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▶ ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベットの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】薬剤、使用および方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/18 20060101AFI20220922BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20220922BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220922BHJP
   A61K 49/16 20060101ALI20220922BHJP
   A61K 51/10 20060101ALI20220922BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20220922BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220922BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20220922BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220922BHJP
   G01N 33/577 20060101ALI20220922BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
C07K16/18 ZNA
C12N15/13
A61K39/395 N
A61K49/16
A61K51/10 200
A61P25/16
A61P25/28
A61P25/02 103
G01N33/53 D
G01N33/577 B
C12P21/08
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019531644
(86)(22)【出願日】2017-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-13
(86)【国際出願番号】 EP2017082749
(87)【国際公開番号】W WO2018109058
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-10
(31)【優先権主張番号】PA201600769
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】591143065
【氏名又は名称】ハー・ルンドベック・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】カルンキ,ペッカ
(72)【発明者】
【氏名】フォグ,カリナ
(72)【発明者】
【氏名】スタヴェンハーゲン,ジェフリー ビー
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-525266(JP,A)
【文献】特表2008-509223(JP,A)
【文献】国際公開第2005/047860(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 16/00 - 16/46
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
α-シヌクレインにおけるアミノ酸126~140(配列番号2)内のエピトープに特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメントであり、前記モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントが、以下のいずれか:
a)
(i)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(ii)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(iii)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
のCDRを含む軽鎖可変領域;および
(i)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(ii)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;
(iii)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3;
のCDRを含む重鎖可変領域;または
b)
(i)配列番号9のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(ii)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(iii)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
のCDRを含む軽鎖可変領域;および
(i)配列番号12のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(ii)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;
(iii)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3;
のCDRを含む重鎖可変領域;または
c)
(i)配列番号10のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(ii)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(iii)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
のCDRを含む軽鎖可変領域;および
(i)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(ii)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;
(iii)配列番号18のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3;
のCDRを含む重鎖可変領域;または
d)
(i)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(ii)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(iii)配列番号11のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
のCDRを含む軽鎖可変領域;および
(i)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(ii)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;
(iii)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3;
のCDRを含む重鎖可変領域;または
e)
(i)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(ii)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(iii)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
のCDRを含む軽鎖可変領域;および
(i)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(ii)配列番号13のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;
(iii)配列番号16のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3;
のCDRを含む重鎖可変領域;または
f)
(i)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(ii)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(iii)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
のCDRを含む軽鎖可変領域;および
(i)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(ii)配列番号14のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;
(iii)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3;
のCDRを含む重鎖可変領域;または
g)
(i)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(ii)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(iii)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
のCDRを含む軽鎖可変領域;および
(i)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(ii)配列番号15のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;
(iii)配列番号8のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3;
のCDRを含む重鎖可変領域;または
h)
(i)配列番号3のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR1;
(ii)配列番号4のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR2;
(iii)配列番号5のアミノ酸配列を有する軽鎖CDR3;
のCDRを含む軽鎖可変領域;および
(i)配列番号6のアミノ酸配列を有する重鎖CDR1;
(ii)配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖CDR2;
(iii)配列番号17のアミノ酸配列を有する重鎖CDR3;
のCDRを含む重鎖可変領域;
を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項2】
列番号19のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号20のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域
を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項3】
列番号21のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号22のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域
を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項4】
列番号23のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号24のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域
を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
列番号25のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号26のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域
を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
列番号27のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号28のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域
を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
列番号45のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号46のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域
を含む、請求項1に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項8】
列番号35のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号36のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域
を含む、請求項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
列番号39のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号40のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域
を含む、請求項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
列番号41のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号42のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域
を含む、請求項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
列番号37のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号38のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域
を含む、請求項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
列番号29のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号30のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域
を含む、請求項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
列番号33のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号34のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域
を含む、請求項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項14】
列番号43のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号44のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域
を含む、請求項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項15】
列番号31のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号32のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域
を含む、請求項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、医薬組成物。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、シヌクレイノパチーを治療、診断またはイメージングするための医薬組成物。
【請求項18】
シヌクレイノパチーが、パーキンソン病(特発性パーキンソン病を含む)、びまん性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病、純粋自律神経不全症または多系統萎縮症である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
シヌクレイノパチーを治療、診断またはイメージングするための薬剤の製造における、請求項1~15のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの使用。
【請求項20】
パーキンソン病(特発性パーキンソン病を含む)、びまん性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病、純粋自律神経不全症、多系統萎縮症、ならびに自身の遺伝子プロファイルおよび/または将来PDを発症させる可能性が高い非PD中核症状に基づいてPDを発症するリスクのある人々を治療するための薬剤の製造における、請求項19に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α-シヌクレインに特異的に結合する新規な種類のモノクローナル抗体、ならびにシヌクレイノパチーの治療および診断にこれらの分子およびそれらのα-シヌクレイン結合フラグメントを使用する方法に関する。
【0002】
配列表の参照:
本出願は、米国特許法施行規則(37 C.F.R.)第1.821条に従う1つまたは複数の配列表(以下参照)を含み、これは、コンピュータ可読媒体(ファイル名:1074-WO-PCT_ST25.txt、2017年12月11日に作成され、43kBのサイズを有する)で開示され、このファイルは、全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
レビー小体病(LBD)としても知られているシヌクレイノパチーは、タンパク質α-シヌクレインが主要成分であるレビー小体(LB)および/またはレビー神経突起として顕微鏡で見られる細胞内のタンパク質凝集体の堆積によって特徴付けられる(Jellinger,Mov Disord.2012 Jan;27(1):8-30;McKeith et al.,Neurology(1996)47:1113-24)。シヌクレイノパチーとしては、パーキンソン病(特発性および遺伝性のパーキンソン病を含む)およびびまん性レビー小体(DLB)病(レビー小体認知症(DLB)としても知られている、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、複合された(combined)アルツハイマー病およびパーキンソン病(PD)、純粋自律神経不全症および多系統萎縮症(MSA;例えば、オリーブ橋小脳萎縮症、線条体黒質変性症およびシャイ・ドレーガー症候群))が挙げられる。シヌクレイノパチーは、パーキンソン病における主要な運動障害(固縮、運動緩徐、安静時振戦)の原因となるドーパミン作動性黒質線条体系の変性を有することが多いが、中枢神経系、末梢神経系および自律神経系および脳領域ならびに認知症および自律神経系障害などの非運動機能障害に関連する他の器官におけるレビー小体および変性レビー神経突起の広範な発生もある。非運動兆候および症状のいくつかは、パーキンソン病および他のシヌクレイノパチーにおいて運動症状に先立って起こるものと考えられる。このような初期兆候としては、例えば、レム睡眠行動障害(RBD)および嗅覚の低下および便秘が挙げられる(Mahowald et al.,Neurology(2010)75:488-489)。シヌクレイノパチーは、高齢化する人口において運動障害および認知力低下の一般的な原因であり続けている(Galasko et al.,Arch.Neurol.(1994)51:888-95)。
【0004】
視床下核(STN)における発火の増加および発火パターンの変化は、PDの症状の一因となるものと考えられ、パーキンソン病状態におけるSTN放電は、皮質振動活動に強く同期される(Shimamoto et al.,J Neurosci.2013 Apr 24;33(17):7220-33)。PD患者では、STNニューロンが、θ(4~8Hz)、α(8~12Hz)およびβ(12~30Hz)帯域において振動性の発火パターンを変化させ(Levy et al.,Brain.2002;125:1196-1209)、隣接するSTN単位およびβ帯域のSTN局所フィールド電位(LFP)への同期を増大している(Moran et al.,Brain.2008;131:3395-3409)。ヒトPDと同様に、PDの動物モデルでは、例えば、規則的な発火パターンを有するニューロンのパーセンテージが低下した一方、不規則な、混合された、またはバーストパターンが増加した点で、発火パターンの顕著な変化が、STNにおいて観察された(Ryu et al Neurosci Lett.2011;Nov 14;505(2):113-8)。光遺伝学(Optogenic)は、高周波刺激を用いてSTN求心性線維を確実に駆動し、回転行動によって測定されるPD症状を可逆的に改善した(Gradinaru et al.,Science 2009;Apr 17;324(5925):354-9)。同様に、STNの脳深部刺激は、動物モデル(Li et al.,2012)およびヒト患者(Hickey and Stacy Front Neurosci.2016;Apr 28;10:173において概説されている)においてPD症状を改善することができる。
【0005】
α-シヌクレインは、β-およびγ-シヌクレインおよびシノレチン(synoretin)を含むタンパク質のファミリーの1つである。α-シヌクレインは、シナプスに関連して正常な状態で発現され、シナプス小胞放出を調節し、それによって、神経伝達、可塑性、学習および記憶に影響を与えるのに役割を果たすものと考えられる。
【0006】
いくつかの研究により、α-シヌクレインがPD発症に中心的役割を果たすことが示唆されている。タンパク質は、病的状態において、凝集して細胞内の不溶性原線維を形成し得る。例えば、LBにおいてシヌクレインが蓄積する(Spillantini et al.,Nature(1997)388:839-40;Takeda et al.,J.Pathol.(1998)152:367-72;Wakabayashi et al.,Neurosci.Lett.(1997)239:45-8)。稀な家族性パーキンソン病では、α-シヌクレイン遺伝子の突然変異ならびにこの遺伝子の重複および三重重複(triplication)が共分離する(Kruger et al.,Nature Gen.(1998)18:106-8;Polymeropoulos,et al.,Science(1997)276:2045-7)。
【0007】
α-シヌクレインが、細胞外液中に分泌され、血漿および脳脊髄液(CSF)中に存在し得るという重要な発見があった。例えばPacheco et al.(2015)およびその他(Pacheco et al J Neurochem.2015 Mar;132(6):731-4;Conway et al.,Proc Natl Acad Sci USA(2000)97:571-576;Volles et al.,J.Biochem.42:7871-7878,2003)によるいくつかの研究により、細胞外シヌクレインが、脳において病因的役割を果たすことが示唆されている。それらの研究により、細胞外α-シヌクレインオリゴマーが、脳神経細胞膜に対して神経毒性を有することが実証された。シヌクレイン分泌のデータに基づいた別の興味深い仮説は、α-シヌクレインのプリオン様の広がりが、パーキンソン病および他のシヌクレイノパチーの進行の根底にあるというものである(Lee et al.2014,Nat Rev Neurol.2014 Feb;10(2):92-8;Hansen and Li 2012,Trends Mol Med.2012 May;18(5):248-55)。これらの発見により、細胞外シヌクレインが、免疫療法によって標的にされ得るという期待が生じた(Vekrellis et al.2011,Lancet Neurol.2011 Nov;10(11):1015-25)。
【0008】
天然α-シヌクレイン自己抗体は、PD患者および健常対照の両方において存在することが示されている。場合により、これらの群間で有意差はなく(Smith et al.2012,PLoS One.2012;7(12):e52285;Maetzler et al.2014,PLoS One.2014 Feb 21;9(2):e88604,Papachroni et al.2007 J Neurochem.2007 May;101(3):749-56およびWoulfe et al.2002,Neurology.2002 May 14;58(9):1435-6)、場合により、PDにおいてα-シヌクレインに対する自己抗体の増加されたレベル(Gruden et al.2011,J Neuroimmunol.2011 Apr;233(1-2):221-7、Gruden et al.2012,Neuroimmunomodulation.2012;19(6):334-42およびYanamandra 2011,PLoS One.2011 Apr 25;6(4):e18513)または健常対照と比較してPD患者におけるα-シヌクレインに対する減少された自己抗体が報告された(Besong-Agbo et al 2013,Neurology.2013 Jan 8;80(2):169-75)。血中抗α-シヌクレイン自己抗体が、α-シヌクレイン凝集に関して保護的役割を果たし得る可能性が、この自己抗体の発見後、ごく早々に示唆された(Woulfe et al.2002,Neurology.2002 May 14;58(9):1435-6)。
【0009】
トランスジェニックマウスにおけるα-シヌクレインの過剰発現は、レビー小体病のいくつかの病理学的側面に類似している。α-シヌクレインを過剰発現するマウスのいくつかの異なる遺伝子導入系が、過去10年間で作成された(以下の報告に記載されている:Koehler et al 2014,PLoS One.2013 May 31;8(5):e64649;Fleming and Chesselet,2006,Behav Pharmacol.2006 Sep;17(5-6):383-91;Springer and Kahle 2006,Curr Neurol Neurosci Rep.2006 Sep;6(5):432-6)。Thy-1およびPDGF-βプロモータを有するマウス系統が、運動障害および認知障害を発症し、インビボでα-シヌクレインに対する抗体の神経保護的効果を実証するのに使用されている。しかしながら、ドーパミン作動性ニューロンの確固たる変性を有する遺伝子導入系はなく、多くの場合、運動表現型が、運動ニューロンにおける発現によって駆動され、これは、通常、パーキンソン病において悪化しない。したがって、潜在的疾患調節治療の好結果が、ドーパミン作動性ニューロンまたは他の中枢神経系ニューロンに対する効果を介して仲介されるかどうかは定かではない。
【0010】
トランスジェニックマウスモデルにおける1つに確固たる発見は、ヒトα-シヌクレインの慢性過剰発現が、シナプス機能を損なうというものであった。インビトロおよびインビボ系の両方における研究を用いて、野生型(wt)ヒトα-シヌクレインの過剰発現が、海馬におけるシナプス伝達を損なったことが示された(Nemani et al.2010,Neuron.2010 Jan 14;65(1):66-79;Paumier et al.2013,PLoS One.2013 Aug 1;8(8):e70274)。これは、海馬のCA1領域において示され、この領域では、両方の研究が減少した基底シナプス伝達を発見した。この背景にある機構は、シナプス放出の機能不全につながるα-シヌクレインの細胞内蓄積であると考えられた。しかしながら、シナプスにおける細胞外空間中へのα-シヌクレインの分泌およびシナプス機能に対するα-シヌクレインオリゴマーの毒性作用に関する最近の発見は、シナプス機能障害における細胞外α-シヌクレインの役割の可能性を開き、ひいては治療用抗体が障害を救う能力に扉を開くものである。
【0011】
α-シヌクレインを過剰発現するためのウイルスベクターの使用は、げっ歯類のPDをモデル化する重要な方法であるが、その理由は、この手法が、マウスまたはラットにおける遺伝子突然変異によってまだ再現されていない特徴である、黒質線条体ニューロンの比較的速い進行性変性を生じるためである(Kirik and Bjorklund,2003,Trends Neurosci.2003 Jul;26(7):386-92)。さらに、ウイルス遺伝子送達は、wt α-シヌクレインが黒質線条体病変を誘発する能力を明らかにし(Kirik et al.2002,J Neurosci.2002 Apr 1;22(7):2780-91)、これは、α-シヌクレイン重複および三重重複を有する家族性のPDのエビデンスと一致する発見である(Lee and Trojanowski,2006,Neuron.2006 Oct 5;52(1):33-8)。ある研究では、α-シヌクレインに対するヤギ抗体が、ドーパミン作動性細胞死からN末端を保護し、パーキンソン病のAAV-α-シヌクレインに基づくラットモデルの行動障害を改善したことが示されている(Shahaduzzaman et al 2015,PLoS One.2015 Feb 6;10(2):e0116841)。
【0012】
α-シヌクレイン病変のプリオン様の広がりは、α-シヌクレイン病変を発現させ、ドーパミン作動性細胞死も発現させることが最近示された(Luk et al.2012,Science.2012 Nov 16;338(6109):949-53)。このモデルは、α-シヌクレイン抗体が、この病変を改善することができることを示すのに使用された(Tran et al.2014,Cell Rep.2014 Jun 26;7(6):2054-65)。このモデルにおいて、抗体治療は、いくつかの脳領域(黒質にドーパミン作動性ニューロンを含む)におけるリン酸化α-シヌクレインの蓄積を減少させ、運動障害の発現を減少させることができた。
【0013】
突然変異に加えて、α-シヌクレイン遺伝子の選択的スプライシングおよびタンパク質の翻訳後修飾(リン酸化、ユビキチン化、ニトロ化、および切断など)が、α-シヌクレインの凝集および/または毒性形態を形成する強化された能力を有するα-シヌクレインタンパク質形態を生じ得る(Beyer and Ariza,Mol Neurobiol.2013 Apr;47(2):509-24)。しかしながら、α-シヌクレインの正確な病理学的な種は、依然として不明である。オリゴマーから原線維に及ぶ様々なミスフォールド/凝集/分泌された種、および様々な翻訳後修飾が、毒性と関連付けられているが、実際に1つの毒性種があった場合でさえ、どれが最も重要かについての意見の一致はない。PD、DLBおよびMSAに罹患している患者における変化したレベルのα-synスプライスアイソフォームの存在が、最近報告された(Cardo et al.Neurosci Lett 2014;562(6):45-49、およびBrudek et al.J Neurochem 2016.Jan;136(1):172-85)。112-α-シヌクレインアイソフォームのより高い凝集可能性(Manda et al.PLoS One 2014 Jun 3;9(6))は、増加したレベルとともに、PDの病態生理またはMSAなどの関連する病変に役割を果たし得る。
【0014】
全体的に、ヒト、マウス、およびハエなどの様々な動物モデルにおける同様の形態学的および神経学的変化を有するα-シヌクレインの蓄積は、この分子が、レビー小体病の発症において中心的な役割を果たすことを示唆している。
【0015】
α-シヌクレインに対するいくつかの異なる抗体が、前臨床動物モデルにおいて治療効果を有することが示されている。α-シヌクレイン残基91~99を含むエピトープを標的にする抗体およびα-シヌクレイン残基118~126を含むエピトープを標的にする抗体は両方とも、トランスジェニックマウスの運動障害および認知障害に対する効果を与えることが示されている(Games et al.2014,J Neurosci.2014 Jul 9;34(28):9441-54)。最先端のこれらの抗体は、α-シヌクレイン残基118~126を含むエピトープを標的にし、現在、臨床試験のフェーズIの段階にある、マウスモノクローナル抗体9E4に基づいたヒト化抗体である。α-シヌクレイン残基120~140を含むエピトープを標的にするC末端抗体274(Bae et al.2012,J Neurosci.2012 Sep 26;32(39):13454-69)も、前臨床モデルにおいて、細胞から細胞への病変の広がりに対する効果を有することが示された。これらに加えて、α-シヌクレインのオリゴマーおよび原線維などの立体配座種を標的にする抗体は、これらのおそらく毒性のα-シヌクレイン種のレベルを少なくとも低下させることができることが示された(Lindstroem et al.2014,Neurobiol Dis.2014 Sep;69:134-43およびSpencer et al.2014,Mol Ther.2014 Oct;22(10):1753-67)。mab47などの、インビボでα-シヌクレインオリゴマーレベルを低下させるこれらの立体配座抗体も、アミノ酸121~125からの、α-シヌクレインのC末端におけるエピトープを標的にすることが示された(米国特許出願公開第20120308572号明細書)。他の立体配座、原線維およびオリゴマー特異的抗体も、C末端配列を標的にする(Vaikath et al.Neurobiol Dis.2015;79:81-99)。
