(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-20
(45)【発行日】2022-09-29
(54)【発明の名称】超硬合金製切断刃
(51)【国際特許分類】
B26D 1/06 20060101AFI20220921BHJP
B26D 1/00 20060101ALI20220921BHJP
B23D 35/00 20060101ALI20220921BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20220921BHJP
H01G 13/00 20130101ALN20220921BHJP
【FI】
B26D1/06 Z
B26D1/00
B23D35/00 A
H01G4/30 311A
H01G13/00 391H
(21)【出願番号】P 2022500070
(86)(22)【出願日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 JP2021021204
(87)【国際公開番号】W WO2021256281
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-01-04
(31)【優先権主張番号】P 2020105771
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220103
【氏名又は名称】株式会社アライドマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 達矢
(72)【発明者】
【氏名】小林 篤史
【審査官】山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-217181(JP,A)
【文献】特開2002-086387(JP,A)
【文献】特開2001-158016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/06
B26D 1/00
B23D 35/00
H01G 4/30
H01G 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基部と、
前記基部の延長線上に設けられ、最先端部である刃先に向けて厚みが薄くなる形状を有する刃部とを備え、
前記刃先から前記基部に向けて3μmの位置の前記刃部の厚みが0.26μm以上7.00μm以下であり、
前記刃先から前記基部に向けてXμm(Xは3から25の整数)の位置の前記刃部の厚みをTX、前記刃先から前記基部に向けてX+1μmの位置の前記刃部の厚みをTX1としたとき、刃厚変化量TX1-TXが前記Xが3から25のすべての整数において0.08μm以上1.85μm以下であり、
刃渡り方向に直交する縦断面において前記刃先から前記基部に向けて25μmの範囲において前記刃部の外形が内方向に凹の部分を有し、前記凹の部分は前記刃先および前記刃先から前記基部に向けて25μmの位置を結ぶ直線よりも内側に位置する、超硬合金製切断刃。
【請求項2】
前記Xが3である場合の前記刃厚変化量が0.26μm以上0.93μm以下である、請求項1に記載の超硬合金製切断刃。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超硬合金製切断刃に関する。本出願は、2020年6月19日に出願した日本特許出願である特願2020-105771号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
従来、切断刃は、たとえば特開平10-217181号公報(特許文献1)、特開2001-158016号公報(特許文献2)、国際公開第2014/050883号(特許文献3)、国際公開第2014/050884号(特許文献4)、特開2017-42911号公報(特許文献5)および特開2004-17444号公報(特許文献6)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-217181号公報
【文献】特開2001-158016号公報
【文献】国際公開第2014/050883号
【文献】国際公開第2014/050884号
【文献】特開2017-42911号公報
