(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】自転車
(51)【国際特許分類】
B62K 15/00 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
B62K15/00
(21)【出願番号】P 2021011452
(22)【出願日】2021-01-27
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】521041407
【氏名又は名称】大平 正
(74)【代理人】
【識別番号】110003373
【氏名又は名称】弁理士法人石黒国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100124752
【氏名又は名称】長谷 真司
(72)【発明者】
【氏名】大平 正
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第3689728(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2769905(EP,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2489583(EP,A1)
【文献】特開平6-32272(JP,A)
【文献】実開平4-49591(JP,U)
【文献】登録実用新案第3057395(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第109131689(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り畳み式の自転車において、
クランクと後輪との間に架け渡されるチェーンの弛みを規制するとともに、前記後輪を回転自在に保持し、自身の回転軸の周囲に回転自在となるように組み付けられるスイングアーム
と、
乗員によるハンドルの回転操作の中心軸が通っており、前記ハンドルの回転により前輪を前記中心軸の周囲に回転させる回転軸部と、
前記クランクの回転軸が通る軸芯棒、前記後輪の回転軸が通る軸芯棒、および、前記前輪の回転軸が通る軸芯棒とを備え、
このスイングアームは、前記後輪の回転軸よりも前側に、前記クランクの回転軸および前記後輪の回転軸と平行に自身の回転軸が設定され、
前記スイングアームの自身の回転軸を中心とする回転、および、
前記ハンドルによる
前記前輪の
前記中心軸の周囲の回転により、前記後輪、前記前輪および前記クランクそれぞれの回転軸
が同一平面上に含まれ、かつ、前記後輪の回転軸と前記クランクの回転軸とによって前記前輪の回転軸が挟まれる基準状態になり、
前記自転車は、折り畳まれた状態において、前記基準状態を維持し
、
さらに、前記基準状態では、前記クランクの軸芯棒を前記クランクの回転軸の方向の長さに関して前記クランクの回転軸に垂直に2等分する切断面、前記後輪の軸芯棒を前記後輪の回転軸の方向の長さに関して前記後輪の回転軸に垂直に2等分する切断面、および、前記前輪の軸芯棒を前記前輪の回転軸の方向の長さに関して前記前輪の回転軸に垂直に2等分する切断面が同一平面上に含まれることを特徴とする自転車。
【請求項2】
請求項1に記載の自転車において、
折り畳まれた前記自転車に装着されて前記自転車の外部への露出を抑制する筒状部品を備え、
前記スイングアームは、前記自転車が折り畳まれた状態で、前記筒状部品が自身の内周に前記自転車の一部を収容しつつ載る台座部を有し、
前記筒状部品は、前記台座部に載っているとき、自身の内周の開口端により前記台座部に当接していることを特徴とする自転車。
【請求項3】
請求項2に記載の自転車において、
前記筒状部品の開口端は、前記台座部の先端部の周縁に載り、
前記台座部の先端部の周縁は、外側に凸をなす曲面状に設けられていることを特徴とする自転車。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の自転車において、
前記台座部は、前記自転車が折り畳まれた状態で前記前輪を収容する収容空間、および、この収容空間を外部に開放する台座部側スリットを有し、
前記前輪は、前記自転車の折り畳みに伴って前記スイングアームが回転する過程で、前記台座部側スリットを通って前記収容空間に収まることを特徴とする自転車。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4の内のいずれか1つに記載の自転車において、
前記台座部は、折り畳まれた前記自転車を、前記後輪を路面に接地させて立たせるときに、前記後輪とともに前記路面に接触して前記自転車の立位を維持させるスタンドを有することを特徴とする自転車。