【0016】
本発明は、完全長α-シヌクレインに結合するマウス抗体2E6(およびヒト化、キメラおよび親和性成熟形態)に関する。この抗体は、機能的スクリーニングにおいて、α-シヌクレインに対する50のモノクローナル抗体の中でも特に優れており、α-シヌクレイン原線維の細胞内蓄積を防ぐのに意外にも効率的であることが分かった。それは、意外にも、ヒト病変脳からの病理学的α-シヌクレインへの結合に優れ、別のα-シヌクレイン抗体9E4より、α-シヌクレインの多くのより切断されたあるいはスプライシングされた種に結合することも分かった(Masliah et al.,PLoS One,2011,Apr 29;6(4)-米国特許第8609820号明細書に公開される配列)。抗体2E6は、インビトロでα-シヌクレイン凝集を防ぐことができ、α-シヌクレインの予め形成された凝集体を溶解させることができる。α-シヌクレインの凝集形態は、抗体とともに免疫複合体を形成することができ、抗体2E6の存在は、Fc媒介性食作用を介してこれらの免疫複合体の取り込みを増加させる。抗体2E6は、原線維に結合し、原線維をブロックするかまたは失活させて、原線維が細胞モデルにおいて新たなα-シヌクレイン凝集体をシーディングするのを防ぐ。インビボで、この抗体は、単回の末梢投与(peripheral dose)の後、トランスジェニックα-シヌクレインマウスにおけるニューロン発火の障害を改善することができ、数か月にわたって長期間投与されると、この抗体は、小胞放出の障害に対するα-シヌクレイン過剰発現の影響を低減する。この効果は、この抗体で治療されたヒトPD患者におけるシナプス伝達の改善につながり得る。
【0017】
最後に、本発明者らは、ラットα-シヌクレインパーキンソン病モデルにおいて、2か月間の長期治療の後、抗体2E6が、STNにおいてニューロンの病理学的な不規則な発火を改善することができることを示す。STNの病理学的活動が、PD症状において主な役割を果たすため、皮質視床経路における病理学的変化の改善は、運動障害の改善にとって重要である。
【0018】
親マウス抗体は、α-シヌクレイノパチーの治療のために治療用抗体を生成するために、ヒト化および親和性成熟されている。ヒト化抗体ならびに親和性成熟形態は、親抗体と同じ結合および細胞ベースの機能を保っている。
【発明の概要】
【0019】
本発明は、m2E6と示されるマウス抗体、キメラch2E6、ならびに3つのヒト化形態(2E6-HLD1、2E6-HLD2および2E6-HLD3)およびより高い親和性の抗体を生成するためのHLD1の親和性成熟形態:7A10、5A1、9D7、9G11、7C4、L3、8D9、9C12または6B6に関する。
【0020】
本発明は、α-シヌクレイン上のエピトープへの結合について、本明細書に開示される前記抗体、特に2E6およびHLD-1と競合することが可能なモノクローナル抗体にも関する。
【0021】
この特異的モノクローナル抗体は、本明細書の請求項1~81に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】スクリーニングカスケードを示す。3匹のマウスを、様々な凝集形態のα-シヌクレインで免疫化した。マウスを、高い力価についてスクリーニングし、モノクローナル細胞株を生成した。α-シヌクレインELISAを用いて、50の陽性クローンを、約1000のウェルから回収した。α-シヌクレインを認識する50のモノクローナル抗体を、SK-mel5細胞内の原線維化α-シヌクレインの蓄積を防ぐそれらの能力についてスクリーニングした(実施例1)。意外にも、ごくわずかな(50のうち4つの)α-シヌクレイン抗体のみが、原線維化α-シヌクレインの蓄積を阻害することができた。m2E6を、最も効率的な抗体として選択し、PDの細胞および動物モデルにおいてさらにプロファイルした。さらに、m2E6をヒト化して、2E6-HLD-1、2および3にし(実施例2)、2E6-HLD1をさらに親和性成熟して、HLD1-7A10にした。α-シヌクレインに対する全ての変異体についての動力学的結合データが、表5、6および7に列挙されている(実施例2)。
図2】α-シヌクレインアミノ酸配列136~140からのペプチドに対する抗体m2E6のエピトープマッピングからのELISAデータを示す(他の非結合ペプチドは、示されていない)。上側のパネルは、ペプチド配列YEPEAが、抗体m2E6の完全な結合のために必要とされることを示す。真ん中のパネルは、チロシン残基がニトロ-チロシンで置換された(配列中で番号5として示される)、同じペプチドを示す。チロシン136のニトロ化は、ペプチドへの抗体の結合をなくした。下側のパネルは、選択されたアミノ酸の二重アラニンスキャニング変異誘発を示す。配列中に存在する二重アラニン置換は、最後から二番目のアミノ酸P138、E139、およびA140への重要な役割を示す(実施例3)。
図3】レビー小体認知症患者(DLB)および月齢をマッチさせた健常対照(CTR)からの5つの脳ホモジネート間のα-シヌクレインおよびリン酸化(Ser129)α-シヌクレインの含量の差を示す。これらのホモジネートは、病理学的形態、すなわち、凝集形態およびSer129でリン酸化された形態のα-シヌクレインを富化するためのさらなる分別に使用される(実施例4)。
図4】m2E6およびm2E6のヒト化形態:2E6-HLD1、2および3抗体を用いた、DLB患者(太字の文字のレーン)および月齢をマッチさせた健常対照(CTR)(灰色の文字のレーン)からの可溶性画分(S1)および病理学的形態のα-シヌクレインに富む画分(P1およびP2)からのα-シヌクレインの免疫沈降を示す。この図は、m2E6およびヒト化変異体2E6-HLD1-3が、比較例のα-シヌクレイン抗体9E4(マウスおよびヒト化形態の両方)と著しく異なっていることを示す。m2E6およびヒト化変異体は、切断あるいはスプライス形態のα-シヌクレインを免疫沈降させることができる一方、9E4は免疫沈降させなかった。さらに、m2E6およびヒト化変異体は、P1およびP2画分中の病理学的凝集形態のα-シヌクレインを認識する一方、9E4は認識しない(実施例4)。
図5】m2E6によるインビトロでのα-シヌクレイン凝集の阻害を示す。モノマーα-シヌクレインを、数日間にわたって37℃でインキュベートするとき、アミロイドへのα-シヌクレインの凝集を示すチオフラビン蛍光の増加がある(対照曲線)。モノマーα-シヌクレインと混合される増加する量のm2E6は、チオフラビン蛍光の増加の用量依存的阻害を示す(実施例5)。
図6】m2E6によるα-シヌクレイン原線維の解離を示す。予め形成されたα-シヌクレイン原線維を、超音波処理して、それらを分解してより小さい微小原線維にした。抗体m2E6を、異なるモル比で、超音波処理された原線維に加えた。抗体なしの対照原線維(abなし)またはα-シヌクレイン(B12)に結合しないアイソタイプ対照抗体とともにインキュベートされた原線維は、電子顕微鏡法によって視覚化される広範な線維性ネットワークを示す。様々な濃度のm2E6とともにインキュベートされた原線維は、より大きい原線維の用量依存的減少を示す。
図7-1】m2E6が、培地中でα-シヌクレイン原線維に結合し、非食細胞内のそれらの蓄積を阻害することを示す。A)細胞培養培地に加えられるα-シヌクレイン原線維の免疫沈降。これは、m2E6が、α-シヌクレイン原線維を認識し、培地からプルダウンすることができた一方、対照抗体B12(非反応性ヒトIgG)および別のα-シヌクレイン抗体5G4(Roboscreen製)はできなかったことを示した。B)α-シヌクレイン原線維および抗体で24時間にわたって処理され、次に、洗浄および溶解されたSHSY-5Y細胞のウエスタンブロット。これは、2E6-HLD1が、細胞内に蓄積される原線維の量を減少させた一方、B12抗体は減少させなかったことを示した。C)SKmel5細胞内のα-シヌクレイン原線維の蓄積の自動化蛍光イメージング、指示されるとおり、原線維、m2E6およびα-シヌクレインペプチドとともに24時間にわたる共インキュベーション。これは、m2E6が、この細胞内の原線維の蓄積を減少させることを示した。この効果は、それがm2E6のエピトープをカバーするペプチド126~140によって阻害され得たが、このエピトープ外のペプチド(アミノ酸113~120)によって阻害され得なかったため、特異的である。D)SKmel5細胞内のα-シヌクレイン原線維の蓄積、24時間、0.1~10μg/mlの親和性成熟2E6-HLD1抗体、2E6_7A10の用量反応。したがって、2E6_7A10は、溶液中のα-シヌクレイン原線維に結合し、用量依存的にこの細胞内のそれらの蓄積を減少させる。星印(***)は、両側t検定において、原線維のみと比較したときの、0.0001未満のp値を示す(実施例6)。
図7-2】図7-1の説明と同じである。
図8】m2E6が、原線維化された、哺乳動物産生α-シヌクレインに培地中で結合し、一次皮質ニューロン内のその蓄積を阻害することを示す。A)は、2E6変異体の全てが、培地からα-シヌクレインオリゴマー、完全長およびいくつかの切断形態(より弱い低分子量バンド)の両方をプルダウンしたことを示す。比較例の抗体m9E4も、完全長α-シヌクレインをプルダウンしたが、9E4のヒト化形態(米国特許出願公開第20080175838号明細書)は、α-シヌクレインの切断形態および14kDaの完全長形態の両方の免疫沈降においてはるかに効率性が低く、これは、培地中で哺乳動物タンパク質にあまり結合しないことを示す。別の比較例の抗体(Biogen製の12F4、米国特許第8,940,276号明細書)は、B12対照とそれほど異ならない弱いバンドを示したに過ぎなかった。B)は、m2E6抗体によるインキュベーションが、一次皮質ニューロン中の細胞内α-シヌクレイン凝集体の蓄積の減少をもたらすことを示す。C)およびD)は、(同じ実験からの2つの読み取りにおいて)Syn-BAP PFF(予め形成された原線維=PFF-哺乳動物α-シヌクレインを、原線維にし、それを超音波処理して、PFF-前駆体またはシードを生成して、完全な原線維にする)と、非反応性B12または比較例の9E4抗体のいずれかとの共インキュベーションが、細胞内のSyn-BAP PFFの蓄積を変化させなかった一方、m2E6または2E6-HLD1による処理は、蓄積のレベルをバックグラウンドレベルまで減少させたことを示す。単独のSyn-BAP PFFで処理された細胞は、細胞当たり約4.5のスポットを示し(図8D);同様に、B12またはh9E4は、これを大きく変化させなかった。m2E6、h2E6-HLD2またはh2E6-HLD3による処理は、蓄積のレベルを著しく減少させ(細胞当たり約3スポットまで)、2E6-HLD1は、スポットの数がより少なくなる傾向を示した(実施例6)。
図9】2E6が、馴化培地中でα-シヌクレイン原線維に結合し、細胞間の移動を阻害することを示す。A)24時間にわたってα-シヌクレイン原線維で処理されたSK-mel5細胞からの馴化培地の免疫沈降。培地を採取し、IP(免疫沈降)に使用した。2E6は、α-シヌクレインを効率的に免疫沈降させた。B)培地へのα-シヌクレイン原線維の添加の後、細胞内α-シヌクレイン原線維を蓄積した細胞のパーセンテージを、α-シヌクレインスポットを含有する細胞%として「フィーダー」プレート上で定量し、C)フィーダー細胞からの培地を、レシピエントプレートに移し、同様に、細胞内α-シヌクレイン原線維を含む細胞のパーセンテージを、「レシピエント」プレート上で定量した。B)およびC)は、m2E6が、「フィーダー」および「レシピエント」プレートの両方においてα-シヌクレイン凝集体(スポット)を有する細胞の数を有意に減少させることを示す。比較例の抗体1H7(国際公開第2005047860号パンフレット)は、いずれのプレートにも影響を与えなかった。対照抗体(B12)は、同様に、影響を与えなかった(実施例6)。
図10A】2E6-HLD1が、内因性α-シヌクレインのシーディングを用量依存的に阻害することを示す。HEK293細胞を、HAタグを有するαシヌクレイン発現プラスミドでトランスフェクトした後、αシヌクレイン原線維のトランスフェクションおよび様々な濃度の2E6-HLD1の添加を行った。48時間後、細胞溶解物を、超遠心分離によって、TritonおよびSDS可溶性画分に分別し、免疫ブロットによって分析した。HAタグを有するαシヌクレインは、17KDより速く泳動する。ホスホ-シヌクレインおよびβ-アクチンの比率を、不溶性α-シヌクレイン(SDS可溶性画分)の定量に使用した。A.HEK293細胞からのSDS可溶性画分のウエスタンブロット。上部の画像は、ヒトαシヌクレイン、およびβ-アクチンに対する抗体を検出する、抗体4B12を用いた免疫ブロットを示す。下部の画像は、ホスホ-シヌクレインを検出する、抗体Ab51253を用いた免疫ブロットを示す。2E6-HLD1による処理は、対照抗体、B12と比較した、α-シヌクレイン凝集およびリン酸化の用量依存的阻害を示す。B.図10Aからのホスホ-シヌクレインにおけるウエスタンブロットの定量。2E6-HLD1は、不溶性画分への可溶性α-シヌクレインの転化を、用量依存的に阻害した(実施例6)。
図10B図10Aの説明と同じである。
図11】F28-sncaトランスジェニックマウスおよび月齢をマッチさせた対照マウスの海馬中のシャファー側枝-CA1シナプスにおける基底シナプス伝達および二発刺激促通の障害を示す。興奮性シナプス後場電位(fEPSP)を、シャファー側枝に加えられる単一の刺激によって引き起こし、基底シナプス伝達を、刺激強度(a)の関数としてfEPSPの傾きを測定することによって評価した。短期シナプス可塑性を、二発刺激促通(b)の誘発によって評価し、ここで、様々な刺激間間隔を有する二重の刺激を加え、第2のfEPSPおよび第1のfEPSPの傾きの間の比率を測定した。全てのデータを、反復測定による二元ANOVA、続いてボンフェローニt検定によって分析した(p<0.05;**p<0.01;***p<0.001)(実施例7)。
図12】F28-sncaトランスジェニックマウスの海馬中のシャファー側枝-CA1シナプスにおける基底シナプス伝達および二発刺激促通の障害に対する9E4(15mg/kg、腹腔内(i.p.))の急性効果を示す。図12において、興奮性シナプス後場電位(fEPSP)を、シャファー側枝に加えられる単一の刺激によって引き起こし、基底シナプス伝達を、刺激強度の関数としてfEPSPの傾きを測定することによって評価した。9E4は、この障害を部分的に改善することができた。図13において、短期シナプス可塑性を、二発刺激促通の誘発によって評価し、ここで、様々な刺激間間隔を有する二重の刺激を加え、第2のfEPSPおよび第1のfEPSPの傾きの間の比率を測定した。9E4は、この障害を改善することができなかった。全てのデータを、反復測定による二元ANOVA、続いてボンフェローニt検定によって分析した(実施例7)。
図13図12の説明と同じである。
図14】F28-sncaトランスジェニックマウスの海馬中のシャファー側枝-CA1シナプスにおける基底シナプス伝達の障害に対するm2E6(15mg/kg、腹腔内(i.p.))の急性の有益な効果を示す。図14において、興奮性シナプス後場電位(fEPSP)を、シャファー側枝に加えられる単一の刺激によって引き起こし、基底シナプス伝達を、刺激強度の関数としてfEPSPの傾きを測定することによって評価した。m2E6は、この障害を完全に改善することができた。
図15】短期シナプス可塑性を、二発刺激促通の誘発によって評価し、ここで、様々な刺激間間隔を有する二重の刺激を加え、第2のfEPSPおよび第1のfEPSPの傾きの間の比率を測定した。m2E6は、F28-sncaトランスジェニックマウスにおけるPPFの障害に対する急性効果を与えなかった(しかしながら、長期治療後の効果が観察された)。全てのデータを、反復測定による二元ANOVA、続いてボンフェローニt検定によって分析した(実施例7)。
図16】基底シナプス伝達の障害の改善におけるm2E6の急性の用量依存的効果を示す。F28-sncaトランスジェニックマウスの海馬中のシャファー側枝-CA1シナプスにおける基底シナプス伝達の障害に対する5(図16)および2.5(図17)mg/kg(腹腔内(i.p.))でのm2E6の効果。データは、この障害の改善に対するm2E6の用量依存的効果を示す。興奮性シナプス後場電位(fEPSPs)を、シャファー側枝に加えられる単一の刺激によって引き起こし、基底シナプス伝達を、刺激強度の関数としてfEPSPの傾きを測定することによって評価した。全てのデータを、反復測定による二元ANOVA、続いてボンフェローニt検定によって分析した(実施例7)。
図17図16の説明と同じである。
図18】基底シナプス伝達の障害の改善における、キメラ、ch2E6(m2E6可変領域)と比較して、ヒト化2E6:2E6-HLD1の低用量で向上した有効性を示す。F28-sncaトランスジェニックマウスの海馬中のシャファー側枝-CA1シナプスにおける基底シナプス伝達および二発刺激促通の障害に対する2.5mg/kg(腹腔内(i.p.))の両方でのch2E6および2E6-HLD1の急性効果。興奮性シナプス後場電位(fEPSPs)を、シャファー側枝に加えられる単一の刺激によって引き起こし、基底シナプス伝達を、刺激強度の関数としてfEPSPの傾きを測定することによって評価した。ch2E6は、この障害の改善に対する強い傾向を示した一方、同じ低用量のヒト化形態2E6-HLD1は、この障害を完全に改善した。
図19】短期シナプス可塑性を、二発刺激促通の誘発によって評価し、ここで、様々な刺激間間隔を有する二重の刺激を加え、第2のfEPSPおよび第1のfEPSPの傾きの間の比率を測定した。m2E6で観察されるように、キメラ2E6は、F28-sncaトランスジェニックマウスにおけるPPFの障害に対する顕著な効果を与えなかった。全てのデータを、反復測定による二元ANOVA、続いてボンフェローニt検定によって分析した(実施例7)。
図20】m2E6が、自由運動マウスにおいてα-シヌクレインの細胞外濃度を減少させる一方、9E4は減少させないことを示す。図20は、自由運動F28sncaトランスジェニックマウスの海馬中のヒトα-シヌクレインのレベルに対する2E6または対照アイソタイプ5C9の全身投与(15mg/kg、腹腔内(i.p.))の効果を示す。基底ヒトα-シヌクレインを、2つの連続した試料中のヒトα-シヌクレイン濃度の平均として取り(11.9±2.4ng/ml)、それを、同じ動物内で100%に設定した。p<0.05、***p<0.001;対照アイソタイプ抗体5C9に対して2E6。
図21】m2E6が、自由運動マウスにおいてα-シヌクレインの細胞外濃度を減少させる一方、9E4は減少させないことを示す。図21は、自由運動F28sncaトランスジェニックマウスの海馬中のヒトα-シヌクレインの細胞外濃度に対するh9E4または対照アイソタイプ抗helの全身投与(両方とも15mg/kg、腹腔内(i.p.))の効果を示す。基底ヒトα-シヌクレインを、2~3つの連続した試料中のヒトα-シヌクレイン濃度の平均として取り(7.8±1.2ng/ml)、それを、同じ動物内で100%に設定した(実施例8)。
図22】ラットα-シヌクレインAAVモデルにおける抗体処理、ウイルス感染および電気生理学的測定についての時系列の概略図を示す(実施例9)。
図23】1つの脳領域、視床下核内のニューロン活動のパターンが、ヒトα-シヌクレインが過剰発現されたラットにおいて変化されることを示す。m2E6による処理は、異常なニューロン発火パターンを正常化する。非処理のGFP過剰発現ラットまたはウイルス注入後8~10週間にわたって対照mIgG1またはm2E6(15mg/kg、腹腔内(i.p.)、週に2回)のいずれかで処理されたα-シヌクレイン過剰発現ラットにおけるSTNニューロンの発火パターン。図23において、スパイク間隔の変動係数(CV)を、一元ANOVA、続いてボンフェローニポストホック検定によって分析した。m2E6による処理は、それらのCV ISIの減少に対する有意でない傾向をもたらした。図24において、規則的な、不規則なまたはバーストの発火パターンでのニューロン発火の割合を、カイ二乗検定によって分析した。m2E6による処理は、3つの異なる発火パターンを示すニューロンの割合の有意な正常化を誘発した。N:動物の数;n:ニューロンの数。**、PBSで処理されたα-シヌクレインラットを、非処理のGFPラットと比較した、** p<0.01。
【数1】
を、α-シヌクレイン過剰発現ラット中のmIgG1と比較した、
【数2】
(実施例9)。
図24図23の説明と同じ。
図25】F28-sncaトランスジェニックマウスの海馬中のシャファー側枝-CA1シナプスにおける二発刺激促通に対する長期治療後のm2E6(16~18週間で15mg/kg、腹腔内(i.p.))の有益な効果を示す。F28-sncaトランスジェニックマウスおよび月齢をマッチさせた対照マウスの海馬中のシャファー側枝-CA1シナプスにおける二発刺激促通に対するm2E6または対照mIgG1(5C9)による長期治療。興奮性シナプス後場電位(fEPSP)を、シャファー側枝に加えられる単一の刺激によって引き起こし、基底シナプス伝達を、刺激強度の関数としてfEPSPの傾きを測定することによって評価した。短期シナプス可塑性を、二発刺激促通(PPF)の誘発によって評価し、ここで、様々な刺激間間隔を有する二重の刺激を加え、第2のfEPSPおよび第1のfEPSPの傾きの間の比率を測定した。全てのデータを、反復測定による二元ANOVA、続いてボンフェローニt検定によって分析した(Tg-snca+5C9対月齢をマッチさせた対照+5C9について、 p<0.05;** p<0.01;*** p<0.001;Tg.snca+m2E6対Tg-snca+5C9について、
【数3】
)(実施例9)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
定義
本明細書において使用される際、「α-シヌクレイン」という用語は、α-シヌクレインタンパク質と同義であり、α-シヌクレインタンパク質アイソフォーム(例えば、P37840、1-3としてUniProtにおいて同定される)のいずれかを指す。α-シヌクレインのアミノ酸の番号付けは、以下に示されるように配列番号1に対して示され、メチオニン(M)は、アミノ酸残基1である:
配列番号1:
【化1】
【0024】
本発明は、α-シヌクレイン、特に、ヒトα-シヌクレインに特異的に結合することが可能な抗体および抗体のフラグメントに関する。特に、抗体およびそのフラグメントは、配列番号2、ヒトα-シヌクレインの126~140のエピトープに特異的に結合する能力を示す。
【0025】
本発明の文脈における「抗体」(Ab)という用語は、分子(「抗原」)のエピトープに特異的に結合する能力を有する、免疫グロブリン分子、または本発明のある実施形態によれば、免疫グロブリン分子のフラグメントを指す。天然抗体は、典型的に、通常、少なくとも2つの重(H)鎖および少なくとも2つの軽(L)鎖から構成される四量体を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書においてVHと略記される)および、3つの領域(CH1、CH2およびCH3)から構成される重鎖定常領域から構成される。重鎖は、IgG(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4サブタイプ)、IgA(IgA1およびIgA2サブタイプ)、IgMおよびIgEを含む任意のアイソタイプのものであり得る。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書においてVLと略記される)および軽鎖定常領域(CL)から構成される。軽鎖は、κ鎖およびλ鎖を含む。重鎖および軽鎖可変領域が、典型的に、抗原認識に関与する一方、重鎖および軽鎖定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第1の成分(C1q)を含む、宿主組織または宿主因子への免疫グロブリンの結合を仲介し得る。VHおよびVL領域は、「フレームワーク領域」(FR)と呼ばれるより保存される配列の領域が散在する「相補性決定領域」と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分され得る。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へと以下の順序:FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4で配置される3つのCDR(相補性決定領域)領域および4つのFR領域から構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合領域を含有する。特に関連があるのは、自然界に存在し得るものと異なる物理的環境中で存在するように「単離され」ているか、またはアミノ酸配列中の天然抗体と異なるように修飾された抗体およびそれらの抗原結合フラグメントである。
【0026】
本明細書において使用される際、「抗体の抗原結合フラグメント」という用語は、エピトープに特異的に結合することが可能な抗体のフラグメントを意味する。抗原結合フラグメントは、このような抗体のCDR領域の1、2、3、4、5または6つ全てを含有してもよく、このようなエピトープに特異的に結合することが可能であるが、このような抗体のものと異なるこのようなエピトープに対して特異性、親和性または選択性を示し得る。しかしながら、好ましくは、抗原結合フラグメントは、このような抗体のCDR領域の6つ全てを含有するであろう。抗体の抗原結合フラグメントは、単一のポリペプチド鎖(例えば、scFv)、またはアミノ末端およびカルボキシル末端(例えば、二重特異性抗体、Fabフラグメント、Fabフラグメントなど)をそれぞれ有する2つ以上のポリペプチド鎖を含んでもよい。抗原結合能力を示す抗体のフラグメントは、例えば、無傷の抗体のプロテアーゼ切断によって得られる。より好ましくは、Fvフラグメントの2つの領域、VLおよびVHが、別個の遺伝子によってコードされるが、このような遺伝子配列またはそれらのコードcDNAが、VLおよびVH領域が結合して一価抗原結合分子を形成する単一のタンパク質鎖(単一鎖Fv(scFv)として知られている;例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426;およびHuston et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)85:5879-5883を参照)としてそれらが作製されるのを可能にするフレキシブルリンカーによって、組み換え方法を用いて結合され得る。あるいは、単一のポリペプチド鎖のVLおよびVH領域が一緒に結合するのを可能にするには短すぎるフレキシブルリンカー(例えば、約9個未満の残基)を用いることによって、二重特異性抗体(bispecific antibody)、二重特異性抗体(diabody)、または同様の分子(2つのこのようなポリペプチド鎖が一緒に結合して、二価抗原結合分子を形成する)を形成することができる(二重特異性抗体の説明については、例えばPNAS USA 90(14),6444-8(1993)を参照)。本発明の範囲内に包含される抗原結合フラグメントの例としては、(i)Fab’またはFabフラグメント、VL、VH、CLおよびCH1領域からなる一価フラグメント、または国際公開第2007059782号パンフレットに記載されている一価抗体;(ii)F(ab’)2フラグメント、ヒンジ領域においてジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VHおよびCH1領域から本質的になるFdフラグメント;(iv)VLおよびVH領域から本質的になるFvフラグメント、(v)VH領域から本質的になり、ドメイン抗体(Holt et al;Trends Biotechnol.2003 Nov;2i(ll):484-90)とも呼ばれるdAbフラグメント(Ward et al.,Nature 341,544-546(1989));(vi)ラクダ科動物(camelid)またはナノボディ(Revets et al;Expert Opin Biol Ther.2005 Jan;5_(l):l ll-24)および(vii)単離されたCDRが挙げられる。さらに、Fvフラグメントの2つの領域、VLおよびVHが、別個の遺伝子によってコードされるが、それらは、VLおよびVH領域が組み合わされて、一価分子を形成する単一のタンパク質鎖(単一鎖抗体または単一鎖Fv(scFv)として知られている、例えばBird et al.,Science 242,423-426(1988)およびHuston et al.,PNAS USA 85,5879-5883(1988)を参照)としてそれらが作製されるのを可能にする合成リンカーによって、組み換え方法を用いて結合され得る。本発明の文脈におけるこれらのおよび他の有用な抗体フラグメントは、本明細書においてさらに説明される。抗体という用語は、特に規定されない限り、キメラ抗体およびヒト化抗体などの抗体様ポリペプチド、ならびに酵素的切断、ペプチド合成、および組み換え技術などの任意の公知の技術によって提供される、抗原(抗原結合フラグメント)に特異的に結合する能力を保持する抗体フラグメントも含むことも理解されるべきである。生成される抗体は、任意のアイソタイプを有し得る。本明細書において使用される際、「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)を指す。このような抗体フラグメントは、当業者に公知の従来の技術を用いて得られ;所望のエピトープに結合することが可能な好適なフラグメントは、無傷の抗体と同じように有用性について容易にスクリーニングされ得る。
【0027】
「二重特異性抗体」という用語は、それぞれ独立した標的を標的にする2つの独立した結合領域を含有する抗体を指す。これらの標的は、同じ標的上の異なるタンパク質または異なるエピトープであり得る。二重特異性抗体分子は、親単一特異性二価抗体分子のHCの定常領域における補償的アミノ酸改変を用いて作製され得る。得られるヘテロ二量体抗体は、2つの異なる親単一特異性抗体から与えられる1つのFabを含有する。Fc領域におけるアミノ酸改変は、時間を経ても安定した二重特異性を有するヘテロ二量体抗体の向上した安定性をもたらす(Ridgway et al.,Protein Engineering 9,617-621(1996)、Gunasekaran et al.,JBC 285,19637-19641(2010)、Moore et al.,MAbs 3:6 546-557(2011)、Strop et al.,JMB 420,204-219(2012)、Metz et al.,Protein Engineering 25:10 571-580(2012)、Labrijn et al.,PNAS 110:113,5145-5150(2013)、Spreter Von Kreudenstein et al.,MAbs 5:5 646-654(2013))。二重特異性抗体は、ScFv融合を用いて生成される分子も含み得る。次に、2つの単一特異性scfvは、独立して、単一の二重特異性分子を生成するために安定したヘテロ二量体を形成することが可能なFc領域に結合される(Mabry et al.,PEDS 23:3 115-127(2010)。二重特異性分子は、二重の結合能を有する。例えば、CNS疾患を治療するために血液脳関門を横切って治療用抗体を送達するために、治療標的および経細胞輸送表面受容体の両方を標的にする。
【0028】
本明細書において使用される際の「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、特にキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖である非ヒト(例えばマウス)抗体の形態、またはそのフラグメント(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2または抗体の他の抗原結合部分配列など)を指すことが意図される。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントのCDRからの残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ウサギ、またはラットなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基で置換されたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク(FR)残基は、対応する非ヒト残基で置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエントにもインポートCDRまたはフレームワーク配列にも見出されない残基を含むが、これらは、抗体の性能をさらに改良し、最適化するために含まれる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的に2つの可変領域の実質的に全てを含み、ここで、FR領域の実質的に全てが、ヒトコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域またはドメイン(Fc)の少なくとも一部を含み、それは、典型的に、ヒト免疫グロブリンのものである。抗体は、当業者に公知の修飾されたFc領域を有し得る。他の形態のヒト化抗体は、元の抗体に対して改変された1つまたは複数のCDR(1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)を有し、これらは、元の抗体からの1つまたは複数のCDR「に由来する」1つまたは複数のCDRとも呼ばれる。
【0029】
本明細書において使用される際の「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことが意図される。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、インビトロでのランダムもしくは部位特異的突然変異によって、または遺伝子再構成中に、または体細胞突然変異によって誘発される突然変異)。
