(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
B62D 1/04 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
B62D1/04
(21)【出願番号】P 2019138127
(22)【出願日】2019-07-26
【審査請求日】2021-07-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】森田 文平
(72)【発明者】
【氏名】明比 里実
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0297606(US,A1)
【文献】米国特許第06095552(US,A)
【文献】特開2002-104201(JP,A)
【文献】特開2010-023649(JP,A)
【文献】特開2000-016301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/00 - 1/28
B60K 35/00 - 37/06
B60R 21/205
B60R 21/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操舵時、運転者が把持して回動中心軸回りに回動操作するように使用するステアリングホイールであって、
前記回動中心軸側に配設されるボス部と、
前記ボス部の周囲における前記回動中心軸の直交方向の外周縁側に配置されて、運転者が操舵時に把持可能な把持部を設けた外周縁部と、
前記ボス部の上方側を含めた前記外周縁部の前記ボス部側の全域を覆う中央部と、
を備える構成として、
前記ボス部、前記中央部、及び、前記外周縁部を相互に連結するように、前記ボス部に配置されるボス側支持材部と、前記外周縁部に配置される外周縁側支持材部と、前記中央部に配設されて、前記ボス側支持材部と前記外周縁側支持材部とを連結する連結部と、を備えて、剛性を有して構成される支持材、が配設されるとともに、
少なくとも、前記支持材の前記外周縁側支持材部と、前記外周縁側支持材部近傍の前記連結部と、の周囲に、前記支持材より軟質の被覆材、が配設され、
前記把持部が、前記外周縁部の全周にわたって、配設されるとともに、
前記把持部に配設される前記外周縁側支持材部が、
外周縁側に、前記回動中心軸に沿った下方側に突出して、前記外周縁部の全周にわたって連なる環状凸部、を配設させ、
該環状凸部の上面側に、前記外周縁部の全周にわたって連なり、前記回動中心軸と略直交方向に前記連結部側に平面状に延びる環状平坦部、を配設させて構成され、
前記把持部が、
前記環状凸部の上面側から外周面側を経た前記下面側の領域を、前記被覆材を介在させて、運転者の把持する把持本体部として、構成されるとともに、
前記外周縁側支持材部の前記環状平坦部の下面側における前記環状凸部の内周側の前記被覆材の配設領域に、少なくとも運転者の把持時に、前記環状凸部の下端側における前記被覆材の部位の下面より上方側へ凹んで運転者の指先の進入可能な収納凹部、を配設させる構成としていることを特徴とするステアリングホイール。
【請求項2】
前記把持部の前記被覆材が、前記外周縁部の下面側において、前記外周縁側支持材部の前記環状凸部の下方の下面より、前記収納凹部の領域を、上方へ凹ませる肉厚として、配設されていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングホイール。
【請求項3】
前記把持部の前記被覆材が、前記外周縁部の下面側において、
前記外周縁側支持材部の前記環状凸部の下方から、前記収納凹部の領域を経て、前記連結部近傍の下方までの領域を、略平面状の肉厚として、配設されるとともに、
