(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】板状材を固定するための真空システム
(51)【国際特許分類】
B65H 5/22 20060101AFI20220922BHJP
B65H 5/02 20060101ALI20220922BHJP
B65G 15/58 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
B65H5/22 C
B65H5/02 B
B65G15/58 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020193038
(22)【出願日】2020-11-20
【審査請求日】2021-04-21
(32)【優先日】2019-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516277439
【氏名又は名称】バルベラン ラトーレ, イエズス フランシスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】バルベラン ラトーレ, イエズス フランシスコ
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04792249(US,A)
【文献】特開2009-280320(JP,A)
【文献】特開2007-302000(JP,A)
【文献】特開2017-165587(JP,A)
【文献】実開昭47-026880(JP,U)
【文献】特開昭51-018072(JP,A)
【文献】特開平09-058897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/00-11/70
B65H 5/22
B65H 29/24
B65G 15/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状材(1)を固定するための真空システムであって、吸引路(4)と、少なくとも1枚の板状材(1)を受け入れて搬送するように構成されたコンベヤーベルト(2)とを含み、該コンベヤーベルト(2)が複数の穿孔(5)を備え、前記真空システムは、前記穿孔(5)を通して前記吸引路(4)の内部へ向けて流体吸引を生成し、前記コンベヤーベルト(2)への前記少なくとも1枚の板状材(1)の固定力を生じさせるように構成され
、それぞれの前記穿孔(5)は、前記穿孔(5)の開閉を可能にし、前記穿孔(5)を通る流体の流れの通過及び阻害のそれぞれを可能にするバルブ(8)を備えて
おり、前記真空システムは、前記コンベヤーベルト(2)をその移動において案内及び支持するための少なくとも1つの支持隔壁(20)を含み、該支持隔壁(20)は、前記コンベヤーベルト(2)と前記吸引路(4)の間の流体の吸引を繋げる少なくとも1つの吸引チャンバ(10)を形成するように配置されており、前記真空システムは、前記支持隔壁(20)を介して前記コンベヤーベルト(2)をその移動において支持するために、前記吸引チャンバ(10)と前記吸引路(4)の間に、孔を備えた穿孔板(6)を含み、該穿孔板(6)は吸引流体が前記孔を通るように配置される、板状材(1)を固定するための真空システム。
【請求項2】
前記吸引路(4)の少なくとも1つの領域(13)に前記バルブ(8)の開放装置(12)を含み、前記開放装置(12)は、前記バルブ(8)を強制的に開放位置にするように構成される
、請求項
1に記載のコンベヤーベルト(2)上に板状材(1)を固定するための真空システム。
【請求項3】
前記開放装置(12)は、前記バルブ(8)の突起(9)を押す力を生じるように構成されたカムであり、それにより前記バルブ(8)を強制的に開放位置にする
、請求項
2に記載のコンベヤーベルト(2)上に板状材(1)を固定するための真空システム。
【請求項4】
前記バルブ(8)が、対応する前記穿孔(5)の上に前記板状材(1)がないときに、
前記バルブ(8)を閉じるための作動又は指令を必要とせずに前記真空システムの吸引作用自体によって自動で前記バルブ(8)の閉鎖を可能にするように構成された自動閉鎖機構を備える
、請求項1から
3のいずれかに記載のコンベヤーベルト(2)上に板状材(1)を固定するための真空システム。
【請求項5】
