(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】避難ハッチの設置構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/00 20060101AFI20220921BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20220921BHJP
【FI】
E04B1/00 502B
E04B1/94 F
(21)【出願番号】P 2022036950
(22)【出願日】2022-03-10
【審査請求日】2022-03-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】飯田 和仁
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特許第6055722(JP,B2)
【文献】特開2014-114604(JP,A)
【文献】特開2011-021353(JP,A)
【文献】特開2003-138643(JP,A)
【文献】特開2002-013192(JP,A)
【文献】特開2000-170243(JP,A)
【文献】特開平10-127795(JP,A)
【文献】特開平08-338114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00
E04B 1/94
E04B 5/00
E04D 5/00
E04D 11/00
E04D 13/03
E04D 13/14
E04F 19/08
A62B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外床部に形成された開口部に嵌め込まれて設置される避難ハッチの設置構造であって、
前記屋外床部を構成する木造の床本体は、上面及び下面と前記開口部側の面が耐火面材によって被覆されており、
前記床本体の前記開口部側の面を被覆する前記耐火面材の表面側には第一下地合板が設けられ、前記床本体の前記上面を被覆する前記耐火面材の表面側には第二下地合板が設けられ、前記第一下地合板の上端部と前記第二下地合板の側端部とが隣接し、さらに、前記第一下地合板及び前記第二下地合板の表面には防水シートが貼り付けられており、
緩衝材が、前記開口部の縁に沿って枠状に設けられており、
前記避難ハッチは、筒状本体枠と、前記筒状本体枠から外側に張り出して設けられたフランジ部と、を備えており、
前記筒状本体枠の下端部は、前記床本体の上端部よりも下方に位置しており、
前記避難ハッチは、前記フランジ部が前記緩衝材の上面に載置されるとともに、前記筒状本体枠の
下端部における内側面から前記床本体を構成する芯材に向かって固定材が打ち込まれることで前記屋外床部に固定されていることを特徴とする避難ハッチの設置構造。
【請求項2】
屋外床部に形成された開口部に嵌め込まれて設置される避難ハッチの設置構造
であって、
前記屋外床部を構成する木造の床本体は、上面及び下面と前記開口部側の面が耐火面材によって被覆されており、
前記床本体の前記開口部側の面を被覆する前記耐火面材の表面側には第一下地合板が設けられ、前記床本体の前記上面を被覆する前記耐火面材の表面側には第二下地合板が設けられ、前記第一下地合板の上端部と前記第二下地合板の側端部とが隣接し、さらに、前記第一下地合板及び前記第二下地合板の表面には防水シートが貼り付けられており、
緩衝材が、前記開口部の縁に沿って枠状に設けられており、
前記避難ハッチは、筒状本体枠と、前記筒状本体枠から外側に張り出して設けられたフランジ部と、を備えており、
前記避難ハッチは、前記フランジ部が前記緩衝材の上面に載置されるとともに、前記筒状本体枠の内側面から前記床本体を構成する芯材に向かって固定材が打ち込まれることで前記屋外床部に固定されており、
前記第一下地合板の下端部と前記防水シートとの間には、下端部が、前記第一下地合板の下端部及び前記床本体の前記下面を被覆する前記耐火面材よりも下方に突出する水切り材が設けられていることを特徴とする避難ハッチの設置構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の避難ハッチの設置構造において、
前記フランジ部は、前記筒状本体枠の上端部から外側に張り出して設けられていることを特徴とする避難ハッチの設置構造。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の避難ハッチの設置構造において、
前記緩衝材は、前記第一下地合板の上端面と前記第二下地合板の上面に跨って設けられていることを特徴とする避難ハッチの設置構造。
