(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】光断層画像撮影装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20220922BHJP
G01B 9/02 20220101ALI20220922BHJP
G01N 21/21 20060101ALN20220922BHJP
【FI】
G01N21/17 625
G01B9/02
G01N21/21 Z
(21)【出願番号】P 2017246635
(22)【出願日】2017-12-22
【審査請求日】2020-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】501299406
【氏名又は名称】株式会社トーメーコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山成 正宏
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-535093(JP,A)
【文献】特開2014-228473(JP,A)
【文献】特開2016-057197(JP,A)
【文献】特開2007-163241(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0044566(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0160611(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0253907(US,A1)
【文献】特開2016-104151(JP,A)
【文献】特開2010-220774(JP,A)
【文献】JU, Myeong Jin,Advanced multi-contrast Jones matrix optical coherence tomography for Doppler and polarization sensitive imaging,OPTICS EXPRESS,Optical Society of America,2013年,Vol.21, No.16,p.19412-19436
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
G01B 9/00-9/10
A61B 1/00-1/32
A61B 3/00-3/18
A61B 5/00-5/01
G01J 9/00-9/04
G02B 27/00-30/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光感受型の光断層画像撮影装置であって、
光源と、
前記光源の光から測定光を生成すると共に、生成した前記測定光を被検物に照射して前記被検物からの反射光を生成する測定光生成部と、
前記光源の光から参照光を生成する参照光生成部と、
前記測定光生成部で生成される前記被検物からの前記反射光と、前記参照光生成部で生成される前記参照光とを合波して干渉光を生成する干渉光生成部と、
前記干渉光生成部で生成された前記干渉光から干渉信号を検出する干渉光検出部と、
前記干渉光検出部で検出された干渉信号から前記被検物の断層画像を生成する演算部と、を備えており、
前記干渉光検出部は、前記干渉光を干渉信号に変換する第1の検出器及び第2の検出器と、前記第1の検出器から出力される前記干渉信号をサンプリングする第1の信号処理部と、前記第2の検出器から出力される前記干渉信号をサンプリングする第2の信号処理部とを備え、
前記第1及び第2の信号処理部のそれぞれは、当該信号処理部に外部から入力されたタイミングで前記干渉信号をサンプリングし、
前記演算部は、前記第1及び第2の信号処理部のそれぞれでサンプリングされた前記干渉信号を用いて
、ジョーンズ行列で表される被検物の偏光特性の前記断層画像を生成し、
前記測定光生成部で生成される前記反射光には、第1の光路長を有する第1補正光と、前記第1の光路長とは異なる第2の光路長を有する第2補正光が少なくとも含まれており、
前記演算部は、前記第1及び第2の信号処理部のそれぞれでサンプリングされた前記干渉信号に含まれる前記第1補正光による第1補正信号と前記第2補正光による第2補正信号を用いて、前記第1及び第2の信号処理部のサンプリングタイミングの同期ずれを補正し、
補正後の干渉信号を用いてジョーンズ行列を再構成し、
前記測定光生成部は、
前記測定光の光路を分岐する分岐手段と、
前記分岐手段によって分岐された一方の光路上に配置される光路長調整手段と、を備えており、
前記分岐手段によって分岐された他方の光路上の光によって、前記被検物に照射される測定光を生成し、
前記光路長調整手段によって光路長が調整された前記第1補正光と前記第2補正光が生成され、
前記光路長調整手段は、前記分岐手段によって分岐された一方の光路上に配置され、前記測定光の一部が通過するガラスブロックを備えており、
前記測定光生成部は、前記ガラスブロックを通過する光によって前記第1補正光を生成し、前記ガラスブロックを通過しない光によって前記第2補正光を生成する、光断層画像撮影装置。
【請求項2】
偏光感受型の光断層画像撮影装置であって、
光源と、
前記光源の光から測定光を生成すると共に、生成した前記測定光を被検物に照射して前記被検物からの反射光を生成する測定光生成部と、
前記光源の光から参照光を生成する参照光生成部と、
前記測定光生成部で生成される前記被検物からの前記反射光と、前記参照光生成部で生成される前記参照光とを合波して干渉光を生成する干渉光生成部と、
前記干渉光生成部で生成された前記干渉光から干渉信号を検出する干渉光検出部と、
前記干渉光検出部で検出された干渉信号から前記被検物の断層画像を生成する演算部と、を備えており、
前記干渉光検出部は、前記干渉光を干渉信号に変換する第1の検出器及び第2の検出器と、前記第1の検出器から出力される前記干渉信号をサンプリングする第1の信号処理部と、前記第2の検出器から出力される前記干渉信号をサンプリングする第2の信号処理部とを備え、
前記第1及び第2の信号処理部のそれぞれは、当該信号処理部に外部から入力されたタイミングで前記干渉信号をサンプリングし、
前記演算部は、前記第1及び第2の信号処理部のそれぞれでサンプリングされた前記干渉信号を用いて
、ジョーンズ行列で表される被検物の偏光特性の前記断層画像を生成し、
前記測定光生成部で生成される前記反射光には、第1の光路長を有する第1補正光と、前記第1の光路長とは異なる第2の光路長を有する第2補正光が少なくとも含まれており、
前記演算部は、前記第1及び第2の信号処理部のそれぞれでサンプリングされた前記干渉信号に含まれる前記第1補正光による第1補正信号と前記第2補正光による第2補正信号を用いて、前記第1及び第2の信号処理部のサンプリングタイミングの同期ずれを補正し、
補正後の干渉信号を用いてジョーンズ行列を再構成し、
前記測定光生成部は、
前記測定光の光路を分岐する分岐手段と、
前記分岐手段によって分岐された一方の光路上に配置される光路長調整手段と、を備えており、
前記分岐手段によって分岐された他方の光路上の光によって、前記被検物に照射される測定光を生成し、
前記光路長調整手段によって光路長が調整された前記第1補正光と前記第2補正光が生成され、
前記光路長調整手段は、前記分岐手段によって分岐された一方の光路上に配置され、前記測定光の一部が通過するガラスブロックを備えており、
前記測定光生成部は、第1の回数だけ前記ガラスブロックを通過する光によって前記第1補正光を生成し、前記第1の回数とは異なる第2の回数だけ前記ガラスブロックを通過する光によって前記第2補正光を生成する、光断層画像撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、干渉信号をサンプリングする複数の信号処理部を備える光断層画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