前記バルブ(8)の閉鎖を可能にする前記自動閉鎖機構の構成が、前記バルブ(8)の自由な動きを可能にするガイドを含
む、請求項
4に記載のコンベヤーベルト(2)上に板状材(1)を固定するための真空システム。
【請求項6】
前記バルブ(8)の閉鎖を可能にする前記自動閉鎖機構の構成は、強制的に前記バルブ(8)を開放
又は閉鎖位置にする少なくとも1つのばねを含む
、請求項
4又は
5に記載のコンベヤーベルト(2)上に板状材(1)を固定するための真空システム。
【請求項7】
前記バルブ(8)は、対応する前記穿孔(5)の上に配置された前記板状材(1)がないときに
、前記真空システムの吸引作用自体でなく、前記真空システムで生成された閉鎖指令により前記バルブ(8)を閉鎖するように構成された少なくとも1つの指令閉鎖機構を備える
、請求項1から
3のいずれかに記載のコンベヤーベルト(2)上に板状材(1)を固定するための真空システム。
【請求項8】
前記コンベヤーベルト(2)上の前記少なくとも1枚の板状材(1)の位置の検出サブシステムを含み、該検出サブシステムは、前記板状材(1)が配置されない複数の前記穿孔(5)での前記バルブ(8)を閉じるために、前記少なくとも1枚の板状材(1)の位置を示す指示を前記指令閉鎖機構に送るように構成される
、請求項
7に記載のコンベヤーベルト(2)上に板状材(1)を固定するための真空システム。
【請求項9】
前記指令閉鎖機構は、前記コンベヤーベルト(2)の少なくとも1つの特定の長手方向区域での前記コンベヤーベルト(2)の全幅をカバーするように配置され、それにより前記指令閉鎖機構は、前記検出サブシステムからの指示を受ける前に、前記コンベヤーベルト(2)の前記少なくとも1つの特定の長手方向区域において、前記コンベヤーベルト(2)の全幅に亘って、すべての前記バルブ(8)を閉じるように構成される
、請求項
8に記載のコンベヤーベルト(2)上に板状材(1)を固定するための真空システム。
【請求項10】
前記穿孔(5)は、前記コンベヤーベルト(2)の進行方向において、長手方向での位置を合わせて配置され、該長手方向での位置合わせは、前記コンベヤーベルト(2)の幅に亘って分布しており、前記穿孔(5)のそれぞれの前記長手方向での位置合わせに対応した独立した指令閉鎖機構があり、それぞれの前記指令閉鎖機構は、前記穿孔(5)の対応する前記長手方向での位置合わせでの少なくとも1つの長手方向区域をカバーする
、請求項
8に記載のコンベヤーベルト(2)上に板状材(1)を固定するための真空システム。
【請求項11】
それぞれの前記指令閉鎖機構は、所定の時間に亘って前記バルブ(8)を閉鎖するように構成される
、請求項
7から
10のいずれかに記載のコンベヤーベルト(2)上に板状材(1)を固定するための真空システム。
【請求項12】
それぞれの前記バルブ(8)の閉鎖を可能にする前記指令閉鎖機構の構成は、前記バルブ(8)を強制的に開放
又は閉鎖位置にする少なくとも1つのばねを備える
、請求項
7から
11のいずれかに記載のコンベヤーベルト(2)上に板状材(1)を固定するための真空システム。
【請求項13】
吸引幅調整サブシステムを含み、該吸引幅調整サブシステムは、前記吸引路(4)を側方において制限する少なくとも1枚の変位可能な側板(3)を含み、前記吸引幅調整サブシステムは、前記少なくとも1枚の変位可能な側板(3)を変位させることによって前記吸引路(4)の幅を調整するように構成される
、請求項1から
12のいずれかに記載のコンベヤーベルト(2)上に板状材(1)を固定するための真空システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、板状材、例えば薄板状の基板、具体的にはストリップ、金属板、シート、プレート、パネルなどをコンベヤーベルト上に固定するための真空システムである。
【0002】
本発明のコンベヤーベルト上に板状材を固定する真空システムは、他のコンベヤーベルトの真空搬送システムと比較して、大幅なエネルギー節約を可能にするという特異性を有する。
【0003】
同様に、本発明のコンベヤーベルト上に板状材を固定するための真空システムによって、コンベヤーベルト上で搬送される板状材のより強力な固定が可能になり、コンベヤーベルトで移動する間に搬送される板状材表面に印刷するなどの、搬送される板状材に対して特定の作動を実行する際のより高い信頼性をもたらす。
