(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
G05F 1/10 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
G05F1/10 D
(21)【出願番号】P 2018120708
(22)【出願日】2018-06-26
【審査請求日】2021-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】寺田 忠平
(72)【発明者】
【氏名】高野 陽一
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-072797(JP,A)
【文献】特開2009-302303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放電用素子と、前記複数の放電用素子の一方の端子がそれぞれ接続されている複数の外部端子と、内部回路動作の有効/無効を示す信号を外部から入力可能な制御用外部端子と、を備えたディスチャージ用半導体集積回路
と、
複数の電源デバイスと、を備え、
前記ディスチャージ用半導体集積回路の前記複数の放電用素子の制御端子には、前記制御用外部端子より入力された信号もしくはその信号を入力とする論理回路の出力信号が入力され、前記複数の放電用素子がオン状態にされることに応じて、対応する前記外部端子から電荷を引き抜くように構成されて
おり、
前記複数の電源デバイスのうちいずれか1つの電源デバイスの出力端子が、前記ディスチャージ用半導体集積回路の前記複数の外部端子のうちいずれか1つの外部端子と接続され、
前記複数の電源デバイスのうち他の電源デバイスの出力端子が、前記ディスチャージ用半導体集積回路の前記複数の外部端子のうち前記いずれか1つの外部端子を除く2つ以上の外部端子と接続されていることを特徴とする
電源システム。
【請求項2】
複数の放電用素子と、前記複数の放電用素子の一方の端子がそれぞれ接続されている複数の外部端子と、内部回路動作の有効/無効を示す信号を外部から入力可能な制御用外部端子と、を備えたディスチャージ用半導体集積回路と、
電源デバイスと、を備え、
前記ディスチャージ用半導体集積回路の前記複数の放電用素子の制御端子には、前記制御用外部端子より入力された信号もしくはその信号を入力とする論理回路の出力信号が入力され、前記複数の放電用素子がオン状態にされることに応じて、対応する前記外部端子から電荷を引き抜くように構成されており、
前記電源デバイスの出力端子が、前記ディスチャージ用半導体集積回路の前記複数の外部端子のうち3つ以上の外部端子と接続されていることを特徴とする電源システム。
【請求項3】
複数の放電用素子と、前記複数の放電用素子の一方の端子がそれぞれ接続されている複数の外部端子と、内部回路動作の有効/無効を示す信号を外部から入力可能な制御用外部端子と、を備えたディスチャージ用半導体集積回路と、
複数の電源デバイスと、を備え、
前記ディスチャージ用半導体集積回路の前記複数の放電用素子の制御端子には、前記制御用外部端子より入力された信号もしくはその信号を入力とする論理回路の出力信号が入力され、前記複数の放電用素子がオン状態にされることに応じて、対応する前記外部端子から電荷を引き抜くように構成されており、
前記複数の電源デバイスと前記複数の外部端子の数が等しく、その数が3つ以上の場合に、
前記複数の電源デバイスの出力端子が、前記ディスチャージ用半導体集積回路の前記複数の外部端子のうちいずれか1つの外部端子とそれぞれ接続されていることを特徴とする電源システム。
【請求項4】
前記複数の放電用素子の他方の端子は、共通の接地用外部端子に接続されていることを特徴とする請求項1
から3のいずれかに記載の
電源システム。
【請求項5】
前記ディスチャージ用半導体集積回路は、前記複数の放電用素子の他方の端子がそれぞれに接続されている複数の外部端子を備えていることを特徴とする請求項1
から3のいずれかに記載の
電源システム。
【請求項6】
前記制御用外部端子が、前記複数の放電用素子の制御端子のそれぞれに対応して設けられていることを特徴とする請求項1
から3のいずれかに記載の
電源システム。
【請求項7】
前記制御用外部端子は、前記複数の放電用素子を同一の信号により制御する単一の端子であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電源システム。
【請求項8】
前記制御用外部端子より入力された信号を遅延する遅延回路と、該遅延回路で遅延された信号を入力信号とするシュミットトリガ回路とを備えることを特徴とする請求項1
から3のいずれかに記載の
電源システム。
【請求項9】
