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特許7144800手技圧検知デバイス、手技訓練用人体モデル、手技訓練システム、腹腔鏡下手術支援システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】手技圧検知デバイス、手技訓練用人体モデル、手技訓練システム、腹腔鏡下手術支援システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/34 20060101AFI20220922BHJP
   A61B 34/30 20160101ALI20220922BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20220922BHJP
   G09B 9/00 20060101ALI20220922BHJP
   G09B 23/28 20060101ALI20220922BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20220922BHJP
   A61B 1/045 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
A61B17/34
A61B34/30
A61B34/20
G09B9/00 Z
G09B23/28
A61B1/00 T
A61B1/00 550
A61B1/00 650
A61B1/045 622
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018080031
(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公開番号】P2019187510
(43)【公開日】2019-10-31
【審査請求日】2021-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】510097747
【氏名又は名称】国立研究開発法人国立がん研究センター
(73)【特許権者】
【識別番号】592100441
【氏名又は名称】株式会社ソフケン
(74)【代理人】
【識別番号】100076369
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正治
(74)【代理人】
【識別番号】100144749
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正英
(72)【発明者】
【氏名】西澤 祐吏
(72)【発明者】
【氏名】駒村 武夫
(72)【発明者】
【氏名】駒村 賢三
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-000118(JP,A)
【文献】特開2003-079638(JP,A)
【文献】国際公開第2018/046962(WO,A1)
【文献】特開2016-057451(JP,A)
【文献】特開平11-347043(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0128781(US,A1)
【文献】米国特許第05704791(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B17/34
A61B34/00-34/30
G09B23/28-23/34
G09B 9/00
A61B 1/00- 1/045
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹腔鏡下手術における体壁又は腹腔鏡下手術の手技訓練における疑似腹壁に差し込まれる手技圧検知デバイスにおいて、
手技圧検知デバイスがトロッカーであり、当該トロッカーは本体挿入部のある本体と、ヘッド挿入部のあるヘッドを備えており、
本体挿入部及び/又はヘッド挿入部にシートがあり、当該シートに手技圧を検知可能なセンサが取り付けられたものである、
ことを特徴とする手技圧検知デバイス。
【請求項2】
請求項1記載の手技圧検知デバイスにおいて、
シートは、トロッカー内に挿入する手術器具が貫通可能である、
ことを特徴とする手技圧検知デバイス。
【請求項3】
腹腔鏡下手術における体壁又は腹腔鏡下手術の手技訓練における疑似腹壁に差し込まれる手技圧検知デバイスにおいて、