【背景技術】
【0004】
コンベヤーベルトによる搬送システムは、コンベヤーベルトに吊り下げられた又は支持された物品の搬送を可能にする。
【0005】
真空搬送システムは、コンベヤーベルトへの物品の付着をもたらすために真空を適用することに基づいている。真空搬送システムは、搬送物品の機械的固定が何かしらの欠点(搬送物品の劣化、搬送プロセスにおける時間のロス、固定手段の費用など)を伴い、そして搬送物品が磁性材料で作られていないため磁気固定もできない特定の場合に使用される。
【0006】
コンベヤーベルトでの真空搬送が使用される1つの特定のケースは、段ボールの表示又は箱製造の産業であり、そこでは印刷物はコンベヤーベルトを使用して容易かつ機敏に預入及び搬送される必要がある。
【0007】
上記板状材の搬送プロセスが、板状材での印刷又はラベル貼りなどの何かしらの作業を行うために利用されることは普通のことである。
【0008】
コンベヤーベルトで移動する板状材でのこの印刷作業では、突然の変位が板状材での印刷の最終的な結果での不正確さ又は異常を引き起こす可能性があるため、移動するコンベヤーベルトに対して物品又は板状材の突然の変位が発生しないことが非常に重要である。このために、板状材/ストリップとコンベヤーベルトの間の相対的な変位を防ぎ、それにより板状材で行われる作業(例えば、印刷)の良好である最終的な結果を確実なものとするために、コンベヤーベルトへの板状材の固定において適切な強さを確保することが非常に重要である。
【0009】
コンベヤーベルトによる他の従来の真空搬送システムでは、コンベヤーベルトの孔を通って板状材に伝わる(真空による)吸引又は吸い込み強さが均一でなく、いかなる時も板状材によって閉鎖又は塞がれているコンベヤーベルトの孔の数に応じて変動するため、その強さは保証されない。
【0010】
同時に、コンベヤーベルトによる真空搬送システムで直面する別の問題は、吸引力の大部分が、板状材/ストリップが置かれないコンベヤーベルトの孔を通じて失われるという事実による、その高いエネルギー損失(エネルギーの不十分な活用)である。
【0011】
コンベヤーベルトによる真空搬送システムは、通常は孔の開けられた前進するコンベヤーベルトを含み、それは孔の開けられた支持板に支持されてそれと摩擦を起こす。その孔の開けられた支持板は、チャンバ又は吸引路の上部閉鎖部であり、(いくらかの残留損失を除いて)残りの表面では漏れがない。これらの支持板の穿孔を通って流れ、次にコンベヤーベルトの穿孔を通って流れる空気吸引は、例えば遠心羽根車を備えたファンによって生成される。
【0012】
上述したエネルギーの不十分な活用の問題を解決するために、コンベヤーベルトによる一部の真空搬送システムでは、垂直方向の側方の閉鎖プレートを移動することにより吸引チャンバ/吸引路の幅を調整することができる。したがって、コンベヤーベルトの穿孔を通る空気の流れも、必要に応じて幅が調整される(例えば、搬送される板状材の幅に応じて)。しかし、吸引路の幅を調整しても、薄板とコンベヤーベルトにはまだエネルギーが失われる穿孔があり(搬送されるどの板状材でも覆われていないため)、したがって搬送される板状材で覆われている穿孔での吸引力が失われる。
【0013】
上述のことを理解するために、板状材がコンベヤーベルトに供給される様々な形態を考慮に入れることが有用である。最も一般的な形式は次のとおりである。
-単一板状材の搬送(
図2aを参照):1枚の板状材が次々に搬送され、1枚の板状材と次の板状材の間に特定の隙間がある(板状材/ストリップ間の距離は常に同じではない)。この隙間は可能な限り小さいことが確保される。
-2枚の対にされた板状材の搬送(
図2bを参照):2枚の板状材が並行して搬送され、次に別の2枚が搬送され、そのようにして続き、前の場合と同じように1つの搬送と次の搬送の間に隙間がある。
-対になっていない板状材の搬送(
図2cを参照):互いに平行ではあるが、長手方向の配置が一致しない2枚の板状材が搬送される。それらは、代わりに長手方向の分散がある。
【0014】
幅調整可能な吸引路が備えられる場合、いずれの場合においても、吸引は側方において調整される。
【0015】
