(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】美爪料除去剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/33 20060101AFI20220922BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20220922BHJP
A61Q 3/04 20060101ALI20220922BHJP
【FI】
A61K8/33
A61K8/35
A61Q3/04
(21)【出願番号】P 2021575404
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(86)【国際出願番号】 JP2021025711
【審査請求日】2022-01-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513029633
【氏名又は名称】三協化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石原 智紀
(72)【発明者】
【氏名】荒川 陽祐
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-056631(JP,A)
【文献】特開2018-083818(JP,A)
【文献】特開2016-060707(JP,A)
【文献】特開2005-314418(JP,A)
【文献】特開2019-199432(JP,A)
【文献】特開昭62-207206(JP,A)
【文献】特開平11-199443(JP,A)
【文献】特開2003-137735(JP,A)
【文献】Lutex Ap Eco Acetone-Based Nail Polish Remover, MINTEL GNPD [ONLINE],2019.01,[検索日 2021.09.10]インターネット:<URL:https://www.gnpd.com/sinatra> (Database accession no.6235361)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/33
A61K 8/35
A61Q 3/04
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/KOSMET(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセトンの含有量が10質量%以下
であり、かつ、
(A)メチラール、エチラール及びモノグライムからなる群から選ばれる少なくとも1種の低分子量ジエーテル
を含有する美爪料除去剤であって、前記低分子量ジエーテルの含有量が、美爪料除去剤の総質量に対する質量比で75質量%以上である、美爪料除去剤。
【請求項2】
(A1)メチラール及びモノグライムからなる群から選ばれる少なくとも1種の低分子量ジエーテル
を含有する、請求項1に記載の美爪料除去剤。
【請求項3】
メチラールを含有する、請求項1又は2に記載の美爪料除去剤。
【請求項4】
アセトンの含有量が10質量%以下
であり、かつ、
(A)メチラール、エチラール及びモノグライムからなる群から選ばれる少なくとも1種の低分子量ジエーテル、及び
(B)1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン及びテトラヒドロフルフリルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の環状エーテル
を含有する美爪料除去剤であって、前記低分子量ジエーテル及び前記環状エーテルの合計含有量が、美爪料除去剤の総質量に対する質量比で30質量%以上である、美爪料除去剤。
【請求項5】
(A1)メチラール及びモノグライムからなる群から選ばれる少なくとも1種の低分子量ジエーテル、及び
(B1)1,3-ジオキソラン及び1,4-ジオキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種の環状エーテル
を含有する、請求項4に記載の美爪料除去剤。
【請求項6】
メチラール及び1,3-ジオキソランを含有する、請求項4又は5に記載の美爪料除去剤。
【請求項7】
エタノールを更に含有する、請求項1~6のいずれか1つに記載の美爪料除去剤。
【請求項8】
ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アルキルセルロース及びケン化度1~50モル%の部分ケン化ポリビニルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を更に含む、請求項1~7のいずれか1つに記載の美爪料除去剤。
【請求項9】
ポリビニルブチラール及びポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む、請求項8に記載の美爪料除去剤。
【請求項10】
ヒュームドシリカを更に含有する、請求項1~9のいずれか1つに記載の美爪料除去剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネイルエナメルやジェルネイル等の美爪料を除去する美爪料除去剤(nail-coating remover)に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な美爪料除去剤(ネイル除光剤)は、良好な美爪料の剥離性(除光特性)を有するという理由でアセトンや酢酸エチルといった有機溶媒が含まれる(特許文献1、特許文献2)。しかしながら、これらの化合物はしばしば爪と爪周囲の皮膚に損傷を与える要因となる。さらに強い臭気を有し、消費者には好まれない。こうした課題を解消するために、アセトンのような有機溶媒の濃度を低くした美爪料除去剤が提案されている(特許文献3)。一方、アセトンを含まない、いわゆるアセトンフリーの美爪料除去剤も提案されている。たとえば、炭酸エステル及び脂肪族アルコールを主成分とする美爪料除去剤が開発されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5484624号公報