【請求項5】
請求項
1から4のいずれか一項に記載の避難ハッチの設置構造において、
前記第二下地合板の上側には、前記屋外床部の床仕上げ材が設けられており、
前記緩衝材と前記床仕上げ材との間にはシーリング材が充填されていることを特徴とする避難ハッチの設置構造。
【請求項6】
請求項
5に記載の避難ハッチの設置構造において、
前記フランジ部は、前記緩衝材と前記シーリング材の双方に跨って配置されていることを特徴とする避難ハッチの設置構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の避難ハッチの設置構造において、
前記床本体の前記上面を被覆する前記耐火面材の上に断熱パネルが設けられ、前記断熱パネルの上に前記第二下地合板が設けられていることを特徴とする避難ハッチの設置構造。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の避難ハッチの設置構造において、
前記第一下地合板
に貼り付けられた前記防水シートのうち、前記固定材が貫通する部位には防水テープが貼り付けられていることを特徴とする避難ハッチの設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、避難ハッチの設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、4階建て以上の建物を木造建築物として建築することが行われている。4階建て以上の建物を木造建築物として建築する場合は、必要な耐震性能や耐火性能、防水性能を付与するだけでなく、バルコニーや屋外廊下等の屋外部分に避難用設備を設置し、上層階からの避難経路を確保することが必須となる。
特許文献1には、木造建築物のバルコニー床に形成されたハッチ取付開口の周囲に環状の取付枠部材が取り付けられ、当該取付枠部材に対して避難ハッチが載せられるとともに固定材によって固定される技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
避難ハッチは、バルコニー床の上面に取り付けられた取付枠部材の更に上面に載せられることで、バルコニー床の上面から大きく突出する段差となる。屋外部分にこのような大きな段差が形成されてしまうと、見栄えの善し悪しもさることながら、歩行する上での障害ともなり得るため、段差を極力小さくすることが求められている。
さらに、取付枠部材をバルコニー床の上面に取り付けるにあたっては、耐火性能を付与するため、バルコニー床と共に耐火ボードで被覆する必要があるが、構造的に複雑化してしまうことから、より簡易な構造で避難ハッチを設置し、施工性を向上させたいという要望があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、避難ハッチを屋外床部に対して極力小さな段差となるように設置することで見栄えを良くするとともに安全性の向上を図り、かつ、施工性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、例えば
図1,
図2に示すように、屋外床部4に形成された開口部5に嵌め込まれて設置される避難ハッチ10の設置構造であって、
前記屋外床部4を構成する木造の床本体4aは、上面及び下面と前記開口部5側の面が耐火面材Gによって被覆されており、
前記床本体4aの前記開口部5側の面を被覆する前記耐火面材Gの表面側には第一下地合板6が設けられ、前記床本体4aの前記上面を被覆する前記耐火面材Gの表面側には第二下地合板7が設けられ、前記第一下地合板6の上端部と前記第二下地合板7の側端部とが隣接し、さらに、前記第一下地合板6及び前記第二下地合板7の表面には防水シートWSが貼り付けられており、
緩衝材8が、前記開口部5の縁に沿って枠状に設けられており、
前記避難ハッチ10は、筒状本体枠11と、前記筒状本体枠11から外側に張り出して設けられたフランジ部12と、を備えており、
前記筒状本体枠11の下端部は、前記床本体4aの上端部よりも下方に位置しており、
前記避難ハッチ10は、前記フランジ部12が前記緩衝材8の上面に載置されるとともに、前記筒状本体枠11の
下端部における内側面から前記床本体4aを構成する芯材F(例えば框材F)に向かって固定材15が打ち込まれることで前記屋外床部4に固定されていることを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、屋外床部4を構成する木造の床本体4aは、上面及び下面と開口部5側の面が耐火面材Gによって被覆されているので、屋外床部4に耐火性能を確実に付与できる。また、耐火面材Gの表面側に第一下地合板6及び第二下地合板7が設けられ、第一下地合板6及び第二下地合板7の表面には防水シートWSが貼り付けられるので、屋外床部4に防水性能を確実に付与できる。
