(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】切欠き模様付加飾成形体
(51)【国際特許分類】
B65D 23/00 20060101AFI20220922BHJP
A45D 34/00 20060101ALI20220922BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20220922BHJP
B65D 1/02 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
B65D23/00 T
A45D34/00 510Z
B65D1/00 111
B65D1/02 221
(21)【出願番号】P 2017249056
(22)【出願日】2017-12-26
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000158781
【氏名又は名称】紀伊産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 親典
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-222057(JP,A)
【文献】特開2016-101942(JP,A)
【文献】特開2006-034623(JP,A)
【文献】特開2016-220905(JP,A)
【文献】特開2009-006673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 23/00
A45D 34/00
B65D 1/00
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状壁部を備えた加飾成形体であって、上記筒状壁部が、光透過性を有する
単一の樹脂層からなる筒状のベース体と、上記ベース体の外周
面に
直接もしくはアンダーコート層を介して設けられるハーフ蒸着層と
、上記ハーフ蒸着層の外周面に設けられる透明なトップコート層とを備え、
上記トップコート層が加飾成形体の最外層であり、
上記筒状壁部の、互いに対向する配置となる少なくとも2個所において、上記ハーフ蒸着層が部分的に除去された切欠き模様が形成されており、
上記ハーフ蒸着層の光透過率が20~80%であり、
上記切欠き模様が、幅20μm~5mmの点状もしくは線状の切欠き部の組み合わせによって構成されており、
上記少なくとも2個所に形成された切欠き模様が、加飾成形体外側から、および上記筒状壁部を透かして、同時に重なった配置で視認できるようになっており、
上記少なくとも2個所に形成された切欠き模様の、加飾成形体外側から視認される切欠き模様と、上記筒状壁部を透かして視認される切欠き模様との重なり模様が、加飾成形体に対する視点の相対的な移動に伴って変化するようになっていることを特徴とする切欠き模様付加飾成形体。
【請求項2】
上記切欠き模様の少なくとも一部が、ハーフ蒸着層が設けられたベース体の断続的もしくは連続的な回転下でのハーフ蒸着層へのレーザ照射によって形成されている請求項1記載の切欠き模様付加飾成形体。
【請求項3】
上記筒状のベース体の表面に凹凸模様が形成され、その上に、切欠き模様が形成されたハーフ蒸着層が
直接もしくはアンダーコート層を介して設けられており、上記凹凸模様の少なくとも一部が、ベース体の断続的もしくは連続的な回転下でのベース体へのレーザ照射によって形成され、上記切欠き模様の少なくとも一部が、ハーフ蒸着層が設けられたベース体の断続的もしくは連続的な回転下でのハーフ蒸着層へのレーザ照射によって形成されている請求項2記載の切欠き模様付加飾成形体。
【請求項4】
加飾成形体が、光透過性を有する内容物を充填する容器である請求項1~3のいずれか一項に記載の切欠き模様付加飾成形体。
【請求項5】
加飾成形体がボトルタイプの化粧料容器に用いられる容器本体であり、上記光透過性を有する内容物が無色透明もしくは有色透明の液体である請求項4記載の切欠き模様付加飾成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、見る角度や透過する光の量によって切欠き模様の見え方や全体の印象が変化する、非常に興趣に富む切欠き模様付加飾成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧料を収容したコンパクト容器等には、単に機能性だけでなく、見栄えがよい、商品イメージを反映したデザインである、といった意匠性も要求される。このような要求に応えるために、例えば、コンパクト容器の蓋部に、アルミニウム蒸着等によって金属薄膜層を形成して金属光沢を与えたものや、複雑な色模様が印刷された転写シートを貼着したもの等、様々な技術を駆使して、容器外観のアイキャッチ効果を高めたものが提案されている。