手技圧検知デバイスがトロッカー、又はトロッカー内に挿入される手術器具の手技により手技圧を受ける手技圧関連器具であり、これらトロッカー、又は手術器具、又は手技圧関連器具がフィルム状センサを備え、
フィルム状センサは、トロッカー、又は手術器具、又は手技圧関連器具に取り付け可能なフィルムにセンサを取り付けたものであり、
フィルム状センサのフィルムが、トロッカーを差し込み可能な差込み孔と、仕切り溝と、仕切り溝で区画された数枚の仕切り片を備えており、夫々の仕切り片がセンサを備えた、
ことを特徴とする手技圧検知デバイス。
【請求項4】
請求項3記載の手技圧検知デバイスであり、
フィルム状センサのフィルムに、差込み孔と切込みがあり、
切込みはフィルムの外周縁から差込み孔まで開口されており、フィルムの外側部分を差込み孔まで巻き上げると広げることができ、手術器具を差し込んだトロッカーを、広げた切込みから差込み孔までスライドして、当該差込み孔に差し込むことができ、その後に、巻き上げたフィルムの外側部分を疑似腹壁に貼り付けることができる、
ことを特徴とする手技圧検知デバイス。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の手技圧検知デバイスを用いて腹腔鏡下手術の手技訓練を行うことができる人体モデルであって、
人体モデルは人体を模した疑似腹壁と、その内側の壁内空間と、壁内空間内の疑似内臓を備え、
疑似腹壁は、人体の体壁と同様の触感のものであり、腹腔鏡を差し込み可能な腹腔鏡差込み開口部と、トロッカーを差し込み可能なトロッカー差込み孔を備えた、
ことを特徴とする手技訓練用人体モデル。
【請求項6】
請求項5記載の手技訓練用人体モデルにおいて、
トロッカー差込み孔が腹腔鏡差込み開口部の両外側にある、
ことを特徴とする手技訓練用人体モデル。
【請求項7】
腹腔鏡下手術の手技訓練を行うことができる手技訓練システムであって、
人体を模した人体モデルと、トロッカーと、センサと、信号処理部と、画像モニタを備え、
手技訓練に使用する手技圧検知デバイスが、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の手技圧検知デバイスであり、
手技圧検知デバイスのセンサは、トロッカー内に差し込まれた手術器具の手技によりかかる手技圧を検知可能であり、
人体モデルは人体の体壁を模した疑似腹壁と、その内側の壁内空間と、壁内空間内の疑似内臓を備え、
疑似腹壁は、人体の体壁と同様の触感のものであり、腹腔鏡を差し込み可能な腹腔鏡差込み開口部と、トロッカーを差し込み可能なトロッカー差込み孔を備え、
画像モニタの一つの表示画面に圧力表示部と、画像表示部があり、
信号処理部はセンサで検知された手技圧を画像化した手技圧図形を圧力表示部に、疑似腹壁の腹腔鏡差込み開口部に差し込まれた腹腔鏡で撮影した疑似内臓の撮影画像を画像表示部に、手技中にリアルタイムで表示させることができる、
ことを特徴とする手技訓練システム。
【請求項8】
請求項記載の手技訓練システムにおいて、
疑似腹壁がトロッカー差込み孔を二つ備え、夫々のトロッカー差込み孔に差し込まれたトロッカー内の手術器具で手技を行うことができ、
画像モニタは、一つの表示画面の中央部に画像表示部があり、その両外側に圧力表示部があり、
疑似腹壁の腹腔鏡差込み開口部に差し込まれた腹腔鏡で撮影した疑似内臓の撮影画像を画像表示部に、二つのトロッカー差込み孔に差し込まれたトロッカー内の手術器具の手技圧図形を、二つの圧力表示部に別々に表示できるようにした、
ことを特徴とする手技訓練システム。
【請求項9】
請求項7又は請求項8記載の手技訓練システムにおいて、
手技圧検知デバイスが、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の手技圧検知デバイスである、
ことを特徴とする手技訓練システム。
【請求項10】
請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の手技訓練システムにおいて、
手技訓練中の手技圧をセンサで検知し、検知された手技圧を信号処理部で図形化処理して手技圧図形として画像モニタの手技圧表示部に表示し、腹腔鏡で撮影した撮影画像を前記画像モニタの画像表示部に表示して、手技圧図形と撮影画像の双方を一つの画像モニタの同一画面に、手技中にリアルタイムで表示させることができる、
ことを特徴とする腹腔鏡下手術支援システム。
【請求項11】
請求項10記載の腹腔鏡下手術支援システムにおいて、