さらに、避難ハッチ10は、フランジ部12が緩衝材8の上面に載置されるとともに、筒状本体枠11の内側面から床本体4aを構成する芯材Fに向かって固定材15が打ち込まれることで屋外床部4に固定されているので、フランジ部12と緩衝材8との間の防水性能を向上させつつ、固定材15による固定位置を、床本体4aの上面よりも下方にすることができる。したがって、床本体4aの上面よりも上方に、固定材15が打ち込まれる部位を形成する必要がなくなる。
これにより、避難ハッチ10を屋外床部4に対して極力小さな段差となるように設置することで見栄えを良くするとともに安全性の向上を図ることができる。しかも、避難ハッチ10の設置を、フランジ部12を緩衝材8の上面に載置し、固定材15によって筒状本体枠11を床本体4aに固定するだけで済むので、より簡易な構造で避難ハッチ10を設置でき、施工性を向上させることができる。加えて、固定材15は、第一下地合板6を貫通したうえで木造の床本体4aに打ち込まれるので、固定材15による避難ハッチ10の固定強度を高めることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、例えば図1,図2に示すように、屋外床部4に形成された開口部5に嵌め込まれて設置される避難ハッチ10の設置構造であって、
前記屋外床部4を構成する木造の床本体4aは、上面及び下面と前記開口部5側の面が耐火面材Gによって被覆されており、
前記床本体4aの前記開口部5側の面を被覆する前記耐火面材Gの表面側には第一下地合板6が設けられ、前記床本体4aの前記上面を被覆する前記耐火面材Gの表面側には第二下地合板7が設けられ、前記第一下地合板6の上端部と前記第二下地合板7の側端部とが隣接し、さらに、前記第一下地合板6及び前記第二下地合板7の表面には防水シートWSが貼り付けられており、
緩衝材8が、前記開口部5の縁に沿って枠状に設けられており、
前記避難ハッチ10は、筒状本体枠11と、前記筒状本体枠11から外側に張り出して設けられたフランジ部12と、を備えており、
前記避難ハッチ10は、前記フランジ部12が前記緩衝材8の上面に載置されるとともに、前記筒状本体枠11の内側面から前記床本体4aを構成する芯材F(例えば框材F)に向かって固定材15が打ち込まれることで前記屋外床部4に固定されており、
前記第一下地合板6の下端部と前記防水シートWSとの間には、下端部が、前記第一下地合板6の下端部及び前記床本体4aの前記下面を被覆する前記耐火面材Gよりも下方に突出する水切り材6aが設けられていることを特徴とする。
請求項
2に記載の発明によれば、屋外床部4を構成する木造の床本体4aは、上面及び下面と開口部5側の面が耐火面材Gによって被覆されているので、屋外床部4に耐火性能を確実に付与できる。また、耐火面材Gの表面側に第一下地合板6及び第二下地合板7が設けられ、第一下地合板6及び第二下地合板7の表面には防水シートWSが貼り付けられるので、屋外床部4に防水性能を確実に付与できる。
さらに、避難ハッチ10は、フランジ部12が緩衝材8の上面に載置されるとともに、筒状本体枠11の内側面から床本体4aを構成する芯材Fに向かって固定材15が打ち込まれることで屋外床部4に固定されているので、フランジ部12と緩衝材8との間の防水性能を向上させつつ、固定材15による固定位置を、床本体4aの上面よりも下方にすることができる。したがって、床本体4aの上面よりも上方に、固定材15が打ち込まれる部位を形成する必要がなくなる。
これにより、避難ハッチ10を屋外床部4に対して極力小さな段差となるように設置することで見栄えを良くするとともに安全性の向上を図ることができる。しかも、避難ハッチ10の設置を、フランジ部12を緩衝材8の上面に載置し、固定材15によって筒状本体枠11を床本体4aに固定するだけで済むので、より簡易な構造で避難ハッチ10を設置でき、施工性を向上させることができる。加えて、固定材15は、第一下地合板6を貫通したうえで木造の床本体4aに打ち込まれるので、固定材15による避難ハッチ10の固定強度を高めることができる。
また、第一下地合板6の下端部と防水シートWSとの間には、下端部が、第一下地合板6の下端部及び床本体4aの下面を被覆する耐火面材Gよりも下方に突出する水切り材6aが設けられているので、開口部5の下側縁における雨水等の切れを良くすることができ、屋外床部4の防水性能を向上できる。
