(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】走行制御システム及び台車
(51)【国際特許分類】
B62B 3/00 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
B62B3/00 A
B62B3/00 B
(21)【出願番号】P 2021014638
(22)【出願日】2021-02-01
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】598022956
【氏名又は名称】株式会社大同機械
(74)【代理人】
【識別番号】100154357
【氏名又は名称】山▲崎▼ 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】落合 康全
(72)【発明者】
【氏名】山崎 文敬
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-067964(JP,A)
【文献】特開平03-186468(JP,A)
【文献】特開平10-007043(JP,A)
【文献】国際公開第2010/087115(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 1/00- 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体に設けられる右側の第1操作部に設けられて、該第1操作部に作用する前記走行体の前後方向及び該前後方向に直交する左右方向に延びる仮想平面上の力を検知可能である、第1力検知器と、
前記第1操作部から独立した左側の第2操作部に設けられて、該第2操作部に作用する前記仮想平面上の力を検知可能である、第2力検知器と、
前記第1力検知器からの入力及び前記第2力検知器からの入力に基づいて前記走行体の走行を制御する制御部と
を備え
、
前記第1力検知器が取り付けられる第1検知器取付部は、前記第1操作部の第1把持部に備えられ、前記走行体の前記前後方向に対して傾くとともに前記走行体の前記左右方向に対して傾いていて、
前記第2力検知器が取り付けられる第2検知器取付部は、前記第2操作部の第2把持部に備えられ、前記走行体の前記前後方向に対して傾くとともに前記走行体の前記左右方向に対して傾いている、
走行制御システム。
【請求項2】
前記第1操作部の
前記第1把持部は、該第1把持部に力が作用したときに該力に応じたひずみを検知できる材料でできている
前記第1検知器取付部を備え、該第1検知器取付部に前記第1力検知器が取り付けられ、
前記第2操作部の
前記第2把持部は、該第2把持部に力が作用したときに該力に応じたひずみを検知できる材料でできている
前記第2検知器取付部を備え、該第2検知器取付部に前記第2力検知器が取り付けられている、
請求項1に記載の走行制御システム。
【請求項3】
前記第2検知器取付部は、前記第1検知器取付部と逆向きに傾いている、
請求項
1又は2に記載の走行制御システム。
【請求項4】
前記第1検知器取付部は、前記走行体の前記前後方向に対して約45°傾いていて、
前記第2検知器取付部は、前記走行体の前記前後方向に対して約45°傾いている、
請求項
1から3のいずれか一項に記載の走行制御システム。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の走行制御システムを備えた台車。
【請求項6】
右側の第1前輪、第1中間輪及び第1後輪と、
左側の第2前輪、第2中間輪及び第2後輪と、
載置台の下面に設けられて、第1軸周りに可動である第1支持部材であって、前記第1前輪と前記第1中間輪とが設けられている、第1支持部材と、
前記載置台の前記下面に設けられて、第2軸周りに可動である第2支持部材であって、前記第2前輪と前記第2中間輪とが設けられている、第2支持部材と、
前記第1中間輪のアシスト駆動用の第1モータと、
前記第2中間輪のアシスト駆動用の第2モータと
を備え、
前記制御部は、前記第1力検知器からの入力及び前記第2力検知器からの入力に基づいて、前記第1モータの出力及び前記第2モータの出力をそれぞれ制御する、
請求項
5に記載の台車。
【請求項7】
前記第1支持部材の前記第1軸周りの動きを補助する第1弾性部材と、
前記第2支持部材の前記第2軸周りの動きを補助する第2弾性部材と
を更に備える、請求項
6に記載の台車。
【請求項8】
前記第1モータは前記第1支持部材に設けられ、前記第2モータは前記第2支持部材に設けられている、
請求項
6又は7に記載の台車。
【請求項9】
前記第1モータの前記第1中間輪への動力伝達を断接する第1クラッチ機構と、
前記第2モータの前記第2中間輪への動力伝達を断接する第2クラッチ機構と
を更に備えている、
請求項
6から8のいずれか一項に記載の台車。
【請求項10】
自動停止装置を更に備える、
請求項
6から9のいずれか一項に記載の台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、台車等の走行体に適用可能に構成された走行制御システム及び台車に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、荷物等を載せて手押しで運搬する台車に、モータ及びそのモータの駆動力が伝達される1つの駆動車輪を備えた電動アシスト機構を着脱可能に取り付けた、電動アシスト機構付き台車を開示する。この台車は、荷台の下部に設けられる4つの転動車輪と、U字状部材である取っ手とを備える。この電動アシスト機構付き台車は、人力走行時にはその台車の取っ手に作用する力で転動車輪に回転力を発生させて走行し、アシスト走行時は前述のモータの駆動力により駆動車輪に回転力を発生させて走行する。
【0003】
一方、左右3輪ずつの計6輪が設けられた台車が知られている。この6輪の台車は、4輪の台車に比べて、台車の安定性を高めることができ、例えば長物や重量物の搬送に用いられることができる。このような6輪の台車において、基台の後端部にキャスタを設け、基台の前端部に支持部材を回動可能に取り付け、この支持部材の前端部にキャスタを取り付け、支持部材の後端部に、一方向に回転する通常の車輪を取り付けたものを、特許文献2は開示する。特許文献2の記載によれば、台車の走路上に障害物が存在している場合には、支持部材のキャスタが障害物に乗り上げ、このとき支持部材は回動自在であるためそのキャスタは上方に回動して障害物を簡単に乗り越えることができる。また、続いて支持部材の車輪が障害物に乗り上げたときには、その車輪が上方に回動して簡単に障害物を乗り越えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-151247号公報
