル%以上90モル%以下が好ましく、20モル%以上80モル%以下がより好ましく、30モル%以上70モル%以下がさらに好ましく、40モル%以上60モル%以下が特に好ましい。
部分ブロックポリイソシアネートの含有量が上記範囲内であることで、接着性樹脂硬化物としたときの積層前の耐溶剤性、上層との密着性及び高温高湿度下での安定性をより優れたものとすることができる。
【0068】
また、本実施形態のポリイソシアネート組成物を塗料用組成物に使用される場合、部分ブロックポリイソシアネートの含有量は、部分ブロックポリイソシアネート、全体ブロックポリイソシアネート及び未ブロック化ポリイソシアネートの合計モル量に対して、0モル%以上100モル%以下とすることができ、10モル%以上90モル%以下が好ましく、20モル%以上85モル%以下がより好ましく、30モル%以上75モル%以下がさらに好ましい。
部分ブロックポリイソシアネートの含有量が上記範囲内であることで、得られる塗料硬化物の耐溶剤性及び低温硬化性がより優れ、塗料のポットライフがより長いものとすることができる。
部分ブロックポリイソシアネートの含有量は、後述する実施例に示す方法を用いて測定することができる。
【0069】
[ポリイソシアネート組成物の製造方法]
ポリイソシアネート組成物は、ポリイソシアネートとブロック剤とを反応させることで製造できる。
【0070】
ポリイソシアネート組成物の製造方法としては、例えば、以下の2つの方法が挙げられる。
(1)ポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数に対して、0.01倍以上0.99倍以下のモル量のブロック剤を反応させて、部分ブロックポリイソシアネートのみを含有するポリイソシアネート組成物を製造する方法;
(2)ポリイソシアネートのイソシアネート基の全部がブロック剤で封鎖されて構成されている全体ブロックポリイソシアネートと、未ブロック化ポリイソシアネート及び部分ブロックポリイソシアネートのうち少なくともいずれか一方のポリイソシアネートとを混合して、製造する方法。
【0071】
ポリイソシアネート組成物の製造方法としては、上記いずれの方法を用いても、目的のポリイソシアネート組成物が得られるが、得られるフィルムの延伸性、及び接着性樹脂硬化物としたときの積層前の耐溶剤性をより良好に発現できることから、上記(1)の方法が好ましい。
【0072】
ポリイソシアネートとブロック剤との反応は、公知の方法を用いて行なうことができ、溶剤の有無に関わらず行うことができる。溶剤を用いる場合には、イソシアネート基に対して不活性な溶剤を用いる必要がある。また、必要に応じて、触媒を用いてもよい。
【0073】
溶剤としては、例えば、エステル類、ケトン類、芳香族化合物等が挙げられる。エステル類としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。ケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン等が挙げられる。芳香族化合物としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0074】
触媒としては、例えば、有機金属塩、3級アンモニウム塩、アルカリ金属のアルコラート等が挙げられる。有機金属塩に用いられる金属としては、例えば、錫、亜鉛、鉛等が挙げられる。アルカリ金属としては、例えば、ナトリウム等が挙げられる。
【0075】
ポリイソシアネートとピラゾール系化合物等のブロック剤との反応温度の下限値は、一般に-20℃であり、0℃が好ましく、30℃がより好ましい。一方、反応温度の上限値は、150℃であり、120℃が好ましく、100℃がより好ましい。
すなわち、反応温度は、-20℃以上150℃以下であり、0℃以上120℃以下が好ましく、30℃以上100℃以下がより好ましい。
反応温度が上記範囲内であることで、副反応がより少なく、適度な反応速度で反応させることができる。
【0076】
≪フィルム形成用組成物≫
本実施形態のフィルム形成用組成物は、以下の成分1)、または成分1)及び2)を含有する。
1)≪ポリイソシアネート組成物≫に記載したポリイソシアネート組成物;
2)活性水素含有化合物
【0077】
本実施形態のフィルム形成用組成物によれば、上述したポリイソシアネート組成物を含有することで、延伸性を良好に保ちながら、耐ブロッキング性及び耐溶剤性に優れるフィルム(以下、「一次硬化フィルム」と称する場合がある。)を提供することができる。
【0078】
<活性水素含有化合物>
活性水素含有化合物としては、特に限定されないが、具体的には、分子内に活性水素が2つ以上結合している化合物が好ましい。好ましい活性水素含有化合物としては、例えば、ポリオール化合物、ポリアミン化合物、アルカノールアミン化合物、ポリチオール化合物等が挙げられる。中でも、延伸性を良好に保ちながら、耐候性及び耐溶剤性が優れるフィルムを得られることから、ポリオール化合物が好ましい。
【0079】
[ポリオール化合物]
ポリオール化合物としては、特に限定されないが、具体的には、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、フッ素ポリオール、ポリカーボネートポリオール、エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ポリオール化合物としては、延伸性を良好に保ちながら、耐候性及び耐溶剤性が優れるフィルムを得られることから、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、又はポリカーボネートポリオールが好ましく、アクリルポリオールがより好ましい。
【0080】
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールとしては、例えば、二塩基酸の単独又は混合物と、多価アルコールの単独又は混合物とを、縮合反応させることによって得ることができる。
【0081】
前記二塩基酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、ダイマー酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等のカルボン酸等が挙げられる。
【0082】
前記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチルペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、2-メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0083】
ポリエステルポリオールの製造方法として具体的には、例えば、上記の成分を混合し、次いで、約160℃以上220℃以下で加熱することによって、縮合反応を行う方法等が挙げられる。
【0084】
又は、ポリエステルポリオールの製造方法として具体的には、例えば、ε-カプロラクトン等のラクトン類を、多価アルコールを用いて開環重合して、ポリカプロラクトンジオール等のポリカプロラクトン類を得る方法が挙げられ、この得られたポリカプロラクトン類をポリエステルポリオールとして用いることができる。
【0085】
これらのポリエステルポリオールは、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらから得られるポリイソシアネートを用いて、変性させることができる。この場合、特に脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート及びこれらから得られるポリイソシアネートが、耐候性及び耐黄変性等の観点から好ましい。
【0086】
水系のフィルム形成用組成物として用いる場合には、一部残した二塩基酸等の一部のカルボン酸を残存させておき、アミン、アンモニア等の塩基で中和することで、水溶性又は水分散性の樹脂とすることができる。
【0087】
(アクリルポリオール)
アクリルポリオールとしては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ヒドロキシ基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体の単独化合物又は混合物と、これと共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体の単独化合物又は混合物との共重合体等が挙げられる。
【0088】
ヒドロキシ基を有するエチレン性不飽和結合含有単量体としては、特に限定されないが、具体的には、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル等が挙げられる。中でも、アクリル酸ヒドロキシエチル、又はメタクリル酸ヒドロキシエチルが好ましい。
【0089】
上記単量体と共重合可能な他のエチレン性不飽和結合含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、不飽和カルボン酸類、不飽和アミド類、加水分解性シリル基を有するビニルモノマー類、その他の重合性モノマー等が挙げられる。これらを1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0090】
前記(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸-n-ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸-n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸-n-ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。
不飽和カルボン酸類としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等が挙げられる。
不飽和アミド類としては、例えば、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
加水分解性シリル基を有するビニルモノマー類としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
その他の重合性モノマーとしては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリルニトリル、フマル酸ジブチル等が挙げられる。
【0091】
例えば、上記の単量体成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合し、必要に応じて有機溶剤等で希釈することによって、アクリルポリオールを得ることもできる。
【0092】
水系ベースアクリルポリオールを得る場合には、オレフィン性不飽和化合物を溶液重合し、水層に転換する方法や乳化重合等の公知の方法で製造することができる。その場合、アクリル酸、メタクリル酸等のカルボン酸含有モノマーやスルホン酸含有モノマー等の酸性部分をアミンやアンモニアで中和することによって水溶性又は水分散性を付与することができる。
【0093】
(ポリエーテルポリオール)
ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されないが、具体的には、多価ヒドロキシ化合物の単独化合物又はその混合物に、強塩基性触媒存在下、アルキレンオキサイドの単独化合物又は混合物を添加して得られるポリエーテルポリオール類;エチレンジアミン類等の多官能化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類;及びこれらポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類等が含まれる。
【0094】
前記多価ヒドロキシ化合物としては、例えば、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、糖アルコール系化合物、単糖類、二糖類、三糖類、四糖類等が挙げられる。
糖アルコール系化合物としては、例えば、エリトリトール、D-トレイトール、L-アラビニトール、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等が挙げられる。
単糖類としては、例えば、アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等が挙げられる。
二糖類としては、例えば、トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオース等が挙げられる。
三糖類としては、例えば、ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトース等が挙げられる。
四糖類としては、例えば、スタキオース等が挙げられる。
【0095】
強塩基性触媒としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;アルコラート、アルキルアミン等が挙げられる。
前記アルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド等が挙げられる。
【0096】
(ポリオレフィンポリオール)