干渉信号をサンプリングする複数の信号処理部を備える光断層画像撮影装置が開発されている。このような光断層画像撮影装置は、干渉光を干渉信号に変換する複数の検出器を備えており、複数の検出器のそれぞれに対して信号処理部が設けられている。すなわち、光断層画像撮影装置は、複数の信号処理部を備えている。複数の検出器のそれぞれは、干渉光から干渉信号を生成する。複数の信号処理部のそれぞれは、複数の検出器のうちの対応する1つの検出器から出力される干渉信号をサンプリングする。複数の信号処理部は、外部から入力されるトリガー信号に基づくタイミングで干渉信号をサンプリングする。そして、複数の信号処理部でそれぞれサンプリングされた干渉信号を用いて断層画像が生成される。例えば、特許文献1に、複数の信号処理部を備える光断層画像撮影装置の一例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の光断層画像撮影装置では、複数の信号処理部は、外部から入力されるトリガー信号に基づくタイミングでそれぞれ干渉信号をサンプリングする。そして、複数の信号処理部はそれぞれ干渉信号を処理し、それらの処理結果に基づいて断層画像が生成される。このため、各信号処理部で正しいタイミングで干渉信号がサンプリングされないと、正確な断層画像を生成できないことになる。しかしながら、光学系や電気配線の寸法誤差等によって、それぞれの信号処理部がトリガー信号を取得するタイミングがずれることがある。このような場合には、複数の信号処理部でサンプリングされた干渉信号が同期しないため、正しい断像画像を生成できないという問題があった。本明細書は、複数の信号処理部のサンプリングタイミングのずれを精度よく補正する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書に開示する光断層画像撮影装置は、光源と、光源の光から測定光を生成すると共に生成した測定光を被検物に照射して被検物からの反射光を生成する測定光生成部と、光源の光から参照光を生成する参照光生成部と、測定光生成部で生成される被検物からの反射光と参照光生成部で生成される参照光とを合波して干渉光を生成する干渉光生成部と、干渉光生成部で生成された干渉光から干渉信号を検出する干渉光検出部と、干渉光検出部で検出された干渉信号から被検物の断層画像を生成する演算部と、を備えている。干渉光検出部は、干渉光を干渉信号に変換する第1の検出器及び第2の検出器と、第1の検出器から出力される干渉信号をサンプリングする第1の信号処理部と、第2の検出器から出力される干渉信号をサンプリングする第2の信号処理部とを備えている。第1及び第2の信号処理部のそれぞれは、当該信号処理部に外部から入力されたタイミングで前記干渉信号をサンプリングする。演算部は、第1及び第2の信号処理部のそれぞれでサンプリングされた干渉信号を用いて断層画像を生成する。測定光生成部で生成される反射光には、第1の光路長を有する第1補正光と、第1の光路長とは異なる第2の光路長を有する第2補正光が少なくとも含まれている。演算部は、第1及び第2の信号処理部のそれぞれでサンプリングされた干渉信号に含まれる第1補正光による第1補正信号と前記第2補正光による第2補正信号を用いて、第1及び第2の信号処理部のサンプリングタイミングのずれを補正する。
【0006】
上記の光断層画像撮影装置では、測定光生成部において生成される被検物の反射光には、第1補正光と、第1補正光と光路長が異なる第2補正光を含んでいる。このため、第1及び第2の信号処理部でそれぞれサンプリングされる干渉信号のいずれにも、第1補正光による第1補正信号と、第2補正光による第2補正信号が含まれる。演算部は、これらの補正信号を用いることによって、複数の信号処理部でそれぞれサンプリングされた干渉信号のサンプリングタイミングのずれを補正する。このため、第1の信号処理部と第2の信号処理部とでサンプリングタイミングがずれてしまった場合であっても、サンプリングタイミングを同期させることができる。これにより、正しい断層画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例に係る光断層画像撮影装置の光学系の概略構成を示す図。
【
図3】実施例に係る光断層画像撮影装置の制御系を示すブロック図。
【
図4】サンプリングトリガー/クロック発生器の構成を示すブロック図。
【
図5】複数の信号処理部のサンプリングタイミングのずれを補正する処理の一例を示すフローチャート。
【
図6】第1信号処理部と第j信号処理部の間のサンプリングのずれ量を検出する処理の一例を示すフローチャート。
【
図7】
図6のステップS38の処理の詳細を示すフローチャート。
【
図8】
図6のステップS42の処理の詳細を示すフローチャート。
【
図9】
図6のステップS44の処理の詳細を示すフローチャート。
【
図10】複数の信号処理部のサンプリングタイミングのずれを補正したときの、波長板の回転角と位相遅延量との関係を示す図。
【
図11】複数の信号処理部のサンプリングタイミングのずれを補正したときの、波長板の回転角と測定された波長板の角度との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0009】
(特徴1)本明細書が開示する光断層画像撮影装置では、測定光生成部は、測定光の光路を分岐する分岐手段と、分岐手段によって分岐された一方の光路上に配置される光路長調整手段と、を備えていてもよい。分岐手段によって分岐された他方の光路上の光によって、被検物に照射される測定光を生成してもよい。光路長調整手段によって光路長が調整された第1補正光と第2補正光が生成されてもよい。このような構成によると、分岐手段によって、被検物の反射光を生成する光路と、第1補正光及び第2補正光を生成する光路が分岐される。このため、被検物の反射光を生成するための光路とは別個の光路上に第1補正光及び第2補正光が生成され、第1補正光及び第2補正光を好適に生成することができる。
【0010】
(特徴2)本明細書が開示する光断層画像撮影装置では、光路長調整手段は、分岐手段によって分岐された一方の光路上に配置され、測定光の一部が通過する光学素子を備えていてもよい。測定光生成部は、光学素子を通過する光によって第1補正光を生成し、光学素子を通過しない光によって第2補正光を生成してもよい。このような構成によると、測定光の一部が通過する光学素子を設置することによって、光路を分岐させる数を増加させることなく、同一の光路上に光路長の異なる複数の光を生成できる。したがって、部品点数を増加させることなく、第1補正光と第2補正光を生成することができる。
【0011】
(特徴3)本明細書が開示する光断層画像撮影装置では、測定光路長調整手段は、分岐手段によって分岐された一方の光路上に配置され、測定光の一部が通過する光学素子を備えていてもよい。測定光生成部は、第1の回数だけ光学素子を通過する光によって第1補正光を生成し、第1の回数とは異なる第2の回数だけ光学素子を通過する光によって第2補正光を生成してもよい。このような構成によっても、同一の光路上に光路長の異なる複数の光を生成でき、部品点数を増加させることなく第1補正光と第2補正光を生成することができる。
【実施例】
【0012】
以下、実施例に係る光断層画像撮影装置について説明する。本実施例の光断層画像撮影装置は、波長掃引型の光源を用いた波長掃引型のフーリエドメイン方式(swept-source optical coherence tomography:SS-OCT)で、被検物の偏光特性を捉えることが可能な偏光感受型OCT(polarization-sensitive OCT:PS-OCT)の装置である。なお、本明細書に開示の技術は、偏光感受型OCTに限定されるものではなく、通常のOCT、例えば眼底OCTや前眼部OCTにも適用することも可能である。また、OCTの方式も、SS-OCTに限定するものではなく、フーリエドメイン方式を用いた他の方式、例えば、スペクトルドメインOCT(spectral-domain OCT:SD-OCT)や、フーリエドメイン方式以外の方式(例えば、タイムドメイン方式等)に適用することも可能である。
【0013】
図1に示すように、本実施例の光断層画像撮影装置は、光源11と、光源11の光から測定光を生成する測定光生成部(21~29,31,32,401~404)と、光源11の光から参照光を生成する参照光生成部(41~46,51)と、測定光生成部で生成される被検物500からの反射光と参照光生成部で生成される参照光とを合波して干渉光を生成する干渉光生成部60,70と、干渉光生成部60,70で生成された干渉光を検出する干渉光検出部80,90と、を備えている。
