(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】熱交換器及び複合給湯器
(51)【国際特許分類】
F24H 9/00 20220101AFI20220922BHJP
F24H 1/14 20220101ALI20220922BHJP
F24H 8/00 20220101ALI20220922BHJP
【FI】
F24H9/00 A
F24H1/14 B
F24H8/00
(21)【出願番号】P 2018111325
(22)【出願日】2018-06-11
【審査請求日】2021-05-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】中川 悟
(72)【発明者】
【氏名】中西 渉
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-124920(JP,A)
【文献】特開2018-013311(JP,A)
【文献】特開2005-337543(JP,A)
【文献】実開昭54-149758(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 9/00
F24H 1/12 - 1/14
F24H 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内部に仕切板を設けて2つの排気通路を形成し、少なくとも一方の前記排気通路に、顕熱回収用の熱交換器を通過した燃焼ガスから潜熱を回収するための吸熱管を収容してなる熱交換器であって、
前記仕切板に、各前記排気通路を通過する燃焼ガスが互いに隣接する前記排気通路側へ移動可能な通気部を備えたことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記通気部は、複数の透孔であることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
バーナと、前記バーナの燃焼ガスの流れの上流側に配置される顕熱回収用の熱交換器と、前記流れの下流側に配置される請求項1又は2に記載の熱交換器とを含んでなる複合給湯器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風呂給湯器等に用いられる熱交換器と、その熱交換器を備えた風呂給湯器等の複合給湯器とに関する。
【背景技術】
【0002】
風呂給湯器等の複合給湯器には、熱効率を高めるために、主に顕熱を回収する顕熱回収用の熱交換器と、主に潜熱を回収する潜熱回収用の熱交換器とを併設したものが知られている。この潜熱回収用の熱交換器として、例えば特許文献1には、平面視が矩形状となる箱形のケーシング内に、仕切板によって2つの排気通路(ここでは給湯用と暖房用)を形成し、各排気通路に、複数の吸熱管を蛇行形状や螺旋形状で配設している。よって、顕熱回収用の熱交換器を通過して顕熱が回収されたバーナの燃焼ガスは、潜熱回収用の熱交換器内を通過する際に吸熱管と接触して、吸熱管を流れる水等との間で熱交換して潜熱が回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の潜熱回収用の熱交換器においては、何れか一方の排気通路のみで熱交換を行ってバーナの燃焼を停止すると、燃焼中に吸熱管へ付着した強酸性のドレンが気化してケーシングに設けた排気口から排出されることがある。よって、この気化したドレンが器具前面や周囲の建物の壁面等に付着することで、器具前面や壁面等を腐食させるおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、ドレンの気化による排出を効果的に抑制することができる熱交換器及び複合給湯器を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ケーシング内部に仕切板を設けて2つの排気通路を形成し、少なくとも一方の排気通路に、顕熱回収用の熱交換器を通過した燃焼ガスから潜熱を回収するための吸熱管を収容してなる熱交換器であって、
