(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】熱電発電システム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02N 11/00 20060101AFI20220922BHJP
H01L 35/30 20060101ALI20220922BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
H02N11/00 A
H01L35/30
H05K7/20 D
(21)【出願番号】P 2018131678
(22)【出願日】2018-07-11
【審査請求日】2021-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】515135114
【氏名又は名称】株式会社Eサーモジェンテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 朗
(72)【発明者】
【氏名】池村 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 道生
(72)【発明者】
【氏名】大畑 惠一
(72)【発明者】
【氏名】南部 修太郎
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-207995(JP,A)
【文献】特開2009-004558(JP,A)
【文献】特開平11-036981(JP,A)
【文献】特開2003-314452(JP,A)
【文献】特開2013-033810(JP,A)
【文献】特開2016-171154(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0017334(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105626213(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
H01L 35/30
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円管状の熱源パイプ外面に
熱電発電モジュールが装着された
熱電発電システムであって、
前記熱電発電モジュールの外面に、放熱フィンが巻きつけられており、
前記放熱フィンは、
前記熱電発電モジュール側に位置する
、容易に曲がることが可能なベースプレートと、
前記ベースプレート上に設けられ
、該ベースプレートと柔軟性接着剤又は接着シートで接着された折り曲げフィンと、
前記ベースプレートの両端にそれぞれ設けられ、前記ベースプレートが前記熱電発電モジュールに巻きつけられた状態で、締めあげ、固定する機構を有する剛性フランジと、
を備え
、
前記熱電発電モジュールの外面に前記放熱フィンを巻きつけた状態で、前記両端の剛性フランジの合わせ部分において、前記ベースプレートと前記熱源パイプとの間の空隙ができないように、前記ベースプレートと前記熱源パイプとの間に柔軟性シートが挿入されていることを特徴とする
熱電発電システム。
【請求項2】
前記剛性フランジの固定する機能として、2次元的に配置された少なくとも3箇所のネジ穴を有することを特徴とする請求項1に記載の
熱電発電システム。
【請求項3】
前記ベースプレートが前記熱電発電モジュールに巻きつけられる場合の、前記熱源パイプ又は前記熱電発電モジュールの円周方向における、前記ベースプレートの前記剛性フランジ間の寸法は、
(熱源パイプの外径+熱電発電モジュールの厚さの2倍)×円周率
よりも小さいことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の
熱電発電システム。
【請求項4】
前記折り曲げフィンの前記ベースプレートとは反対側の頂部が開口されていることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1つに記載の
熱電発電システム。
【請求項5】
少なくとも前記放熱フィンの表面に黒体輻射増感用表面仕上げが施されていることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1つに記載の
熱電発電システム。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1つに記載の
熱電発電システムの製造方法であって、
前記放熱フィンは、
前記熱電発電モジュール側に位置する、容易に曲がることが可能なベースプレートと、
前記ベースプレート上に設けられ、該ベースプレートと柔軟性接着剤又は接着シートで接着された折り曲げフィンと、
