(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】セラミックグリーンシート製造用離型フィルムロール
(51)【国際特許分類】
H01G 13/00 20130101AFI20220922BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20220922BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20220922BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20220922BHJP
B65H 75/00 20060101ALI20220922BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
H01G13/00 351A
B32B27/00 L
B32B27/36
B32B27/18 Z
B65H75/00 Z
H01G4/30 311Z
H01G4/30 517
(21)【出願番号】P 2018049175
(22)【出願日】2018-03-16
【審査請求日】2021-01-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柴田 悠介
(72)【発明者】
【氏名】森 憲一
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-062179(JP,A)
【文献】特開2001-163524(JP,A)
【文献】特開平09-057872(JP,A)
【文献】特開平09-272148(JP,A)
【文献】特開2016-060158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 13/00
B32B 27/00
B32B 27/36
B32B 27/18
B65H 75/00
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃でのコア外径と50℃で1時間加熱後のコア外径との差の絶対値が0.1mm以下
であり、
前記コアは、25℃でのコア外径と5℃で1時間冷却後のコア外径との差の絶対値が0.1mm以下であるコア
であり、
前記コアがベークライトコアであり、
前記コアの上に、離型フィルムが巻き取られているグリーンシート製造用離型フィルムロール。
【請求項2】
コアの円周方向及び幅方向について、各々位置を変えて25℃でのコア外径を各々10点
測定した時の標準偏差が、コアの円周方向及び幅方向の両者において0.05mm以下で
ある請求項1に記載のグリーンシート製造用離型フィルムロール。
【請求項3】
離型フィルムを構成するフィルム基材がポリエステルフィルムであり、前記離型フィルム
は前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に離型層を有し、前記離型層表面の領域表
面平均粗さ(Sa)が7nm以下である請求項1または2に記載のセラミックグリーンシ
ート製造用離型フィルムロール。
【請求項4】
ポリエステルフィルムが、無機粒子を実質的に含有していない表面層A及び粒子を含有す
る反対側の表面層Bを有し、表面層A上に離型層が設けられており、前記表面層Bが含有
する粒子がシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子であり、粒子の合計が表面層B中に
5000~15000ppm含有されている請求項3に記載のセラミックグリーンシート
製造用離型フィルムロール。
【請求項5】
0.2μm~1.0μmの厚みを有するセラミックグリーンシートの製造方法であって、
請求項1から4のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムロール
に巻き取られている離型フィルムを用いるセラミックグリーンシートの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のセラミックグリーンシートの製造方法を採用することを特徴とするセラ
ミックコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリーンシート製造用離型フィルムロールに関する。更に詳しくは、離型フィルムが薄膜で表面が平滑な場合においてもフィルムロール保管中の巻きズレが発生しないグリーンシート製造用離型フィルムロールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、巻き密度を所定の範囲内に収めることによりグリーンシート製造用離型フィルムが巻き取られた状態の巻きズレを防止し、平面性も維持できるという技術が知られていた(例えば、特許文献1参照)。しかし、かかる従来技術はグリーンシートが薄膜化した場合に、巻き密度を一定の範囲に収めても、離型面と裏面の突起が大きいため、グリーンシートにピンホールが発生したり、平面性が悪化してしまうという問題点があった。
【0003】
離型面と裏面の表面粗さを適度な範囲に収めることにより離型剤層の外表面の高平滑化が得られるとともに、優れた離型性を備えることができるという技術が知られていた(例えば、特許文献2参照)。しかし、かかる従来技術は巻取り直後の巻き状態は良好であるが、保管、輸送中にフィルムロール温度が変化した場合にコアの膨張、収縮により巻芯付近のフィルムの巻きが緩くなったり締まったりすることで、巻ズレが発生するという問題点があった。セラミックスラリー塗工で使用する巻出し部の離型フィルムロールに巻ズレがある場合、フィルムの蛇行が発生し、セラミックグリーンシートを均一に塗工、作成することが困難となる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-181992号公報