【0008】
請求項
3に記載の発明は、例えば
図1,
図2に示すように、請求項1
又は2に記載の避難ハッチ10の設置構造において、
前記フランジ部12は、前記筒状本体枠11の上端部から外側に張り出して設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明によれば、フランジ部12は、筒状本体枠11の上端部から外側に張り出して設けられているので、例えばフランジ部12が、筒状本体枠11の下端部から外側に張り出して設けられる場合に比して、フランジ部12よりも上方に位置する筒状本体枠11の部位の上下寸法を抑えることができ、避難ハッチ10を屋外床部4に対して極力小さな段差となるように設置することができる。
【0010】
請求項
4に記載の発明は、例えば
図1,
図2に示すように、請求項
1から3のいずれか一項に記載の避難ハッチ10の設置構造において、
前記緩衝材8は、前記第一下地合板6の上端面と前記第二下地合板7の上面に跨って設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明によれば、緩衝材8は、第一下地合板6の上端面と第二下地合板7の上面に跨って設けられているので、上に載せられるフランジ部12から受ける避難ハッチ10の荷重が、第一下地合板6と第二下地合板7の双方に伝達されることとなり、避難ハッチ10の設置状態を強固かつ安定的なものとすることができる。
【0012】
請求項
5に記載の発明は、例えば
図1,
図2に示すように、請求項1から
4のいずれか一項に記載の避難ハッチ10の設置構造において、
前記第二下地合板7の上側には、前記屋外床部4の床仕上げ材4bが設けられており、
前記緩衝材8と前記床仕上げ材4bとの間にはシーリング材9が充填されていることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明によれば、第二下地合板7の上側には、屋外床部4の床仕上げ材4bが設けられており、緩衝材8と床仕上げ材4bとの間にはシーリング材9が充填され
ているので、フランジ部12と緩衝材8との間の防水性能をより向上させることができる。
【0014】
請求項
6に記載の発明は、例えば
図1,
図2に示すように、請求項
5に記載の避難ハッチ10の設置構造において、
前記フランジ部12は、前記緩衝材8と前記シーリング材9の双方に跨って配置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の発明によれば、フランジ部12は、緩衝材8とシーリング材9の双方に跨って配置されているので、フランジ部12と緩衝材8及びシーリング材9との間の防水性能をより向上できる。
さらに、緩衝材8と床仕上げ材4bとの間に充填されたシーリング材9の上面にフランジ部12が載置された状態となるので、床仕上げ材4bからフランジ部12にかけて連続性のある状態となり、屋外床部4の見栄えを良くすることができる。
【0016】
請求項
7に記載の発明は、例えば
図1,
図2に示すように、請求項1から
6のいずれか一項に記載の避難ハッチ10の設置構造において、
前記床本体4aの前記上面を被覆する前記耐火面材Gの上に断熱パネルPが設けられ、前記断熱パネルPの上に前記第二下地合板7が設けられていることを特徴とする。
【0017】
請求項7に記載の発明によれば、床本体4aの上面を被覆する耐火面材Gの上に断熱パネルPが設けられ、断熱パネルPの上に第二下地合板7が設けられているので、屋外床部4に付与された耐火性能の向上に貢献できる。
【0018】
請求項
8に記載の発明は、例えば
図1,
図2に示すように、請求項1から
7のいずれか一項に記載の避難ハッチ10の設置構造において、
前記第一下地合板6に貼り付けられた前記防水シートWSのうち、前記固定材15が貫通する部位には防水テープWTが貼り付けられていることを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の発明によれば、第一下地合板6に貼り付けられた防水シートWSのうち、固定材15が貫通する部位には防水テープWTが貼り付けられているので、固定材15が貫通する部位の防水性能を向上できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、避難ハッチを屋外床部に対して極力小さな段差となるように設置することで見栄えを良くするとともに安全性の向上を図り、かつ、施工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】避難ハッチの設置構造を説明する断面図である。