運転者の把持時に、弾性変形して、前記収納凹部を形成可能な硬度として、配設されていることを特徴とする請求項1に記載のステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の操舵時、運転者が把持して回動中心軸回りに回動操作するように使用するステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステアリングホイールとしては、回動中心軸側に配設されるボス部と、ボス部の周囲における回動中心軸の直交方向の外周縁側に配置されて、運転者が操舵時に把持可能な把持部を設けた略円環状の外周縁部(リング部・リム部)と、ボス部と外周縁部とを連結するスポーク部と、を備える構成としていた(例えば、特許文献1参照)。スポーク部は、相互に離れてボス部から放射状に延びて外周縁部に連なるように配設されていた。そして、運転者は、操舵時、スポーク部間の開口を利用して、手の親指側を、開口側に差し込むように、略円環状の外周縁部の内周面側に配置させて、他の人差し指等を利用しつつ、外周縁部を把持し、所定方向に外周縁部を回動操作していた。また、外周縁部は、アルミニウム軽合金等の略円環状の芯材(支持材)を配設させ、感触を良好にするように、芯材の周囲に、ウレタン等からなる被覆材を配設させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のステアリングホイールでは、ボス部側の回動中心軸と直交方向の外周縁部の内周側に、把持する際の指を挿入させる開口を備えており、把持し易いものの、ステアリングホイールが、デザイン上、外周縁部からボス部の中央部側において、開口を設けていない構成の場合には、把持し難くなることから、円滑な操舵操作に課題が生じる。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、ボス部の上方から操舵時に把持する外周縁部までの領域に、指を差し込むような開口を備えていない構成としても、操舵時の感触を良好にしつつ、円滑に操舵操作できるステアリングホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るステアリングホイールは、車両の操舵時、運転者が把持して回動中心軸回りに回動操作するように使用するステアリングホイールであって、
前記回動中心軸側に配設されるボス部と、
前記ボス部の周囲における前記回動中心軸の直交方向の外周縁側に配置されて、運転者が操舵時に把持可能な把持部を設けた外周縁部と、
前記ボス部の上方側を含めた前記外周縁部の前記ボス部側の全域を覆う中央部と、
を備える構成として、
前記ボス部、前記中央部、及び、前記外周縁部を相互に連結するように、前記ボス部に配置されるボス側支持材部と、前記外周縁部に配置される外周縁側支持材部と、前記中央部に配設されて、前記ボス側支持材部と前記外周縁側支持材部とを連結する連結部と、を備えて、剛性を有して構成される支持材、が配設されるとともに、
少なくとも、前記支持材の前記外周縁側支持材部と、前記外周縁側支持材部近傍の前記連結部と、の周囲に、前記支持材より軟質の被覆材、が配設され、
前記把持部が、前記外周縁部の全周にわたって、配設されるとともに、
前記把持部に配設される前記外周縁側支持材部が、
外周縁側に、前記回動中心軸に沿った下方側に突出して、前記外周縁部の全周にわたって連なる環状凸部、を配設させ、
該環状凸部の上面側に、前記外周縁部の全周にわたって連なり、前記回動中心軸と略直交方向に前記連結部側に平面状に延びる環状平坦部、を配設させて構成され、
前記把持部が、
前記環状凸部の上面側から外周面側を経た下面側の領域を、前記被覆材を介在させて、運転者の把持する把持本体部として、構成されるとともに、
前記外周縁側支持材部の前記環状平坦部の下面側における前記環状凸部の内周側の前記被覆材の配設領域に、少なくとも運転者の把持時に、前記環状凸部の下端側における前記被覆材の部位の下面より上方側へ凹んで運転者の指先の進入可能な収納凹部、を配設させる構成としていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るステアリングホイールでは、運転者が把持部を把持する際、把持本体部を把持し、その際、手の親指と母指球付近とを、把持本体部の上面側に配置させ、人差し指、中指、薬指、小指を、曲げて、把持本体部の下面側に配置させて、把持本体部を把持することとなる。この把持時には、把持部に配設される剛性を有した外周縁側支持材部が、ボス部側の連結部から延びる環状平坦部の下面側に、下方へ突出する環状凸部を備えて、環状凸部の内周側の環状平坦部の下面側に、収納凹部を配設させるための凹部を配設させる構成であり、環状凸部の配設部位を、軟質の被覆材を介在させて、良好な感触として、的確に、握ることができる。