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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】多区画型栽培施設
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/18 20060101AFI20220922BHJP
   A01G 9/24 20060101ALI20220922BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20220922BHJP
   A01G 7/02 20060101ALI20220922BHJP
   A01G 27/02 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
A01G9/18
A01G9/24 X
A01G9/24 C
A01G7/00 601Z
A01G7/02
A01G27/02 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018150754
(22)【出願日】2018-08-09
(65)【公開番号】P2019118342
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】P 2017254110
(32)【優先日】2017-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514231295
【氏名又は名称】株式会社テヌート
(73)【特許権者】
【識別番号】513144453
【氏名又は名称】藤原 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100200942
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 高史
(72)【発明者】
【氏名】藤原 慶太
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-153405(JP,A)
【文献】特開2013-243979(JP,A)
【文献】特開2017-035025(JP,A)
【文献】特開2011-004739(JP,A)
【文献】特開平10-178929(JP,A)
【文献】実開平03-012743(JP,U)
【文献】特開2012-095655(JP,A)
【文献】特開2010-268760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/18
A01G 9/24
A01G 7/00
A01G 7/02
A01G 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培施設内に複数の栽培区画が設けられた多区画型栽培施設において、
前記栽培区画ごとに、植えられた栽培植物に炭酸ガスを供給する炭酸ガス供給装置と、送風する複数の小型送風機と、炭酸ガス濃度を測定する炭酸ガス濃度センサ配設され、
前記炭酸ガス供給装置は、前記栽培植物の葉群の下方位置から炭酸ガスを供給するように構成され、
複数の前記小型送風機は、前記栽培植物の下方で、且つ、前記炭酸ガス供給装置から炭酸ガスが供給される位置の直下に位置するように各前記栽培区画の地面上に配設され、
前記栽培施設に設置された機器を制御する中央制御装置が設けられ、
前記中央制御装置は、前記炭酸ガス濃度センサから複数の前記栽培区画ごとの炭酸ガス濃度の測定値を取得して、炭酸ガス濃度が所定の閾値を下回った前記栽培区画に対して炭酸ガスを供給するよう前記炭酸ガス供給装置を制御するよう構成され、また、
前記栽培区画ごとに、複数の前記小型送風機を、上方に向けて風を送るように駆動制御するよう構成されたことを特徴とする多区画型栽培施設。
【請求項2】
前記栽培施設は、天井又は側面に、開閉可能で、開度を調節可能な換気窓が複数設けられており、複数の前記栽培区画には、それぞれ、温度および湿度を測定する温度・湿度センサを備え、
前記中央制御装置は、前記温度・湿度センサから前記栽培区画ごとの温度および湿度の測定値を取得して、
栽培施設全体の温度および湿度が所定の範囲にとどまるように前記換気窓の開度を調節するように構成されていることを特徴とする請求項に記載の多区画型栽培施設。
【請求項3】
前記中央制御装置は、前記栽培施設における前記栽培区画の領域を特定する情報と、前記栽培施設に設置されたセンサの種類及び位置情報と、前記中央制御装置が制御可能な機器の種類及び位置情報と、前記栽培施設に設置されたセンサにより測定された前記栽培施設内の環境情報と、前記中央制御装置が制御可能な機器の制御の内容とを、それぞれ記録した記録装置を備え、
前記記録装置と情報のやり取りが可能な情報端末を備え、
前記情報端末は、前記中央制御装置の記録装置に記録された情報を表示することができるとともに、前記中央制御装置が制御可能な機器の制御の内容を設定することができるように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多区画型栽培施設。
【請求項4】
前記栽培施設に設置された複数のセンサは、それぞれを一意に特定するためのセンサ識別情報を備え、
前記記録装置には、前記センサ識別情報ごとに、センサの種類および位置情報が記録されており、
前記中央制御装置は、所定の通信手段により通信したセンサから、前記センサ識別情報を取得し、取得したセンサ識別情報と前記記録装置に記録されたセンサ識別情報と照合して、通信したセンサを一意に特定することができるように構成されていることを特徴とする請求項に記載の多区画型栽培施設。
【請求項5】
前記中央制御装置が制御可能な複数の機器は、それぞれを一意に特定するための機器識別情報を備え、
前記記録装置には、前記機器識別情報ごとに、機器の種類および位置情報が記録されており、
前記中央制御装置は、所定の通信手段により通信した機器から、前記機器識別情報を取得し、取得した機器識別情報と前記記録装置に記録された機器識別情報と照合して、通信した機器を一意に特定することができるように構成されていることを特徴とする請求項項に記載の多区画型栽培施設。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設内に複数の栽培区画が設けられた栽培施設であって、植物の生育環境を制御して栽培管理をするように構成された多区画型栽培施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
植物栽培を行う施設において、栽培する植物やその収穫物を効率的かつ高品質に育成するためには、施設内の温度、湿度、炭酸ガス濃度、土壌水分量、日照度などの植物の生育に関する環境(以下、「生育環境」という)を把握することが重要である。そこで、栽培施設内において、生育環境に関する情報(以下、「環境情報」という)を測定し、これに基づき、栽培植物にとって好ましい生育環境となるように植物栽培装置を制御する技術が公知である。
【0003】
しかしながら、同一の栽培施設内においても、施設内の地点によって、日照量や大気の状態、土壌の状態などの違いによって生育環境は異なっている。
したがって、栽培施設内の一地点のみで測定した環境情報に基づいて植物栽培装置の制御を行うと、その測定地点から離れた場所に定植された植物について、測定された生育環境と実際の生育環境とで乖離を生じ、好適に栽培するための制御が不十分となるので、その結果、同じ栽培施設において、栽培する植物の品質にばらつきが生じることとなる。
【0004】
特に、単一の栽培施設内において、品種の異なる複数の植物を栽培する場合、品種ごとに生育に適した生育環境は異なるため、この問題は顕著なものとなる。