ポリオレフィンポリオールとしては、特に限定されないが、具体的には、水酸基を2個以上有する、ポリブタジエン、水素添加ポリブタジエン、ポリイソプレン、及び水素添加ポリイソプレン等が挙げられる。
【0097】
(フッ素ポリオール)
フッ素ポリオールとは、分子内にフッ素を含むポリオールであり、例えば、特開昭57-34107号公報(参考文献1)、特開昭61-275311号公報(参考文献2)等で開示されているフルオロオレフィン、シクロビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、モノカルボン酸ビニルエステル等の共重合体等が挙げられる。
【0098】
(ポリカーボネートポリオール)
ポリカーボネートポリオールとしては、特に限定されないが、具体的には、低分子カーボネート化合物と、前述のポリエステルポリオールに用いられる多価アルコールとを、縮重合して得られるものが挙げられる。低分子カーボネート化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート;エチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート;ジフェニルカーボネート等のジアリールカーボネート等が挙げられる。
【0099】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、具体的には、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリコールエーテル型エポキシ樹脂、脂肪族不飽和化合物のエポキシ型樹脂、エポキシ型脂肪酸エステル、多価カルボン酸エステル型エポキシ樹脂、アミノグリシジル型エポキシ樹脂、β-メチルエピクロ型エポキシ樹脂、環状オキシラン型エポキシ樹脂、ハロゲン型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0100】
(水酸基価)
ポリオール化合物の水酸基価は、架橋密度やフィルムの機械的物性の点で、ポリオール化合物1gあたり5mgKOH/g以上600mgKOH/g以下が好ましく、10mgKOH/g以上500mgKOH/g以下がより好ましく、15mgKOH/g以上400mgKOH/g以下がさらに好ましい。また、ポリオール化合物の酸価は0mgKOH/g以上30mgKOH/g以下が好ましい。なお、水酸基価及び酸価は滴定法に基づいて求めることができる。
【0101】
[ポリアミン化合物]
ポリアミン化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ジアミン類、3個以上のアミノ基を有する鎖状ポリアミン類、環状ポリアミン類が挙げられる。ジアミン類としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、トリエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、イソホロンジアミン等が挙げられる。3個以上のアミノ基を有する鎖状ポリアミン類としては、例えば、ビスヘキサメチレントリアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタメチレンヘキサミン、テトラプロピレンペンタミン等が挙げられる。環状ポリアミン類としては、例えば、1,4,7,10,13,16-ヘキサアザシクロオクタデカン、1,4,7,10-テトラアザシクロデカン、1,4,8,12-テトラアザシクロペンタデカン、1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン等が挙げられる。
【0102】
[アルカノールアミン化合物]
アルカノールアミン化合物としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、N-(2-ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン、モノ-、ジ-(n-又はイソ-)プロパノールアミン、エチレングリコールービスープロピルアミン、ネオペンタノールアミン、メチルエタノールアミン等が挙げられる。
【0103】
[ポリチオール化合物]
ポリチオール化合物としては、特に限定されないが、具体的には、ビス-(2-ヒドロチオエチロキシ)メタン、ジチオエチレングリコール、ジチオエリトリトール、ジチオトレイトール等が挙げられる。
【0104】
これら活性水素含有化合物は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、活性水素含有化合物としては、延伸性を良好に保ちながら、耐候性及び耐溶剤性が優れるフィルムを得られることから、アクリルポリオールを単独で使用する、又は、アクリルポリオールとジオールとを併用することが好ましい。ここでいう、「ジオール」とは、上記ポリオール化合物のうち、水酸(ヒドロキシ)基を2つ有する化合物を指す。「ジオール」としては、特に限定されないが、具体的には、上記「ポリエステルポリオール」の多価アルコール又はポリカプロラクトン類において例示されたもののうち水酸基を2つ有する化合物、上記「ポリカーボネートポリオール」において例示されたもののうち水酸基を2つ有する化合物が挙げられる。
【0105】
[NCO/OH]
活性水素含有化合物がポリオール化合物である場合に、ポリオール化合物の水酸(-OH)基に対する、ポリイソシアネート組成物のイソシアネート(-NCO)基のモル比(NCO/OH)は、0.2以上5.0以下が好ましく、0.4以上3.0以下がより好ましく、0.5以上2.0以下がさらに好ましい。NCO/OHが上記下限値以上であることで、より一層強靱なフィルムが得られる傾向にある。NCO/OHが上記上限値以下であることで、得られるフィルムの平滑性がより一層向上する傾向にある。なお、NCO/OHの計算で用いられる「ポリイソシアネート組成物のイソシアネート(-NCO)基」のモル数は、ブロック剤で封鎖されていないイソシアネート基と、ブロック剤で封鎖されているイソシアネート基との合計モル数である。
【0106】
<その他の添加剤>
本実施形態のフィルム形成用組成物は、目的及び用途に応じて、有機溶剤、硬化促進触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤等の各種添加剤を含むことができる。
【0107】
有機溶剤としては、水酸基及びイソシアネート基と反応する官能基を有していないことが好ましく、ポリイソシアネート組成物と十分に相溶することが好ましい。このような有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、一般に塗料の溶剤として用いられている溶剤であればよく、エステル化合物、エーテル化合物、ケトン化合物、芳香族化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル系の化合物、ポリエチレングリコールジカルボキシレート系の化合物、炭化水素系溶剤等が挙げられる。
【0108】
硬化促進触媒としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、スズ系化合物、亜鉛化合物、チタン化合物、コバルト化合物、ビスマス化合物、ジルコニウム化合物、アミン化合物等が挙げられる。スズ系化合物としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジメチルスズジネオデカノエート、ビス(2-エチルヘキサン酸)スズ等が挙げられる。亜鉛化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛等が挙げられる。チタン化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸チタン、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトナート)等が挙げられる。コバルト化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸コバルト、ナフテン酸コバルト等が挙げられる。ビスマス化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等が挙げられる。ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、2-エチルヘキサン酸ジルコニル、ナフテン酸ジルコニル等が挙げられる。
【0109】
酸化防止剤としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、リン系化合物、硫黄系化合物等が挙げられる。
【0110】
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物等が挙げられる。
【0111】
光安定剤としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、ヒンダードアミン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾエート系化合物等が挙げられる。
【0112】
顔料としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、インディゴ、パールマイカ、アルミニウム等が挙げられる。
【0113】
レベリング剤としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、シリコーンオイル等が挙げられる。
【0114】
可塑剤としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、フタル酸エステル類、リン酸系化合物、ポリエステル系化合物等が挙げられる。
【0115】
界面活性剤としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、公知のアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。
【0116】
<フィルム形成用組成物の製造方法>
本実施形態のフィルム形成用組成物が有機溶剤ベースである場合には、例えば、まず、活性水素含有化合物又はその溶剤希釈物に、必要に応じて、他の樹脂、触媒、顔料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、界面活性剤等の添加剤を加えたものに、上記ポリイソシアネート組成物を硬化剤として添加する。次いで、必要に応じて、更に有機溶剤を添加して、粘度を調整する。次いで、手攪拌又はマゼラー等の攪拌機器を用いて攪拌することによって、有機溶剤ベースのフィルム形成用組成物を得ることができる。
【0117】
本実施形態のフィルム形成用組成物が水系ベースである場合には、例えば、まず、活性水素含有化合物又はその水分散体若しくは水溶物に、必要に応じて、活性水素含有化合物中の架橋性官能基と反応しうる硬化剤、他の樹脂、触媒、顔料、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤、界面活性剤等の添加剤を加える。次いで、上記ポリイソシアネート組成物又はその水分散体を硬化剤として添加し、必要に応じて、水や溶剤を更に添加して、粘度を調整する。次いで、攪拌機器により強制攪拌することによって、水系ベースのフィルム形成用組成物を得ることができる。
【0118】
≪一次硬化フィルムF1および二次硬化フィルムF2≫
本実施形態の一次硬化フィルムは、脂肪族イソシアネート及び脂環族イソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種のイソシアネート化合物を骨格として有するポリイソシアネート組成物と、活性水素含有組成物とを硬化させてなる一次硬化フィルムであって、前記活性水素含有化合物と前記ポリイソシアネート組成物との硬化によって生成したウレタン基、ウレア基、アミド基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基Xと、活性水素基と、ブロック剤で封鎖されたイソシアネート基とを含む。
本実施形態の一次硬化フィルムは、上記フィルム形成用組成物を硬化させてなる。本実施形態の一次硬化フィルムは、延伸性を良好に保ちながら、耐ブロッキング性に優れる。
【0119】
本実施形態の一次硬化フィルムは、上記フィルム形成用組成物を基材等に塗工し、常温下で又は加熱して硬化させることで得られる。具体的には、フィルム形成用組成物中のポリイソシアネート組成物のイソシアネート基と、活性水素含有化合物の活性水素とが反応して、一次硬化フィルムを形成する。このとき、ブロックされたイソシアネート基がそのまま保持されることにより、一次硬化フィルム貼付時の延伸性が良好に発現される。また、種々の基材に当該一次硬化フィルムを貼り付けた後、再度加熱することにより、イソシアネート基に結合したブロック剤が解離して、さらに架橋を形成する。この架橋形成により、フィルムの架橋密度が向上し、耐候性や耐溶剤性が発現される二次硬化フィルムが得られる。
【0120】