第1及び第2の放電用素子と、前記第1及び第2の放電用素子の一方の端子がそれぞれ接続されている第1及び第2の第1外部端子と、前記第1及び第2の放電用素子の他方の端子がそれぞれ接続されている第1及び第2の第2外部端子と、内部回路動作の有効/無効を示す信号を外部から入力可能な制御用外部端子と、を備えたディスチャージ用半導体集積回路と、
電源デバイスと、を備え、
前記ディスチャージ用半導体集積回路の前記第1及び第2の放電用素子の制御端子には、前記制御用外部端子より入力された信号もしくはその信号を入力とする論理回路の出力信号が入力され、前記第1及び第2の放電用素子がオン状態にされることに応じて、対応する前記第1及び第2の第1外部端子から電荷を引き抜くように構成されており、
前記電源デバイスの出力端子が、前記ディスチャージ用半導体集積回路の前記第1及び第2の第1外部端子のうち第1の第1外部端子と接続され、
前記ディスチャージ用半導体集積回路の前記第1及び第2の第2外部端子のうち第1の第2外部端子と、前記ディスチャージ用半導体集積回路の前記第1及び第2の第1外部端子のうち第2の第1外部端子と、が接続されていることを特徴とする電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電用の素子を内蔵したディスチャージ用半導体集積回路、さらには複数の放電経路を形成可能であるとともに放電時間を調整可能なディスチャージ用半導体集積回路および電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電源を必要とするCPU(マイクロプロセッサ)やSoC(システムオンチップ)、システムLSI等のデバイスでは、オン/オフのシーケンス(順序)が規定されている場合がある。例えば、I/O用とコア用の2つ電源(レギュレータ)を使用しているCPUの場合、2つの電源の電位は、一般的には、I/O用電源>コア用電源の関係にされる。このようなデバイスやシステムにおいては、I/O用電源とコア用電源の電位関係が逆転したとすると、コアとなるCPU内部の寄生素子がオンして破壊に至ることがある。そのため、複数の電源を使用するデバイスでは、オン/オフ時のシーケンスに制約を付与する必要がある。
【0003】
従来、上記のようなデバイスやシステムにおいて、オフ時のシーケンスを制御する場合、ディスクリート部品(インバータやFET、抵抗等)によって、例えば
図4(B)に示すようなディスチャージ回路を構成して、電源の供給停止(レギュレータのオフ)に際しては、先ずコア用電源を放電させ、その後にI/O用電源を放電させるようにしていた。
また、ディスチャージ回路を備えた基準電圧源回路に関する発明として、例えば特許文献1に開示されているものがある。この発明においては、制御信号ENABLEによってディスチャージ用のFETをオンさせることで、基準電圧源の出力コンデンサに残っている電荷を放電させて出力電圧を急速に立ち下げるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディスクリート部品によってディスチャージ回路を構成した場合、
図4(B)に示すように、2つの制御信号(Enable1,2)が必要であるとともに、複数の電源出力毎に放電時間を異ならせたい場合には、複数のFETを用意する必要があるという課題がある。
また、特許文献1に開示されている発明においては、放電時間の変更が容易ではないとともに、ディスチャージ用のトランジスタと出力電圧制御用のトランジスタの両方が同時にオン状態になる可能性があり、それによって電源端子から接地点へ向かって貫通電流が流れるおそれがあるという課題がある。
【0006】
この発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、1つの制御信号によって複数の電源もしくは供給電圧のオフシーケンスを制御することができるとともに、放電時間を容易に変更することができるディスチャージ用半導体集積回路および電源システムを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、電源からの電流供給経路と放電素子による放電経路とが同時にアクティブ状態になって貫通電流が流れるのを防止することができるディスチャージ用半導体集積回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、この発明の電源システムは、
複数の放電用素子と、前記複数の放電用素子の一方の端子がそれぞれ接続されている複数の外部端子と、内部回路動作の有効/無効を示す信号を外部から入力可能な制御用外部端子と、を備えたディスチャージ用半導体集積回路と、
複数の電源デバイスと、を備え、
