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特許7144627チオキサントン化合物、光重合開始剤、硬化性樹脂組成物、表示素子用組成物、液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】チオキサントン化合物、光重合開始剤、硬化性樹脂組成物、表示素子用組成物、液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/50 20060101AFI20220921BHJP
   C08F 4/00 20060101ALI20220921BHJP
   C08F 20/00 20060101ALI20220921BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
C08F2/50
C08F4/00
C08F20/00 510
G02F1/1339 505
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021559819
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2021035089
(87)【国際公開番号】W WO2022071116
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2022-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2020164804
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】梁 信烈
(72)【発明者】
【氏名】山脇 大輝
(72)【発明者】
【氏名】大浦 剛
(72)【発明者】
【氏名】林 秀幸
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-097746(JP,A)
【文献】特開2007-284516(JP,A)
【文献】特表2016-504274(JP,A)
【文献】特表2010-520317(JP,A)
【文献】国際公開第2020/084988(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/013128(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/002362(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0270278(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2、4、C07D335
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表されるチオキサントン化合物からなることを特徴とする光重合開始剤。
【化1】
式(1)中、Xは、下記式(2-1)、(2-2)、又は、(2-3)で表される構造を表し、Rは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又は、ニトロ基を表し、Rは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又は、ニトロ基を表す。
【化2】
式(2-1)、(2-2)、及び、(2-3)中、Rは、下記式(3-1)、(3-2)、(3-3)、(3-4)、(3-5)、(3-6)、(3-7)、又は、(3-8)で表される構造を表し、*は、結合位置を表す。
【化3】
式(3-1)~(3-8)中、*は、結合位置を表す。式(3-1)~(3-8)中、式(3-2)、(3-3)のOH基に含まれる水素原子以外の水素原子は、置換されていてもよい。
【請求項2】
前記Rが前記式(3-1)で表される構造である請求項記載の光重合開始剤。
【請求項3】
前記式(1)中の少なくとも1つのRがメチル基又はエチル基であり、かつ、前記式(1)中の少なくとも1つのRがメチル基又はエチル基である請求項1又は2記載の光重合開始剤。
【請求項4】
硬化性樹脂と請求項1、2又は3記載の光重合開始剤とを含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項記載の硬化性樹脂組成物を用いてなる表示素子用組成物。
【請求項6】
請求項記載の硬化性樹脂組成物を用いてなる液晶表示素子用シール剤。
【請求項7】
請求項記載の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料。
【請求項8】
請求項記載の液晶表示素子用シール剤又は請求項記載の上下導通材料を用いてなる液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオキサントン化合物に関する。また、本発明は、該チオキサントン化合物からなる光重合開始剤、該光重合開始剤を含有する硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を用いてなる表示素子用組成物、並びに、該硬化性樹脂組成物を用いてなる液晶表示素子用シール剤に関する。更に、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示セル等の液晶表示素子の製造方法としては、タクトタイム短縮、使用液晶量の最適化といった観点から、特許文献1、特許文献2に開示されているような光熱併用硬化型の硬化性樹脂組成物をシール剤として用いた滴下工法と呼ばれる液晶滴下方式が用いられている。
滴下工法では、まず、2枚の電極付き透明基板の一方に、ディスペンスにより枠状のシールパターンを形成する。次いで、シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴を透明基板の枠内全面に滴下し、すぐに他方の透明基板を貼り合わせ、シール部に紫外線等の光を照射して仮硬化を行う。その後、液晶アニール時に加熱して本硬化を行い、液晶表示素子を作製する。基板の貼り合わせを減圧下で行うようにすれば、極めて高い効率で液晶表示素子を製造することができ、現在この滴下工法が液晶表示素子の製造方法の主流となっている。
【0003】
ところで、携帯電話、携帯ゲーム機等、各種液晶パネル付きモバイル機器が普及している現代において、装置の小型化は最も求められている課題である。装置の小型化の手法としては、液晶表示部の狭額縁化が挙げられ、例えば、シール部の位置をブラックマトリックス下に配置することが行われている(以下、狭額縁設計ともいう)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-133794号公報
【文献】国際公開第02/092718号
【文献】特開2017-125033号公報
【文献】国際公開第2017/130594号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
狭額縁設計ではシール剤がブラックマトリックスの直下に配置されるため、滴下工法を行うと、シール剤を光硬化させる際に照射した光が遮られることとなる。今後、狭額縁化が進んだり液晶材料が変更されたりする場合、従来は問題のなかったシール剤であっても、未硬化のシール剤成分が液晶中に溶出することによる液晶汚染が発生するおそれがある。そのため、より低液晶汚染性に優れるシール剤が求められていた。