一般的に、コンベヤーベルトの中央部分には穿孔がない。これでは、板状材の対での供給の方法によれば、中央領域に吸引される空気の流れはない。しかしながら、進行方向では、板状材間の隙間/穿孔において、その板状材によって覆われないコンベヤーベルトでのいくつかの穿孔がある(2枚の対になっていない供給/搬送の場合には、より多くの覆われない穿孔がある)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
既に述べたように、まさに板状材が通常コンベヤーベルト上で搬送される時に、吸引空気が流れる覆われていない穿孔が常にあるという事実のために、問題が現れる。その吸引空気の流れは、この搬送の用途に応じて、異なる性質の望ましくない作用を生み出す。例えば、この搬送がインク注入ヘッドによる印刷機の一部を形成する場合、空気の流れが印刷ヘッドの領域で生じ、印刷する時に望ましくない又は制御できない作用が生じる。その問題は、とりわけ次のとおりである。
-乱流が発生し、板状材の周縁領域での印刷の欠陥に結び付く(インクの不足、汚れた、ぼやけた印刷など)。
-板状材の周縁領域に注入されたインクの一部が、吸引空気の流れによって引っ張られ、コンベヤーベルト、孔の開けられた金属支持板、吸引路、及び吸引空気の流路全般に堆積することによって汚れを引き起こす。
【0017】
更に、既に説明したように、この「使用されない」の吸引空気の流れは、この不要である気流速度を維持するのに、この空気を移動させるファンなどに対応するエネルギーが必要であるため、エネルギー損失に結び付く。
【0018】
更に、コンベヤーベルトの上方にある流体の吸引が起こらないことが要求される用途では、問題が発生する可能性がある。例えば、UV技術による一部の硬化プロセスでは、効率を高めるために窒素系の不活性ガスによって酸素を置換することが一般的であることが知られている。窒素が注入され、コンベヤーベルトの開放された穿孔を通して窒素を吸引するチャンバがある場合には、大きな損失が発生する。更に、このタイプの搬送をその上に位置する熱風乾燥トンネルと共に使用する場合、熱風を吸引するとエネルギー損失が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上述の欠点を解決することを目的とした、コンベヤーベルト上に板状材を固定するための真空システムに関する。
【0020】
コンベヤーベルト上に板状材を固定するための真空システムは、吸引路と、少なくとも1枚の板状材を受け取って搬送するように構成されたコンベヤーベルトとを含む。
【0021】
その真空システム(吸引路とコンベヤーベルトとを含む)は、好ましくは、板状材に印刷するためのシステムに適用される。
【0022】
コンベヤーベルトには、複数の穿孔が備えられる。
【0023】
真空システムは、コンベヤーベルトの穿孔を通して吸引路の内部へ向けて流体吸引(通常は空気であるが、作業環境の別の流体のこともある)を生成するように構成され、それによりコンベヤーベルトへの少なくとも1枚の板状材の固定力を生じさせる。
【0024】
新規の方式では、コンベヤーベルトの各穿孔はバルブを備え、そのバルブは穿孔の開閉を可能にし、その穿孔を通る流体の流れの通過及び阻害のそれぞれを可能にする。
【0025】
これにより、コンベヤーベルトの穿孔上に板状材/ストリップ/シート/金属板がない場合、対応するバルブを閉じることができ、それにより板状材のないコンベヤーベルトの穿孔によって吸引力が利用されないため、エネルギー損失を最小限に抑えることができる。
【0026】
またそれにより、固定力及び強さは、板状材が存在するコンベヤーベルトの穿孔において増加する。
【0027】
更に、各穿孔を通して及ぼされる固定強さの均整及び均一性が増加し、板状材で行われる作業での汚れによる品質低下の更なる問題が避けられる。
【0028】
そのシステムは、好ましくは、コンベヤーベルトをその移動において案内及び支持するための少なくとも1つの支持隔壁を含む。その支持隔壁は、コンベヤーベルトと吸引路の間での流体の吸引を繋げる少なくとも1つの吸引チャンバを形成するように配置されることができる。このようにして、吸引路の内部空間が利用される。
【0029】
