(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】歩行者保護装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/36 20110101AFI20220922BHJP
B60R 21/00 20060101ALI20220922BHJP
B60R 21/34 20110101ALI20220922BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
B60R21/36 350
B60R21/00 310H
B60R21/34
B60J5/04 Z
(21)【出願番号】P 2019060028
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2021-05-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】尾関 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇至
(72)【発明者】
【氏名】末光 泰三
(72)【発明者】
【氏名】安田 陽
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-044285(JP,A)
【文献】特開2008-254497(JP,A)
【文献】特開2006-273137(JP,A)
【文献】特開2006-273139(JP,A)
【文献】特開2016-107647(JP,A)
【文献】特開2004-066936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/36
B60R 21/00
B60R 21/34
B60J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側面側に搭載されて、一次衝突後の路面側に落下する歩行者を保護可能な歩行者保護装置であって、
作動時、歩行者を受け止めて保護可能に、車両の側面側から繰り出されて、路面と歩行者との間に配設される受止部材と、
車両の側面側に配設される車体側部材から構成されるとともに、作動時に、前記受止部材における歩行者受止前の路面との接触を防止可能に、車両の側面側の待機位置から、下端側を回転中心として上端側を回転移動させて、前記受止部材の路面側に位置する繰出位置まで、繰り出されるカバー材と、
前記カバー材を待機位置から繰出位置側へ移動させるアクチュエータと、
前記カバー材と車両の側面側とを連結して、前記カバー材を繰出位置で停止させるストッパ材と、
を備え
、
前記受止部材は、可撓性を有したネットから構成され、繰出位置の前記カバー材の上端付近と車両の側面側とに懸架されるように配設されていることを特徴とする歩行者保護装置。
【請求項2】
前記ストッパ材は、前記カバー材を繰り出す長さ寸法を可変可能に、長さ調整機構と連結され、
該長さ調整機構は、繰出時における前記受止部材若しくは前記カバー材の繰出許容スペースの有無に応じて、前記ストッパ材の長さ寸法を調整するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の歩行者保護装置。
【請求項3】
車両の側面側に搭載されて、一次衝突後の路面側に落下する歩行者を保護可能な歩行者保護装置であって、
作動時、歩行者を受け止めて保護可能に、車両の側面側から繰り出されて、路面と歩行者との間に配設される受止部材と、
車両の側面側に配設される車体側部材から構成されるとともに、作動時に、前記受止部材における歩行者受止前の路面との接触を防止可能に、車両の側面側の待機位置から、下端側を回転中心として上端側を回転移動させて、前記受止部材の路面側に位置する繰出位置まで、繰り出されるカバー材と、
前記カバー材を待機位置から繰出位置側へ移動させるアクチュエータと、
前記カバー材と車両の側面側とを連結して、前記カバー材を繰出位置で停止させるストッパ材と、
を備え
、
前記カバー材は、車両の側面側において、逆U字状であって、逆Uの字の枠に囲まれた中央部に、歩行者を受止可能な面積を配設させた形状の逆U字状として配設され、
前記受止部材は、可撓性を有したネットから構成されるとともに、繰出位置の前記カバー材における逆U字状の中央部を塞ぐように繰り出される構成として配設されていることを特徴とする歩行者保護装置。
【請求項4】
前記ストッパ材は、前記カバー材を繰り出す長さ寸法を可変可能に、長さ調整機構と連結され、
該長さ調整機構は、繰出時における前記受止部材若しくは前記カバー材の繰出許容スペースの有無に応じて、前記ストッパ材の長さ寸法を調整するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の歩行者保護装置。