【0030】
本明細書において使用される際の「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一の分子組成物の抗体分子の調製物を指す。従来のモノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。特定の実施形態において、モノクローナル抗体は、2つ以上のFab領域から構成され得、それによって、2つ以上の標的に対する特異性を高める。
【0031】
抗体「マウス2E6または「m2E6」は、軽鎖配列番号19および重鎖配列番号20からなる抗体を意味することが意図される。
【0032】
抗体「キメラ2E6または「ch2E6」は、軽鎖配列番号21および重鎖配列番号22からなる抗体を意味することが意図される。
【0033】
抗体「2E6-HLD-1」または「h2E6-HLD-1」または「H2E6-HLD-1」または「2E6-HLD1」は、軽鎖配列番号23および重鎖配列番号24からなる抗体を意味することが意図される。
【0034】
抗体「2E6-HLD-2」または「h2E6-HLD-2」またはH2E6-HLD-2」または「2E6-HLD2」は、軽鎖配列番号25および重鎖配列番号26からなる抗体を意味することが意図される。
【0035】
抗体「2E6-HLD-3」または「h2E6-HLD-3」またはH2E6-HLD-3」または「2E6-HLD3」は、軽鎖配列番号27および重鎖配列番号28からなる抗体を意味することが意図される。
【0036】
抗体「6B6」は、軽鎖配列番号45および重鎖配列番号46からなる抗体を意味することが意図される。
【0037】
抗体「5A1」は、軽鎖配列番号29および重鎖配列番号30からなる抗体を意味することが意図される。
【0038】
抗体「9D7」は、軽鎖配列番号31および重鎖配列番号32からなる抗体を意味することが意図される。
【0039】
抗体「9G11」は、軽鎖配列番号33および重鎖配列番号34からなる抗体を意味することが意図される。
【0040】
抗体「L3」または「L3-11」(本明細書において同義的に使用される)は、軽鎖配列番号37および重鎖配列番号38からなる抗体を意味することが意図される。
【0041】
抗体「7A10」は、軽鎖配列番号39および重鎖配列番号40からなる抗体を意味することが意図される。
【0042】
抗体「8D9」は、軽鎖配列番号41および重鎖配列番号42からなる抗体を意味することが意図される。
【0043】
抗体「9C12」は、軽鎖配列番号43および重鎖配列番号44からなる抗体を意味することが意図される。
【0044】
抗体「6B6」は、軽鎖配列番号45および重鎖配列番号46からなる抗体を意味することが意図される。
【0045】
抗体「7C4」は、軽鎖配列番号35および重鎖配列番号36からなる抗体を意味することが意図される。
【0046】
本明細書において特に規定されない限り、Fc領域または定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されるように、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムにしたがって行われる。
【0047】
本明細書において使用される際、抗体またはその抗原結合フラグメントは、別のエピトープと比べてそのエピトープと、より高頻度で、より迅速に、より長い期間および/またはより高い親和性または結合活性で反応または会合する場合、別の分子(すなわち、エピトープ)の領域に「特異的に」結合するといわれる。一実施形態において、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメントは、別の分子よりその標的(ヒトαシヌクレイン)に少なくとも10倍強く;好ましくは、少なくとも50倍強く、より好ましくは少なくとも100倍強く結合する。好ましくは、抗体、またはその抗原結合フラグメントは、生理学的条件下で、例えば、生体内で結合する。したがって、ヒトα-シヌクレインのアミノ酸126~140([配列番号2])に「特異的に結合する」とは、このような特異性で、および/またはこのような条件下で、アミノ酸126~140に結合する抗体、またはその抗原結合フラグメントの能力を含む。このような結合を決定するのに好適な方法は、当業者に公知であり、例示的な方法が、添付の実施例に記載されている。本明細書において使用される際、所定の抗原への抗体の結合の文脈における「結合」という用語は、典型的に、抗原をリガンドとしておよび抗体を検体として用いてBIAcore3000またはT200機器のいずれかにおいて例えば表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定した際の約10-7M以下、例えば約10-8M以下、例えば約10-9M以下のKDに対応する親和性での結合を指し、所定の抗原または密接に関連している抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合に対するその親和性より少なくとも10倍低い、例えば少なくとも100倍低い、例えば少なくとも1,000倍低い、例えば少なくとも10,000倍低い、例えば少なくとも100,000倍低いKDに対応する親和性で所定の抗原に結合する。親和性がより低くなる量は、抗体のKDに依存するため、抗体のKDが非常に低い(すなわち、抗体が非常に特異的である)場合、抗原に対する親和性が、非特異的抗原に対する親和性より低くなる量は、少なくとも10,000倍であり得る。
【0048】
本明細書において使用される際の「kd」(秒-1または1/秒)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を指す。前記値は、koff値とも呼ばれる。
【0049】
本明細書において使用される際の「ka」(M-1×秒-1または1/M秒)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の結合速度定数を指す。
【0050】
本明細書において使用される際の「KD」(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指し、kdをkaで除算することによって得られる。
【0051】
本明細書において使用される際の「KA」(M-1または1/M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の結合平衡定数を指し、kaをkdで除算することによって得られる。
【0052】
CDR残基の単一のアミノ酸改変が、機能的結合の喪失をもたらし得るということ(Rudikoff,S.etc.(1982)“Single Amino Acid Substitution Altering Antigen-Binding Specificity”,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)79(6):1979-1983)は、別の機能的CDR配列を系統的に同定するための手段を提供する。このような変異体CDRを得るための1つの好ましい方法において、CDRをコードするポリヌクレオチドが突然変異を起こされて(例えばランダム突然変異によって、または部位特異的方法(例えば、突然変異遺伝子座をコードするプライマーによるポリメラーゼ連鎖媒介性増幅)によって)、置換アミノ酸残基を有するCDRを生成する。元の(機能的)CDR配列中の関連する残基の同一性を、置換される(非機能的)変異体CDR配列の同一性と比較することによって、その置換についてのBLOSUM62.iij置換スコアが特定され得る。BLOSUMシステムは、信頼できるアラインメントについて配列のデータベースを分析することによって作成されるアミノ酸置換のマトリックスを提供する(Eddy,S.R.(2004)“Where Did The BLOSUM62 Alignment Score Matrix Come From?”,Nature Biotech.22(8):1035-1036;Henikoff,J.G.(1992)“Amino acid substitution matrices from protein blocks”,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)89:10915-10919;Karlin,S.et al.(1990)“Methods For Assessing The Statistical Significance Of Molecular Sequence Features By Using General Scoring Schemes”,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)87:2264-2268;Altschul,S.F.(1991)“Amino Acid Substitution Matrices From An Information Theoretic Perspective”,J.Mol.Biol.219,555-565。現在、最先端のBLOSUMデータベースは、BLOSUM62データベース(BLOSUM62.iij)である。表1は、BLOSUM62.iij置換スコアを示す(スコアが高くなるほど、置換がより保存的になり、ひいては置換が機能に影響を与えない可能性が高くなる)。得られるCDRを含む抗原結合フラグメントが、α-シヌクレインに結合できない場合、例えば、BLOSUM62.iij置換スコアは、不十分に保存的であると見なされ、より高い置換スコアを有する新たな置換候補が選択され、生成される。したがって、例えば、元の残基がグルタミン酸塩(E)であり、非機能的置換残基がヒスチジン(H)である場合、BLOSUM62.iij置換スコアは0であり、より保存的な変化(アスパラギン酸塩、アスパラギン、グルタミン、またはリジンなどへの)が好ましい。
【0053】
【表1】
【0054】
したがって、本発明は、改良されたCDRを同定するためのランダム突然変異の使用を想定している。本発明の文脈において、保存的置換は、以下の3つの表の1つまたは複数に反映されているアミノ酸の種類の範囲内の置換によって定義され得る。
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
より保存的な置換基(substitution grouping)としては、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミンが挙げられる。
【0059】
アミノ酸のさらなる基は、例えば、Creighton(1984)Proteins:Structure and Molecular Properties(2d Ed.1993),W.H.Freeman and Companyに記載されている原理を用いて配合され得る。
【0060】
ファージディスプレイ技術が、CDR親和性を増加させる(または低下させる)のに代わりに使用され得る。親和性成熟と呼ばれるこの技術は、突然変異または「CDRウォーキング(walking)」を用い、再選択(re-selection)は、標的抗原またはその抗原性の抗原結合フラグメントを使用して、初期抗体または親抗体と比較した際に、抗原に対するより高い(またはより低い)親和性で結合するCDRを有する抗体を同定する(例えばGlaser et al.(1992)J.Immunology 149:3903を参照)。単一のヌクレオチドではなくコドン全体の突然変異誘発は、アミノ酸突然変異の半ランダム化レパートリーをもたらす。変異体クローンのプールからなるライブラリーが構築され得、変異体クローンのそれぞれが、単一のCDR中の単一のアミノ酸改変により異なり、各CDR残基に対して各可能なアミノ酸置換を提示する変異体を含む。抗原に対する増加した(または低下した)結合親和性を有する突然変異体は、固定化突然変異体を標識抗原と接触させることによってスクリーニングされ得る。当該技術分野において公知の任意のスクリーニング方法が、抗原に対する増加したまたは低下した親和性を有する突然変異体抗体を同定するのに使用され得る(例えば、ELISA)(Wu et al.1998,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)95:6037;Yelton et al.,1995,J.Immunology 155:1994を参照)。軽鎖をランダム化するCDRウォーキングが、使用可能であり得る(Schier et al.,1996,J.Mol.Bio.263:551を参照)。
【0061】
このような親和性成熟を達成するための方法は、例えば:Krause,J.C.et al.(2011)“An Insertion Mutation That Distorts Antibody Binding Site Architecture Enhances Function Of A Human Antibody”,MBio.2(1)pii:e00345-10.doi:10.1128/mBio.00345-10;Kuan,C.T.et al.(2010)“Affinity-Matured Anti-Glycoprotein NMB Recombinant Immunotoxins Targeting Malignant Gliomas And Melanomas”,Int.J.Cancer 10.1002/ijc.25645;Hackel,B.J.et al.(2010)“Stability And CDR Composition Biases Enrich Binder Functionality Landscapes”,J.Mol.Biol.401(1):84-96;Montgomery,D.L.et al.(2009)“Affinity Maturation and Characterization Of A Human Monoclonal Antibody Against HIV-1 gp41”,MAbs 1(5):462-474;Gustchina,E.et al.(2009)“Affinity Maturation By Targeted Diversification Of The CDR-H2 Loop Of A Monoclonal Fab Derived From A Synthetic Naive Human Antibody Library And Directed Against The Internal Trimeric Coiled-Coil Of Gp41 Yields A Set Of Fabs With Improved HIV-1 Neutralization Potency And Breadth”,Virology 393(1):112-119;最後に、W.J.et al.(2009)“Affinity Maturation Of A Humanized Rat Antibody For Anti-RAGE Therapy:Comprehensive Mutagenesis Reveals A High Level Of Mutational Plasticity Both Inside And Outside The Complementarity-Determining Regions”,J.Mol.Biol.388(3):541-558;Bostrom,J.et al.(2009)“Improving Antibody Binding Affinity And Specificity For Therapeutic Development”,Methods Mol.Biol.525:353-376;Steidl,S.et al.(2008)“In Vitro Affinity Maturation Of Human GM-CSF Antibodies By Targeted CDR-Diversification”,Mol.Immunol.46(1):135-144;およびBarderas,R.et al.(2008)“Affinity Maturation Of Antibodies Assisted By In Silico Modeling”,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)105(26):9029-9034に記載されている。
【0062】
「エピトープ」という用語は、抗体への特異的結合が可能な抗原決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の表面基(surface grouping)からなり、通常、特定の三次元構造特性、ならびに特定の電荷特性を有する。立体配座エピトープおよび非立体配座エピトープは、後者ではなく、前者への結合が、変性溶媒の存在下で常に失われる点で区別される。エピトープは、特異的抗原結合ペプチドによって有効に遮断されるアミノ酸残基(言い換えると、アミノ酸残基は、特異的抗原結合ペプチドのフットプリント内にある)などの、結合に直接関与するアミノ酸残基および結合に直接関与しない他のアミノ酸残基を含み得る。
【0063】
本明細書において使用される際の「治療(treatment)」または「治療すること(treating)」という用語は、疾患または障害の進行または重症度を改善し、遅らせ、または抑制すること、またはこのような疾患または障害の1つまたは複数の症状または副作用を改善し、遅らせ、または抑制することを意味する。本発明の趣旨では、「治療」または「治療すること」は、有益なまたは所望の臨床結果を得るための手法をさらに意味し、ここで、「有益なまたは所望の臨床結果」としては、限定はされないが、部分的であるかまたは全体的であるか、検出可能かまたは検出不可能かにかかわらず、症状の軽減、障害または疾患の程度の減少、安定した(すなわち、悪化していない)疾患または障害状態、疾患または障害状態の進行の遅延または緩徐化、疾患または障害状態の改善または緩和、および疾患または障害の寛解が挙げられる。
【0064】
「有効量」は、本発明の抗体に適用される場合、意図される生物学的効果または所望の治療結果(限定はされないが臨床結果を含む)を達成するのに、必要な投与量および期間にわたる、十分な量を指す。「治療的に有効な量」という語句は、本発明の抗体に適用される場合、障害もしくは疾患の状態の進行、または障害もしくは疾患の症状の進行を改善し、緩和し、安定させ、抑制し、遅らせ、または遅延させるのに十分な、抗体の量を表すことが意図される。一実施形態において、本発明の方法は、他の化合物と組み合わせた、抗体の投与を提供する。このような場合、「有効量」は、意図される生物学的効果を引き起こすのに十分な組合せの量である。
【0065】
抗α-シヌクレイン抗体の治療的に有効な量は、個体の病状、年齢、性別、および体重、ならびに抗α-シヌクレイン抗体が個体における所望の応答を引き起こす能力などの要因に応じて変化し得る。治療的に有効な量はまた、抗体または抗体部分の何らかの毒性または有害作用を、治療的に有益な効果が上回る量である。
【0066】
本発明は、α-シヌクレイン上のエピトープへの結合について、本明細書において2E6と示される抗体と競合するモノクローナル抗体を提供する。特に、抗体は、アミノ酸126~140(配列番号2)内のエピトープに特異的に結合する。特定の実施形態において、抗体は、P138、E139およびA140を含むかまたはそれからなるエピトープに結合し得る。
【0067】
抗体は、好ましくは、ヒト化抗体である。
【0068】
したがって、本発明は、以下のCDR:
配列番号3または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
配列番号5または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0069】
モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下のCDR:
配列番号6または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
配列番号7または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
配列番号8または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含み得る。
【0070】
一実施形態によれば、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号19のアミノ酸配列の軽鎖可変領域および配列番号20のアミノ酸配列の重鎖可変領域を含み得る。
【0071】
別の実施形態によれば、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号21のアミノ酸配列の軽鎖可変領域および配列番号22のアミノ酸配列の重鎖可変領域を含み得る。
【0072】
別の実施形態によれば、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号23のアミノ酸配列の軽鎖可変領域および配列番号24のアミノ酸配列の重鎖可変領域を含み得る。
【0073】
別の実施形態によれば、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号25のアミノ酸配列および配列番号26のアミノ酸配列の重鎖可変領域を含み得る。
【0074】
別の実施形態によれば、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号27のアミノ酸配列の軽鎖可変領域および配列番号28のアミノ酸配列の重鎖可変領域を含み得る。
【0075】
別の実施形態によれば、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号45のアミノ酸配列の軽鎖可変領域および配列番号46のアミノ酸配列の重鎖可変領域を含み得る。
【0076】
別の実施形態において、本発明は、以下のCDR:
配列番号9または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
配列番号5または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0077】
モノクローナル抗体または抗原結合フラグメントは、以下のCDR:
配列番号12または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
配列番号7または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
配列番号8または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含み得る。
【0078】
別の実施形態によれば、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号35のアミノ酸配列の軽鎖可変領域および配列番号36のアミノ酸配列の重鎖可変領域を含み得る。
【0079】
別の実施形態において、本発明は、以下のCDR:
配列番号10または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
配列番号5または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、モノクローナル抗体または抗原結合フラグメントに関する。
【0080】
モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下のCDR:
配列番号6または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
配列番号7または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
配列番号18または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含み得る。
【0081】
別の実施形態によれば、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号39のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号40のアミノ酸配列の重鎖可変領域を含み得る。
【0082】
別の実施形態によれば、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号41のアミノ酸配列の軽鎖可変領域および配列番号42のアミノ酸配列の重鎖可変領域を含み得る。
【0083】
本発明の別の実施形態において、本発明は、以下のCDR:
配列番号3または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
配列番号11または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0084】
モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下のCDR:
配列番号6または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
配列番号7または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
配列番号8または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含み得る。
【0085】
別の実施形態によれば、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号37のアミノ酸配列の軽鎖可変領域および配列番号38のアミノ酸配列の重鎖可変領域を含み得る。
【0086】
本発明の別の実施形態によれば、本発明は、以下のCDR:
配列番号3または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
配列番号5または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0087】
モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下のCDR:
配列番号6または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
配列番号13または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
配列番号16または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含み得る。
【0088】
別の実施形態によれば、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、アミノ酸配列の軽鎖可変領域を含み得る。別の実施形態によれば、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号29のアミノ酸配列の軽鎖可変領域および配列番号30のアミノ酸配列の重鎖可変領域を含み得る。
【0089】
本発明の別の実施形態によれば、本発明は、以下のCDR:
配列番号3または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
配列番号5または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0090】
モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下のCDR:
配列番号6または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
配列番号14または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
配列番号8または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含み得る。
【0091】
別の実施形態によれば、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号33のアミノ酸配列の軽鎖可変領域および配列番号34のアミノ酸配列の重鎖可変領域を含み得る。
【0092】
本発明の一実施形態によれば、本発明は、以下のCDR:
配列番号3または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
配列番号5または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0093】
モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下のCDR:
配列番号6または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
配列番号15または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
配列番号8または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含み得る。
【0094】
別の実施形態によれば、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号43のアミノ酸配列の軽鎖可変領域および配列番号44のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含み得る。
【0095】
本発明の別の実施形態によれば、本発明は、以下のCDR:
配列番号3または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
配列番号5または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、モノクローナル抗体または抗原結合フラグメントに関する。
【0096】
モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、以下のCDR:
配列番号6または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
配列番号7または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
配列番号17または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含み得る。
【0097】
別の実施形態によれば、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号31のアミノ酸配列の軽鎖可変領域および配列番号32のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含み得る。
【0098】
この抗体は、一実施形態によれば、公知の免疫グロブリン受容体によって免疫応答を誘発することができないことがある。この抗体は、公知の免疫グロブリン受容体と相互作用するその能力を制限または低減するように改変され得る。例えば、この抗体は、脱グリコシル化され得、重鎖定常領域または両方においてアミノ酸変化を含有し得る。
【0099】
本発明は、患者におけるα-シヌクレイン凝集体形成を減少させる方法であって、このような治療を必要とする患者に、治療的に有効な量の本発明の抗体を投与する工程を含む方法も提供する。
【0100】
さらに、抗体は、薬学的に許容できる担体、希釈剤および/または安定剤と一緒に組成物中にあり得る。本発明の抗体は、治療に使用され得る。特に、本発明の抗体は、パーキンソン病(特発性、遺伝性パーキンソン病を含む)、ゴーシェ病、びまん性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病、純粋自律神経不全症および多系統萎縮症などのシヌクレイノパチーを治療するのに使用され得る。本発明の抗体はまた、自身の遺伝子プロファイルおよび/または将来PDを発症させる可能性が高い非PD中核症状に基づいてPDを発症するリスクのある人々を治療することが可能であり得る。
【0101】
治療は、長期であってもよく、患者は、少なくとも2週間、例えば少なくとも1ヶ月間、6ヶ月間、1年間またはそれ以上治療され得る。
【0102】
本発明の抗体は、例えばKohler et al.,Nature 256,495(1975)によって最初に記載されているハイブリドーマ方法によって産生されるモノクローナル抗体であってもよく、または組み換えDNA方法によって産生され得る。モノクローナル抗体はまた、例えば、Clackson et al.,Nature 352,624-628(1991)およびMarks et al.,J.MoI.Biol.222,581-597(1991)に記載されている技術を用いて、ファージ抗体ライブラリーから単離され得る。モノクローナル抗体は、任意の好適な源から得られる。したがって、例えば、モノクローナル抗体は、例えば、表面において抗原を発現する細胞、または該当する抗原をコードする核酸の形態で、該当する抗原で免疫されたマウスから得られるマウス脾臓Bリンパ球細胞から調製されるハイブリドーマから得られる。モノクローナル抗体はまた、免疫されたヒトまたは非ヒト哺乳動物(ラット、ウサギ、イヌ、ヒツジ、ヤギ、霊長類など)の抗体発現細胞に由来するハイブリドーマから得られる。
【0103】
一実施形態において、本発明の抗体は、ヒト抗体である。α-シヌクレインに対するヒトモノクローナル抗体は、ヒト免疫系の部分を有するトランスジェニックまたは染色体導入マウスおよび部分的に不活性化されたマウスレパートリーを用いて生成され得る。このようなトランスジェニックおよび染色体導入マウスは、本明細書においてそれぞれHuMAbマウスおよびKMマウスと呼ばれるマウスを含む。
【0104】