【0014】
(光源)
光源11は、波長掃引型の光源であり、出射される光の波長(波数)が所定の周期で変化する。被検物500に照射される光の波長が変化(掃引)するため、被検物500からの反射光と参照光との干渉光から得られる信号をフーリエ解析することで、被検物500の深さ方向の各部位から反射される光の強度分布を得ることができる。
【0015】
なお、光源11には、偏光制御装置12及びファイバカプラ13が接続され、ファイバカプラ13にはPMFC(偏波保持ファイバカプラ)14及びサンプリングトリガー/クロック発生器100が接続されている。したがって、光源11から出力される光は、偏光制御装置12及びファイバカプラ13を介して、PMFC14及びサンプルトリガー/クロック発生器100のそれぞれに入力される。サンプリングトリガー/クロック発生器100は、光源11の光を用いて、後述する信号処理器83,93それぞれのサンプリングトリガー及びサンプリングクロックを生成する。
【0016】
(測定光生成部)
測定光生成部(21~29,31,32,401~404)は、PMFC14に接続されたPMFC21と、PMFC21から分岐する2つの測定光路S1,S2と、2つの測定光路S1,S2を接続する偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25と、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に接続されるSMFC(シングルモードファイバカプラ)26と、SMFC26から分岐する2つの測定光路S3,S4と、測定光路S3に接続されるレンズ27、ガルバノミラー28,29及びレンズ30と、測定光路S4に接続されるレンズ401,402、ミラー403及びガラスブロック404(
図2参照)を備えている。測定光路S1には、光路長差生成部22とサーキュレータ23が配置されている。測定光路S2には、サーキュレータ24のみが配置されている。したがって、測定光路S1と測定光路S2との光路長差ΔLは、光路長差生成部22によって生成される。光路長差ΔLは、被検物500の深さ方向の測定範囲よりも長く設定してもよい。これにより、光路長差の異なる干渉光が重なることを防止できる。光路長差生成部22には、例えば、光ファイバが用いられてもよいし、ミラーやプリズム等の光学系が用いられてもよい。本実施例では、光路長差生成部22に、1mのPMファイバを用いている。また、測定光生成部は、PMFC31,32をさらに備えている。PMFC31は、サーキュレータ23に接続されている。PMFC32は、サーキュレータ24に接続されている。
【0017】
上記の測定光生成部(21~29,31,32,401~404)には、PMFC14で分岐された一方の光(すなわち、測定光)が入力される。PMFC21は、PMFC14から入力する測定光を、第1測定光と第2測定光に分割する。PMFC21で分割された第1測定光は測定光路S1に導かれ、第2測定光は測定光路S2に導かれる。測定光路S1に導かれた第1測定光は、光路長差生成部22及びサーキュレータ23を通って偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される。測定光路S2に導かれた第2測定光は、サーキュレータ24を通って偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される。PMファイバ304は、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に、PMファイバ302に対して円周方向に90度回転した状態で接続される。これにより、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される第2測定光は、第1測定光に対して直交する偏光成分を持った光となる。測定光路S1に光路長差生成部22が設けられているため、第1測定光は第2測定光に対して光路長差生成部22の距離だけ遅延している(すなわち、光路長差ΔLが生じている)。偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25は、入力される第1測定光と第2測定光を重畳する。
【0018】
偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25から出力される光(第1測定光と第2測定光が重畳された光)はSMFC26に入力され、SMFC26は、入力された光を第3測定光と第4測定光に分割する。SMFC26で分割された第3測定光は測定光路S3に導かれ、第4測定光は測定光路S4に導かれる。測定光路S3に導かれた第3測定光は、レンズ27、ガルバノミラー28、29及びレンズ30を介して被検物500に照射される。被検物500に照射される光は、ガルバノミラー28,29によってx-y方向に走査される。被検物500に照射された光は、被検物500の表面や内部で反射する。被検物500からの反射光は、入射経路とは逆に、レンズ30、ガルバノミラー29,28及びレンズ27を通って、SMFC26に入力され、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される。
【0019】
図2に示すように、測定光路S4に導かれた第4測定光は、レンズ401に照射される。レンズ401,402の間には、ガラスブロック404が配置されている。ガラスブロック404は、レンズ401から照射される第4測定光の一部が通過するように配置されている。例えば、
図2では、ガラスブロック404は、レンズ401から照射される第4測定光のうち、下方の略半分の光が通過すると共に上方の略半分の光が通過しないように配置される。これにより、レンズ401から照射される第4測定光の一部(
図2では下方を通る光)は、ガラスブロック404を通過し、レンズ402を介してミラー403に照射される。一方、レンズ401から照射される第4測定光の他の部分(
図2では上方を通る光)は、ガラスブロック404を通過することなく、レンズ402を介してミラー403に照射される。ミラー403からの反射光は、レンズ402を通過し、その一部がガラスブロック404を通過してレンズ401に照射され、他の部分がガラスブロック404を通過することなくレンズ401に照射される。そして、レンズ401を通過して、SMFC26に入力される。したがって、SMFC26には、ガラスブロック404を通過した光と、ガラスブロック404を通過しない光が入力される。なお、ガラスブロック404を通過した光は、ガラスブロック404を1回通過した光(すなわち、レンズ401,402の間を往復する際に往路と復路のどちらか一方のみがガラスブロック404を通過した光)であってもよいし、ガラスブロック404を2回通過した光(すなわち、レンズ401,402の間を往復する際に往路と復路の両方でガラスブロック404を通過した光)であってもよいし、それら両方であってもよい。ミラー403及びガラスブロック404は、測定光路S4を通った測定光が、計測レンジのナイキスト周波数近傍に測定されるように配置される。SMFC26に入力された光は、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力される。
【0020】
偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25に入力された被検物500の反射光及びミラー403の反射光は、偏光ビームコンバイナ/スプリッタ25で互いに直交する2つの偏光成分に分割される。ここでは便宜上それらを水平偏光反射光(水平偏光成分)と垂直偏光反射光(垂直偏光成分)と呼ぶ。そして、水平偏光反射光は測定光路S1に導かれ、垂直偏光反射光は測定光路S2に導かれる。水平偏光反射光は、サーキュレータ23により光路が変更され、PMFC31に入力される。PMFC31は、入力される水平偏光反射光を分岐して、PMFC61,71のそれぞれに入力する。したがって、PMFC61,71に入力される水平偏光反射光には、第1測定光による反射光成分と、第2測定光による反射光成分が含まれている。垂直偏光反射光は、サーキュレータ24により光路が変更され、PMFC32に入力される。PMFC32は、入力される垂直偏光反射光を分岐して、PMFC62,72に入力する。したがって、PMFC62,72に入力される垂直偏光反射光には、第1測定光による反射光成分と、第2測定光による反射光成分が含まれている。