【0003】
また、最近は、より複雑な模様を付与するために、上記金属薄膜層や転写シートの一部をレーザ照射によって除去し、その除去部から容器の地の部分や地の部分の上に形成された着色層を露出させて文字や図柄模様を形成することが行われている(例えば、特許文献1を参照)。さらに、成形体の表面に予め凹凸模様を形成し、その上に金属薄膜層等の被覆層を形成した後、その凹凸模様の凹凸に合わせて、レーザ照射により被覆層を部分的に除去して、より印象的な凹凸模様を得ることが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
ところで、このような表面加飾は、従来、コンパクト容器の蓋部のように、表面が平面であるか、ごくなだらかな褶曲面であるものに限定されていたが、最近、
図7に示すような、透明または半透明のボトルタイプの合成樹脂製容器本体1の胴体部分に、金属蒸着層2と着色塗膜層3とを積層形成し、その一部をレーザ光照射によって除去して透過模様4を付与した加飾容器が提案されている(特許文献3を参照)。このものは、いわゆるボトルタイプの容器にレーザ照射による透過模様が付与されているため、従来の平面的な加飾容器とは異なる印象を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-216417号公報
【文献】特開2006-334122号公報
【文献】特許第4863087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、
図7に示す加飾容器は、金属蒸着層2と着色塗膜層3との積層部分においてまったく内側が見えず、透過模様4の透明(もしくは半透明)の部分のみを透かして、容器内部や反対側の透過模様4が見えるようになっているため、透かして見える部分がごく限られており、さほど変化に富んだ目新しい印象にはなっていないのが実情である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、見る角度や透過する光の量によって切欠き模様の見え方と全体の印象が変化する、非常に興趣に富む切欠き模様付加飾成形体の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、筒状壁部を備えた加飾成形体であって、上記筒状壁部が、光透過性を有する筒状のベース体と、上記ベース体の外周に設けられるハーフ蒸着層とを備え、上記筒状壁部の、互いに対向する配置となる少なくとも2個所において、上記ハーフ蒸着層が部分的に除去された切欠き模様が形成されており、上記少なくとも2個所に形成された切欠き模様の、加飾成形体外側から直接視認される切欠き模様と、上記筒状壁部を透かして視認される切欠き模様との重なり模様が、加飾成形体に対する視点の相対的な移動に伴って変化するようになっている切欠き模様付加飾成形体を第1の要旨とする。
【0009】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記ハーフ蒸着層の光透過率が、20~80%に設定されている切欠き模様付加飾成形体を第2の要旨とし、それらのなかでも、特に、上記切欠き模様が、幅20μm~5mmの点状もしくは線状の切欠き部の組み合わせによって構成されている切欠き模様付加飾成形体を第3の要旨とする。
【0010】
さらに、本発明は、それらのなかでも、特に、上記切欠き模様の少なくとも一部が、ハーフ蒸着層が設けられたベース体の断続的もしくは連続的な回転下でのハーフ蒸着層へのレーザ照射によって形成されている切欠き模様付加飾成形体を第4の要旨とし、そのなかでも、特に、上記筒状のベース体の表面に凹凸模様が形成され、その上に、切欠き模様が形成されたハーフ蒸着層が設けられており、上記凹凸模様の少なくとも一部が、ベース体の断続的もしくは連続的な回転下でのベース体へのレーザ照射によって形成され、上記切欠き模様の少なくとも一部が、ハーフ蒸着層が設けられたベース体の断続的もしくは連続的な回転下でのハーフ蒸着層へのレーザ照射によって形成されている切欠き模様付加飾成形体を第5の要旨とする。
【0011】