【0006】
また、通常、シール剤を光硬化させる方法として紫外線の照射が行われているが、特に液晶滴下工法おいては、液晶を滴下した後にシール剤を硬化させるため、紫外線を照射することによって液晶が劣化しやすくなるという問題があった。そこで、紫外線による液晶の劣化を防止するため、カットフィルター等を介した可視光領域の長波長の光により光硬化させることが行われている。長波長の光によりシール剤を光硬化させる方法としては、長波長の光に対する感度の高い増感剤を光重合開始剤と組み合わせて用いる方法が考えられる。例えば、特許文献3及び特許文献4には、光重合開始剤と増感剤とを組み合わせて配合した硬化性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、これらの硬化性樹脂組成物を液晶表示素子用シール剤として用いた場合、長波長の光により充分に光硬化させるために光重合開始剤と増感剤との合計量が多量になることにより液晶汚染が発生したり、保存安定性が低下したりするおそれがあった。
【0007】
本発明は、長波長の光に対する反応性に優れるチオキサントン化合物を提供することを目的とする。また、本発明は、該チオキサントン化合物からなる光重合開始剤、該光重合開始剤を含有し、保存安定性及び遮光部硬化性に優れる硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を用いてなる表示素子用組成物、並びに、該硬化性樹脂組成物を用いてなり、低液晶汚染性に優れる液晶表示素子用シール剤を提供することを目的とする。更に、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記式(1)で表されるチオキサントン化合物である。
【0009】
【化1】
【0010】
式(1)中、Xは、下記式(2-1)、(2-2)、又は、(2-3)で表される構造を表し、Rは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又は、ニトロ基を表し、Rは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又は、ニトロ基を表す。
【0011】
【化2】
【0012】
式(2-1)、(2-2)、及び、(2-3)中、Rは、ヘテロ原子を含み、かつ、芳香環を含む構造を表し、*は、結合位置を表す。
以下に本発明を詳述する。
【0013】
本発明者らは、硬化性樹脂組成物に長波長の光に対する反応性に優れる光重合開始剤を配合することにより、遮光部硬化性を向上させることを検討した。しかしながら、このような光重合開始剤を用いた場合、得られる硬化性樹脂組成物が保存安定性に劣るものとなったり、得られる硬化性樹脂組成物を液晶表示素子用シール剤に用いた場合に液晶汚染を生じさせたりすることがあった。そこで本発明者らは、特定の構造を有するチオキサントン化合物を光重合開始剤として用いることを検討した。その結果、保存安定性、遮光部硬化性、及び、液晶表示素子用シール剤に用いた場合の低液晶汚染性の全てに優れる硬化性樹脂組成物を得ることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
なお、本明細書において上記「長波長」とは、波長400nm以上の光を意味する。
【0014】
本発明のチオキサントン化合物は、上記式(1)で表される。
上記式(1)中、Xは、上記式(2-1)、(2-2)、又は、(2-3)で表される構造を表し、上記式(2-1)、(2-2)、及び、(2-3)中、Rは、ヘテロ原子を含み、かつ、芳香環を含む構造を表す。上記Rがヘテロ原子を含み、かつ、芳香環を含む構造であることによってチオキサントン骨格の共役が拡張されることで、本発明のチオキサントン化合物は、長波長の光に対する反応性に優れるものとなる。その結果、本発明のチオキサントン化合物を光重合開始剤として硬化性樹脂組成物に用いた場合に該硬化性樹脂組成物が遮光部硬化性に優れるものとなる。特に、長波長の光に対する反応性により優れるものとなることから、上記Rは、下記式(3-1)、(3-2)、(3-3)、(3-4)、(3-5)、(3-6)、(3-7)、又は、(3-8)で表される構造であることが好ましく、電子密度が高くなって液晶表示素子用シール剤に用いた場合に低液晶汚染性により優れるものとなることから、下記式(3-1)、(3-2)、(3-3)、(3-4)、又は、(3-5)で表される構造であることがより好ましく、下記式(3-1)で表される構造であることが更に好ましい。
【0015】
【化3】
【0016】
式(3-1)~(3-8)中、*は、結合位置を表す。式(3-1)~(3-8)中、式(3-2)、(3-3)のOH基に含まれる水素原子以外の水素原子は、置換されていてもよい。
【0017】
上記式(1)中、Rは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又は、ニトロ基を表し、Rは、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、又は、ニトロ基を表す。なかでも、後述する硬化性樹脂に対する溶解性の観点から、式(1)中の少なくとも1つのRがメチル基又はエチル基であり、かつ、上記式(1)中の少なくとも1つのRがメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0018】
本発明のチオキサントン化合物の分子量の好ましい下限は500、好ましい上限は1000である。上記分子量がこの範囲であることにより、本発明のチオキサントン化合物を光重合開始剤として液晶表示素子用シール剤に用いた場合に低液晶汚染性により優れるものとなる。本発明のチオキサントン化合物の分子量のより好ましい下限は550、より好ましい上限は800である。
なお、本明細書において上記「分子量」は、分子構造が特定される化合物については、構造式から求められる分子量であるが、重合度の分布が広い化合物及び変性部位が不特定な化合物については、数平均分子量を用いて表す場合がある。また、本明細書において上記「数平均分子量」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で溶媒としてテトラヒドロフランを用いて測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による数平均分子量を測定する際に用いるカラムとしては、例えば、Shodex LF-804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0019】
本発明のチオキサントン化合物は光重合開始剤として好適に用いられる。本発明のチオキサントン化合物からなる光重合開始剤もまた、本発明の1つである。
硬化性樹脂と本発明の光重合開始剤とを含有する硬化性樹脂組成物もまた、本発明の1つである。
【0020】
本発明の光重合開始剤は、長波長の光に対する反応性に優れるため、本発明の硬化性樹脂組成物を液晶表示素子用シール剤に用いる場合、遮光部硬化性を維持できる範囲で本発明の光重合開始剤の含有量を少なくすることで、該液晶表示素子用シール剤を低液晶汚染性により優れるものとすることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物における本発明の光重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が3重量部である。本発明の光重合開始剤の含有量が0.05重量部以上であることにより、得られる硬化性樹脂組成物が遮光部硬化性により優れるものとなる。本発明の光重合開始剤の含有量が3重量部以下であることにより、得られる硬化性樹脂組成物が保存安定性により優れるものとなり、かつ、該硬化性樹脂組成物を液晶表示素子用シール剤に用いた場合に低液晶汚染性により優れるものとなる。本発明の光重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は2重量部である。