仕切板に、各排気通路を通過する燃焼ガスが互いに隣接する排気通路側へ移動可能な通気部を備えたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、通気部は、複数の透孔であることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、複合給湯器であって、バーナと、バーナの燃焼ガスの流れの上流側に配置される顕熱回収用の熱交換器と、当該流れの下流側に配置される請求項1又は2に記載の熱交換器とを含んでなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1及び3に記載の発明によれば、仕切板に、各排気通路を通過する燃焼ガスが互いに隣接する排気通路側へ移動可能な通気部を備えたことで、通気部を介して移動した排気通路内で燃焼ガスの雰囲気温度が下がり、ケーシング内でのドレンの発生が促進される。よって、燃焼中に吸熱管へ付着した強酸性のドレンが燃焼停止後に気化して排出されることを効果的に抑制でき、ドレンが器具前面や周囲の建物の壁等に付着して腐食させるおそれを低減可能となる。
請求項2に記載の発明によれば、上記効果に加えて、通気部を複数の透孔としたことで、通気部が簡単に形成可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、複合給湯器の一例である風呂給湯器を示す断面図である。この風呂給湯器1は、図示しない筐体内に燃焼装置2を備えてなり、燃焼装置2は、内部が連通する缶体3内に、下方から、バーナユニット4、主に顕熱を回収する顕熱回収用の一次熱交換器5、主に潜熱を回収する潜熱回収用の熱交換器としての二次熱交換器6の順に備えている。
まず、バーナユニット4では、第1バーナ群7と第2バーナ群8とが左右方向に並設される。各バーナ群7,8は、上端面に炎孔を形成した扁平なバーナ9,9・・を複数左右方向に並べてなり、各バーナ9の下部に設けた混合管10の後端に、ガス供給管に接続される図示しないノズルを臨ませて、燃料ガスと共に燃焼用一次空気が供給されるようになっている。ここでは第1バーナ群7が給湯側バーナ、第2バーナ群8が風呂側バーナとなっており、能力の大きい第1バーナ群7のバーナ9の数を第2バーナ群8よりも多くしている。
【0010】
次に、一次熱交換器5では、第1バーナ群7の上方に位置する給湯側一次熱交換器11と、第2バーナ群8の上方に位置する風呂側一次熱交換器12とが左右方向に並設される。各熱交換器11,12は、前後方向に所定間隔をおいて複数枚積層したフィン13,13・・と、各フィン13を蛇行状に貫通する伝熱管14とからなる。
また、二次熱交換器6では、給湯側一次熱交換器11の上方に位置し、螺旋状に巻回される複数の吸熱管16.16・・からなる給湯側二次熱交換器15と、風呂側一次熱交換器12の上方に位置し、螺旋状に巻回される複数の吸熱管18,18・・からなる風呂側二次熱交換器17とが左右に並設される。
【0011】
この給湯側二次熱交換器15及び風呂側二次熱交換器17は、
図2,3にも示すように、上側ケース21と下側ケース22とからなる箱状のケーシング20に収容されている。上側ケース21は、前後左右の周囲4面と上面とで囲まれて下面が開口する箱状で、一枚の金属板を絞り加工して形成され、下面の開口周縁には上フランジ部23が略全周に一体形成されている。
下側ケース22は、前後左右の周囲4面と底面とで囲まれて上面が開口する箱状で、一枚の金属板を絞り加工して形成され、上面の開口周縁には下フランジ部24が略全周に一体形成されている。但し、下側ケース22は上側ケース21よりも深さが大きくなって、底面は前下がり傾斜している。
よって、ケーシング20は、下側ケース22に上側ケース21を重ねた状態で、上フランジ部23と下フランジ部24とを溶接やロウ付け等で接合することで形成される。下側ケース22の後面には、一次熱交換器5を通過した燃焼ガスの流入口25が、前面には、ケーシング20内を通過した燃焼ガスの排気口26がそれぞれ左右方向に形成されている。
【0012】
また、ケーシング20の内部には、
図4にも示すように、給湯側二次熱交換器15と風呂側二次熱交換器17との間を仕切る仕切板27が前後方向に設けられている。この仕切板27によりケーシング20内には、流入口25から流入した燃焼ガスが給湯側二次熱交換器15の吸熱管16,16・・間を通過して排気口26から排出する給湯側排気通路28と、流入口25から流入した燃焼ガスが風呂側二次熱交換器17の吸熱管18,18・・間を通過して排気口26から排出する風呂側排気通路29とが形成されている。
但し、仕切板27における後側領域には、通気部としての複数の円形の透孔30,30・・が形成されて、給湯側排気通路28と風呂側排気通路29とを透孔30,30・・を介して互いに連通させている。
【0013】