すなわち、把持本体部の上面側では、剛性を有した環状平坦部の連結部側までの延びる平面状の部位が、配設されており、把持本体部の上面側の軟質の被覆材を弾性変形させて、感触を良好な状態を維持しつつ、親指と母指球付近とを、広い平面状の環状平坦部側に押し付けることができ、そして、把持本体部の下面側では、収納凹部の凹面側を含めて、周囲の軟質の被覆材を弾性変形させて、感触を良好にしつつ、人差し指、中指、薬指、小指が、把持本体部の下面側を掴むことができて、その結果、環状凸部付近の把持本体部の周囲を的確に把持できて、親指等を差し込むような開口を備えていなくとも、安定して操舵操作を行える。
【0008】
したがって、本発明に係るステアリングホイールでは、ボス部の上方から操舵時に把持する外周縁部までの領域に、指を差し込むような開口を備えていない構成としても、操舵時の感触を良好にしつつ、円滑に操舵操作をすることができる。
【0009】
そして、本発明に係るステアリングホイールでは、収納凹部は、運転者が把持する前に予め形成されていてもよい。すなわち、把持部の被覆材が、外周縁部の下面側において、外周縁側支持材部の環状凸部の下方の下面より、収納凹部の領域を、上方へ凹ませる肉厚として、配設されていればよい。
【0010】
勿論、本発明にステアリングホイールでは、収納凹部は、運転者が把持する際に、形成されるように構成してもよい。すなわち、把持部の被覆材が、外周縁部の下面側において、外周縁側支持材部の環状凸部の下方から、収納凹部の領域を経て、連結部近傍の下方までの領域を、略平面状の肉厚として、配設されるとともに、運転者の把持時に、弾性変形して、収納凹部を形成可能な硬度として、配設されていてもよい。
【0011】
このような構成では、把持部を実際に把持するまで、外周縁部の下面側が凹みの無い平面状となることから、斬新なデザインのステアリングホイールとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態のステアリングホイールの概略斜視図である。
【
図2】実施形態のステアリングホイールの平面図である。
【
図3】実施形態のステアリングホイールの側面図である。
【
図4】実施形態のステアリングホイールの底面図である。
【
図5】実施形態のステアリングホイールの概略断面図であり、
図2のV-V部位を示す。
【
図6】実施形態のステアリングホイールの概略断面図であり、
図2のVI-VI部位を示す。
【
図7】実施形態のステアリングホイールの把持部の拡大断面図である。
【
図8】実施形態のステアリングホイールの把持部を把持する状態を示す平面図と底面図である。
【
図9】実施形態のステアリングホイールの把持部を把持する状態の概略断面図である。
【
図10】実施形態のステアリングホイールの把持部の別位置を把持する状態を示す概略断面図である。
【
図11】実施形態の変形例のステアリングホイールの平面図である。
【
図12】
図11に示すステアリングホイールの概略断面図であり、
図10のXII-XII部位を示す。
【
図13】
図11に示すステアリングホイールの把持部の把持状態を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態のステアリングホイール10は、
図1~6に示すように、操舵時の回動中心軸C1側に配設されるボス部23と、ボス部23の周囲における回動中心軸C1の直交方向の外周縁側に配置されて、運転者が操舵時に把持可能な把持部26を設けた外周縁部25と、ボス部23の上方側を含めた外周縁部25のボス部23側の全域を覆う中央部30と、を備えて構成されている。換言すれば、実施形態の場合、ボス部23は、中央部30の略中央領域における下面側に、配設されている。そして、実施形態のステアリングホイール10では、外周縁部25のボス部23側の全域を覆う中央部30は、指を差し込むような開口を設けていない構成として、配設されている。
【0014】