【文献】特開平3-61168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
6輪の台車は、上述のように重量物などの搬送に用いられ得る。このような6輪の台車の適用範囲を好適に拡大するためには、例えば左右前後への柔軟な方向転換を可能にしたり、走路上の障害物をより好適に乗り越えることを可能にしたりするなど、その走行性能を高めることが望まれる。本開示の目的は、6輪の台車などの走行体において、その走行性能を高めることを可能にする構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様は、
走行体に設けられる右側の第1操作部に設けられて、該第1操作部に作用する前記走行体の前後方向及び該前後方向に直交する左右方向に延びる仮想平面上の力を検知可能である、第1力検知器と、
前記第1操作部から独立した左側の第2操作部に設けられて、該第2操作部に作用する前記仮想平面上の力を検知可能である、第2力検知器と、
前記第1力検知器からの入力及び前記第2力検知器からの入力に基づいて前記走行体の走行を制御する制御部と
を備えた走行制御システムを提供する。
【0007】
好ましくは、前記第1操作部の第1把持部は、該第1把持部に力が作用したときに該力に応じたひずみを検知できる材料でできている第1検知器取付部を備え、該第1検知器取付部に前記第1力検知器が取り付けられ、前記第2操作部の第2把持部は、該第2把持部に力が作用したときに該力に応じたひずみを検知できる材料でできている第2検知器取付部を備え、該第2検知器取付部に前記第2力検知器が取り付けられている。
【0008】
好ましくは、前記第1力検知器が取り付けられる第1検知器取付部は、前記第1操作部の第1把持部に備えられ、前記走行体の前記前後方向に対して傾くとともに前記走行体の前記左右方向に対して傾いていて、前記第2力検知器が取り付けられる第2検知器取付部は、前記第2操作部の第2把持部に備えられ、前記走行体の前記前後方向に対して傾くとともに前記走行体の前記左右方向に対して傾いている。
【0009】
好ましくは、前記第2検知器取付部は、前記第1検知器取付部と逆向きに傾いている。
【0010】
好ましくは、前記第1検知器取付部は、前記走行体の前記前後方向に対して約45°傾いていて、前記第2検知器取付部は、前記走行体の前記前後方向に対して約45°傾いている。
【0011】
本開示の第2態様は、前述の走行制御システムを備えた台車を提供する。
【0012】
前記台車は、
右側の第1前輪、第1中間輪及び第1後輪と、
左側の第2前輪、第2中間輪及び第2後輪と、
載置台の下面に設けられて、第1軸周りに可動である第1支持部材であって、前記第1前輪と前記第1中間輪とが設けられている、第1支持部材と、
前記載置台の前記下面に設けられて、第2軸周りに可動である第2支持部材であって、前記第2前輪と前記第2中間輪とが設けられている、第2支持部材と、
前記第1中間輪のアシスト駆動用の第1モータと、
前記第2中間輪のアシスト駆動用の第2モータと
を備え、
前記制御部は、前記第1力検知器からの入力及び前記第2力検知器からの入力に基づいて、前記第1モータの出力及び前記第2モータの出力をそれぞれ制御するとよい。
【0013】
前述の台車は、前記第1支持部材の前記第1軸周りの動きを補助する第1弾性部材と、前記第2支持部材の前記第2軸周りの動きを補助する第2弾性部材とを更に備えるとよい。この第1弾性部材は第1前輪の上方への動きを補助するように設けられるとよい。同様に、第2弾性部材は第2前輪の上方への動きを補助するように設けられるとよい。
【0014】
本開示の第3態様は、
右側の第1前輪、第1中間輪及び第1後輪と、
左側の第2前輪、第2中間輪及び第2後輪と、
載置台の下面に設けられて、第1軸周りに可動である第1支持部材であって、前記第1前輪と前記第1中間輪とが設けられている、第1支持部材と、
前記載置台の前記下面に設けられて、第2軸周りに可動である第2支持部材であって、前記第2前輪と前記第2中間輪とが設けられている、第2支持部材と、
前記第1中間輪のアシスト駆動用の第1モータと、
前記第2中間輪のアシスト駆動用の第2モータと、
第1操作部に設けられる第1力検知器と、
前記第1操作部から独立した該第1操作部の左側の第2操作部に設けられる第2力検知器と、
前記第1力検知器からの入力及び前記第2力検知器からの入力に基づいて、前記第1モータの出力及び前記第2モータの出力をそれぞれ制御する制御部と、
前記第1支持部材の前記第1軸周りの揺動を補助する第1弾性部材と、
前記第2支持部材の前記第2軸周りの揺動を補助する第2弾性部材と
を備えた台車
を提供する。
【0015】
好ましくは、前述の第2態様の台車でも、前述の第3態様の台車でも、前記第1モータは前記第1支持部材に設けられ、前記第2モータは前記第2支持部材に設けられている。
【0016】
好ましくは、前述の第2態様の台車でも、前述の第3態様の台車でも、前記第1モータの前記第1中間輪への動力伝達を断接する第1クラッチ機構と、前記第2モータの前記第2中間輪への動力伝達を断接する第2クラッチ機構とを更に備えている。
【0017】
好ましくは、前述の第2態様の台車でも、前述の第3態様の台車でも、自動停止装置を更に備える。
【発明の効果】
【0018】
本開示の第1から第3態様のそれぞれによれば、6輪の台車などの走行体において、その走行性能を高めることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る台車の側面図である。
【
図3】
図3は、
図1の台車の概略構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図1の台車での平地から傾斜地への走行例を説明する図である。
【
図5】
図5は、
図1の台車の操作部の上側部分を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、
図5のVI-VI線相当の位置での、変形例の台車の一部の断面図である。
【
図8】
図8は、
図1の台車の制御構成を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、