HuMAbマウスは、内因性μおよびκ鎖遺伝子座を不活性化する標的突然変異と一緒に、再配列されていないヒト重鎖可変および定常(μおよびY)ならびに軽鎖可変および定常(κ)鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子のミニ遺伝子座(minilocus)を含む(Lonberg,N.et al.,Nature 368,856-859(1994))。したがって、このようなマウスは、マウスIgMまたはIgKの減少した発現を示し、免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖および軽鎖導入遺伝子が、クラススイッチおよび体細胞突然変異を起こして、高親和性ヒトIgG、κモノクローナル抗体を生成する(Lonberg,N.et al.(1994)、上記参照;Lonberg,N.,Handbook of Experimental Pharmacology 113,49-101(1994)、Lonberg,N.and Huszar,D.,Intern.Rev.Immunol.Vol.13 65-93(1995)およびHarding,F.and Lonberg,N.,Ann.N.Y.Acad.Sci 764 536-546(1995)に概説されている)。HuMAbマウスの作製は、Taylor,L.et al.,Nucleic Acids Research 20,6287-6295(1992)、Chen,J.et al.,International Immunology 5,647-656(1993)、Tuaillon et al.,J.Immunol.152,2912-2920(1994)、Taylor,L.et al.,International Immunology 6,579-591(1994)、Fishwild,D.et al.,Nature Biotechnology 14,845-851(1996)に詳細に記載されている。米国特許第5,545,806号明細書、米国特許第5,569,825号明細書、米国特許第5,625,126号明細書、米国特許第5,633,425号明細書、米国特許第5,789,650号明細書、米国特許第5,877,397号明細書、米国特許第5,661,016号明細書、米国特許第5,814,318号明細書、米国特許第5,874,299号明細書、米国特許第5,770,429号明細書、米国特許第5,545,807号明細書、国際公開第98/24884号パンフレット、国際公開第94/25585号パンフレット、国際公開第93/1227号パンフレット、国際公開第92/22645号パンフレット、国際公開第92/03918号パンフレットおよび国際公開第01/09187号パンフレットも参照されたい。
【0105】
HCo7、HCo12、HCo17およびHCo20マウスは、それらの内因性軽鎖(κ)遺伝子におけるJKD破壊(Chen et al.,EMBO J.12,(1993)に記載されているように)、それらの内因性重鎖遺伝子におけるCMD破壊(国際公開第01/14424号パンフレットの実施例1に記載されているように)、およびKCo5ヒトκ軽鎖導入遺伝子(Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14,845-851(1996)に記載されているように)を有する。さらに、HCo7マウスは、HCo7ヒト重鎖導入遺伝子(米国特許第5,770,429号明細書に記載されているように)を有し、HCo12マウスは、HCo12ヒト重鎖導入遺伝子(国際公開第01/14424号パンフレットの実施例2に記載されているように)を有し、HCo17マウスは、HCo17ヒト重鎖導入遺伝子(国際公開第01/09187号パンフレットの実施例2に記載されているように)を有し、HCo20マウスは、HCo20ヒト重鎖導入遺伝子を有する。得られるマウスは、内因性マウス重鎖およびκ軽鎖遺伝子座の破壊のためにバックグラウンドのホモ接合体においてヒト免疫グロブリン重鎖およびκ軽鎖導入遺伝子を発現する。
【0106】
KMマウス株において、内因性マウスκ軽鎖遺伝子は、Chen et al.,EMBO J.12,811-820(1993)に記載されているようにホモ接合的に破壊されており、内因性マウス重鎖遺伝子は、国際公開第01/09187号パンフレットの実施例1に記載されているようにホモ接合的に破壊されている。このマウス株は、Fishwild et al.,Nature Biotechnology 14,845-851(1996)に記載されているように、ヒトκ軽鎖導入遺伝子、KCo5を保有する。このマウス株は、国際公開第02/43478号パンフレットに記載されているように、染色体14フラグメントhCF(SC20)から構成されるヒト重鎖導入染色体も保有する。HCo12-Balb/c、HCo17-Balb/cおよびHCo20-Balb/cマウスは、国際公開第09/097006号パンフレットに記載されているように、HCo12、HCo17およびHCo20を、KCo5[J/K](Balb)に交差させることによって生成され得る。
【0107】
これらのトランスジェニックマウスに由来する脾細胞は、周知の技術にしたがって、ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを生成するのに使用され得る。本発明のヒトモノクローナルもしくはポリクローナル抗体、または他の種に由来する本発明の抗体はまた、該当する免疫グロブリン重鎖および軽鎖配列についてトランスジェニックな別の非ヒト哺乳動物または植物の生成、および回収可能な形態での抗体の産生によって遺伝子導入的に生成され得る。哺乳動物におけるトランスジェニック産生に関連して、抗体は、ヤギ、ウシ、または他の哺乳動物の乳汁中で産生され、それから回収され得る。例えば米国特許第5,827,690号明細書、米国特許第5,756,687号明細書、米国特許第5,750,172号明細書および米国特許第5,741,957号明細書を参照されたい。
【0108】
本発明の抗体は、任意のアイソタイプのものであり得る。アイソタイプの選択は、典型的に、ADCC誘導などの所望のエフェクター機能によって導かれる。例示的なアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4である。ヒト軽鎖定常領域、κまたはλのいずれかが使用され得る。必要に応じて、本発明の抗α-シヌクレイン抗体のクラスは、公知の方法によってスイッチされ得る。例えば、元はIgMであった本発明の抗体は、本発明のIgG抗体にクラススイッチされ得る。さらに、クラススイッチ技術は、あるIgGサブクラスを別のIgGサブクラスに、例えばIgGlからIgG2に変換するのに使用され得る。したがって、本発明の抗体のエフェクター機能は、様々な治療的使用のために、例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体へのアイソタイプスイッチによって変更され得る。一実施形態において、本発明の抗体は、IgG1抗体、例えばIgG1、κである。
【0109】
一実施形態において、本発明の抗体は、完全長抗体、好ましくは、IgG抗体、特に、IgG1、κ抗体である。別の実施形態において、本発明の抗体は、抗体フラグメントまたは一本鎖抗体である。
【0110】
特定の実施形態において、キメラ抗体は、ヒト化抗体になるように操作される。典型的に、非ヒト抗体は、親非ヒト抗体の特異性および親和性を保持しながら、ヒトに対する免疫原性を低下させるためにヒト化される。一般に、ヒト化抗体は、HVR、例えば、CDR(または一部)が非ヒト抗体由来であり、FR(またはその一部)がヒト抗体配列由来である1つまたは複数の可変領域を含む。ヒト化抗体は、任意選択的に、ヒト定常領域の少なくとも一部も含む。ある実施形態において、ヒト化抗体中の一部のFR残基は、非ヒト抗体(例えばHVR残基が由来する抗体)からの対応する残基で置換されて、例えば、抗体特異性または親和性を回復または改善する。
【0111】
ヒト化抗体およびそれらを作製する方法は、例えば、Almagro and Fransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)に概説されており、例えば、Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);Queen et al.,Proc.Nat ’lUSA 86:10029-10033(1989);米国特許第5,821,337号明細書、同第7,527,791号明細書、同第6,982,321号明細書、および同第7,087,409号明細書;Kashmiri et al.,Methods 36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)グラフトを記載している);Padlan,Mol.にさらに記載されている。抗体フラグメントは、例えば従来の技術を用いた断片化によって得られ、このフラグメントは、全抗体について本明細書に記載されるのと同じように有用性についてスクリーニングされ得る。例えば、F(ab’)2フラグメントは、抗体をペプシンで処理することによって生成され得る。得られるF(ab’)2フラグメントは、ジスルフィド架橋を還元するように処理されて、Fab’フラグメントを生成し得る。FabフラグメントはIgG抗体をパパインで処理することによって得られ;Fab’フラグメントは、IgG抗体のペプシン消化により得られる。F(ab’)2フラグメントはまた、チオエーテル結合またはジスルフィド結合により、以下に記載されるFab’を結合することによって生成され得る。Fab’フラグメントは、F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することによって得られる抗体フラグメントである。Fab’-フラグメントは、F(ab’)2フラグメントを、ジチオスレイトールなどの還元剤で処理することによって得られる。抗体フラグメントはまた、組み換え細胞におけるこのようなフラグメントをコードする核酸の発現によって生成され得る(例えばEvans et al.,J.Immunol.Meth.184、123-38(1995)を参照)。例えば、F(ab’)2フラグメントの一部をコードするキメラ遺伝子は、このような切断された抗体フラグメント分子を生成するために、H鎖のCH1領域およびヒンジ領域をコードするDNA配列、続いて翻訳停止コドンを含み得る。
【0112】
一実施形態において、抗α-シヌクレイン抗体は、一価抗体、好ましくは、ヒンジ領域の欠失を有する国際公開第2007059782号パンフレット(その全体が参照により本明細書に援用される)に記載されている一価抗体である。したがって、一実施形態において、抗体は、一価抗体であり、前記抗α-シヌクレイン抗体は、i)前記一価抗体の軽鎖をコードする核酸構築物を提供する工程であって、前記構築物が、選択された抗原特異的抗α-シヌクレイン抗体のVL領域をコードするヌクレオチド配列およびIgの定常CL領域をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、選択された抗原特異的抗体のVL領域をコードする前記ヌクレオチド配列およびIgのCL領域をコードする前記ヌクレオチド配列が、作動可能に一緒に連結され、IgG1サブタイプの場合、CL領域をコードするヌクレオチド配列は、ポリクローナルヒトIgGの存在下でまたは動物もしくはヒトに投与されるとき、CL領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとともにジスルフィド結合または共有結合を形成することが可能なアミノ酸をCL領域が含まないように修飾されている工程と;ii)前記一価抗体の重鎖をコードする核酸構築物を提供する工程であって、前記構築物が、選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードするヌクレオチド配列およびヒトIgの定常CH領域をコードするヌクレオチド配列を含み、ここで、CH領域をコードするヌクレオチド配列は、ヒンジ領域に対応する領域および、Igサブタイプによって必要とされるように、CH3領域などのCH領域の他の領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下でまたは動物ヒトに投与されるとき、ヒトIgのCH領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとともに、ジスルフィド結合または共有結合または安定した非共有重鎖間結合の形成に関与するアミノ酸残基を含まないように修飾されており、選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードする前記ヌクレオチド配列および前記IgのCH領域をコードする前記ヌクレオチド配列が、作動可能に一緒に連結される工程と;iii)前記一価抗体を生成するために細胞発現系を提供する工程と;iv)(iii)の細胞発現系の細胞内で(i)および(ii)の核酸構築物を共発現することによって、前記一価抗体を生成する工程とを含む方法によって構築される。
【0113】
同様に、一実施形態において、抗α-シヌクレイン抗体は、
(i)本明細書に記載される本発明の抗体の可変領域または前記領域の抗原結合部分、および
(ii)免疫グロブリンのCH領域またはCH2およびCH3領域を含むその抗原結合フラグメント
を含む一価抗体であり、ここで、CH領域またはその抗原結合フラグメントは、ヒンジ領域に対応する領域および、免疫グロブリンがIgG4サブタイプでない場合、CH3領域などのCH領域の他の領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下で、同一のCH領域とともにジスルフィド結合を形成するか、または同一のCH領域とともに他の共有結合または安定した非共有重鎖間結合を形成することが可能なアミノ酸残基を含まないように修飾されている。
【0114】
さらなる実施形態において、一価抗α-シヌクレイン抗体の重鎖は、ヒンジ全体が欠失しているように修飾されている。
【0115】
別のさらなる実施形態において、前記一価抗体の配列は、それがN結合型グリコシル化のための受容体部位を含まないように修飾されている。
【0116】
別のさらなる実施形態において、シヌクレイン抗体の一価Fabは、異なるタンパク質を標的にするさらなるFabまたはscfvに結合されて、二重特異性抗体を生成する。二重特異性抗体は、二重機能、例えば抗シヌクレイン結合領域によって与えられる治療機能、および血液脳関門などの生物学的障壁を越える輸送を促進するために受容体分子に結合し得る輸送機能を有し得る。
【0117】
本発明の抗α-シヌクレイン抗体は、一本鎖抗体も含む。一本鎖抗体は、重鎖および軽鎖Fv領域が結合されたペプチドである。一実施形態において、本発明は、本発明の抗α-シヌクレイン抗体のFvにおける重鎖および軽鎖が、ペプチド一本鎖において(典型的に、約10、12、15つまたはそれ以上のアミノ酸残基の)フレキシブルペプチドリンカーと結合される一本鎖Fv(scFv)を提供する。このような抗体を産生する方法が、例えば米国特許第4,946,778号明細書、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)、Bird et al.,Science 242,423-426(1988)、Huston et al.,PNAS USA 85,5879-5883(1988)およびMcCafferty et al.,Nature 348,552-554(1990)に記載されている。一本鎖抗体は、単一のVHおよびVLのみが使用される場合、一価であり、2つのVHおよびVLが使用される場合、二価であり、または3つ以上のVHおよびVLが使用される場合、多価であり得る。
【0118】
一般的に本明細書に記載される抗α-シヌクレイン抗体は、任意の好適な数の修飾アミノ酸の包含および/またはこのような共役置換基との結合によって修飾され得る。これに関連する適合性は、一般に、非誘導体化親抗α-シヌクレイン抗体に関連するα-シヌクレイン選択性および/または抗α-シヌクレイン特異性を少なくとも実質的に保持する能力によって決定される。1つまたは複数の修飾アミノ酸の包含は、例えば、ポリペプチド血清半減期を増加させ、ポリペプチド抗原性を低下させ、またはポリペプチド貯蔵安定性を増加させるのに有利であり得る。アミノ酸は、例えば、組み換え産生の際に翻訳と同時に(co-translationally)もしくは翻訳後に(post-translationally)修飾されるか(例えば、哺乳類細胞における発現の際のN-X-S/TモチーフにおけるN結合型グリコシル化)または合成手段によって修飾される。修飾アミノ酸の非限定的な例としては、グリコシル化アミノ酸、硫酸化アミノ酸、プレニル化(例えば、ファルネシル化、ゲラニルゲラニル化)アミノ酸、アセチル化アミノ酸、アシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、カルボキシル化アミノ酸、リン酸化アミノ酸などが挙げられる。アミノ酸の修飾の当業者の指針となるのに十分な言及は、文献全体を通して十分にある。例のプロトコルが、Walker(1998)Protein Protocols On CD-Rom,Humana Press,Totowa,NJに見られる。修飾アミノ酸は、例えば、グリコシル化アミノ酸、PEG化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分にコンジュゲートされたアミノ酸、または有機誘導化剤にコンジュゲートされたアミノ酸から選択され得る。
【0119】
抗α-シヌクレイン抗体はまた、例えばそれらの血中半減期を増加させるために、ポリマーへの共有結合によって化学修飾され得る。例示的なポリマー、およびそれらをペプチドに結合するための方法が、例えば米国特許第4,766,106号明細書、米国特許第4,179,337号明細書、米国特許第4,495,285号明細書および米国特許第4,609,546号明細書に示されている。さらなる例示的なポリマーとしては、ポリオキシエチル化ポリオールおよびポリエチレングリコール(PEG)(例えば、約1,000~約40,000、例えば約2,000~約20,000、例えば、約3,000~12,000g/molの分子量を有するPEG)が挙げられる。
【0120】
抗体は、診断法においてまたは画像診断用リガンドとしてさらに使用され得る。
【0121】
一実施形態において、1つまたは複数の放射性標識アミノ酸を含む抗α-シヌクレイン抗体が提供される。放射性標識抗α-シヌクレイン抗体は、診断および治療目的の両方に使用され得る(放射性標識分子への結合は、別の考えられる特徴である)。このような標識の非限定的な例としては、限定はされないが、ビスマス(213Bi)、炭素(11C、13C、14C)、クロム(51Cr)、コバルト(57Co、60Co)、銅(64Cu)、ジスプロシウム(165Dy)、エルビウム(169Er)、フッ素(18F)、ガドリニウム(153Gd、159Gd)、ガリウム(68Ga、67Ga)、ゲルマニウム(68Ge)、金(198Au)、ホルミウム(166Ho)、水素(H)、インジウム(111In、112In、113In、115In)、ヨウ素(121I、123I、125I、131I)、イリジウム(192Ir)、鉄(59Fe)、クリプトン(81mKr)、ランタン(140La)、ルテチウム(177Lu)、マンガン(54Mn)、モリブデン(99Mo)、窒素(13N、15N)、酸素(15O)、パラジウム(103Pd)、リン(32P)、カリウム(42K)、プラセオジム(142Pr)、プロメチウム(149Pm)、レニウム(186Re、188Re)、ロジウム(105Rh)、ルビジウム(81Rb、82Rb)、ルテニウム(82Ru、97Ru)、サマリウム(153Sm)、スカンジウム(47Sc)、セレン(75Se)、ナトリウム(24Na)、ストロンチウム(85Sr、89Sr、92Sr)、硫黄(35S)、テクネチウム(99Tc)、タリウム(201Tl)、スズ(113Sn、117Sn)、キセノン(133Xe)、イッテルビウム(169Yb、175Yb、177Yb)、イットリウム(90Y)および亜鉛(65Zn)が挙げられる。放射性標識アミノ酸および関連するペプチド誘導体を調製するための方法は、当該技術分野において公知である(例えばJunghans et al.,Cancer Chemotherapy and Biotherapy 655-686(2nd edition,Chafner and Longo,eds.,Lippincott Raven(1996))ならびに米国特許第4,681,581号明細書、米国特許第4,735,210号明細書、米国特許第5,101,827号明細書、米国特許第5,102,990号明細書(米国再発行特許第35,500号明細書)、米国特許第5,648,471号明細書および米国特許第5,697,902号明細書を参照。例えば、放射性同位体が、クロラミンT法によって結合され得る(Lindegren,S.et al.(1998)“Chloramine-T In High-Specific-Activity Radioiodination Of Antibodies Using N-Succinimidyl-3-(Trimethylstannyl)Benzoate As An Intermediate”,Nucl.Med.Biol.25(7):659-665;Kurth,M.et al.(1993)“Site-Specific Conjugation Of A Radioiodinated Phenethylamine Derivative To A Monoclonal Antibody Results In Increased Radioactivity Localization In Tumor”,J.Med.Chem.36(9):1255-1261;Rea,D.W.et al.(1990)“Site-specifically radioiodinated antibody for targeting tumors”,Cancer Res.50(3 Suppl):857s-861s)。
【0122】
本発明は、蛍光標識(希土類キレート(例えば、ユウロピウムキレート)など)、フルオレセイン型標識(例えば、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、5-カルボキシフルオレセイン、6-カルボキシフルオレセイン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン)、ローダミン型標識(例えば、ALEXA FLUOR(登録商標)568(Invitrogen)、TAMRA(登録商標)またはダンシルクロリド)、VIVOTAG 680 XL FLUOROCHROME(商標)(Perkin Elmer)、フィコエリトリン;ウンベリフェロン、Lissamine;シアニン;フィコエリトリン、Texas Red、BODIPY FL-SE(登録商標)(Invitrogen)またはそれらの類似体(これらは全て、光学的検出に好適である)を用いて検出可能に標識される抗α-シヌクレイン抗体も提供する。化学発光標識が、用いられてもよい(例えば、ルミノール、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびイクオリン)。このような診断および検出はまた、本発明の診断用分子を、限定はされないが、様々な酵素、限定はされないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含む酵素を含む検出可能な物質に、または限定はされないが、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンなどの補欠分子族複合体に結合することによって行われ得る。
【0123】
化学発光標識が、用いられてもよい(例えば、ルミノール、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびイクオリン)。このような診断および検出はまた、本発明の診断用分子を、限定はされないが、様々な酵素、限定はされないが、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼを含む酵素を含む検出可能な物質に、または限定はされないが、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンなどの補欠分子族複合体に結合することによって行われ得る。常磁性標識も用いられ得、好ましくは、ポジトロン放出型断層撮影法(PET)または単一光子放射コンピュータ断層撮影法(SPECT)を用いて検出される。このような常磁性標識としては、限定はされないが、アルミニウム(Al)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、セリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)、エルビウム(Er)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、ホルミウム(Ho)、イリジウム(Ir)、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、モリブデン(M)、ネオジム(Nd)、オスミウム(Os)、酸素(O)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、サマリウム(Sm)、ナトリウム(Na)、ストロンチウム(Sr)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、タングステン(W)、およびジルコニウム(Zi)、特に、Co+2、CR+2、Cr+3、Cu+2、Fe+2、Fe+3、Ga+3、Mn+3、Ni+2、Ti+3、V+3、およびV+4の常磁性イオン、様々なポジトロン放出型断層撮影法を用いたポジトロン放出金属、および非放射性常磁性金属イオンを含有する化合物が挙げられる。
【0124】
したがって、一実施形態において、本発明の抗α-シヌクレイン抗体は、蛍光標識、化学発光標識、常磁性標識、放射性同位体標識または酵素標識で標識され得る。標識抗体は、対象の脳における前記α-シヌクレインの存在または量を検出または測定するのに使用され得る。この方法は、前記α-シヌクレインに結合された抗α-シヌクレイン抗体のインビボイメージングの検出または測定を含んでもよく、前記α-シヌクレインに結合された前記抗α-シヌクレイン抗体のエクスビボイメージングを含み得る。
【0125】
さらなる態様において、本発明は、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントの1つまたは複数のポリペプチド鎖をコードする発現ベクターに関する。このような発現ベクターは、本発明の抗体の組み換え産生に使用され得る。
【0126】
本発明の文脈における発現ベクターは、染色体ベクター、非染色体ベクター、および合成核酸ベクター(好適な組の発現制御要素を含む核酸配列)を含む、任意の好適なDNAまたはRNAベクターであり得る。このようなベクターの例としては、SV40の誘導体、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドおよびファージDNAの組合せに由来するベクター、およびウイルス核酸(RNAまたはDNA)ベクターが挙げられる。一実施形態において、抗α-シヌクレイン抗体コード核酸は、例えば、線形発現要素(linear expression element)(例えば、Sykes and Johnston,Nat Biotech 12,355-59(1997)に記載されているように)、圧縮(compacted)核酸ベクター(例えば米国特許第6,077,835号明細書および/または国際公開第00/70087号パンフレットに記載されているように)、pBR322、pUC 19/18、またはpUC 118/119、「ミッジ(midge)」最小サイズ核酸ベクターなどのプラスミドベクター(例えば、Schakowski et al.,MoI Ther 3,793-800(2001)に記載されているように)を含む裸のDNAまたはRNAベクターにおいて、またはCaPO沈殿構築物などの沈殿核酸ベクター構築物(例えば、国際公開第00/46147号パンフレット、Benvenisty and Reshef,PNAS USA 83,9551-55(1986)、Wigler et al.,Cell 14,725(1978)、およびCoraro and Pearson,Somatic Cell Genetics 2,603(1981)に記載されているように)として含まれる。このような核酸ベクターおよびその使用法は、当該技術分野において周知である(例えば米国特許第5,589,466号明細書および米国特許第5,973,972号明細書を参照)。
【0127】
一実施形態において、ベクターは、細菌細胞における抗α-シヌクレイン抗体またはその抗α-シヌクレイン結合抗原結合フラグメントの発現に好適である。このようなベクターの例としては、BlueScript(Stratagene)、pINベクター(Van Heeke & Schuster,J Biol Chem 264,5503-5509(1989)、pETベクター(Novagen,Madison,WI)など)などの発現ベクターが挙げられる。
【0128】
発現ベクターは、さらにまたは代わりに、酵母系における発現に好適なベクターであり得る。酵母系における発現に好適な任意のベクターが用いられてもよい。好適なベクターとしては、例えば、α因子、アルコールオキシダーゼおよびPGHなどの構成的または誘導性プロモータを含むベクターが挙げられる(F.Ausubel et al.,ed.Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley InterScience New York(1987)、Grant et al.,Methods in Enzymol 153,516-544(1987)
【0129】
本発明の発現ベクターにおいて、抗α-シヌクレイン抗体コード核酸は、任意の好適なプロモータ、エンハンサー、および他の発現促進要素を含むかまたはそれらと結合され得る。このような要素の例としては、強力な発現プロモータ(例えば、ヒトCMV IEプロモータ/エンハンサーならびにRSV、SV40、SL3-3、MMTV、およびHIV LTRプロモータ)、有効なポリ(A)終止配列、大腸菌(E.coli)におけるプラスミド産物の複製起点、選択可能なマーカーとしての抗生物質抵抗性遺伝子、および/または好都合なクローニング部位(例えば、ポリリンカー)が挙げられる。核酸は、CMV IEなどの構成的プロモータとは対照的に誘導性プロモータも含み得る(当業者は、このような用語が、実際に、特定の条件下における遺伝子発現の程度の記述語であることを認識するであろう)。
【0130】
さらに他の態様において、本発明は、本明細書に定義される本発明の抗体または本明細書に定義される本発明の二重特異性分子を産生するトランスフェクトーマ(transfectoma)などの、組み換え真核生物または原核生物宿主細胞に関する。宿主細胞の例としては、酵母、細菌、および哺乳類細胞(CHOまたはHEK細胞など)が挙げられる。例えば、一実施形態において、本発明は、本発明の抗α-シヌクレイン抗体またはそのα-シヌクレイン結合抗原結合フラグメントの発現のための配列コードを含む細胞ゲノムに安定に組み込まれた核酸を含む細胞を提供する。別の実施形態において、本発明は、本発明の抗α-シヌクレイン抗体の発現のための配列コードを含む、プラスミド、コスミド、ファージミド、または線形発現要素などの、融合されていない核酸を含む細胞を提供する。
【0131】
さらなる態様において、本発明は、本発明の抗α-シヌクレイン抗体を産生するための方法であって、a)本明細書において上述されるように本発明のハイブリドーマまたは宿主細胞を培養する工程と、b)培地から本発明の抗体を精製する工程とを含む方法に関する。
【0132】
さらに他の態様において、本発明は、
-本明細書に定義される抗α-シヌクレイン抗体、および
-薬学的に許容できる担体
を含む医薬組成物に関する。
【0133】
医薬組成物は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,22nd Edition,Gennaro,Ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA,2013に開示されているものなどの従来の技術にしたがって、薬学的に許容できる担体または希釈剤ならびに任意の他の公知の補助剤および賦形剤とともに製剤化され得る。
【0134】
薬学的に許容できる担体または希釈剤ならびに任意の他の公知の補助剤および賦形剤は、本発明の選択された化合物および選択された投与方法に好適であるべきである。医薬組成物の担体および他の成分のための適合性は、本発明の選択された化合物または医薬組成物の所望の生物学的特性に対する大きな悪影響がないことに基づいて決定される(例えば、抗原結合に対するそれほど大きくない影響(10%以下の相対的阻害、5%以下の相対的阻害など))。
【0135】
本発明の医薬組成物は、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、洗浄剤(例えば、Tween-20またはTween-80などの非イオン性洗浄剤)、安定剤(例えば、糖またはタンパク質を含まないアミノ酸)、防腐剤、組織固定剤、可溶化剤、および/または医薬組成物に含めるのに好適な他の材料も含み得る。希釈剤は、組合せの生物学的活性に影響を与えないように選択される。このような希釈剤の例は、蒸留水、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、およびハンクス溶液である。さらに、医薬組成物または製剤は、他の担体、または非毒性の、非治療的、非免疫原性安定剤なども含み得る。組成物は、タンパク質、キトサンのような多糖類、ポリ乳酸、ポリグリコール酸およびコポリマー(例えば、ラテックス機能化(latex functionalized)セファロース、アガロース、セルロースなど)、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、および脂質凝集体(例えば、油滴またはリポソーム)などの、大型のゆっくりと代謝される高分子も含み得る。
