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  • -サイドノック型筆ペン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】サイドノック型筆ペン
(51)【国際特許分類】
   B43K 5/18 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
B43K5/18 130
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019188503
(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公開番号】P2021062546
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2021-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】500205840
【氏名又は名称】株式会社 エポックケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】小高 晴男
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-131386(JP,A)
【文献】実開昭61-012783(JP,U)
【文献】実開平06-045670(JP,U)
【文献】特開2000-254576(JP,A)
【文献】実開昭60-173383(JP,U)
【文献】特開平10-157376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00-31/00
B43L 19/00
A45D 34/00-34/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクカートリッジが接続される軸筒と、毛筆である筆先と、前記軸筒と前記筆先との間に位置して前記軸筒に固定されるジョイント軸とを備え、
前記ジョイント軸は上部と中間部と下部とから成っていて、前記上部において前記筆先を保持し、前記軸筒に固定される前記下部に前記筆先に適量のインクを供給するバルブユニットが組み込まれ、前記中間部は肉薄にされて押し込み可能なノック部とされ、前記ノック部内に、指先による押し込み操作に伴って前記バルブユニットの弁体を進退駆動するプッシュジョイントを内装して成り、
前記プッシュジョイントは、上方筒部と、下方筒部と、前記上方筒部と下方筒部とを連結する、二対十字形状に配設される折曲部材とから成ることを特徴とするサイドノック型筆ペン。
【請求項2】
前記折曲部材は、前記上方筒部連結部と中間部と前記下方筒部連結部とが肉薄にされ、その肉薄部分から折曲可能である、請求項1に記載のサイドノック型筆ペン。
【請求項3】
前記ノック部の折曲部材の存在位置に対応する箇所に押圧部表示が付される、請求項1又は2に記載のサイドノック型筆ペン。
【請求項4】
前記ノック部は透視可能素材製とされる、請求項1又は2に記載のサイドノック型筆ペン。
【請求項5】
前記上方筒部に筆先から延びるインク吸蔵芯が挿入され、前記インク吸蔵芯の端部は前記下方筒部の空間部内に進入可能にされ、また、前記バルブユニットの弁体の頭部が下方から前記下方筒部に嵌入固定される、請求項1乃至4のいずれかに記載のサイドノック型筆ペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイドノック型筆ペンに関するものであり、より詳細には、バルブ式の筆ペンで、軸部を押圧することにより筆先へのインク供給を行うサイドノック型筆ペンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
筆ペンとしては、インクを柔軟資材製の軸に収納し、使用時に軸を押してインクを筆先に供給するタイプのものが一般的である。このタイプの場合、保管時等に不用意に軸に圧がかかると、インクが筆先に過剰に押し出され、余剰インクがキャップ内に溜まってしまい、キャップを外した際にこぼれ出るという不都合が生ずる。
【0003】
また、キャップを閉めた状態で攪拌操作をした場合にも、軸内の攪拌棒の振動によってインクが筆先に過剰供給され、余剰インクがキャップ内に溜まるという問題が起こり、更に、温度変化による軸内の圧力変化によっても同様の問題が起こる。そこで、筆先へのインク供給量調整のためにバルブ機構を採用することが考えられるが、ペン先が柔らかい筆であるため、ペン先を押してバルブを開く、一般的なバルブ機構を採用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-6668号公報