【文献】特開2004-17444号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の超硬合金製切断刃は、基部と、基部の延長線上に設けられ、最先端部である刃先に向けて厚みが薄くなる形状を有する刃部とを備え、刃先から基部に向けて3μmの位置の刃部の厚みが0.26μm以上7.00μm以下であり、刃先から基部に向けてXμm(Xは3から25の整数)の位置の刃部の厚みをTX、刃先から基部に向けてX+1μmの位置の刃部の厚みをTX1としたとき、刃厚変化量TX1-TXがXが3から25のすべての整数において0.08μm以上1.85μm以下であり、刃渡り方向に直交する縦断面において刃先から基部に向けて25μmの範囲において刃部の外形が内方向に凹の部分を有し、凹の部分は刃先および刃先から基部に向けて25μmの位置を結ぶ直線よりも内側に位置する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、実施の形態1に従った超硬合金製切断刃1の縦断面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態2に従った超硬合金製切断刃1の縦断面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態3に従った超硬合金製切断刃1の縦断面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態4に従った超硬合金製切断刃1の縦断面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態5に従った超硬合金製切断刃1の縦断面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態6に従った超硬合金製切断刃1の縦断面図である。
【
図7】
図7は、実施の形態7に従った超硬合金製切断刃1の縦断面図である。
【
図8】
図8は、切断試験を説明するための装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
一般的な刃面がストレートな刃では、切断物との接触面積が大きく、切断抵抗が大きい為、切断真直性(いかにまっすぐに切断物を切れるか)に乏しく、断面荒れを起こしやすい問題があった。
【0007】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0008】
[本開示の実施形態の詳細]
(材質)
切断刃に用いた材質はタングステンカーバイドとコバルトを主成分とした超硬合金である。超硬合金に使用されるコバルトの含有率は3~25質量%の範囲である。コバルトの含有率は5~20%の範囲であることが好ましい。
【0009】
超硬合金の硬度はHRA(ロックウェル硬度)で82~95の範囲である。超硬合金中を構成する元素の組成の特定は、ICP発光分光分析、Co滴定によって行う。本開示における超硬合金において、主成分がタングステンカーバイドおよびコバルトである。その他、粒度等の特性調整の為、クロム、バナジウム、タンタル、ニオブ等の元素を含む場合もある。
【0010】
超硬合金中のタングステンカーバイド結晶の大きさが0.1μm~4μmであることが好ましい。結晶の大きさが2μm以下がより好ましい。
【0011】
また、タングステンカーバイトの結晶粒を制御するため結晶粒成長抑制のためタンタルを主成分とする化合物を有していてもよい。その含有率が0.1~2質量%であることが好ましい。結晶粒成長を抑制するための添加剤はバナジウムを主成分とする化合物、クロムを主成分とする化合物であってもよい。タンタルを主成分とする化合物、バナジウムを主成分とする化合物およびクロムを主成分とする化合物の各々の含有率が0.1~2質量%となる。
【0012】
(形状)
切断刃の形状は基本的に矩形の板形状である。板の最も短い辺を厚さとする。
【0013】
超硬合金製切断刃は、基部と、基部の延長線上に設けられ、最先端部である刃先に向けて厚みが薄くなる形状を有する刃部とを備える。
【0014】
基部の厚さは一定であることが好ましい。基部は50~1000μmの厚みがあり切断される切断物の大きさにより必要とされる厚みが変わる。また切断を行う刃部は基部から延長される一辺に形成される。基部から刃部に向かう方向の刃部の寸法を刃部の幅(Z軸方向)と表す。刃渡り方向長さ(X軸方向)および刃部の幅方向に対して垂直な方向の寸法を刃部の厚み(Y軸方向)と表す。
