(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】ユニット式壁
(51)【国際特許分類】
E04B 2/74 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
E04B2/74 541G
(21)【出願番号】P 2019009769
(22)【出願日】2019-01-23
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹田 慎一
(72)【発明者】
【氏名】栗山 直人
(72)【発明者】
【氏名】永綱 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】南 信也
(72)【発明者】
【氏名】神谷 真央
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-199839(JP,A)
【文献】特開平10-219797(JP,A)
【文献】特開2011-106215(JP,A)
【文献】特開平11-217894(JP,A)
【文献】特開2005-328612(JP,A)
【文献】特開2001-295397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/74
E03C 1/04-1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同形状の複数の開口部を有する枠体と、前記枠体の裏側に配索された流体の主流通経路と、各々の前記開口部に1つずつ取外し可能に嵌め込まれる複数の嵌め込みピースと、を具備し、
前記主流通経路は、各々の前記開口部の裏側に分岐口を有し、
前記嵌め込みピースの少なくとも1つである機能ピースは、前記分岐口に連絡する連絡部と前記枠体の表側に露出し外界に連絡する出入口部とを有する前記流体の分岐流通経路
と、箱状をなし前記分岐流通経路の少なくとも一部を内部に納める区画部と、を有し、
前記開口部は、表裏方向に広がり前記機能ピースを収容できる空間を形成し、
前記嵌め込みピースの他の少なくとも1つである壁面形成ピースは、前記壁面形成ピースが嵌め込まれた前記開口部を塞ぐ壁部を有する、ユニット式壁。
【請求項2】
前記機能ピースは、前記出入口部とともに前記機能ピースが嵌め込まれた前記開口部を塞ぐ第2の壁部を有する、請求項1に記載のユニット式壁。
【請求項3】
前記機能ピースは、更に、前記分岐流通経路からの前記流体の漏出を検知する、検知装置を有する、請求項1又は請求項2に記載のユニット式壁。
【請求項4】
前記検知装置は、前記区画部の中に納められ
、前記区画部内で前記流体の漏出を検知する、請求項3に記載のユニット式壁。
【請求項5】
前記主流通経路の少なくとも一部は箱状の流路区画部の中に納められ、
前記検知装置は、前記流路区画部内で前記流体の漏出を検知する、請求項3又は請求項4に記載のユニット式壁。
【請求項6】
前記主流通経路は、第1の流体が流通する第1主流通経路と、前記第1の流体とは異なる種類の第2の流体が流通する第2主流通経路と、を有し、
前記分岐流通経路は、前記第1主流通経路に連絡する第1分岐流通経路と、前記第2主流通経路に連絡する第2分岐流通経路とを有する、請求項1~請求項5の何れか一項に記載のユニット式壁。
【請求項7】
前記第1分岐流通経路及び前記第2分岐流通経路は、同一の前記機能ピースに設けられる、請求項6に記載のユニット式壁。
【請求項8】
前記第1分岐流通経路及び前記第2分岐流通経路は、異なる前記機能ピースに設けられる、請求項6に記載のユニット式壁。
【請求項9】
前記分岐口又は前記連絡部に取付けられるバルブと、前記バルブを開く開駆動部と、を有し、
前記開駆動部は、前記連絡部を前記分岐口に取付けた後に前記バルブを開く、請求項1~請求項8の何れか一項に記載のユニット式壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁を通じて流体を遣り取りできるユニット式壁に関する。
【背景技術】
【0002】
壁は、部屋、通路、建造物、車両、船舶、航空機に代表される様々な場所に設けられ、当該壁のある空間を、物理的に隔たりのある不連続な、又は、一部が連続する複数の空間に区画する。壁は、空間を物理的に隔てる機能以外にも、様々な機能を有し得る。
【0003】
例えば、特許文献1には、電器用のスイッチやコンセントを壁に配設する技術が紹介されている。また、当該特許文献1の特許請求の範囲には、複数の開口部を有する取付枠と、該取付枠に設けられた複数の開口部に、着脱可能に嵌め込まれるブロックと、から構成される電器パネルユニットであって、前記ブロックを接続具または操作具を内装した接続ブロックと、接続具又は操作具を有しないダミーブロックと、から構成する電器パネルユニットが紹介されている。更に、当該特許文献1の発明を実施するための最良の形態の欄には、当該電器パネルユニットを壁面に適用できる旨が開示されている。
特許文献1には、実施の形態として、取付枠3に設けた連通孔3cを介して任意の開口部3aに配線5を通すことができるようにし、開口部3aにはスイッチ等が組み込まれたブロック4を挿し込み、当該スイッチ等には配線5を接続できる旨も開示されている。
【0004】
特許文献1に紹介されている技術は、複数の部品によって構成される所謂ユニット式の壁に関するものということができ、特許文献1に開示されている当該ユニット式壁によると、電器への給電機能や、スイッチによる電器の給電操作機能等を壁に付与できるといえる。
【0005】
しかし乍ら、近年ではユーザーのニーズが多様化しているため、壁にも、特許文献1に紹介されている給電機能に留まらない、各種の機能を付与することが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みて為されたものであり、汎用性に優れるユニット式壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明のユニット式壁は、
同形状の複数の開口部を有する枠体と、前記枠体の裏側に配索された流体の主流通経路と、各々の前記開口部に1つずつ取外し可能に嵌め込まれる複数の嵌め込みピースと、を具備し、