前記ディスチャージ用半導体集積回路の前記複数の放電用素子の制御端子には、前記制御用外部端子より入力された信号もしくはその信号を入力とする論理回路の出力信号が入力され、前記複数の放電用素子がオン状態にされることに応じて、対応する前記外部端子から電荷を引き抜くように構成されており、
前記複数の電源デバイスのうちいずれか1つの電源デバイスの出力端子が、前記ディスチャージ用半導体集積回路の前記複数の外部端子のうちいずれか1つの外部端子と接続され、
前記複数の電源デバイスのうち他の電源デバイスの出力端子が、前記ディスチャージ用半導体集積回路の前記複数の外部端子のうち前記いずれか1つの外部端子を除く2つ以上の外部端子と接続されているように構成したものである。
【0008】
上記した手段によれば、チップ外部において上記複数の放電用素子を単独で使用または並列形態に接続することで、引き抜く電流の大きさを設定することができ、それによって1つの制御信号によって複数の電源もしくは供給電圧のオフシーケンスを制御することができるとともに、放電時間を容易に変更することができる。
また、出力端子が2つ以上の外部端子と接続されている電源デバイスの出力端子の電荷を、出力端子が1の外部端子と接続されている電源デバイスの出力端子の電荷よりも先に放電させることができるので、オフシーケンスを制御することができるとともに、電源デバイスの出力端子を接続するディスチャージ用半導体集積回路の外部端子の数を変えることで、放電時間を容易に変更することができる。
【0009】
ここで、望ましくは、前記複数の放電用素子の他方の端子は、共通の接地用外部端子に接続されているように構成する。
これによって、チップに設ける外部端子の数を減らすことができる。
【0010】
あるいは、前記複数の放電用素子の他方の端子がそれぞれに接続されている複数の外部端子を備えるように構成する。
これにより、チップ外部において上記複数の放電用素子を単独で使用または直列形態に接続することで、引き抜く電流の大きさを設定することができ、それによって1つの制御信号によって複数の電源もしくは供給電圧のオフシーケンスを制御することができるとともに、放電時間を容易に変更することができる。
【0011】
また、望ましくは、前記制御用外部端子が、前記複数の放電用素子の制御端子のそれぞれに対応して設けられているように構成する。
これにより、外部より複数の制御用端子へ入力する信号のタイミングを異ならせることで、放電タイミングをずらすことができ、それによって複数の電源もしくは供給電圧のオフシーケンスを制御することができるとともに、放電時間を容易に変更することができる。
【0012】
さらに、望ましくは、前記制御用外部端子より入力された信号を遅延する遅延回路と、該遅延回路で遅延された信号を入力信号とするシュミットトリガ回路とを備えるように構成する。
これにより、外部の電源電圧端子とディスチャージ用半導体集積回路の出力端子との間に接続されるスイッチ素子を備えるシステムに適用した場合に、同一の制御信号によって前記スイッチ素子とチップ内部の放電用素子とが同時にオン状態になって貫通電流が流れるのを回避することができる。また、遅延回路の後段にシュミットトリガ回路を設けているので、遅延回路に飛び込んだノイズ等により放電用素子の動作が不安定になるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るディスチャージ用半導体集積回路によれば、1つの制御信号によって複数の電源もしくは供給電圧のオフシーケンスを制御することができるとともに、放電時間を容易に変更することができる。また、電源からの電流供給経路と放電素子による放電経路とが同時にアクティブ状態になって貫通電流が流れるのを防止することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明を適用したディスチャージ用半導体集積回路の一実施形態を示す回路構成図である。
【
図2】(A)は
図1のディスチャージ用半導体集積回路を用いたシステムの構成例を示す回路構成図、(B)は
図1のディスチャージ用半導体集積回路を用いた他のシステムの構成例を示す回路構成図である。
【
図3】(A)、(B)は
図2(A)および(B)における電源回路の具体例を示す回路構成図である。
【
図4】(A)は
図1のディスチャージ用半導体集積回路を用いた電源システムの構成例を示す回路構成図、(B)はディスクリート部品を用いて放電回路を構成した従来の電源システムの構成例を示す回路構成図である。
【
図5】放電素子のサイズに差異(M1<M2<M3)を設けた第1の変形例ディスチャージ用半導体集積回路を用いた電源システムの構成例を示す回路構成図である。
【
図6】