手術器具の手技を手術ロボットで行い、
手術ロボットの手技圧をセンサで検知し、検知された手技圧を信号処理部において、その後の手技に利用可能なデータに処理して手術ロボットにフィードバックして、手術ロボットによる手技圧が低減するように当該手術ロボットを制御可能である、
ことを特徴とする腹腔鏡下手術支援システム。
【請求項12】
請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の手技訓練システムにおいて、
手術器具の手技を、人工知能を備えた手術ロボットで行い、
手術ロボットによる手技訓練中の手技圧をセンサで検知し、検知された手技圧を手術ロボットの人工知能で、又は当該人工知能と信号処理部で図形化処理して手技圧図形として画像モニタの手技圧表示部に表示し、腹腔鏡で撮影した撮影画像を前記画像モニタの画像表示部に表示して、手技圧図形と撮影画像の双方を一つの画像モニタの同一画面に、手技中にリアルタイムで表示させることができる、
ことを特徴とする腹腔鏡下手術支援システム。
【請求項13】
請求項12記載の腹腔鏡下手術支援システムにおいて、
検知された手技圧を手術ロボットの人工知能で、又は当該人工知能と信号処理部で信号処理して、その後の手技に利用可能なデータにして手術ロボットにフィードバックして、手術ロボットによる手技圧が低減するように当該手術ロボットを制御可能である、
ことを特徴とする腹腔鏡下手術支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は腹腔鏡下手術に使用できる手技圧検知デバイスと、その手技圧検知デバイスを利用した手技訓練システムと、腹腔鏡下手術支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
腹腔鏡下手術は、腹腔内に炭酸ガスを注入して腹壁(体壁)A(図9)を膨らませて内部空間Bを確保し、腹壁Aにあけた孔から内部空間B内にトロカール(トロッカー)Cを挿入し、一つのトロッカーCに腹腔鏡(一般的にはCCDカメラ)Dを、他のトロッカーCに鉗子、メス等の手術器具Eを差込み、腹腔鏡Dで撮影した映像を信号処理器Fで処理して画像モニタGの画面に表示し、その映像を観察しながら手術を行うのが一般的である(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5975504号公報
【文献】特開2013-179998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
腹腔鏡下手術ではトロッカーC内に通した手術器具Fを、トロッカーCを支点としてピボット運動させて手技する。ピボット運動によりトロッカーCから腹壁支点にかかる圧力強度、圧力方向、それらの変動(変化)等(以下、これらをまとめて「手技圧」という。)は、患者の身体にかかる負担(侵襲)となることから、近年は侵襲を軽減できる低侵襲手術が求められている。このため、腹腔鏡下手術では腹壁支点にかかる手技圧を継続的に把握(評価)することが重要である。しかし、侵襲は手術を施行する医師の手技によって異なるし、ベテランの医師であれば経験と勘で腹壁支点にかかる手技圧をある程度は把握可能であるが、経験の浅い医師や研修医、医学生等にとっては把握が難しい。
【0005】
本発明の目的は、手技中の手技圧を継続的に検知できる手技圧検知デバイスと、そのデバイスを利用した手技訓練(トレーニング)システムと、腹腔鏡下手術を支援できる腹腔鏡下手術支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の手技圧検知デバイスは、腹腔鏡下手術で使用するトロッカー、手術器具、手技圧がかかるその他の器具(以下、「手技圧関連器具」という。)に、手技圧を検知可能な圧力センサを設けて、手術器具の手技により圧力センサにかかる手技圧を継続的に感知(検知)できるようにしたものである。本発明の手技圧検知デバイスは手術器具の手技訓練や手技の評価に使用することもできる。
【0007】
本発明の手技訓練システムは、腹腔鏡下手術で使用する手術器具の手技訓練を行うことができるものであり、人体の腹壁を模した疑似腹壁と、手術器具の手技訓練中に疑似腹壁にかかる手技圧を継続的に検知できる圧力センサと、圧力センサで検知した手技圧を少なくともグラフ化又は/及び図形化(以下、両者をまとめて「図形化」という。)できる信号処理部(例えば、パソコン)と、画像モニタを備え、前記疑似腹壁はトロッカー差込み孔と腹腔鏡差込み開口部を備え、前記信号処理部は腹腔鏡で撮影された撮影画像と、前記信号処理部で図形化された手技圧図形とを、前記画像モニタの同一画面に同時にリアルタイムで表示でき、表示された撮影画像と手技圧図形の画像(手技圧画像)を見ながら手技訓練できるようにしたものである。