【
図2】避難ハッチの構成を説明する図とされ、(a)は半分が平面図、半分が上蓋を除いた場合の平面図であり、(b)は側断面図であり、(c)は他の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0025】
図1において符号1は、建物を示す。この建物1は、複数階建ての建物であり、住宅とされている。住宅は、戸建て住宅でもよいし、複数の住戸を備えた共同住宅(集合住宅)であってもよい。なお、本実施形態の建物1は、4階建て以上の木造の戸建て住宅とされているが、木造と非木造(鉄筋コンクリート造、鉄骨造等)を組み合わせた混構造の戸建て住宅とされていてもよい。
【0026】
このような建物1は、下階の壁2と上階の壁3との間に設けられて屋外側に張り出す屋外床部4を有する。屋外床部4は、下階の壁2と上階の壁3との間に設けられるので、建物1の躯体と一体になっている。換言すれば、屋外床部4は、建物1の躯体を構成している。
また、屋外床部4は、少なくとも1階よりも上の階に位置し、バルコニーや屋外廊下等の床部として利用される。なお、本実施形態の屋外床部4は、バルコニーの床部(バルコニー床)とされている。
そして、屋外床部4には、折りたたみ式の避難はしご13を備えた避難ハッチ10が設置される。
【0027】
本実施形態における壁2,3の壁本体2a,3a及び屋外床部4の床本体4aは、木製の建築用パネルによって構成されている。
建築用パネルとは、縦横の框材F(すなわち、芯材)が矩形状に組み立てられるとともに、矩形枠の内部に補助桟材が縦横に組み付けられて枠体が構成され、この枠体の両面もしくは片面に面材Bが貼設されたものであり、内部中空な構造となっている。さらに、その内部中空な部分には、通常、グラスウールやロックウール等の断熱材が装填される。
また、壁本体2a,3a及び床本体4aの屋外側面には、耐火面材として石膏ボードGが取り付けられている。本実施形態においては2枚重ねとなっている。
【0028】
なお、本実施形態の壁本体2a,3a及び床本体4aは建築用パネルによって構成されるものとしたが、これに限られるものではない。
すなわち、本実施形態の建物1は、屋外床部4が設けられた階とその直下の階が、少なくとも所謂パネル工法によって構築されたものであるが、軸組構法や壁式工法、ツーバイフォー工法等の従来公知の他の工法によって構築されたものであってもよい。その場合、建築用パネルは用いられないため、壁本体2a,3aは柱や梁によって構成され、床本体4aは、根太(すなわち、芯材)や床板によって構成される。
【0029】
屋外床部4には、避難ハッチ10が嵌め込まれる矩形状の開口部5が形成されている。すなわち、複数の框材Fによって矩形状に組まれた開口を床本体4aに形成し、当該開口を、屋外床部4の開口部5としている。
床本体4aは、上面及び下面と開口部5側の面が、2枚重ねの耐火面材Gによって被覆されている。開口部5側の面の耐火面材Gは、上端面が、床本体4aの上面と面一になっており、下端面が、床本体4aの下面を被覆する2枚重ねの耐火面材Gの下面と面一になっている。床本体4aの上面を被覆する2枚重ねの耐火面材Gは、床本体4aの上面と開口部5側の面における2枚重ねの耐火面材Gの上端面に跨って配置され、開口部5側の端面が、開口部5側の面における2枚重ねの耐火面材Gの表面(開口部5側の面)と面一になっている。
【0030】
床本体4aの上面を被覆する耐火面材Gの上には、開口部5を避けて断熱パネルPが設けられている。
断熱パネルPのうち、屋外床部4の周縁部に設けられる断熱パネルPは、上面が傾斜面となった水勾配つき断熱パネルPとされており、屋外床部4に水勾配を容易に形成できるようになっている。
一方、屋外床部4の中央側に設けられる通常の断熱パネルPは、上面が略水平面とされており(極めて緩やかな傾斜面であってもよい)、避難ハッチ10を水平に設置しやすくなっている。
【0031】
床本体4aの開口部5側の面を被覆する耐火面材Gの表面側には第一下地合板6が設けられ、床本体4aの上面を被覆する耐火面材Gの表面側には第二下地合板7が設けられている。なお、床本体4aの上面を被覆する耐火面材Gの上には、上記のように断熱パネルPが設けられているので、第二下地合板7は、断熱パネルP(水勾配つき断熱パネルP及び通常の断熱パネルP)の上に設けられた状態となっている。
そして、第一下地合板6の上端部と、通常の断熱パネルPの上に設けられた第二下地合板7における開口部5側の側端部は隣接しており、第一下地合板6の上端面と第二下地合板7の上面は面一となっている。また、第一下地合板6の下端面は、床本体4aの開口部5側の面における2枚重ねの耐火面材Gの下端面と面一になっている。