そして、本発明は、それらのなかでも、特に、加飾成形体が、光透過性を有する内容物を充填する容器である切欠き模様付加飾成形体を第6の要旨とし、そのなかでも、特に、加飾成形体がボトルタイプの化粧料容器に用いられる容器本体であり、上記光透過性を有する内容物が無色透明もしくは有色透明の液体である切欠き模様付加飾成形体を第7の要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
すなわち、本発明の切欠き模様付加飾成形体は、筒状壁部を備え、その筒状壁部に、ハーフ蒸着層と、これを部分的に除去した切欠き模様を有するものである。そして、上記切欠き模様が、上記筒状壁部の、互いに対向する配置となる少なくとも2個所に形成されている。
【0013】
この構成によれば、上記切欠き模様付加飾成形体の筒状壁部を外側から見ると、その手前側の切欠き模様が見えるだけでなく、切欠き模様以外のハーフ蒸着層を備えた筒状壁部を透かして、筒状壁部の向こう側の切欠き模様が重なって見える。また、筒状壁部の向こう側の内周面に、手前側の切欠き模様が映り込んで、これも重なって見える。そして、これらの重なり模様が、筒状壁部を見る視点の動きによって、複雑に変化するため、従来にはない、全く新しい印象を与える。また、この筒状壁部を透過する光の量によっても、これらの模様の見え方が変化し、光の模様がまたたくような独特の印象を与える。しかも、上記筒状壁部の、切欠き模様Rが形成された部分以外はハーフ蒸着層で覆われているため、この切欠き模様付加飾成形体が容器であり、上記筒状壁部の内側に液体等の内容物を収容する場合、上記内容物の減り具合を容器外側から視認することができ、使い勝手がよい。
【0014】
そして、本発明のなかでも、特に、上記ハーフ蒸着層の光透過率が、20~80%に設定されているものは、とりわけ、ハーフ蒸着層とハーフ蒸着層が除去されて切欠き模様になっている部分との光透過性の差が明確となり、切欠き模様が際立つため、好適である。
【0015】
また、本発明のなかでも、特に、上記切欠き模様が、幅20μm~5mmの点状もしくは線状の切欠き部の組み合わせによって構成されているものは、筒状壁部を見る視点の動きにつれて、それらの切欠き部が、他の切欠き部と重なったりずれたりして、絶えず印象の異なる切欠き模様につぎつぎと変化するため、好適である。
【0016】
そして、本発明のなかでも、特に、上記切欠き模様の少なくとも一部が、ハーフ蒸着層が設けられたベース体の断続的もしくは連続的な回転下でのハーフ蒸着層へのレーザ照射によって形成されているものは、切欠き模様が美麗に仕上がっており、好適である。
【0017】
また、本発明のなかでも、特に、上記筒状のベース体の表面に凹凸模様が形成され、その上に、切欠き模様が形成されたハーフ蒸着層が設けられており、上記凹凸模様の少なくとも一部が、ベース体の断続的もしくは連続的な回転下でのベース体へのレーザ照射によって形成され、上記切欠き模様の少なくとも一部が、ハーフ蒸着層が設けられたベース体の断続的もしくは連続的な回転下でのハーフ蒸着層へのレーザ照射によって形成されているものは、凹凸模様および切欠き模様が美麗に仕上がっており、一層印象的な外観となる。
【0018】
さらに、本発明のなかでも、特に、加飾成形体が、光透過性を有する内容物を充填する容器であるものは、容器本体の光の屈折率と、内容物となるものの光の屈折率が異なるため、容器手前側の切欠き模様を透かして見える、容器向こう側の内周面の切欠き模様や、その内周面に映り込む切欠き模様が、本来の形から変化して、異なる形の切欠き模様に見えるため、より複雑な印象の変化を生み出すことになり、好適である。
【0019】
そして、上記加飾成形体のなかでも、特に、上記加飾成形体がボトルタイプの化粧料容器に用いられる容器本体であり、上記光透過性を有する内容物が無色透明もしくは有色透明の液体であるものは、上記液体によって光の反射軌跡が変化してレンズ効果を生じるため、液体を透かして見える切欠き模様が立体的に浮かび上がり、より興趣に富むものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明を化粧料容器の容器本体に適用した一実施の形態を示す斜視図である。
【
図3】(a)、(b)は、ともに上記実施の形態における切欠き模様の説明図である。
【
図4】上記切欠き模様を形成するために用いられる装置の一例を示す説明図である。
【
図5】(a)は上記切欠き模様の形成方法の一例を示す説明図、(b)は上記切欠き模様の形成方法の他の例を示す説明図である。
【
図6】(a)は上記実施の形態における変形例の説明図、(b)は本発明の他の実施の形態の説明図、(c)は本発明のさらに他の実施の形態の部分的な説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0022】