【0008】
本発明の腹腔鏡下手術支援システムは、腹腔鏡下手術において使用するトロッカーと、手術器具と、圧力センサと、当該圧力センサで検知した手技圧を少なくとも画像化できる信号処理部と、画像モニタを備え、前記信号処理部は腹腔鏡で撮影された撮影画像と当該信号処理部で画像化された手技圧図形を前記画像モニタの同一画面に同時にリアルタイムで表示することができ、表示された撮影画像と手技圧画像を見ながら腹腔鏡下手術の手技を行うことができるようにしたものである。腹腔鏡下手術の手技をロボットで行う場合は、前記圧力センサで検知された手技圧に基づいてロボットの手技を制御可能な制御部を設け、その制御部からの信号により、ロボットの手技圧が軽減するように当該ロボットを制御できるようにしたものでもある。
【発明の効果】
【0009】
本発明の手技圧検知デバイスは、手術器具の手技中に圧力センサにかかる手技圧を継続的に検知できるので、腹腔鏡下手術に使用して手術中の手技圧をリアルタイムに検知することができる。また、腹腔鏡下手術の手技訓練に使用して訓練中の手技圧をリアルタイムに検知することもできる。
【0010】
本発明の手技訓練システムを使用すれば、実際の腹腔鏡下手術に近い環境で手技訓練を行うことができ、手術器具の安定したピボット操作を習得することができる。
【0011】
本発明の腹腔鏡下手術支援システムは、手術中の手技圧を圧力センサで検知し、手技圧画像としてモニタ画面に表示することができるので、モニタ画面で手技圧を確認しながら、手技圧が軽減するように手技して患者への負担を軽減することができ、低侵襲手術が可能となる。腹腔鏡下手術をロボットで行う場合は、検知した手技圧に基づいて手技圧が低減するようにロボットを制御することができるので、低侵襲手術が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】(a)は圧力センサをトロッカーの本体パイプ部の内壁に取り付けた手技圧検知デバイスの断面図、(b)は圧力センサをトロッカーの本体挿入部の入口に取り付けた手技圧検知デバイスの断面図、(c)はトロッカーの一例を示す正面図。
図2】(a)は圧力センサをトロッカーの本体挿入部のシートに取り付けた状態の斜視図、(b)はトロッカー本体の一例の断面図、(c)は圧力センサをトロッカーのヘッド挿入部のシートに取り付けた状態の説明図、(d)はシートの平面図。
図3】(a)はフィルム状センサの一例の斜視図、(b)は(a)のフィルム状センサをトロッカーに巻き付ける場合の斜視図、(c)は(a)のフィルム状センサを疑似腹壁に貼り付けた場合の断面図。
図4】(a)は本発明の手技訓練システムの一例を示す説明図、(b)は疑似内臓の断面図。
図5】(a)はパッドにフィルム状センサを貼りつけた状態の説明図、(b)は(a)のフィルム状センサの裏側に弾性材を取り付けた状態の断面図。
図6】本発明の手技訓練システムにおけるモニタ画面の一例を示す説明図。
図7】本発明における信号処理部の説明図。
図8】本発明において検知信号を無線送信する場合の説明図。
図9】汎用の腹腔鏡下手術の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(手技圧検知デバイスの実施形態1)
本発明の手技圧検知デバイスの一例を図1(a)に示す。この手技圧検知デバイス1はトロッカー2の本体3の本体パイプ部3aの内壁(内周面)に、手技圧を検知可能な圧力センサ4を取り付けたものである。
【0014】
(手技圧検知デバイスの実施形態2)
本発明の手技圧検知デバイスの一例を図1(b)に示す。この手技圧検知デバイス1はトロッカー2の本体3の本体挿入部3bの入口付近に手技圧を検知可能な圧力センサ4を取り付けたものである。
【0015】
(手技圧検知デバイスの実施形態3)