前記主流通経路は、各々の前記開口部の裏側に分岐口を有し、
前記嵌め込みピースの少なくとも1つである機能ピースは、前記分岐口に連絡する連絡部と前記枠体の表側に露出し外界に連絡する出入口部とを有する前記流体の分岐流通経路を有し、
前記嵌め込みピースの他の少なくとも1つである壁面形成ピースは、前記壁面形成ピースが嵌め込まれた前記開口部を塞ぐ壁部を有する、ユニット式壁である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のユニット式壁は、汎用性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1のユニット式壁を模式的に表す説明図である。
【
図2】実施例1のユニット式壁における枠体、主流通経路及び分岐流通経路を模式的に説明する説明図である。
【
図3】実施例1のユニット式壁における機能ピースを
図1中の表側から見た様子を模式的に表す説明図である。
【
図4】実施例1のユニット式壁における機能ピースを
図1中の右側から見た様子を模式的に表す説明図である。
【
図5】実施例2のユニット式壁を模式的に表す説明図である。
【
図6】実施例3のユニット式壁における第2主流通経路及び第1機能ピースを模式的に表す説明図である。
【
図7】実施例3のユニット式壁における第2主流通経路及び第1機能ピースを模式的に表す説明図である。
【
図8】実施例3のユニット式壁における第2主流通経路及び第1機能ピースを模式的に表す説明図である。
【
図9】実施例4のユニット式壁を模式的に表す説明図である。
【
図10】実施例5のユニット式壁を模式的に表す説明図である。
【
図11】実施例6のユニット式壁における第1機能ピースを模式的に表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a~b」は、下限a及び上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値及び下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに、これらの数値範囲内から任意に選択した数値を、新たな上限や下限の数値とすることができる。
【0012】
本発明のユニット式壁は、枠体、流体の主流通経路、及び、複数の嵌め込みピースを具備する。枠体は、同形状の複数の開口部を有する。枠体の当該開口部には、各々1つずつ、嵌め込みピースが取外し可能に嵌め込まれる。枠体は、同形状の開口部を一組のみ有しても良いし、同形状の開口部を複数組有しても良い。枠体が同形状の開口部を複数組有する場合、異なる組に属する開口部は、同じ形状であっても良いし異なる形状であっても良い。
【0013】
主流通経路は、枠体の裏側に配索され、各々の開口部の裏側に分岐口を有する。つまり、主流通経路の分岐口は、個々の開口部に応じた位置及び数で設けられる。
【0014】
嵌め込みピースは、少なくとも1つの機能ピースと、少なくとも1つの壁面形成ピースとを有する。開口部には機能ピースと壁面形成ピースとの何れか一方が嵌め込まれる。したがって、当該機能ピースの表側の部分と壁面形成ピースの表側の部分とは、ユニット式壁における壁面の少なくとも一部を構成するといえる。
【0015】
嵌め込みピースのうち機能ピースは、流体の分岐流通経路を有する。分岐流通経路は、上記した主流通経路に連絡される流体の流通経路である。
【0016】
詳しくは、分岐流通経路は、連絡部及び出入口部を有する。連絡部は主流通経路に設けられた分岐口に連絡し、出入口部は枠体の表側に露出し外界に連絡する。つまり、枠体の表側における外界と、枠体の裏側に配策される主流通経路とは分岐流通経路によって連絡されるといい得る。また、ユニット式壁の表側において、当該分岐流通経路の出入口部を介して、外界と主流通経路との間の流体の遣り取りを行うことが可能である。
【0017】
ところで、機能ピースは、枠体に設けられた複数の開口部の何れかに嵌め込まれる。当該複数の開口部は同形状であるため、機能ピースは、複数の開口部の何れに嵌め込んでも良い。つまり、本発明のユニット式壁においては、機能ピースを嵌め込む開口部を適宜適切に選択することで、出入口部を適宜適切な位置に自在に配置することができる。また、機能ピースを他の開口部に付け替えることで、当該出入口部の位置を変更することもできる。
【0018】
一方、嵌め込みピースのうち壁面形成ピースは、当該壁面形成ピースが嵌め込まれた開口部を塞ぐ壁部を有するものであり、機能ピース同様に開口部に嵌め込まれる。各々の開口部に1つずつ嵌め込みピースが嵌め込まれることから、機能ピースの嵌め込まれていない開口部には、壁面形成ピースが嵌め込まれる。したがって、ユニット式壁における表側の壁面の少なくとも一部は、壁面形成ピースの壁部、及び、機能ピースの出入口部を含む表側の部分で構成される。
出入口部は、流体の種類や用途に応じて、適宜設定すれば良い。
【0019】
例えば流体が水であれば、主流通経路を水道等の水源に接続し、枠体部の裏側において主流通経路に流通する水を、分岐流通経路を通じて枠体の表側すなわちユニット式壁の表側に導き、更に、出入口部を経てユニット式壁の表側から取り出すこともできる。この場合、蛇口等の水栓を出入口部とすれば良い。
【0020】
又は、分岐流通経路及び主流通経路を排水経路とすることもできる。この場合、分岐流通経路の出入口部に廃棄した水等の流体を、分岐流通経路によって枠体の表側から裏側に向けて導き、主流通経路を介して排出することもできる。この場合、排水口やシンクを出入口部とし、主流通経路には下水管や排液槽等を接続すれば良い。
【0021】
このように、本発明のユニット式壁における主流通経路及び分岐流通経路は、枠体の裏側から表側に向けた流体の供給経路として用いることもできるし、枠体の表側から裏側に向けた流体の排出経路として用いることもできる。
【0022】
また、例えば流体が空気であれば、主流通経路をエアーコンディショナー等の送風装置に接続し、枠体部の裏側で主流通経路を流れる空調空気を、分岐流通経路を経て枠体の表側に導き、出入口部を通じてユニット式壁の表側から取り出すこともできる。この場合、空調空気の吹出口を出入口部とすれば良い。
【0023】