【文献】特開2014-082500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の課題を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、離型フィルムロールの保管温度が変化した場合においても、巻きズレが発生しない優れたグリーンシート製造用剥離フィルムロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、かかる目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明の完成に至った。すなわち本発明は、以下の構成よりなる。
1. 25℃でのコア外径と50℃で1時間加熱後のコア外径との差の絶対値が0.1mm以下、かつ25℃でのコア外径と5℃で1時間冷却後のコア外径との差の絶対値が0.1mm以下であるコアの上に、離型フィルムが巻き取られているグリーンシート製造用離型フィルムロール。
2. コアの円周方向及び幅方向について、各々位置を変えて25℃でのコア外径を各々10点測定した時の標準偏差が、コアの円周方向及び幅方向の両者において0.05mm以下である上記第1に記載のグリーンシート製造用離型フィルムロール。
3. 離型フィルムを構成するフィルム基材がポリエステルフィルムであり、前記離型フィルムは前記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に離型層を有し、前記離型層表面の領域表面平均粗さ(Sa)が7nm以下である上記第1または第2に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムロール。
4. ポリエステルフィルムが、無機粒子を実質的に含有していない表面層A及び粒子を含有する反対側の表面層Bを有し、表面層A上に離型層が設けられており、前記表面層Bが含有する粒子がシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子であり、粒子の合計が表面層B中に5000~15000ppm含有されている上記第3に記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムロール。
5. 0.2μm~1.0μmの厚みを有するセラミックグリーンシートの製造方法であって、上記第1から第4のいずれかに記載のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムロールに巻き取られている離型フィルムを用いるセラミックグリーンシートの製造方法。
6. 上記第5に記載のセラミックグリーンシートの製造方法を採用することを特徴とするセラミックコンデンサの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、グリーンシート製造用剥離フィルムロールにおいて、離型フィルムが薄膜で表面が平滑であり、フィルムロールの保管温度が変化した場合においても、巻きズレの発生を防止することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムロール(以下、単に離型フィルムロールということがある)は、基材フィルムである二軸配向ポリエステルフィルムの片面に離型層を有する離型フィルムロールである。
【0009】
(ポリエステルフィルム)
本発明において基材として好ましく用いられるポリエステルフィルムを構成するポリエステルは、特に限定されず、離型フィルム用基材として通常一般に使用されているポリエステルをフィルム成形したものを使用することが出来るが、好ましくは、芳香族二塩基酸成分とジオール成分からなる結晶性の線状飽和ポリエステルであるのが良く、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート又はこれらの樹脂の構成成分を主成分とする共重合体がさらに好適であり、とりわけポリエチレンテレフタレートから形成されたポリエステルフィルムが特に好適である。ポリエチレンテレフタレートは、エチレンテレフタレートの繰り返し単位が好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上であり、他のジカルボン酸成分、ジオール成分が少量共重合されていてもよいが、コストの点から、テレフタル酸とエチレングリコールのみから製造されたものが好ましい。また、本発明のフィルムの効果を阻害しない範囲内で、公知の添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、結晶化剤などを添加してもよい。ポリエステルフィルムは双方向の弾性率の高さ等の理由から二軸配向ポリエステルフィルムであることが好ましい。
【0010】
上記ポリエチレンテレフタレートフィルムの固有粘度は0.50~0.70dl/gが好ましく、0.52~0.62dl/gがより好ましい。固有粘度が0.50dl/g以上の場合、延伸工程で破断が多く発生することがなく好ましい。逆に、0.70dl/g以下の場合、所定の製品幅に裁断するときの裁断性が良く、寸法不良が発生しないので好ましい。また、原料は十分に真空乾燥することが好ましい。
【0011】
本発明におけるポリエステルフィルムの製造方法は特に限定されず、従来一般に用いられている方法を用いることが出来る。例えば、前記ポリエステルを押出機にて溶融して、フィルム状に押出し、回転冷却ドラムにて冷却することにより未延伸フィルムを得て、該未延伸フィルムを二軸延伸することにより得ることが出来る。二軸延伸フィルムは、縦方向あるいは横方向の一軸延伸フィルムを横方向または縦方向に逐次二軸延伸する方法、或いは未延伸フィルムを縦方向と横方向に同時二軸延伸する方法で得ることが出来る。
【0012】
本発明において、ポリエステルフィルム延伸時の延伸温度はポリエステルの二次転移点(Tg)以上とすることが好ましい。縦、横おのおのの方向に1~8倍、特に2~6倍の延伸をすることが好ましい。
【0013】
上記ポリエステルフィルムは、厚みが12~50μmであることが好ましく、さらに好ましくは15~38μmであり、より好ましくは、19~33μmである。フィルムの厚みが12μm以上であれば、フィルム生産時や加工工程、成型の時に、熱により変形するおそれがなく好ましい。一方、フィルムの厚みが50μm以下であれば、使用後に廃棄するフィルムの量が極度に多くならず、環境負荷を小さくする上で好ましい。
【0014】