前記ベースプレートの両端にそれぞれ設けられ、前記ベースプレートが前記熱電発電モジュールに巻きつけられた状態で、締めあげ、固定する機構を有する剛性フランジと、
を備え、
前記熱源パイプの外面に装着された前記熱電発電モジュールの外面に前記放熱フィンを巻きつける工程と、
前記熱電発電モジュールの外面に前記放熱フィンを巻きつけた状態で、前記両端の剛性フランジの合わせ部分において、前記ベースプレートと前記熱源パイプとの間に空隙ができないように、前記ベースプレートと前記熱源パイプとの間に柔軟性シートを挿入する工程と、
前記柔軟シートを挿入した後、前記両端の剛性フランジ同士を合わせて締めあげ、固定する工程と、を含むことを特徴とする
熱電発電システムの製造方法。
【請求項7】
前記熱電発電モジュールの外面に前記放熱フィンを巻きつけた状態で、前記熱電発電モジュール等により生じる、前記両端の剛性フランジの合わせ部分における、該剛性フランジ間の間隙に応じて柔軟性スペーサーを挿入する工程を更に含むことを特徴とする請求
6に記載の
熱電発電システムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源パイプに装着された熱電発電モジュールの外側を冷却する放熱フィン及びその装着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の産業社会においては、特に工場、発電所、製鉄所、自動車、ビル、照明、船舶などを中心に、全一次エネルギー供給量の60%以上の膨大な廃熱が地球環境に排出されており、その75%以上が250℃以下の排水や排気と推定されている。
【0003】
熱電発電は、これらの無駄に捨てられる熱から電気を起こすため、地球環境の保護に極めて有用である。これらの廃熱は、一般的に円筒状の排気パイプや排水パイプ等の排熱パイプを通じて輸送される。このため、これらの廃熱を、熱電発電の熱源として簡便に、かつ効率よく利用するためには、排熱パイプの外表面に密着させることができるフレキシブルな熱電発電モジュールが必要となる。
【0004】
このようなフレキシブルな熱電発電モジュールを用いて熱電発電システムを構成する場合には、熱電発電モジュールにできる限り温度差をつけるために、該熱電発電モジュールにおける熱源とは反対側の部分を冷却する必要がある。
【0005】
その簡便な方法として、特許文献1には、
図5に示すように、複数の熱電素子を実装した熱電変換モジュール110を排熱パイプ100に装着し、熱電変換モジュール110の外側に、排熱パイプ100の筒軸方向に沿って、フレキシブル熱伝導基板120に取り付けられた放熱フィン130を設けた熱電発電システムが開示されている。特許文献1の発電システムでは、放熱フィン130には、矢印Wの方向から、送風ファンで風が送られることにより、熱電変換モジュール110の排熱パイプ100と反対側が冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された放熱フィン及びその装着については、単に一般的な形態しか開示されていない。また、放熱フィンの排熱パイプへの装着、固定方法も詳細に示されていない。したがって、熱電発電モジュールに対して低熱抵抗で放熱性に優れた、放熱フィン及びその装着方法を実現するという観点からは改良の余地がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、その主な目的は、熱源パイプ外面に熱電発電モジュールが装着され、その外側に放熱フィンが設けられる場合に、熱電発電モジュールに対して均等加圧装着でき、かつ放熱性に優れ、かつ低コストの放熱フィン及びその装着方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る放熱フィンは、熱源パイプ外面に装着された熱電発電モジュールの外側に巻きつけられる放熱フィンであって、前記熱電発電モジュール側に位置するベースプレートと、前記ベースプレート上に設けられた折り曲げフィンと、前記ベースプレートの両端にそれぞれ設けられ、前記ベースプレートが前記熱電発電モジュールに巻きつけられた状態で、締めあげ、固定する機構を有する剛性フランジと、を備える。
【0010】
ある好適な実施形態において、前記剛性フランジの固定する機能として、2次元的に配置された少なくとも3箇所のネジ穴を有することを特徴とする。
【0011】
前記ベースプレートが前記熱電発電モジュールに巻きつけられる場合の、前記熱源パイプ又は前記熱電発電モジュールの円周方向における、前記ベースプレートの前記剛性フランジ間の寸法は、
(熱源パイプの外径+熱電発電モジュールの厚さの2倍)×円周率
よりも小さくてもよい。
【0012】
前記折り曲げフィンは、柔軟性接着材又は接着シートで前記ベースプレートに接着されていてもよい。