【請求項6】
請求項5に記載の自転車において、
前記スタンドは、前記自転車が折り畳まれた状態で前記前輪が嵌るスタンド側スリットを有し、
前記前輪は、前記自転車の折り畳みに伴って前記スイングアームが回転する過程で、前記スタンド側スリットに嵌まることを特徴とする自転車。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6の内のいずれか1つに記載の自転車おいて、
前記自転車が折り畳まれた状態で、ヘッドチューブと前記スイングアームとを締結する締結部を備えることを特徴とする自転車。
【請求項8】
請求項7に記載の自転車おいて、
前記締結部は、前記スイングアームに設けられて前記スイングアームとともに回転するスナップリングであり、このスナップリングが前記ヘッドチューブに嵌まることで前記ヘッドチューブと前記スイングアームとを締結することを特徴とする自転車
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、折り畳み式の自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば直径が8インチ(約20cm)程度の車輪を備える折り畳み式の自転車が周知となっており、街中における通勤、ショッピングや散歩、旅行先での観光地めぐりなどに使用されている。また、このような自転車は、電車、バス等への乗車時や、階段の上り下り時には折り畳んでコンパクトにした上で持ち運ぶことができる。
【0003】
以上の利便性から、折り畳み式の自転車は、使用者が多く、今後も、使用者数が増加していくものと見込まれている。
その一方で、使用者からは、更なる折り畳み作業の簡素化が要求されており、この要求に応えるべく、折り畳みの構造に関して更なる改善を行う必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、このような自転車の折り畳み構造に関し、次のような2つの回転部を有する折り畳み構造が提案されている。
すなわち、特許文献1の自転車によれば、第1の回転部は、サドル基材15に対して、支持部材26を回転自在に保持するものである。ここで、支持部材26は、後輪21の回転軸部を回転自在に保持する。また、支持部材26の回転軸部は、サドル基材15の下端に設けられ、支持部材26の回転により、後輪21の回転軸は、クランク21の回転軸の下側に回り込むことができる。
【0005】
また、第2の回転部は、ヘッドチューブとサドル基材15とを連結する主枠材11の内、後方部分11bに対して前方部分11aを回転自在に保持するものである。そして、前方部分11aの回転軸部は、後方部分11bの先端に設けられ、前方部分11aの回転により、前輪1は後輪21に重なることができる。
【0006】
このような第1、第2の回転部を設けることで、特許文献1では、自転車をコンパクトに折り畳むことができる、と考えられている。
しかし、特許文献1の自転車によれば、コンパクトに折り畳みことができるものの、回転部を2つ設ける必要があり、使用者は、折り畳み時に、第1、第2の回転部ごとに回転作業を行う必要がある。つまり、第1の回転部を利用して、支持部材26および後輪21等を回転させた後、さらに、第2の回転部を利用して、前方部分11aおよび前輪1等を回転させる必要がある。
このため、折り畳み作業の簡素化に関して、更なる改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、折り畳み式の自転車において、折り畳み作業の更なる簡素化を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の自転車は、折り畳み式であって次のようなスイングアームおよび回転軸部を備える。すなわち、スイングアームは、クランクと後輪との間に架け渡されるチェーンの弛みを規制するとともに、後輪を回転自在に保持し、自身の回転軸の周囲に回転自在となるように組み付けられる。また、スイングアームは、後輪の回転軸よりも前側に、クランクの回転軸および後輪の回転軸と平行に自身の回転軸が設定されている。また、回転軸部は、乗員によるハンドルの回転操作の中心軸が通っており、ハンドルの回転により前輪を中心軸の周囲に回転させる。
さらに、本開示の自転車は、クランクの回転軸が通る軸芯棒、後輪の回転軸が通る軸芯棒、および、前輪の回転軸が通る軸芯棒を備える。
【0010】
また、スイングアームの自身の回転軸を中心とする回転、および、ハンドルによる前輪の中心軸の周囲の回転により、自転車は次のような基準状態となる。すなわち、基準状態とは、後輪、前輪およびクランクそれぞれの回転軸が実質的に同一平面上に含まれ、かつ、後輪の回転軸とクランクの回転軸とによって前輪の回転軸が挟まれる状態である。そして、自転車は、折り畳まれた状態において、基準状態を維持している。