図1の台車の走行例を説明する図であり、(a)は段差乗り越え前の図であり、(b)は段差乗り越えのときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示に係る実施形態を添付図に基づいて説明する。同一の部品(又は構成)には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0021】
一実施形態に係る台車10について説明する。台車10は、走行体の一種である。
図1は、台車10の側面図であり、平地などにバランスよく位置する状態での台車10を示す。
図2は、
図1の台車10の右後方側からの斜視図である。
図3は、
図1の台車10の概略構成を示すブロック図である。台車10は、荷物を載せることができる載置面12Aを有する載置台12と、2つの操作部14、15と、6つの車輪Wとを有する。
【0022】
載置台12は、荷台又は基台と称され得るものであり、略矩形の部材であり、平板状に構成されている。載置台12は、ここでは、左右方向(第1方向)D1よりも、それに直交するように延びる前後方向(第2方向)D2に長い略長方形形状に構成されているが、その他の種々の形状、寸法を有してもよい。
図1及び
図2に示すように、載置台12の載置面12Aは、左右方向D1に略平行に、かつ、前後方向D2に略平行に延びる。載置台12は、スリット又は孔12hなどを設けて、これにより例えば軽量化されている。
【0023】
台車10は、
図2に示すように、右側の第1操作部14と、左側の第2操作部15とを有する。これらの第1及び第2操作部14、15は、略棒状であり、載置台12の後方に設けられている。
図1及び
図2に示すように、ここでは、第1及び第2操作部14、15は、それぞれ、左右方向D1及び前後方向D2のそれぞれに直交する高さ方向(第3方向)D3に延びるように載置台12の載置面12Aに対して設けられている。これらの操作部14、15は互いに独立している。2つの操作部14、15は、それぞれ、ユーザ(荷台10の操作者)による力が作用したとき、その力に応じてある程度撓む又はひずみを検知できる材料でできているとよく、ここではその全部がそのような材料でできている。例えば、操作部14、15は、アルミニウム合金、プラスチック材料等で作製されるとよい。なお、ここでは操作部14、15は載置台12に取り付け取り外しが可能にされていて、載置台12の孔12iに第3方向D3から、つまり上方から差し入れることで載置台12に取り付け可能である。ただし、操作部14、15が載置台12に固定されることを本開示は排除するものではない。
【0024】
車輪Wとして、台車10には、前後方向D2に並ぶ第1前輪Wrf、第1中間輪Wrm及び第1後輪Wrrと、前後方向D2に並ぶ第2前輪Wlf、第2中間輪Wlm及び第2後輪Wlrとが左右に備えられている。第1前輪Wrf、第1中間輪Wrm及び第1後輪Wrrは、台車10の右側の車輪であり、第2前輪Wlf、第2中間輪Wlm及び第2後輪Wlrは、台車10の左側の車輪である。なお、本明細書において、台車10の前後方向D2の前方を向いて右側を「右」と、その左側を「左」と定義する。
【0025】
載置台12の下面12Bに2つの支持部材16、18が設けられている。一方の支持部材16は、ここでは第1支持部材と称し、台車10の右側に配置される。第1支持部材16は第1軸周りに可動であるように構成されている。ここでは、第1支持部材16は、載置台12の下面12Bに、左右方向D1に延びるように設けられた第1軸部20周りに所定範囲で回動可能に、つまり揺動可能に設けられる。第1軸部20は、第1軸に対応する。支持部材16の動きの所定範囲は、主に、載置台12と第1支持部材16との位置関係及び、第1支持部材16の形状により定まる。下面12Bには、被取付部が設けられている。この被取付部に、第1軸部20を介して、第1支持部材16は取り付けられる。同様に、他方の支持部材18は、ここでは第2支持部材と称し、台車10の左側に配置される。第2支持部材18は第2軸周りに可動であるように構成されている。ここでは、第2支持部材18は、載置台12の下面12Bに、左右方向D1に延びるように設けられた第2軸部24周りに所定範囲で回動可能に、つまり揺動可能に設けられる(
図1の矢印A1、A2参照)。第2軸部24は、第2軸に対応する。この第2支持部材18の動きの所定範囲も、主に、載置台12と第2支持部材18との位置関係及び、第2支持部材18の形状により定まる。下面12Bには、
図1に示すように被取付部26が設けられている。この被取付部26に、第2軸部24を介して、第2支持部材18は取り付けられる。
図1から
図3から明らかなように、第2支持部材18は、第1支持部材16と左右方向D1で対向するように位置付けられる。なお、第1及び第2支持部材16、18はそれぞれ平衡装置を構成する。
【0026】
第1前輪Wrfと第1中間輪Wrmとは、第1支持部材16の下側に設けられ、第1軸部20の両側に位置付けられている。第1支持部材16において、第1軸部20の前方に第1前輪Wrfが設けられ、第1軸部20の後方に第1中間輪Wrmが設けられている。同様に、第2支持部材18の下側において、第2軸部24の両側に位置付けられている第2前輪Wlf及び第2中間輪Wlmについては、第2軸部24の前方に第2前輪Wlfが設けられ、第2軸部24の後方に第2中間輪Wlmが設けられている。
【0027】
ここで、第1支持部材16は第2支持部材18とは同じ構成を備えるので、ここでは、第2支持部材18に関して主に説明し、第1支持部材16の詳細な説明は省略する。第2支持部材18は、ここでは、
図1に示すように、略二等辺三角形状の部材である。
図1において、左右方向D1と高さ方向D3とに延びる平面P1を、第2軸部24の軸線24Aに沿って定めるとき、第2支持部材18は平面P1によって略2等分され、平面P1に関して略左右対称である。そして、第2支持部材18の頂点部分に第2軸部24は位置付けられている。したがって、第2支持部材18は第2軸部24周りに所定範囲で回動可能である、つまり揺動可能である。よって、
図4に示すように、例えば、平地から傾斜地へ台車10が移動するとき、第2軸部24周りに第2支持部材18は回動し、第2中間輪Wlmはしっかりと地面に接地し続けることが可能になる。この第2中間輪Wlmの接地は、傾斜地から平地へ台車10が移動するとき、走路上に障害物があるとき、など種々のときに有効に働く。これは、第1支持部材16に関しても同様である。なお、