また、ステアリングホイール10は、ボス部23、外周縁部25、及び、中央部30を相互に連結するように、剛性を有した支持材11を内部に配設させている。支持材11は、ボス部23に配置されるボス側支持材部12と、外周縁部25に配置される外周縁側支持材部16と、中央部30に配置されて、外周縁側支持材部16とボス側支持材部12とを連結する連結部14と、から構成されている。支持材11は、剛性を有するように、アルミニウム等の軽合金や鋼材からなる金属材、あるいは、適宜、フィラー入りとしたポリプロピレン、ポリアミド、ABS樹脂等の合成樹脂材等からなり、鋳造や型成形等により、形成されている。
【0015】
ボス部23に配置されるボス側支持材部12は、回動中心軸C1と同軸上に配置される車体側の操舵軸1に連結されて、ステアリングホイール10の回転操舵時、操舵軸1を回動させる。また、ボス側支持材部12には、操舵軸1との結合強度を向上させるように、鋼等からなるボス芯材12aが配設されている。
【0016】
なお、操舵軸1には、その回動角度を検出する図示しないセンサが配設され、センサによる回転角度(操舵角)の電気信号を入力した図示しない所定の制御装置により、車両の操舵輪が操舵されることとなる。
【0017】
また、操舵軸1側には、回動中心軸C1とともに、操舵軸1のコラム角θc(
図3参照)を調整可能なチルト機構3が配設されており、チルト機構3の操作レバー6のロック解除操作により、操舵軸1を支持するケース4の揺動中心軸5周りの停止状態を解除できて、操舵軸1のコラム角θcを調整できる。そして、操舵軸1のコラム角θcを所望の角度に調整したならば、操作レバー6をロック位置に復帰させて、ケース4を、調整した揺動中心軸5周りの角度位置で、停止させることができる。なお、このようなチルト機構3によるコラム角θcの調整では、操舵軸1の角度調整により、中央部30の後述するクッション部34の配置角度を調整できて、運転者MD(
図5,6の二点鎖線参照)は、所望の配置角度のクッション部34により、休息できることとなる。
【0018】
支持材11の外周縁側支持材部16は、外周縁部25の全周に配置される環状として、環状凸部17と環状平坦部18とを備えて構成されている(
図2,5~7参照)。環状凸部17は、回動中心軸C1に沿った下方側に突出して、外周縁部25の全周にわたって連なるように配設され、環状平坦部18は、環状凸部17の上面17a側に、外周縁部25の全周にわたって連なり、回動中心軸C1と略直交方向に連結部14側に平面状に延びるように、配設されている。そして、環状平坦部18の下面18b側における環状凸部17の内周面17b側には、後述する被覆材20の被覆本体部21を介在させて、運転者MDの操舵時に把持部26を把持する際、指(人差し指F1、中指F2、薬指F3、小指F4)が収納凹部28内に進入して、親指F0や母指球DPMとで、円滑に、後述する把持本体部27を把持できるように(
図8参照)、凹部16aが形成されている(
図5~7参照)。
【0019】
連結部14は、ボス側支持材部12と外周縁側支持材部16とを連結する略楕円板状(詳しくは、略楕円形の椀形状)として、構成されている。連結部14には、適宜、上下を貫通する複数の貫通孔15が配設されて、被覆材20の被覆本体部21の形成材料を、貫通孔15を経て、連結部14の上面側と下面側とに流し可能とし、かつ、貫通孔15に充填される被覆本体部21の形成材料により、被覆本体部21の外周縁側支持材部16上や連結部14上でのずれが防止されている。
【0020】
支持材11の周囲には、感触を良好にするように、被覆材20が配設されている。被覆材20は、支持材11のボス側支持材部12、連結部14、及び、外周縁側支持材部16の外周を被覆する被覆本体部21と、外周縁部25の被覆本体部21の上面側に重なって配設される延設被覆部22と、から構成されている。被覆本体部21は、型成形等により、支持材11の周囲に配設されている。延設被覆部22は、把持部26(F,L,R)の上面側の部位であり、実施形態の場合、被覆本体部21と別体とした後述するクッション部34の縁34aの前縁34afと左右の縁34al,34ar付近から構成されて、運転者MDが操舵時に把持部26(F,L,R)を把持する際に、外周縁側支持材部16との間に介在されて、被覆本体部21とともに一体的に把持される部位となる。被覆材20の被覆本体部21は、硬質の支持材11と相違して、把持した際の感触を良好にするように、軟質としたウレタン等の合成樹脂材料から形成され、延設被覆部22も、同様に、支持材11より軟質のウレタン等の合成樹脂材料から形成されている。