【0021】
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、本発明の光重合開始剤以外のその他の光重合開始剤を含んでもよい。
上記その他の光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、オキシムエステル化合物、ベンゾインエーテル化合物、本発明の光重合開始剤以外のその他のチオキサントン化合物等が挙げられる。
上記その他の光重合開始剤としては、具体的には例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン、1,2-(ジメチルアミノ)-2-((4-メチルフェニル)メチル)-1-(4-(4-モルホリニル)フェニル)-1-ブタノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、1-(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-(フェニルチオ)フェニル)-1,2-オクタンジオン2-(O-ベンゾイルオキシム)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
上記その他の光重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0022】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、(メタ)アクリル化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリル化合物とエポキシ化合物とを含むことがより好ましい。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味し、上記「(メタ)アクリル化合物」は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を意味し、上記「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
【0023】
上記(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。また、上記(メタ)アクリル化合物は、反応性の観点から1分子中に(メタ)アクリロイル基を2つ以上有するものが好ましい。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、上記「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを意味する。
【0024】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち単官能のものとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0026】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られるもの等が挙げられる。
【0028】
上記エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノール型エポキシ化合物、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ化合物、レゾルシノール型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、スルフィド型エポキシ化合物、ジフェニルエーテル型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、オルトクレゾールノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、アルキルポリオール型エポキシ化合物、ゴム変性型エポキシ化合物、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0029】
上記ビスフェノールA型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER828EL、jER1004(いずれも三菱ケミカル社製)、EPICLON EXA-850CRP(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールF型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER806、jER4004(いずれも三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールS型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON EXA1514(DIC社製)等が挙げられる。
上記2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、RE-810NM(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記水添ビスフェノール型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON EXA7015(DIC社製)等が挙げられる。
上記プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EP-4000S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EX-201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビフェニル型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER YX-4000H(三菱ケミカル社製)等が挙げられる。
上記スルフィド型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV-50TE(日鉄ケミカル&マテリアル社製)等が挙げられる。
上記ジフェニルエーテル型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV-80DE(日鉄ケミカル&マテリアル社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EP-4088S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記ナフタレン型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON HP4032、EPICLON EXA-4700(いずれもDIC社製)等が挙げられる。