または、分岐流通経路及び主流通経路を排気経路として、ユニット式壁の表側の外界から枠体の裏側に向けて、空気を排出することもできる。この場合、主流通経路には、出入口部を介して外界の空気を強制的に吸引するための送風ファン等を接続するのが良い。
【0024】
更には、例えば流体が燃料ガスであれば、主流通経路をガスボンベやガス管等のガス供給装置に接続し、ガス栓を出入口部として、主流通経路を流れる燃料ガスを、分岐流通経路を経てユニット式壁の表側から取り出すこともできる。
【0025】
このように、本発明のユニット式壁は、枠体の裏側と表側とで流体を遣り取りすることで、壁に、電器用の給電機能に留まらない多彩な機能を付与できる。つまり、本発明のユニット式壁は汎用性に優れる。
【0026】
また、出入口部を有する機能ピースは、開口部のある任意の位置に嵌め込むことができ、又、位置を変更することもできる。つまり、本発明のユニット式壁における出入口部は、ユーザーのニーズに応じた種々の位置に配置することができる。このことによっても、本発明のユニット式壁は汎用性に優れる。
【0027】
本発明のユニット式壁は、例えば、室内と通路とを区画するための壁として用いることもできるし、1つの室内を部分的に区画するためのパーティションとして用いることもできるし、屋内と屋外とを区画するための壁として用いることもできる。これらの場合、本発明のユニット式壁における表側は、室内側であっても良いし、通路側であっても良いし、屋外側であっても良い。これに限らず、本発明のユニット式壁は、例えば、部屋、通路、建造物、車両、船舶、航空機に代表される様々な場所に様々な方向で設けることができる。本発明のユニット式壁における表側についても同様に、種々に設定し得る。
【0028】
本発明のユニット式壁において、開口部は、枠体の全体に均等に設けても良いし、枠体の一部のみに偏って設けても良い。
また、機能ピースの表側の面と壁面形成ピースの壁部における表側の面とは、統一性のある意匠としても良いし、全く異なる意匠としても良い。
【0029】
更に、枠体には、開口部以外に開口する部分を設けても良い。この場合、当該開口部以外の開口は開口したままであっても良いし、嵌め込みピース以外のピースを嵌め込んでも良い。なお、当該開口部以外の開口の裏側には、分岐口が配置されなくても良いし、主流通経路が配策されなくても良い。当該開口部以外の開口は、開口部と異なる形状であっても良いし、開口部と同形状であっても良い。必要に応じて、当該開口部以外の開口に壁面形成ピースを嵌め込むこともできる。
【0030】
本発明のユニット式壁によると、これらの組み合わせによって、優れた意匠性を発揮し得る。
【0031】
また、本発明のユニット式壁は、2以上の異なる流体を流通させるものであっても良い。つまり、本発明のユニット式壁は、異なる流体が流通する複数の主流通経路を有しても良い。この場合、各主流通経路に連絡する各分岐流通経路にもまた、異なる流体が流通する。この場合、各分岐流通経路は同一の機能ピースに設けても良いし、異なる機能ピースに設けても良い。
【0032】
したがって、本発明のユニット式壁における嵌め込みピースは、用途や構造の異なる2種以上の機能ピースを有しても良いし、分岐流通経路を1つの機能ピースに複数設けても良い。更には、嵌め込みピースは、材料や外観の異なる2種以上の壁面形成ピースを有しても良い。
本発明のユニット式壁は、これらの組み合わせによって、優れた機能性を発揮し、汎用性により優れたものとなり得る。
【0033】
本発明のユニット式壁は、主流通経路及び分岐流通経路に流体を流通させるものである。
既述したように、流体としては空気や水、燃料ガス等の種々のものを選択し得るところ、当該流体の種類によっては、主流通経路や分岐流通経路からの漏出が好ましくない場合がある。
【0034】
例えば、流体として空気を選択する場合には、流体すなわち空気が主流通経路や分岐流通経路から多少漏出しても大きな問題にならない場合が多い。しかし、流体として水や廃液、燃料ガス等を選択する場合には、流体の漏出により、本発明のユニット式壁、当該ユニット壁の周囲、及び当該ユニット壁近傍にいるユーザー等に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0035】
したがって、本発明のユニット式壁は、流体の漏出を抑制するための機構を有するのが好ましい。
【0036】
例えば、本発明のユニット式壁における分岐流通経路の連絡部と、当該連絡部に連絡される主流通経路の分岐口と、の少なくとも一方には、開閉弁を設けるのが好ましい。なお、分岐連絡経路に連絡されない分岐口からの流体の漏出を図ることを考慮すると、全ての分岐口に栓または開閉弁を設けるのがより好ましい。
【0037】
更に、本発明のユニット式壁は、上記した流体の漏出を抑制するための機構として、流体の漏出を検知するための検知装置を有するのが好ましい。検知装置としては各種のセンサを使用できる。検知装置は、警報機等の各種の報知システムに接続して、流体の漏出をユーザーや警備システム等に報知するのが良い。
【0038】
検知装置は、検知すべき流体の種類に応じて適宜適切に選択すれば良い。また、本発明のユニット式壁に、複数種の流体を流通させるべく、複数の主流通経路及び分岐流通経路を設ける場合には、本発明のユニット式壁は各々の流体に対応する複数の検知装置を備えるのが好ましい。
なお、検知装置は、主流通経路及び分岐流通経路の何れに設けても良いが、流体の漏出が生じている位置を突き止めるためには、少なくとも分岐流通経路に配設するのが好ましい。
【0039】
検知装置の種類及びその配設位置について説明する。
例えば流体が水であれば、検知装置として流量計を選択することができる。流量計は、主流通経路や分岐流通経路の内部の流体圧の変化に基づいて、流体の漏出を検知する。流量計は、主流通経路及び/又は分岐流通経路の内部に配設することができ、分岐流通経路の内部に配設するのが好ましく、主流通経路の内部及び分岐流通経路の内部の両方に配設するのがより好ましい。
その他、流体が水である場合の検知装置として、電極間抵抗方式の漏水センサを用いても良い。当該漏水センサは2つの電極を有し、当該2つの電極に水が接触すると、水を介して2つの電極間に電流が流れる。このため、当該漏水センサによると、電流値を基に漏水すなわち液体の漏出を検知できる。漏水センサの配設方法としては、例えば、主流通経路及び/又は分岐流通経路の表面に巻き付ける等の方法を採用できる。