【0015】
切断刃として使用される多くの場合、刃渡り方向長さは30mm~500mmが多く使用され、幅は10~30mmで使用される場合が多い。
【0016】
刃先から基部に向けて3μmの位置の刃部の厚みが0.26μm以上7.00μm以下である。この位置での刃部の厚みが0.26μm未満であれば刃部の強度を維持することが困難となる。または薄すぎて製造不可となる。この位置での刃部の厚みが7.00μmを超えると切断抵抗が大きくなる。
【0017】
刃先から基部に向けてXμm(Xは3から25の整数)の位置の刃部の厚みをTX、刃先から基部に向けてX+1μmの位置の刃部の厚みをTX1としたとき、刃厚変化量TX1-TXが、Xが3から25のすべての整数において0.08μm以上1.85μm以下である。刃厚変化量が0.08μm未満であれば十分な刃部の強度が得られず欠ける。刃厚変化量が1.85μmを超えると切断抵抗が大きくなる。
【0018】
刃渡り方向に直交する縦断面において刃先から25μmの範囲において刃部の外形が内方向に凹の部分を有し、凹の部分は刃先および刃先から25μmの位置を結ぶ直線よりも内側に位置する。凹の部分が存在することで凹の部分が存在しないストレート形状の切断刃と比較して切断物との接触面積が小さく、切断抵抗が小さくなる為、切断真直性並びに断面荒れの問題を解決できる。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に従った超硬合金製切断刃1の縦断面図である。
図1で示すように、超硬合金製切断刃1は刃渡り方向に延びる刃先121tを有する。
図1は、刃渡り方向に直交する方向の断面である。
【0020】
超硬合金製切断刃1は、基部110と、基部110に接続される刃部120とを有する。刃部120は第一部分121を有する。第一部分121の最先端部分が刃先121tである。
【0021】
基部110から刃先121tに向かって、刃部120の厚み(Y軸方向)は徐々に減少している。刃先121tからの長さ方向(Z軸方向)の寸法が3μmの点203での厚みはT1である。刃先121tからの長さ方向の寸法が25μmの点225での厚みはT2である。刃先121tからの長さ方向の寸法がXμmの点20Xでの厚みはTXである。刃先121tからの長さ方向の寸法がX+1μmの点20X1での厚みはTX1である。
【0022】
点225と刃先121tとを結ぶ直線Sよりも内側に凹120uが位置している。凹120uは外表面121sに設けられている。点225における外表面121sにおいて直線325を引き、2つの直線325がなす角度をθとする。直線325の傾きは点225における刃厚変化量の1/2の値である。Y軸およびZ軸方向に直交する方向が刃渡り方向である。
【0023】
外表面121sは湾曲した形状である。刃部120における刃厚変化量は刃先121tに近づくにつれて小さくなる。この実施の形態では、外表面121sは中心線Cに対して左右対称である。しかしながら、外表面121sは中心線Cに対して左右非対称であってもよい。
【0024】
外表面121sはなだらかに湾曲して刃先121tと基部110とを接続している。刃先121tに近づくにつれて外表面121sと中心線Cとのなす角度は小さくなる。刃部120のうちZ軸方向に3から25μmの範囲のみが湾曲していて湾曲部分よりも基部110側が直線形状であってもよい。
【0025】
超硬合金製切断刃1の切断対象物は、たとえば、積層コンデンサ若しくは積層インダクタなどの焼成前のセラミックまたはガラス、金属製のグリーンシート、金属箔、紙、繊維、または、硬質樹脂などである。
【0026】
超硬合金製切断刃1は、基部110と、基部110の延長線上に設けられ、最先端部である刃先121tに向けて厚みが薄くなる形状を有する刃部120とを備える。刃先121tから基部110に向けて3μmの位置の刃部120の厚みT1が0.26μm以上7.00μm以下である。刃先121tから基部110に向けてXμm(Xは3から25の整数)の位置の刃部の厚みをTX、刃先121tから基部110に向けてX+1μmの位置の刃部120の厚みをTX1としたとき、刃厚変化量TX1-TXがXが3から25のすべての整数において0.08μm以上1.85μm以下である。刃渡り方向に直交する縦断面において刃先121tから25μmの範囲において刃部120の外形が内方向に凹の部分を有し、凹120uの部分は刃先121tおよび刃先121tから25μmの位置を結ぶ直線Sよりも内側に位置する。