さらに、ケーシング20の左側面には、給湯側二次熱交換器15の吸熱管16,16・・の端部とそれぞれ連通する入側ヘッダ31と出側ヘッダ32とがそれぞれ上下に設けられている。入側ヘッダ31には、入口33が設けられて給水管34が接続されている。出側ヘッダ32には、出口35が設けられて、給湯側一次熱交換器11の伝熱管14の入口への接続管36が接続される。給湯側一次熱交換器11の伝熱管14の出口には、出湯管37が接続される。
一方、ケーシング20の右側面には、風呂側二次熱交換器17の吸熱管18,18・・の端部とそれぞれ連通する入側ヘッダ38と出側ヘッダ39とがそれぞれ前後に設けられている。入側ヘッダ38には、入口40が設けられて、浴槽からの戻り配管41が接続されている。出側ヘッダ39には、出口42が設けられて、風呂側一次熱交換器12の伝熱管14の入口への図示しない接続管が接続される。風呂側一次熱交換器12の伝熱管14の出口には、浴槽への往き配管43が接続されている。
【0014】
そして、ケーシング20内で、上側ケース21の下側には、
図3に示すように、前方へ向かって下り傾斜する天井板45が設けられている。この天井板45の前方には、上側ケース21の前面から所定間隔をおいた後方位置から前面と平行に垂下し、ケーシング20内の上下方向中央よりやや下側位置まで伸びる垂下部47と、その垂下部47の下端から前方斜め上へ伸びて排気口26の上端に接続される左右方向の案内部48とからなる整流板46が設けられている。
よって、流入口25から給湯側排気通路28及び風呂側排気通路29を前方へ移動する燃焼ガスは、整流板46の垂下部47に当接すると、点線矢印で示すように、垂下部47に沿って下降した後、垂下部47の下方を回り込んで案内部48に沿って前方へ移動し、排気口26から排出されることになる。
また、下側ケース22における排気口26の下縁には、前方斜め上へ向けて突出し、前端が筐体内面に当接する傾斜板49が設けられている。
【0015】
一方、缶体3内は、第1バーナ群7と第2バーナ群8との間に位置する下仕切部材50と、給湯側一次熱交換器11と風呂側一次熱交換器12との間に位置する中仕切部材51とが設けられている。この下仕切部材50と中仕切部材51と仕切板27とによって、缶体3内は、第1バーナ群7と給湯側一次熱交換器11と給湯側二次熱交換器15とが配置される給湯側燃焼室52と、第2バーナ群8と風呂側一次熱交換器12と風呂側二次熱交換器17とが配置される風呂側燃焼室53とに仕切られている。下仕切部材50には、燃焼ガスの温度を検出してフィン13の閉塞を監視するためのサーミスタ54が設けられている。缶体3の下部には、図示しない給気ファンが接続されて、給気ファンから送られる空気を、各燃焼室52,53に供給可能としている。
【0016】
以上の如く構成された風呂給湯器1においては、出湯管37に設けられた給湯栓を開栓して器具内に通水させると、給水管34からの水が、給湯側二次熱交換器15の吸熱管16を通過した後、給湯側一次熱交換器11の伝熱管14を通過する。一方、器具外に設けられた図示しないコントローラが第1バーナ群7に点火すると共に、給気ファンを回転させて第1バーナ群7に燃焼用空気を供給する。第1バーナ群7の燃焼ガスは、給湯側燃焼室52内で給湯側一次熱交換器11、給湯側二次熱交換器15の順に通過することで、給湯側一次熱交換器11では主に顕熱が回収され、給湯側二次熱交換器15では主に潜熱が回収されて、出湯管37から所定温度の湯が出湯される。
【0017】
一方、コントローラに設けられた追い炊きスイッチをON操作すると、コントローラが浴槽との間の循環路に設けられたポンプを駆動させて第2バーナ群8に点火すると共に、給気ファンを回転させて第2バーナ群8に燃焼用空気を供給する。浴槽からの湯は、風呂側二次熱交換器17の吸熱管18を通過した後、風呂側一次熱交換器12の伝熱管14を通過し、第2バーナ群8の燃焼ガスは、風呂側燃焼室53内で風呂側一次熱交換器12、風呂側二次熱交換器17の順に通過する。よって、風呂側一次熱交換器12では主に顕熱が回収され、風呂側二次熱交換器17では主に潜熱が回収されて、浴槽内の湯が循環しながら追い焚きされる。
【0018】
このとき、二次熱交換器6では、一次熱交換器5を介して流入口25から流入した燃焼ガスが、給湯側排気通路28又は風呂側排気通路29をそれぞれ通り、天井板45から整流板46の下側に回り込んで排気口26から器具外部へ排出される。
そして、風呂側の単独使用の際、浴槽の追い焚きが終了して第2バーナ群8の燃焼が停止すると、給気ファンからの給気圧がなくなることで、風呂側排気通路29内で滞留した燃焼ガスは、
