IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ポーラ化成工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-状態改善装置 図1
  • 特許-状態改善装置 図2
  • 特許-状態改善装置 図3
  • 特許-状態改善装置 図4
  • 特許-状態改善装置 図5
  • 特許-状態改善装置 図6
  • 特許-状態改善装置 図7
  • 特許-状態改善装置 図8
  • 特許-状態改善装置 図9
  • 特許-状態改善装置 図10
  • 特許-状態改善装置 図11
  • 特許-状態改善装置 図12
  • 特許-状態改善装置 図13
  • 特許-状態改善装置 図14
  • 特許-状態改善装置 図15
  • 特許-状態改善装置 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】状態改善装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 21/02 20060101AFI20220921BHJP
【FI】
A61M21/02 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022093125
(22)【出願日】2022-06-08
(62)【分割の表示】P 2021128933の分割
【原出願日】2021-08-05
【審査請求日】2022-06-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本川 智紀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 朋美
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0346501(US,A1)
【文献】特開2014-004236(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0189259(US,A1)
【文献】特開2016-158632(JP,A)
【文献】特開2010-075312(JP,A)
【文献】特開2019-066667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動からなる刺激を提供して該ユーザーの心身状態の改善を促す装置であって、
前記ユーザーの心拍を示す情報を取得して、該心拍を示す情報から該ユーザーの心拍のテンポを認識する心拍認識部と、
前記ユーザーによる、該ユーザーが所望する状態を示す所望状態の指定を受け付ける所望状態受付部と、
前記心拍認識部により認識された前記ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポを、該ユーザーに提供する前記刺激のテンポとして決定する刺激内容決定部と、
前記刺激内容決定部により決定されたテンポ及び長さの前記刺激を前記ユーザーに向けて発生させる刺激発生部と、を備え、
前記刺激内容決定部は、
前記心拍認識部により認識された前記ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポを前記刺激の開始時のテンポとして決定するとともに、当該刺激の開始時のテンポに応じて当該刺激の長さを決定し、
前記所望状態受付部により受け付けられた前記所望状態が、副交感神経の優位な状態である場合には、前記刺激の開始時点から終了時点にかけて遅くなるように該テンポの変化を決定するように構成されている
ことを特徴とする状態改善装置。
【請求項2】
振動からなる刺激を提供して該ユーザーの心身状態の改善を促す装置であって、
前記ユーザーの心拍を示す情報を取得して、該心拍を示す情報から該ユーザーの心拍のテンポを認識する心拍認識部と、
前記ユーザーによる、該ユーザーが所望する状態を示す所望状態の指定を受け付ける所望状態受付部と、
前記心拍認識部により認識された前記ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポを、該ユーザーに提供する前記刺激のテンポとして決定する刺激内容決定部と、
前記刺激内容決定部により決定されたテンポ及び長さの前記刺激を前記ユーザーに向けて発生させる刺激発生部と、を備え、
前記刺激内容決定部は、
前記心拍認識部により認識された前記ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポを前記刺激の開始時のテンポとして決定するとともに、当該刺激の開始時のテンポに応じて当該刺激の長さを決定し、
前記所望状態受付部により受け付けられた前記所望状態が、交感神経の優位な状態である場合には、前記刺激の開始時点から終了時点にかけて速くなるように該テンポの変化を決定するように構成されている
ことを特徴とする状態改善装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザーの状態を改善する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザーを覚醒又はリラックスさせるための振動制御装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-57954号報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明によれば、ユーザーに振動を与えて覚醒又はリラックスさせることができる。しかしながら、ユーザーの心身状態を十分に改善できるものではなかった。
【0005】
そこで本発明は、ユーザーに効果的に振動の刺激を与えて、ユーザーの心身状態を十分に改善できる状態改善装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の状態改善装置は、
振動からなる刺激を提供して該ユーザーの心身状態の改善を促す装置であって、
前記ユーザーの心拍を示す情報を取得して、該心拍を示す情報から該ユーザーの心拍のテンポを認識する心拍認識部と、
前記ユーザーによる、該ユーザーが所望する状態を示す所望状態の指定を受け付ける所望状態受付部と、
前記心拍認識部により認識された前記ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポを、該ユーザーに提供する前記刺激のテンポとして決定する刺激内容決定部と、
前記刺激内容決定部により決定されたテンポ及び長さの前記刺激を前記ユーザーに向けて発生させる刺激発生部と、を備え、
前記刺激内容決定部は、
前記心拍認識部により認識された前記ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポを前記刺激の開始時のテンポとして決定するとともに、当該刺激の開始時のテンポに応じて当該刺激の長さを決定し、
前記所望状態受付部により受け付けられた前記所望状態が、副交感神経の優位な状態である場合には、前記刺激の開始時点から終了時点にかけて遅くなるように該テンポの変化を決定するように構成されている
ことを特徴とする。
【0015】
あるいは本発明の状態改善装置は、
振動からなる刺激を提供して該ユーザーの心身状態の改善を促す装置であって、
前記ユーザーの心拍を示す情報を取得して、該心拍を示す情報から該ユーザーの心拍のテンポを認識する心拍認識部と、
前記ユーザーによる、該ユーザーが所望する状態を示す所望状態の指定を受け付ける所望状態受付部と、
前記心拍認識部により認識された前記ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポを、該ユーザーに提供する前記刺激のテンポとして決定する刺激内容決定部と、