図4では、第2支持部材18を設けずに、載置台12の下面12Bの所定の位置に固定された場合の第2中間輪Wlmを破線で示す。破線で示す第2中間輪Wlmは地面から離れている。
【0028】
本実施形態では、このような第2中間輪Wlmを駆動輪とする。同様に、第1支持部材16の第1中間輪Wrmも駆動輪とされる。ただし、第1及び第2中間輪Wrm、Wlmはそれぞれ、前後方向D2に向くように方向固定とされているが、方向が変更可能に構成されてもよい。なお、他の車輪Wrf、Wrr、Wlf、Wlrはキャスタ構造を採用し、任意の方向へ向きが変わるようになっている。また、
図1及び
図2から明らかなように、全ての車輪Wは同じ大きさを有するが、これに限定されない。
【0029】
台車10は、更に電動アシスト機構28を備える。電動アシスト機構28には、本開示の走行制御システムSが適用されている。電動アシスト機構28の電動アシスト機能を実現する構成及びそれに付随する車輪Wに関する構成を
図1から
図3に基づいて、以下説明する。
【0030】
走行制御システムSは、第1及び第2把持部14G、15Gの第1及び第2検知器取付部14S、15Sに取り付けられる後述する力検知器48、50と、これらからの入力に基づいてモータ30、34の制御を実行する制御部を備える。電動アシスト機構28は、第1中間輪Wrmのアシスト駆動用のモータ30と、第2中間輪Wlmのアシスト駆動用の第2モータ34とを備え、その制御部で、第1モータ30の制御及び第2モータ34の制御を実行する。
【0031】
図3に示すように、第1支持部材16に設けられている第1中間輪Wrmに駆動力を供給可能にするべく、モータ(第1モータ)30が設けられている。第1モータ30の駆動力を第1中間輪Wrmに伝達するように、第1モータ30と第1中間輪Wrmとの間に動力伝達機構32が設けられている。ここでは、動力伝達機構32は、第1モータ30の出力軸に設けられた歯車32aと、第1中間輪Wrmの車軸に設けられた歯車32bと、それら歯車32a、32bに巻き掛けられたチェーン32cとを備える。なお、動力伝達機構32は、他の構成を備えてもよく、例えば、歯車のみで構成されてもよく、或いは、チェーン32cの代わりにベルトが用いられてもよい。
【0032】
同じく、第2支持部材18に設けられている第2中間輪Wlmに駆動力を供給可能にするべく、モータ(第2モータ)34が設けられている。第2モータ34の駆動力を第2中間輪Wlmに伝達するように、第2モータ34と第2中間輪Wlmとの間に動力伝達機構36が設けられている。動力伝達機構36は、前述の動力伝達機構32と同じ構成を備え、第2モータ34の出力軸に設けられた歯車36aと、第2中間輪Wlmの車軸に設けられた歯車36bと、それら歯車36a、36bに巻き掛けられたチェーン36cとを備える。なお、動力伝達機構36も、前述の動力伝達機構32と同じく、他の構成を備えてもよい。
【0033】
なお、第1モータ30は種々の箇所に設けられてもよい。ここでは、第1モータ30は第1支持部材16に設けられている。第1モータ30は、これ以外の箇所、例えば、載置台12の下面12Bに設けられてもよい。この場合、第1モータ30は、載置台12の下面12Bであって、例えば第1軸部20の内側に設けられてもよい。同様に、第2モータ34も、第2支持部材18に設けられている。第2モータ34も、載置台12の下面12Bに、例えば第2軸部24の内側に設けられてもよい。
【0034】
駆動輪である第1及び第2中間輪Wrm、Wlmのそれぞれに、制動装置であるブレーキ38、39が設けられている。このブレーキ38、39は自動停止装置を構成する。操作スイッチ40は、第1操作部14の先端部に設けられている。操作スイッチ41は、第2操作部15の先端部に設けられている。ユーザによりこれらの操作スイッチ40、41がともに押されない限り、ブレーキ38、39はかかった状態に維持される。つまり、操作スイッチ40、41がともに押されない限り、上記第1モータ30の駆動力により第1中間輪Wrmは動くことも、上記第2モータ34の駆動力により第2中間輪Wlmは動くこともできない。したがって、台車10が電動アシスト機構28を使用して移動しているときに、ユーザが操作スイッチ40、41の両方又はいずれか一方から手を離すことで、台車10は自動停止する。なお、操作スイッチ40、41によるブレーキ38、39の解除の制御は後述する制御部により実行されるが、他の制御部により行われてもよい。ただし、ブレーキ38、39は、ここではこのように電気的に解除されるものであるが、操作スイッチ40、41にワイヤ等で機械的につながれてもよい。なお、ブレーキ38、39には、操作スイッチ40、41の操作と関係なしに、ブレーキを解除可能とする機械式解除機構が備えられている。これは、例えば、台車10の牽引時などに利用され得る。
【0035】
更に、駆動輪である第1中間輪Wrmには、第1モータ30の第1中間輪Wrmへの動力伝達を断接する第1クラッチ機構42が設けられている。同じく駆動輪である第2中間輪Wlmには、第2モータ34の第2中間輪Wlmへの動力伝達を断接する第2クラッチ機構44が設けられている。ここでは、第1クラッチ機構42は、第1モータ30と上記歯車32aとの間に設けられ、第2クラッチ機構44は、第2モータ34と上記歯車36aとの間に設けられている。これらの第1及び第2クラッチ機構42、44は
図3に示すクラッチレバー46を操作することで操作機構部42a、44aがそれぞれ機械的に作動し、その断接が切り替えられる。動力伝達が切断される状態にクラッチレバー46が操作されているとき、台車10は電動アシスト機構28を使用して移動することができず、手動で操作され得る。このとき、例えば、他の車両で台車10の牽引を行ってもよい。台車10が電動アシスト機構28を使用して移動することができるとき、クラッチレバー46は動力伝達が可能な状態に操作されている。なお、第1クラッチ機構42のクラッチレバーは、第2クラッチ機構44のクラッチレバーと別に設けられてもよい。また、第1クラッチ機構42は第1モータ30の第1中間輪Wrmへの動力伝達を断接可能にする箇所であれは、いずれの箇所に設けられてもよい。これは、第2クラッチ機構44でも同様である。
【0036】