【0013】
前記折り曲げフィンは、金属と金属との圧着溶着又はロウ付けによって前記ベースプレートに接合されていてもよい。
【0014】
また他の好適な実施形態において、上記放熱フィンは、前記折り曲げフィンのベースプレートの反対側の頂部が開口されている。
【0015】
また、前記放熱フィンは、少なくとも前記放熱フィンの表面に黒体輻射増感用表面仕上げが施されていてもよい。
【0016】
ここで、前記放熱フィンの熱電発電モジュールの外側への装着に当たっては、前記熱源パイプの外面に装着された前記熱電発電モジュールの外面に前記放熱フィンを巻きつける工程と、前記熱電発電モジュールの外面に前記放熱フィンを巻きつけた状態で、前記両端の剛性フランジの合わせ部分において、前記ベースプレートと前記熱源パイプとの間に空隙ができないように、前記ベースプレートと前記熱源パイプとの間に柔軟性シートを挿入する工程と、前記柔軟性シートを挿入した後、前記両端の剛性フランジ同士を合わせて締めあげ、固定する工程と、を含む。
【0017】
また、前記両端の剛性フランジの合わせ部分における、該剛性フランジ間の間隙に応じて柔軟性スペーサーを挿入する工程を更に含んでもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、熱源パイプ外面に熱電発電モジュールが装着され、その外側に放熱フィンが設けられる場合に、熱電発電モジュールに対して均等加圧装着でき、かつ低い界面熱抵抗で放熱性に優れ、かつ低コストの放熱フィン及びその装着方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態1における放熱フィンの外観斜視図である。
【
図2】
図1の放熱フィンを装着した実施形態における断面図である。
【
図3】本発明の実施形態2における放熱フィンの外観斜視図である。
【
図4】
図3の放熱フィンを装着した実施形態における断面図である。
【
図5】従来の放熱フィンを装着した形態を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。
【0021】
(実施形態1)
図1は、実施形態1における放熱フィン1の構成を模式的に示した斜視図である。また、
図2は、
図1の放熱フィン1を、熱源パイプ21の外面に装着された熱電発電モジュール22の外面に装着した状態での、該熱源パイプ21の筒軸方向に垂直な断面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態1における放熱フィン1は、ベースプレート11に折り曲げフィン12が接着シート13で接合されたものである。尚、接着シート13の代わりに柔軟製接着剤を用いてもよい。
【0023】
ベースプレート11は、容易に曲がるようにアルミニウムや銅のような金属の薄板が好適である。折り曲げフィン12は同様な素材で種々形状と大きさの物を低コストで製造可能である。両者の接合にはフレキシブル性を確保するために、柔軟性接着剤あるいは接着シート13を用いるのが良い。また、接合部は低熱抵抗が望ましく、作業性をも勘案すると接着シート13が適当である。接着シート13としては、例えば、両面粘着性の高熱伝導率のカーボンシートが挙げられる。
【0024】
ベースプレート11の長手方向の両端には、ベースプレート11が熱電発電モジュール22の外面に巻きつけられた状態で、締めあげ、固定する機構を有する剛性フランジ14、15がそれぞれ設けられている。ここで、ベースプレート11は、熱電発電モジュール22の外面にずれなく密着して装着させる必要がある。このため、両剛性フランジ14,15は、変形の無い剛性を有している。また、例えば、両剛性フランジ14,15をネジで固定する場合には、両剛性フランジ14,15の平行性が確保され、かつ位置ずれの無いように、両剛性フランジ14,15は、2次元的に配置された少なくとも3箇所のネジ穴16を有する。
【0025】
また、該放熱フィン1は、熱電発電モジュール22の外面に巻きつけられた状態で、締めあげられるため、両剛性フランジ14,15間の寸法は熱電発電モジュール22の外面が成す円管の周囲長より小さくなければならない。このため、以下の式で算出される値よりも小さいことが必要である。
(熱源パイプの外径+熱電発電モジュールの厚さの2倍)×円周率
該放熱フィン1は、自然空冷の場合、放熱能力を高めるために、放熱フィン1の表面に黒体輻射増感用表面仕上げが施されていることが望ましい。これには黒色塗料を塗布するか、黒色アルマイト処理を施せば良い。
【0026】
この放熱フィン1の装着の好適例では、