さらに、基準状態では、クランクの軸芯棒をクランクの回転軸の方向の長さに関してクランクの回転軸に垂直に2等分する切断面、後輪の軸芯棒を後輪の回転軸の方向の長さに関して後輪の回転軸に垂直に2等分する切断面、および、前輪の軸芯棒を前輪の回転軸の方向の長さに関して前輪の回転軸に垂直に2等分する切断面が同一平面上に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図4】前輪の回転軸、ハンドルの回転軸およびクランクの回転軸を示す説明図である。
【
図5】スイングアーム、クランク、ヘッドチューブ、シートチューブおよび後輪の配置を示す展開図である。
【
図7】スイングアームの軸芯棒を側面視した説明図である。
【
図8】スイングアームの軸芯棒を平面視した説明図である。
【
図9】スイングアームの軸芯棒を背面視した説明図である。
【
図10】(a)はBBシェルから伸びるブラケットの側面図であり、(b)はBBシェルから伸びるブラケットの背面図である。
【
図11】スイングアームの回転軸および後輪の回転軸を示す説明図である。
【
図12】自転車の折り畳みを側面から示す説明である。
【
図13】折り畳み状態の自転車において、前輪の回転軸、ハンドルの回転軸、クランクの回転軸、後輪の回転軸およびスイングアームの回転軸の配置を側面から示す説明図である。
【
図14】折り畳み状態の自転車において、前輪の軸芯棒を前輪の回転軸の方向の長さに関して前輪の回転軸に垂直に2等分する切断面、クランクの軸芯棒をクランクの回転軸の方向の長さに関してクランクの回転軸に垂直に2等分する切断面、および、後輪の軸芯棒を後輪の回転軸の方向の長さに関して後輪の回転軸に垂直に2等分する切断面の配置を正面から示す説明図である。
【
図16】筒状部品を構成するパーツを示す斜視図である。
【
図17】筒状部品を構成するパーツを折り畳んだ状態で示す斜視図である。
【
図18】スイングアームの締結部を示す斜視図である。
【
図19】(a)は弾性変形していない垂直ステイの正面図であり、(b)は弾性変形している垂直ステイの正面図である。
【
図20】自転車を折り畳んでいる途中の状態を示す側面図である。
【
図21】自転車を折り畳んでいる途中の状態を示す側面図である。
【
図22】自転車を折り畳んでいる途中の状態を示す側面図である。
【
図23】自転車を折り畳んでいる途中の状態を示す側面図である。
【
図24】自転車を折り畳み終えた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示を実施するための形態を以下の実施例により詳細に説明する。
【実施例】
【0013】
〔実施例の構成〕
実施例の自転車1の構成を、図面を用いて説明する。
自転車1は、例えば、直径が8インチ(約20cm)程度の前輪2、後輪3を備える折り畳み式であり、前輪2のハンドル4による回転、および、後記するスイングアーム5の回転により、折り畳まれるものである。
以下、自転車1について詳述する。
【0014】
自転車1は、次のようなフレーム構造を備える。すなわち、自転車1のフレーム構造は、前上側の三角と後下側の三角を合わせた構造であり、前上側の三角は、ヘッドチューブ6、シートチューブ7および水平ステイ8により構成され、後下側の三角は、スイングアーム5の連結部9、シートチューブ7、および垂直ステイ10により構成されている(
図2等参照。)。
以下、ヘッドチューブ6、シートチューブ7、スイングアーム5、水平ステイ8および垂直ステイ10の順に、それぞれに関連付けて自転車1の各部を説明する。
【0015】
まず、ヘッドチューブ6は、ハンドル4の回転操作における前輪2の回転軸部(ステアリングコラム12)が通るものである。
ここで、ステアリングコラム12は、ヘッドチューブ6の上端に取り付けられた軸受け(ヘッドパーツ13)の内輪(図示せず。)に固定されており、ヘッドチューブ6に対して回転自在に支持されている。また、ステアリングコラム12の上端にはハンドルステム14が締結されており、ハンドルステム14にハンドル4が締結されている。
【0016】
さらに、ステアリングコラム12の下端には、2つのブレード16を有するフォーク17が締結されており、2つのブレード16により、前輪2が回転自在に保持されている(
図4等参照。)。すなわち、2つのブレード16には、前輪2の回転軸αが通る軸芯棒2αが固定されており、軸芯棒2αは、2つのブレード16を架橋するように、両方のブレード16に固定されている。そして、前輪2に固定された筒体(図示せず。)と軸芯棒2αとの間に軸受け(図示せず。)が設けられ、前輪2は、軸芯棒2αの周囲に回転自在に支持されている。