【文献】特開2008-87422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の筆ペンの場合は、保管時等に不用意に軸に圧がかかった場合や攪拌操作をした際、あるいは、温度変化により軸内に圧力変化が生じた場合等に、筆先に過剰供給されたインクがキャップ内に溜まってしまい、キャップを外した際にこぼれ出るという不都合がある。この問題解決のためにバルブ機構を採用することが考えられるが、筆ペンの場合のペン先は柔らかい毛筆であるため、押し込みによってバルブを開く方式のバルブ機構を採用することができないという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、インク供給量調整のためにバルブ機構を採用しつつ、ペン先の押し込みによらずにバルブの開閉を行うこと可能にし、以て、保管時等に軸に圧がかかった場合や攪拌操作をした際、あるいは、温度変化により軸内に圧力変化が生じた場合等において、筆先にインクが過剰供給されるおそれがなく、余剰インクがキャップ内に溜まることがないため、常にきれいな状態で使用することができるサイドノック型筆ペンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、インクカートリッジが接続される軸筒と、毛筆である筆先と、前記軸筒と前記筆先との間に位置して前記軸筒に固定されるジョイント軸とを備え、
前記ジョイント軸は上部と中間部と下部とから成っていて、前記上部において前記筆先を保持し、前記軸筒に固定される前記下部に前記筆先に適量のインクを供給するバルブユニットが組み込まれ、前記中間部は肉薄にされて押し込み可能なノック部とされ、前記ノック部内に、指先による押し込み操作に伴って前記バルブユニットの弁体を進退駆動するプッシュジョイントを内装して成り、
前記プッシュジョイントは、上方筒部と、下方筒部と、前記上方筒部と下方筒部とを連結する、二対十字形状に配設される折曲部材とから成ることを特徴とするサイドノック型筆ペンである。
【0008】
一実施形態においては、前記折曲部材は、前記上方筒部連結部と中間部と前記下方筒部連結部とが肉薄にされ、その肉薄部分から折曲可能である。
【0009】
一実施形態においては、前記ノック部の折曲部材の存在位置に対応する箇所に押圧部表示が付され、あるいは、前記ノック部は透視可能素材製とされる。
【0010】
一実施形態においては、前記上方筒部に筆先から延びるインク吸蔵芯が挿入され、前記インク吸蔵芯の端部は前記下方筒部の空間部内に進入可能にされ、また、前記バルブユニットの弁体の頭部が下方から前記下方筒部に嵌入固定される。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る直液式筆ペンは上記のとおりであって、インク供給量調整のためにバルブ機構を採用するが、ペン先の押し込みによらず、不使用時にキャップが被さる軸のノック部に対するノック操作によってバルブの開閉を行うことを可能にしたため、保管時等に軸に圧がかかった場合や攪拌操作をした際、あるいは、温度変化により軸内に圧力変化が生じた場合等において、筆先にインクが過剰供給されるおそれがなく、余剰インクがキャップ内に溜まることがないため、常にきれいな状態で使用することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るサイドノック型筆ペンの要部正面図である。
図2】本発明に係るサイドノック型筆ペンの要部縦断面図である(非ノック時)。
図3】本発明に係るサイドノック型筆ペンの要部縦断面図である(ノック時)。
図4】本発明に係るサイドノック型筆ペンにおけるプッシュジョイントの伸展状態を示す平面図及び正面図である。
図5図4におけるA-A線及びB-B線断面図である。
図6】本発明に係るサイドノック型筆ペンにおけるプッシュジョイントの縮状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態につき、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明においては、図示の例に従い、筆先側を上側(上部)として表現し、反対側を下側(下部)として表現してある。本発明に係るサイドノック型筆ペンは、大別して、インク(墨)を貯留するインクカートリッジを接続する軸筒1と、毛筆である筆先41と、軸筒1と筆先41との間に位置して軸筒1に固定されるジョイント軸11とを含んで構成される。なお、図示してないが、筆先41には、保護キャップが被せられる。
【0014】
ジョイント軸11は上部12と中間部と下部14とから成り、上部12において筆先41を保持し、下部14が軸筒1に固定される。下部14内には、筆先41に適量のインクを供給するバルブユニット21が組み込まれる(図2,3参照)。
【0015】