【0021】
なお、実施形態では、運転者MDが把持し難い領域のボス側支持材部12やボス側支持材部12近傍の連結部14の周囲にも、外周縁側支持材部16を被覆した被覆材20の被覆本体部21を延設させているが、これらのボス側支持材部12やボス側支持材部12近傍の連結部14の周囲、特に、中央部30の下面側では、被覆材20の被覆本体部21でなく、別途、支持材11側に組み付けて配設させるポリアミド等の合成樹脂製のロアカバー、を配設させてもよい。
【0022】
そして、ステアリングホイール10の外周縁部25は、支持材11の外周縁側支持材部16を被覆材20により被覆させて形成されており、実施形態の場合、全周にわたって、把持部26を配設させている。把持部26は、運転者MD側の上面27aと、下面27cと、上面27aと下面27cとを連結する略円弧状の外周面27bと、を有した断面略円形とする把持本体部27を備えるとともに、連結部14に連なる下面27c側に、上方へ凹む収納凹部28を配設させて構成されている。
【0023】
把持本体部27の上面27a側は、外周縁部25の前縁25aと左右の縁25c,25dの部位では、
図5,7に示すように、外周縁側支持材部16の環状平坦部18の上面側を覆う被覆材20の被覆本体部21の上面側部21aと、クッション部34の縁34a(前縁34af、左縁34al,右縁34ar)側の延設被覆部22とが、配設されており、外周縁部25の後縁25b側では、被覆本体部21の厚みを増した上面側部21aが配設されている。把持本体部27の外周面27b側は、外周縁側支持材部16の環状平坦部18と環状凸部17との外周面側を覆う被覆本体部21の外周面側部21bが、配設され、把持本体部27の下面27c側では、環状凸部17の下面側を覆う被覆本体部21の下面側部21cが配設されている。収納凹部28の部位では、環状凸部17の内周面17b側から環状平坦部18の下面18b側を覆う被覆本体部21の内側面部21dが配設されている。
【0024】
さらに、被覆本体部21は、内側面部21dから連結部14の下面側を覆う下面側延設部21fと、下面側延設部21fから延びてボス側支持材部12の外周を覆うボス側部21gと、を備えている。また、被覆本体部21は、連結部14の貫通孔15内に充填される充填部21h、を備えている。
【0025】
なお、実施形態の場合、中央部30と外周縁部25との境界部位は、収納凹部28の領域としている。
【0026】
また、把持部26に配設される被覆材20の被覆本体部21と延設被覆部22との硬度は、柔らか過ぎず、かつ、堅過ぎず、良好な触感として、運転者MDが把持できるように、30~50(アスカーC硬度)の範囲内としている。具体的には、把持部26に配設される被覆材20の被覆本体部21は、略40(アスカーC硬度)とし、延設被覆部22は、殆ど後述する柔らかい外側層37の領域となることから、略0(アスカーC硬度)としている。
【0027】
そして、外周縁部25のボス部23側を覆う中央部30は、外周縁部25より回動中心軸C1に沿って上方側に突出する隆起部32を備えている。隆起部32は、上面32a側に、復元可能として下方側へ凹み可能な弾性を有したクッション部34、を配設させている。実施形態の場合、隆起部32は、その全域をクッション部34から構成されている。
【0028】
このクッション部34は、
図5,6に示すように、透明なウレタンやシリコン等からなる内側層36と外側層37とを備えてなるクッション材35を配設させて構成されている。クッション材35の内側層36は、弾性変形可能で、かつ、形状保持性を有し、外側層37は、内側層36より柔らかく(人肌に近い柔軟性を有して)構成されている。実施形態では、内側層36の厚さ寸法t1を約2mm程度、外側層37の厚さ寸法t2を約15mm程度とし、内側層36の硬度を約35(ショアーA硬度)とし、外側層37の硬度を約0(アスカーC硬度)としている。
【0029】