ここで、走行制御システムSにおける、操作部14、15に作用する力を検知するための力検知器48、50及びそれらの設置のための構成を説明する。右側の第1操作部14には、ユーザにより掴まれる把持部(第1把持部)14Gが設けられている。同様に、左側の第2操作部15には、ユーザにより掴まれる把持部(第2把持部)15Gが設けられている。第1及び第2把持部14G、15Gのそれぞれは、略円筒状のカバー14C、15Cが設けられていて、そのカバー14C、15Cを備えて構成されている。これらのカバー14C、15Cを外した操作部14、15の先端側を台車10の後ろ側からみたところを
図5に示す。
図6は、
図5のVI-VI線に沿った操作部14、15の断面図であり、操作部以外の図示を省略している。なお、カバー14Cは第1操作部14の上方からその内部に操作部14を通すように案内され、所定の位置に、具体的には第1検知器取付部14Sを完全に覆う位置に、図示しないストッパでそれ以上下方に下がらないように保持される。同様に、カバー15Cは第2操作部15の上方からその内部に操作部15を通すように案内され、所定の位置に、具体的には第2検知器取付部15Sを完全に覆う位置に、図示しないストッパでそれ以上下方に下がらないように保持される。
【0037】
第1及び第2操作部14、15は、そこに力が作用したときにその力に応じたひずみを検知できる材料でできていて、第1及び第2把持部14G、15Gも同じ材料製である。ここでは、第1把持部14Gを含む第1操作部14はアルミニウム合金製であり、第2把持部15Gを含む第2操作部15もアルミニウム合金製である。特に、第1及び第2把持部14G、15Gは、
図5に示すように、第1及び第2操作部14、15の他の箇所よりも細く形成されている検知器取付部14S、15Sを備えているので、なお一層、第1及び第2把持部14G、15Gに力が作用したときにその力に応じたひずみを生じやすい。
【0038】
第1及び第2把持部14G、15Gの第1及び第2検知器取付部14S、15Sはそれぞれ略直方体の部分であり、
図1及び
図2の状態において第1及び第2操作部14、15の軸線14A、15Aに沿って高さ方向D3に真っすぐに延びている。第1及び第2検知器取付部14S、15Sの中心軸線が第1及び第2操作部14、15の軸線14A、15Aとなるように、第1及び第2検知器取付部14S、15Sは第1及び第2操作部14、15に設けられている。第1及び第2検知器取付部14S、15Sはそれぞれ
図6に示すように断面略四角形であり、それ以外の第1及び第2操作部14、15の部分は概ね断面略円形の棒状である。第1検知器取付部14Sは、台車10の前後方向D2に対して傾くとともに左右方向D1に対しても傾いている。同様に、第2検知器取付部15Sは、前後方向D2に対して傾くとともに左右方向D1に対しても傾いている。そして、第2検知器取付部15Sは、
図6に示すように、第1検知器取付部14Sと逆向きに傾いている。
【0039】
第1検知器取付部14Sは後方から前方に向かうに従い内側に傾くように、つまり左側に傾くように形成されている。第2検知器取付部15Sは後方から前方に向かうに従い内側に傾くように、つまり右側に傾くように形成されている。ここでは、
図6において、第1検知器取付部14Sの前後方向D2に対する傾きθ1は約45°であり、第2検知器取付部14Sの前後方向D2に対する傾きθ2は約45°である。しかし、傾きθ1、θ2はそれぞれ45°以外であってもよく、例えば30°~60°の範囲の他の角度であってもよい。また、傾きθ1の大きさは傾きθ2の大きさと異なってもよい。なお、
図7に示すように、第1検知器取付部14Sは後方から前方に向かうに従い外側に傾くように、また、第2検知器取付部15Sは後方から前方に向かうに従い外側に傾くように形成されていてもよい。なお、
図7の変形例でも、第1検知器取付部14Sの前後方向D2に対する傾きは約45°であり、第2検知器取付部14Sの前後方向D2に対する傾きは約45°である。
【0040】
なお、本開示は、第2検知器取付部15Sが第1検知器取付部14Sと同じ向きに傾くことを排除しない。例えば、第1検知器取付部14Sが後方から前方に向かうに従い内側に傾き第2検知器取付部15Sが後方から前方に向かうに従い外側に傾くように形成されることも、また、第1検知器取付部14Sが後方から前方に向かうに従い外側に傾き第2検知器取付部15Sが後方から前方に向かうに従い内側に傾くように形成されることも可能である。ただし、より好ましくは、第2検知器取付部15Sは、
図6及び
図7に示すように、第1検知器取付部14Sと逆向きに傾く。
【0041】
第1把持部14Gの第1検知器取付部14Sにそこに作用する力を検知する検知器(第1力検知器)48が設けられる。第2把持部15Gの第2検知器取付部15Sにそこに作用する力を検知する検知器(第2力検知器)50が設けられる。第1力検知器48も第2力検知器50も、ロードセルである。より具体的には、第1力検知器48も第2力検知器50も、ひずみゲージである。なお、第1力検知器48及び第2力検知器50のいずれか又は両方はひずみゲージ以外のセンサ等であってもよい。
【0042】
第1力検出器48は、第1把持部14Gに作用する台車10の前後方向D2及び該前後方向D2に直交する左右方向D1に延びる仮想平面上の力を検知可能である構成を備える。ここでは、第1力検出器48は、2軸のひずみ成分を検出可能である。具体的には、第1力検出器48は、第1検知器取付部14Sの対向する面に貼り付けられたゲージG1、G2を備え、その貼り付け面に略直交する方向の力と、その貼り付け面に沿った略平行な方向の力とを検知可能であり、それらの力の合力として、前後方向D2及び左右方向D1に延びる仮想平面(例えば
図6の紙面)IP上の力を検知可能である。同様に、第2力検出器50は、第2把持部15Gに作用する台車10の前後方向D2及び左右方向D1に延びる仮想平面上の力を検知可能である構成を備え、ここでは2軸のひずみ成分を検出可能である。具体的には、第2力検出器50は、第2検知器取付部15Sの対向する面に貼り付けられたゲージG3、G4を備え、その貼り付け面に略直交する方向の力と、その貼り付け面に沿った略平行な方向の力とを検知可能であり、それらの力の合力として、前後方向D2及び左右方向D1に延びる仮想平面IP上の力を検知可能である。したがって、
図6に白抜き矢印で例示するように、第1把持部14の第1検知器取付部14Sの第1力検出器48はその軸線14Aから径方向に延びる8方向の力を検知可能であり、第2把持部15の第2検知器取付部15Sの第2力検出器50はその軸線15Aから径方向に延びる8方向の力を検知可能である。第1力検出器48が検知した値(信号)は後述する制御部に出力され、その制御部に入力される。同様に、第2力検出器50が検知した値(信号)は後述する制御部に出力され、その制御部に入力される。この力の検知は、白抜き矢印で例示するように