前記刺激内容決定部により決定されたテンポ及び長さの前記刺激を前記ユーザーに向けて発生させる刺激発生部と、を備え、
前記刺激内容決定部は、
前記心拍認識部により認識された前記ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポを前記刺激の開始時のテンポとして決定するとともに、当該刺激の開始時のテンポに応じて当該刺激の長さを決定し、
前記所望状態受付部により受け付けられた前記所望状態が、交感神経の優位な状態である場合には、前記刺激の開始時点から終了時点にかけて速くなるように該テンポの変化を決定するように構成されている
ことを特徴とする。
【0016】
発明者の研究により、ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポで、ユーザーに提供する刺激に含まれる振動及び音楽を開始し、その後テンポを遅くなるように変化させることにより、副交感神経が優位な状態にユーザーが誘導されやすく、ユーザー状態の改善効果が高まることが分かった。
【0017】
また、ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポで、ユーザーに提供する刺激に含まれる振動及び音楽を開始し、その後テンポを速くなるように変化させることにより、交感神経が優位な状態にユーザーが誘導されやすく、ユーザー状態の改善効果が高まることが分かった。
【0018】
本発明によれば、ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポでユーザーに提供する刺激に含まれる振動及び音楽を開始して、ユーザーが指定した所望状態が、副交感神経が優位な状態であれば、開始後にテンポが遅くなるように変化する振動及び音楽がユーザーに向けて発生されるので、副交感神経が優位な状態にユーザーを効果的に誘導することができる。あるいは、ユーザーが指定した所望状態が、交感神経が優位な状態であれば、その後テンポが速くなるように変化する振動及び音楽がユーザーに向けて発生されるので、交感神経が優位な状態にユーザーを効果的に誘導することができる。
【0019】
そのため、ユーザーが所望する状態が、副交感神経の優位な状態である場合、又は交感神経の優位な状態である場合に、ユーザーが所望する状態に誘導して、効果的にユーザー状態を改善することができる。
【0020】
<試験結果の詳細>
以下に、本発明の状態改善装置を用いたユーザーの心身状態(作業能率、疲労状態、睡眠導入のしやすさ)の改善効果の試験結果を示す。
【0021】
<作業能率及び疲労状態の改善効果>
作業能率及び疲労状態の改善効果に関する試験内容及び結果は以下のとおりである。
【0022】
<作業能率及び疲労状態の改善効果に関する第1の試験>
・試験概要
精神作業負荷により、疲労及びストレスがかかった状態を作る。
その状態での疲労及びストレスに関する指標(疲労感、作業能率、コルチゾール値)を測定した。
測定後、4種の条件のいずれか一つの振動を体験させ、体験後に精神作業負荷前と同様の指標を測定した。
精神作業負荷後(振動体験前)と振動体験後の各指標の変化量(精神作業負荷後より振動体験後で数値が減少した場合は-、増加した場合は+の数値となる)を算出し、比較対象の条件1(振動提示なし)の疲労度に関する回答の平均と条件2または3または4の回答の平均を比較することで疲労状態に対する振動の効果を確認した。
【0023】
・試験の流れ
当日の行動の流れは以下のとおりである。
(1)試験会場に来場し、10分間安静に過ごす。
(2)精神作業負荷を45分実施。
(3)コルチゾール測定のための唾液を0.5mL採取、VASによる疲労感への回答および作業能率評価用課題を実施。
(4)1~4のいずれかの条件の振動を2分間体験。
被検者を4群に分け、群ごとに条件1~4のいずれかを体験させる。
(5)10分間安静に過ごした後にコルチゾール測定のための唾液を0.5mL採取、VASによる疲労感への回答および作業能率評価用課題を実施。
【0024】
・振動体験の条件
振動デバイスを両手で2分間保持し、以下4条件のうちいずれか1つを体験。
条件1 振動が提示されない = 比較対象
条件2 心拍と同期したbpmの心拍様振動が提示される
条件3 心拍に50bpm加算したbpmの心拍様振動が提示される
条件4 心拍から20bpm減算したbpmの心拍様振動が提示される
【0025】
・試験参加者
30-40代 男性 60名
15名ずつ4群に分け、試験条件1~4のいずれかを体験する
【0026】
・試験参加除外条件
手指のケガ等によりデバイスを両手で保持するのが困難なもの
【0027】
・精神作業負荷の具体的方法
2-back課題30分+ATMT(R課題)15分の合計45分間実施した。
(2-back課題)
3秒毎にランダムにアルファベットがパソコン画面上に表示され、現在表示されているアルファベットと2つ前に表示されたアルファベットが同じであれば右クリック、異なっていれば左クリックする短期記憶課題。
(ATMT(R課題))
A~Zまでのアルファベットのうち25文字をパソコン画面上にランダムに表示させ、「R」をクリックするたびに配置が変わる設定とし、「R」を素早くクリックする単純視覚探索反応課題。
【0028】
・疲労感、作業能率、コルチゾールの具体的測定法
(疲労感)
VAS(Visual Analog Scale)法にて主観的な疲労感を測定した。
左端を疲労感全くなし(0)、右端を今まで感じたことのない最大の疲労感(100)として、現在の疲労感の位置をチェックさせる。チェックされた位置を0~100の数値として測定する。
(作業能率の測定)
ATMT(ABC課題)を3セット(約10分)行い、C課題のエラー数を評価に用いる。
(ATMT(ABC課題))
A課題:画面上に固定された11~35の数字を順に押していく課題
B課題:配置は変わらず、ターゲットの数字を押すと、その数字が消えて新たな数字が任意の位置に出現する(例;11を押すと11が消えて、36が出現する)
C課題:ターゲットの数字を押すごとに全ての数字の配置が換わり、数字を順に押していく課題
(コルチゾールの測定)
唾液採取キット(サリペット(ザルスタット(株))を用いて採取する。
キット内のスポンジを口の中に含み、唾液を染み込ませ、スポンジをチューブに回収
遠心分離によって唾液を採取する。
採取した唾液は検査受託会社にてコルチゾール量を測定する。
【0029】
・試験結果
(疲労感)
図1は、条件1~4の疲労感スコアの変化量の平均値を対比したグラフであり、表1は、条件1~4の疲労感スコアの変化量の分析結果である。条件1と比較して条件2で有意に疲労感の減少が確認された。(表脇の「*」は、***p<0.001,**p<0.01,*p<0.05であることを示している。以下同じ。)
【表1】
(作業能率)
図2は、条件1~4のC課題のエラー数の変化量の平均値を対したグラフであり、表2は、条件1~4のC課題のエラー数の変化量の分析結果である。条件1と比較して条件2で有意にエラー数の減少が見られ、作業能率の向上効果が確認された。
【表2】
(コルチゾール)
図3は、条件1~4のコルチゾールの変化量の平均値を対したグラフであり、表3は、条件1~4のコルチゾールの変化量の分析結果である。条件1と比較して条件2で有意にコルチゾールの減少が見られ、ストレス・疲労減少効果が確認された。
【表3】
【0030】
<作業能率及び疲労状態の改善効果に関する第2の試験>
・試験概要
自律神経の状態を測定し、自律神経バランスに応じて、交感神経優位、副交感神経優位、バランスが取れている、のいずれの状態なのかを判断した。