【0040】
流体が水や排水、廃油等の液体である場合の検知装置として、赤外線センサや画像センサ等を選択することもできる。赤外線センサや画像センサは、主流通経路や分岐流通経路の外観の変化に基づいて、流体の漏出を検知する。赤外線センサや画像センサは、主流通経路及び/又は分岐流通経路の外部において、これらの近傍に配設するのが好ましい。
【0041】
なお、流体が排水や廃油等の廃液である場合、つまり、主流通経路や分岐流通経路が廃液経路である場合には、主流通経路や分岐流通経路の内部に作用する流体圧が比較的小さい。この場合には、廃液を効率良く排出するために、主流通経路や分岐流通経路を流体の流れ方向の先側に向けて傾けるのが好ましい。分岐流通経路については、ユニット式壁の裏側に向けて傾けるのが好ましく、主流通経路については、下水管や排液槽に向けて傾けるのが好ましい。
【0042】
そしてこの場合、検知装置は、主流通経路や分岐流通経路において、最も下側に位置する部分に設けるのが好ましい。漏出した流体は、主流通経路や分岐流通経路の外面を伝い、重力方向に移動すると考えられる。このため、主流通経路や分岐流通経路において最も下側に位置する部分には、他の部分に比べて多くの流体が集まり、当該部分においては流体の漏出を早期に検知し易いためである。
【0043】
参考までに、この場合の主流通経路や分岐流通経路の傾斜角は、水平を0°としたときに、2°以上であるのが好ましく、5°以上であるのがより好ましく、10°以上であるのが更に好ましい。
【0044】
流体が燃料ガス等の気体である場合の検知装置として、ガスセンサを選択できる。ガスセンサは、主流通経路及び/又は分岐流通経路の外部において、これらの近傍に配設するのが好ましい。
【0045】
ところで、ガスセンサにより燃料ガスの漏出を精度高くセンシングするためには、検知装置の周囲に、気体の出入りの少ない空間を区画形成するのが好ましい。例えば、ガスセンサ、及び、少なくとも当該ガスセンサ近傍に位置する分岐流通経路の周囲を箱状の区画部で覆い、これらを当該区画部の中に納めるのが好ましい。又は、ガスセンサ、及び、少なくとも当該ガスセンサ近傍に位置する主流通経路の周囲を箱状の流路区画部で覆い、これらを当該流路区画部の中に納めるのが好ましい。
【0046】
これらの場合、ガスセンサは、上記の区画部または流路区画部内に生じた燃料ガス濃度の変化に基づいて燃料ガスの漏出を検知し得る。例えば、ガスセンサ及び分岐流通経路のある区画部の内部と外界とは、区画部によって物理的に隔てられているため、区画部内外でのガス交換は阻害される。このため、分岐流通経路から漏出した燃料ガスは拡散せず区画部内に滞留し、ガスセンサによって精度高くセンシングされる。主流通経路及びガスセンサを流路区画部の中に納める場合についても同様である。
【0047】
ガスセンサ以外の検知装置を用いる場合にも、上記の区画部や流路区画部を設けることで、分岐流通経路や主流通経路から流出した流体を、区画部や流路区画部の内部に滞留させることができ、流体の外界への拡散や漏出を抑制できる。このため、検知装置の種類を問わず、分岐流通経路の少なくとも一部及び検知装置は区画部内に納めるのが好ましく、主流通経路の少なくとも一部及び検知装置は流路区画部内に納めるのが好ましい。
なお、分岐流通経路が機能ピースの一部である都合上、区画部は機能ピースの一部とみなし得る。
【0048】
以下、具体例を挙げて本発明のユニット式壁を説明する。
【0049】
(実施例1)
図1は実施例1のユニット式壁を模式的に表す説明図である。
図2は実施例1のユニット式壁における枠体、主流通経路及び分岐流通経路を模式的に説明する説明図である。
図3は実施例1のユニット式壁における機能ピースを
図1中の表側から見た様子を模式的に表す説明図である。
図4は実施例1のユニット式壁における機能ピースを
図1中の右側から見た様子を模式的に表す説明図である。
以下、実施例において、上、下、左、右、表、裏とは、
図1に示す上、下、左、右、表、裏を意味する。
【0050】
図1に示すように、実施例1のユニット式壁1は、枠体2と、主流通経路3と、嵌め込みピース5とを具備する。
【0051】
実施例1のユニット式壁1における枠体2は、多数の柱20が組み合わされることで形成されている。柱20は略等間隔で配置され、隣り合う柱20同士の間には多数の開口部21が区画形成されている。各開口部21は、略同形状であり、上下方向に複数段配列するとともに、左右方向にも複数列配列している。
【0052】
枠体2の裏側には、流体の主流通経路3が配策されている。
詳しくは、
図2に示すように、実施例1のユニット式壁1は、第1主流通経路31及び第2主流通経路32の2種の主流通経路3を有する。第1主流通経路31及び第2主流通経路32は、各々、同じ段にある開口部21の裏側を横切るよう、左右方向に延びている。また、第1主流通経路31及び第2主流通経路32は、図示しないが、左端部及び右端部において各々折り返されて、全ての段の開口部21の裏側を通るよう、上下方向に繰り返し配列している。
つまり、実施例1のユニット式壁1は、1つの第1主流通経路31及び1つの第2主流通経路32を有し、当該第1主流通経路31及び第2主流通経路32は、折り返されて、全ての開口部21の裏側を通るよう配策されている。
【0053】
主流通経路3の一部は、
図1に破線で示す箱状の流路区画部95の中に納められている。具体的には、流路区画部95は、枠体2の裏側全体に設けられ、当該枠体2の裏側にある第1主流通経路31及び第2主流通経路32を外界から隔離する。
【0054】
第1主流通経路31及び第2主流通経路32は、各開口部21に対して1つずつの分岐口31o、32oを有する。第1主流通経路31の分岐口を第1分岐口31oと称し、第2主流通経路32の分岐口を第2分岐口32oと称する。開口部21と第1分岐口31oと第2分岐口32oとの位置関係は、全ての開口部21について同じである。
【0055】
実施例1のユニット式壁1において、第1主流通経路31は図略のエアーコンディショナーに接続され、当該エアーコンディショナーから供給される空調空気の流通経路となる。また、第2主流通経路32は図略の水道管に接続され、水の流通経路となる。