【0032】
第一下地合板6と第二下地合板7は、上記のように隣接しているため、第一下地合板6と第二下地合板7の表面は連続的な状態となっている。そして、このような第一下地合板6及び第二下地合板7の表面には、防水シートWSが連続的に貼り付けられている。
防水シートWSは、上下階の壁2,3の表面側にも貼り付けられるものとし、屋外床部4側の防水シートWSと連続的な状態となっているものとする。
なお、上下階の壁2,3の表面側に貼り付けられた防水シートWSの表面側には更に透湿防水シートや外壁仕上げ材が適宜設けられる。
【0033】
第一下地合板6の下端部と防水シートWSとの間には、下端部が、第一下地合板6の下端部及び床本体4aの下面を被覆する耐火面材Gよりも下方に突出する水切り材6aが設けられている。開口部5の防水シートWSに付着した雨水等は、水切り材6aの下端まで伝ってから下方に落ちるので、第一下地合板6と防水シートWSとの間や、第一下地合板6と耐火面材Gとの間などに浸み込みにくく、雨仕舞いに優れる。
【0034】
第二下地合板7の上(防水シートWSの上)には、床仕上げ材4bが設けられている。第二下地合板7との間には、図示しない脚部が設けられている。そして、この床仕上げ材4bの上面は、屋外床部4の周縁部に向かって極めて緩やかに形成された傾斜面となっているものとする。
床仕上げ材4bは、開口部5及び避難ハッチ10を避けた位置に配置されるとともに、避難ハッチ10との間に大きな隙間が生じないように寸法設定されている。
また、この床仕上げ材4bの厚みは、後述するゴムパッキン8(すなわち、緩衝材)の厚みよりも厚く設定されている。
【0035】
開口部5の縁には、当該開口部5の縁に沿って枠状に形成された緩衝材であるゴムパッキン8が設けられている。ゴムパッキン8は弾力性を有しており、上からの荷重を受けて潰れるように変形することができる。このようなゴムパッキン8は、第一下地合板6の上端面と第二下地合板7の上面に跨って配置されている。
なお、本実施形態においてはゴムパッキン8が用いられているが、これに限られるものではなく、上からの荷重を受けて完全に潰れない程度の弾力性を有し、上に載せられるものと下にあるものとの緩衝材としての機能及び防水の機能を果たすものであれば、他の素材のものが採用されてもよい。
【0036】
さらに、ゴムパッキン8と床仕上げ材4bとの間には、例えば湿式のシーリング材9が充填されており、ゴムパッキン8と床仕上げ材4bとの間の隙間を埋めることができる。シーリング材9も、ゴムパッキン8と同様に弾力性を有しており、上からの荷重を受けて潰れるように変形することができる。
なお、本実施形態においては湿式のシーリング材9が用いられているが、これに限られるものではなく、上からの荷重を受けて完全に潰れない程度の弾力性を有し、上に載せられるものと下にあるものとの緩衝材としての機能及び防水の機能を果たすものであれば、乾式のシーリング材が採用されてもよい。
【0037】
避難ハッチ10は、以上のように構成された屋外床部4に設置されている。
本実施形態の避難ハッチ10は、既製品として製作された鋼製の避難用設備であり、
図1,
図2に示すように、筒状本体枠11と、フランジ部12と、避難はしご13と、を備えている。
【0038】
筒状本体枠11は、開口部5に嵌め込まれる部分であり、角筒状に形成されて上下が開口している。上側開口は上蓋11aによって開閉可能となっており、下側開口は下蓋11bによって開閉可能となっている。
上蓋11aは片開き式の蓋であり、人が乗っても変形しない程度の剛性を有する。下蓋11bも片開き式の蓋であり、リンク装置11cによって上蓋11aと連繋している。すなわち、下蓋11bは、リンク装置11cによって、上蓋11aを開けると同時に開き、上蓋11aを閉めれば同時に閉まるようになっている。
なお、筒状本体枠11の四方の側壁には、後述する固定材15が通される通孔11dが複数形成されている。
【0039】
フランジ部12は、筒状本体枠11の上端部(上蓋11aにおける周縁部の直下)に全周に亘って外側に張り出した状態で設けられている。
このフランジ部12は、開口部5の縁に沿って設けられたゴムパッキン8及びシーリング材9の双方に跨って配置される部位である。したがって、フランジ部12の張り出し寸法は、少なくとも各辺におけるゴムパッキン8の幅寸法よりも長く設定されている。
なお、本実施形態においては、フランジ部12は、ゴムパッキン8及びシーリング材9の双方に跨って配置されるものとしたが、これに限られるものではなく、ゴムパッキン8の上にのみ配置されるものとしてもよい。