【0005】
これらの問題を解決するには、栽培施設内の栽培領域を複数の区画に分けて、これらの区画ごとに施設内の生育環境を細かく管理できるようにすることが考えられる。例えば、特許文献1には、植物栽培の栽培領域が複数区画分けされた施設内において、複数の栽培領域毎に灌水のタイミング及び灌水量を制御する灌水の供給方法及び灌水コントローラが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-173653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載された灌水の供給方法及び灌水コントローラにおいては、区画ごとに植物への水分供給を制御することしかできないため、土壌水分量を除き、温度、湿度、炭酸ガス濃度、日照度などの条件を区画ごとに制御して、栽培する品種に適した生育環境に制御し、多品種栽培に対応することはできなかった。
また、特許文献1に記載された灌水の供給方法及び灌水コントローラにおいては、複数の区画内に設置された複数のセンサ及び機器の位置関係を特定する手段がないので、複数の区画の生育環境を同期させたり、これらの区画をまたぐような範囲で生育環境を管理したりすることができなかった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、栽培植物の区画ごとに生育環境を管理し、品質の良い植物を効率的に栽培できるようにするとともに、単一の施設内における多品種栽培を可能にする多区画型栽培施設を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のかかる目的は、栽培施設内に複数の栽培区画が設けられた多区画型栽培施設において、前記栽培区画ごとに栽培植物が植えられており、複数の前記栽培区画には、前記栽培植物に炭酸ガスを供給する炭酸ガス供給装置と、炭酸ガス濃度を測定する炭酸ガス濃度センサとが、前記複数の栽培区画ごとに配設され、前記栽培施設に設置された機器を制御する中央制御装置が設けられ、前記中央制御装置は、前記炭酸ガス濃度センサから複数の前記栽培区画ごとの炭酸ガス濃度の測定値を取得して、炭酸ガス濃度が所定の閾値を下回った栽培区画に対して炭酸ガスを供給するよう前記炭酸ガス供給装置を制御することを特徴とする多区画型栽培施設によって達成される。
【0010】
本発明によれば、栽培区画ごとに炭酸ガス濃度センサと、炭酸ガス供給装置とが設けられているので、中央制御装置が、栽培区画ごとに、炭酸ガス濃度センサにより栽培植物の光合成が行われるタイミングを把握して、そのタイミングで炭酸ガス供給装置から炭酸ガスを供給させることができるので、単に炭酸ガスを供給して栽培施設内全体に充満させる場合に比し、少ない炭酸ガスで効率的に栽培植物の光合成を促進させることができ、ランニングコストを抑えつつ、植物を品質良く栽培することができる。
【0011】
また、栽培区画ごとに、栽培植物に対する炭酸ガスの供給量が適切になるように、炭酸ガス供給を制御することができるので、栽培区画ごとに品種の異なる植物を栽培しても、その品種に適した生育環境をそれぞれの植物に提供することができ、単一の施設内で一度に無理なく多品種を栽培することができる。
【0012】
本発明の好ましい実施態様においては、前記炭酸ガス供給装置が、前記栽培植物の葉群の下方位置から炭酸ガスを供給するように構成され、複数の前記栽培区画のそれぞれの地面上に、複数の小型送風機が、前記栽培植物の下方であって、前記炭酸ガス供給装置から炭酸ガスが供給される位置の直下に位置するように配設され、前記中央制御装置が、前記栽培区画ごとに、複数の前記小型送風機を、上方に向けて風を送るように駆動させるように構成されている。
【0013】
本発明のこの好ましい実施態様によれば、栽培区画ごとに、栽培植物の葉群の下に供給されている炭酸ガスを、さらに下方の位置から、送風機により上方に向けて送ることができるので、栽培区画ごとに上昇気流を発生させ、供給した炭酸ガスを栽培植物の葉の裏側に向けて十分に送ることができるから、より少ない炭酸ガスで効率的に光合成を促進させることができ、ランニングコストを抑えつつ、植物の品質を向上させることができる。
【0014】
本発明のさらに好ましい実施態様においては、複数の前記栽培区画には、それぞれ、前記栽培植物の根元に水または養液を供給する液体供給装置と、前記栽培区画の土壌中の水分量および養分量を測定する土壌環境センサとが配設され、前記中央制御装置が、前記土壌環境センサから複数の前記栽培区画ごとの土壌中の水分量および養分量の測定値を取得して、水分量のみが所定の閾値を下回った栽培区画の土壌には水を供給し、水分量が所定の閾値を下回り、かつ、養分量が所定の閾値を下回った栽培区画の土壌には養液を供給するよう前記液体供給装置を制御するように構成されている。
【0015】
本発明のこのさらに好ましい実施態様によれば、中央制御装置が、栽培区画ごとに、土壌環境センサにより栽培植物の灌水・施肥が必要なタイミングを把握して、そのタイミングで液体供給装置から必要な量の水又は養液を供給させることができるので、栽培植物に対し、一般的に行なわれる定時的な灌水・施肥よりも、水分の過不足による根腐れや立ち枯れの発生、肥料の過不足による作物障害の発生を抑制することができる。
【0016】
また、本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記栽培施設は、天井又は側面に、開閉可能で、開度を調節可能な換気窓が複数設けられており、複数の前記栽培区画には、それぞれ、温度および湿度を測定する温度・湿度センサを備え、前記中央制御装置は、前記温度・湿度センサから前記栽培区画ごとの温度および湿度の測定値を取得して、栽培施設全体の温度および湿度が所定の範囲にとどまるように前記換気窓の開度を調節するように構成されている。
【0017】
本発明のこのさらに好ましい実施態様によれば、中央制御装置が、温度センサおよび湿度センサにより栽培施設内の温度および湿度を把握し、換気窓を開閉させて栽培施設内の温度および湿度を変化させることにより、栽培施設内の温度および湿度が栽培植物の生育に適したものになるように調節することができる。
【0018】
また、本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記栽培施設における前記栽培区画の領域を特定する情報と、前記栽培施設に設置されたセンサの種類及び位置情報と、前記中央制御装置が制御可能な機器の種類及び位置情報と、前記栽培施設に設置されたセンサにより測定された前記栽培施設内の環境情報と、前記中央制御装置が制御可能な機器の制御の内容とを、それぞれ記録した記録装置を備え、前記記録装置と情報のやり取りが可能な情報端末を備え、前記情報端末は、前記中央制御装置の記録装置に記録された情報を表示することができるとともに、前記中央制御装置が制御可能な機器の制御の内容を設定することができるように構成されている。
【0019】
本発明のこのさらに好ましい実施態様によれば、情報端末を操作することにより、中央制御装置の記録装置に記録されている栽培区画の領域に関する情報と、センサ及び機器のそれぞれの種類及びそれぞれに関する情報と、センサにより測定された環境情報と、機器の制御の内容とを情報端末に表示することができるので、使用者が栽培施設内の生育環境に関する情報を把握することができ、中央制御装置と通信可能な機器の制御の内容を設定できるので、使用者が栽培施設内の生育環境を手動で管理することができる。
【0020】
また、本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記栽培施設に設置された複数のセンサは、それぞれを一意に特定するためのセンサ識別情報を備え、前記記録装置には、前記センサ識別情報ごとに、センサの種類および位置情報が記録されており、前記中央制御装置は、所定の通信手段により通信したセンサから、前記センサ識別情報を取得し、取得したセンサ識別情報と前記記録装置に記録されたセンサ識別情報と照合して、通信したセンサを一意に特定することができるように構成されている。