【0056】
図1に示すように、実施例1のユニット式壁1は、多数の嵌め込みピース5を有する。各嵌め込みピース5は、各々の前記開口部21に1つずつ嵌め込まれている。各嵌め込みピース5は開口部21から取り外すことも可能である。
【0057】
詳しくは、上記多数の嵌め込みピース5は、2種の機能ピース51、52と1種の壁面形成ピース53とで構成される。
2種の機能ピース51、52の一方は、第1主流通経路31に連絡する第1分岐流通経路61と、第2主流通経路32に連絡する第2分岐流通経路62と、の両方を有する第1機能ピース51である。2種の機能ピースの他方は、第1主流通経路31に連絡する第1分岐流通経路61のみを有する第2機能ピース52である。
図1及び
図2に示すように、実施例1のユニット式壁1では、第2機能ピース52は、最上段に位置する全ての開口部21に各々1つずつ嵌め込まれている。また、第1機能ピース51は、それよりも下段に位置する1つの開口部21に嵌め込まれている。それ以外の開口部21には、全て、壁面形成ピース53が嵌め込まれる。
【0058】
図3及び
図4に示すように、第1機能ピース51は、箱状をなす第1区画部55と、当該第1区画部55の内部を貫通する第1分岐流通経路61及び第2分岐流通経路62と、で構成されている。
【0059】
第1分岐流通経路61は、第1区画部55の裏側に露出して第1分岐口31oに連絡する第1連絡部61iと、第1区画部55の表側に露出して外界に連絡する第1出入口部61oとを有する。
図3に示すように、第1出入口部61oは、複数のブレードを有する空調空気の吹出口である。また、
図4に示すように、第1連絡部61iには第1バルブv1が設けられ、第1連絡部61iは当該第1バルブv1を介して第1分岐口31oに連絡する。
【0060】
第2分岐流通経路62は、第1区画部55の裏側に露出して第2分岐口32oに連絡する第2連絡部62iと、第1区画部55の表側に露出して外界に連絡する第2出入口部62oとを有する。
図3に示すように、第2出入口部62oは、水道の蛇口である。
図4に示すように、第2連絡部62iには第2バルブv2が設けられ、第2連絡部62iは当該第2バルブv2を介して第2分岐口32oに連絡する。
【0061】
第2機能ピース52は、第1分岐流通経路61のみを有し第2分岐流通経路62を有さないため、
図1に示すように、空調空気の吹出口すなわち第1出入口部61oを有するが、蛇口すなわち第2出入口部62oを有さない。
第2機能ピース52は、箱状をなす第2区画部56と、当該第2区画部56に一体化された第1分岐流通経路61と、を有し、第2分岐流通経路62を有さないこと以外は第1機能ピース51と同様である。
なお、第1連絡部61iが取付けられない第1分岐口31o、及び、第2連絡部62iが取付けられない第2分岐口32oは、図略の栓により閉じられている。
【0062】
更に、
図1に示すように、壁面形成ピース53もまた、第1区画部55及び第2区画部56と略同形の箱状をなす。各壁面形成ピース53は壁部57を有する。壁部57は、箱状の壁面形成ピース53における表側の壁面である。
図1に示すように、各壁面形成ピース53が嵌め込まれると、開口部21の表面は、壁部57によって塞がれる。
【0063】
図1に示すように、第1機能ピース51が取付けられた開口部21は、第1出入口部61o、第2出入口部62o、及び、第1区画部55における表側の壁面58によって塞がれる。このため、第1区画部55における表側の壁面58もまた、壁部57同様に、実施例1のユニット式壁1における壁の一部を構成するといえる。この、第1区画部55における表側の壁面58は、本発明のユニット式壁1における第2の壁部に相当する。
【0064】
同様に、第2機能ピース52が取付けられた開口部21は、第1出入口部61o、及び、第2区画部56における表側の壁面59によって塞がれる。このため、第2区画部56における表側の壁面59もまた、実施例1のユニット式壁1における壁の一部を構成するといえる。つまり、第2区画部56における表側の壁面59もまた、本発明のユニット式壁1における第2の壁部に相当するといえる。
【0065】
実施例1のユニット式壁1によると、壁面形成ピース53の壁部57のみならず、第1機能ピース51及び第2機能ピース52における表側の壁面58、59によっても、開口部21を塞いでいる。図示しないが、これらは色、模様、質感が統一されている。このため、実施例1のユニット式壁1の表面は、統一性のある優れた意匠を表示する。このため、実施例1のユニット式壁1は、意匠性に優れる。なお、例えば、第1出入口部61oすなわち空調空気の吹出口が非常に大きく、第2機能ピース52の表面全面を占める場合等、開口部21と出入口部61o、62oとの形状によっては、第2の壁部58、59を設けず、機能ピース51、52の表面全面を出入口部61o、62oで構成しても良い。
【0066】
図4に示すように、第2分岐流通経路62の内部には、流量計90が配設されている。流量計90は水の流量を監視する。流量計90によって検知される水の流量が極微量であり、当該極微量の水の流通が連続的に検知された場合に、流体が漏出したと判断できる。
【0067】
また、第1区画部55の内部には赤外線センサ91が配設されている。赤外線センサ91は第2分岐流通経路62の外部において、当該第2分岐流通経路62の外形の変化を経時的に監視する。第2分岐流通経路62の外形の変化が検知された場合に、流体が漏出したと判断できる。
なお、図示しないが、流路区画部95の内部にも赤外線センサが配設されている。当該赤外線センサもまた、水の漏出を検知する。
第1区画部55の内部に配設された流量計90及び赤外線センサ91、並びに、流路区画部95の内部に配設された図略の赤外線センサは、本発明のユニット式壁1における検知装置に相当する。
【0068】
実施例1のユニット式壁1は、同形の開口部21を複数有し、各開口部21に、各々、第1機能ピース51、第2機能ピース52、壁面形成ピース53の何れかが嵌め込まれる。各開口部21の形状及び各嵌め込みピース5の形状は同じであり、かつ、開口部21と第1分岐口31oと第2分岐口32oとの位置関係は、全ての開口部21について同じである。このため、嵌め込みピース5、すなわち、第1機能ピース51、第2機能ピース52、及び壁面形成ピース53は、どの開口部21に取付けても良いし、また、元々取付けていた開口部21とは別の開口部21に付け替えることもできる。このため、実施例1のユニット式壁1は、汎用性に優れる。