【0021】
(参照光生成部)
参照光生成部(41~46,51)は、PMFC14に接続されたサーキュレータ41と、サーキュレータ41に接続された参照遅延ライン(42,43)と、サーキュレータ41に接続されたPMFC44と、PMFC44から分岐する2つの参照光路R1,R2と、参照光路R1に接続されるPMFC46と、参照光路R2に接続されるPMFC51を備えている。参照光路R1には、光路長差生成部45が配置されている。参照光路R2には、光路長差生成部は設けられていない。したがって、参照光路R1と参照光路R2との光路長差ΔL’は、光路長差生成部45によって生成される。光路長差生成部45には、例えば、光ファイバが用いられる。光路長差生成部45の光路長ΔL’は、光路長差生成部22の光路長ΔLと同一としてもよい。光路長差ΔLとΔL’を同一にすることで、後述する複数の干渉光の被検物500に対する深さ位置が同一となる。すなわち、取得される複数の断層像の位置合わせが不要となる。
【0022】
上記の参照光生成部(41~46,51)には、PMFC14で分岐された他方の光(すなわち、参照光)が入力される。PMFC14から入力される参照光は、サーキュレータ41を通って参照遅延ライン(42,43)に入力される。参照遅延ライン(42,43)は、コリメータレンズ42と参照ミラー43によって構成されている。参照遅延ライン(42,43)に入力された参照光は、コリメータレンズ42を介して参照ミラー43に照射される。参照ミラー43で反射された参照光は、コリメータレンズ42を介してサーキュレータ41に入力される。ここで、参照ミラー43は、コリメータレンズ42に対して近接又は離間する方向に移動可能となっている。本実施例では、測定を開始する前に、被検物500からの信号がOCTの深さ方向の測定範囲内に収まるように、参照ミラー43の位置を調整している。
【0023】
参照ミラー43で反射された参照光は、サーキュレータ41により光路が変更され、PMFC44に入力される。PMFC44は、入力する参照光を、第1参照光と第2参照光に分岐する。第1参照光は参照光路R1に導かれ、第2参照光は参照光路R2に導かれる。第1参照光は、光路長差生成部45を通ってPMFC46に入力される。PMFC46に入力された参照光は、第1分岐参照光と第2分岐参照光に分岐される。第1分岐参照光は、コリメータレンズ47、レンズ48を通ってPMFC61に入力される。第2分岐参照光は、コリメータレンズ49、レンズ50を通って、PMFC62に入力される。第2参照光は、PMFC51に入力され、第3分岐参照光と第4分岐参照光に分割される。第3分岐参照光は、コリメータレンズ52、レンズ53を通って、PMFC71に入力される。第4分岐参照光は、コリメータレンズ54、レンズ55を通って、PMFC72に入力される。
【0024】
(干渉光生成部)
干渉光生成部60,70は、第1干渉光生成部60と、第2干渉光生成部70を備えている。第1干渉光生成部60は、PMFC61,62を有している。上述したように、PMFC61には、測定光生成部より水平偏光反射光が入力され、参照光生成部より第1分岐参照光(光路長差ΔLを有する光)が入力される。ここで、水平偏光反射光には、第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)が含まれている。したがって、PMFC61では、水平偏光反射光のうち第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第1分岐参照光とが合波されて第1干渉光(水平偏光成分)が生成される。
【0025】
また、PMFC62には、測定光生成部より垂直偏光反射光が入力され、参照光生成部より第2分岐参照光(光路長差ΔLを有する光)が入力される。ここで、垂直偏光反射光には、第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)が含まれている。したがって、PMFC62では、垂直偏光反射光のうち第1測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有する光)と、第2分岐参照光とが合波されて第2干渉光(垂直偏光成分)が生成される。
【0026】
第2干渉光生成部70は、PMFC71,72を有している。上述したように、PMFC71には、測定光生成部より水平偏光反射光が入力され、参照光生成部より第3分岐参照光(光路長差ΔLを有しない光)が入力される。したがって、PMFC71では、水平偏光反射光のうち第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)と、第3分岐参照光とが合波されて第3干渉光(水平偏光成分)が生成される。
【0027】
また、PMFC72には、測定光生成部より垂直偏光反射光が入力され、参照光生成部より第4分岐参照光(光路長差ΔLを有しない光)が入力される。したがって、PMFC72では、垂直偏光反射光のうち第2測定光による反射光成分(光路長差ΔLを有しない光)と、第4分岐参照光とが合波されて第4干渉光(垂直偏光成分)が生成される。第1干渉光と第2干渉光は測定光路S1を経由した測定光に対応しており、第3干渉光と第4干渉光は測定光路S2を経由した測定光に対応している。
【0028】
(干渉光検出部)
干渉光検出部80,90は、第1干渉光生成部60で生成された干渉光(第1干渉光及び第2干渉光)を検出する第1干渉光検出部80と、第2干渉光生成部70で生成された干渉光(第3干渉光及び第4干渉光)を検出する第2干渉光検出部90を備えている。
【0029】
第1干渉光検出部80は、バランス型光検出器81,82(以下、単に「検出器81,82」ともいう)と、検出器81,82に接続された信号処理器83を備えている。検出器81にはPMFC61が接続されており、検出器81の出力端子には信号処理器83が接続されている。PMFC61は、第1干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器81に入力する。検出器81は、PMFC61から入力する位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第1干渉信号)に変換し、第1干渉信号を信号処理器83に出力する。すなわち、第1干渉信号は、水平偏光測定光による被検物500及びミラー403からの水平偏光反射光と参照光の干渉信号HHである。同様に、検出器82にはPMFC62が接続されており、検出器82の出力端子には信号処理器83が接続されている。PMFC62は、第2干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器82に入力する。検出器82は、位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第2干渉信号)に変換し、第2干渉信号を信号処理器83に出力する。すなわち、第2干渉信号は、水平偏光測定光による被検物500及びミラー403からの垂直偏光反射光と参照光の干渉信号HVである。
【0030】
信号処理器83は、第1干渉信号が入力される第1信号処理部84と、第2干渉信号が入力される第2信号処理部85を備えている。第1信号処理部84は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器83に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第1干渉信号をサンプリングする。また、第2信号処理部85は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器83に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第2干渉信号をサンプリングする。第1信号処理部84及び第2信号処理部85でサンプリングされた第1干渉信号と第2干渉信号は、後述する演算部202に入力される。信号処理器83には、公知のデータ収集装置(いわゆる、DAQ)を用いることができる。