上記ポリエステルフィルム基材は、単層であっても2層以上の多層であっても構わないが、少なくとも片面には実質的に無機粒子を含まない表面層Aを有する積層フィルムであることが好ましい。2層以上の多層構成からなる積層ポリエステルフィルムの場合は、実質的に無機粒子を含有しない表面層Aの反対面には、粒子などを含有することができる表面層Bを有することが好ましい。積層構成としては、離型層を塗布する側の層をA層、その反対面の層をB層、これら以外の芯層をC層とすると、厚み方向の層構成は離型層/A/B、あるいは離型層/A/C/B等の積層構造が挙げられる。当然ながらC層は複数の層構成であっても構わない。また、表面層Bには粒子を含まないこともできる。その場合、フィルムをロール状に巻き取るための滑り性を付与するため、表面層B上には少なくとも粒子とバインダーを含んだコート層を設けることが好ましい。
【0015】
本発明におけるポリエステルフィルム基材において、離型層を塗布する面を形成する表面層Aは、実質的に無機粒子を含有しないことが好ましい。このとき、表面層Aの領域表面平均粗さ(Sa)は、7nm以下が好ましい。Saが7nm以下であると、積層する超薄層セラミックグリーンシートの成型時にピンホールなどの発生が起こりにくく好ましい。表面層Aの領域表面平均粗さ(Sa)は小さいほど好ましいと言えるが、0.1nm以上であって構わない。ここで、表面層A上に後述のアンカーコート層などを設ける場合は、コート層に実質的に無機粒子を含まないことが好ましく、コート層積層後の領域表面平均粗さ(Sa)が前記範囲に入ることが好ましい。本発明において、「無機粒子を実質的に含有しない」とは、無機粒子が、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に50ppm以下、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下となる含有量を意味する。これは積極的に無機粒子をフィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
【0016】
本発明におけるポリエステルフィルム基材において、離型層を塗布する面の反対面を形成する表面層Bは、フィルムの滑り性や空気の抜けやすさの観点から、粒子を含有することが好ましく、特にシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を用いることが好ましい。含有される粒子含有量は、表面層B中に粒子の合計で5000~15000ppm含有することが好ましい。このとき、表面層Bのフィルムの領域表面平均粗さ(Sa)は、1~40nmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、5~35nmの範囲である。シリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子の合計が5000ppm以上、Saが1nm以上の場合には、フィルムをロール状に巻き上げるときに、空気を均一に逃がすことができ、巻き姿が良好で平面性良好により、超薄層セラミックグリーンシートの製造に好適なものとなる。また、シリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子の合計が15000ppm以下、Saが40nm以下の場合には、滑剤の凝集が生じにくく、粗大突起ができないため、超薄層のセラミックグリーンシート製造時に品質が安定し好ましい。
【0017】
上記B層に含有する粒子としては、シリカ及び/又は炭酸カルシウム以外に不活性な無機粒子及び/又は耐熱性有機粒子なども用いることができるが、透明性やコストの観点からシリカ粒子及び/又は炭酸カルシウム粒子を用いることがより好ましい。また、他に使用できる無機粒子としては、アルミナ-シリカ複合酸化物粒子、ヒドロキシアパタイト粒子などが挙げられる。また、耐熱性有機粒子としては、架橋ポリアクリル系粒子、架橋ポリスチレン粒子、ベンゾグアナミン系粒子などが挙げられる。またシリカ粒子を用いる場合、多孔質のコロイダルシリカが好ましく、炭酸カルシウム粒子を用いる場合は、ポリアクリル酸系の高分子化合物で表面処理を施した軽質炭酸カルシウムが、滑剤の脱落防止の観点から好ましい。
【0018】
上記表面層Bに添加する粒子の平均粒子径は、0.1μm以上2.0μm以下が好ましく、0.5μm以上1.0μm以下が特に好ましい。粒子の平均粒子径が0.1μm以上であれば、離型フィルムの滑り性が良好であり好ましい。また、平均粒子径が2.0μm以下であれば、離型層表面の粗大粒子によるセラミックグリーンシートにピンホールが発生するおそれがなく好ましい。
【0019】
上記表面層Bには素材の異なる粒子を2種類以上含有させてもよい。また、同種の粒子で平均粒径の異なるものを含有させてもよい。
【0020】
表面層Bに粒子を含まない場合は、表面層B上に粒子を含んだコート層で易滑性を持たせることが好ましい。本コート層は、特に限定されないが、ポリエステルフィルムの製膜中に塗工するインラインコートで設けることが好ましい。表面層Bに粒子を含まず、表面層B上に粒子を含むコート層を有する場合、コート層の表面は、上述の表面層Bの領域表面平均粗さ(Sa)と同様の理由により、領域表面平均粗さ(Sa)が1~40nmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、5~35nmの範囲である。
【0021】
上記離型層を設ける側の層である表面層Aには、ピンホール低減の観点から、滑剤などの粒子の混入を防ぐため、再生原料などを使用しないことが好ましい。
【0022】
上記離型層を設ける側の層である表面層Aの厚み比率は、基材フィルムの全層厚みの20%以上50%以下であることが好ましい。20%以上であれば、表面層Bなどに含まれる粒子の影響をフィルム内部から受けづらく、領域表面平均粗さSaが上記の範囲を満足することが容易であり好ましい。基材フィルムの全層の厚みの50%以下であると、表面層Bにおける再生原料の使用比率を増やすことができ、環境負荷が小さく好ましい。
【0023】