本発明の手技圧検知デバイスの一例を図2(a)(b)に示す。この手技圧検知デバイス1もトロッカー2の場合である。このトロッカー2は本体挿入部3bが柔軟性のある樹脂製のシート15で被覆され、シート15に切込み16(図2(d))があり、この切込み16を通して手術器具6をトロッカー2内に挿入することができるようにしてある。図2(a)ではシート15の表面に圧力センサ4を取り付けてあるが、本発明の手技圧検知デバイス1はシート15の裏面に圧力センサ4を取り付けることもできる。この手技圧検知デバイス1は手術器具6が図2(b)の矢印A方向に出し入れされたり、トロッカー2内で図2(b)の矢印B方向に移動されたりしてシート15に接触すると、シート15が変形して圧力センサ4にかかる手技圧が検知される。手術器具6が手技された場合も同様である。
【0016】
(手技圧検知デバイスの実施形態4)
本発明の手技圧検知デバイスの一例を図2(c)に示す。この手技圧検知デバイス1はヘッド5の裏面のヘッド挿入部5aが柔軟性のある樹脂製のシート15で被覆されており、シート15に切込み16(図2(d))があり、この切込み16を通して手術器具6をトロッカー2内に挿入することができるようにしてある。本発明の手技圧検知デバイス1は、このシート15の表面又は裏面に圧力センサ4を取り付けることもできる。この手技圧検知デバイス1も手術器具6が図2(c)の矢印A方向に出し入れされたり、トロッカー2内で図2(c)の矢印B方向に移動されたりしてシート15に接触すると、シート15が変形して圧力センサ4にかかる手技圧が検知される。手術器具6が手技された場合も同様である。
【0017】
(手技圧検知デバイスの実施形態5)
本発明の手技圧検知デバイスは、トロッカー2内に差し込む鉗子、メス等の手術器具6(図2(a))に圧力センサ4を取り付けたものであってもよい。取り付け箇所は手術器具6の外周面でも内周面であってもよい。この場合はシート15への圧力センサ4の取り付けは不要である。
【0018】
(手技圧検知デバイスの実施形態6)
前記実施形態1~5の手技圧検知デバイス1は、トロッカー2や手術器具6に圧力センサ4を取り付けたものであるが、本発明において圧力センサ4を取り付ける器具はトロッカー2や手術器具6以外のもであってもよく、手技圧を受ける手技圧関連器具、例えば、手技訓練システムの疑似腹壁(疑似体壁)22(図4)に取り付けたパッド26(図4)でもよい。
【0019】
前記実施形態1~6のいずれの手技圧検知デバイス1の場合も、トロッカー2内に挿入した手術器具6を手技すると、圧力センサ4と手術器具6が直に又は間接的に接触して、手技圧が圧力センサ4により継続的に検知される。同時に、手術器具6の動作に伴う手技圧変化もリアルタイムに検知される。ここで検知される手技圧は、腹腔鏡下手術の場合はトロッカー2を介して体壁(腹壁)のポート支点にかかる手技圧であり、手技訓練システムの場合は疑似腹壁(図4)22のポート支点にかかる手技圧である。
【0020】
[トロッカー]
本発明の手技圧検知デバイスに使用するトロッカー2は汎用のトロッカーであっても、新たに開発されたトロッカーであってもよい。汎用のトロッカーには各種形状、構造のものがあるが、基本的には図1(c)のようにヘッド5の先に本体3がある。いずれのトロッカーの場合も、手技圧を検知し易い箇所に、必要数の圧力センサ4を取り付けることができる。
【0021】
[圧力センサ]
本発明の手技圧検知デバイスに使用する圧力センサ4は、トロッカー2内に差し込んだ手術器具6の手技により、腹壁又は疑似腹壁のポート支点に加わる手技圧を検知できるセンサであればよく、例えば、汎用の圧力センサとか歪センサ、手技圧を検知可能な他のセンサを使用可能である。図1(a)、図2(a)では圧力センサ4を四箇所に取り付けてあるが、圧力センサ4は手技中の手技圧を感知し易い箇所に、感知し易い数だけ取り付ければよく、取付個数、取付箇所は特に限定されない。
【0022】
[フィルム状センサ]
圧力センサ4はトロッカー2や手術器具6等に直付けすることもできるが、図3(a)(b)に示すようにシート或いはフィルム(以下「フィルム」という。)7に圧力センサ4を取り付けてフィルム状センサ8を形成し、そのフィルム状センサ8をトロッカー2、手術器具6、他の手技圧関連器具に取り付けることもできる。フィルム7は差込み孔9と五本の仕切り溝10で区画された四枚の仕切り片11を備えており、夫々の仕切り片11に圧力センサ4を取り付けてある。この仕切り溝10を設けることにより夫々の圧力センサ4にかかる手技圧が検知され易くなるようにしてある。図3(a)のフィルム状センサ8はシート7の外側部分7aを図3(b)のように巻き上げて切込み12を広げることができるようにしてある。広げることにより、図3(c)のようにトロッカー2に手術器具6を差し込んでからでもフィルム状センサ8を疑似腹壁22(体壁A)の表面に貼り付けることができる。図3(a)(b)の圧力センサ4はリード線13で端子(コネクタ)14に接続してある。