図7の変形例でも同様である。
【0043】
更に、台車10には、クラッチレバー46の位置検出用のクラッチレバーポジションセンサ54が設けられている。
【0044】
更に、台車10には、第1及び第2モータ30、34などの作動用電源としてのバッテリ56が設けられている。ここでは、
図2に示すように、バッテリ56は、載置台12の下面12Bに配置されている。バッテリ56には、電源スイッチ58、充電端子60、バッテリ残量計62が設けられている。
【0045】
台車10の電動アシスト機構28は、上記モータ30、34などの他に、制御部としての機能を担う制御装置70を備える。制御装置70には、操作スイッチ40、41、力検知器48、50、及び、クラッチレバーポジションセンサ54の各々からの出力が入力される。制御装置70は所謂コンピュータとして構成されていて、所謂プロセッサである処理部(例えばCPU)70c、記憶部(例えばROM、RAM)、入出力ポートを備える。制御装置70は、それらからの出力に基づいて、ブレーキ38、39の作動及び、第1及び第2モータ30、34の各作動を制御することができる。制御装置70は、台車10を操作する操作者であるユーザが操作部14、15に及ぼす力を軽減するようにアシストするべく、第1及び第2モータ30、34の各作動を制御する。制御装置70は、第1及び第2モータ30、34の各作動を独立して制御することも、それらの作動を同期させることもできる。例えば、制御装置70は、第1中間輪Wrmの回転速度と、第2中間輪Wlmの回転速度とを同じにして単に前進するように、又は、単に後進するように、第1及び第2モータ30、34の各作動を制御することもできる。また、制御装置70は、第1中間輪Wrmと第2中間輪Wlmとの一方のみを回転させるように、又は、第1中間輪Wrmの回転方向と第2中間輪Wlmの回転方向とを逆にするように、第1及び第2モータ30、34の各作動を制御することもできる。これによって、台車10の様々な回転半径を実現することができ、好ましくはより小さな回転半径を提供することができる。
【0046】
本実施形態では、台車10の前進、後進、及び、回転などを可能にするように、制御装置70は第1及び第2モータ30、34の各作動の制御を行う。このためのプログラムやデータを制御装置70は記憶している。制御装置70は、制御部としての機能を実質的に担う処理部70cが記憶部に記憶されているプログラムを実行することで、各種機能モジュールを実現する。
図8に、制御装置70の処理部70cつまり制御部の機能ブロック図を示す。具体的には、制御装置70は、機能モジュールとして、ブレーキ検知部701、クラッチ検知部702、第1力検知部703、第2力検知部704、制御量算出部705、指令送信部706を有する。指令送信部706は、第1モータ30への指令信号の送信用の第1モータ送信部707及び第2モータ34への指令信号の送信用の第2モータ送信部708という機能モジュールを含む。機能モジュールの一部は、他のプロセッサ、ディジタル回路、またはアナログ回路等のハードウェアであってもよい。
【0047】
ブレーキ検知部701は、操作スイッチ40、41からの信号の入力に基づいて、ブレーキ38、39へのユーザ要求を検知する。ここでは、前述のように、操作スイッチ40、41の少なくともいずれか一方が操作されていないときつまり押されていないとき、ブレーキ解除がOFF状態にあると判定される。これにより、ユーザが望まない電動アシストの実行を防ぐことができる。
【0048】
クラッチ検知部702は、クラッチレバーポジションセンサ54からの信号の入力に基づいてクラッチレバー46の状態を検知する。ここでは、クラッチレバー46が動力伝達を切断する状態にあるとき、クラッチ機構42、44が非接続状態にあると判定される。これにより、ユーザが望まない電動アシストの実行を防ぐことができる。
【0049】
第1力検知部703は、第1力検知器48からの信号の入力に基づいて第1操作部14の第1把持部14Gへの力の入力を検知する。これにより、制御装置70は、第1操作部14の高さ方向D3に延びる軸線14Aに直交する方向の力の向き及びその大きさを取得する(例えば
図6又は
図7の白抜き矢印参照)。
【0050】
第2力検知部704は、第2力検知器50からの信号の入力に基づいて第2操作部15の第2把持部15Gへの力の入力を検知する。これにより、制御装置70は、第2操作部15の高さ方向D3に延びる軸線15Aに直交する方向の力の向き及びその大きさを取得する(例えば
図6又は
図7の白抜き矢印参照)。
【0051】
制御量算出部705は、第1力検知部703により検知された力つまり入力と、第2力検知部704により検知された力つまり入力に基づいて、第1モータ30への制御量及び第2モータ34への制御量のそれぞれを算出する。この制御量の算出のためのデータ等は、予め制御装置70の記憶部に記憶されている。制御量算出部705は、第1力検知部703の検知した力と、第2力検知部704の検知した力との合力の向き及びその大きさに応じた制御量を算出することができる。例えば、第1力検知部703により前方への力が検知され、第2力検知部704によりそれと同程度の大きさの前方への力が検知されたとき、真っすぐに前進のための制御量が算出される。同様に、第1力検知部703により後方への力が検知され、第2力検知部704によりそれと同程度の大きさの後方への力が検知されたとき、真っすぐに後進のための制御量が算出される。そして、その力が大きくなったり或いは小さくなったりしたとき、その力の変化に応じた制御量が算出される。また、例えば、第1力検知部703により前方への力が検知され、第2力検知部704によりそれと同程度の大きさの後方への力が検知されたとき、左旋回のための制御量が算出される。同様に、第1力検知部703により後方への力が検知され、第2力検知部704によりそれと同程度の大きさの前方への力が検知されたとき、右旋回のための制御量が算出される。また、第1力検知部703により前方へのある力が検知され、第2力検知部704により前方へのその力よりも例えば所定レベル以上弱い力が検知されたとき、左前側に曲がるような制御量が算出される。このように例示したように、第1中間輪Wrmを動かすための制御量が算出され、第2中間輪Wlmを動かすための制御量が算出される。制御量は、例えばバッテリ56からの電流量である。