また、経済性の観点から上記表面層A以外の層(表面層Bもしくは前述の中間層C)には、50~90質量%のフィルム屑やペットボトルの再生原料を使用することができる。この場合でも、B層に含まれる滑剤の種類や量、粒径ならびに領域表面平均粗さ(Sa)は、上記の範囲を満足することが好ましい。
【0024】
また、後に塗布する離型層などの密着性を向上させたり、帯電を防止するなどのために表面層A及び/または表面層Bの表面に製膜工程内の延伸前または一軸延伸後のフィルムにコート層を設けてもよく、コロナ処理などを施すこともできる。
【0025】
離型層上に、塗布、成型されるセラミックグリーンシートは、塗布、成型後に離型フィルムと共にロール状に巻き取られる。このとき、セラミックグリーンシート表面に離型フィルムの易滑性を持たせた反離型面(易滑面と呼ぶことがある)が接触した状態で巻き取られることとなる。セラミックグリーンシート表面に欠陥を発生させないために、易滑面は、適度に平坦であることが必要であり、領域表面平均粗さ(Sa)が1nm以上25nm以下かつ最大突起高さ(P)が60nm以上500nm以下であることが好ましい。
【0026】
(離型層)
本発明における離型層を構成する樹脂には特に限定はなく、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アルキド樹脂、各種ワックス、脂肪族オレフィンなどを用いることができ、各樹脂を単独もしくは、2種類以上併用することもできる。
【0027】
本発明における離型層として、例えばシリコーン樹脂とは、分子内にシリコーン構造を有する樹脂のことであり、硬化型シリコーン、シリコーングラフト樹脂、アルキル変性などの変性シリコーン樹脂などが挙げられるが、移行性などの観点から反応性の硬化シリコーン樹脂を用いることが好ましい。反応性の硬化シリコーン樹脂としては、付加反応系のもの、縮合反応系のもの、紫外線もしくは電子線硬化系のものなどを用いることができる。より好ましくは、低温で加工できる低温硬化性の付加反応系のもの、および紫外線もしくは、電子線硬化系のものがよい。これらのものを用いることで、ポリエステルフィルムへの塗工加工時に、低温で加工できる。そのため、加工時におけるポリエステルフィルムへの熱ダメージが少なく、平面性の高いポリエステルフィルムが得られ、0.2~1.0μm厚みの超薄膜セラミックグリーンシート製造時にもピンホールなどの欠点を少なくすることができる。
【0028】
付加反応系のシリコーン樹脂としては、例えば末端もしくは側鎖にビニル基を導入したポリジメチルシロキサンとハイドロジエンシロキサンとを、白金触媒を用いて反応させて硬化させるものが挙げられる。このとき、120℃で30秒以内に硬化できる樹脂を用いる方が、低温での加工ができ、より好ましい。例としては、東レ・ダウコーニング社製の低温付加硬化型(LTC1006L、LTC1056L、LTC300B、LTC303E、LTC310、LTC314、LTC350G、LTC450A、LTC371G、LTC750A、LTC755、LTC760Aなど)および熱UV硬化型(LTC851、BY24-510、BY24-561、BY24-562など)、信越化学社製の溶剤付加+UV硬化型(X62-5040、X62-5065、X62-5072T、KS5508など)、デュアルキュア硬化型(X62-2835、X62-2834、X62-1980など)などが挙げられる。
【0029】
縮合反応系のシリコーン樹脂としては、例えば、末端にOH基をもつポリジメチルシロキサンと末端にH基をもつポリジメチルシロキサンを、有機錫触媒を用いて縮合反応させ、3次元架橋構造をつくるものが挙げられる。
【0030】
紫外線硬化系のシリコーン樹脂としては、例えば最も基本的なタイプとして通常のシリコーンゴム架橋と同じラジカル反応を利用するもの、不飽和基を導入して光硬化させるもの、紫外線でオニウム塩を分解して強酸を発生させ、これでエポキシ基を開裂させて架橋させるもの、ビニルシロキサンへのチオールの付加反応で架橋するもの等が挙げられる。また、前記紫外線の代わりに電子線を用いることもできる。電子線は紫外線よりもエネルギーが強く、紫外線硬化の場合のように開始剤を用いなくても、ラジカルによる架橋反応を行うことが可能である。使用する樹脂の例としては、信越化学社製のUV硬化系シリコーン(X62-7028A/B、X62-7052、X62-7205、X62-7622、X62-7629、X62-7660など)、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のUV硬化系シリコーン(TPR6502、TPR6501、TPR6500、UV9300、UV9315、XS56-A2982、UV9430など)、荒川化学社製のUV硬化系シリコーン(シリコリースUV POLY200、POLY215、POLY201、KF-UV265AMなど)が挙げられる。
【0031】
上記、紫外線硬化系のシリコーン樹脂としては、アクリレート変性や、グリシドキシ変性されたポリジメチルシロキサンなどを用いることもできる。これら変性されたポリジメチルシロキサンを、多官能のアクリレート樹脂やエポキシ樹脂などと混合し、開始剤存在下で使用することでも良好な離型性能を出すことができる。
【0032】
その他用いられる樹脂の例としては、ステアリル変性、ラウリル変性などをしたアルキド樹脂やアクリル樹脂、またはメチル化メラミンの反応などで得られるアルキド系樹脂、アクリル系樹脂なども好適である。
【0033】
上記、メチル化メラミンの反応などで得られるアミノアルキド樹脂としては、日立化成社製のテスファイン303、テスファイン305、テスファイン314などが挙げられる。メチル化メラミンの反応などで得られるアミノアクリル樹脂としては、日立化成社製のテスファイン322などが挙げられる。
【0034】
本発明における離型層に上記樹脂を用いる場合は、1種類で使用してもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。また、剥離力を調整するために、軽剥離添加剤や、重剥離添加剤といった添加剤を混合することも可能である。
【0035】
本発明における離型層には、粒径が1μm以下の粒子などを含有することができるが、ピンホール発生の観点から粒子などの突起を形成するものは、実質的に含有しないほうが好ましい。