上記フェノールノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON N-770(DIC社製)等が挙げられる。
上記オルトクレゾールノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON N-670-EXP-S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、EPICLON HP7200(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビフェニルノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、NC-3000P(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、ESN-165S(日鉄ケミカル&マテリアル社製)等が挙げられる。
上記グリシジルアミン型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、jER630(三菱ケミカル社製)、EPICLON 430(DIC社製)、TETRAD-X(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
上記アルキルポリオール型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、ZX-1542(日鉄ケミカル&マテリアル社製)、EPICLON 726(DIC社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)、デナコールEX-611(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ゴム変性型エポキシ化合物のうち市販されているものとしては、例えば、YR-450、YR-207(いずれも日鉄ケミカル&マテリアル社製)、エポリードPB(ダイセル社製)等が挙げられる。
上記グリシジルエステル化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デナコールEX-147(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記エポキシ化合物のうちその他に市販されているものとしては、例えば、YDC-1312、YSLV-80XY、YSLV-90CR(いずれも日鉄ケミカル&マテリアル社製)、XAC4151(旭化成社製)、jER1031、jER1032(いずれも三菱ケミカル社製)、EXA-7120(DIC社製)、TEPIC(日産化学社製)等が挙げられる。
【0030】
上記エポキシ(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、ダイセル・オルネクス社製のエポキシ(メタ)アクリレート、新中村化学工業社製のエポキシ(メタ)アクリレート、共栄社化学社製のエポキシ(メタ)アクリレート、ナガセケムテックス社製のエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ダイセル・オルネクス社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、EBECRYL860、EBECRYL3200、EBECRYL3201、EBECRYL3412、EBECRYL3600、EBECRYL3700、EBECRYL3701、EBECRYL3702、EBECRYL3703、EBECRYL3708、EBECRYL3800、EBECRYL6040、EBECRYL RDX63182等が挙げられる。
上記新中村化学工業社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、EA-1010、EA-1020、EA-5323、EA-5520、EA-CHD、EMA-1020等が挙げられる。
上記共栄社化学社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシエステルM-600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA、エポキシエステル400EA等が挙げられる。
上記ナガセケムテックス社製のエポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、デナコールアクリレートDA-141、デナコールアクリレートDA-314、デナコールアクリレートDA-911等が挙げられる。
【0031】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、イソシアネート化合物に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0032】
上記イソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0033】
また、上記イソシアネート化合物としては、ポリオールと過剰のイソシアネート化合物との反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も使用することができる。
上記ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
【0034】
上記水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレート、二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート、三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記二価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
上記三価のアルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノールA型エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0035】
上記ウレタン(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、東亞合成社製のウレタン(メタ)アクリレート、ダイセル・オルネクス社製のウレタン(メタ)アクリレート、根上工業社製のウレタン(メタ)アクリレート、新中村化学工業社製のウレタン(メタ)アクリレート、共栄社化学社製のウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記東亞合成社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、M-1100、M-1200、M-1210、M-1600等が挙げられる。
上記ダイセル・オルネクス社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、EBECRYL210、EBECRYL220、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL1290、EBECRYL2220、EBECRYL4827、EBECRYL4842、EBECRYL4858、EBECRYL5129、EBECRYL6700、EBECRYL8402、EBECRYL8803、EBECRYL8804、EBECRYL8807、EBECRYL9260等が挙げられる。