【0052】
指令送信部706は、制御量算出部705が算出した制御量に応じた信号を第1モータ30及び第2モータ34のそれぞれに送信する。第1モータ送信部407は第1モータ30用の信号を第1モータ30のドライバ30Aに送信し、第2モータ送信部408は第2モータ34用の信号を第2モータ34のドライバ34Aに送信する。
【0053】
こうして、制御部としての制御装置70つまり処理部70Cは、第1操作部14の第1把持部14Gからの入力及び第2操作部15の第2把持部15Gからの入力に応じて、つまりそれぞれに作用した力に応じて、第1モータ30の出力及び第2モータの出力をそれぞれ制御する。
【0054】
制御装置70つまり処理部70Cによる制御を、
図9のフローチャートに基づいて説明する。なお、
図9のフローチャートは繰り返される。
【0055】
バッテリ残量計62による残量が所定量以上あって、電源スイッチ58がONになっているとき、
図9のフローチャートに基づく処理が実行される。ステップS901では、クラッチ機構つまり第1クラッチ機構42及び第2クラッチ機構44が接続状態にあるか否かが判定される。クラッチレバーポジションセンサ54からの信号の入力に基づいてクラッチレバー46が接続状態に対応する位置にあると判定されたとき、ステップS901で肯定判定される。一方で、クラッチレバー46が非接続状態つまり切断状態に対応する位置にあると判定されたとき、ステップS901で否定判定される。
【0056】
ステップS901で肯定判定されたとき、次のステップS903では、ブレーキ38、39の両方が解除されているか否かが判定される。操作スイッチ40、41からの信号の入力に基づいて、ブレーキ38、39が解除されていると判定されたとき、ステップS903で肯定判定され、ブレーキ38、39が解除されていないと判定されたとき、ステップS903で否定判定される。なお、ステップS901とステップS903の順番は、逆であってもよい。
【0057】
ステップS901又はステップS903で否定判定されたとき、ステップS905で、第1モータ30及び第2モータ34の作動がOFFにされる。つまり、この場合、アシスト制御の実行が禁止される。これにより当該ルーチンは終了する。
【0058】
ステップS901及びステップS903で肯定判定されたとき、ステップS907で、第1モータ30及び第2モータ34の作動がONにされる。これにより、上述のように、ユーザにより操作される2つの操作部からの入力に応じて、第1モータ30の出力及び第2モータ34の出力がそれぞれ制御される。なお、第1モータ30の出力及び第2モータ34の出力は、ユーザの第1及び第2操作部14、15の第1及び第2把持部14G、15Gへの力を軽減するように制御される。また、第1モータ30の出力及び第2モータ34の出力は、所定速度(例えば3.5km/h)以上で台車10が走行しないように、制御される。第1モータ30及び第2モータ34の各出力は、回転速度及び/又は駆動力であり得る。
【0059】
更に、台車10では、第1支持部材16の第1軸周りの動きを補助する第1弾性部材80と、第2支持部材18の第2軸周りの動きを補助する第2弾性部材82とが設けられている。第1弾性部材80は、第1支持部材16と載置台12の下面12Bとの間に設けられたばね部材であり、それが収縮する方向の力を第1支持部材16に及ぼす。ここでは、第1支持部材16の前方の前輪Wrfを持ち上げるような力を第1支持部材16に及ぼすように、第1弾性部材80は設けられている。同様に、第2弾性部材82は、第2支持部材18と載置台12の下面12Bとの間に設けられたばね部材であり、それが収縮する方向の力を第2支持部材18に及ぼす。ここでは、第2支持部材18の前方の前輪Wlfを持ち上げるような力を第2支持部材18に及ぼすように、第2弾性部材82は設けられている。したがって、
図10(a)に示すように、台車10が矢印で示すように前方に移動しているときに前輪Wrf、Wlfが段差STに直面するとき、第1弾性部材80により第1前輪Wrfの上方への動きが補助され、同様に第2弾性部材82により第2前輪Wlfの上方への動きが補助される。よって、台車10は、
図10(b)に示すように、より容易に段差STを乗り越えることができる。この第1及び第2弾性部材80、82による作用効果は、
図4に基づいて説明したように台車10が傾斜面に差し掛かったときも同様に有効である。
【0060】
以上説明したように、上記構成を備える台車10によれば、以下の効果が奏される。
【0061】
台車10には、上記電動アシスト機構28が設けられていて、そこに走行制御システムSが適用されている。走行制御システムSは、第1及び第2操作部14、15の第1及び第2把持部14G、15Gに取り付けられる力検知器48、50を備え、力検知器48、50はそれぞれ、台車10の走行方向及び前後方向に延びるように定められる仮想平面上の力を検知する。制御装置70は、これらからの入力に基づいて走行体である台車10の走行を制御する。この走行の制御は、駆動輪Wrm、Wlmのアシスト駆動用のモータ30、32の制御に向けられている。したがって、ユーザからの入力を、例えば望みの移動方向を好適に検知して、台車10の走行が制御可能になる。このように、走行制御システムSを搭載することで、台車10の例えば旋回、前進、後進、停止などの種々の走行制御を可能にし、その走行性能を高めることができる。
【0062】
更に、力検知器48、50が取り付けられる検知器取付部14S、15Sは、第1及び第2把持部14G,15Gに力が作用したときに該力に応じたひずみを検知できる材料でできていて、ひずみ感受性が高い。よって、ユーザからの入力をより好適に検知して、台車10の走行を制御することができる。
【0063】
更に、第1検知器取付部14Sは、第1把持部14Gに備えられ、台車10の前後方向D2に対して傾くとともに台車10の左右方向D1に対して傾いている。したがって、第1力検知器48というより少ない構成のセンサで、第1把持部14Gに作用する力を、例えば上記仮想平面IP上の力をより好適に検知することができる。同様に、第2検知器取付部15Sは、第2把持部15Gに備えられ、台車10の前後方向D2に対して傾くとともに台車10の左右方向D1に対して傾いている。したがって、第2力検知器50というより少ない構成のセンサで、第2把持部15Gに作用する力を、例えば上記仮想平面IP上の力をより好適に検知することができる。また、検知器取付部14S、15Sの前後方向に対する傾きを約45°とすることで、前後方向を中心として動かされ得る台車10に対してユーザが望む方向を、力検知器48、50でより好適に検知可能となる。