図1に示す実施形態のディスチャージ用半導体集積回路の第2の変形例およびそれを用いた電圧供給システムの構成例を示す回路構成図である。
【
図7】本発明を適用したディスチャージ用半導体集積回路の第2実施形態を示す回路構成図である。
【
図8】(A)は本発明を適用したディスチャージ用半導体集積回路の第3実施形態を示す回路構成図、(B)はその使用例を示す回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るディスチャージ用半導体集積回路の一実施形態を示す。なお、
図1において一点線Aで囲まれている回路を構成する素子は、1個の半導体チップ上に形成され、半導体集積回路(IC)として構成される。
【0018】
この実施形態のディスチャージ用半導体集積回路(以下、ディスチャージ用ICと称する)10は、外部から電源電圧が印加される電源端子VDDと、接地電位が印加されるグランド端子GNDと、チップ動作(内部回路の動作)の有効/無効を示すイネーブル信号Enableが入力されるチップイネーブル端子CEと、3個の出力端子Vo1,Vo2,Vo3を備える。特に限定されるものでないが、この実施形態のディスチャージ用ICは、端子CEに入力されるイネーブル信号Enableがロウレベルにされたときにチップ内部の放電素子がオンして放電動作を行うロウアクティブのICとして構成されている。出力端子Vo1,Vo2,Vo3はチップ外部において、コンデンサなどの素子もしくは電子部品を接続可能な外部端子として機能する。
【0019】
また、チップ内部には、上記出力端子Vo1,Vo2,Vo3とグランド端子GNDとの間に接続された放電用の3個のNチャネルMOSトランジスタM1,M2,M3と、上記チップイネーブル端子CEに入力端子が接続されたインバータ11とが設けられ、このインバータ11の出力信号によって上記MOSトランジスタM1,M2,M3がオン、オフ制御されるように構成されている。
具体的には、イネーブル信号Enableがロウレベルにされると、インバータ11の出力信号がハイレベルに変化してMOSトランジスタM1,M2,M3がオンされ、出力端子Vo1,Vo2,Vo3に接続される負荷やコンデンサなどから電荷を引き抜く放電素子として機能する。従って、MOSトランジスタM1,M2,M3は必要な放電速度が得られるような素子サイズを有するように設計される。特に限定されるものでないが、この実施形態では、MOSトランジスタM1,M2,M3は同一の大きさである。なお、インバータ11の代わりに、シュミットトリガ回路を使用しても良い。これにより、端子CEに飛び込んだノイズによる誤動作を回避することができる。
【0020】
次に、上記実施形態のディスチャージ用ICを使用したシステムの構成例について、
図2を用いて説明する。
図2(A)は、電源回路20により生成された電圧VOUTを対象システム30へ供給したり遮断したりする回路において、電源回路20を遮断した際に速やかに電圧VOUTを立ち下げることで、対象システム30が誤動作するのを防止するようにするものである。電源回路20にはレギュレータ、DC/DCコンバータや他の電源回路を採用しても良い。
【0021】
具体的には、電源回路20と対象システム30の接地点に電圧安定化用のコンデンサC1が設けられ、電源回路20をオン、オフするための制御信号としてのイネーブル信号Enableを入力するものにおいて、
図2に実線で示すように、電源回路20とコンデンサC1との接続ノードN1と、上記実施形態のディスチャージ用IC10の出力端子Vo1とを接続する配線L1を設けて、電源回路20のオフ時にコンデンサC1の残留電荷をディスチャージ用IC10によって放電させて、対象システム30へ供給される電圧VOUTを速やかに立ち下げるようにしたものである。
【0022】
なお、ディスチャージ用ICによる放電速度を速くしたい場合には、
図2に破線で示すように、出力端子Vo2,Vo3を接続ノードN1に接続する配線L2,L3をさらに設ける。放電速度を中程度の速さにしたい場合には、出力端子Vo1とVo2またはVo1とVo3を接続ノードN1に接続すればよい。
図2(A)の構成においては、ディスチャージ用IC10のチップイネーブル端子CEに入力される信号は、電源回路20をオン、オフするための信号と同一のイネーブル信号Enableである。そのため、イネーブル信号Enableがロウレベルに変化されて電源回路20がオフされて対象システム30への供給が遮断されると、直ちにディスチャージ用IC内のMOSトランジスタM1がオンされて、コンデンサC1の残留電荷が引き抜かれて、ノードN1の電位が速やかに立ち下げられることとなる。
【0023】
