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  • 特許-厨房用床面リニューアル方法 図1
  • 特許-厨房用床面リニューアル方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-09-21
(45)【発行日】2022-09-30
(54)【発明の名称】厨房用床面リニューアル方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20220922BHJP
【FI】
E04G23/02 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022011477
(22)【出願日】2022-01-28
【審査請求日】2022-01-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522039511
【氏名又は名称】株式会社日建テクノス
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】森本 美文
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-336333(JP,A)
【文献】特開2022-003211(JP,A)
【文献】特開2009-162013(JP,A)
【文献】特開2008-075033(JP,A)
【文献】特開2018-197570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厨房の床面をリニューアルする厨房用床面リニューアル方法であって、
前記厨房の床面にガルバリウム鋼板を載置する第1の工程と、
前記第1の工程の後、前記ガルバリウム鋼板の上に金属用プライマーを塗布する第2の工程と、
前記第2の工程の後、前記ガルバリウム鋼板の上にポリウレア樹脂を塗布する第3の工程と、
を備えることを特徴とする厨房用床面リニューアル方法。
【請求項2】
請求項1に記載の厨房用床面リニューアル方法であって、
前記第3の工程は、前記ポリウレア樹脂を霧状に吹き付けるスプレーを用いて塗布することを特徴とする厨房用床面リニューアル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施設リニューアル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飲食店などの厨房は長期間使用していると床面などが傷むことがあるため、リニューアル工事がなされることがある。本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、硬化型樹脂Aからなる防水層を床版上に形成した後、前記硬化型樹脂Aよりも硬化時間が長い硬化型樹脂Bからなる接着層を前記防水層上に形成し、その後、当該接着層が未硬化のうちに当該接着層上にアスファルト混合物を舗設することを特徴とする床版防水工法が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、鋼床版の上に複数のスタッドを突設し、当該鋼床版およびスタッドの表面に樹脂系塗膜材による防水層を形成し、かつ当該防水層の上にFRC舗装を行い、樹脂系塗膜材による防水層を複数層形成し、かつ最上層の防水層を凹凸状に形成し、樹脂系塗膜材としてポリウレア系、ポリウレタン系、MMAまたはエポキシ系の樹脂系塗膜材を用い、防水層の上にFRC舗装としてSFRC舗装、カーボンFRC舗装またはビニロンFRC舗装を行うことを特徴とする鋼床版舗装工法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-166209号公報
【文献】特開2005-314992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の厨房の床面等のリニューアル工事は、既存の床面に対する下地処理、清掃、養生などを行い、耐水性などに優れた樹脂、例えば、エポキシ樹脂などを塗布するなどの処理がなされている。上記下地処理、清掃、養生作業や、エポキシ樹脂の乾燥などに時間を要するため、リニューアル工事を行うために飲食店を休業にする必要があるという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、短時間で厨房等の施設の床面等のリニューアルを行うことを可能とする施設リニューアル方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る厨房用床面リニューアル方法は、厨房の床面をリニューアルする厨房用床面リニューアル方法であって、前記厨房の床面にガルバリウム鋼板を載置する第1の工程と、前記第1の工程の後、前記ガルバリウム鋼板の上に金属用プライマーを塗布する第2の工程と、前記第2の工程の後、前記ガルバリウム鋼板の上にポリウレア樹脂を塗布する第3の工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る厨房用床面リニューアル方法は、前記第3の工程は、前記ポリウレア樹脂を霧状に吹き付けるスプレーを用いて塗布することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、短時間で厨房等の床面等のリニューアルを行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る実施形態の厨房用床面リニューアル方法によってリニューアルを行う手順を示すフローチャートである。