【0027】
より好ましくは、Xが3である場合の刃厚変化量が0.26μm以上0.93μm以下である。
【0028】
(実施の形態2)
図2は、実施の形態2に従った超硬合金製切断刃1の縦断面図である。
図2で示すように、実施の形態2に従った超硬合金製切断刃1においては、外表面121s、122s、123sが3段形状となっている点において、外表面121sが湾曲している実施の形態1に従った超硬合金製切断刃1と異なる。3段の刃部120の外表面121s、122s、123sは、いずれも直線形状である。外表面121s,122s,123sが中心線Cに対してなす角度は、外表面121sにおいて、外表面122sに近い部分において最も大きく、外表面123sまたは、刃先121tに近い外表面121sにおいて最も小さい。
【0029】
刃先121tからZ軸方向の距離が25μmの点225は第一部分121に存在する。この実施の形態では凹120uは角形状であるが、凹120uが曲線形状であってもよい。
【0030】
(実施の形態3)
図3は、実施の形態3に従った超硬合金製切断刃1の縦断面図である。
図3で示すように、実施の形態3に従った超硬合金製切断刃1においては、外表面121s、122sが2段である点において、外表面121s、122s、123sが3段となっている実施の形態2に従った超硬合金製切断刃1と異なる。
【0031】
刃部120は先端側から第一部分121および第二部分122を有する。外表面121sは凹120uを有する。凹120uは、直線Sよりも内側に位置している。外表面121sが中心線Cに対してなす角度は、刃先121t付近において最も小さい。
【0032】
(実施の形態4)
図4は、実施の形態4に従った超硬合金製切断刃1の縦断面図である。
図4で示すように、実施の形態4に従った超硬合金製切断刃1においては、外表面122sが凹面形状である点において、外表面122sが直線形状となっている実施の形態3に従った超硬合金製切断刃1と異なる。刃先121tからZ軸方向の距離が25μmの点225は第一部分121に存在する。
【0033】
刃部120は先端側から第一部分121および第二部分122を有する。第一部分121に凹120uが存在する。凹120uは、直線Sよりも内側に位置している。
【0034】
刃部120の第二部分122の外表面122sは刃先121tに近づくにつれて中心線Cとのなす角度が小さくなるように湾曲している。
【0035】
(実施の形態5)
図5は、実施の形態5に従った超硬合金製切断刃1の縦断面図である。
図5で示すように、実施の形態5に従った超硬合金製切断刃1においては、刃先121tが平坦な形状である点において、実施の形態1に従った超硬合金製切断刃1と異なる。刃先121tを構成する平坦面は、中心線Cに対して垂直であってもよく、中心線Cに対して傾斜していてもよい。
【0036】
(実施の形態6)
図6は、実施の形態6に従った超硬合金製切断刃1の縦断面図である。
図6で示すように、実施の形態6に従った超硬合金製切断刃1においては、刃先121tが丸められている点において、刃先121tが尖っている実施の形態1に従った超硬合金製切断刃1と異なる。刃先121tの曲率半径は単一であってもよい、刃先121tの曲率半径は複数存在して、いわゆる複合R形状とされていてもよい。
【0037】
(実施の形態7)
図7は、実施の形態7に従った超硬合金製切断刃1の縦断面図である。
図7で示すように、実施の形態7に従った超硬合金製切断刃1においては、刃先121t近傍の第一部分121では外表面121sが内に凹の形状であり、刃先121tから離れた第二部分122では外表面122sが凹面形状である。刃先121tからZ軸方向の距離が25μmの点225は第一部分121に存在する。
【0038】
(実施例1)
基部110の厚み100μm、幅20mm、刃渡り方向の長さ40mmの超硬合金製切断刃1を用いてその特性を確認した。
【0039】
<素材>
切断刃に用いた焼結体はタングステンカーバイドとコバルトを主成分とした超硬合金である。超硬合金に使用されるコバルトの含有率は10質量%である。超硬合金の硬度はHRA(ロックウェル硬度)で92である。
【0040】
<研磨>
製造された焼結体はダイヤモンド砥石を用いた研削機により厚さ100μm、幅20mm、長さ40mmの板形状に削り出し先端刃部加工用の素材とした。