【請求項5】
車両の側面側に搭載されて、一次衝突後の路面側に落下する歩行者を保護可能な歩行者保護装置であって、
作動時、歩行者を受け止めて保護可能に、車両の側面側から繰り出されて、路面と歩行者との間に配設される受止部材と、
車両の側面側に配設される車体側部材から構成されるとともに、作動時に、前記受止部材における歩行者受止前の路面との接触を防止可能に、車両の側面側の待機位置から、下端側を回転中心として上端側を回転移動させて、前記受止部材の路面側に位置する繰出位置まで、繰り出されるカバー材と、
前記カバー材を待機位置から繰出位置側へ移動させるアクチュエータと、
前記カバー材と車両の側面側とを連結して、前記カバー材を繰出位置で停止させるストッパ材と、
を備え
、
前記ストッパ材は、前記カバー材を繰り出す長さ寸法を可変可能に、長さ調整機構と連結され、
該長さ調整機構は、繰出時における前記受止部材若しくは前記カバー材の繰出許容スペースの有無に応じて、前記ストッパ材の長さ寸法を調整するように構成されていることを特徴とする歩行者保護装置。
【請求項6】
前記受止部材は、膨張用ガスを流入させて、繰出位置に配置された前記カバー材の上面側に支持されるエアバッグ、としていることを特徴とする請求項5に記載の歩行者保護装置。
【請求項7】
前記エアバッグは、待機位置の前記カバー材に覆われて収納されるとともに、膨張用ガスの流入時、前記カバー材を待機位置から繰出位置側へ移動させる前記アクチュエータと兼用とされていることを特徴とする請求項6に記載の歩行者保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の側面側に搭載されて、一次衝突後の路面側に落下する歩行者を保護可能な歩行者保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歩行者保護装置としては、車両のドアの下縁側に、膨張用ガスを流入させて、路面の上方側に突出するエアバッグ、を備え、膨張したエアバッグにより、一次衝突後の路面側に落下する歩行者を保護するように構成されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この乗員保護装置では、膨張完了時の車両の側面から突出したエアバッグの先端が、牽引材等により懸架されて、路面側に下がらないように、構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の歩行者保護装置では、歩行者を受け止めて保護する受止部材としてのエアバッグが、歩行者受止前に路面と接触して損傷する虞れがあり、そして、損傷すれば、膨張用ガスを流出させてしまうことから、歩行者を保護できない事態を招いてしまう。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、歩行者を受け止めて保護する受止部材が、歩行者受止前の路面との接触による損傷を防止できる歩行者保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る歩行者保護装置は、車両の側面側に搭載されて、一次衝突後の路面側に落下する歩行者を保護可能な歩行者保護装置であって、
作動時、歩行者を受け止めて保護可能に、車両の側面側から繰り出されて、路面と歩行者との間に配設される受止部材と、
車両の側面側に配設される車体側部材から構成されるとともに、作動時に、前記受止部材における歩行者受止前の路面との接触を防止可能に、車両の側面側の待機位置から、下端側を回転中心として上端側を回転移動させて、前記受止部材の路面側に位置する繰出位置まで、繰り出されるカバー材と、
前記カバー材を待機位置から繰出位置側へ移動させるアクチュエータと、
前記カバー材と車両の側面側とを連結して、前記カバー材を繰出位置で停止させるストッパ材と、
を備えて構成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る歩行者保護装置では、作動時、カバー材が、アクチュエータにより、車両の側面側の待機位置から繰出位置側へ移動され、そして、ストッパ材により、繰出位置で停止される。その際、受止部材も、車両の側面側の収納位置から繰り出されて、歩行者を受止可能に、路面と歩行者との間に配置されることとなり、さらに、繰り出された受止部材の路面側には、歩行者受止前における受止部材の路面との接触を防止可能に、カバー材が配設される。そのため、歩行者を受け止める前の受止部材は、路面との接触が防止されることから、路面からの損傷を受けず、円滑に、落下してくる歩行者を受け止めて保護できる。