そのシステムは、より好ましくは、コンベヤーベルトと吸引路の間に孔を備えた穿孔板を含み、吸引流体がその孔を通るように配置される。該当する場合には、その穿孔板は吸引チャンバと吸引路の間に配置されることができる。この構成は、各吸引チャンバに対応する異なる吸引領域間で吸引流を分配することに貢献する。この場合、吸引路はその吸引チャンバと連通し、そのチャンバは、穿孔板によって底部で閉じられている(吸引流の通過を可能にする穿孔板の穿孔を除き)。したがって、少なくとも1つの吸引チャンバは、吸引路の上部領域であり、コンベヤーベルトのすぐ下に位置する。
【0030】
吸引路(及び/又は少なくとも1つの吸引チャンバ)は、好ましくは、吸引路の少なくとも1つの領域に沿って(及び/又は少なくとも1つの吸引チャンバの領域に沿って)、少なくとも1つのバルブ開放装置を含む。このバルブ開放装置は、強制的にバルブを開放位置にするように構成される。
【0031】
前の段落で述べた特徴により、コンベヤーベルトの穿孔のすべてのバルブが上記の領域で開いたままになることが確保される。その領域は、好ましくは、コンベヤーベルトでの初期領域つまり板状材の受入若しくは預入領域に対応する。その初期領域でバルブが開いていることが確保されるので、それは板状材を初期領域に配置する時に、板状材が配置されるコンベヤーベルトの穿孔に対応するバルブが閉じられず、したがって穿孔を通しての吸引流の通過を可能にして、コンベヤーベルトへの板状材の固定が始まることを意味する。
【0032】
上記の特徴により、それぞれの異なる領域、例えば初期領域又は印刷に適用される領域において、穿孔の適切な遮断の度合いを選択的に与えることも可能である。特に、初期領域では、板状材を適切に配置し、コンベヤーベルトの表面でそれらの位置を比較的容易に調整することが可能である。板状材/ストリップがないコンベヤーベルトの穿孔に対応するバルブが閉じると、板状材/ストリップがある穿孔の固定力が増加することを考慮に入れる必要がある。したがって、初期領域のいくつかのバルブが閉じられると、板状材の不適切な位置を修正することが遥かに困難になる。加えて、インクジェット印刷領域では、印刷インクを放出する際の吸引流の影響により生じる印刷不良の問題を低減又は回避することができる。
【0033】
真空システムの可能な実施形態によれば、開放装置はバルブの突起を押す力を生じるように構成されたカムであり、それによりバルブを強制的に開放位置にする。これは、バルブ開放装置の組み立て及び機能に関し、簡単な構造を可能にする。
【0034】
他の可能な別の実施形態によれば、開放装置は、バルブを開放位置へ押す力を発生させる磁気装置又は別の要素を含むことができる。
【0035】
真空システムの可能な実施形態によれば、バルブは、コンベヤーベルトの対応する穿孔の上に板状材がないときにバルブを閉じることができるように構成された少なくとも1つの自動閉鎖機構を含む。
【0036】
上述の特徴では、コンベヤーベルトの穿孔の上に板状材が置かれていないときに、バルブを自動的に閉じることができる(バルブを閉じるための作動又は表示指令を必要しない)。
【0037】
バルブの閉鎖を可能にする自動閉鎖機構の構成は、1つの可能な実施形態によれば、バルブの自由な動きを可能にするガイドを含み、それによりコンベヤーベルトの対応する穿孔の上に配置された板状材がないときに、バルブはガイドによって動かされ、真空システムの吸引力自体の作用によって閉じられる。これにより、自動閉鎖機構の組み立て及び機能に関し、簡単な構成が可能になる。
【0038】
1つの可能な実施形態によれば、バルブの閉鎖を可能にする自動閉鎖機構の構成は、強制的にバルブを開放及び/又は閉鎖位置にする少なくとも1つのばねを含む。この特徴は、バルブが特定の位置(解放又は閉鎖)を取るための強制的な作用又は性質を増大させるために導入することができる。
【0039】
自動閉鎖機構に代えて、本発明の真空システムの可能な実施形態によれば、バルブは、コンベヤーベルトの対応する穿孔の上に置かれた板状材がないときにバルブを閉鎖するように構成された少なくとも1つの指令閉鎖機構を備える。これにより、閉鎖動作が適用される時間、状況、及びバルブをより正確に制御することができる。
【0040】
バルブが少なくとも1つの指令閉鎖機構を備える真空システムの実施形態によれば、真空システムは、コンベヤーベルト上の少なくとも1枚の板状材の位置を検出するためのサブシステムを含む。この検出サブシステムは、板状材が配置されないコンベヤーベルトの複数の穿孔でのバルブを閉じるために、少なくとも1枚の板状材の位置を示す指示を指令閉鎖機構に送るように構成される。このようにして、真空システムは、コンベヤーベルト上に板状材がない領域又は区域を認識し、それにより指令閉鎖機構が、板状材が配置されていないそれらの穿孔のバルブの閉鎖を作動させることができる。