【0023】
(手技評価・訓練システムの実施形態1)
[人体モデル]
本発明の手術訓練システムの一例を図4(a)(b)に示す。この手技訓練システムは前記した手技圧検知デバイス1を使用して手技訓練ができ、手技の把握や評価もできるシステムである。図4(a)の20は人体モデルであり、人体の腹部を模したものであり、ベース21の上に疑似腹壁22がある。疑似腹壁22は人体の腹壁を模したものである。疑似腹壁22の内側に壁内空間23があり、壁内空間23内に載せ台24があり、それに疑似内臓25を載せてある。疑似内臓25は腸を模したものである。
【0024】
前記ベース21、載せ台24の材質は金属、樹脂等であり、疑似腹壁22は樹脂製の透明な板材であり、ベース21の上にアーチ状に取り付けられている。前記疑似内臓25は生身の人体の腸と同様の触感、弾性を備えた材料、例えば、樹脂、シリコン等で成形されている。図4(b)のように肉厚にして手術器具6で把持または切開することができるようにしてある。ベース21、載せ台24は前記以外の形状、構造、材質であってもよい。疑似内臓25も腸以外であってもよく、手技訓練に必用な内臓を模したものとすることができる。
【0025】
疑似腹壁22には二つの差込み孔(図示せず)があり、夫々の差込み孔にパッド26が取付けられている。夫々のパッド26にはトロッカー差込み孔29があり、それにトロッカー2が挿入され、トロッカー2に手術器具(図示では鉗子)6が差し込まれている。二つのパッド26の間には腹腔鏡(カメラ)Dを差込み可能な腹腔鏡差込み開口部がある。
【0026】
図4(a)のパッド26は円盤状であり、図5(a)(b)に示すように、樹脂やゴム等の弾性材製の外周部27の表側にフィルム状センサ8が貼られており、フィルム状センサ8の裏側であって外周部27の内側に内側材28が充填されており、フィルム状センサ8と内側材28の略中央部にトロッカー差込み孔29がある。内側材28は弾性材であり、図5(b)ではトロッカー差込み孔29内に差し込まれたトロッカー2内の手術器具6が手技によりパッド26の支点(ポート支点)に手技圧がかかると内側材28が変形して、その手技圧が圧力センサ4で検知されるようにしてある。図5(a)(b)のフィルム状センサ8は圧力センサ4がトロッカー差込み孔29の外周四箇所に取り付けられているが、圧力センサ4の取付数、取付箇所は図示したものに限定されず、圧力の検知に必要な数、箇所とすることができる。
【0027】
[圧力検知部、画像モニタ]
図4(a)では腹腔鏡(カメラ)Dが信号処理部40に直に接続され、圧力センサ4が圧力検知部30を通して信号処理部40(例えば、パソコン:PC)に接続され、信号処理部40がTV等の画像モニタGに接続されている。
【0028】
圧力検知部30は例えば図7のような構成であり、個々の圧力センサ4で検知した信号を増幅する信号アンプ31、増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器32、変換されたデジタル信号を信号処理部40に伝送する通信回路33を備えている。
【0029】
[信号処理部]
信号処理部40は通信回路33から送信されたデジタル信号を画像化処理可能な画像化処理機能、画像化された信号を腹腔鏡(カメラ)Dからの映像と同期させて画像モニタGの画面にリアルタイムで表示する同期表示機能、データ保存機能、その他手技訓練に必要な信号を処理して、その後の処理に利用可能なデータ(以下、「手技圧データ」という。)に処理し、画像表示し、保存できるといった種々の機能(ソフト)を備えている。図4(a)では信号処理部40をパソコンPCに内蔵した内蔵型信号処理部としてあるが、信号処理部40はパソコンとは別に設けてパソコンPCに連結できる外付け型信号処理部とすることもできる。
【0030】