図4に点線矢印で示すように、仕切板27の透孔30,30・・から給湯側排気通路28内に流れ込み、熱交換されていない吸熱管16やケーシング20の内面に接触する。よって、燃焼ガスの温度が低下してケーシング20内で再凝縮してドレンが発生しやすくなる。
なお、給湯側排気通路28及び風呂側排気通路29で発生したドレンは、前下がり傾斜する下側ケース22の前方に凹設されて右下がり傾斜する凹部55で受けられ、凹部55の右側最深部に設けたドレン排出管56から図示しない中和器へ排出される。
【0019】
(二次熱交換器のケーシングによる効果)
このように、上記形態の二次熱交換器6及び風呂給湯器1によれば、ケーシング20を、下面を開口して周面及び上面を閉塞した上側ケース21と、上面を開口して周面及び下面を閉塞した下側ケース22との2部品を組み付けて形成しているので、組立工程を低減することができる。また、上側ケース21と下側ケース22とは共に深底形状とならないため、分割形成される部品の加工も容易に行うことができる。
特にここでは、上側ケース21と下側ケース22とは、共に1枚の金属板を絞り加工して形成しているので、深い絞り加工を行う必要がなく、加工性に優れたものとなる。
【0020】
なお、ケーシングを構成する上側ケースと下側ケースとの構造は上記形態に限らず、上側ケースと下側ケースとの深さを上下逆にしたり、フランジ部の一部又は全部をなくして接合したり等、適宜変更できる。また、ケーシングの全体形状も、平面視矩形状に限らず、平面視正方形等の他の箱形形状であっても差し支えない。
さらに、上記形態では、上側ケースを、下面の開口を下にした向きで下側ケースに組み付けているが、上側ケースを上下逆にして開口を上にした状態で、閉塞側の面及びその周面を下側ケースの上面の開口に嵌合させて組み付けることもできる。この場合、下側ケースの開口際の内面に、嵌合した上側ケースの周面が上側ケースの深さ分で当接するため、シール性が向上する。
【0021】
(二次熱交換器の仕切板による効果)
このように、上記形態の二次熱交換器6及び風呂給湯器1によれば、仕切板27に、各給湯側排気通路28及び風呂側排気通路29を通過する燃焼ガスが互いに隣接する風呂側排気通路29及び給湯側排気通路28側へ移動可能な通気部(透孔30)を備えたことで、透孔30を介して移動した給湯側排気通路28又は風呂側排気通路29内で燃焼ガスの雰囲気温度が下がり、ケーシング20内でのドレンの発生が促進される。よって、燃焼中に吸熱管16,18へ付着した強酸性のドレンが燃焼停止後に気化して排気口26から排出されることを効果的に抑制でき、ドレンが器具前面や周囲の建物の壁等に付着して腐食させるおそれを低減可能となる。
特にここでは、通気部を複数の透孔30としているので、通気部が簡単に形成可能となる。
【0022】
なお、通気部の形状は円形の透孔に限らず、スリット状の透孔とする等、数や形状は上記形態に限定しない。仕切板へ設ける領域も上記形態に限らず、排気通路の全域に設けたり、上流側から下流側へ行くに従って透孔の開口面積を徐々に小さくしたり、逆に徐々に大きくしたり、大きさをランダムにしたり等、適宜変更可能である。
【0023】
その他、上記形態では、給湯側と風呂側との2つの加熱部を有する複合給湯器となっているが、風呂側は暖房機器用の他の加熱部であってもよい。
但し、仕切板に係る発明については、潜熱回収用の熱交換器の両方の排気通路に吸熱管を設けて二次熱交換器を形成するものに限らず、何れか一方(例えば給湯側)の排気通路にのみ吸熱管を設けて二次熱交換器を形成する複合給湯器であっても、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0024】
1・・風呂給湯器、2・・燃焼装置、3・・缶体、4・・バーナユニット、5・・一次熱交換器、6・・二次熱交換器、7・・第1バーナ群、8・・第2バーナ群、9・・バーナ、11・・給湯側一次熱交換器、12・・風呂側一次熱交換器、13・・フィン、14・・伝熱管、15・・給湯側二次熱交換器、16,18・・吸熱管、17・・風呂側二次熱交換器、20・・ケーシング、21・・上側ケース、22・・下側ケース、23・・上フランジ部、24・・下フランジ部、25・・流入口、26・・排気口、27・・仕切板、28・・給湯側排気通路、29・・風呂側排気通路、30・・透孔、34・・給水管、36・・接続管、37・・出湯管、52・・給湯側燃焼室、53・・風呂側燃焼室。