【0041】
指令閉鎖機構の第1の実施形態によれば、指令閉鎖機構は、コンベヤーベルトの少なくとも1つの特定の長手方向区域でのコンベヤーベルトの全幅をカバーするように配置され、それにより指令閉鎖機構は、検出サブシステムからの指示を受ける前に、コンベヤーベルトの上記少なくとも1つの特定の長手方向区域において、コンベヤーベルトの全幅に亘って、すべてのバルブを閉じるように構成される。
【0042】
コンベヤーベルトの穿孔は、コンベヤーベルトの進行方向において、長手方向での位置を合わせて配置されることができる。その長手方向での位置合わせは、コンベヤーベルトの幅に亘って分布している。
【0043】
指令閉鎖機構の第2の実施形態によれば、コンベヤーベルトの穿孔の各長手方向での位置合わせに対応した独立した指令閉鎖機構があり、各指令閉鎖機構は、コンベヤーベルトの穿孔の対応する長手方向における位置合わせでの少なくとも1つの長手方向区域をカバーする。
【0044】
指令閉鎖機構について説明された2つの実施形態は、固定力及び吸引の制御、並びに閉鎖作用がコンベヤーベルトの穿孔のバルブに適用される領域について、異なる形態を可能にする。
【0045】
1つの可能な実施形態によれば、各指令閉鎖機構は、所定の時間に亘ってバルブを閉鎖するように構成される。
【0046】
また、1つの可能な実施形態によれば、各バルブの閉鎖を可能にする指令閉鎖機構の構成は、バルブを強制的に開放及び/又は閉鎖位置にする少なくとも1つのばねを備える。
【0047】
可能な実施形態によれば、コンベヤーベルト上に板状材を固定するための真空システムは、吸引幅調整サブシステムを備える。そして、このサブシステムは、吸引路を側方において制限する少なくとも1枚の変位可能な側板を含む。吸引幅調整サブシステムは、少なくとも1枚の変位可能な側板を変位させることによって吸引路の幅を調整するように構成される。この特徴により、板状材の吸引/固定力が与えられるコンベヤーベルトの幅を調整することができ、その固定力が与えられる幅は、コンベヤーベルト上で板状材が占める幅に調整されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
本発明の少なくとも1つの実施形態の説明の一部として、以下の図が含まれる。
【
図1】吸引路の幅を調整可能である、最新技術によるコンベヤーベルトでの真空搬送システムの横断面図を示す。
【
図2b】2枚の対にされた板状材の供給又は搬送の例を示す。
【
図2c】対になっていない2枚の板状材の供給又は搬送の例を示す。
【
図3】本発明のコンベヤーベルト上に板状材を固定するための真空システムの例示の実施形態の横断面図を示す。
【
図4】吸引チャンバの初期領域にある開放装置を見ることができる、コンベヤーベルトの通路の概略側面図を示す。
【
図5】コンベヤーベルトの穿孔が板状材によって塞がれていない状態で、1つの吸引チャンバの初期領域を通るコンベヤーベルトの通過の詳細を示す。
【
図6】コンベヤーベルトの穿孔が1つ又は複数の板状材によって塞がれている状態で、1つの吸引チャンバの初期領域を通るコンベヤーベルトの通過の詳細を示す。
【
図7】コンベヤーベルトに板状材を固定するための真空システムの横断面を示し、幅調整可能な吸引路が、コンベヤーベルトの全幅の穿孔のすべてのバルブについての開閉機構と組み合わされている。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明は、上述のように、コンベヤーベルト(2)上に板状材(1)を固定するための真空システムに関する。
【0050】
図1で示されているように、搬送システムは、穿孔(5)を備えたコンベヤーベルト(2)と、穿孔(7)を備えた、吸引路(4)の上部薄板又は孔の開けられた支持板(6)と、穿孔(5、7)を通る空気流の吸引路(4)自体と、矢印で表されているように変位可能な側方プレート(3)とによって形成される。
【0051】
図1は、従来の搬送システムの横断面を示す。したがって、板状材(1)(図示せず)の移動方向は、
図1に示される断面に垂直である。