図6は画像モニタGに表示された画面であり、画面中央部に画像表示部34があり、画像表示部34の左右に圧力表示部35がある。画像表示部34には腹腔鏡D(図4(a))で撮影された疑似内臓25の撮影画像が表示され、圧力表示部35には圧力センサ4で検知された手技圧を信号処理部40でマーカ、グラフといった図形(手技圧図形)に処理して表示されるようにしてある。右の圧力表示部35には疑似腹壁22(図4(a))の右側のトロッカー2に挿入された手術器具6からの手技圧が表示され、左の圧力表示部35には左側のトロッカー2に挿入された手術器具6からの手技圧が表示されるようにしてある。図6では圧力センサ4にかかる手技圧をマーカ(枠状の図形)36にして表示してある。マーカ36の数で圧力強度を、マーカ36の表示方向(向き)で圧力方向を表示してある。また、マーカ36の数の変化で圧力強度の変化を、マーカの方向の変化で圧力方向の変化を把握・評価できるようにしてある。更に、圧力強度をニュートン(N)でも表示してある。図5ではマーカ36の上に、圧力の強さの目安となるニュートン(N)を0.0、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0と表示してあり、図5(a)の四つのセンサ4a~4dで検知された圧力強度を線グラフ37で表示してある。手技圧図形は少なくとも圧力強度、圧力方法、圧力変化を表示できれば、他の図形、例えば、折れ線グラフ、棒グラフ、円グラフといった図形や、その他の図形であってもよい。モニタ画面上で目視し易ければ数値であってもよい。表示方法も図6以外の方法でもよい。
【0031】
図4(a)のパッド26は圧力センサ4を備えないものでも備えたものでもよい。圧力センサを備えないものの場合は、トロッカー2に圧力センサ4を備えたトロッカー(手技圧検知デバイス1)を使用するか、手術器具6に圧力センサ4を備えた手術器具(手技圧検知デバイス1)を使用することにより、手技中の手技圧を継続的に検知することができる。圧力センサを備えたものの場合は、圧力センサを備えない汎用のトロッカーを使用するか、圧力センサを備えない汎用の手術器具を使用するかしても、手技中の手技圧を継続的に検知することができる。
【0032】
図4(a)の圧力検知部30は圧力センサ4で検知した圧力信号を有線で送信する場合であるが、本発明では無線送信することもできる。無線送信の場合は図8のように、圧力検知部30で検知された圧力をアンプ部38で増幅して無線送信し、その信号を信号処理部40で受信して画像モニタGに画像表示する。このように手技中の手技圧をモニタリングしてモニタ画像に表示することにより、医師や研修医、医学生等の手技を評価することができる。また、医師や研修医、医学生等はこの評価結果より手技の欠点を把握して改善でき、手技向上のための訓練に役立てることができる。
【0033】
(手技評価・訓練システムの実施形態2)
本発明の手技訓練システムのパッド26は図示した以外の形状、構造のものであってもよい。パッド26は設けなくてもよい。パッド26を設けない場合は、圧力センサ4を疑似腹壁22(図4(a))のトロッカー差込み孔に直に取り付けるか、場合によっては取り付けない。圧力センサ4を取り付けた場合はトロッカー2や手術器具6に圧力センサの付いていない汎用のトロッカー2や手術器具6を使用しても、トロッカー差込み孔(ポート支点)にかかる手技圧を検知することができる。圧力センサを取り付けない場合は、圧力センサの付いているトロッカーや手術器具(手技圧検知デバイス1)を使用することにより、トロッカー差込み孔にかかる手技圧を検知することができる。この場合も、手技中の手技圧をモニタリングしてモニタ画像に表示することにより、医師や研修医、医学生等の手技を把握し、評価することができる。また、医師や研修医、医学生等はこの評価結果より手技の欠点を把握して改善でき、手技向上のための訓練に役立てることができる。
【0034】
(手技評価・訓練システムの実施形態3)
図4(a)の手技訓練システムの人体モデル20は疑似腹壁22が樹脂の板材であるが、疑似腹壁22は生身の人体と同様の触感や弾力性のある材質製とすることもできる。この場合は、その疑似腹壁22にトロッカー差込み孔と腹腔鏡差込み開口部を設ける。また、トロッカー差込み孔に圧力センサ4を取り付けることもできる。この場合も、手技中の手技圧をモニタリングしてモニタ画像に表示することにより、医師や研修医、医学生等の手技を把握し、評価することができる。また、医師や研修医、医学生等はこの評価結果より手技の欠点を把握して改善でき、手技向上のための訓練に役立てることができる。
【0035】
(腹腔鏡下手術支援システムの実施形態)
本発明の腹腔鏡下手術支援システムは、通常の腹腔鏡下手術を支援できるものであり、図9のトロッカーCに代えて本発明の圧力センサ付トロッカー(手技圧検知デバイス)1を腹壁A(図9)の孔に挿入し、その手技圧検知デバイス1内に差し込んだ手術器具6を手技して手術を施行する。この手技中の手技圧が手技圧検知デバイス1の圧力センサ4で継続的に検知され、検知された手技圧が圧力検知部30(図4(a))で処理されて信号処理部40に送られ、信号処理部40で画像化された手技圧画像が腹腔鏡Dの撮影画像と共に同じモニタ画面にリアルタイムで表示される。手技者は両画像を観察しながら手術器具6を手技して腹腔鏡下手術を行うことができる。