【0031】
第2干渉光検出部90は、第1干渉光検出部80と同様に、バランス型光検出器91,92(以下、単に「検出器91,92」ともいう)と、検出器91,92に接続された信号処理器93を備えている。検出器91にはPMFC71が接続されており、検出器91の出力端子には信号処理器93が接続されている。PMFC71は、第3干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器91に入力する。検出器91は、位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第3干渉信号)に変換し、第3干渉信号を信号処理器93に出力する。すなわち、第3干渉信号は、垂直偏光測定光による被検物500及びミラー403からの水平偏光反射光と参照光の干渉信号VHである。同様に、検出器92にはPMFC72が接続されており、検出器92の出力端子には信号処理器93が接続されている。PMFC72は、第4干渉光を、位相が180度異なる2つの干渉光に分岐して、検出器92に入力する。検出器92は、位相が180度異なる2つの干渉光に対して、差動増幅及びノイズ低減処理を実施し、電気信号(第4干渉信号)に変換し、第4干渉信号を信号処理器93に出力する。すなわち、第4干渉信号は、垂直偏光測定光からによる被検物500及びミラー403の垂直偏光反射光と参照光の干渉信号VVである。
【0032】
信号処理器93は、第3干渉信号が入力される第3信号処理部94と、第4干渉信号が入力される第4信号処理部95を備えている。第3信号処理部94は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器93に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第3干渉信号をサンプリングする。また、第4信号処理部95は、サンプリングトリガー/クロック発生器100から信号処理器93に入力されるサンプリングトリガー及びサンプリングクロックに基づいて、第4干渉信号をサンプリングする。第3信号処理部94及び第4信号処理部95でサンプリングされた第3干渉信号と第4干渉信号とは、後述する演算部202に入力される。信号処理器93にも、公知のデータ収集装置(いわゆる、DAQ)を用いることができる。このような構成によると、被検物500の4つの偏光特性を表す干渉信号を取得することができる。なお、本実施例では、2つの信号処理部を備える信号処理器83,93用いているが、このような構成に限定されない。例えば、4つの信号処理部を備える1つの信号処理器を用いてもよいし、1つの信号処理部を備える信号処理器を4つ用いてもよい。
【0033】
次に、本実施例に係る光断層画像撮影装置の制御系の構成を説明する。
図3に示すように、光断層画像撮影装置は演算装置200によって制御される。演算装置200は、演算部202と、第1干渉光検出部80と、第2干渉光検出部90によって構成されている。第1干渉光検出部80と、第2干渉光検出部90と、演算部202は、測定部10に接続されている。演算部202は、測定部10に制御信号を出力し、ガルバノミラー28及び29を駆動することで測定光の被検物500への入射位置を走査する。第1干渉光検出部80は、測定部10から入力される干渉信号(干渉信号HHと干渉信号HV)に対して、サンプリングトリガー1をトリガーにして、測定部10から入力されるサンプリングクロック1に基づいて、第1サンプリングデータを取得し、演算部202に第1サンプリングデータを出力する。演算部202は、第1サンプリングデータにフーリエ変換処理等の演算処理を行い、HH断層画像とHV断層画像を生成する。第2干渉光検出部90は、サンプリングトリガー2をトリガーにして、測定部10から入力される干渉信号(干渉信号VHと干渉信号VV)に対して、測定部10から入力されるサンプリングクロック2に基づいて、第2サンプリングデータを取得し、演算部202に第2サンプリングデータを出力する。演算部202は、第2サンプリングデータにフーリエ変換処理等の演算処理を行い、VH断層画像とVV断層画像を生成する。ここで、HH断層画像と、VH断層画像と、HV断層画像と、VV断層画像とは、同一位置の断層画像である。このため、演算部202は、被検物500のジョーンズ行列を表す4つの偏光特性(HH、HV,VH,VV)の断層画像を生成することができる。
【0034】
図4に示すように、サンプリングトリガー/クロック発生器100は、ファイバカプラ102と、サンプリングトリガー発生器(140~152)と、サンプリングクロック発生器(160~172)を備えている。光源11からの光は、ファイバカプラ13とファイバカプラ102を介して、サンプリングトリガー発生器140及びサンプリングクロック発生器160にそれぞれ入力される。
【0035】
(サンプリングトリガー発生器)
サンプリングトリガー発生器140は、例えば、FBG(Fiber Bragg Grating)144を用いて、サンプリングトリガーを生成してもよい。
図4に示すように、FBG144は、光源11から入射される光の特定の波長のみを反射して、サンプリングトリガーを生成する。生成されたサンプリングトリガーは、分配器150に入力される。分配器150は、サンプリングトリガーを、サンプリングトリガー1とサンプリングトリガー2に分配する。サンプリングトリガー1は、信号遅延回路152を介して、演算部202に入力される。サンプリングトリガー2は、そのまま演算部202に入力される。サンプリングトリガー1は、第1干渉光検出部80から演算部202に入力される干渉信号(第1干渉信号と第2干渉信号)のトリガー信号となる。サンプリングトリガー2は、第2干渉光検出部90から演算部202に入力される干渉信号(第3干渉信号と第4干渉信号)のトリガー信号となる。信号遅延回路152は、サンプリングトリガー1がサンプリングトリガー2に対して、光路長差生成部22の光路長差ΔLの分だけ時間が遅延するように設計されている。これにより、第1干渉光検出部80から入力される干渉信号のサンプリングを開始する周波数と、第2干渉光検出部90から入力される干渉信号のサンプリングを開始する周波数を同じにすることができる。ここで、サンプリングトリガー1だけを生成してもよい。光路長差ΔLが既知であるので、第2干渉光検出部90から入力される干渉をサンプリングする際、サンプリングトリガー1から光路長差ΔLの分だけ時間を遅延するようにサンプリングを開始すればよい。
【0036】
(サンプリングクロック発生器)
サンプリングクロック発生器は、例えば、マッハツェンダー干渉計で構成されていてもよい。
図4に示すように、サンプリングクロック発生器は、マッハツェンダー干渉計を用いて、等周波数のサンプリングクロックを生成する。マッハツェンダー干渉計で生成されたサンプリングクロックは、分配器172に入力される。分配器172は、サンプリングクロックを、サンプリングクロック1とサンプリングクロック2に分配する。サンプリングクロック1は、信号遅延回路174を通って、第1干渉光検出部80に入力される。サンプリングクロック2は、そのまま第2干渉光検出部90に入力される。信号遅延回路174は、光路長差22の光路長差ΔLの分だけ時間が遅延するように設計されている。これにより、光路長差生成部22の分だけ遅延している干渉光に対しても、同じタイミングでサンプリングすることができる。これにより、取得する複数の断層画像の位置ずれが防止できる。本実施例では、サンプリングクロックを生成するのに、マッハツェンダー干渉計を用いている。しかしながら、サンプリングクロックを生成するのに、マイケルソン干渉計を用いてもよいし、電気回路を用いてもよい。また、光源に、サンプリングクロック発生器を備えた光源を用いて、サンプリングロックを生成してもよい。
【0037】