【0052】
本発明の可能な実施形態によれば、本発明のコンベヤーベルト(2)上に板状材(1)を固定するための真空システムはまた、
図1に示す最新の搬送システムで見られるように、この従来のシステムに吸引路(4)の両側方を構成する変位可能な側方プレート(3)を組み込むことができる。
【0053】
次に
図2a、
図2b及び
図2cは、上述した様々な供給形態を示す。これにより、板状材(1)がコンベヤーベルト(2)に供給又は送られる。
【0054】
本発明によれば、コンベヤーベルト(2)の各穿孔(5)は、穿孔(5)上に配置された板状材(1)がないときに穿孔(5)が機能しない(閉鎖される)ようにすることができる挿入物又はバルブ(8)を含む。このようにして、コンベヤーベルト(2)の穿孔(5)上に置かれて搬送される板状材(1)がないときにバルブ(8)は閉じられ、その結果として穿孔(5)を通して吸引力が及ぼされない。
【0055】
したがって、バルブ(8)は、そこを通る吸引空気の通路を開閉する役割を果たす。この実施形態におけるバルブ(8)又は挿入物は、
図3に示されるように、コンベヤーベルト(2)の下でその外側に突出した突起(9)を備え、それによりそれらはコンベヤーベルト(2)の下の空間を占める。
【0056】
吸引路(4)は、好ましくは、コンベヤーベルト(2)のすぐ下に位置する一連の吸引チャンバ(10)に繋がる。
【0057】
吸引チャンバ(10)は、コンベヤーベルト(2)の穿孔(5)のバルブ(8)の下部突起(9)の通過を可能にするように、長手方向(コンベヤーベルト(2)の進行方向に)に「開いた」設計を有する。
【0058】
同様に、コンベヤーベルト(2)の移動に関与するローラー(11)は、バルブ(8)の下側の突起(9)がローラー(11)と干渉しないでコンベヤーベルト(2)が移動することを可能にするハウジング(孔、窪み又は溝)を備える。
【0059】
更に、吸引チャンバ(10)は、好ましくは、バルブ(8)を開放位置にし、それらをコンベヤーベルト(2)への板状材(1)の供給が行われる領域に対応する初期領域(13)で開いたままにする少なくとも1つの開放装置(12)(
図4を参照)を組み込んだ設計を有する。開放装置(12)が配置されている吸引チャンバ(10)のこの領域(13)は、吸引空気の流れが確実にその領域(13)でバルブ(8)を通って流れるようにバルブ(8)を開放位置に維持し、板状材(1)がコンベヤーベルト(2)に確実に固定されるための十分な長さに亘って延びる。上記の少なくとも1つの開放装置(12)は、1つ又は複数の長手方向のカムであり得る。
【0060】
つまり、コンベヤーベルト(2)がこの領域(13)を通過する時、すべてのバルブ(8)は開いた位置のままとなる(
図5及び
図6を参照)。この状況では、コンベヤーベルト(2)の穿孔(5)(板状材(1)の下にある穿孔(5))は、板状材(1)自体によってのみ閉じられる(
図6を参照)。
【0061】
この初期領域(13)を通過すると、バルブ(8)の制御は、好ましくはバルブ(8)の2つの可能な構成又は機構により行われる。
-真空自体による「自動閉鎖」(「強制的でない閉鎖」)のバルブ(8)、及び
-閉鎖指令(「強制的な閉鎖」)でのバルブ(8)。
【0062】
自動閉鎖機構を備えたバルブ(8)の場合、吸引チャンバ(10)の初期領域(13)を通過すると、コンベヤーベルトの各穿孔(5)のバルブ(8)が機械的に解放されて、板状材(1)がない場合であっても穿孔(5)にあるバルブ(8)は吸引作用自体によって閉じられ、吸引路の下の部分を通ってコンベヤーベルト(2)が戻る(吸引チャンバ(10)の初期領域(13)へコンベヤーベルト(2)が戻る移動)まで、コンベヤーベルト(2)の残りの移動の間はこれが維持される。
【0063】
バルブ(8)が方向転換ローラー(11)(コンベヤーベルト(2)のテンソルローラー)を通過すると、サイクルが再開される。
【0064】
このようにして、板状材(1)がコンベヤーベルト(2)に強力に固定される領域(13)の後に、板状材(1)がないときにコンベヤーベルト(2)の穿孔(5)を通って流れる空気流がない空いた領域が達成される。
【0065】
すなわち、板状材(1)が置かれていない穿孔(5)では、コンベヤーベルト(2)がその領域(13)を離れた時に、バルブ(8)は、吸引作用自体によって閉じられる。