図1は、本発明を、ボトルタイプの化粧料容器の容器本体10に適用した一実施の形態を示している。この化粧料容器は、無色透明の化粧水を収容するためのもので、筒状壁部である胴体部11と口部12とを備えた容器本体10と、上記口部12にねじ係合するキャップ13とを備えている。
【0023】
上記容器本体10は、
図1およびその縦断面図である
図2(断面の厚みや形状は模式的である)に示すように、透明樹脂成形体からなるベース体20からなり、ベース体20の筒状壁部である胴体部11の周壁の外表面に、無色透明のアンダーコート層21が形成され、その上に、アルミニウム蒸着によるハーフ蒸着層22が形成されている。なお、ハーフ蒸着層22とは、蒸着層の手前から奥が透けて見える蒸着層のことである。そして、上記ハーフ蒸着層22が部分的に切欠かれて、その切欠き部から、透明なアンダーコート層21が露出し、その下の透明なベース体20も透けて見えることにより、切欠き模様Rが形成されている。
【0024】
上記切欠き模様Rは、ごく幅の狭い線状の切欠き部と、その長さがごく短い点状の切欠き部とを組み合わせて構成されており、
図1に示すように、胴体部11の周壁全体にわたって、異なるデザインの切欠き模様Rが規則的に配置されている。
【0025】
そして、
図3(a)に示すように、上記胴体部11の周壁に設けられた切欠き模様Rのうちの1つに視点を定めて、この部分を正面とした場合、この面と対向する背面側に、もう1つの、切欠き模様R'(破線で示す)が位置決めされるようになっている。したがって、この切欠き模様Rを正面から見る配置で、この容器本体10を手に持って明るいところにかざすと、ハーフ蒸着層22を備えた胴体部11を透かして、背面側の切欠き模様R'が見えるため、二つの切欠き模様R、R'が重なって複雑なデザイン模様が付与されているように見える。また、互いの切欠き部が交差する部分(図において太い黒点Qで示す)では、光がストレートに透過して、他の部分よりも明るく光るため、切欠き模様R、R'とは別に、光の点による模様が付与されているようにも見える。
【0026】
そして、上記容器本体10を、例えば向かって右に少し回転させて、容器本体10に対する視点を変えると、
図3(b)に示すように、上記切欠き模様Rは右に移動し、透けて見える背面側の切欠き模様R'が左に移動する。このため、二つの切欠き模様R、R'の重なり模様が変化して、さっきとは異なる、新たなデザイン模様が現出する。また、互いの切欠き部が交差して明るく光る部分Qも移動して、光の点による模様も、新たなデザイン模様として現出する。
【0027】
しかも、上記容器本体10の表面の、切欠き模様R(
図3におけるR'を含む)以外の部分は、金属光沢を有するハーフ蒸着層22で被覆されているため、この部分に、周囲の景色や、これを見る使用者の顔が映り込んで、複雑な印象を与える。また、ハーフ蒸着層22を備えた胴体部11を透かして見える容器本体10の内周面にも、周囲の切欠き模様Rや周囲の景色等が映り込んで、より複雑な印象を与える。
【0028】
このように、上記容器本体10には、その周面に、切欠き模様Rを有するハーフ蒸着層22が設けられているにすぎないが、その切欠き模様Rと反対側の切欠き模様R'との重なり模様や、互いの切欠き部が重なって生じる光の点模様、そして、ハーフ蒸着層22に映り込む周囲の景色等の模様、容器内周面に映る周囲の景色や切欠き模様R等の模様、等々の複雑な模様を視認することができるため、非常に複雑な印象のものとなる。しかも、これらの模様が、容器本体10を動かすか見る方の視点を動かすことにより、複雑に変化するため、従来にない興趣に富むものとなる。また、これらの模様は、胴体部11を透過する光の量によっても変化し、光の模様が部分的に明るくなったり暗くなったりしてまたたくように変化するため、独特の効果が得られる。
【0029】
さらに、この容器本体10に無色透明もしくは有色透明の化粧水を充填し、キャップ13を締めて密封した状態で、そのまま、もしくは透明な樹脂シートからなる包装箱に収容して店頭に陳列すると、店内の照明(陳列棚の照明を含む)によって容器が照らされ、容器本体10の切欠き模様Rを有するハーフ蒸着層22を通って、内側の化粧水まで光が届く。そして、化粧水を通して見える切欠き模様Rには、化粧水によるレンズ効果が生じて、切欠き模様Rが立体的に見える。したがって、より印象的な容器外観となり、好適である。
【0030】