【0021】
本発明のこのさらに好ましい実施態様によれば、中央制御装置は、栽培施設にある複数のセンサを、それぞれのセンサ識別情報を読み取ることにより特定できるので、複数のセンサを個別に特定するために、通信ポートや物理的な配線といった通信手段に基づく識別に頼る必要がなく、センサと中央制御装置との通信の構成に影響されずに、各センサが測定する環境情報を混同することなく取得することができる。
【0022】
また、本発明のさらに好ましい実施態様においては、前記中央制御装置が制御可能な複数の機器は、それぞれを一意に特定するための機器識別情報を備え、前記記録装置には、前記機器識別情報ごとに、機器の種類および位置情報が記録されており、前記中央制御装置は、所定の通信手段により通信した機器から、前記機器識別情報を取得し、取得した機器識別情報と前記記録装置に記録された機器識別情報と照合して、通信した機器を一意に特定することができるように構成されている
【0023】
本発明のこのさらに好ましい実施態様によれば、中央制御装置は、栽培施設にある複数の制御可能な機器類を、それぞれの機器識別情報を読み取ることにより特定できるので、複数の機器類を個別に特定するために、通信ポートや物理的な配線といった通信手段に基づく識別に頼る必要がなく、機器類と中央制御装置との通信の構成に影響されずに、各機器類に対する指令を混同することなく送ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、栽培植物の区画ごとに生育環境を管理し、品質の良い植物を効率的に栽培できるようにするとともに、単一の施設内における多品種栽培を可能にする多区画型栽培施設を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の好ましい実施態様に係る多区画型栽培施設の外観を示す略斜視図である。
図2図2は、図1の多区画型栽培施設の内部構成を示す略平面図である。
図3図3(a)は、図2の炭酸ガス供給装置の内部構成を示す模式図であり、図3(b)は、図2の液体供給装置の内部構成を示す模式図である。
図4図4は、図2の栽培区画に設置されたセンサユニット及び小型送風機を示す略斜視図である。
図5図5は、図4のセンサユニットに含まれるセンサの一部を格納するセンサボックスの内部構造を示す略縦断面図である。
図6図6は、本発明の好ましい実施態様に係る多区画型栽培施設の電気系統を示すブロック図である。
図7図7は、中央制御装置の記録装置の構成を示すブロック図である。
図8図8は、図7の区画情報データベースに格納されているデータを示す表である。
図9図9は、図7のセンサ情報データベースに格納されているデータを示す表である。
図10図10は、図7の機器情報データベースに格納されているデータを示す表である。
図11図11は、図7の環境情報データベースに格納されているデータを示す表である。
図12図12は、図7の栽培植物データベースに格納されているデータを示す表である。
図13図13は、図7の制御条件データベース格納されているデータを示す表である。
図14図14は、図2の中央制御装置により栽培区画ごとに行われる炭酸ガス供給制御のフローチャートである。
図15図15は、図2の中央制御装置と応答可能な携帯情報端末の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照しつつ、詳細に説明を加える。
【0027】
図1は、本発明の好ましい実施態様に係る多区画型栽培施設の外観を示す略斜視図である。
図1に示されるように、多区画型栽培施設1は、天井及び側壁が太陽光を透過可能に構成されており、栽培施設1の内部には、栽培用の敷地に複数の栽培植物4が植えられている。
【0028】
栽培施設1の天井及び側面には、開閉機構(図示せず)を備えた換気窓3が複数設けられており、各換気窓3は開閉機構によって、その開度を調節可能に構成されている。換気窓3の開閉機構(図示せず)は、ネットワークに接続可能な通信手段を備えており、無線通信により送られる開閉指令に基づいて、換気窓3の開閉動作をするように構成されている。
【0029】
図2は、図1に示された栽培施設1の内部構成を示す略平面図である。
図2に示されるように、栽培施設1内には、植物を栽培するための領域が小領域にブロック分けされて設けられており、それぞれの小領域にA1~A16の番号が割り当てられている。また、植物の栽培環境を管理する単位として、栽培施設1内の領域を2x2に分割した栽培区画2が設定されており、それぞれにC1~C4の番号が割り当てられている。したがって、栽培区画C1には、小領域A1~A4が、栽培区画C2には、小領域A5~A8が、栽培区画C3には、小領域A9~A12が、栽培区画C4には、小領域A13~A16が、それぞれ含まれている。
【0030】
各栽培区画2には栽培植物4が複数の列をなすように植えられており、栽培区画2ごとに、所定濃度の炭酸ガスを供給可能な炭酸ガス供給装置20と、水及び養液を供給可能な液体供給装置21と、栽培施設1内の生育環境を測定する2つのセンサユニット40(U1~U8)と、送風可能な小型送風機12とが設けられている。図示してはいないが、炭酸ガス供給装置20と、液体供給装置21と、センサユニット40と、小型送風機12とは、それぞれがネットワークに接続可能な通信手段を備えている。
【0031】
また、図2に示されるように、栽培施設1内には、中央制御装置30が設けられている。中央制御装置30は、CPU、記憶装置、記録装置、プログラム等を有する電子演算機器が筐体に納められた装置であり、筐体内部には中央通信部31を備え、筐体の外装には使用者が中央制御装置30との情報のやり取りができるように構成された情報端末32を備えている。
【0032】
各栽培区画2(C1~C4)において、炭酸ガス供給装置20からは炭酸ガス供給管22が延びており、炭酸ガス供給管22は栽培植物4の列に対応するように2つに分岐して、分岐した先にはそれぞれ、可撓性を有する多孔性パイプである炭酸ガス散布管24が接続されている。2本の炭酸ガス散布管24は、長尺の管状体であって、それぞれが並んだ2つの小領域をまたぐように延ばされ、かつ、栽培植物4のなす列に沿って、栽培植物4の葉群の下側を通るように配設されている。
【0033】
したがって、ある栽培区画2で炭酸ガス供給装置20から、炭酸ガスが炭酸ガス供給管22を通じて炭酸ガス散布管24に供給されると、供給された炭酸ガスは、炭酸ガス散布管24の管壁からその栽培区画2内の栽培植物4の葉群の下側から散布される構成になっている。
【0034】
図3(a)は図2の炭酸ガス供給装置20の内部構成を示す模式図であり、図3(b)は図2の液体供給装置21の内部構成を示す模式図である。
図3(a)に示されるように、炭酸ガス供給装置20は、圧縮空気貯蔵容器20aと、炭酸ガスボンベ20bと、気体用バルブユニット28とを備えており、気体用バルブユニット28には無線通信によりネットワークと接続可能な通信機28aが設けられている。
【0035】
圧縮空気貯蔵容器20aは、エアコンプレッサー等により圧縮された空気を貯蔵する容器であり、炭酸ガスボンベ20bは、高濃度の炭酸ガスが封入された容器である。圧縮空気貯蔵容器20aと炭酸ガスボンベ20bとは、それぞれ気体用バルブユニット28に、圧搾空気および炭酸ガスを供給可能に接続されており、気体用バルブユニット28は炭酸ガス供給管22に、圧搾空気または炭酸ガスを供給可能に接続されている。気体用バルブユニット28は、図示していないが複数の弁が組み合わされてできており、圧縮空気貯蔵容器20aから供給される圧縮空気に炭酸ガスボンベ20bから供給される高濃度の炭酸ガスを所定の割合で混合させ、所定濃度となった炭酸ガスを所定の圧力及び流量で炭酸ガス供給管22に供給可能に構成されている。