【0008】
したがって、本発明に係る歩行者保護装置では、歩行者を受け止めて保護する受止部材が、カバー材により、歩行者受止前の路面との接触による損傷を防止できて、作動時、円滑に、歩行者を受け止めて保護できる。
【0009】
そして、本発明に係る歩行者保護装置では、前記受止部材が、膨張用ガスを流入させて、繰出位置に配置された前記カバー材の上面側に支持されるエアバッグ、としてもよい。
【0010】
この場合、前記エアバッグを、待機位置の前記カバー材に覆われて収納させれば、膨張用ガスの流入時、前記カバー材を待機位置から繰出位置側へ移動させる前記アクチュエータと兼用とすることができて、別途、アクチュエータを準備せずに済み、構成部品点数を低減できる。
【0011】
また、本発明に係る歩行者保護装置では、前記受止部材が、可撓性を有したネットから構成されて、繰出位置の前記カバー材の上端付近と車両の側面側とに懸架されるように、配設させてもよい。
【0012】
このような構成では、アクチュエータの作動により、カバー材が、車両の側面側から下端側を回転中心として待機位置まで移動すれば、受止部材としてのネットが、路面との接触を防止可能に、路面の上方において、繰出位置のカバー材の上端付近と、車両の側面側と、の間を塞ぐように懸架されることとなり、そして、下方側に撓み可能な空間を設けて、クッション性を具備するように、配置される。そのため、受止部材としてのネットが、一次衝突後の路面側に落下する歩行者を、クッション性よく、受け止めて保護できる。また、このような構成では、作動時、単に、カバー材を回転させるだけで、歩行者を受止可能に、ネットからなる受止部材を収納状態から展開させることができる。そのため、膨張用ガスを供給するインフレーター(ガス供給機)等を準備する必要のある受止部材をエアバッグから構成する場合に比べて、簡便に、歩行者保護装置を構成できる。
【0013】
また、受止部材をネットから構成する場合には、カバー材が、車両の側面側において、逆U字状であって、逆Uの字の枠に囲まれた中央部に、歩行者を受止可能の面積を配設させた形状の逆U字状として、配設されていれば、ネットからなる受止部材を、繰出位置のカバー材における逆U字状の中央部を塞ぐように、繰り出す構成としてもよい。
【0014】
このような構成でも、作動時、カバー材が、上端側を回転移動させて、繰出位置に配置されれば、受止部材としてのネットが、路面との接触を防止可能に、路面の上方において、カバー材の中央部を塞ぐように繰り出され、そして、下方側に撓み可能な空間を設けて、クッション性を具備するように、配置される。そのため、受止部材としてのネットが、一次衝突後の路面側に落下する歩行者を、クッション性よく、受け止めて保護可能となる。そのため、このような構成でも、受止部材をネットから構成できることから、膨張用ガスを供給するインフレーター(ガス供給機)等を準備する必要のある受止部材をエアバッグから構成する場合に比べて、簡便に、歩行者保護装置を構成できる。
【0015】
さらに、本発明に係る歩行者保護装置では、前記ストッパ材が、前記カバー材を繰り出す長さ寸法を可変可能に、長さ調整機構と連結されて、該長さ調整機構が、繰出時における前記受止部材若しくは前記カバー材の繰出許容スペースの有無に応じて、前記ストッパ材の長さ寸法を調整するように、構成されていることが望ましい。
【0016】
このような構成では、車両の側方に、干渉物があり、受止部材の繰出時の繰出許容スペースが制限される場合には、予め、カバー材が、長さ調整機構の調整により、所定長さに調整されたストッパ材によって、開きを小さくして、繰出スペースを小さくした繰出位置まで、繰り出される。そのため、作動時に繰り出される受止部材は、カバー材によって、歩行者受止前の干渉物との干渉を回避できて、干渉物との接触による損傷を防止できることから、円滑に、一次衝突後の歩行者を受け止めて保護できる。同様に、周囲の干渉物により、カバー材の繰出時の繰出許容スペースが制限される場合にも、カバー材が、長さ調整機構の調整により、所定長さに調整されたストッパ材によって、開きを小さくして、干渉物と干渉しない繰出スペースを小さくした繰出位置まで、繰り出されることから、繰り出される受止部材は、干渉物との干渉を回避しているカバー材により、干渉物との干渉を回避されて、円滑に、一次衝突後の歩行者を受け止めて保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る第1実施形態の歩行者保護装置を搭載した車両の概略部分斜視図であり、作動前の状態を示す。
【
図2】第1実施形態の歩行者保護装置を搭載した車両の概略部分斜視図であり、作動後の状態を示す。
【
図3】第1実施形態の歩行者保護装置を搭載した車両の概略縦断面図であり、作動前の状態を示す。