図2(B)は、電源回路20Aにより生成された電圧VOUT1が供給される対象システム30Aと、電源回路20Bにより生成された電圧VOUT2が供給される対象システム30Bとがある場合に、電圧VOUT1,VOUT2を遮断した際に速やかに電圧VOUT1,VOUT2を立ち下げることで、対象システム30A,30Bが誤動作するのを防止するとともに、VOUT2よりも先にVOUT1を立ち下げるようにしたい場合の構成例である。
【0024】
そして、
図2(B)の回路においては、実線L1,L2で示すように、ノードN1に上記実施形態のディスチャージ用IC10の出力端子Vo1,Vo2が接続され、実線L3で示すように接続ノードN2にディスチャージ用ICの出力端子Vo3が接続されている。このような構成によれば、電源回路20A,20Bのオフ時に、コンデンサC1,C2の残留電荷を放電させて、対象システム30A,30Bへ供給される電圧VOUT1,VOUT2を速やかに立ち下げることができる上、VOUT2よりも先にVOUT1を立ち下げることができる。
具体的には、電源回路20Aと接地点との間にコンデンサC1が設けられ、電源回路20Bと接地点との間にコンデンサC2が設けられている。なお、
図2(B)では、イネーブル信号Enableにより電源回路20A,20Bをオン、オフしているが、電源回路20A,20Bをオン、オフするイネーブル信号を別々に設けても良い。
【0025】
また、
図2(A)における電源回路20および
図2(B)における電源回路20A,20Bは、具体的には、
図3(A)に示すように、レギュレータREGと、レギュレータREGにより生成された電圧VOUTの供給/遮断を制御するスイッチMOSトランジスタMT1と、イネーブル信号Enableを受けてトランジスタMT1のゲート端子を制御する信号を生成するインバータ21とを備えて構成することができる。
あるいは、
図3(B)に示すように、MOSトランジスタMT2のゲート端子を制御する差動アンプ22とMT2のドレイン電圧を分圧する抵抗R1,R2と基準電圧Vrefとを有し、抵抗R1,R2で分圧した電圧を差動アンプ22の反転入力端子に印加することで、基準電圧Vrefに比例した電圧を生成して出力電圧VOUTとして供給する簡易なレギュレータを電源回路20A,20Bとしても良い。この回路においても、イネーブル信号Enableで差動アンプ22をオフすることで、出力電圧VOUTを遮断することができるとともに、スイッチ用のMOSトランジスタMT1は不要となる。
【0026】
図4(A)には、上記実施形態のディスチャージ用ICを電源システムに適用した場合の構成例が示されている。
具体的には、第1の電源デバイス(DC/DCコンバータもしくはレギュレータLDO)20Aの出力端子Voutに上記実施形態のディスチャージ用IC10の出力端子Vo1が接続され、第2の電源デバイス20Bの出力端子Voutに上記実施形態のディスチャージ用IC10の出力端子Vo2,Vo3が接続されている。ディスチャージ用IC10のイネーブル信号Enableは、電源デバイス20A,20Bをオン、オフするためのイネーブル信号と共通である。
【0027】
図4(A)の電源システムにおいては、イネーブル信号Enableによって2つの電源デバイス20A,20Bをオフさせた際に、電源デバイス20A,20Bの出力端子Voutに接続されている出力電圧安定化用のコンデンサC1,C2の電荷を放電させて、出力電圧VoutA,VoutBを速やかに立ち下げることができる。しかも、
図4(A)の電源システムにおいては、電源デバイス20Bの出力端子Voutにディスチャージ用IC10の2つの出力端子Vo2,Vo3が接続されているため、出力電圧VoutAよりも先にVoutBを立ち下げることができる。
【0028】
従来の同様な機能を有する電源システムにおいては、ディスクリート部品(インバータやFET等)によって例えば
図4(B)に示すようなディスチャージ回路が構成されていた。
図4(A)と(B)とを比較すると分かるように、
図4(A)の電源システムの方が部品点数が少なくて済む。また、
図4(B)の従来システムでは放電用のMOSトランジスタM11,M12としてサイズの異なるものを用意しておく必要があるのに対し、
図4(A)の電源システムでは1つのディスチャージ用IC10を用意しておけばよく、部品管理が容易になるという利点がある。
【0029】
(変形例1)
上記実施形態のディスチャージ用IC10においては、放電用のMOSトランジスタM1,M2,M3を同一サイズの素子として設計すると説明したが、トランジスタM1,M2,M3のサイズを例えば1:2:3のような比となるように設計しても良い。このように設計されたディスチャージ用IC10を使用して
図5に示すような電源システムを構成することにより、電源(レギュレータ)20A,20B,20Cの出力電圧VoutA,VoutB,VoutCを、VoutC→VoutB→VoutAの順に立ち下げることができる。