バルブユニット21は、ジョイント軸11の下部14内に嵌合される円筒状の弁ケース22と、弁ケース22の底部を閉塞するエンドキャップ23と、エンドキャップ23の上側に装填されるリターンスプリング24と、リターンスプリング24に付勢されて弁ケース22の上面の開口22aを閉塞する弁25から成る。エンドキャップ23には、リターンスプリング24の下部を支持すると共に、弁体25の下部を摺動可能に受け入れる支持筒26が設けられ、また、弁ケース22内にインクを導入するためのインク通流孔27が形成される。
【0016】
ジョイント軸11の中間部は、肉薄にされて指先で押し込み可能なノック部13とされ、そのノック部13内に、指先での押し込み操作に伴い、バルブユニット21の弁体25を進退駆動するプッシュジョイント31が内装される。プッシュジョイント31は、上方筒部32と、下方筒部33と、上方筒部32と下方筒部33とを連結する、少なくとも一対の折曲部材34とから成る。好ましい実施形態においては、折曲部材34は二対十字形状に配設される(特に図5(A)参照)。
【0017】
折曲部材34は、上方筒部32及び下方筒部33との連結部、並びに、中間部が肉薄にされ、その肉薄部35において折曲可能にされる(図4~6参照)。上方筒部32は、ジョイント軸11の上部12とノック部13との間の仕切り壁15に形成される凹陥部16内に嵌合される。そして、筆先41のインク吸蔵芯42が、凹陥部16及び上方筒部32を貫通して延び、その端部が、下方筒部33の空間部36内に臨む。また、下方筒部33の下部に、バルブユニット21の弁体25の頭部25aが嵌入固定される。
【0018】
上記構成の本発明に係るサイドノック型筆ペンの場合、図示せぬキャップを外した状態を示す図1,2において、バルブユニット21の弁体25がリターンスプリング24に付勢されて弁ケース22の上面開口22aを閉じているので、インクカートリッジから供給され、軸筒1からインク通流孔27を通って弁ケース22内を満たしているインクは、ノック部13内に流出しない。この状態においては、ノック部13内に存在するインクが、インク吸蔵芯42を介して筆先41に浸透していく。
【0019】
また、このバルブ閉の状態においては、弁体25を介してプッシュジョイント31に対してもリターンスプリング24の押上げ力が作用するので、プッシュジョイント31は縮状態となっている。即ち、リターンスプリング24の押上げ力を受けた各折曲部材34が、肉薄部35から折れて、くの字型となる(図1,2参照)。
【0020】
筆先41のインク含浸量が減少し、筆記文字が掠れてきた場合は、指先でノック部13を押圧操作する。リターンスプリング24の押上げ力に抗してこの押圧操作をすることにより、くの字型に折曲していた折曲部材34が少し伸びることになるが(図3参照)、プッシュジョイント31は、上方筒部32が凹陥部16内に嵌合して固定されているため、下方筒部33が下方に移動することになる。その動きに伴って弁体25が下方に移動する結果、弁ケース22の上面開口22aが開き、弁ケース22内に溜まっていたインクがノック部13内に流入し、折曲部材34の間を通ってインク吸蔵芯42に十分浸透する。
【0021】
その後押圧操作を中止すると、直ちにリターンスプリング24の作用で弁ケース22の上面開口22aが閉じてインクの供給が止まるので、筆先41にインクが過剰供給されることはない。
【0022】
なお、押圧操作を確実に行うことを可能にするために、ノック部13の折曲部材34の存在位置に対応する箇所に押圧部表示を付したり、ノック部13を透視可能素材製としたりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明に係るサイドノック型筆ペンは上記のとおりであって、インク供給量調整のためにバルブ機構が採用されるが、ペン先の押し込みではなく、不使用時にキャップが被さる軸のノック部に対するノック操作によってバルブの開閉を行うことを可能にしたため、保管時等に軸に圧がかかった場合や攪拌操作をした際、あるいは、温度変化により軸内に圧力変化が生じた場合等において、筆先にインクが過剰供給されるおそれがなく、余剰インクがキャップ内に溜まることがないため、常にきれいな状態で使用することができる効果があるものであり、その産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0024】
1 軸筒
11 ジョイント軸
12 上部
13 ノック部
14 下部
15 仕切り板
16 凹陥部
21 バルブユニット
22 弁ケース
23 エンドキャップ
24 リターンスプリング
25 弁体
26 支持筒
27 インク通流孔
31 プッシュジョイント
32 上方筒部
33 下方筒部
34 折曲部材
35 肉薄部
41 筆先
42 インク吸蔵芯
図1
図2
図3
図4
図5
図6