【0036】
本発明における離型層には、密着向上剤や、帯電防止剤などの添加剤などを添加してもよい。また、基材との密着性を向上させるために、離型層を設ける前にポリエステルフィルム表面に、アンカーコート、コロナ処理、プラズマ処理、大気圧プラズマ処理等の前処理をすることも好ましい。
【0037】
本発明において、離型層の厚みは、その使用目的に応じて設定すれば良く、特に限定されないが、好ましくは、硬化後の離型層の厚みが0.005~2.0μmとなる範囲がよい。離型層の厚みが0.005μm以上であると、剥離性能が保たれて好ましい。また、離型層の厚みが2.0μm以下であると、硬化時間が長くなり過ぎず、離型フィルムの平面性の低下によるセラミックグリーンシートの厚みムラを生じおそれがなく好ましい。また、硬化時間が長くなり過ぎないので、離型層を構成する樹脂が凝集するおそれがなく、突起を形成するおそれがないため、セラミックグリーンシートのピンホール欠点が生じにくく好ましい。
【0038】
離型層を形成させたフィルム外表面(ポリエステルフィルムと接していない塗布フィルム全体の離型層表面)は、その上で塗布、成型するセラミックグリーンシートに欠陥を発生させないために、平坦であることが望ましく、領域表面平均粗さ(Sa)が5nm以下かつ最大突起高さ(P)が30nm以下であることが好ましい。さらには領域表面平均粗さ5nm以下かつ最大突起高さ20nm以下がより好ましい。領域表面粗さが5nm以下、且つ、最大突起高さが30nm以下であれば、セラミックグリーンシート形成時に、ピンホールなどの欠点の発生がなく、歩留まりが良好で好ましい。領域表面平均粗さ(Sa)は小さいほど好ましいと言えるが、0.1nm以上であっても構わず、0.3nm以上であっても構わない。最大突起高さ(P)も小さいほど好ましいと言えるが、1nm以上でも構わず、3nm以上であっても構わない。
【0039】
本発明において、離型層を形成させたフィルム表面を所定の粗さ範囲に調節するためには、PETフィルムには実質的に無機粒子を含有しないことが好ましい。なお、本発明でいう「実質的に無機粒子を含有しない」とは、基材フィルム及び離型層の両者について、例えば、蛍光X線分析で粒子に由来する元素を定量分析した際に、50ppm以下であることで定義され、好ましくは10ppm以下、最も好ましくは検出限界以下である。これは積極的に粒子を基材フィルム中に添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分や、原料樹脂あるいはフィルムの製造工程におけるラインや装置に付着した汚れが剥離して、フィルム中に混入する場合があるためである。
【0040】
本発明において、離型層の形成方法は、特に限定されず、離型性の樹脂を溶解もしくは分散させた塗液を、基材のポリエステルフィルムの一方の面に塗布等により展開し、溶媒等を乾燥により除去後、加熱乾燥、熱硬化または紫外線硬化させる方法が用いられる。このとき、溶媒乾燥、熱硬化時の乾燥温度は、180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、120℃以下であることがもっとも好ましい。その加熱時間は、30秒以下が好ましく、20秒以下がより好ましい。180℃以下の場合、フィルムの平面性が保たれ、セラミックグリーンシートの厚みムラを引き起こすおそれが小さく好ましい。120℃以下であるとフィルムの平面性を損なうことなく加工することができ、セラミックグリーンシートの厚みムラを引き起こすおそれが更に低下するので特に好ましい。
【0041】
本発明において、離型層形成用塗液を塗布するときの塗液の表面張力は、特に限定されないが30mN/m以下であることが好ましい。表面張力を前記のようにすることで、塗工後の塗れ性が向上し、乾燥後の塗膜表面の凹凸を低減することができる。
【0042】
本発明において、離型層形成用塗液を塗布するときの塗液には、特に限定されないが、沸点が90℃以上の溶剤を添加することが好ましい。沸点が90℃以上の溶剤を添加することで、乾燥時の突沸を防ぎ、塗膜をレベリングさせることができ、乾燥後の塗膜表面の平滑性を向上させることができる。その添加量としては、塗液全体に対し、10~80質量%程度添加することが好ましい。
【0043】
上記塗液の塗布法としては、公知の任意の塗布法が適用出来、例えばグラビアコート法やリバースコート法などのロールコート法、ワイヤーバーなどのバーコート法、ダイコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、等の従来から知られている方法が利用できる。
【0044】
(巻取りコア)
上記離型層を塗工した後、巻取りコアに巻き取られ、後述するセラミックグリーンシート形成用離型フィルムロールとして使用される。離型層を塗工後にフィルムを巻き取るために使用する巻芯部の巻取りコアとしては、紙、プラスチック、金属など各種コアが用いられる。本発明にて使用するコアとしては、25℃でのコア外径と50℃で1時間加熱後のコア外径との差の絶対値が0.1mm以下、かつ25℃でのコア外径と5℃で1時間冷却後のコア外径との差の絶対値が0.1mm以下であるコアが好ましい。室温から加熱、及び、冷却後のコア外径の変化が0.1mm以下であれば、フィルム巻き取り後のフィルムロール保管温度が変わった時のコア外径変化による巻芯部でのフィルムの巻き緩み、巻締りによる巻芯部の巻ズレの発生を防止できるため好ましい。加熱前後、及び冷却前後のコア外径の差の絶対値が0.06mm以下であれば更に好ましい。加熱前後、及び冷却前後のコア外径の差の絶対値は0mmであることが最も好ましいが、0.005mm以上であっても構わず、0.01mm以上であっても構わない。
【0045】
巻取りコアの円周方向及び幅方向の双方向において、各々位置を変えて25℃でのコア外径を10点測定した時の標準偏差が、双方向共に0.05mm以下であることが好ましい。標準偏差は0.03mm以下であることが更に好ましい。標準偏差が0.05mm以下であれば、巻取り直後の巻き芯部付近のフィルムへかかる応力がフィルムの幅方向で均一になり、巻ズレが発生しにくくなることから好ましい。標準偏差は0mmに近いほど好ましいが、0.001mm以上であっても構わない。
