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  • 特許-折畳み階段 図1
  • 特許-折畳み階段 図2
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  • 特許-折畳み階段 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】折畳み階段
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/06 20060101AFI20220922BHJP
   E04F 11/025 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
E04F11/06
E04F11/025
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018216066
(22)【出願日】2018-11-17
(65)【公開番号】P2020084437
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】518395393
【氏名又は名称】須永 清治
(74)【代理人】
【識別番号】100122552
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 浩二郎
(72)【発明者】
【氏名】須永 清治
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第03004202(FR,A1)
【文献】実開平02-128727(JP,U)
【文献】仏国特許出願公開第02136959(FR,A1)
【文献】実開昭59-185338(JP,U)
【文献】独国特許発明第00682831(DE,C2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/00-11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上側斜辺が段形に形成され壁面に固定される固定ササラ桁と、下側斜辺が段形に形成され折畳み・拡開時に回動動作を行う可動ササラ桁が、前記段形の水平部同士を両端側に蝶番を設けた複数枚の踏板で連結されてなる折畳み階段であって、折畳み状態では、垂直に立ち上がった前記各踏板により前記可動ササラ桁が前記固定ササラ桁の上方位置に持ち上げられた状態で支持されるとともに、前記各踏板が前記固定ササラ桁と前記可動ササラ桁との間に形成された空間を埋めながら収まるものとして、総ての前記踏板と前記可動ササラ桁が壁面に密着又は近接しながら前記固定ササラ桁と略面一の状態になり、折畳み状態からの拡開時には、前記可動ササラ桁を斜め下方に回動させることで、前記可動ササラ桁の下端側が床面に当接して拡開状態となり総ての前記踏板が水平に支持されるものとされており、前記固定ササラ桁と前記可動ササラ桁における前記蝶番の固定位置では、ボルト孔が桁材を厚さ方向に貫通しており、どちらの側面でも前記蝶番の固定が可能とされている、ことを特徴とする折畳み階段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折畳み階段に関し、殊に、コンパクトに折畳まれた状態から簡単な操作で拡開して階段としての使用が可能になる折畳み階段に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋において使用頻度が比較的少ないロフトや屋根裏部屋等の上部空間とその下側の空間との間で行き来するための手段としては、上部空間側から伸縮式の梯子を引き下ろす方式のものが周知である。このような伸縮式の梯子は、構成が単純で不使用時にコンパクトに収まるため、生活上邪魔になりにくいという特徴を有している。しかし、両手で物を持ってこれを上り下りするには不安定であり危険を伴いやすいという難点があった。
【0003】
これに対し、前述した梯子よりも安定的に上り下りが行えるものとして、収納階段や折畳み階段や収納階段が知られている。このような階段は、通常の生活における動線や採光等を妨げないようにするため、不使用時におけるコンパクトな収納・折畳み状態から、使用時に拡開操作を行うことにより通常の階段としての使用を可能としている。
【0004】