【文献】国際公開第2015/135021号
【文献】特開平8-99839号公報
【文献】特表2018-516939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のアセトンフリーの美爪料除去剤は、爪と爪周辺皮膚の損傷は低減されているものの、美爪料の剥離性(除光性)がかなり劣るという問題がある。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、アセトンを実質的に含まない美爪料除去剤において、十分な美爪料の剥離除去性を示す美爪料除去剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、かかる実情に鑑み鋭意検討した結果、特定の低分子量のジエーテル及び/又は特定の環状エーテルを主成分とする組成物が、アセトンを実質的に含まなくても優れた美爪料の剥離除去性(除光性)を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下に関する。
<1>アセトンの含有量が30質量%以下に規制され、かつ、
(A)メチラール、エチラール及びモノグライムからなる群から選ばれる少なくとも1種の低分子量ジエーテル、及び/又は
(B)1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン及びテトラヒドロフルフリルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の環状エーテル
を含有する美爪料除去剤。
<2>(A1)メチラール及びモノグライムからなる群から選ばれる少なくとも1種の低分子量ジエーテル、及び/又は
(B1)1,3-ジオキソラン及び1,4-ジオキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種の環状エーテル
を含有する、上記<1>に記載の美爪料除去剤。
<3>メチラール及び/又は1,3-ジオキソランを含有する、上記<1>又は<2>に記載の美爪料除去剤。
<4>エタノールを更に含有する、上記<1>~<3>のいずれか1つに記載の美爪料除去剤。
<5>ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アルキルセルロース及びケン化度1~50モル%の部分ケン化ポリビニルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を更に含む、上記<1>~<4>のいずれか1つに記載の美爪料除去剤。
<6>ポリビニルブチラール及びポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む、上記<5>に記載の美爪料除去剤。
<7>ヒュームドシリカを更に含有する、上記<1>~<6>のいずれか1つに記載の美爪料除去剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の美爪料除去剤は、アセトンを実質的に含まず、したがってアセトンによる皮膚への損傷や異臭を回避し、一方で、十分な美爪料の剥離除去性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。本明細書において、「XX~YY」の記載は、「XX以上YY以下」を意味する。
【0009】
本明細書において、「美爪料除去剤」とは、ネイルエナメル等の非光硬化型ネイル化粧品と、ソフトジェルネイル等の光硬化型ネイル化粧品の少なくともいずれかの美爪料を除去することができるリムーバーを意味し、好ましくは双方の美爪料を除去することができるものである。ただし、ジェルネイルにおいては、主にベースコートの除去を目的とする。
【0010】
「主要構成成分」
本発明の美爪料除去剤の主要構成成分は、(A)低分子量ジエーテル及び/又は(B)環状エーテルである。(A)低分子量ジエーテルは、メチラール、エチラール及びモノグライムからなる群から選ばれる少なくとも1種の低分子量ジエーテルである。(B)環状エーテルは、1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン及びテトラヒドロフルフリルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の環状エーテルである。本発明の美爪料除去剤の主要構成成分は、好ましくは、(A1)メチラール及びモノグライムからなる群から選ばれる少なくとも1種の低分子量ジエーテル及び/又は(B1)1,3-ジオキソラン及び1,4-ジオキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種の環状エーテルであり、更に好ましくは、メチラール(低分子量ジエーテル)及び/又は1,3-ジオキソラン(環状エーテル)である。
【0011】
これらの低分子量ジエーテル(例えばメチラール)及び/又は環状エーテル(例えば1,3-ジオキソラン)は、美爪料除去剤(ネイル除光液)の成分としては、従来、知られておらず、上記本主要構成成分を有するものは新規の美爪料除去剤(ネイル除光組成物)である。
【0012】
低分子量ジエーテル及び環状エーテルからなる主要構成成分は、液体の美爪料除去剤を構成する際には、組成物の総質量に対する質量比で、少なくとも5質量%、好ましくは7質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、典型的には15質量%以上の範囲で構成される。さらには、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが一層好ましく、70質量%以上であることがより一層好ましく、75質量%以上であることがさらに一層好ましい。上限は特に制限されないが、100質量%(全量)が上記低分子量ジエーテル及び環状エーテルからなる主要構成成分で構成されていてもよい。