【0017】
一方、ステアリングコラム12を通るように、ハンドル4の回転の中心軸となる回転軸βが設定されており、前輪2は、乗員によるハンドル4の回転操作により、回転軸βの周囲に回転する。つまり、前輪2は、ハンドル4に連動して回転軸βの周囲に回転する。
【0018】
また、ヘッドチューブ6には、ボトムブラケット(BB)19を収容するBBシェル20が一体的に設けられている(
図5、
図7および
図8等参照。)。
ここで、BB19は、クランク21の回転軸γが通る軸芯棒21γ、および、軸芯棒21γの軸受け(図示せず。)等からなる周知の構造である。また、軸芯棒21γへのクランク21やスプロケット(チェーンリング)22の取付構造も周知の構造である。
【0019】
すなわち、軸芯棒21γの両端それぞれにクランク21が取り付けられ、さらにクランク21にペダル23が取り付けられている。
また、ペダル23は、クランク21に対して着脱自在であり、自転車1の折り畳み時にはクランク21から取り外される。また、取り外されたペダル23は、ヘッドチューブ6の上部に設けた所定のフック24に引っ掛けて保持することができる(
図13、
図14および
図20等参照。)。
【0020】
また、軸芯棒21γの一方側には、チェーン26が架かるチェーンリング22が固定されている(
図4、
図5および
図11等参照。)。
ここで、チェーン26は、クランク21に加えられた乗員の踏力を後輪3に伝達するものであり、チェーンリング22と後輪3の側に設けられるスプロケット27との間に架け渡される(
図12等参照。)。また、後輪3の回転軸δは、回転軸γと平行であり、後記する軸芯棒3δを通るように設定されている(
図11等参照。)。
【0021】
また、BBシェル20は、ヘッドチューブ6の後側に位置しており、回転軸β、γが次のような関係を有する。すなわち、回転軸β、γのいずれか一方を平行移動させて他方に交差させたときに、回転軸β、γが直交する(
図2、
図4および
図5等参照。)。
【0022】
さらに、BBシェル20には、スイングアーム5を回転自在に支持するためのブラケット29A、29Bが後側に伸びるように設けられている(
図5、
図7、
図8、
図9および
図10等参照。)。そして、ブラケット29A、29Bには、スイングアーム5の回転軸部をなす軸芯棒5εが通る穴29aが設けられている。なお、軸芯棒5εは、シートチューブ7の下端に設けられた穴7aを通っており、シートチューブ7の回転軸部としても機能する。
【0023】
また、ヘッドチューブ6には、水平ステイ8の一方側を回動自在に保持する軸支部8aが設けられている(
図2等参照。)。さらに、ヘッドチューブ6には、次のようなテンショナー30や手提げ用のハンドル31が設けられている。まず、テンショナー30は、自転車1の折り畳み時にチェーン26が弛むのを規制するものであり、テンショナー30にチェーン26が通されている(
図6等参照。)。また、ハンドル31は、折り畳んだ自転車1を水平方向に指向させた状態で運搬するときに、運搬者により把持される。
【0024】
次に、シートチューブ7は、上側にシートポスト33が差し込まれてシート34と連結されるものであり、シートポスト33とシートチューブ7とはシートクランプ35により固定されている。また、シートチューブ7は、自転車1を折り畳んだり、折り畳まれた状態から戻したりするときに回転操作される(
図12等参照。)。
【0025】
すなわち、シートチューブ7の下端には、穴7aを有するブラケット7Cが設けられており、ブラケット7Cは、ブラケット29A、29Bにより挟み込まれている(
図5、
図7~
図9等参照。)。これにより、シートチューブ7は、軸芯棒5εの中心軸を通るように設定された回転軸εの周囲に回転自在となっている。また、ブラケット29A、29Bには、シートチューブ7の水平側への回転を規制するストッパ36が設けられている(
図10等参照。)。
【0026】
そして、シートチューブ7は、折り畳まれた状態から通常の使用状態に戻ったときにストッパ36に係合して水平側への回転が規制される。また、回転軸εは、回転軸γと平行である。
なお、シートチューブ7には、水平ステイ8の他方側、垂直ステイ10それぞれを回動自在に保持する軸支部8b、10aが設けられている(
図2等参照。)。また、シート34の後部には凹部34aが設けられており、凹部34aには、後記するように折り畳み時に、ステアリングコラム12が嵌まる(
図1、
図3および
図12~
図14等参照。)。
【0027】
続いて、スイングアーム5について説明する。