次に、4つの信号処理部84,85,94,95の間で生じるサンプリングタイミングのずれを補正する処理について説明する。上述したように、干渉光検出部80,90には、4つの信号処理部84,85,94,95が同期してサンプリングを開始するようにトリガー信号が入力される。しかしながら、サンプリングトリガー/クロック発生器100の誤差等によって、4つの信号処理部84,85,94,95のそれぞれにトリガー信号が到達するタイミングがずれることがある。また、干渉光検出部80,90に入力される4つの干渉光はそれぞれ別個の干渉計によって生成されるため、それぞれの干渉計の光路長に製造上の誤差が生じる。このため、4つの信号処理部84,85,94,95のサンプリングタイミングにずれが生じる。このようなサンプリングタイミングのずれを補正するために、演算部202は、以下の処理を実行する。
【0038】
図5に示すように、まず、前処理として、演算部202は、干渉光検出部80,90に入力される光の波長分散量の差によって生じるずれを補正する(S12)。上述したように、各検出器81、82、91、92に入力される干渉光は別個に並列配置された干渉計によって生成されるため、各干渉計の光路長(例えば、ファイバ長)がそれぞれ異なる。これによって、各検出器81、82、91、92に入力される干渉光の波長分散量に差が生じる。これを、ミラー403で反射された光(以下、補正光ともいう)を用いて補正する。
【0039】
ステップS12は、以下の手順で行われる。なお、以下では、第1信号処理部84、第2信号処理部85、第3信号処理部94及び第4信号処理部95を第j信号処理部(j=1~4)とし、各信号処理部84,85,94,95でサンプリングされた干渉信号が深さ方向に1~nall本あるとする。
【0040】
まず、演算部202は、第j信号処理器でサンプリングされた干渉信号の中から補正光の干渉信号のうちの1つであるn番目の干渉信号を窓関数で切り出す。切り出された干渉信号を逆フーリエ変換することで得られる補正光の複素スペクトル信号は、以下の数1で表す。なお、kは波数を示す。
【数1】
このとき、補正光の複素スペクトル信号を、以下の数2を用いて算出することによって、補正光の複素スペクトル信号から効果的にノイズを低減する。なお、iは虚数単位である。
【数2】
上記の数2の位相成分を、以下の数3で示す。
【数3】
演算部202は、数3で示す位相成分に位相アンラッピングを行い、多項式フィッティングを行う。多項式フィッティングの次数は何次でも構わないが、たとえば2次とすることができる。これによって、複素スペクトル信号から位相ノイズを効果的に低減する。ここで、このフィッティングで得られた位相を以下の数4で示す。
【数4】
このとき、第j信号処理部でサンプリングされるn番目の複素スペクトル信号は、以下のように補正される。
【数5】
さらに、数5をフーリエ変換することによって、n番目の複素のAスキャン信号を算出する(以下の数6)。なお、Aスキャンは深さ方向の信号強度の分布を示し、zは深さ方向の位置を示す。
【数6】
【0041】
次に、演算部202は、スペクトルデータの整数シフトの絶対値を検出する(S14)。各信号処理部84,85,94,95におけるサンプリングのタイミングは、トリガー信号によって決定される。すなわち、各信号処理部84,85,94,95は、干渉光検出部80,90に入力されるトリガー信号に基づいてサンプリングを開始する。上述したように、各信号処理器83,93にトリガー信号が入力されるタイミングがずれることがある。また、1つの信号処理器が備える複数の信号処理部(例えば、信号処理器83が備える信号処理部84,85及び/又は信号処理器93が備える信号処理部94,95)間で、トリガー信号が到達するタイミングがずれることがある。このような場合に生じるずれはわずかであり、具体的には、サンプリングタイミングが1ピクセルずれる。このようなずれ(以下、スペクトルデータの整数シフトともいう)を、補正光を用いて補正する。
【0042】
ステップS14は、以下の手順で行われる。まず、ステップS14における計算のための一時的な変数として、n番目のAスキャン信号を以下の数7のように定義する。
【数7】
また、測定したスペクトルデータがサンプリングの整数倍分シフトしたために起きる位相シフトを以下の数8で表し、干渉計の揺らぎに起因する相対位相揺らぎを以下の数9で表す。
【数8】
【数9】
すると、n番目のAスキャン信号とn+1番目のAスキャン信号の間の信号位相差は、以下の数10で表される。
【数10】
ここで、Aスキャン信号には、スペクトルデータの整数シフト以外のずれが含まれており、例えば、各信号処理部84,85,94,95でサンプリングされたデータには、異なる位相ドリフトが生じている。n番目のAスキャン信号とn+1番目のAスキャン信号とでは、検出時間差が小さいため、位相ドリフトの影響も小さい。このため、n番目のAスキャン信号とn+1番目のAスキャン信号の間に信号位相差がある場合には、この位相差は、位相ドリフト等の影響ではなく、スペクトルデータの整数シフトの影響で生じていると考えられる。したがって、数10を用いることによって、スペクトルデータの整数シフトが生じているか否かを判定できる。
【0043】
ここで、補正光の深さ方向の位置をz
m1とし、ナイキスト周波数に相当する深さ方向の位置をz
maxとする。演算部202は、測定したAスキャン信号のスペクトルデータが+1ピクセル又は-1ピクセルずれている場合、Aスキャン信号の位置z
m1における位相シフト量は、フーリエ変換のシフト則を用いて以下の数11によって算出できる。
【数11】
したがって、上記の数11をモニタすることによって、Aスキャン信号のスペクトルデータが1ピクセルずれているか否かを判別できる。
【0044】
次いで、測定されたn番目のAスキャン信号とn+1番目のAスキャン信号との間の位置z
m1における位相シフト量を、以下の数12で表す。
【数12】
演算部202は、数12に示す位相シフト量の値に応じて、n+1番目のAスキャン信号を、以下の数13のように置き換える。
【数13】
演算部202は、上記の数13を用いて、n+1番目のAスキャン信号とn+2番目のAスキャン信号についても同様に算出する。このように、n=1から開始して上記の算出を繰り返すと、全てのAスキャン信号について、1番目のAスキャン信号に対する元スペクトルの整数倍のずれを補正した状態で表すことができる。
【0045】
上記のように算出すると、サンプリングタイミングがずれている場合、そのずれが+1ピクセルであるのか、-1ピクセルであるのかを原理的には判別可能である。しかしながら、補正光の深さ方向の位置z
m1はナイキスト周波数の深さ方向の位置z
maxの近傍であるため、ノイズの影響で、上記数8で示す位相シフト量にエイリアシングが発生すると、符号が判別できないことがある。したがって、ステップS14では符号については判別せず、ずれ量の絶対値を検出し、+か-のいずれかに1ピクセル分ずれているのか、又はずれ量が0であるのかを判別する。したがって、1番目のAスキャン信号に対するn番目のAスキャン信号の相対的なサンプリングのずれ量の絶対値は、以下の数14に示すように決定される。
【数14】
すなわち、演算部202は、上記の数11で示すAスキャン信号の位置z
m1における位相シフト量の1/2を閾値として、上記の数12で示す測定されたn番目のAスキャン信号とn+1番目のAスキャン信号との間の位置z
m1における位相シフト量がこの閾値以上である場合には、スペクトルデータの整数シフトの絶対値が1と決定し、この閾値より小さい場合には、スペクトルデータの整数シフトの絶対値が0であると決定する。
【0046】
次に、演算部202は、ステップS14で検出されたサンプリングのずれ量の絶対値の符号を検出する(S16)。上記の数14で決定されたずれ量の絶対値は、各信号処理部84,85,94,95における1番目のAスキャン信号とn番目のAスキャン信号の相対的な関係であり、4つの信号処理部84,85,94,95間においてずれが生じているか否かは不明である。これを求めるために、異なる深さ方向の位置に測定された2つの補正光の信号を用いる。
【0047】
ステップS16は、以下の手順で行われる。まず、2つの補正光の深さ方向の位置をz
m1、z
m2とする。ただし、z
max>z
m1>z