【0069】
また、実施例1のユニット式壁1では、主流通経路3に流体である水や空気を流通させ、分岐流通経路を介してこれらをユニット式壁1の表側から取り出すことができる。したがって、実施例1のユニット式壁1は、給電機能に留まらず、流体の供給機能を有することで、汎用性に優れたものといい得る。
更に、実施例1のユニット式壁1は、水と空気という異なる流体を、同時に、当該ユニット式壁1を介した表側と裏側とで遣り取りすることができる。このように多様な流体を同時に遣り取りすることができる点においても、本発明のユニット式壁1は優れた機能性を発揮する。
【0070】
実施例1では第1分岐流通経路61及び第2分岐流通経路62を同一の第1機能ピース51に設けたが、必要に応じて、第1分岐流通経路61及び第2分岐流通経路62を別々の機能ピースに設けても良い。この場合には、第1出入口部61o及び第2出入口部62oの配置の自由度が更に向上する利点がある。
【0071】
(実施例2)
実施例2のユニット式壁は、枠体及び嵌め込みピースの形状以外は、実施例1のユニット式壁と概略同じものである。
図5は実施例2のユニット式壁を模式的に表す説明図である。以下、実施例1のユニット式壁との相違点を中心に実施例2のユニット式壁を説明する。
【0072】
図5に示すように、実施例2のユニット式壁1では、枠体2における隣り合う柱20の間に、略板状の支持壁25が架け渡されている。詳しくは、支持壁25は、各開口部21の左側面21l、右側面21r及び底面21fを部分的に区画する。したがって、嵌め込みピース5は開口部21内において支持壁25によって支持されるといえる。実施例2のユニット式壁1によると、支持壁25を設けたことで、嵌め込みピース5を開口部21内において安定的に支持できるといえる。
【0073】
左右の支持壁25には、各々、第1位置決め部26が設けられている。各第1位置決め部26は、開口部21内に向けて開口する凹状をなす。嵌め込みピース5の左右側壁には、各々、第1位置決め部26に対応する位置に、第2位置決め部54が設けられている。各第2位置決め部54は、嵌め込みピース5の左右側壁に各々設けられた凹部54cと、第1位置決め部26に対応する凸状をなす位置決め係合部54eと、図略のばねとで構成されている。位置決め係合部54eは各凹部54cに挿入され、ばねによって凹部54cから突出する方向に付勢されている。また、位置決め係合部54eの突出量は、裏側から表側にむけて徐々に大きくなっている。
嵌め込みピース5を開口部21に嵌め込むと、第1位置決め部26に第2位置決め部54の位置決め係合部54eが入り込んで係合するため、開口部21に対して嵌め込みピース5が位置決めされる。このことによっても、実施例2のユニット式壁1における嵌め込みピース5は、開口部21内において安定的に支持される。なお、各嵌め込みピース5には、各々、解除ボタン54rが設けられている。解除ボタン54を押圧すると、ばねの付勢力に抗して位置決め係合部54eが引っ込むために、各嵌め込みピース5を開口部21から容易に取り外すことができる。
【0074】
実施例2のユニット式壁1における支持壁25は各開口部21の左側面21l、右側面21r及び底面21fを部分的に区画したが、支持壁25は各開口部21の左側面21l、右側面21r及び底面21fの全体を区画しても良い。支持壁25は、各開口部21の左側面21l、右側面21r及び底面21fに加えて頂面21tを区画しても良いし、各開口部21の裏側面21bの一部を区画しても良い。更には、支持壁25は、各開口部21の左側面21l、右側面21r、底面21f、頂面21t及び裏側面21bの何れか1つのみを区画しても良いし、これらから任意に選択された複数を区画しても良い。勿論、実施例1のユニット式壁1のように、枠体2は支持壁25を有さなくても良い。支持壁25の面積が大きければ、それだけ、嵌め込みピース5を開口部21内において安定的に支持できる。一方、支持壁25がなければユニット式壁1のコストを低減できる。
【0075】
実施例2のユニット式壁1における第2位置決め部54及び第1位置決め部26は、第2位置決め部54の位置決め係合部54eが第1位置決め部26に入り込んで係合するものであったが、第2位置決め部54は単に第1位置決め部26に入り込むだけであっても良い。第2位置決め部54及び第1位置決め部26が互いに係合する場合には、嵌め込みピース5を開口部21内においてより一層安定的に支持できる。一方、第2位置決め部54が単に第1位置決め部26に入り込むだけであれば、第1位置決め部26及び第2位置決め部54を簡単な形状にでき、ユニット式壁1に要する製造コストを削減できる。
【0076】
(実施例3)
実施例3のユニット式壁は、第1機能ピースが第1分岐流通経路を有さず第2分岐流通経路のみを有すること、及び、第2主流通経路及び第2分岐流通経路の構造において、実施例1のユニット式壁と異なる。それ以外は、実施例3のユニット式壁は実施例1のユニット式壁と概略同じものである。
図6~
図8は、実施例3のユニット式壁における第2主流通経路及び第1機能ピースを模式的に表す説明図である。詳しくは、
図6は第2分岐流通経路を第2主流通経路に取付ける前の第2主流通経路及び第1機能ピースの断面を模式的に表す。
図7は第2分岐流通経路の第2連絡部を第2主流通経路の第2分岐口に取付け、かつ、バルブを開く前の、第2主流通経路及び第1機能ピースの断面を模式的に表す。
図8は第2分岐流通経路の第2連絡部を第2主流通経路の第2分岐口に取付け、かつ、バルブを開いた後の、第2主流通経路及び第1機能ピースの断面を模式的に表す。
以下、実施例1のユニット式壁との相違点を中心に実施例3のユニット式壁を説明する。
【0077】