【0046】
巻取りコアの直径サイズとしては、3インチ、6インチ、8インチ、11インチなどが一般的に使用されるが、特にこれらサイズに限定されるわけではなく、各種サイズの直径サイズのコアを使用することができる。
【0047】
巻取りコアの加熱、冷却前後のサイズ変化、及び円周方向、幅方向の標準偏差が所定の範囲内とするためにはプラスチックコアを使用することが好ましい。中でもベークライト、FRPを使用することが特に好ましい。FRP(Fiber Reinforced Plastics)は強度向上のため、メインの樹脂に加えて、繊維を使用したコアであり、メインの樹脂としては、特定の種類に限定されず、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を例示することができる。使用する繊維としてはガラス、エポキシ、ポリエステル、カーボン、アラミド等の繊維が挙げられる。また、FRPはFWP(Fiber Winding Plastics)と呼ばれる場合もある。
【0048】
(セラミックグリーンシートとセラミックコンデンサ)
一般に、積層セラミックコンデンサは、直方体状のセラミック素体を有する。セラミック素体の内部には、第1の内部電極と第2の内部電極とが厚み方向に沿って交互に設けられている。第1の内部電極は、セラミック素体の第1の端面に露出している。第1の端面の上には第1の外部電極が設けられている。第1の内部電極は、第1の端面において第1の外部電極と電気的に接続されている。第2の内部電極は、セラミック素体の第2の端面に露出している。第2の端面の上には第2の外部電極が設けられている。第2の内部電極は、第2の端面において第2の外部電極と電気的に接続されている。
【0049】
本発明のセラミックグリーンシート製造用離型フィルムロールは、このような積層セラミックコンデンサを製造するために用いられる。例えば、以下のようにして製造される。まず、本発明における離型フィルムロールに巻き取られている離型フィルムをキャリアフィルムとして用い、セラミック素体を構成するためのセラミックスラリーを塗布、乾燥させる。塗布、乾燥したセラミックグリーンシートの上に、第1又は第2の内部電極を構成するための導電層を印刷する。セラミックグリーンシート、第1の内部電極を構成するための導電層が印刷されたセラミックグリーンシート及び第2の内部電極を構成するための導電層が印刷されたセラミックグリーンシートを適宜積層し、プレスすることにより、マザー積層体を得る。マザー積層体を複数に分断し、生のセラミック素体を作製する。生のセラミック素体を焼成することによりセラミック素体を得る。その後、第1及び第2の外部電極を形成することにより積層セラミックコンデンサを完成させることができる。
【実施例】
【0050】
次に、実施例、比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は当然以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた評価方法は以下の通りである。
【0051】
(1)塗布フィルムの表面特性
非接触表面形状計測システム(VertScan R550H-M100)を用いて、下記の条件で測定した値である。領域表面平均粗さ(Sa)、粗さ曲線要素の平均長さ(RSm)は、5回測定の平均値を採用し、最大突起高さ(P)は5回測定の最大値を採用した。
(測定条件)
・測定モード:WAVEモード
・対物レンズ:50倍
・0.5×Tubeレンズ
・測定面積 187×139μm
(解析条件)
・面補正: 4次補正
・補間処理: 完全補間
【0052】
(2)離型層厚み測定
離型フィルムを任意の大きさに切り取った時のフィルム断面を、透過電子顕微鏡で観察し算出した値を離型層厚みとした。
【0053】
(3)巻取りコアの幅方向、円周方向位置による外径ばらつき測定
使用するコアの幅方向、円周方向の位置を変えて10点にてノギスを用い、外径測定を行い、10点測定の結果からばらつき(標準偏差σ)を算出した(単位mm)。
【0054】
(4)巻取りコアの加熱前後の外径変化量Δa測定
各コアの特定の位置をあらかじめマーキングしておき、25℃室温下にて外径測定を実施した。測定済のコアを50℃に設定したギアオーブンに1時間投入、取り出した直後にマーキング部の外径を測定し、50℃加熱前後の外径変化を算出した。同様の測定を5回実施、平均値を算出し、外径変化量Δaとした(単位mm)。
【0055】
(5)巻取りコアの冷却前後の外径変化量Δb測定
各コアの特定の位置をあらかじめマーキングしておき、25℃室温下にて外径測定を実施した。測定済のコアを5℃に設定した恒温室に1時間投入、取り出した直後にマーキング部の外径を測定し、5℃冷却前後の外径変化を算出した。同様の測定を5回実施、平均値を算出し、外径変化量Δbとした(単位mm)。
【0056】
(6)フィルムロールの巻きズレ測定(巻取り直後)
離型加工後のフィルムを巻取り、フィルムロールを得た。巻き取ったフィルムロール端面のズレをノギスを用い測定した。
巻姿○: 端面の巻ズレ量が3mm未満である。
巻姿×: 端面の巻ズレ量が3mm~5mmの範囲である。
巻姿××: 端面の巻ズレ量が5mmを超える。
【0057】
(7)フィルムロールの巻ズレ測定(巻取り後14日後)
離型加工後のフィルムを巻取り、フィルムロールを得た。巻き取ったフィルムロールを5℃設定の恒温室に1日保管、50℃設定の恒温室に1日保管、を交互に繰り返し、合計14日間フィルムロールを保管した。14日保管後のフィルムロール端面のずれをノギスを用い測定した。
巻姿○: 端面の巻ズレ量が3mm未満である。
巻姿×: 端面の巻ズレ量が3mm~5mmの範囲である。
巻姿××: 端面の巻ズレ量が5mmを超える。
【0058】
(8)セラミックグリーンシートのピンホール、厚みばらつき評価
下記、材料からなる組成物を攪拌混合し、2.0mmのガラスビーズを分散媒とするペイントシェーカーを用いて2時間分散し、セラミックスラリーを得た。
トルエン 22.5質量%
エタノール 22.5質量%
チタン酸バリウム(富士チタン社製 HPBT-1) 50.0質量%
ポリビニルブチラール(積水化学社製 エスレックBH-3) 5.0質量%