【0036】
また、気体用バルブユニット28には通信機28aが接続されており、気体用バルブユニット28を制御するための指令を、ネットワークを介して送信することができる。したがって、図2に示した中央制御装置30から気体用バルブユニット28を制御する指令を送ることにより、炭酸ガス供給装置20に対し任意の濃度及び流量の炭酸ガスの供給及びその停止を制御することができる。
【0037】
図3(b)に示されるように、液体供給装置21は、貯水タンク21aと、液肥貯蔵容器21bと、液体用バルブユニット29とを備えており、液体用バルブユニット29には無線通信によりネットワークと接続可能な通信機29aが接続されている。
【0038】
貯水タンク21aは、十分な量の水が貯留されている容器であり、液肥貯蔵容器21bは、液体肥料が貯蔵された容器である。貯水タンク21aと液肥貯蔵容器21bとは、それぞれ液体用バルブユニット29に、水および液体肥料を供給可能に接続されており、液体用バルブユニット29は液体供給管23に、水または養液を供給可能に接続されている。液体用バルブユニット29は、図示していないが複数の弁が組み合わされてできており、貯水タンク21aから供給される水に液肥貯蔵容器21bから供給される液体肥料を所定の割合で混合させた養液を所定の圧力及び流量で液体供給管23に供給できるように構成されている。
【0039】
また、液体用バルブユニット29には通信機29aが接続されているので、液体用バルブユニット29を制御するための指令を、ネットワークを介して送ることができる。したがって、図2に示した中央制御装置30から液体用バルブユニット29を制御する指令を送ることにより、液体供給装置21に対し任意の流量の水、又は任意の流量及び濃度の養液の供給及びその停止を制御することができる。
【0040】
図2および図3に示されるように、各栽培区画2において、液体供給装置21からは液体供給管23が延びており、栽培植物4の列に対応するように分岐して、分岐した先にはそれぞれ、液体散布管25が接続されている。図2に示されるように、本実施態様においては、液体散布管25は可撓性を有する多孔性パイプによって形成されており、栽培植物4の列に沿って栽培植物4の根の近傍を通るように土中に埋設されている。したがって、液体供給装置21から水又は養液が、液体供給管22を通じて液体散布管25に供給されると、栽培植物4の根元付近の土中に水又は養液が供給される。
【0041】
このように、栽培施設1は、栽培区画2ごとに、栽培植物4に対し、液体供給装置21から液体供給管23及び液体散布管25を介して灌水及び施肥を行うことができるよう構成されており、灌水や施肥の際は、所定の時間間隔で水又は養液を供給するように制御可能になっている。
【0042】
また、栽培区画2ごとに、土壌の水分量及び養分量を測定し、検出した値に応じて灌水及び施肥を行うようにすることもできる。後述するが、センサユニット40は、土壌の水分量を検出する土壌水分量センサ及び土壌の電気伝導率(EC値)を測定するECセンサを含んで構成されているため、土壌水分量センサにより検出された土壌の水分量が所定値未満で、ECセンサにより検出された土壌の養分量が所定値以上である場合には、液体供給装置21から所定量の水が供給されるように制御し、検出された土壌の水分量および養分量がそれぞれ所定値未満である場合には、液体供給装置21から所定量の養液が供給されるように制御することもできる。
【0043】
このように、栽培植物4に対し、灌水や施肥を所定の条件に応じて行うことによって、一般的に行なわれる定時的な灌水・施肥よりも、水分の過不足による根腐れや立ち枯れの発生、肥料の過不足による作物障害の発生を抑制することができる。
【0044】
図4は、図2の栽培区画2に設置されたセンサユニット40及び小型送風機12を示す略斜視図であり、図5は、図4に示されたセンサユニット40に含まれるセンサの一部を格納するセンサボックス45の内部構造を示す略縦断面図である。
図4に示されるように、各栽培区画2には、太陽光によって発電する太陽光パネル14と、地面に設置された複数の小型送風機12と、栽培植物4の間に立設された支持柱47とがそれぞれ設けられている。支持柱47の側面には、センサ類を格納するセンサボックス45が取り付けられており、支持柱47の上部には、風向風力センサ48が取り付けられている。
【0045】
センサボックス45には、上部に日照度センサ43が取り付けられており、図5に示されるように、内部にユニット通信部15とユニット制御部17と、炭酸ガス濃度センサ41と、温度・湿度センサ42とが設けられている。ユニット通信部15と、炭酸ガス濃度センサ41と、温度・湿度センサ42とは、それぞれ基板46に取り付けられ、ユニット制御部17に電気的に接続されており、日照度センサ43は、基板46につなげられた配線46aを介してユニット制御部17に電気的に接続されている。また、各栽培区画2の土中には土壌環境センサ44が挿し込まれている。土壌環境センサ44も、基板46につなげられた配線13cを介してユニット制御部17に電気的に接続されている。
【0046】
ユニット通信部15は、無線通信を可能にする通信機器であり、無線通信は、例えば、IEEE802.11規格の無線LANの方式で行われる。ユニット通信部15が基板46に取り付けられていることにより、ユニット制御部17は、図2に示された中央制御装置30と通信することができる。
【0047】
炭酸ガス濃度センサ41は大気中の炭酸ガス濃度を検出するセンサであり、温度・湿度センサ42は大気中の温度及び湿度を検出するセンサである。
センサボックス45の筐体の側面には、センサボックス45の内外を通気可能に連通する複数の通気孔45aが設けられており、これにより、センサボックス45筐体内に外気が導入されることにより、センサボックス45内に配設された炭酸ガス濃度センサ41及び温度・湿度センサ42は、炭酸ガス濃度、温度及び湿度を精度よく検出することができる。
【0048】
また、センサボックス45の筐体が、筐体内に配設された炭酸ガス濃度センサ41と温度・湿度センサ42とを保護するように構成されているため、栽培施設1内に農薬が撒かれても、炭酸ガス濃度センサ41や温度・湿度センサ42に農薬が付着して測定精度が劣化することを防止することができる。
【0049】
日照度センサ43は、設置位置における日照度を測定するセンサである。日照度センサ43により、栽培植物4が光合成可能な日照の有無を検出することができる。すなわち、炭酸ガス供給の条件に日照量を追加し、より確実に光合成可能なタイミングを図ることができる。
【0050】
土壌環境センサ44は、土壌中の水分量を測定する土壌水分量センサ、土壌中のpH値を測定するpHセンサ及び土壌中の電気伝導率(EC値)を測定するECセンサを含んで構成されたセンサ群であり、図4に示されるように、先端に設けられたプローブ部44aを土壌に挿し込むことで、土壌中の水分量、土壌中の酸性度を示すpH値、および土壌中の養分量(肥料分の含有傾向)を示すEC値を一括して検出することができるように構成されている。したがって、土壌環境センサ44によって、栽培区画2の土壌中の水分量、pH値、およびEC値を検出し、これらの値に応じて、その栽培区画2における栽培植物4に必要な水分や液肥の供給をすることができる。
【0051】
風向風力センサ48は3次元の風向及び風力を検出できる超音波型の風向風力センサである。風向風力センサ48によって、栽培施設1内のセンサ設置位置における上昇気流や横風の発生を検出することができる。
【0052】