【0041】
<刃付け>
続いて上記素材を用いて先端刃部の形成加工行った。形成加工に於いてはダイヤモンド円筒砥石を使用した専用の研削機を用い角度調整可能な専用のワークレストに素材を固定して加工を行った。刃部が2段である場合には、加工は素材長辺長さ40mm方向の一辺に対して最も先端にある先端角を持つ第一刃部、それに連なり配置され基部110に連続する先端角を持つ第二刃部の異なった先端角を有する刃部を両面に形成した。
【0042】
<凹湾曲の外表面成形>
図1で示すような凹湾曲面である外表面121sを形成するためには、凸曲面を有する円筒砥石を用いて最先端部に対して凹形状加工を両面に施した。凹形状の形成にあたっては非常に精密な加工である為、切込み量やワークレスト角度等の研削条件の設定が非常に肝要である。
【0043】
<平面の外表面成形>
図3で示すような平面の外表面121sを形成するためには、円筒砥石を用いて最先端部に対して凹形状加工を両面に施した。
図2のような3段刃の場合は刃付けの時点で第三部分123を設ける。
【0044】
<凹湾曲の外表面成形>
図4で示すような凹湾曲面である外表面122sを形成するためには、凸曲面を有する円筒砥石を用いて最先端部に対して凹形状加工を両面に施した。
【0045】
<断面確認>
断面確認を日本電子社製のショットキー電界放出形走査電子顕微鏡JSM-7900Fを用いて3,000倍にて撮像し、機械座標と測長機能を活用し、刃先から3、4、5、6、・・、26μmの部分の刃厚(刃部120の厚み)を測定した。その刃厚から、刃厚変化量を計算した。それらの結果を表1から5に示す。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
表1等において「25μm角度[°]」とは、
図1等で示す縦断面において、刃先121tからZ軸方向に25μm離れた外表面121sにおける点225において2つの外表面121sから直線325を引き、2つの直線325がなす角度をいう。直線325の傾斜は、点225における刃厚変化量の1/2の値である。「3μm角度[°]」とは、
図1等で示す縦断面において、刃先121tからZ軸方向に3μm離れた外表面121sにおける点203において2つの外表面121sから直線を引き、2つの直線がなす角度をいう。2つの直線の傾斜は点203における刃厚変化量である。「内凹」の欄において「N」とは直線Sよりも内側に窪む凹120uが外表面121sに存在しないことをいう。「内凹」の欄において「Y」とは直線Sよりも内側に窪む凹120uが外表面121sに存在することをいう。「刃厚変化量[μm]」において「3μmの箇所」とは、刃先121tから4μmの箇所の刃厚から、刃先121tから3μmの箇所の刃厚を引いた値である。「25μmの箇所」とは、刃先121tから26μmの箇所の刃厚から、刃先121tから25μmの箇所の刃厚を引いた値である。「図」とは各試料の形状に対応する図面を示す。「max/min」とは、刃先121tからZ軸方向に3μmから25μm離れた範囲の外表面121sにおける刃厚変化量の最大値と最小値とを示す。
【0052】
<切断テスト>
また、ここで作成した超硬合金製切断刃を用いてその効果を確認するため、市販されている塩化ビニル板の押切切断を行いその断面切断品質並びに切断片の切断真直性を観察し超硬合金製切断刃の効果を確認した。
図8は切断試験を説明するための装置の斜視図である。
図9は
図8中のIX-IX線に沿った断面図である。
図8および
図9で示すように、チャック3001,3002により超硬合金製切断刃1を保持した。
【0053】
本テストの条件(
図8および
図9)
ワーク材質:塩化ビニル板100 厚み0.5mm、幅290mm、長さ30mm
テスト装置:牧野フライス製作所製マシニングセンタV55(ステージ2004)にキスラー製切削動力計9255(切削動力計2003)をセットしたもの
ワークセット:下から厚み10mmのアクリル板2002、厚み1mmの両面粘着シート2001、ワークとしての塩化ビニル板100を積層した。
【0054】
切断条件:切断速度300mm/s、押込み量0.55mm、長手方向のワークと刃角度±0.1°、ワークと刃断面角度90°±0.1°、切断回数100回、切断間隔(ピッチ)2.5mm
確認事項:切断片の切断真直性、断面品質(断面荒れ)