次いで離型フィルムサンプルの離型面にアプリケーターを用いて乾燥後のスラリーが0.5μmの厚みになるように塗布し90℃で1分乾燥後、スラリー面と平滑化塗布層面を重ね合わせ、10分間、1kg/cm2の加重を掛けたあと、離型フィルムを剥離し、セラミックグリーンシートを得た。
得られたセラミックグリーンシートのフィルム幅方向の中央領域において25cm2の範囲でセラミックスラリーの塗布面の反対面から光を当て、光が透過して見えるピンホールの発生状況を観察し、下記基準で目視判定した。
○:ピンホールの発生なし、厚みばらつき特に問題なし
×:ピンホールの発生があり、及び/又は、厚みばらつきが目立つ
【0059】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET(I))の調製)
エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口及び生成物取出口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を用いた。TPA(テレフタル酸)を2トン/時とし、EG(エチレングリコール)をTPA1モルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを生成PETに対してSb原子が160ppmとなる量とし、これらのスラリーをエステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間、255℃で反応させた。次いで、第1エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成PETに対して8質量%供給し、さらに、生成PETに対してMg原子が65ppmとなる量の酢酸マグネシウム四水塩を含むEG溶液と、生成PETに対してP原子が40ppmのとなる量のTMPA(リン酸トリメチル)を含むEG溶液を添加し、常圧にて平均滞留時間1時間、260℃で反応させた。次いで、第2エステル化反応缶の反応生成物を連続的に系外に取り出して第3エステル化反応缶に供給し、高圧分散機(日本精機社製)を用いて39MPa(400kg/cm2)の圧力で平均処理回数5パスの分散処理をした平均粒径が0.9μmの多孔質コロイダルシリカ0.2質量%と、ポリアクリル酸のアンモニウム塩を炭酸カルシウムあたり1質量%付着させた平均粒径が0.6μmの合成炭酸カルシウム0.4質量%とを、それぞれ10%のEGスラリーとして添加しながら、常圧にて平均滞留時間0.5時間、260℃で反応させた。第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、95%カット径が20μmのステンレススチール繊維を焼結したフィルターで濾過を行ってから、限外濾過を行って水中に押出し、冷却後にチップ状にカットして、固有粘度0.60dl/gのPETチップを得た(以後、PET(I)と略す)。PETチップ中の滑剤含有量は0.6質量%であった。
【0060】
(ポリエチレンテレフタレートペレット(PET(II))の調製)
一方、上記PETチップの製造において、炭酸カルシウム、シリカ等の粒子を全く含有しない固有粘度0.62dl/gのPETチップを得た(以後、PET(II)と略す。)。
【0061】
(積層フィルムZの製造)
これらのPETチップを乾燥後、285℃で溶融し、別個の溶融押出し機押出機により290℃で溶融し、95%カット径が15μmのステンレススチール繊維を焼結したフィルターと、95%カット径が15μmのステンレススチール粒子を焼結したフィルターの2段の濾過を行って、フィードブロック内で合流させ、PET(I)を反離型面側層、PET(II)を離型面側層となるように積層し、シート状に45m/分のスピードで押出(キャステイング)し、静電密着法により30℃のキャスティングドラム上に静電密着・冷却させ、固有粘度が0.59dl/gの未延伸ポリエチレンテレフタレートシートを得た。層比率は各押出機の吐出量計算でPET(I)/(II)=60%/40%となるように調整した。次いで、この未延伸シートを赤外線ヒーターで加熱した後、ロール温度80℃でロール間のスピード差により縦方向に3.5倍延伸した。その後、テンターに導き、140℃で横方向に4.2倍の延伸を行なった。次いで、熱固定ゾーンにおいて、210℃で熱処理した。その後、横方向に170℃で2.3%の緩和処理をして、厚さ31μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムZを得た。得られたフィルムZの離型面側層のSaは2nm、反離型面側層のSaは28nmであった。
【0062】
(離型剤溶液X-1)
熱硬化型アミノアルキド樹脂(日立化成社製 テスファイン314、固形分60質量%)100質量部と硬化触媒としてp-トルエンスルホン酸(日立化成社製、ドライヤー900、固形分50質量%)1.2質量部を、トルエン/メチルエチルケトン/ヘプタン(=3:5:2)溶液で希釈し、固形分2質量%の離型剤溶液を調製した。
【0063】
(離型剤溶液X-2)
光カチオン硬化型シリコーン樹脂(モメンティブ社製 UV9300、固形分濃度100質量%)100質量部と硬化触媒ビス(アルキルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート1質量部を、トルエン/メチルエチルケトン/ヘプタン(=3:5:2)溶液で希釈し、固形分2質量%の離型剤溶液を調製した。
【0064】
(離型剤溶液X-3)
光ラジカル硬化性物質からなるバインダーであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレート100質量部(製品名:A-DPH、新中村化学工業社製、固形分100質量%)と離型剤であるアクリロイル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン1.0質量部(製品名:BYK-UV3500、ビッグケミー・ジャパン社製、固形分100質量%)、