また、センサユニット40は、炭酸ガス濃度センサ41と、温度・湿度センサ42と、日照度センサ43と、土壌環境センサ44(土壌水分量センサ、pHセンサ、ECセンサ)と、風向風力センサ48とを含んで構成されており、これらのセンサが検出した情報はユニット制御部17によってまとめられ、ユニット通信部15により図2に示された中央制御装置30に送られる。したがって、中央制御装置30は、栽培区画2ごとに、その栽培区画2内に設置されたセンサユニット40の各センサが測定した数値の平均値をそれぞれ算出し、栽培施設1内の環境情報を栽培区画2ごとに取得可能に構成されている。
【0053】
太陽光パネル14は、栽培施設1の天井(図示せず)から下方に延びた軸状の吊下部材11にアーム14aを介して取り付けられている。太陽光パネル14からは、アーム14aおよび吊下部材11の内部を通って下方に延ばされた電源ケーブル13が地面まで垂れ下がっており、電源ケーブル13の先には複数の配線を引くことができる電源ソケット13aが設けられている。
【0054】
電源ソケット13aからは、配線13bが複数の小型送風機12と、支持柱47に接続されており、図示していないが支持柱47中に設けられた配線を介してセンサボックス45内の各種センサ及び電子機器と、風向風力センサ48とに電力を供給することができるように構成されている。また、配線13cは、センサボックス45から土壌環境センサ44に電力供給可能に構成されている。したがって、太陽光パネル14によって発電された電力により、複数の小型送風機12と、センサボックス45内の各種センサ及び電子機器と、土壌環境センサ44と、風向風力センサ48とを稼動するのに必要な電力を補うことができる。
【0055】
上述のように、センサユニット40は炭酸ガス濃度センサ41を備えており、栽培区画2ごとに炭酸ガス濃度を測定できるため、中央制御装置30は、炭酸ガス濃度が低下するタイミング、すなわち、光合成が行われて炭酸ガスの不足が生じるタイミングを把握することができる。その結果、中央制御装置30が、栽培植物4に対し、炭酸ガスが不足しているときに、葉の近傍に炭酸ガスを供給することができ、栽培区画ごとに必要な炭酸ガスを供給することができるから、単に炭酸ガスを供給して栽培施設1内全体に充満させる場合に比し、少ない炭酸ガスで効率的に光合成を促進させることができる。
【0056】
なお、炭酸ガスは空気よりも重いので、栽培植物4の葉群の下側から炭酸ガスを散布するだけでは下方に流されやすく、供給した炭酸ガスの多くが栽培植物4に吸収されずに地面付近に滞留することがある。その結果、供給した炭酸ガスが有効に活用されず、不経済である。
【0057】
そこで、炭酸ガスを地面付近に滞留することを防止するため、各栽培区画2の地面には、複数の小型送風機12が、炭酸ガス散布管24の近傍に所定間隔で配設されており、上方に向けて送風可能に構成されている。したがって、栽培区画2内の各小型送風機12を一斉に駆動させることにより炭酸ガス散布管24の近傍で上昇気流を発生させ、炭酸ガス散布管24より栽培区画2内に供給される炭酸ガスが地面近くに滞留することを防止するとともに、炭酸ガスを上方に流すことによって、栽培植物4に好適に吸収させることができるように構成されている。
【0058】
また、このように、炭酸ガス散布管24の近傍に設けた複数の小型送風機12を用いて、栽培植物の葉群の下方から上方へと送風可能となっているため、地面近傍に滞留している炭酸ガスを栽培植物4の葉群の下から葉の裏側に向けて供給することができる。したがって、葉の裏側に数多く存在する気孔に、炭酸ガスを効率的に供給し、吸収させることができるから、より少ない炭酸ガスで効率的に光合成を促進させることができ、ランニングコストを抑えつつ、植物の品質を向上させることができる。
【0059】
また、小型送風機12は、上方に向けたファンを鉛直方向から任意の方向に所定角度傾けて送風方向を変更できるように構成されている。そのため、換気窓3が開くなどして栽培施設1内に横方向の気流が生じたことを風向風力センサ48が検出すると、中央制御装置30が横方向の気流を打ち消すように小型送風機12を傾けて送風させることで横方向の気流の影響を弱め、供給した炭酸ガスが栽培植物4の葉群の外に流されることを防ぐことができる。
【0060】
図6は、図1ないし図5に示された本発明の好ましい実施態様にかかる栽培施設1の電気系統を示すブロック図である。
図6に示されるように、中央制御装置30は中央通信部31を介してネットワークNWと接続されており、各栽培区画2(C1~C4)において、センサユニット40はユニット通信部15を介してネットワークNWと接続され、小型送風機12、炭酸ガス供給装置20及び液体供給装置21はそれぞれの通信手段を介してネットワークNWと接続されている。また、換気窓3の開閉機構も、開閉機構に設けられた通信手段を介してネットワークNWと接続されている。ネットワークNWは、例えば、WAN(Wide Area Network)、専用通信網、VPN(Virtual Private
Network)、またはインターネット等によって構築されたものである。
【0061】
各栽培区画2(C1~C4)において、センサユニット40に含まれる炭酸ガス濃度センサ41、温度・湿度センサ42、日照度センサ43、土壌環境センサ44、風向風力センサ48が測定した環境情報は、ユニット制御部17によってユニット通信部15からネットワークNWを介して中央制御装置30に送信され、中央制御装置30は、受信された情報を、中央通信部31を通じて受け取ると、各栽培区画2(C1~C4)の識別情報と環境情報を紐づけて記録装置30aに記録させる。
【0062】
したがって、中央制御装置30は、記録装置30aを参照することで、各栽培区画2(C1~C4)に配設された炭酸ガス濃度センサ41、温度・湿度センサ42、日照度センサ43、土壌環境センサ44、風向風力センサ48が測定した環境情報を、どの栽培区画2(C1~C4)で測定された環境情報であるかを識別可能に取得することができる。
【0063】
また、中央制御装置30は、中央通信部31からネットワークNWを通じ、換気窓3、各栽培区画2(C1~C4)に配設された小型送風機12、炭酸ガス供給装置20及び液体供給装置21に対し、それぞれ、制御命令を送信可能に構成されている。
【0064】
したがって、中央制御装置30は、各栽培区画2(C1~C4)において、それぞれ、炭酸ガス濃度センサ41が測定した炭酸ガス濃度と、温度・湿度センサ42が測定した温度及び湿度と、日照度センサ43が測定した日照度とを取得して、栽培植物4に対し光合成を促進するために適切な量の炭酸ガスを適切なタイミングで炭酸ガス供給装置20から供給したり、土壌環境センサ44が測定した土壌水分量、土壌のEC値及びpH値を取得して、栽培植物4の生育を促進する適切な量の養液を適切なタイミングで液体供給装置21から供給したり、風向風力センサ48が測定した風向及び風力を取得して、供給した炭酸ガスが栽培植物4に向かうように小型送風機12を駆動させて送風したりすることができるように構成されている。
【0065】
また、中央制御装置30は、換気窓3の開閉機構を制御することによって換気窓3を開閉させて、栽培施設1の換気を行い、栽培施設1内の温度および湿度が栽培植物4の生育に適したものになるように調節することができる。例えば、大気が乾燥する時期に栽培施設1内の温度を下げようとする場合、栽培施設1内の飽差が栽培植物4の光合成に適した状態を維持できるように、天井にある換気窓3を所定時間だけわずかに開けて、天井に溜まった温度の高い空気だけを外に逃がすことで、栽培施設1内の湿度を保ちつつ、温度を適度に下げることができる。
【0066】
また、使用者は、中央制御装置30の情報端末32を操作して、中央制御装置30の記録装置30aに記録されている各栽培区画2(C1~C4)を識別する情報と、各センサ及び各機器の種類及び位置情報と、各センサにより測定された環境情報と、各機器の制御の内容とを情報端末に表示することができるので、使用者が栽培施設1内の生育環境に関する情報を把握することができ、中央制御装置30と通信可能な機器の制御の内容を設定できるので、栽培施設内の生育環境を手動で管理することができる。