スイングアーム5は、チェーン26の弛みを規制するとともに、後輪3を回転自在に保持し、自身の回転軸εの周囲に回転自在となるように組み付けられる。ここで、スイングアーム5の回転軸εは、前記のとおり、軸芯棒5εを通るように設定されており、回転軸δよりも前側に、かつ、回転軸γ、δと平行に設定されている。
【0028】
ここで、自転車1が折り畳まれた状態において、回転軸α、γ、δに関して成立している基準状態について説明する(
図13および
図14等参照。)。
基準状態は、回転軸α、γ、δが実質的に同一の平面1A上に含まれ、かつ、回転軸γ、δによって回転軸αが挟まれている状態であり(
図13等参照。)、スイングアーム5の回転軸εを中心とする回転、および、ハンドル4による前輪2の回転軸αを中心とする回転により、実現する(
図12等参照。)。
【0029】
例えば、ハンドル4の回転操作により前輪2を回転軸αの周囲に回転させ、前輪2が自転車の直進時とは反対の方向を指向し、かつ、回転軸αが回転軸γ、δと平行になっている状態にする。この状態で、スイングアーム5を、回転軸εの周囲に回転させることにより、基準状態を実現することができる。
【0030】
また、軸芯棒2αを回転軸αの方向に垂直に2等分する切断面sα、軸芯棒21γを回転軸γの方向の長さに関して回転軸γに垂直に2等分する切断面sγ、および、軸芯棒3δを回転軸δの方向の長さに関して回転軸δに垂直に2等分する切断面sδを考えると(
図14等参照。)、基準状態では、切断面sα、sγ、sδが全て実質的に同一の平面1B上に含まれる。
【0031】
以下、スイングアーム5の構成について、さらに詳述する。
スイングアーム5は、主に、前出の連結部9および台座部38からなる。
まず、台座部38は、自転車1が折り畳まれた状態で後記する筒状部品40が載る部分であり(
図13~
図15等参照。)、かつ、後輪3を回転自在に保持する部分である。また、連結部9は、台座部38と軸芯棒5εとを連結する部分である(以下、自転車1に関し、折り畳まれた状態を「折り畳み状態」と呼ぶことがある。)。
【0032】
ここで、台座部38は、2つの側板部38A、38B、天板部38C、前板部38Dおよび後板部38E等からなる(
図5、
図11~
図15等参照。)。
まず、2つの側板部38A、38Bは、折り畳み状態において側面視で、上側が矩形、下側が下方に向かってテーパ状に縮小する形状を有する。そして、側板部38A、38Bそれぞれの下端に、前記した軸芯棒3δを保持するフォーク部41が設けられている。
【0033】
後輪3は、左右対称な1組の車輪3A、3Bからなる。そして、軸芯棒3δは、車輪3A、3Bそれぞれの回転中心を通るように車輪3A、3Bを貫通しており、さらに、2つの側板部38A、38Bを架橋するように、両端部においてそれぞれフォーク部41に固定されている。
【0034】
また、車輪3A、3Bは、2つの側板部38A、38Bに挟まれた内側の領域に収まっている。そして、側板部38A、38Bの内側の領域において、車輪3A、3Bそれぞれに固定された筒体3aと軸芯棒3δとの間に軸受け(図示せず。)が設けられ、後輪3は、軸芯棒3δの周囲に回転自在に支持される。
【0035】
なお、基準状態の自転車1を側方から視たときに(
図13等参照。)、前輪2と後輪3とは部分的に重なって視え、前輪2の下部が車輪3A、3B間に入り込んでいる。
また、前記した後輪3の側に設けられるスプロケット27は、例えば、筒体3aの外周の車輪3Aの近傍に固定されている(
図11参照。)。
【0036】
次に、天板部38Cは、折り畳み状態において筒状部品40が載る部分であり、折り畳み状態において平面視で矩形状を呈する。そして、矩形の内、前側の辺から前板部38Dが連続し、後側の辺から後板部38Eが連続し、側方のそれぞれの辺から側板部38A、38Bが連続している。また、側板部38A、38Bと前板部38D、側板部38A、38Bと後板部38Eも側方で連なっており、天板部38C、側板部38A、38B、前板部38Dおよび後板部38Eに囲まれた空間を形成している。そして、この空間は、後記するように折り畳み状態において前輪2を収容する収容空間43をなす。
【0037】
また、筒状部品40とは、折り畳み状態の自転車1の外部への露出を抑制する筒状の部品であり、自身の内周に自転車1の一部を収容しつつ、天板部38Cに載るものである(
図13~
図15等参照。)。また、筒状部品40は直方体形状を呈し、内周は、下側に開口する直方体形状の空間である。さらに、開口端の形状は、天板部38Cと略同一の矩形状であり、筒状部品40は、折り畳み状態で台座部38に載っているとき、自身の内周の開口端により台座部38に当接している。
【0038】
また、筒状部品40の開口端は、折り畳み状態において台座部38の先端部の周縁38e、つまり、天板部38Cと側板部38A、38B、前板部38Dおよび後板部38Eそれぞれとの連続部に載る(