さらに、実施形態では、クッション材35からなるクッション部34は、内側に、図示しない連通孔を有して大気に連通する空間部43を設けた椀形状として構成され、外表面には、ソフトな触感となるように、織布や不織布等の布材(ファブリック)からなるシート材39が、貼着されている。シート材39は、具体的には、運転者MDの顔が触れても、良好な感触となるように、枕やクッションのカバー材、あるいは、ベッドやソファ等の張り布等の布材から構成されている。また、このシート材39は、ある程度の透光性を有して、後述する投影装置50から投影される画像GF(
図1の二点鎖線参照)を、裏面39b側に投影させて、シート材39の表面39a側から視認できるように構成されている。
【0030】
そして、実施形態の場合、クッション部34(隆起部32)は、外周縁部25の把持部26の把持本体部27における外周面27b側から、略半割り楕円球状に隆起するように、配設されている。ちなみに、このクッション部34(隆起部32)は、ボス部23のボス芯材12aにおける回動中心軸C1に沿った上方位置より、僅かに前方側にずれた位置を頂部33として、緩やかな曲面状に隆起する形状として、下端を被覆本体部21の上面側に固着させて、配設されている。
【0031】
また、実施形態の場合、
図2に示すように、外周縁部25は、上方から見て、左右方向の幅寸法WHより、前後方向の幅寸法WLを小さくした略楕円形としている。特に、外周縁部25が、上方から見て、前縁25a側の外形形状を、後縁25b側の外形形状より、曲率半径を大きくするような円弧状とした形状としている(前縁25a側の曲率半径rf>後縁25b側の曲率半径rb)。なお、実施形態では、左右方向の幅寸法WHを約380mm、前後方向の幅寸法WLを約200mmとしている。
【0032】
外周縁部25の内側の隆起部32も、上方から見て、左右方向の幅寸法より、前後方向の幅寸法を小さくした略楕円形としている。特に、隆起部32は、上方から見て、外周縁部25の前縁25aとの間の幅寸法Bfより、外周縁部25の後縁25bとの間の幅寸法Bbを広くして、配設されている。実施形態の場合、隆起部32における外周縁部25の前縁25aとの間の幅寸法Bfは、殆ど、0としている。
【0033】
クッション部34に覆われた中央部30の内部には、支持材11に支持されて、投影装置50が配設されている。投影装置50は、透明なクッション部34を透過して、シート材39の裏面39b側に、所定の画像GF(
図1の二点鎖線参照)を投影するものであり、実施形態の場合、LEDマトリクスパネルを使用して、シート材39の裏面39b側に、時刻表示やリラックスできるような動画等の画像GFを投影させるように構成されている。
【0034】
また、クッション部34の左右両縁には、押圧操作して、ホーンを作動させたり、オーディオ装置を操作できる操作スイッチ53,54が配設されている(
図2,6参照)。
【0035】
実施形態のステアリングホイール10では、
図8~10に示すように、運転者MDが把持部26(F,B,L,R)を把持する際、把持本体部27を把持し、その際、手DH(L,R)の親指F0と母指球DPM付近とを、把持本体部27の上面27a側に配置させ、人差し指F1、中指F2、薬指F3、小指F4を、曲げて、把持本体部27の下面27c側に配置させて、把持本体部27を把持することとなる。この把持時には、把持部26(F,B,L,R)に配設される剛性を有した外周縁側支持材部16が、ボス部23側の連結部14から延びる環状平坦部18の下面18b側に、下方へ突出する環状凸部17を備えて、環状凸部の内周面17b側の環状平坦部18の下面18b側に、収納凹部28を配設させるための凹部16aを配設させる構成であり、環状凸部17の配設部位を、軟質の被覆材20を介在させて、良好な感触として、的確に、握ることができる。すなわち、把持本体部27の上面27a側では、剛性を有した環状平坦部18の連結部14側までの延びる平面状の部位18aが、配設されており、把持本体部27の上面27a側の軟質の被覆材20を弾性変形させて、感触を良好な状態を維持しつつ、親指F0と母指球DPM付近とを、広い平面状の環状平坦部18側の平面状部位18aに押し付けることができる。詳しくは、