光ラジカル重合開始剤であるメチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン 5.0質量部 (製品名:IRGACURE(登録商標)907、BASF社製、有効成分100質量%)を、トルエン/メチルエチルケトン(=1:1)溶液で希釈し、固形分20質量%の離型剤溶液を調製した。
【0065】
(実施例1)
(離型層の形成、コアへの巻取り)
上記で得た積層フィルムZのPET(II)により形成された層の表面に、離型剤溶液X-1を乾燥後の厚みで0.05μmとなるようにリバースグラビアコーターにて塗布し、次いで、130℃の熱風で30秒間乾燥を行い、離型層を形成し、巻取張力140N/m、巻取面圧300N/m、巻取速度150m/分、の条件で、幅1,500mm、長さ6,000mのフィルムロールに巻き上げセラミックグリーンシート製造用離型フィルムロールを得た。巻取りコアとして3インチのベークライトコア(千代田興業株式会社)を使用した。巻き取り直後、及び14日後の巻姿は巻ズレの発生もなく優秀であった。
【0066】
(参考例2)
(離型層の形成、コアへの巻取り)
巻取りで使用するコアをFRP(Fiber reinforced plastic
s)コア(株式会社栗本鐵工所)に変更した以外は実施例1と同様の方法でセラミックグ
リーンシート製造用離型フィルムロールを得た。巻き取り直後、及び14日後の巻姿は巻
ズレの発生もなく優秀であった。
【0067】
(実施例3)
(離型層の形成、コアへの巻取り)
上記で得た積層フィルムZのPET(II)により形成された層の表面に、離型剤溶液X-2を乾燥後の厚みで0.05μmとなるようにリバースグラビアコーターにて塗布し、次いで、90℃の熱風で30秒間乾燥した後、直ちに無電極ランプ(フュージョン株式会社製Hバルブ)にて紫外線照射(300mJ/cm2)を行い、離型層を形成しセラミックグリーンシート製造用離型フィルムロールを得た。巻取りコアとしてベークライトコア(千代田興業株式会社)を使用した。巻き取り直後、及び14日後の巻姿は巻ズレの発生もなく優秀であった。
【0068】
(実施例4)
(離型層の形成、コアへの巻取り)
上記で得た積層フィルムZのPET(II)により形成された層の表面に、離型剤溶液X-3を乾燥後の厚みで1.0μmとなるようにリバースグラビアコーターにて塗布し、次いで、90℃の熱風で30秒間乾燥した後、直ちに無電極ランプ(フュージョン株式会社製Hバルブ)にて紫外線照射(300mJ/cm2)を行い、離型層を形成しセラミックグリーンシート製造用離型フィルムロールを得た。巻取りコアとしてベークライトコア(千代田興業株式会社)を使用した。巻き取り直後、及び14日後の巻姿は巻ズレの発生もなく優秀であった。
【0069】
(比較例1)
離型層を形成するフィルムとして、積層フィルムZの代わりに、E5000-25μm(東洋紡製)に変更、コアをベークライトコアの代わりにABSコアを使用した以外は、実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート製造用離型フィルムロールを得た。E5000はフィルム内部に粒子を含有しており、E5000の離型層を形成する側の表面のSaが0.027μm、離型層を積層しない反離型面のSaが0.031μmであった。離型加工後の巻姿は良好であったが、14日保管後の巻芯部で巻ズレが発生していた。また、フィルムの離型面の表面粗さが大きいため、セラミック塗工時にピンホールが発生した。
【0070】
(比較例2)
離型層を形成するフィルムとして、積層フィルムZの代わりに、E5000-25μm(東洋紡製)に変更、巻取りコアをベークライトコアからABSコアに変更した以外は、実施例4と同様の方法でセラミックグリーンシート製造用離型フィルムロールを得た。離型加工前の原反の表面粗さが粗いが、離型層の厚みを厚くすることで原反突起を埋めることができ、離型層表面粗さを低くできた。その結果、比較例1で見られたピンホール、厚みばらつきを改善できた。しかし、コアとして加熱前後の外径サイズ変化の大きいABSコアを使用しているため、巻取り後14日後の巻姿を確認したところ巻ズレが発生した。
【0071】
(比較例3)
巻取りコアをベークライトコアからABSコアに変更した以外は、実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート製造用離型フィルムロールを得た。離型加工後の巻姿は良好であったが、14日保管後の巻芯部で巻ズレが発生していた。
【0072】
(比較例4)
巻取りコアをベークライトコアから紙コア(HC-E,日本紙管工業株式会社)に変更した以外は、実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート製造用離型フィルムロールを得た。離型加工後の巻姿は良好であったが、14日保管後の巻芯部で巻ズレが発生していた。
【0073】
(比較例5)
巻取りコアをベークライトコアからPPコア(ダイカポリマー株式会社)に変更した以外は、実施例1と同様の方法でセラミックグリーンシート製造用離型フィルムロールを得た。離型加工後の巻姿として巻ズレが発生した。幅方向、円周方向の外径サイズばらつきが大きいため、幅方向でのフィルムへかかる応力のばらつきが発生し、巻ズレが発生したと考えられる。また、14日保管後では、巻芯部での巻ズレが更に悪化していた。
【0074】
各実施例及び比較例の評価結果を表1に示す。
【0075】
【0076】
実施例1~4においては、加熱、及び冷却前後のコア外径の変化が所定範囲内であるため、離型フィルムロール巻取り経時後の巻ズレの発生なく良好な巻姿を維持できた。
比較例1~5においては、加熱、及び冷却前後のコア外径の変化が所定範囲を逸脱しているため、巻取り後経時保管後に巻芯付近で巻ズレの発生がみられた。比較例1においては、巻ズレの発生に加え、離型面の表面粗さが大きいため、セラミックシートのピンホールの発生もみられた。比較例5においては、巻取り直後においても巻ズレの発生がみられた。巻取り経時後の巻ズレは更に悪化がみられた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、離型フィルムが薄膜で表面が平滑な場合においてもフィルムロール保管中の巻ズレが発生しないグリーンシート製造用離型フィルムロールの提供を可能とした。