【0067】
図7は、中央制御装置30の記録装置30aの構成を示したブロック図であり、図8は、図7の区画情報データベース33に格納されているデータを示す表であり、図9は、図7のセンサ情報データベース34に格納されているデータを示す表であり、図10は、図7の機器情報データベース35に格納されているデータを示す表であり、図11は、図7の環境情報データベース36に格納されているデータを示す表であり、図12は、図7の栽培植物データベース37に格納されているデータを示す表であり、図13は、図7の制御条件データベース38格納されているデータを示す表である。
【0068】
図7に示されるように、中央制御装置30の記録装置30aには、区画情報データベース33と、センサ情報データベース34と、機器情報データベース35と、環境情報データベース36と、栽培植物データベース37と、制御条件データベース38とが、それぞれ記録されている。センサ情報データベース34と、機器情報データベース35と、環境情報データベース36と、栽培植物データベース37とは、それぞれが区画情報データベース33と関係付けられている。制御条件データベース38は、他のデータベース(区画情報データベース33、センサ情報データベース34、機器情報データベース35、環境情報データベース36、栽培植物データベース37)と関係付けられたデータベースであり、使用者が設定した制御条件を格納するように構成されている。
【0069】
図8に示されるように、区画情報データベース33には、各小領域に割り当てられた番号(A1~A16)が領域IDとして設定されており、各栽培区画2(C1~C4)の情報と対応付けられて記録されている。
【0070】
図示していないが、栽培施設1に設置された全てのセンサには、それぞれ固有の識別情報であるセンサID(N1~N40)が割り当てられており、中央制御装置30は、通信の際にこれらのセンサの、それぞれのセンサIDを取得できるように構成されている。図9に示されるように、センサ情報データベース34には、このセンサIDについて、センサの種類と、センサが属するセンサユニット40のセンサユニットID(U1~U8)と、各センサが配置された位置に対応する領域IDとが対応付けられて記録されている。
【0071】
したがって、中央制御装置30は、センサIDが付された各センサを識別して個別に通信することができ、かつ、センサIDと関連付けられた領域IDから、そのセンサがどの栽培施設1内における栽培領域のどの位置に割り当てられているかを一意に特定することができる。また、記録装置30aからセンサ情報データベース34を参照することにより、センサ情報を取得することができる。
【0072】
また、このように、中央制御装置30は、栽培施設1にある複数のセンサを、それぞれのセンサIDを読み取ることにより特定できるので、複数のセンサを個別に特定するために、通信ポートや物理的な配線といった通信手段に基づく識別に頼る必要がなく、センサと中央制御装置との通信の構成に影響されずに、各センサが測定する環境情報を混同することなく取得することができる。
【0073】
図示していないが、栽培施設1に設置された、中央制御装置30により制御可能な全ての機器類(小型送風機12、炭酸ガス供給装置20、液体供給装置21、換気窓3)には、それぞれ固有の識別情報である機器ID(M1~)が割り当てられており、中央制御装置30は、通信の際にこれらの機器類の、それぞれの機器IDを取得できるように構成されている。図10に示されるように、機器情報データベース35には、この機器IDと、機器の種類と、機器の設置位置に対応する領域IDとが対応付けられて記録されている。
【0074】
したがって、中央制御装置30は、機器IDが付された各機器を識別して個別に通信することができ、かつ、機器IDと関連付けられた領域IDから、その機器がどの栽培施設1内のどの位置に割り当てられているかを一意に特定することができる。また、記録装置30aから機器情報データベース35を参照することにより、機器情報を取得することができる。
【0075】
また、このように、中央制御装置30は、栽培施設1にある複数の制御可能な機器類を、それぞれの機器IDを読み取ることにより特定できるので、複数の機器類を個別に特定するために、通信ポートや物理的な配線といった通信手段に基づく識別に頼る必要がなく、機器類と中央制御装置30との通信の構成に影響されずに、各機器類に対する指令を混同することなく送ることができる。また、機器IDは機器の増減等に応じて、柔軟に付与し直すことができるため、機器の配置変更等に柔軟に対応でき便利である。
【0076】
図11に示されるように、環境情報データベース36には、センサ情報データベース34に登録されている各センサにより所定の時刻ごとに測定された環境情報、すなわち、炭酸ガス濃度センサ41によって測定された炭酸ガス濃度(ppm)、温度・湿度センサ42によって測定された温度(℃)、湿度(%)、日照度センサ43によって測定された日照度(lx)、土壌環境センサ44によって測定された土壌水分量(%)、EC値(mS/cm)、pH値、風向風力センサ48によって測定された風向(u,v,w)、風力(m/s)が格納されている。これらの環境情報には、測定センサ、環境情報の種類、および測定時間ごとに記録される。
【0077】
したがって、中央制御装置30は、記録装置から環境情報データベース36を参照することにより、各センサが測定した現在または過去の環境情報の測定値を取得することができ、測定された環境情報の履歴から、栽培施設1内の生育環境の時間変化を把握することができる。
【0078】
図12に示されるように、栽培植物データベース37には、栽培区画2ごとに栽培施設1内で栽培されている植物の品種ID(P1~P4)が品種情報として記録可能に構成されているので、中央制御装置30は、栽培区画2ごとに異なる品種が栽培、これらの品種を特定することができる。
【0079】
図13に示されるように、制御条件データベース38は、所定の制御条件、すなわち、ある環境条件のもとでどの機器をどのように制御するかという情報が設定されると、制御内容ごとに制御ID(J1~)が割り当てられて記録されるように構成されている。また、各制御条件は、他の制御条件が実行されているか否かも条件として組み込むことができ、それらは先行制御条件として設定される。
【0080】
図13では一例として、栽培区画2の、センサユニット40がある小領域A2,A3において、炭酸ガス濃度センサ20(N1,N2)が、炭酸ガス濃度が200ppm未満であることを検出したら、区画C1に設置された炭酸ガス供給装置20(M17)から炭酸ガスの供給を開始する(J1)とともに、区画C1に設置された小型送風機12(M1~M4)の駆動を開始し(J2)、小領域A2,A3において、炭酸ガス濃度センサ20(N1,N2)が、炭酸ガス濃度が800ppm以上であることを検出したら、区画C1の炭酸ガス供給装置20(M17)から炭酸ガスの供給を終了する(J3)とともに、区画C1の小型送風機12(M1~M4)の駆動を停止する(J4)という一連の制御条件が記録されている。このとき、J3はJ1が実行されていれば実行され、J4はJ2が実行されていれば実行されるように設定されている。
【0081】
このように、使用者は所望の制御条件を高い自由度で設定することができるとともに、中央制御装置30は、記録装置から制御条件データベース38を参照することにより、設定された一連の制御条件を参照することができ、参照した制御条件に基づいて、栽培施設1内の各機器を制御することができる。
【0082】