塗工方法としては、リバースロールコート法、グラビアコート法、キスコート法、ダイコーター法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、含浸コート法、カーテンコート法、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、ベル塗装、静電塗装等の公知の方法を用いることができる。
【0121】
一次硬化フィルムの厚さは、特に限定されないが、0.2μm以上500μm以下が好ましく、1μm以上500μm以下がより好ましく、5μm以上300μm以下がさらに好ましく、5μm以上100μm以下が特に好ましい。
【0122】
本実施形態における一次硬化フィルムおよび二次硬化フィルムの作製には、上記ポリイソシアネート組成物と活性水素含有組成物とを含むフィルム形成用組成物が好ましい。上記フィルム形成用組成物を用いることにより、イソシアネート基と活性水素基との反応で形成される架橋構造と、活性水素基、ブロック剤で封鎖されたイソシアネート基とを含む一次硬化フィルムが得られる。一次硬化フィルム中に含まれる架橋構造により、得られるフィルムの室温でのハンドリング性、すなわち室温での耐ブロッキング性をより優れたものとすることができる。また、一次硬化フィルム中に含まれる活性水素基、ブロック剤で封鎖されたイソシアネート基により、一次硬化フィルムをさらに架橋させることが可能となり、優れた耐溶剤性を有する二次硬化フィルムが得られる。
【0123】
イソシアネート基と活性水素基との反応で形成される架橋構造を形成する官能基(以下、官能基Xと称する)は、特に限定されないが、ウレタン基、ウレア基、アミド基から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
本実施形態における一次硬化フィルムでは、一次硬化フィルム1kg中に含まれる、官能基Xのモル数γとブロック剤で封鎖されたイソシアネート基のモル数βとの比、γ/βが0.02以上9.0以下とすることができる。γ/βは0.1以上2.4以下とすることが好ましく、0.1以上1.0以下がより好ましく、0.2以上1.0以下が特に好ましい。γ/βを下限値以上にすることによって、得られるフィルムの室温でのハンドリング性、すなわち室温での耐ブロッキング性をより優れたものとすることができる。一方、γ/βを上限値以下にすることによって、フィルムの延伸性をより良好に保つことができる。
【0124】
また、本実施形態における一次硬化フィルムでは、一次硬化フィルム1kg中に含まれる、官能基Xのモル数γと活性水素基のモル数αとの比、γ/αが0.1以上9.0以下とすることができる。γ/αは0.1以上2.4以下とすることが好ましく、0.1以上1.0以下がより好ましく、0.2以上1.0以下が特に好ましい。
【0125】
本実施形態における一次硬化フィルムでは、一次硬化フィルム1kg中に含まれる、ブロック剤で封鎖されたイソシアネート基のモル数βと活性水素基のモル数αとの比、β/αが0.02以上20以下とすることができる。β/αは0.1以上10以下とすることが好ましく、0.2以上5.0以下がより好ましく、0.5以上2.0以下が特に好ましい。
【0126】
また、一次硬化フィルム1kg中に含まれる官能基Xのモル数γと、二次硬化フィルム1kg中に含まれる官能基Xのモル数γ’の比、γ/γ’が0.1以上0.9以下とすることができる。γ/γ’は0.1以上0.7以下が好ましく、0.1以上0.5以下がより好ましく、0.2以上0.5以下が特に好ましい。γ/γ’を下限値以上にすることによって、得られるフィルムの室温でのハンドリング性、すなわち室温での耐ブロッキング性をより優れたものとすることができる。一方、γ/γ’を上限値以下にすることによって、フィルムの延伸性をより良好に保つことができる。
本実施形態における一次硬化フィルムでは、一次硬化フィルム1kg中に含まれる官能基Xのモル数γと、二次硬化フィルム1kg中に含まれる官能基Xのモル数γ’を、それぞれ以下の範囲であることを特徴とする。
【0127】
1)一次硬化フィルム1kg中に含まれる官能基Xのモル数γは、0.05以上1.0以下である。γは、0.05以上0.8以下が好ましく、0.07以上0.6以下がより好ましく、0.1以上0.4以下が特に好ましい。γが下限値以上であることにより、一定の架橋密度を持ち、自立したフィルムが取得できる。一方、γが上限値以下であることにより、一次硬化フィルムの延伸性を保つことができる。
2)二次硬化フィルム1kg中に含まれる官能基Xのモル数γ’は、0.3以上10以下である。γ’は、0.3以上5.0以下が好ましく、0.5以上2.0以下がより好ましく、0.5以上1.2以下が特に好ましい。γ’を下限値以上にすることで、二次硬化フィルムの架橋密度が向上し、耐溶剤性が発現する。また、γ’を上限値以下とすることで、二次硬化フィルムの機械的物性を良好に保つことができる。
本実施形態において、一次硬化フィルムの引張弾性率は、測定温度をフィルムのガラス転移温度+10℃、引張速度は100%/minとしたときの、応力ひずみ曲線を利用して得られる。一次硬化フィルムの引張弾性率は、伸度5%~10%の領域にて応力とひずみを直線関係として、その傾きから算出したとき、0.1MPa以上3.0MPa以下であることが好ましい。引張弾性率が上限値以下であることにより、良好な延伸性を得ることができ、下限値以上であることにより延伸時に必要なフィルムの強度を保つことができる。引張弾性率は、0.2MPa以上1.5MPa以下が好ましく、0.3MPa以上1.1MPa以下がより好ましく、0.4MPa以上0.7MPa以下が特に好ましい。
<一次硬化フィルムF1の使用方法>
先述の通り、本実施形態の一次硬化フィルムは、予め成形された基材に対して、その表面に貼り付ける、もしくは、公知の成形方法にて、物品を成形すると同時に表面に貼り付けることで用いる。そして、一次硬化フィルムを貼り付けた成形体を、さらに加熱することで貼り付けた一次硬化フィルムを硬化させる工程を経ることによって、耐溶剤性の高いフィルムで保護された成形体を得ることができる。
【0128】
どちらも公知の貼付方法を用いて、フィルムを基材表面に貼り付ければよい。前者の具体例としては、真空成形、圧空成形、真空・圧空成形、ラミネート等が挙げられる。また、後者の具体例としては、インモールド成形、フィルムインサート成形等があげられる。
【0129】
その中でも、特に高い延伸性を求められる、真空・圧空成形、インモールド成形、フィルムインサート成形での使用が好ましく、予め成形された基材であれば材質を問わずにフィルムを貼り付けることができる、真空・圧空成形での使用がより好ましい。
【0130】
一次硬化フィルムの貼付方法は、特に限定されないが、フィルムの成形体への追従性の観点から、一次硬化フィルムを50℃以上140℃以下にて加熱しながら、成形体に追従させて貼り付けることが好ましい。加熱温度を下限値以上にすることによって、フィルムを成形体により追従させて貼り付けることができる。また、加熱温度を上限値以下にすることによって、一次硬化フィルム中に含まれるブロック剤で封鎖されたイソシアネート基の解離を防ぐことができる。
貼り付けた一次硬化フィルムをさらに硬化させる際の加熱温度は、50℃以上180 ℃以下とすることが望ましい。加熱温度は50℃以上170℃以下が好ましく、50℃以上160℃以下がより好ましく、100℃以上150℃以下が特に好ましい。加熱温度が上記範囲であることにより、ブロック剤で封鎖されたイソシアネート基が解離し、活性水素基との反応により、架橋が形成され、耐溶剤性の高いフィルムが得られる。
【0131】
≪一次硬化フィルムF1´および二次硬化フィルムF2´≫
本実施形態の一次硬化フィルムは、架橋構造と硬化性官能基Aとを含む。架橋構造を有することで、自立したフィルムの強度を有し、フィルムのハンドリング性、すなわち、耐ブロッキング性を発現する。さらに、官能基Aが含まれているため、フィルム貼付後での硬化が可能であり、フィルム貼付時の延伸性が良好に発現される程度に架橋密度を下げても、最終的なフィルムの耐候性や耐溶剤性を担保することができる。
【0132】
本実施形態における一次硬化フィルムF1´は、先述の通り、フィルム形成用組成物を基材等に塗工し、外部刺激を印加し、硬化させることで得られる。このとき、含有する反応性官能基のうち、一部が残存している状態で保持することによって、フィルム貼付時の延伸性が良好に発現される。そして、一次硬化フィルムに外部刺激を印加することによって、一次硬化フィルム中に保持されていた反応性官能基によって、さらに硬化が進行することで、二次硬化フィルムが得られる。
【0133】
一次硬化フィルムF1´に含まれる架橋構造は特に限定されず、重縮合、重付加、各種重合反応等を用いた、公知の架橋反応によって形成されたものでよい。具体的には、ビニル基、(メタ)アクリル基に代表される炭素不飽和結合を有する化合物の重合による架橋、エチレンオキシドに代表される環状化合物の開環重合による架橋、アミド結合を介した架橋(ポリアミド)、エステル結合を介した架橋(ポリエステル)、メラミン結合を介した架橋(メラミン樹脂)、カーボネート結合を介した架橋(ポリカーボネート)、ウレタン結合を介した架橋(ポリウレタン)、ウレア結合を介した架橋(ポリウレア)、シリコーン結合を介した架橋(シリコーン樹脂)、フェノールとホルムアルデヒドの縮合による架橋(フェノール樹脂)、尿素とホルムアルデヒドの縮合による架橋(尿素樹脂)、エポキシ樹脂とアミン、アミド、酸、酸無水物等の硬化剤との反応による架橋、イミノ結合を介した架橋(ポリアニリン)等が挙げられる。中でも、ウレタン結合を介した架橋、ウレア結合を介した架橋、アミド結合を介した架橋、(メタ)アクリル基の重合による架橋が好ましく、ウレタン結合を介した架橋が特に好ましい。
【0134】
同じく一次硬化フィルムに含まれる硬化性官能基Aについても、特に限定されず、公知の硬化反応が進行するために必要な官能基を含んでいればよい。そのため、官能基Aは単一でもよく、必要であれば、複数の官能基を含んでいても良い。具体的には、単一でも硬化反応が進行する官能基として、ビニル基や(メタ)アクリル基、シラノール基等があげられる。中でも、(メタ)アクリル基が好ましい。
また、複数の官能基で硬化反応が進行する官能基の組み合わせとしては、「活性水素基とイソシアネート基」、「カルボキシ基とヒドロキシ基」、「エポキシ基とアミノ基や酸、酸無水物」、「アミノ基とホルミル基(アルデヒド基)」等があげられる。中でも、「活性水素基とイソシアネート基」の組み合わせが好ましい。
なお、一次硬化フィルムに含まれる架橋構造と官能基Aによって形成される架橋構造とは同一でも良いし、異なっていても良い。
なお、硬化性官能基Aを有する化合物は、反応性官能基を有さない化合物であっても、後述する外部刺激を印加した際に反応性を有するような化合物であればよい。こちらも特に限定されないが、例えば、酸無水物や、ブロックイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0135】
架橋構造を形成する際には、室温あるいは何らかの外部刺激を印加することによって行う。具体的な外部刺激の種類として、加熱、活性エネルギー線照射、水分、振動、電場、磁場、圧力、pH変化などがあげられる。一次硬化フィルムに含まれる架橋構造の形成には、工程設備の汎用性、生産性の観点から、加熱、活性エネルギー線照射、水分によるものが好ましく、加熱、活性エネルギー線照射がより好ましく、加熱がさらにより好ましい。
【0136】
また、官能基Aによる架橋構造の形成には、使用方法上の観点から、フィルムを保管している状態では架橋形成が開始しないことが望ましい。また、構造体への貼付後の架橋形成という観点から、効率的に架橋構造を形成するために、加熱、活性エネルギー線照射によるものが好ましい。
二次硬化フィルムは、一次硬化フィルム中に含有する硬化性官能基Aを反応させることで得られる。
官能基Aの反応により、フィルムの架橋密度が向上し、耐候性や耐溶剤性が発現される。
【0137】
<フィルム形成用組成物>
本実施形態のフィルム形成用組成物は、架橋構造を有する化合物若しくは架橋構造を形成可能な化合物、及び前述の硬化性官能基Aを含むことを特徴とする。このフィルム形成用組成物を基材等に塗工、必要に応じて加熱等の外部刺激を印加することにより、架橋構造と硬化性官能基Aを含む一次硬化フィルムが得られる。
【0138】
<一次硬化フィルムF1´の使用方法>
本実施形態の一次硬化フィルムは、予め成形された基材に対して、その表面に貼り付ける、もしくは、公知の成形方法にて、物品を成形すると同時に表面に貼り付けることで用いる。そして、一次硬化フィルムを貼り付けた成形体を、さらに加熱することで貼り付けた一次硬化フィルムを硬化させる工程を経ることによって、耐溶剤性の高いフィルムで保護された物品を得ることができる。
【0139】
フィルムの貼付に関しては、公知の方法を用いて、フィルムを基材表面に貼り付ければよい。その方法は特に限定されないが、予め成形された基材に対しては、真空成形、圧空成形、真空・圧空成形、ラミネートによる方法等が挙げられる。また、成形と同時に貼付を行う方法としては、インモールド成形、フィルムインサート成形等があげられる。
【0140】
その中でも、特に高い延伸性を求められる、真空・圧空成形、インモールド成形、フィルムインサート成形での使用が好ましく、予め成形された基材であれば材質を問わずにフィルムを貼り付けることができる、真空・圧空成形での使用がより好ましい。
【0141】
≪フィルム積層体≫