なお、上記容器本体10において、ベース体20の材質は、特に限定するものではなく、成形可能な各種の合成樹脂を用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、イーストマンケミカル社製のトライタン等のポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、メタクリル樹脂(PMMA)、アクリロニトリル-スチレン(AS)樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)等を用いることが、成形性、耐久性、軽量性の点で好ましい。そして、上記ベース体20の色は、無色透明であることが好ましいが、透明性、すなわち光透過性があれば着色されていても差し支えない。着色すると、切欠き模様Rの切欠き部に色が付くので、全体の印象に変化を与えることができる。
【0031】
また、上記ベース体20の成形方法は、射出成形や射出ブロー成形、ブロー成形等、どのようなものであってもよい。そして、その厚みも、特に限定されるものではないが、例えば、0.5~3mm程度であると、容器全体が軽量で取り扱いやすいものとなる。
【0032】
さらに、上記ベース体20の胴体部11に形成されるアンダーコート層21は、無色透明のものを用いたが、必ずしも無色である必要はなく、透明性、すなわち光透過性があれば着色されていても差し支えない。着色したアンダーコート層21を用い、切欠き模様Rを形成する際に、ハーフ蒸着層22を除去しアンダーコート層21を残すようにすると、切欠き部の色が、アンダーコート層21の色によって着色されるため、全体の印象に変化を与えることができる。
【0033】
なお、上記アンダーコート層21は、その上に形成するハーフ蒸着層22をベース体20に接着一体化させるために用いられるものであるが、ハーフ蒸着層22の形成方法によっては、必ずしもアンダーコート層21は必要ではない。
【0034】
また、上記ベース体20の外周面に直接もしくは上記の例のようにアンダーコート層21を介して形成されるハーフ蒸着層22は、アルミニウムに限らず、ステンレス等、他の金属材料からなり、従来公知の、真空蒸着等の方法によって得られるものである。そして、上記ハーフ蒸着層22は、反対側が透けて見える程度の光透過性を備えていることが好ましく、そのためには、光透過率が20~80%であることが好ましく、30~75%であることがさらに好ましい。なお、本発明において、上記「光透過率」は、JIS K7361-1に準じて測定される値をいう。
【0035】
上記光透過率が低すぎると、容器本体10の胴体部11を見たときに正面側の切欠き模様Rと背面側の切欠き模様R’のように互いに対向する配置で設けられた2つ以上の欠き模様R同士の重なりを視認しにくくなり、視点を動かしてもその変化を認識しにくくなるため、好ましくない。また、光透過率が高すぎると、切欠き模様Rの切欠き部と、切欠かれていないハーフ蒸着層22の地の部分との区別がつきにくく、模様の印象やその変化の印象が弱いものとなって好ましくない。
【0036】
そして、上記ハーフ蒸着層22を部分的に除去して形成される切欠き模様Rは、上記の例では、幅の狭い線状もしくは点状の切欠き部を組み合わせたものであるが、切欠き部の形状は、必ずしも線状や点状にする必要はない。ただし、幅の狭い線状や点状の切欠き部を組み合わせたものである方が、正面側の切欠き模様Rと背面側の切欠き模様R'の、互いの切欠き部の交差部が光の点となって点々模様を作るため、印象深いものとなる。そして、視点を動かしながら容器本体10を見ると、上記光の点々模様の形が変化するため、より一層興趣に富むものとなる。このような効果を得るには、上記切欠き部の幅を20μm~5mmとすることが好ましく、なかでも、50μm~300μmとすることが、繊細かつ変化に富んだ印象を与える上で、好適である。
【0037】
また、上記切欠き模様Rは、容器本体10の一方側から見たときの切欠き模様Rと、容器本体10を透かして向こう側に見える切欠き模様R'[
図3(a)を参照]とが重なって見える見え方と、容器本体10を移動させるか見る側の視点を動かすかして、その両者がずれた場合の見え方が変化するように配置される必要がある。そのためには、上記切欠き模様Rが、容器本体10の、互いに対応する配置となる少なくとも2個所に形成されていなければならない。
【0038】