以上に説明したように、中央制御装置30は、栽培施設1内の炭酸ガス供給装置20、液体供給装置21および小型送風機12ならびに各センサユニット40を、栽培施設1内における位置情報を含めて個別に特定することができるようにシステムが構成されているので、栽培区画2ごとに生育環境を測定し、測定した情報に基づいて、炭酸ガスの供給量や灌水量などを適切になるように各種装置を制御することができ、これにより、栽培植物4の生育環境を細かく管理することができる。
【0083】
また、中央制御装置30は、栽培植物データベース37を参照して栽培区画2ごとに栽培植物4の品種を特定し、環境情報データベース36、および制御条件データベース38を参照して各栽培区画2の生育環境に応じた炭酸ガス供給や灌水・施肥を行えるため、栽培区画2ごとに異なる品種の植物を栽培しても、その品種に適した生育環境をそれぞれの植物に提供することができ、単一の施設内における多品種栽培にも良好に対応することができる。
【0084】
例えば、栽培区画2の区画C1では光合成に大量の炭酸ガスを必要とするトマトを栽培しつつ、同時に区画C2では光合成に少量の炭酸ガスで済むイチゴを栽培する場合、区画C1の炭酸ガス供給装置20(M17)には炭酸ガスを多く供給するようにし、区画C2の炭酸ガス供給装置20(M18)には炭酸ガスを少なく供給するようにすることで、いずれの栽培区画2においても適切な量の炭酸ガスを供給して各栽培植物4の光合成を十分に促進することができる。
【0085】
また、栽培区画2は小領域(A1~A16)によって細分化されているので、中央制御装置30は、複数の栽培区画2に部分的にまたがるような範囲での生育環境の管理も可能である。例えば、栽培施設1の片側の側窓付近に位置する領域、すなわち、栽培区画2の区画C1にある小領域A1及びA2と、区画C2にある小領域A9及びA10を合わせた領域において、センサユニット40の組(U1,S5)の測定値を取得することにより、側窓付近の環境情報を取得して、その場所の温度が所定の値を超えたら側窓にある開閉窓3を開くよう制御するとともに、小領域A1、A2、A9及びA10にある小型送風機12を駆動させて側窓付近の温度が下がるようにするといった制御が可能になる。
【0086】
図14は、中央制御装置30により栽培区画2ごとに行われる炭酸ガス供給制御の一例を示すフローチャートである。
ここで、中央制御装置30の記録装置の制御条件データベース38には、炭酸ガス供給に関して設定された制御条件が格納されているものとし、以下、炭酸ガス濃度のみが炭酸ガス供給のトリガーとなる制御条件のもとで行われる炭酸ガス供給制御につき説明を加える。
【0087】
図14に示されるように、各栽培区画2において、ユニット制御部17が中央制御装置30から取得した制御条件に関する情報から閾値となる炭酸ガス濃度を取得し、センサユニット40の炭酸ガス濃度センサ41により炭酸ガス濃度の値が検出されると、ユニット制御部17により、検出された炭酸ガス濃度が所定値未満であるかが判断される(ステップS1)。
【0088】
検出された炭酸ガス濃度が所定値未満である場合、ユニット制御部17から中央制御装置30に対し当該栽培区画2の領域IDとともに、検出された炭酸ガス濃度が所定値未満であるの旨の情報が送られる。中央制御装置30は、それらの情報を受け取ると、記録装置から区画情報データベース33及びセンサ情報データベース34を参照して当該栽培区画2を特定し、参照した制御条件に基づいて、機器情報データベース35から特定された当該栽培区画2に設置された小型送風機12に対し、上方に所定の風量で送風するように指令を送る(ステップS2)。
【0089】
当該栽培区画2において、小型送風機12が中央制御装置30から指令を受け取ると、上方への送風が開始される。このとき、当該栽培区画2に設置されたセンサユニット40の風向風力センサ48が検出した風向及び風力が上方へ向かう所定の風力であるか、すなわち、上昇気流が生じているかがユニット制御部17により、制御条件に基づいて判断される(ステップS3)。
【0090】
上昇気流が生じていると判断された場合、ユニット制御部17から中央制御装置30に対し当該栽培区画2の領域IDとともに、上昇気流が生じた旨の情報が送られる。中央制御装置30は、それらの情報を受け取ると、記録装置から区画情報データベース33及びセンサ情報データベース34を参照して当該栽培区画2を特定し、参照した制御条件に基づいて、機器情報データベース35から特定された当該栽培区画2に設置された炭酸ガス供給装置20に対し、所定濃度の炭酸ガスを供給するように指令を送る(ステップS4)。
【0091】
当該栽培区画2において、炭酸ガス供給装置20が中央制御装置30から指令を受け取ると、炭酸ガス散布管24から炭酸ガスが散布される。炭酸ガス散布管24の下方からは小型送風機12の送風による上昇気流が生じているので、炭酸ガス散布管24から散布された炭酸ガスは、栽培植物4の葉群に対し、下方から供給される。
【0092】
その後、当該栽培区画2に設置されたセンサユニット40の炭酸ガス濃度センサ41が検出した炭酸ガス濃度が所定値以上であるかが、ユニット制御部17により、制御条件に基づいて判断される(ステップS5)。
【0093】
検出された炭酸ガス濃度が所定値以上である場合、ユニット制御部17から中央制御装置30に対し当該栽培区画2の領域IDとともに、検出された炭酸ガス濃度が所定値以上であるの旨の情報が送られる。中央制御装置30は、それらの情報を受け取ると、記録装置から区画情報データベース33及びセンサ情報データベース34を参照して当該栽培区画2を特定し、参照した制御条件に基づいて、機器情報データベース35から特定された当該栽培区画2に設置された炭酸ガス供給装置20に対し、炭酸ガスの供給を停止するように指令を送る(ステップS6)とともに、当該栽培区画2に設置された小型送風機12に対し、送風を停止するように指令を送る(ステップS7)。
【0094】
以上のステップS1~S7を繰り返すことにより、栽培区画2ごとに好適な炭酸ガス供給制御が実現される。
【0095】
図15は、図2の中央制御装置30と応答可能な携帯情報端末60を示す模式図である。
図15に示されるように、携帯情報端末60は、タッチパネル式の液晶画面を備えた携帯型の電子演算機器であり、ネットワークNWを介して中央制御装置30と通信可能に構成されている。携帯情報端末60は、通信により中央制御装置30の記録装置に記録されている各データベース、すなわち、区画情報データベース33、センサ情報データベース34、機器情報データベース35、環境情報データベース36、栽培植物データベース37、制御条件データベース38から任意の情報を取得でき、取得した情報は、画面タッチ操作により画面上に表示されるように構成されている。
【0096】
また、液晶画面には制御条件設定メニューを表示することができ、制御条件設定メニューから、画面タッチ操作により、区画、センサ、制御機器を選択し、センサの検出閾値や機器の制御内容を入力することで、任意の制御条件を設定することができる。制御条件が設定されると、携帯情報端末60から制御条件をその設定内容に変更する旨の指令が通信により中央制御装置30に送られ、制御条件データベース38に記録される。
【0097】
したがって、使用者は、中央制御装置30から離れた位置にいる場合であっても、栽培施設1内の環境情報や各機器の制御情報を携帯情報端末60に表示させて、栽培施設1内の生育環境を把握することができ、また、携帯情報端末60を操作することにより、制御条件を設定できるので、栽培施設1内の生育環境を手動で管理することができる。
【0098】
以上、本発明の好ましい実施態様につき説明を加えたが、本発明は以上の実施態様に限定されることなく特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0099】