図6に示すように、実施例3のユニット式壁1における第2主流通経路32は、左右方向に延びる管状の主部32mと、表裏方向に延びる管状の第2分岐口32oとを有する。第2分岐口32oの裏側端部は主部32mに一体化され、第2分岐口32oの内部と主部32mの内部とは連絡している。第2分岐口32oの表側端部32tは、中心部に貫通孔voを有する有底の筒状をなす。当該第2分岐口32oのうち主部32m側、つまり、裏側の外周面には、鍔状をなす係止部32eが設けられている。更に、第2分岐口32oにおける表側端部32tの近傍の外周面には、Oリング80が装着されている。
【0078】
第2分岐口32oの内部にはバルブv3が取付けられている。バルブv3は、第2分岐口32oの内部において表側端部32tよりも裏側に配置される蓋部vrと、蓋部vrを表側端部32tに向けて押圧する弾性体vsと、を有する。蓋部vrの外径は表側端部32tにおける貫通孔voの孔径よりもやや大きいため、蓋部vrは表側端部32tの貫通孔voを閉じ得る。
【0079】
実施例3のユニット式壁1における第2分岐流通経路62は、弾性材料からなり筒状をなす分岐管部65と、剛体からなり略リング状をなし分岐管部65に外装されるストッパ部81と、ロッド状をなし分岐管部65の内部に保持される開駆動部82と、を有する。
分岐管部65の裏側端部である第2連絡部62iは、第1区画部55に一体化され、かつ、第1区画部55の内部に配置されている。分岐管部65は裏側から表側に向けて延び、分岐管部65の表側端部65tは、第1区画部55の外部に露出している。図示しないが、当該表側端部65tには蛇口が取付けられる。
【0080】
分岐管部65は、ロッド状の開駆動部82を支持する支持部65sを内部に有する。支持部65sは分岐管部65の内部に橋状に架け渡されているため、流体は分岐管部65の内部を流通可能である。開駆動部82は、分岐管部65の内部において、分岐管部65の軸方向つまり表側-裏側方向に支持され、かつ、表側-裏側方向にスライド可能である。開駆動部82の外周面には係合突起82eが設けられ、支持部65sには当該係合突起82eと係合可能な係合爪65eが設けられている。
【0081】
実施例3のユニット式壁1における第1機能ピース51は、実施例1のユニット式壁1における第1機能ピース51と同様に、図略の枠体2の開口部21に嵌め込まれる。このとき、
図7に示すように、第2連絡部62iを第2分岐口32oに装着する。具体的には、先ず、
図6に示すように、ストッパ部81を第2連絡部62iの裏端よりもやや表側に位置させて、第2連絡部62iを第2分岐口32oにあてがいつつ裏側に向けて押し付ける。第2連絡部62iの内径は係止部32eの外径よりもやや小さいため、第2連絡部62iは弾性変形しつつ第2分岐口32oに外装される。次いで、ストッパ部81を裏側に向けてスライドさせ、ストッパ部81と係止部32eとによって第2連絡部62iを圧縮状態で挟み込む。このことにより、第2連絡部62iと第2分岐口32oとは、係止部32eの外周側において密着し、両者は液密にシールされる。また、第2分岐口32oにおける表側端部32tの近傍においては、第2連絡部62iと第2分岐口32oとの間にOリング80が介在するため、この部分においても、第2連絡部62iと第2分岐口32oとは液密にシールされる。
【0082】
ところで、
図7に示すように第2連絡部62iと第2分岐口32oとを取付けた時点では、バルブv3の蓋部vrは弾性体vsによって表側に押圧され、表側端部32tの貫通孔voを閉じている。つまりこのときバルブv3は閉じられたままである。
この状態から、弾性体vsの弾性力に抗して開駆動部82を裏側に向けて押し込むと、
図8に示すように、蓋部vrが裏方向に位置変化して表側端部32tの貫通孔voが開かれ、バルブv3が開かれる。なお、開駆動部82を裏側に向けて押し込むと、開駆動部82の係合突起82eと支持部65sの係合爪65eとが係合する。このため、開駆動部82がバルブv3を開く位置にロックされる。
【0083】
実施例3のユニット式壁1では、第2連絡部62iと第2分岐口32oとの取付時に第2分岐流通経路62に流体を流通させないように、先ず、第2連絡部62iと第2分岐口32oとを取付けて、その後にバルブv3を開いている。このことにより、第2連絡部62iと第2分岐口32oとの取付時における、第2連絡部62iと第2分岐口32oとの継ぎ目等からの流体の漏出が抑制される。
また、実施例3のユニット式壁1では、第2連絡部62i及び第2分岐口32oは、第1区画部55の内部に納められる。このため、万が一第2連絡部62iと第2分岐口32oとの継ぎ目から流体が漏出した場合にも、当該漏出した流体は第1区画部55の内部に回収され、第1区画部55の外部にまでは漏出し難い。このため、実施例3のユニット式壁1によると、外界への流体の漏出を信頼性高く抑制できる。実施例1のユニット式壁1と同様に、検知装置を第1区画部55の中に配設し、流体の漏出を検知すれば、外界への流体の漏出をより一層抑制できる。
【0084】
実施例3のユニット式壁1では、第2連絡部62i及び第2分岐口32oを互いに液密に取付けられるクイックコネクタ様の構造とした。しかし、本発明のユニット式壁1における第2連絡部62i及び第2分岐口32oの取付機構はこれに限定されず、既知の種々の取付機構を用いることができる。なお、第2連絡部62i及び第2分岐口32oは、その内部を流通する流体が漏出し難いような機構で互いに取付けられるのが好ましいが、既述したように、流体の種類によっては漏出が許容される場合もある。
【0085】
(実施例4)
実施例4のユニット式壁は、枠体の形状および嵌め込みピースの形状が異なること以外は、実施例1のユニット式壁と概略同じものである。
図9は実施例4のユニット式壁を模式的に表す説明図である。
【0086】
図9に示すように、実施例4のユニット式壁1においては、枠体2の柱20は、上下方向及び表裏方向においては直線的に延び、左右方向においては湾曲して延びる。このため、枠体2の開口部21は、上下方向における同位置、つまり行L5~L9のうち同じ行に属するものにおいては、互いに異なる形状となる。しかし、当該開口部21の形状は、左右方向における同位置、つまり列L1~L4のうち同じ列に属するものにおいては、互いに同形状となる。このため、実施例4のユニット式壁1は、同形状の開口部21を、枠体2の列L1~L4の数に対応する複数組有するということができる。そして、実施例4のユニット式壁1では、この同形状の開口部21の間で、嵌め込みピース5を適宜入れ替えることが可能である。よって、実施例4のユニット式壁1もまた実施例1のユニット式壁1と同様に汎用性に優れるといい得る。