本実施形態のフィルム積層体は、基材層、加飾層及び接着層からなる群より選ばれる少なくとも2種類の層を備えるフィルム積層体である。前記フィルム積層体を構成する層のうち少なくとも1種類の層は、上記一次硬化フィルムF1あるいはF1’を含む。本実施形態のフィルム積層体は、耐ブロッキング性及び耐溶剤性に優れる。
本実施形態のフィルム積層体は、上記フィルムを基材層及び加飾層のうちいずれか1種類の層に含んでいてもよく、両方の層に含んでいてもよい。また、本実施形態のフィルム積層体は、フィルム積層体を構成する1種類の層内に上記フィルムを1層(単層)含んでいてもよく、2層以上の複数層含んでいてもよい。
【0142】
<加飾層>
加飾層としては、特に限定されないが、具体的には、着色層、パターン層等が挙げられる。加飾層は、1層(単層)からなるものでもよく、2層以上の複数層からなるものでもよい。加飾層が複数層からなる場合、これら複数層の組成、形状及び厚さは、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
なお、本明細書においては、加飾層の場合に限らず、「複数層が互いに同一でも異なっていてもよい」とは、「すべての層が同一であってもよいし、すべての層が異なっていてもよく、一部の層のみが同一であってもよい」ことを意味し、さらに「複数層が互いに異なる」とは、「各層の組成、形状及び厚さのうち少なくともいずれか一つが互いに異なる」ことを意味する。
【0143】
加飾層の厚さは、特に限定されないが、0.2μm以上100μm以下が好ましい。なお、ここでいう「加飾層の厚さ」は加飾層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる加飾層の厚さとは、加飾層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0144】
[着色層]
着色層とは、塗装色、金属色等を呈する層である。着色層に含まれる着色剤としては、例えば、無機顔料、有機顔料、アルミ光輝材、顔料がバインダー樹脂に分散されたもの、印刷用インキが挙げられる。無機顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、赤色酸化鉄等が挙げられる。有機顔料としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾレーキ系顔料、インジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられる。フタロシアニン系顔料としては、例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等が挙げられる。キナクリドン系顔料としては、例えば、キナクリドンレッド等が挙げられる。アルミ光輝材としては、例えば、アルミニウムフレーク、蒸着アルミニウムフレーク、金属酸化物被覆アルミニウムフレーク、着色アルミニウムフレーク等が挙げられる。バインダー樹脂に分散される顔料としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄等の金属酸化物で被覆されたフレーク状のマイカ及び合成マイカ等のパール光輝材等が挙げられる。顔料を分散するバインダー樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0145】
[パターン層]
パターン層とは、木目、幾何学模様、皮革模様等の模様、ロゴ及び絵柄等を物品に付与する層である。パターン層の形成方法としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、公知の印刷方法、公知のコーティング方法、打ち抜き、エッチング等が挙げられる。印刷方法としては、例えば、グラビアダイレクト印刷、グラビアオフセット印刷、インクジェット印刷、レーザー印刷、スクリーン印刷等が挙げられる。コーティング方法としては、例えば、グラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、ナイフコート等が挙げられる。
【0146】
また、パターン層の材料としては、上記フィルム形成用組成物からなるフィルムであってもよく、その他の樹脂からなるフィルム若しくはシート、又は金属箔であってもよい。
【0147】
<基材層>
基材層は加飾層の支持層となり、また、成形時の均一な伸びを与え、外部からの突き刺し、衝撃等から構造体をより有効に保護する保護層としても機能することができる。基材層は、1層(単層)からなるものでもよく、2層以上の複数層からなるものでもよい。基材層が複数層からなる場合、これら複数層の組成、形状及び厚さは、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0148】
基材層は特に限定されないが、例えば、樹脂、金属(鋼板、表面処理鋼板等)、木材、無機材料(ガラス等)等の材料を成形してなる層や、上記フィルム形成用組成物を成形してなる層が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレートを含むアクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエステル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
【0149】
基材層の厚さは特に限定されないが、加飾層の成形性に悪影響を及ぼさないこと、上記基材層の機能をフィルムに付与するという観点から、2μm以上500μm以下が好ましく、5μm以上200μm以下がより好ましい。なお、ここでいう「基材層の厚さ」は基材層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材層の厚さとは、基材層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0150】
<接着層>
本実施形態のフィルム積層体は、基材層及び加飾層の間や、基材層及び加飾層が複数層からなる場合にはそれら層の間に、接着層をさらに備えてもよい。接着層は、1層(単層)からなるものでもよく、2層以上の複数層からなるものでもよい。接着層が複数層からなる場合、これら複数層の組成、形状及び厚さは、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0151】
接着層に含まれる接着剤としては、特に限定されないが、一般に使用される接着剤であればよく、具体的には、例えば、アクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ゴム系等の、溶剤型、エマルジョン型、感圧型、感熱型、熱硬化型又は紫外線硬化型の接着剤が挙げられる。
【0152】
接着層の厚さは特に限定されないが、加飾層の成形性に悪影響を及ぼさないこと、上記基材層の機能をフィルムに付与するという観点から、2μm以上200μm以下が好ましく、5μm以上100μm以下がより好ましい。なお、ここでいう「接着層の厚さ」は接着層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる接着層の厚さとは、接着層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0153】
≪接着性樹脂組成物≫
本実施形態の接着性樹脂組成物は、以下の成分1)、または成分1)及び2)を含有する。
1)上記≪ポリイソシアネート組成物≫に記載したポリイソシアネート組成物;
2)活性水素含有化合物
【0154】
本実施形態の接着性樹脂組成物によれば、上述したポリイソシアネート組成物を含有することで、積層前の耐溶剤性、上層として使用される各種機能層との密着性及び高温高湿度下での安定性に優れる接着性樹脂硬化物を提供することができる。ここでいう「接着性樹脂硬化物」とは、本実施形態の接着性樹脂組成物を硬化させてなるものである。すなわち、一実施形態において、本発明は、上述した接着性樹脂組成物を硬化させてなる、接着性樹脂硬化物を提供する。
【0155】
<活性水素含有化合物>
活性水素含有化合物としては、上記<活性水素含有化合物>に記載したとおりである。
また、本実施形態の接着性樹脂組成物は、上述したポリイソシアネート組成物に加えて、他の架橋剤成分を含有することができる。
【0156】
<他の架橋剤成分>
他の架橋剤成分としては、例えば、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、カルボジイミド化合物等が挙げられる。
【0157】
エポキシ化合物としては、1分子にエポキシ基を2個以上有する樹脂であれば特に制限はなく、それ自体既知のものを使用することができる。エポキシ化合物として、例えば、ビスフェノールにエポクロルヒドリンを付加させて得られるビスフェノール型エポキシ化合物、フェノールノボラック樹脂にエピクロルヒドリンを付加させて得られるノボラック型エポキシ化合物、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。該エポキシ化合物は、必要に応じて水分散化して使用することができる。
【0158】
オキサゾリン化合物としては、オキサゾリン基を側鎖に少なくとも2個有する重合体状の化合物、1分子中にオキサゾリン基を少なくとも2個有する単量体の化合物等が挙げられる。
【0159】
メラミン化合物としては、例えば、メラミンとアルデヒドとの反応によって得られる部分又は完全メチロール化メラミン樹脂等が挙げられる。上記アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド等が挙げられる。また、このメチロール化メラミン樹脂のメチロール基をアルコールによって部分的に又は完全にエーテル化したものも使用することができる。エーテル化に用いられるアルコールの例としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、2-エチルブタノール、2-エチルヘキサノール等が挙げられる。
【0160】
該メラミン化合物の具体例としては、日本サイテックインダストリーズ社製のサイメル303、サイメル323、サイメル325、サイメル327、サイメル350、サイメル370、サイメル380、サイメル385、サイメル212、サイメル251、サイメル254、マイコート776(以上いずれも商品名)等が挙げられる。
【0161】
カルボジイミド化合物としては、例えば、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基同士を脱二酸化炭素反応せしめることにより得ることができる。カルボジイミド化合物の市販品としては、例えば、カルボジライトV-02、カルボジライトV-02-L2、カルボジライトV-04、カルボジライトE-01、カルボジライトE-02(いずれも日清紡社製、商品名)等が挙げられる。
【0162】
本実施形態の接着性樹脂組成物は、被着体へ塗布する場合の作業性、薄膜化の容易性から、例えば、各種溶剤、水等で希釈した塗布液として使用することが可能である。使用可能な溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル類等から目的及び用途に応じて適宜選択して使用することができる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本実施形態の接着性樹脂組成物の固形分濃度は、特に制限はされないが、接着性樹脂組成物の総質量に対して10質量%以上80質量%以下が好ましく、15質量%以上60質量%以下がより好ましく、20質量%以上50質量%以下がさらに好ましく、25質量%以上40質量%以下が特に好ましい。
【0163】
<使用用途>
本実施形態の接着性樹脂組成物の使用分野としては、自動車、建材或いは家電、木工、太陽電池用積層体等が挙げられる。中でも、テレビ、パソコン、デジタルカメラ、携帯電話等の家電の液晶ディスプレイ用等の光学部材は、各種機能を発現するため、各種被着体のフィルム及びプレートを積層させる必要がある。各種被着体のフィルム及びプレート間には十分な密着性が要求されることから、本実施形態の接着性樹脂組成物の使用例として好ましい。
【0164】
[被着体]
本実施形態の接着性樹脂組成物に対して用いられ得る被着体としては、例えば、ガラス、アルミニウム、鉄、亜鉛鋼板、銅、ステンレス等の各種金属;モルタル、石材等の多孔質部材;フッ素塗装、ウレタン塗装、アクリルウレタン塗装等がされた部材;シリコーン系、変性シリコーン系、ウレタン系等のシーリング材硬化物;塩化ビニル、天然ゴム、合成ゴム等のゴム類;ポリエステル、アクリル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリオレフィン等の樹脂類のフィルム及びプレート;紫外線硬化型アクリル樹脂層;印刷インキ、UVインキ等のインキ類からなる層等が挙げられる。中でもポリエステル、アクリル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリオレフィン等の樹脂類のフィルム及びプレート、又は紫外線硬化型アクリル樹脂層が好ましい。
【0165】
以下、被着体がポリエステルフィルムである場合を例に記載する。