【
図4】第1実施形態の歩行者保護装置を搭載した車両の概略縦断面図であり、作動後の状態を示す。
【
図5】第2実施形態の歩行者保護装置を搭載した車両の概略部分斜視図であり、作動前の状態を示す。
【
図6】第2実施形態の歩行者保護装置を搭載した車両の概略部分斜視図であり、作動後の状態を示す。
【
図7】第2実施形態の歩行者保護装置を搭載した車両の概略縦断面図であり、作動前の状態を示す。
【
図8】第2実施形態の歩行者保護装置を搭載した車両の概略縦断面図であり、作動後の状態を示す。
【
図9】第3実施形態の歩行者保護装置を搭載した車両の概略部分斜視図であり、作動前の状態を示す。
【
図10】第3実施形態の歩行者保護装置を搭載した車両の概略部分斜視図であり、作動後の状態を示す。
【
図11】第3実施形態の歩行者保護装置を搭載した車両の概略縦断面図であり、作動後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、第1実施形態の歩行者保護装置S1は、
図1~4に示すように、一次衝突後の路面R側に落下する歩行者Mを受け止めて保護可能な受止部材40と、歩行者受止前の受止部材40の路面Rとの接触を防止するカバー材20と、カバー材20を待機位置C0から繰出位置C1側へ繰り出させるアクチュエータ30と、繰り出したカバー材20を繰出位置C1で停止させるストッパ材60と、を備えて構成されている。さらに、歩行者保護装置S1は、アクチュエータ30の作動を制御する制御装置80を備えるとともに、ストッパ材60を繰り出す長さを調整可能な長さ調整機構70を備えて構成されている。
【0019】
制御装置80は、一次衝突を検知する加速度センサや圧力センサ等からなる衝突検知用のセンサ82からの信号を入力して、車両Vの歩行者Mとの衝突を検知(若しくは衝突を予知)して、アクチュエータ30を作動させる。センサ82は、車両Vの図示しないフロントバンパ等に配設されている。また、制御装置80は、車両Vの側面VSの周囲に存在する他の車両等の干渉物IV、を検知可能なミリ波レーダや赤外線レーダ等からなる干渉物検知用のセンサ84からの信号も入力可能としている。そして、第1実施形態の場合、制御装置80は、車両Vの歩行者Mとの衝突を検知した際、アクチュエータ30を作動させるとともに、予め入力しているセンサ84からの信号に基づき、近傍に、受止部材40を繰り出す際の許容繰出スペースを制限される干渉物IVが存在すれば、長さ調整機構70の作動を制御して、ストッパ材60の繰出長さを短くし、近傍に、受止部材40を繰り出す際の許容繰出スペースを制限される干渉物IVが存在しなければ、ストッパ材60の繰出長さを長くするように、制御する。
【0020】
第1実施形態のアクチュエータ30は、受止部材と兼用のエアバッグ40としており、エアバッグ40は、作動時、ガス供給器としてのインフレーター42から供給される膨張用ガスにより、膨張し、そして、歩行者Mを受け止めて保護可能に、車両Vの側面VS側から繰り出されて、路面Rと歩行者Mとの間に配設される。
【0021】
具体的には、エアバッグ40は、膨張完了形状を略長方形板状として、車両Vの車体(ボディ)1側のフロンドとリヤとの各ドア2(F,B)におけるアウタパネル3とインナパネル5との間に折り畳まれて収納されており、インフレーター42からの膨張用ガスを流入させると、各アウタパネル3を押し開いて、各アウタパネル3の上端21から突出する。そのため、繰出前の収納位置P0のエアバッグ40は、アウタパネル3に覆われて、車両Vの側面VS側に収納されている。
【0022】
そして、第1実施形態の場合、車両Vの側面VS側に配設される車体側部材から構成されるアウタパネル3は、カバー材20を構成している。すなわち、カバー材20は、歩行者保護装置M1の作動時に、受止部材としてのエアバッグ40における歩行者Mの受止前の路面Rとの接触を防止可能に、アクチュエータ30の作動により、すなわち、アクチュエータ30として膨張するエアバッグ40に押し出されて、車両Vの側面VS側の待機位置C0から繰出位置C1側へ移動する。アウタパネル3からなるカバー材20は、下端22側をドア2(F,B)の下縁側に配設されたヒンジ4を回転中心として、上端21側を車外側Oに開くように回転移動させ、車体1の側面VS側の待機位置C0から、外側面24を路面Rに接近させた繰出位置C1側へ、移動する。そして、カバー材20は、繰出位置C1への配置時、受止部材としてのエアバッグ40の路面R側に位置して、歩行者Mの受止前における路面Rとの接触によるエアバッグ40の損傷を防止する。
【0023】