図8~10に示すように、外周縁部25の前縁25a側や左右の縁25c,25d側では、被覆本体部21の上面側部21aと延設被覆部22とが弾性変形し、外周縁部25の後縁25b側では、被覆本体部21の上面側部21aが弾性変形して、共に、親指F0と母指球DPM付近とが、感触を良好な状態を維持しつつ、広い平面状の環状平坦部18側の平面状部位18aに押し付けられることとなる。そしてまた、把持本体部27の下面27c側では、外周縁部25の全周にわたって、収納凹部28の凹面28a側を含めて、周囲の軟質の被覆本体部21の下面側部21cや内側面部21dを弾性変形させて、感触を良好にしつつ、人差し指F1、中指F2、薬指F3、小指F4が、把持本体部27の下面27c側を掴むことができて、その結果、環状凸部17付近の把持本体部27の周囲を的確に把持できて、親指F0等を差し込むような開口を備えていなくとも、安定して操舵操作を行える。
【0036】
したがって、実施形態のステアリングホイール10では、ボス部23の上方から操舵時に把持する外周縁部25までの領域に、指を差し込むような開口を備えていない構成としても、操舵時の感触を良好にしつつ、円滑に操舵操作をすることができる。
【0037】
また、実施形態のステアリングホイール10では、収納凹部28は、運転者MDが把持する前に予め形成されている。すなわち、把持部26の被覆材20が、外周縁部25の下面側において、外周縁側支持材部16の環状凸部17の下方の下面側部21dより、収納凹部28の領域を、上方へ凹ませる肉厚t0として、配設されている。
【0038】
この場合、被覆材20は、硬度を30~50(アスカーC硬度)としていれば(詳しくは、把持部26に配設される被覆材20の被覆本体部21は、約40(アスカーC硬度)とし、延設被覆部22は、約0(アスカーC硬度)としている)、把持部26の把持時、柔らか過ぎず、かつ、堅過ぎず、良好な触感として、運転者は把持部を把持することができる。
【0039】
なお、収納凹部28は、運転者が把持する際に、形成されるように構成してもよい。すなわち、
図11~13に示すステアリングホイール10Aのように、把持部26Aの被覆材20Aが、外周縁部25Aの下面側において、外周縁側支持材部16Aの環状凸部17の下方から、連結部14近傍の下方までの領域を、略平面状の肉厚として、配設されるとともに、運転者の把持時に、弾性変形して、収納凹部28Aを形成可能な硬度として、配設されていてもよい。
【0040】
このステアリングホイール10Aは、ステアリングホイール10と同様に、回動中心軸C1側に配設されるボス部23と、ボス部23の周囲における回動中心軸C1の直交方向の外周縁側に配置されて、運転者が操舵時に把持可能な把持部26Aを設けた外周縁部25Aと、ボス部23の上方側を含めた外周縁部25Aのボス部23側の全域を覆う中央部30Aと、を備える構成としている。但し、このステアリングホイール10Aは、上方から見た外周縁部25Aの外形形状を略長方形形状として、ボス部23、中央部30A、及び、外周縁部25Aを相互に連結するように、剛性を有して構成される金属製若しくは合成樹脂製の支持材11Aを備えている。支持材11Aは、ボス部23に配置されるボス側支持材部12と、外周縁部25Aに配置される外周縁側支持材部16Aと、中央部30Aに配設されて、ボス側支持材部12と外周縁側支持材部16Aとを連結する連結部14と、を備えている。
【0041】
そして、支持材11Aの外周縁側支持材部16Aと、連結部14と、ボス側支持材部12との周囲に、支持材11Aより軟質のウレタン等からなる被覆材20A、が配設されている。
【0042】
また、把持部26Aは、ステアリングホイール10と同様に、外形を略長方形形状とする外周縁部25Aの全周にわたって、配設されている。そして、把持部26Aに配設される外周縁側支持材部16Aは、ステアリングホイール10と同様に、外周縁側に、回動中心軸C1に沿った下方側に突出して、外周縁部25Aの全周にわたって連なる環状凸部17、を配設させ、環状凸部17の上面17a側に、外周縁部25Aの全周にわたって連なり、回動中心軸C1と略直交方向に連結部14側に平面状に延びる環状平坦部18、を配設させて構成されている。
【0043】