例えば、特開昭57-92250号公報の図1,2には、両側の壁面に設けた水平なガードレールに嵌合しながら摺動可能に支持された複数枚の踏板が、不使用時には最も奥の位置で垂直方向に総て重なった状態で収納され、使用時にはこれらの踏板が順次スライド移動して階段を形成する方式の収納階段が記載されており、不使用時には収納されて広い空間を確保することができる。
【0005】
また、実開平2-128727号公報の図1,2には、壁面に固定される固定ササラ桁と回動・拡開動作を行う可動ササラ桁とが、両端側に蝶番を設けた複数枚の踏板で回動自在に蝶着されてなる折畳み階段が記載されており、通常は両ササラ桁と総ての踏板が壁側に近接しながら折畳まれた状態になって、生活の動線を妨げにくいものとなり、使用時には、これらが拡開して通常の階段としての機能を発揮することができる。
【0006】
ところが、上述した収納階段では、左右の壁に渡して配設された踏板が収納時に床側から天井側に亘って総て並列するため、その部分のスペースが廊下や収納部等に使用することができない。また、総ての踏板を順次スライド移動させながら収納・拡開する操作には、多大な手間と労力を要することになる。
【0007】
また、上述した折畳み階段では、折り畳んだ状態で固定ササラ桁と踏板と可動ササラ桁が重なることで部材三層分の厚さを生じてしまうことから、これを狭い通路に配置した場合には、その三層の厚さにより生活者の通行を妨げやすくなり、且つ、複雑に重なった部材により極めて見栄えの悪いものとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開昭57-92250号公報
【文献】実開平2-128727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、折畳み階段について、折畳み・拡開操作が容易であるとともに、折畳んだ状態がよりコンパクトで見栄えの良いものとすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明は、上側斜辺が段形に形成され壁面に固定される固定ササラ桁と、下側斜辺が段形に形成され折畳み・拡開時に回動動作を行う可動ササラ桁が、段形の水平部同士を両端側に蝶番を設けた複数枚の踏板で連結されてなる折畳み階段であって、階段として使用しない折畳み状態では、垂直に立ち上がった各踏板により可動ササラ桁が固定ササラ桁の上方位置に持ち上げられた状態で支持されるとともに、各踏板が固定ササラ桁と可動ササラ桁との間に形成された空間を埋めながら収まるものとして、総ての踏板と可動ササラ桁が壁面に密着又は近接しながら前記固定ササラ桁と略面一の状態になるものとされ、折畳み状態からの拡開時には、可動ササラ桁を斜め下方に回動させることで可動ササラ桁の下端側が床面に当接して拡開状態となり、総ての踏板が水平に支持される、ことを特徴とするものとした。
【0011】
このように、固定ササラ桁と可動ササラ桁を両端に蝶番を備えた踏板で連結したことで、可動ササラ桁と踏板が同時に回動可能となって、折畳み・回動操作が比較的容易なものとなり、可動ササラ桁が固定ササラ桁の上方になる折畳み状態で総ての踏板が固定ササラ桁と可動ササラ桁の間の空間を埋めながら全体として略面一になる構成としたことにより、折畳み状態で壁面からササラ桁1枚分の厚さのコンパクトな状態に収まるため、狭い通路や小さな空間に配置した場合でも生活の動線を妨げにくいものとなり、且つ、一枚板のような面一の表面形状により、極めて見栄えの良いものとなる。
【0012】
また、この折畳み階段において、その踏板は、その短手方向の幅が、固定ササラ桁及び可動ササラ桁における垂直部と水平部で構成される段形の水平部の幅に略一致しているとともに、拡開状態で踏板両端側の端面角部が前記両水平部の角部と斜めに対向・近接する中間位置に軸が位置するように蝶番が取り付けられて、各蝶番が90度の範囲で回動可能とされている、ことを特徴としたものとすれば、折畳み状態で固定ササラ桁と可動ササラ桁の間を踏板で隙間無く埋めることを可能としながら、蝶番における90度の回動角度を確保することができる。
【0013】
さらに、上述した折畳み階段において、その固定ササラ桁の表面所定位置とその位置の上側に取り付けられた踏板の底面所定位置との間に、収縮方向に反発力を発揮する棒状のダンパーが介装されており、可動ササラ桁の拡開方向の動作に抗するように付勢力を発揮する、ことを特徴としたものとすれば、拡開状態から可動ササラ桁を持ち上げて折り畳むのに要する力を軽減できることから、折畳み階段の拡開・折畳み作業が一層容易に行えるようになり、且つ、折畳み状態を維持する方向に可動ササラ桁を付勢するため、折畳んだ状態で安定しやすいものとなる。