ストッパ材60は、車両Vの側面VS側に配設されて、カバー材20の上端21側と車両Vの側面VS側とを連結して、カバー材20を繰出位置C1で停止させるものであり、先端60a側を、カバー材20の上端21側に連結させ、元部60b側を、ローラ72を介在させて、長さ調整機構70のリトラクタ71に連結させている。ストッパ材60は、可撓性を有した紐材から構成されて、4本配設されており、前後のドア2F,2Bのアウタパネル3からなる各カバー材20の上端21側の前後(前部21a側と後部21b側)に、それぞれ、先端60a側を連結させ、元部60b側を、リトラクタ71に連結させている。
【0024】
長さ調整機構70のリトラクタ71は、制御装置80により調整されて、ストッパ材60を繰り出す長さを、少なくとも長短(LL,LS)の二段階で調整可能としている。すなわち、センサ82,84からの信号を入力した制御装置80が、車両Vの歩行者Mとの衝突を検知した際、周囲の干渉物IVが、受止部材としてのエアバッグ40と干渉する虞れがある距離に存在している、すなわち、エアバッグ40の繰出許容スペースが小さい(制限される)、と検知されれば、ストッパ材60の繰出長さが短い長さ寸法LSとなるように(
図4の実線参照)、リトラクタ71を制御し、また、干渉物IVが、受止部材としてのエアバッグ40と干渉する虞れがある距離に存在していない、すなわち、エアバッグ40の繰出許容スペースが大きい(制限されない)、と検知されれば、ストッパ材60の繰出長さが長い長さ寸法LLとなるように(
図4の二点鎖線参照)、リトラクタ71を制御する。
【0025】
第1実施形態の歩行者保護装置S1では、車両Vの走行時、歩行者Mとの衝突が発生すると、その衝突を検知しているセンサ82からの信号を入力していた制御装置80が、インフレーター42を作動させて、アクチュエータ30と受止部材との兼用のエアバッグ40を膨張させる。すると、膨張するアクチュエータ30としてのエアバッグ40に押されて、車体側部材としてのアウタパネル3からなるカバー材20が、下端22側のヒンジ4を回転中心として、上端21側を車外側Oに回転させ、車両Vの側面VS側の待機位置C0から繰出位置C1側へ移動し、そして、ストッパ材60により、繰出位置C1で停止される。その際、受止部材としてのエアバッグ40自体も、車両Vの側面VS側の収納位置P0から受止待機位置P1まで繰り出されて、歩行者Mを受止可能に、路面Rと歩行者Mとの間に配置されることとなり、さらに、繰り出されたエアバッグ40の路面R側には、歩行者受止前におけるエアバッグ40の路面Rとの接触を防止可能に、カバー材20が配設される。そのため、歩行者Mを受け止める前の受止部材としてのエアバッグ40は、路面Rとの接触が防止されることから、路面Rからの損傷を受けず、円滑に、落下してくる歩行者Mを受け止めて保護できる。
【0026】
なお、第1実施形態では、インフレーター42を作動させる制御装置80は、周囲の干渉物IVの有無を検知するセンサ84からの信号も入力しており、近傍に干渉物IVが存在して、受止部材としてのエアバッグ40の繰出許容スペースを制限されていれば、長さ調整機構70の作動を制御して、ストッパ材60の繰出長さを短い長さ寸法LSとして、カバー材20の繰出位置C1の配置位置を規制している(
図4の実線参照)。逆に、近傍に干渉物IVが存在しなければ、受止部材としてのエアバッグ40の繰出許容スペースが制限されないことから、長さ調整機構70の作動を制御して、ストッパ材60の繰出長さを長い長さ寸法LLとして、カバー材20の開き角度を大きくして、カバー材20の上端21を繰出位置C1より車外側Oに配置させた繰出位置C2に、カバー材20を配置させるように調整する(
図4の二点鎖線参照)。その際、膨張完了時のエアバッグ40は、カバー材20の上面(内側面)23側で支持されていることから、繰出位置C1のカバー材20で支持される受止待機位置P1より、繰出位置C2のカバー材20で支持される受止待機位置P2まで、先端40aを車外側Oに延ばすように繰り出されることとなり、その際にも、エアバッグ40と路面Rとの間には、カバー材20が介在されていることから、エアバッグ40は、歩行者受止前における路面Rとの接触による損傷、を防止できる。
【0027】
したがって、第1実施形態の歩行者保護装置S1では、歩行者Mを受け止めて保護する受止部材としてのエアバッグ40が、カバー材20により、歩行者Mの受止前の路面Rとの接触による損傷を防止できて、作動時、円滑に、歩行者Mを受け止めて保護できる。
【0028】