図13および
図14等参照。)。また、周縁38eは、外側に凸をなす曲面状に設けられている。なお、筒状部品40の開口端には、緩衝用のゴムパッキン44が取り付けられている(
図16等参照。)。
【0039】
また、筒状部品40は、折り畳み状態において天板部38Cに載ったときに、上下それぞれに配置される上側、下側筒体40A、40B、および、上側筒体40Aの上側の開口を閉じる上蓋40Cから構成されている(
図15および
図16等参照。)。また、不使用時には、筒状部品40を、上側、下側筒体40A、40Bおよび上蓋40Cに分解しておき、使用時には、上側、下側筒体40A、40Bおよび上蓋40Cを一体化して筒状部品40を組み立てることができる。
【0040】
ここで、上側、下側筒体40A、40Bは、両方とも、向かい合う2つの側板が内周側に折れ曲がり可能である(
図17等参照。)。このため、上側、下側筒体40A、40Bは、不使用時に折り畳んで薄型化しておくことができる。
【0041】
また、下側筒体40Bの上縁の4つの辺それぞれに穴40aが設けられ、上側筒体40Aの下縁の4つの辺それぞれにおいて穴40aに対応する位置に突起40bが設けられている。そして、筒状部品40の組み立て時には、下側筒体40Bの穴40aに上側筒体40Aの突起40bを嵌合させることにより、上側、下側筒体40A、40Bを一体化する。
【0042】
同様に、上側筒体40Aの上縁の4つの辺それぞれに穴40aが設けられ、上蓋40Cの下縁の4つの辺それぞれにおいて穴40aに対応する位置に突起40bが設けられている。そして、筒状部品40の組み立て時には、上側筒体40Aの穴40aに上蓋40Cの突起40bを嵌合させることにより、上側筒体40Aと上蓋40Cとを一体化する。
【0043】
なお、ゴムパッキン44は、下側筒体40Bの下縁に取り付けられている。また、上蓋40Cにはスリット40Caが設けられており、スリット40Caの奥に、ステアリングコラム12に嵌まるゴムリング40Cbが取り付けられている(
図15~
図17等参照。)。
また、下側筒体40Bには、ハンドル31を筒状部品40の外側に露出するための穴40Baが設けられている(
図15等参照。)。
【0044】
また、天板部38Cには、垂直ステイ10に設けられた係止部10bが嵌る係止穴10cや、チェーン26を通すスリット26aが設けられており(
図1、
図2および
図18等参照。)、連結部9が、天板部38Cから垂直に上側に向かって伸びている)。
【0045】
さらに、天板部38Cおよび前板部38Dの両方に跨るように、折り畳み時に前輪2を通すスリット2bが設けられている(
図1、
図15および
図18等参照。)。そして、前輪2は、自転車1の折り畳みに伴ってスイングアーム5が回転する過程で、スリット2bを通って収容空間43に収まる。
【0046】
また、後板部38Eにはスタンド46が装着されており、スタンド46は、折り畳み状態の自転車1を、後輪3を路面に接地させて立たせるときに、後輪3とともに路面に接触して自転車1の立位を維持させる(
図13、
図14等参照。)。
また、スタンド46は、自転車1が折り畳まれた状態で前輪2が嵌るスリット46aを有し(
図5、
図11、
図14等参照。)、前輪2は、自転車1の折り畳みに伴ってスイングアーム5が回転する過程で、スリット46aに嵌まる。
【0047】
次に、連結部9は、矩形状の断面を有する棒体として設けられ、先端に、軸芯棒5εを通すブラケット47A、47Bが設けられている。また、ブラケット47A、47Bは、ブラケット29A、29Bを回転軸εの方向に外側から挟み込めるように設けられている。これにより、スイングアーム5全体が回転軸εの周囲に回転自在となっている(
図5、
図7~
図10等参照。)。なお、ブラケット29A、29Bの後側の端は、スイングアーム5の回転を規制するストッパ29bとして機能しており、ストッパ29は、連結部9に当接することで、スイングアーム5が水平側に過剰に回転するのを規制する(
図2、
図7、
図12等参照。)。
【0048】
さらに、連結部9には、折り畳み状態で、ヘッドチューブ6とスイングアーム5とを締結する締結部48が設けられている(
図7および
図18等参照。)。締結部48は、例えば、スナップリングであり、スナップリングが折り畳み状態においてヘッドチューブ6に嵌まることでヘッドチューブ6とスイングアーム5とを締結する。
【0049】
垂直ステイ10は、シートチューブ7とスイングアーム5とを鉛直方向に架橋するものであり、例えば、金属棒が鋭角状に折れ曲がった形状を有し(
図19等参照。)、折れ曲がりの角度が低減する側に復元するように弾性を有する。そして、折れ曲がりの部分がシートチューブ7に設けられた軸支部10aに支持されている(