【0014】
さらにまた、上述した折畳み階段において、その可動ササラ桁の上端側には、拡開時に上階床面に載りながら掛止する掛止構造が設けられている、ことを特徴としたものとすれば、可動ササラ桁の上下両端側が各床面に当接した状態で拡開するため、その拡開状態が安定しやすく耐荷重性にも優れたものとなる。
【0015】
加えて、上述した折畳み階段において、固定ササラ桁と可動ササラ桁における蝶番の固定位置では、ボルト孔が桁材を厚さ方向に貫通しており、どちらの側面でも蝶番の固定が可能とされている、ことを特徴としたものとすれば、蝶番を固定する側面を変えることで、左右いずれの方向にも拡開可能な階段が構成されることから、1つの折畳み階段で左右いずれの壁面に対応可能なものとなる。
【0016】
また加えて、上述した折畳み階段において、可動ササラ桁の表面所定位置には拡開・折畳み作業の際に持ち手となるバーが設けられている、ことを特徴としたものとすれば、片手でも折畳み・拡開操作を容易に行えるものとなる。
【発明の効果】
【0017】
固定ササラ桁と可動ササラ桁を両端側に蝶番を有した踏板で連結して、折畳み状態で総ての踏板が固定ササラ桁と可動ササラ桁の間を埋めながら全体として略面一になる本発明によると、折畳み・拡開操作が容易になるとともに、折畳んだ状態がよりコンパクトで見栄えの良いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明における実施の形態である折畳み階段の折畳み状態の正面図である。
図2図1の折畳み階段を拡開状態にした正面図である。
図3】(A)は図1の折畳み階段の右側面図であり、(B)は図2の拡開した折畳み階段の右側面図である。
図4図3(B)の拡開した折畳み階段の斜視図である。
図5図3(B)の折畳み階段の固定ササラ桁、可動ササラ桁における踏板による連結状態を説明するための部分的に拡大した右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を説明する。
【0020】
図1は、本実施の形態である折畳み階段1を折り畳んだ状態を示している。この折畳み階段1は、家屋等における通常の生活空間から、それよりも高い位置のロフト、屋根裏部屋、収納部屋等のような使用頻度が比較的高くない空間との間を行き来することを想定したものであり、通常は図のようにコンパクトに折り畳まれて生活上の邪魔になりにくい状態となる。
【0021】
即ち、本実施の形態の折畳み階段1は、上側斜辺が段形に形成されて壁面に所定の固定手段で固定される固定ササラ桁2と、下側斜辺が段形に形成されて折畳み・拡開時に回動動作を行う可動ササラ桁3とが、その段形の水平部同士を両端側に蝶番8,8を設けた複数枚の踏板4で連結されてなるものであり、図1のように階段として使用しない折畳み状態では、垂直に立ち上がった各踏板4により可動ササラ桁3が固定ササラ板2の上方位置に持ち上げられた状態で支持されるものとしている。
【0022】
また、この折畳み階段1の折畳み時には、図1に示したように各踏板4が固定ササラ桁2と可動ササラ桁3との間に形成された空間を総て埋めながら収まるようになっており、総ての踏板4と可動ササラ桁3が壁面に密着又は近接しながら固定ササラ桁2と略面一の状態となるものであり、この点が本発明における最大の特徴部分となっている。
【0023】
そのため、斯かる折畳み階段1は、折畳み状態においては壁面から固定ササラ桁2、可動ササラ桁3を構成する桁部材の1枚分の厚さで突出するだけのコンパクトな状態で収まるため、狭い通路や小さなスペースに配置した場合でも、生活の動線や物の配置を妨げにくいものとなり、且つ、その面一ですっきりとした表面形状により、極めて見栄えの良いものとなる。
【0024】
尚、本実施の形態において、上述した踏板4は、その短手方向の幅が固定ササラ桁2及び可動ササラ桁2における垂直部と水平部で構成される段形の水平部の幅に略一致(アロワンス分だけ僅かに短い)しており、図1に示したように、折畳み状態で固定ササラ桁2と可動ササラ桁3の間に形成された空間を、総ての踏板4で隙間無く埋めるようになっている。
【0025】
図2は、図1の折畳み階段1を拡開して階段として使用する状態を示している。このように折畳み状態から拡開する場合は、持ち手となるバー6を把持する等して可動ササラ桁3を斜め下方に回動させることにより、可動ササラ桁3の下端側に設けた支持脚32が床面に当接するとともに、可動ササラ桁3上端側に設けた掛止構造33が上階床面に当接・掛止することにより、その回動動作が停止して拡開作業が完了する。