その後、通常時(振動体験前)の疲労及びストレスに関する指標(疲労感、作業能率、コルチゾール値)を測定した。
自律神経バランス状態を考慮して、4種の条件のいずれか一つの振動を体験し、体験後に通常時(振動体験前)と同様の指標を測定した。
通常時(振動体験前)と振動体験後の各指標の変化量を算出し、比較対象の条件1(振動提示なし)の疲労度に関する回答の平均と条件2または3または4の回答の平均を比較することで自律神経状態によって、適した振動を体験することの効果を確認した。
【0031】
・試験の流れ
当日の行動の流れは以下のとおりである。
(1)試験会場に来場し、加速度脈波計にて2分間計測し、自律神経バランスを測定。
(2)コルチゾール測定のための唾液を0.5mL採取。
(3)VASによる疲労感への回答および作業能率評価用課題を実施。
(4)条件1~4のいずれかの条件の振動を2分間体験。
被検者を4群に分け、群ごとに条件1~4のいずれかを体験する。
(5)10分間安静に過ごした後にコルチゾール測定のための唾液を0.5mL採取。
VASによる疲労感への回答および作業能率評価用課題を実施。
【0032】
・振動体験の条件(1)
自律神経バランスの結果に応じて、4つの群に分ける
A:交感神経優位、副交感神経優位、バランス型、すべてのヒトが均等に含まれる
B:交感神経優位のヒト
C:副交感神経優位のヒト
D:バランス型のヒト
・振動体験の条件(2)
振動デバイスを両手で2分間保持し、各群に応じた体験をする。
条件1 対象者:A群 振動が提示されない = 比較対象。
条件2 対象者:B群 心拍と同期したbpmから開始し、50bpmまで2分間かけてbpmが減少していく心拍様振動が提示される。
条件3 対象者:C群 心拍と同期したbpmから開始し、1.5倍のbpmまで2分間かけて増加していく心拍様振動が提示される。
条件4 対象者:D群 心拍と同期したbpmの心拍様振動が2分間固定で提示される。
【0033】
・試験参加者
30-40代 男性 60名
15名ずつ4群に分け、試験条件1~4のいずれかを体験する
【0034】
・試験参加除外条件
手指のケガ等によりデバイスを両手で保持するのが困難なもの
【0035】
・自律神経バランスによる群分けの具体的方法
加速度脈波測定システム(アルテット((株)ユメディカ))にて加速度脈波を測定
a-a間隔の周波数解析によりLF(低周波数成分)/ HF(高周波数成分)を算出
LF/HFの値が2以上の場合を交感神経優位、0.8未満の場合を副交感神経優位、0.8以上2未満の場合をバランス型と判定して、群分けを行う
【0036】
・疲労感、作業能率、コルチゾールの具体的測定法
(疲労感)
VAS(Visual Analog Scale)法にて主観的な疲労感を測定
左端を疲労感全くなし(0)、右端を今まで感じたことのない最大の疲労感(100)として、現在の疲労感の位置をチェック。チェックされた位置を0~100の数値として測定する。
(作業能率の測定)
ATMT(ABC課題)を3セット(約10分)行い、C課題のエラー数を評価に用いる。
(ATMT(ABC課題))
A課題:画面上に固定された11~35の数字を順に押していく課題
B課題:配置は変わらず、ターゲットの数字を押すと、その数字が消えて新たな数字が任意の位置に出現する(例;11を押すと11が消えて、36が出現する)
C課題:ターゲットの数字を押すごとに全ての数字の配置が換わり、数字を順に押していく課題
(コルチゾールの測定)
唾液採取キット(サリペット(ザルスタット(株))を用いて採取する
キット内のスポンジを口の中に含み、唾液を染み込ませ、スポンジをチューブに回収
遠心分離によって唾液を採取する
採取した唾液は検査受託会社にてコルチゾール量を測定する
【0037】
・試験結果
(疲労感)
図4は、条件1~4の疲労感スコアの変化量の平均値を対比したグラフであり、表4は、条件1~4の疲労感スコアの変化量の分析結果である。振動なしの状態と比較し、各人の自律神経状態に合わせた振動刺激の条件2,3,4で有意な疲労感の減少が確認できた。
【表4】
(作業能率)
図5は、条件1~4のC課題のエラー数の変化量の平均値を対したグラフであり、表5は、条件1~4のC課題のエラー数の変化量の分析結果である。振動なしの状態と比較し、各人の自律神経状態に合わせた振動刺激の条件2,3,4で有意なエラー数の低下が確認され、作業能率の改善効果が確認できた。
【表5】
(コルチゾール)
図6は、条件1~4のコルチゾールの変化量の平均値を対したグラフであり、表6は、条件1~4のコルチゾールの変化量の分析結果である。振動なしの状態と比較し、各人の自律神経状態に合わせた振動刺激の条件2,3,4で有意なコルチゾールの低下が見られ、ストレス・疲労の減少効果が確認された。
【表6】
【0038】
<睡眠導入のしやすさの改善効果に関する試験>
・試験概要
就寝前に、心拍様振動が提示されるデバイスを手で2分間保持し、3種の条件のいずれか1つの振動を体験後に就寝。
起床後にセントマリー病院睡眠調査票による主観的睡眠感の評価を行った。
比較対象の条件1(振動提示なし)の回答の平均と条件2および3の回答の平均を比較することで入眠に対する振動の効果を確認した。
【0039】
・試験の流れ
当日の行動の流れは以下のとおりである。
(1)19時までに試験会場に来場
(2)21時までに食事、入浴、着替えを済ませておく
(3)22:45まで安静に過ごす
(4)23時までに 心拍測定用機器を装着し、心拍測定および振動体験
振動体験は被検者を3群に分け、それぞれ条件1~3のいずれかを体験する
(5)23時にベッドに入り、消灯
(6)翌朝6時30分に起床 6時45分から主観的睡眠感の評価を行う
【0040】
・主観的睡眠感の評価
セントマリー病院睡眠調査票より入眠感に関する設問を行い回答してもらう。
(入眠感に関する設問)
昨夜眠りにつくのはどのくらいむずかしかたですか
スコア
1:全然もしくはほとんど難しくなかった
2:少し難しかった
3:かなり難しかった
4:極めて難しかった
【0041】
・振動体験の条件
振動デバイスを両手で2分間保持し、以下3条件のうちいずれか1つを体験
条件1 振動が提示されない=比較対象
条件2 心拍と同期したbpmの心拍様振動が提示される
条件3 心拍と同期したbpmの心拍様振動から開始し、50bpmまで2分間かけてbpmが減少していく振動が提示される
【0042】
・試験参加者
30-40代 男性 30名
10名ずつ3群に分け、試験条件1~3のいずれかを体験する
【0043】
・試験参加除外条件
睡眠に関して医師による治療を行っているもの
市販の睡眠導入、改善をうたう薬剤またはサプリメントを服用しているもの
手指のケガ等によりデバイスを両手で保持するのが困難なもの
【0044】
・試験条件の具体的な提示法
振動デバイスはPCに接続されている。
PCでは条件2または3に応じた振動が提示されるようなプログラムを作動させることによって、保持している振動デバイスを通じて被検者が振動を体験する。
なお、条件2または3を提示するために必要な心拍数の測定は以下のように行う
振動体験の10分前までに心拍測定装置を装着し、安静座位で5分間過ごした後の3分間の平均心拍数(bpm)を測定
【0045】
・試験結果
図7は、条件1~3のスコアの平均値を対比したグラフであり、表7は、条件1~3のスコアの分析結果である。
条件1に対して、条件2の心拍数同期刺激によりスコア改善がみられ、さらに条件3の心拍同期振動から低下する刺激がもっともその効果が高かった。これらのことから心拍数同期させた刺激、より好ましくは心拍数に同期させ、さらに振動数を低下させる刺激による入眠導入効果が確認された。
【表7】
【0046】
<振動と音との組み合わせの刺激によるストレス・疲労の減少効果の試験>