【0064】
更に、
図6(又は
図7)に示すように、第2検知器取付部15Sは、第1検知器取付部14Sと逆向きに傾いている。したがって、第1力検知器48の取付面に直交する方向と、第2検知器50の取付面に直交する方向とを交差させることができる。よって、第1力検知器48からの入力と、第2力検知器50からの入力とを組み合わせて処理することで、制御装置70は、ユーザからの入力をより好適に検知し、台車10の走行を制御することができ、これにより例えば台車10の左右前後への柔軟な方向転換を可能にする。
【0065】
更に、台車10では、第1弾性部材80と、第2弾性部材82とが設けられている。したがって、台車10が傾斜面や段差STに差し掛かったとき、第1支持部材16の動き及び第2支持部材18の動きが補助され、例えば第1前輪Wrfの上方への動きが補助され、また、第2前輪Wlfの上方への動きが補助される。これにより、台車10は、走路上の障害物をより好適に乗り越えることが可能になり、その走行性能を高めることが可能になる。なお、第1弾性部材80及び第2弾性部材82はそれぞれ補助部材であり、それ単独で第1支持部材16及び第2支持部材18を動かさない程度の弾性力を有するとよい。
【0066】
以上、本開示に係る実施形態及びその変形例について説明したが、本開示はそれらに限定されない。本願の特許請求の範囲によって定義される本開示の精神及び範囲から逸脱しない限り、種々の置換、変更が可能である。
【0067】
上記実施形態では、走行制御システムSを台車10に、より具体的にはその電動アシスト機構28に適用した。しかし、本開示の走行制御システムは、台車10以外の台車、例えば4輪の台車にも、台車以外の走行体にも適用可能である。例えば、本開示の走行制御システムは、車椅子、カートなど種々の走行体の走行制御に、より具体的には走行体の少なくとも1つの駆動モータ等の制御に適用可能である。
【0068】
例えば、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。例えば、情報処理装置である、制御部としての機能を担う制御装置70は1つのコンピュータである必要はなく、複数のコンピュータを備えるシステムとして構成されてもよい。
【0069】
また、上記実施形態では、検知器取付部14S、15Sは略直方体の部分であったが、この形状に限定されない。検知器取付部14S、15Sは、検知器48、50との組み合わせで、前後方向、左右方向など種々の進行方向を検知可能に構成されるとよい。
【0070】
また、上記台車10では、前輪Wrf、Wlf、中間輪Wrm、Wlm及び、後輪Wrr、Wlrはそれぞれ1つの車輪で構成された。しかし、より重い物の搬送に適するように、各車輪Wは、左右方向D1に並べて設けられる複数の車輪で構成されてもよい。つまり、車輪Wの各々は、ダブルタイヤであってもよい。
【0071】
また、台車10では、第1弾性部材80と、第2弾性部材82とが各支持部材16、18の前方側部分に設けられたが、他の位置に他の構成で備えられてもよい。例えば、第1弾性部材80は、第1支持部材16の第1軸部20に設けられるばね部材であってもよい。この場合も、第1弾性部材は第1前輪の上方への動きを補助するように設けられるとよい。同様に、第2弾性部材82は、第2支持部材18の第2軸部24に設けられるばね部材であってもよい。第2弾性部材も第2前輪の上方への動きを補助するように設けられるとよい。
【0072】
なお、第1弾性部材80と、第2弾性部材82は、走行制御システムSを備えない5輪以上の車輪を備える台車にも、好ましくは6輪以上の車輪を備える台車にも適用可能である。例えば、台車などの走行体の第1支持部材16に第1弾性部材80が適用され、第1支持部材16の左側の第2支持部材18に第2弾性部材82が適用されるとよく、その他の構成は上記実施形態に限定されず、種々設計され得る。台車10の載置台12など走行体の基部に設けられて第1軸周りに可動である第1支持部材であって、前記第1軸の前後のそれぞれに少なくとも1つの車輪が設けられている、第1支持部材と、前記基部に設けられて第2軸周りに可動である第2支持部材であって、前記第2軸の前後のそれぞれに少なくとも1つの車輪が設けられている、第2支持部材と、更に少なくとも1つの車輪を、より好ましくは更に2つ以上の車輪を備えた走行体において、前記第1支持部材に上記第1弾性部材が設けられ、前記第2支持部材に上記第2弾性部材が設けられるとよい。例えば、第1支持部材の第1軸周りの動きを補助する第1弾性部材と、第2支持部材の第2軸周りの動きを補助する第2弾性部材とを備えた台車としては、右側の第1前輪、第1中間輪及び第1後輪と、左側の第2前輪、第2中間輪及び第2後輪と、載置台の下面に設けられて、第1軸周りに可動である第1支持部材であって、前記第1前輪と前記第1中間輪とが設けられている、第1支持部材と、前記載置台の前記下面に設けられて、第2軸周りに可動である第2支持部材であって、前記第2前輪と前記第2中間輪とが設けられている、第2支持部材と、前記第1中間輪のアシスト駆動用の第1モータと、前記第2中間輪のアシスト駆動用の第2モータと、第1操作部に設けられる第1力検知器と、前記第1操作部から独立した該第1操作部の左側の第2操作部に設けられる第2力検知器と、前記第1力検知器からの入力及び前記第2力検知器からの入力に基づいて、前記第1モータの出力及び前記第2モータの出力をそれぞれ制御する制御部と、前記第1支持部材の前記第1軸周りの動きを補助する第1弾性部材と、前記第2支持部材の前記第2軸周りの動きを補助する第2弾性部材とを備えた台車がある。第1弾性部材及び第2弾性部材を備えることで、より好適に第1支持部材及び第2支持部材は動くことができ、よって走路上の障害物をより好適に乗り越えることを可能になり、走行体の走行性能を高めることが可能になる。
【符号の説明】
【0073】
10 台車
12 載置台
14 第1操作部
14G 第1把持部
14S 第1検知器取付部
15 第2操作部
15G 第2把持部
15S 第2検知器取付部
16 第1支持部材
18 第2支持部材
20 第1軸部
24 第2軸部
28 電動アシスト機構
30 第1モータ
34 第2モータ
42 第1クラッチ機構
44 第2クラッチ機構
48 第1力検知器
50 第2力検知器
56 バッテリ
70 制御装置
S 走行制御システム