図2】本発明に係る実施形態の厨房用床面リニューアル方法において、厨房の床面をリニューアルしている様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0013】
図1は、本発明に係る実施形態の厨房用床面リニューアル方法によってリニューアルを行う手順を示すフローチャートである。図2は、本発明に係る実施形態の厨房用床面リニューアル方法において、厨房の床面10をリニューアルしている様子を示す図である。
【0014】
厨房用床面リニューアル方法は、厨房の床面10をリニューアルする方法であり、図1に示されるように、厨房の床面10に鋼板を載置する第1の工程と、第1の工程の後、鋼板の上に金属用プライマーを塗布する第2の工程と、第2の工程の後、鋼板の上にポリウレア樹脂を塗布する第3の工程とを備える。なお、ここでは、床面のリニューアル方法の対象は厨房であるものとして説明したが、もちろん、厨房に限定されずにその他の建設、土木関係の現場、例えば、ピットの床面又は壁面、農業用水路等にも適用可能である。
【0015】
リニューアルの対象の厨房の床面10は、様々な塗り床などが存在する。例えば、タイル張り仕上げは、耐久性・耐火性に優れており、長持ちするのでランニングコストが安く、部分的に剥がれても補修しやすいなどのメリットがある一方で、初期コストが高く、工期が長くなり、タイルの種類によっては滑りやすくなる等のデメリットがある。
【0016】
また、硬質ウレタン系仕上げは、耐熱性、耐衝撃性などに優れていて、プライマー不要のため、改修工事に適している一方で、下地モルタルの乾燥が必要で、下地に目地カッターを入れることが必要であり、エポキシ樹脂に比べるとコストが高い等のデメリットがある。
【0017】
そして、セメント系仕上げは、初期コストが安く、下地の乾燥が不要などのメリットがある一方で、経年変化で変色することがあり、クラックが発生しやすくなる等のデメリットがある。
【0018】
さらに、エポキシ系仕上げは、施工が比較的容易であり、エポキシ樹脂の耐熱性などグレードがあり、色のバリエーションも豊富である一方で、下地の乾燥が必要なため、全体的な工期が長くなるというデメリットがある。
【0019】
また、モルタル仕上げは、コストが安く、施工日数が掛からず、メンテナンスがしやすいというメリットがある一方で、クラックが発生しやすく、摩耗してくると滑りやすくなるというデメリットがある。
【0020】
以上のように、厨房の床面10には、様々な仕上げ方法により形成されているが、リニューアル工事を行う際、例えば、エポキシ系仕上げの場合には、下地処理、清掃、養生作業や、エポキシ樹脂の乾燥などに時間を要するため、リニューアル工事を行うために飲食店を休業にする必要がある。
【0021】
第1の工程は、厨房の床面10に鋼板を載置する。鋼板は、ガルバリウム鋼板12である。ガルバリウム鋼板12は、めっき金属として純亜鉛ではなく、アルミニウム(Al)55%+亜鉛43.4%+珪素 (Si)1.6%の合金を用いている(パーセンテージは質量比)。Alは、めっき層表面に強固な不動態皮膜を形成して、めっき層を保護する。
【0022】
Zn含有量が低下することで犠牲防食性能は劣化するものの、Alの不動態皮膜とZn腐食部の腐食生成物がめっき層の腐食進行を抑制するため、全体として高い防食性を発揮する。合金比率は、Znの犠牲防食性能とAlの不動態保護性能のバランスで決められている。
【0023】
第2の工程は、第1の工程の後、ガルバリウム鋼板12の上に金属用プライマー16を塗布する。金属用プライマー16は、銅、真ちゅう、アルミニウム、ステンレス、クロームメッキ、亜鉛メッキ、ブリキなどの非鉄金属や鉄の下塗り用として使用できるプライマーである。
【0024】
広い面積や細かい凹凸のある下地に足付けをするのは、手間と時間がかかる作業である。こうした面倒な調整作業をしなくても、下地と塗料の間で接着剤となって間を取り持ってくれるのがプライマーである。接着する以外にも、傷や凹みを埋めて表面を平らにならしたり、金属用プライマー16であれば、サビを抑えたりするなど重要な役割を果たす。
【0025】
第3の工程は、第2の工程の後、ガルバリウム鋼板12の上にポリウレア樹脂18を塗布する。ポリウレア樹脂18は、イソシアネートとポリアミンの化学反応によって形成された樹脂化合物で、強力な皮膜を形成するライニング(コーティング)材である。
【0026】
ポリウレア樹脂18は、対象物に塗布するだけで、耐摩耗性・耐候性などを大幅に向上させることができる画期的な素材である。硬化時間が数秒~数十秒と極めて短く、防水・耐薬品・耐摩耗・耐熱に優れ、様々な変状要因から基材を保護するライニング材で、400%以上の伸び率を有しているグレードもあり、下地のひび割れの発生や挙動に対して高い追従性を発揮するとともに、軍事施設やプラント施設、主要建物の防爆対策としても注目されている。
【0027】