・試験概要
精神作業負荷により、疲労及びストレスがかかった状態を作り、その状態での疲労及びストレスに関する指標(VAS、疲労症状調べ、コルチゾール値)を測定した。
そして、音楽のみの刺激、または音楽と振動との組み合わせの刺激を体験後、これらの指標の変化を比較した。
【0047】
・試験の流れ
当日の行動の流れは以下のとおりである。
(1)試験会場に来場し、10分間安静に過ごす。
(2)疲労及びストレスに関する指標(VAS、疲労症状調べ)を実施し、これを「負荷前」のデータとする。
(3)精神作業負荷を14分実施。
(4)負荷後コルチゾール測定のための唾液を0.5mL採取し、これを「負荷後」のデータとする。
(5)下記のいずれかの条件の刺激を4分間体験。
*振動体験は被検者を3群に分け、群ごとに日にちを変え条件1~3のすべてを体験する。
(6)刺激後にVASおよび疲労症状調べを実施し、これを「刺激後」のデータとする。
(7)10分間休憩後にコルチゾール測定のための唾液を0.5mL採取、VAS、疲労症状調べを実施し、これを「休憩後」のデータとする。
(VAS,疲労症状調べは3回取得、唾液は2回取得)
(8)各項目の変化を3群で比較。
【0048】
・振動体験の条件
振動デバイスを両手で2分間保持し、以下3条件のうちいずれか1つを体験
条件1 音楽のみ(条件2と同じ音楽)
条件2 被験者の心拍と同期した心拍様振動から50bpmまで4分間かけて変化する振動+左記の振動数のテンポと同期した音楽
条件3 刺激なし
【0049】
・試験参加者
30-40代 男性 36名
12名ずつ3群に分け、試験条件1~3のいずれかを体験する。
【0050】
・試験参加除外条件
手指のケガ等によりデバイスを両手で保持するのが困難なもの
【0051】
・精神作業負荷の具体的方法
ATMT(ABC課題、ターゲット1~35)を3セット、2-back課題を5分間、合計14分間。
(ATMT(ABC課題、ターゲット1~35))
A課題:画面上に固定された11~35の数字を順に押していく課題。
B課題:配置は換わらず、ターゲットの数字を押すと、その数字が消えて新たな数字が任意の位置に出現する(11を押すと11が消えて36が出現、12を押すと12が消えて37が出現する)課題。
C課題:ターゲットの数字を押すごとにすべての数字の配置が換わる課題。
(2-back課題)
3秒毎にランダムにアルファベットがパソコン画面上に表示され、現在表示されているアルファベットと2つ前に表示されたアルファベットが同じであれば右クリック、異なっていれば左クリックする短期記憶課題。
【0052】
・VAS、疲労症状調べ、コルチゾールの具体的測定法
(VASの測定)
VAS(Visual Analog Scale)法にてストレス感、緊張度、イライラ感について主観評価を実施。
左端を、全くなし(0)、右端を今まで感じたことのない最大(100)として、現在の位置をチェック。チェックされた位置を0~100の数値として測定する。
(疲労症状調べ)
作業に伴う疲労状態の把握のため、気持ちの疲労、頭の疲労、体の疲労、目の疲労の4つのカテゴリーに関する主観調査を実施。
各カテゴリーで5つの質問があり、それを1「まったくあてはまらない」~5「非常によくあてはまる」までの5段階で点数化し、各カテゴリーで平均点を算出する。
各カテゴリー及び対応する質問は以下のとおりである。
気持ちの疲労: 不安な感じがする、ゆううつな気分だ、おちつかない気分だ、いらいらする、考えがまとまりにくい
頭の疲労: 頭がいたい、頭がおもい、気分がわるい、頭がぼんやりする、めまいがする
体の疲労: 腕がだるい、腰がいたい、手や指がいたい、足がだるい、肩がこる
目の疲労: 目がしょぼつく、目がつかれる、目がいたい、目がかわく、ものがぼやける
(コルチゾールの測定)
唾液採取キット(サリペット(ザルスタット(株))を用いて採取する。
キット内のスポンジを口の中に含み、唾液を染み込ませ、スポンジをチューブに回収。
遠心分離によって唾液を採取する。
採取した唾液は検査受託会社にてコルチゾール量を測定する。
【0053】
・試験結果
表8は、負荷前と刺激後、負荷前と休憩後の、VASの変化を群間比較した結果である。なお、数値が-(マイナス)の場合は、状態が改善したことを表す(以下同じ。)。
前者では条件3との有意な差が条件1も2でもみられる。後者では条件3と条件2の比較でのみ有意な差が確認された(網掛け部)。このことから条件2のストレスに対する効果は条件1より長期間続くと言える。
【表8】
表9は、負荷前と刺激後、負荷前と休憩後の、疲労症状調べの結果の変化を群間比較した結果である。条件3と条件2との比較でのみ有意差を確認した(網掛け部)。条件2のみ疲労症状調べでの効果が確認できた。
【表9】
表10は、負荷後と休憩後の唾液中コルチゾール量の変化を群間比較した結果である。条件3と条件2との間でのみ有意差が認められた。
【表10】
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】ユーザー状態の改善の試験結果を示すグラフ。
図2】ユーザー状態の改善の試験結果を示すグラフ。
図3】ユーザー状態の改善の試験結果を示すグラフ。
図4】ユーザー状態の改善の試験結果を示すグラフ。
図5】ユーザー状態の改善の試験結果を示すグラフ。
図6】ユーザー状態の改善の試験結果を示すグラフ。
図7】ユーザー状態の改善の試験結果を示すグラフ。
図8】本発明の状態改善装置の全体像を示すブロック図。
図9】本発明の状態改善装置の処理内容を示すフローチャート。
図10】本発明の状態改善装置の処理内容を示すフローチャート。
図11】本発明の状態改善装置の処理内容を示すフローチャート。
図12】本発明の状態改善装置が処理に用いるデータの内容を示す図。
図13】本発明の状態改善装置の処理内容を示すフローチャート。
図14】本発明の状態改善装置の処理内容を示すフローチャート。
図15】本発明の状態改善装置の処理内容を示すフローチャート。
図16】本発明の状態改善装置の処理内容の変更例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0055】
<状態改善装置の構成>
まず図8を用いて、本実施形態の状態改善装置の構成について説明する。なお同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略することがある。
【0056】
本実施形態の状態改善装置は、振動からなる刺激を提供してユーザーの心身状態である、例えばユーザーの作業能率、疲労状態、睡眠導入のしやすさ(以下、「ユーザー状態」という。)の改善を促す装置である。
【0057】
本実施形態の状態改善装置は、装置制御部10と、記憶部20と、刺激発生部30とを備え、あるいはさらに撮像部50と、表示部70と、入力部90と、を含んで構成される。状態改善装置の本体としては例えばスマートフォン又はタブレットなどの汎用的な機器が用いられてよいが、専用の端末が用いられてもよい。さらに例えば刺激発生部30など、状態改善装置を構成する機構の一部が状態改善装置の本体から分離した、外付けの装置として備えられていてもよい。
【0058】
装置制御部10は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置、メモリ、及びI/O(Input/Output)デバイスなどにより構成されている。装置制御部10は、所定のプログラムを読み込んで実行することにより、例えば心拍認識部110、刺激内容決定部130として機能し、あるいはさらに自律神経状態認識部150、所望状態受付部170、回答受付部190、ユーザー状態情報取得部210、モード受付部230として機能する。
【0059】