本実施形態の接着性樹脂組成物の被着体として使用されるポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチレンテレフタレート、及び、共重合体成分として、例えば、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコール等のジオール成分や、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸等のジカルボン酸成分等を共重合したポリエステル樹脂等が挙げられる。中でも、ポリエステル樹脂としては、主に、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びポリエチレンナフタレートからなる群より選択される少なくとも1種を構成成分とすることが好ましい。さらに、これらのポリエステル樹脂の中でも、物性とコストのバランスから、ポリエチレンテレフタレートが最も好ましい。また、これらのポリエステルフィルム又はポリエステルプレートは耐薬品性、耐熱性、機械的強度等を向上させることができることから、二軸延伸されていることが好ましい。
【0166】
また、必要に応じて、ポリエステル樹脂中に各種添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、有機滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、界面活性剤等が挙げられる。
【0167】
ポリエステルフィルムの厚みは、光学部材として使用する場合に必要な強度を得るために、10μm以上400μm以下が好ましく、20μm以上300μm以下がより好ましく、30μm以上200μm以下がさらに好ましい。また、ポリエステルプレートの厚みは、特に制限がないが、1mm以上10mm以下が好ましく、2mm以上8mm以下がより好ましく、3mm以上5mm以下がさらに好ましい。本明細書では、フィルムとプレートとを厚みで区別し、500μm以下の厚みのものをフィルム、500μmを超えるものをプレートと定義する。
【0168】
<接着性樹脂組成物の使用方法>
本実施形態の接着性樹脂組成物の使用方法について説明する。
本発明の接着性樹脂組成物の使用方法としては、例えば、少なくとも片方の被着体に本実施形態の接着性樹脂組成物を塗布する工程、接着性樹脂組成物を塗布した被着体ともう一方の被着体とを張り合わせる工程、必要に応じ、被着体を張り合わせた積層物を、加熱して接着させる工程等を含む方法等が挙げられる。
【0169】
また、光学部材の積層フィルム用途では、被着体となるポリエステルフィルム等にあらかじめ易接着処理層用に本実施形態の接着剤組成物を塗布し、熱処理工程を実施した後に、もう一方の被着体を張り合わせる方法や、易接着処理層を設けたフィルムにさらに本実施形態の接着性樹脂組成物を塗布した後、張り合わせる方法等が挙げられる。本実施形態の接着性樹脂組成物は、これらのいずれの方法で用いた場合にも有効である。
【0170】
本実施形態の接着性樹脂組成物を含む塗布液をフィルム等に塗布するための方法は、公知の任意の方法を用いることができる。例えば、ロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、カーテンコート法等が挙げられる。これらの方法を、単独又は組み合わせて、塗工することができる。
【0171】
塗布液の塗布量は、特に限定されないが、乾燥後の厚さとして、0.01μm以上1μm以下が好ましく、0.02μm以上0.5μm以下がより好ましく、0.04μm以上0.3μm以下がさらに好ましい。
【0172】
また、塗布液中に、シリカ、タルク等の無機粒子、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系等の有機粒子を混合させることもできる。さらに、塗布液中に、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、帯電防止剤等を混合させることもできる。
【0173】
以下、塗布層の形成方法について、易接着処理ポリエステルフィルムを作製する場合を例に説明する。
本実施形態の接着性樹脂組成物は、ポリエステルフィルムと各種被着体との密着性を向上させるため、ポリエステルフィルム表面に塗布される易接着処理層(すなわち被着体との接着のためにフィルム基材上に予め形成される接着剤層)用の架橋剤成分として使用される。例えば、易接着処理ポリエステルフィルム用に使用される場合、主に以下の2つの方法で易接着処理層が形成される。1つ目は、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムに、必要成分を含有する塗布液を基材フィルムに塗工し、乾燥後、少なくとも一軸方法に延伸し、次いで熱処理し、ポリエステルフィルムの配向を完了させるインラインコート法である。2つ目は、ポリエステルフィルム製造後、当該フィルムに塗布液を塗工後、乾燥するオフラインコート法である。一般に、ポリエステルフィルム製造と同時に、塗布層が形成されるという製造効率の観点から、インラインコート法が好ましい。
【0174】
(易接着処理ポリエステルフィルムの製造方法)
本実施形態の接着性樹脂組成物を易接着処理層とした易接着処理ポリエステルフィルムの製造方法について説明する。
まず、フィルムを構成することになるポリエステルをフィルム状に溶融押出し、その後、冷却固化させ、未延伸ポリエステルフィルムを得ることができる。二軸延伸ポリエステルフィルムは、この未延伸フィルムをTg~(Tg+50)℃で長手方向に3倍以上5倍以下になるように延伸し、その後、Tg~(Tg+50)℃で幅方向に3倍以上5倍以下になるように延伸、あるいは長手方向及び幅方向を同時に延伸し、その後140℃以上230℃以下で1秒間以上60秒間以下程度、熱処理工程を行い完成される。
【0175】
従来、熱処理工程における熱履歴として、200℃で1分程度かけられていたが、地球環境保護、生産性向上の観点から、熱処理工程の低温化が望まれている。そのため、熱履歴として150℃で1分程度に低温化することが検討されている。易接着処理層用として従来の接着剤組成物を使用した場合、初期密着性及び耐湿熱試験後密着性が低下する場合がある。従って、低温化された熱処理工程においても、初期密着性及び耐湿熱試験後密着性が発現しうる接着剤組成物が強く望まれている。150℃で1分程度の熱処理工程で密着性を発現するためには、ブロックポリイソシアネートよりも、より低温で架橋を形成できることが好ましい。具体的には、60℃以下で架橋可能な(60℃以下で架橋反応が開始される)架橋剤が好ましい。
【0176】
本実施形態の接着性樹脂組成物を塗布することによる易接着処理ポリエステルフィルムの形成は、任意の段階で実施することができる。未延伸あるいは一軸延伸後に前記塗布液を塗布し、乾燥した後、少なくとも一軸方向に延伸し、次いで熱処理を行って完成させることが好ましい。また、塗布液の塗布は、片面のみでも構わないし、両面に実施しても特に問題はない。
【0177】
≪塗料用組成物≫
本実施形態の塗料用組成物は、以下の成分1)、または成分1)及び2)を含有する。
1)上記≪ポリイソシアネート組成物≫に記載したポリイソシアネート組成物;
2)活性水素含有化合物
【0178】
本実施形態の塗料用組成物によれば、上述したポリイソシアネート組成物を含有することで、塗膜の耐溶剤性に優れ、塗料のポットライフが良好な塗料硬化物を提供することができる。ここでいう「塗料硬化物」とは、本実施形態の塗料用組成物を硬化させてなるものである。すなわち、一実施形態において、本発明は、上述した塗料用組成物を硬化させてなる、塗料硬化物を提供する。
【0179】
<活性水素含有化合物>
活性水素含有化合物としては、上記<活性水素含有化合物>に記載したとおりである。
また、本実施形態の塗料用組成物は、上述したポリイソシアネート組成物に加えて、他の架橋剤成分を含有することができる。
【0180】
<他の架橋剤成分>
他の架橋剤成分としては、上記<他の架橋剤成分>に記載したとおりである。
【0181】
本実施形態の塗料用組成物は、被塗物へ塗布する場合の作業性、薄膜化の容易性から、例えば、各種溶剤、水等で希釈した塗布液として使用することが可能である。使用可能な溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、酢酸セロソルブ等のエステル類等から目的及び用途に応じて適宜選択して使用することができる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0182】
塗料用組成物の固形分濃度は、特に制限はされないが、粘度調整の容易さの点から、塗料用組成物の総質量に対して10質量%以上90質量%以下が好ましく、25質量%以上80質量%以下がより好ましく、35質量%以上75質量%以下がさらに好ましく、40質量%以上70質量%以下が特に好ましい。
【0183】
塗料用組成物は任意の温度条件下で焼付を実施して硬化を促進することができる。近年の傾向として、設備における熱エネルギー削減の点から、より低温で硬化する塗料用組成物が求められている。焼付温度としては、低温での硬化性に優れる観点から、40℃以上200℃以下の範囲が好ましく、60℃以上180℃以下がより好ましく、80℃以上160℃以下が更に好ましく、100℃以上140℃以下が特に好ましい。焼付温度が上記範囲にあることで、低温乾燥性や耐溶剤性に優れる塗膜が得られる。
<使用用途>
本実施形態の塗料用組成物は、以下に限定されないが、例えば、ロール塗装、カーテンフロー塗装、スプレー塗装、静電塗装、ベル塗装等の塗装方法により、各種素材を成形してなる被塗物に塗装するための、プライマー、中塗り又は上塗り用塗料として好適に用いられる。また、防錆鋼板を含むプレコートメタル、自動車、プラスチックの塗装等に美粧性、耐候性、耐酸性、防錆性、耐チッピング性等を付与するための塗料としても有用である。また、粘着剤、エラストマー、フォーム、表面処理剤等のウレタン原料としても有用である。本実施形態の塗料用組成物の使用分野としては、自動車、建材或いは家電、木工、太陽電池用積層体等が挙げられる。
【0184】
[被塗物]
塗料用組成物の塗装対象となる被塗物の素材としては、ガラス;アルミニウム、鉄、亜鉛鋼板、銅、ステンレス等の各種金属;木材、紙、モルタル、石材等の多孔質部材;フッ素塗装、ウレタン塗装、アクリルウレタン塗装等が施された部材;シリコーン系硬化物、変性シリコーン系硬化物、ウレタン系硬化物等のシーリング材硬化物;塩化ビニル、天然ゴム、合成ゴム等のゴム類;天然皮革、人工皮革等の皮革類;植物系繊維、動物系繊維、炭素繊維、ガラス繊維等の繊維類;不織布、ポリエステル、アクリル、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリオレフィン等の樹脂類のフィルム及びプレート;紫外線硬化型アクリル樹脂層;印刷インキ、UVインキ等のインキ類からなる層等が挙げられる。
【実施例】
【0185】
以下、本実施形態を実施例及び比較例に基づいてさらに詳しく説明するが、本実施形態は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、特に指定のない限り、文中の「%」、「部」は、いずれも質量基準のものをさす。
【0186】
合成例で得られたポリイソシアネート組成物の物性の測定方法、並びに実施例及び比較例で得られたフィルム及びフィルム積層体の評価方法を以下に示す。
【0187】
<物性の測定方法及び評価方法>
[物性1]粘度
エミラ型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
【0188】
[物性2]数平均分子量
数平均分子量は下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。ポリイソシアネート組成物を試料として用いた。測定条件を以下に示す。
【0189】
(測定条件)
装置:東ソー(株)製、HLC-802A
カラム:東ソー(株)製、G1000HXL×1本
G2000HXL×1本
G3000HXL×1本
キャリアー:テトラヒドロフラン
検出方法:示差屈折計
【0190】
[物性3]イソシアネート基(NCO)含有率
イソシアネート基(NCO)含有率は以下の方法を用いて求めた。なお、ポリイソシアネート組成物においてブロックポリイソシアネートを含む場合には、加熱等によりブロック剤を解離させた後、測定試料として用いた。
まず、フラスコにポリイソシアネート組成物2g以上3g以下を精秤した(Wg)。次いで、トルエン20mLを添加し、ブロック剤解離後のポリイソシアネート組成物を溶解した。次いで、2規定のジ-n-ブチルアミンのトルエン溶液20mLを添加し、混合後、15分間室温放置した。次いで、イソプロピルアルコール70mLを加え、混合した。次いで、この液を1規定塩酸溶液(ファクターF)で、指示薬に滴定した。得られた滴定値をV2mLとした。次いで、同様の操作をポリイソシアネート組成物なしで行い、得られた滴定値をV1mlとした。次いで、下記式からブロック剤解離後のポリイソシアネート組成物のイソシアネート基(NCO)含有率(イソシアネート基(NCO)含有率)X1(質量%)を算出した。
【0191】
イソシアネート基(NCO)含有率X1(質量%)=
(V1-V2)×F×42/(W×1000)×100
【0192】
[物性4]イソシアネート基合計平均数