もちろん、上記切欠き模様Rは、筒状の容器本体10の、正面側と背面側の2個所において対向する配置になっていても、互いにもっと偏った配置(例えば周方向に60°間隔、とか120°間隔)になっていて、視点を大きく変化させることによって互いの模様が重なったりずれたりするものであってもよい。また、容器本体10を垂直に立てた状態で互いに重なる複数の切欠き模様Rが、これを手前に傾けたり後方に傾けたりすることによって、互いにずれて変化するものであってもよい。逆に、初期位置では互いにずれた配置になっている複数の切欠き模様Rが、特定の姿勢(特定の視点)において、互いに重なって模様が変化するものであってもよい。さらに、外周面全体に、変化のある切欠き模様Rが形成されており、その切欠き模様Rが、手前で見える部分と透かして見える部分が、視点の移動に応じて変化するものであってもよい。
【0039】
なお、上記ハーフ蒸着層22に切欠き模様Rを形成する方法としては、各種の切欠き加工方法を用いることができるが、なかでも、レーザ照射による除去加工を行うことが好適である。レーザ照射によって切欠き模様Rを形成するには、レーザ装置に、切欠き模様Rを形成するための除去加工位置のデータを入力しておき、それに基づいてレーザ光を断続的に走査させることによって行われる。
【0040】
上記レーザ照射は、例えば
図4に示すような装置を用い、アンダーコート21を介してハーフ蒸着層22が形成されたベース体20を回転させながら行うことが好適である。より詳しく説明すると、この装置は、ベース体20を水平に保持するワーク保持部31と、上記ワーク保持部31に保持されたベース体20に回転動作を与えるモータ32とを備えている。
【0041】
上記ワーク保持部31は、ベース体20の口部12とねじ係合してベース体20を水平に保持する係合ガイド31aと、ベース体20の底面中心を押し付け保持する押さえガイド31bとで構成されている。なお、上記押さえガイド31bは補助的なものであり、必ずしも必要ではない。そして、装置の2枚の垂直壁33、34の間に固定されたモータ32の回転軸(隠れて見えない)が、回転ベース35に一体的に取り付けられており、モータ32による回転駆動によって、回転ベース35ごと係合ガイド31aとベース体20が回転するようになっている。
【0042】
また、上記ワーク保持部31の上方には、レーザ装置の出力部36が配置されており、矢印で示すように、ワーク保持部31によって水平に保持されたベース体20の表面に向かって垂直にレーザ光が照射されるようになっている。
【0043】
そして、例えば
図5(a)に示すように、ハーフ蒸着層22が形成されたベース体20[アンダーコート層21は図示せず、
図5(b)も同じ]の表面を周方向に3分割し、まず、周面全体の1/3の領域に対し、真上からレーザ照射を行い、この1/3の領域内において、予め設定されたデータに基づいて切欠き模様Rを形成する。つぎに、ベース体20を120°回転させて同様にレーザ照射を行い、周面のつぎの1/3の領域に切欠き模様Rを形成する。さらに、ベース体20を120°回転させて同様にレーザ照射を行い、切欠き模様Rを形成する。なお、Pは回転中心軸である[
図5(b)も同じ]。
【0044】
このようにして、ハーフ蒸着層22が形成されたベース体20の周面全体に加工を施して、目的とするデザインの切欠き模様Rが形成された容器本体10(
図1を参照)を得ることができる。得られた切欠き模様Rの各切欠き部は、
図5(a)に示すように、3分割された周面の部分が、それぞれ真上に配置された状態でレーザ照射を受けるため、その配置において、垂直下向きに形成される。
【0045】
なお、ハーフ蒸着層22が形成されたベース体20の表面にレーザ照射を行う際、上記のように、ベース体20の表面を周方向にn分割(上記の例では3分割)し、ベース体20を(360/n)°ずつ回転させて、n回のレーザ照射を断続的に行うと、1回のレーザ照射のために取り扱う加工データの量が、全周を一度に加工する場合の1/nとなり、短時間での断続処理となる。したがって、処理品の搬送等のタイミングを短くすることができ、生産効率を高めることができる。
【0046】
また、ハーフ蒸着層22が形成されたベース体20の表面にレーザ照射を行う際、上記のように、レーザ照射をn回に分けて断続的に行うのではなく、
図5(b)に示すように、ベース体20を回転しながらレーザ照射を行い、周面全体に対し連続的に切欠き模様Rを形成することもできる。このようにして得られた切欠き模様Rの各切欠き部は、図示のように、全て回転中心軸Pに向かって形成される。
【0047】
この方法によれば、上記のようにレーザ照射を断続的に行う場合とは異なり、加工が途切れた境界部における切欠き模様Rのずれを気にする必要がなく、周面のどの部分についても美麗な仕上がりとなる。ただし、切欠き模様Rのデザインによっては、1回のレーザ照射のために取り扱う加工データの量が膨大になり、1回の処理に時間がかかるため、切欠き模様Rのデザインや要求される単位時間当たりの処理量に応じて、上記のように、n分割して断続的にレーザ照射を行うか、1回で全周の加工を連続的に行うかを使い分けることが望ましい。