また、本実施形態のフランジ部12は、筒状本体枠11の上端部に全周に亘って外側に張り出した状態で設けられるものとしたが、これに限られるものではなく、例えば筒状本体枠11の上下寸法次第では、筒状本体枠11に対するフランジ部12の高さ位置が異なる。すなわち、筒状本体枠11の上下寸法が短く設定されていれば、フランジ部12は、筒状本体枠11の上下方向中央部に全周に亘って外側に張り出した状態で設けられる場合がある。この場合も、固定材15は、筒状本体枠11の内側面から床本体4aを構成する芯材Fに向かって打ち込まれるものとする。
【0040】
避難はしご13は、筒状本体枠11の一側壁に取り付けられた折りたたみ式の梯子であり、
図2(a)中の「押す」と表記されたプッシュレバーを足で押すことでロックが解除され、下方に向かって展開する仕組みとなっている。
なお、この避難はしご13は、ワイヤー巻き取り可能に構成されており、巻取部によってワイヤーを巻き取ることで折りたたむことが可能となっている。また、ワイヤーを巻き取るとプッシュレバーのロックが再び掛かるようになっている。
【0041】
このような避難ハッチ10は、筒状本体枠11が開口部5に嵌め込まれて、フランジ部12がゴムパッキン8及びシーリング材9の上面に載置されることで、屋外床部4に配置される。このとき、ゴムパッキン8及びシーリング材9は、フランジ部12によって上からの荷重を受けて変形しており、常に弾性復帰しようとしている状態となっている。換言すれば、ゴムパッキン8及びシーリング材9は、フランジ部12に密着しており、これらゴムパッキン8及びシーリング材9とフランジ部12との間に隙間が形成されないようになっている。
【0042】
なお、ゴムパッキン8の上にフランジ部12が載せられたときのゴムパッキン8及びフランジ部12を足し合わせた分の厚みは、床仕上げ材4bの厚みよりも厚くなるように設定されているが、これに限られるものではなく、略等しくなるように設定されてもよい。また、床仕上げ材4bを支持する脚部の高さ次第では、避難ハッチ10における上蓋11aの上面と床仕上げ材4bの上面が同じ高さ位置となるように設定されてもよい。
【0043】
そして、筒状本体枠11の内側面から床本体4aを構成する框材Fに向かって固定材15が打ち込まれることで屋外床部4に固定されている。
固定材15は、例えばコーチボルトが用いられており、筒状本体枠11における四方の側壁に形成された各々の通孔11dに通される。そして、固定材15は、第一下地合板6及び2枚重ねの耐火面材Gを貫通するとともに、床本体4aの芯材である框材Fに向かって打ち込まれている。なお、本実施形態においては框材Fも貫通している。
固定材15が打ち込まれることで避難ハッチ10が屋外床部4に固定されることとなるので、フランジ部12とゴムパッキン8及びシーリング材9との密着性は維持されたままの状態となる。
【0044】
ゴムパッキン8は、第一下地合板6の上端面と第二下地合板7の上面の双方に跨って配置されているが、上に載せられるフランジ部12から受ける避難ハッチ10の荷重は、第二下地合板7にも当然伝達されるが、主に第一下地合板6に伝達されやすくなっている。換言すれば、避難ハッチ10の荷重は、主に第一下地合板6によって受けている。このような第一下地合板6が、建物1の躯体である床本体4aに対して固定材15によって固定されるので、避難ハッチ10の設置状態は強固かつ安定的なものとなる。
したがって、本実施形態においては、ゴムパッキン8は、第一下地合板6の上端面と第二下地合板7の上面の双方に跨って配置されているが、少なくとも第一下地合板6の上端面に配置されるものとしてもよい。
【0045】
第一下地合板6の表面(開口部5側の面)に貼り付けられた防水シートWSのうち、固定材15が貫通する部位には防水テープWTが貼り付けられている。本実施形態の防水テープWTとしては、例えばブチルテープが用いられており、止水性に優れる。
【0046】
以上のように避難ハッチ10が設置されることで、屋外床部4の上方から下方へとつながる避難経路が形成されることとなる。すなわち、屋外床部4が設けられた上層階から下層階への避難経路を確保することができる。
【0047】
本実施形態によれば、以下のような優れた効果を奏する。
すなわち、屋外床部4を構成する木造の床本体4aは、上面及び下面と開口部5側の面が耐火面材Gによって被覆されているので、屋外床部4に耐火性能を確実に付与できる。また、耐火面材Gの表面側に第一下地合板6及び第二下地合板7が設けられ、第一下地合板6及び第二下地合板7の表面には防水シートWSが貼り付けられるので、屋外床部4に防水性能を確実に付与できる。