【0136】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投与量レベルは、特定の患者、組成物、および投与方法に対する所望の治療反応を達成するのに有効な活性成分の量を得るように変化され得る。選択された投与量レベルは、用いられる本発明の特定の組成物の活性、またはそのアミド、投与経路、投与時期、用いられる特定の化合物の排せつ速度、治療期間、用いられる特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬剤、化合物および/または材料、治療される患者の年齢、性別、体重、病態、全体的な健康および過去の病歴、ならびに医療分野において周知の同様の要因を含む様々な薬物動態学的要因に応じて決まる。
【0137】
医薬組成物は、予防的および/または治療的処置のための非経口、局所、経口または経鼻手段を含む、任意の好適な経路および方法によって投与され得る。一実施形態において、本発明の医薬組成物は、非経口的に投与される。本明細書において使用される際の「非経口投与」および「非経口的に投与される」という語句は、通常、注射による、腸内および局所投与以外の投与方法を意味し、特に、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、皮内、腹腔内、皮下、表皮下、関節内、くも膜下、脊髄内注射および注入を含む。
【0138】
インビボおよびインビトロで本発明の化合物を投与するさらなる好適な経路が、当該技術分野において周知であり、当業者によって選択され得る。
【0139】
一実施形態において、その医薬組成物は、静脈内または皮下注射または注入によって投与される。
【0140】
薬学的に許容できる担体としては、本発明の化合物と生理学的に適合性の、あらゆる好適な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌および抗真菌剤、等張剤、酸化防止剤および吸収遅延剤などが挙げられる。
【0141】
本発明の医薬組成物に用いられ得る好適な水性および非水性担体の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの好適な混合物、オリーブ油、トウモロコシ油、ピーナッツ油、綿実油、およびゴマ油などの植物油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガカントガムおよび注射可能な有機酸エステル(オレイン酸エチルなど)、および/または様々な緩衝液が挙げられる。他の担体が、医薬品分野において周知である。
【0142】
薬学的に許容できる担体は、滅菌注射用溶液または分散体の即時調製用の滅菌水溶液または分散体および滅菌粉末を含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野において公知である。従来の媒体または薬剤が活性化合物と適合しない場合を除いて、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用が想定される。
【0143】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容できる酸化防止剤、例えば(1)水溶性酸化防止剤(アスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど);(2)油溶性酸化防止剤(パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど);および(3)金属キレート剤(クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸など)も含み得る。
【0144】
本発明の医薬組成物は、組成物中に糖類、ポリアルコール(マンニトール、ソルビトール、グリセロールなど)または塩化ナトリウムなどの等張剤も含み得る。
【0145】
本発明の医薬組成物は、医薬組成物の保存可能期間または有効性を向上させ得る、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、防腐剤または緩衝液などの、選択された投与経路に適切な1つまたは複数の補助剤も含有し得る。本発明の化合物は、インプラント、経皮パッチ、およびマイクロカプセル化送達システムを含む、制御放出製剤などの速放性から化合物を保護する担体とともに調製され得る。このような担体は、ゼラチン、モノステアリン酸グリセリル、ジステアリン酸グリセリル、生分解性、生体適合性ポリマー(エチレン酢酸ビニル、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸など)を単独でまたはワックスまたは当該技術分野において周知の他の材料とともに含み得る。このような製剤の調製のための方法は、一般に、当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems,J.R.Robinson,ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,1978を参照されたい。
【0146】
一実施形態において、本発明の化合物は、インビボでの適切な分配を確実にするように製剤化され得る。非経口投与用の薬学的に許容できる担体は、滅菌注射用溶液または分散体の即時調製用の滅菌水溶液または分散体および滅菌粉末を含む。薬学的に活性な物質のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当該技術分野において公知である。従来の媒体または薬剤が活性化合物と適合しない場合を除いて、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用が想定される。補助的な活性化合物も、組成物に組み込まれ得る。
【0147】
注射用の医薬組成物は、典型的に、製造および貯蔵の条件下で、滅菌性かつ安定性でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、または高い薬剤濃度に好適な他の規則構造として製剤化され得る。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびそれらの好適な混合物、植物油(オリーブ油など)、および注射可能な有機酸エステル(オレイン酸エチルなど)を含有する、水性または非水性溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性が、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散体の場合、所要の粒度の維持によって、および界面活性剤の使用によって維持され得る。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば、糖類、ポリアルコール(グリセロール、マンニトール、ソルビトールなど)、または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射用組成物の持続的吸収が、抗体の吸収を遅らせる物質、例えば、一ステアリン酸塩およびゼラチンを組成物中に含むことによってもたらされ得る。滅菌注射用溶液は、例えば上に列挙されるような成分の1つまたは組合せを含む適切な溶媒中に所要量の活性化合物を組み込むこと、必要に応じて、その後の滅菌精密ろ過によって調製され得る。一般に、分散体は、塩基性分散媒および例えば上に列挙される成分からの所要の他の成分を含む滅菌ビヒクル中に活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法の例は、予め滅菌ろ過されたそれらの溶液から活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を得る真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0148】
滅菌注射用溶液は、上に列挙されるような成分の1つまたは組合せを含む適切な溶媒中に所要量の活性化合物を組み込むこと、必要に応じて、その後の滅菌精密ろ過によって調製され得る。一般に、分散体は、塩基性分散媒および上に列挙される成分からの所要の他の成分を含む滅菌ビヒクル中に活性化合物を組み込むことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法の例は、予め滅菌ろ過されたそれらの溶液から活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を得る真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0149】
治療の上記の方法および本明細書に記載される使用における投与計画は、最適な望ましい反応(例えば、治療反応)を提供するように調整される。例えば、単回ボーラスが投与されてもよく、いくつかの分割量が、時間をかけて投与されてもよく、または用量が、治療状況の要件によって示されるように比例的に減少または増加されてもよい。非経口組成物は、投与のしやすさおよび投与の均一性のために単位剤形で製剤化され得る。本明細書において使用される際の単位剤形は、治療される対象のための統一された投与量として適した物理的に別個の単位を指し;各単位は、所要の医薬担体に関連して所望の治療効果を生じるように計算された所定の量の活性化合物を含有する。本発明の単位剤形の仕様は、(a)活性化合物の独自の特性および得られる具体的な治療効果、ならびに(b)個体における敏感性(sensitivity)の治療のためのこのような活性化合物の配合の技術分野に固有の制限に左右され、それらに直接依存する。
【0150】
抗α-シヌクレイン抗体の有効投与量および投与計画は、治療される疾患または病態に応じて決まり、当業者によって決定され得る。いずれの日も所定の投与量が投与され、投与量は、約0.01~約10mg/kg、より通常は約0.01~約5mg/kg宿主体重の範囲であり得る。例えば、投与量は、1mg/kg体重または10mg/kg体重または1~10mg/kg体重の範囲内であり得る。したがって、例示的な投与量としては、約0.1~約10mg/kg/体重、約0.1~約5mg/kg/体重、約0.1~約2mg/kg/体重、約0.1~約1mg/kg/体重、例えば約0.15mg/kg/体重、約0.2mg/kg/体重、約0.5mg/kg/体重、約1mg/kg/体重、約1.5mg/kg/体重、約2mg/kg/体重、約5mg/kg/体重、または約10mg/kg/体重が挙げられる。
【0151】
当該技術分野において通常の技能を有する医師は、必要とされる医薬組成物の有効量を容易に決定および処方することができる。例えば、医師は、医薬組成物に用いられる抗α-シヌクレイン抗体の用量を、所望の治療効果を得るために必要とされるより少ないレベルから開始し、所望の効果が得られるまで投与量を徐々に増加し得る。一般に、本発明の組成物の好適な1日用量は、治療効果を生じるのに有効な最低用量である化合物の量であろう。このような有効用量は、一般に、上述される要因に応じて決まる。投与は、例えば静脈内、筋肉内、腹腔内、または皮下投与であり得る。必要に応じて、医薬組成物の有効1日用量は、任意選択的に単位剤形で、1日を通して適切な間隔で、別々に投与される2回、3回、4回、5回、6回またはそれ以上の分割用量として投与され得る。本発明の化合物は、単独で投与されることが可能であるが、上述されるように医薬組成物として化合物を投与するのが好ましい。本発明の標識抗体は、疾患または障害を検出、診断、または監視するために、診断目的で使用され得る。本発明は、限定はされないが、アルツハイマー病を含む、神経変性または認知疾患または障害の検出または診断を提供し、(a)α-シヌクレインに特異的に結合する1つまたは複数の抗体を用いて、対象の細胞または組織試料内のピログルタミル化Aβフラグメントの存在を測定する工程と;(b)抗原のレベルを、対照レベル、例えば正常な組織試料におけるレベルと比較し、それによって、抗原の対照レベルと比較した、抗原の測定レベルの増加が、疾患または障害を示すか、または疾患または障害の重症度を示す工程とを含む。
【0152】
本発明の抗体は、当該技術分野において周知の免疫組織化学法を用いて、生物学的試料内のα-シヌクレインモノマー、オリゴマー、線維性形態またはα-シヌクレインのフラグメントを測定するのに使用され得る。タンパク質を検出するのに有用な他の抗体ベースの方法としては、酵素結合免疫測定法(ELISA)、放射免疫測定法(RIA)およびメソスケールディスカバリープラットフォーム(mesoscale discovery platform)ベースのアッセイ(MSD)などの免疫測定法が挙げられる。好適な抗体標識が、このようなキットおよび方法に使用され得、当該技術分野において公知の標識としては、酵素標識(アルカリホスファターゼおよびグルコースオキシダーゼなど);放射性同位体標識(ヨウ素(125I、131I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(H)、インジウム(121In)、およびテクネチウム(99mTc)など);および発光標識(ルミノールおよびルシフェラーゼなど);および蛍光標識(フルオレセインおよびローダミンなど)が挙げられる。
【0153】
標識抗α-シヌクレイン抗体またはそれらのα-シヌクレイン結合フラグメントの存在は、診断目的で、インビボで検出され得る。一実施形態において、診断は、a)有効量のこのような標識分子を対象に投与する工程;b)投与後、所定の時間間隔にわたって待機して、標識分子を、Aβ堆積の部位(もしあれば)で濃縮させ、非結合標識分子が、バックグラウンドレベルになるまで除去されるのを可能にする工程;c)バックグラウンドレベルを決定する工程;およびd)バックグラウンドレベルを超える標識分子の検出が、対象が疾患または障害に罹患していることを示すか、または疾患または障害の重症度を示すように、対象中の標識分子を検出する工程を含む。このような実施形態によれば、分子は、当業者に公知の特定のイメージングシステムを用いた検出に好適なイメージング部分で標識される。バックグラウンドレベルは、検出された標識抗体の量を、特定のイメージングシステムのために予め決定された標準値と比較することを含む、当該技術分野において公知の様々な方法によって決定され得る。本発明の診断法に使用され得る方法およびシステムとしては、限定はされないが、コンピュータ断層撮影法(CT)、ポジトロン放出型断層撮影法(PET)などの全身スキャン、磁気共鳴画像法(MRI)、および超音波検査法が挙げられる。
【0154】
さらなる態様において、本発明は、医薬に使用するための、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0155】
さらなる態様において、本発明は、シヌクレイノパチーを治療、診断またはイメージングするのに使用するための、本発明の抗体またはその抗原結合フラグメントに関する。
【0156】
一実施形態において、モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメントは、パーキンソン病、特発性パーキンソン病、びまん性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病、純粋自律神経不全症または多系統萎縮症を治療するのに使用するためのものである。
【0157】
さらなる態様において、本発明は、シヌクレイノパチーを治療、診断またはイメージングするための薬剤の製造における、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメントの使用に関する。
【0158】
さらなる態様において、本発明は、有効投与量の本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメントを投与することを含む、パーキンソン病または他のシヌクレイノパチーの治療、診断またはイメージングに関する。
【0159】
好ましくは、本発明のそれらの態様の使用および方法において、治療は、長期であり、好ましくは、少なくとも2週間、例えば少なくとも1ヶ月間、6ヶ月間、1年間またはそれ以上にわたる。
【0160】
さらなる態様において、本発明は、本発明の抗体、またはその抗原結合フラグメントを含むキットを提供する。
【0161】
【0162】
【0163】
本発明の実施形態
本文および実施例から明らかであろうように、本発明はさらに、以下の実施形態に関する。
【0164】
実施形態
1.α-シヌクレインにおけるアミノ酸126~140(配列番号2)内のエピトープに特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0165】
2.前記エピトープへの結合について、抗体m2E6、ch2E6、2E6-HLD1、2E6-HLD2または2E6-HLD3、7A10、5A1、9D7、9G11、7C4、L3、8D9、9C12または6B6のいずれかと競合する、実施形態1に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0166】
3.抗体が、無傷の抗体を含むかまたはそれからなる、実施形態1または2に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0167】
4.Fvフラグメント(例えば一本鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv)、Fab様フラグメント(例えばFabフラグメント、Fab’フラグメントおよびF(ab)フラグメント)およびドメイン抗体(例えば単一のV可変領域またはV可変領域)からなる群から選択される抗原結合フラグメントを含むかまたはそれからなる、実施形態1または2に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0168】
5.モノクローナル抗体が、サブタイプIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4の抗体からなる群から選択される、先行する実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
【0169】
6.抗体または抗原結合フラグメントが、以下の特性:
・0.5~10nM、例えば1~5nMまたは1~2nMの、α-シヌクレインに対する結合親和性(KD);
・神経細胞内のα-シヌクレイン原線維の蓄積を阻害する能力;
・細胞から細胞へのα-シヌクレイン原線維の移動を阻害する能力;
・α-シヌクレインの細胞内シーディングを阻害する能力;
・F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障害を改善する能力;
・インビボ微小透析によって測定した際のマウス海馬におけるα-シヌクレインのレベルを減少させる能力;
・慢性的に投与されるときの、パーキンソン病のラットモデルにおける、視床下核(STN)内の病理学的な不規則なおよびバーストの発火パターンを正常化する能力;および/または
・慢性的に投与されるときの、トランスジェニックα-シヌクレインマウスの海馬中のPPFの障害の改善能力。
【0170】
7.ヒトまたはヒト化抗体である、先行する実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0171】
8.以下のCDR:
・配列番号3または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号5または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0172】
9.配列番号3、4および5のCDRを含む軽鎖可変領域を含む、実施形態8に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0173】
10.以下のCDR:
・配列番号6または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号7または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号8または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0174】
11.配列番号6、7および8のCDRを含む重鎖可変領域を含む、実施形態10に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0175】
12.配列番号19のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、実施形態8または9に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0176】
13.配列番号20のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態10または11に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0177】
14.配列番号19のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号20のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態12および13に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0178】
15.配列番号21のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、実施形態8または9に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0179】
16.配列番号22のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態10または11に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0180】
17.配列番号21のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号22のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態15および16に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0181】
18.配列番号23のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、実施形態8または9に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0182】
19.配列番号24のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態10または11に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0183】
20.配列番号23のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号24のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態18および19に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0184】
21.配列番号25のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、実施形態8または9に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0185】
22.配列番号26のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態10または11に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0186】
23.配列番号25のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号26のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態21および22に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0187】
24.配列番号27のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、実施形態8または9に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0188】
25.配列番号28のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態10または11に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0189】
26.配列番号27のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号28のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態24および25に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0190】
27.配列番号45のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、実施形態8または9に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0191】
28.配列番号46のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態10または11に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0192】
29.配列番号45のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号46のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態27および28に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0193】
30.以下のCDR:
・配列番号9または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号5または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0194】
31.配列番号9、4および5のCDRを含む軽鎖可変領域を含む、実施形態30に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0195】
32.以下のCDR:
・配列番号12または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号7または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号8または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含む、実施形態30および31のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0196】
33.配列番号12、7および8のCDRを含む重鎖可変領域を含む、実施形態32に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0197】
34.配列番号35のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、実施形態30または31に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0198】
35.配列番号36のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態32または33に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0199】
36.配列番号35のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号36のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態34および35に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0200】
37.以下のCDR:
・配列番号10または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号5または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0201】
38.配列番号10、4および5のCDRを含む軽鎖可変領域を含む、実施形態37に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0202】
39.以下のCDR:
・配列番号6または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号7または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号18または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含む、先行する実施形態37または38に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0203】
40.配列番号6、7および18のCDRを含む重鎖可変領域を含む、実施形態39に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0204】
41.配列番号39のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、実施形態37または38に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0205】
42.配列番号40のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態39または40に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0206】
43.配列番号39のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号40のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態41および42に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0207】
44.配列番号41のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、実施形態37または38に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0208】
45.配列番号42のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態39および40に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0209】
46.配列番号41のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号42のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態44および45に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0210】
47.以下のCDR:
・配列番号3または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号11または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0211】
48.配列番号3、4および11のCDRを含む軽鎖可変領域を含む、実施形態47に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0212】
49.以下のCDR:
・配列番号6または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号7または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号8または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含む、先行する実施形態47または49に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0213】
50.配列番号6、7および8のCDRを含む重鎖可変領域を含む、実施形態49に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0214】
51.配列番号37のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、実施形態47または48に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0215】
52.配列番号38のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態49または50に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0216】