ポリウレア樹脂18の特徴は、耐摩耗性、耐候性、耐衝撃性に優れている点である。耐摩耗性は、FRP(繊維強化プラスチック)の60倍以上の耐摩耗性を有している点で優れている。耐候性は、10年以上の耐候性テストでも吹き付け時点の性能を維持する。耐衝撃性は、TNT火薬による爆風にも耐え、約1トンの車が衝突しても問題が生じない程度の強度がある。
【0028】
ポリウレア樹脂18のその他の特徴として、超速硬化、高伸度、高破壊力、防食防錆、耐塩害、耐薬品性、防水性、無溶剤、無触媒である。
【0029】
ポリウレア樹脂18と他のライニング材の性能を比較する。ポリウレタン樹脂の耐摩耗性の評価は「△」であり、耐薬品性は「〇」であり、防食性は「×」であり、防水性は「〇」であり、クラック追従性は「〇」であり、施工性は「◎」であり、環境性は「〇」であり、施工スピードは「◎」であり、耐久年数は「〇」である。
【0030】
FRPの耐摩耗性の評価は「〇」であり、耐薬品性は「◎」であり、防食性は「◎」であり、防水性は「〇」であり、クラック追従性は「×」であり、施工性は「△」であり、環境性は「△」であり、施工スピードは「△」であり、耐久年数は「〇」である。
【0031】
エポキシ樹脂の耐摩耗性の評価は「〇」であり、耐薬品性は「〇」であり、防食性は「◎」であり、防水性は「△」であり、クラック追従性は「×」であり、施工性は「〇」であり、環境性は「〇」であり、施工スピードは「〇」であり、耐久年数は「〇」である。
【0032】
ポリマーセメント系の耐摩耗性の評価は「△」であり、耐薬品性は「◎」であり、防食性は「×」であり、防水性は「×」であり、クラック追従性は「×」であり、施工性は「◎」であり、環境性は「◎」であり、施工スピードは「〇」であり、耐久年数は「〇」である。
【0033】
ポリウレア樹脂の耐摩耗性の評価は「◎」であり、耐薬品性は「〇」であり、防食性は「◎」であり、防水性は「◎」であり、クラック追従性は「◎」であり、施工性は「◎」であり、環境性は「◎」であり、施工スピードは「◎」であり、耐久年数は「◎」である。
【0034】
続いて、本発明に係る実施形態の厨房用床面リニューアル方法の作用について説明する。最初に、厨房の床面10にガルバリウム鋼板12を載置する工程を行う(S2)。具体的には、ガルバリウム鋼板12を載置する前に、厨房の床面10の平場及び立上り部において、ケレン、清掃を行い、立上り面は油分、汚れ等を溶剤にて拭き取る。側溝部は、側溝内部に吹き付けると密着してしまうため、十分乾燥させる必要がある。なお、既存の床面10には、下地処理は必要がない。
【0035】
その後、予め採寸されて切断されたガルバリウム鋼板12を厨房に搬入し、仮置きをする。水下にあたる側溝部は、L型に加工したものとし、ドリルにより穿孔処理を行って、図2(a)に示されるように、平ビス14を先に取り付ける。側溝部取付け後、水下から順にガルバリウム鋼板12を取り付けていく。ガルバリウム鋼板12を取り付けた後、ジョイント部にウレタンシーリング材を充填する。
【0036】
S2の工程の後は、鋼板の上に金属用プライマー16を塗布する工程を行う(S4)。S2の工程において載置したガルバリウム鋼板12上に金属用プライマー16を塗布する際に、施工箇所以外へのミスト対策として、マスキングテープ・養生シート等で養生する。その際、ネタ場・搬入通路等も養生を行い、他の箇所を汚さないように十分注意する。その後、ガルバリウム鋼板12上に金属用プライマー16を塗布する。
【0037】
S4の工程の後は、金属用プライマー16を硬化させてから、ガルバリウム鋼板2の上にポリウレア樹脂18を塗布する(S6)。具体的には、ポリウレア樹脂18(主剤:硬化剤+トナー=1:1<容量比>)をスプレーマシンにより平場には1m当たり3.0kgを、立上り面にも1m当たり2.0kgを均一に吹き付ける。
【0038】
その後、アクリルウレタン系トップコート1m当たり0.2kgをローラー刷毛又は刷毛などで均一に塗布する。施工完了後、養生に用いたマスキングテープ及び他の養生材等を撤去し、片付けを行う。
【0039】
従来、厨房の床面のリニューアル工事を行う場合には、下地処理、清掃、養生作業や、エポキシ樹脂の乾燥などに時間を要するため、飲食店を休業する必要があった。
【0040】
しかしながら、本発明に係る実施形態の厨房用床面リニューアル方法によれば、下地処理が必要なく、超速硬化性の特徴を有するポリウレア樹脂を塗布して防水層を施工しているため、従来のリニューアル工事に比べて、大幅に時間短縮を行うことができる。
【0041】
これにより、例えば、飲食店の夜の営業時間が終わった後から作業を始めても翌日の営業開始時間に十分間に合わせることができるため、店舗を休業することなく床面10のリニューアルを行うことができるという顕著な効果を奏する。
【符号の説明】
【0042】
10 床面、12 ガルバリウム鋼板、14 平ビス、16 金属用プライマー、18ポリウレア樹脂。
【要約】
【課題】短時間で厨房の床面のリニューアルを行うことを可能とする厨房用床面リニューアル方法を提供することである。
【解決手段】厨房の床面をリニューアルする厨房用床面リニューアル方法は、厨房の床面10にガルバリウム鋼板12を載置する第1の工程と、第1の工程の後、ガルバリウム鋼板12の上に金属用プライマー16を塗布する第2の工程と、第2の工程の後、ガルバリウム鋼板12の上にポリウレア樹脂18を塗布する第3の工程と、を備えることを特徴とする。第3の工程は、ポリウレア樹脂18を霧状に吹き付けるスプレーを用いて塗布することが好ましい。
【選択図】図1


図1
図2