上記根上工業社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、アートレジンUN-330、アートレジンSH-500B、アートレジンUN-1200TPK、アートレジンUN-1255、アートレジンUN-3320HB、アートレジンUN-7100、アートレジンUN-9000A、アートレジンUN-9000H等が挙げられる。
上記新中村化学工業社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、U-2HA、U-2PHA、U-3HA、U-4HA、U-6H、U-6HA、U-6LPA、U-10H、U-15HA、U-108、U-108A、U-122A、U-122P、U-324A、U-340A、U-340P、U-1084A、U-2061BA、UA-340P、UA-4000、UA-4100、UA-4200、UA-4400、UA-5201P、UA-7100、UA-7200、UA-W2A等が挙げられる。
上記共栄社化学社製のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、AH-600、AI-600、AT-600、UA-101I、UA-101T、UA-306H、UA-306I、UA-306T等が挙げられる。
【0036】
上記エポキシ化合物としては、例えば、上述したエポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物や、部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物等が挙げられる。
なお、本明細書において上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物とは、例えば、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の一部のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得ることができる、1分子中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基とをそれぞれ1つ以上有する化合物を意味する。
【0037】
上記硬化性樹脂として上記(メタ)アクリル化合物と上記エポキシ化合物とを含有する場合、又は、上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ化合物を含有する場合、上記硬化性樹脂中の(メタ)アクリロイル基とエポキシ基との合計中における(メタ)アクリロイル基の比率を30モル%以上95モル%以下になるようにすることが好ましい。上記(メタ)アクリロイル基の比率がこの範囲であることにより、得られる硬化性樹脂組成物を液晶表示素子用シール剤に用いた場合の液晶汚染の発生を抑制しつつ、接着性により優れるものとなる。
【0038】
上記硬化性樹脂は、得られる硬化性樹脂組成物を液晶表示素子用シール剤に用いた場合の低液晶汚染性により優れるものとする観点から、-OH基、-NH-基、-NH基等の水素結合性のユニットを有するものが好ましい。
【0039】
上記硬化性樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0040】
本発明の硬化性樹脂組成物は、増感剤を含有してもよい。上記増感剤は、上記光重合開始剤の重合開始効率をより向上させて、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化反応をより促進させる役割を有する。
【0041】
上記増感剤としては、例えば、4-(ジメチルアミノ)安息香酸エチル、9,10-ジブトキシアントラセン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ベンゾフェノン、2,4-ジクロロベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド等が挙げられる。
【0042】
上記増感剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が3重量部である。上記増感剤の含有量が0.01重量部以上であることにより、増感効果がより発揮される。上記増感剤の含有量が3重量部以下であることにより、吸収が大きくなり過ぎずに深部まで光を伝えることができる。上記増感剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は1重量部である。
【0043】
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で熱重合開始剤を含有してもよい。
上記熱重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物や有機過酸化物等で構成されるものが挙げられる。なかでも、得られる硬化性樹脂組成物を液晶表示素子用シール剤に用いた場合の液晶汚染を抑制する観点から、アゾ化合物で構成される開始剤(以下、「アゾ開始剤」ともいう)が好ましく、高分子アゾ化合物で構成される開始剤(以下、「高分子アゾ開始剤」ともいう)がより好ましい。
上記熱重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
なお、本明細書において上記「高分子アゾ化合物」とは、アゾ基を有し、熱によって(メタ)アクリロイル基を硬化させることができるラジカルを生成する、数平均分子量が300以上の化合物を意味する。
【0044】
上記高分子アゾ化合物の数平均分子量の好ましい下限は1000、好ましい上限は30万である。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量がこの範囲であることにより、得られる硬化性樹脂組成物を液晶表示素子用シール剤に用いる場合に液晶への悪影響を防止しつつ、硬化性樹脂へ容易に混合することができる。上記高分子アゾ化合物の数平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は10万であり、更に好ましい下限は1万、更に好ましい上限は9万である。
【0045】
上記高分子アゾ化合物としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ化合物としては、ポリエチレンオキサイド構造を有するものが好ましい。
上記高分子アゾ化合物としては、具体的には例えば、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられる。
上記高分子アゾ開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、VPE-0201、VPE-0401、VPE-0601、VPS-0501、VPS-1001(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
また、高分子ではないアゾ開始剤としては、例えば、V-65、V-501(いずれも富士フイルム和光純薬社製)等が挙げられる。
【0046】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0047】