【0013】
低分子量ジエーテル及び環状エーテルからなる主要構成成分は、増粘剤を含有するゲル状の除去剤を構成する際には、組成物の総質量に対する質量比で、少なくとも5質量%、好ましくは7質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、典型的には15質量%以上の範囲で構成される。さらには、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが一層好ましく、70質量%以上であることがよりより一層好ましい。上限は特に制限されないが、増粘剤を添加することを考慮し、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることが更に好ましい。
【0014】
本発明の主要構成成分となる特定の低分子量ジエーテル及び環状エーテルは、エーテル類であり、ケトン類の化合物より一般に刺激性が低い。したがって、エーテル類の本発明の主要構成成分は、ケトン類のアセトンに比し、肌へのダメージが低いと解される。
【0015】
「アセトン等」
本発明の美爪料除去剤は実質的にアセトンを含まない。「実質的に」とは、本発明の効果を奏する範囲で含んでいてもよい意味である。本発明の美爪料除去剤は、剥離性の面から所定量のアセトンを含むことができるが、30質量%以下に規制され、好ましくは20質量%以下に規制され、より好ましくは10質量%以下に規制され、更に好ましくは5質量%以下に規制され、典型的には1質量%以下に規制される。下限値としては全く含まないこと(0質量%)が好ましい。
本発明の美爪料除去剤においては、さらに、酢酸エチルも実質的に含まないことが好ましい。好ましくは30質量%以下に規制され、より好ましくは20質量%以下に規制され、更に好ましくは10質量%以下に規制され、一層好ましくは5質量%以下に規制され、典型的には1質量%以下に規制される。下限値としては全く含まないこと(0質量%)が好ましい。
【0016】
「補助溶剤」(低級一価アルコール)
本発明の美爪料除去剤は、剥離安定性、保湿性を増進させるために、低級一価アルコールを補助溶剤として含有することが好ましい。低級一価アルコールとしては、炭素数が1~4個の一価アルコールが好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、N-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール等が挙げられる。これらの中で、好ましくは、メタノール、エタノール、より好ましくはエタノールである。
【0017】
補助溶剤の含有量は特に制限されないが、組成物の総質量に対する質量比で、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることが更に好ましい。上限としては、他の成分との兼ね合いで、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることが更に好ましい。補助溶剤を上記の範囲とすることで、主要溶剤の効果を高めることができる。
【0018】
「増粘剤」
本発明の美爪料除去剤は、定法に従い使用することができる。
たとえば、上記主要構成成分を含む液状の剥離液のまま脱脂綿等に含侵し、塗布し、更にアルミホイルで包んで、所定時間放置することで剥離する方法が挙げられる。
【0019】
一方、必要に応じて、これらの付属品を使用せず保存容器から直接、爪に塗布することも可能である。即ち、美爪料除去剤(リムーバー)を爪に直接塗布するときに垂れず、爪に効率良く塗布するためには、リムーバーに所定の粘度を付与することが必要である。この目的のため、液状の美爪料除去剤に、有機増粘剤、無機増粘剤等の少なくとも1種の増粘剤を添加しゲル状の美爪料除去剤とすることが挙げられる。
【0020】
(有機増粘剤)
有機増粘剤は、A)合成高分子:ビニル系増粘剤(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド及び誘導体)、B)半合成高分子:1)セルロース系増粘剤(中でも好ましくはアルキルセルロース:メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等)(ヒドロキシセルロース)、2)デンプン系増粘剤(カルボキシメチルデンプン等)、C)天然系高分子増粘剤:植物系及び微生物系多糖類、植物系多糖類等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0021】
具体的に、A)合成高分子:ビニル系増粘剤を例示すると、ポリビニルピロリドン(第一工業製薬株式会社製「ピッツコール」(製品番号:K-90、K-50、K-30))、(アッシュランド社製(製品番号:K-120、K-90、K-60、K-30));ポリビニルブチラール(積水化学工業株式会社製「エスレックB」(製品番号:BL-S、BM-1、BH-3));部分ケン化(例えばケン化度1~50モル%)ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製「JMR-150L」、ケン化度:23モル%)等が挙げられる。
【0022】
B)半合成高分子:1)セルロース系増粘剤について例示すれば、アルキルセルロースが挙げられ、エチルセルロース(EC、ダウケミカル社製「STD200」);ヒドロキシプロピルセルロース(日本曹達株式会社製「セルニーH」、「セルニーM」、「セルニーL」);ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業株式会社製「メトローズ」(製品番号:60SH-10000、65SH-4000、65SH-15000,95SH-100000))、(大同化成工業株式会社製「サンジェローズ」(製品番号:60M、60L、90L))等が挙げられる。更に2)デンプン系増粘剤について言えば、三晶株式会社製 ヒドロキシプロピルグアーガム等が挙げられる。