図1等参照。)。また、折れ曲がりの反対側の2つの端部が互いに対向するように折れ曲がって係止部10bをなし、軸支部10a側の折れ曲がりの角度が拡大された状態で、2つの係止部10bがそれぞれ係止穴10cに嵌っている(
図18等参照。)。
【0050】
水平ステイ8は、ヘッドチューブ6とシートチューブ7とを水平方向に架橋するものであり、ヒンジ8cにより折り曲げが可能となっている(
図20、
図21等参照。)。そして、ヒンジ8cの一方側がヘッドチューブ6に設けた軸支部8aに回動自在に保持され、他方側がシートチューブ7に設けた軸支部8bに回動自在に保持されている(
図1、
図2等参照)。
【0051】
〔実施例の折り畳み方法〕
実施例の自転車1の折り畳み方法を、図面を用いて説明する。
まず、ペダル23をクランク21から取り外して、フック24に引っ掛ける(
図20等参照。)。次に、垂直ステイ10の係止部10bを係止穴10cから取り出して垂直ステイ10をスイングアーム5から分離する。この状態で、シートチューブ7を前側に回転させながらヘッドチューブ6に近付けていくとともに、水平ステイ8を、ヒンジ8cが下側に突き出るように折り曲げていく(
図21等参照。)。
【0052】
また、シートチューブ7をヘッドチューブ6に近付けていく過程で、シートクランプ35を緩めてシートポスト33をシートチューブ7に対して回転させ、シート34を反転させる。また、シートポスト33をシートチューブ7に差し込んでいく。そして、シート34の凹部にステアリングコラム12が嵌まるまでシートチューブ7をヘッドチューブ6に近付ける(
図22等参照。)。
【0053】
続いて、ハンドル4の回転操作より、前輪2を回転させて、自転車1の直進時とは反対の方向を指向させる(
図23等参照。)。この状態で、スイングアーム5を回転させて、後輪3を前側に回転させていき、前輪2を台座部38の内側、つまり、収容空間43に収容する(
図24等参照。)。これにより、折り畳みの作業が完了し、自転車1は、折り畳み状態となる。
【0054】
このとき、回転軸α、γ、δは、実質的に同一平面上に含まれており、上側に向かって回転軸δ、α、γの順に並んでいる(
図13等参照。)。また、切断面sα、sγ、sδは、実質的に同一平面上に含まれており、上側に向かって切断面sδ、sα、sγの順に並んでいる(
図14等参照。)。つまり、折り畳み状態において自転車1は基準状態になっている。なお、基準状態において、締結部48は、ヘッドチューブ6に嵌まっている。
【0055】
その後、折り畳み状態の自転車1に下側筒体40Bおよび上側筒体40Aを上側から装着し、さらに、上蓋40Cを側方かつ上側から装着してゴムリング40Cbをステアリングコラム12に嵌めるとともに、上側、下側筒体40A、40Bおよび上蓋40Cを一体化して筒状部品40を形成する。これにより、台座部38に筒状部品40が載った状態になり、自転車1は筒状部品40で覆われる。
【0056】
〔実施例の効果〕
実施例の自転車1は、折り畳み式であって次のようなスイングアーム5を備える。すなわち、スイングアーム5は、クランク21と後輪3との間に架け渡されるチェーン26の弛みを規制するとともに、後輪3を回転自在に保持し、自身の回転軸εの周囲に回転自在となるように組み付けられる。また、スイングアーム5は、後輪3の回転軸δよりも前側に、クランク21の回転軸γおよび後輪3の回転軸δと平行に自身の回転軸εが設定されている。
【0057】
また、スイングアーム5の自身の回転軸εを中心とする回転、および、ハンドル4による前輪2の回転軸β周囲の回転により、自転車1は次のような基準状態となる。すなわち、基準状態とは、前輪2、クランク21および後輪3それぞれの回転軸α、γ、δが実質的に同一の平面1A上に含まれ、かつ、回転軸γ、δによって回転軸αが挟まれる状態である。そして、自転車1は、折り畳まれた状態において、基準状態を維持している。
【0058】
これにより、自転車1を、後輪3、前輪2およびスプロケット22の内の最大径を有するものの幅までコンパクトに折り畳むことができる。また、折り畳みに必要な回転作業の1つを、ハンドル4の回転操作で代用することができる。このため、折り畳み状態のコンパクト感を損なうことなく、折り畳み作業の更なる簡素化を達成することができる。
【0059】
また、軸芯棒2αを回転軸αの方向の長さに関して回転軸αに垂直に2等分する切断面sα、軸芯棒21γを回転軸γの方向の長さに関して回転軸γに垂直に2等分する切断面sγ、および、軸芯棒3δを回転軸δの方向の長さに関して回転軸δに垂直に2等分する切断面sδを考えると、基準状態では、切断面sα、sγ、sδが全て実質的に同一の平面1B上に含まれる。
これにより、自転車1において、折り畳み状態のコンパクト感を更に高めることができる。