上記熱重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部である。上記熱重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる硬化性樹脂組成物を液晶表示素子用シール剤に用いた場合の液晶汚染を抑制しつつ、保存安定性や熱硬化性により優れるものとなる。上記熱重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0048】
本発明の硬化性樹脂組成物は、熱硬化剤を含有してもよい。
上記熱硬化剤としては、例えば、有機酸ヒドラジド、イミダゾール誘導体、アミン化合物、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。なかでも、有機酸ヒドラジドが好適に用いられる。
上記熱硬化剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0049】
上記有機酸ヒドラジドとしては、例えば、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
上記有機酸ヒドラジドのうち市販されているものとしては、例えば、大塚化学社製の有機酸ヒドラジド、味の素ファインテクノ社製の有機酸ヒドラジド等が挙げられる。
上記大塚化学社製の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、SDH、ADH等が挙げられる。
上記味の素ファインテクノ社製の有機酸ヒドラジドとしては、例えば、アミキュアVDH、アミキュアVDH-J、アミキュアUDH、アミキュアUDH-J等が挙げられる。
【0050】
上記熱硬化剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が50重量部である。上記熱硬化剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる硬化性樹脂組成物の塗布性等を悪化させることなく、熱硬化性により優れるものとすることができる。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい上限は30重量部である。
【0051】
本発明の硬化性樹脂組成物は、粘度調整、応力分散効果による更なる接着性の向上、線膨張率の改善、硬化物の耐湿性の向上等を目的として充填剤を含有することが好ましい。
【0052】
上記充填剤としては、無機充填剤や有機充填剤を用いることができる。
上記無機充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、ガラスビーズ、石綿、石膏、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、セリサイト、活性白土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等が挙げられる。
上記有機充填剤としては、例えば、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等が挙げられる。
上記充填剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0053】
本発明の硬化性樹脂組成物100重量部中における上記充填剤の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は70重量部である。上記充填剤の含有量がこの範囲であることにより、塗布性等を悪化させることなく、接着性の改善等の効果により優れるものとなる。上記充填剤の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は60重量部である。
【0054】
本発明の硬化性樹脂組成物は、シランカップリング剤を含有してもよい。上記シランカップリング剤は、主に硬化性樹脂組成物と基板等の被着体とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
【0055】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。これらは、基板等との接着性を向上させる効果に優れ、硬化性樹脂と化学結合することにより、得られる硬化性樹脂組成物を液晶表示素子用シール剤に用いる場合の液晶中への硬化性樹脂の流出を抑制することができる。
上記シランカップリング剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0056】
本発明の硬化性樹脂組成物100重量部中における上記シランカップリング剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる硬化性樹脂組成物を液晶表示素子用シール剤に用いる場合の液晶汚染の発生を抑制しつつ、接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0057】
本発明の硬化性樹脂組成物は、遮光剤を含有してもよい。上記遮光剤を含有することにより、本発明の硬化性樹脂組成物は、遮光シール剤として好適に用いることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、長波長の光に対する反応性に優れる本発明の光重合開始剤を含有するため、上記遮光剤を含有した場合でも長波長の光に対する硬化性に優れるものとなる。
【0058】
上記遮光剤としては、例えば、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、フラーレン、カーボンブラック、樹脂被覆型カーボンブラック等が挙げられる。なかでも、絶縁性の高い物質が好ましく、チタンブラックがより好ましい。
【0059】
上記チタンブラックは、表面処理されていないものでも充分な効果を発揮するが、表面がカップリング剤等の有機成分で処理されているものや、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機成分で被覆されているもの等、表面処理されたチタンブラックを用いることもできる。なかでも、有機成分で処理されているものは、より絶縁性を向上できる点で好ましい。
また、遮光剤として上記チタンブラックを含有する本発明の硬化性樹脂組成物を用いて製造した表示素子は、充分な遮光性を有するため、光の漏れ出しがなく高いコントラストを有し、優れた画像表示品質を有する表示素子を実現することができる。
【0060】
上記チタンブラックのうち市販されているものとしては、例えば、12S、13M、13M-C、13R-N、14M-C(いずれも三菱マテリアル社製)、ティラックD(赤穂化成社製)等が挙げられる。
【0061】
上記チタンブラックの比表面積の好ましい下限は13m/g、好ましい上限は30m/gであり、より好ましい下限は15m/g、より好ましい上限は25m/gである。
また、上記チタンブラックの体積抵抗の好ましい下限は0.5Ω・cm、好ましい上限は3Ω・cmであり、より好ましい下限は1Ω・cm、より好ましい上限は2.5Ω・cmである。
【0062】
上記遮光剤の一次粒子径の好ましい下限は1nm、好ましい上限は5000nmである。上記遮光剤の一次粒子径がこの範囲であることにより、得られる硬化性樹脂組成物の描画性等を悪化させることなく遮光性により優れるものとすることができる。上記遮光剤の一次粒子径のより好ましい下限は5nm、より好ましい上限は200nm、更に好ましい下限は10nm、更に好ましい上限は100nmである。