心拍認識部110は、ユーザーの心拍を示す情報を取得して、心拍を示す情報からユーザーの心拍のテンポを認識する。心拍認識部110は、たとえば撮像部50により撮像されたユーザーの顔又は手指の肌の画像に基づいて該ユーザーの心拍を示す情報を認識する。
【0060】
刺激内容決定部130は、心拍認識部110により認識されたユーザーの心拍のテンポと同期するテンポを、ユーザーに提供する刺激である例えば振動及び音のテンポとして決定する。あるいは刺激内容決定部130は、ユーザーの心拍を示す情報、ユーザー状態情報取得部210が取得したユーザー状態情報に含まれる兆候情報又はLF/HF値に関する情報に基づいて、刺激の内容を決定する。
【0061】
また刺激内容決定部130は、ユーザーに提供する刺激である振動と組み合わせてユーザーに提供する例えば音、文字若しくは画像の情報又は香りの内容を決定する。
【0062】
自律神経状態認識部150は、ユーザーの自律神経の状態を認識する。自律神経状態認識部150は例えば、心拍認識部110が取得したユーザーの心拍を示す情報に基づいて、ユーザーの自律神経の状態を認識する。あるいは例えば自律神経状態認識部150は、ユーザーの呼吸、血圧、体温、発汗、排尿その他の状態を示す情報に基づいてユーザーの自律神経の状態を認識してもよい。
【0063】
所望状態受付部170は、ユーザーによる、ユーザーが所望する状態を示す所望状態の指定を、例えば入力部90を介して受け付ける。
【0064】
回答受付部190は、表示部70に表示されているユーザーの顔の状態に関する質問に対するユーザーによる回答の入力を、例えば入力部90を介して受け付ける。
【0065】
ユーザー状態情報取得部210は、回答受付部190により受け付けられた回答に基づいて、ユーザーの顔に現れている該ユーザーの状態を示す兆候情報を含むユーザー状態情報を取得する。あるいはユーザー状態情報取得部210は、心拍認識部110が認識したユーザーの心拍を示す情報に基づく該ユーザーのLF/HF値に関する情報を含むユーザー状態情報を取得する。
【0066】
モード受付部230は、ユーザーの顔の肌の画像に基づいて該ユーザーの心拍数を認識する第1のモードと、該ユーザーの手指の肌の画像に基づいて該ユーザーの心拍数を認識する第2のモードと、を含む動作モードの、該ユーザーによる指定を、例えば入力部90を介して受け付ける。
【0067】
記憶部20は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置により構成されている。
【0068】
記憶部20は、例えばユーザーの心身状態である、作業能率、疲労状態、睡眠導入のしやすさ(以下、「ユーザー状態」という。)を改善するための、振動、あるいはらさらに音、文字、画像、香りの情報からなる刺激の情報を記憶しているほか、状態改善装置の処理結果、状態改善装置の処理に必要な情報を記憶している。なお音とは、例えば音楽、自然音(波、風の音又はこれらを模した合成音を含む。)などである。
【0069】
刺激発生部30は、刺激内容決定部130により決定されたテンポの刺激をユーザーに向けて発生させる機構であり、振動を発生させる例えばバイブレーターなどの振動部310を含んで構成され、あるいはさらに香りを発生させる香り発生部350を含んで構成される。
【0070】
あるいはユーザーに提供される刺激に音が含まれる場合にはスピーカーなどの音再生部40が、文字、画像(静止画又は動画像など)が含まれる場合には表示部70が刺激発生部30として機能する。
【0071】
撮像部50は、例えばユーザーの顔の画像、顔又は手指の肌の画像を取得する、例えばカメラである。
【0072】
表示部70は、例えばディスプレイであり、撮像部50により撮像されたユーザーの顔の画像を表示する。また表示部70は、表示部70に表示されているユーザーの顔の状態に関する質問が文字又は画像で出力される場合には、該質問をユーザーに向けて出力する出力部として機能する。
【0073】
なお、表示部70に表示されているユーザーの顔の状態に関する質問が音声で出力される場合には、音再生部40が出力部として機能する。
【0074】
入力部90は、状態改善装置に対する、ユーザーによる入力を受け付ける、例えばタッチパネルであるが、キーボード、マウスその他のポインティングデバイスである入力機構で構成されていてもよい。
【0075】
<処理の概要>
次に、図9図16を用いて本実施形態の状態改善装置の処理内容について説明する。図9は、本実施形態の状態改善装置の全体的な処理の内容を示している。
【0076】
本実施形態の状態改善装置においては、処理を開始するとまず、所望状態受付部170が、ユーザーによる、ユーザーが所望する状態を示す所望状態の指定を受け付ける(図9/S11)。
【0077】
ユーザーが所望する状態を示す所望状態とは例えば、「交感神経の優位な状態」、「副交感神経の優位な状態」、「作業能率の高い状態」、「疲労が回復した状態」、「睡眠導入しやすい状態」であるが、ユーザーのその他の心身状態が適宜に採用されてよい。
【0078】
その後、撮像部50はユーザーの顔の画像を取得して(図9/S31)、回答受付部190は、ユーザーの顔の状態に関する質問に対するユーザーによる回答の入力を受け付ける(図9/S33)。
【0079】
より具体的には、表示部70が、撮像部50により撮像されたユーザーの顔の画像を表示するとともに、表示部70に表示されているユーザーの顔の状態に関する質問をユーザーに向けて出力する。そして回答受付部190は、ユーザーの顔の状態に関する質問に対するユーザーによる回答の入力を、入力部90を介して受け付ける。
【0080】
なお、当該質問は、ユーザーの顔に現れているユーザーの作業能率、疲労状態、睡眠の質などの心身状態と相関関係を有する質問であり、例えば通常の状態に比した、「目の開き具合」、「目の周りのクマの濃さ」、「ニキビ又は吹き出物の状態」、「口角の上がり具合又は下がり具合」、「唇の潤いの状態」を含んでいる。
【0081】
続いて心拍認識部110が、ユーザーの心拍のテンポを認識する(図9/S35)。例えば心拍認識部110は、撮像部50により撮像されたユーザーの顔の肌の画像に基づいてユーザーの心拍を示す情報を取得する。なおユーザーの顔の肌の画像は、S31の処理において撮像されたものでもよく、例えばS35の処理の開始時点に改めて撮像されてもよい。
【0082】
心拍認識部110がユーザーの顔の肌の画像からユーザーの心拍を示す情報を取得する手法としては既知の種々の手法が用いられてよいが、心拍認識部110は例えば、ユーザーの顔の肌の画像のRGBの各色成分の輝度の変化の情報に含まれる特定の色成分(例えばG(緑))の輝度の変化を所定のアルゴリズムを用いて分析することにより、ユーザーの心拍を示す情報を取得する。
【0083】
そして心拍認識部110は、上記のようにして取得された心拍を示す情報から、ユーザーの心拍のテンポを認識する。心拍認識部110はユーザーの心拍のテンポとして、例えば1分あたりの心拍数(bpm)を認識する。
【0084】
その後必要に応じてユーザー状態情報取得部210は、ユーザー状態情報を取得する処理(図9/S37)を実行するが、当該処理については後述する。
【0085】
そして刺激内容決定部130は、心拍認識部110により認識されたユーザーの心拍のテンポに基づいて、ユーザーに提供する刺激のテンポを決定し(図9/S50)、さらに必要に応じて刺激の内容を決定する(図9/S80)。刺激のテンポ及び内容を決定する処理の詳細については後述する。
【0086】
そして刺激発生部30である、例えば振動部310、あるいは音再生部40が刺激内容決定部130により決定されたテンポの刺激をユーザーに向けて発生させる(図9/S91)ことにより、本実施形態の状態改善装置の一連の処理は終了する。