m2>0と仮定する。2つの補正光は、測定光路S4に分岐した光のうち、ガラスブロック404を通過しなかった光と、ガラスブロック404を通過した光である。なお、上述したように、2つの補正光は、ガラスブロック404を1回通過した光と、ガラスブロック404を2回通過した光であってもよい。2つの補正光の信号を、以下の数15、数16で示す。
【数15】
【数16】
ここで、上記の数15の一部を以下の数17で示し、数16の一部を以下の数18で示す。
【数17】
【数18】
ステップS16では、第1信号処理部に対する第j信号処理部の間のサンプリングのずれ量を算出するため、第1信号処理部の2つの補正光の信号の位相が共に0となるように数17及び数18を定義しても、一般性は失われない。このため、以下の数19のように定義する。
【数19】
演算部202は、2つの補正光の位置z
m1、z
m2の間の相対値を算出して、さらにこの2つの補正光の各信号処理部84,85,94,95の間の相対値を、以下の数20のように算出する。
【数20】
さらに、演算部202は、ステップS14において数14を用いて決定したサンプリングのずれ量の絶対値に応じて、数20で算出した相対値の平均値を算出する。サンプリングのずれ量の絶対値を0と決定した場合の相対値の平均値を以下の数21で示し、サンプリングのずれ量の絶対値を1と決定した場合の相対値の平均値を以下の数22で示す。
【数21】
【数22】
上記の数21、数22のパラメータを用いることによって、第1信号処理部と第j信号処理部の間のサンプリングのずれ量が、1ピクセル、-1ピクセル又は0ピクセルのいずれであるのかを判別できる。
【0048】
図6~
図9を参照して、第1信号処理部と第j信号処理部の間のサンプリングのずれ量を検出する処理についてさらに説明する。ここで、第j信号処理部でサンプリングされたn番目のAスキャン信号におけるサンプリングのずれ量を、以下の数23で示す。
【数23】
図6は、数23で示す値(以下、単に「サンプリングのずれ量」ともいう)の検出方法を示すフローチャートである。
【0049】
図6に示すように、まず、演算部202は、第1信号処理部の1番目のAキャン信号について検出するため、j=1と設定し(S32)、次いで、n=1と設定する(S34)。
【0050】
次に、演算部202は、上記の数22に示すサンプリングのずれ量の絶対値の平均値が0でないかを判定する(S36)。数22で示す値が0の場合(ステップS36でNOの場合)にはステップS38に進み、数22で示す値が0でない場合(ステップS36でYESの場合)にはステップS40に進む。
【0051】
ここで、ステップS38に示す、数22で示す値が0の場合(ステップS36でNOの場合)の処理について、
図7を参照して説明する。ステップS38では、数22で示す値が0であるため、数22ではなく数21が適用される。
図7に示すように、まず、演算部202は、数21の位相成分の絶対値が閾値より大きいか否かを判定する(S52)。ここでの閾値は、Aスキャン信号の位置z
m1,z
m2の間の位相シフト量の1/2である。数21の位相成分の絶対値が閾値以下の場合(ステップS52でNOの場合)、サンプリングのずれ量が0と決定される(S54)。一方、数21の位相成分の絶対値が閾値より大きい場合(ステップS52でYESの場合)、サンプリングのずれ量の絶対値が1と決定される。
【0052】
サンプリングのずれ量の絶対値が1と決定されると(ステップS52でYESの場合)、演算部202は、数21の位相成分が0以上であるか否かを判定する(S56)。数21の位相成分が0以上である場合(ステップS56でYESの場合)、サンプリングのずれ量が1と決定される(S58)。一方、数21の位相成分が0より小さい場合(ステップS56でNOの場合)、サンプリングのずれ量が-1と決定される(S60)。ステップS54~ステップS60のいずれかによってサンプリングのずれ量が決定されると、
図6のステップS46に進む。
【0053】
一方、数22で示す値が0でない場合(ステップS36でYESの場合)、演算部202は、数21の位相成分の絶対値が数22の位相成分の絶対値以上であるか否かを判定する(S40)。数22で示す値が0でない場合には、数21と数22のいずれを適用するかを決定できない。そこで、数21の位相成分の絶対値と数22の位相成分の絶対値を比較し、数21の位相成分の絶対値が数22の位相成分の絶対値以上である場合には、数21を適用し、数21の位相成分の絶対値が数22の位相成分の絶対値より小さい場合には、数22を適用する。数21の位相成分の絶対値が数22の位相成分の絶対値以上である場合(ステップS40でYESの場合)にはステップS42に進み、数21の位相成分の絶対値が数22の位相成分の絶対値より小さい場合(ステップS40でNOの場合)にはステップS44に進む。
【0054】
ここで、ステップS42に示す、数21の位相成分の絶対値が数22の位相成分の絶対値以上である場合(ステップS40でYESの場合)の処理について、
図8を参照して説明する。
図8に示すように、まず、演算部202は、数14で決定されるサンプリングのずれ量の絶対値が0であるか否かを判定する(S62)。数14を用いることによって、サンプリングのずれ量の絶対値が1である(すなわち、+1又は-1である)か、又は0であるかを判定できる。サンプリングのずれ量の絶対値が0でない場合(ステップS62でNOの場合)、サンプリングのずれ量が0と決定される(S64)。一方、サンプリングのずれ量の絶対値が0である場合(ステップS62でYESの場合)、サンプリングのずれ量の絶対値が1と決定される。
【0055】
サンプリングのずれ量の絶対値が1と決定されると(ステップS62でYESの場合)、演算部202は、数21の位相成分が0以上であるか否かを判定する(S66)。数21の位相成分が0以上である場合(ステップS66でYESの場合)、サンプリングのずれ量が1と決定される(S68)。一方、数21の位相成分が0より小さい場合(ステップS66でNOの場合)、サンプリングのずれ量が-1と決定される(S70)。ステップS64~ステップS70のいずれかによってサンプリングのずれ量が決定されると、
図6のステップS46に進む。
【0056】
また、ステップS44に示す、数21の位相成分の絶対値が数22の位相成分の絶対値より小さい場合の処理について、
図9を参照して説明する。
図9に示すように、まず、演算部202は、数14で決定されるサンプリングのずれ量の絶対値が0であるか否かを判定する(S72)。サンプリングのずれ量の絶対値が0である場合(ステップS72でYESの場合)、サンプリングのずれ量が0と決定される(S74)。一方、サンプリングのずれ量の絶対値が0でない場合(ステップS72でNOの場合)、サンプリングのずれ量の絶対値が1と決定される。なお、上記のステップS62(
図8参照)では、数14で決定されるサンプリングのずれ量の絶対値が0でない場合にサンプリングのずれ量が0と決定され、サンプリングのずれ量の絶対値が0である場合にサンプリングのずれ量の絶対値が1と決定されており、ステップS72と分岐が逆になっている。これは、ステップS62(すなわち、ステップS42)とステップS72(すなわち、ステップS44)に分岐させたステップS40(
図6参照)において、数14で決定されるサンプリングのずれ量の絶対値の意味が逆になるか否かを判定したためである。
【0057】
サンプリングのずれ量の絶対値が1と決定されると(ステップS72でNOの場合)、演算部202は、数22の位相成分が0以上であるか否かを判定する(S76)。数22の位相成分が0以上である場合(ステップS76でYESの場合)、サンプリングのずれ量が1と決定される(S78)。一方、数22の位相成分が0より小さい場合(ステップS76でNOの場合)、サンプリングのずれ量が-1と決定される(S80)。ステップS74~ステップS80のいずれかによってサンプリングのずれ量が決定されると、
図6のステップS46に進む。
【0058】