なお、上記遮光剤の一次粒子径は、NICOMP 380ZLS(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製)を用いて、上記遮光剤を溶媒(水、有機溶媒等)に分散させて測定することができる。
【0063】
本発明の硬化性樹脂組成物100重量部中における上記遮光剤の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は80重量部である。上記遮光剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる硬化性樹脂組成物の基板等の被着体に対する接着性や硬化後の強度や描画性を低下させることなくより優れた遮光性を発揮することができる。上記遮光剤の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は70重量部であり、更に好ましい下限は30重量部、更に好ましい上限は60重量部である。
【0064】
本発明の硬化性樹脂組成物は、更に、必要に応じて、応力緩和剤、反応性希釈剤、揺変剤、スペーサー、硬化促進剤、レベリング剤、重合禁止剤等の添加剤を含有してもよい。
【0065】
本発明の硬化性樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、混合機を用いて、硬化性樹脂と、光重合開始剤と、必要に応じて用いられるシランカップリング剤等の添加剤とを混合する方法等が挙げられる。
上記混合機としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等が挙げられる。
【0066】
本発明の硬化性樹脂組成物は、表示素子用組成物に好適に用いることができ、液晶表示素子用シール剤に特に好適に用いることができる。本発明の硬化性樹脂組成物を用いてなる表示素子用組成物及び液晶表示素子用シール剤もまた、それぞれ本発明の1つである。
【0067】
本発明の液晶表示素子用シール剤に、導電性微粒子を配合することにより、上下導通材料を製造することができる。本発明の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料もまた、本発明の1つである。
【0068】
上記導電性微粒子としては、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0069】
本発明の液晶表示素子用シール剤又は本発明の上下導通材料を用いてなる液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
【0070】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、液晶滴下工法による液晶表示素子の製造に好適に用いることができる。液晶滴下工法によって本発明の液晶表示素子を製造する方法としては、例えば、以下の方法等が挙げられる。
まず、基板に本発明の液晶表示素子用シール剤を塗布し、枠状のシールパターンを形成する工程を行う。次いで、本発明の液晶表示素子用シール剤等が未硬化の状態で液晶の微小滴をシールパターンの枠内全面に滴下塗布し、すぐに別の基板を重ね合わせる工程を行う。その後、シールパターン部分に光を照射してシール剤を光硬化させる工程を行う方法により、液晶表示素子を得ることができる。照射する光を可視光等の長波長の光とすることにより、周辺部材への光照射によるダメージを緩和でき、更にはシール剤が遮光部に配置される場合であっても充分にシール剤を光硬化させることができる。また、シール剤を光硬化させる工程に加えてシール剤を加熱して硬化させる工程を行ってもよい。
【発明の効果】
【0071】
本発明によれば、長波長の光に対する反応性に優れるチオキサントン化合物を提供することができる。また、本発明によれば、該チオキサントン化合物からなる光重合開始剤、該光重合開始剤を含有し、保存安定性及び遮光部硬化性に優れる硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を用いてなる表示素子用組成物、並びに、該硬化性樹脂組成物を用いてなり、低液晶汚染性に優れる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。更に、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
図1図1は、実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物を用いて遮光部なしの状態で作製した液晶表示素子を模式的に示す断面図である。
図2図2は、実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物を用いて遮光部ありの状態で作製した液晶表示素子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0074】
(化合物Aの作製)
脱水テトラヒドロフラン100mL中の2,5-チオフェンジカルボン酸5.0重量部に、2-ヒドロキシ9-オキソチオキサンテン20.0重量部、及び、p-トルエンスルホン酸0.1重量部を加え、12時間還流した。次いで、生成物を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び食塩水で洗浄し、その後、無水硫酸マグネシウムで乾燥することにより、本発明の光重合開始剤として化合物A(淡黄色固体)1.2重量部を得た。
H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、得られた化合物Aは、下記式(4)で表される化合物であることを確認した。
【0075】
【化4】
【0076】
(化合物Bの作製)
塩化メチレン100mL中の9-オキソチオキサンテン5.0重量部に、チオフェン-2,5-ジカルボニルジクロライド2.7重量部及び塩化アルミニウム3.7重量部を加え、室温で一晩撹拌した。次いで、反応混合物を氷水に注ぎ、生成物を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び食塩水で洗浄し、その後、無水硫酸マグネシウムで乾燥することにより、本発明の光重合開始剤として化合物B(淡黄色固体)4.3重量部を得た。
H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、得られた化合物Bは、下記式(5)で表される化合物であることを確認した。
【0077】
【化5】
【0078】
(化合物Cの作製)
9-オキソチオキサンテンに代えて2,4-ジエチル-9-オキソチオキサンテンを用いたこと以外は、上記「(化合物Bの作製)」と同様にして、本発明の光重合開始剤として化合物Cを得た。
H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、得られた化合物Cは、下記式(6)で表される化合物であることを確認した。
【0079】
【化6】
【0080】
(化合物Dの作製)
9-オキソチオキサンテンに代えて2-ニトロ-9-オキソチオキサンテンを用いたこと以外は、上記「(化合物Bの作製)」と同様にして、本発明の光重合開始剤として化合物Dを得た。
H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、得られた化合物Dは、下記式(7)で表される化合物であることを確認した。