【0087】
<ユーザー状態情報を取得する処理>
図10を参照して、ユーザー状態情報を取得する処理について説明する。
【0088】
処理を開始すると、自律神経状態認識部150は、ユーザーの自律神経の状態を認識する(図10/S39)。
【0089】
自律神経状態認識部150がユーザーの自律神経の状態を認識する手法としては種々の手法が用いられてよい。すなわち例えばユーザー状態情報生成部311は、心拍認識部110が取得したユーザーの心拍を示す情報に基づいて、心拍の変動を周波数解析して、心拍の変動の低周波成分であるLF(Low Frequency)と高周波成分であるHF(High Frequency)との比(LF/HF)を、自律神経バランス情報として取得する。
【0090】
そしてユーザー状態情報取得部210は、回答受付部190により受け付けられた回答に基づいて、ユーザーの顔に現れているユーザーの状態を示す兆候情報を認識する(図10/S41)。
【0091】
より具体的には例えばユーザー状態情報取得部210は、ユーザーの顔の状態についての各質問に対してユーザーが選択した各選択肢に対応付けられた値を足し合わせた値を、ユーザーの顔に出ているユーザー状態の兆候のスコアとして算出し、当該スコアを兆候情報として認識する。
【0092】
またユーザー状態情報取得部210は、心拍認識部110が認識したユーザーの心拍を示す情報に基づく、ユーザーのLF/HF値に関する情報を認識する(図10/S43)。
【0093】
より具体的には例えばユーザー状態情報取得部210は、自律神経状態認識部150がS39においてユーザーの自律神経の状態として認識したLF/HF値を認識する。
【0094】
またユーザー状態情報取得部210は、LF/HF値を1~10の間の点数で指標化した自律神経バランススコアを決定する。例えば交感神経が優位であるほど当該点数は1に近づき、副交感神経が優位であるほど当該点数は10に近づくように決定される。
【0095】
そしてユーザー状態情報取得部210は、このようにして認識したユーザー状態の兆候のスコア及び自律神経バランススコアを、ユーザー状態情報として取得して(図10/S45)ユーザー状態情報を取得する処理を終了する。
【0096】
<刺激のテンポの決定処理>
まず図11を参照して、所望状態受付部170が受け付ける所望状態が「交感神経の優位な状態」、「副交感神経の優位な状態」である場合について説明する。
【0097】
処理を開始すると刺激内容決定部130は、まず心拍認識部110により認識されたユーザーの心拍のテンポと同期するテンポを刺激である振動の開始時のテンポとして決定する(図11/S51)。
【0098】
なお、「ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポ」とは、ユーザーの心拍のテンポと完全に一致することのみを意味するものではない。すなわち例えばユーザーの心拍のテンポが85~89bpmである場合には85bpmを刺激のテンポとして決定するというように、ある範囲の心拍のテンポに対応する刺激のテンポとしてあらかじめ定められたテンポを認識して、当該認識したテンポを刺激のテンポとして決定するように構成されていてもよい。
【0099】
その後に刺激内容決定部130は、所望状態受付部170により受け付けられた所望状態を判定する(図11/S53)。
【0100】
刺激内容決定部130は、所望状態受付部170により受け付けられた所望状態が、「交感神経の優位な状態」である場合には、刺激の開始時点から終了時点にかけて例えば段階的に速くなるように該テンポの変化を決定する(図11/S55)。
【0101】
より具体的には、例えば刺激内容決定部130は、記憶部20にあらかじめ記憶されている、図12に示すようなテーブルを参照して、刺激の開始時点から終了時点にかけてテンポが速くなるように変化を決定する場合の、終了時点のテンポが「ユーザーの心拍のテンポの150%」であると認識する。
【0102】
そして、例えばユーザーの心拍のテンポ(すなわち刺激の開始時のテンポ)が55bpmである場合には、55bpm×150%=82.5bpmを刺激の終了時点のテンポとして決定する。
【0103】
一方、刺激内容決定部130は、所望状態受付部170により受け付けられた所望状態が、「副交感神経の優位な状態」である場合には、刺激の開始時点から終了時点にかけて例えば段階的に遅くなるように該テンポの変化を決定する(図11/S57)。
【0104】
より具体的には、例えば刺激内容決定部130は、記憶部20にあらかじめ記憶されている、図12に示すようなテーブルを参照して、刺激の開始時点から終了時点にかけてテンポが遅くなるように変化を決定する場合の、終了時点のテンポが「ユーザーの心拍のテンポの80%」であると認識する。
【0105】
そして例えば刺激内容決定部130は、ユーザーの心拍のテンポ(すなわち刺激の開始時のテンポ)が75bpmである場合には、75bpm×80%=60bpmを刺激の終了時点のテンポとして決定する。
【0106】
このようにして刺激内容決定部130は、刺激の開始時点から終了時点にかけてテンポが遅くなるように変化を決定する場合には、心拍認識部110により認識されたユーザーの心拍のテンポよりも所定程度遅いテンポを刺激の終了時点のテンポとするように該変化を決定し、刺激の開始時点から終了時点にかけて該テンポが速くなるように変化を決定する場合には、心拍認識部110により認識されたユーザーの心拍のテンポよりも所定程度速いテンポを該刺激の終了時点のテンポとするように該変化を決定する。
【0107】
なお刺激内容決定部130は、例えば記憶部20にあらかじめ記憶されている、図12に示すようなテーブルを参照して、刺激の開始時点から終了時点にかけてテンポが速くなるように変化を決定する場合の上限値(又は刺激の開始時点から終了時点にかけてテンポが遅くなるように変化を決定する場合の下限値)を認識して、所定の上限値以下の速さ(又は下限値以上の速さ)のテンポを該刺激の終了時点のテンポとするように該変化を決定するように構成されていてもよい。
【0108】
そして刺激内容決定部130は、刺激の開始時点及び終了時点のテンポを決定するとともに、刺激の開始時点のテンポから終了時点のテンポまでどのように変化させるかを併せて決定する。
【0109】
すなわち例えば、刺激の開始時点のテンポが65bpmであって、終了時点のテンポが55bpmである場合には、刺激内容決定部130は、65bpmのテンポの刺激を20秒、60bpmのテンポの刺激を20秒、55bpmのテンポの刺激を80秒発生させると決定する。この場合の刺激の長さは120秒となる。
【0110】
あるいは刺激の開始時点のテンポが70bpmであって、終了時点のテンポが55bpmである場合には、刺激内容決定部130は、70bpmのテンポの刺激を10秒、65bpmのテンポの刺激を20秒、60bpmのテンポの刺激を20秒、55bpmのテンポの刺激を70秒発生させると決定する。この場合の刺激の長さも120秒となる。
【0111】
あるいは例えば刺激の開始時点のテンポが90bpmであって、終了時点のテンポが55bpmである場合には、刺激内容決定部130は、90bpmのテンポの刺激を10秒、85bpmのテンポの刺激を10秒、80bpmのテンポの刺激を10秒、75bpmのテンポの刺激を10秒、70bpmのテンポの刺激を10秒、65bpmのテンポの刺激を20秒、60bpmのテンポの刺激を20秒、55bpmのテンポの刺激を60秒発生させると決定する。この場合の刺激の長さは150秒となる。
【0112】
このように刺激内容決定部130は、ユーザーの心拍のテンポ(すなわち刺激の開始時点のテンポ)に応じて刺激の長さが異なるように決定してもよい。