ステップS38、ステップS42又はステップS44の処理が終了すると、演算部202は、全てのAスキャン信号(n=1~nall)についてサンプリングのずれ量を決定したか否か(すなわち、ステップS54~ステップS60、ステップS64~ステップS70又はステップS74~ステップS80の処理を実行したか否か)を判定する(S46)。全てのAスキャン信号についてサンプリングのずれ量を決定していない場合(ステップS46でNOの場合)には、ステップS36に戻り、ステップS36~ステップS44の処理を繰り返す。そして、全てのAスキャン信号についてサンプリングのずれ量が決定されたら(ステップS46でYESの場合)、演算部202は、全ての信号処理器(j=1~4)についてサンプリングのずれ量を決定したか否かを判定する(S48)。全ての信号処理器についてサンプリングのずれ量を決定していない場合(ステップS48でNOの場合)には、ステップS34に戻り、ステップS34~ステップS46の処理を繰り返す。そして、全ての信号処理器についてサンプリングのずれ量が決定されたら(ステップS48でYESの場合)、サンプリングのずれ量の検出を終了する。
【0059】
図6~
図9のフローチャートに示す処理を実行することによって、各信号処理部84,85,94,95でサンプリングされた1~n
all番目の全てのAスキャン信号におけるサンプリングのずれ量をそれぞれ算出できる。これを用いて、以下の数24に示すように各信号処理部84,85,94,95でサンプリングされた信号が補正される。
【数24】
【0060】
次に、
図5に戻り、演算部202は、各信号処理部84,85,94,95でサンプリングされたデータごとに生じた位相ドリフトを補正する(S18)。上述したように、各信号処理部84,85,94,95でサンプリングされたデータごとに異なる位相ドリフトが生じている。ステップS18では、この位相ドリフトを補正する。ここで、深さ方向の位置がz
m1の補正光の信号を、以下の数25に示す。
【数25】
そして、演算部202は、数26を用いて、各信号処理部84,85,94,95でサンプリングされたデータごとに生じた位相ドリフトを補正する。
【数26】
【0061】
次に、演算部202は、光断層画像撮影装置ごとに発生するサブピクセル分のシフトを補正する(S20)。上述したように、各信号処理部84,85,94,95でサンプリングされた信号には、サンプリングタイミングのずれに起因した誤差(ずれ)が含まれる。このずれ量は、各光断層画像撮影装置の構成に依存するものであるため、同一の装置であれば常に一定である。ステップS20では、このようにして生じるずれを補正する。
【0062】
ステップS20では、図示しない複数のミラー(すなわち、ミラー403とは異なるミラー)の信号を用いて補正する。この複数のミラーは、深さ方向の位置がz=0からz=z
maxの範囲内に配置する。ここで、複数のミラーを深さ方向にl
all箇所配置したとする。そして、深さ方向にl番目に配置したミラーについて、第1信号処理部と第j信号処理部の間の相対位相を、以下の数27で表す。
【数27】
この数27で表す値は、以下の数28を用いて算出できる。
【数28】
また、第1信号処理部と第j信号処理部の間の相対位相と、z=0に最も近い位置である、l=1となるときの相対位相との関係は、以下の数29のように算出される。
【数29】
演算部202は、上記の数29を用いて、l=1からl=l
allまでのすべてのlに対応する値を算出し、線形フィッティングによりzとの間の傾きa
jを算出する。そして、演算部202は、これを以下の数30に適用し、装置に依存して発生するサブピクセルシフトを補正する。
【数30】
【0063】
次に、ジョーンズ行列の再構成を行う(S22)。ステップS12~ステップS20によって、4つの信号処理部84,85,94,95でサンプリングされた全ての深さ方向の信号位相が、深さ方向の位置z
m1の補正光の信号の位相に対する相対値で示されている。また、本実施例の光断層画像撮影装置では、4つの信号処理部84,85,94,95によってジョーンズ行列の各要素が取得される。この場合、本来であればジョーンズ行列はユニタリ行列となるが、ステップS12~ステップS20の操作によって、ユニタリ行列ではなくなる。ここで、各信号処理部84,85,94,95でサンプリングされた信号とジョーンズ行列との関係が、以下の数31のようになっているとする。
【数31】
この場合に、数31に示す式をユニタリ行列にするために、演算部202は、以下の数32に示すように再構成する。
【数32】
以上により、各信号処理部84,85,94,95のサンプリングタイミングの同期補正が完了し、ジョーンズ行列が再構成される。ジョーンズ行列が再構成されると、再構成されたジョーンズ行列を用いて被検物500の偏光特性を算出でき、被検物500の断層画像を生成することができる。
【0064】
なお、本発明者が行なった実験では、上記の光断層画像撮影装置において、各信号処理部84,85,94,95のサンプリングタイミングの同期ずれを補正できることが確認されている。実験では、位相遅延量が既知の波長板を用いた。具体的には、往復で1.35ラジアンの位相遅延量を持つ波長板を用いた。この波長板を0度~180度の間で10度ずつ回転させ、波長板のジョーンズ行列を測定した。そして、測定したジョーンズ行列を固有値分解して、波長板の位相遅延量と複屈折軸を算出した。
【0065】
図10は、波長板の回転角(横軸)と位相遅延量(縦軸)との関係を示している。また、グラフAは、上述のステップS12及びステップS14の処理を実行(さらに詳細には、数1~数13に示す式まで適用)し、ステップS16~ステップS20の処理を実行していない場合を示している。グラフBは、ステップS12~ステップS18の処理を実行し、ステップS20の処理を実行していない場合を示している。グラフCは、ステップS12~ステップS20の処理(すなわち、全ての処理)を実行した場合を示している。なお、破線は理論値を示している。
【0066】
図10に示すように、グラフAは、波長板の回転角に依存して位相遅延量が変化しており、正しい位相遅延量を得られなかった。すなわち、同期ずれを補正できていなかった。一方、グラフBは、波長板の回転角に応じた位相遅延量の変化が小さく、理論値(破線)に近くなっている。したがって、グラフBの場合には、同期ずれをほとんど補正できていることがわかった。また、グラフCは、波長板の回転角に応じた位相遅延量の変化はほとんど見られず、理論値と略一致している。すなわち、グラフCの場合には、同期ずれを補正できていることがわかった。したがって、上述したように補正光を用いた補正処理を実行することによって、同期ずれを補正できることが確認できた。
【0067】
また、
図11は、設定した波長板の回転角(横軸)と測定された波長板の角度(縦軸)との関係を示している。なお、グラフA~グラフC及び破線については、
図10と同様であるため詳細な説明は省略する。
図11においても、
図10と同様の結果を確認することができた。すなわち、
図11に示すように、グラフAでは理論値に近い結果を得られなかった。一方、グラフBは理論値に近い結果が得られた。そして、グラフCは、グラフBよりさらに理論値に近い結果が得られた。これらの結果から、上述したように補正光を用いた補正処理を実行することによって、同期ずれを補正できることが確認できた。
【0068】
なお、本実施例の光断層画像撮影装置は、測定光路S4が構成されるように測定光を分岐し、測定光路S4上にミラー403及びガラスブロック404を配置しているが、このような構成に限定されない。測定光が2つ以上の補正光を含むように構成されていればよく、例えば、さらに多くの測定光路を構成するように測定光を分岐し、2つ以上の補正光を別個の測定光路によって生成するように構成されていてもよい。
【0069】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0070】
10:測定部
11:光源
26: SMFC
43:参照ミラー
60、70:干渉光生成部
80、90:干渉光検出部
81、82、91、92:バランス型光検出器
83、93:信号処理器
84、85、94、95:信号処理部
100:サンプリングトリガー/クロック発生器
140:サンプリングトリガー発生器
160:サンプリングロック発生器
200:演算装置
202:演算部
403:ミラー
404:ガラスブロック
500:被検物
S1、S2、S3、S4:測定光路
R1、R2:参照光路