53.配列番号37のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号38のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態51および52に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0217】
54.以下のCDR:
・配列番号3または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号5または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0218】
55.配列番号3、4および5のCDRを含む軽鎖可変領域を含む、実施形態54に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0219】
56.以下のCDR:
・配列番号6または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号13または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号16または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含む、先行する実施形態54または55に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0220】
57.配列番号6、13および16のCDRを含む重鎖可変領域を含む、実施形態56に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0221】
58.配列番号29のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、実施形態54または55に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0222】
59.配列番号30のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態56または57に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0223】
60.配列番号29のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号30のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態58および59に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0224】
61.以下のCDR:
・配列番号3または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号5または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0225】
62.配列番号3、4および5のCDRを含む軽鎖可変領域を含む、実施形態61に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0226】
63.以下のCDR:
・配列番号6または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号14または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号8または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含む、先行する実施形態61または62に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0227】
64.配列番号6、14および8のCDRを含む重鎖可変領域を含む、実施形態63に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0228】
65.配列番号33のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、実施形態61または62に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0229】
66.配列番号34のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態63または64に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0230】
67.配列番号33のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号34のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態65および66に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0231】
68.以下のCDR:
・配列番号3または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号5または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0232】
69.配列番号3、4および5のCDRを含む軽鎖可変領域を含む、実施形態68に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0233】
70.以下のCDR:
・配列番号6または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号15または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号8または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含む、先行する実施形態68または69に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0234】
71.配列番号6、15および8のCDRを含む重鎖可変領域を含む、実施形態70に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0235】
72.配列番号43のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、実施形態68または69に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0236】
73.配列番号44のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態70または71に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0237】
74.配列番号43のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号44のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態72および73のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0238】
75.以下のCDR:
・配列番号3または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号5または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0239】
76.配列番号3、4および5のCDRを含む軽鎖可変領域を含む、実施形態75に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0240】
77.以下のCDR:
・配列番号6または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号7または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号17または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含む、先行する実施形態75または76に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0241】
78.配列番号6、7および17のCDRを含む重鎖可変領域を含む、実施形態77に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0242】
79.配列番号31のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、実施形態75または76に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0243】
80.配列番号32のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態77または78に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0244】
81.配列番号31のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号32のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、実施形態79または80に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0245】
82.Fc領域を含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0246】
83.物質の生体内半減期を増加させるための部分をさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0247】
84.生体内半減期を増加させるための部分が、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒト血清アルブミン、グリコシル化基、脂肪酸およびデキストランからなる群から選択される、実施形態83に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0248】
85.抗体ポリペプチドが、検出可能な部分をさらに含む、先行する実施形態のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0249】
86.検出可能な部分が、蛍光標識、化学発光標識、常磁性標識、放射性同位体標識または酵素標識である、実施形態85に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0250】
87.検出可能な部分が、放射性同位体を含むかまたはそれからなる、実施形態85または86に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0251】
88.放射性同位体が、99mTc、111In、67Ga、68Ga、72As,89Zr、123Iおよび201Tlからなる群から選択される、実施形態87に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0252】
89.検出可能な部分が、常磁性同位体を含むかまたはそれからなる、実施形態87に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0253】
90.常磁性同位体が、157Gd、55Mn、162Dy、52Crおよび56Feからなる群から選択される、実施形態89に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0254】
91.検出可能な部分が、SPECT、PET、MRI、光学または超音波イメージングなどのイメージング技術によって検出可能である、実施形態85~90のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0255】
92.検出可能な部分が、結合部分を介して、間接的に抗体またはその抗原結合フラグメントに結合される、実施形態85~91のいずれかに記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0256】
93.結合部分が、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10,四酢酸(DOTA)の誘導体、デフェロキサミン(DFO)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)の誘導体、S-2-(4-イソチオシアナトベンジル)-1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)の誘導体および1,4,8,11-テトラアザシクロドデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)の誘導体からなる群から選択される、実施形態92に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0257】
94.先行する実施形態のいずれか1つに記載の抗体またはその抗原結合フラグメントまたはその成分ポリペプチド鎖をコードする単離核酸分子。
【0258】
95.分子がcDNA分子である、実施形態94に記載の核酸分子。
【0259】
96.抗体重鎖またはその可変領域をコードする、実施形態94または95に記載の核酸分子。
【0260】
97.抗体軽鎖またはその可変領域をコードする、実施形態94~96のいずれか1つに記載の核酸分子。
【0261】
98.実施形態94~97のいずれか1つに記載の核酸分子を含むベクター。
【0262】
99.実施形態94~97のいずれか1つに記載の核酸分子または実施形態98に記載のベクターを含む組み換え宿主細胞。
【0263】
100.実施形態1~63のいずれか1つに記載の抗体または抗原結合フラグメントを産生するための方法であって、コードされた抗体またはその抗原結合フラグメントの発現を可能にする条件下で、実施形態81に記載の宿主細胞を培養する工程を含む方法。
【0264】
101.実施形態1~81のいずれか1つに記載のモノクローナル抗体または抗原結合フラグメントと、薬学的に許容できる担体とを含む医薬組成物。
【0265】
102.医薬に使用するための、実施形態1~81に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0266】
103.シヌクレイノパチーを治療、診断またはイメージングするのに使用するための、実施形態1~81に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0267】
104.パーキンソン病(特発性パーキンソン病を含む)、びまん性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病、純粋自律神経不全症および多系統萎縮症を治療するのに使用するための、実施形態103に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0268】
105.シヌクレイノパチーを治療、診断またはイメージングするための薬剤の製造における、実施形態1~81に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの使用。
【0269】
106.パーキンソン病(特発性パーキンソン病を含む)、びまん性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病、純粋自律神経不全症、多系統萎縮症、ならびに自身の遺伝子プロファイルおよび/または将来PDを発症させる可能性が高い非PD中核症状に基づいてPDを発症するリスクのある人々を治療するための薬剤の製造における、実施形態105に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの使用。
【0270】
107.対象におけるシヌクレイノパチーを治療、診断またはイメージングする方法であって、実施形態101に記載の医薬組成物を、有効量で前記対象に投与する工程を含む方法。
【0271】
108.パーキンソン病(特発性パーキンソン病を含む)、びまん性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病、純粋自律神経不全症および多系統萎縮症、ならびに自身の遺伝子プロファイルおよび/または将来PDを発症させる可能性が高い非PD中核症状に基づいてPDを発症するリスクのある人々を治療するための、実施形態103に記載の使用のための抗体、またはその抗原結合フラグメント、または実施形態105に記載の使用、または実施形態107に記載の方法。
【0272】
109.治療が長期である、実施形態103、105または107に記載の使用のための抗体、またはその抗原結合フラグメント;または使用;または方法。
【0273】
110.長期治療が、少なくとも2週間、例えば少なくとも1ヶ月間、6ヶ月間、1年間またはそれ以上にわたる、実施形態109に記載の使用のための抗体、またはその抗原結合フラグメント;または使用;または方法。
【0274】
111.対象がヒトである、実施形態102~110のいずれか1つに記載の使用のための抗体、またはその抗原結合フラグメント;または使用;または方法。
【0275】
112.医薬に使用するための、実施形態1~81に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを含むキット。
【0276】
113.対象の脳または他の臓器または体液中の前記α-シヌクレインの存在または量を検出または測定するのに使用するための、実施形態85~93に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0277】
114.前記検出または測定が、前記α-シヌクレインに結合された前記抗シヌクレイン抗体のインビボイメージングを含む、実施形態113に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【0278】
115.前記検出または測定が、前記α-シヌクレインに結合された前記抗シヌクレイン抗体のエクスビボイメージングを含む、実施形態85~93に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
【実施例
【0279】
実施例1:抗体の発見
A.免疫化/ハイブリドーマスクリーニング
α-シヌクレインに対するモノクローナル抗体を、例えば反応性アルデヒドで架橋された様々なシヌクレイン凝集体でマウスを免疫することによって生成した。第1の抗原を、Rpeptide(4241 Mars Hill Road,Bogart,GA 30622,USA)製の組み換え凍結乾燥α-シヌクレインで作製した。タンパク質をPBSに溶解させて、70uMのα-シヌクレインの溶液(1mg/ml)を得ることによって、それを作製した。溶液を、37℃で18時間インキュベートし、100ulのアリコート中で凍結させた。70マイクロMの組み換えα-シヌクレインを、20mMのトリス(pH=7.4)、0.15MのNaClに溶解させることによって、組み換えα-シヌクレイン(Rpeptide)から、第2の抗原を、同様に作製した。反応性アルデヒドONE(4-オキソ-2-ノネナール、Cayman Chemicals(Ann Arbor,MI)製のCat # 10185)を、20:1のモル比で加えて、α-シヌクレインのオリゴマーを共有結合的に架橋した。溶液を、(振とうなしで)37℃で18時間インキュベートした。未反応のONEを、Vivaspin500スピンカラム(10kDaのMWCO)によって除去し、試料を、20mMのトリス、pH7.4、0.15MのNaClに対して透析し、アリコート中で凍結させた。第3の抗原は、凍結乾燥粉末(Rpeptide製の原材料)として送られた組み換えα-シヌクレインフラグメントアミノ酸1~60(Rpeptide)であった。簡潔に述べると、3匹の雌マウス(4~7週齢)を免疫し、最大で3回追加免疫した。尾採血を行い、抗原に対する酵素結合免疫吸着法(ELISA)によって抗シヌクレイン抗体についてスクリーニングした。力価が、ELISAにおいてベースラインの3倍のOD読み取りを達成することが血清希釈によって定義される。対照に対して1:50,000より高い力価を示すマウスを、融合のために選択した。採取された脾細胞を、SP2/0マウス骨髄腫細胞に融合し、希釈し、単細胞融合から平板培養した。上清を、融合の14日後に採取し、抗体産生についてスクリーニングした。シヌクレインELISAを用いて、50の陽性クローンを、約1000ウェルから回収した。Clonotyping System/APキットを、免疫グロブリンアイソタイピング(Southern Biotechnology,Birmingham,AL)に使用した。50の抗α-シヌクレイン上清を、実施例6(図7C)に記載されるように、SKMEL5細胞アッセイにおいてatto標識α-シヌクレイン凝集体の蓄積の減少についてスクリーニングした。市販の抗体LB509が、陽性対照として含まれていた。50の抗血清のうち、4つのみの抗血清が、α-シヌクレインの細胞内蓄積を減少させたことが分かり、これらの抗体を、クローニングのために取った。次に、これらの4つの抗体を、アッセイにおいて用量反応で試験した。最も高い効果を有する抗体、2E6を、PD関連モデルにおいてさらなる特性評価のために選択した。
【0280】
B.シヌクレインELISA
抗原特異的ELISAアッセイを用いて、抗体陽性融合を結合について分析した。Corning 96ウェル高結合プレートを、100ngの凝集シヌクレインで被覆した。ウェルを、室温(RT)で1時間(hr)にわたってPBS中5%のミルクを用いてブロックした。プレートを、PBS+1%のTween 20を用いて3回洗浄した。100マイクロリットルのハイブリドーマ上清を各ウェルに加え、プレートを室温でインキュベートした。その後、HRP結合ヤギ抗マウスIgG(重鎖および軽鎖特異的またはγ鎖特異的)二次を各ウェルに加えて、結合された抗シヌクレイン抗体の存在を検出した。定量基質のために、1つの成分TMBを加え、プレートをOD620で測定した。
【0281】
C.抗体HCおよびLC可変領域のDNA配列の決定
4つの抗αシヌクレイン陽性ハイブリドーマを選択し、mRNAを細胞ペレットから抽出した。各mRNA prepからのcDNAを、オリゴ(dT)プライマーを用いて、逆転写酵素によって生成した。その後、可変領域プライマーを用いて、PCR反応を行って、HCおよびLC遺伝子のVHおよびVL領域の両方を増幅した。増幅されたDNAを、アガロースゲル上に分離させ、VHおよびVL産物の両方を単離し、ゲルから精製し、pCR2.1(Invitrogen)へとクローン化し、TOP10細胞に形質転換した。最小で6つの陽性コロニーを選択し、DNAシーケンシングによって分析して、VHおよびVL領域の配列を決定した。
【0282】
実施例2:抗体工学
モノクローナル抗体の発現
ハイブリドーマクローンの培養物を増殖させ、タンパク質Gクロマトグラフィーを用いて、マウスモノクローナル抗体を、培養された上清から精製した。HEK293細胞への重鎖および軽鎖遺伝子の一過性共トランスフェクション、培養物の増殖、上清の採取およびタンパク質クロマトグラフィーによる精製を用いて、組み換えマウス、ヒトおよびキメラ抗体を産生した。グラム量の抗体が繰り返し必要性とされる場合、安定した細胞株をCHO細胞中で生成した。これらの安定した細胞株を、必要に応じて増殖させることができ、抗体精製を前述のとおりに行った。
【0283】
組み換え抗体のクローニング
組み換えモノクローナル抗体を、重鎖および軽鎖遺伝子(Geneart A/G)の遺伝子合成によって生成した。その後、合成された遺伝子を、哺乳動物細胞培養物中での発現のために標準的な発現ベクター(例えばpcDNA3.1)へとクローン化した。
【0284】
ヒト化
m2E6のヒト化を、構造ベースのCDRグラフトによって行った。2E6 VLおよびVHドメインのアミノ酸配列を、PDBおよびIMGTデータベース中で見られる全てのヒト抗体VLおよびVHフレームワークアミノ酸配列に対する相同性についてスクリーニングした。構造モデリングを、PDBデータベースからの20SL抗体を用いて、m2E6 Fv領域について行った。20SLアミノ酸配列は、2E6 VHおよびVLドメインのそれぞれに対して82.7%および83.2%相同である。重要なことには、20SLの構造を、2.1Åの解像度で決定した。20SLを用いた2E6ヒト化フレームワークの構造アラインメントは、立体障害または立体構造力(steric force)によって折り畳みまたは局所構造に潜在的に影響を与え得る、フレームワーク領域中の重要な残基の決定を可能にした。ヒト化抗体の理論的な抗体構造モデリングを用いて、結合特異性および親和性を維持するために、元のマウスアミノ酸として特異的な残基を2E6のヒト化形態に維持することの潜在的な重要性について示唆した。この構造モデリングを用いて、ヒト化2E6の活性を最適化した。
【0285】
2E6 VH領域のヒト化を、VH CDRを、ヒト生殖細胞系列遺伝子、IGHV1-4601(69%の相動性)のフレームワーク上にグラフトすることによって行った。マウス2E6と、選択されたヒトフレームワーク領域との間に23アミノ酸の相違がある。構造モデリングにより、ヒト残基への変化が2E6の活性に悪影響を与える可能性を有していた7つのアミノ酸位置を同定した。これらの残基を、元のマウスアミノ酸に復帰突然変異させた。3つの異なる形態のヒト化重鎖を生成した。ヒト化HLD-1は、7つ全ての復帰突然変異、M37V、I48M、A68V、L70M、V72R、K74T、A79Vを含有し、HLD-2は、I48M、A68V、L70M、V72R、K74T、A79Vを含有し、HLD-3は、M37V、I48M、L70M、V72R、K74T、A79Vを含有する。
【0286】
2E6 VL領域のヒト化を、VL CDRを、ヒト生殖細胞系列遺伝子、IGKV3-1101(64%の相動性)のフレームワーク上にグラフトすることによって行った。マウス2E6と、選択されたヒトフレームワーク領域との間に26アミノ酸の相違がある。構造モデリングにより、ヒト残基への変化が2E6の活性に悪影響を与える可能性を有していた4つのアミノ酸位置、R45L、W46L、V57I、Y70Fを同定した。HLD-1、HLD-2およびHLD-3について、4つ全ての残基を、元のマウスアミノ酸に復帰突然変異させた。
【0287】
HLD-1、HLD-2およびHLD-3を、HEK 293細胞内で一過性に発現させた。抗体を、培養された上清から精製し、その後、シヌクレインリガンドフォーマットを用いて、SPR(Biacore 3000)によって、シヌクレインへの結合について分析した(表5)。
【0288】
【表5】
【0289】
コドン縮重PCRプライマーによる軽鎖CDR3中のランダム化突然変異、および同様に、コドン縮重PCRプライマーによる重鎖CDR3中のランダム化突然変異によって、およびエラープローンPCRによるインビトロ進化を用いて、HLD1の親和性成熟を行った。抗体を、培養された上清から精製し、その後、CM5チップ上に固定された抗ヒトIgG Abを用いて捕捉されたIgGを用いて、SPR(Biacore 3000)によって、シヌクレインへの結合について分析した(表6)。
【0290】
【表6】
【0291】
1回目の親和性成熟の後、本発明者らは、4つの突然変異(A、B、C、D)を構築した:A)重鎖CDR2(KYNVNFKTをKYNVNIKTに突然変異させる)および重鎖CDR3(LGHYGNLYAMDYをLGHYGNLYAKDYに突然変異させる)中の2つの突然変異を組み合わせた;B)軽鎖CDR1突然変異(SASSSVSYMHをSASSSVSYIHに突然変異させる)をL3-11軽鎖に組み込んだ;C)軽鎖フレームワーク突然変異(CDR2の直ぐ上流で、PRRWIYをPRRLIYに突然変異させる)をL3-11軽鎖に組み込んだ;およびD)軽鎖CDR1突然変異(SASSSVSYMHをSASSSVSYIHに突然変異させる)および軽鎖フレームワーク突然変異(PRRWIYをPRRLIYに突然変異させる)をL3-11軽鎖に組み込んだ。Biacoreデータおよび抗体配列に基づいて、本発明者らは、様々な組合せで、軽鎖および重鎖の共発現を試験した:
1.L3-11軽鎖+9C12重鎖
2.L3-11軽鎖+8D9重鎖
3.7A10軽鎖+9C12重鎖
4.L3-11軽鎖+A
5.7A10軽鎖+A
9.B+9C12重鎖
10.C+9C12重鎖
11.D+9C12重鎖
12.B+8D9重鎖
13.C+8D9重鎖
14.D+8D9重鎖
15.B+重鎖
16.C+重鎖
17.D+重鎖
抗体を、培養された上清から精製し、その後、CM5チップ上に固定された抗ヒトIgG Abを用いて捕捉されたIgGを用いて、SPR(Biacore 3000)によって、シヌクレインへの結合について分析した(表7)。
【0292】
【表7】
【0293】
実施例3:エピトープマッピング
α-シヌクレインに対する抗体のエピトープマッピングを、Pepscan(Pepscan Zuidersluisweg 2 8243 RC Lelystad,the Netherlands)において一連の重複直鎖ペプチドを用いて行った。合成された20量体ペプチドのそれぞれに対する抗体の結合を、Pepscanに基づくELISAにおいて試験した。α-シヌクレインの全コード配列をカバーする直鎖ペプチドアレイ、ならびに酸化メチオニンまたはニトロシル化チロシンを含む全てのペプチドを、(4℃で一晩)一次抗体溶液とともにインキュベートした。洗浄後、ペプチドアレイを、25℃で1時間にわたって1/1000希釈率の抗体ペルオキシダーゼコンジュゲート(SBA,cat.nr.2010-05)とともにインキュベートした。洗浄後、ペルオキシダーゼ基質2,2’-アジノ-ジ-3-エチルベンゾチアゾリンスルホネート(ABTS)および2μl/mlの3パーセントのH2O2を加えた。1時間後、発色を測定した。発色を、電荷結合素子(CCD)-カメラおよび画像処理システムを用いて定量化した。データ処理のために、標準的な96ウェルプレートELISAリーダーと同様に、0~3000mAUのCCDカメラ範囲からの値を得た。結果を定量化し、Peplabデータベースに保存した。時々、ウェルは、偽陽性値をもたらす気泡を含み、カードを手動で調べて、気泡によって生じる値を0として採点する。
【0294】
実施例4:レビー小体認知症に罹患した患者および健常対照に由来する帯状皮質のヒト脳ホモジネートからのα-シヌクレインの免疫沈降
レビー小体認知症患者(DLB)および月齢をマッチさせた健常対照(CTR)に由来する脳ホモジネート中のα-シヌクレインおよびリン酸化(Ser129)α-シヌクレインレベル。
【0295】
レビー小体認知症患者(DLB)に由来する5つの脳からの帯状皮質試料および月齢をマッチさせた健常対照(CTR)に由来する5つの脳試料を使用した。約50~100mgの組織ブロックを、Precellys CK-14組織ホモジナイザーを用いてCelLytic(商標)Mの細胞溶解緩衝液(Sigma)中で均質化した後、30分のスピン(3000g)を行って、S1およびP1画分を得た。上清(S1)画分は、全洗浄剤可溶性α-シヌクレインを含有し、ペレット(P1)画分は、洗浄剤不溶性α-シヌクレイン(レビー小体)を含有する。S1画分のさらなる遠心分離(30分 20,000g)(P2)は、α-シヌクレインの洗浄剤可溶性凝集形態を含有し、186,000gのスピン(P3)は、α-シヌクレインのより小さい洗浄剤可溶性凝集形態を含有し、残りの上清(S2)は、モノマーα-シヌクレインを含有する。
【0296】
図3は、S1、P1、P2、P3およびS2画分中の、レビー小体認知症(DLB)に罹患した患者に由来する5つの脳ホモジネートおよび5つの月齢をマッチさせた健常対照(CTR)中のα-シヌクレインの含量の相違を示す(「α-syn」および「P-α-syn(S129)」ボックス中の5つのレーンは、5つの異なる患者および5つの対照を表す)。可溶性α-シヌクレインのレベルは、DLBおよびCTRにおいて同様である一方(図3、左側のパネル、S1およびS2中の「α-syn」)、マウスモノクローナル抗ヒトα-シヌクレイン(4B12、Thermo Scientific)で検出した際にDLB(P1画分)中の不溶性α-シヌクレインの量の増加がある。セリン129においてリン酸化された不溶性α-シヌクレインのレベル(図3、右側のパネル「P-α-syn(S129)」は、抗Ser-129-リン酸化モノクローナル抗体(ab51253、abcam)で検出した際にDLB(P1、P2およびP3画分)において増加される。
【0297】
病理学的形態のα-シヌクレインに富む画分からのα-シヌクレインの免疫沈降
α-シヌクレインに結合し、5つ全てのDLB患者からのヒト脳帯状皮質の合わせた画分からの画分S1、P1およびP2からα-シヌクレインをプルダウンする抗体の能力を、免疫沈降によって分析した。免疫沈降のために、2μgの抗体を、磁気Dynabeadsタンパク質G上に固定した後、室温で90分間免疫沈降させた。免疫沈降の収量を、検出抗体、マウスモノクローナル抗ヒトα-シヌクレイン(4B12、Thermo Scientific)を用いて、ウエスタンブロット法によって視覚化した。プルダウンされるα-シヌクレインの量は、マウスm2E6、ヒト化2E6-HLD-1および9E4抗体(配列番号47および48)の間で異なる。また、異なる分子量形態のα-シヌクレインがプルダウンされたことを示すバンドのパターンが、2E6抗体および比較例の抗体9E4の間で異なる(図4)。
【0298】
ヒト脳からのα-シヌクレインの免疫沈降は、m2E6およびヒト化変異体2E6-HLD1-3が、9E4と著しく異なることを示す。2E6およびヒト化変異体は、より低い分子量の、あるいはスプライスまたは切断された形態のα-synを免疫沈降させることができる一方、9E4は免疫沈降させない。さらに、2E6およびヒト化変異体は、P1およびP2画分中の病理学的凝集形態のα-シヌクレインを認識する一方、9E4は認識しない(図4)。