【0036】
[ロボット制御]
腹腔鏡下手術において、手術器具の手技をロボットで行う場合は、本発明の手技圧検知デバイス1で検知され、圧力検知部30で処理されて信号処理部40に送られた検知圧力を、信号処理部40からロボットに伝送(フィードバック)して、ロボットによる手技圧が低減するように(低侵襲手術になるように)ロボットを制御(コントロール)することができる。この場合は、信号処理部40が制御機能(ソフト)を備えたものとすることができる。また、ロボットの手技中の撮影画像と手技圧図形をモニタ画面に表示することができる。
【0037】
[ロボット制御システム1]
腹腔鏡下手術において、手術器具の手技をロボットで行う場合は、本発明の手技圧検知デバイス1で検知された手技圧を圧力検知部30で処理し、信号処理部40で処理された圧力強度、圧力方向、それら変化のいずれか一又は二以上に基づく制御信号を、信号処理部40からロボットに伝送(フィードバック)して、ロボットによる手技圧が低減するように(低侵襲手術になるように)ロボットを制御(コントロール)することができる。また、ロボットの手技中の撮影画像と手技圧図形をモニタ画面に表示することができる。
【0038】
[ロボット制御システム2]
本発明のロボット制御システムは前記実施形態1とは異なる制御システムであってもよい。近年の産業用ロボット、民生用ロボットは人工知能(AI)を備えて判断能力、評価能力、学習能力等を備えている。手術用ロボットも同様である。腹腔鏡下手術における手術器具の手技にAIを備えたロボットを使用する場合は、手技圧検知デバイス1で検知された手技圧を信号処理部40で処理することなく、検知された手技圧を手術用ロボット自体が把握し、評価し、自らの手技圧を低減できる(低侵襲手術となる)ように制御(セルフコントロール)できるようにしてもよい。必要であれば、手技圧検知デバイス1で検知された手技圧を信号処理部40で処理してから、その処理データに基づいて手術用ロボットが自らの手技圧をセルフコントロールできるようにすることもできる。前記いずれの場合も、モニタ画面への手技圧図形の表示は必ずしも必要はない。場合よっては、モニタ画面そのものもなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
前記した実施形態は腹部の腹腔鏡下手術、腹部の手技訓練を一例としているが、本発明は人体の他の部位の内視鏡下手術、手技訓練に利用することもできる。その場合は、人体モデル20を内視鏡下手術、手技訓練に適するものに変えることができるし、手技圧検知デバイス1もそれら手術或いは手技訓練に適したものに変えることができる。
【0040】
本発明の手技圧検知デバイス1は医師の手技圧検知だけでなく手術ロボットの手技圧検知にも適用することができる。また、手技訓練システムを医師やレジデント(医学生を含む)だけでなく手術ロボットに用いれば、手術ロボットの手技評価、能力訓練をすることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 手技圧検知デバイス
2 トロッカー
3 (トロッカーの)本体
3a (トロッカーの)本体パイプ部
3b (トロッカーの)本体挿入部
4、4a~4d 圧力センサ
5 (トロッカーの)ヘッド
5a ヘッド挿入部
6 手術器具
7 フィルム
7a (フィルムの)外側部分
8 フィルム状センサ
9 (フィルムの)差込み孔
10 (フィルムの)仕切り溝
11 (フィルムの)仕切り片
12 切込み
13 リード線
14 端子(コネクタ)
15 シート
16 切込み
20 人体モデル
21 ベース
22 疑似腹壁
23 壁内空間
24 載せ台
25 疑似内臓
26 パッド
27 (パッドの)外周部
28 (パッドの)内側材
29 (パッドの)トロッカー差込み孔
30 圧力検知部
31 信号アンプ
32 A/D変換器
33 通信回路
34 画像表示部
35 圧力表示部
36 マーカ
37 線グラフ
38 アンプ部
40 信号処理部
A 腹壁(体壁)
B 内部空間
C トロカール(トロッカー)
D 腹腔鏡
E 手術器具
F 信号処理器
G 画像モニタ
PC パソコン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9