【0026】
図3(A)は、図1の折畳み階段1を右側面図で示し、図3(B)は図2の拡開した折畳み階段1を右側面図で示し、図4は図(3)の拡開した折畳み階段1を斜視図で示している。本実施の形態の折畳み階段1は、一般的な階段よりも幅の狭い約60cm程度のものを想定しているが、例えば図3(B)に一点鎖線で示すような幅1m程度の狭い通路においては、60cmの幅でも拡開状態ではその横を通過するのが困難になってしまう。しかし、図3(A)に示すように、これを折り畳むことで、全体が固定ササラ桁3と同じ厚さでほぼ面一な状態となってその側方空間が拡大されるため、生活上の動線を妨げにくい状態にすることができる。
【0027】
また、本実施の形態の折畳み階段1では、固定ササラ桁2の表面下端側と、その位置の上側に取り付けられた踏板4の底面端部側との間に、収縮方向(圧縮方向)に所定レベルの反発力を発揮する棒状のダンパー7が介装されており、可動ササラ桁3の拡開方向の動作に抗するように適度な付勢力を発揮するようになっている。
【0028】
そのため、図3(A)の折畳み状態からバー6を把持して可動ササラ桁3を斜め下向きに回動させながら図3(B)の拡開状態にする際には、可動ササラ桁3がゆっくりと下降して安全に拡開作業を行うことができる。また、図3(B)の拡開状態から可動ササラ桁3を持ち上げて折り畳む際には、ダンパー7の付勢力により操作に要する力を軽減することができる。
【0029】
このように、拡開方向に抗するように固定ササラ桁2と踏板4の間に介装したダンパー7の存在により、折畳み階段1の拡開作業及び折畳み作業を一層容易に行えるようになった。また、このダンパー7は、折畳み位置を維持する方向に可動ササラ桁3を付勢するため、折畳み階段1を一枚板状の面一に折畳んだ状態を安定させる機能も発揮する。
【0030】
図5は、図3(B)の拡開状態の折畳み階段1の固定ササラ桁2及び可動ササラ桁3における、踏板4と蝶番8,8による連結状態を説明するための部分拡大図である。本実施の形態の折畳み階段1では、拡開状態で踏板4両端側の端面角部が固定ササラ桁2、可動ササラ桁3における水平部21,31の内側の角部と斜めに対向・近接する中間位置に軸が位置するように蝶番8,8が取り付けられており、各々90度の範囲で回動可能なものとしている。これにより、折畳み状態で固定ササラ桁2と可動ササラ桁3の間を踏板4で隙間無く埋めるとともに、蝶番8及び踏板4における90度の回動角度を確保可能としている。
【0031】
また、蝶番8,8は、固定ササラ桁2及び可動ササラ桁4の水平部21,31の角部に近接した内側面に、図示しないボルト・ナットで固定することを想定しているが、そのボルト孔は、桁部材を厚さ方向に貫通して設けることにより、桁部材のいずれの側面にも蝶番8を固定することが可能となるため、可動ササラ桁3の拡開方向をどちらの側にも設定することができる。
【0032】
尚、上述した説明及び各図において、蝶番8の固定プレートは、固定ササラ桁2、可動ササラ桁3を構成する桁部材の側面から突出した状態で固定する場合を説明したが、桁部材側面の固定位置において固定プレートの厚さ分だけ彫り込んでおくことにより、固定プレートを桁部材側面と面一の状態にして固定することができ、これにより、折畳み状態が全体としてさらに精密な面一の状態になるため、一層見栄えのよいものとすることができる。
【0033】
また、上述の説明では、図3(B)に示したように折畳み状態で壁面から固定ササラ桁3の厚さ分だけ突出するように折畳み階段1を壁面に取付ける場合を説明したが、図1に示した折畳み状態の折畳み階段1を総て壁に埋没させるように、その輪郭に沿う形状でその厚さに相当する深さの凹部を、予め壁面に形成しておくことにより、その折畳み階段1を折畳み状態で壁面と面一の状態に収納できるようになる。さらに、固定ササラ桁2を壁面に固定する方法については説明及び図示を省略したが、ボルトによる固定等、様々な方法を採用することができる。
【0034】
以上、述べたように、折畳み階段について、本発明により、折畳み・拡開操作が容易になるとともに、折畳んだ状態がよりコンパクトで見栄えの良いものとなった。
【符号の説明】
【0035】
1 折畳み階段、2 固定ササラ桁、3 可動ササラ桁、4 踏板、5 バー、7 ダンパー、8 蝶番、21,31 水平部、32 支持脚、33 掛止構造
図1
図2
図3
図4
図5