そして、第1実施形態の歩行者保護装置S1では、受止部材が、膨張用ガスを流入させて、繰出位置C1に配置されたカバー材20の上面23側に支持されるエアバッグ40、としており、クッション性よく、歩行者Mを受け止めることができる。なお、受止部材をエアバッグ40から構成する場合には、膨張完了時、ある程度の形状保持性を発揮できることから、外側面40c側をカバー材20の上面23側で直接的に支持されていなくとも、すなわち、カバー材20の上端21から突出した先端40a側でも、歩行者Mを受け止めて保護でき、繰出位置C1,C2に配置されるカバー材20より広い面積として、エアバッグ40は、歩行者Mを受け止めて保護可能となる。
【0029】
また、第1実施形態では、受止部材を構成するエアバッグ40を、待機位置C0のカバー材20に覆われて収納させて、膨張用ガスの流入時、カバー材20を待機位置C0から繰出位置C1,C2まで移動させるアクチュエータ30と兼用としている。そのため、第1実施形態では、カバー材20を移動させるためのアクチュエータを、別途、準備せずに済み、構成部品点数を低減できる。勿論、カバー材20を移動させるためのアクチュエータを、エアバッグ40と別に、準備してもよい。
【0030】
さらに、第1実施形態では、ストッパ材60が、カバー材20を繰り出す長さ寸法を長い長さ寸法LLや短い長さ寸法LSに可変可能に、長さ調整機構70としてのリトラクタ71と連結されて、長さ調整機構70が、繰出時における受止部材としてのエアバッグ40の繰出許容スペースの有無に応じて、ストッパ材60の長さ寸法を調整するように、構成されている。
【0031】
そのため、第1実施形態では、車両Vの側方に、干渉物IVがあり、受止部材としてのエアバッグ40の繰出時の繰出許容スペースが制限される場合には、干渉物IVの存在を検知するセンサ84からの信号に基づく制御装置80の制御により、長さ調整機構70のリトラクタ71が調整されて、所定の短い長さ寸法LSに調整されたストッパ材60によって、カバー材20が、開きを小さくして、繰出スペースを小さくした繰出位置C1まで、繰り出される(
図4の実線参照)。そのため、作動時に繰り出される受止部材としてのエアバッグ40は、開きを小さくしたカバー材20によって、繰出スペースを小さくできて、歩行者Mの受止前の干渉物IVとの干渉を回避でき、干渉物IVとの接触による損傷を防止して、膨張を完了させた状態として、円滑に、一次衝突後の歩行者Mを受け止めて保護できる。
【0032】
勿論、車両Vの周囲に干渉物IVがなく、受止部材としてのエアバッグ40の繰出時の繰出許容スペースが制限されない場合には、干渉物IVの存在の無いこと検知するセンサ84からの信号に基づく制御装置80の制御により、長さ調整機構70のリトラクタ71が調整されて、所定の長い長さ寸法LLに調整されたストッパ材60によって、カバー材20が開きを大きくして、繰出スペースを大きくした繰出位置C2まで、繰り出される。そのため、作動時に繰り出される受止部材としてのエアバッグ40も、カバー材20によって、歩行者Mの受止前の路面Rとの接触を回避できて、路面Rとの接触による損傷を防止できる状態として、繰出スペースを大きくして膨張させることができて、円滑に、一次衝突後の歩行者Mを受け止めて保護できる。
【0033】
第1実施形態では、歩行者Mを受け止める受止部材として、エアバッグ40を使用したが、
図5~8に示す第2実施形態の歩行者保護装置S2のように、受止部材を、可撓性を有したネット45から構成してもよい。ネット45は、歩行者Mをクッション性よく受け止め可能に、合成樹脂製等の糸を撚ってなる紐を網目状や格子状に編んで形成されており、繰出位置C1,C2のカバー材25の上端26付近と車両Vの側面VS側とに懸架されるように、配設されている。詳しくは、ネット45の先端46側は、カバー材25の上端26側に連結され、元部47側は、待機位置C0のカバー材25の上端26付近における車両Vの側面VS側、具体的には、車体側部材としてのサイドメンバ6のインナパネル9の部位9aに、連結されている。
【0034】
第2実施形態のカバー材25は、車両Vの二つのドア2(F,B)の周囲を囲む逆U字形状のサイドメンバ6におけるアウタパネル7から構成されている。カバー材25は、下端27側を、サイドメンバ6のインナパネル9に配設されるヒンジ8に支持されて、繰出時の回転中心とし、上端26側を車外側Oに回転移動させて、待機位置C0から繰出位置C1,C2まで繰り出すように作動される。そして、繰出位置C1,C2に配置されれば、受止部材としてのネット45が、先端46側を繰出位置C1,C2のカバー材25の上端26に連結させ、元部47側を待機位置C0のカバー材25の上端26付近のインナパネル9の上端9aに連結させていることから、インナパネル9の上端9a付近と、開いたカバー材25の上端26(アウタパネル7の上端7a)付近と、の間を塞ぐように、配設されることとなる。勿論、この時、ネット45の下方には、カバー材25が配設されていることから、ネット45の路面Rとの接触は防止される。
【0035】