【0087】
(実施例5)
実施例5のユニット式壁は、枠体の形状および嵌め込みピースの形状が異なること以外は、実施例1のユニット式壁と概略同じものである。
図10は実施例5のユニット式壁を模式的に表す説明図である。
【0088】
図10に示すように、実施例5のユニット式壁1においては、枠体2の柱20は、左右方向及び表裏方向においては直線的に延び、上下方向においては湾曲して延びる。このため、枠体2の開口部21は、左右方向における同位置、つまり列L1~L5のうち同じ列に属するものにおいては、互いに異なる形状となる。しかし、当該開口部21の形状は、上下方向における同位置、つまり行L6~L9のうち同じ行に属するものにおいては、互いに同形状となる。このため、実施例5のユニット式壁1もまた、同形状の開口部21を、枠体2の行L6~L9の数に対応する複数組有するということができる。そして、実施例5のユニット式壁1もまた、この同形状の開口部21の間で、嵌め込みピース5を適宜入れ替えることが可能であるために、汎用性に優れるといい得る。
【0089】
なお、実施例4及び実施例5では、枠体2の柱20が一方向のみに湾曲したユニット式壁1を紹介したが、本発明のユニット式壁1における枠体2はこれに限定されず、同形状の複数の開口部21を区画形成できさえすれば良く、如何なる形状であっても良い。
また、本発明のユニット式壁1は、上下方向に延びる壁に限定されず、例えば天井のようなユーザーの上方に配置される壁であっても良いし、床のようなユーザーの下方に配置される壁であっても良い。
【0090】
(実施例6)
実施例6のユニット式壁は、第1機能ピースに2種の分岐流通経路及び電器用の給電機能を有する電気経路を設けた例である。当該2種の分岐流通経路の一方は、水を流体とする、実施例1の第2分岐流通経路と同様の流通経路である。当該2種の分岐流通経路の他方は、燃料ガスを流体とする流通経路である。
実施例6のユニット式壁は、主流通経路及び分岐流通経路を流通する流体の種類、及び、電気経路を有する点において実施例1のユニット式壁と異なるが、それ以外は実施例1のユニット式壁と概略同じである。
図11は実施例6のユニット式壁における第1機能ピースを模式的に表す説明図である。以下、実施例1のユニット式壁との相違点を中心に実施例6のユニット式壁を説明する。
【0091】
実施例6のユニット式壁1における第1機能ピース51は、2種の分岐流通経路と電気経路とを有する。
当該2種の分岐流通経路の一方は、水を流体とし、第2出入口部62oとして蛇口を有する、第2分岐流通経路62である。当該2種の分岐流通経路の他方は、燃料ガスを流体とし、第3出入口部63oとしてガスコンロやガスストーブに代表されるガス器機用のガス栓を有する、第3分岐流通経路63である。第2分岐流通経路62は図略の第2主流通経路32に連絡し、第3分岐流通経路63は図略の第3連絡部を介して、図略の第3主流通経路の第3分岐口に連絡する。第3主流通経路は内部に燃料ガスが流通するガス管であり、第2主流通経路32は実施例1のユニット式壁1における第2主流通経路32と概略同じである。
【0092】
電気経路は分岐電気経路70を有し、当該分岐電気経路70は電器が接続されるコンセント71を有する。コンセント71は、第2出入口部62o及び第3出入口部63oとともに、第1機能ピース51の表側に露出する。コンセント71の裏側には、分岐電気経路70が延びている。当該分岐電気経路70におけるコンセント71とは逆側の端部である電気連絡部(図略)は、図略の第2連絡部62i及び第3連絡部とともに第1機能ピース51の裏側に露出し、図略の主電気経路の電気分岐部に接続される。
【0093】
実施例6のユニット式壁1は、第2主流通経路32及び第3主流通経路とともに図略の枠体2の裏側に配策される、図略の主電気経路を有する。当該主電気経路は、各開口部21の裏側に各々電気分岐部を有し、当該電気分岐部には電気連絡部が接続される。
第2主流通経路32、第3主流通経路、及び主電気経路のうち、第3主流通経路は最も上側に配置され、第2主流通経路32は最も下側に配置される。したがって、第2分岐流通経路62、第3分岐流通経路63及び分岐電気経路70についても、第3分岐流通経路63は最も上側に配置され、第2分岐流通経路62は最も下側に配置される。同様に、第1機能ピース51の表側に露出する第2出入口部62o、第3出入口63o部及びコンセント71についても、第3出入口部63oは最も上側に配置され、第2出入口部62oは最も下側に配置される。
【0094】
実施例6のユニット式壁1は、同一の第1機能ピース51に、第2分岐流通経路62及び第3分岐流通経路63に加えて分岐電気経路70を設けたことで、ユニット式壁1に、燃料ガス及び水という異なる2種の流体の供給機能に加えて、給電機能をも付与したものである。このような実施例6のユニット式壁1は、汎用性に優れたものといい得る。
【0095】
更に、実施例6のユニット式壁1では、燃料ガスの流通経路である第3主流通経路及び第3分岐流通経路63を最も上側に配置し、その下側に電気の流通経路である主電気経路及び分岐電気経路70を配置し、水の流通経路である第2主流通経路32及び第2分岐流通経路62を最も下側に配置した。空気よりも軽い燃料ガスであれば、燃料ガスの流通経路を電気の流通経路よりも上側におくことで、安全性が向上する。また、電気の流通経路を水の流通経路よりも上側におくことによっても、安全性が向上する。
【0096】
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【符号の説明】
【0097】
1:ユニット式壁 2:枠体
21:開口部 3:主流通経路
31:第1主流通経路 32:第2主流通経路
31o、32o:分岐口 5:嵌め込みピース
51、52:機能ピース 53:壁面形成ピース
55、56、57:区画部 57:壁部
58、59:第2の壁部 61、62、63:分岐流通経路
61:第1分岐流通経路 62:第2分岐流通経路
61i、62i:連絡部 61o、62o、63o:出入口部
82:開駆動部 90、91:検知装置
95:流路区画部 v3:バルブ