【0030】
(変形例2)
図6には上記実施形態のディスチャージ用IC10の第2の変形例が示されている。
図6の変形例は、放電用のMOSトランジスタM1,M2,M3のそれぞれに対応してチップイネーブル端子CE1,CE2,CE3とインバータ11A,11B,11Cを設けたものである。このような構成によれば、外部のマイクロコンピュータなどのシステム制御装置により、チップイネーブル端子CE1,CE2,CE3へ入力するイネーブル信号Enable1,Enable2,Enable3のタイミングを制御することで、トランジスタM1,M2,M3による放電順序を自由に設定することができる。
【0031】
(第2実施形態)
図7には第2実施形態に係るディスチャージ用IC10の構成および応用例のシステムが示されている。
この実施形態のディスチャージ用IC10は、
図7に示すように、イネーブル信号Enableを反転するインバータ11と放電用のMOSトランジスタM1,M2,M3のゲート端子との間に、抵抗R1とコンデンサC1からなる遅延回路12と、第2のインバータ13と、第3のインバータ14を設けたものである。遅延回路12に飛び込んだノイズ等によりインバータ14の入力信号が変動して放電用MOSトランジスタM1,M2,M3の動作が不安定にならないよう、第2のインバータ13はシュミットトリガ回路またはコンパレータに置き換えても良い。また、第2のインバータ14は、論理を合わせるためのもので、電源回路(IC)を制御するイネーブル信号Enableがロウの時に電源回路がオンする構成(インバータINV1がない構成)である場合には省略することも可能である。
【0032】
図7に示すシステムと同様な機能を有する
図2のシステムにおいては、電源回路20と放電用のMOSトランジスタM1~M3とは相補的にオン、オフされることとなるが、オン、オフの切替えの際に、電源回路20とM1~M3が一瞬同時にオンされ、貫通電流が流れるおそれがある。
これに対し、
図7に示すシステムにおいては、遅延回路12が設けられているため、スイッチMOSトランジスタMT1がオフしてから放電用のMOSトランジスタM1~M3をオンさせることができる。そのため、MT1とM1~M3に貫通電流が流れるのを確実に防止することができるという利点がある。
【0033】
(第3実施形態)
図8には第3実施形態に係るディスチャージ用IC10の構成が示されている。
この実施形態のディスチャージ用IC10は、イネーブル信号Enableを反転するインバータ11の接地電位を与えるグランド端子GND0の他に、第2、第3のグランド端子GND1,GND2を設け、これらのグランド端子GND1,GND2に放電用のMOSトランジスタM1,M2のソース端子を接続したものである。
かかる構成のディスチャージ用ICによれば、
図8(A)に示すように、グランド端子GND1,GND2に接地電位を印加することで、出力端子Vo1,Vo2に接続されているコンデンサや負荷の電荷を別々に放電させることができる。
【0034】
また、
図8(B)に示すように、出力端子Vo2とグランド端子GND1を破線で示す配線L4で短絡させるように接続することによって、MOSトランジスタM1,M2を直列形態にしてオン抵抗を大きくし、放電速度を
図8(A)のものに比べて遅くすることができる。
なお、
図8(B)に示す配線L4は、チップ内部のアルミ配線で構成されたものであっても良い。
【0035】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。例えば前記実施形態のディスチャージ用ICでは、放電用のMOSトランジスタを2個又は3個設けたものを示したが、トランジスタの数は2個や3個に限定されるものでなく、4個以上設けるようにしても良い。
また、前記実施形態では、チップイネーブル端子CEに入力されたイネーブル信号Enableをインバータで受けて放電用のMOSトランジスタM1,M2,M3のゲート端子に供給しているが、インバータの代わりにORゲートなどの論理回路でイネーブル信号Enableを受けるように構成しても良い。さらに、前記実施形態では、ディスチャージ専用のICとして構成した場合について説明したが、本発明は、レギュレータ制御機能など他の機能を有するICの一部として構成する場合にも利用することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
10…ディスチャージ用半導体集積回路(ディスチャージ用IC)、11…インバータ(整流回路)、12…遅延回路、13…シュミットトリガ回路、20…電源(レギュレータ)、30…対象システム、M1,M2,M3…放電用のMOSトランジスタ、MT1…スイッチMOSトランジスタ