繰出位置C1,C2において、カバー材25を停止させるストッパ材62は、第1実施形態と同様に、可撓性を有した紐材から形成されて、2本使用され、それぞれの先端62a側を、カバー材25の上端26側における前部26aと後部26bとに連結させている。また、これらのストッパ材62は、それぞれ、元部62bを、長さ調整機構75としてのリトラクタ76に連結させている。
【0036】
各リトラクタ76は、車両Vのルーフパネル11側に配設され、センサ82,84からの信号を入力する制御装置80に作動を制御されて、周囲の干渉物IVの配置状況に応じて、ストッパ材62の繰出長さ寸法を、長短の二段階(LL,LS)に、調整する。
【0037】
また、カバー材25を繰り出すためのアクチュエータ32は、第2実施形態の場合、シリンダタイプとして、カバー材25の下端27側におけるヒンジ8の上方の前部27aと後部27bとのインナパネル9側に、固定されており、内部にガスジェネレータを内蔵させて、作動時、ロッド33を車外側Oに延ばすように動作する。アクチュエータ32の作動時、ロッド33が延びれば、カバー材25は、ロッド33の先端33aによりヒンジ8の上方付近を車外側Oに押されて、下端27側のヒンジ8を回転中心として、上端26側が車外側Oに回転して、待機位置C0から、ストッパ材62の繰出長さに応じた繰出位置C1,C2まで移動する。なお、第2実施形態のアクチュエータ32は、作動時のロッド33の移動ストロークとして、カバー材25を待機位置C0から離脱させるだけの短いストロークとしており、カバー材25を繰出位置C1まで移動させる長さではなく、ロッド33に押されたカバー材25は、慣性力により、繰出位置C1,C2まで移動する構成としている。
【0038】
この第2実施形態でも、車両Vの走行時、歩行者Mとの衝突が発生すると、その衝突を検知しているセンサ82からの信号を入力していた制御装置80が、アクチュエータ32を作動させることから、カバー材25が、アクチュエータ32のロッド33の先端33aに押されて、下端27側のヒンジ8を回転中心として、上端26側を車外側Oに回転移動し、待機位置C0から、所定長さに繰り出されたストッパ材62の繰出長さ寸法LS,LLに応じた繰出位置C1,C2まで、移動する。そして、カバー材25が移動すれば、受止部材としてのネット45が、カバー材25の繰出位置C1に対応する受止待機位置P1と、カバー材25の繰出位置C2に対応する受止待機位置P2として、カバー材25の上端26付近と、車両Vの側面VS側と、の間を塞ぐように懸架されて、それぞれ、下方側に撓み可能な空間を設けて、クッション性を具備するように、配置される。そのため、受止部材としてのネット45が、一次衝突後の路面R側に落下する歩行者Mを、クッション性よく、受け止めて保護できる。
【0039】
そして、第2実施形態の歩行者保護装置S2では、作動時、単に、カバー材25を回転させるだけで、歩行者Mを受止可能に、ネット45からなる受止部材を収納状態から展開させることができる。そのため、膨張用ガスを供給するインフレーター(ガス供給機)42等を準備する必要のある受止部材をエアバッグ40から構成する場合に比べて、簡便に、歩行者保護装置S2を構成できる。
【0040】
なお、この第2実施形態でも、アクチュエータ32を作動させる制御装置80は、周囲の干渉物IVの有無を検知するセンサ84からの信号も入力しており、近傍に干渉物IVが存在して、カバー材25の繰出許容スペースを制限されていれば、長さ調整機構75の作動を制御して、ストッパ材62の繰出長さを短い長さ寸法LSとして、カバー材25の繰出位置C1の配置位置を規制している(
図8の実線参照)。逆に、近傍に干渉物IVが存在しなければ、カバー材25の繰出許容スペースが制限されないことから、長さ調整機構75の作動を制御して、ストッパ材62の繰出長さを長い長さ寸法LLとして、カバー材25の開き角度を大きくして、カバー材25の上端26を繰出位置C1より車外側Oに配置させた繰出位置C2に、カバー材25を配置させるように調整する(
図8の二点鎖線参照)。その際、受止部材としてのネット45は、網目状として、受止時の歩行者Mを路面Rに接触させない状態として、伸び可能としていることから、受止待機位置P1より車外側Oに位置する受止待機位置P2に先端46が配置されても、繰出位置C2のカバー材25の上端26付近と、車両Vの側面VS側と、の間を塞ぐように懸架されることとなり、下方側に撓み可能な空間を設けて、クッション性を具備するように、配置されるため、一次衝突後の路面R側に落下する歩行者Mを、クッション性よく、受け止めて保護できる。
【0041】
受止部材として、ネットを利用する場合、
図9~11に示す第3実施形態の歩行者保護装置S3のように構成してもよい。
【0042】