【0299】
実施例5:α-シヌクレイン凝集のインビトロ阻害および予め形成されたα-シヌクレイン原線維の解離
インビトロでのα-シヌクレイン凝集の阻害
α-シヌクレインの、線維集合体、レビー小体およびレビー神経突起(LN)への凝集は、パーキンソン病の主な特徴である。原線維形成は、単峰性の成長プロファイルによって特徴付けられる、複雑な重合プロセスである。チオフラビンT(ThT)方法を用いて、インビトロでのα-シヌクレインの凝集を検出した(Giehm & Otzen,2010,Anal Biochem.15;400(2):270-81.;Giehm et al.2011,Methods;53(3):295-305)。このアッセイにおいて、本発明者らは、様々な比率でα-シヌクレインモノマーとともに共インキュベートしたときの、α-シヌクレイン凝集の減少に対するm2E6の効果を試験した。簡潔に述べると、96ウェルプレートに、α-シヌクレインと、ThTと、抗体との混合物を充填し、Crystal Clearシールテープ(Hampton Research,Aliso Viejo,CA,USA)で密封して、蒸発を回避した。プレートを、Infinite 200蛍光プレートリーダー(Tecan,Mannedorf,Switzerland)またはGenios Pro(Tecan)に入れ、37℃でインキュベートした。撹拌試料を、約50分/時の期間にわたってオービタルまたは線形撹拌(300rpm)しながら振とうした。ThT蛍光を、450nmにおける励起光および485nmにおける発光により測定した。撹拌試料について、ThT発光を、96ウェルプレートにおいて10分間隔で測定した。緩衝液シグナルを、全てのデータから差し引いた。結果は、m2E6が、より高いモル比(抗体:α-シヌクレイン)でほぼ完全にα-シヌクレインの原線維化を阻害したことを示した(図5)。
【0300】
α-シヌクレイン原線維の解離
マウス-α-シヌクレインの予め形成された原線維(Mo-PFF)を、Virginia Lee/Kelvin Luk プロトコルを用いて、モノマーマウスα-シヌクレインから生成した(Luk et al,Science,2012,16;338(6109):949-53)。これらのMo-PFFは、それらの理化学的特性(ウエスタンブロットおよび電子顕微鏡法によって)および生物学的特性(細胞中の取り込みおよび毒性によって)について特徴付けられている。予め形成された原線維(PFF)の調製の重要な工程は、細胞によって取り込むことのできないPFFのより大きい凝集体を解離させるための、例えば細胞中での、注入または使用の直前の超音波処理である。最適な超音波処理プロトコル(強度(intensity/strength)および時間)を決定するために、様々な超音波処理パラダイムを試験した。超音波処理された予め形成された原線維を、24時間にわたって室温で、様々なモル比で、抗体(ab)とともにインキュベートした。全ての試料は、逆染色法および透過電子顕微鏡法による分析の前に、ドライアイス上で後に貯蔵した。1:100、1:20および1:10のab:シヌクレインのモル比で、増加する濃度のm2E6とα-シヌクレインPFFとのインキュベーションによって、残りの微小原線維は、小さく、線形で、単一であった。試験される全ての濃度のabは、微小原線維が、原線維のより大きいネットワークへと再結合しないようにすることができ、おそらく、さらにはそれらをさらに解離させることができた。結果は、増加する濃度のm2E6が、原線維を微小原線維として保つのに増加した効果を示すことを示した(図6)。
【0301】
実施例6:細胞モデルデータ
2E6は、培地においてα-シヌクレイン原線維に結合し、ヒト、神経芽細胞腫および黒色腫、細胞株においてそれらの蓄積を阻害する。
原線維調製の説明
組み換えα-シヌクレインを、rPeptide(カタログ番号S-1001-2)から注文し、製造業者の勧告にしたがって、ダブル蒸留水に溶解させて、20mMのトリス-HCL/100mMのNaCl、pH=7.4中の1mg/mlの溶液を得た。Sigma(#38371)製のAtto488 Protein Labeling Kitを用いることによって、α-シヌクレインをAtto488で蛍光標識した。30%のAtto488で標識されたα-シヌクレインと70%の非標識α-シヌクレインとの混合物を作製し、次に、この混合物を、2日間にわたって撹拌しながら(300rpm)37℃でインキュベートし、次に、3日間停止し、次に、1日撹拌し、次に、1日停止し、次に、4日間撹拌した。その後、原線維を採取し、使用するまで-20℃に保持した。原線維を細胞アッセイに使用する場合、それらを、添加の直前に、ホーンプローブ超音波装置(horn probe sonicator)を用いて、5.50%のサイクルを設定して、5分間で常に超音波処理した。
【0302】
培地中のα-シヌクレイン原線維の免疫沈降
DMEM培地(細胞アッセイにおいて使用される際)に溶解されたα-シヌクレイン原線維に結合し、それをプルダウンする抗体の能力を、免疫沈降によって分析した。2μgの抗体を、磁気Dynabeadsタンパク質G上に固定した後、室温で、90分間で免疫沈降させた。免疫沈降の収量を、検出ab抗ヒトα-シヌクレイン、Ab1904を用いたウエスタンブロット法によって視覚化した。これは、m2E6が、培地からα-シヌクレイン原線維をプルダウンすることができた一方、B12(非反応性ヒトIgG)および5G4(Roboscreen製の抗α-シヌクレイン)はできなかったことを示した(図7A)。
【0303】
SHSY-5Y細胞中の蓄積の抗体に仲介される阻害
SH-SY5Y(ATCC(登録商標)CRL-2266(商標))を、ATCCから注文し、ATCCガイドラインにしたがって培養した。細胞を、40,000個の細胞/ウェルの密度で、コラーゲン被覆プレート上で平板培養した。1日の結合の後、細胞を、培地に直接加えられたα-シヌクレイン原線維および抗体(両方とも10μg/ml)で処理した。次に、細胞を、24時間にわたってインキュベートさせ、その後、それらを洗浄し、溶解させた。Abcam製の抗体1904を用いて、細胞質画分にウエスタンブロットを行った。これは、2E6-HLD1が、細胞内に蓄積された原線維の量を減少させた一方、α-シヌクレインB12に対する親和性を有さない抗体は、減少させなかったことを示した(図7B)。
【0304】
SK-mel5細胞中の蓄積の抗体に仲介される阻害
ヒト黒色腫細胞株SK-mel5(ATCC、HTB-70)を、ATCCガイドラインにしたがって増殖させた。細胞を、Falcon BD 96ウェルプレート中で、ウェル当たり3000個の細胞の密度で平板培養し、一晩、付着させた。Atto488で標識されたα-シヌクレイン原線維を、m2E6抗体(0.01mg/ml)およびα-シヌクレインペプチド113~125または126~140(0.01mg/ml)と一緒に、細胞(0.01mg/ml)に加えた。24時間のインキュベーションの後、細胞を、PBS中で2回洗浄し、4%のパラホルムアルデヒドによって固定した。次に、細胞を、Hoechstで染色し、Cellomics ArrayScanにおいて読み取った。核を、1つのチャネル中で検出し、有効なオブジェクトの数を定義した。Atto488で標識された原線維を、核を取り囲む、したがって細胞の細胞質を表す、予め定義された環で形成された領域において別のチャネル中で検出した。α-シヌクレインスポットを含む細胞のパーセントを定量した。結果は、原線維を与えられない細胞において、スポット含有細胞のごく少ないバックグラウンドがあったに過ぎないことを示す(バックグラウンドは、おそらく自己蛍光によるものであった)(図7C)。原線維が与えられた細胞のみにおいて、細胞の75%が、蓄積された細胞内スポットを有していた。原線維およびm2E6抗体とともに共インキュベートされた細胞において、約30%のみのスポット陽性細胞があった。細胞を、原線維、m2E6および126~140ペプチドとともに共インキュベートしたとき、約60%の陽性細胞があり、したがって、このペプチドは、m2E6の効果を有意に阻害した。113~120ペプチドと、原線維および2E6との共インキュベーションは、m2E6の効果を変化させなかった。ペプチド113~120または126~140のいずれかと一緒の原線維のインキュベーションは、細胞内の原線維の蓄積に影響を与えなかった。したがって、m2E6は、溶液中でα-シヌクレイン原線維に結合し、細胞内のそれらの蓄積を阻害する。この効果は、それがペプチド126~140によって阻害され得るが、113~120によって阻害され得なかったため、特異的である(図7C)。増加する用量の2E6-HLD1-7A10による処理は、スポットを有する細胞のパーセンテージの用量依存的な減少を示した。無関係の対照抗体(B12)で処理された細胞は、効果を示さなかった(図7D)。
【0305】
m2E6は、培地において、哺乳動物が産生した、オリゴマー化されたα-シヌクレインに結合し、一次皮質ニューロン中のその蓄積を阻害する。
DMEM培地に溶解されたα-シヌクレインオリゴマーに結合し、それをプルダウンする抗体の能力を、免疫沈降によって分析した。2μgの抗体を、磁気Dynabeadsタンパク質G上に固定した後、室温で90分間免疫沈降させた。免疫沈降の収量を、検出抗体、抗ヒトαシヌクレインモノクローナル抗体(4B12)(MA1-90346、Pierce)を用いて、ウエスタンブロット法によって視覚化した。これは、2E6変異体の全てが、培地からシヌクレインオリゴマーをプルダウンしたことを示した(図8A)。比較例のm9E4およびh9E4も、オリゴマーをプルダウンしたが、h9E4は、効率がより低いようである(14kDaにおけるはるかに弱いバンド)。別の比較例のα-シヌクレイン抗体(Biogen製の12F4)は、対照抗体B12と大きく異ならない弱いバンドを示したに過ぎなかった(図8A)。
【0306】
皮質領域を解剖し、これらをトリプシン溶液中で均質化することによって、E14胚からマウス一次皮質ニューロンを調製した。次に、細胞を洗浄し、DMEM培地中で再懸濁させ、計数し、ポリ-リジンで予め被覆された96ウェルプレート中で、ウェル当たり60000個の細胞で平板培養した。4時間後、培地を、B27補給物を含むNeurobasalに変更した。2日間の計数の後、シトアラビノシド(cytoarabinoside)を加えて、星状膠細胞の増殖を阻害した。DIV7に、細胞を、25μg/mlの抗体と一緒に、Syn-BAP PFF(DIV=インビトロ培養物中の日数-asyn-BAP PFF=ビオチン受容体ペプチドタグを有するα-シヌクレインの予め形成された原線維)、10μg/mlで処理し、インキュベーションを24時間行った。その後、細胞を洗浄し、100μlの8%のパラホルムアルデヒドの添加によって、ウェル中の100μlの培地に直接固定した。透過化、および透過化された細胞に加えられたBSA(1%)もしくはストレプトアビジン-Atto488(Sigma)によるブロッキングの後、細胞において15G7-抗体(Enzo)および二次FITC標識抗ラット抗体を用いた免疫細胞化学のいずれかによって、細胞内Syn-BAP PFF凝集体の検出を行った(Syn-BAPは、ビオチンタグを有し、したがって、ストレプトアビジンによって検出され得る)。核を、Hoechst-染色によって検出した。染色の定量を、Cellomics ArrayScanによって行った。核を、1つのチャネル中で検出し、有効なオブジェクトの数を定義した。緑色のスポットを、核を取り囲む、したがって細胞の細胞質を表す、予め定義された環で形成された領域において別のチャネル中で検出した。細胞当たりのスポットの平均数を計算した。細胞の例が、図8Bに示される。Syn-BAP PFF凝集体のストレプトアビジン(Strepativin)-Atto488ベースの検出によるいくらかのバックグラウンド染色があったが(非処理の細胞は、細胞当たり平均して1つのスポットを有することが示された)、単独のSyn-BAP PFFで処理された細胞に依然として有意差があった(それらは、細胞当たり約1.8のスポットを有していた)(図8C)。Syn-BAP PFFと、非反応性B12または9E4抗体のいずれかとの共インキュベーションは、細胞内のSyn-BAP PFFの蓄積を変化させなかった一方、m2E6または2E6-HLD1による処理は、蓄積のレベルを、バックグラウンドレベルまで減少させた(図8C)。他の実験では、単独のSyn-BAP PFFで処理された細胞は、細胞当たり約4.5のスポットを示し;同様に、B12または9E4は、これを有意に変化させなかった。m2E6、2E6-HLD2または2E6-HLD3による処理は、蓄積のレベルを有意に減少させた(細胞当たり約3つのスポットまで)(図8D)。
【0307】
ヒト黒色腫細胞株内の細胞から細胞へのα-シヌクレイン原線維の移動の抗体に仲介される阻害
本発明者らの抗体が、細胞から細胞へのα-シヌクレイン原線維の移動にも影響を与えるかどうかを調べるために、本発明者らは、以下のようなアッセイを開発した:ヒト黒色腫細胞株SK-mel5(ATCC、HTB-70)を、ATCCガイドラインにしたがって増殖させた。細胞を、Falcon BD 96ウェルプレート中で、ウェル当たり3000個の細胞の密度で平板培養し、一晩、付着させた。1つのプレート(「フィーダープレート」と命名された)上で、細胞に、24時間にわたって0.01mg/mlの最終濃度で、超音波処理されたAtto488で標識されたα-シヌクレイン原線維を与えた。次に、細胞を、新鮮な培地で2回洗浄し、次に、抗体を、培地中で細胞に加えた。24時間のインキュベーションの後、次に、個々のウェルからの培地を、SK-mel5細胞の新たなプレート(「レシピエントプレート」)に直接移した。次に、「フィーダープレート」を、4%のパラホルムアルデヒドを加えることによって直ぐに固定した一方、「レシピエントプレート」は、さらに24時間放置してから、固定した(培地への直接の8%のパラホルムアルデヒドの添加によって)。両方のプレートを暗所に保持し、Hoechstで染色し、次に、Cellomics ArrayScanで読み取った。核を、1つのチャネル中で検出し、有効なオブジェクトの数を定義した。Atto488で標識された原線維を、核を取り囲む、したがって細胞の細胞質を表す、予め定義された環で形成された領域において別のチャネル中で検出した。細胞を画定する環領域におけるα-シヌクレイン凝集体(スポット)を含有する細胞のパーセントを定量した。
【0308】
「フィーダー」プレート上の細胞によってある程度取り込まれるα-シヌクレイン原線維は、同様に省略され、したがって、馴化培地を介して「レシピエント」プレート上の細胞に移されると考えられる。したがって、本発明者らは、「フィーダー」細胞内のクリアランスプロセスに対する抗体の影響(細胞内影響)および「レシピエント」プレート上の細胞への移動の阻害に対する影響を測定することができる。本発明者らは、かなりの量のα-シヌクレイン原線維が、「フィーダー」プレート上の細胞から、「レシピエント」プレート上の細胞に実際に移されることを示すことができる(「フィーダー」における60%の細胞が陽性-「レシピエント」における37%が陽性)。
【0309】
m2E6は、原線維と比較して、「フィーダー」および「レシピエント」プレートの両方においてα-シヌクレインスポットを有する細胞の数を有意に減少させることが示された(図9)。比較例の抗体1H7(国際公開第2007021255号パンフレット)は、いずれのプレートにも影響を与えなかった。対照抗体(B12)は、同様に、影響を与えなかった。市販の抗体LB509(Abcam)は、「フィーダー」プレート上のα-シヌクレインの細胞内レベルを減少させることができたが、移されたα-シヌクレインの量を有意に減少させなかった(図9)。
【0310】
α-シヌクレインのシーディングの抗体に仲介される阻害
細胞内αシヌクレインのシーディングの抗体に仲介される阻害の効果を示すために、HEK293細胞ベースのシーディングアッセイを設定した。このアッセイにおいて、1日目に、HEK293細胞を、対照(pcDNA)またはα-シヌクレイン(WT、HAタグを有する)cDNA発現プラスミドでトランスフェクトし、6つのウェルプレート中に平板培養する。2日目に、α-シヌクレイン原線維(シード)を、様々な濃度の抗体と混合し、lipofectamineを用いて細胞中にトランスフェクトする。3日目に、細胞をトリプシン処理し、分割し、6つのウェル中で再度平板培養する。4日目に、細胞を採取し、triton緩衝液中で溶解させる。細胞溶解物を超遠心機にかけ、上清を、Tritonまたは可溶性画分として保存する。ペレットを、SDS緩衝液中で再懸濁させ、超遠心機にかけ、上清を、SDS可溶性または不溶性画分として分類する。両方の画分、可溶性および不溶性画分を、SDSゲルにおいて電気泳動させ、全α-シヌクレインおよびリン酸化αシヌクレイン(S129P)を、それぞれ4B12/1904抗体(全ヒトシヌクレイン)およびS129P-asyn抗体(abcam 51253)によって検出する。SDS可溶性画分中のリン酸化αシヌクレイン/βアクチンの比率を用いて、2E6-HLD1ありと2E6-HLD1なしでの、シードの添加に反応して形成される不溶性凝集α-シヌクレインのレベルを計算する。
【0311】
α-シヌクレインプラスミドによるトランスフェクション、続いて、α-シヌクレイン原線維のトランスフェクションは、αシヌクレインの凝集およびリン酸化を促進し、これは、ウエスタンブロットにおいて不溶性画分中のより高い分子量のαシヌクレイン凝集体の存在によって示される。HAタグの存在のため、トランスフェクトされたαシヌクレインは、より速く泳動し、内因性αシヌクレインまたは約17kDで泳動するトランスフェクトされた原線維と区別される。
【0312】
ヒト化形態のm2E6、2E6-HLD1を、αシヌクレイン原線維と混合すると、アイソタイプ対照抗体B12と比較して、αシヌクレイン凝集およびリン酸化を減少させる(図10A)。αシヌクレインリン酸化においてHLD1による用量依存的な阻害がある(図10B)。
【0313】
実施例7:F28-sncaトランスジェニックマウスにおける急性のインビボデータ
インビボでのα-シヌクレイン抗体の急性の電気生理学的効果
高い発現レベルのヒトα-シヌクレインが、F28-sncaトランスジェニックマウスの海馬中に存在する。4~6月齢の雄F28sncaトランスジェニックマウスおよび月齢をマッチさせた対照マウスにおける海馬のCA1領域におけるシナプス伝達および可塑性のインビボでの電気生理学的評価は、i)基底シナプス伝達が、月齢をマッチさせた対照マウスと比較してF28 sncaトランスジェニックマウスにおいて著しく低下し、ii)二発刺激促通が、月齢をマッチさせた対照マウスと比較して、F28 sncaトランスジェニックにおいて著しく高められることを示した(図11)。
【0314】
全ての実験を、実験動物の管理および使用についての欧州共同体理事会指令(European Communities Council Directive)(86/609/EEC)および動物実験を規制するデンマークの法律に準拠して行った。
【0315】
4~6月齢のF28-sncaトランスジェニックマウスおよび月齢をマッチさせた対照雄マウス(Taconic Europe A/S)を、本研究に使用した。マウスを、制御された温度(22±1.5℃)および湿度条件(55~65%)において単一の小屋に収容し、12:12時間の明/暗サイクル(06:00hで照明をオンにする)で飼育した。食物および水は自由に摂取可能であった。
【0316】
動物に、ウレタン(1.2g/kg)の腹腔内(i.p.)注射で麻酔をかけた。次に、マウスを定位フレームに取り付け、マウスの体温を加熱パッドによって37.5℃に調整し、頭蓋骨を露出させた。白金線を、基準として働くように前頭骨に設置し、PaxinosおよびFranklin(Paxinos and Franklin,2001)の図解にしたがって以下の配置で、海馬中への記録および刺激電極の挿入のためにさらなる孔を空けた:記録、ブレグマの1.5~1.7mm後方、正中線の1.0~1.2mm側方、脳の表面の1.4~1.7mm下;刺激、ブレグマの1.8~2.0mm後方、正中線の1.5~1.7mm側方、脳の表面の1.5~1.7mm下。動物を、記録の全期間を通して定位フレームに置いたままにし、それらの麻酔のレベルを定期的に調べた。
【0317】
電場電位(fEPSP)を、30秒ごとのシャファー側枝の電気刺激によってCA1において誘発し、記録電極の深さを、マイナスのfEPSPが単極方形パルスに応答して記録されるまで調整した。誘発されたfEPSPの傾きを、fEPSPの最大振幅の30~70%で測定した。
【0318】
最適なfEPSPが誘発されたら、基底シナプス伝達を、刺激強度と誘発されたfEPSPの傾きとの間の関係(入出力関係)によって評価した。様々な強度の刺激は、0、25、50、75、100、150、200、300、400、および500μAであり、これを低い方から順に連続して加え、各強度で2~3回繰り返す。基底シナプス伝達は、月齢をマッチさせた対照マウスと比較してF28-sncaトランスジェニックマウスにおいて著しく低下したことが分かった(図11aを参照)。
【0319】
シナプス前機構に依存すると考えられる短期シナプス可塑性である二発刺激促通を、F28sncaトランスジェニックマウスおよび月齢をマッチさせた対照マウスにおいてさらに測定した。簡潔に述べると、25~1000msで可変の刺激間間隔(ISI)で一対の刺激をシャファー側枝に加え、第2のfEPSPの傾きを、第1のfEPSPの傾きと比較した。全てのISIで促通が観察され、50および75msのISIで促通が最大であった。興味深いことに、月齢をマッチさせた対照マウスと比較したときに、25、50および75msのISIで、F28 sncaトランスジェニックマウスにおいて著しく強いPPFが観察された(図11b)。シャファー側枝が、末端に残留するCa2+による促通を特徴的に示すため、グルタミン酸放出を阻害する操作が、PPFの増加をもたらし得ることが示唆された。したがって、F28トランスジェニックマウスにおける本発明者らの発見は、基底シナプス伝達の障害が、α-シヌクレイン過剰発現の結果としての小胞放出の障害に起因する可能性が高いことを示唆する。
【0320】
F28 sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達および二発刺激促通の同定された障害を、α-シヌクレイン抗体の有効性を試験するための読み取りとしてさらに使用した。単回用量の抗体(腹腔内(i.p.))の投与の3~6時間後、全ての実験において記録を行った。基底シナプス伝達および二発刺激促通を、可能であれば各動物の両方の海馬において記録し、個々の実験としてさらに使用した。
【0321】
h9E4(15mg/kg、腹腔内(i.p.))による急性治療により、F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障害のかなりの改善が誘発された(Tg-snca+h9E4対Tg-snca+PBS、p=0.002、図12)。しかしながら、h9E4による改善は、PBSで処理された同腹仔と比較して著しく低い基底シナプス伝達によって示されるように部分的であるに過ぎなかった(p=0.007)。
【0322】
PPFの有意な増加が、PBSで処理された同腹仔と比較して、PBSで処理されたTg-sncaにおいて確認された(p=0.044、図13)。h9E4による処理は、PBSで処理されたトランスジェニックマウスと比較して、PPFに有意な効果を与えなかった(図13)。
【0323】
対照マウスIgG(5C9)で処理されたF28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達は、対照マウスIgG(5C9)で処理された、月齢をマッチさせたマウスにおけるより有意に低かった(p<0.001、図10)。15mg/kgの用量のm2E6による急性治療により、F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障害のかなりの改善が誘発された(Tg-snca+m2E6対Tg-snca+対照IgG、p=0.004、図14)。m2E6で処理されたトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達は、対照mIgGで処理された、月齢をマッチさせたマウスにおける基底シナプス伝達と有意に異なっておらず、これは、障害の完全な改善を示している。m2E6による処理は、非トランスジェニックの、月齢をマッチさせたマウスにおける基底シナプス伝達に対して影響を与えなかった。
【0324】
対照マウスIgGで処理された、月齢をマッチさせたマウスと比較して、PPFの著しい障害が、対照マウスIgGで処理されたF28-sncaトランスジェニックマウスにおいて確認された(p=0.023)。m2E6による処理は、対照マウスIgGで処理されたトランスジェニックマウスと比較したときに、F28-sncaトランスジェニックマウスにおいてPPF障害に対する有意な効果を与えなかった(図15)。
【0325】
15mg/kgのm2E6が、F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障害の完全な改善を誘発したため、用量反応関係を確立するために、より低い用量を試験した。F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障害は、5mg/kg(腹腔内(i.p.))の用量のm2E6によって、月齢をマッチさせた対照マウスと有意に異ならないレベルまで有意に改善された(図16)。対照的に、2.5mg/kg(腹腔内(i.p.))の用量のm2E6は、基底シナプス伝達の障害を有意に改善しなかったが、高い刺激強度で強い傾向が観察された(300、400および500μAでそれぞれ、p=0.066、0.010および0.050)(図17)。
【0326】
キメラ2E6、ch2E6抗体を、2.5mg/kg(腹腔内(i.p.))の用量で試験し、PBS処理と比較したときに、F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障害を部分的に改善した(p=0.042、図18)。この効果は、本発明の一連の実験において2.5mg/kgの用量のm2E6で得られた改善と有意に異ならなかった(図示せず)。m2E6で観察されるように、キメラ2E6は、F28-sncaトランスジェニックマウスにおけるPPFの障害に対して有意な効果を与えなかった(図19)。
【0327】
2E6の親和性成熟されたヒト化形態である、抗体2E6-HDL1は、F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障害を改善するために、キメラ2E6よりかなり効率的であり、PBSで処理された同腹仔と有意に異ならないレベルまでの完全な改善を誘発した(図18)。F28-sncaトランスジェニックマウスにおけるPPFの障害の有意な改善は、2E6-HLD1で観察されなかった(図19)。
【0328】
実施例8:覚醒自由運動動物の脳におけるヒトα-シヌクレインを評価するための微小透析
プッシュプル微小透析を用いて、覚醒自由運動F28sncaトランスジェニックマウスからの脳間質液(ISF)ヒトα-シヌクレインを評価した。マウスを、制御された温度(22±1.5℃)および湿度条件(55~65%)において単一の小屋に収容し、12:12時間の明/暗サイクル(06:00hで照明をオンにする)で飼育した。食物および水は自由に摂取可能であった。海馬における微小透析を可能にするために、マウスにイソフルランで麻酔をかけ、大脳内ガイドカニューレを、脳内に定位に埋め込み、PaxinosおよびFranklin 2001の図解にしたがって、微小透析プローブを海馬内で位置決めした(プローブ先端の配置:ブレグマの3.1mm後方および2.8mm側方、および硬膜に対して1.3mm)。固定ねじおよびアクリルセメントをガイドカニューレの固定に使用した。カニューレの埋め込みの後、マウスを、透析前の2~3日間にわたって外科手術から回復させた。プローブを、2つの流路を有する微小透析蠕動ポンプ(MAB20;Microbiotech)に連結し、プッシュプルモードで操作した。微小透析プローブの入口管を、プローブに人工CSFをかん流させる蠕動ポンプに連結した。かん流液を管から引き出すことによる、プローブからのかん流液損失を防ぐために、蠕動ポンプをさらに出口管に連結した。ポンプの実際の流量を、プローブを連結させずに測定した。試料管を、所与の期間にわたってサンプリングする前および後に秤量し、流量を計算した。わずかに異なる方法を用いて、細胞外のヒトα-シヌクレインレベルに対するマウス2E6およびヒト9E4の効果を調べた。
【0329】
a.マウス2E6:F28sncaトランスジェニックマウス(約30週齢)の海馬において行った。実験の当日、2mm、3000kDaカットオフブレインリンク(brainlink)プローブを、ガイドカニューレに挿入した。かん流緩衝液として、25%のウシ血清アルブミン(Sigma)を、使用当日に人工CSF(aCSF;mM単位で:147NaCl、2.7KCl、1.2CaCl、0.85MgCl)で2%に希釈し、0.1μmの膜に通してろ過した。ポンプは、0.5μL/分の一定流量を有するようにした。60分のサンプリング計画を、実験期間を通して使用した。組織損傷を避けるために、実験期間を、プローブ埋め込みの14~48時間後に設定した。実験の開始の14~16時間後、2つのベースライン試料を収集し、次に、マウス2E6または対照アイソタイプ5C9を、15mg/kgで腹腔内(i.p.)に注射し、さらなる6つの試料(6時間の収集)を収集した。透析液を、ELISA(Covance ELISAキット)によるヒトα-シヌクレイン決定まで-80℃で貯蔵した。抗体処理の前の2つの基底値(2時間)の平均を、ベースラインとして取り、各動物について100%に設定した。反復測定による二元配置分散分析(ANOVA)を用いて、相違を測定した。海馬中のヒトα-シヌクレインの基底レベルは、11.9±2.4ng/mlであった(平均±SEM、n=11、インビトロ透析プローブ回収に対して補正されていない)。対照5C9-抗体で処理された動物において、海馬中のヒトα-シヌクレインのレベルは、時間とともに有意に変化しなかった(図20)。m2E6(15mg/kg、腹腔内(i.p.))の投与は、海馬中のヒトα-シヌクレインの有意な減少を引き起こした(図20)。
【0330】
b.ヒト9E4:F28sncaトランスジェニックマウス(約50週齢)の海馬において行った。実験の当日、2mm、1000kDaカットオフCMAプローブを、ガイドカニューレに挿入した。かん流緩衝液として、25%のウシアルブミン画分V(Sigma)を、使用当日に人工CSF(aCSF;mM単位で:147NaCl、2.7KCl、1.2CaCl2、0.85MgCl2)で0.2%に希釈し、0.1μmの膜に通してろ過した。ポンプを、1μL/分の一定流量を有するように設定した。120分のサンプリング計画を、実験期間を通して使用した。組織損傷を避けるために、実験期間を、プローブ埋め込みの14~48時間後に設定した。実験の開始の14~16時間後、2~3つのベースライン試料を収集し、次に、ヒト9E4または対照アイソタイプ抗helを、15mg/kgで腹腔内(i.p.)に注射し、さらなる6つの試料(12時間の収集)を収集した。透析液を、ELISA(Covance ELISAキット)によるヒトα-シヌクレイン決定まで-80℃で貯蔵した。抗体処理の前の2~3つの基底値(4時間~6時間)の平均を、ベースラインとして取り、各動物について100%に設定した。細胞外のヒトα-シヌクレインレベルに対するヒト9E4または対照アイソタイプ抗helの効果の間に相違は観察されなかった(図21)。反復測定による二元配置分散分析(ANOVA)を用いて、相違を測定した。海馬中のヒトα-シヌクレインの基底レベルは、7.8±1.2ng/mlであった(平均±SEM、n=16、インビトロ透析プローブ回収に対して補正されていない)。
【0331】
実施例9
インビボでのα-シヌクレイン抗体の慢性効果
ドーパミン作動性ニューロンを標的にしたヒトα-シヌクレイン過剰発現のラットモデルおよびヒトα-シヌクレイン過剰発現のトランスジェニックマウスモデルにおけるm2E6の効果
【0332】
ラット中脳中のドーパミン作動性ニューロンに対するヒトα-シヌクレインの標的化された過剰発現が、組み換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)を用いて実現可能であり、黒質中のドーパミン作動性細胞の進行性消失および運動障害に関連している。α-シヌクレイン過剰発現のこのラットAAVベースモデルにおいて、大脳基底核ニューロン発火活動が、パーキンソン病患者において記載されているものと同様に変化された、すなわち、視床下核および黒質網様部の両方において発火の不規則性が増加されたことが示された。
【0333】
全ての実験を、実験動物の管理および使用についての欧州共同体理事会指令(European Communities Council Directive)(86/609/EEC)および動物実験を規制するデンマークの法律に準拠して行った。
【0334】
成体雌スプラーグドーリーラット(225~250g)を使用した。抗体処理を、ウイルス感染の2~4日前に開始し、試験の終了まで続けた。同じ体積(5ml/kg)におけるPBS投与を、対照として使用した。抗体を、15mg/kgの用量で週に2回腹腔内投与した(図22)。ヒト野生型α-synまたはGFPを含有するウイルス(rAAV2/5)を、黒質(SN)の片側に注射した。動物に、2.0ml/kg皮下(s.c.)で、Hypnorm(登録商標)とDormicum(登録商標)との組合せで麻酔をかけ、定位フレームに設置した。動物の体温を加熱パッドによって37.5℃に調整し、頭蓋骨を露出させた。PaxinosおよびWatson(Paxinos & Watson,1998)の図解にしたがって、以下の配置で右SNの上に孔を空けた:ブレグマの5.5mm後方および2.0mm側方。3μLのrAAV2/5-α-synまたはrAAV2/5-GFPの単回注入を、定位注入器(stereotaxic injector)に連結されたHamilton製シリンジを用いて、硬膜の7.2mm下の深さで、および0.2μL/分の流量で行った。SNにおけるベクターの拡散を可能にするために、針をさらに5分間所定の位置に置いておいた。外科手術の後、動物をホームケージに戻し、加熱された環境に置き、ここで、動物を麻酔から回復させた。