切断テストを試料番号ごとに繰り返した結果を表1から表5に記す。
【0055】
切断真直性については、無作為に選んだ5つの切断片の断面をキーエンス製マイクロスコープVHX5000にて観察した。その観察結果から5つの切断面とワークの上下面(どちらでも可)の成す角度と90°との差A1からA5の絶対値を求めた。それら5つの絶対値の平均値を算出し、これを表中における「切断真直性」の「角度[°]」として記載した。「角度[°]」が2°未満であれば評価をAとし、2°以上4°未満であれば評価をBとし、4°以上であれば評価をCとした。
【0056】
断面荒れについては、断面の表面粗さSa(算術平均高さISO25178)が0.05μm以下なら評価をAとし、断面の表面粗さSaが0.05μmより大きく0.15μm以下なら評価をBとし、表面粗さSaが0.15μmを超えていれば評価をCとした。表面粗さSaは、白色干渉計を用いた非接触式の面粗さ測定装置を用いて測定する。具体的には、Zygo Corporation製の非接触三次元粗さ測定装置(Nexview(登録商標))を用いて測定した。
【0057】
総合評価については、切断真直性および断面品質の両方で評価がAであれば総合評価をAとした。切断真直性および断面品質のいずれかで評価がCまたは製造不可であれば総合評価をCとした。それ以外の評価をBとした。
【0058】
表1から表5で示すように、3μmの位置の前記刃部の厚みが0.26μm以上7.00μm以下であり、3μmから25μでの刃厚変化量が0.08μm以上1.85μm以下であり、凹120uが存在すると、総合評価がAまたはBになることが分かる。
【0059】
さらに、3μmの位置(X=3μm)である場合の刃厚変化量が0.26μm以上0.93μm以下であれば総合評価はAとなりより好ましいことが分かる。
【0060】
(実施例2)
図1,2,4,7の形状の切断刃(試料番号97-100,109-112,121-124,133-136)を製造した。これらの切断刃、および上記の実施例1で製造した切断刃の最先端部に以下の追加工を行って切断刃を作製した。固定台の上に切断刃を固定し粒度#10000のダイヤモンド平砥石を用い先端角度が基部110に対して垂直になる様に加工した。断面確認方法は実施例1と同じとした。これにより、試料番号89-92,101-104,113-116,125-128,137-140の超硬合金製切断刃を作成した。
【0061】
実施例1と同じ素材を用いて粒度#10000の砥石にR0.25μmの溝加工を行いその溝を用いて切断刃の最先端部にR加工を施した。又は微小なダイヤモンド又は炭化タングステン粒子(1μm以下推奨)を水等の液体中に懸濁させ、その懸濁液を流速や射出角度や時間を調整して刃に衝突させることによりR加工を施した。断面確認は実施例1と同じとした。これにより、試料番号93-96,105-108,117-120,129-132,141-144の超硬合金製切断刃を作成した。これらの詳細を表6から10に示す。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
表6-10の超硬合金製切断刃を、実施例1と同様に評価した。その結果を表6-10に示す。
【0068】
表6等の「図」において「3,5」とは
図3の超硬合金製切断刃1において
図5のように刃先121tをフラットにしたものを示す。「1,5」、「2,5」、「4,5」、「7,5」も同様に
図1,2,4,7の超硬合金製切断刃1において
図5のように刃先121tをフラットにしたものを示す。
【0069】
「3,6」とは
図3の超硬合金製切断刃1において
図6のように刃先121tを丸めたものを示す。「1,6」、「2,6」、「4,6」、「7,6」も同様に
図1,2,4,7の超硬合金製切断刃1において
図6のように刃先121tを丸めたものを示す。表6から10においては、表1から5と同様の傾向が現れていることが分かる。
【0070】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
1 合金製切断刃、100 塩化ビニル板、110 基部、120 刃部、120u 凹、121 第一部分、121s,122s,123s 外表面、121t 刃先、122 第二部分、203,225 点、325 接線、2001 両面粘着シート、2002 アクリル板、2003 切削動力計、2004 ステージ、3001,3002 チャック。