第3実施形態の歩行者保護装置S3では、カバー材25Aが、第2実施形態のカバー材25と同様に、ドア2(F,B)の周囲のサイドメンバ6におけるアウタパネル7から構成されて、車両Vの側面VS側において、逆U字状に配設されている。このカバー材25Aは、第2実施形態と同様に、下端27側のインナパネル9に設けれらたヒンジ8を回転中心として、アクチュエータ32の作動により、待機位置C0から、ストッパ材62によって停止される繰出位置C1,C2まで、上端26側が車外側Oに回転移動する。アクチュエータ32は、第2実施形態と同様の構成であり、センサ82の信号を入力した制御装置80により、ロッド33を延ばすように、作動され、カバー材25Aは、延びるロッド33の先端33aに押されて、待機位置C0から、ストッパ材62によって停止される繰出位置C1,C2まで、回転移動する。
【0043】
ストッパ材62は、第2実施形態と同様に、長さ調整機構75のリトラクタ76により、繰出長さの長さ寸法LL,LSを調整され、長さ調整機構75のリトラクタ76は、干渉物IVを検知するセンサ84の信号を入力した制御装置80により、作動を制御される。
【0044】
そして、第3実施形態のネット50は、第2実施形態のネット45と相違して、カバー材25Aの逆Uの字の枠に囲まれた内縁28側の中央部29を塞ぐように、繰り出される。
【0045】
なお、カバー材25Aは、中央部29の面積を、二枚のドア2(F,B)分として、歩行者Mを受止可能な面積としている。
【0046】
さらに、ネット50は、収納位置P0での収納状態では、カバー材25Aの内縁28側に折り畳まれて収納され、繰出時に、先端51が、中央部29を遮蔽するように、ヒンジ8側(下端27側)に接近し、内縁28に連結させた元部52と先端51との間で、中央部29を塞ぐ構成としている。
【0047】
先端51には、巻取用のリトラクタ55により巻き取られる牽引ストラップ56が連結されている。牽引ストラップ56は、先端56aを、内縁28の後端付近に配設された止め具57に連結させ、元部56b側を、リトラクタ55に連結させている。そして、アクチュエータ32を作動させる制御装置80が、アクチュエータ32の作動に伴なって、リトラクタ55を作動させて、牽引ストラップ56を牽引し、牽引ストラップ56を連結させて内縁28側に配置されていた先端51側を、ヒンジ8側に接近させるように引っ張って、中央部29を塞ぐように、ネット50を繰り出すこととなる。このネット50は、第2実施形態のネット45と同様に、網目状として、受止時の歩行者Mを路面Rに接触させない状態として、伸び可能としている。勿論、歩行者受止前のネット50は、路面Rと接触しないように、路面Rとの間にカバー材25Aが介在される位置に、配設される構成としている。
【0048】
この第3実施形態でも、アクチュエータ32の作動時、カバー材25Aが、上端26側を回転移動させて、繰出位置C1,C2に配置されれば、受止部材としてのネット50が、カバー材25Aの中央部29を塞ぐように繰り出されて、下方側に撓み可能な空間を設けて、クッション性を具備するように、配置される。そのため、受止部材としてのネット50が、カバー材25Aの繰出位置C1に対応する受止待機位置P1や、カバー材25Aの繰出位置C2に対応する受け止め待機位置P2、に配置されて、一次衝突後の路面R側に落下する歩行者Mを、クッション性よく、受け止めて保護可能となる。そして、このような構成でも、受止部材をネット50から構成できることから、膨張用ガスを供給するインフレーター(ガス供給機)等を準備する必要のある受止部材をエアバッグ40から構成する場合に比べて、簡便に、歩行者保護装置S3を構成できる。
【0049】
なお、第1~3実施形態の長さ調整機構70,75では、ストッパ材60,62の長さ調整を長短の二段階で調整するようにしたが、ストッパ材60,62の長さ調整は、二段階でなく、干渉物IVの接近状態に応じて、三段階以上の多段階に、調整してもよい。
【符号の説明】
【0050】
3…(車体側部材)アウタパネル、4…ヒンジ、7…(車体側部材)アウタパネル、8…ヒンジ、20,25,25A…カバー材、21,26…上端、22,27…下端、28…内縁、29…中央部、30,32…アクチュエータ、40…(受止部材)エアバッグ、45,50…(受止部材)ネット、60,62…ストッパ材、70,75…長さ調整機構、71,76…リトラクタ、
C0…(カバー材)待機位置、C1,C2…(カバー材)繰出位置、P0…(受止部材)収納位置、P1,P2…(受止部材)受止待機位置、R…路面、M…歩行者、V…車両、VS…(車両)側面、IV…干渉物、LL…(ストップ材の長い)長さ寸法、LS…(ストップ材の短い)長さ寸法、S1,S2,S3…歩行者保護装置。