【0048】
なお、切欠き模様Rを形成するためのレーザとしては、金属薄膜層に対し除去作用を有するものであれば、特に限定されるものではなく、各種のレーザを用いることができる。例えば、YAGレーザ、YVO4レーザ、半導体レーザ等が好適に用いられる。
【0049】
また、上記切欠き模様Rを形成する他の方法としては、例えば、ハーフ蒸着層が転写層として形成された転写シートを準備し、その転写シートのハーフ蒸着層をレーザ照射によって部分的に除去加工して切欠き模様Rを形成し、この転写シートの転写層を、ベース体20の外周面に転写することにより、ベース体20に切欠き模様R付きのハーフ蒸着層22を形成することができる。ただし、上記転写シートを用いる方法は、ベース体20の外周面の形状によっては、正確に転写シートを転写することが容易でなく、ズレやしわを生じて見栄えが悪くなるおそれがあるため、上記の例のように、ベース体20に直接もしくはアンダーコート層21を介してハーフ蒸着層22を形成し、そのハーフ蒸着層22にレーザ照射して切欠き模様Rを形成することが好適である。
【0050】
さらに、上記の例において、ハーフ蒸着層22の表面に、透明なトップコート層を設けてこれを保護することが好適である。そして、上記トップコート層に着色したりグラデーションをつけたりすることもできる。上記トップコート層は、切欠き模様Rを形成する前に形成しておき、レーザ照射等によって、ハーフ蒸着層22と同時に除去して切欠き模様Rを形成することが好ましい。ただし、無色透明なトップコート層を用いる場合は、切欠き模様Rを形成した後に、全体を被覆するように形成しても差し支えない。
【0051】
そして、上記の例は、本発明を、側周面が円筒状の化粧料容器に適用した例であるが、加飾を施す側周面の形状は、円筒状に限らず、例えば、
図6(a)に示すような四角筒状の容器のような多角筒状の他、楕円筒状、あるいは不規則な褶曲面を有する略筒状のもの等であってもよい。
【0052】
また、本発明は、上記の例のように、筒状の周壁を有する化粧料容器に適用する以外に、筒状壁部を有する各種の樹脂成形体に適用することができる。例えば、
図6(b)に示すような、ドーム状の天井部を有するシェードのような照明用カバーの他、各種カバー、陳列ケース、装飾品等に広く適用することができる。ただし、上記の例のように、本発明の加飾を施した筒状壁部の内側に、透明液体を充填したものは、液体がレンズ効果を奏して切欠き模様Rを立体的に浮かび上がらせるため、とりわけ印象的な外観を有するものとなり、好適である。
【0053】
さらに、上記の例では、ベース体20の滑らかな表面に、直接もしくはアンダーコート層21を介してハーフ蒸着層22を形成し、その後、ハーフ蒸着層22を部分的に除去して切欠き模様Rを形成したが、例えばベース体20の表面に、
図6(c)に示すように、予め凹凸模様Sを形成し、その上に直接もしくはアンダーコート層21を介してハーフ蒸着層22を形成した後、上記凹凸模様Sに合わせて切欠き模様Rを形成したり、凹凸模様Sの部分以外にも切欠き模様Rを形成したりして、より複雑な光の変化を伴う透かし模様を得ることができる。
【0054】
上記凹凸模様Sを形成するには、切欠き模様Rを形成する場合と同様の装置を用い、ベース体20を断続的もしくは連続的に回転しながらレーザ照射を行ってベース体20の表面を部分的に溶融除去することが好適である(
図4、
図5を参照)。そして、その場合、凹凸模様Sを形成する際の加工データを、切欠き模様Rを形成するときの加工データに利用することができるため、煩雑な調整を行うことなく、凹凸模様Sに対し、的確な配置で切欠き模様Rを形成することができる。
【0055】
なお、上記凹凸模様Sを形成するためのレーザとしては、樹脂に対し溶融除去作用を有するものであれば、特に限定されるものではなく、各種のレーザを用いることができる。例えば、CO2レーザ、エキシマレーザ、半導体レーザ等があげられ、なかでもCO2レーザが、制御性、仕上がり性において好適である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、見る角度によって切欠き模様の見え方や全体の印象が変化する、非常に興趣に富む切欠き模様付加飾成形体に利用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 容器本体
11 胴体部
20 ベース体
22 ハーフ蒸着層
R 切欠き模様