【0113】
刺激内容決定部130は例えば、記憶部20にあらかじめ記憶されている、ユーザーの心拍のテンポ(又は刺激の開始時点のテンポ)と、上記のようなテンポの変化のさせ方、刺激の長さなど、との対応関係を示す情報を参照して、刺激の開始時点のテンポから終了時点のテンポまでどのように変化させるかを決定する。
【0114】
次に、図13を参照して、所望状態受付部170が受け付ける所望状態が「睡眠導入しやすい状態」、「作業能率の高い状態」、「疲労が回復した状態」である場合について説明する。
【0115】
この場合、S51の処理の後に、刺激内容決定部130は、所望状態受付部170により受け付けられた所望状態を判定して(図13/S53)、所望状態受付部170により受け付けられた所望状態が、「睡眠導入しやすい状態」である場合には、刺激の開始時点から終了時点にかけて遅くなるように該テンポの変化を決定して(図13/S59)テンポの決定処理を終了する。
【0116】
すなわち例えば刺激内容決定部130は、刺激の開始時点のテンポが65bpmであって、終了時点のテンポが50bpmである場合には、刺激内容決定部130は、65bpmのテンポの刺激を30秒、60bpmのテンポの刺激を32秒、55bpmのテンポの刺激を35秒、50bpmのテンポの刺激を130秒発生させると決定する。本実施形態における刺激の長さは約4分と、所望状態が「作業能率の高い状態」又は「疲労が回復した状態」である場合(後述)に比して長くなるように決定される。そして、刺激の終了時点のテンポ(上記においては50bpm)に変化させる前の各段階のテンポ(65bpm~55bpm)で刺激を発生させる時間それぞれの長さ(30秒~35秒)よりも、終了時点のテンポで刺激を発生させる時間の長さ(130秒)が長くなるように、テンポの変化が決定される。また、終了時のテンポで刺激を提供している時間(130秒)は、それ以前の時間の合計(97秒)よりも長くなるように決定される。なお、各段階間のテンポの変化の大きさ、各段階の長さ、刺激全体の長さは、適宜に設定されてよい(以下同じ。)。
【0117】
一方、所望状態受付部170により受け付けられた所望状態が、「作業能率の高い状態」又は「疲労が回復した状態」である場合には、刺激内容決定部130はさらに、ユーザーの自律神経状態を判定する(図13/S61)。
【0118】
すなわち例えば刺激内容決定部130は、自律神経状態認識部150により、ユーザーの自律神経の状態が、交感神経の優位な状態にあると認識された場合には、刺激の開始時点から終了時点にかけて遅くなるようにテンポの変化を決定して(図13/S63)テンポの決定処理を終了する。
【0119】
より具体的には例えば刺激内容決定部130は、ユーザーのLF/HF値が2.0以上である場合に、ユーザーの自律神経の状態が交感神経の優位な状態にあると認識する。そして、刺激の開始時点のテンポが65bpmであって、終了時点のテンポが50bpmである場合には、刺激内容決定部130は、刺激を65bpmのテンポで開始して、その後2分の間に時間の経過に伴って同一の減速度(すなわちマイナスの加速度)で直線的に50bpmまでテンポを遅くして刺激を止めると決定する。
【0120】
一方、自律神経状態認識部150により、ユーザーの自律神経の状態が、副交感神経の優位な状態にあると認識された場合には、刺激の開始時点から終了時点にかけて速くなるようにテンポの変化を決定して(図13/S65)テンポの決定処理を終了する。
【0121】
すなわち例えば刺激内容決定部130は、ユーザーのLF/HF値が0.8未満である場合に、ユーザーの自律神経の状態が副交感神経の優位な状態にあると認識する。そして、刺激の開始時点のテンポが50bpmであって、終了時点のテンポが75bpmである場合には、刺激内容決定部130は、50bpmのテンポの刺激を24秒、56.3bpmのテンポの刺激を24秒、62.5bpmのテンポの刺激を24秒、68.75bpmのテンポの刺激を24秒、75bpmのテンポの刺激を24秒、発生させて、すなわち段階的に速くなるようにテンポを速くして、刺激を止めると決定する。
【0122】
続いて、図14を参照して、自律神経状態に応じて、刺激のテンポの変化を決定する場合について説明する。
【0123】
この場合、S51の処理の後に、刺激内容決定部130は、ユーザーの自律神経状態を判定する(図14/S67)。
【0124】
すなわち例えば刺激内容決定部130は、自律神経状態認識部150により、ユーザーの自律神経の状態が、交感神経の優位な状態にあると認識された場合には、刺激の開始時点から終了時点にかけて遅くなるようにテンポの変化を決定して(図14/S69)テンポの決定処理を終了する。
【0125】
あるいは例えば刺激内容決定部130は、自律神経状態認識部150により、ユーザーの自律神経の状態が、バランスの取れた状態にあると認識された場合には、刺激の開始時点から終了時点までテンポを維持することを決定して(図14/S71)テンポの決定処理を終了する。
【0126】
そして例えば刺激内容決定部130は、自律神経状態認識部150により、ユーザーの自律神経の状態が、副交感神経の優位な状態にあると認識された場合には、刺激の開始時点から終了時点にかけて速くなるようにテンポの変化を決定して(図14/S73)テンポの決定処理を終了する。
【0127】
より具体的には例えば刺激内容決定部130は、ユーザーのLF/HF値が2.0以上の場合に、ユーザーの自律神経の状態が交感神経の優位な状態にあると認識する。この場合の刺激のテンポの決定内容は、例えば上述の図13/S63の場合と同様である。
【0128】
あるいは例えば刺激内容決定部130は、ユーザーのLF/HF値が0.8以上かつ2.0未満である場合に、ユーザーの自律神経の状態がバランスの取れた状態にあると認識する。そして、刺激の開始時点のテンポ(例えば60bpm)の刺激を120秒発生させると決定する。
【0129】
また例えば刺激内容決定部130は、ユーザーのLF/HF値が0.8未満である場合に、ユーザーの自律神経の状態が副交感神経の優位な状態にあると認識する。この場合の刺激のテンポの決定内容は、例えば上述の図13/S65の場合と同様である。
【0130】
なお、上記のいずれのケースにおいても、ユーザーに向けて発生させる刺激が振動と音との組み合わせからなる場合には、刺激内容決定部130は、ユーザーに提供する刺激に含まれる振動及び音のテンポが相互に同期するようにテンポを決定する。
【0131】
すなわち例えば振動及び音が同時に開始して同時に終了するのであれば、振動及び音の開始時点のテンポは心拍認識部110により認識されたユーザーの心拍のテンポと同期しており、振動及び音の終了時点のテンポはともに刺激内容決定部130が決定した同一のテンポとなる。
【0132】
あるいは例えば刺激に含まれる振動が先に開始され、音が途中で開始される場合には、音の開始時点のテンポは、音が開始される時点の振動のテンポと同一になるように刺激内容決定部130により決定される。振動及び音の一方が先に終了し、他方が後で終了する場合も同様に、振動と音のテンポが同期するようにこれらのテンポが刺激内容決定部130により決定される。
【0133】
<刺激の内容の決定処理>
図15を参照して、刺激の内容の決定処理について説明する。
【0134】
処理を開始すると、刺激内容決定部130は、ユーザー状態情報に含まれる兆候情報及び自律神経状態情報の一方又は両方が所定の状態であるか否かを判定して(図15/S83)、ユーザー状態情報に含まれる兆候情報及び自律神経状態情報の一方又は両方が所定の状態である場合には、刺激の発生中に行う所定の行動であって、ユーザーの作業能率向上、疲労状態の改善、睡眠の促進などの、ユーザーの心身状態の改善効果を有する行動をユーザーに促す情報を決定する(図15/S85)。