【0081】
【化7】
【0082】
(化合物Eの作製)
テトラヒドロフラン100mL中の9-オキソチオキサンテン-2-トリフルオロメタンスルホナート5.0重量部にPdCl(dppf)0.1重量部、KPO1.0重量部、及び、2-ジチオフェン-5-ボロン酸2.7重量部を加え、3時間還流した。次いで、生成物を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び食塩水で洗浄し、その後、無水硫酸マグネシウムで乾燥することにより、本発明の光重合開始剤として化合物E(淡黄色固体)1.9重量部を得た。
H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、得られた化合物Eは、下記式(8)で表される化合物であることを確認した。
【0083】
【化8】
【0084】
(化合物Fの作製)
チオフェン-2,5-ジカルボニルジクロライドに代えてフラン-2,5-ジカルボキシジクロライドを用いたこと以外は、上記「(化合物Bの作製)」と同様にして、本発明の光重合開始剤として化合物Fを得た。
H-NMR、GPC、及び、FT-IR分析により、得られた化合物Fは、下記式(9)で表される化合物であることを確認した。
【0085】
【化9】
【0086】
(実施例1~15、比較例1~4)
表1~3に記載された配合比に従い、各材料を、遊星式撹拌機(シンキー社製、「あわとり練太郎」)を用いて混合した後、更に3本ロールを用いて混合することにより実施例1~15及び比較例1~4の硬化性樹脂組成物を調製した。
【0087】
<評価>
実施例及び比較例で得られた硬化性樹脂組成物について以下の評価を行った。結果を表1~3に示した。
【0088】
(保存安定性)
実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物について、製造直後の初期粘度と、製造後に25℃、50%RHの雰囲気下で24時間保管した後の粘度とを測定した。(保管後の粘度)/(初期粘度)を増粘率とし、増粘率が1.05未満であったものを「◎」、1.05以上1.10未満であったものを「○」、1.10以上1.15未満であったものを「△」、1.15以上であったものを「×」として保存安定性を評価した。
なお、硬化性樹脂組成物の粘度は、E型粘度計(BROOK FIELD社製、「DV-III」)を用い、25℃において回転速度1.0rpmの条件で測定した。
【0089】
(光硬化性)
実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物100重量部にスペーサー微粒子(積水化学工業社製、「ミクロパールSI-H050」)1重量部を分散させた。次いで、硬化性樹脂組成物をディスペンス用のシリンジ(武蔵エンジニアリング社製、「PSY-10E」)に充填し、脱泡処理を行ってから、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、「SHOTMASTER300」)にてガラス基板上に塗布した。その基板に真空貼り合わせ装置にて5Paの減圧下にて同サイズのガラス基板を貼り合わせた。貼り合わせたガラス基板の硬化性樹脂組成物部分にメタルハライドランプを用いて100mW/cmの光を10秒照射した。光照射は、波長400nm以下の光をカットするカットフィルター(400nmカットフィルター)を介して行った。
赤外分光装置(BIORAD社製、「FTS3000」)を用いて硬化性樹脂組成物のFT-IR測定を行い、(メタ)アクリロイル基由来ピークの光照射前後での変化量を測定した。光照射後に(メタ)アクリロイル基由来のピークが95%以上減少した場合を「◎」、85%以上95%未満減少した場合を「○」、80%以上85%未満減少した場合を「△」、光照射後の(メタ)アクリロイル基由来のピークの減少が80%未満であった場合を「×」として光硬化性を評価した。
【0090】
(低液晶汚染性)
実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物100重量部にスペーサー微粒子(積水化学工業社製、「ミクロパールSI-H050」)1重量部を分散させた。次いで、スペーサー微粒子を分散させた硬化性樹脂組成物を、ラビング済み配向膜及び透明電極付き基板に線幅が1mmになるようにディスペンサーで塗布した。
続いて液晶(チッソ社製、「JC-5004LA」)の微小滴を透明電極付き基板上の硬化性樹脂組成物の枠内全面に滴下塗布し、すぐに透明電極付きカラーフィルター基板を貼り合わせた。その後、硬化性樹脂組成物部分にメタルハライドランプを用いて100mW/cmの光を30秒照射して硬化させ、更に、120℃で1時間加熱して液晶表示素子を得た。光照射は、波長400nm以下の光をカットするカットフィルター(400nmカットフィルター)を介して行った。
液晶表示素子は、ディスペンサーで硬化性樹脂組成物の塗布位置をコントロールし、硬化性樹脂組成物に完全に光が当たる液晶表示素子(遮光部なし)と、硬化性樹脂組成物がカラーフィルター基板のブラックマトリックスに線幅の50%がかかるように塗布した液晶表示素子(遮光部あり)の2種類を作製した。図1は、実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物を用いて遮光部なしの状態で作製した液晶表示素子を模式的に示す断面図であり、図2は、実施例及び比較例で得られた各硬化性樹脂組成物を用いて遮光部ありの状態で作製した液晶表示素子を模式的に示す断面図である。図1に示すように、硬化性樹脂組成物1上に遮光部なしの状態のものは完全に硬化性樹脂組成物1が光に当たる状態であり、一方、硬化性樹脂組成物1上に遮光部ありの状態のものは、図2に示すように、液晶3と接する部分の硬化性樹脂組成物1には、ブラックマトリックス2で遮蔽されて光がほとんど届かない。
得られた液晶表示素子について、100時間動作試験を行った後、80℃で1000時間電圧印加状態とした後の液晶配向乱れ(表示むら)を目視にて確認した。
液晶表示素子に表示むらが全く見られなかった場合を「◎」、液晶表示素子の硬化性樹脂組成物付近(周辺部)に少し薄い表示むらが見えた場合を「○」、周辺部にはっきりとした濃い表示むらがあった場合を「△」、はっきりとした濃い表示むらが周辺部のみではなく、中央部まで広がっていた場合を「×」として低液晶汚染性を評価した。
なお、評価が「◎」、「○」の液晶表示素子は実用に全く問題のないレベルであり、「△」の液晶表示素子は表示設計によっては問題になる可能性があるレベルであり、「×」の液晶表示素子は実用に耐えないレベルである。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、長波長の光に対する反応性に優れるチオキサントン化合物を提供することができる。また、本発明によれば、該チオキサントン化合物からなる光重合開始剤、該光重合開始剤を含有し、保存安定性及び遮光部硬化性に優れる硬化性樹脂組成物、該硬化性樹脂組成物を用いてなる表示素子用組成物、並びに、該硬化性樹脂組成物を用いてなり、低液晶汚染性に優れる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。更に、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 硬化性樹脂組成物
2 ブラックマトリックス
3 液晶
図1
図2