【0066】
他方で、板状材(1)が置かれているコンベヤーベルト(2)の穿孔(5)では、コンベヤーベルト(2)がその領域(13)を離れた時に、各吸引チャンバ(10)でのその領域(13)に配置された開放装置(12)が終わったとしても、バルブ(8)は依然として閉じられない。板状材(1)が置かれているコンベヤーベルト(2)の穿孔(5)では、吸引力自体が板状材(1)をコンベヤーベルト(2)に固定する。
【0067】
バルブ(8)に指令閉鎖機構(「強制的な閉鎖」)を提供する場合、本発明の真空システムは、コンベヤーベルト(2)上での板状材(1)の位置を検出することができる検出サブシステム(図には示されない)を組み込むことが必要である。この検出サブシステムは、バルブ(8)の各閉鎖機構に指示を送り、コンベヤーベルト(5)の各穿孔(5)の上に板状材(1)が置かれているかどうかに応じて、それぞれに開閉を選択するように構成される。
【0068】
そして、バルブ(8)に指令閉鎖機構が備えられるこの実施形態には、少なくとも2つの可能な変形例が存在する。
-第1の変形例によれば、指令の期間において、コンベヤーベルト(2)の通路に沿って通過するコンベヤーベルトの全幅での穿孔(5)のすべてのバルブ(8)についての単一の開閉機構がある。この変形例によれば、検出システムの指示は、穿孔(5)のバルブ(8)の開閉がコンベヤーベルト(2)全幅で命令される、コンベヤーベルト(2)のそれぞれの長手方向区域の長さを決定する。
-第2の変形例によれば、幅方向に、コンベヤーベルト(2)の穿孔(5)の複数の開閉機構及び複数の長手方向の列(コンベヤーベルト(2)の長手方向の移動方向)の両方の配置がある。開閉機構は、コンベヤーベルト(2)の幅方向で分けられ、各機構はコンベヤーベルト(2)の行程の少なくとも1つの区域の長手方向寸法全体をカバーし、それにより開閉機構のそれぞれに開閉指令が与えられ、開閉機構は、指令の期間に亘って、それぞれの特定の開閉機構が対応するコンベヤーベルト(2)のそれぞれの長手方向の列でのすべての穿孔(5)のバルブ(8)を開閉する。
【0069】
上記の第2の変形例による指令開閉機構を備えたバルブ(8)の実施形態を選択する場合には、すべての穿孔(5)のすべてのバルブ(8)の開閉は、板状材(1)をコンベヤーベルト(2)に供給するためのどのような構成であっても、(領域(13)が終了した場所から常に)吸引が完全に閉じられた状態を維持することができるようにして制御されることができる。
【0070】
上記の第1の変形例による指令開閉機構を備えたバルブ(8)の実施形態を選択する場合には、穿孔(5)の「長手方向に設けられた複数の区画」の開閉を行うことができる。すなわち、コンベヤーベルト(2)の全幅に亘り、コンベヤーベルト(2)の特定の長さについて、その長手方向に設けられた複数の区画に含まれる穿孔(5)のすべてのバルブ(8)が開いたまま又は閉じたままにされ、再び領域(13)に戻るまでこれが維持されることができる。
【0071】
この第1の変形例による実施は、最新技術に従って、幅調整吸引(変位可能な側板(3)を用いた)で補完されることができ(
図7を参照)、それにより1枚又は2枚の対にされた物品配置による板状材(1)の供給では、複数の板状材(1)間の穿孔(5)の吸引は閉じられたままである。
【0072】
本発明のコンベヤーベルト(2)上に板状材(1)を固定するための真空システムは、以下に記載することができるものを含め、一連の利点をもたらす。
-コンベヤーベルト(2)の各穿孔(5)の真空が続くことを可能にする。その結果、各板状材(1)で、コンベヤーベルト(2)上でのそのずれに対し、均一の固定力がもたらされる。
-コンベヤーベルト(2)は、従来の真空システムのように孔の開けられた薄板に対して継続的に「吸引」されないため、その移動でのコンベヤーベルト(2)の摩擦が少なくなり、最終的にエネルギー消費量が少なくなる。
-コンベヤーベルト(2)の各穿孔で継続的に生じる吸引空気の流れを「排除」して避けることが可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 板状材
2 コンベヤーベルト
3 側方プレート
4 吸引路
5 穿孔
6 支持板
7 穿孔
8 バルブ
9 突起
10 吸引チャンバ
11 ローラー
12 開放装置
13 初期領域
20 支持隔壁