【0335】
AAV注射の8~10週間後、ウレタン麻酔下で、視床下核(STN)において、細胞外の単一単位の記録を行った。全ての記録を、最後の抗体注射の2~4日後に行った。ガラス電極を、電動式マイクロマニピュレータを用いてSTN(ブレグマの3.8±0.2mm後方および+2.4±0.2mm側方)中に下ろした。細胞外活動電位を増幅し、弁別し、オシロスコープおよびオーディオモニターでモニターした。ニューロンを記録し、Spike 2ソフトウェアを用いて分析した。STNにおいて、推定されたグルタミン酸作動性ニューロンは、皮質表面の下方7.0~7.6mmで見られた。それらは、典型的に、0.5~40スパイク/秒の範囲の発火頻度、および狭い活動電位を示した。少なくとも200の連続したスパイクを、分析に使用した。平均発火頻度、およびISIの標準偏差と平均ISIとの比率×100として定義されるスパイク間隔の変動係数(CV ISI)を、各ニューロンについて計算した。スパイク密度ヒストグラムおよびオートコレログラムを、各ニューロンについて作成し、それを用いて、既に記載されるように、発火パターンを、規則的な、不規則なまたはバーストのパターンに定性的に分類する(Kaneoke & Vitek,1996;Tepper et al.,1995)。
【0336】
AAV-α-シヌクレインラットは、スパイク間隔の変動係数(CV ISI)の有意な増加(図23)および規則的な、不規則なおよびバーストのパターンで発火する細胞の割合の有意な変化(図24)によって示されるように、AAV-GFPラットと比較して、STNニューロンの発火パターンの変化を示した。興味深いことに、m2E6による処理は、3つの異なる発火パターンを示すニューロンの割合の有意な正常化(図24)、ならびにそれらのCV ISIの減少の非有意な傾向(図23)を誘発した。
【0337】
ヒトα-シヌクレイン過剰発現のトランスジェニックマウスモデルにおける長期治療後のm2E6の効果
F28 sncaトランスジェニックマウスにおける二発刺激促通の同定された障害を、長期治療後の抗体の有効性を試験するための読み取りとしてさらに使用した。
【0338】
動物に、16~18週間にわたって15mg/kg(腹腔内(i.p.))の用量のm2E6または対照mIgG1のいずれかを週に2回投与した。全ての記録を、実施例7において前述されるのと同様に行ったが、急性実験について行われたように、3~6時間の代わりに最後の用量の抗体の投与の2~4日後に記録を行った。二発刺激促通を、可能であれば各動物の両方の海馬において記録し、個々の実験としてさらに使用した。
【0339】
5C9で処理されたマウスと比較して、2E6で処理された、月齢をマッチさせた対照マウスにおいて、二発刺激促通は有意に異ならなかった。既に報告されるように、5C9で処理された、月齢をマッチさせた対照マウスと比較して、5C9で処理されたF28 snca Tgマウスにおいて、PPFの向上が観察された。興味深いことに、15mg/kg(腹腔内(i.p.))の用量の2E6による処理は、F28 snca TgマウスにおけるPPFを正常化した(図25)。
【0340】
二発刺激促通(PPF)は、シナプス前機構に依存すると考えられる短期シナプス可塑性であり、シャファー側枝が、末端に残留するCa2+による促通を特徴的に示すため、グルタミン酸放出を阻害する操作が、PPFの増加をもたらし得ることが示唆された。したがって、F28トランスジェニックマウスにおける本発明者らの発見は、基底シナプス伝達の障害が、α-シヌクレイン過剰発現の結果としての小胞放出の障害に起因する可能性が高いことを示唆する。抗体2E6による長期治療のみが、PPFの障害を改善することができるため、これは、長期の抗体処理が、小胞放出の障害に対するα-シヌクレイン過剰発現の影響を低減し得ることを示唆する。この効果は、抗体療法で治療されたヒトPD患者におけるシナプス伝達の改善につながり得る。

本発明は以下の態様を含み得る。
[1]
α-シヌクレインにおけるアミノ酸126~140(配列番号2)内のエピトープに特異的に結合することが可能なモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
[2]
前記エピトープへの結合について、抗体m2E6、ch2E6、2E6-HLD1、2E6-HLD2または2E6-HLD3、7A10、5A1、9D7、9G11、7C4、L3、8D9、9C12または6B6のいずれかと競合する、請求項1に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
[3]
前記抗体が、無傷の抗体を含むかまたはそれからなる、請求項1または2に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[4]
Fvフラグメント(例えば一本鎖Fvおよびジスルフィド結合Fv)、Fab様フラグメント(例えばFabフラグメント、Fab’フラグメントおよびF(ab) フラグメント)およびドメイン抗体(例えば単一のV 可変領域またはV 可変領域)からなる群から選択される抗原結合フラグメントを含むかまたはそれからなる、請求項1または2に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
[5]
前記モノクローナル抗体が、サブタイプIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4の抗体からなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
[6]
前記抗体または抗原結合フラグメントが、以下の特性:
・0.5~10nM、例えば1~5nMまたは1~2nMの、α-シヌクレインに対する結合親和性(KD);
・神経細胞内のα-シヌクレイン原線維の蓄積を阻害する能力;
・細胞から細胞へのα-シヌクレイン原線維の移動を阻害する能力;
・α-シヌクレインの細胞内シーディングを阻害する能力;
・F28-sncaトランスジェニックマウスにおける基底シナプス伝達の障害を改善する能力;
・インビボ微小透析によって測定した際のマウス海馬におけるα-シヌクレインのレベルを減少させる能力;
・慢性的に投与されるときの、パーキンソン病のラットモデルにおける、視床下核(STN)内の病理学的な不規則なおよびバーストの発火パターンを正常化する能力;および/または
・慢性的に投与されるときの、トランスジェニックα-シヌクレインマウスの海馬中のPPFの障害を改善する能力
の1つ以上を示す、先行請求項のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメント。
[7]
ヒトまたはヒト化モノクローナル抗体、またはその抗原結合フラグメントである、先行請求項のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[8]
以下のCDR:
・配列番号3または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号5または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、先行請求項のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[9]
配列番号3、4および5のCDRを含む軽鎖可変領域を含む、請求項8に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[10]
以下のCDR:
・配列番号6または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号7または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号8または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[11]
配列番号6、7および8のCDRを含む重鎖可変領域を含む、請求項10に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[12]
配列番号19のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、請求項8または9に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[13]
配列番号20のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項10または11に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
[14]
配列番号19のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号20のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項12および13のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[15]
配列番号21のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、請求項8または9に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[16]
配列番号22のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項10または11に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
[17]
配列番号21のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号22のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項15および16のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[18]
配列番号23のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、請求項8または9に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[19]
配列番号24のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項10または11に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
[20]
配列番号23のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号24のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項18および19のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[21]
配列番号25のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、請求項8または9に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[22]
配列番号26のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項10または11に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
[23]
配列番号25のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号26のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項21および22のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[24]
配列番号27のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、請求項8または9に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[25]
配列番号28のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項10または11に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
[26]
配列番号27のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号28のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項24および25のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[27]
配列番号45のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、請求項8または9に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[28]
配列番号46のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項10または11に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
[29]
配列番号45のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号46のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項27および28のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[30]
以下のCDR:
・配列番号9または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号5または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[31]
配列番号9、4および5のCDRを含む軽鎖可変領域を含む、請求項30に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[32]
以下のCDR:
・配列番号12または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号7または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号8または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含む、請求項30および31のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[33]
配列番号12、7および8のCDRを含む重鎖可変領域を含む、請求項32に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[34]
配列番号35のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、請求項30または31に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[35]
配列番号36のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項32または33に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
[36]
配列番号35のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号36のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項34および35のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[37]
以下のCDR:
・配列番号10または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号5または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[38]
配列番号10、4および5のCDRを含む軽鎖可変領域を含む、請求項37に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[39]
以下のCDR:
・配列番号6または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号7または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号18または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含む、請求項37または38に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[40]
配列番号6、7および18のCDRを含む重鎖可変領域を含む、請求項39に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[41]
配列番号39のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、請求項37または38に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[42]
配列番号40のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項39または40に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
[43]
配列番号39のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号40のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項41および42のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[44]
配列番号41のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、請求項37または38に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[45]
配列番号42のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項39および40のいずれか一項に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
[46]
配列番号41のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号42のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項44および45のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[47]
以下のCDR:
・配列番号3または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号11または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[48]
配列番号3、4および11のCDRを含む軽鎖可変領域を含む、請求項47に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[49]
以下のCDR:
・配列番号6または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号7または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号8または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含む、請求項47または48に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[50]
配列番号6、7および8のCDRを含む重鎖可変領域を含む、請求項49に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[51]
配列番号37のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、請求項47または48に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[52]
配列番号38のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項49または50に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
[53]
配列番号37のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号38のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項51および52のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[54]
以下のCDR:
・配列番号3または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号5または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[55]
配列番号3、4および5のCDRを含む軽鎖可変領域を含む、請求項54に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[56]
以下のCDR:
・配列番号6または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号13または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号16または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含む、請求項54または55に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[57]
配列番号6、13および16のCDRを含む重鎖可変領域を含む、請求項56に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[58]
配列番号29のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、請求項54または55に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[59]
配列番号30のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項56または57に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
[60]
配列番号29のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号30のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項58および59のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[61]
以下のCDR:
・配列番号3または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号5または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[62]
配列番号3、4および5のCDRを含む軽鎖可変領域を含む、請求項61に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[63]
以下のCDR:
・配列番号6または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号14または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号8または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含む、請求項61または62に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[64]
配列番号6、14および8のCDRを含む重鎖可変領域を含む、請求項63に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[65]
配列番号33のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、請求項61または62に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[66]
配列番号34のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項63または64に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
[67]
配列番号33のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号34のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項65および66のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[68]
以下のCDR:
・配列番号3または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号5または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[69]
配列番号3、4および5のCDRを含む軽鎖可変領域を含む、請求項68に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[70]
以下のCDR:
・配列番号6または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号15または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号8または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含む、請求項68または69に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[71]
配列番号6、15および8のCDRを含む重鎖可変領域を含む、請求項70に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[72]
配列番号43のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、請求項68または69に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[73]
配列番号44のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項70または71に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
[74]
配列番号43のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号44のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項72および73のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[75]
以下のCDR:
・配列番号3または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号4または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号5または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[76]
配列番号3、4および5のCDRを含む軽鎖可変領域を含む、請求項75に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[77]
以下のCDR:
・配列番号6または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;
・配列番号7または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列;および
・配列番号17または4つ以下のアミノ酸の相違、もしくは3つ以下のアミノ酸の相違、もしくは2つ以下のアミノ酸の相違、もしくは1つ以下のアミノ酸の相違を有するアミノ酸配列
を含む重鎖可変領域を含む、請求項75または76に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[78]
配列番号6、7および17のCDRを含む重鎖可変領域を含む、請求項77に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[79]
配列番号31のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域を含む、請求項75または76に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[80]
配列番号32のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項77または78に記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
[81]
配列番号31のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる軽鎖可変領域および配列番号32のアミノ酸配列を含むかまたはそれからなる重鎖可変領域を含む、請求項79または80に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[82]
医薬に使用するための、請求項1~81に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[83]
シヌクレイノパチーを治療、診断またはイメージングするのに使用するための、請求項1~81に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[84]
パーキンソン病(特発性パーキンソン病を含む)、びまん性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病、純粋自律神経不全症および多系統萎縮症を治療するのに使用するための、請求項83に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメント。
[85]
シヌクレイノパチーを治療、診断またはイメージングするための薬剤の製造における、請求項1~81に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの使用。
[86]
パーキンソン病(特発性パーキンソン病を含む)、びまん性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病、純粋自律神経不全症、多系統萎縮症、ならびに自身の遺伝子プロファイルおよび/または将来PDを発症させる可能性が高い非PD中核症状に基づいてPDを発症するリスクのある人々を治療するための薬剤の製造における、請求項85に記載のモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントの使用。
[87]
対象におけるシヌクレイノパチーを治療、診断またはイメージングする方法であって、請求項1~81に記載の抗体を、有効量で前記対象に投与する工程を含む方法。
[88]
前記対象が、パーキンソン病(特発性パーキンソン病を含む)、びまん性レビー小体病(DLBD)、レビー小体変異型アルツハイマー病(LBV)、複合されたアルツハイマー病およびパーキンソン病、純粋自律神経不全症、多系統萎縮症に罹患している対象、ならびに自身の遺伝子プロファイルおよび/または将来PDを発症させる可能性が高い非PD中核症状に基づいてPDを発症するリスクのある人々である、請求項87に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7-1】
図7-2】
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
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【配列表】
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