イソシアネート基合計平均数(NCO合計平均数)は、以下の数式により求めた。以下の式において、「Mn」はポリイソシアネート組成物においてブロックポリイソシアネートを含む場合には、加熱等によりブロック剤を解離させた後、測定したポリイソシアネート組成物の数平均分子量である。「NCO含有率」は、ポリイソシアネート組成物においてブロックポリイソシアネートを含む場合には、加熱等によりブロック剤を解離させた後、測定したポリイソシアネート組成物の全質量に対して存在するイソシアネート基の含有率であり、上記「物性3」において算出されたX1(質量%)を用いる。また、NCO含有率を百分率から小数に換算するために「0.01」をNCO含有率に乗じている。「42」はイソシアネートの式量である。
【0193】
NCO合計平均数=(Mn×NCO含有率(X1)×0.01)/42
【0194】
[物性5]ブロック化率
ポリイソシアネート組成物及びフィルム形成用組成物におけるブロック化率は以下の式より求めた。
【0195】
ブロック化率=ブロック剤モル数/イソシアネート基モル数
【0196】
なお、上記式中の、「イソシアネート基モル数」は、加熱処理にてブロック剤を解離させた後のポリイソシアネート組成物における単位質量あたりのイソシアネート基モル数であり、上記「物性3」で算出されたNCO含有率(X1)を用いて、以下の式にて定量した。ここで、NCO含有率を百分率から小数に換算するために「0.01」をNCO含有率(X1)に乗じている。「42」はイソシアネートの式量である。
【0197】
イソシアネート基モル数=(X1×0.01)/42
【0198】
また、上記式中の、「ブロック剤モル数」は、ブロック剤解離時のブロック剤をトラップし、ブロック剤のモル数をガスクロマトグラフィー質量分析測定により定量した。
【0199】
[物性6]部分ブロックポリイソシアネートの含有量
部分ブロックポリイソシアネートの含有量は、以下のLC-MS測定により、以下に示す式を用いて、ピーク高さの比率で算出した。
【0200】
部分ブロックポリイソシアネートの含有量=
[(ピークB+ピークC)/(ピークA+ピークB+ピークC+ピークD]×100
【0201】
(前処理)
ポリイソシアネート組成物のメタノール溶液(10mg/mL)を調製し、1日放置した。
【0202】
(使用機器)
・LC:Agilent社製1100series
・MS:ThermoElectron社製LCQ
・カラム:Phenomenex、Kinetex2.6μm XB-C18 100A(2.1mmI.D.×50mm)
【0203】
(LC試験条件)
・カラム温度:40℃
・検出:205nm
・流速:0.35mL/min
・移動相:移動相Aに0.05%ギ酸水溶液、移動相Bにメタノールを使用。
・グラジェント条件:0分で移動相A/移動相B=50/50、30分で移動相A/移動相B=0/100、30.1分で移動相A/移動相B=50/50、42分で移動相A/移動相B=50/50)とした。
・注入量:2μLMS
【0204】
(MS条件)
・イオン化:APCI
・モード:Positive
・スキャンレンジ:m/Z=250~2000
【0205】
(測定結果)
当該測定では、ブロック化されていないイソシアネート基がメタノールと付加した形でそれぞれ以下のピークA~Dがリテンションタイム16.4~18.4分の間で、検出された。
・ピークA:未ブロック化ポリイソシアネート3量体の場合は、メタノールがイソシアネート基3個に付加し、分子量600のピークAとして検出された。
・ピークB:モノブロックポリイソシアネート3量体の場合は、イソシアネート基3個のうち、メタノールがイソシアネート基2個に付加し、ブロック剤がイソシアネート基1個に付加した形のピークとして得られ、ブロック剤が、3,5-ジメチルピラゾールの場合、分子量664のピークBとして検出された。
・ピークC:ジブロックポリイソシアネート3量体の場合は、イソシアネート基3個のうち、メタノールがイソシアネート基1個に付加し、ブロック剤がイソシアネート基2個に付加した形のピークとして得られ、ブロック剤が、3,5-ジメチルピラゾールの場合、分子量728のピークCとして検出された。
・ピークD:フルブロックポリイソシアネート(全体ブロックポリイソシアネート)3量体は、ブロック剤がイソシアネート基3個に付加しており、ブロック剤が、3,5-ジメチルピラゾールの場合、分子量792のピークDとして検出された。
【0206】
[一次硬化フィルムF1の作製]
実施例及び比較例で得られた各フィルム形成用組成物をポリプロピレン(PP)板に樹脂膜厚60μmになるようにバーコーターにて塗布し、90℃、30分加熱硬化させた。その後、PP板から剥離させることで一次硬化フィルムF1を得た。
[一次硬化フィルムF1´の作製]
実施例及び比較例で得られた各フィルム形成用組成物をポリプロピレン(PP)板に樹脂膜厚60μmになるようにバーコーターにて塗布し、140℃、30分加熱硬化させた。その後、PP板から剥離させることで一次硬化フィルムF1´を得た。
【0207】
[評価1]延伸性
(1)フィルムのガラス転移温度の測定
実施例及び比較例で得られた各フィルム形成用組成物をステンレス板に樹脂膜厚25μmになるようにバーコーターで塗布し、90℃、30分加熱硬化させることで、ガラス転移温度測定用試験片を得た。得られた試験片の対数減衰率を剛体振り子型粘弾性測定器(株式会社エー・アンド・デイ製、RPT-3000W)を用いて測定した。温度-対数減衰率曲線のピークトップをフィルムのガラス転移温度とした。当該測定にて得られたガラス転移温度を基に、破断伸度及び破断応力の測定温度を決定した。
【0208】
(2)破断伸度及び破断応力の測定
実施例及び比較例で得られたフィルム形成用組成物を用いて作製された各フィルムの引張試験を、万能試験機(株式会社エー・アンド・デイ製、RTE-1210)を用いて、以下に示す条件にて実施した。測定にて得られた破断伸度及び破断強度に基づいて、以下の評価基準により、フィルムの破断伸度及び破断応力を評価した。
【0209】
(測定条件)
試験片寸法:幅10×長さ20mm
試験片厚み:約60μm
引張速度:20mm/min
測定温度:測定したガラス転移温度プラス10℃
【0210】
(破断伸度の評価基準)
☆:測定温度でのフィルムの破断伸度が200%以上
◎:測定温度でのフィルムの破断伸度が180%以上199%以下
○:測定温度でのフィルムの破断伸度が150%以上179%以下
△:測定温度でのフィルムの破断伸度が50%以上149%以下
×:測定温度でのフィルムの破断伸度が50%未満
【0211】
(破断応力の評価基準)
☆:測定温度でのフィルムの破断応力が1.30MPa以上
◎:測定温度でのフィルムの破断応力が1.10MPa以上1.29MPa以下
○:測定温度でのフィルムの破断応力が0.80MPa以上1.09MPa以下
△:測定温度でのフィルムの破断応力が0.50MPa以上0.79MPa以下
×:測定温度でのフィルムの破断応力が0.50MPa未満
【0212】
[評価2]耐ブロッキング性
実施例及び比較例で得られたフィルム形成用組成物を用いて作製された各フィルムのタックの有無を指触にて確認した。以下に示す評価基準に従い、耐ブロッキング性を評価した。なお、ここでいう「タック」とは、瞬間接着力という粘着特有の性質を意味し、具体的には、指と指の間に粘着する物体を挟んでからすぐに引き離すときの抵抗力ともいえる。
【0213】
(評価基準)
○:タックが認められない
△:わずかにタックが認められるが、実用上支障のない程度
×:明らかなタックが認められる
【0214】
[二次硬化フィルムの作製]
(一次硬化フィルムF1を用いた二次硬化フィルムF2)
実施例及び比較例で得られた各フィルム形成用組成物をガラス板に樹脂膜厚60μmになるようにバーコーターにて塗布し、90℃、30分加熱硬化させて、一次硬化フィルムF1を得た。
得られた一次硬化フィルムF1をさらに、140℃30分加熱硬化することで、二次硬化フィルムF2を得た。
【0215】
(一次硬化フィルムF1´を用いた二次硬化フィルムF2´)
実施例及び比較例で得られた各フィルム形成用組成物をガラス板に樹脂膜厚60μmになるようにバーコーターにて塗布し、140℃、30分加熱硬化させて一次硬化フィルムF1´を得た。
得られた一次硬化フィルムF1´の面側から、積算光量900mJ/cm2の紫外線を5分間照射することで、二次硬化フィルムF2´を得た。
【0216】
[評価3]フィルム積層体の耐溶剤性
実施例及び比較例で得られたフィルム形成用組成物を用いて作製された各フィルム積層体のフィルム表面に、キシレン:0.1mLを滴下した。その後、15分間静置した後の、フィルムの状態を目視にて観察し、耐溶剤性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0217】
(評価基準)
○:表面に荒れや痕が認められない
△:表面にわずかに痕が認められるが、実用上支障のない程度であった
×:表面に明らかな荒れや痕が認められる
【0218】
[接着性樹脂硬化物(積層ポリエステルプレート)の作製]
ポリエステルプレートとして、タキロン社製のポリエチレンテレフタレートプレート(製品名:スーパーPETプレートPET-6010、膜厚:4mm)を用いた。
上記ポリエチレンテレフタレートプレート表面に、実施例及び比較例で得られた接着性樹脂組成物を含み、樹脂固形分を30質量%に調整した塗布液を、アプリケーターで塗布し、90℃で30秒乾燥させた。その後、150℃、1分間の熱処理工程を行い、その後、冷却し、膜厚1μmの易接着処理層を有する易接着処理ポリエステルプレートを得た。
さらに、易接着処理層面に、以下の組成を有する紫外線硬化型アクリル樹脂組成物をアプリケーターで塗布し、プレート面側から、紫外線ランプを用いて5分間照射し、積算光量900mJ/cm2の紫外線を照射し、その後、150℃×10分加熱処理を実施し、厚み20μmの紫外線硬化型アクリル樹脂層を有する積層ポリエステルプレートを得た。
【0219】
(紫外線硬化型アクリル樹脂組成物の組成)
・2,2-ビス(4-(アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(新中村化学社製、製品名NKエステルA-BPE-4):紫外線硬化型アクリル樹脂組成物の総質量に対して50質量%
・テトラヒドロフルフリルアクリレート(大阪有機化学工業社製、製品名ビスコート#150):紫外線硬化型アクリル樹脂組成物の総質量に対して40質量%
・(チバスペシャリティーケミカル社製、製品名イルガキュア184):紫外線硬化型アクリル樹脂組成物の総質量に対して10質量%
【0220】
[評価4]積層前の耐溶剤性
ポリエステルプレートとして、タキロン社製のポリエチレンテレフタレートプレート(製品名:スーパーPETプレートPET-6010、膜厚:4mm)を用いた。
上記ポリエチレンテレフタレートプレート表面に、実施例及び比較例で得られた接着性樹脂組成物を含み、樹脂固形分を30質量%に調整した塗布液を、アプリケーターで塗布し、90℃で30秒乾燥させた。その後、150℃、1分間の熱処理工程を行い、その後、冷却し、膜厚1μmの易接着処理層を有する易接着処理ポリエステルプレートを得た。
得られた易接着処理ポリエステルプレートに直径1cmのシリコンリングにトルエンを入れ、その上に時計皿をのせ、23℃で2時間静置した。その後、キムワイプでトルエンを拭取り、塗膜状態を確認した。以下の評価基準により、積層前の耐溶剤性を評価した。
【0221】
(評価基準)
5:ほぼ変化がないもの
4:1cmのリング状に跡がうっすら見られるもの
3:1cmのリング状に跡がしっかり得られるもの
2:1cmのリング内部に一部劣化が得られたもの
1:1cmのリング内部が全体的に劣化しているもの
【0222】
[評価5]上層との密着性
得られた積層ポリエステルプレートの紫外線硬化型アクリル樹脂層面に、隙間間隔2mmのカッタ-ガイドを用いて、紫外線硬化型アクリル樹脂層のみ貫通する100個のマス目状の切り傷をつけた。その後、セロハン粘着テープ(ニチバン社製、405番:24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、消しゴムでこすって完全に密着させた。その後、180°の剥離角度で急激にセロハン粘着テープを積層ポリエステルプレートの紫外線硬化型アクリル樹脂層面から引き剥がす作業を行った後、剥離面を監察し、剥離したマス目を数えた。以下の評価基準により、上層との密着性を評価した。
(評価基準)
5:剥がれたマス目が0
4:マス目の一部エッジ部のみ剥がれた
3:剥がれたマス目が1以上10以下
2:剥がれたマス目が11以上20以下
1:剥がれたマス目が21以上
【0223】
[評価6]高温高湿度下安定性
得られた積層ポリエステルプレートを、高温高湿槽中で80℃、95%RHの環境下48時間放置した。その後、積層ポリエステルプレートを取り出し、常温下10時間放置した。その後、初期密着性評価時と同じ方法で密着性を評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0224】
(評価基準)
5:剥がれたマス目が0(エッジのみ剥がれた場合を含む)
4:剥がれたマス目が1以上15以下
3:剥がれたマス目が16以上30以下
2:剥がれたマス目が31以上50以下
1:剥がれたマス目が51以上
【0225】
[塗膜の評価]
[評価7]低温乾燥性