さらに、避難ハッチ10は、フランジ部12がゴムパッキン8の上面に載置されるとともに、筒状本体枠11の内側面から床本体4aを構成する芯材Fに向かって固定材15が打ち込まれることで屋外床部4に固定されているので、フランジ部12とゴムパッキン8との間の防水性能を向上させつつ、固定材15による固定位置を、床本体4aの上面よりも下方にすることができる。したがって、床本体4aの上面よりも上方に、固定材15が打ち込まれる部位を形成する必要がなくなる。
これにより、避難ハッチ10を屋外床部4に対して極力小さな段差となるように設置することで見栄えを良くするとともに安全性の向上を図ることができる。しかも、避難ハッチ10の設置を、フランジ部12をゴムパッキン8の上面に載置し、固定材15によって筒状本体枠11を床本体4aに固定するだけで済むので、より簡易な構造で避難ハッチ10を設置でき、施工性を向上させることができる。加えて、固定材15は、第一下地合板6を貫通したうえで木造の床本体4aに打ち込まれるので、固定材15による避難ハッチ10の固定強度を高めることができる。
【0048】
また、フランジ部12は、筒状本体枠11の上端部から外側に張り出して設けられているので、例えばフランジ部12が、筒状本体枠11の下端部から外側に張り出して設けられる場合に比して、フランジ部12よりも上方に位置する筒状本体枠11の部位の上下寸法を抑えることができ、避難ハッチ10を屋外床部4に対して極力小さな段差となるように設置することができる。
【0049】
また、ゴムパッキン8は、第一下地合板6の上端面と第二下地合板7の上面に跨って設けられているので、上に載せられるフランジ部12から受ける避難ハッチ10の荷重が、第一下地合板6と第二下地合板7の双方に伝達されることとなり、避難ハッチ10の設置状態を強固かつ安定的なものとすることができる。
【0050】
また、第二下地合板7の上側には、屋外床部4の床仕上げ材4bが設けられており、ゴムパッキン8と床仕上げ材4bとの間にはシーリング材9が充填されているので、フランジ部12とゴムパッキン8との間の防水性能をより向上させることができる。
【0051】
また、フランジ部12は、ゴムパッキン8とシーリング材9の双方に跨って配置されているので、フランジ部12とゴムパッキン8及びシーリング材9との間の防水性能をより向上できる。
さらに、ゴムパッキン8と床仕上げ材4bとの間に充填されたシーリング材9の上面にフランジ部12が載置された状態となるので、床仕上げ材4bからフランジ部12にかけて連続性のある状態となり、屋外床部4の見栄えを良くすることができる。
【0052】
また、床本体4aの上面を被覆する耐火面材Gの上に断熱パネルPが設けられ、断熱パネルPの上に第二下地合板7が設けられているので、屋外床部4に付与された耐火性能の向上に貢献できる。
【0053】
また、第一下地合板6に貼り付けられた防水シートWSのうち、固定材15が貫通する部位には防水テープWTが貼り付けられているので、固定材15が貫通する部位の防水性能を向上できる。
【0054】
また、第一下地合板6の下端部と防水シートWSとの間には、下端部が、第一下地合板6の下端部及び床本体4aの下面を被覆する耐火面材Gよりも下方に突出する水切り材6aが設けられているので、開口部5の下側縁における雨水等の切れを良くすることができ、屋外床部4の防水性能を向上できる。
【符号の説明】
【0055】
1 建物
2 下階の壁
3 上階の壁
4 屋外床部
4a 床本体
4b 床仕上げ材
5 開口部
6 第一下地合板
6a 水切り材
7 第二下地合板
8 緩衝材
9 シーリング材
10 避難ハッチ
11 筒状本体枠
12 フランジ部
13 避難はしご
15 固定材
F 框材
B 面材
G 石膏ボード
P 断熱パネル
WS 防水シート
WT 防水テープ
【要約】
【課題】避難ハッチを屋外床部に対して極力小さな段差となるように設置することで見栄えを良くするとともに安全性の向上を図り、かつ、施工性を向上させる。
【解決手段】屋外床部4の開口部5に嵌め込まれて設置される避難ハッチ10の設置構造であって、耐火面材Gによって被覆された木造の床本体4aの開口部5側に第一下地合板6が設けられ、床本体4aの上面側に第二下地合板7が設けられており、緩衝材8が、開口部5の縁に沿って枠状に設けられており、避難ハッチ10は、筒状本体枠11から外側に張り出すフランジ部12が緩衝材8の上面に載置されるとともに、筒状本体枠11の内側面から床本体4aを構成する芯材Fに向かって固定材15が打ち込まれることで屋外床部4に固定されている。
【選択図】
図1