そして、把持部26Aが、環状凸部17の上面17a側から外周面側を経た下面側を、被覆材20Aを介在させて、運転者の把持する把持本体部27Aとして、構成されて、把持部26Aの被覆材20Aが、外周縁部25Aの下面側において、外周縁側支持材部16Aの環状凸部17の下方から、収納凹部28Aの領域を経て、連結部14近傍の下方までの領域を、略平面状の肉厚tAとして、配設されるとともに、運転者の把持時に、弾性変形して、収納凹部28Aを形成可能な硬度として、配設されている。
【0044】
被覆材20Aは、硬度を30~45(アスカーC硬度)の範囲内の約40として、把持部26の把持時、収納凹部28を形成しつつ、安定したホールド感を確保して、運転者は把持部26Aを把持することができる。
【0045】
この把持部26Aの把持時には、ステアリングホイール10と同様に、把持本体部27Aの上面27a側では、剛性を有した環状平坦部18の連結部14側まで延びる平面状の部位18aが、配設されていることから、把持本体部27の上面27a側の軟質の被覆材20Aの上面側部21aを弾性変形させて、感触を良好な状態を維持しつつ、親指F0と母指球DPM付近とを、広い平面状の環状平坦部18側の平面状部位18aに押し付けることができる。把持本体部27Aの下面27c側では、外周縁部25Aの全周にわたって、周囲の軟質の被覆材20Aの下面側部21cや内側面部21dを弾性変形させて、感触を良好にしつつ、収納凹部28Aを形成して、人差し指F1、中指F2、薬指F3、小指F4が、把持本体部27Aの下面27c側を掴むことができて、その結果、環状凸部17付近の把持本体部27Aの周囲を的確に把持できて、親指F0等を差し込むような開口を備えていなくとも、安定して操舵操作を行える。
【0046】
したがって、このステアリングホイール10Aでも、ボス部23の上方から操舵時に把持する外周縁部25Aまでの領域に、指を差し込むような開口を備えていない構成としても、操舵時の感触を良好にしつつ、円滑に操舵操作をすることができる。
【0047】
さらに、このステアリングホイール10Aでは、把持部26Aを実際に把持するまで、外周縁部25Aの下面側が凹みの無い平面状となることから、斬新なデザインのステアリングホイール10Aとすることができる。
【0048】
なお、実施形態のステアリングホイール10では、中央部30に、クッション部34からなって上方へ隆起する隆起部32を設けており、運転者MDが、
図5,6の二点鎖線に示すように、中央部30の隆起部32の上面32a側に頭部MHを載せれば、クッション部34の弾力性により、運転者MDの頭部MHは、クッション性良く、隆起部32に支持されて、運転者MDは、隆起部32を枕のように使用できる。特に、隆起部32を設けた中央部30は、
図2,5,6に示すように、回動中心軸C1側のボス部23の上方を含めて、運転者MDが操舵時に把持する把持部26を設けた外周縁部25の内側の全域を塞ぐように配設されて、上下を貫通するような開口を備えておらず、外周縁部25の内側の全域を塞ぐような隆起部32の上面32a側の全域で、運転者MDの頭部MH等を支持できて、快適に、中央部30の隆起部32を、枕のように使用できる。勿論、中央部30におけるクッション部34を設けた隆起部32は、外周縁部25の内側に配設されて、ステアリングホイール10自体に配設されており、使用時に、別途、取り付けること無く使用できる。なお、操舵時に把持する把持部26は、枕のように使用可能な隆起部32の周囲の外周縁部25に、配設されており、運転者MDは、把持部26を把持して、円滑に、操舵することができる。
【0049】
また、実施形態では、外周縁側支持材部16の環状平坦部18近傍の連結部14の部位を、環状平坦部18と同等の平面状として、貫通孔15を設けた場合を示したが、運転者MDの把持するエリアから外れていれば、環状平坦部18近傍の連結部14の部位に、支持材11の強度を向上させる等のために、上方へ突出する凸部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0050】
10,10A…ステアリングホイール、11,11A…支持材、12…ボス側支持材部、14…連結部、16,16A…外周縁側支持材部、17…環状凸部、18…環状平坦部、20,20A…被覆材、23…ボス部、25,25A…外周縁部、26,26A(F,B,L,R)…把持部、27,27A…把持本体部、
28,28A…収納凹部、30…中央部、
C1…回動中心軸、MD…運転者。