図2に示すように、熱源パイプ21の外面に装着された熱電発電モジュール22の外面へ巻きつける。このとき、熱電発電モジュール22が熱源パイプ21の全外周に亘らない場合でも、円管状になって均等加圧できるように、両端の剛性フランジ14,15の合わせ部分において、ベースプレート11と熱源パイプ21との間に空隙ができないように、ベースプレート11と熱源パイプ21との間に柔軟性シート23を挿入するのが好ましい。柔軟性シート23は、例えば、シリコーン樹脂製のシートである。
【0027】
さらに、本実施形態1では、剛性フランジ14,15の合わせ部分において、熱電発電モジュール22の外面が成す円管の周囲長と放熱フィン1の長手方向の長さとの差で生じる、両剛性フランジ14,15間の間隙に応じて、柔軟性スペーサー24を挿入し、ネジ25により放熱フィン1を締めあげる。これにより、放熱フィン1は、熱電発電モジュール22の外面に亘り均等加圧で隙間なく装着できる。尚、本実施形態1では、熱源パイプ21に対して、熱電発電モジュール22と放熱フィン1とをより低熱接触抵抗で装着するために、放熱シート26,27も用いている。
【0028】
放熱フィン1を構成する要素の各寸法等は、例えば、ベースプレート11は、0.5mm厚のアルミニウム板であり、折り曲げフィン12は、0.2mm厚のアルミニウム板である。また、例えば、折り曲げフィン12の数は23であり、各折り曲げフィン12の高さはそれぞれ30mmであり、各折り曲げフィン12の幅は60mmである。折り曲げフィン12の底部は、例えば、厚さ0.3mmの両面粘着剤付きのカーボンシートでベースプレート11に接着されている。両端の剛性フランジ14,15は、例えば、2.5mm厚のアルミニウム板である。両剛性フランジ間の、放熱フィン1の長手方向における長さは、例えば、外径34mmの熱源パイプ21(外周約106mm)に厚さ1.5mmの熱電発電モジュール22を巻きつけ、外側に該放熱フィン1を装着する場合には、115mmである。剛性フランジ14,15には、それぞれ、ネジ固定用のΦ5mmの穴を3か所設けている。放熱フィン1の全体は、黒色アルマイト処理されている。
【0029】
折り曲げフィン12をベースプレート11に接着する耐熱材料としては、例えば、シリコーン系、アクリル変性シリコーン系、柔軟性エポキシ系、その他、ポリエステル系、ウレタン系、アクリル系などが好適である。
【0030】
折り曲げフィン12をベースプレート11に接合する有効な他の方法として、金属と金属との圧着溶着が挙げられる。上記の組み合わせではアルミニウムとアルミニウムの直接溶着であるが、ベースプレート11を銅、折り曲げフィン12をアルミニウムとする、銅とアルミニウムの溶着でも良い。均一で強固な接合が得られる。他にも、折り曲げフィン12とベースプレート11とをロウ付けにより接合してもよい。ロウ材としては銀やアルミニウに対してはアルミニウム-シリコン合金が有効である。
【0031】
放熱フィン1を熱電変換モジュール22(厚さ1.5mm、パイプの筒軸方向の長さ50mm、外周方向長さ95mm)の外側に装着するにあたっては、両端の剛性フランジ14,15の合わせ部分において、ベースプレート11と熱源パイプ21との間に約11mmの熱電発電モジュール22の両端部間に間隙ができるので、厚さ1.5mmの厚さのシリコーンシート(柔軟性シート23)を挿入している。また、両剛性フランジ14,15間には、厚さ約2mmのシリコーンゴム製のスペーサー(柔軟性スペーサー24)を挟んで両剛性フランジ14,15を締め上げれば良い。
【0032】
以上の放熱フィン1及びその装着方法の実施形態1によれば、簡単な構成で、かつ低コストで、かつ熱電発電モジュール22に対して均等加圧装着でき、かつ低界面熱抵抗で放熱性に優れる放熱手段を実現できる。
【0033】
(実施形態2)
図3は、本発明の実施形態2における放熱フィン201の構成を模式的に示した斜視図である。また、
図4は、
図3の放熱フィン201を熱源パイプ221上の熱電発電モジュール222の外面に装着した時の熱源パイプ221の筒軸方向に垂直な断面図である。
【0034】
本実施形態2によれば、折り曲げフィン212のベースプレート211とは反対側の頂部31が開口されているので、熱源パイプ221上の熱電発電モジュール222の外面に装着した時に折り曲げフィン212が広がり、放熱に関わる実効的な表面積が増大するので放熱能力が向上する。
【0035】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0036】
1,201 放熱フィン
11,211 ベースプレート
12,212 折り曲げフィン
13 接着シート
14,15 剛性フランジ
16 ネジ穴
21,221 熱源パイプ
22,222 熱電発電モジュール
23 柔軟性シート
24 柔軟性スペーサー
25 ネジ
26,27 放熱シート
31 折り曲げフィンの頂部
100 排熱パイプ
110 熱電変換モジュール
120 フレキシブル熱伝導基板
130 放熱フィン