例えば、前記実施態様においては、図2に示されるように、栽培装置1の栽培区画2(C1~C4)は、栽培施設1内の領域を2x2の4等分に区割りされているが、栽培区画の区割りは必ずしもそのようにする必要はなく、施設のサイズや形状に応じて任意におこなってもよい。さらには、区画の割り当ては平面的でなくてもよく、栽培用の棚を設けて上下段に植物を栽培可能な領域を作り、棚の高さによっても栽培区画を分けるようにしてもよい。一例として、前記実施態様のように、2x2の区画を設け、それぞれに上下2段の棚を追加した場合は、2x2x2の8等分の栽培区画を用意することができる。
【0100】
また、前記実施態様においては、図2に示されるように、栽培施設1内の植物が栽培可能な領域をA1~A16の小領域にブロック分けしているが、必ずしもそのようにブロック分けする必要はなく、任意の細かさでブロック分けしてもよく、ブロック分けでなく、GPS等で測定した栽培施設内の位置情報に基づいて、植物が栽培可能な領域に座標を割り当てるようにしてもよい。また、区画情報データベース33において、領域IDのそれぞれにGPSで特定される二次元座標を紐づけて、栽培施設内の1内の位置を二次元座標で管理するように構成してもよい。例えば、領域IDのA1に(1,1)、A2に(1,2)、A3に(2,1)、A4に(2,2)、・・・というように紐づけることで、栽培施設1内の位置が座標で特定可能となる。さらに、栽培施設1内の小領域の位置に高さの要素を付加するため、領域IDに三次元座標を紐づけて、栽培施設内の1内の位置を三次元座標で管理するように構成してもよい。例えば、領域IDがA1で特定される小領域において、2段の栽培棚により植物を栽培する場合、領域IDのA1の一段目の栽培棚に三次元座標の(1,1,1)、二段目の栽培棚に(1,1,2)を割り振る。このように、栽培施設内の1内の位置を三次元座標で管理することにより、センサや各種機器の制御において、高さの要素も管理できるため、多段の栽培棚による栽培に好適に対応して、生育環境を管理することができる。例えば、多段の栽培棚の棚ごとに日照度を取得するセンサを配設して、棚ごとの日照度を取得し、その棚ごとに日照度に応じて二酸化炭素の供給量を制御するといったことが可能となる。
【0101】
また、前記実施態様においては、炭酸ガス供給管22は栽培植物4の列の分だけ分岐させているが、必ずしもそのように分岐させる必要はなく、栽培植物4の背が高くて葉群の下から供給した炭酸ガスが葉群全体に行きわたらない場合や、上記のように一定の高さごとに栽培区画を分けた場合においては、炭酸ガス供給管22を上下方向にさらに分岐させ、栽培植物4の各列において、複数の炭酸ガス散布管24が上下に配されるようにしてもよい。
【0102】
また、前記実施態様においては、各種センサはセンサユニット40として一か所にまとめているが、必ずしも同一箇所にまとめる必要はなく、生育環境のうち精度よく測定したいものについてはセンサの数を増やし、精度が高くなくても良いものはセンサの数を減らしてもよいし、センサの種類ごとに設置位置を変えてもよい。この場合、センサIDは、本実施態様のようにセンサユニット40ごとに付与するのではなく、さらに細分化してセンサの種類や特定のグループ(土壌の環境を測定するセンサ群や、センサボックス45内のセンサ群など)ごとに区別できるように付与することが望ましい。
【0103】
また、前記実施態様においては、栽培区画2ごとに1つずつ炭酸ガス供給装置20及び液体供給装置21を設けているが、これらの装置は、栽培区画2ごとに独立して炭酸ガス又は水・養液の供給を制御できるように構成されていれば、必ずしも栽培区画2ごとに設ける必要はなく、一つの装置が複数の栽培区画2にまたがって設け、炭酸ガス又は水・養液を供給するようにしてもよい。例えば、気体用バルブユニット28及び液体用バルブユニット29は栽培区画2ごとに設ける一方、複数の栽培区画2にまたがって、圧縮空気貯蔵容器20aや炭酸ガスボンベ20bを設け、又は貯水タンク21aおよび液肥貯蔵容器21bを複数の栽培区画2にまたがって設けることもできる。
【0104】
また、前記実施態様においては、図13に示される表および図14に示されるフローチャートのように、制御条件として用いられているのは炭酸ガス濃度の値のみであるが、制御条件が必ずしも一種類のセンサの測定値についてのみ設定されるわけではなく、異なる種類のセンサの測定値を組み合わせた複合的な条件を設定することも可能である。
【0105】
また、前記実施態様においては、図14に示されるフローチャートのように、中央制御装置30により栽培区画2ごとに炭酸ガス供給装置20を制御する例を示したが、炭酸ガス供給装置20に加えて、中央制御装置30が取得した環境情報に応じて、液体供給装置21を制御するなど、他の装置を制御するように構成することもできる。例えば、中央制御装置30は、炭酸ガス供給装置20による炭酸ガス供給のタイミングと合わせて、センサユニット40に含まれる土壌水分量センサおよびECセンサにより、炭酸ガス供給地点の土壌の水分量及び養分量の測定値を取得する構成とし、検出された土壌の養分量が所定値以上である場合には、液体供給装置21から所定量の水が供給されるように制御し、検出された土壌の水分量および養分量がそれぞれ所定値未満である場合には、液体供給装置21から所定量の養液が供給されるように制御することで、栽培植物4の生育を好適に促進することができる。
【0106】
また、前記実施態様においては、図9および10に示されるように、各センサおよび機器は、IDとして番号を振って個別に管理できるようにしているが、必ずしも番号をこの通りに振る必要はなく、任意の順番で番号を振り分けてもよく、これらの番号を使用者が適宜振り直せるようにしてもよい。そして、各センサおよび機器には表示機を設けてこれらの番号を表示し、使用者が目視により各センサおよび機器に割り当てられた番号を確認できるようにしてもよい。
【0107】
さらに、あるセンサユニット40に含まれるセンサが一部故障してしまった場合などには、隣接するセンサユニット40の同種のセンサが測定した環境情報を流用することで環境情報に抜けが出ることを防ぐようにしてもよい。例えば、U1(センサユニット40)に含まれるN1(炭酸ガス濃度センサ41)が故障して測定値を返さなくなってしまった場合、N1が測定したものとして、S2(センサユニット40)に含まれるN2(炭酸ガス濃度センサ41)の測定値を流用できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0108】
1 栽培施設
2 栽培区画
3 換気窓
4 栽培植物
11 吊下部材
12 小型送風機
13 電源ケーブル
13a 電源ソケット
13b 配線
13c 配線
14 太陽光パネル
14a アーム
15 ユニット通信部
17 ユニット制御部
20 炭酸ガス供給装置
20a 圧縮空気貯蔵容器
20b 炭酸ガスボンベ
21 液体供給装置
21a 貯水タンク
21b 液肥貯蔵容器
22 炭酸ガス供給管
23 液体供給管
24 炭酸ガス散布管
25 液体散布管
28 気体用バルブユニット
28a 通信機
29 液体用バルブユニット
29a 通信機
30 中央制御装置
30a 記録装置
31 中央通信部
32 情報端末
33 区画情報データベース
34 センサ情報データベース
35 機器情報データベース
36 環境情報データベース
37 栽培植物データベース
38 制御条件データベース
40 センサユニット
41 炭酸ガス濃度センサ
42 温度・湿度センサ
43 日照度センサ
44 土壌環境センサ
44a プローブ部
45 センサボックス
45a 通気孔
46 基板
46a 配線
47 支持柱
48 風向風力センサ
60 携帯情報端末
NW ネットワーク
図1
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