【0023】
以上記載した有機増粘剤の中で、好ましくはA)合成高分子:ビニル系増粘剤(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド及び誘導体)、B)半合成高分子:セルロース系増粘剤(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロース、疎水化セルロース等)が選択され、更に好ましくはA)合成高分子:ビニル系増粘剤(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール)が挙げられ、典型的にはA)合成高分子:ビニル系増粘剤(ポリビニルピロリドン、ポリビニルブチラール)等の熱可塑性樹脂が例示される。本発明の美爪料除去剤は、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アルキルセルロース及びケン化度1~50モル%の部分ケン化ポリビニルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、ポリビニルブチラール及びポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含むことがより好ましい。
【0024】
有機増粘剤は、組成物の総質量に対する質量比で、好ましくは0.1~35質量%、より好ましくは0.5~35質量%、更に好ましくは1~25質量%の範囲で用いることができる。
【0025】
(無機増粘剤)
本発明で使用される無機増粘剤としては、ベントナイト、ヒュームドシリカ等から選択されるが、具体的には、ベントナイト(クニミネ工業株式会社製「クニビス」シリーズ(製品番号:110))、4級アンモニウム塩変性ベントナイト(株式会社ホージュン製「エスベン」シリーズ(製品番号:NZ、NTO))、ヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL」シリーズ(製品番号:130、200、380(以上、親水性シリカ)、製品番号:R812、R974、R976(以上、疎水性シリカ)))等が挙げられる。これらの無機増粘剤は、組成物の総質量に対する質量比で、好ましくは0.05~10質量%、より好ましくは0.5~7質量%、更に好ましくは1~5質量%の範囲で用いることができる。
【0026】
以上記載した無機増粘剤の中で、好ましくはヒュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL」シリーズ(製品番号:130、200、380(以上、親水性シリカ)、製品番号:R812、R974、R976(以上、疎水性シリカ)))等が選択される。
【0027】
「界面活性剤」
本発明の美爪料除去剤(リムーバー)は、次に記載する範囲で界面活性剤を含有することができる。界面活性剤の含有量は、組成物の総質量に対する質量比で、好ましくは0.1~5質量%、より好ましくは0.2~2.5質量%、更に好ましくは0.5~1質量%の範囲で界面活性剤を含むことができる。
本発明で使用される界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられ、通常、化粧品に使用される界面活性剤が利用可能である。好ましくは、非イオン性界面活性剤である。
具体的には、信越化学工業株式会社製「KF6011」(PEG/PPG20/22ブチルエーテルジメチコン)、「KF6012」(PEG11メチルエーテルジメチコン)、「KF6013」(PEG-9ジメチコン)、「KF6043」(PEG10ジメチコン)」、デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル株式会社製「SH3771M」(PEG9ジメチコン)、「SS2802」(PEG10メチルエーテルジメチコン)等が挙げられる。
【0028】
「水」
本発明の美爪料除去剤は、組成物の総質量に対する質量比で、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、典型的には5質量%以下の量の水を含み得る。下限値は特にないが、全く含まないことが好ましい。
【0029】
「その他の有機溶媒」
本発明の美爪料除去剤は、更に、蒸発抑制、保湿性、安定性を増進さるためにポリオール類、炭酸エステル類、カルボン酸エステル類等を含有することができる。
具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン等のポリオール類、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の炭酸エステル類、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、二塩基酸エステル(DBE)等のカルボン酸エステル類等が挙げられる。
本発明の美爪料除去剤(リム-バー)は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、典型的には5質量%以下の量のその他の有機溶剤を含み得る。
【0030】
「着色剤」
本発明の美爪料除去剤は、可溶性染料、合成色素、天然色素、顔料、真珠貝からなる群から選択される着色剤を含むことができる。具体的には、化粧品法定色素としては、例えば、青色2号、青色205号、青色404号、赤色218号、赤色230号、赤色201号、黄色4号等が挙げられる。天然色素としては例えば、アカダイコン色素、クロレラ末製剤等が例示される。また、感温変性色素(サーモクロミック)を選択することができる。具体的には、「2019サーモクロミック顔料/化粧品用感温粉末/マニキュア用31度感熱顔料」、「サーモロック」(株式会社松井色素化学工業所製)、「サーマルカラー」(株式会社記録素材総合研究所製)が例示される。