実施例及び比較例で得られた各塗料用組成物をポリプロピレン板に塗付し、120℃で30分間焼き付けた後の塗膜を切り出し、アセトンに23℃の環境下24時間放置した。浸漬後の塗膜を乾燥させ、アセトン浸漬前の重量から残った塗膜の百分率を計算し、残存率を評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0226】
(評価基準)
◎:残存率が90%以上
○:残存率が80%以上90%未満
×:残存率が80%未満
【0227】
[評価8]塗膜の耐溶剤性
実施例及び比較例で得られた各塗料用組成物をガラス板に塗付し、120℃で30分間焼き付けた後、23℃、50%湿度の環境下で24時間静置した。その塗膜に対し、アセトンに浸したコットンを20往復させるラビングテストを実施し、塗膜の外観を目視観察し、評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0228】
(評価基準)
◎:塗膜にほぼ変化が見られない
○:塗膜に少し跡が見られる
×:塗膜に溶出跡が見られる
【0229】
[評価9]塗料のポットライフ
実施例及び比較例で得られた各塗料用組成物を調整後、23℃で7時間保存した後の、初期粘度を100%とした時の25℃における粘度の上昇率を評価した。評価基準は以下のとおりである。
【0230】
(評価基準)
◎:粘度上昇率が100%以上150%未満
○:粘度上昇率が150%以上180%未満
△:粘度上昇率が180%以上200%未満
×:粘度上昇率が200%以上
【0231】
<ポリイソシアネートの合成>
[合成例1]
(ポリイソシアネートp-1の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:600部、及び3価アルコールとε-カプロラクトンとから誘導されるポリエステルポリオール(ダイセル(株)製、商品名「プラクセル303」):30部を仕込み、撹拌下反応器内温度を90℃に1時間保持しウレタン化反応を行った。その後反応器内温度を60℃に保持し、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、所定の収率になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去した。反応生成物の数平均分子量をGPCで測定し、イソシアネート含有率を滴定で測定することにより、ポリイソシアネートの生成を確認した。得られたポリイソシアネートp-1の25℃における粘度は9,500mPa・s、イソシアネート含有率は19.2%、数平均分子量は1,100、平均イソシアネート基数は5.3であった。
【0232】
[合成例2]
(ポリイソシアネートp-2の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:600部添加後反応器内温度を60℃に保持し、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、反応液のイソシアネート含有率が38.7質量%となった時点で、燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去した。反応生成物の数平均分子量をGPCで測定し、イソシアネート含有率を滴定で測定することにより、ポリイソシアネートの生成を確認した。得られたポリイソシアネートp-2の25℃における粘度は2,700mPa・s、イソシアネート含有率は21.7%、数平均分子量は660、平均イソシアネート基数は3.4であった。
【0233】
[合成例3]
(ポリイソシアネートp-3の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI 700部、IPDI 300部、3価アルコールであるポリカプロラクトンポリオール系ポリエステルポリオール「プラクセル303」(ダイセル化学の商品名 分子量300)30部を仕込み、攪拌下反応器内温度を90℃1時間保持しウレタン化反応を行った。その後反応器内温度を80℃に保持し、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、反応液のイソシアネート含有率が36.2質量%となった時点で、燐酸を添加し反応を停止した。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去した。反応生成物の数平均分子量をGPCで測定し、イソシアネート含有率を滴定で測定することにより、ポリイソシアネートの生成を確認した。得られたポリイソシアネートp-3の25℃における粘度は180,000mPa・s、イソシアネート含有率は18.7%、数平均分子量は1200、平均イソシアネート基数は5.3であった。
【0234】
[合成例4]
(ポリイソシアネートp-4の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI:1000部、及び3価アルコールとε-カプロラクトンとから誘導されるポリエステルポリオール(ダイセル(株)製、商品名「プラクセル308」):340部を仕込み、撹拌下反応器内温度を95℃に1.5時間保持しウレタン化反応を行った。反応液をろ過した後、薄膜蒸発缶を用いて未反応のHDIを除去した。反応生成物の数平均分子量をGPCで測定し、イソシアネート含有率を滴定で測定することにより、ポリイソシアネートの生成を確認した。得られたポリイソシアネートp-4の25℃における粘度は4,000mPa・s、イソシアネート含有率は9.1%、数平均分子量は1,500、平均イソシアネート基数は3.2であった。
【0235】
【0236】
<(1-1)ポリイソシアネート組成物の製造>
[実施例1-1-5]
(ポリイソシアネート組成物PI-a1-1の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、合成例1にて得られたポリイソシアネートp-1:500gと酢酸ブチル:200gを仕込んで、攪拌下60℃に加温し、ブロック剤として、3,5-ジメチルピラゾール(以下、「3,5-DMP」と略記する場合がある)を、ポリイソシアネートp-1中のイソシアネート基のモル数に対して0.75倍モル量、徐々に加えた。すべて加えた後で、さらに1時間攪拌することで、ポリイソシアネート組成物PI-a1-1を得た。
【0237】
[比較例1-3-1]
(ポリイソシアネート組成物PI-b1-1の製造)
合成例1で合成したポリイソシアネートp-1を固形分が組成物の総質量に対して75質量%となるように、酢酸ブチルにて希釈して、ポリイソシアネート組成物PI-b1-1を得た。
【0238】
[比較例1-3-2]
(ポリイソシアネート組成物PI-b1-2の製造)
3,5-ジメチルピラゾールの添加量をポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数に対して1.05倍モル量とした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PI-b1-2を得た。
【0239】
[実施例1-1-3]
(ポリイソシアネート組成物PI-a1-3の製造)
比較例1-3-1にて得られたポリイソシアネート組成物PI-b1-1と、比較例1-3-2で得られたポリイソシアネート組成物PI-b1-2とを、イソシアネート基モル比1:1(ブロックイソシアネート基を含む)で混合して、ポリイソシアネート組成物PI-a1-3を得た。
【0240】
[実施例1-1-1、1-1-2、1-1-4、1-1-6~1-1-11]
(ポリイソシアネート組成物PI-a1-1、PI-a1-2、PI-a1-4、PI-a1-6~PI-a1-11)
使用するポリイソシアネート及びブロック剤の種類、ブロック化率並びに部分ブロックポリイソシアネートの含有量(モル%)が表1-2に記載のとおりとなるようにした以外は、実施例1-1-5と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PI-a1-1、PI-a1-2、PI-a1-4、PI-a1-6~PI-a1-11を得た。なお、表1-2中、「3,5-DMP」とは、3,5-ジメチルピラゾールであり、「MEK-Ox」とは、メチルエチルケトオキシムであり、「ε-CL」とは、ε-カプロラクタムであり、「DEM」とは、マロン酸ジエチルである(以下、同様)。
【0241】
【0242】
<(1-2)フィルム形成用組成物の製造>
(活性水素含有化合物AH-1-1~AH-1-5の作製)
アクリルポリオール樹脂(AP)の酢酸エチル溶液、ポリカプロラクトンジオール樹脂(PCL-1、PCL-2)、及びポリカーボネートジオール樹脂(PCD)を用意した。これらの樹脂の水酸基濃度(樹脂基準)、固形分、及び使用した溶剤を表1-3に示した。
表1-4記載の割合で上記樹脂を混合し、活性水素含有化合物AH-1-1~AH-1-5を得た。
【表1-3】
【表1-4】
【0243】
[実施例1-2-1]
(フィルム形成用組成物F-a1の製造)
実施例1-1-3で得られたポリイソシアネート組成物PI-a1-3に対し、活性水素含有化合物AH-1-1を、NCO/OH=1.0となるように配合し、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセタート(PMA)で固形分25質量%に希釈した。その際、ジブチル錫ジラウレートを対樹脂濃度0.1%となるように添加して、フィルム形成用組成物F-a1を得た。
【0244】
[実施例1-2-2~1-2-15]
(フィルム形成用組成物F-a2~F-a15の製造)
活性水素含有化合物とポリイソシアネート組成物を表1-5に記載のとおりにした以外は、実施例1-2-1と同様の方法を用いて、フィルム形成用組成物F-a2~F-a15を得た。
【0245】
[比較例1-4-1]
(フィルム形成用組成物F-b1の製造)
ポリイソシアネート組成物として、比較例1-3-1で得られたポリイソシアネート組成物PI-b1-1を用いた以外は、実施例1-2-2と同様の方法を用いて、フィルム形成用組成物を得た。
【0246】
[比較例1-4-2]
(フィルム形成用組成物F-b2の製造)
ポリイソシアネート組成物として、比較例1-3-2で得られたポリイソシアネート組成物PI-b1-2を用いた以外は、実施例1-2-2と同様の方法を用いて、フィルム形成用組成物F-b2を得た。
【0247】
<(1-3)一次硬化フィルムF1および二次硬化フィルムF2の製造>
上記一次硬化フィルムF1の作製方法及び一次硬化フィルムF1を用いたフィルム積層体の作製方法で、実施例及び比較例で製造されたフィルム形成用組成物を用いて、一次硬化フィルムF1及び二次硬化フィルムF2を作製し、フィルムの評価を行なった。評価結果を以下の表1-5に示す。ただし、比較例1-4-2で製造されたフィルム形成用組成物F-b2を用いたフィルムは脆く、破断伸度及び破断応力の測定用の試験片を切り出すことができなかった。そのため、表1-5において、「測定不可」とした。
【0248】
【0249】
表1-5から、実施例1-2-1~1-2-15のフィルム形成用組成物F-a1~F-a15を用いたフィルムは、延伸性を良好に保ちながら、耐ブロッキング性に優れ、また、ガラス板上に当該フィルムが積層されたフィルム積層体は、耐溶剤性に優れていた。
ブロック化率が比較的高いポリイソシアネート組成物を含むフィルム形成用組成物F-a2、F-a5~F-a15を用いたフィルムは、破断伸度が特に良好となる傾向がみられた。
また、ブロック化率50~80モル%であるポリイソシアネート組成物を含み、一次硬化フィルムの官能基Xのモル数γが0.1以上0.4以下である、フィルム形成用組成物F-a2、F-a5~F-a7、F-a9~F-a15を用いたフィルムは、破断伸度、破断応力どちらも特に良好となる傾向が見られた。
【0250】
一方で、比較例1-4-1及び1-4-2のフィルム形成用組成物F-b1~F-b2を用いたフィルム及びフィルム積層体では、延伸性を良好に保ちながら、耐ブロッキング性及び耐溶剤性に優れるものは得られなかった。
【0251】
<(1-4)フィルム形成用組成物および一次硬化フィルムF1´の製造>
[実施例1´-2-1~1´-2-2]
(フィルム形成用組成物F´-a1の製造)
ポリイソシアネート組成物PI-b1-1に対し、水酸基を含むポリエステルアクリレートPEA-1(水酸基濃度1.21質量%、アクリロイル基濃度11.0質量%)をNCO/OH=1.0となるように配合した。続いて、PEA-1に対して5質量%となるように、光開始剤Omnirad651(IGMレジン製)を添加した。さらに、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセタート(PMA)で固形分25質量%に希釈した。その際、ジブチル錫ジラウレートを対樹脂濃度0.1%となるように添加して、フィルム形成用組成物F´-a1を得た。
(フィルム形成用組成物F´-a2の製造)
水酸基を含むポリエステルアクリレートをPEA-2(水酸基濃度2.12質量%、アクリロイル基濃度20.6質量%)に変更した以外は、F´-a1と同様の方法で、フィルム形成用組成物F´-a2を得た。
上記一次硬化フィルムF1´の作製方法及び一次硬化フィルムF1´を用いたフィルム積層体の作製方法に従い、実施例及び比較例で製造されたフィルム形成用組成物を用いて、一次硬化フィルムF1´及び二次硬化フィルムF2´を作製し、フィルムの評価を行なった。評価結果を表1-6に示す。
【表1-6】