【0135】
刺激内容決定部130は例えば、ユーザー状態情報に含まれる自律神経バランススコアが4以下かつ、ユーザー状態の兆候のスコアが6以上である場合(すなわち、交感神経が優位で、顔に出ているユーザー状態の兆候から見て状態が良好である場合)に、ユーザーが所定の状態にあると判定し、それ以外の場合には所定の状態にないと判定する。
【0136】
刺激内容決定部130は、例えば記憶部20にあらかじめ記憶されている、自律神経バランススコア及びユーザー状態の兆候のスコアの一方又は両方と、所定状態にあるか否かとの対応関係を示す情報を参照して、ユーザーが所定状態にあるか否かを判定する。
【0137】
「所定の行動であって、ユーザーの心身状態の改善効果を有する行動をユーザーに促す情報」とは、例えば一定間隔で変化する「振動を感じながら簡単なマインドフルネス瞑想をやってみましょう」、「背筋を伸ばし姿勢を正しましょう」、「肩の力を抜きゆっくりと鼻呼吸をしましょう」などの、所定の動作又は所定の方法での呼吸又は瞑想を促す文章の組み合わせである。
【0138】
このようにして刺激内容決定部130は、ユーザー状態情報に含まれる兆候情報及び自律神経状態情報の一方又は両方に基づいて、刺激の内容を決定する。
【0139】
一方、刺激内容決定部130は、ユーザー状態情報に含まれる兆候情報及び自律神経状態情報の一方又は両方が所定の状態でない場合には、刺激の発生中に行う所定の行動をユーザーに促す情報を決定する処理を実行しない。
【0140】
そして、刺激内容決定部130により刺激の発生中に行う所定の行動をユーザーに促す情報が決定された場合には、振動部310(及び音再生部40)が刺激をユーザーに向けて発生させている時間の全部又は一部にわたって、刺激内容決定部130が決定した情報が出力される。
【0141】
すなわち例えば所定の動作又は所定の方法での呼吸又は瞑想を促す文章が文字又は画像の情報として刺激内容決定部130により決定されている場合には表示部70が当該文字又は画像を表示し、当該文章が音声として決定されている場合には、音再生部40が当該音声を再生することにより出力される。
【0142】
そして刺激内容決定部130は、必要に応じて心拍認識部110が取得したユーザーの心拍を示す情報に基づいて、振動の刺激と組み合わせてユーザーに提供する画像の情報又は香りの内容を決定する(図15/S87)。
【0143】
刺激と組み合わせてユーザーに提供する画像の情報又は香りとは、例えば所望状態受付部170により受け付けられた所望状態に応じた画像又は香りである。すなわち例えば所望状態が交感神経の優位な状態である場合には交感神経の優位な状態をイメージできる画像又は香りが、記憶部20にあらかじめ記憶されている画像又は香りの一覧の中から刺激内容決定部130によって選択される。
【0144】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これに限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0145】
すなわち例えば撮像部50はユーザーの顔の肌の画像に加えて又は替えて、手指の肌の画像を撮像するように構成され、心拍認識部110は、撮像部50により撮像されたユーザーの手指の肌の画像に基づいてユーザーの心拍を示す情報を認識するように構成されていてもよい。
【0146】
状態改善装置を利用しようとするユーザーが置かれている状況はさまざまである。例えば夜間に自宅で寝る前や、ユーザーが一人でいる場合などに状態改善装置を利用するのであれば、顔を撮像して顔の肌の画像からユーザーの心拍を取得することに抵抗感はあまり生じさせないと考えられる。しかし昼間、職場や外出先などの人目のある場所で状態改善装置を利用するのであれば、顔を撮像することに抵抗感を持ち、状態改善装置の利用を躊躇してしまう可能性がある。
【0147】
本実施形態によれば、顔の肌の画像と、指の肌の画像のいずれを取得させるかを、ユーザーが指定することができるので、ユーザーが置かれている状況に応じた状態改善装置の使い方を選択でき、便利である。
【0148】
当該実施形態の状態改善装置による処理の流れを、図16を参照して説明する。本実施形態においては、処理を開始すると、所望状態受付部170が所望状態の指定を受け付けた(図16/S11)後に、モード受付部230が動作モードの指定を受け付ける(図16/S11)。
【0149】
動作モードとは、ユーザーの顔の肌の画像に基づいてユーザーの心拍のテンポを認識する第1のモードと、ユーザーの手指の肌の画像に基づいて該ユーザーの心拍のテンポを認識する第2のモードである。
【0150】
そしてモード受付部230は、指定されたモードが第1のモードと第2のモードとのいずれであるかを判定する(図16/S15)。指定されたモードが第1のモードである場合には、S31以降の処理が実行される。当該処理の内容は、図9の場合と同様であるため説明を省略する。
【0151】
一方、指定されたモードが第2のモードである場合には、まず撮像部50がユーザーの手指の肌の画像を取得して(図16/S131)、心拍認識部110が撮像部50により撮像されたユーザーの手指の肌の画像に基づいてユーザーの心拍を示す情報を取得する(図16/S133)。
【0152】
心拍認識部110は例えば、ユーザーの顔の肌の画像からユーザーの心拍を示す情報を取得する手法と同様の手法でユーザーの手指の肌の画像からユーザーの心拍を示す情報を取得する。
【0153】
そして心拍認識部110が上記のようにして取得された心拍を示す情報から、ユーザーの心拍のテンポを認識して(図16/S135)、ユーザー状態情報取得部210がユーザー状態情報を取得する(図16/S137)。
【0154】
そして刺激内容決定部130は、心拍認識部110により認識されたユーザーの心拍のテンポに基づいて、ユーザーに提供する刺激のテンポを決定し(図16/S150)、さらに必要に応じて刺激の内容を決定する(図16/S180)。
【0155】
なおS135~S180の処理の内容は、ユーザーの顔の状態に関する質問に対するユーザーによる回答の入力を受け付ける処理(図9/S33、図16/S33)が行われないことを除いてほぼ同一であるため、説明を省略する。
【0156】
そして刺激発生部30が刺激内容決定部130により決定されたテンポの刺激をユーザーに向けて発生させる(図16/S91)ことにより、本実施形態の状態改善装置の一連の処理は終了する。
【符号の説明】
【0157】
10…装置制御部、20…記憶部、30…刺激発生部、40…音再生部、50…撮像部、70…表示部、90…入力部、110…心拍認識部、130…刺激内容決定部、150…自律神経状態認識部、170…所望状態受付部、190…回答受付部、210…ユーザー状態情報取得部、230…モード受付部、310…振動部、350…香り発生部。
【要約】
【課題】振動等を活用した、ユーザーに効果的に振動の刺激を与えて、ユーザーの心身状態を十分に改善ができる状態改善装置を提供する。
【解決手段】状態改善装置は、振動からなる刺激を提供して該ユーザーの心身状態の改善を促す装置であって、前記ユーザーの心拍を示す情報を取得して、該心拍を示す情報から該ユーザーの心拍のテンポを認識する心拍認識部と、前記心拍認識部により認識された前記ユーザーの心拍のテンポと同期するテンポを、該ユーザーに提供する前記刺激のテンポとして決定する刺激内容決定部と、前記刺激内容決定部により決定されたテンポの前記刺激を前記ユーザーに向けて発生させる刺激発生部と、を備える。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16