本発明の美爪料除去剤は、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、典型的には5質量%以下の量の着色剤を含み得る。
【0031】
「美爪料除去剤」
本発明の美爪料除去剤(リムーバー)の形態は、液状であってもゲル状であってもよい。本発明の美爪料除去剤は、ソフトジェルネイル等の光硬化型ネイル化粧品の特にベースコート部分を効果的に除去することができる。また、ネイルエナメル等の非光硬化型ネイル化粧品も効果的に除去することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されない。
【0033】
試験・評価方法
1.ジェルサンプル作成
豚蹄にΦ10mmの円を描き円内にベースジェル約40mgを均一に塗布した。このとき、ベースは株式会社ワールドビューティワークス社製「SHINYGEL Professional」の「パワーベース」(ビスHEMAコポリマー)であり、カラーは「シャイニージェル127ピュアレッド」を用いた。
塗布したジェルをLEDで照射し硬化させた。
その後、ファイルにてカラージェルを削り(~9割)ベース面を露出させた。
【0034】
2-1.液体美爪料除去剤の性能評価
表1及び表2に記載の各成分を配合して、各種の美爪料除去剤(除光液)を調製した。次いで、この除光液を脱脂綿に十分浸み込ませた。その後、研磨処理後の硬化ジェルに脱脂綿をあて、アルミホイルで包んだ。この状態で20分静置した後の硬化ジェルの剥離性を観察した。
【0035】
2-2.増粘剤含有美爪料除去剤の評価
表3及び表4に記載の各成分を配合して、各種の美爪料除去剤(除光ゲル)を調製した。この徐光ゲルを、研磨磨処理後の硬化ジェルに塗布した。この状態で20分静置し、その後の硬化ジェルの剥離性を観察した。
【0036】
3.評価方法
(1)塗布性(増粘剤含有美爪料除去剤)
試料塗布時に流動性があるかどうかを目視観察し、以下の基準に従って評価した。
A:流動性有り
B:流動性無し
【0037】
(2)造膜性(増粘剤含有美爪料除去剤)
豚蹄に、株式会社ワールドビューティワークス社製「SHINYGEL Professional」の「パワーベース」、「カラージェル」及び「クリスタルトップ」を順次塗布して、ジェルネイルを形成した。ジェルネイル上に試料を塗布して塗膜を形成した。5分間静置した後の塗膜を指触により、以下の基準に従って評価した。なお、付着の有無は「手指への付着」の有無を意味する。
5:十分に強い塗膜が形成され付着は無い
4:十分に強い塗膜が形成されるが、やや付着あり
3:強い膜が形成されるが、やや付着あり
2:強い膜が形成されず、付着あり
1:塗膜が形成されない
【0038】
(3)剥離性(液体美爪料除去剤及び増粘剤含有美爪料除去剤)
上記2-1.及び2-2.で説明した剥離性に関し、以下の7段階で評価した。具体的には、上記硬化ジェルの剥離処理後の状態を観察し、硬化ジェル(塗膜)が剥離している領域(面積)の比率により区別して評価した。
7:塗膜を8割以上剥離できた
6:塗膜を6割以上8割未満剥離できた
5:塗膜を半分程度剥離できた
4:塗膜を3割以上4割程度剥離できた(市場要求レベル)
3:塗膜を1割以上3割未満剥離できた
2:僅かに軟化しており、塗膜を1割未満程度剥離できた
1:軟化しておらず、ほぼ剥離できなかった
【0039】
各評価の結果を下記表1~4に示す。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
[使用した増粘剤・用語の説明]
THF:テトラヒドロフラン
THFA:テトラヒドロフルフリルアルコール
PVB(ポリビニルブチラール):「エスレックBM-1」、積水化学工業株式会社製
PVA(ポリビニルアルコール):「JMR-150L」、日本酢ビ・ポバール株式会社製
HPC(ヒドロキシプロピルセルロース):「NISSO HPC」、日本曹達株式会社製
HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース):「メトローズ60SH-10000」、信越化学工業株式会社製
PVP K-90(ポリビニルピロリドン):「ピッツコールK-90」、第一工業製薬株式会社製
PVP K-120(ポリビニルピロリドン):アッシュランド・ジャパン株式会社製
ヒュームドシリカ1(疎水性ヒュームドシリカ):「AEROSIL R974」、日本アエロジル株式会社製
ヒュームドシリカ2(親水性ヒュームドシリカ):「AEROSIL 380」、日本アエロジル株式会社製
【0045】
また、上記の実施例で用いた美爪料除去剤の試料について、肌への影響及び臭気を確認した。その結果、アセトンと同等かそれ以上である(より肌への影響や臭気が少ない)ことを確認した。
【0046】
上記表1~4の結果から明らかなとおり、本発明の美爪料除去剤は、特定の低分子量ジエーテル又は特定の環状エーテルを含有し、かつアセトンを実質的に含まず、液状のものであってもゲル状のもの(増粘剤を含むもの)であっても、アセトンによる皮膚の損傷や異臭を回避し、一方で、実用上十分な美爪料の剥離除去性を発揮した。また、ゲル状の美爪料除去剤については、さらに良好な塗布性及び造膜性を示すものがあることを確認した。
【要約】
アセトンの含有量が30質量%以下に規制され、かつ、(A)メチラール、エチラール及びモノグライムからなる群から選ばれる少なくとも1種の低分子量ジエーテル、及び/又は(B)1,3-ジオキソラン、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン及びテトラヒドロフルフリルアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の環状エーテルを含有する美爪料除去剤。