【0060】
また、自転車1は、次のような筒状部品40を備える。すなわち、筒状部品40は、折り畳まれた自転車1に装着されて自転車1の外部への露出を抑制するものである。また、スイングアーム5は、次のような台座部38を有する。すなわち、台座部38は、自転車1が折り畳まれた状態で、筒状部品40が自身の内周に自転車1の一部を収容しつつ載る部分である。また、筒状部品40は、台座部38に載っているとき、自身の内周の開口端により台座部38に当接している。
【0061】
これにより、例えば、上側、下側筒体40A、40Bを、折り畳み状態の自転車1の上側から投入して台座部38で受け止めさせることができる。このため、筒状部品40の装着を簡易化することができる。
【0062】
また、上側、下側筒体40A、40Bとして剛性が高いものを採用して上側から投入しても、台座部38により上側、下側筒体40A、40Bを確実に受け止めることができる。これにより、自転車1を折り畳み状態にすることで顕在する突起を、剛性が高い筒状部品40によって覆いながら、自転車1を持ち運ぶことができる。このため、突起による引っ掛けや傷つけ等を抑制することができる。
【0063】
また、筒状部品40の開口端は、台座部38の先端部の周縁38eに載り、周縁38eは、外側に凸をなす曲面状に設けられている。
これにより、台座部38にエッジが存在する場合に想定される問題、例えば、エッジによる傷つけを抑制することができる。
【0064】
また、台座部38は、自転車1が折り畳まれた状態で前輪2を収容する収容空間43、および、収容空間43を外部に開放するスリット2bを有する。そして、前輪2は、自転車1の折り畳みに伴ってスイングアーム5が回転する過程で、スリット2bを通って収容空間43に収まる。
これにより、折り畳み状態の自転車1を、前輪2を台座部38で覆って持ち運ぶことができる。
【0065】
さらに、台座部38は、次のようなスタンド46を有し、スタンド46は、折り畳まれた自転車1を、後輪3を路面に接地させて立たせるときに、後輪3とともに路面に接触して自転車1の立位を維持させる。
これにより、スタンド46を、スイングアーム5とともに折り畳みに伴って回転させることができるので、折り畳み状態の自転車1を立たせるとき以外では、スタンド46を路面から離しておくことができ、折り畳み状態の自転車1を立たせるときには、スタンド46を路面に接触させて自転車1の立位を維持することができる。このため、スタンド46に何ら操作を加えなくても、スタンド46により自転車1の立位を維持することができる。
【0066】
また、スタンド46は、自転車1が折り畳まれた状態で前輪2が嵌るスリット46aを有し、前輪2は、自転車1の折り畳みに伴ってスイングアーム5が回転する過程で、スリット46aに嵌まる。
これにより、折り畳み状態の自転車1において、回転軸βの周囲に前輪2が回転するのを抑制することができる。
【0067】
また、自転車1は、折り畳み状態で、ヘッドチューブ6とスイングアーム5とを締結する締結部48を備える。
これにより、折り畳み状態の自転車1において、ヘッドチューブ6とスイングアーム5とが離間するのを抑制することができる。
【0068】
また、締結部48は、スイングアーム5に設けられてスイングアーム5とともに回転するスナップリングであり、スナップリングがヘッドチューブ6に嵌まることでヘッドチューブ6とスイングアーム5とを締結する。
これにより、折り畳み状態の自転車1において、ヘッドチューブ6とスイングアーム5とを、より強固に締結することができる。
【0069】
〔変形例〕
本願発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形例を考えることができる。
例えば、実施例の自転車1によれば、基準状態において前輪2の下部が車輪3A、3B間に入り込んでいたが、前輪2の下部が車輪3A、3B間に入り込まないようにしてもよい。また、後輪3を1つの車輪で構成し、基準状態の自転車1を側方から視たときに前輪2と後輪3とが重ならないようにしてもよい。
【0070】
また、実施例の自転車1によれば、チェーンリング22およびスプロケット27は、自転車1を正面視したときにヘッドチューブ6の左側に存在したが、ヘッドチューブ6の右側に存在するようにチェーンリング22およびスプロケット27を組み付けてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 自転車 1A 平面 2 前輪 2α 軸芯棒 3 後輪 3δ 軸芯棒 4 ハンドル 5 スイングアーム 12 ステアリングコラム(回転軸部) 21 クランク 21γ 軸芯棒 26 チェーン α、γ、δ、ε 回転軸 β 回転軸(中心軸) sα、sγ、sδ 切断面