表1-6から、実施例1-3-1~1-3-2のフィルム形成用組成物F-b1~F-b4を用いたフィルムは、延伸性を良好に保ちながら、耐ブロッキング性に優れ、また、ガラス板上に当該フィルムが積層されたフィルム積層体は、耐溶剤性に優れていた。
【0252】
<(2-1)ポリイソシアネート組成物の製造>
[実施例2-1-1]
(ポリイソシアネート組成物PI-a2-1の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、合成例1にて得られたポリイソシアネートp-1:500gと酢酸ブチル:200gを仕込んで、攪拌下60℃に加温し、ブロック剤として、3,5-ジメチルピラゾール(以下、「3,5-DMP」と略記する場合がある)を、ポリイソシアネートp-1中のイソシアネート基のモル数に対して0.75倍モル量、徐々に加えた。すべて加えた後で、さらに1時間攪拌することで、ポリイソシアネート組成物PI-a2-1を得た。
【0253】
[比較例2-3-1]
(ポリイソシアネート組成物PI-b2-1の製造)
合成例1で合成したポリイソシアネートp-1を固形分が組成物の総質量に対して75質量%となるように、酢酸ブチルにて希釈して、ポリイソシアネート組成物PI-b2-1を得た。
【0254】
[比較例2-3-2]
(ポリイソシアネート組成物PI-b2-2の製造)
3,5-ジメチルピラゾールの添加量をポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数に対して1.05倍モル量とした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PI-b2-2を得た。
[比較例2-3-3]
(ポリイソシアネート組成物PI-b2-3の製造)
3,5-ジメチルピラゾールの代わりに、MEK-Oxおよび3,5-DMPの混合物(MEK-Ox/3,5-DMP=1/1(モル比))を使用し、添加量をポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数に対して1.05倍モル量とした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PI-b2-3を得た。
【0255】
[実施例2-1-2]
(ポリイソシアネート組成物PI-a2-2の製造)
比較例2-3-1にて得られたポリイソシアネート組成物PI-b2-1と、比較例2-3-2で得られたポリイソシアネート組成物PI-b2-2とを、イソシアネート基モル比1:1(ブロックイソシアネート基を含む)で混合して、ポリイソシアネート組成物PI-a2-2を得た。
【0256】
[実施例2-1-3~2-1-11]
(ポリイソシアネート組成物PI-a2-3~PI-a2-11の製造)
使用するポリイソシアネート及びブロック剤の種類、ブロック化率並びに部分ブロックポリイソシアネートの含有量(モル%)が表2-1に記載のとおりとなるようにした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PI-a2-3~PI-a2-11を得た。なお、表2-1中、「MEK-Ox」とは、メチルエチルケトオキシムであり、「ε-CL」とは、ε-カプロラクタムである(以下、同様)。
【表2-1】
<(2-2)接着性樹脂組成物の製造>
[実施例2-2-1]
(接着性樹脂組成物S-a1の製造)
実施例2-1-1で得られたポリイソシアネート組成物PI-a2-1に対し、アクリルポリオール樹脂の酢酸エチル溶液(水酸基濃度4.5質量%(樹脂基準)、樹脂固形分41質量%、以下、当該樹脂溶液を「AH-3」と記載する)をNCO/OH=1.0となるように配合し、プロピレングリコール-1-モノメチルエーテル-2-アセタート(PMA)で固形分30質量%に希釈し、接着性樹脂組成物S-a1を得た。
【0257】
[実施例2-2-2~2-2-11及び比較例2-4-1~2-4-3]
(接着性樹脂組成物S-a2~S-a11及びS-b1~S-b3)
表2-2に記載のポリイソシアネート組成物の種類とした以外は、実施例2-2-1と同様の方法を用いて、接着性樹脂組成物S-a2~S-a11及びS-b1~S-b3を得た。
【0258】
上記方法を用いて、実施例及び比較例で製造された接着性樹脂組成物の評価を行なった。結果を以下の表2-2に示す。
【表2-2】
【0259】
表2-2から、接着性樹脂組成物S-a1~S-a11(実施例2-2-1~2-2-11)を用いた接着性樹脂硬化物は、積層前の耐溶剤性、上層との密着性及び高温高湿度下での安定性がいずれも優れていた。
また、接着性樹脂組成物S-a1及びS-a4(実施例2-2-1及び2-2-4)、S-a3及びS-a6(実施例2-2-3及び2-2-6)において、ブロック化率が比較的高いポリイソシアネート組成物を含む接着性樹脂組成物S-a4及びS-a6(実施例2-2-4及び2-2-6)では、得られた接着性樹脂硬化物の上層との密着性及び高温高湿度下での安定性がより優れる傾向がみられ、一方、ブロック化率が比較的低いポリイソシアネート組成物を含む接着性樹脂組成物S-a1及びS-a3(実施例2-2-1及び2-2-3)では、接着性樹脂硬化物としたときの積層前の耐溶剤性がより優れる傾向がみられた。
また、接着性樹脂組成物S-a2及びS-a5(実施例2-2-2及び2-2-5)において、部分ブロックポリイソシアネートの含有量が比較的高いポリイソシアネート組成物を含む接着性樹脂組成物S-a5(実施例2-2-5)では、接着性樹脂硬化物としたときの積層前の耐溶剤性、上層との密着性及び高温高湿度下での安定性により優れる傾向がみられた。
また、接着性樹脂組成物S-a5、S-a8~S-a10(実施例2-2-5、2-2-8~2-2-10)において、イソシアネート基合計平均数が比較的大きいポリイソシアネート組成物を含む接着性樹脂組成物S-a5及びS-a9(実施例2-2-5及び2-2-9)では、高温高湿度下での安定性がより優れる傾向がみられた。
また、接着性樹脂組成物S-a5、S-a7及びS-a11(実施例2-2-5、2―2―7及び2-2-11)において、ブロック剤として3,5-DMPを用いたポリイソシアネート組成物を含む接着性樹脂組成物S-a5(実施例2-2-5)では、得られた接着性樹脂硬化物の上層との密着性が他の2例よりもより優れる傾向がみられた。
【0260】
一方で、接着性樹脂組成物S-b1~S-b3(比較例2-4-1~2-4-3)を用いた接着性樹脂硬化物は、積層前の耐溶剤性、上層との密着性及び高温高湿度下での安定性の全てが優れているものは得られなかった。
【0261】
<(3-1)ポリイソシアネート組成物の製造>
[実施例3-1-1]
(ポリイソシアネート組成物PI-a3-1の製造)
撹拌機、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、合成例1にて得られたポリイソシアネートp-1:500gと酢酸ブチル:200gを仕込んで、攪拌下60℃に加温し、ブロック剤として、3,5-ジメチルピラゾール(以下、「3,5-DMP」と略記する場合がある)を、ポリイソシアネートp-1中のイソシアネート基のモル数に対して0.75倍モル量、徐々に加えた。すべて加えた後で、さらに1時間攪拌することで、ポリイソシアネート組成物PI-a3-1を得た。
【0262】
[比較例3-3-1]
(ポリイソシアネート組成物PI-b3-1の製造)
合成例2で合成したポリイソシアネートp-2を固形分が組成物の総質量に対して75質量%となるように、酢酸ブチルにて希釈して、ポリイソシアネート組成物PI-b3-1を得た。
【0263】
[比較例3-3-2]
(ポリイソシアネート組成物PI-b3-2の製造)
3,5-ジメチルピラゾールの添加量をポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数に対して1.05倍モル量とした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PI-b3-2を得た。
【0264】
[比較例3-3-3]
(ポリイソシアネート組成物PI-b3-3の製造)
3,5-ジメチルピラゾールの代わりに、MEK-Oxおよび3,5-DMPの混合物(MEK-Ox/3,5-DMP=1/1(モル比))を使用し、添加量をポリイソシアネートのイソシアネート基のモル数に対して1.05倍モル量とした以外は、実施例3-1-1と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PI-b3-3を得た。
【0265】
[実施例3-1-12]
(ポリイソシアネート組成物PI-a3-12の製造)
比較例3-3-1にて得られたポリイソシアネート組成物PI-b3-1と、比較例3-3-2で得られたポリイソシアネート組成物PI-b3-2とを、イソシアネート基モル比2:1(ブロックイソシアネート基を含む)で混合して、ポリイソシアネート組成物PI-a3-12を得た。
[実施例3-1-2~3-1-11]
(ポリイソシアネート組成物PI-a3-2~PI-a3-11の製造)
使用するポリイソシアネート及びブロック剤の種類、ブロック化率並びに部分ブロックポリイソシアネートの含有量(モル%)が表3-1に記載のとおりとなるようにした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、ポリイソシアネート組成物PI-a3-2~PI-a3-11を得た。
【表3-1】
<(3-2)塗料用組成物の製造>
[実施例3-2-1]
(塗料用組成物C-a1の製造)
実施例3-1-1で得られたポリイソシアネート組成物PI-a3-1に対し、アクリルポリオール樹脂のソルベントナフサ溶液(水酸基濃度4.5質量%(樹脂基準)、樹脂固形分65質量%、以下、当該樹脂溶液を「AH-4」と記載する)をNCO/OH=1.0となるように配合し、酢酸ブチルで固形分50質量%に希釈し、塗料用組成物C-a1を得た。
【0266】
[実施例3-2-2~3-2-12及び比較例3-4-1~3-4-3]
(塗料用組成物C-a2~C-a12及びC-b1~C-b3)
表3-2に記載のポリイソシアネート組成物の種類とした以外は、実施例3-2-1と同様の方法を用いて、塗料用組成物C-a2~C-a12及びC-b1~C-b3を得た。
【0267】
上記方法を用いて、実施例及び比較例で製造された塗料用組成物の評価を行なった。結果を以下の表3-2に示す。
【0268】
【0269】
表3-2から、塗料用組成物C-a1~C-a12(実施例3-2-1~3-2-12)を用いた塗料用組成物は、塗膜の低温乾燥性、塗膜の耐溶剤性、塗料のポットライフがいずれも優れていた。
また、塗料用組成物C-a1及びC-a4、C-a5、C-a6(実施例3-2-1及び3-2-4、3-2-5、3-2-6)において、ブロック化率が比較的高いポリイソシアネート組成物を含む塗料用組成物では、塗料のポットライフが高い傾向がみられ、一方、ブロック化率が比較的低いポリイソシアネート組成物を含む塗料用組成物C-a3及びC-a7、C-a8、C-a9、C-a10、C-a11、C-a12(実施例3-2-3及び3-2-7、3-2-8、3-2-9、3-2-10、3-2-11、3-2-12)では、塗料用組成物の低温乾燥性がより優れる傾向がみられた。
また、塗料用組成物C-a2及びC-a3、C-a6、C-a7、C-a10、C-a11(実施例3-2-2及び3-2-3、3-2-6、3-2-7、3-2-10、3-2-11)において、部分ブロックポリイソシアネートの含有量が中程度から比較的低いポリイソシアネート組成物を含む塗料用組成物では、得られた塗料硬化物の耐溶剤性により優れる傾向がみられた。
また、塗料用組成物C-a7及びC-a12(実施例3-2-7及び3-2-12)において、ブロック化率が同じでも部分ブロックポリイソシアネートの比率が高いポリイソシアネート組成物を含む塗料用組成物C-a7(実施例3-2-7)では、塗料のポットライフが高い傾向がみられた。
【0270】
一方で、塗料用組成物C-b1~C-b3(比較例3-4-1~3-4-3)を用いた塗料硬化物は、塗膜の低温乾燥性、塗膜の耐溶剤性、塗料のポットライフの全てが優れているものは得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0271】
本実施形態のポリイソシアネート組成物によれば、フィルム形成用組成物として使用したときに、フィルムの延伸性を良好に保ちながら、耐ブロッキング性及び耐溶剤性に優れ、且つ、接着性樹脂組成物として使用したときに、積層前の耐溶剤性、上層として使用される各種機能層との密着性及び高温高湿度下での安定性に優れ、且つ、塗料用組成物として使用したときに、塗膜の耐溶剤性及び塗料の可使時間を両立しうるポリイソシアネート組成物が得られる。本実施形態のフィルム形成用組成物によれば、延伸性を良好に保ちながら、耐ブロッキング性及び耐溶剤性に優れるフィルムを提供することができる。本実施形態のフィルム及びフィルム積層体は、前記フィルム形成用組成物を用いて作製することができ、様々な材質の物品に適用可能な加飾フィルムとして利用することができる。本実施形態の接着性樹脂組成物及び接着性樹脂硬化物は、前記ポリイソシアネート組成物を用いて作製することができ、積層前の耐溶剤性、上層として使用される各種機能層との密着性及び高温高湿度下での安定性に優れる接着性樹脂硬化物を提供することができる。本実施形態の塗料用組成物及び塗料硬化物によれば、塗膜の耐溶剤性に優れ、塗料のポットライフが良好な塗料硬化物を提供することができる。